(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法、プログラムおよび製造実行システム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20230105BHJP
B22F 10/60 20210101ALI20230105BHJP
B22F 10/80 20210101ALI20230105BHJP
B22F 12/82 20210101ALI20230105BHJP
B29C 64/188 20170101ALI20230105BHJP
B33Y 40/20 20200101ALI20230105BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20230105BHJP
【FI】
B29C64/386
B22F10/60
B22F10/80
B22F12/82
B29C64/188
B33Y40/20
B33Y50/00
(21)【出願番号】P 2021085706
(22)【出願日】2021-05-20
【審査請求日】2021-12-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519321683
【氏名又は名称】株式会社3D Printing Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【氏名又は名称】北出 英敏
(72)【発明者】
【氏名】古賀 洋一郎
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-100445(JP,A)
【文献】特開2019-214183(JP,A)
【文献】特開2020-001302(JP,A)
【文献】特開2020-183105(JP,A)
【文献】国際公開第2020/194916(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0368759(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0356707(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/00-12/90
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アディティブマニュファクチャリング技術を利用する第1工程と、アディティブマニュファクチャリング技術とは異なる製造技術を用いて前記第1工程の結果物に対して所定処理を実行する第2工程とを含む製造工程により製造される立体物の立体物形状を決定するための情報を有する立体物情報
、並びに前記第1工程を実行可能な複数の第1設備及び前記第2工程を実行可能な複数の第2設備を記憶する1以上の記憶装置と、
前記立体物情報を取得すると、決定処理
、情報調整処理
、及び選択処理を実行する演算回路と、
を備え、
前記決定処理は、取得した前記立体物情報に基づいて、前記立体物の製造に使用する前記製造工程を決定し、
前記情報調整処理は、決定された第2工程で実行される前記所定処理の内容に基づいて、前記立体物を作製するための前記結果物の目標形状を前記立体物情報から決定し、前記立体物情報を、前記結果物の目標形状を決定するための情報を有する造形物情報に変換
し、
前記立体物情報から前記造形物情報への変換に関する調整情報を前記記憶装置に格納し、
前記選択処理は、前記調整情報及び前記製造工程に基づいて、前記複数の第1設備の中から、決定された第1工程を実行する第1設備を選択し、かつ、前記複数の第2設備の中から、前記決定された第2工程を実行する第2設備を選択する、
情報処理システム。
【請求項2】
前記調整情報は、前記立体物情報を前記造形物情報に変換する際に実行された処理が適用された領域の情報を含み、前記選択処理は、前記領域に対して前記所定処理を実行できる前記第2設備を選択する、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記情報調整処理は、前記立体物形状を前記所定処理での形状変化を補償するように修正することによって前記結果物の目標形状を決定する、請求項1または請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記形状変化は、前記所定処理による前記結果物の寸法の減少を含み、
前記結果物の目標形状は、前記寸法の減少により前記立体物形状に対応する形状となるように決定される、請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記形状変化は、前記所定処理による前記結果物の寸法の増加を含み、
前記結果物の目標形状は、前記寸法の増加により前記立体物形状に対応する形状となるように決定される、請求項3または請求項4に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記形状変化は、前記所定処理による前記結果物の変形を含み、
前記結果物の目標形状は、前記変形により前記立体物形状に対応する形状となるように決定される、請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記情報調整処理は、前記立体物形状に前記所定処理において前記立体物の固定に利用される固定形状を付加することによって前記結果物の目標形状を決定する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記情報調整処理は、前記立体物と、前記所定処理において前記立体物の固定に利用される前記立体物とは別体の補助具とが前記第1工程で形成されるように前記結果物の目標形状を決定する、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記情報調整処理は、
前記立体物形状が前記第1工程の設備による製造に適するかどうかを判定し、
前記立体物形状が前記第1工程の設備による製造に適しない場合は、前記立体物形状を前記第1工程の設備による製造に適した形状に補正して得られる形状をもとに前記結果物の目標形状を決定し、
前記立体物形状が前記第1工程の設備による製造に適する場合は、前記立体物形状をもとに前記結果物の目標形状を決定する、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項10】
1以上の記憶装置にアクセス可能な演算回路により実行される情報処理方法であって、
前記1以上の記憶装置は、アディティブマニュファクチャリング技術を利用する第1工程と、アディティブマニュファクチャリング技術とは異なる製造技術を用いて前記第1工程の結果物に対して所定処理を実行する第2工程とを含む製造工程により製造される立体物の立体物形状を決定するための情報を有する立体物情報
、並びに前記第1工程を実行可能な複数の第1設備及び前記第2工程を実行可能な複数の第2設備を記憶し、
前記情報処理方法は、
前記立体物情報を取得すると、取得した前記立体物情報に基づいて、前記立体物の製造に使用する前記製造工程を決定する決定処理と、
決定された第2工程で実行される前記所定処理の内容に基づいて、前記立体物を作製するための前記結果物の目標形状を前記立体物情報から決定し、前記立体物情報を、前記結果物の目標形状を決定するための情報を有する造形物情報に変換
し、前記立体物情報から前記造形物情報への変換に関する調整情報を前記記憶装置に格納する情報調整処理と、
前記調整情報及び前記製造工程に基づいて、前記複数の第1設備の中から、決定された第1工程を実行する第1設備を選択し、かつ、前記複数の第2設備の中から、前記決定された第2工程を実行する第2設備を選択する選択処理と、を含む、
情報処理方法。
【請求項11】
請求項10に記載の情報処理方法を、前記演算回路に実行させるための、プログラム。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一つに記載の情報処理システムと、
前記情報処理システムからの前記造形物情報に基づいて前記立体物の製造を実行させる実行システムと、
を備える、
製造実行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理システム、情報処理方法、当該方法を実行するためのプログラム、および製造実行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、アディティブマニュファクチャリング技術を利用して製造される立体物の製造工程を容易に決定可能とするための工程決定支援装置を開示する。特許文献1に開示された工程決定支援装置は、材料を付加する加工装置と材料を除去する加工装置とを含む複数の加工装置について、各加工装置の加工性能を示す加工性能データを格納する加工性能データ格納部と、加工性能データを參照して、複数の加工装置のいずれかの加工装置の組み合わせによる加工工程を順序付けて割り当てることによって、製品を製造可能な加工工程の組み合わせである工程パターンを生成する工程パターン生成部と、工程パターン生成部によって生成された工程パターンの内容を出力する出力部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された工程決定支援装置は、立体物の製造工程を容易に決定可能とするが、アディティブマニュファクチャリング技術を利用する工程の処理の結果物の形状と、アディティブマニュファクチャリング技術とは異なる製造技術を利用する工程の処理の結果物の形状との差異については何ら考慮されていない。したがって、製造を要望されている立体物の形状に基づいて、作業者が、製造工程を考慮して形状を修正する必要があった。当該修正は、経験または知識が必要となる場合があるため、作業者によっては形状の修正は困難となり得る。また、アディティブマニュファクチャリング技術を利用する立体物は、種々の形状を有し得る。そのような種々の形状を有する立体物を、立体物ごとに上記のような修正を行うには、多くの工数が必要となり得る。そのため、立体物の製造数が増加した場合、作業者が各立体物を修正するのは困難となる可能性があった。
【0005】
本開示は、立体物の形状を示す情報を有する立体物情報に基づいて、アディティブマニュファクチャリング技術を用いた製造工程より後に実行される製造工程を考慮した形状を示す情報を自動的に生成する情報処理システム、情報調整方法、プログラムおよび製造実行システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の情報処理システムは、アディティブマニュファクチャリング技術を利用する第1工程と、アディティブマニュファクチャリング技術とは異なる製造技術を用いて前記第1工程の結果物に対して所定処理を実行する第2工程とを含む製造工程により製造される立体物の立体物形状を決定するための情報を有する立体物情報を記憶する1以上の記憶装置と、情報調整処理を実行する演算回路と、を備え、前記情報調整処理は、前記第2工程で実行される前記所定処理の内容に基づいて、前記立体物情報を、前記結果物の目標形状を決定するための情報を有する造形物情報に変換する。
【0007】
本開示の情報処理方法は、1以上の記憶装置にアクセス可能な演算回路により実行される情報処理方法であり、前記1以上の記憶装置は、アディティブマニュファクチャリング技術を利用する第1工程と、アディティブマニュファクチャリング技術とは異なる製造技術を用いて前記第1工程の結果物に対して所定処理を実行する第2工程とを含む製造工程により製造される立体物の立体物形状を決定するための情報を有する立体物情報を記憶し、前記情報処理方法は、前記第2工程で実行される前記所定処理の内容に基づいて、前記立体物情報を、前記結果物の目標形状を決定するための情報を有する造形物情報に変換する情報調整処理を含む。
【0008】
本開示に係るプログラムは、コンピュータの演算回路に本開示に係る情報処理方法を実行させるためのプログラムである。
【0009】
本開示の製造実行システムは、情報処理システムと、前記情報処理システムからの前記造形物情報に基づいて前記立体物の製造を実行させる実行システムと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、立体物の形状を示す情報を有する立体物情報に基づいて、アディティブマニュファクチャリング技術を用いた製造工程より後に実行される製造工程を考慮した形状を示す情報を自動的に生成する情報処理システム、情報調整方法、プログラムおよび製造実行システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施の形態に係る製造システムの構成例のブロック図
【
図2】
図1の製造システムの製造実行システムの構成例のブロック図
【
図3】
図1の製造システムの管理システムの構成例のブロック図
【
図4】
図1の製造システムの端末装置の構成例のブロック図
【
図5】
図1の製造システムの動作の一例のフローチャート
【
図6A】製造実行システムの情報処理システムによる補正処理前の立体物の断面図
【
図6B】製造実行システムの情報処理システムによる補正処理後の立体物の断面図
【
図7】
図1の製造システムの動作の一例のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する構成は、本開示の一例に過ぎず、本開示は下記の実施の形態に限定されることはなく、当該実施の形態以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0013】
図1は、実施の形態の一例に係る製造システム1の構成例のブロック図である。製造システム1は、アディティブマニュファクチャリング技術を利用した立体物の製造のためのシステムである。
【0014】
立体物は、実体のある物(有体物)を想定している。立体物は、食器、文房具、装身具、家具、工具、電化製品、乗り物等の種々の製品や試作品であってもよい。立体物は、完成品に限らず、部品であってもよい。完成品の例としては、コップ、ねじ、コンテナが上げられる。部品の例としては、自動車および航空機の基幹部品(ピストン、シリンダヘッド)やスペアパーツが挙げられる。
【0015】
製造システム1は、複数の施設3にある複数の設備5を利用して、立体物の製造を可能とする。施設3は、少なくとも一つの設備5が設置され、設備5による作業が可能な場所を想定している。施設3は、建物だけではなく、建物とその建物が存在する敷地とを含んでもよい。施設3の例としては、工場、店舗、ビル(ビル全体、フロア内)が挙げられる。施設3は、非住宅施設に限定されず、戸建住宅および集合住宅等の住宅施設であってもよい。
【0016】
複数の設備5は、アディティブマニュファクチャリング技術を利用する1以上の設備(以下、必要に応じて「主設備」という)と、アディティブマニュファクチャリング技術とは異なる製造技術を利用する1以上の設備(以下、必要に応じて「副設備」という)とを含む。主設備は、3Dプリンタおよび3Dプリンタ複合機等の付加製造設備を想定している。アディティブマニュファクチャリング技術による造形方法は特に限定されないが、例えば、国際標準化団体のASTMインターナショナルが規定する材料押出(material extrusion)、液槽光重合(vat photopolymerization)、材料噴射(material jetting)、結合剤噴射(binder jetting)、粉末床溶融結合(powder bed fusion)、シート積層(sheet lamination)、指向性エネルギ堆積(directed energy deposition)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。3Dプリンタは、複数の造形方法を選択的又は並列的に実行可能であってよい。3Dプリンタ複合機は、3Dプリンタの機能を含む複数の機能を有する装置を想定している。例えば、3Dプリンタ複合機は、副設備と同様にアディティブマニュファクチャリング技術とは異なる製造技術を利用可能であってよい。副設備は、付加製造設備を除く製造設備、すなわち、既存の製造設備を想定している。アディティブマニュファクチャリング技術とは異なる製造技術の例としては、サブトラクティブマニュファクチャリング(除去製造)技術、フォーマティブ(フォーミング)マニュファクチャリング技術(射出成形、押出成形等)、表面処理技術(コーティング、塗装、メッキ、研磨等)、熱処理技術(焼結、冷却等)、接合技術(超音波接合、熱溶着、機械的接合、接着等)、組立技術(部品の組み立て、微細転写(インプリント)、含浸(インプリグネーション)等)が挙げられる。サブトラクティブマニュファクチャリングの例としては、切削加工、研削加工、放電加工、鋳造加工、ダイキャスト加工、プレス加工、鍛造加工、板金加工が挙げられる。
【0017】
本実施の形態では、立体物の製造工程が、アディティブマニュファクチャリング技術を利用する1以上の第1工程、及び、アディティブマニュファクチャリング技術とは異なる製造技術を利用する1以上の第2工程を少なくとも含むことを想定している。製造工程は、第1工程及び第2工程のいずれにも分類されないその他の工程を含んでいてもよい。第1工程は、立体物の一部又は全部の造形を行う工程であってよい。第1工程は、予め用意された基礎(例えば、基板等)に立体物の一部又は全部の造形を行うことも含む。立体物の一部の造形は、立体物の複数のパーツの一つの全部又は途中までの造形、及び、立体物の途中までの造形を含む。製造工程は、複数の異なる第1工程を含んでもよい。例えば、複数の第1工程が異なるアディティブマニュファクチャリング技術を利用する場合、これらは複数の異なる第1工程であるといえる。第2工程は、第1工程で得られた造形物を対象とする工程であってよい。第2工程は、少なくとも一つの第1工程の後に実行されてよい。なお、製造工程が複数の第1工程を含む場合、第2工程は、複数の第1工程の間に実行され得る。第2工程は、第1工程で途中まで造形された立体物を更に加工して完成品にする工程であってよい。第2工程は、第1工程で最後まで造形された立体物に表面処理や熱処理を施して完成品にする工程であってよい。第2工程は、1以上の第1工程で造形された複数のパーツから立体物を組み立てる工程であってよい。製造工程は、複数の異なる第2工程を含んでもよい。例えば、複数の第2工程が異なる製造技術を利用する場合、これらは複数の異なる第2工程であるといえる。本実施の形態では、1以上の第1工程を実行可能な設備5を「第1設備」といい、必要に応じて符号51を付す。第1工程はアディティブマニュファクチャリング技術を利用する工程であるから、第1設備51は、上述の主設備から選択される。1以上の第2工程を実行可能な設備5を「第2設備」といい、必要に応じて符号52を付す。第2工程はアディティブマニュファクチャリング技術とは異なる製造技術を利用する工程であるから、第2設備52は、上述の副設備から選択される。
【0018】
図1に示すように、製造システム1は、製造実行システム2と、1以上の施設3と、1以上の端末装置6とを備える。製造実行システム2は、情報処理システム2Aと、実行システム2Bとを備える。施設3は、管理システム4と、1以上の設備5とを備える。
図2は、製造実行システム2の構成例のブロック図である。
図3は、管理システム4の構成例のブロック図である。
図4は、端末装置6の構成例のブロック図である。
図5は、製造システム1の動作の一例のフローチャートである。
図2に示すように、製造実行システム2は、記憶装置23と、演算回路24とを備える。記憶装置23は、立体物情報D11と、造形物情報D12と、製造工程情報D14と、設備情報D15とを記憶する。立体物情報D11は、アディティブマニュファクチャリング技術を利用して製造される立体物の形状を決定するための情報を含む。造形物情報D12は、第1工程の第1設備51によって造形される造形物の形状を決定するための情報(形状情報)を含む情報である。製造工程情報D14は、立体物情報D11に基づいて決定される立体物の製造工程を示す。製造工程は、アディティブマニュファクチャリング技術を利用する1以上の第1工程およびアディティブマニュファクチャリング技術とは異なる製造技術を利用する1以上の第2工程を少なくとも含む。設備情報D15は、製造システム1で利用可能な設備5のリストである。演算回路24は、決定処理と、情報調整処理と、選択処理と、実行処理とを実行する。決定処理は、立体物情報D11に基づいて立体物の製造工程を決定して製造工程情報D14を生成する。情報調整処理は、製造工程情報D14に含まれる1以上の第2工程に基づいて、立体物情報D11を、第1工程の結果物の目標形状を決定するための情報を有する造形物情報D12に変換する。選択処理は、造形物情報D12、製造工程情報D14および設備情報D15を参照して、1以上の第1設備51および1以上の第2設備52を抽出し、選択する。これにより、演算回路24は、立体物を生成するための形状、設備等を特定することができる。実行処理は、選択処理で選択された1以上の第1設備51および1以上の第2設備52を用いて製造工程情報D14にしたがって立体物を製造するための指示を出力する。これにより、演算回路24は、1以上の管理システム4に製造するための指示を送信し、1以上の施設3を用いて、立体物を製造することができる。
【0019】
このように、製造実行システム2は、情報処理システム2Aにより、立体物情報D11に基づいて立体物の製造工程(1以上の第1工程および1以上の第2工程)を決定して製造工程情報D14を生成する。情報処理システム2Aは、製造工程情報D14に含まれる1以上の第2工程に基づいて、立体物情報D11を、第1工程の結果物の目標形状を決定するための情報を有する造形物情報D12に変換する。情報処理システム2Aは、造形物情報D12、製造工程情報D14および設備情報D15を参照して、1以上の第1設備51および1以上の第2設備52を抽出し、選択する。製造実行システム2は、実行システム2により、選択された第1設備51および第2設備52を用いて製造工程情報D14にしたがって立体物を製造するための指示を出力する。したがって、製造実行システム2によれば、立体物の形状を示す情報を有する立体物情報に基づいて、アディティブマニュファクチャリング技術を用いた製造工程より後に実行される製造工程を考慮した形状を示す情報を自動的に生成することができる。
【0020】
(製造システム)
以下、本実施の形態の製造システム1について詳細に説明する。製造システム1は、
図1に示すように、製造実行システム2と、1以上の管理システム4と、1以上の端末装置6とを備える。製造実行システム2は、1以上の管理システム4と通信ネットワーク71を介して通信可能に接続される。製造実行システム2は、1以上の端末装置6と通信ネットワーク72を介して通信可能に接続される。
【0021】
(製造実行システム)
図2に示すように、製造実行システム2は、インタフェース装置(入出力装置21および通信回路22)と、記憶装置23と、演算回路24とを備える。製造実行システム2は、例えば1台の端末装置またはサーバ装置で実現され得る。端末装置は、パーソナルコンピュータ(デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ)、携帯端末(スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末等)等により実現され得る。
【0022】
製造実行システム2は、情報処理システム2Aおよび実行システム2Bを備える。情報処理システム2Aおよび実行システム2Bはそれぞれ、インタフェース装置(入出力装置21および通信回路22)と、記憶装置23と、演算回路24とにより実現される。
【0023】
入出力装置21は、ユーザからの情報の入力のための入力装置、およびユーザへの情報の出力のための出力装置としての機能を有する。入出力装置21は、1以上のヒューマン・マシン・インタフェースを備える。ヒューマン・マシン・インタフェースの例としては、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、トラックボール等)、タッチパッド等の入力装置、ディスプレイ、スピーカ等の出力装置、タッチパネル等の入出力装置が挙げられる。
【0024】
通信回路22は、有線または無線により装置またはシステムと通信回線を介して接続するためのインタフェース装置である。当該インタフェース装置は、例えば、USB(登録商標)またはイーサネット(登録商標)等の有線通信規格に準拠した通信を行うことが可能である。または、インタフェース装置は、例えばWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、携帯電話回線等の無線通信規格に準拠した通信を行うことが可能である。
【0025】
記憶装置23は、種々の情報を記憶できる記憶媒体である。記憶装置23は、例えば通信回路22が受信した立体物情報D11を格納し、演算回路24は、当該情報を利用することができる。記憶装置23は、例えばDRAMやSRAM、フラッシュメモリ等のメモリ、HDD、SSD、その他の記憶デバイスまたはそれらを適宜組み合わせて実現される。記憶装置23は、上述しているように、情報処理システム2Aが演算回路24によって実行する各種の処理を実現するためのプログラムを格納する。
【0026】
記憶装置23に格納される情報は、立体物情報D11と、造形物情報D12と、補正立体物情報D13と、製造工程情報D14と、設備情報D15と、調整情報D16とを含む。立体物情報D11と、造形物情報D12と、補正立体物情報D13と、製造工程情報D14と、設備情報D15と、調整情報D16とは、情報処理システム2Aで利用される。造形物情報D12と、製造工程情報D14と、設備情報D15とは、実行システム2Bで利用される。
図2では、記憶装置23が、立体物情報D11と、造形物情報D12と、補正立体物情報D13と、製造工程情報D14と、設備情報D15と、調整情報D16との全てを記憶している状態を示している。立体物情報D11と、造形物情報D12と、補正立体物情報D13と、製造工程情報D14と、設備情報D15と、調整情報D16とは、常に記憶装置23に記憶されている必要はなく、演算回路24で必要とされるときに記憶装置23に記憶されていればよい。
【0027】
演算回路24は、製造実行システム2の動作を制御する回路である。また、演算回路24は、情報処理システム2Aおよび実行システム2Bの動作を制御する回路である。演算回路24は、入出力装置21および通信回路22に接続され、記憶装置23にアクセス可能である。演算回路24は、プログラムを実行することで所定の機能を実現するCPUまたはMPUのような汎用プロセッサを含む。演算回路24は、例えば記憶装置23に格納された演算プログラム等を呼び出して実行することにより、製造実行システム2、情報処理システム2Aおよび実行システム2Bにおける各種の処理を実現する。演算回路24は、ハードウェアとソフトウェアとが協働して所定の機能を実現する態様に限定されず、所定の機能を実現する専用に設計されたハードウェア回路でもよい。すなわち、演算回路24は、CPU、MPU以外にも、GPU、FPGA、DSP、ASIC等、種々のプロセッサで実現され得る。このような演算回路24は、例えば、半導体集積回路である信号処理回路で構成され得る。
【0028】
立体物情報D11は、立体物の形状を決定するための情報(形状情報)を含む情報である。立体物情報D11は、例えば、立体物の製造を依頼する依頼者によって与えられる。形状情報の例としては、立体物の形状を直接的に特定する情報と、立体物の形状を直接的に特定する情報と、立体物の形状を間接的に特定する情報とが挙げられる。立体物の形状を直接的に特定する情報の例としては、立体物の形状を表現した3Dデータ(例えば、3DCADデータ、3DCGデータ)が挙げられる。立体物の形状を間接的に特定する情報の例としては、立体物の形状の特性の要求値を含む情報が挙げられる。特性は、立体物がその形状によって実現する性質または性能である。立体物が車両や航空機のボディの一部であれば、特性としては、強度、空気抵抗、揚力が上げられる。立体物の形状の特性の要求値が与えられれば、要求値を満たす立体物の形状の設計が可能(設計空間を絞り込んで設計解を導くことが可能)であるから、立体物の形状を決定することができる。立体物情報D11は、形状情報に加えて、立体物の形状以外の属性を特定するための情報を必要に応じて含む。立体物の形状以外の属性は、大きさ、色彩、材料等を含んでよい。立体物情報D11は、製造工程の決定において優先すべき優先項目を示す優先情報を含んでもよい。優先項目の例としては、納期の短さ、品質、立体物の材料に関する情報(材料自体又は材料の特性等)、立体物の表面処理(塗装やコーティング等)、成功確率の高さ、製造コストが挙げられる。
【0029】
立体物情報D11は、形状について、重要度が高い領域を示す補正不可領域情報を備えることができる。例えば、立体物情報D11が有する情報によって示される立体物形状について、依頼者が製造を依頼する形状通りに製造されることを希望する部位がある場合、当該部位を重要度が高い領域として指定することで、後述する補正処理において、形状が自動的に変更されるのを防ぐことができる。つまり、立体物情報D11は、形状に関して変更不可の領域に関する情報を備えることができる。また、立体物情報D11は、形状について変更可能な領域を示す補正可能領域情報を備えてもよい。立体物情報D11がそのような情報を備えるように構成される場合、演算回路24は、後述する補正処理において、立体物情報D11に含まれる情報が示す立体物形状に関して、当該変更可能な領域の形状を変更することができる。優先情報は、補正不可領域情報および補正可能領域情報を含んでもよい。
【0030】
造形物情報D12は、第1工程の第1設備51によって造形される造形物の形状を決定するための情報(形状情報)を含む情報である。造形物情報D12は、例えば、立体物情報D11が有する情報によって示される形状を調整することで得られる形状を示す情報を有する。また、造形物情報D12は、補正立体物情報D13が有する情報によって示される形状を調整することで得られる形状を示す情報を有してもよい。造形物情報D12は、後述するように、演算回路24が立体物情報D11または補正立体物情報D13を変換することで生成され得る。
【0031】
補正立体物情報D13は、アディティブマニュファクチャリング技術を利用する第1工程の設備による製造に適した形状を示す情報である。補正立体物情報D13は、立体物情報D11に含まれる情報が示す形状がアディティブマニュファクチャリング技術を利用する第1工程の設備による製造に適さない場合、当該形状を製造に適した形状に補正し、補正によって得られた形状を示す情報を有する。補正立体物情報D13は、後述するように、演算回路24が立体物情報D11を変換することで生成される。補正立体物情報D13は、製造され、依頼者が得られる立体物の形状を示す。
【0032】
製造工程情報D14は、立体物の製造工程を示す情報である。上述したように、製造工程は、複数の工程を含み、複数の工程は、アディティブマニュファクチャリング技術を利用する1以上の第1工程、及び、アディティブマニュファクチャリング技術とは異なる製造技術を利用する1以上の第2工程を少なくとも含む。製造工程は、立体物情報D11に基づいて決定される。本実施の形態では、演算回路24が、後述する決定処理S40によって、立体物情報D11から製造工程を決定して、製造工程情報D14を生成する。製造工程は、必要に応じて、品質確認工程を含む。品質確認工程は、品質の確認のための工程である。品質確認工程の例としては、第1工程の後に実行される品質確認工程(第1品質確認工程)と、第2工程の後に実行される品質確認工程(第2品質確認工程)とが挙げられる。第1品質確認工程では、例えば、第1工程により得られた造形物の形状を確認する。第2品質確認工程では、例えば、第2工程での加工や処理、組み立て結果を確認する。製造工程は、必要に応じて、輸送工程を含む。輸送工程は、立体物に関する輸送のための工程である。輸送工程は、立体物(又は立体物の製造途中の造形物)の一部又は全部の輸送の工程であり得る。立体物の一部の輸送の工程は、立体物が複数のパーツで構成される場合に、立体物の複数のパーツの一つを輸送する工程である。輸送の例としては、設備5間の輸送と、設備5から立体物の届け先への輸送とが挙げられる。設備5間の輸送は、第1設備51と第2設備52との間の輸送、第1設備51間の輸送、及び第2設備52間の輸送を含む。
【0033】
設備情報D15は、製造システム1で利用可能な設備5のリストである。設備情報D15は、アディティブマニュファクチャリング技術を利用する設備(主設備)のリスト(第1リスト)と、アディティブマニュファクチャリング技術とは異なる製造技術を利用する設備(副設備)のリスト(第2リスト)とを含む。第1リストは、各主設備の属性情報を含む。属性情報は、例えば、主設備で実行可能な工程と、主設備で利用できる材料と、主設備が造形可能な物のサイズと、主設備の場所(例えば、主設備のある施設3の地理的な場所)と、を含む。主設備で実行可能な工程は、例えば、アディティブマニュファクチャリング技術による造形方法を用いた工程である。主設備で利用できる材料は、合成樹脂、金属等種々あり、造形方法によって使用できる材料が制限される場合もある。第2リストは、各副設備の属性情報を含む。属性情報は、例えば、副設備で実行可能な工程と、副設備の場所(例えば、副設備のある施設3の地理的な場所)と、を含む。副設備で実行可能な工程は、例えば、アディティブマニュファクチャリング技術とは異なる製造技術、例えば、サブトラクティブマニュファクチャリング技術、フォーマティブマニュファクチャリング技術、表面処理技術、熱処理技術、接合技術、組立技術を用いた工程である。
【0034】
調整情報D16は、立体物情報D11を造形物情報D12に変換する際に行った処理の内容を示す情報である。調整情報D16は、例えば、後述する情報調整処理または調整処理において生成される。調整情報D16は、後述する判定処理および補正処理によって実行された処理内容を示す情報を有してもよい。調整情報D16に含まれる情報としては、立体物情報D11または補正立体物情報D13を造形物情報D12に変換する際に実行された処理、当該処理を行う要因となった第2工程における所定処理、および立体物形状に対して当該処理が実行された領域等が含まれ得る。演算回路24は、後述する選択処理において、調整情報D16を参照して、1以上の第1工程を実行する1以上の特定の第1設備51および1以上の第2工程を実行する1以上の特定の第2設備52を抽出することができる。
【0035】
記憶装置23は、例えば、利用スケジュール情報を有してもよい。利用スケジュール情報は、製造システム1で利用可能な設備5の利用のスケジュールを示す。例えば、製造システム1で利用可能な設備5から、第1工程を実行可能な第1設備51及び第2工程を実行可能な第2設備52が選択される。利用スケジュール情報は、第1工程を実行可能な第1設備51の利用のスケジュール及び第2工程を実行可能な第2設備52の利用のスケジュールを示す。設備5の利用のスケジュールは、任意の単位時間を基準にして定めることができる。一例として、設備5の利用のスケジュールは1時間単位で設定され得る。単位時間は、1時間に限定されず、15分、30分、6時間、12時間、1日等であってもよい。設備5の利用のスケジュールは、設備5自体の利用スケジュールであってもよいが、設備5自体の利用スケジュールと設備5を操作できる人(作業者)の利用スケジュールとの組み合わせであってもよい。例えば、ある時間帯において、設備5自体は使用されていなくても、設備5を操作できる人がいなければ、設備5は利用不可であるとしてよい。演算回路24は、後述する選択処理において、利用スケジュール情報を参照して、製造物の納期に応じて利用する設備を選択することができる。
【0036】
(管理システム)
図3に示すように、管理システム4は、例えばコンピュータ、またはスマートフォン等の携帯端末等により実現できる。管理システム4は、インタフェース装置(入出力装置41および通信回路42)と、記憶装置43と、演算回路44とを備える。管理システム4は、例えば、1台の端末装置で実現され得る。端末装置は、パーソナルコンピュータ、携帯端末等により実現され得る。
【0037】
入出力装置41は、ユーザからの情報の入力のための入力装置、およびユーザへの情報の出力のための出力装置としての機能を有する。入出力装置41は、1以上のヒューマン・マシン・インタフェースを備える。ヒューマン・マシン・インタフェースの例としては、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、トラックボール等)、タッチパッド等の入力装置、ディスプレイ、スピーカ等の出力装置、タッチパネル等の入出力装置が挙げられる。
【0038】
通信回路42は、有線または無線により他の装置またはシステムと通信回線を介して接続するためのインタフェース装置である。当該インタフェース装置は、例えば、USB(登録商標)またはイーサネット(登録商標)等の有線通信規格に準拠した通信を行うことが可能である。または、インタフェース装置は、例えばWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、携帯電話回線等の無線通信規格に準拠した通信を行うことが可能である。
【0039】
記憶装置43は、種々の情報を記憶できる記憶媒体である。記憶装置43は例えば、DRAMやSRAM、フラッシュメモリ等のメモリ、HDD、SSD、その他の記憶デバイスまたはそれらを適宜組み合わせて実現される。記憶装置43は、上述しているように、管理システム4が演算回路44によって実行するための各種の処理を実現するためのプログラムを格納する。
【0040】
演算回路44は、管理システム4の動作を制御する回路である。演算回路44は、入出力装置41および通信回路42に接続され、記憶装置43にアクセス可能である。演算回路44は、プログラムを実行することで所定の機能を実現するCPUまたはMPUのような汎用プロセッサを含む。演算回路44は、例えば記憶装置43に格納された演算プログラム等を呼び出して実行することにより、管理システム4における各種の処理を実現する。演算回路44は、ハードウェアとソフトウェアとが協働して所定の機能を実現する態様に限定されず、所定の機能を実現する専用に設計されたハードウェア回路でもよい。すなわち、演算回路44は、CPU、MPU以外にも、GPU、FPGA、DSP、ASIC等、種々のプロセッサで実現され得る。このような演算回路44は、例えば、半導体集積回路である信号処理回路で構成される。
【0041】
(端末装置)
図4に示すように、端末装置6は、例えばパーソナルコンピュータまたは携帯端末等により実現できる。端末装置6は、インタフェース装置(入出力装置61および通信回路62)と、記憶装置63と、演算回路64とを備える。
【0042】
入出力装置61は、ユーザからの情報の入力のための入力装置、およびユーザへの情報の出力のための出力装置としての機能を有する。入出力装置61は、1以上のヒューマン・マシン・インタフェースを備える。ヒューマン・マシン・インタフェースの例としては、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、トラックボール等)、タッチパッド等の入力装置、ディスプレイ、スピーカ等の出力装置、タッチパネル等の入出力装置が挙げられる。
【0043】
通信回路62は、有線または無線により他の装置またはシステムと通信回線を介して接続するためのインタフェース装置である。当該インタフェース装置は、例えば、USB(登録商標)またはイーサネット(登録商標)等の有線通信規格に準拠した通信を行うことが可能である。または、インタフェース装置は、例えばWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、携帯電話回線等の無線通信規格に準拠した通信を行うことが可能である。
【0044】
記憶装置63は、種々の情報を記憶できる記憶媒体である。記憶装置63は、例えば入出力装置61によって取得した立体物情報D11を格納し、演算回路64は、当該情報を利用することができる。記憶装置63は例えば、DRAMやSRAM、フラッシュメモリ等のメモリ、HDD、SSD、その他の記憶デバイスまたはそれらを適宜組み合わせて実現される。記憶装置63は、上述しているように、端末装置6が演算回路64によって実行するための各種の処理を実現するためのプログラムを格納する。
【0045】
演算回路64は、端末装置6の動作を制御する回路である。演算回路64は、入出力装置61および通信回路62に接続され、記憶装置63にアクセス可能である。演算回路64は、プログラムを実行することで所定の機能を実現するCPUまたはMPUのような汎用プロセッサを含む。演算回路64は、例えば記憶装置63に格納された演算プログラム等を呼び出して実行することにより、端末装置6における各種の処理を実現する。演算回路64は、ハードウェアとソフトウェアとが協働して所定の機能を実現する態様に限定されず、所定の機能を実現する専用に設計されたハードウェア回路でもよい。すなわち、演算回路64は、CPU、MPU以外にも、GPU、FPGA、DSP、ASIC等、種々のプロセッサで実現され得る。このような演算回路64は、例えば、半導体集積回路である信号処理回路で構成される。
【0046】
(端末装置の動作)
端末装置6の演算回路64が実行する処理について説明する。端末装置6の演算回路64は、取得処理と、送信処理と、受信処理と、出力処理とを実行するように構成される。
【0047】
取得処理は、入出力装置61により立体物情報D11を取得する処理である。演算回路64は、立体物情報D11を取得すると、記憶装置63に格納してもよい。取得処理は、例えば、入出力装置61により立体物情報D11の入力のための画面を提示し、依頼者は画面の指示にしたがって立体物情報D11を入力することが可能である。立体物情報D11の入力は、外部装置から立体物情報D11を端末装置6に入力することだけでなく、端末装置6が記憶しているデータから立体物情報D11として使用するデータを特定することも含んでよい。送信処理は、取得処理で取得した立体物情報D11を製造実行システム2に通信回路62を介して製造実行システム2に入力することが可能である。
【0048】
受信処理は、製造実行システム2で生成される補正立体物情報D13を製造実行システム2から通信回路62を介して受け取る処理である。演算回路64は、補正立体物情報D13を受け取ると、記憶装置63に格納してもよい。出力処理は、受信処理で受け取った補正立体物情報D13を入出力装置により提示する処理である。出力処理は、例えば、入出力装置61により補正立体物情報D13の出力のための画面を提示し、依頼者は画面を見ることで補正立体物情報D13が示す立体物の立体物形状を把握することができる。受信処理と出力処理とによって、依頼者は、補正立体物情報D13を、端末装置6を通じて確認することが可能である。
【0049】
演算回路64は、補正立体物情報D13の提示に対して依頼者が立体物の製造を承認するかどうかを回答する画面を入出力装置61に表示させて、依頼者の承認が得られた場合には、依頼者が立体物の製造を承認したことを、通信ネットワーク72を通じて、製造実行システム2に通知する。このようにして、端末装置6の演算回路64は、受信処理で取得した補正立体物情報D13が有する情報が示す形状を依頼者に提示し、当該形状で製造することについて依頼者による承認を得ることができる。また、このようにして、演算回路64は、依頼者による承認が得られたことを、製造実行システム2に通知することができる。
【0050】
このように、立体物形状が情報処理システム2Aにおいて補正されて製造される立体物の形状が変わる場合、依頼者は、端末装置6を通じて、補正後の形状を確認することができる。それにより、依頼者は、立体物形状が補正された場合、補正後の形状を確認して、立体物の製造を依頼することができる。
【0051】
(製造実行システムの動作)
製造実行システム2の演算回路が実行する処理について説明する。製造実行システム2の演算回路24は、記憶処理と、決定処理と、情報調整処理と、選択処理と、実行処理と、を実行するように構成される。
【0052】
記憶処理は、インタフェース装置(入出力装置21および通信回路22)を通じて立体物情報D11を受け取って記憶装置23に記憶させる処理である。製造実行システム2では、入出力装置21および通信回路22を利用して立体物情報D11の入力が可能である。本実施の形態では、製造実行システム2は、通信回路22によって、通信ネットワーク72を通じて端末装置6と通信可能に接続される。製造実行システム2は、端末装置6によって作製される立体物情報D11または端末装置6に入力される立体物情報D11を、端末装置6から取得することができる。
【0053】
決定処理は、立体物情報D11に基づいて立体物の製造工程を決定して製造工程情報D14を生成する処理である。決定処理は、立体物情報D11に基づいて立体物の製造に必要な複数の工程(1以上の第1工程および1以上の第2工程)を特定し、複数の工程の順番を決定する。決定処理は、順番が決められた複数の工程に応じて品質確認工程と輸送工程とを加えて、製造工程を決定する。例えば、立体物の製造に、3Dプリンタで樹脂材料から造形物を形成する工程と、表面処理装置による造形物の表面処理をする工程とが必要であるとする。この例では、前者の工程が第1工程、後者の工程が第2工程として特定される。第2工程の実行には第1工程の完了が必要であるから、第1工程と第2工程との順番は、第1工程が先、第2工程が後になる。第1工程に第1品質確認工程と第1輸送工程とが付され、第2工程に第2品質確認工程と第2輸送工程とが付されて、第1工程、第1品質確認工程、第1輸送工程、第2工程、第2品質確認工程、第2輸送工程を順番に実行する製造工程が得られる。
【0054】
情報調整処理は、決定処理で決定された製造工程の1以上の第2工程に基づいて、立体物情報D11を、第1工程の結果物の目標形状を決定するための情報を有する造形物情報D12に変換する処理である。取得処理によって端末装置6が取得した立体物情報D11が示す立体物形状は、製造工程で決定された1以上の第2工程の所定処理によって変形する可能性がある。このような変形を考慮せずに製造工程を実行した場合、依頼者が想定している立体物とは異なる形状を有する立体物が作製され得る。そのため、情報調整処理は、所定形状が1以上の第2工程に基づく所定処理によって変形すると立体物形状となるように、立体物形状を所定処理での形状変化を補償するように調整することで、立体物形状に基づいて当該所定形状を決定する。それによって、情報調整処理は、第1工程の結果物の目標形状(すなわち、当該所定形状)を決定するための情報を有する造形物情報D12を生成する。これにより、演算回路24は、立体物情報D11が含む情報が示す立体物と、製造工程の終了後の作製物とに差異が生じないように製造実行システム2における処理を実行することができる。
【0055】
情報調整処理による立体物形状の調整は、1以上の第2工程の所定処理による形状変化の補償に限られず、例えば、情報調整処理は、立体物形状に対して、1以上の第2工程の所定処理において固定するための固定形状を立体物形状に付加することができるように構成されてもよい。また、情報調整処理は、1以上の第2工程の所定処理において、第1工程で造形された造形物を固定するために、造形物と、当該造形物とは別体の補助具と、を第1工程で形成するように、第1工程の結果物の目標形状を決定してもよい。情報調整処理は、立体物情報D11を造形物情報D12に変換する際に行った処理の内容を調整情報D16として、記憶装置23に記憶する。
【0056】
立体物情報D11は、決定処理で決定された製造工程の1以上の第1工程に基づく設備での製造に適さない形状を示す情報を有する場合がある。製造システム1は、そのような立体物情報D11を取得した場合であっても当該形状を、第1工程の設備での製造に適した形状に自動的に補正することができる。このような補正を実行するために、情報調整処理は、判定処理と、補正処理と、調整処理とを含んでもよい。
【0057】
判定処理は、記憶した立体物情報D11が有する情報が示す立体物の立体物形状を、第1工程の設備による製造に適するかどうか判定する処理である(詳細は後述する)。立体物情報D11が第1工程の設備による製造に適さない場合、演算回路24は、補正処理を実行する。立体物情報D11が第1工程の設備による製造に適する場合、演算回路24は、調整処理を実行する。
【0058】
補正処理は、立体物形状が1以上の第1工程での製造に適さない場合、当該立体物形状を当該第1工程での製造に適する形状となるように補正する処理である(詳細は後述する)。例えば、立体物形状の寸法が、決定処理により決定されている製造工程の第1工程の設備で製造するには細かすぎる場合、演算回路24は、補正処理により、第1工程の設備で製造できる寸法となるように立体物形状を変更する。補正処理は、補正して得られた形状を示す情報を有する補正立体物情報D13を記憶装置23に格納する。これにより、上記のように依頼者の承認を得る際、演算回路64が補正立体物情報D13を端末装置6の入出力装置61に提示することで、依頼者は作製される立体物の形状を容易に確認することができる。
【0059】
調整処理は、判定処理を実行する場合、立体物情報D11が有する情報が示す立体物形状に対して、または補正処理にて生成された補正立体物情報D13が有する情報が示す形状に対して、上記の情報調整処理と同様の処理を実行する処理である。つまり、調整処理は、第2工程で実行される所定処理の内容に基づいて、補正立体物情報D13を、第1工程の結果物の目標形状を決定するための情報を有する造形物情報D12に変換することができる。また、調整処理は、情報調整処理と同様、補正立体物情報D13を造形物情報D12に変換する際に行った処理の内容を調整情報D16として、記憶装置23に記憶する。
【0060】
選択処理は、立体物の製造に用いる設備5を選択する処理である。本実施の形態では、選択処理は、設備情報D15の製造システム1で利用可能な設備5のリストから、1以上の第1設備51および1以上の第2設備52を抽出し、選択する。より詳細には、選択処理は、製造工程情報D14に基づいてアディティブマニュファクチャリング技術を利用する設備のリスト(設備情報D15の第1リスト)を検索して、1以上の第1工程を実行可能な1以上の特定の第1設備51を抽出し、選択する。選択処理は、製造工程情報D14に基づいて、アディティブマニュファクチャリング技術以外の製造技術を利用する設備のリスト(設備情報D15の第2リスト)を検索して、1以上の第2工程を実行可能な1以上の特定の第2設備52を抽出し、選択する。
【0061】
このようにして、選択処理は、製造工程に関して、1以上の第1工程を実行する1以上の特定の第1設備51と、1以上の第2工程を実行する1以上の特定の第2設備とを選択する。選択処理はさらに、調整情報D16を参照して、1以上の特定の第1設備51および1以上の特定の第2設備52を抽出してもよい。このように構成することで、情報調整処理によって立体物形状に付与した形状の変更によって、第2工程における所定処理を実行するためにある第2設備52では実行できない処理が含まれる場合、選択処理は、当該ある第2設備52を除外して、抽出し、選択することができる。また、演算回路24は、まず選択処理によって、第2工程の所定処理を実行するための第2設備52を選択し、その後、情報調整処理を実行してもよい。この場合、演算回路24は、情報調整処理における修正により、選択した第2設備52によって所定処理を実行できなくなったと判断すると、再度選択処理を実行して第2設備52を選択しなおす必要がある。
【0062】
選択処理は、調整情報D16に基づいて、第2工程の所定処理を実行できる第2設備が存在せず、選択できない場合、設備の選択を中断し、エラーを出力することができる。選択処理は、例えば、エラーが発生したことを入出力装置21等に表示するように構成されてもよい。このように構成することで、第2工程にて実行される所定処理において物理的に不可能な処理を有したまま演算回路24が選択処理により第2設備を選択して実行処理により製造を開始することを、防ぐことができる。
【0063】
上述した情報調整処理において、製造する立体物形状を補正している場合、演算回路24は、選択処理において、1以上の特定の第1設備51および1以上の特定の第2設備52を選択すると、補正立体物情報D13を端末装置6へと送信する。このように、演算回路24は、製造工程を実行する設備を決定した状態で、補正した形状に基づいて製造することについて、依頼者に承認を求めることができる。それによって、依頼者の承認後に製造工程を実行するための設備を選択できず、製造できないという状態の発生を防ぐことができる。
【0064】
実行処理は、立体物の製造を実行させるための処理である。より詳細には、実行処理は、選択処理で選択された1以上の特定の第1設備51および1以上の特定の第2設備52を用いて製造工程情報D14にしたがって立体物を製造するための指示を出力する。例えば、実行処理は、選択処理で選択された1以上の特定の第1設備51および1以上の特定の第2設備52にそれぞれ対応する1以上の施設3の1以上の管理システム4に、立体物の製造に必要な情報を提供する。特定の第1設備51のある施設3の管理システム4には、立体物の製造に必要な情報として、第1工程の内容の情報、第1工程の結果物の送付先(特定の第2設備52の場所)の情報が与えられる。特定の第2設備52のある施設3の管理システム4には、立体物の製造に必要な情報として、第2工程の内容の情報、第2工程の結果物の送付先(例えば、依頼者の指定する届け先)の情報が含まれる。本実施の形態では、製造実行システム2は、通信回路22によって、通信ネットワーク71を通じて管理システム4と通信可能に接続される。このように、実行処理では、通信ネットワーク71を通じて必要な情報を管理システム4に与えることで、立体物の製造を行わせる。
【0065】
本実施の形態では、演算回路24は、例えば、補正処理を実行している場合、補正立体物情報D13の提示に対して依頼者が立体物の製造を承認した場合に、実行処理を開始するように構成され得る。また、演算回路24は、補正処理を実行していない場合、依頼者の承認を必要とすることなく、実行処理を開始するように構成され得る。
【0066】
このようにして、製造実行システム2は、情報処理システム2Aおよび実行システム2Bにより、端末装置6より取得した立体物情報D11に基づいて、立体物を製造することができる。また、製造実行システム2は、上述しているように、製造工程の第2工程における所定処理に基づいて、第1工程の結果物の目標形状を調整できる。さらに、製造実行システム2は、立体物形状が第1工程の設備による製造に適さない場合、当該形状を製造に適する形状に補正でき、その後、第1工程の結果物の目標形状を調整できる。
【0067】
演算回路24が実行する情報調整処理についてより具体的に説明する。情報調整処理は、上述しているように、立体物形状を、第1工程で造形される結果物(造形物)に対して第2工程の所定処理において生じる形状変化を補償するように修正することによって、造形物の目標形状を決定することができる。より具体的には、造形物は、第2工程における形状変化の例として、寸法が減少または増加したり、変形したりする可能性がある。
【0068】
したがって、例えば、造形物の目標形状は、製造工程に含まれる第2工程の所定処理による寸法の減少により、立体物形状に対応する形状となるように決定され得る。また、造形物の目標形状は、製造工程に含まれる第2工程の所定処理による寸法の増加により、立体物形状に対応する形状となるように決定され得る。また、造形物の目標形状は、製造工程に含まれる第2工程の所定処理による形状の変形により、立体物形状に対応する形状となるように決定され得る。当該形状の変形は、例えば、所定処理において応力が造形物に加えられたことによる変形、または所定処理において造形物が熱処理されたことによる変形を含む。
【0069】
上記した、第2工程における所定処理による寸法の減少を補償するような形状の修正の一例として、指輪をアディティブマニュファクチャリング技術を含む製造技術によって作製する場合を用いて説明する。指輪は、例えば、いわゆるロストワックス法などを用いて鋳造によって作製することができる。ロストワックス法は、指輪を鋳造する手法の一つである。ロストワックス法は、アディティブマニュファクチャリング技術を利用して指輪を作製する場合、熱を加えると溶融する材料であるワックスで指輪の原型をアディティブマニュファクチャリング技術を利用して造形する。そして、当該原型の周囲を石膏で固めることで、鋳造に用いる型が作製される。指輪形状のワックスを溶融して型から除去すると、型の内部に、ワックスで造形した指輪の原型と同等形状の空洞が形成される。当該空洞に溶融した金属材料(例えば、金、銀、プラチナ等)を流し込み、冷やして固めることで、金属製の指輪が鋳造される。
【0070】
このようにロストワックス法を用いて鋳造された指輪は、指輪の表面を滑らかにするために、研磨され得る。そのため、アディティブマニュファクチャリング技術を含む製造技術を利用する第1工程において造形された指輪の原型に基づいて鋳造された指輪は、第2工程において、その表面を研磨する処理が行われる。このように研磨を行う場合、指輪は、研磨した部位が削られ、ワックスで造形された原型の形状と比べて小さくなる。すなわち、第2工程における所定処理の一つとして実行される研磨処理によって寸法が減少する。
【0071】
このように第2工程が研磨処理を含む場合、鋳造された指輪は、鋳造工程後の第2工程によって寸法が減少する。したがって、情報調整処理は、造形する指輪の原型の目標形状を、目標形状の寸法が減少することによって作製したい指輪の形状となるように決定する。すなわち、第1工程で造形される指輪の原型の目標形状の寸法は、作製したい指輪の形状の寸法に対して、削り代となる形状が付与されるため増加する。上記のようにして、情報調整処理は、立体物情報D11を、決定した目標形状の情報を有する造形物情報D12に変換できる。
【0072】
実行処理は、第1工程を実行する第1設備によって造形物情報D12が有する情報が示す目標形状を造形すると、立体物情報D11が有する情報が示す立体物形状より寸法が大きい指輪の原型が造形される。そして、実行処理は、第2工程を実行する1以上の第2設備52によって、当該指輪の原型を用いてロストワックス法により金属製の指輪を鋳造する。鋳造された指輪は、上記の指輪の原型と同様の形状を有するため、実行処理は、さらに上記と同一または異なる1以上の第2設備52によって当該指輪に対して研磨処理を行うことで、立体物情報D11が有する情報が示す形状の指輪を作製することができる。
【0073】
このように、演算回路24は、情報調整処理によって、第2工程で実行される所定処理(例えば、研磨処理)に応じて、作製したい立体物形状を示す情報を有する立体物情報D11を、当該所定処理にて減少する寸法を補償した目標形状を示す情報を有する造形物情報D12に変換することができる。それによって、製造実行システム2は、第1工程および第2工程の全ての工程終了後の結果物の形状が、立体物情報D11が有する情報が示す立体物形状と同等のものを作製することができる。
【0074】
次に、第2工程における所定処理による寸法の増加を補償するような形状の修正の一例を、指輪を鋳造した例とは異なるアディティブマニュファクチャリング技術を含む製造技術によって作製する場合を用いて説明する。指輪は、樹脂材料で基礎となる形状をアディティブマニュファクチャリング技術を利用した製造技術を用いて造形され得る。このようにして造形された指輪は、第2工程において、金属めっき等のコーティング処理を行うことで、金属のような質感を備えることができる。当該指輪は、造形された形状に対してコーティングが行われるため、当該造形された形状より大きくなり得る。すなわち、コーティング処理によって寸法が増加する。
【0075】
また、例えば、指輪が微細な凹凸形状を有する模様を備えている場合、凹凸形状部分も同様にコーティング処理によって寸法が増加し、本来の模様とは異なる凹凸形状になり得る。
【0076】
このように第2工程がコーティング処理を含む場合、第1工程によって造形された指輪は、第2工程で実行される所定処理の1つであるコーティング処理によって寸法が増加することで、立体物の形状が変更され得る。したがって、情報調整処理は、造形する指輪の目標形状を、目標形状の寸法が増加することによって作製したい指輪の形状となるように決定する。すなわち、第1工程で造形される指輪の目標形状の寸法は、作製したい指輪の形状の寸法に対して、塗装膜厚となる形状が除去されるため減少する。上記のようにして、情報調整処理は、立体物形状を決定した目標形状の情報を有する造形物情報D12に変換できる。
【0077】
実行処理が、第1工程を実行する第1設備によって造形物情報D12が有する情報が示す目標形状を造形すると、立体物情報D11より寸法が小さい指輪が樹脂材料によって造形される。そして、実行処理は、第2工程を実行する1以上の第2設備52によって、当該指輪に対してコーティング処理を行うことで、立体物情報D11が有する情報が示す形状の指輪を作製することができる。
【0078】
このように、演算回路24は、情報調整処理によって、第2工程で実行される所定処理(例えば、コーティング処理)に応じて、作製したい立体物形状を示す情報を有する立体物情報D11を、当該所定処理にて増加する寸法を補償した目標形状を示す情報を有する造形物情報D12に変換することができる。それによって、製造実行システム2は、第1工程および第2工程の全ての工程終了後の結果物の形状が、立体物形状と同等のものを作製することができる。
【0079】
上述した情報調整処理による、所定処理によって生じる寸法の減少の補償および寸法の増加の補償は、同一の立体物情報D11に対してともに実行してもよい。例えば、造形物が樹脂材料を積層することで造形される場合、積層した際の層が造形物の表面に模様のように生じる可能性がある。そのため、樹脂材料で基礎となる造形物(例えば指輪)を造形し、当該造形物に対してコーティング処理を行う場合、造形物は、そのような層形状を除去するために、コーティング処理を行う前に研磨等の切削を伴う加工が行われ得る。このように、第2工程が寸法を減少させる処理および寸法を増加させる処理を含む場合、情報調整処理は、両方の処理によって生じる形状変化を補償する形状の修正を実行することができる。
【0080】
情報調整処理による、第2工程の所定処理によって生じる形状変化を補償する修正は、第2工程における所定処理を実行する第2設備の処理方法を制限する場合がある。例えば、造形物において、切削工具(例えば、切削用のドリル)等がアクセスできない箇所は、当該切削交互で研磨できないため、そのような箇所に対して上記のような削り代を設けるための修正を行ったとしても、第2工程において当該切削工具による切削処理を行うことはできない。したがって、そのような箇所に対して削り代を設けるような修正を行う場合、演算回路24は、選択処理において、アクセスできない切削工具以外の切削工具を用いて(例えば、作業者がヤスリを用いて手ずから研磨する等によって)切削処理を行うことができる第2設備52を、第2工程における所定処理を実行する設備として選択する必要がある。
【0081】
次に、第2工程における所定処理による形状の変形を補償するような形状の修正の一例として、第2工程において熱処理が実行される場合を用いて説明する。第1工程において、例えば金属材料を用いて造形する場合、製造工程は、第2工程において熱処理に類する処理を含むことがある。熱処理に類する処理は、例えば、温度変化、相変化または結晶化を伴う処理を含む。温度変化を伴う処理は、例えば、焼結やアニーリング(焼きなまし)等の熱を付与する処理を含む。上記のような処理を経る製造物は、熱等によって形状が変形する可能性がある。
【0082】
情報調整処理は、第2工程における所定処理において、第1工程にて造形された造形物に対してこのような熱等が加えられたことによる形状の変形を補償するように、立体物形状を修正することができる。したがって、情報調整処理は、立体物形状を、熱処理などによって生じる形状の変形を補償するように修正することで、造形物の目標形状を決定することができる。それによって、情報調整処理は、立体物情報D11を、当該目標形状を示す情報を有する造形物情報D12に変換することができる。上記しているように、形状の変形の発生は、熱等が加えられることに限定されず、例えば、第2工程の所定処理において造形物に対して応力が加えられるような処理が実行されることでも生じ得る。このように、情報調整処理は、第2工程における任意の所定処理において形状の変形が生じる場合、当該変形を補償するように立体物形状を修正した目標形状を決定することができる。
【0083】
次に、第2工程における所定処理で造形物を固定するための固定形状を付与するように立体物形状を修正することについて説明する。第1工程を実行する第1設備によって造形した造形物に対して第2工程における所定処理を実行する場合、所定処理は、造形物を固定して実行することが好ましい場合がある。第2工程における所定処理を効率的に実行するため、演算回路24は、情報調整処理において、第2工程における所定処理にて利用することができる固定形状を立体物形状に付与することができる。
【0084】
固定形状は、例えば、ボルト締結用の孔や固定用の脚が例として上げられる。例えば、金属材料を用いて造形した造形物に対して切削を行う場合、当該切削は、造形物を大きな把持力で固定する必要がある。このような場合、造形物にボルト締結用の孔を設けることで、当該孔とボルトとを締結し、造形物を確実に固定することができるようになる。それによって、第2工程における所定処理は、第2設備において容易に実行され得る。
【0085】
固定形状は、立体物を作製した際、不要と形状となる可能性がある。したがって、固定形状は、切削を要する金属部品の内、固定が必要でかつ最終形状に固定形状を残して問題ないものに対して付与され得る。または、固定形状は、立体物の製造に関する要件の範囲内で切削後に固定形状を除去可能な方法が存在するものに対して付与され得る。
【0086】
次に、第2工程における所定処理で、第1工程で造形された造形物を固定するために、造形物と、当該造形物とは別体の補助具とを第1工程で形成するように、第1工程の結果物の目標形状を決定することについて説明する。第1工程で造形された造形物は、以降の工程で実行される所定処理において、補助具を用いて固定されることが好ましい場合があり得る。補助具とは、例えば、第2工程を実行する設備に取り付け可能な固定具や治具が想定され、当該造形物を固定したり、造形物の移動時に誘導のために用いたりすることができる。造形物は種々の形状を有し得るため、補助具も当該種々の形状に応じて当該造形物用に設計、作製する必要ことが必要となり得る。情報調整処理は、立体物情報D11に含まれる情報が示す立体物の立体物形状に基づいて、補助具を自動的に生成し、立体物の形状と補助具の形状とを有する情報を示す造形物情報D12を生成することができる。なお、このような補助具は一般的に、例えば、第2工程における所定工程を実行する際に利用される部品であり、依頼者へ送付される部品ではない。
【0087】
以上のように、演算回路24により実行される情報調整処理は、第2工程で実行される所定処理の内容に基づいて、立体物情報D11を、第1工程の結果物の目標形状を決定するための情報を有する造形物情報D12に変換することができる。
【0088】
同一形状の部品が大量生産される製造とは異なり、アディティブマニュファクチャリング技術を利用した第1工程を使用する製造において造形される立体物は、種々の変更(カスタマイズ)が実行され得る。そのような種々の形状を有する立体物に対して、作業者が、第2工程で実行される所定工程による形状変形を考慮して、当該形状変形を補償するように第1工程で造形される結果物の目標形状を設計するのは、熟練した能力を有する作業者であっても困難である。また、そのような種々の形状を有する立体物に対して、作業者が、固定形状の取付判断や除去判断等を多種多様な使用可能機器を考慮して、第1工程で造形する造形物を生成するには、熟練した能力が必要となり得る。同様に、そのような種々の形状を有する立体物に対して、作業者が当該立体物に応じた補助具を生成するには、熟練した能力が必要となり得る。そのため、多数の立体物を製造するには、多くの熟練した作業者が必要となり得る。しかし、上記したように、本実施の形態に係る製造実行システム2によれば、立体物情報D11に含まれる情報が示す立体物の立体物形状に基づいて、演算回路24が、第2工程における所定処理による形状の変形を考慮して、当該変形を補償するように立体物形状を修正した目標形状を決定するように構成されている。また、本実施の形態に係る製造実行システム2によれば、立体物情報D11に含まれる情報が示す立体物の立体物形状に基づいて、演算回路24が固定形状を付与するように構成されている。また、本実施の形態に係る製造実行システム2によれば、立体物情報D11に含まれる情報が示す立体物の立体物形状に基づいて、演算回路24が補助具を生成するように構成されている。したがって、製造実行システム2の演算回路24は、多数の立体物の形状の調整を自動的に行うことができる。また、多くの熟練した作業者がいなくとも、多数の立体物の製造に対応することができる。
【0089】
上記しているように、
図5は、本実施の形態に係る製造システム1の動作の一例を示すフローチャートである。本例は、情報処理システム2Aにおいて、情報調整処理を実行する場合の動作を示す。
図5を参照しつつ、製造システム1の動作を説明する。
【0090】
製造システム1では、依頼者が立体物の製造を依頼する場合、端末装置6を利用する。端末装置6では、演算回路64が取得処理を実行し(S10)、立体物情報D11を取得する。演算回路64は、立体物情報D11を取得すると、立体物情報D11を記憶装置63に格納する。これによって、依頼者は画面の指示にしたがって立体物情報D11を入力することが可能である。演算回路64は、送信処理を実行し(S20)、取得処理で取得した立体物情報D11を製造実行システム2に通信回路62を介して送信する。
【0091】
製造実行システム2では、演算回路24は、上記送信処理によって送信された立体物情報D11を通信回路22を介して受信すると、記憶処理を実行し(S30)、記憶装置23に立体物情報D11を格納する。演算回路24は、決定処理を実行し(S40)、当該立体物情報D11に基づいて立体物を製造するための製造工程を決定して製造工程情報D14を生成し、記憶装置23に格納する。演算回路24は、情報調整処理を実行し(S50)、製造工程情報D14を参照して、立体物情報D11を1以上の第2工程で実行される所定処理に基づいて、1以上の第1工程の結果物の目標形状を決定するための情報を有する造形物情報D12に変換する。また、演算回路24は、情報調整処理において、立体物情報D11を造形物情報D12に変換する際に行った処理に関する調整情報D16を生成し、記憶装置23に格納する。
【0092】
演算回路24は、選択処理を実行し(S60)、立体物の製造に用いる設備5を選択する。より具体的には、演算回路24は、選択処理において、製造工程情報D14および調整情報D16を参照して、1以上の第1設備51から1以上の第1工程に利用する1以上の特定の第1設備51を選択する。また、演算回路24は、同様に、1以上の第2設備52から1以上の第2工程に利用する1以上の特定の第2設備52を選択する。演算回路24は、選択処理において、1以上の第2工程に利用する1以上の特定の第2設備を選択できない場合(S60:No)、エラーを出力し、当該エラーに関する情報を記憶装置に格納して入出力装置21に表示し、製造システム1の動作を終了する。演算回路24は、1以上の特定の第2設備を選択できる場合(S60:Yes)、実行処理を実行する(S70)。それにより、演算回路24は、選択処理で選択された1以上の特定の第1設備51および1以上の特定の第2設備52を用いて製造工程情報D14にしたがって立体物を製造するための指示を必要な管理システム4に与える。これによって、製造システム1では、立体物が製造され、依頼者の指定する届け先に届けられる。
【0093】
上記しているように、立体物情報D11が有する情報が示す立体物形状は、第1工程における設備による製造に適さない場合があり得る。本実施の形態に係る製造システム1は、上述しているように、そのような立体物情報D11を取得したとしても、第1工程における製造に適した形状を有する造形物情報D12に変換することができる。以下、上記のような処理を実行する、情報調整処理に含まれる判定処理、補正処理および調整処理について、詳細に説明する。
【0094】
判定処理は、立体物情報D11が有する情報が示す立体物の立体物形状が、決定処理で決定された第1工程の設備によって製造するのに適するか否かを判定する。例えば、判定処理は、立体物形状が第1工程の設備によって造形できるか否かを判定することで、製造に適するか否かを判定してもよい。当該判定の一例として、判定処理は、当該立体物形状をサポート材を用いることなく造形できるか否かを判定してもよい。当該例について、
図6Aに示すような、アルファベットの「I」型の立体物80Aを作製する場合に関して説明する。
【0095】
図6Aは、端末装置6から入力された立体物情報D11が有する情報が示す立体物80Aの立体物形状の一例の断面図である。立体物80Aは、底面81、上面82、および底面81を有する部材と上面82を有する部材とを接続する垂直部材83を有する形状を備える。立体物80Aを造形する第1設備51が、当該立体物80Aを、底面81から上面82へと向かって積層することで造形する場合、第1設備51は、上面82の部位を造形するために、当該部位を支持するためのサポート材を上面82の下部に設ける必要がある。したがって、積層方向を変更せず、かつサポート材を用いることなく立体物を造形する場合、演算回路24は、立体物情報D11の形状を補正する必要がある。したがって、判定処理は、当該立体物形状は第1工程の設備による製造に適さないと判定する。
【0096】
判定処理において、第1工程の設備による製造に適さないと判定すると、演算回路24は、補正処理を実行する。補正処理は、立体物形状を第1工程の設備による製造に適した形状に補正する。
図6Bは、
図6Aに示す断面を有する立体物形状を、補正処理により補正して得られた形状の断面図である。
図6Bに示すように、立体物80Bは、立体物80Aの垂直部材83の形状が垂直部材84へと補正されている。垂直部材84は、下側(すなわち、底面81側)から上側(すなわち、上面82側)に向かうにつれて、幅が広くなるように作製されている。このように、下側から支持する構造を設けることで、上面82を備える部位をサポート材を設けることなく造形することができる。
【0097】
このような補正は、立体物の形状に対して補正を行っても問題ない場合に行うことができる。
図6Aに記載する断面を有する立体物80Aの場合、垂直部材83の形状を変更しても問題ない場合、上記の
図6Bに記載する断面を有する立体物80Bの立体物形状に補正することができる。補正することができるか否かの判別は、例えば、上記しているように、立体物情報D11が補正不可領域情報または補正可能領域情報を備え、当該情報を参照することで行われてもよい。
図6Aに示す立体物80Aにおいては、底面81と上面82とを形状変更不可の部位として設定された補正不可領域情報を立体物情報D11が備えると、上記のような補正を行うことができる。
【0098】
判定処理による、立体物情報が有する情報が示す立体物形状を第1工程の設備で製造できるか否かの判定は、上記したような、サポート材を用いずに造形できるか否かに限られない。例えば、判定処理は、立体物情報D11が有する情報が示す立体物形状を、決定されている製造工程、および造形する材料として設定されている材料によって第1工程の設備で製造できるか否かを判定してもよい。
【0099】
決定されている第1工程の設備では立体物情報が有する情報が示す立体物形状通りに当該材料では造形できない場合(すなわち、当該形状通りに造形可能な、製造工程で決定されている第1工程を実行する第1設備が存在しない場合)、演算回路24は、補正が必要と判定する。そして、演算回路24は、補正処理により、立体物形状通りに造形できない部位について、形状を修正する。例えば、決定されている第1工程の種類および設定されている造形材料で製造するには立体物形状の寸法が細かすぎる場合、演算回路24は、補正処理により、上記のように立体物形状を製造できる形状に補正し得る。このように形状を修正する際、立体物情報D11が補正不可領域情報を備える場合、上述しているように、演算回路24は、あらかじめ設定されている形状変更不可の部位の形状を変更しないように、立体物形状を補正する。
【0100】
判定処理は、立体物形状が第1工程の設備によって造形するのに効率のよい形状か否かを判定することで、決定処理で決定された第1工程の設備によって製造するのに適するか否かを判定してもよい。演算回路24は、例えば、立体物形状の積層方向を変更することで、製造時間が短縮される、サポート材の使用量が減少するなどを確認することで、造形するのに効率のよい形状が否かを判定してもよい。
【0101】
補正処理後、または判定処理における補正不要の判定後、演算回路24は、調整処理を実行する。調整処理は、立体物情報が有する情報が示す立体物形状、または当該立体物形状を補正処理で補正して得られた形状に基づいて、第1工程の結果物の目標形状を決定する。それによって、調整処理は、立体物情報D11または補正立体物情報D13に基づいて、造形物情報D12を作製することができる。調整処理は、上述した情報調整処理と同様の処理を実行する。上記しているように調整処理は、立体物情報D11または補正立体物情報D13が有する情報が示す形状に対して行った処理を、調整情報D16として記憶装置23に格納する。
【0102】
以上のようにして、製造システム1の情報処理システム2Aは、端末装置6から入力された立体物情報D11を、第1工程の結果物の目標形状を決定するための情報を有する造形物情報D12に変換することができる。上記しているように、情報処理システム2Aは、当該立体物情報D11が有する情報が示す立体物の立体物形状が、第1工程の設備による製造に適さない場合であっても、当該立体物形状を第1工程の設備による製造に適した形状に補正して得られた形状をもとに目標形状を決定できる。したがって、立体物情報D11が第1工程の設備による製造に適さない立体物形状を示す情報を有していたとしても、適切な造形物情報D12に変換することができる。
【0103】
図7は、本実施の形態に係る製造システム1の動作の別の例を示すフローチャートである。本例は、情報処理システム2Aにおいて、情報調整処理として、判定処理、補正処理および調整処理を実行する場合の動作を示す。
図7を参照しつつ、製造システム1の動作を説明する。なお、
図5において説明した製造システム1の動作と同等の動作については、同一の符号を付して説明している。
【0104】
上述しているように、製造システム1では、依頼者が立体物の製造を依頼する場合、端末装置6を利用する。端末装置6では、演算回路64が取得処理を実行し(S10)、立体物情報D11を取得する。演算回路64は、立体物情報D11を取得すると、立体物情報D11を記憶装置63に格納する。これによって、依頼者は画面の指示にしたがって立体物情報D11を入力することが可能である。演算回路64は、送信処理を実行し(S20)、取得処理で取得した立体物情報D11を製造実行システム2に通信回路62を介して送信する。
【0105】
製造実行システム2では、演算回路24は、上記送信処理によって送信された立体物情報D11を通信回路22を介して受信すると、記憶処理を実行し(S30)、記憶装置23に立体物情報D11を格納する。演算回路24は、決定処理を実行し(S40)、当該立体物情報D11に基づいて立体物を製造するための製造工程を決定して製造工程情報D14を生成し、記憶装置23に格納する。
【0106】
演算回路24は、判定処理を実行し(S51)、立体物情報D11が有する情報により決定される立体物の立体物形状が、製造工程での製造に適するかどうか判定する。より具体的には、演算回路24は、判定処理において、製造工程情報D14を参照して、立体物形状が1以上の第1工程における所定処理を実行する設備5による製造に適するか否か判定する。立体物形状が1以上の第1工程の第1設備51による製造に適さない場合、演算回路24は、補正処理を実行する(S52)。演算回路24は、補正処理において、立体物形状を当該第1工程の第1設備51による製造に適した形状に補正する。演算回路24は、補正処理において補正して得られた形状を示す情報を有する補正立体物情報D13を記憶装置23に格納する。演算回路24は、調整処理を実行し(S53)、1以上の第2工程における所定処理に基づいて、補正処理によって得られた形状をもとに、1以上の第1工程の結果物の目標形状を決定する。演算回路24は、調整処理において、当該目標形状を有する造形物情報D12を生成する。
【0107】
判定処理(S51)において、立体物形状が1以上の第1工程の第1設備51による製造に適する場合、演算回路24は、調整処理を実行する(S53)。演算回路24は、調整処理において、1以上の第2工程の所定処理に基づいて、当該立体物形状をもとに、1以上の第1工程の結果物の目標形状を決定する。演算回路24は、調整処理において、当該目標形状を有する造形物情報D12を生成する。
【0108】
このようにして、演算回路24は、本実施の形態における情報調整処理(S50)に類する処理を、判定処理(S51)、補正処理(S52)および調整処理(S53)によって行い、立体物情報D11を造形物情報D12に変換する。演算回路24は、判定処理(S51)、補正処理(S52)および調整処理(S53)において、立体物情報D11を造形物情報D12に変換する際に行った調整処理に関する調整情報D16を生成し、記憶装置23に格納する。
【0109】
演算回路24は、選択処理を実行し(S60)、立体物の製造に用いる設備5を選択する。より具体的には、演算回路24は、選択処理において、製造工程情報D14および調整情報D16を参照して、1以上の第1設備51から1以上の特定の第1設備51を選択する。演算回路24は、同様に、1以上の第2設備52から1以上の特定の第2設備52を選択する。演算回路24は、選択処理において、1以上の第2工程に利用する1以上の特定の第2設備を選択できない場合(S60:No)、エラーを出力し、当該エラーに関する情報を記憶装置に格納して入出力装置21に表示し、製造システム1の動作を終了する。演算回路24は、1以上の特定の第2設備を選択できる場合(S60:Yes)、かつ補正処理(S52)を実行した場合(S61:Yes)、記憶装置23に格納されている補正立体物情報D13を、通信回路22を通じて端末装置6に送信する。また、演算回路24は、選択でき(S60:Yes)、かつ補正処理を実行しなかった場合(S61:No)後述する実行処理(S70)を実行する。
【0110】
端末装置6では、演算回路64が受信処理を実行し(S62)、製造実行システム2で生成された補正立体物情報D13を、製造実行システム2から通信回路62を介して受け取る。演算回路64は、出力処理を実行し(S63)、受信処理で受け取った補正立体物情報D13を入出力装置61により提示する。演算回路64は、依頼者が補正して得られた形状による立体物の製造を承認したかどうかを確認する(S64)。依頼者の承認が得られなかった場合(S64:No)、演算回路64は、依頼者の承認が得られなかったことを製造実行システム2に通知する。この場合、製造実行システム2では、演算回路24が補正処理(S52)から再度処理を実行してもよい。
【0111】
依頼者の承認が得られた場合(S54:YES)、演算回路64は、依頼者の承認が得られたことを製造実行システム2に通知する。この場合、製造実行システム2では、演算回路24が実行処理を実行する(S70)。それにより、演算回路24は、選択処理で選択された1以上の特定の第1設備51および1以上の特定の第2設備52を用いて、製造工程情報D14および造形物情報D12にしたがって立体物の製造をするための指示を必要な管理システム4に与える。これによって、製造システム1では、立体物が製造され、依頼者の指定する届け先に届けられる。
【0112】
(実施の形態のまとめ)
以上のように、本実施の形態に係る情報処理システム、情報処理方法、プログラムおよび製造実行システムは、以下のように構成してもよい。
【0113】
(態様1)情報処理システムは、アディティブマニュファクチャリング技術を利用する第1工程と、アディティブマニュファクチャリング技術とは異なる製造技術を用いて前記第1工程の結果物に対して所定処理を実行する第2工程とを含む製造工程により製造される立体物の立体物形状を決定するための情報を有する立体物情報を記憶する1以上の記憶装置と、情報調整処理を実行する演算回路と、を備え、前記情報調整処理は、前記第2工程で実行される前記所定処理の内容に基づいて、前記立体物情報を、前記結果物の目標形状を決定するための情報を有する造形物情報に変換する。
【0114】
(態様2)態様1の情報処理システムにおいて、前記情報調整処理は、前記立体物形状を前記所定処理での形状変化を補償するように修正することによって前記結果物の目標形状を決定してもよい。
【0115】
(態様3)態様2の情報処理システムにおいて、前記形状変化は、前記所定処理による前記結果物の寸法の減少を含み、前記結果物の目標形状は、前記寸法の減少により前記立体物形状に対応する形状となるように決定されてもよい。
【0116】
(態様4)態様2または態様3の情報処理システムにおいて、前記形状変化は、前記所定処理による前記結果物の寸法の増加を含み、前記結果物の目標形状は、前記寸法の増加により前記立体物形状に対応する形状となるように決定されてもよい。
【0117】
(態様5)態様2から態様4のいずれか一つの情報処理システムにおいて、前記形状変化は、前記所定処理による前記結果物の変形を含み、前記結果物の目標形状は、前記熱変形により前記立体物形状に対応する形状となるように決定されてもよい。
【0118】
(態様6)態様1から態様5のいずれか一つの情報処理システムにおいて、前記情報調整処理は、前記立体物形状に前記所定処理において前記立体物の固定に利用される固定形状を付加することによって前記結果物の目標形状を決定してもよい。
【0119】
(態様7)態様1から態様6のいずれか一つの情報処理システムにおいて、前記情報調整処理は、前記立体物と、前記所定処理において前記立体物の固定に利用される前記立体物とは別体の補助具とが前記第1工程で形成されるように前記結果物の目標形状を決定してもよい。
【0120】
(態様8)態様1から態様7のいずれか一つの情報処理システムにおいて、前記情報調整処理は、前記立体物形状が前記第1工程の設備による製造に適するかどうかを判定し、前記立体物形状が前記第1工程の設備による製造に適しない場合は、前記立体物形状を前記第1工程の設備による製造に適した形状に補正して得られる形状をもとに前記結果物の目標形状を決定し、前記立体物形状が前記第1工程の設備による製造に適する場合は、前記立体物形状をもとに前記結果物の目標形状を決定してもよい。
【0121】
(態様9)1以上の記憶装置にアクセス可能な演算回路により実行される情報処理方法は、前記1以上の記憶装置は、アディティブマニュファクチャリング技術を利用する第1工程と、アディティブマニュファクチャリング技術とは異なる製造技術を用いて前記第1工程の結果物に対して所定処理を実行する第2構成とを含む製造工程により製造される立体物の立体物形状を決定するための情報を有する立体物情報を記憶し、前記情報処理方法は、前記第2工程で実行される前記所定処理の内容に基づいて、前記立体物情報を、前記結果物の目標形状を決定するための情報を有する造形物情報に変換する情報調整処理を含む。
【0122】
(態様10)プログラムは、態様9の情報調整方法を前記演算回路に実行させることができる。
【0123】
(態様11)製造実行システムは、態様1から態様8のいずれか一つの情報処理システムと、前記情報処理システムからの前記造形物情報に基づいて前記立体物の製造を実行させる実行システムと、を備える。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本開示によれば、立体物の形状を示す情報を有する立体物情報に基づいて、アディティブマニュファクチャリング技術を用いた製造工程より後に実行される製造工程を考慮した形状を示す情報を自動的に生成する情報処理システム、情報調整方法、プログラムおよび製造実行システムを提供ことができるため、この種の産業分野において好適に利用できる。
【符号の説明】
【0125】
1 製造システム
2 製造実行システム
2A 情報処理システム
2B 実行システム
4 管理システム
6 端末装置
23 記憶装置
24 演算回路
D11 立体物情報
D12 造形物情報
D13 補正立体物情報
D14 製造工程情報
D15 設備情報
D16 調整情報