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  • 特許-警報器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】警報器
(51)【国際特許分類】
   G10K 9/22 20060101AFI20230105BHJP
【FI】
G10K9/22 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019084609
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020181110
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000157485
【氏名又は名称】丸子警報器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大土井 耕三
(72)【発明者】
【氏名】上東 雅俊
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-076999(JP,U)
【文献】実開昭54-035875(JP,U)
【文献】特開2016-090835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 9/12- 9/22
H04R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
警報器本体の内部空間と外部空間の間で通気する通気孔が形成され、前記警報器本体に備えた警報器側コネクタと車両側コネクタを連結することで電気的に接続される警報器であって、
前記警報器側コネクタは、前記車両側コネクタが開口部より挿入される袋状のコネクタハウジングを有し、
前記コネクタハウジング内に前記車両側コネクタを挿入することにより、前記コネクタハウジング内に前記通気孔と前記開口部を連通させる通気路が形成され、
前記通気路は、前記コネクタハウジングに穿孔された外部連通孔により前記通気路の途中で前記外部空間と連通していることを特徴とする警報器。
【請求項2】
前記コネクタハウジングには、前記コネクタハウジングに挿入された前記車両側コネクタの挿入側先端部との間に離間部が形成されていて、
前記外部連通孔は、前記離間部の位置に穿孔されていることを特徴とする請求項1記載の警報器。
【請求項3】
前記外部連通孔は、前記警報器側コネクタの側面に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の警報器。
【請求項4】
前記コネクタハウジングの前記開口部には、前記車両側コネクタの挿入方向に延設された切欠部を有していることを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の警報器。
【請求項5】
前記切欠部は前記通気路の直上位置に形成されていることを特徴とする請求項4記載の警報器。
【請求項6】
前記警報器側コネクタと前記車両側コネクタは、連結方向に直交する方向における断面形状が凹凸のない矩形断面形状に形成されていることを特徴とする請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の警報器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は警報器に関し、より詳細には電気式の警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
周囲に対して注意喚起を促すために用いられる車両用保安部品の一つに電気式の警報器がある。従来、このような警報器においては、大雨等の荒天時においても警報器を確実に動作させるための構成が提案されている。警報器の確実な動作を実現させるためには、警報器本体の内部空間への水や塵埃等に代表される異物の侵入を防止することが重要である。
【0003】
しかしながら電気式の警報器はその構造上、警報器本体の内部空間を密閉することができない。このため出願人は特許文献1(実公平7-34477号公報)に開示されているような構成を採用することにより、電気式の警報器における警報器本体の内部空間への異物の侵入防止を低コストで実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公平7-34477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の車両は小型化が進み、ボンネット内に警報器の設置場所を確保することが困難になってきており、警報器を地表面(走行面)に対して直交させた状態ではなく、地表面に対して傾斜させた状態で取り付けなければならないことがある。このように地表面に対して傾斜させた状態で車両に取り付けられた警報器においては、特許文献1で開示されているような構成であっても風による巻き込み等により警報器本体の内部空間への異物の侵入が生じ、より確実な異物侵入防止対策の提案が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは次のとおりである。すなわち、天候に代表される外部環境や車両等への取り付け状態の如何にかかわらず、警報器本体の内部空間への異物侵入を確実に防止し、警報器を確実に動作させることを可能にした警報器の構成を提供することにある。
【0007】
発明者が上記警報器の構成を実現すべく鋭意研究した結果、以下の構成に想到した。すなわち本発明は、警報器本体の内部空間と外部空間の間で通気する通気孔が形成され、前記警報器本体に備えた警報器側コネクタと車両側コネクタを連結することで電気的に接続される警報器であって、前記警報器側コネクタは、前記車両側コネクタが開口部より挿入される袋状のコネクタハウジングを有し、前記コネクタハウジング内に前記車両側コネクタを挿入することにより、前記コネクタハウジング内に前記通気孔と前記開口部を連通させる通気路が形成され、前記通気路は、前記コネクタハウジングに穿孔された外部連通孔により前記通気路の途中で前記外部空間と連通していることを特徴とする。
【0008】
これにより、大雨等の荒天時や警報器を傾斜させた状態で車両等に取り付けした状態等により、警報器本体の内部空間と外部空間とを連通する通気路の一部が浸水したとしても、通気路の中途位置に設けられた外部連通孔により通気路がストローのような管路状態になることを防ぐことができる。これにより警報器本体の内部空間における振動板の振動により生じる吸引力で外部空間からの空気は取り込めるが、水や砂等の異物の取り込みができないようにすることができる。よって、外部環境や車両等への取り付け状態にかかわらず確実に警報器を動作させることが可能になる。
【0009】
また、前記コネクタハウジングと前記コネクタハウジングに挿入された前記車両側コネクタの挿入側先端部との間には離間部が形成されていて、前記外部連通孔は、前記離間部の位置に穿孔されていることが好ましい。
【0010】
また、前記外部連通孔は、前記警報器側コネクタの側面に形成されていることが好ましい。
【0011】
これらにより、追加部品を用いることなく、しかも簡単な造作のみで警報器本体の内部空間への水や異物侵入をより確実に防止することができ、開口部および外部連通孔を通じて水や異物を排出させることができる。
【0012】
また、前記コネクタハウジングの前記開口部には、前記車両側コネクタの挿入方向に延設された切欠部を有していることが好ましい。さらには、前記切欠部は前記通気路の直上位置に形成されていることが好ましい。
【0013】
これらにより、警報器側コネクタと車両側コネクタとの接触面積を減らすことができ、表面張力による通気路への水の侵入をより確実に防止することができる。また、万が一通気路に水や異物が侵入した場合であっても、開口部から排出させやすくすることができる。
【0014】
また、前記警報器側コネクタと前記車両側コネクタは、連結方向に直交する方向における断面形状が凹凸のない矩形断面形状に形成されていることが好ましい。
【0015】
これにより、警報器側コネクタと車両側コネクタとを連結させた際における互いの接触面積を最小限にすることができる。よって、警報器側コネクタと車両側コネクタとの間に水が侵入しても表面張力が小さくなるので重力の作用により侵入した水を外部空間に排出することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明における警報器の構成を採用することにより、ストローのような管路状に形成された通気路の中途位置に外部空間と通気路の内部を連通させた状態にすることができる。このため、警報器本体の内部空間に収容された振動板が振動することにより生じる減圧による吸引力では、警報器本体の内部空間には外部空間から吸引した空気を取り込むことはできるが、水や砂等の異物は吸引されないようにすることができる。すなわち警報器本体の内部空間への異物の侵入を確実に防止することが可能になり、外部環境や車両等への取り付け状態の如何にかかわらず警報器を確実に動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態における警報器の正面図である。
図2】本実施形態における警報器の背面図である。
図3】警報器側コネクタに車両側コネクタを挿入した状態を示す拡大説明図である。
図4】警報器側コネクタの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明における警報器の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態における警報器100は、図1および図2に示すように、警報器本体10の正面側に渦巻き状の音道12と音道に連通する放音部14を有し、警報器本体10の背面側には通気孔16と警報器側コネクタ18が形成されている。警報器100は、警報器本体10の内部空間に収容された図示しない接点、電磁石、シャフト、振動板を有し、車両側コネクタ40を警報器側コネクタ18に挿入(連結)させることで図示しないバッテリから供給された電力が接点を介して電磁石に供給される。
【0019】
電磁石に電力が供給されると振動板が取り付けられたシャフトが電磁石に接離動し、警報器本体10の内部空間で警報音が生成され音道12を通じて放音部14から外部空間に警報音が放出される。このような電気式の警報器100の基本構成は公知であるため、各部構成についての詳細な説明は省略する。本実施形態における警報器本体10の背面側には、板金等の公知の手法により形成された車両取付用ブラケット20が取り付けられている。
【0020】
図2図3に示すように、通気孔16は、警報器本体10の内部空間と外部空間との間で通気させるためのものであり、警報器本体10の背面側に穿孔されている。警報器本体10の内部空間に収容されている接点に電気的に接続された通電端子30の一部はこの通気孔16の位置で警報器本体10の背面側からその一部を露出させている。警報器側コネクタ18は、通気孔16の位置で外部空間に露出している通電端子30をカバーするようにして形成されている。本実施形態における通電端子30は、リベット32と平板端子34により形成されている。リベット32は警報器本体10の内部空間に収容された図示しない接点端子に電気的に接続されていると共に平板端子34に形成されたリベット挿通孔33に挿通されている。警報器本体10の組み立て時には警報器側コネクタ18から外部に露出しているリベット32の頭部が加締められる。平板端子34は警報器本体10の背面にほぼ平行に地表面側に向かって延設されている。
【0021】
図2図4に示すように、警報器側コネクタ18は、地表面側(下面側)に開口部18Aが形成された袋状をなし、車両側コネクタ40が挿入可能なコネクタハウジング18Bを有している。本実施形態においては、コネクタハウジング18Bの開口部18Aに車両側コネクタ40の挿入方向に切欠部18Cを延設している。
【0022】
また、コネクタハウジング18Bの側面には、外部空間とコネクタハウジング18Bの内部とを連通する外部連通孔18Dが穿孔されている。なお、外部連通孔18Dは、図2図4に示すように、車両取付用ブラケット20の側における側面に設けることが好ましい。これにより外部連通孔18Dからの水の侵入確率を下げることができる点において好都合である。
【0023】
さらには、コネクタハウジング18Bの奥側(通電端子30の側の)位置に車両側コネクタ40の挿入側先端部42を位置決めするための挿入規制部18Eを設けることもできる。本実施形態においては挿入規制部18Eとしてコネクタハウジング18B内に突条を形成したが、この形態に限定されるものではない。なお、挿入規制部18Eはコネクタハウジング18Bの奥側位置ではなく他の位置に設けることもできる。さらにまた、車両側コネクタ40側に挿入規制部を形成することもできる。
【0024】
車両側コネクタ40は、図3に示すように車両側コネクタ40の開口部18Aからコネクタハウジング18Bに挿入可能な扁平な直方体形状に形成されている。車両側コネクタ40の挿入側先端部42には平板端子34を挟み込み可能なバネ状電極44が埋設されている。そして車両側コネクタ40の外表面の一部(ここでは警報器100の背面側の面)には、図3に示すように挿入方向に通気路形成用凹部46を延設してもよい。通気路形成用凹部46の挿入側先端部は、後述するハウジング内空間19に連通している。これにより、警報器側コネクタ18と車両側コネクタ40とにより警報器本体10の内部空間(通気孔16)と外部空間(開口部18A)とを通気させると共に水や塵埃等の異物の侵入を防止するための通気路50が形成されやすくなる点において好都合である。
【0025】
本実施形態においては、コネクタハウジング18Bに挿入規制部18Eを設けているので、車両側コネクタ40の挿入側先端部42は挿入規制部18Eの位置で挿入量が規制されることになる。これにより挿入側先端部42はコネクタハウジング18Bの内壁面とは密着せず、コネクタハウジング18Bの内壁面との間に離間部としてのハウジング内空間19が形成される。このハウジング内空間19は、通気孔16と外部連通孔18Dに直接連通している。
【0026】
コネクタハウジング18Bの挿入規制部18Eまで車両側コネクタ40が挿入されると、挿入側先端部42に埋設されているバネ状電極44が平板端子34を挟み込み、警報器100と車両側コネクタ40(車両に搭載したバッテリ)との電気的な接続がなされる。これと同時にコネクタハウジング18Bと車両側コネクタ40とによってハウジング内空間19に連通する通気路50が形成される。外部空間の空気は、通気路50の外部空間側端部である開口部18Aから通気路50に取り込まれ、ハウジング内空間19と通気孔16を経由して警報器本体10の内部空間に取り込まれることになる。このような警報器本体10の内部空間への空気の取り込みは、警報器本体10の内部空間で振動板が振動することにより生じる減圧による吸引作用によりなされている。
【0027】
先に説明したように本実施形態においては、ハウジング内空間19の位置に位置合わせして外部連通孔18Dが設けられているので、通気路50の始端部である開口部18Aと終端部である通気孔16との間における通気路50のストロー状の管路状態(気密状態)が崩壊することになる。すなわち、通気路50は延長方向の途中で穴が開いたストローのような状態になるため、開口部18Aから通気路50に侵入した砂や塵埃に代表される重量物の異物は、通気孔16からの吸引力では吸引されずに通気路50の開口部18Aの周辺位置で留まることになる。これに対して外部空間の空気は軽量物であるため、通気孔16からの吸引力により通気路50の開口部18Aおよび外部連通孔18Dからハウジング内空間19に吸引されて通気孔16から警報器本体10の内部空間へ供給されることになる。
【0028】
また、先に説明した切欠部18Cは、通気路形成用凹部46の直上位置において車両側コネクタ40の挿入方向に延設されている。これにより通気路50を形成する警報器側コネクタ18と車両側コネクタ40との接触面積を削減することができる。すなわち、通気路50の開口部18A側から水が侵入してしまった場合であっても、通気路50内における表面張力による水の吸い上げ現象(毛細管現象)の発生をより確実に防止することができ、荒天時であっても確実に警報器100を動作させることが可能になる。
【0029】
このように本実施形態における警報器100の構成によれば、警報器本体10の内部空間と外部空間との通気は通気孔16と通気路50により確保することができる。警報器100が動作することにより、警報器本体10の内部空間および通気路50は外部空間よりも減圧状態になり、外部空間から空気だけでなく異物も吸引しようとするが、外部連通孔18Dにより水や塵埃等の重量物については吸引できないようにすることができる。よって、荒天等の外部環境や車両への取り付け状態にかかわらず、警報器本体10の内部空間への異物の侵入が防止され確実に動作する警報器100の提供が可能になった点で好都合である。
【0030】
以上に本実施形態に基づいて本発明に係る警報器100について詳細に説明したが、本発明は以上に示した実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては車両用保安部品としての警報器100として説明しているが、本発明にかかる警報器100は車両用に限定されるものではなく船舶等にも適用することが可能である。また、本実施形態においては渦巻き型の警報器100について説明したが、平型警報器やその他の形態の警報器100に対しても適用可能である。
【0031】
また、本実施形態においては、ハウジング内空間19に連通する外部連通孔18Dをコネクタハウジング18Bの側面位置に設けているが、コネクタハウジング18Bの側面位置以外に設けることもできる。警報器100の車両への取り付け状態等に応じてコネクタハウジング18Bへの外部連通孔18Dの配設位置は適宜変更することができる。
【0032】
さらに外部連通孔18Dは、コネクタハウジング18Bの外表面に対して傾斜させた状態で穿孔することもできる。このような斜孔に形成された外部連通孔18Dを採用することにより、外部連通孔18Dからのハウジング内空間19への異物侵入をより確実に防止させることができる点において好都合である。
【0033】
そして、本実施形態においては、コネクタハウジング18Bに通気路形成用凹部46の直上位置に通気路形成用凹部46に沿った切欠部18Cを設け、コネクタハウジング18Bと車両側コネクタ40との接触面積を削減し、通気路50に水が侵入した場合における表面張力を軽減させる形態について説明したが、この形態に限定されるものではない。切欠部18Cは通気路形成用凹部46の直上位置でなくても良い。また、コネクタハウジング18Bへの切欠部18Cの配設を省略することもできる。
【0034】
また、通気路形成用凹部46の配設を省略した形態にすれば、警報器側コネクタ18と車両側コネクタ40との連結部分における連結方向と直交する方向における断面形状を凹凸のない矩形形状にすることができる。このような形態を採用することによっても、警報器側コネクタ18と車両側コネクタ40との連結部分に水が侵入した場合における警報器側コネクタ18と車両側コネクタ40と水との表面張力を小さくすることができる。すなわち、警報器側コネクタ18と車両側コネクタ40との連結部分に侵入した水を重力の作用によって外部空間に排出させやすくすることができるため好都合である。
【0035】
また、本実施形態において説明した変形例等を適宜組み合わせた形態を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 警報器本体,
12 音道,14 放音部,16 通気孔,
18 警報器側コネクタ,
18A 開口部,18B コネクタハウジング,18C 切欠部,18D 外部連通孔,18E 挿入規制部,
19 ハウジング内空間,
20 車両取付用ブラケット,
30 通電端子,
32 リベット,33 リベット挿通孔,34 平板端子,
40 車両側コネクタ,
42 挿入側先端部,44 バネ状電極,46 通気路形成用凹部,
50 通気路,
100 警報器
図1
図2
図3
図4