(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】ホース内圧検出装置並びにホース内圧検出装置を具えたコンクリートカッタ
(51)【国際特許分類】
E01C 23/09 20060101AFI20230105BHJP
【FI】
E01C23/09 A
(21)【出願番号】P 2020017817
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2021-11-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年9月21日、実機試験のため、本願発明の試験器を第一カッター興業株式会社(茅ヶ崎営業所)に納品。
(73)【特許権者】
【識別番号】592207142
【氏名又は名称】仲山鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】仲山 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】福田 博美
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 徹弥
(72)【発明者】
【氏名】岩田 雄介
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-508865(JP,A)
【文献】特開平07-256634(JP,A)
【文献】実開平05-006341(JP,U)
【文献】実開昭60-171960(JP,U)
【文献】特開平08-081913(JP,A)
【文献】特許第4045079(JP,B2)
【文献】特開2002-115208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 23/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートカッタと接続される汚泥水ホースの内圧を検出するホース内圧検出装置であって、
前記コンクリートカッタは、舗装材を切断するカッタブレードと、舗装材の切断時に発生する汚泥水を吸引・吐出するバキュームユニット、ならびに、前記ホース内圧検出装置が前記汚泥水ホースの内圧上昇を検出した場合に前記バキュームユニットの動作を停止させる機能を搭載し、
さらに前記バキュームユニットは、前記汚泥水ホースとの接続部である汚泥水ホース接続部を具え、
前記ホース内圧検出装置は、前記汚泥水ホースに組み合わされる保持本体と、
当該保持本体の変形を検出する検出スイッ
チを具
えることを特徴とす
るホース内圧検出装置。
【請求項2】
前記保持本体は、汚泥水ホースに対し、外掴み状に組み合されるように、クリップ状にピン接続された一対の掴み片を具え、汚泥水ホースの膨張変形を受けて一対の掴み片の掴み寸法の増加変形を検出スイッチにより検出することを特徴とする請求項1記載
のホース内圧検出装置。
【請求項3】
前記一対の掴み片は、ピン接続部を挟んで一方の側に操作部を具え、他方の側に汚泥水ホースの掴み部を形成すると共に、更に一方の掴み部に検出スイッチを配設したことを特徴とする請求項2記載
のホース内圧検出装置。
【請求項4】
前記一方の掴み片の掴み部にスイッチ本体を設け、他方の掴み片の掴み部に検出スイッチにおける受圧片に当接する作動ピンを設け、且つこの作動ピンは、その先端部の位置を調節自在としたことを特徴とする請求項3記載
のホース内圧検出装置。
【請求項5】
本体フレーム下部に具えられるカッタブレードと、このカッタブレードに対し冷却水を掛けて冷却を行う冷却機構と、切断作業に伴い生じた汚泥水を回収する汚泥水回収機構とを具えて成り、
前記汚泥水を吸引排除する吸引装置と、この吸引装置の吐出側に接続される汚泥水ホースとを具え、
回転するカッタブレードを作用させることにより発生する舗装材の切削粉を冷却水と共に汚泥水として回収するコンクリートカッタにおいて、
前記汚泥水ホースには、前記請求項1、2、3または4いずれか記載
のホース内圧検出装置及びこのものが組み込まれる制御回路が具えられることを特徴とするホース内圧検出装置を具えたコンクリートカッタ。
【請求項6】
前記ホース内圧検出装置が組み込まれる制御回路は、検出スイッチがオフ状態となったことを検出して、吐出ポンプ及び吸引ブロワを具えて成るバキュームユニットへの動力の伝達を遮断するものであり、
且つ、いったん検出スイッチがオフ状態となったことを検出して、バキュームユニットへの動力の伝達を遮断した後は、
再度検出スイッチがオン状態となったことを検出した場合であっても、バキュームユニットへの動力の伝達を遮断した状態を維持するものであることを特徴とする請求項5記載のホース内圧検出装置を具えたコンクリートカッタ。
【請求項7】
前記制御回路は、リセット操作を行うことにより、バキュームユニットへの動力の伝達を再開することができるものであることを特徴とする請求項6記載のホース内圧検出装置を具えたコンクリートカッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリートカッタによる作業時に、舗装材の切削粉を回収するに当たって生ずる切削粉を含んだ汚泥水の飛散を防止するための検出装置並びにこの検出装置を具えたコンクリートカッタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば道路をはじめとする舗装材の除去工事では、除去する作業に先立ち除去部位の舗装材を切断するためにコンクリートカッタが用いられる。
当然ながらこの切断作業により舗装材の切削粉が発生するが、作業周辺の環境保全のために、これらが粉塵として飛散しないよう、カッタブレードをブレードカバーで覆い、且つ切断位置に処理水を噴霧して、カッタブレードの冷却を行うとともに、切削粉を汚泥水として回収処理することが行われている。
そして前記回収処理では、コンクリートカッタの装置本体に設けられた吸引装置で汚泥水を吸引回収し、これを汚泥水ホースを介して別途作業位置近くに用意した貯水タンクに貯留する手法が採られている(例えば特許文献1参照)。
このようなコンクリートカッタでは、汚泥水ホースは汚泥水ホース接続部に外嵌めされ、更にホースクリップにより固定されてはいるものの、頻繁ではないが汚泥水ホースの配置や捌き方で汚泥水ホースが折り曲り状態となった場合等には、送り込まれる汚泥水の圧力が高まり、汚泥水ホースが汚泥水ホース接続部から外れてしまうこともあった。
そしていったん汚泥水ホースが外れてしまうと、汚泥水が一気に周辺に飛散し、工事関係資材や周辺街路にとどまらず、周囲の作業者や、甚だしい場合には一般の歩行者等への汚損も生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような背景の認識に基づいてなされたものであって、汚泥水ホースの内圧上昇を検出して、周辺への汚泥水の飛散を確実に防止することのできる、新規なホース内圧検出装置並びにホース内圧検出装置を具えたコンクリートカッタの開発を技術課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載のホース内圧検出装置スイッチは、コンクリートカッタと接続される汚泥水ホースの内圧を検出するホース内圧検出装置であって、前記コンクリートカッタは、舗装材を切断するカッタブレードと、舗装材の切断時に発生する汚泥水を吸引・吐出するバキュームユニット、ならびに、前記ホース内圧検出装置が前記汚泥水ホースの内圧上昇を検出した場合に前記バキュームユニットの動作を停止させる機能を搭載し、さらに前記バキュームユニットは、前記汚泥水ホースとの接続部である汚泥水ホース接続部を具え、前記ホース内圧検出装置は、前記汚泥水ホースに組み合わされる保持本体と、当該保持本体の変形を検出する検出スイッチを具えることを特徴として成るものである。
【0006】
請求項2記載のホース内圧検出装置は、前記請求項1記載の要件に加え、前記保持本体は、汚泥水ホースに対し、外掴み状に組み合されるように、クリップ状にピン接続された一対の掴み片を具え、汚泥水ホースの膨張変形を受けて一対の掴み片の掴み寸法の増加変形を検出スイッチにより検出することを特徴として成るものである。
【0007】
請求項3記載のホース内圧検出装置は、前記請求項2記載の要件に加え、前記一対の掴み片は、ピン接続部を挟んで一方の側に操作部を具え、他方の側に汚泥水ホースの掴み部を形成すると共に、更に一方の掴み部に検出スイッチを配設したことを特徴として成るものである。
【0008】
請求項4記載のホース内圧検出装置は、前記請求項3記載の要件に加え、前記一方の掴み片の掴み部にスイッチ本体を設け、他方の掴み片の掴み部に検出スイッチにおける受圧片に当接する作動ピンを設け、且つこの作動ピンは、その先端部の位置を調節自在としたことを特徴として成るものである。
【0009】
請求項5記載のホース内圧検出装置を具えたコンクリートカッタは、本体フレーム下部に具えられるカッタブレードと、このカッタブレードに対し冷却水を掛けて冷却を行う冷却機構と、切断作業に伴い生じた汚泥水を回収する汚泥水回収機構とを具えて成り、前記汚泥水を吸引排除する吸引装置と、この吸引装置の吐出側に接続される汚泥水ホースとを具え、回転するカッタブレードを作用させることにより発生する舗装材の切削粉を冷却水と共に汚泥水として回収するコンクリートカッタにおいて、前記汚泥水ホースには、前記請求項1、2、3または4いずれか記載のホース内圧検出装置が具えられることを特徴として成るものである。
【0010】
請求項6記載のホース内圧検出装置を具えたコンクリートカッタは、前記請求項5記載の要件に加え、前記ホース内圧検出装置が組み込まれる制御回路は、検出スイッチがオフ状態となったことを検出して、吐出ポンプ及び吸引ブロワを具えて成るバキュームユニットへの動力の伝達を遮断するものであり、且つ、いったん検出スイッチがオフ状態となったことを検出して、バキュームユニットへの動力の伝達を遮断した後は、再度検出スイッチがオン状態となったことを検出した場合であっても、バキュームユニットへの動力の伝達を遮断した状態を維持するものであることを特徴として成るものである。
【0011】
請求項7記載のホース内圧検出装置を具えたコンクリートカッタは、前記請求項6記載の要件に加え、前記制御回路は、リセット操作を行うことにより、バキュームユニットへの動力の伝達を再開することができるものであることを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の発明を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0012】
まず請求項1記載の発明によれば、汚泥水ホースの内圧上昇を検出することにより、汚泥水ホースの固定状態を維持して周辺への汚泥水の飛散を確実に防止することができる。
【0013】
また請求項2記載の発明によれば、ホース内圧検出装置を、汚泥水ホースに対し外掴み状に組み合されるものとして構成するため、極めて安価ものとして提供することができる。
またホース内圧検出装置を既存の装置に対して容易に付加することができる。
【0014】
また請求項3記載の発明によれば、汚泥水ホースの膨張変形を効果的に検出することができる。
【0015】
また請求項4記載の発明によれば、汚泥水ホースの膨張変形の検出感度を、容易に調節することができる。
【0016】
また請求項5記載の発明によれば、汚泥水ホースの内圧上昇を検出することにより、汚泥水ホースの固定状態を維持して周辺への汚泥水の飛散を確実に防止することができる。
【0017】
また請求項6記載の発明によれば、汚泥ホースが膨張と収縮を繰り返してしまうような状況において、ホース内圧検出装置がオン・オフを繰り返してしまうような状態下でも、バキュームユニットへ動力が伝達されることはなく、例えば原動機が高速回転した状態で不用意にバキュームクラッチ(バキュームユニットに原動機からの動力を伝達するためのクラッチ)が接続状態(ON)とされて、バキュームクラッチが破損してしまうような事態を確実に回避することができる。
【0018】
また請求項7記載の発明によれば、バキュームユニットへの動力の伝達を再開するためにリセット操作を行わせることにより、安全性を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のホース内圧検出装置を具えたコンクリートカッタ及び貯水タンクを示す側面図並びに本発明
のホース内圧検出装置を拡大して示す側面図である。
【
図2】同上ホース内圧検出装置を具えたコンクリートカッタの詳細を示す側面図並びにホース内圧検出装置を示す拡大図(a)及び(b)である。
【
図3】掴み部側が開いた状態のホース内圧検出装置を示す斜視図(a)及び掴み部側が閉じた状態のホース内圧検出装置を示す斜視図である。
【
図4】汚泥水ホースに組み合された状態で、オンの状態のホース内圧検出装置を示す側面図(a)及びオフの状態のホース内圧検出装置を示す側面図(b)である。
【
図5】汚泥水槽が展開された状態の貯水タンクを示す斜視図(a)及び汚泥水槽が収縮したの貯水タンクを示す斜視図(b)である。
【
図6】本発明のホース内圧検出装置が組み込まれた制御回路を示す回路図である。
【
図7】本発明のホース内圧検出装置が組み込まれた制御回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするものであるが、本発明の技術的思想の範囲内において改良し得る種々の形態を含むものである。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を図示の実施例に基づいて説明する。この説明にあたっては、本発明の「ホース内圧検出装置を具えたコンクリートカッタ」(以下、単に「コンクリートカッタ1」と称する。)の説明をしながら、併せて本発明のホース内圧検出装置100の説明をする。
なお以下の説明にあたっては、貯水タンク10をコンクリートカッタ1の構成要素の一部であるとして説明するが、このものをコンクリートカッタ1とは独立した機器としてもよい。
【0022】
図中、符号1に示すものがコンクリートカッタであり、このものは本体フレーム2に対し、走行機構3と、カッタブレード7と、このカッタブレード7の冷却を行う冷却機構4と、切断作業に伴い生じる汚泥水Lを回収する汚泥水回収機構5と、ブレードカバー6と、貯水タンク10と、ホース内圧検出装置100とを主要部材として具えて成る。
なおこの実施例で被加工物Rは、舗装された一定厚みのコンクリートあるいはアスファルト等から成る層を有する舗装路面とされるものである。
また被加工物Rを切断する際にコンクリートカッタ1が進行する方向を前方とし、その逆を後方として定義する。
以下、これらコンクリートカッタ1の構成要素について詳しく説明する。
【0023】
まず前記本体フレーム2は、例えば金属製の角パイプ、アングル材等を適宜の枠形状に組み立てることにより形成されるものである。そして本体フレーム2の下部には、後述するブレードカバー6との係合部材となる規制板20及び係合フック21が設けられる。
また本体フレーム2及びこれに搭載される機器は、箱状のハウジング22により覆われた状態とされる。
【0024】
ここでコンクリートカッタ1の特に主要な部材であるカッタブレード7について先に説明しておくと、このものは前記本体フレーム2の下部に取り付けられる円板状の刃物であって、被加工物Rに直接作用してこれを切断する部材である。具体的には本体フレーム2の進行方向、即ち前方寄りの下面にシャフトホルダ70が設けられ、このシャフトホルダ70に回転自在に具えられるブレードシャフト71の一方の端部に前記カッタブレード7が取り付けられる。
【0025】
また前記走行機構3は、本体フレーム2の下部に設けられものであり、一例として走行駆動輪30と補助輪31とが具えられ、このうち走行駆動輪30は、本体フレーム2の進行方向後方寄りに配置され、図示しない原動機(エンジン、モータ等)から変速機を介して動力が伝達されて駆動される構成となっている。
一方、前記補助輪31は非駆動であり、その回転中心は前記カッタブレード7の回転中心と走行駆動輪30の回転中心との間に位置するように設定され、更に被加工物Rの起伏や形状に左右されることなく常に被加工物Rに当接するように付勢アーム32により被加工物R側に常時付勢されるように構成されている。
更に走行機構3の補器として、コンクリートカッタ1を前進、後退、停止させる操作を行うための操作レバー33、押し棒34及び手動ハンドル35が、後方の上部に設けられる。
なお前記走行機構3は例えば非駆動の走行輪のみにより構成することも可能であり、この場合には作業者が手動ハンドル35を手に持って、これを押しながら押し棒34により舵取りを行う手押し式の装置となる。
【0026】
次に前記冷却機構4について説明すると、この機構は一例として、噴射ノズル40と、冷却水ポンプ41と、これらを連結する冷却水供給管路42とを具えて成るものである。
前記噴射ノズル40は、先端の噴出孔から噴霧される冷却水Wを、一例としてカッタブレード7の刃先から中心付近にかけて噴霧できるように設置される。
また冷却機構4としては、ブレードシャフト71を貫通軸とし、その中心から冷却水Wを供給し、カッタブレード7の近傍に設けられたフランジ(図示省略)から放射状に噴出させるような構成を採ることもできる。
なお前記冷却水ポンプ41には、後述する貯水タンク10が冷却水供給管路43により接続される。
【0027】
次に汚泥水回収機構5の説明に先立ち、ブレードカバー6について説明すると、このものは、被加工物Rに対して一定の間隙を隔てて上方に位置し、前記カッタブレード7を平面視で囲むように設けられる下部フレーム60と、この下部フレーム60に対しその上方に一体に設けられるカバー本体64とを具えて成るものであり、カッタブレード7を保護し、且つ作業者が作動中のカッタブレード7に触れることのないようにする部材である。
前記下部フレーム60は、一例として金属製の角パイプを平面視矩形状に組み合せて成るものであり、この下部フレーム60の上面には接続口60aが設けられ、底面には吸引口60bが設けられる。また下部フレーム60の下方の外周縁にはブラシ61が設けられるものであり、これによりブレードカバー6の内部空間と外部とが遮断されている。
【0028】
更に下部フレーム60の前後端辺部には把手62が設けられ、ブレードカバー6の着脱操作はこの把手62を用いて行われる。
また下部フレーム60にはこの他、後方の端辺部に係合ロッド63が設けられるものであり、この係合ロッド63は一例として二本の丸棒が平面視T字形に接続されたものである。そしてこれら係合ロッド63のうちコンクリートカッタ1の幅方向に位置するものが回動軸部63aとされるものであり、本体フレーム2に対して設けられる前記係合フック21に係合する。
【0029】
そしてこのような下部フレーム60に対し、その上方に設けられるカバー本体64は、半円状の二枚の側板を対向するように配し、その円弧状の周縁のみを当該円弧に合わせて湾曲させた矩形状の胴板によって閉塞して成るものであって、側面から見てカッタブレード7のほぼ上半分を半円状に覆うように設けられる。
ブレードカバー6は以上のように構成されるものであり、前記回動軸部63aを中心として一定角度の範囲にわたって回動するものであって、被加工物Rの上面の起伏や傾斜に応動して、下部フレーム60の下部に設けられるブラシ61を常に被加工物Rに接地させるものである。
なお下部フレーム60の前方の適宜の個所には、切断作業に際してカッタブレード7の加工案内となるゲージGが設けられる。
【0030】
次に前記汚泥水回収機構5について説明すると、この機構は、吐出ポンプ51及び吸引ブロワ52を具えて成るバキュームユニット50と、このバキュームユニット50に原動機(図示省略)からの動力を伝達するバキュームクラッチCと、吸引物をエアAと汚泥水Lと固形分Sとに分けるバキュームタンク53とを具えて構成されるものである。
なおバキュームタンク53内には固形分Sを回収するための集塵カゴ54が設けられるものであり、またバキュームタンク53の上部開口部は上蓋58によって塞がれる。
【0031】
そして前記下部フレーム60における接続口60aとバキュームタンク53とは吸引管路55によって接続される。またバキュームタンク53と吸引ブロワ52とは排気管路56によって接続される。またバキュームタンク53と吐出ポンプ51とは、排液管路57によって接続される。また吐出ポンプ51における汚泥水ホース接続部51aと、貯水タンク10における汚泥水槽15とは、汚泥水ホース59によって接続される。
なお汚泥水ホース接続部51aと汚泥水ホース59との接続部は、ホースバンド51bを用いて締め付けることにより、抜けの防止が図られる。
またこの実施例では、前記汚泥水ホース59として、一例として内径15mm、外径20mmのものを用いた。
【0032】
次に前記貯水タンク10について説明すると、このものは、一例として車両Vの荷台Vaに載置されるものであり、
図1、5に示すように角箱状の容器本体11と、この上部開口部を閉鎖する上蓋12とを具えて成る。また容器本体11の上部側面には冷却水Wの注入口14aが設けられ、下部側面には冷却水Wの給水口14bが設けられる。また容器本体11における周壁面と底面には、凹凸状にリブ11aが形成され、強度の向上が図られる。
なお貯水タンク10として比較的コンパクトなものを適用し、本体フレーム2に対し搭載するような構成を採ることもできる。
【0033】
そして容器本体11の内部は、フレキシブル隔壁Fに仕切られることにより、冷却水Wを貯留する冷却水槽14と、回収された汚泥水Lを貯留する汚泥水槽15とに区画される。
前記フレキシブル隔壁Fは袋体17により形成されるものであり、この袋体17の内部が汚泥水槽15とされ、一方、袋体17の外部が冷却水槽14とされている。
前記袋体17は、一例として非透水性の塩化ビニール等の合成樹脂製の角筒形や円筒形の形状をしたものであり、その内側に角枠状の保形フレーム18が水平に複数段に張設されることにより、蛇腹状となるように形成されている。そしてこの袋体17は、貯水タンク10内の上部に懸吊して設けられる。
【0034】
またこの実施例では、前記袋体17のコーナー部の高さ位置が常に同一の状態、すなわり平衡状態に保たれるような機構が採用されるものであり、
図5に示すように滑車19Aとワイヤ19Bとから成る平衡機構19が貯水タンク10に対して設けられる。
前記滑車19Aは貯水タンク10の4つの内周面のコーナー部の上部に一つずつ設けられ、更に底部付近の4つの角部に一つずつ、合計12個が設けられており、これら12個の滑車19Aに対して、ワイヤ19Bが無端状に懸け渡される。
そして袋体17に張設された最下部の保形フレーム18の四つのコーナー部を、垂直状態のワイヤ19Bに対し、同じ高さ位置に取り付ける。この際、垂直状態のワイヤ19Bは一つ置きのものが選択される。
以上のように構成される平衡機構19により、袋体17は、貯水タンク10内において常時水平が保たれた状態が維持されることとなり、傾いた姿勢を取り得ない。
なお平衡機構19としては種々の構成が取り得るものであり、図示は省略するが例えば貯水タンク10の内の四つのコーナー部に支持ロッドを立ち上げ、これに対して昇降自在な摺動スリーブを外嵌めし、この摺動スリーブに保形フレーム18を固定するような形態が採り得る。
【0035】
次に前記ホース内圧検出装置100について説明すると、このものは、コンクリートカッタ1における汚泥水ホース接続部51aからの汚泥水Lの飛散を防ぐための部材である。具体的には
図3に示すように、汚泥水ホース59に組み合される保持本体101と、汚泥水ホース59の内圧上昇を検出する検出スイッチ150とを具えて成るものである。
【0036】
前記保持本体101は
図3、4に示すように、汚泥水ホース59に対し、外掴み状に組み合されるように、クリップ状にピン接続された一対の掴み片110、120を具え、汚泥水ホース59の内圧上昇に伴う膨張変形を受けて、一対の掴み片110、120の掴み寸法の増加変形を検出スイッチ150により検出することができるように構成されるものである。
前記一対の掴み片110、120は、ピン接続部130を挟んで一方の側に操作部111、121を具え、他方の側に掴み部112、122を具えると共に、一方の掴み部122に前記検出スイッチ150が配設される。
なお一対の掴み片110、120は、ピン接続部130に設置されたバネ140によって、掴み部112、122における接合面112a、122aが密接する方向に付勢されている。
【0037】
ここで前記検出スイッチ150について詳しく説明すると、前記一方の掴み片120の掴み部122には切欠部122bが溝状に形成され、ここにスイッチ本体151が埋め込まれるように設けられるものである。この実施例では、検出スイッチ150として一例としてヒンジレバー式のリミットスイッチが採用され、その受圧片152が、接合面122aよりも下方に位置するように配置されている。
一方、掴み片110の掴み部112には、前記検出スイッチ150における受圧片152と当接する作動ピン105が設けられる。この作動ピン105は、その先端部の位置を調節自在とされるものであり、一例として掴み部112に形成された雌ねじ孔112bに対して、雄ねじを適用した作動ピン105を螺合することにより、接合面112aから突出する作動ピン105の先端部の位置を所望の位置とすることが可能となっている。
【0038】
そしてこのような構成が採られることにより、
図4(a)に示すように、掴み部112、122が閉じた状態で、作動ピン105の先端部が受圧片152を押し下げて検出スイッチ150はオンの状態となる。
一方、
図4(b)に示すように、掴み部112、122の開き度合いが所定値を超えたときに、作動ピン105の先端部が受圧片152から離れて検出スイッチ150はオフの状態とされるものである。
なお前記検出スイッチ150におけるスイッチ本体151には、ケーブル102及びコネクタ103が接続され、
図6、7に示すようなリレー161等が具えられた制御回路160に、ホース内圧検出装置100として組み込まれるものである。
【0039】
この実施例では一例として4極のリレー161と、5極のリレー162とを二段で具えた回路が採用されるものであり、このような制御回路160は、検出スイッチ150がオフ状態となったことを検出して、バキュームユニット50への動力の伝達を遮断するものである。また制御回路160は、いったん検出スイッチ150がオフ状態となったことを検出して、バキュームユニット50への動力の伝達を遮断した後は、再度検出スイッチ150がオン状態となったことを検出した場合であっても、バキュームユニット50への動力の伝達を遮断した状態を維持するものとされる。
上記制御回路160の詳細な動作については、後述する舗装路面の切断作業の様子と併せて説明する。
なお制御回路160を、
図8に示すように一段の4極のリレー161を具えたものとして構成することもでき、この場合でも、検出スイッチ150がオフ状態となったことを検出して、バキュームユニット50への動力の伝達を遮断することが可能である。
【0040】
本発明のコンクリートカッタ1並びにホース内圧検出装置100は一例として上述したように構成されるものであって、以下、これらの作動態様を舗装路面の切断作業の様子と併せて説明する。
【0041】
(1)切断作業準備
まずホース内圧検出装置100を、掴み部112、122が汚泥水ホース59を外掴み状態とするように設置するものであり、この状態でホース内圧検出装置100における検出スイッチ150がオンの状態となるように、作動ピン105の先端部の位置を調節する(
図1、
図2(a)、
図3(b)、
図4(a)参照)。この状態の制御回路160の状態を
図6(a)に示す。
【0042】
また被加工面の切断作業に先立ち、貯水タンク10における冷却水槽14に冷却水Wとして用いる水道水等を注水するものであり、冷却水槽14内が冷却水Wにより満たされると、汚泥水槽15はその底部が冷却水Wにより押し上げられ、
図5(b)に示すように蛇腹が折り畳まれて収縮した状態で、冷却水槽14の上方に位置することとなる。
【0043】
(2)切断作業
次いで切断作業が開始されるものであり、作業者は原動機を起動し、手動ハンドル35を操作してコンクリートカッタ1を移動させ、ゲージGを目安にしてカッタブレード7を被加工物Rとしての舗装路面の所望の個所に臨ませる。
原動機を起動するにあたって、
図6(b)に示すように始動スイッチ165がオン状態とされると、リレー161における端子T1に電圧がかかり(以下この状態をハイと呼ぶ)、端子T2と端子T4とが接続される。またリレー162における端子T5もハイとなり、端子T6と端子T8とが接続される。
なお原動機が起動された後、始動スイッチ165はすぐに
図6(c)に示すようにオフ状態とされるが、端子T4と端子T1とが接続されているため、端子T1のハイ状態は維持されることとなる。
【0044】
次いで冷却水ポンプ41を駆動して、冷却水槽14内の冷却水Wを噴射ノズル40からカッタブレード7に対して噴射させる。
次いで
図6(d)に示すようにバキュームスイッチ50Sをオンの状態にすると、バキュームクラッチCへの給電経路が確立され、バキュームクラッチCが接続状態(ON)となり、バキュームユニット50に動力が伝達され、吐出ポンプ51及び吸引ブロワ52が起動される。
次いで回転するカッタブレード7を被加工物Rに作用させて切断を開始すると、被加工物Rの切削粉と、カッタブレード7を冷却した冷却水Wとが混ざって汚泥水Lが生成される。
そしてこの汚泥水Lは、吸引ブロワ52を具えた汚泥水回収機構5により回収され、貯水タンク10の汚泥水槽15内に収容される。
【0045】
このような作業の進行に伴い、
図5(a)に示すように冷却水槽14内の冷却水Wは減少する一方、汚泥水Lが回収された汚泥水槽15の容積は大きくなる。このため、貯水タンク10内の液面水位はほとんど変動せず、冷却水Wは、常にほぼ一定の高い水圧で給水口14bから排出されることとなる。この際、平衡機構19により、汚泥水槽15の底部は常に水平に保たれる。
【0046】
ここで前記汚泥水回収機構5の作動状態について具体的に説明すると、原動機の動力は、バキュームクラッチC及び減速機等を介して吐出ポンプ51に伝達されると共に、吸引ブロワ52にも伝達される。
そして吸引ブロワ52の吸引により、排気管路56からバキュームタンク53を介して吸引管路55へと続く経路内が負圧となり、ブレードカバー6内に位置する汚泥水L、空気等は吸引口60bから吸引されてバキュームタンク53内に至る。
更にこれらはバキュームタンク53内において、エアAと汚泥水Lと切削片等の固形分Sとに分離され、このうちエアAは排気管路56を経由して吸引ブロワ52に送られ、排気口52aから外部に排気される。
また固形分Sは透水構造の集塵カゴ54により回収されるものであり、所定量以上溜まった時点で適宜バキュームタンク53の上蓋58を開け、ここから集塵カゴ54を取り出して廃棄される。
一方、固形分Sが除去された汚泥水Lは、排液管路57を通じて吐出ポンプ51に送られ、更に汚泥水ホース59を通じて貯水タンク10内の汚泥水槽15に送られる。
【0047】
(3)ホース内圧検出装置の動作
そして汚泥水ホース59が折り曲げ状態となる等してその内圧が高まると、汚泥水ホース59は膨張変形することとなる。この膨張変形に伴ってホース内圧検出装置100の掴み部112、122の掴み寸法が所定値を超えると、作動ピン105の先端部が受圧片152から離れて検出スイッチ150はオフ状態となる(
図4(b)参照)。
ここで検出スイッチ150すなわちホース内圧検出装置100がオフ状態となったときの制御回路160の動作について説明するものであり、ホース内圧検出装置100がオフ状態となった瞬間の状態を
図7(a)に示し、次の瞬間の状態を
図7(b)に示す。
まず
図7(a)に示すようにホース内圧検出装置100がオフ状態となると、リレー162における端子T5に電圧がかからなくなり(以下この状態をローと呼ぶ)、端子T8に接続されていた端子T6は、
図7(b)に示すように端子T9に接続されることとなる。このためバキュームクラッチCへの給電経路が切断されてバキュームクラッチCが非接続状態(OFF)となり、バキュームユニット50への動力の伝達が遮断され、吐出ポンプ51及び吸引ブロワ52が停止される。一方、警告灯163への給電経路が確立され、警告灯163が点灯する。
このため汚泥水ホース59の内圧上昇は抑えられ、汚泥水ホース接続部51aから汚泥水ホース59が抜けてしまうのを確実に防止し、周辺への汚泥水Lの飛散を確実に防止することが可能となる。
【0048】
また
図7(a)に示す状態において、リレー161における端子T1がローとなるため、
図7(b)に示すように端子T2と端子T4との接続が解除される。この結果、汚泥水ホース59が膨張と収縮を繰り返してしまうような状況において、ホース内圧検出装置100がオン・オフを繰り返してしまうような状態下でも、端子T2と端子T4との接続及び端子T6と端子T8との接続が再度確立されることはなく、バキュームクラッチCは接続状態(ON)とされることはない。
このため、原動機が高速回転した状態で不用意にバキュームクラッチCが接続状態(ON)とされてバキュームクラッチCが破損してしまうような事態を確実に回避することができる。
【0049】
なおこの実施例では、前記検出スイッチ150は、作動ピン105の先端部が僅かに1.5mm移動した時点でオンの状態からオフの状態とされるものであり、極めて高感度で汚泥水ホース59の膨張を検出することができるものである。
【0050】
(4)リセット動作
そして警告灯163の点灯により異常を認知した作業者は、原動機を停止した後、汚泥水ホース59の折り曲げ状態や詰まりを解消する等必要な措置を施した後、コンクリートカッタ1(原動機)を再起動して切断作業が再開される。
【0051】
ここで再起動時の制御回路160の動作について説明する。
まず作業者は、
図7(b)に示す状態の制御回路160において、バキュームスイッチ50Sをオフの状態にして警告灯163を消灯するとともに、ホース内圧検出装置100をオンの状態とするものであり、これにより制御回路160は
図6(a)に示す状態となる。
次いで
図6(b)に示すように、始動スイッチ165がオン状態とされると、リレー161における端子T1がハイとなり、端子T2と端子T4とが接続される。またリレー162における端子T5もハイとなり、端子T6と端子T8とが接続される。
そして原動機が起動された後、始動スイッチ165は
図6(c)に示すようにすぐにオフ状態とされるが、端子T4と端子T1とが接続されているため、端子T1のハイ状態は維持されることとなる。
次いで
図6(d)に示すようにバキュームスイッチ50Sをオンの状態にして、バキュームクラッチCへの給電経路を確立し、バキュームクラッチCを接続状態(ON)としてバキュームユニット50へ動力を伝達し、吐出ポンプ51及び吸引ブロワ52を起動したのち、切断作業が再開される。
【0052】
〔他の実施例〕
本発明は上述した実施例を基本となる実施例とするものであるが、本発明の技術的思想の範囲内で以下に示すような実施例を採ることもできる。
まず、基本となる実施例では、検出スイッチ150としてヒンジレバー式のリミットスイッチが採用されたが、
図2(b)に示すように、汚泥水ホース59の内圧を直接検出する圧力計153を検出スイッチ150に代えて採用してもよい。
【0053】
また基本となる実施例では、ホース内圧検出装置100の掴み部112、122の掴み寸法が所定値を超えるまで増加変形したときに、バキュームクラッチCをオフ状態としてバキュームユニット50への動力の伝達を遮断し、吐出ポンプ51及び吸引ブロワ52を停止するようにしたが、原動機を停止するようにしてもよい。
また警告灯163の点灯に代えて、あるいは警告灯163の点灯に加え、アラームを鳴らすようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 コンクリートカッタ
2 本体フレーム
20 規制板
21 係合フック
22 ハウジング
3 走行機構
30 走行駆動輪
31 補助輪
32 付勢アーム
33 操作レバー
34 押し棒
35 手動ハンドル
4 冷却機構
40 噴射ノズル
41 冷却水ポンプ
42 冷却水供給管路
43 冷却水供給管路
5 汚泥水回収機構
50S バキュームスイッチ
50 バキュームユニット
51 吐出ポンプ
51a 汚泥水ホース接続部
51b ホースバンド
52 吸引ブロワ
52a 排気口
53 バキュームタンク
54 集塵カゴ
55 吸引管路
56 排気管路
57 排液管路
58 上蓋
59 汚泥水ホース
6 ブレードカバー
60 下部フレーム
60a 接続口
60b 吸引口
61 ブラシ
62 把手
63 係合ロッド
63a 回動軸部
64 カバー本体
7 カッタブレード
70 シャフトホルダ
71 ブレードシャフト
10 貯水タンク
11 容器本体
11a リブ
12 上蓋
14 冷却水槽
14a 注入口
14b 給水口
15 汚泥水槽
17 袋体
18 保形フレーム
19 平衡機構
19A 滑車
19B ワイヤ
100 ホース内圧検出装置
101 保持本体
102 ケーブル
103 コネクタ
105 作動ピン
110 掴み片
111 操作部
112 掴み部
112a 接合面
112b 雌ねじ孔
120 掴み片
121 操作部
122 掴み部
122a 接合面
122b 切欠部
130 ピン接続部
140 バネ
150 検出スイッチ
151 スイッチ本体
152 受圧片
153 圧力計
160 制御回路
161 リレー
162 リレー
163 警告灯
165 始動スイッチ
A エア
C バキュームクラッチ
F フレキシブル隔壁
G ゲージ
L 汚泥水
R 被加工物
S 固形分
T1 端子
T2 端子
T3 端子
T4 端子
T5 端子
T6 端子
T7 端子
T8 端子
T9 端子
V 車両
Va 荷台
W 冷却水