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特許7203451電解液の分散が改善された電極組立体およびフロー電池
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】電解液の分散が改善された電極組立体およびフロー電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20230105BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20230105BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/2465
H01M4/86 M
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021101295
(22)【出願日】2021-06-18
(62)【分割の表示】P 2018524725の分割
【原出願日】2016-11-15
(65)【公開番号】P2021168296
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】62/256,847
(32)【優先日】2015-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518164526
【氏名又は名称】インビニティ エナジー システムズ(カナダ)コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】INVINITY ENERGY SYSTEMS(CANADA)CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】クラッセン,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ブラッカー,リッキー
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/115269(WO,A1)
【文献】特開昭60-163377(JP,A)
【文献】特開2002-184424(JP,A)
【文献】特表2004-519814(JP,A)
【文献】特開2015-111600(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0318561(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0140457(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/18
H01M 8/2465
H01M 4/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
双極板によって分離されたフローセルのスタックを含むフロー電池において、各フローセルが、セパレータによって分離された正電極組立体および負電極組立体を含み、各電極組立体が、フレームによって取り囲まれた多孔性電極材料を有し、前記フローセルのスタックが、2つのエンドプレートが設けられた円筒状のプラスチック外殻に封入され、前記フローセルのスタックが前記円筒状のプラスチック外殻の内壁に接続され、前記円筒状のプラスチック外殻および前記2つのエンドプレートが電気的に非伝導性の材料でできており、および前記円筒状のプラスチック外殻が前記フローセルを半径方向に圧縮し、かつ前記2つのエンドプレートが前記フローセルを軸方向に圧縮し、
前記フローセルのスタックが、長方形の外部形状であって、その角が前記円筒状のプラスチック外殻の内部表面と接続している長方形の外部形状を有して、前記スタックと前記円筒状のプラスチック外殻との間に4つの区画を生成していることを特徴とするフロー電池。
【請求項2】
請求項1に記載のフロー電池において、前記円筒状のプラスチック外殻の前記材料および前記エンドプレートの前記材料が、前記フレームの材料とほぼ同じ熱膨張係数を有することを特徴とするフロー電池。
【請求項3】
請求項2に記載のフロー電池において、前記フレーム、前記円筒状のプラスチック外殻、および前記エンドプレートの前記材料がポリエチレンまたはポリプロピレンであることを特徴とするフロー電池。
【請求項4】
請求項に記載のフロー電池において、前記スタックの前記角が封止材を通して前記円筒状のプラスチック外殻の前記内壁に接続されて、前記スタックと前記円筒状のプラスチック外殻との間に、4つの密閉された区画であって、それを通して正極電解液および負極電解液を流すための4つの密閉された区画を生成していることを特徴とするフロー電池。
【請求項5】
請求項1に記載のフロー電池を作る方法において、
a.前記円筒状のプラスチック外殻および前記2つのエンドプレートを設けるステップと、
b.前記フローセルが前記円筒状のプラスチック外殻の前記内壁に接続され、および前記円筒状のプラスチック外殻が前記フローセルを半径方向に圧縮するように、前記円筒状のプラスチック外殻内に前記フローセルのスタックを配置するステップと、
c.前記2つのエンドプレート間で前記フローセルのスタックを軸方向に圧縮するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極材料内の電解液の分散の改善を可能にする構造を有する、フロー電池のための電極組立体、およびこのような電極組立体を含むフロー電池に関する。
【背景技術】
【0002】
レドックスフロー電池としても知られているフロー電池は、電気エネルギーを貯蔵可能な化学エネルギーに変換し、次に、需要があるときに放出される電気エネルギーに変換することができる。
【0003】
フロー電池は、可逆的な電気-化学反応に関与する液体電解質を使用することにより、他の電気化学的装置、例えば、燃料電池と区別される。燃料電池は、気体燃料を用いてエネルギーを生成するがエネルギーを貯蔵せず、一方、フロー電池は、エネルギーを生成しないがエネルギーを貯蔵し、放出する。これが燃料電池とフロー電池との間の基本的な違いである。しかし、これらの2つのタイプの電気化学セル間には他にも多くの違いがある。それらのいくつかについて本明細書でさらに説明する。
【0004】
図1に参照番号10によって図示されているような基本的なフロー電池は、負電極12および正電極14がセパレータ16によって分離されたレドックスフローセル11を含む。負極液体電解質17は、貯槽18から負電極に送達され、正極液体電解質19が貯槽20から正電極に送達され、電気化学的に可逆的なレドックス反応を駆動する。セパレータは、微多孔性セパレータまたはイオン交換膜とすることができる。また、セパレータは、電極を分離し、電解液の混合を防ぐが、選択されたイオンを通過させてレドックス反応を完了する。示されているように、フロー電池は、多孔性電極12に隣接して配置された第1の集電板22、および多孔性電極14に隣接して配置された第2の集電板24を含む。多孔性電極は、液体電解質17に関して導電性であり、液体電解質19に関して触媒活性な材料で構成され、耐食性であることが好ましい。集電板は、導電性に優れ、かつフローセル内部の高酸性環境において化学的に安定した材料でできていることが好ましい。集電板は、電気スイッチ34を介して、電源30を通る回路(充電に関して)または電源負荷32への回路(放電に関して)の何れかを完成させる導体26および導体28に結合されている。
【0005】
図1におけるセパレータによって分離された正電極および負電極は、フローセル11を形成している。フロー電池スタックは、概して、フロー電池の設計容量に応じて2つ以上のフローセルを含み、2つの隣接するフローセルが双極板によって分離されている。動作時、液体電解質17および液体電解質19は、フローセルのスタックに送達されて、電気エネルギーを化学エネルギーに変換するか、または化学エネルギーを、電源負荷への電気的接続を通して放電することが可能な電気エネルギーに変換する。
【0006】
フロー電池には、各電解液が各セルの入口から出口まで多孔性電極を完全に通って流れるものもある。この種のフロー電池では、電解液の流れは、電極の多孔性材料の流れ抵抗のために圧力の低下が大きくなる場合がある。他のフロー電池では、液体電解質は、双極板の何れか一方の側に設けられた経路を通って流れ、隣接した電極内に拡散する。この種の設計により、流路を通って無制限に電解液が流れるため、圧力の低下が小さくなるが、電極への電解液の分散が不均一であるため、性能が比較的低い。
【0007】
双極板に流れ場経路が設けられたいくつかのフロー電池は、流れ場の設計を変更することにより、電極内に比較的均一な電解液の分散を実現し、電極での電解液の濃度勾配を防止しようと試みることでこの問題に対処している。
【0008】
例えば、この問題を解決するために、米国特許出願公開第20120244395号明細書は、出口または入口が少なくとも部分的に塞がった、櫛歯が互いに噛み合う経路を有することにより、電解液が経路のリブの下を液体-多孔性電極を通って流れざるを得ないようにした流れ場について記載している。液体電解質の流れがリブの下の電極を通らざるを得ないようにすることにより、上述したようなフロー電池のいくつかのフロースルー構成におけるように、流れが電極を完全に通る場合よりも圧力の低下が軽減され、電解液の電極への露出を高めるという利益を有することが主張されている。
【0009】
他の設計では、例えば、国際公開第2016/072254号パンフレットに記載されているように、成型プレートに形成されるかまたは切り込まれた溝が双極板に長手方向に設けられ、電解液供給経路および電解液放出経路を生成し、供給側と放出側との間の圧力の不均一により生じる極板フレームの変形を軽減し易くしている。双極板は、電解液の供給経路と放出経路との間に電解液誘導部をさらに含み、これにより、電解液の流れを電極に導く。電解液の供給経路および放出経路は、プラスチック保護板によって覆われており、電解液の流れを電極に導き易くしている。出願人は、電極への電解液の分散を向上し易くする電解液誘導部に溝が設けられていれば、性能の向上が実現されると述べている。この先行技術文献におけるセルの電極、例えば、正電極または負電極は、それぞれ1個で形成されるのではなく、少なくとも2つの部分に分割され、各部分は双極板の電解液誘導部に面している。電極部分は、電解液の供給経路および放出経路から一定の距離を置いて配置されて、電解液誘導領域を生成し、電解液の供給経路および放出経路を部分的にのみ覆うことができる。この先行技術文献で開示された設計は、いくつかの部品と、双極板に切り込まれるかまたは形成された電解液流通溝を覆うプラスチック保護板とを含む電極が必要であり、かつ電解液流通経路を妨害しないように、電極部品の適切な位置決めが必要な構成を伴っており、複雑である。
【0010】
フロー電池全般に特徴的な別の問題は、フローセル内への電解液導入口が、スタックの1つのセルから次のセルへの漏電電流の導電路であることである。イオン伝導性の電解液に起因する、流体経路を流れるシャント電流の問題は、例えば、燃料電池では問題ではないが、フロー電池では対処する必要がある重要なことである。この問題は、セルへの流路およびセルからの流路に沿って実効抵抗を増加させ、セルからセルへの漏電電流を低減することにより解決可能である。抵抗の増加を実現する1つの方法は、電解液流路の長さの断面積に対する比率を増加させることであるが、これは、概して、電極を取り囲むフレーム内の電解液流路を長くすることにより行われた。電解液流路の長さの増加は、セルを流れるときの電解液の圧力低下を低減することにより、電解液のポンピングエネルギー損失を低減し、かつ各セルにおいて均一な流れの分散を実現する必要性と釣り合いの取れたものでなければならない。
【0011】
組み立て中、フローセルのスタックは、2つのエンドプレート間に配置され、エンドプレートに加えられた圧縮力によって互いに接触した状態に保たれる。フロー電池スタックを組み立てるために必要な圧縮力は、例えば、燃料電池スタックを組み立てるために必要な圧縮よりも小さい。フロー電池では、スタックは、典型的には、プラスチック製フレームと、金属製またはプラスチック製エンドプレートとを有し、金属製ロッドおよびナットでスタックを一緒に保持する。プラスチックおよび金属の熱膨張係数は非常に異なるため、温度の変動に対して、所望される安定したスタック圧縮力を確保するためにクランプシステムにおいてバネが必要である。
【0012】
現存のシステムに関連する既知の課題に鑑みて、簡単で効率的な構造の電極組立体およびセルスタック組立体を用いることにより、電極中のより良好な電解液の分散を可能にし、スタックに発生するシャント電流の危険性を減らすフロー電池が必要である。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、フロー電池のための電極組立体であって、多孔性電極材料と、多孔性電極材料を取り囲むフレームと、多孔性電極材料に埋め込まれた少なくとも分配管であって、多孔性電極材料に電解液を供給するための入口を有する分配管と、多孔性電極材料に埋め込まれた少なくとも別の分配管であって、多孔性電極材料から電解液を放出するための出口を有する別の分配管とを含む電極組立体について説明する。フレームおよび分配管は、電気的に非伝導性のプラスチック材料でできている。
【0014】
本発明による電極組立体の好適な実施形態では、分配管が、フレームの第1の側とフレームの第2の側との間に、フレームの2つの側間の中間点を越えて延在している。
【0015】
本発明の第1の実施形態では、多孔性電極材料に電解液を供給するための入口を有する分配管は、フレームに密閉された出口をそれぞれ有し、および多孔性電極材料から電解液を放出するための出口を有する分配管は、フレームに密閉された入口をそれぞれ有する。
【0016】
分配管は、内部流路と、内部流路を取り囲む壁とを有する空管である。好適な実施形態では、空管の壁が、穴が設けられた固体材料でできており、電解液の流れが分配管の壁を通って多孔性電極材料中へ入ることを可能にする。あるいは、空管の壁は、多孔性材料でできており、電解液の流れが分配管の壁を通ることを可能にする。
【0017】
本発明の第2の実施形態では、電極材料に電解液を供給するための入口を有する分配管は、多孔性電極材料に開放された出口をそれぞれ有し、および電極材料から電解液を放出するための出口を有する分配管は、多孔性電極材料に開放された入口をそれぞれ有する。このような実施形態では、分配管は、内部流路と、内部流路を取り囲む壁とを有する空管であり、空管の少なくとも1つの壁は、固体材料で作ることができる。このような実施形態では、空管の壁は、多孔性電極材料内の電解液のより良好な分散を可能にするために、多孔性材料または少なくとも1つの穴が設けられた固体材料で作ることも可能である。
【0018】
本電極組立体のいくつかの実施形態では、分配管は、管壁の空孔率よりも空孔率が高い多孔性材料でできた内部流路を有する空管である。
【0019】
概して、分配管は、円形の断面を有する。あるいは、本明細書に記載されているように、分配管は、三角形の断面を有する場合がある。
【0020】
好適な実施形態では、分配管は、多孔性電極材料内に完全に埋め込まれている。しかし、他の実施形態では、分配管は、多孔性電極材料に部分的にのみ埋め込まれている。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態では、電極組立体の分配管は、S字曲線形状を有する空管とすることができ、および各分配管の壁は、多孔性電極材料内の電解液の分散を可能にするために、少なくとも1つの穴が設けられた固体材料または多孔性材料で作ることができる。
【0022】
本明細書に記載されている電極組立体の実施形態は、電極材料の領域にわたって均一に分配されている複数の分配管を含むことができる。いくつかの実施形態では、電極組立体の分配管の少なくともいくつかは、同じ断面流量面積を有するか、または長さが等しい。
【0023】
本電極組立体の分配管は、ポリエチレンもしくはポリプロピレン、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、PE共重合体、UHMW PE、熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、およびポリカーボネート合金など、フロー電池内の高酸性環境に適合した他の電気伝導性材料で作ることができる。
【0024】
本発明は、上述した構造および特徴を有する負電極組立体および正電極組立体を含む、少なくとも1つのフローセルを含むフロー電池にも関連する。各フローセルは、正電極組立体と負電極組立体とを分離するセパレータと、第1の双極板および第2の双極板とをさらに含み、各双極板がそれぞれの電極組立体に隣接している。
【0025】
さらに、本発明は、2つのエンドプレートが設けられた円筒状のプラスチック外殻に封入されたフローセルのスタックを含むフロー電池についても説明している。フローセルのスタックは、円筒状のプラスチック外殻の内壁に接続されており、それにより、円筒状のプラスチック外殻がフローセルを半径方向に圧縮し、かつ2つのエンドプレートがフローセルを軸方向に圧縮する。スタックの燃料電池は、双極板によって分離され、各フローセルは、セパレータによって分離された正電極組立体および負電極組立体を含み、および各電極組立体は、フレームによって取り囲まれた多孔性電極材料を含む。円筒状のプラスチック外殻および燃料電池のスタックを封入する2つのエンドプレートは、電気的に非伝導性の材料でできている。
【0026】
好適な実施形態では、円筒状のプラスチック外殻の材料およびエンドプレートの材料が、フレームの材料と同じかまたはほぼ同じ熱膨張係数を有する。例えば、フレーム、円筒状のプラスチック外殻、およびエンドプレートの材料は、ポリエチレンまたはポリプロピレンとすることができる。
【0027】
フローセルのスタックは、長方形の外部形状であって、その角が円筒状のプラスチック外殻の内部表面と接続している長方形の外部形状を有して、スタックと円筒状のプラスチック外殻との間に4つの区画を生成している。より具体的に言えば、スタックの角が封止材を通して円筒状のプラスチック外殻の内壁に接続されて、スタックと円筒状のプラスチック外殻との間に、4つの密閉された区画であって、それを通して正極電解液および負極電解液を流すための4つの密閉された区画を生成している。区画の2つは、それを通して正極電解液を流すためのものであり、および他の2つの区画は、それを通して負極電解液を流すためのものである。
【0028】
いくつかの実施形態では、上述したように、フローセルを半径方向および軸方向にそれぞれ圧縮する2つのエンドプレートが設けられた、円筒状の外殻に封入されたフローセルのスタックは、本発明で説明されている構造を有する電極組立体を有するフローセルを含む。より具体的に言えば、電極組立体は、多孔性電極材料と、多孔性電極材料を取り囲むフレームと、多孔性電極材料に埋め込まれた少なくとも分配管であって、多孔性電極材料に電解液を供給するための入口を有する少なくとも分配管と、多孔性電極材料に埋め込まれた少なくとも別の分配管であって、多孔性電極材料から電解液を放出するための出口を有する少なくとも別の分配管とを含む。このような電極組立体は、本発明で説明されている特徴の何れかを有することができる。
【0029】
本発明によるフロー電池のための電極組立体を製造する方法も記載されている。この方法は、
- フレーム内に多孔性電極材料を配置するステップと、
- 多孔性電極材料を取り囲むフレームに設けられた穴を通してかつ多孔性電極材料中へ位置決め針を挿入するステップと、
- 多孔性電極材料内に位置決め針を挿入することにより、フレームに設けられた穴を通して、かつ多孔性電極材料に設けられた穴を通して分配管を摺動させて、それにより多孔性材料内にかつフレームに対して分配管を位置決めするステップと、
- フレームの穴内に分配管を密閉するステップと
を含む。
【0030】
別の実施形態では、フロー電池のための電極組立体を製造する方法は、
a.少なくとも1つの分配管を電極フレームに固定するステップと、
b.分配管にわたり、電極フレームに隣接して多孔性電極材料を配置するステップと、
c.電極フレーム、分配管、および多孔性電極材料を圧縮して、多孔性電極材料内に分配管を少なくとも部分的に埋め込むステップと
を含む。
【0031】
すべての実施形態において、フロー電池の電極組立体が、入口または出口がそれぞれ閉鎖されなければならないいくつかの分配管を含むものである場合、電極組立体を製造する方法は、それらの分配管の端部を密閉して、その入口または出口を通って電解液が流れることを防ぐステップをさらに含む。
【0032】
フロー電池スタックを製造する方法も記載されている。この方法は、
a.少なくとも1つの分配管を電極フレームに固定するステップと、
b.分配管を有する電極フレーム、電極材料、セパレータ、別の電極材料、分配管を有する別の電極フレームを重ねて連続的に配置するステップと、
c.スタック内のフローセルが所望の数に達するまでステップa)およびb)を繰り返すステップと、
d.ステップa)~c)において形成された構成要素のスタックを圧縮して、多孔性電極材料内に分配管を少なくとも部分的に埋め込むステップと
を含む。
【0033】
電極組立体が、入口または出口がそれぞれ閉鎖されなければならないいくつかの分配管を含む場合、フロー電池を製造する方法は、それらの分配管の端部を密閉して、その入口または出口を通って電解液が流れることを防ぐステップをさらに含む。
【0034】
フロー電池であって、2つのエンドプレートが設けられた円筒状のプラスチック外殻に封入されたフローセルのスタックを含むフロー電池を作る方法も開示されている。この方法は、
a.円筒状のプラスチック外殻および2つのエンドプレートを設けるステップと、
b.フローセルが円筒状のプラスチック外殻の内壁に接続され、および円筒状のプラスチック外殻がフローセルを半径方向に圧縮するように、円筒状のプラスチック外殻内にフローセルのスタックを配置するステップと、
c.2つのエンドプレート間でフローセルのスタックを軸方向に圧縮するステップと
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図面は、本発明の特定の好適な実施形態を図示しているが、本発明の趣旨または範囲を限定するものとして決して見なされない。
【0036】
図1図1は、従来のフロー電池の一例を図示する。
図2図2Aは、本発明の好適な実施形態による電極組立体の概略図を示す。図2Bは、図2Aに表された電極組立体の線A-Aに沿った断面を示す。図2Cは、図2Aに表された電極組立体の長手方向の断面を図示する。図2Dは、本発明に記載の分配管の1つの、特に図2A図2B、および図2Cに表された実施形態に関する断面図を示す。
図3図3は、本発明の第2の実施形態による電極組立体の断面図を図示する。
図4図4は、本発明の別の実施形態による電極組立体の断面図を図示する。
図5図5は、本発明に記載の電極組立体を製造する1つの方法を図示する。
図6図6Aは、本発明に記載の電極組立体で使用可能な三角形の断面を有する分配管の図を図示する。図6Bは、このような電極組立体を図示する。図6Cは、図6Bに図示したように、断面が三角形の分配管を使用する電極組立体を有するスタックの製造方法のステップを図示する。図6Dは、図6Bに図示したように、断面が三角形の分配管を使用する電極組立体を有するスタックの製造方法のステップを図示する。
図7図7Aは、フロー電池内でフローセルのスタックを圧縮し、密閉するためのシステムおよび方法を図示する。図7Bは、フロー電池内でフローセルのスタックを圧縮し、密閉するためのシステムおよび方法を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
特定の専門用語が本明細書で使用され、以下に提供される定義に従って解釈されることが意図される。加えて、「1つの(a)」および「含む」などの用語は、制限のないものとする。
【0038】
本明細書において、量に関連して、「ほぼ」という用語は、プラス20%までおよびマイナス20%までの範囲であると解釈されるものとする。
【0039】
「完全に埋め込まれた」という用語は、本明細書では、分配管の外側表面が電極材料によって取り囲まれるように、多孔性材料からなる電極内に配置された分配管を説明するために使用される。
【0040】
「部分的に埋め込まれた」という用語は、本明細書では、分配管の外側表面の少なくとも一部分が電極材料によって取り囲まれていない、多孔性材料からなる電極内に配置された分配管を説明するために使用される。
【0041】
図2Aは、本発明の好適な実施形態による電極組立体の概略図を示す。電極組立体40は、フレーム44によって取り囲まれた多孔性電極材料42を含み、分配管46が多孔性電極材料42内に埋め込まれている。この実施形態では、分配管46は、電極組立体40の線A-Aに沿った断面を表す図2Bにさらに図示されているように、多孔性電極材料に完全に埋め込まれている。
【0042】
図2Cにさらに図示されているように、各分配管46の両端部は、フレーム44に設けられた穴45内に位置している。数字41で表示されたような分配管のいくつかは、電解液が貯槽から電極材料まで流れるように設計されている。一方、数字43で表示されたような他の分配管は、電解液が電極材料から貯槽の方に戻って流れるように設計されている。分配管41は、作動中の電池スタックにおいて、電解液供給の流れ50Aに流体接続された開放入口41Aと、密閉出口41Bとを有する。分配管43は、作動中の電池スタックにおいて、密閉入口43Aと、電解液槽への電解液放出の流れ50Bに開放された出口43Bとを有する。分配管の構造のために、作動中のフロー電池では、電解液は、矢印Dによって表示されるように、また、以下でさらに説明するように、管41から電極材料を通って分配管43まで流れることが可能である。
【0043】
図2Dに図示されるように、分配管46は、電解液が中を通って一方向Bに流れる内部流路54を有する管状の形状を有し、壁56が内部流路を取り囲んでいる。分配管の内部流路は、図2Dに図示されているような開放された流路とすることができ、または空孔率が高い材料、より具体的には電極材料よりも空孔率が高い材料を充填することができる。何れの場合にも、分配管の内部流路は、管に沿って低い差圧で管の全長に沿って優先的に電解液が流れることが可能でなければならない。分配管の壁56は、図2Cおよび図2Dに図示されているように、複数の穴58を含むことが可能であることで、図2Cおよび図2Dに矢印Dによって図示されているように、内部流路から電極材料までの電解液の流れが電極材料を通って電解液を分散させること、または図2Cに矢印Eによって図示されているように、電極材料から分配管の内部まで電解液を分散させることが可能になる。穴58は、電解液の分散が電極材料を通って均一になるように、管の長さに沿って均一に分布させることが可能であり、または当業者であれば容易に理解するであろうように、穴の密集度は、より多いまたはより少ない電解液を必要とする電極材料の面積に応じて変わる場合がある。あるいは、分配管46の壁56は、細孔を有する多孔性のスリーブとすることができ、細孔は、内部流路に存在する差圧よりも大きい差圧下で電解液の流れがスリーブを通過することが可能な寸法を有する。
【0044】
図2Cに図示されているように、分配管の端部は、フレーム44の穴45内に密閉され、電解液が、専用の経路を除き、分配管41および43を通って流れることを防ぐ。電解液は、矢印Dによって図示されているように、分配管41の開放入口を通っておよび管の内部流路54を通って流れ、穴58を通って電極材料に分散され、分配管41の近くの電極材料内に配置された分配管43に達し、矢印Eによって図示されているように、管の壁に設けられた穴58を通って分配管43の内部流路に入る。分配管の端部間の差圧が小さいため、電解液は、分配管の出口43Bへかつ電解液放出の流れ50B中へ流れ、電解液槽に戻される。
【0045】
当業者であれば、内部流路の分配管の寸法および分配管の壁の穴の寸法、すなわち、それぞれ内部流路を占める材料の空孔率および壁材の空孔率は、電解液の流れが小さい差圧で内部流路を通ることができるように、また、電解液の流れが電極材料中へ入ることができるように計算されることを認識するであろう。
【0046】
図2Aおよび図2Bでは、分配管は、電極材料の表面全体にわたって均一に分散し、電極組立体の全域にわたって広がっているように図示されている。概して、多孔性電極材料を通る電解液の均一な流れを実現するには、分配管間の頻度および間隔が等しいことが好適であるが、他のいくつかの実施形態では、分配管間の頻度および間隔は変わり得ることを理解されたい。一例として、電解液の分散が均一でない方が好適である場合、分配管は、電極材料の全域にわたって広がっていない。さらに、この実施形態の本説明図では、管はすべて同じ寸法(例えば、断面)を有するように表されている。他の実施形態では、分配管がそれぞれ異なる断面寸法を有することができ、またはいくつかの分配管が異なる断面寸法を有することができる。同様に、いくつかの分配管は、他のものよりも多数の穴または多孔性の高い壁材を有することができる。
【0047】
図3は、本発明の第2の実施形態を図示する。この実施形態では、電極組立体140は、フレーム144によって取り囲まれた多孔性電極材料142と、図2Bに図示された分配管と同様の方法で電極材料に完全に埋め込まれた分配管146とを含む。本説明図を簡単にする目的で、図3では4つの分配管146のみが図示されている。当業者であれば、より多くの分配管を使用することが可能であること、分配管が電極材料の表面にわたって均一に分散され得ること、またはそれらの密集度および頻度が、所望される電解液の分散に応じて、電極組立体のある領域と他の領域とで異なり得ることを容易に理解するであろう。
【0048】
図3では、電極組立体140は、フロー電池におけるような作動状態で図示されており、より具体的には、電解液供給および放出と流体連通して図示されている。図3に図示されているように、1つの分配管141は、電解液供給の流れ150Aに開放された入口141Aと、電極材料へ開放されかつ電解液放出の流れ150Bと連通しない出口141Bとを有する。隣接する分配管143は、電極材料に開放された入口143Aと、電解液放出の流れ150Bに流体連通している出口143Bとを有する。前の実施形態と同様に、分配管146は、壁と内部流路とを有する。唯一の違いは、この第2の実施形態では、電解液が管状の壁を通って流れるようにする穴または細孔を分配管の壁に設けなくてもよいことである。矢印によって図示されているように、電解液は、電極材料内に位置する管の出口を通って出ると、電極材料を通って分散する。次に、電解液は、電極材料に開放された入口を有する隣接する管の1つに入り、電解液放出の流れに接続された管の端部を通って分配管から出る。この構成では、フレームの供給経路/放出経路が唯一のシャント長を提供している従来技術による解決策と比較して、電流シャント長は、電極組立体内のほとんどに提供されている。
【0049】
他のいくつかの実施形態では、必要に応じて、分配管146には、好ましくは、電極材料内に開放された管の端部の方に向けて穴を設けるか、または空孔率が高い壁を設けることが可能である。
【0050】
いくつかの実施形態では、電極フレームに接続された分配管146の端部は、穴145を通してフレームの外側に突出することができる。図3に図示されているように、分配管の長さは様々である場合がある。いくつかの管は等しい長さを有することができ(例えば、l1=l2)、一方で他の管は異なる長さを有することができる(例えば、l1は、l3と異なりかつl4と異なることがある)。
【0051】
図3に図示されている電極組立体は、中間線C-Cを有する。好適な実施形態では、分配管146は、電極材料を通して電解液をより良好に分散させるために中線を越えて延在する。
【0052】
本開示のすべての実施形態において、電極組立体のフレームは、電極材料を通って分配管が貫通するように穴が設けられた射出成形フレームとすることができる。
【0053】
図4は、本発明の別の実施形態を図示する。図4は、2つの分配管のみを図示しているが、当業者であれば、他の実施形態では、3つ以上の分配管を設けることが可能であることを容易に理解するであろう。分配管241は、電解液供給の流れ250Aに接続された入口241Aと、密閉出口241Bとを有するS字曲線形状であり、分配管243も、密閉入口243Aと、電解液放出の流れ250Bに開放された出口243Bとを有するS字曲線形状である。この実施形態では、図2Aおよび図2Bに関して説明したように、分配管には管の壁に穴または細孔が設けられており、また製造を容易にするために、管は、図6Cおよび図6Dと関連して、以下でさらに提示する方法により電極材料に部分的にのみ埋め込まれている。
【0054】
図3に図示されている実施形態の代替的な実施形態では、電極材料に開放された入口または出口を有する分配管146は、図4に図示されているものに類似したS字曲線形状を有することも可能であろう。
【0055】
本明細書に提示されるすべての実施形態において、分配管は、円形の断面形状を有する場合もあれば、任意の他の形状、例えば、図6Aに図示されているような三角形状を有する場合もある。
【0056】
図5は、本発明による、より具体的には、図2A図2Cおよび図3に図示されている実施形態による電極組立体を製造する方法を図示する。分配管46は、位置決め針53を使用して、フレーム44に設けられた穴45を通って多孔性電極材料42に挿入されている。
【0057】
この方法の第1のステップでは、電極材料42がフレーム44内に配置され、次に、位置決め針53が、フレームの一方の側から穴45を通してかつ電極材料を通してフレームの反対側の穴45に達するまで挿入される。次のステップでは、分配管46は、穴45を通してかつ位置決め針の挿入によって電極材料内に設けられた穴を通して摺動される。針は、電極材料内およびフレームの穴に分配管を位置決めし易くする。次に、分配管がフレームの穴に対して漏れ止め溶接され、分配管のいくつかの入口/出口が、作動中のフロー電池の電解液との流体連通を防ぐために密閉される。
【0058】
分配管は、例えば、ポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)で作ることができる。これらは低コストの材料であり、また、フレーム端部に容易に密閉することができ、これにより、製造プロセス全体のコストが低減する。
【0059】
本発明による電極組立体および本発明による電極組立体を製造する方法の別の実施形態が図6A図6B図6Cおよび図6Dに図示されている。図6Aおよび図6Bに図示されている実施形態は、図2Aおよび図2Cに図示されている実施形態に類似しているが、分配管346が三角形の断面を有し、ここでさらに説明するように、分配管が電極材料に部分的にのみ埋め込まれているという違いがある。分配管346には、図6Aに詳細に図示されているように、また、示されていないが、図6B図6Cおよび図6Dの分配管341および343についてさらに示唆されているように、好ましくは分配管の全長に沿って穴358が設けられている。いくつかの分配管341は、電極フレーム344に設けられた電解液入口経路351A(およびそれぞれ作動中のフロー電池の電解液供給経路350A)と流体連通している入口341Aと、密閉された出口341Bとを有し、また一方で、他の分配管343は、密閉された入口343Aと、電極フレーム344に設けられた電解液放出経路351B(およびそれぞれ作動中のフロー電池の電解液放出経路350B)と流体連通している出口343Bとを有する。電解液は、電解液供給経路350Aを通って電極組立体に供給される。電解液供給経路は、フロー電池内で電解液貯槽に流体接続され、電解液は、電極組立体から放出され、電解液放出経路350Bを通って電解液貯槽に戻される。
【0060】
図6Bの実施形態の製造方法が図6Cおよび図6Dに図示されている。分配管346は、図6Bに図示されているように、最初にフレーム344に接続され、次にスタックの構成要素が平坦面上に互いに上下に重ねて配置されることで、接続された分配管およびフレームからなる各組立体が電極材料342の次に位置するように、電極材料342がセパレータ359によって分離され、分配管346を担持しているフレーム344が、それぞれ双極板360により、分配管を有する次のフレームから分離される。このように形成された圧縮されていないスタック370が図6Cに図示されている。
【0061】
この次のステップは、図6Dに図示されているように、分配管346が上から下まで電極材料342に押し込まれ、スタック構成要素間で良好な接続が確保されるようにスタック370を圧縮するステップを伴う。
【0062】
図6Dに示されているように、圧縮されたスタックのこの実施形態では、分配管は、電極材料に部分的にのみ埋め込まれていることにより、参照番号380によって表示された分配管の表面が双極板に接している状態であり、かつ電極材料によって取り囲まれない。
【0063】
図6Cおよび図6Dに図示されている製造方法は、特に図4に図示されている実施形態のように、本明細書に記載された従来の製造方法を用いて組み立てることがより困難である、S字曲線形状の分配管を含む実施形態に推奨される。
【0064】
図7Aおよび図7Bは、フロー電池のフローセルのスタックを圧縮し、密閉するためのシステムおよび方法を図示する。電池は、例えば、本発明の実施形態で説明されている構造を有する電極組立体を有するフローセルを含むことができる。システムは、スタック92を封入する円筒状のプラスチック外殻90を用い、かつ2つのエンドプレート91、および95が設けられ、円筒状のプラスチック外殻およびエンドプレートは、フローセルをスタック内に一緒に保持する一方、すべてのスタック構成要素を密閉している。円筒状のプラスチック外殻はスタックを半径方向に圧縮し、一方、エンドプレートはスタックを軸方向に圧縮している。円筒状のプラスチック外殻90は、円形の内部断面を有するように図示されているが、当業者であれば、円筒状のプラスチック外殻の内部表面がスタックの角または端部と接触する限り、このような内部断面の修正がなされ得ることを容易に理解するであろう。同様に、フローセルのスタックが、ここでは正方形状を有するように図示されていても、他のスタックは、異なる形状(例えば、長方形)を有する場合がある。
【0065】
スタックの4つの角は、円筒状外殻90の内部表面に対して封止材93で密閉されて、スタックと円筒状のプラスチック外殻の内部表面との間に4つの密閉された区画95A、95B、95Cおよび95Dを生成している。区画95Aおよび95Bは、例えば、正極電解液供給区画および放出区画をそれぞれ表し、区画95Cおよび95Dは、負極電解液供給区画および放出区画をそれぞれ表す。この圧縮システムは、本発明で説明されているような構造を有する電極を含むフローセルのスタックでより良好に機能するが、従来技術で既知の構造を有するフローセルのスタックとともに使用することも可能であろう。この圧縮システムは、特に、本明細書に記載の実施形態で図示されているように、セル入口/出口のシャント長が電極材料内の分配管によって生成された、このようなセルのシャント長を電極フレームの外周内に収める必要がない、電極組立体を有するフローセルに適合している。
【0066】
本圧縮システムのプラスチック円筒状外殻90ならびにエンドプレート91および95の材料は、電極フレーム94の材料と同じかまたはほぼ同じ熱膨張係数を有する。熱膨張係数がフレームと同じかまたはほぼ同じであるため、円筒状のプラスチック外殻は、様々な動作温度においてスタックの角で良好な封止を提供し、また、円筒状のプラスチック外殻およびエンドプレートが何れもフレームと同じかまたはほぼ同じである熱膨張係数を有するため、従来技術では、フロー電池スタックの圧縮を維持しながら様々な熱膨張係数を補償するために通常使用されるタイロッドおよびスプリングを使用する必要がない。本圧縮システムでは、フローセルの圧縮は、例えば、-40度~70度で変動し得るスタックの典型的な貯蔵温度および動作温度を通じて一定のままである。
【0067】
本圧縮システムの別の利点は、円筒状のプラスチック外殻とスタックのフレームとの間に形成された4つの密閉された区画が、スタックのフレーム間、またはフレームとフローセルの他の構成要素(例えば、セパレータ、双極板、電極材料)との間のあらゆる内部の漏れを封じ込め得ることである。
【0068】
上述した圧縮システムは、スタックのフローセルに作用する圧縮力が、例えば、燃料電池よりもはるかに小さいことが概して必要なフロー電池スタックに使用することができる。
【0069】
スタックを圧縮および密閉する方法が図7Bに図示されており、この図は、スタック92が円筒状のプラスチック外殻90内を摺動する様子、およびこのように形成された組立体が次にエンドプレート91および95間に配置され、1つに組み立てられる様子を示している。
【0070】
本発明の分配管は、電解液化学に適合した任意の非伝導性材料で作ることができる。例えば、バナジウムフロー電池について、分配管は、低コストの材料であり、フレームの端部に容易に密閉することが可能なポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)で作ることができる。分配管の他の材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、PE共重合体、UHMW PE、熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、およびポリカーボネート合金とすることができるが、これらはごく一例である。本出願に使用し得る市販の管の例としては、Porex(登録商標)またはParker TexLoc(登録商標)によって製造されたものなど、医療用または産業用濾過システムに使用されるプラスチック製の多孔性の管である。
【0071】
本明細書で提示されるすべての実施形態において、電極材料は、多孔性であるが、その容積全体にわたって均一な空孔率を有する場合もあれば、電極材料の空孔率は、特定の領域の電気化学反応を促進するために、他よりも高い空孔率を有する電極材料のそれらの領域に伴って変わる場合もある。
【0072】
本明細書で説明した実施形態において、分配管は、図2Aおよび図2Bに最も良く図示されているように、分配管が電極材料によって完全に取り囲まれていることを意味すると解釈される、「電極材料内に完全に埋め込まれている」か、または図6Bおよび図6Cに最も良く図示されているように、管の表面の少なくとも一部分が電極材料によって取り囲まれておらず、例えば、組み立てられたスタック内で双極板に露出されているが、電極材料には露出されていないことを意味すると解釈される、「電極材料内に部分的に埋め込まれている」場合があるかの何れかである。
【0073】
本開示全体を通して、電極フレームは、角が直線状の長方形状を有するように図示されている。当業者であれば、他の実施形態では、電極フレームが他の形状、例えば、丸みのある角等を有する長方形状を有し得ることを容易に理解するであろう。いくつかの図において、電極材料(例えば、42、142、242)は、多孔性材料であるように図示されていないが、当業者であれば、これは、図面を単純化する目的で行われたものであり、すべての図において、多孔性電極材料が図6Dの電極材料342として図示されていることが暗に示されていることを理解するであろう。
【0074】
本明細書で説明したすべての実施形態において、電池スタックのフローセルの負電極組立体と正電極組立体とを分離するセパレータは、微多孔性セパレータまたはイオン交換膜の何れかとすることができる。
【0075】
本明細書で説明したすべての実施形態において、電極を分離する双極板には、電極材料に完全に埋め込まれた分配管または電極材料に部分的に埋め込まれた分配管を通して電解液の循環が実現されるため、いくつかの先行技術文献に記載されているように、フロー電解液を循環、誘導、または調整するためのフレームおよび/または機能が提供されていない。本発明において図示されている双極板は、導電性であるが、分配管および/または電極を分離する役割のみを有する。
【0076】
本発明によるフロー電池の一例は、酸化状態が異なるバナジウムイオンを用いて、化学ポテンシャルエネルギーを貯蔵する充電式フロー電池であるバナジウムフロー電池である。
【0077】
本発明の利点は、本明細書で説明した構造を有する電極組立体が、少ない圧力の低下で電極材料を通して電解液の分散の改善をもたらし、延長されたシャント長に対応するためのフレーム面積または材料を追加する必要なしに、シャント電流の制御を提供することである。本電極組立体は、製造が容易であり、電解液の分散経路に対してある程度の高い公差で電極を配置し、および/または取り付けすることを必要とせず、従来技術のように、双極板をプラスチック製のセルフレームに永続的に取り付けたり、ボンディングしたりすることを必要とせず、むしろ大量生産に適した低コストの材料および生産技術を使用する。さらに、本発明で開示されている設計では、電極材料内の分配管の配置および設計により、電解液の流量および反応速度が増加する場合があり、また、電極特性(空孔率、電解液の分散等)を変更して、従来技術において既知の解決策よりも高いエネルギー効率および高い電流密度を実現することができる。
【0078】
本発明の特定の要素、実施形態、および用途が示されかつ説明されてきたが、当然のことながら、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、特に前述の教示を踏まえて、当業者により修正形態がなされ得るため、本発明はそれらに限定されないことが理解されるであろう。そのような修正形態は、本明細書に添付される特許請求の範囲の権限および範囲内にあると見なされるものとする。

図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7