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  • 特許-ヘルメットの衝撃吸収構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】ヘルメットの衝撃吸収構造
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/28 20060101AFI20230105BHJP
   A42B 3/12 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
A42B3/28
A42B3/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017218518
(22)【出願日】2017-11-13
(65)【公開番号】P2019090122
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-10-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-10
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000149930
【氏名又は名称】株式会社谷沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌尚
(72)【発明者】
【氏名】馬島 淳
【合議体】
【審判長】藤原 直欣
【審判官】稲葉 大紀
【審判官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-75021(JP,A)
【文献】特開2005-105487(JP,A)
【文献】米国特許第4987609(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/14
A42B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帽体と着装体とを備えるヘルメットに設けて帽体と人頭との間に位置し、帽体に受けた衝撃を吸収するヘルメットの衝撃吸収構造であって、
内面が人頭に対向し、外面が前記帽体の内面に対向する基部と、該基部の外面から帽体の内面に向かって突出して、当該突出方向の先端縁が前記帽体の内面に対向する板状の突出部とを備え、
前記突出部は、その突出方向に沿って延びる一対の端縁が上下位置となる姿勢に設けられ、
前記帽体と前記基部との間で前記突出部が屈曲変形することにより前記帽体に受けた衝撃を吸収することを特徴とするヘルメットの衝撃吸収構造。
【請求項2】
前記基部に対する前記突出部の厚み方向への倒れを規制する規制部が設けられていること特徴とする請求項1記載のヘルメットの衝撃吸収構造。
【請求項3】
前記規制部は、前記突出部の下方側に設けられていることを特徴とする請求項2記載のヘルメットの衝撃吸収構造。
【請求項4】
前記基部は、前記着装体と一体に形成されていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項記載のヘルメットの衝撃吸収構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルメットに設けて帽体が受けた衝撃を吸収するヘルメットの衝撃吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルメットは、硬質の帽体と、帽体に取り付けられる着装体とを備えている。着装体は人頭に接するハンモック、ヘッドバンド、環ひも類等によって構成される。更に、産業用ヘルメットにおいては、帽体が受ける衝撃の運動エネルギーを吸収するために着装体以外に設ける保護パッドとして、衝撃吸収ライナが帽体の内面に取り付けられる。
【0003】
衝撃吸収ライナは、一般に、発泡スチロール等により形成されており、帽体の内面の殆どの範囲を覆っている。これにより、着用者の転倒時や転落時に帽体に衝撃を受けても、そのときの衝撃力を衝撃吸収ライナが適切に吸収して人頭を保護することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-311713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、帽体と着装体との間に衝撃吸収ライナが設けられていると、帽体内部の通気性が悪く、熱こもりや蒸れが生じて着用時の快適性が損なわれる不都合がある。
【0006】
そこで、帽体の内面から衝撃吸収ライナを取り除いて、帽体内部の通気性や放熱性を確保することが考えられる。
【0007】
一方、ハンモックも、適度な柔軟性及び伸張性により変形して帽体の外部からの衝撃を吸収するようになっているが、帽体の内面から衝撃吸収ライナを取り除いた状態で帽体が衝撃力を受けたとき、従来のハンモックの構造では当該ハンモックのみで人頭に伝わる衝撃を緩和するには不十分である。
【0008】
上記の点に鑑み、本発明は、帽体内部の蒸れを抑えることができるだけでなく、軽量且つ構造簡単で衝撃を確実に吸収することができるヘルメットの衝撃吸収構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明は、帽体と着装体とを備えるヘルメットに設けて帽体と人頭との間に位置し、帽体に受けた衝撃を吸収するヘルメットの衝撃吸収構造であって、内面が人頭に対向し、外面が前記帽体の内面に対向する基部と、該基部の外面から帽体の内面に向かって突出して、当該突出方向の先端縁が前記帽体の内面に対向する板状の突出部とを備え、前記突出部は、その突出方向に沿って延びる一対の端縁が上下位置となる姿勢に設けられ、前記帽体と前記基部との間で前記突出部が屈曲変形することにより前記帽体に受けた衝撃を吸収することを特徴とする。
【0010】
本発明の衝撃吸収構造は、前記突出部により、帽体内部の蒸れを防止したうえで、軽量且つ構造簡単として衝撃を確実に吸収することができる。
【0011】
即ち、突出部が帽体と人頭との間に位置して十分な隙間を確保でき、その隙間は、突出部が板状に形成されていることにより、通気性が確保される。これにより、帽体内部の蒸れを抑えることができる。
【0012】
また、帽体が衝撃を受けると、帽体と人頭との間隙が小さくなる。帽体と人頭との間隙が小さくなると、板状の突出部に帽体内面が圧接する。帽体内面による突出部への圧接量が増加すると、突出部が潰れるようにして屈曲変形する。このとき突出部は、変形量を増加させつつ衝撃を吸収する。このように、突出部が屈曲変形することにより帽体に受けた衝撃を吸収することができる。
【0013】
また、本発明においては、前記基部に対する前記突出部の厚み方向への倒れを規制する規制部が設けられていることが好ましい。前記規制部を設けることにより突出部による衝撃吸収能力を向上させることができる。即ち、帽体からの衝撃を受けた突出部が基部に重合するように倒れると、突出部の屈曲変形が小さくなり、十分に衝撃を吸収できなくなるおそれがある。そこで、前記規制部を設けて帽体から衝撃を受けても突出部が倒れないようにすることで、突出部の屈曲変形が十分に得られ、突出部の衝撃吸収能力を向上させることができる。
【0014】
ところで、ヘルメットが受ける衝撃は、主に帽体の上方から付与される。規制部は、突出部の倒れを防止する反面、衝撃が規制部に付与された場合には、突出部の屈曲変形が抑制されて、十分な緩衝作用が得られないおそれがある。従って、規制部を突出部の上方側に設けると、規制部側から衝撃を受けることになる。
【0015】
そこで、前記規制部は、前記突出部の下方側に設けられていることが好ましい。これによれば、突出部の上方側から衝撃を受けて、突出部の屈曲変形を円滑に得ることができ、突出部の下方側の規制部によって突出部の倒れを確実に防止することができる。
【0016】
また、本発明において、前記基部は、前記着装体と一体に形成されていることが好ましい。例えば、ハンモックの脚部の間に基部を連結する形状を採用することにより、ハンモックと一体成型して衝撃吸収構造を得ることが可能となり、また、ヘッドバンドに基部を連結する形状を採用することにより、ヘッドバンドと一体成型して衝撃吸収構造を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態におけるヘルメットの説明的斜視図。
図2】本実施形態におけるハンモックの平面図。
図3】本実施形態における衝撃吸収構造を示す拡大斜視図。
図4】本実施形態における他の衝撃吸収構造を示す拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のヘルメットは、図1に示すように、着装体の一部であるハンモック1が硬質の帽体2の内部に取り付けられる。図1においては、着装体の一部であるハンモック1のみを示しているが、着装体は、ハンモック1以外に、図示省略したヘッドバンド、耳紐(環紐類)、顎紐等を備えている。
【0019】
ハンモック1は、人頭形状に略対応する形状とされており、図1及び図2に示すように、4つの脚部(一対の前方脚部3a,3b、及び、一対の後方脚部4a,4b)を備えている。各脚部3a,3b,4a,4bは、上下方向に延びる帯状に形成され、その下端には帽体2に着脱自在に連結するための連結部5が設けられている。
【0020】
前頭部側に位置する一対の前方脚部3a,3bは、頭頂部側から連結部5に円弧状に延びて全体として半円形状に形成されると共に、一対の後方脚部4a,4bは、頭頂部側から連結部5に円弧状に延びて全体として半円形状に形成される。各脚部3a,3b,4a,4bには、連結部5の近傍にヘッドバンド取付部6が形成されている。
【0021】
このように、前方脚部3a,3b及び後方脚部4a,4bを半円形状とすることで、側面方向の衝撃吸収能力が得られ、着用者の転倒や墜落時に受ける頭頂部側以外の方向から受ける衝撃力をハンモック1によって吸収することができる。
【0022】
また、ハンモック1は、前後方向に延びる一対の懸架部7を備えている。懸架部7は、前方脚部3a,3b及び後方脚部4a,4bと共に、衝撃を分散して吸収する。これにより、前方および後方の半円形状の脚部3a,3b,4a,4bによる衝撃吸収能力を向上させる作用を有する。
【0023】
前方脚部3a,3bの間には、横方向に延びる上下一対の帯状の前方桁部8a,8bが設けられている。後方脚部4a,4bの間には、横方向に延びる上下一対の帯状の後方桁部9a,9bが設けられている。前方脚部3a,3bと後方脚部4a,4bとの夫々の片側ずつの間には、前後方向に延びる上下一対の帯状の側方桁部10a,10bが設けられている。
【0024】
側方桁部10a,10bと後方桁部9a,9bは、夫々衝撃吸収構造を備えている。本実施形態における衝撃吸収構造は、突出部11と、規制部12とを備えている。
【0025】
突出部11と規制部12とは、側方桁部10a,10bと後方桁部9a,9bの外面から外方に向かって(帽体2の内面に向かって)突出している。側方桁部10a,10bと後方桁部9a,9bとは、何れも本発明の基部に相当し、この基部はハンモック1に一体に形成されている。
【0026】
突出部11は、略矩形状の板状に形成されており、縦姿勢(即ち、突出方向に沿って延びる一対の端縁が上下位置となる姿勢)で設けられている。これにより、帽体2内部での空気の流れに対して突出部11が殆ど邪魔にならず、帽体2内部の通気性をかくして蒸れ等が抑えられる。
【0027】
規制部12は、突出部11の下方側である下方端部に一体に連結されており、図3に示すように、突出部11の広面部11aに対して交差する方向に広がる形状に形成されている。これによって、規制部12は、突出部11の厚み方向への倒れを規制している。
【0028】
側方桁部10a,10bに設けられている衝撃吸収構造の突出部11は、図3に示すように、所定間隔を介して2つを1組として2組設けられている。1組単位の両突出部11の下端部には、規制部12が連続して設けられている。下側の後方桁部9bも側方桁部10a,10bと同様の衝撃吸収構造を備えている。
【0029】
上側の後方桁部9aに設けられている衝撃吸収構造の突出部11は、図4に示すように、所定間隔を介して4つ配設され、4つの突出部11の下端部には、規制部12が連続して設けられている。
【0030】
本実施形態による衝撃吸収構造は、次のようにして衝撃を吸収する。即ち、帽体2の上方外部から衝撃が付与されると、ハンモック1の衝撃吸収作用により各脚部3a,3b,4a,4b及び懸架部7が延びる。これに伴い、帽体2からの衝撃は、帽体2の内面が突出部11に圧接するようにして突出部11に伝達される。このとき、突出部11における先端縁11bと上端縁11cとが交わる角部11dから衝撃が突出部11に伝達される。そして、規制部12によって突出部11の倒れが防止されていることにより、突出部11が確実に屈曲変形して衝撃を吸収緩和する。更に、規制部12が突出部11の下端部に設けられていることにより、規制部12が突出部11の屈曲変形を阻害することがなく、突出部11において確実に衝撃が吸収される。
【0031】
なお、本実施形態においては、規制部12が突出部11の下方側に設けられているものを示したが、これに限らず、例えば、規制部12は突出部11の中央位置に設けられていてもよい。
【0032】
また、本実施形態においては、ハンモック1の一部である側方桁部10a,10b及び後方桁部9a,9bを基部として突出部11と規制部12とを一体に形成した衝撃吸収構造を示したが、基部をハンモック1と別体で形成して、帽体と人頭との間の所望の位置に衝撃吸収構造を配置してもよい。
【0033】
また、本実施形態においては、前方桁部8a,8bに突出部11を設けていないものを示したが、図示しないが、必要に応じて前方桁部8a,8bに突出部11を設けてもよい。この場合には、前方桁部8a,8bが本発明の衝撃吸収構造における基部として機能する。
【0034】
また、本実施形態においては、着装体を構成するハンモック1に衝撃吸収構造を設けたものにいて説明したが、図示しないが着装体を構成するヘッドバンドに衝撃吸収構造を設けてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…ハンモック(着装体)、2…帽体、9a,9b…後方桁部(基部)、10a,10b…側方桁部(基部)、11…突出部、11b…先端縁、11c…上端縁、12…規制部。
図1
図2
図3
図4