(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】電界効果調整可能イプシロンニアゼロ吸収装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/015 20060101AFI20230105BHJP
B01J 19/12 20060101ALI20230105BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
G02F1/015 501
B01J19/12 Z
H01L29/06 601N
(21)【出願番号】P 2019562651
(86)(22)【出願日】2018-05-11
(86)【国際出願番号】 US2018032342
(87)【国際公開番号】W WO2018209250
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2020-10-05
(32)【優先日】2017-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514239372
【氏名又は名称】ベイラー ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】オレクシイ・アノプチェンコ
(72)【発明者】
【氏名】ホー・ワイ・ハワード・リー
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0097451(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0223723(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0045759(US,A1)
【文献】米国特許第08995055(US,B1)
【文献】Kim et al.,General Strategy for Broadband Coherent Perfect Absorption and Multi-wavelength All-optical Switching Based on Epsilon-Near-Zero Multilayer Films,Scientific Reports,Nature,2016年03月11日,vol. 6, 22941,pp.1-11,DOI: 10.1038/srep22941
【文献】Koch et al.,Digital Plasmonic Absorption Modulator Exploiting Epsilon-Near-Zero in Transparent Conducting Oxides,IEEE Photonics Journal,IEEE,2016年02月,Vol. 8, No. 1, 4800813,pp. 1-13
【文献】Papadakis G. T. and Atwater H. A.,Field-effect induced tunability in hyperbolic metamaterials,Physical Review B,Vol. 92, No. 18,米国,American Physical Society,2015年11月02日,pp.184101-1~184101-11,DOI: 10.1103/PhysRevB.92.184101
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
B01J 10/00-12/02
14/00-19/32
H01L 29/00-29/06
29/30-39/38
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの方向からの入射光から所定の波長で完全吸収のイプシロンニアゼロ(ENZ)レジームの誘電率を形成するように形成され、適用された電気バイアスにより誘電率が変化するように調整可能に形成された導電性材料のための空間電荷領域の膜厚に対してある膜厚を有する、少なくとも1層の導電性材料を含み、
空間電荷領域の膜厚に対してある膜厚を有する複数の導電性層の少なくとも1層は、8:1またはそれ以下の比を含む電子デバイス。
【請求項2】
導電性材料は、金属または半金属がドープされ、イプシロンニアゼロ(ENZ)レジームの誘電率のために材料中にキャリア濃度を形成する、少なくとも1つの部分的に透明な半導体材料を含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
半導体材料は、透明な導電性酸化物(TCO)材料または遷移金属窒化物材料の少なくとも1つからなる少なくとも1層を含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
異なるキャリア濃度を有する少なくとも2つの層を含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
異なるENZレジームを有する少なくとも2つの層を含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
さらに、少なくとも1層に接続された酸化層と、少なくとも1層から遠位で酸化層に接続された金属層とを含み、金属酸化物半導体(MOS)形状を形成する請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
MOS形状は、MOS形状に電気バイアスを与えることにより、光の吸収周波数が調整可能な請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
さらに、少なくとも1層に接続された金属リフレクタを含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
さらに、少なくとも1層の前に光を受けるように形成された高
い屈折率の材料を含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
異なるENZレジームを有し、異なる周波数で光を吸収するように形成された少なくとも2つの層を備えた、所定の波長でイプシロンニアゼロ(ENZ)レジームの誘電率を有する複数の導電性層のスタックを含み、
複数の導電体層の少なくとも1つは、1つの方向からの光の所定の波長で完全吸収のイプシロンニアゼロ(ENZ)レジームの誘電率を形成するように形成され、適用された電気バイアスにより誘電率が変化するように調整可能に形成された導電性材料のための空間電荷領域の膜厚に対してある膜厚を有し、
空間電荷領域の膜厚に対してある膜厚を有する複数の導電性層の少なくとも1層は、8:1またはそれ以下の比を含む電子デバイス。
【請求項11】
複数の層の少なくとも1つは、キャリア濃度を形成するために、少なくとも1つの金属または半金属がドープされた半導体材料を含む請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
電気バイアスをデバイスに与えることにより、異なる誘電率に調整可能な請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
さらに、少なくとも1層に接続された金属リフレクタを含む請求項10に記載のデバイス。
【請求項14】
さらに、少なくとも1層の前に光を受けるように形成された高
い屈折率の材料を含む請求項10に記載のデバイス。
【請求項15】
さらに、少なくとも1層に接続された酸化層と、少なくとも1層から遠位で酸化層に接続された金属層とを含み、金属酸化物半導体(MOS)形状を形成する請求項10に記載のデバイス。
【請求項16】
MOS形状は、MOS形状に電気バイアスを与えることにより、異なる光の周波数を吸収するように調整可能な請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
所定の波長で完全吸収のイプシロンニアゼロ(ENZ)レジームの誘電率を形成するように形成された導電性材料のための空間電荷領域の膜厚に対してある膜厚を有する少なくとも1層の導電性材料を含む電子デバイスを使用する方法であって、
空間電荷領域の膜厚に対してある膜厚を有する複数の導電性層の少なくとも1層は、8:1またはそれ以下の比を含み、この方法は、
デバイスに電気バイアスを与える工程と、
様々な周波数の光を吸収するようにデバイスを調整する工程と、を含む方法。
【請求項18】
少なくとも1つの層は、所定の波長で完全吸収のイプシロンニアゼロ(ENZ)レジームの誘電率となるために、金属または半金属がドープされて材料中にキャリア濃度を形成する半導体材料を含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
デバイスは、異なるENZレジームを有する少なくとも2つの層を含み、さらに、少なくとも2つの層を通る異なる周波数の入射光を吸収する工程を含む請求項17に記載の方法。
【請求項20】
空間電荷領域の膜厚に対してある膜厚を有する複数の導電性層の少なくとも1層は、5:1またはそれ以下の比を含む請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項21】
空間電荷領域の膜厚に対してある膜厚を有する複数の導電性層の少なくとも1層は、5:1またはそれ以下の比を含む請求項10に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
該当なし
【連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載】
【0002】
該当なし
【添付物の参照】
【0003】
該当なし
【背景技術】
【0004】
発明の技術分野
【0005】
本開示は、一般に、例えば放射エネルギのエネルギ吸収のための、イプシロンニアゼロ材料(ENZ)に関する。特に、本開示は、高効率エネルギ吸収のために、所定の波長で、誘電率がイプシロンニアゼロ(ENZ)レジームを有する導電性材料を含むENZ材料のナノ膜厚層に関する。
【0006】
関連技術の説明
【0007】
集光性および高解像度の光学技術は、強い光吸収を有する光学的コーティングを必要とする。高レベルの(完全な)吸収は、一般には、高い光損失、大きな膜厚、または形成されたナノ材料またはメタ材料の使用を必要とする。例えばガラスのような最も光学的に誘電性の材料は、可視領域および赤外領域で透明である。対照的に、金属は、高い光損失により光を反射する。いずれのクラスの材料も、満足する解決策を提供せず、材料特性の変更により吸収が設計できる新しい光学材料の開発に大きな興味がある。メタ材料における比較的新しい努力は、集光性および吸収のための選択肢として調査される。なぜならば、それらの正確な形状、地形、大きさ、方向、および配置は、従来の材料では達成できないいくつかにより調査された材料特性を形成するからである。材料の応用に基づく異なる方法で、単位セルを配置することにより、設計で光波長特性を操作できる。しかしながら、技術が複雑で高価である。
【0008】
近年の研究は、イプシロンニアゼロ(ENZ)材料が、高性能の超薄膜吸収を行うのに有用であることを示唆している。超薄膜ENZ層は、(光線より上の)放射性ベレマンモード(radiative Berreman mode)および(光線より下の)バウンドENZモード(bound ENZ mode)を支持する。それらのモードの励起は、共鳴光吸収に繋がる。ENZ材料は、一般に金属または半金属を用いて大きくドープされた半導体を含むと考えられる。ENZ材料の例は、少なくとも部分的に透明な導電性酸化物(TCO)、例えばインジウムスズ酸化物(ITO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、遷移金属窒化物等を含む。ENZ材料中の誘電率は、金属の誘電率から、誘電率が殆どない領域(ENZレジーム)を通って、誘電体材料の誘電率まで、周波数の違いに応じて変化する。ENZ材料中で電磁波の非常に低いグループの速度は、励起体積からのエネルギ除去を禁止し、増加した領域と高い損失関数に繋がる。もし、電気的誘電率がドルーデモデル(Drude model)ε=ε∞-ωp
2/(ω2+iγω)、ここでωpはプラズマ周波数、γは電子衝突率で、ENZ(Re(ε)=0)周波数は、γ→0の場合にωENZ≒ωpで、損失関数L(ωENZ)≒ωp/γ→無限大である。ENZ材料は、内在的光損失γ<<ωp、および堆積条件の制御により設計できるプラズマ周波数、および一般には1019から1021cm-3の高いキャリア濃度を有する。例えば、TCO材料は、他の中で1.3μmから1.5μmの通信周波数でENZレジーム(ENZ regime)を示す。
【0009】
それゆえに、例えば可視、近IR、およびUV領域で、高レベルの広帯域吸収が可能なENZ材料を用いる改良されたシステムおよび方法の必要性は残る。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、放射エネルギの吸収を変化させることができる調整可能なENZ材料のためのシステムおよび方法を提供する。調整可能なENZ材料は、異なる波長において誘電率のイプシロンニアゼロ(ENZ)レジームを有する超薄膜導電性層のスタックを特徴的に用いた広帯域吸収装置として働く。導電性材料は、異なる電子濃度、それゆえに広帯域範囲のエネルギ吸収に対して異なるENZ周波数を有する、少なくとも部分的に透明な導電性酸化物層または遷移金属窒化物層を含むことができる。その層は、深いサブ波長のENZ膜厚で高レベルの吸収を達成するために、様々な周波数に直接調整可能である。適用された電気バイアスは、ENZ半導体装置中で、電子の蓄積/枯渇領域を形成することができ、プラズマ周波数を制御し、これにより装置中で高レベルの吸収を可能にする。さらに、層のスタックのために、キャリア濃度は、層毎に変えることができる。
【0011】
高効率吸収装置は、集光技術として、太陽エネルギ収集装置、蒸気発生器およびボイラー、水蒸留、熱放出、効率的な放射検出器、迷反射光を減らす非常に低反射のコーティングを含む光コーティング、高解像度光学機器、カメラ、CMOSセンサおよび他のセンサ、偏光子、超薄膜非線形光学媒体として、磁気光学媒体、磁気光学装置、および他の応用として用いても良い。高効率吸収装置は、また高解像度カメラおよび冷却検出エレクトロニクスの品質を向上させることができる。非線形ENZ媒体は、また超高速ナノスケールコミュニケーション、撮像、およびディスプレイ技術のための再形成が可能で調整可能な設計を促進することができる。
【0012】
本開示は、電デバイスを提供し、このデバイスは、所定の波長でイプシロンニアゼロ(ENZ)レジームの誘電率を有し、与えられた電気バイアスに応じて誘電率を変える調整可能なように構成された少なくとも1層の導電性材料を含む。
【0013】
本開示は、電子デバイスを提供し、このデバイスは、異なるENZレジームを有する少なくとも2つの層を用いて、所定の波長でイプシロンニアゼロ(ENZ)レジームの誘電率を有し、異なる周波数で光を吸収するように構成された複数の導電層の積層を含む。
【0014】
本開示は、所定の波長でイプシロンニアゼロ(ENZ)レジームの誘電率を有する少なくとも1層の導電体材料を有する電子デバイスを使用する方法を提供し、この方法は、デバイスに電気バイアスを印加する工程と、様々な周波数の光を吸収するようにデバイスを調整する工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本特許または出願ファイルは、少なくとも1つのカラーの図面を含む。カラー写真を有するこの特許または特許出願公開は、請求と必要な料金の支払いを条件に当局により提供される。
【0016】
【
図1A】光の初期入射から見てスタックの遠位に金属リフレクタを有する多層スタックの例の模式図である。
【
図1B】光の初期入射に高指数材料(high index material)を有する多層スタックの他の例の模式図である。
【
図1C】光の初期入射に高指数材料を有する単層の他の例の模式図である。
【
図2A】固定された励起波長で様々な入射角と比較した、様々な膜厚に対する放射バレマンモードのp-分極した励起による、
図1Aに示されたENZ多層スタックの例の吸収率の模式図である。
【
図2B】固定された励起波長で様々な入射角と比較した、様々な膜厚に対するバウンドENZモードのp-分極した励起による、
図1Bに示されたENZ多層スタックの例の吸収率の模式図である。
【
図2C】様々な入射角と比較した、様々な波長に対する放射バレマンモードのp-分極した励起による、
図1Aに示されたENZ多層スタックの例の吸収率の他の模式図である。
【
図2D】様々な入射角と比較した、様々な波長に対するバウンドENZモードのp-分極した励起による、
図1Bに示されたENZ多層スタックの例の吸収率の他の模式図である。
【
図2E】固定した入射角の様々な波長に対する、
図1Aに示されたENZ多層スタックの例を横切る電場強度の模式図である。
【
図2F】固定した入射角の様々な波長に対する、
図1Bに示されたENZ多層スタックの例を横切る電場強度の模式図である。
【
図2G】固定した入射角の様々な励起波長と比較した、様々な膜厚に対する放射バレマンモードのp-分極した励起による、
図1Aに示されたENZ多層スタックの例の吸収率の模式図である。
【
図2H】固定された入射角の様々な励起波長と比較した、様々な膜厚に対するバウンドENZモードのp-分極した励起による、
図1Bに示されたENZ多層スタックの例の吸収率の模式図である。
【
図3A】ベレマンモードとバウンドENZモードとを比較する吸収率スペクトルの模式図である。
【
図3B】様々な電子密度を有するナノ層の3つの例の入射光エネルギと比較した吸収率の模式図である。
【
図3C】
図3Bの様々な電子密度を有するナノ層の3つの例の入射光波長と比較した吸収率の模式図である。
【
図4A】電界効果調整可能なENZ層を有する金属酸化物半導体(MOS)構造の例の模式図である。
【
図4B】
図4Aに示されるENZを横切って異なるように与えられた電圧に対する、キャリア濃度Nの空間分布例の模式図である。
【
図5】固定した入射角で異なって提供される電圧に対する、
図4Aに示されるデバイスに似たENZ層の吸収率の例の模式図である。
【
図6A】
図1Bの構造中で光を用いた初期入射で、高指数材料を有する単層のための、測定された吸収率と波長との模式的な図である。
【
図6B】15nm膜厚のITOナノ層中でベレマンモードの測定された、およびシミュレーションした分散特性の模式図である。
【
図7A】例えば
図1Aおよび
図1Bに示されたAZO多層クレッチュマン-ラター構造中のENZモード励起の模式図である。
【
図7B】例えば
図1AのようなAZO多層構造中の放射ベレマンモードの模式図である。
【
図7C】
図1Bに示すプリズムの無い入射光のための高指数材料を有するバウンドENZモード構造の模式図である。
【
図8A】
図7A-
図7Cに示すそれぞれの単体AZO層の誘電率の実数部分および虚数部分の波長依存性の模式図である。
【
図8B】
図7Bのベレマンモード構成中の、計算されたp-分極した(TM)AZO多層の反射率の模式図である。
【
図8C】7CのENZモード構成中のAZO多層の、計算されたTM反射率の模式図である。
【
図9A】ベレマンモード構成を有する広帯域AZO吸収装置のためのクレッチュマン-ラター構成中の、TMとs-分極した(TE)反射率とのシミュレーション比の模式図である。
【
図9B】ベレマンモード構成を有する広帯域AZO吸収装置のためのクレッチュマン-ラター構成中の、TMとTE反射率との実験的に決定された比の模式図である。
【
図9C】ENZモード構成を有する広帯域AZO吸収装置のためのクレッチュマン-ラター構成中の、TMとTE反射率とのシミュレーションされた比の模式図である。
【
図9D】ENZモード構成を有する広帯域AZO吸収装置のためのクレッチュマン-ラター構成中の、TMとTE反射率との実験的に決定された比の模式図である。
【
図10】与えられたバイアスにおけるシミュレーションされたMOS電界効果完全吸収装置の酸化IOT界面における電子密度の模式図である。
【詳細な説明】
【0017】
上述の図面および特定の構造の記載された開示および以下の式は、発明者が何を発明したか、または添付の請求項の範囲を制限するために存在するものではない。むしろ、図面および記載された説明は、当業者に、特許の保護が考えられる発明の利用および使用することを教えるために提供される。当業者は、明確さおよび理解のために、発明の商業的な具体例の全ての特徴が記載または示されているわけではないことを理解するであろう。当業者は、また、本開示の範囲を取り込む実際の商業的な具体例の開発では、商業的な具体例の開発者の最終ゴールを達成するために、多くの実行仕様の決定を必要とすることを理解するであろう。そのような実行仕様の決定は、特定の実行または場所、または時間により変わりうる、システム関連の、ビジネス関連の、政治関連の、または他の制約に応じることを含むが、これらに限定されるものではない。開発者の努力は絶対的な意味で複雑で時間を必要とするが、そのような努力は、そうでなければ、この開示の利益を有する当事者にとって、ルーチン作業であろう。ここで開示され教示された発明は、多くのおよび様々な変形および他の形態があり得ることを理解すべきである。これに限定するものではないが、「1つの(a)」のような単数の用語の使用は、要素の数を限定することを意図するものではない。さらに、このシステムの様々な方法および具体例は、他と組み合わせて、記載された方法および具体例の変形を形成できる。1つの要素の検討は、複数の要素の検討を含むことができ、また逆もできる。少なくとも1つの項目の参照は、1またはそれ以上の項目を含んでも良い。また、様々な形態の具体例が、解除の理解されるゴールを達成するために、互いに接合して使用しても良い。文脈が求めない限り、「含む(comprise)」またはその変形「comprises」、「comprising」の用語は、少なくとも1つの言及された要素または工程または要素または工程のグループまたはその均等物を含むものと理解されるべきであり、より多くの量または他の要素または工程または要素または工程のグループまたはその均等物を排除すべきではない。デバイスまたはシステムは、多くの方向および配置で使用しても良い。工程の順序は、特に限定されない限り、様々な順序で起こりうる。ここで記載された様々な工程は、他の工程と組み合わせても、言及された工程に組み込んでも、および/または複数の工程に分割しても良い。いくつかの要素は、簡素化のためにデバイス名により表示されるが、システムまたは部分を含むと理解される。例えばプロセッサは、当業者に知られ、特に記載していない関連する成分の処理システムを含む。
【0018】
本開示は、放射エネルギの吸収を変化させる調整可能なENZ材料のためのシステムおよび方法を提供する。調整可能なENZ材料は、異なる波長でイプシロンニアゼロ(ENZ)レジームの誘電率を有する層を含み超薄膜導電性層のスタックを特徴的に使用する広帯域の吸収装置として働くことができる。導電性材料は、異なる電子濃度を有する少なくとも部分的に透明な導電性酸化物または遷移金属窒化物層を含み、それゆえにエネルギ吸収の様々な広帯域の範囲のための、異なるENZ周波数を含む。層は直接様々な周波数に調整して、深いサブ波長ENZ膜厚において高レベルの吸収を達成できる。適用された電気バイアスは、ENZ半導体デバイス中で電子の蓄積/枯渇領域を形成し、プラズマ周波数を制御し、それゆえにデバイス中で高レベルの吸収を可能とする。さらに、スタック層では、キャリア濃度が層毎に変えることができる。
【0019】
図1Aは、光の初期入射から見て積層の遠位に金属リフレクタを有する多層スタックの例の模式図である。
図1Bは、光の初期入射に
高屈折率(「高指数
」という)材料を有する多層スタックの他の例の模式図である。
図1Cは、光の初期入射に高指数材料を有する単層の他の例の模式図である。広帯域吸収装置の例は、漸次異なる電子濃度を有し、それゆえに異なるENZ周波数を有する、超薄膜ITO層のスタックを用いることにより形成される。超薄膜ENZ層は、放射ベレマンモードおよびバウンドENZモードを支持する。2つの異なる光入射構成中のそれらのモードの励起は、共鳴吸収に繋がる。
【0020】
設計は、固定された設計に比較して機能的で調整可能であり、形成されたメタ材料と比較して比較的容易で有利に形成できるデバイス、制限された領域を有するメタ材料の複雑に設計されたナノ構造に比較して大きな領域で使用できる材料、および例えば約100nm以下、約40nm以下、約20nm以下、または約10nm以下、そしてその間のいずれかの値の全スタック膜厚を有する超薄膜デバイスを有利に提供できると信じられる。
【0021】
図1Aおよび
図1Bに示されるENZ多層スタックの例は、4つのITOナノ層からなり、
図1Aに示された層に対応して
図1BでN1~N4と名付ける。ナノスケールITO多層スタックは、例えば、原子層堆積により形成されても良い。層N1は、角度θで入射光が最初にそこを通ってENZスタックに入るENZ層である。
図1Aでは、多層スタックの上から下に向かって、電子濃度が減少し、ENZ波長が増加する。
図1AのENZ多層スタックは、例えば、薄い金のリフレクタにより支持される。
図1Bでは、多層スタックの下から上に向かって、電子濃度が減少し、ENZ波長が増加する。
図1BのENZ多層スタックは、例えば、プリズムの薄い高指数ガラスにより支持される。
図1Cは、ITO層と金属リフレクタ(例えば金)を有する、プリズムの薄い高指数ガラス(例えばガドリウムガリウムガメット:GGG)を示す。
図1Cは、
図1Aおよび
図1Bの要素を含み、放射ベレマンモードの励起の他の図である。図は、高指数ガラスと金属リフレクタとの間の単層を示すが、記載された構造は多層スタックに変形できる。
【0022】
超薄層は、与えられる電気バイアスに応答する。なぜならば、層の蓄積領域中の電子の蓄積は、より少ない応答性の厚い層よりむしろ超薄層でより多くの効果を有するからである。層の膜厚は、限定無しで、波長の約1/50倍以下の膜厚、波長の約1/75倍以下の膜厚、波長の約1/100倍以下の膜厚、それらの間のいずれかの膜厚以下を含む、考慮されたサブ波長膜厚でも良い。代わりに、層の膜厚は、より詳しくは以下で述べる、層の上の蓄積領域の比として表しても良い。層中の蓄積領域の膜厚に対する層の膜厚の比は、限定するものではないが、20:1以下、5:1以下、1:1以下、およびその間のいずれかの比以下でも良い。更に代わりとして、層の膜厚は、単に測定値として表しても良く、例えば。40nm以下、20nm以下、10nm以下、8nm以下、5nm以下、2nm以下、およびその間のいずれかの値以下でも良い。
【0023】
構造の例は特徴的に層のスタックを示すが、ここで記載された原理は、単層にも適用できることを理解すべきである。単一の超薄層は、ENZ領域中で所望の周波数を吸収するために、所定の材料およびキャリア濃度で形成しても良い。単層はドープされるか、そうでなければ、層のENZ領域に影響する異なった量の電気バイアスを与えることにより、吸収容量を変えることができるように形成される。
【0024】
層のスタックは、ENZ領域の拡張範囲を提供し、これによりスタックを通る所定の光の吸収の範囲を広げる。スタックに与えられる電気バイアスは、一般に層の蓄積領域に影響し、層のENZ領域および吸収および結果のスタックの吸収に影響する。
【0025】
例1
入射角度およびITO膜厚および波長の関数として、p-分極(TM)光吸収率が、
図2A~
図2Fに示される。吸収率は、IMDソフトウエアを用いて計算される。ITOの光学特性は、自由電子ドルーデモデル(Drude model)を用いてモデリングされる。強度のスケールバーは、多くの図の右にある。
【0026】
図2Aは、固定された励起波長で様々な入射角と比較した、様々な膜厚に対する放射バレマンモードのp-分極した励起による、
図1Aに示されたENZ多層スタックの例の吸収率の模式図である。例えば、ITOナノ層のキャリア濃度は、N1=1×10
21cm
-3、N2=8×10
20cm
-3、N3=6.1×10
20cm
-3、およびN4=4.9×10
20cm
-3である。吸収率は、構造の放射ベレマンモードの励起に帰する。励起波長は、例として、1020nmに固定される。図は、最高吸収率が、ENZ多層中の約10~30nmの間のITO膜厚を用いて達成できることを示す。
【0027】
図2は、固定された励起波長で様々な入射角と比較した、様々な膜厚に対するバウンドENZモードのp-分極した励起による、
図1Bに示されたENZ多層スタックの例の吸収率の模式図である。吸収率は、クレッチュマン-ラター構造中の、バウンドENZモードの励起に帰する。クレッチュマン-ラター構造は、光と金属表面の自由電子との間の共鳴を達成するために使用される。この構造では、高い屈折率を有する高誘電率材料のプリズムが、金属膜と界面を有する。プリズムを通って伝達するソースからの光は、金属膜の上に入射する。全入射反射の結果として、金属膜を通っていくつかが漏れ、誘電体媒体中でエバネッセント波を形成する。エバネッセント波は、それが少なくなる、より光学的に密度の小さい媒体の中に、特徴的な距離だけ進入する。励起波長は、例えば1540nmに固定される。図は、ENZ多層中で約8~12nmの間で最も高い吸収が得られ、これにより
図2Aの結果に比べて非常に小さい膜厚の周辺に狭くなる。
【0028】
図2Cは、様々な入射角と比較した、様々な波長に対する放射バレマンモードのp-分極した励起による、
図1Aに示されたENZ多層スタックの例の吸収率の他の模式図である。例示目的で、4つのITO層の膜厚は、等しくて11nmに固定する。周波数の変化は、入射角の比較的小さい範囲となり、反対に、高レベルの吸収率が達成できる。95%より大きい吸収率が、多層スタックで観察される。
【0029】
図2Dは、様々な入射角と比較した、様々な波長に対するバウンドENZモードのp-分極した励起による、
図1Bに示されたENZ多層スタックの例の吸収率の他の模式図である。例として、4つのITO層膜厚は、等しくて11nmに固定される。例示のパラメータは、約60°の入射角より上で共鳴光吸収率となる。吸収率の最適レベルは、
図2Cに示されるベレマンモードによる吸収率を超えて、1000~1500nmの波長範囲に広がる。95%より大きい吸収率は、多層スタックで観察される。
【0030】
図2Eは、固定した入射角の様々な波長に対する、
図1Aに示されたENZ多層スタックの例を横切る電場強度の模式図である。入射角は、例えば64°であった。深さゼロは、入射光に面する多層の表面に対応する。
【0031】
図2Fは、固定した入射角のそれぞれの層への様々な波長に対する、
図1Bに示されたENZ多層スタックの例を横切る電場強度の模式図である。入射角は、例えば64°であった。深さゼロは、入射光に面する多層の表面に対応する。ENZ波長において内部ITO層で、大きな場の強度の増大がある。
【0032】
図2Gは、固定された入射角の様々な励起波長と比較した、様々な膜厚に対する放射バレマンモードのp-分極した励起による、
図1Aに示されたENZ多層スタックの例の吸収率の模式図である。入射角は70°であった。広帯域の吸収が、ENZ多層中の約10~30nmのITO膜厚で達成できる。
【0033】
図2Hは、固定された入射角の様々な励起波長と比較した、様々な膜厚に対するバウンドENZモードのp-分極した励起による、
図1Bに示されたENZ多層スタックの例の吸収率の模式図である。図は、約1000~1500nmのバンド幅を有する、高吸収(90%以上、好適には95%以上、より好適には99%以上)を示す。
【0034】
図3Aは、ベレマンモードとバウンドENZモードとを比較する吸収率スペクトルの模式図である。左から始まって、第1の曲線は、放射ベレマンモードの結果を示し、第2の曲線は、バウンドENZモードの結果を示す。例えば、層は、8nm膜厚のITO層である。図は、光レベルの吸収は、材料の非常に小さな膜厚において見られることを示す。図は、また、ベレマンモードのより狭い範囲に比較して、バウンドENZモードは1.1~1.6μmの広帯域波長範囲で吸収率を拡大することを示す。500nm波長範囲以上に対して、95%より大きな吸収率が、バウンドENZモードで見られる。
【0035】
図3Bは、様々な電子密度を有するナノ層の3つの例の入射光エネルギと比較した吸収率の模式図である。
図3Cは、
図3Bの様々な電子密度を有するナノ層の3つの例の入射光波長と比較した吸収率の模式図である。限定されることなく、例えば、材料は、入射角60°において、5×10
20cm
-3、1×10
21cm
-3、および2×10
21cm
-3の電子密度を有するITOである。影の部分は、ベレマンモードを表す。影の無い線は、バウンドENZモードを表す。吸収率の幅は、電気誘電率のドルーデモデル中の電子衝突率に比例する。
【0036】
例2
図4Aは、電界効果調整可能なENZ層を有する金属酸化物半導体(MOS)構造の例の模式図である。調整可能な吸収は、電界効果により可能になる。MOS構造は、TCOを有する電子電界効果トランジスタに類似しても良い。金属とTCOとの間にバイアスを加えた場合、TCO-絶縁体界面のTCO中に電子蓄積が起きる。電子蓄積は、TCOの複雑な誘電体定数を変える、電子蓄積は、プラズマとENZ周波数を増加させ、それにより、波長の吸収ピークのブルーシフトに繋がる。ポアソン式およびドリフト拡散式を自己整合的に解く商業的なデバイスシミュレータが、MOSデバイス中の電子分布を計算するために使用された。
【0037】
図4Bは、
図4Aに示されるENZを横切って異なるように与えられた電圧に対する、電子濃度Nの空間分布例の模式図である。例示のMOSデバイスは、金属基板、8nm膜厚のITO単層、およびそれらの間の5nm膜厚の誘電体絶縁層を含む。誘電体絶縁層は、例えばハフニウム二酸化物(HfO
2)であり、一般に高い誘電率の値を有する。この例では、ITOの背景キャリア濃度は、N0=6×10
20cm
-3である。HfO
2/ITO界面におけるITOのキャリア濃度は、与えられた5Vのバイアスでは、バルク値と比較して十分に増加/減少し、可視またはNIRで使える波長において、異なる与えられたバイアスに対する誘電率εrの変化に繋がる。ITOの誘電率は、枯渇/蓄積層の形成により、HfO
2/ITO界面の約1~2nm内の範囲で実質的に変化する。このように、「完全な」吸収(ここでは、少なくとも95%、または有利には少なくとも約97%、またはより有利には少なくとも約99%)は、コンピュータ中のトランジスタのような一般的なMOSデバイスの空間電化領域ζ
Dに近づく膜厚tを有する超薄膜ナノ層で可能である。低い与えられた電場において:
t<10nm~ζ
D≒1~2nm
となる。
【0038】
図5は、固定された入射角で、異なって提供される電圧に対する、
図4Aに示されるデバイスに似たENZ層の吸収率の例の模式図である。挿入図は、吸収率のバラツキをパーセント(%)で表す。図は、2×10
21cm
-3の電子濃度と31cm
2/(Vs)の移動度を有する超薄層4nmITO層の吸収率を示す。入射媒体はTiO
2(ルチル)であり、光の入射角は60°である。バイアスの値は、例えば5Vのバイアス(左の曲線)およびバイアス無し(右の曲線)である。垂直の点線は、ENZ波長を示す。
【0039】
例えば300%より大きい、より大きな吸収変化は、蓄積層中のより大きな場の拡大により観察される。それらの結果は、超薄層の調整可能なENZ吸収装置および薄膜モジュレータの開発への道を開く。
【0040】
例3
図6Aは、
図1Bの構造中で光を用いた初期入射で、高い指数材料を有する単層のための、測定された吸収率と波長との模式的な図である。実験は、超薄層ベレマン吸収装置およびENZ吸収装置の吸収および枯渇から形成された。
【0041】
図6Bは、15nm膜厚のITOナノ層中でベレマンモードの測定したおよびシミュレーションした分散特性の模式図である。
【0042】
ITO膜は、シリカ基板上にラジオ周波数(RF)マグネトロンスパッタリングで成長させた。スパッタリング温度および処理圧力は、それぞれ400℃と5mTorrであった。RFパワーは50WでAr流速は40sccmであった。
【0043】
サンプルの吸収率を測定するために、600~1700nmの広帯域波長範囲を有する超連続(SC)レーザからの線形に分極されたコリメート光を、
図1Cに示すようなクレッチュマン-ラザー構造中のGGGカップリングプリズムの手段により、ITOナノ層に入射させた。カップリングプリズムおよびテスト標本固定具は、モーターで回転するステージ(回転角度θ)の上に搭載された。ITOナノ層からの反射光は、第2の回転ステージ(回転角度2θ)に固定されたマルチモード光ファイバにより集められた。入射光のs-分極状態およびp-分極状態の双方に対して、反射光は、光スペクトル分析器により記録された。組み立ては、0.01°の角度精度を有する広い角度範囲での反射率測定を可能にした。
【0044】
図6Aは、クレッチュマン-ラター構造中のベレマンモード(落ち込む前の上方の線)励起とENZモード(落ち込む前の下方の線)励起の双方に対して、2つのITOナノ層から測定された実験的なスペキュラ反射率を示す。ベレマンモードは、例えば
図1Cに示された構造を使用できる。ENZモードは、例えば
図1Bと類似するが、単層を有する構造を使用できる。反射率の落ち込みは、ITOナノ層中でのENZ共鳴光の吸収による。99.5%(-23dB)の吸収率が、ベレマンモードおよびENZモードの双方に対して、10nmから50nmまでのサブ波長膜厚を有するITOナノ層中で観察された。ベレマンモードは、47.6°の入射角において15nm膜厚のITO中で観察され、ENZモードは、43.7°の入射角において80nm膜厚のITO中で観察される。測定されたベレマンモードの分散特性は、
図6Bにプロットされる(丸で表示)。特性は、シミュレーションした依存性(線で示す)と良く一致する。小さな矛盾は、指数マッチング液とGGGプリズムの小さな反射指数のミスマッチに帰する。単層の吸収装置の良好な一致は、分析の正確性を表す。
【0045】
例4
図7Aは、例えば
図1Aおよび
図1Bに示されたAZO多層クレッチュマン-ラター構造中のENZモード励起の模式図である。
図7Bは、例えば
図1AのようなAZO多層構造中の放射ベレマンモードの模式図である。
図7Cは、
図1Bに示すプリズムの無い入射光のための高指数材料を有するバウンドENZモード構造の模式図である。
【0046】
実験は、多層広帯域のENZ「完全な吸収装置」の吸収および枯渇からなる。結果は、>99%の吸収率を有する広帯域ENZ吸収装置を実験的に行い、ここで記載された広帯域完全吸収設計の実験的な可能性を検証する。それぞれのAZO層の膜厚およびキャリア濃度が正確に制御できるため、AlドープされたZnO(AZO)材料が、この実験で使用された。AZOナノ層は、原子層堆積(ALD)により成長させ、良好な均一性と表面平坦性を有する超薄膜を提供した。ALDで堆積したAZO膜の膜厚および電子濃度は、堆積サイクルの数およびジエチル亜鉛-H
2Oのトリメチルアルミニウム-H
2Oに対する堆積比を変えることにより制御した。20:1、30:1、および35:1の堆積比を有する3つのAZOナノ層が、
図7A~
図7Cに示す広帯域吸収装置を構成する。AZO膜の複雑な誘電率が、コントロールサンプルの上でエリプソメトリにより測定され、
図8Aに示され、また以下に述べられる。結果は、誘電率ゼロが、AZO3、AZO2、およびAZO1のそれぞれに対して、1497nm、1571nm、および1700nmに位置した。
【0047】
図8Aは、
図7A~
図7Cに示す、エリプソメトリにより得られた、250℃で堆積したそれぞれの単層AZO層の誘電率の実数部分(real part)と虚数部分(imaginary part)の波長依存性の模式図である。
図8Bは、
図7Bのベレマンモード構成中に広帯域ENZ吸収率を有する計算されたp-分極した(TM)AZO多層の反射率の模式図である。
図8Cは、
図7CのENZモード構成中に広帯域ENZ吸収率を有するAZO多層の、計算されたTM反射率の模式図である。点線は、設計された多層スタック中の層と等しい膜厚を有する個々のAZOナノ層のそれぞれの反射率を示す。反射率は43°の入射角で示され、これは41.8°の全反射の臨界角より大きい。広帯域の吸収を達成するために、パラメータスイープが、3つのAZO層の膜厚の最適化のために使用される。43°の入射角では、(下部、中央部、上部の層に対する)最適膜厚は、ベレマンモードでは80nm、60nm、および50nm、ENZモードでは80nm、60nm、および30nmである。
図8Cおよび
図8Cに示すように、反射率の最小値は、ENZモードによる共鳴光吸収による。43°の吸収(>90%)のバンド幅は、ベレマンモードで214nm、近赤外領域でのENZモードで294nmである。
【0048】
図9Aは、ベレマンモード構成を有する広帯域AZO吸収装置のためのクレッチュマン-ラター構成中の、TMとs-分極した(TE)反射率とのシミュレーション比の模式図である。
図9Bは、ベレマンモード構成を有する広帯域AZO吸収装置のためのクレッチュマン-ラター構成中の、TMとTE反射率との実験的に決定された比の模式図である。
図9Cは、ENZモード構成を有する広帯域AZO吸収装置のためのクレッチュマン-ラター構成中の、TMとTE反射率とのシミュレーションされた比の模式図である。
図9Dは、
図6BのTMとTE反射率との実験的に決定された比の模式図である。
図6Bは、15nm薄膜ITOナノ層中のベレマンモードの測定したおよびシミュレーションした分散特性である。
【0049】
TEおよびTM反射率スペクトルは、41°~52°の入射角範囲で、クレッチュマン-ラター構成中で測定した。TM/TE反射率比が計算されて、シミュレーションした反射率の比と比較された。シミュレーションは、コントロールサンプル上でエリプソメトリにより測定された、多層スタックの成分たるAZO層の実際の膜厚および光学的特性を考慮した。比較は、測定結果とシミュレーション結果との間で良好な一致を示す。AZO層の膜厚は、AZO1、AZO2、およびAZO3のそれぞれについて82nm、57nm、および57nmであった。41.8°の全反射の臨界角は、
図9Cおよび
図9Dに見られる。図は、シミュレーション結果と測定結果との間で良好な一致を示す。
【0050】
例5
図10は、与えられたバイアスにおけるシミュレーションされたMOS電界効果完全吸収装置の4つの組み合わせの、酸化物-ITO界面における電子密度の模式図である。この例では、与えられるバイアスは5Vである。ITOバルクの電子密度は、1×10
21cm
-3である。MOS構造は、実線はAg-HfO
2-ITO、破線はAu-HfO
2-ITO、点線はAg-Al
2O
3-ITO、一点鎖線はCu-HfO
2-ITOである。金属の仕事関数は、銀は4.26eV、金は5.1eV、銅は4.65eVである。ハフニウム酸化物の誘電定数は25で、アルミニウム酸化物の誘電定数は25である。
【0051】
上述の発明の1またはそれ以上の範囲を用いる他の更なる具体例は、請求の範囲に記載された、開示された発明から離れることなく発明することができる。例えば、様々なTCO材料以外のENZ材料、異なる誘電率のENZレジームのための異なるドーピング金属または半金属、ドーピングのレベル、適用する電気バイアスのレベル、膜厚、層の間のパーセントとしてのドーピングのレベル、および他の変更は、請求の範囲および他の変更の範囲内に維持しながら可能である。
【0052】
本発明は、好ましいそして他の具体例の文脈内で開示したが、本発明の全ての具体例が記載された訳ではない。記載された具体例の明らかな変形および代替えは、当業者が行えるであろう。開示された、および開示されていない具体例は、出願人により考えられた発明の範囲または適応性を限定または制限することを意図せず、むしろ、特許法に従って、出願人は、以下の請求の範囲または均等の範囲内にあるそのような変形および改良を全て保護することを意図する。