(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】止水ユニット
(51)【国際特許分類】
E02B 7/22 20060101AFI20230105BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20230105BHJP
E06B 7/23 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
E02B7/22
E06B5/00 Z
E06B7/23 T
(21)【出願番号】P 2018220835
(22)【出願日】2018-11-27
【審査請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】595172067
【氏名又は名称】ホクセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177921
【氏名又は名称】坂岡 範穗
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 佳代子
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-163124(JP,A)
【文献】実開昭62-108494(JP,U)
【文献】実開昭59-160446(JP,U)
【文献】特開2015-113603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/22
E06B 5/00
E06B 7/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路の幅方向に配置され地面又は床面から掘り下げられるとともに、排水のための第1排水口を備える第1貯水部と、
前記第1貯水部の内部に収容され、前記第1排水口の排水能力を超える量の水が前記第1貯水部に流入して水が貯留されたとき、貯留された水から浮力を得て上昇する止水板と、
前記第1貯水部の長手方向の両端に立設され前記止水板が上昇したときの傾倒を防止する案内部と、
前記第1貯水部及び前記案内部の屋内側で前記止水板に対向する面、又は前記止水板のうち屋内側を向く面のうち少なくともどちらか一方に貼設される、断面中空の長尺状のパッキンと、
前記パッキンの中に差し込まれ前記パッキンが貼設される側とその一部が接合されることで、前記パッキンを固定する固定用長尺材と、
を備え、
さらに、前記第1貯水部が鉄道線路を横断する方向に設けられるとともに、前記第1貯水部に該当する箇所の鉄道用レールが除去され、
前記止水板の上面に設けられ、前記止水板が下降した状態で前記鉄道用レールの除去された部分を代替する第1レール部を備えることを特徴とする止水ユニット。
【請求項2】
前記パッキンの中空の内壁と前記固定用長尺材との間に隙間を備えることを特徴とする請求項1に記載の止水ユニット。
【請求項3】
前記パッキンが断面D型であることを特徴とする請求項2に記載の止水ユニット。
【請求項4】
前記案内部に、前記止水板が上昇するにつれて前記止水板を屋内側に傾斜させるための傾斜案内レールを備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の止水
ユニット。
【請求項5】
前記パッキンと前記パッキンが貼設される側との間に設けられ、前記固定用長尺材が接合される基台用長尺材を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の止水ユニット。
【請求項6】
前記第1貯水部より屋外側に隣接して地面又は床面から掘り下げられその上面から水が流入可能に構成されるとともに、排水のための第2排水口及び前記第2排水口より所定の高さを持って前記第1貯水部と連通される連通孔を備える第2貯水部を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の止水ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集中豪雨による洪水等の際に、止水板が自動的に上昇及び下降をして、建物や地下施設等に水が流入しないよう止水する止水ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集中豪雨による洪水等の際に、堤防決壊、豪雨等に基づき家屋等に対する溢水の危険が生じた場合、これに対する防御が自動的に採られるようにする目的で、例えば特開2016-29241号公報に、上面開口の溝状を呈する基体ブロック内に、当該基体ブロックの上面開口部を覆う大きさを具えた平板部とその両側部に垂設した脚状枠桿の間に板状フロートを取付けて成る遮水用パネルを昇降自在に収装し、基体ブロック内に水が入り込むことに依り、遮水用パネルがその浮力に基づき上昇して遮水作用を奏するように構成した溢水防止装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている装置では、遮水用パネルの水密用のパッキンにラバー帯を用いており、このラバー帯から水が屋内側等へ漏れてくるおそれがあった。ここで、水密性能に優れた特殊な形状のパッキンを新たに製作することも考えられるが、そのようなパッキンを製造するには金型を新たに製作する必要があり、経済的ではなかった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、パッキンに汎用的なものを採用しながら、水密性能を高めることができる止水ユニットを提供することを目的とする。。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の止水ユニットは、
通路の幅方向に配置され地面又は床面から掘り下げられるとともに、排水のための第1排水口を備える第1貯水部と、
前記第1貯水部の内部に収容され、前記第1排水口の排水能力を超える量の水が前記第1貯水部に流入して水が貯留されたとき、貯留された水から浮力を得て上昇する止水板と、
前記第1貯水部の長手方向の両端に立設され前記止水板が上昇したときの傾倒を防止する案内部と、
前記第1貯水部及び前記案内部の屋内側で前記止水板に対向する面、又は前記止水板のうち屋内側を向く面のうち少なくともどちらか一方に貼設される、断面中空の長尺状のパッキンと、
前記パッキンの中に差し込まれ前記パッキンが貼設される側とその一部が接合されることで、前記パッキンを固定する固定用長尺材と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の止水ユニットによれば、水密用のパッキンに断面中空の長尺状のものを採用している。これにより、パッキンに汎用品を用いることができ、経済的に止水ユニットを製造することができる。また、パッキンの中に差し込まれるとともにパッキンを貼設される側に押さえ込んで固定する固定用長尺材を備えるため、パッキンの中に芯材が入っているような状態になり、パッキンを強固に取付けることができる。これにより、例えば、止水板の動作時にパッキンの幅方向に力が加えられるようなことがあっても、パッキンが破断又は捩れることがなく、安定した水密性能を発揮することができる。
【0008】
また、第1貯水部に第1排水口を備えるため、通常の降雨等の雨水が第1貯水部に流入しても第1排水口より排水され、止水板が上昇することがない。一方、集中豪雨等で雨水が氾濫するようなときには、第1排水口から排水される量より第1貯水部に流入する雨水の方が多くなり、第1貯水部に水が貯留され止水板が浮上し、氾濫した雨水等を堰き止めることができる。
【0009】
本発明の止水ユニットの好ましい例は、
前記パッキンの中空の内壁と前記固定用長尺材との間に隙間を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の止水ユニットの好ましい例によれば、パッキンと止水板等の構成要素との接触が弱い場合は、パッキンの中空の内壁と固定用長尺材との間の隙間が変化することによってパッキンと止水板等との水密を保つことができる。一方、パッキンに止水板等が強く押し付けられている場合は、前記隙間が潰れてパッキンの素材自体の弾性によって水密を保つことができる。
【0011】
本発明の止水ユニットの好ましい例は、
前記パッキンが断面D型であることを特徴とする。
【0012】
本発明の止水ユニットの好ましい例によれば、パッキンが断面D型であるため、パッキンの平らな面を相手側に貼設することができる。これにより、パッキンの水密性能及び捩れに対抗する能力を高めることができる。
【0013】
本発明の止水ユニットの好ましい例は、
前記案内部に、前記止水板が上昇するにつれて前記止水板を屋内側に傾斜させるための傾斜案内レールを備えることを特徴とする
【0014】
本発明の止水ユニットの好ましい例によれば、止水板が上昇するにつれて屋内側に傾斜するため、止水板等に押し付けられるパッキンの圧力が増す。また、パッキンが強い力で止水板等に押し付けられても、上述の固定用長尺材によって強固に固定されているため、破断したり捩れたりすることがない。これらの相互作用によって、優れた水密性能を発揮することができる。
【0015】
本発明の止水ユニットの好ましい例は、
前記パッキンと前記パッキンが貼設される側との間に設けられ、前記固定用長尺材が接合される基台用長尺材を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の止水ユニットの好ましい例によれば、固定用長尺材が基台用長尺材に接合されるため、例えばボルト用の孔を設けるときなど、止水板又は第1貯水部等に直接加工する必要がなくなり、製造及び保守が容易となる。また、パッキンが貼設される側に基台用長尺材が設けられるため、当該場所の補強がなされ、パッキンが強い力で押さえつけられても当該場所がへこむことがなく、安定した水密性能を発揮することができる。また、基台用長尺材の厚さ分、パッキンが取付位置より突出することになり、基台用長尺材の厚さを変えることで止水板と第1貯水部との隙間調整が容易となる。
【0017】
本発明の止水ユニットの好ましい例は、
前記第1貯水部より屋外側に隣接して地面又は床面から掘り下げられその上面から水が流入可能に構成されるとともに、排水のための第2排水口及び前記第2排水口より所定の高さを持って前記第1貯水部と連通される連通孔を備える第2貯水部を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の止水ユニットの好ましい例によれば、洪水等で溢れた雨水を先ず第2貯水部に流入させるため、屋内等への水の侵入をより抑えることができる。また、第1貯水部の開口部を覆うことができるため、通常持にゴミ等が第1貯水部に入り込むのを防止することができる。
【0019】
本発明の止水ユニットの好ましい例は、
前記第1貯水部が鉄道線路を横断する方向に設けられるとともに、前記第1貯水部に該当する箇所の鉄道用レールが除去され、
前記止水板の上面に設けられ、前記止水板が下降した状態で前記鉄道用レールの除去された部分を代替する第1レール部を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明の止水ユニットの好ましい例によれば、鉄道車両の通行が可能となり、止水ユニットを鉄道車両の整備工場の入口や地上から地下に鉄道線路が入る箇所等に設置することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上、説明したように、本発明の止水ユニットによれば、パッキンに汎用的なものを採用しながら、水密性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る止水ユニットを示す図である。
【
図2】第1貯水部及び第2貯水部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の止水ユニット1の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は止水ユニット1の全体の外観を示す図、
図2は第1貯水部20と第2貯水部30の縦断面図、
図3は止水板40の全体を示す図である。また、
図4は止水板40が下降した状態を説明するために止水ユニット1の断面を模式的に示した図、
図5は止水板40が上昇した状態を説明するために止水ユニット1の断面を模式的に示した図である。
【0024】
図1ないし
図4に示すように、本実施形態の止水ユニット1は架台10と、第1貯水部20と、第2貯水部30と、止水板40と、案内部50と、パッキン60,61とを備える。また、本発明の止水ユニット1は、鉄道線路を横断する方向に設けられるとともに、止水ユニット1に該当する箇所の鉄道用レール2が除去されている。
【0025】
架台10は、止水ユニット1全体を支持するもので、形鋼等を組み合わせて製作され、地面GL又は床面FLに掘り下げられたピットPの中に配置される。そして、ピットPの中に止水ユニット1が配置された後に、その周囲をコンクリート等で固めて固定される。なお、この架台10は必須のものではなく、第1貯水部20及び第2貯水部30等の周囲に、直接コンクリートを打設して第1貯水部20及び第2貯水部30等を設置場所に埋設してもよい。
【0026】
第1貯水部20は、通路の幅方向に配置され地面又は床面から掘り下げられるように構成されるもので、上が開口された断面略コ字状をなす槽である。この第1貯水部20は、金属板を折曲げる又は溶接等の接合によって形成される。第1貯水部20の底部には、第1貯水部20に流入した水を排水するための第1排水口21が設けられる。通常時に流入する雨水等は、この第1排水口21を通じて排水され、第1排水口21の排水能力を超えた水が流入したときに、第1貯水部20に水が貯留される。
【0027】
第2貯水部30は、第1貯水部20より屋外側に隣接して配置され、地面又は床面から掘り下げられるように構成されるもので、上が開口された断面略コ字状をなす槽である。この第2貯水部30は、第1貯水部20同様に金属板を折曲げる又は溶接等の接合によって形成されるが、第1貯水部20より浅く構成される。第2貯水部30の上面にはグレーチング34等の雨水が通過可能な蓋が設置され、上面の開口から水が流入可能となっている。また、第2貯水部30の上面のうち中央近傍には、除去された鉄道用レール2を代替するための第2レール33が設けられる。さらに、第2貯水部30の底部には、第2貯水部30に流入した水を排水するための第2排水口31が設けられる。通常時に流入する雨水等は、この第2排水口31を通じて排水される。一方、洪水等で第2排水口31の排水能力を超えた水が流入したときは、第2貯水部30に水が貯留される。そして、第2排水口31より所定の高さを持って設けられた、第1貯水部20と連通される連通孔32を通じて第1貯水部20に水が流入する。
【0028】
止水板40は、第1貯水部20の内部に収容される箱状のものであり、第1排水口21の排水能力を超える量の水が第1貯水部20に流入して水が貯留されたとき、貯留された水から浮力を得て上昇する。この止水板40も金属板を折曲げて又は溶接等して形成されるが、その内部には水が侵入しないようになっている。止水板40の上面には、雨水等の侵入防止と人等の通行ための通路確保のための上蓋43が設けられる。また、止水板40の上面の略中央には、除去された鉄道用レール2を代替するための第1レール44が設けられる。この第1レール44と上記の第2レール33とは、その位置が連続するようにされており、止水板40が下降した状態で除去された鉄道用レール2とつながるようになっている。止水板40の側面には、第1貯水部20との摩擦を低減させるための2つの円形のスライダー41,42と、止水板40の上昇時に止水板40を屋内側へ傾斜させるための係合レール45が設けられる。
【0029】
案内部50は、第1貯水部20の長手方向の両端に立設され、止水板40が上昇したときの傾倒を防止するものである。この案内部50の側板51内面には、屋内側に傾いて取付けられている傾斜案内レール52が設けられる。この傾斜案内レール52と上記の係合レール45とが係わり合って、止水板40の上昇時に止水板40が屋内側に傾斜される。なお、本実施形態では、傾斜案内レール52と係合レール45とが係わり合うようにしているが、傾斜案内レール52を止水板40の広い面に当接するように配置して、係合レール45を省略する構成にしてもよい。
【0030】
次に、
図6及び
図7を参照して、パッキン60,61の詳細を説明する。
図6は、第1貯水部20と案内部50に貼設されたパッキン60,61を第1貯水部20の内側から見た図、
図7は
図6のA-A線拡大断面図である。パッキン60,61は、第1貯水部20及び案内部50と、止水板40との隙間において水密用に設けられるもので、第1貯水部20及び案内部50の屋内側の板で止水板40に対向する面、又は止水板40のうち屋内側を向く面のうち少なくともどちらか一方に貼設される。本実施形態では、第1貯水部20の内面に水平方向に貼設されたパッキン60と、案内部50に垂直方向に貼設されたパッキン61とを備える。これらのパッキン60,61は、ゴム等で構成され、断面中空の長尺材が用いられる。本実施形態では、断面D型のパッキンを採用しているが、他にも断面三角形、断面矩形、断面台形、断面円形等も採用することができる。
【0031】
また、パッキン60,61を固定するために、基台用長尺材63と固定用長尺材65を備える。基台用長尺材63は、第1貯水部20及び案内部50のうち、パッキン60,61が貼設される場所に溶接等の方法で設けられるもので、複数の雌ネジ64がその長手方向に適宜間隔を空けて設けられる。本実施形態では、この基台用長尺材に断面矩形の帯板が用いられるが、例えば断面台形等の様々なものを採用することができる。固定用長尺材65は、パッキン60,61の中空の内部に差し込まれるもので、複数のネジ穴66が前記雌ネジ64の位置に対応して設けられる。本実施形態では、この固定用長尺材に断面矩形の帯板を採用しているが、パッキンの断面形状によっては断面円形のもの等の様々なものを採用することができる。
【0032】
また、パッキン60,61にも前記雌ネジ64及び前記ネジ穴66に対応する箇所に、ネジ貫通穴62が設けられる。そして、前記ネジ貫通穴62を貫通するビス67等によって、固定用長尺材65と基台用長尺材63の一部が接合される。これにより、固定用長尺材65でパッキン60,61の平らな面が押さえ込まれ、パッキン60,61が強固に取付けられる。また、基台用長尺材63と固定用長尺材65とでパッキン60,61が貼設される箇所の補強にもなる。
【0033】
また、本実施形態では、パッキン60,61の中空の内壁68と固定用長尺材65との間に隙間sを備えるよう構成されている。これは、止水板40がパッキン60,61に弱い力で当接されているときは、パッキン60,61が少し潰れつつパッキン自体の断面D型形状を保つ力によって止水板40に押し付けられる。このとき、隙間sは狭くなる。一方、止水板40がパッキン60,61に強く押し付けられているときは、隙間sが略完全に潰れてパッキンの内壁68と固定用長尺材65とが接触し、パッキンのゴム素材自体の弾性によって止水板40に押し付けられる。このとき、あたかもパッキンの中に芯材が設けられているような状態となる。これらの作用により、止水板40とパッキン60,61との接触が弱いときも強いときも水密性能を保つことができるとともに、パッキンの破断や捩れを防止することができる。
【0034】
次に、
図4及び
図5を参照して、上述した本実施形態の止水ユニット1の構成要素を踏まえて、止水ユニット1の動作を説明する。
図4及び
図5は、止水板40が下降及び上昇した状態を説明するために、止水ユニット1の断面を模式的に現わした図である。
【0035】
先ず、
図4を参照して、止水板40が下降した状態を説明する。通常の降雨等において雨水等がグレーチング34を通じて第2貯水部30に流入する(図中矢印A)。すると、通常の降雨における第2貯水部30への水の流入量は、第2排水口31の排水容量より少ないため、流入する水の全量が第2排水口31より排出される(図中矢印B)。また、僅かに第1貯水部20にも水が流入するが、これも第1排水口21から排出される(図中矢印D)。結果として、第1貯水部20には水が貯留されず、止水板40は下降した状態のままとなる。この状態では、鉄道用レール2(
図1参照)と第1レール44部及び第2レール33部は連続しており、その上を鉄道車両が通行することができる。
【0036】
次に、雨が強くなって氾濫等すると、屋外側に設置された第2貯水部30への水の流入量が第2排水口31の排水容量より多くなり、第2貯水部30の底部に雨水等が溜まり水位が上昇する。このとき、水位が連通孔32の下端を越えると、連通孔32を通じて第1貯水部20に水が流入する(図中矢印C)。しかし、第1貯水部20にも第1排水口21が設けられており、流入した水は第1排水口21から排出される(図中矢印D)。このまま、連通孔32から第1貯水部20への水の流入量が、第1排水口21の排水容量より少なければ、第1貯水部20の内部には水が貯留されず、やはり止水板40は下降した状態のままとなる。
【0037】
次に、
図5を参照して、止水板40が上昇した状態を説明する。上記の状態よりさらに降雨量が増し、より多くの雨水等が第2貯水部30及び第1貯水部20に流入してくるとする(図中矢印A,C)。すると、第1排水口21の排水容量以上の水が連通孔32より流入してくるようになり、第1貯水部20に水が貯留される。その結果、第1貯水部20に貯留された水から浮力を得て止水板40が上昇する。このとき、案内部50に設けられた傾斜案内レール52が、屋内側に傾斜しており、この傾斜案内レール52に当接されて案内される係合レール45によって、止水板40も屋内側へ傾く。これにより、止水板40がより強くパッキン60,61に押し付けられ、優れた水密性能を発揮することができる。また、パッキン60,61は、固定用長尺材65によって強固に取付けられており、特に第1貯水部20の上部に水平方向に設けられたパッキン60(
図6参照)のように、パッキン60の幅方向に止水板40との摩擦力が加わるような使用状況においても、パッキン60が破断したり捩れるようなことがない。そして、氾濫した水は上昇した止水板40で堰き止められ、屋内側に水が入ることがない。
【0038】
次に、氾濫が収まり、第2貯水部30に流入する水の量が、第2排水口31及び第1排水口21の排水容量より少なくなると、第1貯水部20の内部の水位が低下する。すると、止水板40も水位の低下にあわせて下降し、
図4に示す状態に戻り、鉄道用レール2と第1レール44及び第2レール33がつながって再び鉄道車両の通行が可能となる。
【0039】
以上、説明したように、本実施形態の止水ユニット1によれば、パッキン60,61を固定用長尺材65によって強固に取付けていること、及び止水板40が上昇するときに傾斜させてパッキン60,61に押し付けていることによって、優れた水密性能を発揮することができる。これは、浮力で自動的に止水板40が上昇するような止水ユニット1は、止水板40をパッキン60,61に当接させながら上昇するという構造から、止水板40の動作時に止水板40を強くパッキン60,61に押さえつけることが難しく、水の浸入を完全に防止することが困難である。このため、止水板40が上昇した後に別の金具等を用いて止水板40をパッキン60,61に押さえつけて固定する作業が必要であったり、止水板40が上昇した状態であっても侵入する水の排水作業が必要であることが多い。
【0040】
一方、本実施形態の止水ユニット1では、パッキンの内壁68と固定用長尺材65との間に隙間sを設けている構成から、止水板40をパッキンに弱く接触させたときから優れた水密性能を発揮することができ、さらに、止水板40をパッキン60,61に強く押さえつけながら上昇させても、パッキン60,61が破断又は捩れることがない。これにより、浮力で自動的に上昇下降をする止水板40を用いながら、屋内側への浸水を略無くすことが可能となる。また、パッキン60,61も汎用品のD型パッキン等を用いることができ経済的である。さらに、基台用長尺材63もパッキン60,61が貼設される側に設けられることで、当該場所の補強をすることができ、パッキン60,61を強く押さえつけても当該場所が変形することがない。
【0041】
また、本実施形態の止水ユニット1によれば、止水板40及び第2貯水部30の上面に、第1レール44及び第2レール33を設けているため、鉄道車両の通行が可能となり、これまで可動式の止水ユニット1を設置することができなかった鉄道線路に設置することができる。これにより、例えば車両基地、整備工場等に止水ユニット1を設置し、集中豪雨による河川の氾濫からこれらの設備と内部の車両を守ることができる。
【0042】
なお、本実施形態の止水ユニット1は本発明の例示であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、その構成を適宜変更することができる。例えば、第2貯水部30を設けず、止水板40の蓋部から雨水等が第1貯水部20に直接流入する構成としてもよい。また、本実施形態の止水ユニット1は、鉄道線路を横断するように設けられており、鉄道車両の整備工場等の入口に設置されるが、第1レール44及び第2レール33を省くことで様々な建物や地下施設等の入口にも応用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1・・止水ユニット、2・・鉄道用レール、
10・・架台、
20・・第1貯水部、21・・第1排水口、
30・・第2貯水部、31・・第2排水口、32・・連通孔、33・・第2レール、34・・グレーチング
40・・止水板、41,42・・スライダー、43・・上蓋、44・・第1レール、45・・係合レール、
50・・案内部、51・・側板、52・・傾斜案内レール、
60,61・・パッキン、62・・ネジ貫通穴、63・・基台用長尺材、64・・雌ネジ、65・・固定用長尺材、66・・ネジ穴、67・・ビス、68・・内壁、
s・・隙間、