(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収装置
(51)【国際特許分類】
B01D 7/02 20060101AFI20230105BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20230105BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20230105BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20230105BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20230105BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20230105BHJP
B01D 53/82 20060101ALI20230105BHJP
B01D 53/74 20060101ALI20230105BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20230105BHJP
C01B 32/55 20170101ALI20230105BHJP
【FI】
B01D7/02 ZAB
B01D53/14 220
B01D53/04
B01D53/22
B01D53/62
B01D53/78
B01D53/82
B01D53/74
C01B32/50
C01B32/55
(21)【出願番号】P 2022518051
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2021016600
(87)【国際公開番号】W WO2021221007
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2020081158
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020184456
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅田 良人
(72)【発明者】
【氏名】町田 洋
(72)【発明者】
【氏名】則永 行庸
(72)【発明者】
【氏名】山下 博史
(72)【発明者】
【氏名】山口 毅
【審査官】松本 要
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-004578(JP,A)
【文献】国際公開第2019/240028(WO,A1)
【文献】特表2004-532170(JP,A)
【文献】特開2011-190117(JP,A)
【文献】特表2013-501609(JP,A)
【文献】特表2009-520595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/00-8/00
B01D 53/00-53/96
C01B 32/00-32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含有する被分離ガスから前記二酸化炭素を分離する分離装置を備える二酸化炭素回収装置において、
前記被分離ガスが供給される上流側から順に、前記分離装置と、前記分離装置において分離された二酸化炭素を昇華(固化)させる二酸化炭素昇華器と、が直列に接続されていること、
前記二酸化炭素昇華器には、冷熱を有する流体を冷媒とする冷媒回路が接続されており、前記冷媒により、前記二酸化炭素の昇華(固化)が行われること、
前記二酸化炭素の昇華(固化)が行われる
ことにより前記二酸化炭素昇華器が減圧され、負圧となることで、前記分離装置において分離された前記二酸化炭素の吸引が行われること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記分離装置は、二酸化炭素を含有する被分離ガスと前記二酸化炭素を吸収する吸収液とを気液接触させて、前記吸収液に前記二酸化炭素を吸収させる吸収塔と、前記二酸化炭素を吸収した前記吸収液から、前記二酸化炭素を水蒸気とともに放散する再生塔と、から構成されること、
前記再生塔と、前記再生塔において放散された前記水蒸気を凝縮させる水蒸気凝縮器と、前記再生塔において放散された前記二酸化炭素を昇華(固化)させる二酸化炭素昇華器と、が順次直列に接続されていること、
前記水蒸気凝縮器と、前記二酸化炭素昇華器と、には、冷熱を有する流体を冷媒とする冷媒回路が接続されており、前記冷媒により、前記水蒸気の凝縮および前記二酸化炭素の昇華(固化)が行われること、
前記水蒸気の凝縮および前記二酸化炭素の昇華(固化)が行われる際に前記水蒸気凝縮器および前記二酸化炭素昇華器が減圧され、負圧となることで、前記再生塔において放散された前記水蒸気および前記二酸化炭素の吸引が行われること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項3】
請求項2に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記冷媒回路が、前記二酸化炭素昇華器、前記水蒸気凝縮器、前記吸収塔を通るように接続されており、前記二酸化炭素昇華器、前記水蒸気凝縮器、前記吸収塔の順で前記冷媒が流れること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項4】
請求項2に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記再生塔に、直列に接続された前記水蒸気凝縮器と前記二酸化炭素昇華器とにより構成される二酸化炭素回収ラインが、少なくとも2つ、並列に接続されていること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項5】
請求項2に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記再生塔に、1台の前記水蒸気凝縮器が接続されており、前記水蒸気凝縮器に、少なくとも2台の前記二酸化炭素昇華器が並列に接続されていること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項6】
請求項2に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記再生塔と前記水蒸気凝縮器との間に、減圧弁を備えること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項7】
請求項1に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記分離装置は、二酸化炭素を吸着可能な吸着剤を収容しており、前記吸着剤が前記分離装置に供給された前記被分離ガスに含有される二酸化炭素を吸着することで、前記被分離ガスから二酸化炭素を分離すること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項8】
請求項1に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記分離装置は、二酸化炭素を選択的に透過する透過膜を備えており、前記透過膜が前記分離装置に供給された前記被分離ガスに含有される二酸化炭素を透過させることで、前記被分離ガスから二酸化炭素を分離すること、
前記二酸化炭素昇華器は、前記分離装置の前記透過膜の透過側に接続されていること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記分離装置は、前記二酸化炭素とともに水蒸気を放散すること、
前記水蒸気を凝縮させる水蒸気凝縮器を備えること、
前記被分離ガスが供給される上流側から順に、
前記分離装置と、前記水蒸気凝縮器と、前記二酸化炭素昇華器と、が直列に接続されていること、
前記冷媒回路は、前記水蒸気凝縮器と、前記二酸化炭素昇華器と、に接続されており、前記冷媒により、前記水蒸気の凝縮および前記二酸化炭素の昇華(固化)が行われること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項10】
請求項1に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記被分離ガスが、製鉄工場またはセメント工場からの燃焼排ガスであること、
前記二酸化炭素昇華器は、前記冷媒により摂氏マイナス85度以下に冷却されること、二酸化炭素回収装置。
【請求項11】
請求項1に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記被分離ガスが、発電所からの燃焼排ガスであること、
前記二酸化炭素昇華器は、前記冷媒により摂氏マイナス96度以下に冷却されること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項12】
請求項1に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記被分離ガスが大気であること、
前記二酸化炭素昇華器は、前記冷媒により摂氏マイナス140度以下に冷却されること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項13】
請求項1に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記二酸化炭素昇華器は、加熱媒体を備えること、
前記二酸化炭素昇華器の内部を、二酸化炭素の三重点以上の温度とされた前記加熱媒体により加熱することで、二酸化炭素を液化して回収すること、
前記加熱媒体による加熱は、液化した二酸化炭素の温度が、摂氏マイナス56.6度以上、摂氏マイナス50度以下となった時点、または、前記二酸化炭素昇華器の内部の圧力が518kPa以上、800kPa以下となった時点で、停止すること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項14】
請求項13に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記二酸化炭素昇華器は、前記二酸化炭素昇華器の体積に対する昇華(固化)された二酸化炭素の体積の比が0.1以上、0.3以下の範囲となるまで、二酸化炭素の昇華(固化)を行うこと、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項15】
請求項13に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記二酸化炭素昇華器には、気液分離器が接続されており、前記気液分離器を介して前記二酸化炭素昇華器から二酸化炭素を回収すること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項16】
請求項13に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記二酸化炭素昇華器には、固液分離器が接続されており、前記固液分離器を介して前記二酸化炭素昇華器から二酸化炭素を回収すること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項17】
請求項1に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記二酸化炭素昇華器は、昇華(固化)を行うための昇華室と、昇華(固化)された二酸化炭素であるドライアイスを回収するための回収室と、からなること、
前記昇華室は、内部に、前記冷媒により冷却され、前記ドライアイスが付着する付着部を備えること、
前記付着部には、前記付着部を加熱可能なヒータが接続されており、前記ヒータが動作することで、前記付着部に付着したドライアイスが落下すること、
前記回収室は、前記付着部の下方に位置し、前記付着部から落下したドライアイスを受け取ること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を含有する被分離ガスから二酸化炭素を分離する分離装置を備える二酸化炭素回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、気候変動問題が喫緊の課題となっており、二酸化炭素の大気放散を回避するために、燃焼排ガスなどの二酸化炭素を含有するガスから、二酸化炭素を分離、回収するための技術が求められている。また、溶接に用いる炭酸ガスや、物流に用いるドライアイス等、二酸化炭素の需要が増加している。この需要の増加に対して、供給が追い付いていない背景のもと、我が国における二酸化炭素の輸入量は年々増加する傾向にある。しかし、二酸化炭素をドライアイスとして輸入する場合には、輸送中に一部が溶けてしまうなど、ロスが大きい。このような中、発電所の燃焼排ガス等に含有される二酸化炭素を活用すべく、高純度の二酸化炭素を回収することが可能な装置が求められている。
【0003】
排ガス等から高純度の二酸化炭素を回収する装置としては、特許文献1に開示されるような、二酸化炭素を含有する被分離ガスと二酸化炭素を吸収する吸収液とを気液接触させて、吸収液に二酸化炭素を吸収させる吸収塔と、二酸化炭素を吸収した吸収液から、二酸化炭素を水蒸気とともに放散する再生塔と、を備える二酸化炭素回収装置が知られている。
【0004】
再生塔においては、二酸化炭素を吸収した吸収液を沸騰温度まで加熱することで、二酸化炭素と水蒸気の放散が行われる。この加熱のための消費エネルギー量を抑えるため、特許文献1では、再生塔を減圧することで、二酸化炭素を吸収した吸収液の沸騰温度を下げ、省エネルギー化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術には次のような問題があった。
特許文献1に開示される二酸化炭素回収装置においては、再生塔を減圧するために、真空ポンプを用いている。この真空ポンプを動作するためには、多大な電力が必要であり、電力コストの増加や、発電のための新たな二酸化炭素の発生が懸念される。よって、電力コストの増加や、発電のための新たな二酸化炭素の発生を抑えるため、さらなる省エネルギー化を達成することが出来る二酸化炭素回収装置が求められている。
【0007】
本発明は、より省エネルギーに二酸化炭素を回収することが可能な二酸化炭素回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様における二酸化炭素回収装置は、次のような構成を有している。
【0009】
二酸化炭素を含有する被分離ガスから二酸化炭素を分離する分離装置を備える二酸化炭素回収装置において、被分離ガスが供給される上流側から順に、分離装置と、分離装置において分離された二酸化炭素を昇華(固化)させる二酸化炭素昇華器と、が直列に接続されていること、二酸化炭素昇華器には、冷熱を有する流体を冷媒とする冷媒回路が接続されており、冷媒により、二酸化炭素の昇華(固化)が行われること、二酸化炭素の昇華(固化)が行われることにより二酸化炭素昇華器が減圧され、負圧となることで、分離装置において分離された二酸化炭素の吸引が行われること、を特徴とする。
【0010】
上記の二酸化炭素回収装置によれば、被分離ガスから二酸化炭素を分離し、分離した二酸化炭素を放散する分離装置と、二酸化炭素を昇華(固化)させる二酸化炭素昇華器と、が直列に接続されている。分離装置で分離された二酸化炭素は、分離装置から放散され、二酸化炭素昇華器まで流れる。二酸化炭素昇華器に達した二酸化炭素は、冷熱を有する流体を利用した冷媒により冷却され、昇華(固化)される。この二酸化炭素が昇華(固化)されて生じたドライアイスを、再度昇華(気化)するなどして回収し、炭酸ガス等として活用することが出来る。
【0011】
二酸化炭素が昇華(固化)される際、二酸化炭素昇華器は、減圧され、負圧となる。この負圧により、分離装置から放散された二酸化炭素の吸引が行われる。この吸引により、分離装置から二酸化炭素昇華器までの、二酸化炭素の流れが生じ、二酸化炭素昇華器における二酸化炭素の昇華(固化)が促進されるのである。二酸化炭素の吸引は、冷熱を有する流体を利用して行われるものであるため、吸引のためのポンプ等が必要なく、省エネルギー化を達成することが出来る。そして、省エネルギー化により、電力コストの増大や、発電のための新たな二酸化炭素の発生を抑えることが出来る。
【0012】
冷熱を有する流体とは、例えば、液化燃料や、液化ガスが挙げられる。液化燃料とは、例えば、液化天然ガス(LNG)、液体水素、液化メタンなどが挙げられる。都市ガスの主原料となる天然ガスは、LNGの状態で輸入され、LNG受入基地において再ガス化され、パイプラインにより出荷される。LNGの再ガス化の際には、大量の冷熱エネルギーが放出されており、この冷熱エネルギーは、未利用エネルギーとして、注目されている。よって、上記のように、二酸化炭素の吸引に液化燃料の冷熱を利用すれば、未利用エネルギーの活用という点で、環境問題に配慮した二酸化炭素回収装置とすることが出来る。なお、液化燃料としては、LNGの他、液体水素なども挙げられる。また、液化ガスとは、例えば、液化窒素や液化酸素などが挙げられる。その他、冷熱を有する流体としては、液体である必要はなく、気体、スラリー、気液混相流であっても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明の二酸化炭素回収装置は、上記構成を有することにより、より省エネルギーに二酸化炭素を回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の構成を概略的に表した図である。
【
図2】第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の構成を概略的に表した図である。
【
図3】第3の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の構成を概略的に表した図である。
【
図4】第3の実施形態の変形例に係る二酸化炭素回収装置の構成を概略的に表した図である。
【
図5】第4の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の構成を概略的に表した図である。
【
図6】第4の実施形態の変形例に係る二酸化炭素回収装置の構成を概略的に表した図である。
【
図8】所定の体積比毎に、ドライアイスの質量に対する、回収可能な液化炭酸の質量割合と、気化した二酸化炭素の質量割合を示した表である。
【
図9】第5の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の構成を概略的に表した図である。
【
図10】第6の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の構成を概略的に表した図である。
【
図11】本実施形態に係るアミン溶液における二酸化炭素の溶解度を表すグラフである。
【
図12】従来液における二酸化炭素の溶解度を表すグラフである。
【
図15】被分離ガスの種類ごとに二酸化炭素の分圧値の範囲を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
まず、本発明の二酸化炭素回収装置の第1の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Aの構成を概略的に表した図である。二酸化炭素回収装置1Aは、
図1に示すように、分離装置60と、水蒸気凝縮器4A,4Bと、二酸化炭素昇華器5A,5Bと、を備えている。
【0017】
分離装置60は、吸収塔2と再生塔3とから構成される。吸収塔2は、例えば向流型気液接触装置であり、内部にラシヒリングなどの充填材21が充填されている。
【0018】
また、吸収塔2は、充填材21よりも下部にガス導入口22を備え、ガス導入口22には、ガス供給路L11が接続されている。ガス供給路L11から、吸収塔2に、例えば、発電所や製鉄工場、セメント工場で発生する燃焼排ガス(被分離ガスの一例)が供給される。なお、被分離ガスとしては、燃焼排ガスに限定されるものではなく、大気を用いることも可能である。その他にも、バイオガスを利用することも可能であるし、浸炭炉などの熱処理炉や化学反応装置から発生する、二酸化炭素を含有するオフガスを利用することも可能である。
【0019】
燃焼排ガスは、二酸化炭素を約10~20%含有しており、その他に窒素、酸素などを含む。なお、燃焼排ガスには硫黄酸化物が含有されていることが考えられるため、ガス供給路L11上に脱硫装置を設け、硫黄酸化物を除去した燃焼排ガスを吸収塔2に供給するものとしても良い。
【0020】
また、吸収塔2は、充填材21よりも上部に吸収液(リーン液)を導入するための吸収液導入口23を備えている。なお、吸収液としては、アミン系水溶液や物理吸収液を用いることが可能である。アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、ジエチルエタノールアミン(DEEA)、ジイソプロピルアミン(DIPA)、アミノエトキシエタノール(AEE)およびメチルジエタノールアミン(MDEA)が挙げられる。物理吸収液としては、シクロテトラメチレンスルホン(スルホラン)および該化合物の誘導体、脂肪族酸アミド、NMP(N-メチルピロリドン)、N-アルキル化ピロリドンおよび相応するピペリドン、メタノールおよびポリエチレングリコールのジアルキルエーテル類の混合物が挙げられる。
【0021】
ただし、吸収液として最も望ましいのは、2-(エチルアミノ)エタノールと、ジエチレングリコールモノエチルエーテルとを、アミン濃度が30%程度となるように混合したアミン溶液(以下、本実施形態に係るアミン溶液という)である。本実施形態に係るアミン溶液を用いることで、従来から知られているアミン溶液(アミン濃度が30%程度となるように混合されたMEA溶液(以下、従来液という))と比べて、吸収した二酸化炭素の再生を、より効率よく行うことが可能である。
【0022】
図11は、本実施形態に係るアミン溶液における二酸化炭素の溶解度を表すグラフであり、
図12は、従来液における二酸化炭素の溶解度を表すグラフである。なお、
図11,12ともに、摂氏40度の雰囲気下における溶解度を表している。
【0023】
例えば、二酸化炭素の吸収時の圧力を10kPaとし、吸収した二酸化炭素の再生時の圧力を1kPaとすれば、
図11および
図12に示す通り、本実施形態に係るアミン溶液の、吸収時と再生時の二酸化炭素の溶解度差D11は約0.25(mol-CO
2/mol-amine)であり、従来液の吸収時と再生時の二酸化炭素の溶解度差D12は、約0.08(mol-CO
2/mol-amine)である。この溶解度差が大きいほど、二酸化炭素の再生量が多くなるのであり、本実施形態に係るアミン溶液は、溶解度差D11が、従来液の溶解度差D12の約3倍であることから、従来液に比べて、吸収した二酸化炭素の再生を、より効率よく行うことが可能である。
【0024】
ガス導入口22から吸収塔2に供給された燃焼排ガスは、吸収塔2内を上昇し、吸収液導入口23から吸収塔2に導入された吸収液(リーン液)は、充填材21に向かって落下する。また、吸収塔2に供給された燃焼排ガスも、充填材21に向かって上昇してくる。そのため、吸収液(リーン液)は、充填材21の表面を落下する間に燃焼排ガスと気液接触し、燃焼排ガス中の二酸化炭素を選択的に吸収する。そして、二酸化炭素が除去された燃焼排ガス(窒素および酸素)は、吸収塔2の頂部に接続された排出流路L12から排出され、二酸化炭素を吸収した吸収液(リッチ液)は、吸収塔2の底部の排出口24から排出される。
【0025】
吸収塔2の排出口24には、取り出し管L13の一端が接続されており、取り出し管L13の他端は、再生塔3に接続されている。吸収塔2から取り出し管L13に排出された吸収液(リッチ液)は、熱交換器6を経て、再生塔3に移送される。
【0026】
再生塔3は、例えば向流型気液接触装置であり、内部にラシヒリングなどの充填材31が充填されている。
【0027】
再生塔3は、充填材31よりも上部に、取り出し管L13が接続された吸収液導入口32を備えており、吸収液導入口32から、取り出し管L13を経て移送される吸収液(リッチ液)が、に供給される。吸収液導入口32から供給された吸収液(リッチ液)は充填材31に落下する。
【0028】
そして、吸収液(リッチ液)は、落下する間に再生塔3内で、沸騰温度に達するように加熱され、二酸化炭素を水蒸気とともに放散する。吸収液(リッチ液)の加熱は、例えば、廃温熱や環境熱を利用したヒートポンプ7や、吸収塔2において吸収液(リーン液)が二酸化炭素を吸収する際の発熱を利用したヒートポンプ8によって、行われる。再生塔3内は、例えば約4KPaに減圧されているため(詳細は後述)、沸騰温度が低下される(水の沸騰温度は、約4KPaの状況下で約29度となる)。よって、吸収液(リッチ液)を加熱するための消費エネルギーを抑えることが可能となっている。
【0029】
二酸化炭素を放散した後の吸収液(リーン液)は、再生塔3の底部の排出口33から排出される。再生塔3から取り出し管L14に排出された吸収液(リーン液)は、熱交換器6を経て、吸収塔2に戻される。取り出し管L14は、吸収塔2の吸収液導入口23に接続されているため、吸収塔2に戻された吸収液(リーン液)は、充填材21に向かって落下し、二酸化炭素を吸収するのに再利用される。
【0030】
また、放散された二酸化炭素と水蒸気とは、再生塔3の頂部から第1移送管L15に排出される。この排出は、二酸化炭素昇華器5A,5Bに生じる負圧により、二酸化炭素と水蒸気が吸引されることで行われるものである(二酸化炭素昇華器5A,5Bに生じる負圧については後述する。)
【0031】
第1移送管L15は切替弁11によって、分岐移送管L151Aと、分岐移送管L151Bとに分岐されている。この分岐により、再生塔3には、直列に接続された水蒸気凝縮器4Aと二酸化炭素昇華器5Aとにより構成される二酸化炭素回収ライン10Aと、直列に接続された水蒸気凝縮器4Bと二酸化炭素昇華器5Bとにより構成される二酸化炭素回収ライン10Bとが、並列に接続されている。そして、切替弁11の動作により、再生塔3から排出される二酸化炭素と水蒸気を、二酸化炭素回収ライン10A,10Bのどちらに流すか、選択することが可能となっている。
【0032】
二酸化炭素回収ライン10A(10B)の構成について、詳しく説明すると、再生塔3は、第1移送管L15と分岐移送管L151A(L151B)を介し、水蒸気凝縮器4A(4B)と接続されている。なお、分岐移送管L151A(L151B)は、切替弁11と、水蒸気凝縮器4A(4B)との間に、開閉弁13A(13B)を備えている。
【0033】
水蒸気凝縮器4A(4B)は、内部に熱交換器41A(41B)を備えている。該熱交換器41Aは、後述する冷媒回路12A(12B)を流れる冷媒により、内部の水蒸気と二酸化炭素を冷却するために用いられる。水蒸気凝縮器4A(4B)は、さらに、廃温熱や環境熱を利用したヒートポンプ42A(42B)や、ドレン43A(43B)が接続されている。該ドレン43A(43B)は、開閉弁15A(15B)を有している。
【0034】
また、水蒸気凝縮器4A(4B)は、第2移送管L16A(L16B)を介して、二酸化炭素昇華器5A(5B)に接続されている。なお、第2移送管L16A(L16B)は、水蒸気凝縮器4A(4B)と、二酸化炭素昇華器5A(5B)との間に、開閉弁14A(14B)を備えている。
【0035】
二酸化炭素昇華器5A(5B)は、内部に熱交換器51A(51B)を備えている。該熱交換器51A(51B)は、後述する冷媒回路12A(12B)を流れる冷媒により、内部の二酸化炭素を冷却するために用いられる。二酸化炭素昇華器5A(5B)は、さらに、廃温熱や環境熱を利用したヒートポンプ52A(52B)や、ドレン53A(53B)、取り出し管54A(54B)が接続されている。ドレン53A(53B)は、開閉弁16A(16B)を有し、取り出し管54A(54B)は、開閉弁17A(17B)を備えている。
【0036】
また、二酸化炭素回収ライン10A,10Bのそれぞれには、二酸化炭素昇華器5A,5B、水蒸気凝縮器4A,4Bの順に冷媒が流れるように、冷媒回路12A,12Bが構成されている。さらに、冷媒回路12A,12Bは、水蒸気凝縮器4A,4Bを通った後に合流し、水蒸気凝縮器4A,4Bを流れた冷媒が、さらに吸収塔2に流れるように構成されている。冷媒には、液化燃料(流体の一例)の再ガス化後の冷熱が用いられる。液化燃料とは、例えば、液化天然ガスや液体水素や液化メタンなどが挙げられる。また、冷媒には、液化ガスの再ガス化後の冷熱を用いることも可能である。液化ガスとは、例えば、液化窒素や液化酸素などが挙げられる。
【0037】
以上の構成を有する二酸化炭素回収装置1における、冷媒と、水蒸気凝縮器4A(4B)と、二酸化炭素昇華器5A(5B)の機能について、以下に説明する。
【0038】
冷媒は、冷媒回路12A(12B)を通り、まず、二酸化炭素昇華器5A(5B)の有する熱交換器51A(51B)により、二酸化炭素昇華器5A(5B)内を冷却する。液化燃料として液化天然ガスを用いた場合の冷熱は、摂氏マイナス162度であり、液体水素を用いた場合の冷熱は、摂氏マイナス253度であるが、熱交換器51A(51B)の温度差制御や別途作動媒体または冷媒を介することで、二酸化炭素昇華器5A(5B)内の温度を、二酸化炭素の昇華(固化)に適した温度に冷却される。例えば、被分離ガスとして製鉄工場またはセメント工場からの燃焼排ガスを用いる場合には、二酸化炭素昇華器5A(5B)内の温度を、摂氏約マイナス85度以下に冷却することが好ましい。また、被分離ガスとして発電所からの燃焼排ガスを用いる場合には、二酸化炭素昇華器5A(5B)内の温度を、摂氏約マイナス96度以下に冷却することが好ましい。さらにまた、被分離ガスとして大気を用いる場合には、二酸化炭素昇華器5A(5B)内の温度を、摂氏約マイナス140度以下に冷却することが好ましい。
【0039】
被分離ガスの種類によって、二酸化炭素昇華器5A(5B)内の二酸化炭素の昇華(固化)に適した温度が異なるのは、被分離ガス中の二酸化炭素の分圧が、被分離ガスの種類によって異なるためである。ここで、
図15は、製鉄工場またはセメント工場からの燃焼排ガス(
図15中の第1燃焼排ガスに当たる)と、発電所からの燃焼排ガス(
図15中の第2燃焼排ガスに当たる)と、大気と、の二酸化炭素の分圧値の範囲を示すグラフである。
【0040】
例えば、製鉄工場またはセメント工場からの燃焼排ガスにおける二酸化炭素の最大の分圧値P11は約60kPaである。そして、この分圧値P11に対応する、二酸化炭素が気固平衡状態となる温度は、摂氏約マイナス85度である。よって、被分離ガスとして製鉄工場またはセメント工場からの燃焼排ガスを用いる場合に、二酸化炭素を昇華(固化)するためには、二酸化炭素昇華器5A(5B)内の温度を、摂氏約マイナス85度以下に冷却することが好ましい。
【0041】
また例えば、発電所からの燃焼排ガスにおける二酸化炭素の最大の分圧値P12は約21kPaである。そして、この分圧値P12に対応する、二酸化炭素が気固平衡状態となる温度は、摂氏約マイナス96度である。よって、被分離ガスとして発電所からの燃焼排ガスを用いる場合に、二酸化炭素を昇華(固化)するためには、二酸化炭素昇華器5A(5B)内の温度を、摂氏約マイナス96度以下に冷却することが好ましい。
【0042】
また例えば、大気における二酸化炭素の最大の分圧値P13は約0.045kPaである。そして、この分圧値P13に対応する、二酸化炭素が気固平衡状態となる温度は、摂氏約マイナス140度である。よって、被分離ガスとして大気を用いる場合に、二酸化炭素を昇華(固化)するためには、二酸化炭素昇華器5A(5B)内の温度を、摂氏約マイナス140度以下に冷却することが好ましい。
【0043】
二酸化炭素昇華器5A(5B)内の温度が、二酸化炭素の昇華(固化)に適した温度に冷却されることで、二酸化炭素昇華器5A(5B)内の二酸化炭素は昇華(固化)され、ドライアイスとなる。昇華(固化)の際に残ったMEA溶液は、開閉弁16A(16B)を開弁することで、ドレン53A(53B)から排出される。また、ドライアイス化された二酸化炭素を回収する際には、開閉弁17A(17B)を開弁し、二酸化炭素昇華器5A(5B)を常温に戻すことで、ドライアイスを昇華(気化)し、取り出し管54A(54B)から回収する。この際、開閉弁14A(14B),16A(16B)は、閉弁状態とし、昇華(気化)した二酸化炭素が取り出し管54A(54B)以外に流入しないようにしておく。そして、回収された二酸化炭素は、炭酸ガス等として活用される。
【0044】
二酸化炭素を回収する際には、二酸化炭素昇華器5A,5Bにおける二酸化炭素の昇華(固化)を停止させる必要がある。しかし、上述したように、切替弁11によって、再生塔3から排出される二酸化炭素と水蒸気を、二酸化炭素回収ライン10A,10Bのどちらに流すか、選択することが可能であるため、一方の二酸化炭素回収ライン10Aの二酸化炭素昇華器5Aから二酸化炭素を回収する際に、他方の二酸化炭素回収ライン10Bの二酸化炭素昇華器5Bで二酸化炭素の昇華(固化)を行い続けることができる。よって、より効率良く二酸化炭素を回収することが可能である。
【0045】
二酸化炭素昇華器5A(5B)において、二酸化炭素の昇華(固化)が行われる際、二酸化炭素昇華器5A(5B)は減圧され、負圧となる。これにより、二酸化炭素昇華器5A(5B)がポンプの役割を果たし、再生塔3において放散された水蒸気および二酸化炭素の吸引が行われる。この吸引により、水蒸気および二酸化炭素の、二酸化炭素回収ライン10A(10B)に向かう流れが生じるのである。
【0046】
また、二酸化炭素昇華器5A(5B)が減圧されるに伴い、直列に接続されている再生塔3も減圧されるため、再生塔3における吸収液の沸騰温度が低下される。よって、吸収液を加熱するための消費エネルギーを抑えることが可能となっている。本実施形態においては、再生塔3は、上述の通り約4KPaに減圧されている。再生塔3の圧力の調整は、第1移送管L15上に設けられた減圧弁9により行われる。
【0047】
次に、冷媒は、二酸化炭素昇華器5A(5B)内の冷却を行った後、水蒸気凝縮器4A(4B)の有する熱交換器41A(41B)により水蒸気凝縮器4A(4B)内を冷却する。冷媒は熱交換器51A(51B)における熱交換により温度が上昇されていることで、摂氏約1度に冷却されている。
【0048】
水蒸気凝縮器4A(4B)が摂氏約1度とされているため、二酸化炭素昇華器5A(5B)に生じた負圧によって吸引されて、再生塔3から排出された二酸化炭素と水蒸気は、水蒸気凝縮器4A(4B)に流入されると、摂氏約20度に冷却される。これにより、水蒸気は凝縮されて水となる。当該水は、水蒸気凝縮器4A(4B)の底部に貯められ、貯められた水は、開閉弁15A(15B)を開弁することで、ドレン43A(43B)により排出される。なお、ドレン43A(43B)を再生塔3に接続し、再生塔3で再利用することとしても良い。
【0049】
水蒸気凝縮器4A(4B)に、水蒸気とともに流入された二酸化炭素は、摂氏約20度では気体のままであるため、二酸化炭素昇華器5A(5B)に吸引にされることで、第2移送管L16A(L16B)を通り、二酸化炭素昇華器5A(5B)へ流入される。そして、二酸化炭素昇華器5A(5B)に流入した二酸化炭素は、上述したように昇華(固化)され、ドライアイスとされる。
【0050】
次に、冷媒は、水蒸気凝縮器4A(4B)内の冷却を行った後、吸収塔2の冷却に利用される。吸収塔2を冷却する目的は、吸収液が二酸化炭素を吸収する際に発熱するため、この発熱による吸収塔2の温度上昇を抑制することにある。
【0051】
以上説明したように、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Aは、二酸化炭素を含有する被分離ガスから二酸化炭素を分離する分離装置60を備える二酸化炭素回収装置1Aにおいて、被分離ガスが供給される上流側から順に、分離装置60と、分離装置60において分離された二酸化炭素を昇華(固化)させる二酸化炭素昇華器5A,5Bと、が直列に接続されていること、二酸化炭素昇華器5A,5Bには、冷熱を有する流体を冷媒とする冷媒回路12A,12Bが接続されており、冷媒により、二酸化炭素の昇華(固化)が行われること、二酸化炭素の昇華(固化)が行われる際に二酸化炭素昇華器5A,5Bが減圧され、負圧となることで、分離装置60において分離された二酸化炭素の吸引が行われること、を特徴とする。
【0052】
上記二酸化炭素回収装置1Aによれば、被分離ガスから二酸化炭素を分離し、分離した二酸化炭素を放散する分離装置60と、二酸化炭素を昇華(固化)させる二酸化炭素昇華器5A,5Bと、が直列に接続されている。分離装置60で分離された二酸化炭素は、分離装置60から放散され、二酸化炭素昇華器5A,5Bまで流れる。二酸化炭素昇華器5A,5Bに達した二酸化炭素は、冷熱を有する流体を利用した冷媒により冷却され、昇華(固化)される。この二酸化炭素が昇華(固化)されて生じたドライアイスを、再度昇華(気化)するなどして回収し、炭酸ガス等として活用することが出来る。
【0053】
二酸化炭素が昇華(固化)される際、二酸化炭素昇華器5A,5Bは、減圧され、負圧となる。この負圧により、分離装置60から放散された二酸化炭素の吸引が行われる。この吸引により、分離装置60から二酸化炭素昇華器5A,5Bまでの、二酸化炭素の流れが生じ、二酸化炭素昇華器5A,5Bにおける二酸化炭素の昇華(固化)が促進されるのである。二酸化炭素の吸引は、冷熱を有する流体を利用して行われるものであるため、吸引のためのポンプ等が必要なく、省エネルギー化を達成することが出来る。そして、省エネルギー化により、電力コストの増大や、発電のための新たな二酸化炭素の発生を抑えることが出来る。
【0054】
冷熱を有する流体とは、例えば、液化燃料や、液化ガスが挙げられる。液化燃料とは、例えば、液化天然ガス(LNG)、液体水素、液化メタンなどが挙げられる。都市ガスの主原料となる天然ガスは、LNGの状態で輸入され、LNG受入基地において再ガス化され、パイプラインにより出荷される。LNGの再ガス化の際には、大量の冷熱エネルギーが放出されており、この冷熱エネルギーは、未利用エネルギーとして、注目されている。よって、上記のように、二酸化炭素の吸引に液化燃料の冷熱を利用すれば、未利用エネルギーの活用という点で、環境問題に配慮した二酸化炭素回収装置とすることが出来る。なお、液化燃料としては、LNGの他、液体水素なども挙げられる。また、液化ガスとは、例えば、液化窒素や液化酸素などが挙げられる。その他、冷熱を有する流体としては、液体である必要はなく、気体、スラリー、気液混相流であっても良い。
【0055】
また、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Aは、分離装置60は、二酸化炭素を含有する被分離ガスと二酸化炭素を吸収する吸収液とを気液接触させて、吸収液に二酸化炭素を吸収させる吸収塔2と、二酸化炭素を吸収した吸収液から、二酸化炭素を水蒸気とともに放散する再生塔3と、から構成されること、再生塔3と、再生塔3において放散された水蒸気を凝縮させる水蒸気凝縮器4A,4Bと、再生塔において放散された二酸化炭素を昇華(固化)させる二酸化炭素昇華器5A,5Bと、が順次直列に接続されていること、水蒸気凝縮器4A,4Bと、二酸化炭素昇華器5A,5Bと、には、冷熱を有する流体を冷媒とする冷媒回路12A,12Bが接続されており、冷媒により、水蒸気の凝縮および二酸化炭素の昇華(固化)が行われること、水蒸気の凝縮および二酸化炭素の昇華(固化)が行われる際に水蒸気凝縮器4A,4Bおよび二酸化炭素昇華器5A,5Bが減圧され、負圧となることで、再生塔3において放散された水蒸気および二酸化炭素の吸引が行われること、を特徴とする。
【0056】
上記二酸化炭素回収装置1Aによれば、再生塔3と、水蒸気凝縮器4A,4Bと、二酸化炭素昇華器5A,5Bと、が順次直列に接続されているため、再生塔3において放散された二酸化炭素および水蒸気は、まず水蒸気凝縮器4A,4Bまで流れ、水蒸気凝縮器4A,4Bにおいて水蒸気のみが、冷熱を有する流体を利用した冷媒により冷却され、凝縮される。そして、二酸化炭素のみが、次の二酸化炭素昇華器5A,5Bまで流れる。二酸化炭素昇華器5A,5Bに達した二酸化炭素は、冷熱を有する流体を利用した冷媒により冷却され、昇華(固化)される。この二酸化炭素が昇華(固化)されて生じたドライアイスを、再度昇華(気化)するなどして回収し、炭酸ガス等として活用する。
【0057】
二酸化炭素が昇華(固化)される際に水蒸気凝縮器4A,4Bおよび二酸化炭素昇華器5A,5Bが減圧され、負圧となる。この負圧により、再生塔3において放散された水蒸気および二酸化炭素の吸引が行われるため、水蒸気については再生塔3から水蒸気凝縮器4A,4Bまでの流れが生じ、二酸化炭素については再生塔3から水蒸気凝縮器4A,4Bを通って、二酸化炭素昇華器5A,5Bまでの流れが生じるのである。
【0058】
水蒸気凝縮器4A,4Bおよび二酸化炭素昇華器5A,5Bが減圧されるに伴い、直列に接続されている再生塔3も減圧されるため、再生塔3における吸収液(アミン系水溶液)の沸騰温度が低下される。よって、吸収液(アミン系水溶液)を加熱するための消費エネルギーを抑えることが可能となっている。
【0059】
さらに、再生塔3の減圧は、冷熱を有する流体を利用して行われるものであるため、再生塔3を減圧するために電力が必要なく、省エネルギー化を達成することが出来る。そして、省エネルギー化により、電力コストの増大や、発電のための新たな二酸化炭素の発生を抑えることができる。
【0060】
また、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Aは、冷媒回路12A,12Bが、二酸化炭素昇華器5A,5B、水蒸気凝縮器4A,4B、吸収塔2を通るように接続されており、二酸化炭素昇華器5A,5B、水蒸気凝縮器4A,4B、吸収塔2の順で冷媒が流れること、を特徴とする。
【0061】
上記二酸化炭素回収装置1Aによれば、二酸化炭素の昇華(固化)に利用した、冷熱を有する流体による冷媒を、さらに水蒸気の凝縮に利用でき、その後さらに吸収塔2の冷却に利用することが可能である。吸収塔2を冷却する目的は、吸収液(アミン系水溶液)が二酸化炭素を吸収する際に発熱するため、この発熱による吸収塔2の温度上昇を抑制することにある。
【0062】
また、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Aは、再生塔3に、直列に接続された水蒸気凝縮器4A,4Bと二酸化炭素昇華器5A,5Bとにより構成される二酸化炭素回収ライン10A,10Bが、少なくとも2つ、並列に接続されていること、を特徴とする。よって、より効率良く二酸化炭素を回収することが可能である。
【0063】
二酸化炭素昇華器5A,5Bにおいては、昇華(固化)された二酸化炭素であるドライアイスを、再度ガス化するなどして回収する作業が必要となるため、回収の際には、二酸化炭素の昇華(固化)を停止させる必要がある。そこで、再生塔3に、直列に接続された水蒸気凝縮器4A,4Bと二酸化炭素昇華器5A,5Bとにより構成される二酸化炭素回収ライン10A,10Bが、少なくとも2つ、並列に接続されていることで、一方の二酸化炭素回収ライン10A,10Bの二酸化炭素昇華器からドライアイスを再度昇華(気化)するなどして回収する際に、他方の二酸化炭素回収ライン10A,10Bを稼働させ続けることができるため、より効率良く二酸化炭素を回収することが可能である。
【0064】
また、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Aは、再生塔3と水蒸気凝縮器4A,4Bとの間に、減圧弁9を備える。二酸化炭素昇華器5A,5Bを冷却し、圧力を低下させるほど、より急速に二酸化炭素のドライアイス化を進めることができ、また、放散された二酸化炭素および水蒸気を吸引する力が増大する。しかし、二酸化炭素昇華器5A,5Bの圧力が低下されるほど、再生塔3の圧力も低下されるため、再生塔3内の圧力が下がり過ぎると、再生塔3内の吸収液(アミン系水溶液)が、液体と固体の共存状態となり得るなど、却って二酸化炭素の放散する効率が低下するおそれがある。そこで、再生塔3と水蒸気凝縮器4A,4Bとの間に減圧弁を設け、減圧弁9により再生塔3の圧力を調整可能とすることが望ましい。
【0065】
また、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Aは、被分離ガスが、例えば、製鉄工場またはセメント工場からの燃焼排ガスである場合には、二酸化炭素昇華器5A,5Bは、冷媒により摂氏約マイナス85度以下に冷却されること、を特徴とし、被分離ガスが、発電所からの燃焼排ガスである場合には、二酸化炭素昇華器5A,5Bは、冷媒により摂氏約マイナス96度以下に冷却されること、を特徴とし、被分離ガスが大気である場合には、二酸化炭素昇華器5A,5Bは、冷媒により摂氏約マイナス140度以下に冷却されること、を特徴とする。
【0066】
二酸化炭素が気固平衡状態となる温度は、被分離ガス中の二酸化炭素の分圧により異なる。よって、二酸化炭素昇華器の内部を、分圧の値に対応した気固平衡状態となる温度以下とすることで、二酸化炭素の昇華(固化)が開始され、二酸化炭素昇華器5A,5Bを負圧とすることができる。これにより、再生塔3において放散された水蒸気および二酸化炭素の吸引を行うことが可能となる。
【0067】
(第2の実施形態)
次に、本発明の二酸化炭素回収装置の第2の実施形態について、図面を参照しながら、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Aと異なる点について説明する。
【0068】
図2は、第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Bの構成を概略的に表した図である。吸収塔2および再生塔3の構成は、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1
Aと同一である。再生塔3には、一台の水蒸気凝縮器4が、第1移送管L15により、直列に接続されている。そして、水蒸気凝縮器4には、二酸化炭素を二酸化炭素昇華器5A,5Bに排出するための第2移送管L16が接続されている。
【0069】
第2移送管L16は切替弁18によって、分岐移送管L161Aと、分岐移送管L161Bとに分岐されている。この分岐により、水蒸気凝縮器4には、二酸化炭素昇華器5Aと二酸化炭素昇華器5Bとが、並列に接続されている。そして、切替弁18の動作により、再生塔3から排出され、水蒸気凝縮器4を通った二酸化炭素を、二酸化炭素昇華器5A,5Bのどちらに流すか、選択することが可能となっている。また、分岐移送管L161A,L161B上には、それぞれ開閉弁14A,14Bが設けられている。
【0070】
二酸化炭素昇華器5A,5Bは、それぞれ液化燃料の再ガス化の際の冷熱を冷媒とする冷媒回路12A,12Bが通っている。冷媒回路12A,12Bは、それぞれ二酸化炭素昇華器5A,5Bを通った後に合流し、二酸化炭素昇華器5A,5Bを流れた冷媒が、さらに水蒸気凝縮器4、吸収塔2の順に冷媒が流れるように構成されている。
【0071】
以上のような二酸化炭素回収装置1Bによっても、二酸化炭素昇華器5A(5B)において、二酸化炭素の昇華(固化)が行われる際、二酸化炭素昇華器5A(5B)は減圧され、負圧となる。これにより、二酸化炭素昇華器5A(5B)がポンプの役割を果たし、再生塔3において放散された水蒸気および二酸化炭素の吸引が行われる。この吸引により、水蒸気については再生塔3から水蒸気凝縮器4までの流れが生じ、二酸化炭素については再生塔3から水蒸気凝縮器4を通って、二酸化炭素昇華器5A(5B)までの流れが生じるのである。
【0072】
また、二酸化炭素昇華器5A(5B)が減圧されるに伴い、直列に接続されている再生塔3も減圧されるため、再生塔3における吸収液の沸騰温度が低下される。よって、吸収液を加熱するための消費エネルギーを抑えることが可能となっている。
【0073】
さらに、ドライアイス化された二酸化炭素を、二酸化炭素昇華器5A(5B)から回収する際には、二酸化炭素昇華器5A(5B)における二酸化炭素の昇華(固化)を停止させる必要がある。しかし、上述したように、切替弁18によって、再生塔3から排出され、水蒸気凝縮器4を通った二酸化炭素を、二酸化炭素昇華器5A,5Bのどちらに流すか、選択することが可能となっているため、一方の二酸化炭素昇華器5Aから二酸化炭素を回収する際に、他方の二酸化炭素昇華器5Bで二酸化炭素の昇華(固化)を行い続けることができる。よって、より効率良く二酸化炭素を回収することが可能である。
【0074】
以上説明したように、第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Bは、
再生塔3に、1台の水蒸気凝縮器4が接続されており、水蒸気凝縮器4に、少なくとも2台の二酸化炭素昇華器5A,5Bが並列に接続されていること、を特徴とする。
【0075】
上記二酸化炭素回収装置1Bによれば、再生塔3に、1台の水蒸気凝縮器4が接続され、該水蒸気凝縮器4に、少なくとも2台の二酸化炭素昇華器5A,5Bが並列に接続されているため、一方の二酸化炭素昇華器5A,5Bでドライアイスを再度ガス化するなどして回収する際に、他方の二酸化炭素昇華器5A,5Bを稼働させ続けることができるため、より効率良く二酸化炭素を回収することが可能である。
【0076】
(第3の実施形態)
次に、本発明の二酸化炭素回収装置の第3の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図3は、第3の実施形態に係る二酸化炭素回収装置50Aの構成を概略的に表した図である。
【0077】
二酸化炭素回収装置50Aは、
図3に示すように、分離装置70A,70Bと、二酸化炭素昇華器5A,5Bと、を備えている。分離装置70Aには二酸化炭素昇華器5Aが直列に接続され、分離装置70Bには二酸化炭素昇華器5Bが直列に接続されている。なお、分離装置70Aと分離装置70Bは同一の装置であり、二酸化炭素昇華器5Aと二酸化炭素昇華器5Bは同一の装置である。
【0078】
分離装置70A,70Bは、それぞれの内部に、二酸化炭素を吸着可能な吸着剤701A,701Bが収容されている。吸着剤としては、例えば、ゼオライト(例えば、ユニオン昭和社製モレキュラーシーブ13X、東ソー社製NSA-700)、アミン含浸固体吸着剤(アミン化合物を担持させた多孔性物質)、ゲート型吸着剤(ELM-11[Cu(bpy)2(BF4)2]) 等が使用される。また、分離装置70A,70Bのそれぞれは、吸着剤701A,701Bよりも下部にガス導入口702A,702Bを備えており、ガス導入口702A,702Bには、分離装置70A,70Bに燃焼排ガス(被分離ガスの一例)を供給するためのガス供給路L11が接続されている。より詳細には、ガス供給路L11は、切替弁19によって、分岐ガス供給路L111と、分岐ガス供給路L112とに分岐されており、分離装置70Aのガス導入口702Aには、分岐ガス供給路L111が接続されるとともに、分離装置70Bのガス導入口702Bには、分岐ガス供給路L112が接続されている。
【0079】
分岐ガス供給路L111は開閉弁20Aを備え、分岐ガス供給路L112は開閉弁20Bを備えているため、開閉弁20A,20Bを開弁状態とすることで、分離装置70A,70Bに、燃焼排ガスが供給される。この燃焼排ガスは、発電や天然ガス精製の際に生じるものや、焼却炉や燃焼器や高炉等から生じるものを活用するものである。燃焼排ガスは、二酸化炭素を約10~20%含有しており、その他に窒素、酸素などを含んでいる。
【0080】
また、ガス供給路L11が切替弁19によって分岐されていることで、ガス供給路L11には、二酸化炭素回収ライン500Aと二酸化炭素回収ライン500Bとが並列に接続された状態となっている。二酸化炭素回収ライン500Aは、燃焼排ガスが供給される上流側から順に、分離装置70Aと二酸化炭素昇華器5Aとが直列に接続されることにより構成されている。二酸化炭素回収ライン500Bは、燃焼排ガスが供給される上流側から順に、分離装置70Bと二酸化炭素昇華器5Bとが直列に接続されることにより構成されている。切替弁19の動作させることで、ガス供給路L11から供給される燃焼排ガスを、二酸化炭素回収ライン500Aと二酸化炭素回収ライン500Bのどちらに流すのか、選択することが可能となっている。
【0081】
ガス導入口702A(702B)から分離装置70A(70B)に供給された燃焼排ガスは、分離装置70A(70B)内を上昇し、分離装置70A(70B)に収容されている吸着剤701A(701B)に接触する。すると、吸着剤701A(701B)は、燃焼排ガスに含有される二酸化炭素を選択的に吸着する。この吸着により、燃焼排ガスから二酸化炭素を分離するのである。なお、ゼオライト等の吸着剤701A(701B)は、水分を含むと吸着性能の低下が懸念されるため、ガス供給路L11上に水蒸気除去装置(不図示)を設け、水蒸気除去装置によって水蒸気を除去した燃焼排ガスを、分離装置70A(70B)に供給することが考えられる。また、燃焼排ガスには硫黄酸化物が含有されていることが考えられるため、ガス供給路L11上に脱硫装置(不図示)を設け、硫黄酸化物を除去した燃焼排ガスを分離装置70A(70B)に供給するものとしても良い。
【0082】
そして、二酸化炭素が分離された燃焼排ガス(窒素および酸素)は、分離装置70A(70B)の頂部に設けられた排出口704A(704B)から排出流路L12A(L12B)に排出される。
【0083】
吸着剤701A(701B)は、その体積等により、吸着可能な二酸化炭素の量が決まっているため、一定の量の二酸化炭素を吸着した吸着剤701A(701B)は、それ以上二酸化炭素を吸着することが出来なくなる。そこで、さらに二酸化炭素の吸着を行うためには、吸着剤701A(701B)の脱着を行う必要がある。脱着は、吸着剤701A(701B)を減圧下に置く必要があるため、分離装置70A(70B)内を減圧することで行われる。吸着剤701A(701B)から脱着された二酸化炭素は、分離装置70A(70B)の頂部に設けられた放散口703A(703B)から放散される。そして、二酸化炭素を脱着した後の吸着剤701A(701B)は、ガス導入口702A(702B)から供給される燃焼排ガスと接触させることで、さらに二酸化炭素の吸着を行うことが出来る。
【0084】
放散口703A(703B)には移送管L15A(L15B)が接続されており、放散口703A(703B)から放散された二酸化炭素は、移送管L15A(L15B)に排出される。この排出は、二酸化炭素昇華器5A(5B)に生じる負圧により、二酸化炭素が吸引されることで行われるものである(二酸化炭素昇華器5A(5B)に生じる負圧については後述する。)
【0085】
二酸化炭素昇華器5A(5B)は、移送管L15A(L15B)により、分離装置70A(70B)と接続されており、分離装置70A(70B)から放散される二酸化炭素が二酸化炭素昇華器5A(5B)に流れることが可能となっている。なお、移送管L15Aは、分離装置70Aと二酸化炭素昇華器5Aとの間に、上流側から、減圧弁9Aと開閉弁14Aとを備えており、移送管L15Bは、分離装置70Bと二酸化炭素昇華器5Bとの間に、上流側から、減圧弁9Bと開閉弁14Bとを備えている。なお、減圧弁9Aと減圧弁9Bは同一の装置であり、開閉弁14Aと開閉弁14Bは同一の装置である。
【0086】
二酸化炭素昇華器5A(5B)は、内部に熱交換器51A(51B)を備えている。該熱交換器51A(51B)は、冷媒回路12A(12B)を流れる冷媒により、内部の二酸化炭素を冷却するために用いられる。二酸化炭素昇華器5A(5B)は、さらに、廃温熱や環境熱を利用したヒートポンプ52A(52B)や、ドレン53A(53B)、取り出し管54A(54B)が接続されている。なお、ドレン53A(53B)は、開閉弁16A(16B)を備え、取り出し管54A(54B)は、開閉弁17A(17B)備えている。
【0087】
冷媒回路12A(12B)は、冷媒が二酸化炭素昇華器5A(5B)の内部を流れるように構成されている。冷媒には、液化燃料(流体の一例)の再ガス化後の冷熱が用いられる。液化燃料とは、例えば、液化天然ガスや液体水素や液化メタンなどが挙げられる。また、冷媒には、液化ガスの再ガス化後の冷熱を用いることも可能である。液化ガスとは、例えば、液化窒素や液化酸素などが挙げられる。
【0088】
以上の構成を有する二酸化炭素回収装置50Aにおける、冷媒と、二酸化炭素昇華器5A(5B)の機能について、以下に説明する。
【0089】
冷媒は、冷媒回路12A(12B)を通り、二酸化炭素昇華器5A(5B)の有する熱交換器51A(51B)により、二酸化炭素昇華器5A(5B)内を冷却する。液化燃料として液化天然ガスを用いた場合の冷熱は、摂氏マイナス162度であり、液体水素を用いた場合の冷熱は、摂氏マイナス253度であるが、熱交換器51A(51B)の温度差制御や別途作動媒体または冷媒を介することで、二酸化炭素昇華器5A(5B)内の温度を、二酸化炭素の昇華(固化)に適した温度に冷却される。例えば、被分離ガスとして製鉄工場またはセメント工場からの燃焼排ガスを用いる場合には、二酸化炭素昇華器5A(5B)内の温度を、摂氏約マイナス85度以下に冷却することが好ましい。また、被分離ガスとして発電所からの燃焼排ガスを用いる場合には、二酸化炭素昇華器5A(5B)内の温度を、摂氏約マイナス96度以下に冷却することが好ましい。さらにまた、被分離ガスとして大気を用いる場合には、二酸化炭素昇華器5A(5B)内の温度を、摂氏約マイナス140度以下に冷却することが好ましい。
【0090】
二酸化炭素昇華器5A(5B)内の温度が、二酸化炭素の昇華(固化)に適した温度に冷却されることで、二酸化炭素昇華器5A(5B)内の二酸化炭素は昇華(固化)され、ドライアイスとなる。昇華(固化)の際には、二酸化炭素昇華器5A(5B)内に微量な水分が残留する場合があるが、当該残留した水分は、開閉弁16A(16B)を開弁することで、ドレン53A(53B)から排出することが出来る。また、ドライアイス化された二酸化炭素を回収する際には、開閉弁17A(17B)を開弁し、二酸化炭素昇華器5A(5B)を常温に戻すことで、ドライアイスを昇華(気化)し、取り出し管54A(54B)から回収する。この際、開閉弁14A(14B),16A(16B)は、閉弁状態とし、昇華(気化)した二酸化炭素が取り出し管54A(54B)以外に流入しないようにしておく。そして、回収された二酸化炭素は、例えば炭酸ガス等として活用される。
【0091】
また、二酸化炭素を回収する際には、二酸化炭素昇華器5A,5Bにおける二酸化炭素の昇華(固化)を停止させる必要がある。しかし、上述したように、切替弁19によって、ガス供給路L11から供給される燃焼排ガスを、二酸化炭素回収ライン500A,500Bのどちらに流すか、選択することが可能であるため、一方の二酸化炭素回収ライン500Aの二酸化炭素昇華器5Aから二酸化炭素を回収する際には、他方の二酸化炭素回収ライン500Bの二酸化炭素昇華器5Bで二酸化炭素の昇華(固化)を行い続けることができ、その逆も可能である。よって、より効率良く二酸化炭素を回収することが可能である。
【0092】
二酸化炭素昇華器5A(5B)において、二酸化炭素の昇華(固化)が行われる際、二酸化炭素昇華器5A(5B)は減圧され、負圧となる。これにより、二酸化炭素昇華器5A(5B)がポンプの役割を果たし、分離装置70A(70B)から放散される二酸化炭素の吸引が行われる。この吸引により、分離装置70A(70B)から二酸化炭素昇華器5A(5B)までの、二酸化炭素の流れが生じ、二酸化炭素昇華器5A(5B)における二酸化炭素の昇華(固化)が促進される。
【0093】
また、吸着剤701A(701B)の脱着は減圧下で行われるところ、二酸化炭素昇華器5A(5B)が減圧されるに伴い、二酸化炭素昇華器5A(5B)と直列に接続されている分離装置70A(70B)も約4KPaまで減圧される。このため、分離装置70A(70B)を減圧するためにポンプ等が必要ない。つまり、ポンプ等を動作させるための電力が必要なく、省エネルギー化を達成することが出来る。そして、省エネルギー化により、電力コストの増大や、発電のための新たな二酸化炭素の発生を抑えることが出来る。なお、分離装置70A(70B)の圧力の調整は、移送管L15A(L15B)上に設けられた減圧弁9A(9B)により行われる。
【0094】
(第3の実施形態の変形例)
次に、第3の実施形態の変形例に係る二酸化炭素回収装置50Bについて、
図4を用いて詳細に説明する。
図4は、第3の実施形態の変形例に係る二酸化炭素回収装置50Bの構成を概略的に表した図である。
【0095】
上記第3の実施形態に係る二酸化炭素回収装置50Aの二酸化炭素回収ライン500A(500B)は、直列に接続された分離装置70A(70B)と二酸化炭素昇華器5A(5B)とにより構成されていたが、二酸化炭素回収装置50Bにおける二酸化炭素回収ライン500C(500D)は、燃焼排ガスが供給される上流側から順に、分離装置70A(70B)と、水蒸気凝縮器4A(4B)と、二酸化炭素昇華器5A(5B)とが直列に接続されることにより構成されている。
【0096】
ゼオライト等の吸着剤701A(701B)は、水分を含むと吸着性能の低下が懸念されるため、二酸化炭素回収装置50Aにおいては、予め水蒸気が除去された燃焼排ガスが、分離装置70A(70B)に供給されることとしていたが、近年、水分が含まれても吸着性能が低下しにくい吸着剤の研究開発がなされており、そのような吸着剤(例えば、アミン含浸固体吸着剤)を分離装置70A(70B)に用いた場合には、水蒸気が含まれた燃焼排ガスが分離装置70A(70B)に供給されることが考えられる。
【0097】
水蒸気が含まれた燃焼排ガスが分離装置70A(70B)に供給された場合、分離装置70A(70B)から二酸化炭素の放散を行う際に、二酸化炭素とともに水蒸気が放散されることが考えられる。二酸化炭素昇華器5A(5B)で、二酸化炭素とともに水蒸気を固化してしまうと、二酸化炭素の回収が困難となる。そこで、二酸化炭素回収装置50Bのように、分離装置70A(70B)と、水蒸気凝縮器4A(4B)と、二酸化炭素昇華器5A(5B)と、を直列に接続すれば、分離装置70A(70B)から放散された二酸化炭素および水蒸気は、まず水蒸気凝縮器4A(4B)まで流れ、水蒸気凝縮器4A(4B)において水蒸気のみが、冷媒により冷却され、凝縮される。まず水蒸気が凝縮されることで、二酸化炭素のみが、次の二酸化炭素昇華器5A(5B)まで流れ、二酸化炭素昇華器5A(5B)において、二酸化炭素のみが冷媒により冷却されて昇華(固化)される。これにより、二酸化炭素の回収が容易となる。
【0098】
分離装置70A(70B)は、内部に吸着剤701A(701B)が収容されている。当該吸着剤は、水分が含まれても二酸化炭素の吸着性能が低下しにくいタイプのものである(例えば、アミン含浸固体吸着剤)。分離装置70A(70B)のその他の構成は、二酸化炭素回収装置50Aにおける分離装置70A(70B)と同一の装置であるため、説明を省略する。
【0099】
分離装置70A(70B)は 第1移送管L15A(L15B)を介して水蒸気凝縮器4A(4B)と接続されており、分離装置70A(70B)から放散される二酸化炭素と水蒸気が水蒸気凝縮器4A(4B)に流れることが可能となっている。なお、第1移送管L15Aは、分離装置70Aと水蒸気凝縮器4Aとの間に、上流側から、減圧弁9Aと開閉弁13Aとを備えており、第1移送管L15Bは、分離装置70Bと水蒸気凝縮器4Bとの間に、上流側から、減圧弁9Bと開閉弁13Bとを備えている。
【0100】
水蒸気凝縮器4A(4B)は、内部に熱交換器41A(41B)を備えている。該熱交換器41Aは、冷媒回路12A(12B)を流れる冷媒により、分離装置70A(70B)から水蒸気凝縮器4A(4B)に到達した水蒸気と二酸化炭素を冷却するために用いられる。水蒸気凝縮器4A(4B)は、さらに、廃温熱や環境熱を利用したヒートポンプ42A(42B)や、ドレン43A(43B)が接続されている。該ドレン43A(43B)は、開閉弁15A(15B)を有している。
【0101】
また、水蒸気凝縮器4A(4B)は、第2移送管L16A(L16B)を介して、二酸化炭素昇華器5A(5B)に接続されている。なお、第2移送管L16A(L16B)は、水蒸気凝縮器4A(4B)と、二酸化炭素昇華器5A(5B)との間に、開閉弁14A(14B)を備えている。
【0102】
二酸化炭素昇華器5A(5B)は、二酸化炭素回収装置50Aにおける二酸化炭素昇華器5A(5B)と同一の装置であり、内部の熱交換器51A(51B)を用いて、冷媒回路12A(12B)を流れる冷媒によって二酸化炭素を昇華(固化)するものである。
【0103】
冷媒回路12A(12B)は、二酸化炭素昇華器5A(5B)、水蒸気凝縮器4A(4B)の順に冷媒が流れるように構成されている。冷媒に用いられるのは、二酸化炭素回収装置50Aと同様に、液化燃料(流体の一例)の再ガス化後の冷熱である。
【0104】
以上の構成を有する二酸化炭素回収装置50Bにおける、冷媒と、水蒸気凝縮器4A(4B)と、二酸化炭素昇華器5A(5B)の機能について、以下に説明する。
【0105】
冷媒は、冷媒回路12A(12B)を通り、まず、二酸化炭素昇華器5A(5B)の有する熱交換器51A(51B)により、二酸化炭素昇華器5A(5B)内を二酸化炭素の昇華(固化)に適した温度に冷却し、二酸化炭素昇華器5A(5B)内の二酸化炭素を昇華(固化)する。これは二酸化炭素回収装置50Aと同様である。なお、二酸化炭素の昇華(固化)に適した温度とは、上述の通り、被分離ガスとして、例えば、製鉄工場またはセメント工場からの燃焼排ガスを用いる場合には摂氏約マイナス85度以下、被分離ガスとして発電所からの燃焼排ガスを用いる場合には摂氏約マイナス96度以下、被分離ガスとして大気を用いる場合には摂氏約マイナス140度以下である。
【0106】
二酸化炭素昇華器5A(5B)内の二酸化炭素が昇華(固化)される際、二酸化炭素昇華器5A(5B)は減圧され、負圧となる。これにより、二酸化炭素昇華器5A(5B)がポンプの役割を果たし、分離装置70A(70B)から放散された水蒸気および二酸化炭素の吸引が行われる。この吸引により、水蒸気および二酸化炭素が、水蒸気凝縮器4A(4B)および二酸化炭素昇華器5A(5B)に向かう流れが生じるのである。
【0107】
また、二酸化炭素昇華器5A(5B)が減圧されるに伴い、直列に接続されている分離装置70A(70B)が約4KPaまで減圧される点は、二酸化炭素回収装置50Aと同様である。
【0108】
冷媒は、二酸化炭素昇華器5A(5B)内の冷却を行った後、水蒸気凝縮器4A(4B)まで流れ、水蒸気凝縮器4A(4B)が有する熱交換器41A(41B)により水蒸気凝縮器4A(4B)内を冷却する。冷媒は二酸化炭素昇華器5A(5B)の熱交換器51A(51B)における熱交換により温度が上昇されているため、水蒸気凝縮器4A(4B)内は摂氏約1度に冷却される。
【0109】
水蒸気凝縮器4A(4B)が摂氏約1度とされているため、二酸化炭素昇華器5A(5B)に生じた負圧によって吸引されて、分離装置70A(70B)から排出された二酸化炭素と水蒸気は、水蒸気凝縮器4A(4B)に流入されると、摂氏約20度に冷却される。これにより、水蒸気は凝縮されて水となる。当該水は、水蒸気凝縮器4A(4B)の底部に貯められ、貯められた水は、開閉弁15A(15B)を開弁することで、ドレン43A(43B)により排出される。
【0110】
水蒸気凝縮器4A(4B)に、水蒸気とともに流入された二酸化炭素は、摂氏約20度では気体のままであるため、二酸化炭素昇華器5A(5B)に吸引されることで、第2移送管L16A(L16B)を通り、二酸化炭素昇華器5A(5B)へ流入される。そして、二酸化炭素昇華器5A(5B)に流入した二酸化炭素は、上述したように昇華(固化)される。
【0111】
以上説明したように、第3の実施形態に係る二酸化炭素回収装置50Aまたはその変形例に係る二酸化炭素回収装置50Bは、分離装置70A,70Bは、二酸化炭素を吸着可能な吸着剤701A,701Bを収容しており、吸着剤701A,701Bが分離装置70A,70Bに供給された被分離ガス(例えば燃焼排ガス)に含有される二酸化炭素を吸着することで、被分離ガスから二酸化炭素を分離すること、を特徴とする。
【0112】
上記二酸化炭素回収装置50A,50Bによれば、分離装置70A,70Bは、二酸化炭素を吸着可能な吸着剤(例えばゼオライト、アミン含浸固体吸着剤、ゲート型吸着剤等)701A,701Bを収容しているため、被分離ガスに含有される二酸化炭素を吸着することで、被分離ガスから二酸化炭素を分離することが出来る。そして、吸着剤701A,701Bに吸着された二酸化炭素は、吸着剤701A,701Bから脱着を行うことで回収可能である。この脱着は、減圧下で行われることが一般的であるところ、冷媒によって二酸化炭素昇華器5A,5Bが減圧されるに伴い、直列に接続されている分離装置70A,70Bも減圧されるため、分離装置70A,70Bを減圧するためにポンプ等が必要ない。つまり、ポンプ等を動作させるための電力が必要なく、省エネルギー化を達成することが出来る。そして、省エネルギー化により、電力コストの増大や、発電のための新たな二酸化炭素の発生を抑えることが出来る。
【0113】
また、第3の実施形態に係る二酸化炭素回収装置50Aまたはその変形例に係る二酸化炭素回収装置50Bは、分離装置70A,70Bは、二酸化炭素とともに水蒸気を放散すること、水蒸気を凝縮させる水蒸気凝縮器4A,4Bを備えること、被分離ガス(例えば燃焼排ガス)が供給される上流側から順に、分離装置70A,70Bと、水蒸気凝縮器4A,4Bと、二酸化炭素昇華器5A,5Bと、が直列に接続されていること、冷媒回路12A,12Bは、水蒸気凝縮器4A,4Bと、二酸化炭素昇華器5A,5Bと、に接続されており、冷媒により、水蒸気の凝縮および二酸化炭素の昇華(固化)が行われること、を特徴とする。
【0114】
分離装置70A,70Bから二酸化炭素とともに水蒸気が放散される場合、二酸化炭素昇華器5A,5Bで、二酸化炭素とともに水蒸気を固化してしまうと、二酸化炭素の回収が困難となる。そこで、二酸化炭素回収装置50Bのように、分離装置70A(70B)と、水蒸気凝縮器4A,4Bと、二酸化炭素昇華器5A,5Bと、を直列に接続すれば、分離装置70A,70Bから放散された二酸化炭素および水蒸気は、まず水蒸気凝縮器4A,4Bまで流れ、水蒸気凝縮器において水蒸気のみが、冷媒により冷却され、凝縮される。まず水蒸気が凝縮されることで、二酸化炭素のみが、次の二酸化炭素昇華器5A,5Bまで流れ、二酸化炭素昇華器5A,5Bにおいて、二酸化炭素のみが冷媒により冷却されて昇華(固化)される。これにより、二酸化炭素の回収が容易となる。
【0115】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る二酸化炭素回収装置100Aついて、
図5を参照しながら、第3の実施形態に係る二酸化炭素回収装置50A,50Bと異なる点について説明する。
図5は、第
4の実施形態に係る二酸化炭素回収装置100Aの構成を概略的に表した図である。
【0116】
二酸化炭素回収装置100Aは、
図5に示すように、分離装置80と、二酸化炭素昇華器5A,5Bと、を備えている。なお、2台の二酸化炭素昇華器5A,5Bは同一の装置である。
【0117】
分離装置80は、内部に、二酸化炭素を選択的に透過する透過膜803が保持されている。透過膜803としては、例えば、ゼオライト膜(例えば、高シリカCHA型ゼオライト膜や、DDR型ゼオライト膜)等の無機膜や、分子ゲート膜等の有機膜等が使用される。この透過膜803により、分離装置80の内部が、非透過側801と透過側802とに分割されている。非透過側801には、ガス導入口804が設けられており、ガス導入口804にはガス供給路L11が接続されている。これにより、燃焼排ガスを分離装置80(非透過側801)に供給することが出来る。なお、この分離装置80(非透過側801)に供給される燃焼排ガスは、ガス供給路L11上に設けられた不図示の水蒸気除去装置および脱硫装置によって、水蒸気および硫黄酸化物を除去したものである。
【0118】
透過側802は、二酸化炭素を選択的に透過するものであるため、分離装置80(非透過側801)に供給される燃焼排ガスに含有される成分のうち、二酸化炭素のみが透過側802に移動することができ、二酸化炭素以外の窒素、酸素などは、透過膜803を透過せずに非透過側801に残留する。
【0119】
さらに、非透過側801には、排出口806が設けられており、排出口806には、非透過側801に残留した窒素、酸素などを排出するための排出流路L12が接続されている。また、排出流路L12は、開閉弁81を備えている。
【0120】
透過側802には、放散口805が設けられており、該放散口805から透過膜803を透過した二酸化炭素が放散される。放散口805には移送管L15が接続されており、放散口805から放散された二酸化炭素は、移送管L15に排出される。この排出は、二酸化炭素昇華器5A(5B)に生じる負圧により、二酸化炭素が吸引されることで行われるものである。
【0121】
移送管L15は切替弁11によって、分岐移送管L151Aと、分岐移送管L151Bとに分岐されている。この分岐により、分離装置80(透過側802)は、移送管L15および分岐移送管L151Aを介して二酸化炭素昇華器5Aと接続され、移送管L15および分岐移送管L151Bを介して二酸化炭素昇華器5Bとが接続されている。そして、切替弁11の動作により、分離装置80から排出される二酸化炭素を、二酸化炭素昇華器5A,5Bのどちらに流すか、選択することが可能となっている。なお、分岐移送管L151A(L151B)は、切替弁11と、二酸化炭素昇華器5A(5B)との間に、開閉弁14A(14B)を備えている。
【0122】
二酸化炭素昇華器5A(5B)は、二酸化炭素回収装置50A,50Bにおける二酸化炭素昇華器5A(5B)と同一の装置であり、内部の熱交換器51A(51B)を用いて、冷媒回路12A(12B)を流れる冷媒によって二酸化炭素を昇華(固化)するものである。また、冷媒回路12A(12B)も、二酸化炭素回収装置50Aにおける冷媒回路12A(12B)と同一のものであるため、説明を省略する。
【0123】
以上の構成を有する二酸化炭素回収装置100Aにおける、冷媒と、二酸化炭素昇華器5A(5B)の機能について、以下に説明する。
【0124】
冷媒は、冷媒回路12A(12B)を通り、二酸化炭素昇華器5A(5B)の有する熱交換器51A(51B)により、二酸化炭素昇華器5A(5B)内を二酸化炭素の昇華(固化)に適した温度に冷却し、二酸化炭素昇華器5A(5B)内の二酸化炭素を昇華(固化)する。これは二酸化炭素回収装置50Aと同様である。なお、二酸化炭素の昇華(固化)に適した温度とは、上述の通り、被分離ガスとして製鉄工場またはセメント工場からの燃焼排ガスを用いる場合には摂氏約マイナス85度以下、被分離ガスとして、例えば、発電所からの燃焼排ガスを用いる場合には摂氏マイナス96度以下、被分離ガスとして大気を用いる場合には摂氏マイナス140度以下である。
【0125】
二酸化炭素昇華器5A,5Bから二酸化炭素を回収する際には、二酸化炭素昇華器5A,5Bにおける二酸化炭素の昇華(固化)を停止させる必要がある。しかし、上述したように、切替弁11の動作により、分離装置80から排出される二酸化炭素を、二酸化炭素昇華器5A,5Bのどちらに流すか、選択することが可能となっているため、一方の二酸化炭素昇華器5Aから二酸化炭素を回収する際に、他方の二酸化炭素昇華器5Bで二酸化炭素の昇華(固化)を行い続けることができ、その逆も可能である。よって、より効率良く二酸化炭素を回収することが可能である。
【0126】
二酸化炭素昇華器5A(5B)内の二酸化炭素が昇華(固化)される際、二酸化炭素昇華器5A(5B)は減圧され、負圧となる。これにより、二酸化炭素昇華器5A(5B)がポンプの役割を果たし、分離装置80から放散された二酸化炭素の吸引が行われる。この吸引により、分離装置80から二酸化炭素昇華器5A(5B)までの、二酸化炭素の流れが生じ、二酸化炭素昇華器5A(5B)における二酸化炭素の昇華(固化)が促進される。
【0127】
また、二酸化炭素昇華器5A(5B)が減圧されるに伴い、二酸化炭素昇華器5A(5B)と直列に接続されている分離装置80(透過側802)も約4KPaまで減圧される。このため、分離装置80(透過側802)を減圧するためのポンプ等を要さずとも、分離装置80の非透過側801に供給された燃焼排ガスに含有される二酸化炭素が、透過側802に吸引され、二酸化炭素の分離が促進される。つまり、ポンプ等を動作させるための電力が必要なく、省エネルギー化を達成することが出来る。そして、省エネルギー化により、電力コストの増大や、発電のための新たな二酸化炭素の発生を抑えることが出来る。なお、分離装置80の圧力の調整は、移送管L15上に設けられた減圧弁9により行われる。なお、この二酸化炭素の分離を行う際は、排出流路L12から分離装置80に逆流が生じないように、開閉弁81を閉弁した状態で行われる。そして、非透過側801が二酸化炭素以外の窒素、酸素などで満たされ、それ以上燃焼排ガスを非透過側801に供給することが出来なくなった場合に、開閉弁81を開弁し、当該窒素、酸素などを排出する。
【0128】
(第4の実施形態の変形例)
次に、第4の実施形態の変形例に係る二酸化炭素回収装置100Bについて、
図6を用いて詳細に説明する。
図6は、第
4の実施形態の変形例に係る二酸化炭素回収装置100Bの構成を概略的に表した図である。
【0129】
二酸化炭素回収装置100Bは、分離装置80と、水蒸気凝縮器4Aおよび二酸化炭素昇華器5Aが直列に接続されてなる二酸化炭素回収ライン10Aと、水蒸気凝縮器4Bおよび二酸化炭素昇華器5Bが直列に接続されてなる二酸化炭素回収ライン10Bと、から構成されている。
【0130】
水蒸気が含まれた燃焼排ガスが分離装置80に供給された場合、分離装置80から二酸化炭素の放散を行う際に、二酸化炭素とともに水蒸気が放散されることが考えられる。二酸化炭素昇華器5A(5B)で、二酸化炭素とともに水蒸気を固化してしまうと、二酸化炭素の回収が困難となる。そこで、二酸化炭素回収装置100Bのように、分離装置80と、水蒸気凝縮器4A(4B)と、二酸化炭素昇華器5A(5B)と、を直列に接続すれば、分離装置80から放散された二酸化炭素および水蒸気は、まず水蒸気凝縮器4A(4B)まで流れ、水蒸気凝縮器4A(4B)において水蒸気のみが、冷媒により冷却され、凝縮される。まず水蒸気が凝縮されることで、二酸化炭素のみが、次の二酸化炭素昇華器5A(5B)まで流れ、二酸化炭素昇華器5A(5B)において、二酸化炭素のみが冷媒により冷却されて昇華(固化)される。これにより、二酸化炭素の回収が容易となる。
【0131】
分離装置80は、上記した二酸化炭素回収装置100Aにおける分離装置80と同一の装置である。分離装置80から放散された二酸化炭素と水蒸気とは、第1移送管L15に排出される。この排出は、二酸化炭素昇華器5A,5Bにおける二酸化炭素の昇華(固化)の際に生じる負圧により、二酸化炭素と水蒸気が吸引されることで行われるものである。
【0132】
第1移送管L15は切替弁11によって、分岐移送管L151Aと、分岐移送管L151Bとに分岐されている。この分岐により、分離装置80(透過側802)は、第1移送管L15および分岐移送管L151Aを介して、水蒸気凝縮器4Aおよび二酸化炭素昇華器5Aからなる二酸化炭素回収ライン10Aと接続され、第1移送管L15および分岐移送管L151Bを介して、水蒸気凝縮器4Bおよび二酸化炭素昇華器5Bからなる二酸化炭素回収ライン10Bと接続されている。そして、切替弁11の動作により、分離装置80(透過側802)から放散される二酸化炭素と水蒸気を、二酸化炭素回収ライン10A,10Bのどちらに流すか、選択することが可能となっている。なお、分岐移送管L151A(L151B)は、切替弁11と水蒸気凝縮器4A(4B)との間に、開閉弁13A(13B)を備えている。
【0133】
水蒸気凝縮器4A(4B)は、二酸化炭素回収装置50Bにおける水蒸気凝縮器4A(4B)と同一の装置であり、内部の熱交換器41A(41B)を用いて、冷媒回路12A(12B)を流れる冷媒によって水蒸気を凝縮するものである。水蒸気凝縮器4A(4B)は、第2移送管L16A(L16B)を介して、二酸化炭素昇華器5A(5B)に接続されている。なお、第2移送管L16A(L16B)は、水蒸気凝縮器4A(4B)と二酸化炭素昇華器5A(5B)との間に、開閉弁14A(14B)を備えている。
【0134】
二酸化炭素昇華器5A(5B)は、二酸化炭素回収装置50A,50B,100Aにおける二酸化炭素昇華器5A(5B)と同一の装置であり、内部の熱交換器51A(51B)を用いて、冷媒回路12A(12B)を流れる冷媒によって二酸化炭素を昇華(固化)するものである。
【0135】
また、冷媒回路12A(12B)は、二酸化炭素回収装置50Bと同様に、二酸化炭素昇華器5A(5B)、水蒸気凝縮器4A(4B)の順に冷媒が流れるように構成されている。冷媒に用いられるのは、二酸化炭素回収装置50A,50B,100Aと同様に、液化燃料(流体の一例)の再ガス化後の冷熱である。
【0136】
以上の構成を有する二酸化炭素回収装置100Bにおける、冷媒と、水蒸気凝縮器4A(4B)と、二酸化炭素昇華器5A(5B)の機能について、以下に説明する。
【0137】
冷媒は、冷媒回路12A(12B)を通り、まず、二酸化炭素昇華器5A(5B)の有する熱交換器51A(51B)により、二酸化炭素昇華器5A(5B)内を二酸化炭素の昇華(固化)に適した温度に冷却し、二酸化炭素昇華器5A(5B)内の二酸化炭素を昇華(固化)する。これは二酸化炭素回収装置50A,50B,100Aと同様である。なお、二酸化炭素の昇華(固化)に適した温度とは、上述の通り、被分離ガスとして、例えば、製鉄工場またはセメント工場からの燃焼排ガスを用いる場合には摂氏約マイナス85度以下、被分離ガスとして発電所からの燃焼排ガスを用いる場合には摂氏約マイナス96度以下、被分離ガスとして大気を用いる場合には摂氏約マイナス140度以下である。
【0138】
二酸化炭素昇華器5A(5B)内の二酸化炭素が昇華(固化)される際、二酸化炭素昇華器5A(5B)は減圧され、負圧となる。これにより、二酸化炭素昇華器5A(5B)がポンプの役割を果たし、分離装置80から放散された水蒸気および二酸化炭素の吸引が行われる。この吸引により、水蒸気および二酸化炭素が、水蒸気凝縮器4A(4B)および二酸化炭素昇華器5A(5B)に向かう流れが生じるのである。
【0139】
また、二酸化炭素昇華器5A(5B)が減圧されるに伴い、直列に接続されている分離装置80(透過側802)が約4KPaまで減圧される点は、二酸化炭素回収装置100Aと同様である。
【0140】
冷媒は、二酸化炭素昇華器5A(5B)内の冷却を行った後、水蒸気凝縮器4A(4B)まで流れ、水蒸気凝縮器4A(4B)が有する熱交換器41A(41B)により水蒸気凝縮器4A(4B)内を冷却する。冷媒は二酸化炭素昇華器5A(5B)の熱交換器51A(51B)における熱交換により温度が上昇されているため、水蒸気凝縮器4A(4B)内は摂氏約1度に冷却される。
【0141】
水蒸気凝縮器4A(4B)が摂氏約1度とされているため、二酸化炭素昇華器5A(5B)に生じた負圧によって吸引されて、分離装置80(透過側802)から排出された二酸化炭素と水蒸気は、水蒸気凝縮器4A(4B)に流入されると、摂氏約20度に冷却される。これにより、水蒸気は凝縮されて水となる。当該水は、水蒸気凝縮器4A(4B)の底部に貯められ、貯められた水は、開閉弁15A(15B)を開弁することで、ドレン43A(43B)により排出される。
【0142】
水蒸気凝縮器4A(4B)に、水蒸気とともに流入された二酸化炭素は、摂氏約20度では気体のままであるため、二酸化炭素昇華器5A(5B)に吸引されることで、第2移送管L16A(L16B)を通り、二酸化炭素昇華器5A(5B)へ流入される。そして、二酸化炭素昇華器5A(5B)に流入した二酸化炭素は、上述したように昇華(固化)される。
【0143】
以上説明したように、第4の実施形態に係る二酸化炭素回収装置100Aまたはその変形例に係る二酸化炭素回収装置100Bは、分離装置80は、二酸化炭素を選択的に透過する透過膜803を備えており、透過膜803が分離装置80に供給された被分離ガス(例えば燃焼排ガス)に含有される二酸化炭素を透過させることで、被分離ガス(例えば燃焼排ガス)から二酸化炭素を分離すること、二酸化炭素昇華器5A,5Bは、分離装置80の透過膜803の透過側802に接続されていること、を特徴とする。
【0144】
上記二酸化炭素回収装置100A,100Bによれば、分離装置80は、二酸化炭素を選択的に透過する透過膜(例えば、ゼオライト膜等の無機膜や、分子ゲート膜等の有機膜)803を備えているため、分離装置80に供給された被分離ガス(例えば燃焼排ガス)に含有される二酸化炭素が透過膜803の透過側802に分離される。そして、二酸化炭素昇華器5A,5Bは、分離装置80の透過膜803の透過側802に接続されているため、被分離ガスから分離された二酸化炭素は、二酸化炭素昇華器5A,5Bにおいて、冷媒により冷却され、昇華(固化)される。この昇華(固化)によって二酸化炭素昇華器5A,5Bが減圧されることで、二酸化炭素昇華器5A,5Bが接続される分離装置80の透過側802も減圧されるため、透過膜803による二酸化炭素の分離が促進される。減圧するためにポンプ等を要しないため、電力が必要なく、省エネルギー化を達成することが出来る。そして、省エネルギー化により、電力コストの増大や、発電のための新たな二酸化炭素の発生を抑えることが出来る。
【0145】
ここまで説明した二酸化炭素回収装置1A,1B,50A,50B,100A,100Bおいては、二酸化炭素を昇華(固化)し、ドライアイスを得た後、二酸化炭素昇華器5A(5B)の内部温度を常温に戻すことで、ドライアイスを昇華(気化)し、取り出し管54A(54B)から回収することとしている。このように、二酸化炭素を気体として回収する場合、例えば、化学プラントが二酸化炭素回収装置1A,1B,50A,50B,100A,100Bに隣接して設けられていれば、気体として回収した二酸化炭素を、配管を通じて化学プラントに供給することが出来るため、効率的に二酸化炭素を利用することが出来る。
【0146】
しかし、二酸化炭素回収装置1A,1B,50A,50B,100A,100Bにおいては、二酸化炭素を気体として回収するのではなく、液体として回収することとしても良い。二酸化炭素を回収した後に輸送することを考慮すると、液体として回収した方が、ローリーでの輸送が容易となるため好ましい。また、二酸化炭素昇華器5A(5B)において、ドライアイスを気化させるよりも、液化させた方が、二酸化炭素昇華器5A(5B)の内部の温度上昇幅を小さくすることが出来る。よって、二酸化炭素昇華器5A(5B)から二酸化炭素を取り出した後、再び二酸化炭素を昇華(固化)するために、二酸化炭素昇華器5A,5Bを冷却する際に冷媒として用いられる冷熱の節約を図ることが出来る。
【0147】
図7は、二酸化炭素の状態図である。この状態図によれば、融解線MLと気化線VLとに囲まれた領域が、二酸化炭素の液相(以下、液化炭酸という)を得られる領域である。よって、二酸化炭素昇華器5A(5B)から液化炭酸を回収するためには、ドライアイスの温度を、少なくとも、融解線MLと気化線VLと昇華線SLとが交わる三重点TPまで上昇させる必要がある。しかし、三重点TPに到達するまでに一定量の二酸化炭素が気化してしまい、この気化した二酸化炭素は、定積状態における温度変化によっては液化することが出来ないため、ロスとなってしまう。そこで、このロスを可能な限り小さくするため、以下のように二酸化炭素昇華器5A(5B)を制御することが好ましい。
【0148】
二酸化炭素昇華器5A,5Bにおいて、二酸化炭素の昇華(固化)が行われた後、二酸化炭素昇華器5A,5Bのヒートポンプ52A,52B(加熱媒体の一例)を、二酸化炭素の三重点以上の温度に設定する。これにより、二酸化炭素を昇華(固化)するために冷却されていた二酸化炭素昇華器5A,5Bの内部を加熱し、ドライアイスとなっている二酸化炭素を液化させる。
【0149】
そして、ヒートポンプ52A,52Bによる加熱は、得られた液化炭酸の温度が、摂氏マイナス56.6度以上、摂氏マイナス50度以下となった時点で停止する。これは、よりロスを少なく、液化炭酸を回収するためである。
液化炭酸の温度が、摂氏マイナス50度から摂氏10度程度の範囲となる場合に、よりロスが少ない状態で液化炭酸を回収可能なことを、出願人は実験により確認している。しかし、二酸化炭素の温度が三重点に到達すると、そこから急激に温度が上昇し、ロスが増大するおそれがある。そこで、摂氏マイナス56.6度以上、摂氏マイナス50度以下となった時点で加熱を停止することで、液化炭酸の温度を、上記した摂氏マイナス50度から摂氏10度程度の範囲とすることが出来る。
【0150】
ヒートポンプ52A,52Bによる加熱を停止するタイミングとしては、二酸化炭素昇華器5A,5Bの内部の圧力が518kPa以上、800kPa以下となった時点としても良い。この圧力の範囲は、
図7における気化線VL上の、摂氏マイナス56.6度以上、摂氏マイナス50度以下に対応するものである。
【0151】
また、二酸化炭素昇華器5A,5Bから液化炭酸を回収するために、ヒートポンプ52A,52Bによる加熱を開始するのは、二酸化炭素昇華器5A,5Bの体積に対するドライアイスの体積の比(以下、体積比という)が0.1以上、0.3以下の範囲となるまで、二酸化炭素の昇華(固化)を行った後であることが望ましい。これにより、よりロスが少ない状態で液化炭酸を回収することが可能である。
【0152】
図8は、液化炭酸の温度が摂氏マイナス50度で、かつ、二酸化炭素昇華器5A,5Bの内部の圧力が約530kPaの条件(以下、回収条件)で液化炭酸を回収するとした場合において、所定の体積比毎に、ドライアイスの質量に対する、回収可能な液化炭酸の質量割合と、気化した二酸化炭素の質量割合(つまり、回収できずにロスとなる二酸化炭素の質量割合)を示した表である。
【0153】
例えば、体積比を0.12として、上記回収条件で液化炭酸を回収した場合、回収可能な液化炭酸の質量割合は0.938であり、気化した二酸化炭素の質量割合は0.062であった。体積比を0.12から増大させるにつれ、回収可能な液化炭酸の質量割合が増加し、これに伴いロスは低下する。そして、体積比を0.3として、上記回収条件で液化炭酸を回収した場合、回収可能な液化炭酸の質量割合は0.979であり、気化した二酸化炭素の質量割合は0.021であった。つまり、体積比が0.1以上、0.3以下の範囲となるまで二酸化炭素を昇華(固化)させた後であれば、上記の通りドライアイスの質量のうち、90%以上を液化炭酸として回収可能である。
【0154】
なお、出願人は、体積比が0.1より小さいと、回収可能な液化炭酸の質量割合が0.9を下回ることを、実験により確認している。 0.9を下回ると、その分ロスが増大するため、好ましくない。また、出願人は、体積比が0.3より大きいと、回収可能な液化炭酸の質量割合は飽和状態となることを、実験により確認している。体積比を0.3以上となるまで二酸化炭素の昇華(固化)を行うこととすると、昇華(固化)に要する時間が増大するのみで、回収可能な液化炭酸の質量割合増大せず、二酸化炭素の回収効率が悪くなるため、好ましくない。
【0155】
以上のようにして、二酸化炭素昇華器5A(5B)において得られた液化炭酸を回収するには、取り出し管54A(54B)の開閉弁17A(17B)を開弁すれば良い。二酸化炭素昇華器5A(5B)の内部を加熱したことにより、二酸化炭素昇華器5A(5B)の内部の圧力が上昇しているため、開閉弁17A(17B)を開弁することで、液化された二酸化炭素が、二酸化炭素昇華器5A(5B)の内部の圧力に押し出されて、取り出し管54A(54B)から出力される。
【0156】
(第5の実施形態)
また、二酸化炭素昇華器5A,5Bから液化炭酸を回収する場合には、例えば、
図9に示す第5の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Cのように、二酸化炭素昇華器5A,5Bに、気液分離器91A,91Bを接続しても良い。この気液分離器91A,91Bは、例えば、遠心力又は表面張力等を利用して液体と気体とを分離することが可能な装置である。なお、
図9に示す二酸化炭素回収装置1Cは、二酸化炭素昇華器5A,5Bに、気液分離器91A,91Bが接続されていることを除いては、
図1に示す二酸化炭素回収装置1Aと同一の構成を有している。ただし、
図9に示す構成はあくまで一例であり、気液分離器91A,91Bは、二酸化炭素回収装置1B,50A,50B,100A,100Bの二酸化炭素昇華器5A,5Bに接続することも可能である。
【0157】
二酸化炭素昇華器5A,5Bに、窒素など摂氏-162度(上記した冷熱の温度)でもガス状である気体(以下、一例である窒素を以って説明する)が流入した場合、窒素は、二酸化炭素昇華器5A,5Bから液化炭酸を回収する際の温度・圧力条件においてもガス状であるため、二酸化炭素昇華器5A,5Bの取り出し管54A(54B)から液化炭酸を出力する際に、液化炭酸とともに排出されるおそれがある。そこで、二酸化炭素昇華器5A,5Bに、気液分離器91A,91Bを接続すれば、取り出し管54A(54B)から気液分離器91A,91Bに、液化炭酸と窒素とが流入されるため、気液分離器91A,91Bにおいて、液化炭酸と、窒素とを分離することが可能である。
【0158】
気液分離器91A,91Bには、開閉弁92A,92Bを備えるガス排出管94A,94Bが接続されており、開閉弁92A,92Bを開弁することで、ガス排出管94A,94Bから分離された窒素を排出することが出来る。また、気液分離器91A,91Bには、開閉弁93A,93Bを備える液化炭酸排出管95A,95Bが接続されており、開閉弁93A,93Bを開弁することで、液化炭酸排出管95A,95Bから、窒素を分離した後の液化炭酸を取り出すことが出来る。
【0159】
(第6の実施形態)
さらにまた、二酸化炭素を液体として回収する場合には、
図10に示す第6の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Dのように、二酸化炭素昇華器5A,5Bに、固液分離器96A,96Bを接続しても良い。この固液分離器96A,96Bは、例えば、沈降法、遠心分離法、圧搾法、濾過法等を利用して液体と固体とを分離することが可能な装置である。なお、
図10に示す二酸化炭素回収装置1Dは、二酸化炭素昇華器5A,5Bに、固液分離器96A,96Bが接続されていることを除いては、
図1に示す二酸化炭素回収装置1Aと同一の構成を有している。ただし、
図10に示す構成はあくまで一例であり、固液分離器96A,96Bは、二酸化炭素回収装置1B,50A,50B,100A,100Bの二酸化炭素昇華器5A,5Bに接続することも可能である。
【0160】
二酸化炭素昇華器5A,5Bにおいて、ドライアイスから液化炭酸を得る過程で水分が混入していると、当該水分は、二酸化炭素昇華器5A,5Bから液化炭酸を回収する際の温度条件においては、固化されて氷となっている。この氷は、二酸化炭素昇華器5A,5Bの取り出し管54A(54B)から液化炭酸を出力する際に、液化炭酸とともに排出されるおそれがある。そこで、二酸化炭素昇華器5A,5Bに、固液分離器96A,96Bを接続すれば、取り出し管54A(54B)から固液分離器96A,96Bに、液化炭酸と氷とが流入されるため、固液分離器96A,96Bにおいて、液化炭酸と、氷とを分離することが可能である。
【0161】
固液分離器96A,96Bには、開閉弁97A,97Bを備える液化炭酸排出管98A,98Bが接続されており、開閉弁97A,97Bを開弁することで、液化炭酸排出管98A,98Bから、氷を分離した後の液化炭酸を取り出すことが出来る。
【0162】
なお、上記説明においては、二酸化炭素昇華器5A,5Bに対し、気液分離器91A,91Bまたは固液分離器96A,96Bを接続した状態を説明しているが、二酸化炭素昇華器5A,5Bに対して、気液分離器91A,91B、固液分離器96A,96Bの順に直列に接続しても良い。
【0163】
(二酸化炭素昇華器の構成について)
上記した二酸化炭素回収装置1A,1B,1C,1D,50A,50B,100A,100Bに用いられる二酸化炭素昇華器5A,5Bは、
図13および
図14に示すような構成を有することとしても良い。なお、
図13と、
図14と、以下の説明においては、単に二酸化炭素昇華器5と表記する。
【0164】
二酸化炭素昇華器5は、二酸化炭素の昇華(固化)を行うための昇華室55と、昇華(固化)された二酸化炭素であるドライアイス90を回収するための回収室56と、が連結されてなる。
【0165】
昇華室55には、移送管L21が接続されており、当該移送管L21から昇華室55の内部へ二酸化炭素が導入される。なお、この移送管L21は、二酸化炭素回収装置1Aにおける第2移送管L16A,L16B(
図1参照)、または、二酸化炭素回収装置1Bにおける分岐移送管L161A,L161B(
図2参照)、または、二酸化炭素回収装置50Aにおける移送管L15A,L15B(
図3参照)、または、 二酸化炭素回収装置50Bにおける第2移送管L16A,L16B(
図4参照)、または、二酸化炭素回収装置100Aにおける分岐移送管L151A,L151B(
図5参照)、または、二酸化炭素回収装置100Bにおける第2移送管L16A,L16B(
図6参照)、または、二酸化炭素回収装置1Cにおける第2移送管L16A,L16B(
図9参照)、または、二酸化炭素回収装置1Dにおける第2移送管L16A,L16B(
図10参照)に相当するものである。
【0166】
昇華室55の内部には、冷媒回路12に接続された熱交換器51が配設されている。これにより、昇華室55の内部を二酸化炭素の昇華(固化)に適した温度に冷却することが出来る。なお、二酸化炭素の昇華(固化)に適した温度とは、上述の通り、被分離ガスとして製鉄工場またはセメント工場からの燃焼排ガスを用いる場合には摂氏約マイナス85度以下、被分離ガスとして、例えば、発電所からの燃焼排ガスを用いる場合には摂氏約マイナス96度以下、被分離ガスとして大気を用いる場合には摂氏約マイナス140度以下である。また、熱交換器51の外周面は、昇華室55の内部で昇華(固化)されたドライアイス90が付着する付着面57(付着部の一例)である。
【0167】
また、付着面57には、ヒータ58が接続されている。このヒータ58は、例えばカートリッジヒータである。ヒータ58が動作することで、熱交換器51の付着面57を局所的に加熱可能となっている。付着面57を加熱することで、付着面57に付着しているドライアイス90の、付着面57と接触している面を昇華(気化)することができる。これにより、付着面57からドライアイス90を落下させることが可能となっている。
【0168】
昇華室55は、回収室56側の端部に第1開口552を備えている。さらに昇華室55は、熱交換器51と第1開口552との間に、第1開口552に向かって下り坂を形成するように傾斜部551を備えている。
【0169】
回収室56は、昇華室55側の端部に第2開口561を備えている。そして、昇華室55の第1開口552と、回収室56の第2開口561とが、遮断装置59を介して接続されている。遮断装置59を閉状態とすれば、昇華室55の内部と回収室56の内部とが遮断された状態となり(
図13)、遮断装置59を開状態とすれば、昇華室55の内部と回収室56の内部とが連通した状態となる(
図14)。回収室56は、付着面57の下方に位置しているため、昇華室55の内部と回収室56の内部とが連通した状態となれば、付着面57から落下するドライアイス90を受け取ることが可能である。また、回収室56には、取り出し管54が接続されている。この取り出し管54は、上述の取り出し管54A(54B)と同一のものである。
【0170】
以上のような構成の二酸化炭素昇華器5を用いた場合、以下のように二酸化炭素の回収を行う。
【0171】
まず、昇華室55の内部を、熱交換器51(冷媒回路12を流れる冷媒)によって、昇華室55の内部を二酸化炭素の昇華(固化)に適した温度に冷却する。このとき、遮断装置59を閉状態としておく。そして、昇華室55の内部が冷却された状態で、移送管L21から昇華室55内に二酸化炭素を導入する。昇華室55内に導入された二酸化炭素は、昇華(固化)され、
図13に示すように、付着面57に付着する。
【0172】
ドライアイス90が付着面57に付着している状態で、ヒータ58を動作させると、付着面57が加熱され、ドライアイス90の付着面57と接触している面が昇華(気化)する。この昇華(気化)により、付着面57に付着していたドライアイス90が、重力によって、
図14の矢印A11に示すように傾斜部551に向かって落下する。そして、傾斜部551に落下したドライアイス90は、矢印A12に示すように、重力によって、傾斜部551を第1開口552に向かって滑っていく。このとき、遮断装置59を開状態としておくことで、ドライアイス90は、第1開口552から、第2開口561を通り、回収室56に収容される。回収室56に収容されたドライアイス90は、昇華(気化)または液化し、取り出し管54から回収する。なお、回収室56の筐体に、回収室56の内部にアクセス可能な扉等を設け、該扉から固体のまま回収することとしても良い。
【0173】
付着面57からドライアイス90を落下させるためには、ドライアイス90の付着面57との接触面を昇華(気化)すれば足りるため、ヒータ58による加熱は短時間で良い。そのため、二酸化炭素の昇華(固化)に適した温度まで冷却されていた昇華室55の温度を、ドライアイス90が気化または液化するまで上昇させる必要がない。つまり、ドライアイス90回収の際に昇華室55の温度変動幅を小さくすることが出来るため、昇華室55に加わる熱衝撃を抑えることが可能である。また、温度変動幅が小さいことで、ドライアイス90を回収した後、昇華室55で再び二酸化炭素の昇華(固化)を行うに当たり、昇華室55を冷却するために要する冷却熱や時間のロスを抑えることが可能である。
【0174】
なお、上記した二酸化炭素回収装置1A,1B,1C,1D,50A,50B,100A,100Bのそれぞれにおいては、2台の二酸化炭素昇華器5A,5Bを用いている(
図1、
図2、
図3、
図4、
図5、
図6、
図9、
図10参照)。これは、一方の二酸化炭素昇華器5A,5Bにおいて昇華(固化)が完了した二酸化炭素を回収している間に、他方の二酸化炭素昇華器5A,5Bにおいて二酸化炭素の昇華(固化)を行うことを可能とするためであり、これにより、二酸化炭素の回収効率を高めることが可能である。
【0175】
しかし、
図13および
図14に示す二酸化炭素昇華器5を用いることとすれば、必ずしも2台用いる必要はない。なぜならば、上記の通り、二酸化炭素昇華器5は、ドライアイス90回収の際に昇華室55の温度変動幅を小さくすることが可能であるため、ドライアイス90を付着面57から落下させた後に、短時間で次の昇華(固化)を行うことが可能であり、2台用いなくとも、効率良く二酸化炭素の回収を行うことが出来るからである。
【0176】
なお、上記した二酸化炭素回収装置1A,1B,1C,1D,50A,50B,100A,100Bは単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、水蒸気凝縮器4A(4B)の温度摂氏1度にされることや、二酸化炭素昇華器5A(5B)の二酸化炭素の昇華(固化)に適した温度にされることや、分離装置70A(70B)の圧力が約4KPaに減圧されることは、あくまで例示であり、これらに限定されるものではない。例えば、二酸化炭素昇華器5A(5B)の温度をより低温にすることで、より急速に二酸化炭素のドライアイス化を進めることが可能である。しかし、あまり温度を低下させ過ぎると、二酸化炭素昇華器5A(5B)から二酸化炭素を回収する際に、ドライアイスを昇華(気化)させるのに時間がかかってしまうことや、再生塔3の圧力が下がり過ぎてしまい、吸収液が液体と固体の共存状態となり、二酸化炭素の放散する効率が低下することが考えられ、却って、二酸化炭素の回収効率が低下するおそれがある。よって、二酸化炭素昇華器5A(5B)の温度は、二酸化炭素の回収効率を見ながら適宜調整される。
【符号の説明】
【0177】
1A 二酸化炭素回収装置
60 分離装置
5A 二酸化炭素昇華器
5B 二酸化炭素昇華器
12A 冷媒回路
12B 冷媒回路