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特許7203391イリノテカンを含む抗がん剤療法の感受性判定マーカー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】イリノテカンを含む抗がん剤療法の感受性判定マーカー
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20230105BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230105BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20230105BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20230105BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20230105BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230105BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230105BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
G01N33/68
A61P35/00
A61K31/4745
A61K31/513
A61K31/519
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 M
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020510670
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2019010963
(87)【国際公開番号】W WO2019188446
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2018064446
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018185152
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(73)【特許権者】
【識別番号】000006884
【氏名又は名称】株式会社ヤクルト本社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 伸二
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 信成
(72)【発明者】
【氏名】谷川原 祐介
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/096189(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/031816(WO,A1)
【文献】硲彰一ほか,新しい遺伝子多型解析による大腸癌化学療法(FOLFIRI)の効果と毒性予測システムの開発,日本消化器外科学会雑誌,2009年07月01日,Vol.42,No.7,PP.955,PD-2-8
【文献】HARA Masayasu et al.,High serum levels of interleukin-6 in patients with advanced or metastatic colorectal cancer: the ef,Surgery Today,2017年04月,Vol.47,No.4,PP.483-489
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cysteine-glutathione disulphide(CSSG)からなる、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカー。
【請求項2】
抗がん剤が、さらに血管新生阻害薬を含む請求項1記載の予後予測マーカー。
【請求項3】
血管新生阻害薬が、ベバシズマブである請求項2記載の予後予測マーカー。
【請求項4】
がん患者由来の生体試料中のCSSGの量を測定する工程を含む、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測のための方法。
【請求項5】
抗がん剤が、さらに血管新生阻害薬を含む請求項4記載の予後予測のための方法。
【請求項6】
血管新生阻害薬が、ベバシズマブである請求項5記載の予後予測のための方法。
【請求項7】
がん患者由来の生体試料中のCSSGの量を測定するためのプロトコールを含むことを特徴とする請求項4~6のいずれか1項に記載の予後予測のための方法を実施するためのキット。
【請求項8】
少なくとも1サイクルのイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤による治療を受けたがん患者由来の生体試料中のCSSGの量を測定する工程を含む、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測のための方法。
【請求項9】
抗がん剤が、さらに血管新生阻害薬を含む請求項記載の予後予測のための方法。
【請求項10】
血管新生阻害薬が、ベバシズマブである請求項記載の予後予測のための方法。
【請求項11】
少なくとも1サイクルのイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤による治療を受けたがん患者由来の生体試料中のCSSGの量を測定するためのプロトコールを含むことを特徴とする請求項8~10のいずれか1項に記載の予後予測のための方法を実施するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象となる患者のがんが、使用しようとする抗がん剤に治療反応性を有するか否かを判定するために用いる抗がん剤感受性判定マーカー及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
抗がん剤には、アルキル化剤、白金製剤、代謝拮抗剤、抗がん性抗生物質、抗がん性植物アルカロイド等の種類がある。そしてこれらの抗がん剤には、がんの種類によって効果を示す場合と効果を示さない場合がある。しかし、有効であると認められている種類のがんであっても、個々の患者によって効果を示す場合と効果を示さない場合があることが知られている。このような個々の患者のがんに対して抗がん剤が効果を示すか否かを抗がん剤感受性という。
【0003】
進行再発大腸癌の治療は、1990年代前半まで行われていたフルオロウラシル(5-FU)/レボホリナート(LV)療法での生存率は10~12ヶ月であったのに対し、オキサリプラチン(L-OHP)及び塩酸イリノテカン(CPT-11)の登場により、5-FU/LV療法とL-OHPの併用療法であるFOLFOX療法及び5-FU/LV療法とCPT-11の併用療法であるFOLFIRI療法を適切に使うことにより、生存期間は21.5ヶ月とほぼ2倍に到達した。また、FOLFOX療法及びFOLFIRI療法は、いずれを先に使っても両方を使うことでその生存期間は変わらないことが知られている(非特許文献1)。なお、CPT-11は体内でCarboxyl esteraseにより活性化され、CPT-11に比べおよそ100~数千倍強い抗腫瘍活性を有するSN-38へと変換されるため、SN-38はCPT-11の活性代謝物であると言える。
【0004】
しかし、それでもなお進行再発大腸癌に対するFOLFOX療法あるいはFOLFIRI療法の奏効率は化学療法未治療の場合でいずれも55%程度であり、二次治療の奏効率は6~21%である。換言すれば一次治療では治療を受けた患者の半数は効果が得られておらず、また、二次治療では5~10人に一人しか効果が得られないことを意味する。また、CPT-11の使用により好中球減少症のほか重篤な下痢を呈し、時に致死的な転帰をたどる。したがって、治療開始前に効果の期待できる患者と、効果の期待できない患者を予測し、治療反応性を早期に診断できるバイオマーカーにより、有効性と安全性の高い化学療法が実現する。
【0005】
さらに、一般にがん化学療法の治療スケジュールは長期に渡るため、治療継続中における抗がん剤に対する感受性の経時的モニターは治療継続の可否の判定を可能とし、患者負担や副作用軽減につながるのみならず医療経済の観点からも有用であると考えられる。個々の患者における治療反応性を予測、そして早期に診断して適切な薬剤や治療レジメンを選択する「個別化治療」実現のためには、CPT-11等の抗がん剤の効果予測もしくは治療応答性の早期診断を可能とするバイオマーカーの確立は急務である。
【0006】
かかる観点から本発明者らは、薬剤感受性の異なる複数のヒトがん細胞株あるいは当該細胞株を移植した担癌マウスに薬剤を曝露し、薬剤曝露後の細胞内代謝変動についてキャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計(CE-TOF MS)を用いて網羅的に解析し、薬剤感受性と比較解析することにより、抗がん剤感受性判定マーカーの探索を行い、いくつかのマーカーを報告した(特許文献1~4)。しかしながら、これらのマーカーは、いまだ実用化には至っていない。また、近年では、ベバシズマブなどのVEGF阻害薬や、セツキシマブなどのEGFR受容体阻害薬などの抗体薬が大腸がん治療に導入されたが、これらは単独でその治療に使われることはきわめて稀であり、FOLFOX療法やFOLFIRI療法との併用が原則であることから、FOLFIRI療法の効果予測もしくは治療応答性の早期診断を可能とするバイオマーカーの重要性は益々増大している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2009/096189号
【文献】国際公開第2011/052750号
【文献】国際公開第2012/127984号
【文献】国際公開第2013/125675号
【非特許文献】
【0008】
【文献】Tournigand C. et al., FOLFIRI Followed by FOLFOX6 or the Reverse Sequence in Advanced Colorectal Cancer: A Randomized GERCOR Study, JCO 2004 22(2): 229-37.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、個々の患者の治療反応性を判別できる抗がん剤感受性判定マーカー及びそれを利用する新たながん治療手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで本発明者らは、FOLFOX療法不応・不耐の結腸・直腸がん患者の血液検体を対象とし、ベバシズマブ併用FOLFIRI療法開始前、1サイクル実施後、又は2サイクル実施後の血中代謝物をCE-Q-TOF MS及びCE-TOF MSを用いて網羅的に測定し、得られた代謝物の濃度を説明変数とし、臨床効果を目的変数としたロジステック解析を行った。その結果、ベバシズマブ併用mFOLFIRI療法に対し腫瘍の明らかな縮小を示した患者(partial response:PRを示した患者)と腫瘍の明らかな縮小を示さなかった患者(stable disease:SDもしくはprogressive disease:PDを示した患者)との間、又はベバシズマブ併用mFOLFIRI療法に対し効果を示さず悪化した患者(PDを示した患者)と、腫瘍の明らかな増大が見られなかった患者(PRもしくはSDを示した患者)との間で、特定の物質の濃度が相違することを見出した。また、本発明者らは、当該がん患者の治療開始前の血中代謝物と全生存期間、1サイクル実施後の血中代謝物と残余の全生存期間、又は2サイクル実施後の血中代謝物と残余の全生存期間について、比例ハザードモデル解析を行った。その結果、特定の物質の血中濃度が高いほど生存期間が長いこと、また、別の特定の物質の血中濃度が高いほど生存期間が短いことを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔51〕の発明を提供するものである。
〔1〕5-Aminoimidazole-4-carboxamide ribotide(5A4CR)、Alanine(ALA)、Aspartic acid(ASP)、Cysteine(CYS)、Cysteine-glutathione disulphide(CSSG)、Glycerol-3-phosphate(GLC3P)、Histidine(HIS)、Isoleucine(ILE)、Leucine(LEU)、Lysine(LYS)、Methionine sulfoxide(METSF)、N6,N6,N6-Trimethyllysine(N6TLY)、N6-Acetyllysine(N6ALY)、Octanoic aci(OCTA)、Serine(SER)、Taurocholic acid(TUCA)、Threonine(THR)、Tryptophan(TRP)、Tyrosine(TYR)及びValine(VAL)から選ばれる1以上の分子からなる、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカー。
〔2〕抗がん剤が、さらに血管新生阻害薬を含む〔1〕記載の抗がん剤感受性判定マーカー。
〔3〕血管新生阻害薬が、ベバシズマブである〔2〕記載の抗がん剤感受性判定マーカー。
〔4〕がん患者由来の生体試料中の5A4CR、ALA、ASP、CYS、CSSG、GLC3P、HIS、ILE、LEU、LYS、METSF、N6TLY、N6ALY、OCTA、SER、TUCA、THR、TRP、TYR及びVALから選ばれる1以上の分子の量を測定する工程を含む、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定方法。
〔5〕さらに、測定結果を対照レベルと比較することにより、当該がん患者の抗がん剤に対する感受性を判定する工程を含む〔4〕記載の判定方法。
〔6〕ALA、CYS、CSSG、HIS、ILE、LEU、LYS、METSF、N6TLY、SER、THR、TRP、TYR及びVALから選ばれる1以上の分子の量を測定するものであり、さらに、測定結果をPRのカットオフ値と比較することにより、当該がん患者が抗がん剤治療によりPRとなるか否かを判定する工程を含む〔4〕記載の判定方法であって、該カットオフ値がALAの場合に9.957≦であり、CYSの場合に2.444×10-1≦であり、CSSGの場合に1.430×10-2≦であり、HISの場合に2.2409≦であり、ILEの場合に2.997≦であり、LEUの場合に7.437≦であり、LYSの場合に4.945≦であり、METSFの場合に6.658×10-2≦であり、N6TLYの場合に8.401×10-2≦であり、SERの場合に2.200≦であり、THRの場合に2.753≦であり、TRPの場合に2.165≦であり、TYRの場合に2.084≦であり、VALの場合に8.317≦である判定方法。
〔7〕5A4CR、ALA、ASP、CSSG、GLC3P、HIS、ILE、LEU、N6TLY、N6ALY、OCTA、TUCA及びTHRから選ばれる1以上の分子の量を測定するものであり、さらに、測定結果をPDのカットオフ値と比較することにより、当該がん患者が抗がん剤治療によりPDとなるか否かを判定する工程を含む〔4〕記載の判定方法であって、該カットオフ値が5A4CRの場合に1.421×10-2≦であり、ALAの場合に<6.494であり、ASPの場合に0.1433≦であり、CSSGの場合に<8.630×10-3であり、GLC3Pの場合に<6.009×10-3であり、HISの場合に<2.366であり、ILEの場合に<2.748であり、LEUの場合に<6.413であり、N6TLYの場合に<8.030×10-2であり、N6ALYの場合に2.915×10-2≦であり、OCTAの場合に<6.767×10-2であり、TUCAの場合に2.380×10-3≦であり、THRの場合に<2.137である判定方法。
〔8〕さらに、次式(1)により、PRとなる確率(p)を算出し、当該がん患者が抗がん剤治療によりPRとなるか否かを判定する工程を含む〔4〕記載の判定方法。
【数1】
(式中、ALAは、ALAの測定結果がカットオフ値以上であった場合に2.5043を、カットオフ値未満であった場合に0を示し、CSSGは、CSSGの測定結果がカットオフ値以上であった場合に2.4626を、カットオフ値未満であった場合に0を示し、該カットオフ値は、ALAの場合に9.957であり、CSSGの場合に1.430×10-2である。)
〔9〕さらに、次式(2)により、PDとなる確率(p)を算出し、当該がん患者が抗がん剤治療によりPDとなるか否かを判定する工程を含む〔4〕記載の判定方法。
【数2】
(式中、ASPは、ASPの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-1.0820を、カットオフ値未満であった場合に1.0820を示し、HISは、HISの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.7717を、カットオフ値未満であった場合に-1.7717を示し、N6ALYは、N6ALYの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-1.5499を、カットオフ値未満であった場合に1.5499を示し、TUCAは、TUCAの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-0.7905を、カットオフ値未満であった場合に0.7905を示し、該カットオフ値は、ASPの場合に0.1433であり、HISの場合に2.366であり、N6ALYの場合に2.915×10-2であり、TUCAの場合に2.380×10-3である。)
〔10〕生体試料が、抗がん剤を投与されたがん患者由来の生体試料である〔4〕~〔9〕のいずれかに記載の判定方法。
〔11〕抗がん剤が、さらに血管新生阻害薬を含む〔4〕~〔10〕のいずれかに記載の判定方法。
〔12〕血管新生阻害薬が、ベバシズマブである〔11〕記載の判定方法。
〔13〕がん患者由来の生体試料中のCSSGの量を測定する工程を含む、当該がん患者の腫瘍径の和の判定方法。
〔14〕3-Indoxylsulfuric acid(3IND)、ALA、ASP、Citrulline(CITR)、Creatine(CREAT)、CSSG、gamma-Aminobutyric acid(GABA)、Guanidoacetic acid(GUAA)、HIS、Hydroxyproline(HYPRO)、METSF、N6TLY、N8-Acetylspermidine(N8ASR)及びSERから選ばれる1以上の分子からなる、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカー。
〔15〕抗がん剤が、さらに血管新生阻害薬を含む〔14〕記載の予後予測マーカー。
〔16〕血管新生阻害薬が、ベバシズマブである〔15〕記載の予後予測マーカー。
〔17〕がん患者由来の生体試料中の3IND、ALA、ASP、CITR、CREAT、CSSG、GABA、GUAA、HIS、HYPRO、METSF、N6TLY、N8ASR及びSERから選ばれる1以上の分子の量を測定する工程を含む、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測方法。
〔18〕抗がん剤が、さらに血管新生阻害薬を含む〔17〕記載の予後予測方法。
〔19〕血管新生阻害薬が、ベバシズマブである〔18〕記載の予後予測方法。
〔20〕がん患者由来の生体試料中の5A4CR、ALA、ASP、CYS、CSSG、GLC3P、HIS、ILE、LEU、LYS、METSF、N6TLY、N6ALY、OCTA、SER、TUCA、THR、TRP、TYR及びVALから選ばれる1以上の分子の量を測定するためのプロトコールを含むことを特徴とする〔4〕~〔13〕のいずれかに記載の判定方法を実施するためのキット。
〔21〕がん患者由来の生体試料中の3IND、ALA、ASP、CITR、CREAT、CSSG、GABA、GUAA、HIS、HYPRO、METSF、N6TLY、N8ASR及びSERから選ばれる1以上の分子の量を測定するためのプロトコールを含むことを特徴とする〔17〕~〔19〕のいずれかに記載の予後予測方法を実施するためのキット。
〔22〕イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の存在下、がん細胞株又は担癌動物由来の生体試料中の5A4CR、ALA、ASP、CYS、CSSG、GLC3P、HIS、ILE、LEU、LYS、METSF、N6TLY、N6ALY、OCTA、SER、TUCA、THR、TRP、TYR、VAL、3IND、CITR、CREAT、GABA、GUAA、HYPRO及びN8ASRから選ばれる1以上の分子の発現変動を指標とする抗がん剤感受性亢進剤のスクリーニング方法。
〔23〕抗がん剤が、さらに血管新生阻害薬を含む〔22〕記載のスクリーニング方法。
〔24〕血管新生阻害薬が、ベバシズマブである〔23〕記載のスクリーニング方法。
〔25〕〔22〕~〔24〕のいずれかに記載の方法により得られたイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤に対する感受性亢進剤。
〔26〕〔25〕記載の感受性亢進剤とイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤とを組み合わせてなるがん治療用組成物。
〔27〕抗がん剤が、さらに血管新生阻害薬を含む〔26〕記載のがん治療用組成物。
〔28〕血管新生阻害薬が、ベバシズマブである〔27〕記載のがん治療用組成物。
【0012】
〔29〕3IND、4-Oxavaleric acid(4OVAL)、5A4CR、ALA、Benzoic acid(BENZA)、CREAT、CSSG、Decanoic acid(DECNA)、gamma-Butyrobetaine(GABB)、GLC3P、Hypotaurine(HYPTA)、LYS、METSF、N8ASR、Quinic acid(QUINA)、Sarcosine(SARCO)、Trimethylamine N-oxide(TMNO)及びVALから選ばれる1以上の分子からなる、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカー。
〔30〕抗がん剤が、さらに血管新生阻害薬を含む〔29〕記載の抗がん剤感受性判定マーカー。
〔31〕血管新生阻害薬が、ベバシズマブである〔30〕記載の抗がん剤感受性判定マーカー。
〔32〕少なくとも1サイクルのイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤による治療を受けたがん患者由来の生体試料中の3IND、4OVAL、5A4CR、ALA、BENZA、CREAT、CSSG、DECNA、GABB、GLC3P、HYPTA、LYS、METSF、N8ASR、QUINA、SARCO、TMNO及びVALから選ばれる1以上の分子の量を測定する工程を含む、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定方法。
〔33〕さらに、測定結果を対照レベルと比較することにより、当該がん患者の抗がん剤に対する感受性を判定する工程を含む〔32〕記載の判定方法。
〔34〕当該がん患者が1サイクルの抗がん剤治療を受けた患者であり、CREAT、CSSG、METSF、QUINA及びVALから選ばれる1以上の分子の量を測定するものであり、さらに、測定結果をPRのカットオフ値と比較することにより、当該がん患者が抗がん剤治療によりPRとなるか否かを判定する工程を含む〔32〕記載の判定方法であって、該カットオフ値がCREATの場合に1.2163≦であり、CSSGの場合に1.965×10-2≦であり、METSFの場合に5.060×10-2≦であり、QUINAの場合に<1.150×10-2であり、VALの場合に7.6718≦である判定方法。
〔35〕当該がん患者が1サイクルの抗がん剤治療を受けた患者であり、5A4CR、CSSG、DECNA、GLC3P、HYPTA及びN8ASRから選ばれる1以上の分子の量を測定するものであり、さらに、測定結果をPDのカットオフ値と比較することにより、当該がん患者が抗がん剤治療によりPDとなるか否かを判定する工程を含む〔32〕記載の判定方法であって、該カットオフ値が5A4CRの場合に1.413×10-2≦であり、CSSGの場合に<1.030×10-2であり、DECNAの場合に<1.080×10-1であり、GLC3Pの場合に<4.586×10-1であり、HYPTAの場合に<1.240×10-2であり、N8ASRの場合に1.122×10-2≦である判定方法。
〔36〕当該がん患者が2サイクルの抗がん剤治療を受けた患者であり、4OVAL、ALA、BENZA、CREAT、CSSG、LYS及びSARCOから選ばれる1以上の分子の量を測定するものであり、さらに、測定結果をPRのカットオフ値と比較することにより、当該がん患者が抗がん剤治療によりPRとなるか否かを判定する工程を含む〔32〕記載の判定方法であって、該カットオフ値が4OVALの場合に2.949×10-2≦であり、ALAの場合に7.9605≦であり、BENZAの場合に1.367×10-1≦であり、CREATの場合に6.609×10-1≦であり、CSSGの場合に1.233×10-2≦であり、LYSの場合に4.9765≦であり、SARCOの場合に4.548×10-2≦である判定方法。
〔37〕当該がん患者が2サイクルの抗がん剤治療を受けた患者であり、3IND、4OVAL、5A4CR、ALA、CSSG、GABB及びTMNOから選ばれる1以上の分子の量を測定するものであり、さらに、測定結果をPDのカットオフ値と比較することにより、当該がん患者が抗がん剤治療によりPDとなるか否かを判定する工程を含む〔32〕記載の判定方法であって、該カットオフ値が3INDの場合に<6.129×10-2であり、4OVALの場合に<1.346×10-2であり、5A4CRの場合に2.052×10-2≦であり、ALAの場合に<7.3693であり、CSSGの場合に<1.273×10-2であり、GABBの場合に5.117×10-2≦であり、TMNOの場合に<2.689×10-1である判定方法。
〔38〕当該がん患者が1サイクルの抗がん剤治療を受けた患者であり、さらに、次式(4)により、PRとなる確率(p)を算出し、当該がん患者が抗がん剤治療によりPRとなるか否かを判定する工程を含む〔32〕記載の判定方法。
【数3】
(式中、CREATは、CREATの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.2906を、カットオフ値未満であった場合に-1.2906を示し、CSSGは、CSSGの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.7703を、カットオフ値未満であった場合に-1.7703を示し、QUINAは、QUINAの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-8.6990を、カットオフ値未満であった場合に8.6990を示し、該カットオフ値は、CREATの場合に1.2163であり、CSSGの場合に1.965×10-2であり、QUINAの場合に1.150×10-2である。)
〔39〕当該がん患者が1サイクルの抗がん剤治療を受けた患者であり、さらに、次式(5)により、PDとなる確率(p)を算出し、当該がん患者が抗がん剤治療によりPDとなるか否かを判定する工程を含む〔32〕記載の判定方法。
【数4】
(式中、5A4CRは、5A4CRの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-0.9300を、カットオフ値未満であった場合に0.9300を示し、CSSGは、CSSGの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.2325を、カットオフ値未満であった場合に-1.2325を示し、DECNAは、DECNAの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.3052を、カットオフ値未満であった場合に-1.3052を示し、HYPTAは、HYPTAの測定結果がカットオフ値以上であった場合に0.8020を、カットオフ値未満であった場合に-0.8020を示し、N8ASRは、N8ASRの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-1.4363を、カットオフ値未満であった場合に1.4363を示し、該カットオフ値は、5A4CRの場合に1.413×10-2であり、CSSGの場合に1.030×10-2であり、DECNAの場合に1.080×10-1であり、HYPTAの場合に1.240×10-2であり、N8ASRの場合に1.122×10-2である。)
〔40〕当該がん患者が2サイクルの抗がん剤治療を受けた患者であり、さらに、次式(6)により、PRとなる確率(p)を算出し、当該がん患者が抗がん剤治療によりPRとなるか否かを判定する工程を含む〔32〕記載の判定方法。
【数5】
(式中、4OVALは、4OVALの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.2359を、カットオフ値未満であった場合に-1.2359を示し、BENZAは、BENZAの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.1105を、カットオフ値未満であった場合に-1.1105を示し、LYSは、LYSの測定結果がカットオフ値以上であった場合に0.8767を、カットオフ値未満であった場合に-0.8767を示し、該カットオフ値は、4OVALの場合に2.949×10-2であり、BENZAの場合に1.367×10-1であり、LYSの場合に4.9765である。)
〔41〕当該がん患者が2サイクルの抗がん剤治療を受けた患者であり、さらに、次式(7)により、PDとなる確率(p)を算出し、当該がん患者が抗がん剤治療によりPDとなるか否かを判定する工程を含む〔32〕記載の判定方法。
【数6】
(式中、3INDは、3INDの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.4853を、カットオフ値未満であった場合に-1.4853を示し、5A4CRは、5A4CRの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-1.0356を、カットオフ値未満であった場合に1.0356を示し、CSSGは、CSSGの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.1004を、カットオフ値未満であった場合に-1.1004を示し、GABBは、GABBの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-1.2343を、カットオフ値未満であった場合に1.2343を示し、TMNOは、TMNOの測定結果がカットオフ値以上であった場合に0.9992を、カットオフ値未満であった場合に-0.9992を示し、該カットオフ値は、3INDの場合に6.129×10-2であり、5A4CRの場合に2.052×10-2であり、CSSGの場合に1.273×10-2であり、GABBの場合に5.117×10-2であり、TMNOの場合に2.689×10-1である。)
〔42〕抗がん剤が、さらに血管新生阻害薬を含む〔32〕~〔41〕のいずれかに記載の判定方法。
〔43〕血管新生阻害薬が、ベバシズマブである〔42〕記載の判定方法。
〔44〕1-Methylnicotinamide(1MNA)、2-Hydroxy-4-methylpentanoic acid(2H4MP)、3IND、3-Methylhistidine(3MHIS)、5A4CR、ASP、Cyclohexanecarboxylic acid(CHCA)、CSSG、GABA、Hippuric acid(HIPA)、Hypoxanthine(HYPX)、Mucic acid(MUCA)、N8ASR及びTaurine(TAUR)から選ばれる1以上の分子からなる、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカー。
〔45〕抗がん剤が、さらに血管新生阻害薬を含む〔44〕記載の予後予測マーカー。
〔46〕血管新生阻害薬が、ベバシズマブである〔45〕記載の予後予測マーカー。
〔47〕少なくとも1サイクルのイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤による治療を受けたがん患者由来の生体試料中の1MNA、2H4MP、3IND、3MHIS、5A4CR、ASP、CHCA、CSSG、GABA、HIPA、HYPX、MUCA、N8ASR及びTAURから選ばれる1以上の分子の量を測定する工程を含む、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測方法。
〔48〕抗がん剤が、さらに血管新生阻害薬を含む〔47〕記載の予後予測方法。
〔49〕血管新生阻害薬が、ベバシズマブである〔48〕記載の予後予測方法。
〔50〕少なくとも1サイクルのイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤による治療を受けたがん患者由来の生体試料中の3IND、4OVAL、5A4CR、ALA、BENZA、CREAT、CSSG、DECNA、GABB、GLC3P、HYPTA、LYS、METSF、N8ASR、QUINA、SARCO、TMNO及びVALから選ばれる1以上の分子の量を測定するためのプロトコールを含むことを特徴とする〔32〕~〔43〕のいずれかに記載の判定方法を実施するためのキット。
〔51〕少なくとも1サイクルのイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤による治療を受けたがん患者由来の生体試料中の1MNA、2H4MP、3IND、3MHIS、5A4CR、ASP、CHCA、CSSG、GABA、HIPA、HYPX、MUCA、N8ASR及びTAURから選ばれる1以上の分子の量を測定するためのプロトコールを含むことを特徴とする〔47〕~〔49〕のいずれかに記載の予後予測方法を実施するためのキット。
【発明の効果】
【0013】
本発明の抗がん剤感受性判定マーカーを用いれば、個々の患者の抗がん剤感受性又は予後を治療開始前もしくは治療開始後早期に適確に判定できる結果、治療効果の高い抗がん剤の選択が可能となる。さらに効果が得られない抗がん剤の使用を回避できるため不必要な副作用を回避できる。また、抗がん剤を用いた治療スケジュールは長期に及ぶため、治療継続中においても治療サイクルごとに抗がん剤感受性を判定することにより、そのがんに対する抗がん剤の感受性の経時的評価が可能となり、治療を継続すべきか否かの判定ができる。その結果、治療効果の得られない抗がん剤の継続投与に伴うがんの進行、副作用の増大を防止でき、患者の負担軽減、医療費の削減にもつながる。
さらに、また、このマーカーを用いれば、抗がん剤感受性を亢進させる薬剤がスクリーニングでき、その対象となった抗がん剤と抗がん剤感受性亢進剤とを併用すれば、がん治療効果が飛躍的に向上する。本発明の抗がん剤感受性判定マーカーの測定試薬は、抗がん剤感受性判定試薬として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ベバシズマブ併用FOLFIRI療法に対する治療反応性の異なるPR群とSD又はPD群で治療開始前の濃度に差が見られた物質を示す図である。
図2】ベバシズマブ併用FOLFIRI療法に対する治療反応性の異なるPR又はSD群とPD群で治療開始前の濃度に差が見られた物質を示す図である。
図3】抗がん剤感受性判定モデルのうち、(a)式(1)のPR予測モデル及び(b)式(2)のPD予測モデルのROC曲線を示す図である。
図4】(a)式(1)(PR予測モデル)により各患者をPR群とSD又はPD群に分けた上で、カプラン・マイアー曲線を描いた図である。(b)式(2)(PD予測モデル)により各患者をPR又はSD群とPD群に分けた上で、カプラン・マイアー曲線を描いた図である。
図5】ベバシズマブ併用FOLFIRI療法の治療開始前の代謝物濃度とOSの関係をCOXの比例ハザードモデルで解析した際に有意差を示した代謝物のハザード比とその95%信頼区間の図である。
図6】CSSG、HIS又はN6TLYについて、カットオフ値を用いて、各患者を群別し、OSを比較した図である。
図7】ベバシズマブ併用FOLFIRI療法の治療開始前の腫瘍径の和とCSSGの濃度との相関関係を示す図である。
図8】ベバシズマブ併用FOLFIRI療法に対する治療反応性の異なるPR群とSD又はPD群で治療1サイクル実施後の濃度に差が見られた物質を示す図である。
図9】ベバシズマブ併用FOLFIRI療法に対する治療反応性の異なるPR又はSD群とPD群で治療1サイクル実施後の濃度に差が見られた物質を示す図である。
図10】ベバシズマブ併用FOLFIRI療法に対する治療反応性の異なるPR群とSD又はPD群で治療2サイクル実施後の濃度に差が見られた物質を示す図である。
図11】ベバシズマブ併用FOLFIRI療法に対する治療反応性の異なるPR又はSD群とPD群で治療2サイクル実施後の濃度に差が見られた物質を示す図である。
図12】抗がん剤感受性判定モデルのうち、(a)式(4)のPR予測モデル、(b)式(5)のPD予測モデル、(c)式(6)のPR予測モデル及び(d)式(7)のPD予測モデルのROC曲線を示す図である。
図13】(a)式(4)(PR予測モデル)により各患者をPR群とSD又はPD群に分けた上で、カプラン・マイアー曲線を描いた図である。(b)式(5)(PD予測モデル)により各患者をPR又はSD群とPD群に分けた上で、カプラン・マイアー曲線を描いた図である。(c)式(6)(PR予測モデル)により各患者をPR群とSD又はPD群に分けた上で、カプラン・マイアー曲線を描いた図である。(d)式(7)(PD予測モデル)により各患者をPR又はSD群とPD群に分けた上で、カプラン・マイアー曲線を描いた図である。
図14】(a)ベバシズマブ併用FOLFIRI療法の治療1サイクル実施後の代謝物濃度と残余のOSの関係をCOXの比例ハザードモデルで解析した際に有意差を示した代謝物のハザード比とその95%信頼区間の図である。(b)ベバシズマブ併用FOLFIRI療法の治療2サイクル実施後の代謝物濃度と残余のOSの関係をCOXの比例ハザードモデルで解析した際に有意差を示した代謝物のハザード比とその95%信頼区間の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明における抗がん剤感受性判定マーカーとして、5-Aminoimidazole-4-carboxamide ribotide(5A4CR)、Alanine(ALA)、Aspartic acid(ASP)、Cysteine(CYS)、Cysteine-glutathione disulphide(CSSG)、Glycerol-3-phosphate(GLC3P)、Histidine(HIS)、Isoleucine(ILE)、Leucine(LEU)、Lysine(LYS)、Methionine sulfoxide(METSF)、N6,N6,N6-Trimethyllysine(N6TLY)、N6-Acetyllysine(N6ALY)、Octanoic acid(OCTA)、Serine(SER)、Taurocholic acid(TUCA)、Threonine(THR)、Tryptophan(TRP)、Tyrosine(TYR)及びValine(VAL)の20種の代謝物質が挙げられる。後記実施例に示すように、結腸・直腸がん患者由来の血液検体を対象とし、ベバシズマブ併用FOLFIRI療法開始前の血中代謝物の量をCE-Q-TOF MS及びCE-TOF MSを用いて網羅的に解析した結果、これらの物質のうち、ALA、CYS、CSSG、HIS、ILE、LEU、LYS、METSF、N6TLY、SER、THR、TRP、TYR及びVALについては、ベバシズマブ併用FOLFIRI療法によりpartial response(PR)を示した群でstable desiase(SD)又はprogressive disease(PD)を示した群に比して高く、当該療法によりPRとなる患者を選択できる代謝物であることが判明した。ALA、CSSG、GLC3P、HIS、ILE、LEU、N6TLY、OCTA及びTHRについては、ベバシズマブ併用FOLFIRI療法によりPDを示した群でPR又はSDを示した群に比して低く、当該療法によりPDとなる患者を選択できる代謝物であることが判明した。5A4CR、ASP、N6ALY及びTUCAについては、ベバシズマブ併用FOLFIRI療法によりPDを示した群でPR又はSDを示した群に比して高く、当該療法によりPDとなる患者を選択できる代謝物であることが判明した。したがって、これら20種の物質は、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤に対する感受性判定マーカー、特にイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩と血管新生阻害薬(特にベバシズマブ)を含む抗がん剤に対する感受性判定マーカーとして有用である。そして、これらのマーカーは、抗がん剤治療開始前のがんを対象とする抗がん剤感受性判定に用いるのに有用である。このうち、ALA、CYS、CSSG、HIS、ILE、LEU、LYS、METSF、N6TLY、SER、THR、TRP、TYR及びVALの14物質は、対象とするがん患者が当該抗がん剤の治療によりPRとなるか否かを判定するためのPR予測マーカーとして用いることができる。中でも、ALA及びCSSGの2物質の組み合わせを用いると、より高い精度でのPR予測が可能となる。一方、5A4CR、ALA、ASP、CSSG、GLC3P、HIS、ILE、LEU、N6TLY、N6ALY、OCTA、TUCA及びTHRの13物質は、対象とするがん患者が当該抗がん剤の治療によりPDとなるか否かを判定するためのPD予測マーカーとして用いることができる。中でも、ASP、HIS、N6ALY及びTUCAの4物質の組み合わせを用いると、より高い精度でのPD予測が可能となる。
また、後記実施例に示すように、CSSGの濃度は、ベバシズマブ併用FOLFOX療法に不応・不耐であったがん患者の治療開始前の腫瘍径の和と負の相関を示すことが判明した。したがって、CSSGは、がん患者の腫瘍径の和の判定マーカーとして有用である。
【0016】
本発明における抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして、3-Indoxylsulfuric acid(3IND)、ALA、ASP、Citrulline(CITR)、Creatine(CREAT)、CSSG、gamma-Aminobutyric acid(GABA)、Guanidoacetic acid(GUAA)、HIS、Hydroxyproline(HYPRO)、METSF、N6TLY、N8-Acetylspermidine(N8ASR)及びSERの14種の代謝物質が挙げられる。後記実施例に示すように、結腸・直腸がん患者由来の血液検体を対象とし、ベバシズマブ併用FOLFIRI療法開始前の血中代謝物の量と全生存期間をCOXの比例ハザードモデルで解析した結果、これらの物質のうち、3IND、ALA、CITR、CREAT、CSSG、GABA、GUAA、HIS、HYPRO、METSF、N6TLY及びSERについては、血中濃度が高いほど生存期間が長いこと、また、ASP及びN8ASRについては、血中濃度が高いほど生存期間が短いことが判明した。したがって、これら14物質は、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤、特にイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩と血管新生阻害薬(特にベバシズマブ)を含む抗がん剤による治療時の予後予測マーカー、特に、二次治療以降も含めた生存期間の長短の予測マーカーとして有用である。そして、これらのマーカーは、抗がん剤治療開始前のがんを対象とする予後予測に用いるのに有用である。
【0017】
また、本発明における抗がん剤感受性判定マーカーとして、3IND、4-Oxavaleric acid(4OVAL)、5A4CR、ALA、Benzoic acid(BENZA)、CREAT、CSSG、Decanoic acid(DECNA)、gamma-Butyrobetaine(GABB)、GLC3P、Hypotaurine(HYPTA)、LYS、METSF、N8ASR、Quinic acid(QUINA)、Sarcosine(SARCO)、Trimethylamine N-oxide(TMNO)及びVALの18種の代謝物質が挙げられる。後記実施例に示すように、結腸・直腸がん患者由来の血液検体を対象とし、ベバシズマブ併用FOLFIRI療法1サイクル実施後の血中代謝物の量をCE-Q-TOF MS及びCE-TOF MSを用いて網羅的に解析した結果、これらの物質のうち、CREAT、CSSG、METSF及びVALについては、ベバシズマブ併用FOLFIRI療法によりPRを示した群でSD又はPDを示した群に比して高く、当該療法によりPRとなる患者を選択できる代謝物であることが判明した。QUINAについては、ベバシズマブ併用FOLFIRI療法によりPRを示した群でSD又はPDを示した群に比して低く、当該療法によりPRとなる患者を選択できる代謝物であることが判明した。CSSG、DECNA、GLC3P及びHYPTAについては、ベバシズマブ併用FOLFIRI療法によりPDを示した群でPR又はSDを示した群に比して低く、当該療法によりPDとなる患者を選択できる代謝物であることが判明した。5A4CR及びN8ASRについては、ベバシズマブ併用FOLFIRI療法によりPDを示した群でPR又はSDを示した群に比して高く、当該療法によりPDとなる患者を選択できる代謝物であることが判明した。また、後記実施例に示すように、結腸・直腸がん患者由来の血液検体を対象とし、ベバシズマブ併用FOLFIRI療法2サイクル実施後の血中代謝物の量をCE-Q-TOF MS及びCE-TOF MSを用いて網羅的に解析した結果、これらの物質のうち、4OVAL、ALA、BENZA、CREAT、CSSG、LYS及びSARCOについては、ベバシズマブ併用FOLFIRI療法によりPRを示した群でSD又はPDを示した群に比して高く、当該療法によりPRとなる患者を選択できる代謝物であることが判明した。3IND、4OVAL、ALA、CSSG及びTMNOについては、ベバシズマブ併用FOLFIRI療法によりPDを示した群でPR又はSDを示した群に比して低く、当該療法によりPDとなる患者を選択できる代謝物であることが判明した。5A4CR及びGABBについては、ベバシズマブ併用FOLFIRI療法によりPDを示した群でPR又はSDを示した群に比して高く、当該療法によりPDとなる患者を選択できる代謝物であることが判明した。したがって、これら18種の物質は、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤に対する感受性判定マーカー、特にイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩と血管新生阻害薬(特にベバシズマブ)を含む抗がん剤に対する感受性判定マーカーとして有用である。そして、これらのマーカーは、抗がん剤治療開始後早期のがんを対象とする抗がん剤感受性判定に用いるのに有用である。このうち、4OVAL、ALA、BENZA、CREAT、CSSG、LYS、METSF、QUINA、SARCO及びVALの10物質は、対象とするがん患者が当該抗がん剤の治療によりPRとなるか否かを判定するためのPR予測マーカーとして用いることができる。中でも、CREAT、CSSG及びQUINAの3物質の組み合わせ又は4OVAL、BENZA及びLYSの3物質の組み合わせを用いると、より高い精度でのPR予測が可能となる。一方、3IND、4OVAL、5A4CR、ALA、CSSG、DECNA、GABB、GLC3P、HYPTA、N8ASR及びTMNOの11物質は、対象とするがん患者が当該抗がん剤の治療によりPDとなるか否かを判定するためのPD予測マーカーとして用いることができる。中でも、5A4CR、CSSG、DECNA、HYPTA及びN8ASRの5物質の組み合わせ又は3IND、5A4CR、CSSG、GABB及びTMNOの5物質の組み合わせを用いると、より高い精度でのPD予測が可能となる。
【0018】
本発明における抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして、1-Methylnicotinamide(1MNA)、2-Hydroxy-4-methylpentanoic acid(2H4MP)、3IND、3-Methylhistidine(3MHIS)、5A4CR、ASP、Cyclohexanecarboxylic acid(CHCA)、CSSG、GABA、Hippuric acid(HIPA)、Hypoxanthine(HYPX)、Mucic acid(MUCA)、N8ASR及びTaurine(TAUR)の14種の代謝物質が挙げられる。後記実施例に示すように、結腸・直腸がん患者由来の血液検体を対象とし、ベバシズマブ併用FOLFIRI療法1サイクル実施後の血中代謝物の量と残余の全生存期間をCOXの比例ハザードモデルで解析した結果、これらの物質のうち、2H4MP、3IND、3MHIS、CHCA、CSSG、GABA及びHIPAについては、血中濃度が高いほど生存期間が長いこと、また、1MNA、ASP、HYPX及びN8ASRについては、血中濃度が高いほど生存期間が短いことが判明した。加えて、後記実施例に示すように、結腸・直腸がん患者由来の血液検体を対象とし、ベバシズマブ併用FOLFIRI療法2サイクル実施後の血中代謝物の量と残余の全生存期間をCOXの比例ハザードモデルで解析した結果、これらの物質のうち、2H4MP、3IND、GABA及びMUCAについては、血中濃度が高いほど生存期間が長いこと、また、5A4CR及びTAURについては、血中濃度が高いほど生存期間が短いことが判明した。したがって、これら14物質は、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤、特にイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩と血管新生阻害薬(特にベバシズマブ)を含む抗がん剤による治療時の予後予測マーカー、特に、二次治療以降も含めた生存期間の長短の予測マーカーとして有用である。そして、これらのマーカーは、抗がん剤治療開始後早期のがんを対象とする予後予測に用いるのに有用である。
【0019】
本明細書において、「partial response:PR」とは、抗がん剤治療により明らかな腫瘍縮小が認められた状態を指す。なお、PRには腫瘍の消失が認められたcomplete response(CR)を含むものとする。また、「stable disease:SD」とは、抗がん剤治療により腫瘍に明らかな縮小は見られないものの、腫瘍は拡大せず、腫瘍の制御ができた状態を指し、「progressive disease:PD」とは、抗がん剤治療が全く効果を示さず、腫瘍の制御ができなかった状態を指す。いずれも、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors Guideline(RECIST) 1.0に基づき評価されるものである。
本明細書において、「抗がん剤治療開始前」とは、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤による治療を受ける前、すなわち当該抗がん剤投与前の状態を指す。
本明細書において、「抗がん剤治療開始後早期」とは、当該抗がん剤による治療を少なくとも1サイクル、好ましくは1サイクル以上4サイクル以下、より好ましくは1サイクル以上3サイクル以下、さらに好ましくは1サイクル又は2サイクル受けた状態を指す。
本明細書において、「抗がん剤治療によりPR(又はPD)となる患者」とは、当該抗がん剤治療による最終的な臨床効果がPR(又はPD)となる患者を指す。
【0020】
5A4CRは、Histidine代謝経路、Purine代謝経路及びAMPK信号経路上の物質であることが知られている。しかし、5A4CRがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前又は抗がん剤治療開始後早期、特に1サイクルもしくは2サイクル実施後の濃度が高いときにPDとなると判定できることは全く知られていない。
さらに、5A4CRがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始後早期、特に2サイクル実施後の濃度が高いほど生存期間が短いと判定できることは全く知られていない。
【0021】
ALAは、アミノ酸の一種で、ALA、aspartate及びglutamate代謝経路、CYS及びmethionine代謝経路、Taurine及びhypotaurine代謝経路だけでなく様々な代謝経路上の物質として知られている。また、うつ病を診断するためのバイオマーカー又は前立腺がんのバイオマーカーとしても知られている。しかし、ALAがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前又は抗がん剤治療開始後早期、特に2サイクル実施後の濃度が高いときにPRとなると判定でき、濃度が低いときにPDとなると判定できることは全く知られていない。
さらに、ALAがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前の濃度が高いほど生存期間が長いと判定できることは全く知られていない。
【0022】
ASPは、広く知られたアミノ酸であり、ALA、aspartate及びglutamate代謝経路、CYS及びmethionine代謝経路、Glycine、SER及びTHR代謝経路だけでなく様々な代謝経路上の物質として知られている。すでに、ASPがオキサリプラチン又はその塩とフルオロウラシル又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用でき、オキサリプラチン高感受性の細胞株で低感受性の細胞株と比較して高濃度となることが知られている(国際公開第2013/125675号)。しかし、ASPがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前の濃度が高いときにPDとなると判定できることは全く知られていない。
さらに、ASPがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前又は抗がん剤治療開始後早期、特に1サイクル実施後の濃度が高いほど生存期間が短いと判定できることは全く知られていない。
【0023】
CYSは、アミノ酸の一種であり、CYS及びmethionine代謝経路上の物質であり、Glycine、SER及びTHR代謝経路の他、様々な代謝経路上の物質としても知られている。CYSは、閉塞性睡眠時無呼吸のバイオマーカー又はてんかんのバイオマーカーとしても知られている。しかし、CYSがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前の濃度が高いときにPRとなると判定できることは全く知られていない。
【0024】
CSSGは、薬物の解毒化に関与する物質として知られるGlutathione(GSH)の代謝物である。CSSGは、GSHとCYSが結合したものである。血中のGSHは採血後速やかに酸化されGSSGになること、GSHは採血後速やかに血中にGSHより豊富に存在するCYSとより多くが結合し数分でCSSGを形成する等の知見が知られているが、薬効とCSSGに注目した報告は、がんと関連した報告も含めてない。CSSGがイリノテカン、SN-38又はそれら塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前又は抗がん剤治療開始後早期、特に1サイクルもしくは2サイクル実施後の濃度が高いときにPRとなると判定でき、濃度が低いときにPDとなると判定できることは全く知られていない。
また、CSSGがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前又は抗がん剤治療開始後早期、特に1サイクル実施後の濃度が高いほど生存期間が長いと判定できることは全く知られていない。加えて、CSSGが、ベバシズマブ併用FOLFOX療法に不応・不耐であったがん患者の治療開始前の腫瘍径の和を予測するマーカーとなることも全く知られていない。
【0025】
GLC3Pは、Glycerolipid代謝経路、Glycerophospholipid代謝経路及び癌におけるCholine代謝経路上の物質であることが知られている。しかし、GLC3Pがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前又は抗がん剤治療開始後早期、特に1サイクル実施後の濃度が低いときにPDとなると判定できることは全く知られていない。
【0026】
HISは、アミノ酸の一種で、HIS代謝経路及びbeta-ALA代謝経路上の物質であることが知られており、癌の血中バイオマーカー、炎症性腸疾患のバイオマーカー又はうつ病を診断するためのバイオマーカーとしても知られている。しかし、HISがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前の濃度が高いときにPRとなると判定でき、濃度が低いときにPDとなると判定できることは全く知られていない。
さらに、HISがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前の濃度が高いほど生存期間が長いと判定できることは全く知られていない。
【0027】
ILEは、必須アミノ酸の一つであり、VAL、LEU及びILEの合成並びに代謝経路上の物質であることが知られている。また、乳癌検出用の癌用唾液バイオマーカー、癌の血中バイオマーカー又はうつ病を診断するためのバイオマーカーとしても知られている。しかしながら、ILEがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前の濃度が高いときにPRとなると判定でき、濃度が低いときにPDとなると判定できることは全く知られていない。
【0028】
LEUは、必須アミノ酸の一つであり、VAL、LEU及びILE合成並びに代謝経路上の物質であることが知られている。また、癌の血中バイオマーカー又はうつ病を診断するためのバイオマーカーとしても知られている。しかしながら、LEUがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前の濃度が高いときにPRとなると判定でき、濃度が低いときにPDとなると判定できることは全く知られていない。
【0029】
LYSは、アミノ酸の一つであり、LYS合成及び代謝経路上の物質であることが知られている。また、口腔癌検出用の癌用唾液バイオマーカー又はうつ病を診断するためのバイオマーカーとしても知られている。しかしながら、LYSがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前又は抗がん剤治療開始後早期、特に2サイクル実施後の濃度が高いときにPRとなると判定できることは全く知られていない。
【0030】
METSFは、CYS及びmethionine代謝経路上の物質として知られており、前立腺がんもしくは酸化ストレスのバイオマーカー又はうつ病を診断するためのバイオマーカーとしても知られている。しかしながら、METSFがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前又は抗がん剤治療開始後早期、特に1サイクル実施後の濃度が高いときにPRとなると判定できることは全く知られていない。
さらに、METSFがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前の濃度が高いほど生存期間が長いと判定できることは全く知られていない。
【0031】
N6TLYは、LYS代謝経路上の物質として知られており、癌用唾液マーカーとしても知られている。しかしながら、N6TLYがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前の濃度が高いときにPRとなると判定でき、濃度が低いときにPDとなると判定できることは全く知られていない。
さらに、N6TLYがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前の濃度が高いほど生存期間が長いと判定できることは全く知られていない。
【0032】
N6ALYは、LYS代謝経路上の物質として知られている。しかしながら、N6ALYがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前の濃度が高いときにPDとなると判定できることは全く知られていない。
【0033】
OCTAは、脂肪酸合成経路上の代謝物として知られている。しかしながら、OCTAがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前の濃度が低いときにPDとなると判定できることは全く知られていない。
【0034】
SERは、アミノ酸の一種であり、Glycine、SER及びTHR代謝経路、CYS及びmethionine代謝経路の他、様々な代謝経路上の物質である。SERは、統合失調症、筋萎縮性側索硬化症、急性腎障害のマーカー又はうつ病を診断するためのバイオマーカーとして知られている。しかしながら、SERがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前の濃度が高いときにPRとなると判定できることは全く知られていない。
さらに、SERがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前の濃度が高いほど生存期間が長いと判定できることは全く知られていない。
【0035】
TUCAは、胆汁酸合成経路上の物質であり、また、Taurine及びhypotaurine代謝経路上の物質として知られている。さらに、TUCAは、肝障害の検査用マーカーとして知られている。しかしながら、TUCAがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前の濃度が高いときにPDとなると判定できることは全く知られていない。
【0036】
THRは、アミノ酸の一つであり、Glycine、SER及びTHR代謝経路上の物質であること、VAL、LEU及びILE合成並びに代謝経路上の物質であることが知られている。すでに、THRがうつ病を診断するためのバイオマーカーであることが知られている。しかしながら、THRがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前の濃度が高いときにPRとなると判定でき、濃度が低いときにPDとなると判定できることは全く知られていない。
【0037】
TRPは、アミノ酸の一つであり、TRP代謝経路、Glycine、SER及びTHR代謝経路等の様々な代謝経路上の物質として知られている。すでに、TRPが乳癌、口腔癌検出用の癌用唾液バイオマーカー又は癌の血中バイオマーカーであること、TRP/5-ヒドロキシトリプトファン比がトリプトファンヒドロキシラーゼの活性を示すバイオマーカー又はうつ病を診断するためのバイオマーカーであることが知られている。しかしながら、TRPがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前の濃度が高いときにPRとなると判定できることは全く知られていない。
【0038】
TYRは、アミノ酸の一つであり、TYR代謝経路のみならず、Phenylalanine代謝経路等の様々な代謝系路上の物質として知られている。すでに、TYRが癌の血中バイオマーカーであること、TYR/ジヒドロキシフェニルアラニン比がチロシンヒドロキシラーゼの活性を示すバイオマーカー又はうつ病を診断するためのバイオマーカーであることが知られている。しかしながら、TYRがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前の濃度が高いときにPRとなると判定できることは全く知られていない。
【0039】
VALは、必須アミノ酸の一つであり、VAL、LEU及びILE合成並びに代謝経路上の物質であることが知られている。また、癌の血中バイオマーカー又はうつ病を診断するためのバイオマーカーとして知られている。しかしながら、VALがイリノテカン、SN-38及びそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前又は抗がん剤治療開始後早期、特に1サイクル実施後の濃度が高いときにPRとなると判定できることは全く知られていない。
【0040】
3INDは、トリプトファンの代謝物であり、尿毒症の原因物質であることが知られており、GSH濃度を下げることや、慢性腎臓病のバイオマーカーとして使用できることが知られている。しかしながら、3INDがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始後早期、特に2サイクル実施後の濃度が低いときにPDとなると判定できることは全く知られていない。
さらに、3INDがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前又は抗がん剤治療開始後早期、特に1サイクルもしくは2サイクル実施後の濃度が高いほど生存期間が長いと判定できることは全く知られていない。
【0041】
CITRは、Arginine合成経路上の物質であることが知られており、オルニチン/CITRの比が疲労のバイオマーカーとなることが知られている。しかしながら、CITRがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前の濃度が高いほど生存期間が長いと判定できることは全く知られていない。
【0042】
CREATは、筋肉中に存在するアミノ酸の一種である。しかしながら、CREATがイリノテカン、SN-38又はそれら塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始後早期、特に1サイクル又は2サイクル実施後の濃度が高いときにPRとなると判定できることは全く知られていない。
さらに、CREATがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前の濃度が高いほど生存期間が長いと判定できることは全く知られていない。
【0043】
GABAは、ALA、aspartate及びglutamate代謝経路並びにArginine及びproline代謝経路上の物質であることが知られており、既にSN-38の感受性判定マーカーとなることは知られている(国際公開第2011/052750号)。しかしながら、GABAがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前又は抗がん剤治療開始後早期、特に1サイクルもしくは2サイクル実施後の濃度が高いほど生存期間が長いと判定できることは全く知られていない。
【0044】
GUAAは、Glycine、SER及びTHR代謝経路並びにArginine及びproline代謝経路上の物質であることが知られており、腎臓病の診断マーカーとなることも知られている。しかしながら、GUAAがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前の濃度が高いほど生存期間が長いと判定できることは全く知られていない。
【0045】
HYPROは、Arginine及びproline代謝経路上の物質であることが知られており、コラーゲンやゼラチン量を定量するためのバイオマーカーとしても知られている。しかしながら、HYPROがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前の濃度が高いほど生存期間が長いと判定できることは全く知られていない。
【0046】
N8ASRは、ポリアミンに属し、膵疾患又は口腔癌検出用の癌用唾液バイオマーカーとして知られている。しかしながら、N8ASRがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始後早期、特に1サイクル実施後の濃度が高いときにPDとなると判定できることは全く知られていない。
さらに、N8ASRがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始前又は抗がん剤治療開始後早期、特に1サイクル実施後の濃度が高いほど生存期間が短いと判定できることは全く知られていない。
【0047】
4OVALは、ガンマ-ケト酸およびその代謝物のグループに属し、血液、尿、唾液等様々な体液中に存在するが、細胞内では細胞質に存在する。しかしながら、4OVALがイリノテカン、SN-38又はそれら塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始後早期、特に2サイクル実施後の濃度が高いときにPRとなると判定でき、濃度が低いときにPDとなると判定できることは全く知られていない。
【0048】
BENZAは、肝臓で分解され馬尿酸となる物質である。しかしながら、BENZAがイリノテカン、SN-38又はそれら塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始後早期、特に2サイクル実施後の濃度が高いときにPRとなると判定できることは全く知られていない。
【0049】
DECNAは、脂肪酸の一種である。しかしながら、DECNAがイリノテカン、SN-38又はそれら塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始後早期、特に1サイクル実施後の濃度が低いときにPDとなると判定できることは全く知られていない。
【0050】
GABBは、リジン分解系路上の産物であると同時に、筋肉細胞内において脂肪酸をミトコンドリア内部に運搬する役割を担うカルニチンの前駆体として知られている。しかしながら、GABBがイリノテカン、SN-38又はそれら塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始後早期、特に2サイクル実施後の濃度が高いときにPDとなると判定できることは全く知られていない。
【0051】
HYPTAは、タウリンの生合成における中間体であり、神経伝達物質として作用するものである。しかしながら、HYPTAがイリノテカン、SN-38又はそれら塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始後早期、特に1サイクル実施後の濃度が低いときにPDとなると判定できることは全く知られていない。
【0052】
QUINAは、キナ皮から発見されたヒドロキシ酸である。しかしながら、QUINAがイリノテカン、SN-38又はそれら塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始後早期、特に1サイクル実施後の濃度が低いときにPRとなると判定できることは全く知られていない。
【0053】
SARCOは、コリンからグリシンへの代謝中間体である。しかしながら、SARCOがイリノテカン、SN-38又はそれら塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始後早期、特に2サイクル実施後の濃度が高いときにPRとなると判定できることは全く知られていない。
【0054】
TMNOは、トリメチルアミンの酸化生成物であり、生体内の代謝中間体である。しかしながら、TMNOがイリノテカン、SN-38又はそれら塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の感受性判定マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始後早期、特に2サイクル実施後の濃度が低いときにPDとなると判定できることは全く知られていない。
【0055】
1MNAは、ニコチン酸およびニコチン酸アミド代謝系路上の物質として知られており、抗炎症作用を有しているといわれている。しかしながら、1MNAがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始後早期、特に1サイクル実施後の濃度が高いほど生存期間が短いと判定できることは全く知られていない。
【0056】
2H4MPは、ジヒドロリポアミド脱水素酵素欠損症患者で尿中濃度が高値であることが知られている。しかしながら、2H4MPがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始後早期、特に1サイクル又は2サイクル実施後の濃度が高いほど生存期間が長いと判定できることは全く知られていない。
【0057】
3MHISは、筋肉タンパク質の分解量の指標として利用されている。しかしながら、3MHISがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始後早期、特に1サイクル実施後の濃度が高いほど生存期間が長いと判定できることは全く知られていない。
【0058】
CHCAは、安息香酸分解系路上の産物であることが知られている。しかしながら、CHCAがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始後早期、特に1サイクル実施後の濃度が高いほど生存期間が長いと判定できることは全く知られていない。
【0059】
HIPAは、芳香族炭化水素化合物から肝臓で生成される物質である。しかしながら、HIPAがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始後早期、特に1サイクル実施後の濃度が高いほど生存期間が長いと判定できることは全く知られていない。
【0060】
HYPXは、サルベージ経路の代謝産物である。しかしながら、HYPXがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始後早期、特に1サイクル実施後の濃度が高いほど生存期間が短いと判定できることは全く知られていない。
【0061】
MUCAは、アスコルビン酸およびアルダル酸代謝系路上の物質であり、グルクロン酸関連物質でもある。しかしながら、MUCAがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始後早期、特に2サイクル実施後の濃度が高いほど生存期間が長いと判定できることは全く知られていない。
【0062】
TAURは、システインから生合成される物質である。しかしながら、TAURがイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療時の予後予測マーカーとして使用できること、抗がん剤治療開始後早期、特に2サイクル実施後の濃度が高いほど生存期間が短いと判定できることは全く知られていない。
【0063】
本発明の抗がん剤感受性判定マーカー又は抗がん剤治療時の予後予測マーカーの対象となる抗がん剤はイリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤であるが、体内で代謝されてイリノテカンもしくはSN-38、フルオロウラシル又はレボホリナートに変換される抗がん剤も、同様に本発明の抗がん剤感受性判定マーカーの対象となる。具体的に、テガフール(tegaful)やカペシタビン(capecitabine)は体内で代謝されてフルオロウラシルに変換されることが明らかになっているため、フルオロウラシルに代えてテガフールやカペシタビンであってもよく、その場合は、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とテガフール又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とカペシタビン又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤が、本発明のマーカーの対象となる。
【0064】
イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤と組み合わせて使用する他の抗がん剤としては特に限定されないが、例えば、オキサリプラチン(oxaliplatin)、シクロフォスファミド(cyclophosphamide)、イフォスファミド(ifosfamide)、チオテパ(thiotepa)、メルファラン(melphalan)、ブスルファン(busulfan)、ニムスチン(nimustine)、ラニムスチン(ranimustine)、ダカルバジン(dacarbazine)、プロカルバジン(procarbazine)、テモゾロミド(temozolomide)、シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、ネダプラチン(nedaplatin)、メトトレキサート(methotrexate)、ペメトレキセド(pemetrexed)、テガフール/ウラシル(tegaful・uracil)、ドキシフルリジン(doxifluridine)、テガフール/ギメラシル/オテラシル(tegaful・gimeracil・oteracil)、カペシタビン(capecitabine)、シタラビン(cytarabine)、エノシタビン(enocitabine)、ゲムシタビン(gemcitabine)、6-メルカプトプリン(6-mercaptopurine)、フルダラビン(fuludarabin)、ペントスタチン(pentostatin)、クラドリビン(cladribine)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、ドキソルビシン(doxorubicin)、エピルビシン(epirubicin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、イダルビシン(idarubicine)、ピラルビシン(pirarubicin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、アムルビシン(amurubicin)、アクチノマイシンD(actinomycin D)、ブレオマイシン(bleomycine)、ペプレオマイシン(pepleomycin)、マイトマイシンC(mytomycin C)、アクラルビシン(aclarubicin)、ジノスタチン(zinostatin)、ビンクリスチン(vincristine)、ビンデシン(vindesine)、ビンブラスチン(vinblastine)、ビノレルビン(vinorelbine)、パクリタキセル(paclitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、ノギテカン(nogitecan、topotecan)、エトポシド(etoposide)、プレドニゾロン(prednisolone)、デキサメタゾン(dexamethasone)、タモキシフェン(tamoxifen)、トレミフェン(toremifene)、メドロキシプロゲステロン(medroxyprogesterone)、アナストロゾール(anastrozole)、エキセメスタン(exemestane)、レトロゾール(letrozole)、リツキシマブ(rituximab)、イマチニブ(imatinib)、ゲフィチニブ(gefitinib)、ゲムツズマブ・オゾガマイシン(gemtuzumab ozogamicin)、ボルテゾミブ(bortezomib)、エルロチニブ(erlotinib)、セツキシマブ(cetuximab)、ベバシズマブ(bevacizumab)、スニチニブ(sunitinib)、ソラフェニブ(sorafenib)、ダサチニブ(dasatinib)、パニツムマブ(panitumumab)、ラムシルマブ(ramucirumab)、アフリベルセプト(aflibercept)、アスパラギナーゼ(asparaginase)、トレチノイン(tretinoin)、三酸化ヒ素(arsenic trioxide)、又はそれらの塩、又はそれらの活性代謝物等が挙げられる。このうち、セツキシマブ、ベバシズマブ、パニツムマブ等の血管新生阻害薬又はオキサリプラチンが好ましく、血管新生阻害薬がさらに好ましく、ベバシズマブが特に好ましい。
【0065】
本発明の抗がん剤感受性判定マーカーを用いた抗がん剤感受性の判定方法は、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤による治療開始前のがん患者由来の生体試料(検体)中の5A4CR、ALA、ASP、CYS、CSSG、GLC3P、HIS、ILE、LEU、LYS、METSF、N6TLY、N6ALY、OCTA、SER、TUCA、THR、TRP、TYR及びVALから選ばれる1以上の分子の量を測定すること、詳細にはさらに当該測定結果を対照レベル(標準濃度、PR又はPDにおけるカットオフ値(以下、カットオフ値はLC/MS用内部標準溶液等の内部標準の濃度を1とした場合の相対濃度を意味する)等)と比較することにより行うことができる。
【0066】
具体的には、本発明の抗がん剤感受性判定マーカーのうち、ALA、CYS、CSSG、HIS、ILE、LEU、LYS、METSF、N6TLY、SER、THR、TRP、TYR及びVALから選ばれる1以上の分子(以下、PR予測マーカーともいう)を用いた抗がん剤感受性の判定方法は、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤による治療開始前のがん患者由来の生体試料(検体)中の当該分子の量を測定すること、詳細にはさらに当該測定結果を対照レベル(標準濃度、PRにおけるカットオフ値等)と比較することにより行うことができる。あるいは、抗がん剤治療開始前のがん患者由来の生体試料(検体)中のALA及びCSSGの量を測定すること、詳細にはさらに当該測定結果を各物質の対照レベル(例えば、PRにおけるカットオフ値)と比較して数値化し、特定の算出式に代入することにより行うことができる。上記のPR予測マーカーにより、当該がん患者が抗がん剤治療によりPRとなるか否かを判定することができる。
【0067】
また、本発明の抗がん剤感受性判定マーカーのうち、5A4CR、ALA、ASP、CSSG、GLC3P、HIS、ILE、LEU、N6TLY、N6ALY、OCTA、TUCA及びTHRから選ばれる1以上の分子(以下、PD予測マーカーともいう)を用いた抗がん剤感受性の判定方法は、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤による治療開始前のがん患者由来の生体試料(検体)中の当該分子の量を測定すること、詳細にはさらに当該測定結果を対照レベル(標準濃度、PDにおけるカットオフ値等)と比較することにより行うことができる。あるいは、抗がん剤治療開始前のがん患者由来の生体試料(検体)中のASP、HIS、N6ALY及びTUCAの量を測定すること、詳細にはさらに当該測定結果を各物質の対照レベル(例えば、PDにおけるカットオフ値)と比較して数値化し、特定の算出式に代入することにより行うことができる。上記のPD予測マーカーにより、当該がん患者が抗がん剤治療によりPDとなるか否かを判定することができる。
【0068】
あるいは、本発明の抗がん剤感受性判定マーカーを用いた抗がん剤感受性の判定方法は、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤による治療開始後早期のがん患者由来の生体試料(検体)中の3IND、4OVAL、5A4CR、ALA、BENZA、CREAT、CSSG、DECNA、GABB、GLC3P、HYPTA、LYS、METSF、N8ASR、QUINA、SARCO、TMNO及びVALから選ばれる1以上の分子の量を測定すること、詳細にはさらに当該測定結果を対照レベル(標準濃度、PR又はPDにおけるカットオフ値等)と比較することにより行うことができる。
【0069】
具体的には、本発明の抗がん剤感受性判定マーカーのうち、CREAT、CSSG、METSF、QUINA及びVALから選ばれる1以上の分子(以下、PR予測マーカーともいう)を用いた抗がん剤感受性の判定方法は、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤による治療1サイクル実施後のがん患者由来の生体試料(検体)中の当該分子の量を測定すること、詳細にはさらに当該測定結果を対照レベル(標準濃度、PRにおけるカットオフ値等)と比較することにより行うことができる。あるいは、抗がん剤治療1サイクル実施後のがん患者由来の生体試料(検体)中のCREAT、CSSG及びQUINAの量を測定すること、詳細にはさらに当該測定結果を各物質の対照レベル(例えば、PRにおけるカットオフ値)と比較して数値化し、特定の算出式に代入することにより行うことができる。上記のPR予測マーカーにより、当該がん患者が抗がん剤治療によりPRとなるか否かを判定することができる。
【0070】
また、本発明の抗がん剤感受性判定マーカーのうち、5A4CR、CSSG、DECNA、GLC3P、HYPTA及びN8ASRから選ばれる1以上の分子(以下、PD予測マーカーともいう)を用いた抗がん剤感受性の判定方法は、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤による治療1サイクル実施後のがん患者由来の生体試料(検体)中の当該分子の量を測定すること、詳細にはさらに当該測定結果を対照レベル(標準濃度、PDにおけるカットオフ値等)と比較することにより行うことができる。あるいは、抗がん剤治療1サイクル実施後のがん患者由来の生体試料(検体)中の5A4CR、CSSG、DECNA、HYPTA及びN8ASRの量を測定すること、詳細にはさらに当該測定結果を各物質の対照レベル(例えば、PDにおけるカットオフ値)と比較して数値化し、特定の算出式に代入することにより行うことができる。上記のPD予測マーカーにより、当該がん患者が抗がん剤治療によりPDとなるか否かを判定することができる。
【0071】
また、本発明の抗がん剤感受性判定マーカーのうち、4OVAL、ALA、BENZA、CREAT、CSSG、LYS及びSARCOから選ばれる1以上の分子(以下、PR予測マーカーともいう)を用いた抗がん剤感受性の判定方法は、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤による治療2サイクル実施後のがん患者由来の生体試料(検体)中の当該分子の量を測定すること、詳細にはさらに当該測定結果を対照レベル(標準濃度、PRにおけるカットオフ値等)と比較することにより行うことができる。あるいは、抗がん剤治療2サイクル実施後のがん患者由来の生体試料(検体)中の4OVAL、BENZA及びLYSの量を測定すること、詳細にはさらに当該測定結果を各物質の対照レベル(例えば、PRにおけるカットオフ値)と比較して数値化し、特定の算出式に代入することにより行うことができる。上記のPR予測マーカーにより、当該がん患者が抗がん剤治療によりPRとなるか否かを判定することができる。
【0072】
また、本発明の抗がん剤感受性判定マーカーのうち、3IND、4OVAL、5A4CR、ALA、CSSG、GABB及びTMNOから選ばれる1以上の分子(以下、PD予測マーカーともいう)を用いた抗がん剤感受性の判定方法は、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤による治療2サイクル実施後のがん患者由来の生体試料(検体)中の当該分子の量を測定すること、詳細にはさらに当該測定結果を対照レベル(標準濃度、PDにおけるカットオフ値等)と比較することにより行うことができる。あるいは、抗がん剤治療2サイクル実施後のがん患者由来の生体試料(検体)中の3IND、5A4CR、CSSG、GABB及びTMNOの量を測定すること、詳細にはさらに当該測定結果を各物質の対照レベル(例えば、PDにおけるカットオフ値)と比較して数値化し、特定の算出式に代入することにより行うことができる。上記のPD予測マーカーにより、当該がん患者が抗がん剤治療によりPDとなるか否かを判定することができる。
【0073】
本発明の予後予測マーカーを用いた抗がん剤治療時の長期予後の予測方法は、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤による治療開始前のがん患者由来の生体試料(検体)中の3IND、ALA、ASP、CITR、CREAT、CSSG、GABA、GUAA、HIS、HYPRO、METSF、N6TLY、N8ASR及びSERから選ばれる1以上の分子の量を測定すること、詳細にはさらに当該測定結果を対照レベル(標準濃度、PR又はPDにおけるカットオフ値、OSのカットオフ値等)と比較することにより行うことができる。
【0074】
あるいは、本発明の予後予測マーカーを用いた抗がん剤治療時の長期予後の予測方法は、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤による治療開始後早期のがん患者由来の生体試料(検体)中の1MNA、2H4MP、3IND、3MHIS、5A4CR、ASP、CHCA、CSSG、GABA、HIPA、HYPX、MUCA、N8ASR及びTAURから選ばれる1以上の分子の量を測定すること、詳細にはさらに当該測定結果を対照レベル(標準濃度、PR又はPDにおけるカットオフ値、OSのカットオフ値等)と比較することにより行うことができる。
【0075】
具体的には、本発明の予後予測マーカーのうち、1MNA、2H4MP、3IND、3MHIS、ASP、CHCA、CSSG、GABA、HIPA、HYPX及びN8ASRから選ばれる1以上の分子を用いた予後予測方法は、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤による治療1サイクル実施後のがん患者由来の生体試料(検体)中の当該分子の量を測定すること、詳細にはさらに当該測定結果を対照レベル(標準濃度、PRにおけるカットオフ値、OSのカットオフ値等)と比較することにより行うことができる。
【0076】
また、本発明の予後予測マーカーのうち、2H4MP、3IND、5A4CR、GABA、MUCA及びTAURから選ばれる1以上の分子を用いた予後予測方法は、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤による治療2サイクル実施後のがん患者由来の生体試料(検体)中の当該分子の量を測定すること、詳細にはさらに当該測定結果を対照レベル(標準濃度、PRにおけるカットオフ値等)と比較することにより行うことができる。
【0077】
ここで、がん患者としては、がんを有する被験者又はがんを有していた被験者が包含される。生体試料としては、例えば血液、血清、血漿、がん組織生検検体、がん摘出手術標本、便、尿、腹水、胸水、脳脊髄液、喀痰等が挙げられるが、血清が特に好ましい。
【0078】
また、本発明の対象となるがんとしては、咽頭がんを代表とする口唇、口腔及び咽頭がん、食道がん、胃がん、結腸・直腸がんなどを代表とする消化器がん、肺がんを代表とする呼吸器及び胸腔内臓器がん、骨及び関節軟骨がん、皮膚の悪性黒色腫、有棘細胞がん及びその他の皮膚のがん、中皮腫を代表とする中皮及び軟部組織がん、乳房がん、子宮がん、卵巣がんを代表とする女性性器がん、前立腺がんを代表とする男性性器がん、膀胱がんを代表とする尿路がん、脳腫瘍を代表とする眼、脳及び中枢神経系がん、甲状腺及びその他の内分泌腺がん、非ホジキンリンパ腫やリンパ性白血病を代表とするリンパ組織、造血組織及び関連組織がん、及びこれらを原発巣とする転移組織のがん等が挙げられ、結腸・直腸がん(大腸がん)に対して好適に利用できるが、オキサリプラチン又はその塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤治療に不応・不耐となったがんが特に好ましい。また、膵がんにおいては、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とカペシタビン又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤の併用治療を基本とした化学療法が行われており、その一方で効果が得られる患者が極めて限られていることから膵がんも好ましい。
【0079】
検体中の5A4CR、ALA、ASP、CYS、CSSG、GLC3P、HIS、ILE、LEU、LYS、METSF、N6TLY、N6ALY、OCTA、SER、TUCA、THR、TRP、TYR、VAL、3IND、CITR、CREAT、GABA、GUAA、HYPRO、N8ASR、4OVAL、BENZA、DECNA、GABB、HYPTA、QUINA、SARCO、TMNO、1MNA、2H4MP、3MHIS、CHCA、HIPA、HYPX、MUCA及びTAURから選ばれる分子の測定手段は、被測定対象物質により適宜決定すればよく、例えばCE-Q-TOF MS、CE-TOF MS、Gas chromatography-mass spectrometry(GC-MS)等の各種質量分析装置、HPLC、免疫学的測定法、生化学的測定法等により測定可能である。
【0080】
ALA、CYS、CSSG、HIS、ILE、LEU、LYS、METSF、N6TLY、SER、THR、TRP、TYR及びVALから選ばれる1以上の分子により、対象とする抗がん剤に対する感受性を判定する、具体的には抗がん剤治療によりPRとなるか否かを判定するには、抗がん剤投与前において、がん患者由来の生体試料中のALA、CYS、CSSG、HIS、ILE、LEU、LYS、METSF、N6TLY、SER、THR、TRP、TYR及びVALから選ばれる1以上の分子の量、例えば濃度を測定すればよい。濃度が所定の対照レベルより高いと判断される濃度を有する場合は、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性である、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPRとなると判定できるため、これら抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待出来る患者に対して積極的に治療を継続するためのPR予測マーカーとして使用できる。一方、濃度が所定の対照レベルより低いと判断される濃度を有する場合は、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性ではない、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPRとならないと判定できる。対象とする抗がん剤に対して感受性を有さない場合は、抗がん剤による腫瘍の制御を期待することができず、このような薬効の期待できない抗がん剤の投与が行なわれたり、続けられた場合、がんの進行、副作用の増大が危惧される。このように、本発明における抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待出来る患者に対して積極的に治療を継続するためのマーカーとして使用できるのに加え、薬効の期待できない抗がん剤の継続投与に伴うがんの進行や副作用の増大を回避するためのマーカーとしても使用できる。
対照レベルとしては、例えば、PRにおけるカットオフ値が挙げられ、カットオフ値としては、ALAの場合に9.957≦であり、CYSの場合に2.444×10-1≦であり、CSSGの場合に1.430×10-2≦であり、HISの場合に2.2409≦であり、ILEの場合に2.997≦であり、LEUの場合に7.437≦であり、LYSの場合に4.945≦であり、METSFの場合に6.658×10-2≦であり、N6TLYの場合に8.401×10-2≦であり、SERの場合に2.200≦であり、THRの場合に2.753≦であり、TRPの場合に2.165≦であり、TYRの場合に2.084≦であり、VALの場合に8.317≦が挙げられる。
【0081】
ALA及びCSSGにより、対象とする抗がん剤に対する感受性を判定する、具体的には抗がん剤治療によりPRとなるか否かを判定するためには、抗がん剤投与前の段階において、がん患者由来の生体試料中のALA及びCSSGの量、例えば濃度を測定し、測定結果に応じて所定の数値を式(1)に代入すればよい。
【数7】
(式中、ALAは、ALAの測定結果がカットオフ値以上であった場合に2.5043を、カットオフ値未満であった場合に0を示し、CSSGは、CSSGの測定結果がカットオフ値以上であった場合に2.4626を、カットオフ値未満であった場合に0を示す。)
各物質のカットオフ値は、ALAの場合に9.957であり、CSSGの場合に1.430×10-2である。
【0082】
式(1)により算出されるpは、対象とするがん患者において対象とする抗がん剤の治療により腫瘍縮小が認められPRとなる確率を示す。pが0.5以上であれば、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性である、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPRとなると判定できるため、これら抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待出来る患者に対して積極的に治療を継続するためのPR予測マーカーとして使用できる。一方、pが0.5未満であれば、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性ではない、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPRとならないと判定できる。対象とする抗がん剤に対して感受性を有さない場合は、抗がん剤による腫瘍の制御を期待することができず、このような薬効の期待できない抗がん剤の投与が行なわれたり、続けられた場合、がんの進行、副作用の増大が危惧される。このように、本発明における抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待出来る患者に対して積極的に治療を継続するためのマーカーとして使用できるのに加え、薬効の期待できない抗がん剤の継続投与に伴うがんの進行や副作用の増大を回避するためのマーカーとしても使用できる。
【0083】
5A4CR、ALA、ASP、CSSG、GLC3P、HIS、ILE、LEU、N6TLY、N6ALY、OCTA、TUCA及びTHRから選ばれる1以上の分子により、対象とする抗がん剤に対する感受性を判定する、具体的には抗がん剤治療によりPDとなるか否かを判定するには、抗がん剤投与前の段階において、がん患者由来の生体試料中の5A4CR、ALA、ASP、CSSG、GLC3P、HIS、ILE、LEU、N6TLY、N6ALY、OCTA、TUCA及びTHRから選ばれる1以上の分子の量、例えば濃度を測定すればよい。5A4CR、ASP、N6ALY及びTUCAから選ばれる1以上の分子については、濃度が所定の対照レベルより高いと判断される濃度を有する場合、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性ではない、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPDとなると判定できる。また、ALA、CSSG、GLC3P、HIS、ILE、LEU、N6TLY、OCTA及びTHRから選ばれる1以上の分子については、濃度が所定の対照レベルより低いと判断される濃度を有する場合、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性ではない、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPDとなると判定できる。よって、これら抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待出来ない患者に対する治療継続を回避し、他の治療を優先するためのPD予測マーカーとして使用できる。一方、5A4CR、ASP、N6ALY及びTUCAから選ばれる1以上の分子について濃度が所定の対照レベルより低いと判断される濃度を有する場合、又はALA、CSSG、GLC3P、HIS、ILE、LEU、N6TLY、OCTA及びTHRから選ばれる1以上の分子について濃度が所定の対象レベルより高いと判断される濃度を有する場合は、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性である、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPDとならないと判定できる。対象とする抗がん剤に対し感受性を有する場合は、抗がん剤による腫瘍の制御や疾患進行の抑制等の治療効果が期待できる。このように、本発明における抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待出来ない患者に対する治療継続を回避し、他の治療を優先するためのマーカーとして使用できるのに加え、治療効果を期待出来る患者に対して治療を継続するためのマーカーとしても使用できる。
対照レベルとしては、例えば、PDにおけるカットオフ値が挙げられ、カットオフ値としては、5A4CRの場合に1.421×10-2≦であり、ALAの場合に<6.494であり、ASPの場合に0.1433≦であり、CSSGの場合に<8.630×10-3であり、GLC3Pの場合に<6.009×10-3であり、HISの場合に<2.366であり、ILEの場合に<2.748であり、LEUの場合に<6.413であり、N6TLYの場合に<8.030×10-2であり、N6ALYの場合に2.915×10-2≦であり、OCTAの場合に<6.767×10-2であり、TUCAの場合に2.380×10-3≦であり、THRの場合に<2.137が挙げられる。
【0084】
ASP、HIS、N6ALY及びTUCAにより、対象とする抗がん剤に対する感受性を判定する、具体的には抗がん剤治療によりPDとなるか否かを判定するためには、抗がん剤投与前の段階において、がん患者由来の生体試料中のASP、HIS、N6ALY及びTUCAの量、例えば濃度を測定し、測定結果に応じて所定の数値を、式(2)に代入すればよい。
【数8】
(式中、ASPは、ASPの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-1.0820を、カットオフ値未満であった場合に1.0820を示し、HISは、HISの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.7717を、カットオフ値未満であった場合に-1.7717を示し、N6ALYは、N6ALYの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-1.5499を、カットオフ値未満であった場合に1.5499を示し、TUCAは、TUCAの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-0.7905を、カットオフ値未満であった場合に0.7905を示す。)
各物質のカットオフ値は、ASPの場合に0.1433であり、HISの場合に2.366であり、N6ALYの場合に2.915×10-2であり、TUCAの場合に2.380×10-3である。
【0085】
式(2)により算出されるpは、対象とするがん患者において対象とする抗がん剤の治療により全く効果が得られずPDとなる確率を示す。pが0.5以上であれば、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性ではない、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPDとなると判定できるため、これら抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待できない患者に対する治療継続を回避し、他の治療を優先するためのPD予測マーカーとして使用できる。一方、pが0.5未満であれば、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性である、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPDとならないと判定できる。対象とする抗がん剤に対し感受性を有する場合は、抗がん剤による腫瘍の制御や疾患進行の抑制等の治療効果が期待できる。このように、本発明における抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待出来ない患者に対する治療継続を回避し、他の治療を優先するためのマーカーとして使用できるのに加え、治療効果を期待出来る患者に対して治療を継続するためのマーカーとしても使用できる。
【0086】
CSSGにより、がん患者の治療開始前の腫瘍径の和を判定するには、抗がん剤投与前において、がん患者由来の生体試料中のCSSGの量、例えば濃度を測定し、測定結果を式(3)に代入すればよい。ここで、当該がん患者としては、ベバシズマブ併用FOLFOX療法に不応・不耐であった患者が好ましく、この場合、該がん患者の二次治療開始前の腫瘍径の和を予測することができる。
【数9】
(式中、CSSGはCSSGの濃度を示す。)
【0087】
3IND、ALA、ASP、CITR、CREAT、CSSG、GABA、GUAA、HIS、HYPRO、METSF、N6TLY、N8ASR及びSERから選ばれる1以上の分子は、対象とする抗がん剤による治療時の予後予測マーカーとして使用でき、これらの予後予測マーカーのうち、PR及び/又はPD予測マーカーでもあるALA、ASP、CSSG、HIS、METSF、N6TLY及びSERが好ましい。3IND、ALA、ASP、CITR、CREAT、CSSG、GABA、GUAA、HIS、HYPRO、METSF、N6TLY、N8ASR及びSERから選ばれる1以上の分子により、対象とする抗がん剤による治療時の予後を予測するには、抗がん剤投与前の段階において、がん患者由来の生体試料中の3IND、ALA、ASP、CITR、CREAT、CSSG、GABA、GUAA、HIS、HYPRO、METSF、N6TLY、N8ASR及びSERから選ばれる1以上の分子の量、例えば濃度を測定すればよい。3IND、ALA、CITR、CREAT、CSSG、GABA、GUAA、HIS、HYPRO、METSF、N6TLY及びSERから選ばれる1以上の分子については、濃度が高いほど予後がよいと予測でき、例えば、所定の対照レベルより高いと判断される濃度を有する場合は、低いと判断される濃度を有する場合と比較して、予後がよいと予測できる。一方、ASP及びN8ASRから選ばれる1以上の分子については、濃度が低いほど予後がよいと予測でき、例えば、所定の対照レベルより低いと判断される濃度を有する場合は、高いと判断される濃度を有する場合と比較して、予後がよいと予測できる。予後予測は、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、無病生存期間(DFS)等の長短で表すことができるが、OSで表すことが特に好ましい。
対照レベルとしては、例えば、OSのカットオフ値を挙げることができ、3INDの場合に1.050×10-1であり、ALAの場合に5.1960であり、ASPの場合に1.433×10-1であり、CITRの場合に4.660×10-1であり、CREATの場合に1.0399であり、CSSGの場合に1.430×10-2であり、GABAの場合に5.450×10-2であり、GUAAの場合に5.500×10-2であり、HISの場合に2.2409であり、HYPROの場合に1.890×10-1であり、METSFの場合に9.1900×10-2であり、N6TLYの場合に8.401×10-2であり、N8ASRの場合に8.401×10-2であり、SERの場合に0.1890が挙げられる。
【0088】
CREAT、CSSG、METSF、QUINA及びVALから選ばれる1以上の分子により、対象とする抗がん剤に対する感受性を判定する、具体的には抗がん剤治療によりPRとなるか否かを判定するには、抗がん剤治療1サイクル実施後において、がん患者由来の生体試料中のCREAT、CSSG、METSF、QUINA及びVALから選ばれる1以上の分子の量、例えば濃度を測定すればよい。CREAT、CSSG、METSF及びVALから選ばれる1以上の分子については、濃度が所定の対照レベルより高いと判断される濃度を有する場合は、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性である、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPRとなると判定できる。また、QUINAについては、濃度が所定の対照レベルより低いと判断される濃度を有する場合は、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性である、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPRとなると判定できる。よって、これら抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待出来る患者に対して積極的に治療を継続するためのPR予測マーカーとして使用できる。一方、CREAT、CSSG、METSF及びVALから選ばれる1以上の分子について濃度が所定の対照レベルより低いと判断される濃度を有する場合、又はQUINAについて濃度が所定の対照レベルより高いと判断される濃度を有する場合は、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性ではない、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPRとならないと判定できる。対象とする抗がん剤に対して感受性を有さない場合は、抗がん剤による腫瘍の制御を期待することができず、このような薬効の期待できない抗がん剤の投与が行なわれたり、続けられた場合、がんの進行、副作用の増大が危惧される。このように、本発明における抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待出来る患者に対して積極的に治療を継続するためのマーカーとして使用できるのに加え、薬効の期待できない抗がん剤の継続投与に伴うがんの進行や副作用の増大を回避するためのマーカーとしても使用できる。
対照レベルとしては、例えば、PRにおけるカットオフ値が挙げられ、カットオフ値としては、CREATの場合に1.2163≦であり、CSSGの場合に1.965×10-2≦であり、METSFの場合に5.060×10-2≦であり、QUINAの場合に<1.150×10-2であり、VALの場合に7.6718≦が挙げられる。
【0089】
CREAT、CSSG及びQUINAにより、対象とする抗がん剤に対する感受性を判定する、具体的には抗がん剤治療によりPRとなるか否かを判定するためには、抗がん剤治療1サイクル実施後の段階において、がん患者由来の生体試料中のCREAT、CSSG及びQUINAの量、例えば濃度を測定し、測定結果に応じて所定の数値を式(4)に代入すればよい。
【数10】
(式中、CREATは、CREATの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.2906を、カットオフ値未満であった場合に-1.2906を示し、CSSGは、CSSGの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.7703を、カットオフ値未満であった場合に-1.7703を示し、QUINAは、QUINAの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-8.6990を、カットオフ値未満であった場合に8.6990を示す。)
各物質のカットオフ値は、CREATの場合に1.2163であり、CSSGの場合に1.965×10-2であり、QUINAの場合に1.150×10-2である。
【0090】
式(4)により算出されるpは、対象とするがん患者において対象とする抗がん剤の治療により腫瘍縮小が認められPRとなる確率を示す。pが0.5を超えれば、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性である、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPRとなると判定できるため、これら抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待出来る患者に対して積極的に治療を継続するためのPR予測マーカーとして使用できる。一方、pが0.5以下であれば、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性ではない、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPRとならないと判定できる。対象とする抗がん剤に対して感受性を有さない場合は、抗がん剤による腫瘍の制御を期待することができず、このような薬効の期待できない抗がん剤の投与が行なわれたり、続けられた場合、がんの進行、副作用の増大が危惧される。このように、本発明における抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待出来る患者に対して積極的に治療を継続するためのマーカーとして使用できるのに加え、薬効の期待できない抗がん剤の継続投与に伴うがんの進行や副作用の増大を回避するためのマーカーとしても使用できる。
【0091】
5A4CR、CSSG、DECNA、GLC3P、HYPTA及びN8ASRから選ばれる1以上の分子により、対象とする抗がん剤に対する感受性を判定する、具体的には抗がん剤治療によりPDとなるか否かを判定するには、抗がん剤治療1サイクル実施後の段階において、がん患者由来の生体試料中の5A4CR、CSSG、DECNA、GLC3P、HYPTA及びN8ASRから選ばれる1以上の分子の量、例えば濃度を測定すればよい。5A4CR及びN8ASRから選ばれる1以上の分子については、濃度が所定の対照レベルより高いと判断される濃度を有する場合、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性ではない、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPDとなると判定できる。また、CSSG、DECNA、GLC3P及びHYPTAから選ばれる1以上の分子については、濃度が所定の対照レベルより低いと判断される濃度を有する場合、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性ではない、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPDとなると判定できる。よって、これら抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待出来ない患者に対する治療継続を回避し、他の治療を優先するためのPD予測マーカーとして使用できる。一方、5A4CR及びN8ASRから選ばれる1以上の分子について濃度が所定の対照レベルより低いと判断される濃度を有する場合、又はCSSG、DECNA、GLC3P及びHYPTAから選ばれる1以上の分子について濃度が所定の対象レベルより高いと判断される濃度を有する場合は、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性である、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPDとならないと判定できる。対象とする抗がん剤に対し感受性を有する場合は、抗がん剤による腫瘍の制御や疾患進行の抑制等の治療効果が期待できる。このように、本発明における抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待出来ない患者に対する治療継続を回避し、他の治療を優先するためのマーカーとして使用できるのに加え、治療効果を期待出来る患者に対して治療を継続するためのマーカーとしても使用できる。
対照レベルとしては、例えば、PDにおけるカットオフ値が挙げられ、カットオフ値としては、5A4CRの場合に1.413×10-2≦であり、CSSGの場合に<1.030×10-2であり、DECNAの場合に<1.080×10-1であり、GLC3Pの場合に<4.586×10-1であり、HYPTAの場合に<1.240×10-2であり、N8ASRの場合に1.122×10-2≦が挙げられる。
【0092】
5A4CR、CSSG、DECNA、HYPTA及びN8ASRにより、対象とする抗がん剤に対する感受性を判定する、具体的には抗がん剤治療によりPDとなるか否かを判定するためには、抗がん剤治療1サイクル実施後の段階において、がん患者由来の生体試料中の5A4CR、CSSG、DECNA、HYPTA及びN8ASRの量、例えば濃度を測定し、測定結果に応じて所定の数値を、式(5)に代入すればよい。
【数11】
(式中、5A4CRは、5A4CRの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-0.9300を、カットオフ値未満であった場合に0.9300を示し、CSSGは、CSSGの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.2325を、カットオフ値未満であった場合に-1.2325を示し、DECNAは、DECNAの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.3052を、カットオフ値未満であった場合に-1.3052を示し、HYPTAは、HYPTAの測定結果がカットオフ値以上であった場合に0.8020を、カットオフ値未満であった場合に-0.8020を示し、N8ASRは、N8ASRの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-1.4363を、カットオフ値未満であった場合に1.4363を示す。)
各物質のカットオフ値は、5A4CRの場合に1.413×10-2であり、CSSGの場合に1.030×10-2であり、DECNAの場合に1.080×10-1であり、HYPTAの場合に1.240×10-2であり、N8ASRの場合に1.122×10-2である。
【0093】
式(5)により算出されるpは、対象とするがん患者において対象とする抗がん剤の治療により全く効果が得られずPDとなる確率を示す。pが0.5を超えれば、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性ではない、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPDとなると判定できるため、これら抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待できない患者に対する治療継続を回避し、他の治療を優先するためのPD予測マーカーとして使用できる。一方、pが0.5以下であれば、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性である、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPDとならないと判定できる。対象とする抗がん剤に対し感受性を有する場合は、抗がん剤による腫瘍の制御や疾患進行の抑制等の治療効果が期待できる。このように、本発明における抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待出来ない患者に対する治療継続を回避し、他の治療を優先するためのマーカーとして使用できるのに加え、治療効果を期待出来る患者に対して治療を継続するためのマーカーとしても使用できる。
【0094】
4OVAL、ALA、BENZA、CREAT、CSSG、LYS及びSARCOから選ばれる1以上の分子により、対象とする抗がん剤に対する感受性を判定する、具体的には抗がん剤治療によりPRとなるか否かを判定するには、抗がん剤治療2サイクル実施後において、がん患者由来の生体試料中の4OVAL、ALA、BENZA、CREAT、CSSG、LYS及びSARCOから選ばれる1以上の分子の量、例えば濃度を測定すればよい。濃度が所定の対照レベルより高いと判断される濃度を有する場合は、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性である、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPRとなると判定できるため、これら抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待出来る患者に対して積極的に治療を継続するためのPR予測マーカーとして使用できる。一方、濃度が所定の対照レベルより低いと判断される濃度を有する場合は、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性ではない、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPRとならないと判定できる。対象とする抗がん剤に対して感受性を有さない場合は、抗がん剤による腫瘍の制御を期待することができず、このような薬効の期待できない抗がん剤の投与が行なわれたり、続けられた場合、がんの進行、副作用の増大が危惧される。このように、本発明における抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待出来る患者に対して積極的に治療を継続するためのマーカーとして使用できるのに加え、薬効の期待できない抗がん剤の継続投与に伴うがんの進行や副作用の増大を回避するためのマーカーとしても使用できる。
対照レベルとしては、例えば、PRにおけるカットオフ値が挙げられ、カットオフ値としては、4OVALの場合に2.949×10-2≦であり、ALAの場合に7.9605≦であり、BENZAの場合に1.367×10-1≦であり、CREATの場合に6.609×10-1≦であり、CSSGの場合に1.233×10-2≦であり、LYSの場合に4.9765≦であり、SARCOの場合に4.548×10-2≦が挙げられる。
【0095】
4OVAL、BENZA及びLYSにより、対象とする抗がん剤に対する感受性を判定する、具体的には抗がん剤治療によりPRとなるか否かを判定するためには、抗がん剤治療2サイクル実施後の段階において、がん患者由来の生体試料中の4OVAL、BENZA及びLYSの量、例えば濃度を測定し、測定結果に応じて所定の数値を式(6)に代入すればよい。
【数12】
(式中、4OVALは、4OVALの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.2359を、カットオフ値未満であった場合に-1.2359を示し、BENZAは、BENZAの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.1105を、カットオフ値未満であった場合に-1.1105を示し、LYSは、LYSの測定結果がカットオフ値以上であった場合に0.8767を、カットオフ値未満であった場合に-0.8767を示す。)
各物質のカットオフ値は、4OVALの場合に2.949×10-2であり、BENZAの場合に1.367×10-1であり、LYSの場合に4.9765である。
【0096】
式(6)により算出されるpは、対象とするがん患者において対象とする抗がん剤の治療により腫瘍縮小が認められPRとなる確率を示す。pが0.5を超えれば、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性である、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPRとなると判定できるため、これら抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待出来る患者に対して積極的に治療を継続するためのPR予測マーカーとして使用できる。一方、pが0.5以下であれば、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性ではない、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPRとならないと判定できる。対象とする抗がん剤に対して感受性を有さない場合は、抗がん剤による腫瘍の制御を期待することができず、このような薬効の期待できない抗がん剤の投与が行なわれたり、続けられた場合、がんの進行、副作用の増大が危惧される。このように、本発明における抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待出来る患者に対して積極的に治療を継続するためのマーカーとして使用できるのに加え、薬効の期待できない抗がん剤の継続投与に伴うがんの進行や副作用の増大を回避するためのマーカーとしても使用できる。
【0097】
3IND、4OVAL、5A4CR、ALA、CSSG、GABB及びTMNOから選ばれる1以上の分子により、対象とする抗がん剤に対する感受性を判定する、具体的には抗がん剤治療によりPDとなるか否かを判定するには、抗がん剤治療2サイクル実施後の段階において、がん患者由来の生体試料中の3IND、4OVAL、5A4CR、ALA、CSSG、GABB及びTMNOから選ばれる1以上の分子の量、例えば濃度を測定すればよい。5A4CR及びGABBから選ばれる1以上の分子については、濃度が所定の対照レベルより高いと判断される濃度を有する場合、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性ではない、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPDとなると判定できる。また、3IND、4OVAL、ALA、CSSG及びTMNOから選ばれる1以上の分子については、濃度が所定の対照レベルより低いと判断される濃度を有する場合、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性ではない、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPDとなると判定できる。よって、これら抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待出来ない患者に対する治療継続を回避し、他の治療を優先するためのPD予測マーカーとして使用できる。一方、5A4CR及びGABBから選ばれる1以上の分子について濃度が所定の対照レベルより低いと判断される濃度を有する場合、又は3IND、4OVAL、ALA、CSSG及びTMNOから選ばれる1以上の分子について濃度が所定の対象レベルより高いと判断される濃度を有する場合は、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性である、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPDとならないと判定できる。対象とする抗がん剤に対し感受性を有する場合は、抗がん剤による腫瘍の制御や疾患進行の抑制等の治療効果が期待できる。このように、本発明における抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待出来ない患者に対する治療継続を回避し、他の治療を優先するためのマーカーとして使用できるのに加え、治療効果を期待出来る患者に対して治療を継続するためのマーカーとしても使用できる。
対照レベルとしては、例えば、PDにおけるカットオフ値が挙げられ、カットオフ値としては、3INDの場合に<6.129×10-2であり、4OVALの場合に<1.346×10-2であり、5A4CRの場合に2.052×10-2≦であり、ALAの場合に<7.3693であり、CSSGの場合に<1.273×10-2であり、GABBの場合に5.117×10-2≦であり、TMNOの場合に<2.689×10-1が挙げられる。
【0098】
3IND、5A4CR、CSSG、GABB及びTMNOにより、対象とする抗がん剤に対する感受性を判定する、具体的には抗がん剤治療によりPDとなるか否かを判定するためには、抗がん剤治療2サイクル実施後の段階において、がん患者由来の生体試料中の3IND、5A4CR、CSSG、GABB及びTMNOの量、例えば濃度を測定し、測定結果に応じて所定の数値を、式(7)に代入すればよい。
【数13】
(式中、3INDは、3INDの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.4853を、カットオフ値未満であった場合に-1.4853を示し、5A4CRは、5A4CRの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-1.0356を、カットオフ値未満であった場合に1.0356を示し、CSSGは、CSSGの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.1004を、カットオフ値未満であった場合に-1.1004を示し、GABBは、GABBの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-1.2343を、カットオフ値未満であった場合に1.2343を示し、TMNOは、TMNOの測定結果がカットオフ値以上であった場合に0.9992を、カットオフ値未満であった場合に-0.9992を示す。)
各物質のカットオフ値は、3INDの場合に6.129×10-2であり、5A4CRの場合に2.052×10-2であり、CSSGの場合に1.273×10-2であり、GABBの場合に5.117×10-2であり、TMNOの場合に2.689×10-1である。
【0099】
式(7)により算出されるpは、対象とするがん患者において対象とする抗がん剤の治療により全く効果が得られずPDとなる確率を示す。pが0.5を超えれば、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性ではない、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPDとなると判定できるため、これら抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待できない患者に対する治療継続を回避し、他の治療を優先するためのPD予測マーカーとして使用できる。一方、pが0.5以下であれば、当該がん患者のがんは対象とする抗がん剤に対して感受性である、すなわち当該がん患者は対象とする抗がん剤の治療によりPDとならないと判定できる。対象とする抗がん剤に対し感受性を有する場合は、抗がん剤による腫瘍の制御や疾患進行の抑制等の治療効果が期待できる。このように、本発明における抗がん剤感受性判定マーカーは、治療効果を期待出来ない患者に対する治療継続を回避し、他の治療を優先するためのマーカーとして使用できるのに加え、治療効果を期待出来る患者に対して治療を継続するためのマーカーとしても使用できる。
【0100】
1MNA、2H4MP、3IND、3MHIS、5A4CR、ASP、CHCA、CSSG、GABA、HIPA、HYPX、MUCA、N8ASR及びTAURから選ばれる1以上の分子は、対象とする抗がん剤による治療時の予後予測マーカーとして使用でき、これらの予後予測マーカーのうち、PR及び/又はPD予測マーカーでもある3IND、5A4CR、CSSG及びN8ASRが好ましい。1MNA、2H4MP、3IND、3MHIS、ASP、CHCA、CSSG、GABA、HIPA、HYPX及びN8ASRから選ばれる1以上の分子により、対象とする抗がん剤による治療時の予後を予測するには、抗がん剤治療1サイクル実施後において、がん患者由来の生体試料中の1MNA、2H4MP、3IND、3MHIS、ASP、CHCA、CSSG、GABA、HIPA、HYPX及びN8ASRから選ばれる1以上の分子の量、例えば濃度を測定すればよい。2H4MP、3IND、3MHIS、CHCA、CSSG、GABA及びHIPAから選ばれる1以上の分子については、濃度が高いほど予後がよいと予測でき、例えば、所定の対照レベルより高いと判断される濃度を有する場合は、低いと判断される濃度を有する場合と比較して、予後がよいと予測できる。一方、1MNA、ASP、HYPX及びN8ASRから選ばれる1以上の分子については、濃度が低いほど予後がよいと予測でき、例えば、所定の対照レベルより低いと判断される濃度を有する場合は、高いと判断される濃度を有する場合と比較して、予後がよいと予測できる。2H4MP、3IND、5A4CR、GABA、MUCA及びTAURから選ばれる1以上の分子により、対象とする抗がん剤による治療時の予後を予測するには、抗がん剤治療2サイクル実施後において、がん患者由来の生体試料中の2H4MP、3IND、5A4CR、GABA、MUCA及びTAURから選ばれる1以上の分子の量、例えば濃度を測定すればよい。2H4MP、3IND、GABA及びMUCAから選ばれる1以上の分子については、濃度が高いほど予後がよいと予測でき、例えば、所定の対照レベルより高いと判断される濃度を有する場合は、低いと判断される濃度を有する場合と比較して、予後がよいと予測できる。一方、5A4CR及びTAURから選ばれる1以上の分子については、濃度が低いほど予後がよいと予測でき、例えば、所定の対照レベルより低いと判断される濃度を有する場合は、高いと判断される濃度を有する場合と比較して、予後がよいと予測できる。予後予測は、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、無病生存期間(DFS)等の長短で表すことができるが、OSで表すことが好ましく、抗がん剤治療1サイクル又は2サイクル実施後の残余のOSで表すことが特に好ましい。
対照レベルとしては、例えば、OSのカットオフ値を挙げることができ、1MNAの場合に0であり、2H4MPの場合に抗がん剤治療1サイクル実施後において3.126×10-3であり、抗がん剤治療2サイクル実施後において5.242×10-3であり、3INDの場合に抗がん剤治療1サイクル実施後において1.050×10-1であり、抗がん剤治療2サイクル実施後において3.820×10-2であり、3MHISの場合に1.031×10-1であり、5A4CRの場合に0であり、ASPの場合に1.433×10-1であり、CHCAの場合に1.069×10-2であり、CSSGの場合に9.367×10-3であり、GABAの場合に抗がん剤治療1サイクル実施後において3.624×10-2であり、抗がん剤治療2サイクル実施後において4.354×10-2であり、HIPAの場合に3.884×10-2であり、HYPXの場合に5.846×10-2であり、MUCAの場合に1.025×10-2であり、N8ASRの場合に1.122×10-2であり、TAURの場合に4.661×10-1が挙げられる。
【0101】
抗がん剤治療開始前に本発明の抗がん剤感受性又は腫瘍径の和の判定方法を実施するには、検体中の5A4CR、ALA、ASP、CYS、CSSG、GLC3P、HIS、ILE、LEU、LYS、METSF、N6TLY、N6ALY、OCTA、SER、TUCA、THR、TRP、TYR及びVALから選ばれる1以上の分子を測定するためのプロトコールを含むキットを用いるのが好ましい。また、抗がん剤治療開始前に本発明の予後予測方法を実施するには、検体中の3IND、ALA、ASP、CITR、CREAT、CSSG、GABA、GUAA、HIS、HYPRO、METSF、N6TLY、N8ASR及びSERから選ばれる1以上の分子を測定するためのプロトコールを含むキットを用いるのが好ましい。当該キットには、これら代謝物質の測定試薬、及びプロトコール(測定試薬の使用方法、及び抗がん剤感受性の有無を判定するための基準等)が含まれる。当該基準には、これら代謝物質の標準濃度、高いと判断される濃度、低いと判断される濃度、測定結果に影響を与える要因とその影響の程度等が含まれ、これらの濃度は対象とする抗がん剤ごとに設定することが可能である。当該基準を用いて、前記のように判定又は予測することができる。
【0102】
抗がん剤治療開始後早期に本発明の抗がん剤感受性の判定方法を実施するには、検体中の3IND、4OVAL、5A4CR、ALA、BENZA、CREAT、CSSG、DECNA、GABB、GLC3P、HYPTA、LYS、METSF、N8ASR、QUINA、SARCO、TMNO及びVALから選ばれる1以上の分子を測定するためのプロトコールを含むキットを用いるのが好ましい。また、抗がん剤治療開始後早期に本発明の予後予測方法を実施するには、検体中の1MNA、2H4MP、3IND、3MHIS、5A4CR、ASP、CHCA、CSSG、GABA、HIPA、HYPX、MUCA、N8ASR及びTAURから選ばれる1以上の分子を測定するためのプロトコールを含むキットを用いるのが好ましい。当該キットには、これら代謝物質の測定試薬、及びプロトコール(測定試薬の使用方法、及び抗がん剤感受性の有無を判定するための基準等)が含まれる。当該基準には、これら代謝物質の標準濃度、高いと判断される濃度、低いと判断される濃度、測定結果に影響を与える要因とその影響の程度等が含まれ、これらの濃度は対象とする抗がん剤ごとに設定することが可能である。当該基準を用いて、前記のように判定又は予測することができる。
【0103】
また、抗がん剤の存在下、がん細胞株又は担癌動物由来の生体試料中の5A4CR、ALA、ASP、CYS、CSSG、GLC3P、HIS、ILE、LEU、LYS、METSF、N6TLY、N6ALY、OCTA、SER、TUCA、THR、TRP、TYR、VAL、3IND、CITR、CREAT、GABA、GUAA、HYPRO及びN8ASRから選ばれる1以上の分子の発現変動を指標とすることにより抗がん剤感受性亢進剤のスクリーニングが可能となる。
すなわち、がん細胞株又は担癌動物に抗がん剤及び試験物質を添加又は投与し、がん細胞株又は担癌動物由来の生体試料中の5A4CR、ALA、ASP、CYS、CSSG、GLC3P、HIS、ILE、LEU、LYS、METSF、N6TLY、N6ALY、OCTA、SER、TUCA、THR、TRP、TYR、VAL、3IND、CITR、CREAT、GABA、GUAA、HYPRO及びN8ASRから選ばれる1以上の分子の濃度を測定する工程、及び当該濃度の変動に基づいて、前記がん細胞株又は担癌動物の前記抗がん剤に対する感受性を亢進する試験物質を選択する工程を行うことにより、前記抗がん剤に対する感受性亢進剤をスクリーニングすることができる。
【0104】
例えば、ALA、CYS、CSSG、GLC3P、HIS、ILE、LEU、LYS、METSF、N6TLY、OCTA、SER、THR、TRP、TYR、VAL、3IND、CITR、CREAT、GABA、GUAA及びHYPROから選ばれる1以上の分子について、抗がん剤存在下、これらの代謝物質の発現変動、具体的には濃度の上昇を指標とすれば、抗がん剤感受性亢進剤がスクリーニングできる。すなわち、in vitro又はin vivoにおいてこれらの代謝物質の濃度を上昇させる物質は、抗がん剤感受性を亢進する。例えば、in vitroでは、各種がん細胞株において抗がん剤の存在下でこれらの代謝物質の濃度を上昇させる物質は、当該がん細胞株の当該抗がん剤感受性を亢進する物質(抗がん剤感受性亢進剤)である。またin vivoでは、担癌動物における抗がん剤投与前後において、これらの代謝物質の濃度を上昇させる物質は、当該担癌動物の当該抗がん剤感受性を亢進する物質(抗がん剤感受性亢進剤)である。
【0105】
また、例えば、5A4CR、ASP、N6ALY、TUCA及びN8ASRから選ばれる1以上の分子について、抗がん剤存在下、これらの代謝物質の発現変動、具体的には濃度の低下を指標とすれば、抗がん剤感受性亢進剤がスクリーニングできる。すなわち、in vitro又はin vivoにおいてこれらの代謝物質の濃度を低下させる物質は、抗がん剤感受性を亢進する。例えば、in vitroでは、各種がん細胞株において抗がん剤の存在下でこれらの代謝物質の濃度を低下させる物質は、当該がん細胞株の当該抗がん剤感受性を亢進する物質(抗がん剤感受性亢進剤)である。またin vivoでは、担癌動物における抗がん剤投与前後において、これらの代謝物質の濃度を低下させる物質は、当該担癌動物の当該抗がん剤感受性を亢進する物質(抗がん剤感受性亢進剤)である。
【0106】
かくして得られた抗がん剤感受性亢進剤と感受性亢進の対象となる抗がん剤とを併用すれば、当該抗がん剤の治療効果が飛躍的に向上する。抗がん剤感受性亢進剤と感受性亢進の対象となる抗がん剤とを組み合せた形態としては、それらの成分の両方を含む一の組成物であってもよく、それぞれ別個の製剤の組み合せであってもよい。また、それらの成分はそれぞれ別の投与経路であってもよい。ここで用いられる対象となる抗がん剤は、イリノテカン、SN-38又はそれらの塩とフルオロウラシル又はその塩とレボホリナート又はその塩を含む抗がん剤であり、この抗がん剤と組み合わせて使用する他の抗がん剤としては特に限定されないが、例えばオキサリプラチン(oxaliplatin)、シクロフォスファミド(cyclophosphamide)、イフォスファミド(ifosfamide)、チオテパ(thiotepa)、メルファラン(melphalan)、ブスルファン(busulfan)、ニムスチン(nimustine)、ラニムスチン(ranimustine)、ダカルバジン(dacarbazine)、プロカルバジン(procarbazine)、テモゾロミド(temozolomide)、シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、ネダプラチン(nedaplatin)、メトトレキサート(methotrexate)、ペメトレキセド(pemetrexed)、テガフール/ウラシル(tegaful・uracil)、ドキシフルリジン(doxifluridine)、テガフール/ギメラシル/オテラシル(tegaful・gimeracil・oteracil)、カペシタビン(capecitabine)、シタラビン(cytarabine)、エノシタビン(enocitabine)、ゲムシタビン(gemcitabine)、6-メルカプトプリン(6-mercaptopurine)、フルダラビン(fuludarabin)、ペントスタチン(pentostatin)、クラドリビン(cladribine)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、ドキソルビシン(doxorubicin)、エピルビシン(epirubicin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、イダルビシン(idarubicine)、ピラルビシン(pirarubicin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、アムルビシン(amurubicin)、アクチノマイシンD(actinomycin D)、ブレオマイシン(bleomycine)、ペプレオマイシン(pepleomycin)、マイトマイシンC(mytomycin C)、アクラルビシン(aclarubicin)、ジノスタチン(zinostatin)、ビンクリスチン(vincristine)、ビンデシン(vindesine)、ビンブラスチン(vinblastine)、ビノレルビン(vinorelbine)、パクリタキセル(paclitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、ノギテカン(nogitecan、topotecan)、エトポシド(etoposide)、プレドニゾロン(prednisolone)、デキサメタゾン(dexamethasone)、タモキシフェン(tamoxifen)、トレミフェン(toremifene)、メドロキシプロゲステロン(medroxyprogesterone)、アナストロゾール(anastrozole)、エキセメスタン(exemestane)、レトロゾール(letrozole)、リツキシマブ(rituximab)、イマチニブ(imatinib)、ゲフィチニブ(gefitinib)、ゲムツズマブ・オゾガマイシン(gemtuzumab ozogamicin)、ボルテゾミブ(bortezomib)、エルロチニブ(erlotinib)、セツキシマブ(cetuximab)、ベバシズマブ(bevacizumab)、スニチニブ(sunitinib)、ソラフェニブ(sorafenib)、ダサチニブ(dasatinib)、パニツムマブ(panitumumab)、ラムシルマブ(ramucirumab)、アフリベルセプト(aflibercept)、アスパラギナーゼ(asparaginase)、トレチノイン(tretinoin)、三酸化ヒ素(arsenic trioxide)、又はそれらの塩、又はそれらの活性代謝物等が挙げられる。このうち、セツキシマブ、ベバシズマブ等の血管新生阻害薬又はオキサリプラチンが好ましく、血管新生阻害薬がさらに好ましく、ベバシズマブが特に好ましい。
【実施例
【0107】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0108】
実施例1
(1)方法
(a)試薬
LC/MS用メタノール(和光純薬工業製)、HPLC用クロロホルム(和光純薬工業製)、逆浸透水(Direct-Q UV、Millipore製)を溶解及びサンプル調製に用いた。
LC/MS用内部標準溶液(カチオン)として、Internal Standard Solution Compound C1(ISC1)及びInternal Standard Solution Compound C2(ISC2)を使用した。ISC1は、水溶液中に10mMのL-methionine sulfone(Human Metabolome Technologies製)を含み、ISC2は、水溶液中に10mMのL-Arginine-13 hydrochloride(Sigma-Aldrich製)、L-Asparagine-15 monohydrate(Cambridge Isotope Laboratories製)、β-Alanine-133, 15N(Sigma-Aldrich製)とTubercidin(Sigma-Aldrich製)を含む。
LC/MS用内部標準溶液(アニオン)として、Internal Standard Solution Compound A1(ISA1)及びInternal Standard Solution compound A2(ISA2)を使用した。ISA1は、水溶液中に10mMのD-camphor-10-sulfonic acid sodium salt(Human Metabolome Technologies製)を含み、ISA2は、水溶液中に10mMのchloranilic acid(東京化成工業製)を含む。
これらの内部標準溶液は、信号強度を標準化し、遊走時間を調整するのに用いた。また、ISC1及びISA1は得られた各代謝物の相対的な濃度を算出するためにも用いた。
【0109】
(b)臨床サンプル
(b-1)患者背景
組織学的に確認されたFOLFOX療法不応・不耐の進行結腸・直腸癌(ACRC)患者で、FOLFIRI+Bevacizumab療法の第二相試験に登録された患者から、前向きに血清サンプルを採取した。本試験に登録された患者89例のうち、本試験の独立外部レビュー・ボードによりResponse Evaluation Criteria in Solid Tumors Guideline(RECIST) 1.0に基づき抗腫瘍効果の判定が可能であった82例の患者を効果予測代謝物の解析対象とした。本研究の登録基準(適格性)は以下の通りである。
・登録時の年齢が20歳以上
・Eastern Corporative Oncology Group(ECOG)のPerformance status(PS)が0あるいは1
・結腸・直腸癌であることが組織病理学的に確認されている
・治癒切除不能な進行・再発症例
・前治療としてFOLFOX等が施行され、不応又は不耐となった
・CPT-11による前治療がない
・UGT1A1*28、UGT1A1*6の遺伝子検査により、ワイルド群又はヘテロ群であると判明している
・予測生存期間が3ヵ月以上
・主要臓器に重大な機能障害がない
・本試験登録前に、遺伝子多型検査やプロテオーム・メタボローム分析を含む試験の参加について、患者本人による署名、日付が記載された同意書が得られている。
なお、本試験の患者背景や臨床試験の詳細は、Suenaga M, et. al., BMC Cancer. (2015) 15: 176 に記載されている。
【0110】
(b-2)患者への治療
全ての患者は、bevacizumab(BV)5mg/kg、irinotecan (CPT-11)180mg/mとlevofolinate(l-LV)200mg/m、5-FU 400mg/mのbolus投与に引き続き5-FU 2400mg/mを静脈内に投与された。この治療は、2週ごとに繰り返された。
疾患進行、更なる試験治療を中止しなければならない有害事象の出現、医師の判断、患者からの試験治療継続の拒否、腫瘍の治癒切除手術に移行などがない限り、試験治療として最長24サイクル継続した。
【0111】
(b-3)抗腫瘍効果の評価
抗腫瘍効果は、独立外部レビュー・ボードによってResponse Evaluation Criteria in Solid Tumors Guideline(RECIST) 1.0に基づき評価した。
治療前の腫瘍径の総和は、登録前1ヵ月以内のコンピューター断層装置又は磁気共鳴画像によって撮影された画像を用いて計測した、そして、治療開始後は治療前と同様の方法で8週ごと繰り返し撮影された画像を用いて計測した。
【0112】
(b-4)サンプルの採取
血液サンプルは、化学療法開始前2週間以内と化学療法開始後から第8治療サイクルまでは各治療サイクルの化学療法実施後2週後に採取し、その後は画像診断を行った治療サイクルの次のCPT-11の投与前に採取した。
採取した血液検体は、室温で15分の間放置し凝固させた後、4℃で30分間、3000rpmで遠心した。その後、血清は4つのポリプロピレン管に等しい量ずつ移し、液体窒素で直ちに凍結した。全てのこれらの手順は、採血から1時間以内で終了した。血清サンプルは、分析までの間-80℃で保管した。
【0113】
(b-5)サンプルの調製
サンプル調製は、既報告の方法(J Proteome Res.2003 Sep-Oct;2(5):488-94,Metabolomics.2010 Mar;6(1):78-95,Metabolomics.2013 Apr;9(2):444-453)に準じて行った。血清サンプルは氷上で解凍し、1800μLのメタノールを入れた遠沈管に200μLの血清と内部標準(ISA1あるいはISC1 10μM)とクロロホルム2000μL及び逆浸透水800μLを入れ混合した。vortexingしたあと、混合物は4℃、5分間、4600gで遠心分離した。その後、上層の1500μLをタンパク質の除去のため5kDaフィルタ(Millipore製)に移し、4℃、9100gで2~4時間遠心ろ過した。濾過液は、減圧遠心分離機によって乾燥した。CE-TOF MS分析の直前に、乾燥した濾過液は氷の上でISC2あるいはISA2を終濃度0.1mMで含む逆浸透水50μLに溶解し、分析バイアルに入れ4℃、10分間、1000gで遠心し、分析に供した。
【0114】
(c)CE-TOF MSによるサンプル中の代謝物質測定
全てのサンプルは、duplicateで測定した。CE-Q-TOF MSを用いて陽イオン測定条件で、また、CE-TOF MSを用いて陰イオン測定条件で、質量数1000以下の代謝物質を網羅的に測定した。
【0115】
(c-1)カチオン性代謝物質測定条件
1)測定機器
カチオン性代謝物質の測定には、Agilent 7100 CE systemを装備したAgilent 6530 Accurate-Mass Q-TOF MS system(Agilent Technologies製)を使用した。キャピラリーには、Human Metabolome Technologies,Inc.(HMT)のcatalogue number(Cat.No.)H3305-2002のフュ-ズドシリカキャピラリー(内径50μm、全長80cm)を用いた。緩衝液には、HMTのCat.No.3301-1001の緩衝液を用いた。印加電圧は+27kv、キャピラリー温度は20℃で測定した。試料は加圧法を用いて50mbarで10秒間注入した。
【0116】
2)飛行時間型質量分析計(Q-TOF MS)の分析条件
カチオンモードを用い、イオン化電圧は4kv、フラグメンター電圧は80v、スキマー電圧は50v、octRFV電圧は650vに設定した。乾燥ガスには窒素を使用し、温度300℃、圧力5psigに設定した。シース液はHMTのCat.No.H3301-1020のシース液を使用した。reference massはm/z 65.059706及びm/z 622.08963に設定した。
【0117】
(c-2)アニオン性代謝物質測定条件
1)測定機器
アニオン性代謝物質の測定には、Agilent 1600 CE systemを装備したAgilent 6210 TOF system(Agilent Technologies製)を使用し、キャピラリー及びその温度はアニオンと同じ設定のものを使用した。緩衝液には、HMTのCat.No.H3302-1021の緩衝液を用いた。印加電圧は30kv、試料は加圧法を用いて50mBarで25秒間で注入した。
【0118】
2)飛行時間型質量分析計(TOF MS)の分析条件
ニューアニオンモードを用い、イオン化電圧は3.5kv、フラグメンター電圧は125v、スキマー電圧は50v、octRFV電圧は175vに設定した。乾燥ガス及びシース液は、陽イオンと同じものを同じ条件で使用した。reference massはm/z 51.013854及びm/z 680.035541に設定した。
【0119】
(c-3)データ処理
m/z、遊走時間(MT)とピークの領域を含むピークの情報を得るために、CE-Q-TOF MSあるいはCE-TOF MSによって見つけられたピークの生データはMaster Hands自動統合ソフトウェア version 2.0(慶應義塾大学製)によって処理した。当該ソフトウェアにより、全てのピークを見つけ、ノイズを除去し、代謝物の注釈と相対的なピーク面積を含むデータマトリクスを生成した。ピークは、CEから得られるm/zとTOF MSから得られるMTを元に、HMTのメタボライト・データベースから推定される代謝物名を注釈としてつけた。アニオンのピークに注釈をつけるMT、m/z、最小限のS/N比の条件は各々1.5分、50ppm、20に設定した、そして、カチオンのそれは各々0.5分、50ppm、20に設定した。
注釈がつけられた各代謝物の相対濃度は、ISC1(カチオン)あるいはISA1(アニオン)の面積で、各々の代謝物のピークの面積を除することで算出した。
CE-Q-TOF MS 及びCE-TOF MS分析において、個々の患者の抗腫瘍効果は、分析者にマスキングした。
処理されたピークのリストは、更なる統計解析のために外部に出力された。統計解析では、duplicateで測定したアノテートされた各代謝物の相対濃度の平均をとった。
【0120】
(d)統計解析
臨床及びメタボロミクス・データ処理と統計解析は、Microsoft Windows 7上でJMP 64ビット版バージョン12(SAS Institute製)を用いた。
本試験では、89例の患者が登録され、独立外部レビュー・ボードによる画像診断の結果、効果判定が可能であった82例を解析対象とした。本試験治療開始前の82の血清サンプルから得られた代謝物のデータを使用した。
本試験では、RECIST基準に従い放射線診断医の画像診断の結果を採用した。この結果、試験治療期間中の効果が部分奏効:partial response(PR)を示した患者は9例、安定:stable disease(SD)の患者49例、進行:progressive disease(PD)の患者24例であった。PRの患者は明らかな腫瘍縮小が観察された患者であり、SDの患者は腫瘍には明らかな縮小は見られなかったが腫瘍の制御が観察された患者であり、PDの患者は抗がん剤治療が全く効果を示さず腫瘍の制御ができなかった患者である。一般的に、PRおよびSDの患者を併せて腫瘍が制御できた患者とされている。
PR又はPDとなると判定できる抗がん剤感受性判定マーカーを探索する目的で、PR、SD、PDを目的変数とし各代謝物の濃度を説明変数とした順序ロジステック解析を行い、また、PRとそれ以外(SD又はPD)又はPDとそれ以外(PR又はSD)を目的変数とした名義ロジステック解析を行い、順序ロジステック解析と名義ロジステック解析の両方でモデル全体でもまたパラメータ推定値も有意になった代謝物をPR又はPDとなると判定できる抗がん剤感受性判定マーカーとした。さらに、より精度高くPR又はPDとなると判定するために、STEP WISE法でベイズ情報量基準(BIC)を指標にして変数増加法にて変数(代謝物)選択を行い、それで選択された代謝物を用いて多変量の名義ロジステック回帰分析を実行した。候補物質の予測力を評価するために受信者動作特性(ROC)、Confusion Matrixを用いた感度、特異度、精度を算出した。生存曲線と治療期間はカプラン・マイアー法を用いて推定し、その曲線の違いはログランク検定を使用した。代謝物の全生存期間の予測性能をコックス比例ハザードモデルで解析した。いずれも、p値<0.05を、統計的に有意とした。
【0121】
(2)結果
(a)抗がん剤感受性判定マーカーとなる物質
(a-1)PR予測マーカー
本試験治療の前に得られた血清サンプルでアノテートされた480の代謝物について網羅的にロジステック解析を行ったところ、PR群とそれ以外の群(SD又はPD群)で濃度に有意に差があった物質として、表1に示すように、ALA、CYS、CSSG、HIS、ILE、LEU、LYS、METSF、N6TLY、SER、THR、TRP、TYR、VALの14物質が見出され、これら14物質は、PRとなると判定するためのマーカーになると考えられた。なお、PR群とそれ以外の群(SD又はPD群)の各物質の相対濃度分布を図1に示した。いずれの物質とも、PR群はそれ以外の群(SD又はPD群)の値よりも高値を示した。
【0122】
【表1】
*表中の「Ordinal Logistic Model」は、PR、SD、PDを目的変数とし各代謝物の濃度を説明変数とした順序ロジステック解析の結果であり、「Nominal Logistic Model」は、PRとそれ以外(SD又はPD)を目的変数とした名義ロジステック解析の結果を示す。
【0123】
(a-2)PD予測マーカー
(a-1)と同様の方法により、PD群とそれ以外の群(PR又はSD群)で濃度に有意に差があった物質として、表2に示すように、5A4CR、ALA、ASP、CSSG、GLC3P、HIS、ILE、LEU、N6TLY、N6ALY、OCTA、TUCA及びTHRの13物質が見出され、これら13物質は、PDとなると判定するためのマーカーになると考えられた。なお、PD群とそれ以外の群(PR又はSD群)の各物質の相対濃度分布を図2に示した。5A4CR、ASP、N6ALY及びTUCAはPD群で高値を示し、それ以外の物質はPD群が低値を示した。
【0124】
【表2】
*表中の「Ordinal Logistic Model」は、PR、SD、PDを目的変数とし各代謝物の濃度を説明変数とした順序ロジステック解析の結果であり、「Nominal Logistic Model」は、PDとそれ以外(PR又はSD)を目的変数とした名義ロジステック解析の結果を示す。
【0125】
前記PR又はPD予測マーカーについて、個々の物質についてROC曲線を求め、PR又はPDのCut-off値を求め、そのCut-off値で各物質のPR又はPDの予測性能としてのROC AUC、感度、特異度、精度を求めた。その結果は、表3に示すように、単独ではCSSGとLYSがPRの予測性能としてROC AUCが0.79と高値を示し、感度も高く、ALAは特異性や精度が他の物質に比して高かった。また、表4に示すように、PDの予測性能としてのROC AUCではCSSGが最も高かったが、感度ではHISやN6TLYが高かった。
【0126】
【表3】
【0127】
【表4】
【0128】
(b)抗がん剤感受性予測モデルの算出
(a-1)に示した14のPR予測マーカー及び(a-2)に示した13のPD予測マーカーについて、STEP WISE法でベイズ情報量基準(BIC)を指標にして変数増加法にて変数(代謝物)選択を行い、選択された変数を用いて多変量名義ロジスティックモデルを作成しPR予測モデル及びPD予測モデルを算出した。その結果を表5に示した。
【0129】
【表5】
【0130】
PR予測モデルは、下記式(1)に示す通りである。
【数14】
(式中、ALAは、ALAの測定結果がカットオフ値以上であった場合に2.5043を、カットオフ値未満であった場合に0を示し、CSSGは、CSSGの測定結果がカットオフ値以上であった場合に2.4626を、カットオフ値未満であった場合に0を示す。)
上記モデルは、患者が本治療によりPRとなるか否かを判定する式である。p値は患者が本治療によりPRとなる確率を表し、p値が0.5以上の場合にPRとなると期待できると判断する。
このPR予測モデルのROC曲線のAUCは0.85であった(図3a)。そのPR的中率、感度、特異度、精度は、表6に示したとおり、各々71.4%、55.6%、97.3%、92.7%であった。
【0131】
PD予測モデルは、下記式(2)に示す通りである。
【数15】
(式中、ASPは、ASPの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-1.0820を、カットオフ値未満であった場合に1.0820を示し、HISは、HISの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.7717を、カットオフ値未満であった場合に-1.7717を示し、N6ALYは、N6ALYの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-1.5499を、カットオフ値未満であった場合に1.5499を示し、TUCAは、TUCAの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-0.7905を、カットオフ値未満であった場合に0.7905を示す。)
上記モデルは、患者が本治療によりPDとなるか否かを判定する式である。p値は患者が本治療によりPDとなる確率を表し、p値が0.5以上の場合にPDとなると判断する。
このPD予測モデルのROC曲線のAUCは0.90であった(図3b)。そのPD的中率、感度、特異度、精度は、表6に示したとおり、各々75.0%、62.5%、91.4%、82.9%であった。
【0132】
【表6】
【0133】
前記PR予測モデルによりPRとなると判定された患者には、実際にPDとなった患者はいなかった。また、前記PD予測モデルによりPDとなると判定された患者には、実際にPRとなった患者はいなかった。この事実からも、本予測モデルの精度の高さが示された。
【0134】
(c)PR予測モデル及びPD予測モデルにおけるOSの予測性能
前記(b)のPR予測モデルに基づいて、患者をPR群(PR予測モデルによりPRと判定された群)とそれ以外の群(PR予測モデルによりPRとは判定されなかった群(SD又はPD群))に分類し、カプラン・マイアー曲線を描いた。その結果を図4aに示した。PR群の予後(中央値算出不能)は、SD又はPD群(中央値441日)に対して有意(p=0.0443)に生存期間が長かった。
【0135】
また、前記(b)のPD予測モデルに基づいて、患者をPD群(PD予測モデルによりPDと判定された群)とそれ以外の群(PD予測モデルによりPDとは判定されなかった群(PR又はSD群))に分類し、カプラン・マイアー曲線を描いた。その結果を図4bに示した。PD群の予後(中央値262.5日)は、PR又はSD群(中央値517日)に対して有意(p=0.0008)に生存期間が短かった。
これらの結果は、PR予測モデル及びPD予測モデルの有用性を示している。
【0136】
(d)COX比例ハザードモデルによるOSの解析
治療開始前の血中代謝物の濃度と各患者の全生存期間から、予後を予測する物質を比例ハザードモデルで解析した。その結果、有意となった物質のハザード比とその95%信頼区間を図5に示した。3IND、ALA、CITR、CREAT、CSSG、GABA、GUAA、HIS、HYPRO、METSF、N6TLY及びSERは、血中濃度が高いほど生存期間が長いこと、また、ASP及びN8ASRは血中濃度が高いほど生存期間が短いことが見出された。これらのCOX比例ハザードモデルで有意となった物質と前記(a-1)のPR予測マーカーでは、ALA、CSSG、HIS、METSF、N6TLY及びSERが重複していた。これら重複していた予後予測物質は、表7に示したとおり、前記(a-1)の結果と挙動が一致しているため、これら物質は、予後予測マーカーとして特に有用であることが示された。
【0137】
【表7】
【0138】
同様に、COX比例ハザードモデルで有意となった物質と前記(a-2)のPD予測マーカーでは、ALA、ASP、CSSG、HIS及びN6TLYが重複していた。これら重複していた予後予測物質は、表8に示したとおり、前記(a-2)の結果と挙動が一致しているため、これら物質は、予後予測マーカーとして特に有用であることが示された。
【0139】
【表8】
【0140】
(e)カットオフ値を用いて群別した場合のOSの比較
(d)において予後予測マーカーとして特に有用であると示された物質のうち、OSのカットオフ値がPR予測のカットオフ値と同一であったCSSG、HIS及びN6TLYについて、カットオフ値を用いて、各患者を群別し、OSを比較することでマーカーの有用性をさらに検証した。
【0141】
CSSGは、1.430×10-2(CSSGのカットオフ値)以上の群と1.430×10-2未満の群でOSを比較すると、1.430×10-2以上の群で有意にOSが長かった(p=0.0014)(図6)。
【0142】
HISは、2.2409(HISのカットオフ値)以上の群と2.2409未満の群でOSを比較すると、2.2409以上の群で有意にOSが長かった(p=0.0370)(図6)。
【0143】
N6TLYは、8.401×10-2(N6TLYのカットオフ値)以上の群と8.401×10-2未満の群でOSを比較すると、8.401×10-2以上の群で有意にOSが長かった(p=0.0392)(図6)。
これらの結果より、CSSG、HIS及びN6TLYの予後予測マーカーとしての有用性がさらに示された。
【0144】
(f)二次治療開始前の腫瘍径の総和とCSSGの相関
一次治療であるFOLFOXとベバシズマブの併用療法に不応・不耐であった患者について、二次治療開始前の腫瘍径の総和とCSSGの濃度について相関を確認したところ、図7に示したように有意な相関が見られ、回帰式は、腫瘍径の総和=111.5-1864.9×(CSSG)(相関係数:r=0.31及びp値:p=0.0049、(CSSG)は、CSSGの濃度を示す)であった。この結果より、FOLFOXとベバシズマブの併用療法に不応・不耐であったがん患者由来の生体試料中のCSSGの量を測定することで、当該がん患者の腫瘍径の和が判定できることが判明した。
【0145】
実施例2
(1)方法
本試験治療開始後早期(Cycle1及び2)の各々82あるいは77の血清サンプルから得られた代謝物のデータを使用した以外は、実施例1の方法に準じて解析を行った。
【0146】
(2)結果
(a)抗がん剤感受性判定マーカーとなる物質
(a-1)PR予測マーカー1
本試験治開始後早期(Cycle1)に得られた血清サンプルでアノテートされた480の代謝物のうち、全患者検体の25%以上で検出された代謝物について、網羅的にロジステック解析を行ったところ、PR群とそれ以外の群(SD又はPD群)で濃度に有意に差があった物質として、表9に示すように、CREAT、CSSG、METSF、QUINA、VALの5物質が見出され、これら5物質は、PRとなると判定するためのマーカーになると考えられた。なお、PR群とそれ以外の群(SD又はPD群)の各物質の相対濃度分布を図8に示した。QUINAはPR群で低値を示し、それ以外の物質はPR群が高値を示した。
【0147】
【表9】
*表中の「Ordinal Logistic Model」は、PR、SD、PDを目的変数とし各代謝物の濃度を説明変数とした順序ロジステック解析の結果であり、「Nominal Logistic Model」は、PRとそれ以外(SD又はPD)を目的変数とした名義ロジステック解析の結果を示す。
【0148】
(a-2)PD予測マーカー1
(a-1)と同様の方法により、PD群とそれ以外の群(PR又はSD群)で濃度に有意に差があった物質として、表10に示すように、5A4CR、CSSG、DECNA、GLC3P、HYPTA、N8ASRの6物質が見出され、これら6物質は、PDとなると判定するためのマーカーになると考えられた。なお、PD群とそれ以外の群(PR又はSD群)の各物質の相対濃度分布を図9に示した。5A4CR及びN8ASRはPD群で高値を示し、それ以外の物質はPD群が低値を示した。
【0149】
【表10】
*表中の「Ordinal Logistic Model」は、PR、SD、PDを目的変数とし各代謝物の濃度を説明変数とした順序ロジステック解析の結果であり、「Nominal Logistic Model」は、PDとそれ以外(PR又はSD)を目的変数とした名義ロジステック解析の結果を示す。
【0150】
(a-3)PR予測マーカー2
本試験治開始後早期(Cycle2)に得られた血清サンプルでアノテートされた480の代謝物のうち、全患者検体の25%以上で検出された代謝物について、網羅的にロジステック解析を行ったところ、PR群とそれ以外の群(SD又はPD群)で濃度に有意に差があった物質として、表11に示すように、4OVAL、ALA、BENZA、CREAT、CSSG、LYS、SARCOの7物質が見出され、これら7物質は、PRとなると判定するためのマーカーになると考えられた。なお、PR群とそれ以外の群(SD又はPD群)の各物質の相対濃度分布を図10に示した。全ての物質についてPR群が高値を示した。
【0151】
【表11】
*表中の「Ordinal Logistic Model」は、PR、SD、PDを目的変数とし各代謝物の濃度を説明変数とした順序ロジステック解析の結果であり、「Nominal Logistic Model」は、PRとそれ以外(SD又はPD)を目的変数とした名義ロジステック解析の結果を示す。
【0152】
(a-4)PD予測マーカー2
(a-3)と同様の方法により、PD群とそれ以外の群(PR又はSD群)で濃度に有意に差があった物質として、表12に示すように、3IND、4OVAL、5A4CR、ALA、CSSG、GABB、TMNOの7物質が見出され、これら7物質は、PDとなると判定するためのマーカーになると考えられた。なお、PD群とそれ以外の群(PR又はSD群)の各物質の相対濃度分布を図11に示した。5A4CR及びGABBはPD群で高値を示し、それ以外の物質はPD群が低値を示した。
【0153】
【表12】
*表中の「Ordinal Logistic Model」は、PR、SD、PDを目的変数とし各代謝物の濃度を説明変数とした順序ロジステック解析の結果であり、「Nominal Logistic Model」は、PDとそれ以外(PR又はSD)を目的変数とした名義ロジステック解析の結果を示す。
【0154】
前記PR又はPD予測マーカーについて、個々の物質についてROC曲線を求め、PR又はPDのCut-off値を求め、そのCut-off値で各物質のPR又はPDの予測性能としてのROC AUC、感度、特異度、精度を求めた。(a-1)及び(a-2)のPR又はPD予測マーカーの結果を表13に示す。PR予測マーカーでは、CREAT、CSSG、METSF、QUINA及びVALで、PRの予測性能としてのROC AUCが0.7以上と高値を示した。また、PD予測マーカーでは、PDの予測性能としてのROC AUCはN8ASRが最も高かった。
【0155】
【表13】
【0156】
(a-3)及び(a-4)のPR又はPD予測マーカーの結果を表14に示す。PR予測マーカーでは、ALA、BENZA、CREAT、CSSG及びLYSで、PRの予測性能としてのROC AUCが0.7以上と高値を示した。また、PD予測マーカーでは、PDの予測性能としてのROC AUCは3INDが最も高かった。
【0157】
【表14】
【0158】
(b-1)抗がん剤感受性予測モデルの算出1
(a-1)に示したCycle1の5のPR予測マーカー及び(a-2)に示したCycle1の6のPD予測マーカーについて、STEP WISE法でベイズ情報量基準(BIC)を指標にして変数増加法にて変数(代謝物)選択を行い、選択された変数を用いて多変量名義ロジスティックモデルを作成しPR予測モデル及びPD予測モデルを算出した。その結果を表15に示した。
【0159】
【表15】
【0160】
PR予測モデルは、下記式(4)に示す通りである。
【数16】
(式中、CREATは、CREATの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.2906を、カットオフ値未満であった場合に-1.2906を示し、CSSGは、CSSGの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.7703を、カットオフ値未満であった場合に-1.7703を示し、QUINAは、QUINAの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-8.6990を、カットオフ値未満であった場合に8.6990を示す。)
上記モデルは、患者が2サイクル目以降の治療を続けることによりPRとなるか否かを判定する式である。p値は患者が2サイクル目以降の治療を続けることによりPRとなる確率を表し、p値が0.5を超えればPRとなると判断する。
このPR予測モデルのROC曲線のAUCは0.96であった(図12a)。そのPR的中率、感度、特異度、精度は、表16に示したとおり、各々70.0%、77.8%、95.9%、93.9%であった。
【0161】
PD予測モデルは、下記式(5)に示す通りである。
【数17】
(式中、5A4CRは、5A4CRの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-0.9300を、カットオフ値未満であった場合に0.9300を示し、CSSGは、CSSGの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.2325を、カットオフ値未満であった場合に-1.2325を示し、DECNAは、DECNAの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.3052を、カットオフ値未満であった場合に-1.3052を示し、HYPTAは、HYPTAの測定結果がカットオフ値以上であった場合に0.8020を、カットオフ値未満であった場合に-0.8020を示し、N8ASRは、N8ASRの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-1.4363を、カットオフ値未満であった場合に1.4363を示す。)
上記モデルは、患者が2サイクル目以降の治療を続けることによりPDとなるか否かを判定する式である。p値は患者が2サイクル目以降の治療を続けることによりPDとなる確率を表し、p値が0.5を超えればPDとなると判断する。
このPD予測モデルのROC曲線のAUCは0.91であった(図12b)。そのPD的中率、感度、特異度、精度は、表16に示したとおり、各々80.0%、91.4%、83.3%、89.0%であった。
【0162】
【表16】
【0163】
前記PR予測モデルによりPRとなると判定された患者には、実際にPDとなった患者はいなかった。また、前記PD予測モデルによりPDとなると判定された患者には、実際にPRとなった患者はいなかった。この事実からも、本予測モデルの精度の高さが示された。
【0164】
(b-2)抗がん剤感受性予測モデルの算出2
(a-3)に示したCycle2の7のPR予測マーカー及び(a-4)に示したCycle2の7のPD予測マーカーについて、STEP WISE法でベイズ情報量基準(BIC)を指標にして変数増加法にて変数(代謝物)選択を行い、選択された変数を用いて多変量名義ロジスティックモデルを作成しPR予測モデル及びPD予測モデルを算出した。その結果を表17に示した。
【0165】
【表17】
【0166】
PR予測モデルは、下記式(6)に示す通りである。
【数18】
(式中、4OVALは、4OVALの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.2359を、カットオフ値未満であった場合に-1.2359を示し、BENZAは、BENZAの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.1105を、カットオフ値未満であった場合に-1.1105を示し、LYSは、LYSの測定結果がカットオフ値以上であった場合に0.8767を、カットオフ値未満であった場合に-0.8767を示す。)
上記モデルは、患者が3サイクル目以降の治療を続けることによりPRとなるか否かを判定する式である。p値は患者が3サイクル目以降の治療を続けることによりPRとなる確率を表し、p値が0.5を超えればPRとなる判断する。
このPR予測モデルのROC曲線のAUCは0.91であった(図12c)。そのPR的中率、感度、特異度、精度は、表18に示したとおり、各々66.7%、22.2%、98.5%、89.6%であった。
【0167】
PD予測モデルは、下記式(7)に示す通りである。
【数19】
(式中、3INDは、3INDの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.4853を、カットオフ値未満であった場合に-1.4853を示し、5A4CRは、5A4CRの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-1.0356を、カットオフ値未満であった場合に1.0356を示し、CSSGは、CSSGの測定結果がカットオフ値以上であった場合に1.1004を、カットオフ値未満であった場合に-1.1004を示し、GABBは、GABBの測定結果がカットオフ値以上であった場合に-1.2343を、カットオフ値未満であった場合に1.2343を示し、TMNOは、TMNOの測定結果がカットオフ値以上であった場合に0.9992を、カットオフ値未満であった場合に-0.9992を示す。)
上記モデルは、患者が3サイクル目以降の治療を続けることによりPDとなるか否かを判定する式である。p値は患者が3サイクル目以降の治療を続けることによりPDとなる確率を表し、p値が0.5を超えればPDとなると判断する。
このPD予測モデルのROC曲線のAUCは0.92であった(図12d)。そのPD的中率、感度、特異度、精度は、表18に示したとおり、各々82.4%、94.7%、70.0%、88.3%であった。
【0168】
【表18】
【0169】
前記PR予測モデルによりPRとなると判定された患者には、実際にPDとなった患者はいなかった。また、前記PD予測モデルによりPDとなると判定された患者には、実際にPRとなった患者はいなかった。この事実からも、本予測モデルの精度の高さが示された。
【0170】
(c)PR予測モデル及びPD予測モデルにおける残余OSの予測性能
前記(b)のPR予測モデルに基づいて、患者をPR群(PR予測モデルによりPRと判定された群)とそれ以外の群(PR予測モデルによりPRとは判定されなかった群(SD又はPD群))に分類し、カプラン・マイアー曲線を描き、ログランク検定を行った。その結果を図13a及びcに示した。PR群の予後(中央値算出不能)は、SD又はPD群(中央値はCycle1で441日、Cycle2で438日)に対して生存期間が長い傾向が認められた。ここで、生存期間とは、各治療サイクル施行日を0日とした場合の残余の全生存期間(OS)を表す。
【0171】
また、前記(b)のPD予測モデルに基づいて、患者をPD群(PD予測モデルによりPDと判定された群)とそれ以外の群(PD予測モデルによりPDとは判定されなかった群(PR又はSD群))に分類し、カプラン・マイアー曲線を描き、ログランク検定を行った。その結果を図13b及びdに示した。PD群の予後(中央値はCycle1で267日、Cycle2で262.5日)は、PR又はSD群(中央値はCycle1で540日、Cycle2で477日)に対して有意(Cycle1でp=0.0001、Cycle2でp=0.0033)に生存期間が短かった。
これらの結果は、PR予測モデル及びPD予測モデルの有用性を示している。
【0172】
(d)COX比例ハザードモデルによる残余OSの解析
治療開始後早期(Cycle1又は2)の血中代謝物の濃度と各患者の各治療サイクル施行日を0日とした場合の残余の全生存期間から、予後を予測する物質を比例ハザードモデルで解析した。その結果、有意となった物質のハザード比とその95%信頼区間を図14に示した。2H4MP、3IND、3MHIS、CHCA、CSSG、GABA及びHIPAは、血中濃度が高いほどCycle1治療後の生存期間が長いこと、また、1MNA、ASP、HYPX及びN8ASRは、血中濃度が高いほどCycle1治療後の生存期間が短いことが見出された。さらに、2H4MP、3IND、GABA及びMUCAは、血中濃度が高いほどCycle2治療後の生存期間が長いこと、また、5A4CR及びTAURは、血中濃度が高いほどCycle2治療後の生存期間が短いことが見出された。これらのCOX比例ハザードモデルで有意となった物質と前記(a-1)のPR予測マーカーでは、CSSGが重複していた。CSSGは、表19に示したとおり、前記(a-1)の結果と挙動が一致しているため、予後予測マーカーとして特に有用であることが示された。
【0173】
【表19】
【0174】
同様に、COX比例ハザードモデルで有意となった物質と前記(a-2)のPD予測マーカーでは、N8ASRが重複していた。N8ASRは、表20に示したとおり、前記(a-2)の結果と挙動が一致しているため、予後予測マーカーとして特に有用であることが示された。
【0175】
【表20】
【0176】
また、COX比例ハザードモデルで有意となった物質と前記(a-4)のPD予測マーカーでは、3IND及び5A4CRが重複していた。3IND及び5A4CRは、表21に示したとおり、前記(a-4)の結果と挙動が一致しているため、予後予測マーカーとして特に有用であることが示された。
【0177】
【表21】
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