(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】脚立
(51)【国際特許分類】
E06C 1/18 20060101AFI20230105BHJP
E06C 1/39 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
E06C1/18
E06C1/39 Z
(21)【出願番号】P 2020041756
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2022-08-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】393018130
【氏名又は名称】長谷川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100166958
【氏名又は名称】堀 喜代造
(72)【発明者】
【氏名】杉木 道明
(72)【発明者】
【氏名】泉 幸治
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-041855(JP,A)
【文献】特開2016-033305(JP,A)
【文献】特開2012-219589(JP,A)
【文献】特開2002-180658(JP,A)
【文献】実開平06-073298(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06C 1/00-9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本の支柱と、前記二本の支柱の間に架け渡される複数の踏桟と、前記二本の支柱の上端部を連結する天板と、を備える一対の梯子体が、互いの上端部で相対回転可能に連結され、前記一対の梯子体が所定間隔に離間した開状態において前記一対の梯子体の相対変位を規制するアーム部材と、開状態の際に前記一対の梯子体の相対変位の規制を解除する規制解除部材と、を備える脚立であって、
前記アーム部材は、一組のアーム体で構成され、
それぞれの前記アーム体は、前記一対の梯子体において対向して近接離間するそれぞれの前記支柱に回動可能に支持されるとともに、互いの先端部が相対回転可能に連結され、
前記規制解除部材は、操作部と、開状態の際に前記アーム部材と係合される係合部と、前記係合部と前記操作部とを連係する連係部とで構成され、
開状態の際に前記操作部を変位させることにより、前記係合部が変位して前記アーム部材を屈曲させ、
前記規制解除部材を変位可能に支持するガイド部材が設けられる、脚立。
【請求項2】
開状態の際に前記規制解除部材における前記操作部を上方に変位させることにより、前記連係部及び前記係合部が上方に変位する、請求項1に記載の脚立。
【請求項3】
前記規制解除部材において、前記連係部は前記操作部の両端に設けられ、前記係合部は前記アーム部材を屈曲可能に前記規制解除部材の両端部に設けられる、請求項1または2のいずれか一項に記載の脚立。
【請求項4】
前記ガイド部材は前記一対の梯子体の一方の側に、二個一組で設けられて前記規制解除部材を変位可能に支持する、請求項1から3のいずれか一項に記載の脚立。
【請求項5】
前記ガイド部材にはガイド溝が形成され、該ガイド溝に前記規制解除部材が変位可能に支持されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の脚立。
【請求項6】
前記ガイド部材は、前記支柱において他の前記支柱と近接する側の面に設けられ、
前記ガイド溝は、前記支柱の長手方向に沿って、前記ガイド部材における互いに対向する面に形成される、請求項5に記載の脚立。
【請求項7】
前記ガイド部材のガイド溝の下端部には前記ガイド部材を貫通する連通孔が形成され、前記規制解除部材の前記係合部は該連通孔を通じて前記操作部の長手方向外側に延出され、前記係合部が前記アーム部材の下方に配置される、請求項6に記載の脚立。
【請求項8】
前記ガイド部材は前記支柱または前記踏桟に対して固定され、前記係合部が前記アーム部材に対して、前記支柱における前記一対の梯子体が近接する側の近傍で係合するように構成される、請求項4から7のいずれか一項に記載の脚立。
【請求項9】
前記係合部は、前記支柱の近傍のうち前記一対の梯子体が近接する側に配置され、
前記係合部は、前記アーム部材を下方から屈曲可能とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の脚立。
【請求項10】
前記操作部は前記天板に近接する下側に配置されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の脚立。
【請求項11】
前記操作部は前記踏桟の近傍に配置されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の脚立。
【請求項12】
前記操作部は前記天板または前記踏桟の長手方向に沿って配置される、請求項10又は11に記載の脚立。
【請求項13】
前記操作部は、近接する前記踏桟又は前記天板の下端面よりも下側に位置することにより上方に変位させることのできる変位許容部と、近接する前記踏桟又は前記天板の下端面よりも上側に位置することにより上方に変位させることのできない変位不能部と、を備える、請求項10から12のいずれか一項に記載の脚立。
【請求項14】
前記規制解除部材は、棒状部材が折り曲げられることにより、前記係合部、前記連係部、及び、前記操作部が一体的に形成される、請求項1から13のいずれか一項に記載の脚立。
【請求項15】
前記規制解除部材は、前記操作部、前記
連係部及び前記係合部を別部材で構成して互いに連結して構成されている、請求項1から14のいずれか一項に記載の脚立。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脚立に関し、詳細には、脚立における開き止め構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の梯子体の端部を回動可能に連結する構成の脚立が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。このような脚立においては、一対の梯子体を構成する支柱の間に設けられた開き止め機構により、脚立状態における梯子体の相対変位を規制する構成が用いられる。特許文献1に記載の脚立の場合、脚立状態で開き止め機構を操作することにより規制を解除し、脚立を折りたたんだ閉状態とすることができる。
【0003】
一方、脚立を構成する梯子体間に設けられた開き止め機構を操作することにより、脚立を折りたたんだ閉状態とすることのできる脚立が用いられている(例えば、特許文献2を参照)。このような脚立においては、梯子体間の開き止め機構における操作部を使用者が持ち上げることにより、一対の梯子体を互いに近接させて脚立を閉状態とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-33305号公報
【文献】特開2013-119745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載の脚立によれば、一方の梯子体を構成する二本の支柱のそれぞれに開き止め機構が連結されている。このため、脚立の使用者は、脚立状態から閉状態とする際に、両手を用いて二個の開き止め機構を操作するか、片手でそれぞれの開き止め機構を操作する必要があった。このため、使用者が道具を持っている等、両手を使用することが困難な状況では、容易に脚立状態から閉状態とすることができなかった。
【0006】
一方、前記特許文献2に記載の脚立によれば、使用者は片手で操作部を持ち上げるだけで、脚立状態から閉状態とすることができる。しかし、このように一対の梯子体を開き止め機構で連結する構成は、脚立において設ける位置が制限される。即ち、開き止め機構を使用者の手の近傍に配置することになるため、比較的大きなサイズの脚立には採用することが困難な場合があった。
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、その大きさに関わらず開き止め機構を設けることができ、容易に脚立状態から閉状態とすることを可能とする、脚立を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下では、上記課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
本発明に係る脚立は、二本の支柱と、前記二本の支柱の間に架け渡される複数の踏桟と、前記二本の支柱の上端部を連結する天板と、を備える一対の梯子体が、互いの上端部で相対回転可能に連結され、前記一対の梯子体が所定間隔に離間した開状態において前記一対の梯子体の相対変位を規制するアーム部材と、開状態の際に前記一対の梯子体の相対変位の規制を解除する規制解除部材と、を備える脚立であって、前記アーム部材は、一組のアーム体で構成され、それぞれの前記アーム体は、前記一対の梯子体において対向して近接離間するそれぞれの前記支柱に回動可能に支持されるとともに、互いの先端部が相対回転可能に連結され、前記規制解除部材は、操作部と、開状態の際に前記アーム部材と係合される係合部と、前記係合部と前記操作部とを連係する連係部とで構成され、開状態の際に前記操作部を変位させることにより、前記係合部が変位して前記アーム部材を屈曲させ、前記規制解除部材を変位可能に支持するガイド部材が設けられるものである。
【0010】
また、本発明に係る脚立において、開状態の際に前記規制解除部材における前記操作部を上方に変位させることにより、前記連係部及び前記係合部が上方に変位することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る脚立において、前記規制解除部材において、前記連係部は前記操作部の両端に設けられ、前記係合部は前記アーム部材を屈曲可能に前記規制解除部材の両端部に設けられることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る脚立において、前記ガイド部材は前記一対の梯子体の一方の側に、二個一組で設けられて前記規制解除部材を変位可能に支持することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る脚立において、前記ガイド部材にはガイド溝が形成され、該ガイド溝に前記規制解除部材が変位可能に支持されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る脚立において、前記ガイド部材は、前記支柱において他の前記支柱と近接する側の面に設けられ、前記ガイド溝は、前記支柱の長手方向に沿って、前記ガイド部材における互いに対向する面に形成されることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る脚立において、前記ガイド部材のガイド溝の下端部には前記ガイド部材を貫通する連通孔が形成され、前記規制解除部材の前記係合部は該連通孔を通じて前記操作部の長手方向外側に延出され、前記係合部が前記アーム部材の下方に配置されることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る脚立において、前記ガイド部材は前記支柱または前記踏桟に対して固定され、前記係合部が前記アーム部材に対して、前記支柱における前記一対の梯子体が近接する側の近傍で係合するように構成されることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る脚立において、前記係合部は、前記支柱の近傍のうち前記一対の梯子体が近接する側に配置され、前記係合部は、前記アーム部材を下方から屈曲可能とすることが好ましい。
【0018】
また、本発明に係る脚立において、前記操作部は前記天板に近接する下側に配置されていることが好ましい。
【0019】
また、本発明に係る脚立において、前記操作部は前記踏桟の近傍に配置されていることが好ましい。
【0020】
また、本発明に係る脚立において、前記操作部は前記天板または前記踏桟の長手方向に沿って配置されることが好ましい。
【0021】
また、本発明に係る脚立において、前記操作部は、近接する前記踏桟又は前記天板の下端面よりも下側に位置することにより上方に変位させることのできる変位許容部と、近接する前記踏桟又は前記天板の下端面よりも上側に位置することにより上方に変位させることのできない変位不能部と、を備えることが好ましい。
【0022】
また、本発明に係る脚立において、前記規制解除部材は、棒状部材が折り曲げられることにより、前記係合部、前記連係部、及び、前記操作部が一体的に形成されることが好ましい。
【0023】
また、本発明に係る脚立において、前記規制解除部材は、前記操作部、前記連係部及び前記係合部を別部材で構成して互いに連結して構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る脚立によれば、その大きさに関わらず開き止め機構を設けることができ、容易に脚立状態から閉状態とすることが可能となる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図5】開き止め機構の組付構成を示した下方斜視図。
【
図6】開き止め機構の組付手順を示した下方斜視図。
【
図8】開き止め機構の規制を解除した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では
図1から
図9を用いて、本発明の一実施形態に係る脚立1について説明する。本実施形態においては、
図1中に示す矢印の方向で、後述する開状態(脚立状態)における脚立1の方向を規定する。即ち、
図1に示す回動軸A(
図1中の一点鎖線を参照)の軸方向(踏桟4の架設方向)を脚立1の左右方向とする。また、水平方向において左右方向と直交する方向(梯子体2・2の開閉方向)を脚立1の前後方向とし、左右方向及び前後方向と直交する方向を脚立1の上下方向と規定する。
【0027】
図1に示すように、本実施形態に係る脚立1は、互いに共通の構成を有する一対の梯子体2・2を備える。梯子体2・2は側面視で略ハ字状に下端部が互いに離間して広がるように配置され、それぞれの上端部がヒンジ6・6により回動可能に連結される。
【0028】
図4に示す如く、ヒンジ6は第一ヒンジ部6aと第二ヒンジ部6bとが回動支持部6cで回動可能に連結されている。そして、第一ヒンジ部6aと第二ヒンジ部6bとが、左右方向について同じ側にある(対向して近接離間する)支柱3・3の上端部にそれぞれ固定される。これにより、ヒンジ6が対向する支柱3・3を相対的に回動可能に連結する。即ち、梯子体2・2が互いに近接離間する方向(
図1においては脚立1の前後方向)に回動可能とされる。
【0029】
それぞれの梯子体2は長尺体である一対の支柱3・3を備える。支柱3・3は互いの距離が上側より下側で大きくなるように(正面視で略ハ字状に)配置されている。本実施形態に係る脚立1は4本の支柱3を備えている。各支柱3は、強度の確保等を目的として、長手方向に沿った二箇所で折り曲げられることにより、長手方向と直交する断面の形状が略コ字状になるように形成されている。また、それぞれの支柱3の下端部には端具3aが固定される。
【0030】
梯子体2における一対の支柱3・3の間には、所定の間隔を隔てて中空の筒状部材である複数の踏桟4・4・・・が架け渡される。踏桟4は所定の横断面形状をなす直線状の押出し成形品が所定の長さに切断されて形成される(
図3を参照)。それぞれの踏桟4はリベットにより支柱3において対向する内側面の間に固定されている。本実施形態に係る脚立1において、各支柱3、踏桟4及び天板5はアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる軽金属製の部材である。なお、踏桟4をボルト・ナット等の他の締結部品を用いて支柱3に固定することも可能である。
【0031】
それぞれの梯子体2は、上端部に中空の筒状部材である天板5・5が設けられる。天板5は所定の横断面形状をなす直線状の押出し成形品が所定の長さに切断されて形成される(
図3から
図9を参照)。天板5はリベットにより支柱3・3の上端部において対向する内側面の間に固定されている。換言すれば、天板5はそれぞれの梯子体2において、二本の支柱3・3の上端部を連結するように設けられる。なお、天板5をボルト・ナット等の他の締結部品を用いて支柱3に固定することも可能である。
【0032】
脚立1は、一対の梯子体2・2のなす角度(詳細には、梯子体2・2の相対的な回動によって近接離間する支柱3・3が側面視においてなす角度、以下同じ)に応じて、主に以下の開状態又は閉状態とすることができる。
【0033】
開状態は、
図1に示す如く梯子体2・2のなす角度を約30度として、4本の支柱3で脚立1を支える形態である。本明細書においては、以下、開状態を「脚立状態」と記載する。脚立状態における脚立1は、地面や床に自立させた状態で用いられる。閉状態は、
図2に示す如く梯子体2・2のなす角度を約0度に近接させる形態である。脚立1の閉状態は、主に収納時や搬送時に採用される。
【0034】
脚立1は第三の形態として、梯子体2・2のなす角度を約180度として、一側の2本の支柱3で脚立1を支える梯子状態とすることも可能である。即ち、本実施形態に係る脚立1は梯子兼用脚立として構成されている。なお、本発明は梯子兼用脚立にのみ採用されるものではなく、専用脚立を含めた他の構成の脚立全般に採用することが可能である。
【0035】
脚立1は、脚立状態において、梯子体2・2のなす角度を規定するとともに互いの相対変位(回転)を規制する、開き止め機構7を備える。開き止め機構7は、梯子体2・2の上端部における左右両側に、合計二組設けられている。開き止め機構7は、互いに連結される一対の梯子体2・2において、左右方向について同じ側に配置されて互いに近接離間する支柱3同士を連結する。
【0036】
より詳細には、開き止め機構7は、梯子体2・2において対向して近接離間するそれぞれの支柱3・3の一方(
図4における左側の支柱3)に回動可能に支持される。そして、開き止め機構7は、脚立1が脚立状態において支柱3・3の他方(
図4における右側の支柱3)に係合可能とされる。それぞれの開き止め機構7は同じ構成であるため、本実施形態においては左側の開き止め機構7を中心に説明する。
【0037】
図4に示す如く、開き止め機構7は、第一アーム体7aと第二アーム体7bとが連結されて構成されるアーム部材である。脚立1の左側に設けられた開き止め機構7において、第一アーム体7aは基端部(
図4における左側端部)が後側の支柱3の上部において回動軸7cで回動可能に軸支されている。第二アーム体7bはその先端部が第一アーム体7aの先端部と回転連結部7dで回転可能に連結されている。なお、脚立1の右側に設けられた開き止め機構7において、第一アーム体7aは基端部(
図7における右側端部)が前側の支柱3の上部において回動軸7cで回動可能に軸支されている。
【0038】
第二アーム体7bの基端部には、係合端部7eが形成されている。係合端部7eはねじりバネ7hにより付勢された係合部材7fと、係合部材7fの変位によって拡大・縮小が可能な係合孔7gと、を備えている。係合部材7fはねじりバネ7hによって、係合孔7gを縮小する方向(閉じる方向)に付勢されている。脚立1を脚立状態とする場合は
図1及び
図5に示す如く、梯子体2・2のなす角度を約30度に開いた状態で、係合端部7eを他方の支柱3に形成された第一ロックピンP1に係合させる。この際、係合孔7gに第一ロックピンP1が挿入され、係合部材7fがねじりバネ7hにより付勢されることにより、係合端部7eと第一ロックピンP1との係合状態が維持される。なお、第二アーム体7bに形成する係合端部の構成は、本実施形態に限定されるものではなく、他の構成で第一ロックピンP1(第二ロックピンP2も同様)と係合させることも可能である。
【0039】
このように、脚立1において、第一アーム体7aの基端部は一方の支柱3に回動可能に支持され、第二アーム体7bの先端部は第一アーム体7aの先端部に回転可能に連結されるとともに基端部が他方の支柱3に係合可能とされる。換言すれば、開き止め機構7は、対向して近接離間するそれぞれの支柱3・3に第一アーム体7a及び第二アーム体7bの基端部が回動可能に支持されるとともに、第一アーム体7a及び第二アーム体7bの互いの先端部が相対回転可能に連結される。本実施形態において、一方の支柱3に形成された回動軸7cと、他方の支柱3に形成された第一ロックピンP1とは、同じ上下位置に形成されている。
【0040】
第二アーム体7bは図示しないストッパにより第一アーム体7aに対する角度領域が規制されている。具体的には、第二アーム体7bは、回転連結部7dを中心として第一アーム体7aに近接した状態から反時計回り方向の角度が約185度に開く状態まで回動可能とされている。そして、脚立状態の脚立1において、第一アーム体7a及び第二アーム体7bは自然状態においては自重により回転連結部7dが下方に位置するため、
図4に示す如く相対角度が約185度となる。これにより、回転連結部7dは第一アーム体7a及び第二アーム体7bの両端部(回動軸7c及び第一ロックピンP1)よりも下方に位置するとともに、当該位置よりも下方への変位が規制される。
【0041】
このように、脚立1を脚立状態とする場合は、支柱3・3を開き止め機構7により連結することにより、梯子体2・2のなす角度を約30度で固定する。この際、梯子体2・2に対して、梯子体2・2を近接させる回動方向に力が加わった場合でも、回転連結部7dが第一アーム体7a及び第二アーム体7bの両端部よりも下方に位置するとともに、回転連結部7dの当該位置よりも下方への変位が規制されているため、梯子体2・2は相対回転しない。
【0042】
また、梯子体2・2に対して、梯子体2・2を離間させる回動方向に力が加わった場合も、支柱3・3が開き止め機構7で連結されているため、梯子体2・2は相対回転しない。このため、梯子体2・2のなす角度は約30度のままであり、脚立1は脚立状態を維持する。なお、係合端部7eと第一ロックピンP1との係合状態を解除する際には、使用者が係合部材7fをねじりバネ7hの付勢力に抗して変位させることにより、第一ロックピンP1から係合端部7eを離脱させることができるようになる。
【0043】
脚立1を閉状態とする場合は
図2に示す如く、開き止め機構7の係合端部7eを第一ロックピンP1に係合させた状態で、第一アーム体7a又は第二アーム体7bを、第一アーム体7aと第二アーム体7bとの下側に形成される角度が180度以下となるように回動させる。具体的には、回転連結部7dに対して下方から力を加え、回転連結部7dが上方に変位するように第一アーム体7aと第二アーム体7bとを相対回転させる。これにより、梯子体2・2の角度規制が解除され、梯子体2・2のなす角度が約30度よりも小さくなるように梯子体2・2を回動させることができる。そして、梯子体2・2のなす角度を約0度とすることにより、脚立1が閉状態となる。このように、脚立状態の際に回転連結部7dを上方に変位させて、第一アーム体7aと第二アーム体7bとからなるアーム部材を屈曲することにより、脚立1は梯子体2・2が近接した閉状態となる。
【0044】
なお、脚立1を梯子状態とする場合は、開き止め機構7における係合端部7eの第一ロックピンP1への係合を解除し、梯子体2・2のなす角度を約180度に開いた状態で、係合端部7eを支柱3の上端部に形成された第二ロックピンP2に係合させる。このように、支柱3・3を開き止め機構7により連結することにより、梯子体2・2のなす角度を約180度で固定するのである。この際、梯子体2・2に対して、梯子体2・2のなす角度が変わる方向に力が加わった場合でも、回動軸7c、回転連結部7d、及び係合端部7eが一直線上に配置されているため、第一アーム体7aと第二アーム体7bとは相対回転しない。このため、梯子体2・2のなす角度は約180度のままであり、脚立1は梯子状態を維持する。
【0045】
上記の如く、本実施形態に係る脚立1は梯子兼用脚立として構成されているため、開き止め機構7における第二アーム体7bの基端部に係合端部7eを設け、第二アーム体7bを支柱3の第一ロックピンP1及び第二ロックピンP2に対して着脱可能としている。但し、脚立1を専用脚立として構成した場合は、第二アーム体7bの基端部を支柱3における第一ロックピンP1の位置に回動可能かつ着脱不能に連結する構成とすることも可能である。
【0046】
本実施形態に係る脚立1において、開き止め機構7は、脚立1が脚立状態の際に梯子体2・2における相対変位の規制を解除する、規制解除部8を備える。
図4から
図6に示す如く、本実施形態において規制解除部8は後側の梯子体2の上部における前面に設けられる。規制解除部8は、後側の梯子体2における左右両側の支柱3・3の前端面に設けられるガイド部材81・81と、ガイド部材81・81に左右両端部が支持されてガイド部材81・81の間に架け渡される棒状の規制解除部材82と、を備える。
【0047】
図5及び
図6に示す如く、ガイド部材81は支柱3の長手方向に沿って設けられる長尺の部材である。ガイド部材81はリベット(又はスナップフィット)を介して支柱3に組付けられる。ガイド部材81における左右方向内側の面には、長手方向に沿ってガイド溝81aが形成される。また、ガイド部材81の下端部には、ガイド部材81を左右方向に貫通する連通孔81bが開口されている。
【0048】
規制解除部材82は金属製の棒状部材が折り曲げられることにより、係合部82a・82a、操作部82b、及び、連係部82c・82cが一体的に形成された部材である。規制解除部材82は、両端部に形成された係合部82a・82aが、連係部82c・82cを介して、中央部に形成された操作部82bと連結されて構成される。本実施形態においては規制解除部材82を一体的に構成することにより、簡易な構成で規制解除部8を設けることを可能としている。
【0049】
それぞれの係合部82a・82aは、
図4及び
図7に示す如く、脚立1が脚立状態の際に、梯子体2の左右両側に設けられたそれぞれのアーム部材における第一アーム体7a又は第二アーム体7bの下方に配置される。具体的には
図4に示す如く、脚立1の左側に延出される係合部82aは、左側に設けられた開き止め機構7の第一アーム体7aの下方に配置される。一方、
図5から
図9に示す如く、脚立1の右側に延出される係合部82aは、右側に設けられた開き止め機構7の第二アーム体7bの下方に配置される。
【0050】
操作部82bは
図7に示す如く、脚立1が脚立状態の際に、天板5に近接する下側で天板5の長手方向に沿って配置される。連係部82c・82cは、支柱3の長手方向に沿って配置されて、係合部82a・82aと操作部82bとを連係する。
【0051】
図5に示す如く、規制解除部材82は連係部82cがガイド溝81aに挿入されることにより、ガイド部材81に支持される。この際、係合部82a・82aはガイド部材81の連通孔81bを通じて左右方向外側に延出され、その先端部がアーム部材(第一アーム体7a及び第二アーム体7b)の下方に配置される。
【0052】
本実施形態に係る脚立1においては、脚立状態において規制解除部材82を操作することにより、脚立1を閉状態とすることができる。具体的には
図8に示す如く、使用者が天板5の下方に手を差し入れて、規制解除部材82の操作部82bを上方に変位させる。これにより、連係部82c・82c及び係合部82a・82aが上方に変位する。そして、係合部82a・82aが第一アーム体7a及び第二アーム体7bを上方に回動させてアーム部材を屈曲させる。
【0053】
即ち、係合部82aを上方に変位させることにより、回転連結部7dが上方に変位するように第一アーム体7aと第二アーム体7bとを相対回転させる。これにより、梯子体2・2の角度規制が解除され、梯子体2・2のなす角度が約30度よりも小さくなるように梯子体2・2を回動させることができる。そして、
図9に示す如く使用者が天板5を下から支えることにより、梯子体2・2は自重により互いに近接してその相対角度が約0度となり、脚立1が閉状態となる。
【0054】
このように、脚立1が脚立状態の際に使用者が操作部82bを操作する動作を行うことにより、脚立1を閉状態とすることができる。また、使用者は操作部82bを上方に操作する動作に連続して天板5を持ち上げることができる。即ち、脚立1の使用者は脚立状態から閉状態にする動作と、閉状態の脚立1を持ち上げる動作とをほぼ同時にワンタッチで行うことが可能となる。
【0055】
なお、脚立1が脚立状態の際に、規制解除部材における操作部を操作して連係部を回動変位させ、第一アーム体7aと第二アーム体7bとを相対回転させる構成とすることもできる。この構成によっても、梯子体2・2の角度規制が解除され、脚立1を閉状態とすることができる。
【0056】
上記の如く、本実施形態に係る脚立1において、開き止め機構7が備える規制解除部材82は、脚立1が脚立状態の際に梯子体2・2における相対変位の規制を解除する。これにより、使用者が片手で規制解除部材82を操作するだけで、脚立1を脚立状態から閉状態に変形することが可能となる。即ち、使用者が道具を持っている等、両手を使用することが困難な状況でも、脚立1を容易に脚立状態から閉状態に変形することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る脚立1によれば、規制解除部8の操作部82bを天板5の近傍に配置する構成としたが、連係部82cの形状等を変更することにより、操作部82bを踏桟4の近傍に配置する構成とすることも可能である。この場合、踏桟4の近傍で操作部82bを操作することができるため、脚立1が比較的長く天板5の位置が高くなる場合でも操作性を損なうことがない。
【0058】
また、規制解除部材82に複数の操作部及び連係部を設けること(例えば、係合部から複数の連結部を枝分かれさせ、それぞれに操作部を設ける等)により、複数の踏桟4又は天板5に沿って操作部を設ける構成とすることも可能である。また、梯子体2・2の両方に規制解除部8を設け、それぞれの梯子体2・2における複数の踏桟4又は天板5に沿って操作部を設ける構成とすることも可能である。この場合、双方の梯子体2・2における複数の踏桟4又は天板5の近傍で操作部82bを操作することができるため、脚立1の大きさや形状を問わず、高い操作性を実現することができる。
【0059】
このように、本実施形態に係る脚立1においては、規制解除部材82の形状を変更することにより、操作部82bの配置の自由度を高めることができる。即ち、比較的大きなサイズの脚立1において、開き止め機構7が使用者の手の届きにくい高さにある場合でも、操作部82bを使用者の手の近傍に配置することができる。即ち、本実施形態に係る脚立1によれば、脚立1の大きさに関わらず、開き止め機構7及び規制解除部8を設けることが可能となる。
【0060】
また、本実施形態に係る脚立1によれば、脚立1が脚立状態の際に、規制解除部材82における操作部82bを上方に変位させることにより、係合部82aが上方に変位して第一アーム体7a及び第二アーム体7bを上方に回動させ、アーム部材を屈曲させる。このように、脚立1が脚立状態の際に使用者が操作部82bを操作する動作を行うことにより、脚立1を閉状態とすることができるため、使用者は操作部82bを上方に操作する動作に連続して天板5を持ち上げる動作を行うことができる。
【0061】
なお、規制解除部材82の係合部82aは、第一アーム体7a又は第二アーム体7bの何れの下方に配置する構成とすることも可能である。即ち、係合部82aが上方に変位してアーム部材を屈曲させる構成であれば、第一アーム体7a又は第二アーム体7bの何れの下方に係合部82aを配置する構成でも差し支えない。
【0062】
また、本実施形態における規制解除部材82は棒状部材により係合部82a・82a、操作部82b、及び、連係部82c・82cが一体的に構成されているが、規制解除部材の構成は本実施形態に限定されるものではない。
【0063】
例えば、規制解除部材において操作部、連係部、及び係合部を別部材で構成して互いに連結し、使用者が操作部を操作することにより係合部がアーム部材を押し上げて開き止め機構7による規制を解除する構成とすることもできる。この際、使用者が操作部を引き寄せる(前側又は後側に引っ張る)ことにより係合部がアーム部材を押し上げる構成とすることもできる。但し、操作部を操作する動作と天板を持ち上げる動作とを連続して行うことができるという観点からは、本実施形態の如く、操作部82bを上方に操作する構成とすることが好ましい。
【0064】
また、操作部及び連係部を紐体で構成し、係合部を支柱3に回動可能に備え付け、係合部を連係部及び操作部の端部に連結することもできる。本構成によれば、使用者が操作部を引っ張ると、係合部がアーム部材を下方から押し上げて屈曲させるのである。このように、操作部の操作により係合部が開き止め機構7の規制を解除する構成であれば、規制解除部8と異なる構成であっても、脚立1に採用することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る脚立1によれば、規制解除部材82において、連係部82c・82cは操作部82bの両端に設けられ、係合部82a・82aは二組のアーム部材を屈曲可能に規制解除部材82の両端部に設けられる。これにより、脚立1の使用者は操作部82bを一回操作するだけで、左右両側の開き止め機構7の規制を解除することができる。即ち、使用者が片手で規制解除部材82を操作するだけで脚立状態から閉状態とすることができるため、脚立1をより容易に脚立状態から閉状態とすることができる。
【0066】
なお、脚立1において、規制解除部材を左右の開き止め機構7のそれぞれに別々に設ける構成としても良い。この場合、それぞれの規制解除部材を操作することにより、脚立1を脚立状態から閉状態とすることができる。
【0067】
また、本実施形態に係る脚立1によれば、一方の梯子体2にのみ規制解除部8を設ける構成としたが、梯子体2・2の両方に規制解除部8を設けることも可能である。この場合、前側と後側の何れの天板5の近傍においても操作部82bを操作することができる。
【0068】
また、本実施形態に係る脚立1によれば、規制解除部材82を操作せずに、使用者が直接的に開き止め機構7を操作して、脚立1を脚立状態から閉状態とすることも可能である。具体的には、使用者が自らの手で回転連結部7dに対して下方から力を加え、回転連結部7dが上方に変位するように第一アーム体7aと第二アーム体7bとを相対回転させる。これにより、梯子体2・2の角度規制が解除され、梯子体2・2のなす角度が約30度よりも小さくなるように梯子体2・2を回動させることができ、脚立1が閉状態となる。このように、本実施形態に係る脚立1の使用者は、規制解除部材82と開き止め機構7との何れを操作した場合でも、脚立1を脚立状態から閉状態へと変形させることができる。
【0069】
また、本実施形態に係る脚立1によれば、規制解除部8の操作部82bは天板5に沿って同じ高さで形成されているが、操作部を屈曲させて形成することにより、天板5の下端面との高さ方向の相対位置を、長手方向位置によって変えることもできる。具体的には、操作部に低位置の変位許容部と、高位置の変位不能部と、を形成する。そして、脚立状態の際に、変位許容部を近接する天板5(又は踏桟4)の下端面よりも下側に位置させて、使用者による下方からの操作で上方に変位させることを可能とする。一方、変位不能部を近接する天板5(又は踏桟4)の下端面よりも上側に位置することにより、使用者による下方からの操作で上方に変位させることを不能とする。
【0070】
これにより、使用者が天板5において変位不能部に相当する部分を持った際は、脚立1を脚立状態のまま持ち上げることができる。即ち、本構成によれば、短い距離で脚立状態の脚立1を移動させる場合に、脚立1をその度に閉状態に変形することなく、天板5を支持して脚立1を持ち上げることが可能となる。
【符号の説明】
【0071】
1 脚立 2 梯子体
3 支柱 3a 端具
4 踏桟 5 天板
6 ヒンジ 6a 第一ヒンジ部
6b 第二ヒンジ部 6c 回動支持部
7 開き止め機構 7a 第一アーム体
7b 第二アーム体 7c 回動軸
7d 回転連結部 7e 係合端部
7f 係合部材 7g 係合孔
7h ねじりバネ 8 規制解除部
81 ガイド部材 81a ガイド溝
81b 連通孔 82 規制解除部材
82a 係合部 82b 操作部
82c 連係部 A 回動軸
P1 第一ロックピン P2 第二ロックピン