(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】細胞培養装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230105BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M3/00 Z
(21)【出願番号】P 2020512085
(86)(22)【出願日】2018-05-04
(86)【国際出願番号】 EP2018061604
(87)【国際公開番号】W WO2018202894
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-04-27
(32)【優先日】2017-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519154128
【氏名又は名称】ユニベアズィテート チューリッヒ
(73)【特許権者】
【識別番号】519391594
【氏名又は名称】エヌテーエヌウー - ノルゲス テクニスク - ナチュルビテンスカペリゲ ユニベルシテイト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリーシ、カルロ
(72)【発明者】
【氏名】クルトクオーグル、バルタン
(72)【発明者】
【氏名】マルマラス、アナスタシオス
(72)【発明者】
【氏名】ステイネルト、マルティン
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/127523(WO,A1)
【文献】特開2011-203272(JP,A)
【文献】REICHEN M. et al.,Development of a multiplexed microfluidic platform for the automated cultivation of embryonic stem cells,J. Lab. Autom.,2013年,Vol. 18, Issue 6,pp.519-529
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学顕微鏡での使用に供される細胞培養装置(1)であって、
光学顕微鏡の対物レンズの正面の前記光学顕微鏡のステージに載置されるように構成されたハウジング(10)であって、前記ハウジングは前記ハウジング(10)の内部空間(11)を閉囲し、前記ハウジング(10)は、さらに、窓(13)を有する天壁(12)と、対向する底壁(14)とを有する、ハウジング(10)と、
生きた生体細胞を含む細胞培養(CC)の収容に供される内部空間(20)を閉囲する着脱可能なフローチャンバ(2)であって、前記フローチャンバ(2)は、前記フローチャンバ(2)内に前記細胞培養を配置するために、前記ハウジング(10)の前記内部空間(11)に挿入されるように、及び前記ハウジング(10)から取り外されるように、構成されており、前記フローチャンバ(2)は、さらに、前記フローチャンバ(2)の前記内部空間(20)を通して液体培地(M)のフローを、前記液体培地(M)が前記細胞培養(CC)に接触して前記細胞培養(CC)に沿って流れることができるように誘導する構成であり、前記フローチャンバ(2)は、さらに、前記フローチャンバ(2)の前記内部空間(20)内に配置された前記細胞培養(CC)の観察に供される第1の透明壁領域及び第2の透明壁領域(21,22)を有し、前記フローチャンバ(2)が前記ハウジング(10)の前記内部空間(11)に挿入されると、前記透明壁領域(21,22)が前記窓(13)に対向する、フローチャンバ(2)と、
前記液体培地(M)を、前記フローチャンバ(2)を通して誘導されるように加熱する、前記ハウジング(10)の前記内部空間(11)内に配置されたヒータ(3)と、
前記ヒータ(3)を介して前記液体培地(M)を前記フローチャンバ(2)に向けて誘導する、前記ハウジング(10)の前記内部空間(11)内に配置された第1のフロー経路(P1)、及び前記液体培地(M)を前記フローチャンバ(2)から遠ざかるほうへ誘導する、前記ハウジング(2)の前記内部空間(11)内に配置された第2のフロー経路(P2)と、
前記フローチャンバ(2)が前記ハウジング(10)の前記内部空間(11)に挿入されると、前記液体培地(M)を、前記第1のフロー経路(P1)を通して前記フローチャンバ(2)の前記内部空間(20)内へ、そして前記第2のフロー経路(P2)を通して前記フローチャンバ(2)の前記内部空間(20)外へポンプ輸送するポンプ(4)とを備え
、
前記ハウジング(10)は、前記フローチャンバ(2)を前記ハウジング(10)の前記内部空間(11)に挿入するための凹部(15)を備え、
前記フローチャンバ(2)は、前記フローチャンバ(2)を前記ハウジング(10)の前記内部空間(11)に挿入するために前記凹部(15)内へ摺動させるように構成されており、かつ前記ハウジング(10)の前記内部空間(11)から前記フローチャンバ(2)を取り外すために前記凹部(15)外へ摺動させるように構成されている、細胞培養装置。
【請求項2】
前記細胞培養装置(1)は、さらに、前記ハウジング(10)の前記内部空間(11)内に配置された温度センサ(5)を備え、前記温度センサ(5)は、前記第1のフロー経路(P1)を通して誘導された前記液体培地(M)と熱接触して前記液体培地(M)の前記温度を測定するようになっていることを特徴とする、請求項1に記載の細胞培養装置。
【請求項3】
前記細胞培養装置(1)は、さらに、前記温度センサ(5)で測定された前記液体培地(M)の前記温度の実際の値が前記液体培地(M)の前記温度の所望の値に近付くように前記ヒータ(3)を制御するように構成された制御ユニット(6)を備えることを特徴とする、請求
項2に記載の細胞培養装置。
【請求項4】
前記細胞培養装置(1)は、さらに、前記液体培地(M)のフローレートを判定するフローセンサ(7)を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の細胞培養装置。
【請求項5】
前記制御ユニット(6)は、前記フローセンサ(7)で測定された前記液体培地の前記フローレートの実際の値が前記液体培地(M)の前記フローレートの所望の値に近付くように前記ポンプ(4)を制御するように構成されていることを特徴とする、請求
項4に記載の細胞培養装置。
【請求項6】
前記ポンプ(4)は前記ハウジング(10)の前記内部空間(11)内に配置されている、又は前記ポンプ(4)は前記ハウジング(10)の前記内部空間(11)外に配置されている外部のポンプであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の細胞培養装置。
【請求項7】
前記ハウジング(10)は、前記天壁(12)を前記ハウジング(10)の前記底壁(14)に接続している側壁(16)を備え、前記凹部(15)は、前記ハウジング(10)の前記底壁(14)及び前記側壁(16)の中に形成されていることを特徴とする、請求項
1に記載の細胞培養装置。
【請求項8】
前記フローチャンバ(2)は、少なくとも2つのガイドレール(23)を含み、前記ガイドレール(23)は、それぞれ、前記フローチャンバ(2)を前記凹部(15)内へ、及び前記凹部(15)外へ摺動させるときに前記フローチャンバ(2)を誘導する、前記ハウジング(10)内に形成された関連する溝(17)に係合するように構成されていることを特徴とする、請求項
1~7のいずれか一項に記載の細胞培養装置。
【請求項9】
前記フローチャンバ(2)は、前記フローチャンバ(2)の本体(26)にヒンジ留めされているドア(24)を有し、前記フローチャンバ(2)の前記本体(26)は、前記フローチャンバ(2)の前記内部空間(20)を形成する、内部に形成された凹部(20)を有し
、前記ドア(24)は
、前記第1の透明壁領域(21)を有し
、前記フローチャンバ(2)の前記本体(26)は、前記第2の透明壁領域(22)を有し、又は形成し
、前記フローチャンバ(2)が前記ハウジング(10)の前記内部空間(11)に挿入されると、前記ドア(24)は、前記ハウジング(10)の前記底面(14)と同一面上にあることを特徴とする、請求項1~
8のいずれか一項に記載の細胞培養装置。
【請求項10】
前記フローチャンバ(2)は、前記フローチャンバ(2)内に前記液体培地(M)を注入するための取入れポート(200)と、前記フローチャンバ(2)から前記液体培地(M)を放出するための取出しポート(201)とを有することを特徴とする、請求項1~
9のいずれか一項に記載の細胞培養装置。
【請求項11】
前記フローチャンバ(2)は、前記取入れポート(200)及び前記取出しポート(201)を前向きにして前記凹部(15)内へ摺動させるように構成されており、これにより、前記取入れポート(200)が前記第1のフロー経路(P1)のコネクタ(204)に係合すると共に前記取出しポート(201)が前記第2のフロー経路(P2)のコネクタ(205)に係合し、前記フローチャンバ(2)が前記ハウジング(10)の前記内部空間(11)に挿入されると、前記取入れポート(200)と前記第1のフロー経路(P1)との間と前記取出しポート(201)と前記第2のフロー経路(P2)との間とのフロー接続が確立されることを特徴とする、請求項
10に記載の細胞培養装置。
【請求項12】
前記ハウジングの高さ(H)は25mm以下であり、及び/又は幅(B)は160mm以下であり、及び/又は深さ(D)は110mm以下であることを特徴とする、請求項1~
11のいずれか一項に記載の細胞培養装置。
【請求項13】
前記細胞培養装置(1)は、前記液体培地(M)から気相の泡を除去する構成である気泡トラップ(50)を備えることを特徴とする、請求項1~
12のいずれか一項に記載の細胞培養装置。
【請求項14】
前記気泡トラップ(50)は第1の容積及び第2の容積(51,52)を有し、前記第1の容積と前記第2の容積と(51,52)は、前記液体培地(M)に対して非透過性であるが前記気相には透過性である半透過膜(53)によって離隔されていることを特徴とする、請求項
13に記載の細胞培養装置。
【請求項15】
前記第1の容積(51)は前記第1のフロー経路(P1)の部分を形成することを特徴とする、請求項
14に記載の細胞培養装置。
【請求項16】
前記第1の容積(51)は、前記ヒータ(3)の取出し口(34)に接続された取入れ口(51a)を含み、及び/又は前記第1の容積(51)は、前記コネクタ(204)に接続された取出し口(51b)を含むことを特徴とする、請求項
15に記載の細胞培養装置。
【請求項17】
前記第2の容積(52)は前記第1の容積(51)よりも小さいことを特徴とする、請求項
14~
16のいずれか一項に記載の細胞培養装置。
【請求項18】
前記第2の容積(52)は、前記第1の容積(51)よりも小さい圧力を有することを特徴とする、請求項
14~
17のいずれか一項に記載の細胞培養装置。
【請求項19】
前記気泡トラップ(50)の前記第2の容積(52)は、前記気泡トラップ(50)から前記気相を除去するための取出し口(52a)を含むことを特徴とする、請求項
14~
17のいずれか一項に記載の細胞培養装置。
【請求項20】
請求項1~
19のいずれか一項に記載の細胞培養装置(1)と顕微鏡(40)とを使用して細胞培養(CC)を観察する方法であって、前記フローチャンバ(2)内に細胞培養(CC)を配置し、前記フローチャンバ(2)を前記細胞培養装置(1)の前記ハウジング(10)の前記内部空間(11)に挿入し
、前記細胞培養装置(1)の前記ハウジング(10)を、前記顕微鏡(40)の対物レンズ(41)の正面の前記顕微鏡(40)のステージ(43)上に配置する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
体外の生きた細胞を使用する研究は、実験条件が、実験対象となる体外系の実験条件に類似するという仮定に依存している。
【0003】
この仮定は、明らかなことであるが、調査対象となる現象に関連する全ての実験パラメータについて当てはまらなければならない。
【0004】
内皮細胞などの、これらの細胞のいくつかについて、それらの細胞の適切な機能が機械的刺激に依存することが示されている。これらの細胞を研究するには、体外モデルが、体温及び代謝などの基本的条件を再現するのみならず、信頼できるデータを生成するために機械的要因を再現することも必要である。これを行うために、細胞を、フローチャンバ、フローセル、パーフージョンセル、又はバイオリアクタと称する装置内に配置し、ポンプシステム、典型的には蠕動ポンプによって生成されるフローにさらす。機械的刺激のレベルは、せん断応力、歪み、及び圧力として表現され、フローチャンバのフローレート又はディメンジョンを調整することによって変化させる。
【0005】
しかしながら、光学顕微鏡を使用する観察にこのような細胞培養を用意することは、特に、細胞培養を別の細胞培養に取り換えたいとき、及び/又は細胞培養を観察のために顕微鏡に移すことが必要であるときに、面倒な作業であることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に基づき、本発明の根底をなす課題は、前述した類の細胞培養を容易かつ効率的に観察することを可能にする、改善された細胞培養を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の特徴を有する細胞培養装置によって解決される。好ましい実施形態が、下位請求項で述べられ、以下に記載される。
【0008】
請求項1によれば、光学顕微鏡での使用に供される細胞培養装置であって、
特に、光学顕微鏡の対物レンズの下方及び/又は上方の(すなわち顕微鏡の光路における)光学顕微鏡のステージに載置されるように構成されたハウジングであって、ハウジングはハウジングの内部空間を閉囲し、ハウジングは、さらに、窓を有する天壁と、天壁に対向する底壁とを有する、ハウジングと、
生きた生体細胞を含む細胞培養の収容に供される内部空間を閉囲する着脱可能なフローチャンバであって、フローチャンバは、フローチャンバ内に細胞培養を配置するために、ハウジングの内部空間に(例えば、手動又は自動で)挿入されるように、及びハウジングから(例えば、手動又は自動で)取り外されるように、構成されており、フローチャンバは、さらに、フローチャンバの内部空間を通して液体培地(例えば、DMEM、RPMI、又は人工CSFなど)のフローを、液体培地が細胞培養に接触して細胞培養に沿って流れることができるように誘導する構成であり、フローチャンバは、さらに、フローチャンバの内部空間内に配置された細胞培養の観察に供される第1の透明壁領域及び第2の透明壁領域を有し、フローチャンバがハウジングの内部空間に挿入されると、透明壁領域が上記の窓に対向する、フローチャンバと、
上記の液体培地を、フローチャンバを通して誘導されるように加熱する、ハウジングの内部空間内に配置されたヒータと、
上記のヒータを介して上記の液体培地をフローチャンバに向けて誘導する、ハウジングの内部空間内に配置された第1のフロー経路、及び上記の液体培地をフローチャンバから遠ざかるほうへ誘導する、ハウジングの内部空間内に配置された第2のフロー経路と、
フローチャンバがハウジングの内部空間に挿入されると、液体培地を、第1のフロー経路を通してフローチャンバの内部空間内へ、そして第2のフロー経路を通してフローチャンバの内部空間外へポンプ輸送するポンプとを備える細胞培養装置が開示される。
【0009】
特に、フローチャンバが(例えば、手動又は自動で)ハウジングに挿入できる、又はハウジングから取り外せるということは、フローチャンバの設置又は取外しが工具の使用なしに、又は非破壊的に遂行できることを意味する。したがって、フローチャンバは、ハウジングに多大な影響を与えずに何度もハウジング内に配置でき、及びハウジングから取り外せる。
【0010】
したがって、有利なことに、本発明は、単一のハウジングに統合された重要な機能性を提供するのみならず、特に、典型的な顕微鏡ステージの寸法である、例えば110mm×160mm×25mmほどに小型であり得る実施形態における、標準の顕微鏡ステージ上に適合することも可能であり、したがって、体外実験での常時観察を可能にするのみならず、特に工具不要の方法で(例えば、手動又は自動で)、細胞培養装置のハウジングからフローチャンバを取り外すことによって、細胞培養を容易に交換できるようにもするフローチャンバシステムを提供する。このため、フローチャンバは、細胞培養装置のハウジング内へ、及びハウジング外へ摺動させるように簡易に設計され得る(下記も参照)。
【0011】
第1のフロー経路及び第2のフロー経路は、導管、特に、ハウジングの内部空間内に配置された可撓性を有する導管を有することができる。特に、ヒータは、第1のフロー経路の部分を形成し、ヒータは、上記の液体培地が上記の部分を通過するときに、上記の液体培地を加熱するように構成されている。
【0012】
実施形態によれば、ヒータは、複数の並列の加熱プレートを有する。特に、各加熱プレートは導体を有する。それぞれの導体は、特に、それぞれの加熱プレートの被覆によって覆われており、この被覆は、好ましくは、生体適合材料、例えばシリコーンから形成されている。さらに、それぞれの導体は、特に、蛇行形状を有し、導体の両端に電圧が印加されるとジュール熱を発生する(オーム加熱)。特に、それぞれの導体は、金属フォイル、特に、レーザ切断によってブランクから切断され得るNiCrフォイルによって形成されている。特に、上記の電圧は、導体に並列に印加される。導体中を流れる電流は、導体から到来する電流が経由して流れるトランジスタ、特にMOSFETトランジスタを制御し得る制御ユニット(下記も参照)によって制御される。特に、トランジスタは、トランジスタを通過する電流の量、したがって加熱プレートを加熱する導体によって発生されるジュール熱を調整することを可能にする。
【0013】
さらに、特に、加熱プレートは、各2つの隣り合う加熱プレート間にギャップが設けられるように、互いに離間しており、ヒータによって形成された、第1のフロー経路の部分が、上記の液体培地をヒータ内に供給するためのヒータの取入れ口において始端し、ギャップ中を延在し、ヒータの取出し口において終端し、取出し口からフローチャンバの取入れ口へ向けて液体培地が誘導される(下記も参照)。
【0014】
本発明の実施形態によれば、細胞培養装置は、さらに、ハウジングの内部空間内に配置された温度センサを備え、温度センサは、第1のフロー経路を通して誘導された液体培地と熱接触して液体培地の温度を測定するようになっている。
【0015】
実施形態において、細胞培養装置は、また、特に液体培地のフロー経路に沿った異なる位置に配置された、複数の温度センサを備えてもよい。いくつかのこのようなセンサを使用することで、制御ユニットをより高速に/より頑強にすることができる。
【0016】
特に、温度センサは、第1のフロー経路に沿って、ヒータの下流とフローチャンバの上流とに配置される。
【0017】
さらに、本発明の実施形態によれば、細胞培養装置は、さらに、温度センサで測定された液体培地の温度の実際の値が液体培地の温度の所望の値に近付くように、(例えば、例えば上述した上記のトランジスタを介して、ヒータを通して流れる電流を制御することによって)ヒータを制御するように構成された制御ユニットを備える。
【0018】
さらに、本発明の実施形態によれば、細胞培養装置は、さらに、液体培地のフローレートを判定するフローセンサを備える。特に、フローセンサは、第2のフロー経路におけるフローチャンバの下流に配置できる。
【0019】
特に、制御ユニットは、フローセンサで測定された液体培地のフローレートの実際の値が液体培地のフローレートの所望の値に近付くように上記のポンプを制御するように構成されている。
【0020】
さらに、本発明の実施形態によれば、ポンプは、ハウジングの内部空間内に(例えば、第1のフロー経路又は第2のフロー経路に)、配置されている。これに代わるものとして、ポンプは、ハウジングの上記の内部空間外に配置されている外部のポンプである。その場合に、特に、ポンプは、液体培地が経由して細胞培養装置の取入れ口に誘導される導管に接続していてもよい。
【0021】
さらに、本発明の実施形態によれば、ハウジングは、フローチャンバをハウジングの内部空間に挿入するための凹部を備える。
【0022】
特に、ハウジングは、天壁をハウジングの底壁に接続している側壁を備え、凹部は、ハウジングの底壁及び側壁の中に形成されている。
【0023】
さらに、本発明の実施形態によれば、フローチャンバは、フローチャンバをハウジングの内部空間に挿入するために凹部内へ摺動させるように構成されており、かつハウジングの内部空間からフローチャンバを取り外すために凹部外へ摺動させるように構成されている。したがって、有利なことに、フローチャンバは、単純な直線的な摺動移動によって、フローチャンバの動作位置に、及び動作位置から運べる。
【0024】
さらに、上記の摺動移動を容易にするために、フローチャンバは、さらなる実施形態による少なくとも2つのガイドレールを有し、このガイドレールは、それぞれ、ハウジング内に形成された関連する溝に係合するように構成されており、これにより、フローチャンバを上記の溝内へ、及び上記の溝外に摺動させるときに、ガイドレールによってフローチャンバを誘導することができる。したがって、特に、ガイドレールは、摺動方向に沿って長手方向に延在する。
【0025】
さらに、本発明の実施形態によれば、フローチャンバは、フローチャンバの(例えば、透明な)本体に、特に本体の第1の側面にヒンジ留めされているドアを有し、フローチャンバの本体は、(閉じられた)ドアに対向する側面上に内部に形成された凹部であって、フローチャンバの上記の内部空間を形成し、かつ上記のドアで閉じられて封止できる、凹部を有する。特に、上記のドアは上記の第1の透明壁領域を有し、特に、フローチャンバの上記の本体は、上記の第2の透明壁領域を有し、又は形成している。さらに、特に、フローチャンバがハウジングの内部空間に挿入されると、ドアは、ハウジングの底面と同一面上にある。特に、底面は、細胞培養装置が顕微鏡のステージ上に上記の対物レンズに対して配置されると、顕微鏡の対物レンズから遠ざかるほうを向く。ハウジングの上面上の窓と2つの透明壁領域とが配置されていることから、フローチャンバ内にある細胞培養を上記の顕微鏡で適切に観察するために、フローチャンバ(及び細胞培養装置のハウジング)を覗き込むことが可能である。
【0026】
特に、少なくとも2つのガイドレールのうちの一方は、フローチャンバの上記の本体の上記の第1の側面から突出する一方、少なくとも2つのガイドレールのうちの他方は、上記の本体の第2の側面から突出し、第2の側面は第1の側面から遠ざかるほうを向く。
【0027】
また、上記のドアは、実施形態によるドアを閉鎖する留め具を有し、この留め具は、特に、本体に形成された凹部に係合してドアを閉鎖し(及び特に、また、フローチャンバの内部空間を封止し)、上記の凹部は本体の上記の第2の側面内に形成されている。
【0028】
さらに、本発明の実施形態によれば、フローチャンバは、フローチャンバ内に上記の液体培地を注入するための取入れポートと、フローチャンバから上記の液体培地を放出するための取出しポートとを有する。特に、上記の取入れポート及び上記の取出しポートは、フローチャンバの上記の本体の背面上に配置されており、この背面は、上記の第1の側面を、フローチャンバの本体の上記の第2の側面に接続している。
【0029】
さらに、本発明の実施形態によれば、フローチャンバは、さらに、フローチャンバから泡を流し出す機構を有する。
【0030】
実施形態において、フローチャンバは、フローチャンバに液体培地を充填する第1の一方弁と、フローチャンバから、液体培地と、さらには液体培地に含まれる泡とを流し出す第2の一方弁とを有する。
【0031】
さらに、本発明の実施形態によれば、フローチャンバは、取入れポート及び取出しポートを前向きにして上記の凹部内へ摺動させるように構成されており、これにより、取入れポートは第1のフロー経路のコネクタに係合し、フローチャンバを適切にハウジングの内部空間に挿入し/内部空間内へ摺動させると、取入れポートと第1のフロー経路との間と取出しポートと第2のフロー経路との間とのフロー接続が確立される。
【0032】
また、本発明の実施形態において、第1のフロー経路はハウジング上、特にハウジングの天壁上に配置された取入れ口に接続されている一方、第2のフロー経路は、特に、ハウジング上、特にハウジングの天壁上に配置された取出し口に接続されている。さらに、特に、取入れ口は、上記の液体培地を、上記の取入れ口を介して第1のフロー経路内へ誘導する第1の導管に接続されるように構成されている一方、取出し口は、特に、フローチャンバから到来する上記の液体培地を第2のフロー経路外に放出する第2の導管に接続されるように構成されている。
【0033】
実施形態によれば、第1の導管は、上記の液体培地を貯蔵する容器に接続してもよい一方、第2の導管は、液体培地を廃棄する廃棄ビンに接続してもよい。これに代えて、液体培地を再利用するために両方の導管が上記の容器に接続してもよく、すなわち、液体培地は、第1のフロー経路を介してフローチャンバの内部空間内へ、そしてフローチャンバの内部空間から第2のフロー経路を介して容器内へ戻るように、ポンプ輸送される。特に、ポンプは、ハウジングの内部空間内で第1のフロー経路又は第2のフロー経路に、又は細胞培養装置のハウジング外で第1の導管に対して、配置できる。
【0034】
さらに、本発明のさらに他の実施形態によれば、ハウジングの高さは、25mm以下である。このことにより、細胞培養装置を、通常の光学顕微鏡のステージ上に適合させることが可能になる。したがって、有利なことに、本発明は、標準の顕微鏡で使用でき、フローチャンバ内にある細胞培養の観察に、専用の光学器具を必要としない。
【0035】
さらに、実施形態において、ハウジングの幅は160mm以下である。さらに、実施形態において、ハウジングの深さは110mm以下である。
【0036】
また、本発明による細胞培養装置の実施形態によれば、細胞培養装置は、液体培地から気相の泡(例えば、空気又は空気の成分)を除去する構成である気泡トラップを備える。
【0037】
特に、実施形態によれば、気泡トラップは、第1の容積及び第2の容積を有し、第1の容積と第2の容積とは、液体培地に対して非透過性であるが上記の気相には透過性である半透過膜によって離隔されており、これにより、気相の泡が第1の容積から生じ、膜を介して第2の容積内へ移ることにより、液体培地から泡を除去することができる。特に、膜はPTFEを有してもよい。
【0038】
また、実施形態によれば、第1の容積は、第1のフロー経路の部分を形成しており、これにより、第1のフロー経路における、すなわちヒータの下流であってフローチャンバの上流において、液体培地から気泡が除去される。
【0039】
さらに、実施形態によれば、気泡トラップの第1の容積は、ヒータの取出し口に接続された取入れ口を含む。また、実施形態によれば、第1の容積は、第1のフロー経路の上記のコネクタに接続された取出し口を有し、このコネクタを介してフローチャンバを第1のフロー経路に接続することができる。したがって、液体培地を、ヒータから気泡トラップの第1の容積へ、そして第1の容積からフローチャンバへ通すことができ、液体培地が第1の容積を通過すると、上記の気相の泡は、第1の容積から生じ、膜を介して第2の容積内へ移ることにより、液体培地/第1のフロー経路から泡を除去することができる。
【0040】
また、実施形態によれば、気泡トラップの第2の容積は第1の容積よりも小さい。
【0041】
さらに、実施形態によれば、気泡トラップの第2の容積は、第1の容積よりも小さい圧力を有する。特に、第2の(例えば、より小さい)容積は真空下にあり、したがって、半透過膜を通過することができる気体(例えば、空気)の量が増加する。
【0042】
さらに、実施形態によれば、気泡トラップの第2の容積は、気泡トラップから上記の気相を除去するための取出し口を有する。特に、実施形態によれば、上記の取出し口にポンプ、特に真空ポンプが接続されており、ポンプを介して上記の泡を除去する。
【0043】
また、本発明のさらに他の態様によれば、本発明による細胞培養装置と顕微鏡とを使用して細胞培養を観察する方法であって、フローチャンバ内に細胞培養を配置し、フローチャンバを細胞培養装置のハウジングの内部空間に挿入し、細胞培養装置のハウジングを、顕微鏡の対物レンズの下方及び/又は正面の顕微鏡のステージ上に配置する、方法が開示される。また、特に、液体培地は、細胞培養装置のハウジングの内部空間内に配置されたフローチャンバを通して誘導され、特に、温度が所望の値に調整され、及び/又はフローレートが所望の値に調整される。
【0044】
本発明のさらなる特徴及び実施形態は、図面を参照して以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】挿入されたフローチャンバを備える本発明による細胞培養装置の斜視図を示し、装置のハウジングの内部空間を可視化するために、装置のハウジングの外周側壁の一部及び天壁が省略されている。
【
図2A】温度センサ及び制御ユニットなどの取り付けられた構成要素を併せてハウジングの図を示し、制御ユニットに電気接触するコネクタが見えるように制御ユニットが示されておらず、また、フローチャンバを通して誘導された液体培地のフロー経路を表している。
【
図2B】温度センサ及び制御ユニットなどの取り付けられた構成要素を併せてハウジングの図を示し、挿入された制御ユニットを併せてハウジングを示している。
【
図3】本発明による細胞培養装置のハウジングの底壁上に向かう平面図を示す。
【
図4】ハウジングの側壁上に向かう側面図を示し、側壁は、底壁と共に、フローチャンバをハウジングの内部空間に挿入するための凹部を有する。
【
図5】ヒータ及びフローチャンバなどの、上記の内部空間内に配置された構成要素を示すために天壁が除去された、本発明による細胞培養装置のハウジングの天壁上に向かう平面図を示す。
【
図8】フローチャンバの(フローチャンバの本体の背面上に向かう)側面図を示す。
【
図9】本発明による細胞培養装置のヒータの斜視図を示す。
【
図11】ヒータの上面図を示し、ヒータの上部加熱プレートのオーム加熱に供される導体が表されている。
【
図13】顕微鏡のステージ上に配置された細胞培養装置のハウジングの側面図を示す。
【
図14】
図13に示す細胞培養装置及び顕微鏡の正面図を示す。
【
図15】フローチャンバが細胞培養装置のハウジングに挿入される、又はハウジングから取り外されるところを示す。
【
図17】細胞培養装置が気泡トラップを有する実施形態を示す。
【
図20】本発明による細胞培養装置に記録された、20倍に拡大した初代神経細胞を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、
図2A及び
図2Bと
図3~
図16とに関連して、光学顕微鏡40での使用に供される細胞培養装置1を示す。
図1によれば、細胞培養装置1は、光学顕微鏡40のステージ43に載置されるように構成されたハウジング10を備え、ハウジング10は、
図13及び
図14に概略的に示すように、顕微鏡40の光路Lに(すなわち、顕微鏡40の対物レンズ41の正面に)配置されている。ハウジング10は、顕微鏡40の対物レンズ41の下方に配置されてもよい。これに代えて、対物レンズ41が、また、
図11において破線で表すように、ハウジング10の下方に配置されてもよい。
【0047】
ハウジング10は内部空間11を閉囲し、ハウジング10は、さらに、着脱可能なフローチャンバの観察に供される窓13を有する天壁12(
図1に示さず)と、対向する底壁14とを備える(
図14を参照)。着脱可能なフローチャンバ2(特に、
図6~
図8を参照)は、生きた生体細胞(例えば、内皮細胞、上皮細胞、グリア細胞、神経細胞、共培養、すなわち、同時に培養されたいくつかの細胞種、例えば、神経細胞及びグリア細胞、内皮細胞及び線維芽細胞など)を含む細胞培養CCと、さらには液体培地M(上記も参照)のフローとの収容に供される内部空間20を閉囲し、フローチャンバ2は、フローチャンバ2内に調べる細胞培養CCを配置するために、ハウジング10の内部空間11に挿入されるように、及びハウジング10から取り外されるように、構成されている。細胞培養CCを適切な条件に維持するために、フローチャンバ2は、さらに、フローチャンバ2の内部空間20を通して液体培地Mの上記のフローを、液体培地Mが細胞培養CCに接触して細胞培養CCに沿って流れることができるように誘導する構成である。特に、これにより、細胞培養CCの体外条件をより正確に再現するために、細胞培養に規定の力/圧力を加える狙いがある。さらに、フローチャンバ2は、フローチャンバ2の内部空間20内に配置された細胞培養CCの観察に供される第1の透明壁領域21及び第2の透明壁領域22を有し、フローチャンバ2が上記のハウジング10の内部空間20に挿入されると、透明壁領域21,22が上記の窓13に対向し、これにより、適切な照明を、例えば、下方から第1の壁領域21(例えば、
図3)を介して当てることができると同時に、窓13及び第2の透明壁領域22を通して細胞培養CCを適切に観察することができる。
図1に示すようなディメンジョンH×D×Bは、好ましくは、ハウジング10が通常の顕微鏡40のステージ43上に(また、同時に、上記の顕微鏡40の対物レンズ41の下方及び/又は正面に)適合するように選択される。したがって、例において、上記のディメンジョンH×D×Bは、25mm×110mm×116mm以下であり得る。
【0048】
さらに、液体培地Mの温度を所望の値に調整するために、装置1は、さらに、ハウジング10の上記の内部空間11内に配置されたヒータ3を備える。ヒータ3は、ハウジング10の内部空間11内に配置された第1のフロー経路P1(
図2Aを参照)の一部を形成して、上記の液体培地Mを(上記のヒータ3を介して)フローチャンバ2に向けて誘導する。装置1は、さらに、上記の液体培地Mをフローチャンバ2から遠ざかるように誘導する、ハウジング2の内部空間11内に配置された第2のフロー経路P2(
図2Aを参照)を備える。上記のフロー経路P1,P2は、導管、特に、(例えば、ヒータ3及びフローチャンバ2外の、
図2A又は
図16の破線に沿って)ハウジング10の上記の内部空間11内に配置された可撓性を有する導管を備えてもよい。
【0049】
さらに、装置1は、フローチャンバ2がハウジング10の内部空間11に挿入されると、液体培地Mを、第1のフロー経路P1を通してフローチャンバ2の内部空間20内へ、及び第2のフロー経路P2を通してフローチャンバ2の内部空間20外へポンプ輸送する(内部又は外部の)ポンプ4を備える。特に、液体培地Mは、循環フローとしてポンプ輸送でき、上記のヒータ3及びフローチャンバ2を通して連続的に再利用される。特に、
図16に示すように、ポンプ4は、ハウジング10の内部空間11内に配置でき、第2のフロー経路P2の一部を形成してもよい。特に、ポンプ4は、フローチャンバ2の下流に配置されてもよい。
【0050】
液体培地Mの温度を制御する(例えば、閉ループ)ために、細胞培養装置1は、さらに、ハウジング10の内部空間11内に配置された温度センサ5を備えてもよく、温度センサ5は、第1のフロー経路P1を通して誘導された液体培地Mに熱接触して液体培地Mの温度を測定するようになっている。特に、温度センサ5は、第1のフロー経路P1に沿って、ヒータ3の下流とフローチャンバ2の上流とに配置されており、これにより、温度センサ5は、液体培地Mがヒータ3を離れるときに液体培地Mの実際の温度を測定することができる。
【0051】
この閉ループ制御は、温度センサ5で測定される液体培地Mの温度の実際の値が液体培地Mの温度の所望の値に近付くようにヒータ3を制御するように構成された制御ユニット6によって行われる。制御ユニットは、したがって、入力として、温度センサ5から(又はいくつかの温度センサから)液体培地Mの現在の温度を受け取る。
【0052】
図2Aは、装置1の内部空間11から取り外された制御ユニット6の回路基板6aを有する細胞培養装置1の上面図を、プリント回路基板6a/制御ユニット6のコネクタ60が見えるように示す。
図2Bは、回路基板6a及び制御ユニット6が搭載された装置1を示し、回路基板6aは、また、例えば選択された所望の温度(又は液体培地の所望のフローレートなどの、他の選択された所望の量)を表示する、ディスプレイ61と、さらには、(例えば、所望の温度又は所望のフローレートなどの所望の量を選択するために)制御ユニット6を手動で操作するための操作要素(例えば、ボタン62)とを備える。
【0053】
液体培地Mのオーム加熱のために、ヒータ3は、例えば生体適合材料から形成された被覆31cを有する、
図9~
図12に示すような複数の並列の加熱プレート30を有してもよい。それぞれの加熱プレート30の上記の被覆31cに導体31が埋め込まれており、それぞれの導体31は、特に、
図11及び
図12に表すように蛇行形状を有し、それぞれの導体31の両端又は接点31a,31bに電圧(例えば、直流電圧、例えば19V)が印加されると、ジュール熱を発生する(オーム加熱)。特に、それぞれの導体31は、レーザ切断によってブランクから切断され得る金属フォイル、特にNiCrフォイルによって形成されている。特に、上記の電圧は、導体31に並列に印加される。導体31を通して流れる電流は、上述した制御ユニット6によって制御され、制御ユニット6は、トランジスタ、特にMOSFETトランジスタを制御してもよく、このトランジスタを介して、導体31から到来する電流が流れる。特に、トランジスタによって、トランジスタを通過する電流の量、したがって、加熱プレート30を加熱する導体31によって発生されるジュール熱を調整することが可能になる。特に、
図12は、上記の被覆31cと上記の被覆31cによって被覆されている導体31とを表す加熱プレート30のうちの1つを示す。さらに、上記の接点31a,31bは、接点31a,31bに電流が供給され得るように、上記の被覆31aから突出している。また、
図12に表すように、加熱プレート30は、第1のフロー経路P1の一部を形成する凹部を有する(
図10も参照)。
【0054】
図9及び
図10で分かるように、加熱プレート30は、各2つの隣り合う加熱プレート30間にギャップ32が設けられるように、互いに離間しており、ヒータ3によって形成された、第1のフロー経路P1の部分は、上記の液体培地Mをヒータ3内に供給するためのヒータ3の取入れ口33において始端し、
図10において破線に沿って、積層されたギャップ32を通って延在し、ヒータ3の取出し口34において終端し(例えば
図9を参照)、取出し口34から、
図6及び
図8に詳細に示すフローチャンバ2の取入れ口200へ向けて液体培地Mが誘導される。
【0055】
また、細胞培養装置1は、さらに、液体培地Mのフローレートを判定するフローセンサ7を備える(
図1を参照)。このようなフローセンサ7は、フローチャンバ2の上流及び/又は下流に配置できる。ここでは、例として、フローセンサ7は、ハウジング10の内部空間11における、フローチャンバ2の下流の第2のフロー経路P2に配置されている。フローレートを判定することで、流れている培地Mを介して細胞培養CCに作用するせん断力を高精度に調整することが可能になる。このため、制御ユニット6は、フローセンサ7で測定された液体培地Mのフローレートの実際の値が液体培地Mのフローレートの所望の値に近付くように上記のポンプ4を制御するように構成されている。
【0056】
図15にフローチャンバの摺動を示すが、フローチャンバをハウジング10の内部空間11内へ、及び内部空間11外へ摺動させるために、ハウジング10は、特に、例えば、例えば
図4及び
図15に表すように、対向する天壁12と底壁14とを接続しているハウジングの側壁16内に、さらには底壁14内に形成された、凹部15を備える。
【0057】
フローチャンバ2の容易な摺動のために、例えば
図6に示すように、フローチャンバ2は少なくとも2つのガイドレール23を備える。ガイドレール23は、以下でより詳細に記載する留め具27などの他の構成要素によって中断できる。各ガイドレール23は、ハウジング10内に形成された溝17内に係合するように構成されており(
図4を参照)、これにより、ガイドレール23と溝17とを係合させることによって、誘導される摺動移動が容易になる。
【0058】
特に、
図6によれば、フローチャンバ2は、フローチャンバ2の本体26の第1の側面26a上に単一のガイドレール23を、さらには、上記の本体26の第2の側面26b上に2つの平行な(中断された)ガイドレール23を備えてもよく、第2の側面26bは、第1の側面26aから離れるほうを向いている。
図7に示すように、上記の本体26は、本体26の側面上に、フローチャンバ2の内部空間20を形成する凹部20を備え、凹部20は、本体26の上記の第1の側面26aに(ヒンジ25によって)ヒンジ留めされ得るドア24に対向している。ドア24は、上記の留め具27を使用して(例えば、内部空間20を封止するように)閉鎖でき、留め具27は、ドア24を閉鎖してフローチャンバ2の内部空間20を封止するために、第2の側面26b内に形成された凹部28に係合するように構成されている。
【0059】
特に、フローチャンバ2の内部空間20内にある細胞培養CCを観察するために、ドア24は、(例えば、ドア24の窓の形態をなす)上記の第1の透明壁領域21を有する一方、フローチャンバ2の対向する本体26は、上記の第2の透明壁領域22を有する、又は形成する。特に、本体26全体が透明であり得る。
【0060】
さらに、特に、ドア24を閉鎖してフローチャンバ2を凹部15内へ摺動させると、ドア24は、ハウジング10の底面14と同一面上にあり、又は底面14に対して僅かに窪む。
【0061】
さらに、既に上述したように、フローチャンバ2は、上記の液体培地Mをフローチャンバ2内に注入するための取入れポート200と、フローチャンバ2から上記の液体培地Mを放出するための取出しポート201とを有し、特に、上記のポート200,201は、上記の本体26の背面26c上に配置されており、この背面26cは、上記の第1の側面26aを、フローチャンバ2の本体26の上記の第2の側面26bに接続する(
図6及び
図8を参照)。
【0062】
さらに、
図6及び
図8に表すように、フローチャンバ2は、本体26aの背面26c上に、(例えば、フローチャンバ2から気泡を押し出すための)第1の一方弁202及び第2の一方弁203を備える。特に、第1の弁202は、フローチャンバ2内に液体培地を充填させるように作用してもよく、第2の弁203は、フローチャンバ2外へ液体培地を流し出し、続いてフローチャンバ2外へ気泡を押し出すように作用してもよい。
【0063】
フローチャンバ(2)の内部空間20と、細胞培養装置1のハウジング10の内部空間11内の第1のフロー経路P1及び第2のフロー経路P2との間のフロー接続を確立するために、フローチャンバ2は、さらに、取入れポート200及び取出しポート201を前向きにして凹部15内へ摺動させ、これにより、取入れポート200が第1のフロー経路P1のコネクタ204に係合すると共に取出しポート201が第2のフロー経路P2のコネクタ205に係合し(例えば、
図1及び
図6を参照)、フローチャンバ2を凹部15内へ完全に摺動させると、取入れポート200と第1のフロー経路P1との間と取出しポート201と第2のフロー経路P2との間とのフロー接続が確立される。
【0064】
また、
図2Aに表すように、第1のフロー経路P1は、ハウジング10上、特にハウジング10の天壁12上に配置された取入れ口18に接続されているのに対して、第2のフロー経路P2は、ハウジング10上、特にハウジング10の天壁12上に配置された取出し口19に接続されている。ここで、取入れ口18は、上記の液体培地Mを第1のフロー経路P1内へ誘導する第1の導管に接続されるように構成されている一方、取出し口19は、フローチャンバ2から到来する上記の液体培地Mを第2のフロー経路P2外へ放出する第2の導管に接続されるように構成されている。
【0065】
第1の導管は、上記の液体培地Mを貯蔵する容器に接続してもよい一方、第2の導管は、液体培地を廃棄する廃棄ビンに接続してもよい。これに代えて、液体培地を再利用するために両方の導管が上記の容器に接続してもよく、すなわち、液体培地Mは、第1のフロー経路P1を介してフローチャンバ2の内部空間20内へ、そしてフローチャンバ2の内部空間20から第2のフロー経路P2を介して容器内へ戻るように、ポンプ輸送される。特に、ポンプ4は、ハウジング10の内部空間11内の、又は内部空間11外の、第1のフロー経路P1又は第2のフロー経路P2に配置できる。
【0066】
また、
図17~
図19に示すように、細胞培養装置1は、ハウジング10の内部空間11内に配置された、かつ液体培地Mから気相Gの泡を除去する構成である、気泡トラップ50を備えることができる。
【0067】
気泡トラップ50は、上記の内部空間11内に配置された、かつ、特に、第1の容積51と第1の容積51の上の隣接する第2の容積52とを備える、離隔気泡トラップハウジングを備えてもよく、第1の容積51と第2の容積52とは、液体培地Mに対して非透過性であるが上記の気相Gには透過性である半透過膜53によって離隔されており、気相Gの泡は、第1の容積51から生じ、膜53を介して第2の容積52内へ移ることができ、こうして液体培地Mから除去される。
【0068】
図17から分かるように、気泡トラップ50の第1の容積51は、第1のフロー経路P1の部分を形成している。
【0069】
特に、第1の容積51は、ヒータ3の取出し口34に接続された取入れ口51aと、さらにはコネクタ204に接続された取出し口51bとを備え、これにより、液体培地Mは、ヒータ3から気泡トラップ50の第1の容積51へ、そして第1の容積51からフローチャンバ2へと通すことができ、上記の気相Gの泡は、第1の容積51から生じ、膜を介して第2の容積52内へ移り、これにより、液相の培地Mが膜53によって保持される間、第1のフロー経路から泡を除去する。
【0070】
さらに、第2の容積52は、特に、第1の容積51よりも小さく、特に、細胞培養装置1の動作中、第1の容積51よりも小さい圧力を有する。特に、第2の容積52は真空下にあり、したがって、半透過膜53を通過することができる気体(例えば、空気)の量が増加する。さらに、気泡トラップ50の第2の容積52から気相Gを除去するために、第2の容積は、気泡トラップ50から上記の気相Gを除去するための取出し口52aを有する。特に、上記の取出し口52aにポンプを接続することができ、これにより、泡/気相Gはポンプによって除去できる。
【0071】
最後に、例として、
図20は、2.5dyn/cm
2のせん断応力に曝露されている間に本発明による細胞培養装置を使用して記録された、20倍に拡大した初代神経細胞を示す。示されているのは、800秒のせん断曝露後の、相コントラスト画像(A)、GFP信号(B)、及び両方の重ね合せ(C)である。解離海馬神経細胞培養は、C57B6/JjRj(Janvier Labs、フランス)マウスから取得された。一定時間交配させたマウスを、妊娠16.5日目で安楽死させ(E16.5)、胎児、胎児の脳、及びその場合の海馬を、無菌条件下で解剖し、TrypLE(登録商標) Select試薬(Gibco(登録商標))を使用して、37℃で25分、温浸した。得られた海馬神経細胞を、ポリ-D-リジン(100μg/ml、Sigma(登録商標))が塗布されたスライドガラス上で、2%のGibco B-27が追加されたNeurobasal培地(Gibco)内で、50,000/cm
2の密度で平板培養した。