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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】経口組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/24 20060101AFI20230105BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20230105BHJP
   A61K 36/88 20060101ALI20230105BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20230105BHJP
   A61K 36/28 20060101ALI20230105BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
A61K36/24
A61K31/197
A61K36/88
A61K36/185
A61K36/28
A61P25/20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022068863
(22)【出願日】2022-04-19
【審査請求日】2022-07-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年6月4日、消費者庁ウェブページ(https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc02/?recordSeq=42111300240301、及び、https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc07/hyouji_mihon?hyoujimihonFile=G62%255CG62_hyouji_mihon.pdf)において公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年9月24日、株式会社フォーマルクラインのウェブサイト(https://ecwa.jp/Form/Product/ProductList.aspx?shop=0&cat=100600100200&pgi=&cicon=&dosp=&dpcnt=15&img=1&max=&min=&sort=07&swrd=&udns=0&fpfl=0&col=&pno=1)において公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年9月24日、株式会社フォーマルクラインのウェブサイト(https://ecwa.jp/Form/Product/ProductDetail.aspx?shop=0&pid=tws01_fk&vid=&cat=100600100200&swrd=)において公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年9月24日、株式会社フォーマルクラインのウェブサイト(https://ecwa.jp/SmartPhone/Landing/toyowellness/maintenight/maintenight_of01_A01_058_01.aspx?advc=mn1_058_21_2_001&ad_rt=tb058&argument=UeLmqzRW&dmai=mn1_058_08_2_001-1&utm_source=tb058&utm_medium=21&utm_campaign=2)において公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年9月24日、株式会社フォーマルクラインのウェブサイト(https://ecwa.jp/SmartPhone/Landing/toyowellness/maintenight/maintenight_of02_A01_060_01.aspx?advc=mn2_060_21_2_001&ad_rt=tb060)において公開
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(73)【特許権者】
【識別番号】595132360
【氏名又は名称】株式会社常磐植物化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王丸 智香子
(72)【発明者】
【氏名】友澤 寛
(72)【発明者】
【氏名】中山 克大
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0000907(US,A1)
【文献】中村 唱乃, 他7名,GABA、クワンソウ、及びラフマ抽出物の共摂取による睡眠改善効果,日本栄養・食糧学会 年次大会講演発表データベース[online](retrieved on 2022 Jul 28),2017年,<URL:https://member.jsnfs.or.jp/eishoku_db/index.php?t_search_seq=9694>
【文献】J Nutr Sci Vitaminol.,2015年,61,pp.182-187
【文献】Nutrients,2021年,13,530,pp.1-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラフマ、γ-アミノ酪酸、アキノワスレグサ、チャボトケイソウ及びカミツレを含有する経口組成物であって、組成物の固形分中におけるラフマ、γ-アミノ酪酸、アキノワスレグサ、チャボトケイソウ及びカミツレの合計量が30質量%以上90質量%以下であり、ラフマ及びγ-アミノ酪酸の合計量1質量部に対して、カミツレの含有量が、0.000005~0.1質量部である、経口組成物。
【請求項2】
組成物中におけるラフマ及びγ-アミノ酪酸の配合比が、ラフマ1質量部に対してγ-アミノ酪酸が1~5質量部である請求項1に記載の経口組成物。
【請求項3】
ラフマを睡眠の質向上の有効成分とする経口組成物であって、さらに、γ-アミノ酪酸、アキノワスレグサ、チャボトケイソウ及びカミツレを含有し、組成物の固形分中におけるラフマ、γ-アミノ酪酸、アキノワスレグサ、チャボトケイソウ及びカミツレの合計量が30質量%以上90質量%以下であり、ラフマ及びγ-アミノ酪酸の合計量1質量部に対して、カミツレの含有量が、0.000005~0.1質量部である、睡眠の質向上用経口組成物。
【請求項4】
組成物中におけるラフマ及びγ-アミノ酪酸の配合比が、ラフマ1質量部に対してγ-アミノ酪酸が1~5質量部である請求項3に記載の睡眠の質向上用経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラフマ、γ-アミノ酪酸、アキノワスレグサ、チャボトケイソウ及びカミツレを含有することを特徴とする経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
社会の環境や日常のストレスなどにより、睡眠障害や不眠症に悩む人々が非常に多い。質の悪い睡眠は生活習慣病の罹患リスクを高め、かつ症状を悪化させることも知られており、睡眠障害や不眠症の改善が求められている。
【0003】
睡眠を改善するために、医薬品である催眠剤、漢方薬の服用や、寝具や睡眠時の環境の改善などが提案されてきたが、睡眠状況は食生活にも大きく左右されることから、長期間安全に摂取できる食品による予防が重要であると考えられ、睡眠の質向上作用を有する食品の開発が試みられている。例えば、セサミン類による睡眠の質向上や(特許文献1)、ラクトフェリンによる睡眠の質向上が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-188234号公報
【文献】特開2018-043964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者らが調べたところによれば、セサミン類やラクトフェリンによる睡眠の質向上作用は十分とはいえない。
【0006】
そこで、本発明者らは、ラフマに着目した。本発明は、ラフマを有効活用する、新たな経口組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を積み重ねた結果、驚くべきことに、ラフマ、γ-アミノ酪酸、アキノワスレグサ、チャボトケイソウ及びカミツレを組み合わせたところ、長期間継続的に摂取可能であり、優れた睡眠の質向上作用を示すことを見出した。本発明は、かかる知見に基づき、完成された発明である。
【0008】
本発明の概要は、以下の通りである。
<1>ラフマ、γ-アミノ酪酸、アキノワスレグサ、チャボトケイソウ及びカミツレを含有し、することを特徴とする経口組成物であって、組成物の固形分中におけるラフマ、γ-アミノ酪酸、アキノワスレグサ、チャボトケイソウ及びカミツレの合計量が30質量%以上90質量%以下であることを特徴とする経口組成物。
<2>組成物中におけるラフマ及びγ-アミノ酪酸の配合比が、ラフマ1質量部に対してγ-アミノ酪酸が1~5質量部であることを特徴とする<1>に記載の経口組成物。
<3>カプセル剤であることを特徴とする<1>又は<2>のいずれかに記載の経口組成物。
<4>ラフマを睡眠の質向上の有効成分とする経口組成物であって、さらに、γ-アミノ酪酸、アキノワスレグサ、チャボトケイソウ及びカミツレを含有し、組成物の固形分中におけるラフマ、γ-アミノ酪酸、アキノワスレグサ、チャボトケイソウ及びカミツレの合計量が30質量%以上90質量%以下であることを特徴とする睡眠の質向上用経口組成物。
<5>組成物中におけるラフマ及びγ-アミノ酪酸の配合比が、ラフマ1質量部に対してγ-アミノ酪酸が1~5質量部であることを特徴とする<4>に記載の睡眠の質向上用経口組成物。
<6>カプセル剤であることを特徴とする<4>及び<5>のいずれかに記載の経口組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、本発明の経口組成物は、ラフマ、γ-アミノ酪酸、アキノワスレグサ、チャボトケイソウ及びカミツレを含有するため、安全に、長期間継続摂取が可能な経口組成物を提供することができる。また、本発明によれば、睡眠の質向上に優れた経口組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の経口組成物について説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではない。
【0011】
<ラフマ>
本発明はラフマを必須成分とする。ラフマ(学名:Apocynum venetum L.)とは、中国を原産とするキョウチクトウ科バシクルモン属の多年草である。ラフマの部位としては、特に制限はなく、全草を使用してもよく、植物の葉、花、根、茎、地下茎(根茎、球茎、塊茎、鱗茎)、種子、芽等の特定の部位を用いることができるが、安全に、長期間継続摂取が可能な点から、また、睡眠の質向上作用に優れる点から、葉及び/又は茎が好ましく、葉が特に好ましい。
【0012】
本発明で使用するラフマの処理方法は特に制限はないが、安全に、長期間継続摂取が可能な点から、また、睡眠の質向上作用に優れる点から、粉砕物、搾汁物、抽出物が好ましく、抽出物が特に好ましい。ラフマの処理物は、例えば、後述する方法により得ることができる。ラフマの処理物は、例えば、後述する方法により得ることができる。
【0013】
本発明の経口組成物におけるラフマの含有量は特に限定はないが、固形分中、1質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上40質量%以下が好ましく、睡眠の質向上の観点から10質量%以上30質量%以下が特に好ましい。なお、本明細書中、固形分とは、経口組成物が固形状である場合は、経口組成物中の含有量を指し、経口組成物が非固形状である場合には、経口組成物中の溶媒を除いた全成分の合計量を指す。
ここで溶媒とは、水、25℃で液状の油脂、エタノール等、経口組成物に用いられるものが挙げられる。
固形状としては、粉末状、顆粒状、粒状、固体状等が挙げられる。
非固形状とは、上記固形状に該当しないものであり、液状、流動状、ペースト状が挙げられ、水等の溶媒に固形状成分が分散又は溶解しているものをいう。
なお、本明細書において、組成物がカプセル剤の形態である場合、組成物とはカプセル剤の内容物を指し、カプセル自体の重量は組成物の重量に含めないものとする。
【0014】
<γ-アミノ酪酸>
本発明は、γ-アミノ酪酸(以下、「GABA」とも言う)を必須成分とする。γ-アミノ酪酸とは、動植物界に広く分布するアミノ酸の一種であり、哺乳類の脳や髄に存在する抑制系の神経伝達物質である。GABAは、合成物や茶、大麦若葉、発芽玄米などの植物由来物、乳酸菌などの微生物による発酵由来物を用いることができ、本発明の経口組成物の効果を発揮する観点から、合成品および乳酸菌などの微生物による発酵由来物が好ましく、乳酸菌などの微生物による発酵由来物がより好ましい。
【0015】
本発明の経口組成物におけるGABAの含有量は特に限定はないが、固形分中、1質量%以上80質量%以下が好ましく、15質量%以上70質量%以下が好ましく、本願発明の経口組成物の効果を発揮する観点から20質量%以上65質量%以下が特に好ましい。本発明の経口組成物に含まれるGABAの含有量は、例えば、アミノ酸自動分析計により定量することができる。
【0016】
<アキノワスレグサ>
本発明は、アキノワスレグサを必須成分とする。アキノワスレグサ(Hemerocallis fulva var. sempervirens)は、ススキノキ科キスゲ亜科ワスレナグサ属の多年草植物で、別名をトキワカンゾウ、常盤萱草、クワンソウ、クヮンソウ、カンソウ、グワンソウ、グヮンソウ、ガンソウ、ガンショウ、カンゾーバナ、ネムリグサとも言う。アキノワスレグサの部位としては、特に制限はなく、全草を使用してもよく、植物の葉、花、根、茎、地下茎(根茎、球茎、塊茎、鱗茎)、種子、芽等の特定の部位を用いることができるが、本願発明の経口組成物の効果を発揮する観点から、葉及び/又は茎が特に好ましい。
【0017】
本発明においては、アキノワスレグサの処理方法は特に制限はないが、本願発明の経口組成物の効果を発揮する観点から、粉砕物、搾汁物、抽出物が好ましく、抽出物が特に好ましい。アキノワスレグサの処理物は、例えば、後述する方法により得ることができる。
【0018】
本発明の経口組成物におけるアキノワスレグサの含有量は特に限定はないが、固形分中、0.0001質量%以上10質量%以下が好ましく、0.0005質量%以上5質量%以下が好ましく、本発明の経口組成物の効果を発揮する観点から0.001質量%以上1質量%以下が特に好ましい。
【0019】
<チャボトケイソウ>
本発明は、チャボトケイソウを必須成分とする。チャボトケイソウ(Passiflora incarnata)は、トケイソウ科トケイソウ属の多年生植物であり、別名をパッションフラワーとも言う。チャボトケイソウの部位としては、特に制限はなく、全草を使用してもよく、植物の葉、花、根、茎、地下茎(根茎、球茎、塊茎、又は鱗茎)、種子、芽等の特定の部位を用いることができるが、本発明の経口組成物の効果を発揮する観点から、地上部(花、葉、及び/又は茎)が特に好ましい。
【0020】
本発明において、チャボトケイソウの処理方法は特に制限はないが、本発明の経口組成物の効果を発揮する観点から、粉砕物、搾汁物、抽出物が好ましく、抽出物が特に好ましい。チャボトケイソウの処理物は、例えば、後述する方法により得ることができる。
【0021】
本発明の経口組成物におけるチャボトケイソウの含有量は特に限定はないが、固形分中、0.0001質量%以上10質量%以下が好ましく、0.0005質量%以上5質量%以下が好ましく、本発明の経口組成物の効果を発揮する観点から0.001質量%以上1質量%以下が特に好ましい。
【0022】
<カミツレ>
本発明は、カミツレを必須成分とする。カミツレ(Matricaria recutita L)は、キク科シカギク属の一年生植物であり、別名をカモミール、カミルレ、カミレ、ゼルマン、ドイツカミルレ、カモミール・ジャーマン、カモマイル、ドイツカモミレとも言う。特に制限はなく、全草を使用してもよく、植物の葉、花、根、茎、地下茎(根茎、球茎、塊茎又は鱗茎)、種子、芽等の特定の部位を用いることができるが、本発明の経口組成物の効果を発揮する観点から、地上部(花、葉、及び/又は茎)が好ましく、花が特に好ましい。
【0023】
本発明において、カミツレの処理方法は特に制限はないが、本願発明の経口組成物の効果を発揮する観点から、粉砕物、搾汁物、抽出物が好ましく、抽出物が特に好ましい。カミツレの処理物は、例えば、後述する方法により得ることができる。
【0024】
本発明の経口組成物におけるカミツレの含有量は特に限定はないが、固形分中、0.0001質量%以上10質量%以下が好ましく、0.0005質量%以上5質量%以下が好ましく、本願発明の経口組成物の効果を発揮する観点から0.001質量%以上1質量%以下が特に好ましい。
【0025】
<植物の処理方法>
本発明で使用する、ラフマ、アキノワスレグサ、チャボトケイソウ及びカミツレといった植物の処理物としては、例えば、植物体を乾燥処理及び粉砕処理して得られる乾燥粉末(以下、「乾燥粉砕末」ともいう)、植物体の細片化物及びその乾燥物、植物体の搾汁及びその乾燥粉末、植物体の抽出物及びその乾燥粉末などが挙げられるが、これらに限定されない。ただし、加工、貯蔵、運搬などの容易性や使用形態の汎用性といった観点から、最終的に粉末の形態をしていることが好ましい。本明細書で単に粉末という場合、通常、乾燥粉砕末、細片化物の乾燥粉末、搾汁の乾燥粉末及び抽出物の乾燥粉末のいずれをも含む。また、植物処理物は、植物体の発酵物やその乾燥粉末であってもよい。植物体の発酵物とは、植物体又はその粉砕物、搾汁、抽出物若しくは細片化物を発酵させたものである。
【0026】
植物処理物は、従来公知の方法により加工することができる。例えば、植物体を乾燥粉砕末化する方法としては、植物体に対して、乾燥処理及び粉砕処理を組み合わせた方法を用いることができる。乾燥処理及び粉砕処理はいずれを先に行ってもよいが、乾燥処理を先に行うことが好ましい。乾燥粉砕末化は、この方法に、さらに必要に応じて殺菌処理などの処理から選ばれる1種又は2種以上の処理を組み合わせてもよい。また、粉砕処理を行う回数は1回又は2回以上の処理を組み合わせてもよいが、粗粉砕処理を行った後に、より細かく粉砕する微粉砕処理を組み合わせることが好ましい。
【0027】
乾燥処理は特に限定されないが、例えば、植物体の水分含量が10質量%以下、好ましくは8質量%以下となるように乾燥する処理が挙げられる。乾燥処理は、例えば、熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、電磁波乾燥、凍結乾燥などの当業者に公知の任意の方法により行われ得る。加熱による乾燥は、例えば、40℃~140℃、好ましくは80℃~130℃にて加温により植物体が変色しない温度及び時間で行われ得る。
【0028】
粉砕処理は特に限定されないが、例えば、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼などの粉砕用の機器や器具などを用いて、当業者が通常使用する任意の方法により植物体を粉砕する処理が挙げられる。粉砕された植物体は、必要に応じて篩にかけられ、例えば、30~250メッシュを通過するものを植物体の粉末として用いることが好ましい。粒径が250メッシュ通過のもの以下とすることで、さらなる加工時に植物体の粉末が取り扱いやすくなり、粒径が30メッシュ通過以上のものとすることで、植物体の粉末と他の素材との均一な混合が容易になる。
【0029】
植物体を細片化する方法は特に限定されないが、例えば、スライス、破砕、細断などの当業者が植物体を細片化する際に通常使用する方法を用いることができる。細片化の一例として、スラリー化してもよい。スラリー化は、植物体をミキサー、ジューサー、ブレンダー、マスコロイダーなどにかけ、どろどろした粥状(液体と固体との懸濁液)にすることにより行う。種子の細片化物を加熱する場合は、この液に水を入れて煮詰めた後、篩別、濾過などの手段によって粗固形分を除去して液分を用いてもよい。
【0030】
植物体を搾汁する方法は特に限定されないが、例えば、植物体又はその細片化物を圧搾する方法、植物体の細片化物を遠心やろ過する方法などを挙げることができる。具体的な搾汁方法の例としては、ミキサー、ジューサーなどの機械的破砕手段によって搾汁し、必要に応じて、篩別、濾過などの手段によって粗固形分を除去することにより搾汁液を得る方法が挙げられる。
【0031】
植物体の抽出物(エキス)を得る方法は特に限定されないが、例えば、植物体又はその細片化物或いは乾燥物等に、エタノール、水、含水エタノールなどの当業者が通常用いる抽出溶媒を加え、必要に応じて攪拌又は/及び加温して抽出する方法などを挙げることができる。その後の篩別、濾過などの手段によって粗固形分を除去して抽出物を得てもよい。例えば、大豆の細片化物(磨砕物)に水を加えて煮詰めた後固形物をろ過して得られる抽出液は、豆乳として知られている。抽出物は、必要に応じて濃縮してもよい。
【0032】
植物体を発酵する方法は、植物体又はその粉砕物、搾汁、抽出物若しくは細片化物に対して、乳酸菌、酵母、麹菌、納豆菌、酢酸菌等を添加して行うことができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0033】
上記の細片化処理で得られた搾汁や抽出処理で得られた液状抽出物、発酵後の液状物やスラリー等はいずれも熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、電磁波乾燥、凍結乾燥などの当業者に公知の任意の方法により乾燥粉末化されうる。この際にデキストリン等の賦形剤を添加してもよい。
【0034】
本実施形態の経口組成物において、植物処理物は固体状であってもよく、液状、シロップ状、ペースト状、ゲル状、ゼリー状、クリーム状、エマルション状、スプレー状、ムース状、ローション状等の流動状であってもよい。固体状としては、粉末状、顆粒状、粒状、タブレット状、チュアブル状、カプセル状、ソフトカプセル状、などが挙げられる。
【0035】
本発明の経口組成物における、ラフマ、γ-アミノ酪酸、アキノワスレグサ、チャボトケイソウ及びカミツレの合計量は、本発明の効果を享受できる点から、固形分中、30質量%以上90質量%以下である。本発明の経口組成物における、ラフマ、γ-アミノ酪酸、アキノワスレグサ、チャボトケイソウ及びカミツレの合計量が30質量%以上であることで入眠改善作用、睡眠時間の延長作用に優れる。これらの点から、本発明の経口組成物における、ラフマ、γ-アミノ酪酸、アキノワスレグサ、チャボトケイソウ及びカミツレの合計量は好ましくは33質量%以上86質量%以下である。
【0036】
本発明の経口組成物における、ラフマ及びγ-アミノ酪酸の配合比は本発明の効果をより一層優れたものとする点から、ラフマ1質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、0.5~10質量部が特に好ましく、1~5質量部が特に好ましい。
【0037】
本発明の経口組成物の固形分において、アキノワスレグサの配合量は本発明の効果をより一層優れたものとする点から、ラフマ及びγ-アミノ酪酸の合計量1質量部に対して0.000005~1質量部が好ましく、0.00001~0.1質量部が特に好ましい。
【0038】
本発明の経口組成物における、チャボトケイソウの配合比は本発明の効果をより一層優れたものとする点から、ラフマ及びγ-アミノ酪酸の合計量1質量部に対して0.000005~1質量部が好ましく、0.00001~0.1質量部が特に好ましい。
【0039】
本発明の経口組成物における、カミツレの配合比は本発明の効果をより一層優れたものとする点から、ラフマ及びγ-アミノ酪酸の合計量1質量部に対して0.000005~1質量部が好ましく、0.00001~0.1質量部が特に好ましい。
【0040】
本発明の経口組成物の1日の使用量は特に限定されず、使用態様や使用者の使用内容などに応じて適宜設定できる。例えば、本発明の経口組成物の1日の使用量は、使用者の体重を基準として、固形分換算で、好ましくは0.1~2000mg/kgであり、より好ましくは1~1000mg/kgであり、本発明の経口組成物の効果を発揮する観点から、さらに好ましくは2~500mg/kgである。
【0041】
本発明の経口組成物の1回の使用量についても同様に特に限定されない。例えば、本発明の経口組成物の1回の使用量は、使用者の体重を基準として、固形分換算で、好ましくは0.01~2000mg/kgであり、より好ましくは0.1~1000mg/kgであり、本発明の経口組成物の効果を発揮する観点から、さらに好ましくは0.2~500mg/kgである。
【0042】
また、本発明の経口組成物の1日の使用量は特に限定されず、例えば、固形分換算で、好ましくは0.001~20g、より好ましくは0.01~10g、本願発明の経口組成物の効果を発揮する観点から、特に好ましくは0.1~5gとすることができる。
【0043】
本発明の経口組成物の1回の使用量は特に限定されず、例えば、固形分換算で、好ましくは0.0001~20g、より好ましくは0.001~10g、本願発明の経口組成物の効果を発揮する観点から、特に好ましくは0.01~5gとすることができる。
【0044】
<その他成分>
本発明の経口組成物には、上記成分以外に、必要に応じてその他の成分を配合することができる。その他の成分としては、例えば、上記成分以外の植物由来成分や動物由来成分、水溶性食物繊維や不溶性食物繊維等の食物繊維、タンパク質、各種ビタミン類やミネラル類、藻類、乳酸菌、酵母等の微生物等を配合することができる。更に、必要に応じて、通常食品分野で用いられる、デキストリン、でんぷん等の糖類、オリゴ糖類、甘味料、酸味料、栄養補助剤、安定剤、滑沢剤、結合剤、光沢剤、増粘剤、着色料、賦形剤、希釈剤、増量剤、乳化剤、食品添加物、調味料等を挙げることができる。これらその他の成分の含有量は、本発明の経口組成物の形態等に応じて適宜選択することができる。
【0045】
<経口組成物>
本発明の経口組成物は、ラフマ、γ-アミノ酪酸、並びに、アキノワスレグサ、チャボトケイソウ及びカミツレから選ばれる少なくとも1種を配合することによる効果を得ることを目的とした種々の形態で利用され得る。本発明の経口組成物は、例えば、医薬品(医薬部外品を含む)や、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の所定機関より効能の表示が認められた機能性食品などのいわゆる健康食品や、一般的な食品、食品添加剤等として用いることができる。
【0046】
本発明の経口組成物は、睡眠の質向上作用に用いられる点において、製品として他の製品と区別することができるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、本発明に係る製品の本体、包装、説明書、宣伝物のいずれかに睡眠の質向上作用の機能がある旨を表示したものが本発明の範囲に含まれる。例えば、医薬品(医薬部外品を含む)や、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の所定機関より効能の表示が認められた機能性食品などのいわゆる健康食品や、飼料等を挙げることができる。いわゆる健康食品においては、「睡眠の質の向上」、「睡眠の質(眠りの深さ、起床時の睡眠に対する満足感)の向上」「熟眠感の改善」、「睡眠時の中途覚醒回数を減らす」、「眠りの深さの改善」、「眠りの深さの満足感の向上」、「睡眠リズムの改善」、「日中の眠気の改善」、「起床時の満足感の向上」、「睡眠時間延長感の改善」、「夜間の良質な睡眠をサポート」等を表示したものを例示することができる。
【0047】
本発明の経口組成物は、優れた入眠改善作用、睡眠時間の延長作用を奏する。すなわち、入眠障害(寝つきが悪い)、中途覚醒(睡眠中に目が覚める)、早朝覚醒(予定時間よりも早く目が覚める)といった症状を改善することができ、睡眠の質を向上させることができる。
【0048】
本発明の経口組成物の形態は特に限定されず、任意の形態とすることができる。例えば、錠剤、顆粒剤、細粒剤、粉末剤、ソフトカプセルやハードカプセル等のカプセル剤、チュアブル状剤、粒状剤、棒状剤、板状剤、ブロック状剤、固形状剤、丸状剤、カプレット状剤、スティック状剤等を挙げることができる。これらの中でも、錠剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤、チュアブル状剤の形態が好ましく、顆粒剤、錠剤、ハードカプセル剤が特に好ましく、とりわけハードカプセル剤が好ましい。
【0049】
本発明の経口組成物の包装形態は特に限定されず、剤形などに応じて適宜選択できるが、例えば、PTPなどのブリスターパック;ストリップ包装;ヒートシール;アルミパウチ;プラスチックや合成樹脂などを用いるフィルム包装;バイアルなどのガラス容器;アンプルなどのプラスチック容器などが挙げられる。
【実施例
【0050】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
<睡眠の質向上の評価>
本発明の経口組成物を摂取することにより、入眠改善、睡眠時間延長による睡眠の質向上作用が発揮されることを確認するため、以下の試験を実施した。
【0052】
[被験物質]
以下で植物抽出物としては、いずれも抽出物を乾燥させてなる乾燥粉末を用いた。
ラフマ:ラフマ葉の含水エタノール抽出物を用いた。
γ-アミノ酪酸:市販のγ-アミノ酪酸を用いた。
アキノワスレグサ:アキノワスレグサ(クワンソウ)の葉の抽出物を用いた。
チャボトケイソウ:チャボトケイソウ地上部の含水エタノール抽出物を用いた。
カミツレ:カミツレの花の含水エタノール抽出物を用いた。
デキストリン:市販のものを使用した。なお、デキストリンは本発明の効果に影響しない賦形剤として使用した。
【0053】
[試験動物]
雄性ICR系マウス(10週齢:日本エスエルシー株式会社)を馴化後、体重値に基づいて6群(n=5)に群分けした。
【0054】
[試験方法]
各サンプルは純水を用いて所定の濃度(20 mg/mL)に調製した。各サンプルを強制経口投与(200mg/kg)し、その30分後に生理食塩水で4mg/mlに調製したペントバルビタールナトリウムを腹腔内投与(10ml/kg)した。マウスは12時間明期、12時間暗期のサイクルで6日間訓化され、訓化期間中、明期で睡眠していた。被験物質の投与は、当該サイクルにおいて明期開始から5時間後タイミングで行った。腹腔内投与後からマウスの姿勢反射消失までの時間を入眠時間、入眠後から覚醒するまでの時間を睡眠時間として測定した。覚醒は、仰向けから自発的にうつ伏せに体勢を変化させたことで判断した。各サンプル中の被験物質含有比及び試験結果を表1に示す。なお表1において、被験物質は質量%であり、試験結果は平均時間を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
[結果]
入眠時間は短いほど寝つきが良いことを示し、睡眠時間は長いほど中途覚醒なく睡眠がとれていることを示す。ラフマ、γ-アミノ酪酸、クワンソウ、チャボトケイソウ及びカミツレを投与した群(実施例1~3)は、ラフマのみを投与した群(比較例1)、γ-アミノ酪酸のみを投与した群(比較例2)、クワンソウ、チャボトケイソウ、カミツレの混合物を投与した群(比較例3)に比べて、入眠時間の短縮が確認された。比較例1~3に対して実施例1~3は1分以上早く入眠が確認されており、優れた入眠作用を有することがわかった。また、実施例1~3は比較例1~3に比べて、睡眠時間の延長が確認された。この結果から、ラフマ、γ-アミノ酪酸、クワンソウ(アキノワスレグサ)、チャボトケイソウ及びカミツレを特定の配合量で組み合わせることにより、優れた入眠改善作用、睡眠時間の延長作用が発揮されることから、本発明の経口組成物を摂取することにより、睡眠の質を向上させることができることが明らかとなった。
【0057】
以下に、本発明の経口組成物の製造例を示す。
【0058】
製造例1~10
下記表2に従い、カプセル剤を製造した。具体的には、下記表2に記載された各原料を混合し、ゼラチン又はヒドロキシプロピルセルロースを含む被膜(カプセル中の皮膜の割合は23質量%)で被包することで、ハードカプセルを製造した。ハードカプセルは内容物が1粒250mgで製造した。表2に記載の数値は質量%を示す。得られたハードカプセルを1日1回、1回あたり1粒~3粒を水などとともに摂取することにより、優れた入眠改善作用、睡眠時間の延長作用が発揮されることから、睡眠の質向上に優れた経口組成物を得ることができる。
【0059】
【表2】
【0060】
製造例11~20
下記表3に従い、錠剤を製造した。具体的には、表3に記載の原料を混合後、ロータリー打錠機を用いて打錠を行った。錠剤は、錠径8mmφ、錠厚4.5mm、重量300mg、硬度5kgf以上で製造した。表3に記載の数値は質量%を示す。得られた錠剤を1日1回、1回あたり1粒~3粒を水などと共に摂取することにより、優れた入眠改善作用、睡眠時間の延長作用が発揮されることから、睡眠の質向上に優れた経口組成物を得ることができる。
【0061】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、ラフマ、γ-アミノ酪酸、アキノワスレグサ、チャボトケイソウ及びカミツレを特定の配合量で含有することにより、睡眠の質向上に優れた経口組成物を得ることができることから、産業上の利用可能性は高いものである。
【要約】
【課題】本発明は、ラフマ及びγ-アミノ酪酸の効果を有効活用する、新たな経口組成物を提供することを課題とするものである。
【解決手段】ラフマ、γ-アミノ酪酸、アキノワスレグサ、チャボトケイソウ及びカミツレを含有する経口組成物であって、組成物の固形分中におけるラフマ、γ-アミノ酪酸、アキノワスレグサ、チャボトケイソウ及びカミツレの合計量が30質量%以上90質量%以下である経口組成物。組成物中におけるラフマ及びγ-アミノ酪酸の配合比が、ラフマ1質量部に対してγ-アミノ酪酸が1~5質量部であることが好ましい。
【選択図】なし