(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】赤外線透過フィルタ、および赤外線透過フィルタを加飾するためのフィルム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20230105BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20230105BHJP
【FI】
G02B5/22
B32B7/023
(21)【出願番号】P 2021181855
(22)【出願日】2021-11-08
【審査請求日】2021-11-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114813
【氏名又は名称】ヤマックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松木 数磨
(72)【発明者】
【氏名】久保 誠一
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-168264(JP,A)
【文献】特開2004-198617(JP,A)
【文献】特開2005-257721(JP,A)
【文献】国際公開第2021/220946(WO,A1)
【文献】特開2011-180475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
B32B 7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線透過性を有するブラック層と、
パール顔料を含むパール層と、
意匠層と、を備える赤外線透過フィルタであって、
透明性を有する基材をさらに備え、
前記赤外線透過フィルタの少なくとも一部において、前記ブラック層、前記パール層
、前記意匠層
、および前記基材が、前記赤外線透過フィルタの厚み方向にこの順に並んでおり、
前記意匠層が、複数の第1色ドットにより構成された第1色パターン層、および複数の第2色ドットにより構成された第2色パターン層を備え、前記第2色パターン層が、前記第1色パターン層の少なくとも一部に重なっており、
前記意匠層が、前記第1色パターン層の少なくとも一部、および/または前記第2色パターン層の少なくとも一部に重なる、複数の第3色ドットにより構成された第3色パターン層をさらに備え、
前記意匠層が、複数の第4色ドットにより構成された第4色パターン層をさらに備え、
前記第1色ドット、前記第2色ドット、前記第3色ドット、および前記第4色ドットのうちで、第1色ドットが前記基材に最初に印刷されており、
前記第1色ドット、前記第2色ドット、前記第3色ドット、および前記第4色ドットのうちで、前記第1色ドットの彩度が最も低く、かつ、前記第1色ドットの明度が最も低く、
前記赤外線透過フィルタが、少なくとも前記第1色パターン層
、前記第2色パターン層、
前記第3色パターン層、および前記第4色パターン層により構成されたデザインを有しており、前記デザインが、模様、柄、絵、写真、および記号状の少なくとも一つを含む、
赤外線透過フィルタ。
【請求項2】
前記意匠層がベタ層を備える、請求項1に記載の赤外線透過フィルタ。
【請求項3】
全面にわたって赤外線透過性を有する、請求項1または2に記載の赤外線透過フィルタ。
【請求項4】
前記パール層がベタ層を備える、請求項1~3のいずれかに記載の赤外線透過フィルタ。
【請求項5】
赤外線透過フィルタを加飾するためのフィルムであって、
パール顔料を含むパール層と、
前記パール層の少なくとも一部と、直接的または間接的に重なる意匠層と、を備え、
透明性を有する基材をさらに備え、
前記意匠層が、複数の第1色ドットにより構成された第1色パターン層、および複数の第2色ドットにより構成された第2色パターン層を備え、前記第2色パターン層が、前記第1色パターン層の少なくとも一部に重なっており、
前記意匠層が、前記第1色パターン層の少なくとも一部、および/または前記第2色パターン層の少なくとも一部に重なる、複数の第3色ドットにより構成された第3色パターン層をさらに備え、
前記意匠層が、複数の第4色ドットにより構成された第4色パターン層をさらに備え、
前記第1色ドット、前記第2色ドット、前記第3色ドット、および前記第4色ドットのうちで、前記第1色ドットが前記基材に最初に印刷されており、
前記第1色ドット、前記第2色ドット、前記第3色ドット、および前記第4色ドットのうちで、前記第1色ドットの彩度が最も低く、かつ、前記第1色ドットの明度が最も低く、
前記フィルムが、少なくとも前記第1色パターン層
、前記第2色パターン層
、前記第3色パターン層、および前記第4色パターン層により構成されたデザインを有しており、前記デザインが、模様、柄、絵、写真、および記号状の少なくとも一つを含む、
フィルム
(ただし、前記意匠層が光輝性顔料を含有する場合を除く。)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は赤外線透過フィルタ、および赤外線透過フィルタを加飾するためのフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
リモコンの受光部や、携帯電話の赤外線受信部などに赤外線透過フィルタを使用することが知られている。赤外線透過フィルタは、可視光を吸収することによって可視光を遮蔽するとともに、赤外線(たとえば近赤外線)領域の光を透過させることができる。赤外線透過フィルタを、リモコン(たとえばリモコンの受光部)や、携帯電話(たとえば携帯電話の赤外線受信部)といった機器に使用することによって、可視光の機器への影響(たとえば誤作動)を抑えることができる。赤外線透過フィルタは、そのような機能を果たすことから、可視光カットフィルタと呼ばれることもある。
【0003】
赤外線透過フィルタは、可視光を吸収するため黒色を呈する製品が一般的であるところ、赤外線透過フィルタにデザインを施す試みがなされたことがある(特許文献1参照)。そのような試みがなされた赤外線透過フィルタに関して、たとえば、特許文献1には、赤外線透過フィルター層と、赤外線透過フィルター層上に、パール顔料を含有する透かし模様層とを備える全面パネル用転写材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、デザインを施すことが可能な赤外線透過フィルタを提供することを目的とする。本発明はまた、赤外線透過フィルタを加飾するためのフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明は、下記項1の構成を備える。
【0007】
項1
赤外線透過性を有するブラック層と、
パール顔料を含むパール層と、
意匠層と、を備える赤外線透過フィルタであって、
前記赤外線透過フィルタの少なくとも一部において、前記ブラック層、前記パール層、および前記意匠層が、前記赤外線透過フィルタの厚み方向にこの順に並んでいる、
赤外線透過フィルタ。
ここで、「意匠層」は、可視光のうち、ある波長の光を吸収することができる着色剤(たとえば、顔料、染料)を含む層を意味する。
「前記ブラック層、前記パール層、および前記意匠層が、前記赤外線透過フィルタの厚み方向にこの順に並んでいる」という表現は、ブラック層およびパール層の間と、パール層および意匠層の間との少なくとも一方に、他の層が存在することを許容する。すなわち、項1に係る赤外線透過フィルタにおいて、ブラック層およびパール層の間と、パール層および意匠層の間との少なくとも一方に、他の層が存在していてもよく、存在しなくてもよい。
【0008】
項1によれば、赤外線透過フィルタが、赤外線透過性を有するブラック層を備えるため、赤外線を透過しつつ、可視光を吸収することができる。そのため、たとえば、可視光の透過に起因する機器(具体的には、赤外線透過フィルタを装着した機器)の誤作動の発生を防止することができる。
【0009】
しかも、赤外線透過フィルタがパール層を備えるため、反射光(たとえば干渉光)を発生させることができる。具体的には、パール層中のパール顔料で反射光を発生させることができる。
【0010】
そのうえ、赤外線透過フィルタが意匠層をさらに備えるため、意匠層を、色フィルタとして機能させることができる。具体的には、パール顔料からの反射光に含まれる可視光のうち、ある波長の光を吸収する色フィルタとして意匠層を機能させることができる。その結果、赤外線透過フィルタにデザインを施すことができる。
【0011】
本発明は、下記項2以降の構成をさらに備えることが好ましい。
【0012】
項2
前記意匠層が、複数のドットにより構成された層を備える、項1に記載の赤外線透過フィルタ。
【0013】
項2によれば、意匠層が、複数のドットにより構成された層を備えるため、ドットを利用したデザインが可能となる。たとえば、複数のドットが、第1色ドット、第2色ドット、および第3色ドットを含み、しかも、これら(すなわち、第1色ドット、第2色ドット、および第3色ドット)の色の組み合わせが、減法混色の三原色である場合、減法混色が可能であるため、減法混色を利用したデザイン(たとえば、絵や写真といった、色分解を経るデザイン)を施すことができる。
【0014】
項3
前記意匠層がベタ層を備える、項1または2に記載の赤外線透過フィルタ。
ここで、「ベタ層」は、抜け(これは、デザインを構成する貫通孔と言い得る。)が形成されていてもよい、べた状の層を意味する。
【0015】
項3によれば、意匠層がベタ層を備えるため、ベタ印刷を利用したデザインが可能となる。
【0016】
項4
透明性を有する基材をさらに備える、項1~3のいずれかに記載の赤外線透過フィルタ。
【0017】
項4によれば、赤外線透過フィルタが基材を備えるため、たとえば、ブラック層、パール層、意匠層、および基材が、赤外線透過フィルタの厚み方向にこの順に並んでいる場合、ブラック層やパール層、意匠層を基材で保護することができる。しかも、基材が透明性を有するため、基材越しに意匠層を視認することができる。
【0018】
いっぽう、ブラック層、基材、パール層、および意匠層が、赤外線透過フィルタの厚み方向にこの順に並んでいる場合には、ブラック層を基材で保護することができる。
【0019】
項5
全面にわたって赤外線透過性を有する、請求項1~4のいずれかに記載の赤外線透過フィルタ。
【0020】
項5によれば、赤外線透過フィルタが、全面にわたって赤外線透過性を有する、すなわち、赤外線透過性を有さない層(以下、「赤外線カット層」ということがある。)を備えないため、その層を形成するためのコストを低減することができる。
【0021】
項6
前記パール層がベタ層を備える、項1~5のいずれかに記載の赤外線透過フィルタ。
ここでも、「ベタ層」は、抜けが形成されていてもよい、べた状の層を意味する。
【0022】
項6によれば、パール層がベタ層を備えるため、網点面積率(すなわち、ドットで覆われた面積が、単位面積に占める比率)100%未満の層である場合に比べて、ブラック層の色の、意匠層への色への影響を低減することができる。
【0023】
項7
赤外線透過フィルタを加飾するためのフィルム(以下、「加飾用フィルム」と言うことがある。)であって、
パール顔料を含むパール層と、
前記パール層の少なくとも一部と、直接的または間接的に重なる意匠層と、を備える、
フィルム。
【0024】
項7によれば、加飾用フィルムが、パール顔料を含むパール層を備えるため、反射光(たとえば干渉光)を発生させることができる。
【0025】
しかも、加飾用フィルムが意匠層をさらに備えるため、意匠層を、色フィルタとして機能させることができる。具体的には、パール顔料からの反射光に含まれる可視光のうち、ある波長の光を吸収する色フィルタとして意匠層を機能させることができる。
【0026】
その結果、加飾用フィルムによって、赤外線透過フィルタ、たとえば未加飾の赤外線透過フィルタを加飾することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施形態における赤外線透過フィルタの概略断面図である。
【
図2】(a)および(b)は、本実施形態における赤外線透過フィルタから、ブラック層およびパール層を省いた上で部分拡大した図である。(a)は、意匠層を手前に配置したうえで赤外線透過フィルタ(具体的には、ブラック層およびパール層が省かれた赤外線透過フィルタ)を垂線方向で見た場合の概略図、すなわち概略平面図である。いっぽう、(b)は、(a)に示されたIIb切断線で赤外線透過フィルタ(具体的には、ブラック層およびパール層が省かれた赤外線透過フィルタ)を切断した際の概略断面図である。
【
図3】本実施形態における赤外線透過フィルタの概略断面図(部分拡大版)である。
図3では、ブラック層およびパール層が省かれていないのに対して、
図2の(b)では、これらが省かれている点で、
図3は、
図2の(b)とは異なる。
【
図4】本実施形態における加飾用フィルムの概略断面図である。
【
図5】本実施形態の変形例に係る赤外線透過フィルタの概略断面図(部分拡大版)である。
【
図6】本実施形態の変形例に係る赤外線透過フィルタの概略断面図である。
【
図7】本実施形態の変形例に係る赤外線透過フィルタの概略断面図である。
【
図8】本実施形態の変形例に係る加飾用フィルムの概略断面図である。
【
図9】本実施形態の変形例に係る赤外線透過フィルタの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0029】
<1.赤外線透過フィルタ>
図1に示すように、本実施形態の赤外線透過フィルタ8は、ブラック層81と、パール層82と、意匠層83とを備える。すなわち、赤外線透過フィルタ8は、ブラック層81だけで構成される訳ではなく、パール層82および意匠層83を備えている。赤外線透過フィルタ8は、基材84、すなわち基材フィルム84をさらに備える。赤外線透過フィルタ8は、赤外線透過フィルタ8を垂線方向で見た場合にブラック層81を取り囲むように設けられた層(以下、「周辺層」)85をさらに備える。
【0030】
赤外線透過フィルタ8の少なくとも一部において、ブラック層81、パール層82、意匠層83、および基材84が、赤外線透過フィルタ8の厚み方向にこの順に並んでいる。すなわち、これら(具体的には、ブラック層81、パール層82、意匠層83、および基材84)が、赤外線透過フィルタ8の垂線方向にこの順に並んでいる。ここで、「ブラック層81、パール層82、意匠層83、および基材84が、赤外線透過フィルタ8の厚み方向にこの順に並んでいる」という表現は、ブラック層81およびパール層82の間と、パール層82および意匠層83の間と、意匠層83および基材84の間との少なくとも一か所に、他の層が存在することを許容する。「この順に並んでいる」という記載を含む他の表現も、同様である。
【0031】
<1.1.ブラック層>
赤外線透過フィルタ8は、赤外線透過性を有するブラック層81を備える。赤外線透過フィルタ8が、赤外線透過性を有するブラック層81を備えるため、赤外線を透過しつつ、可視光を吸収することができる。そのため、たとえば、可視光の透過に起因する機器(具体的には、赤外線透過フィルタ8を装着した機器)の誤作動の発生を防止することができる。なお、ブラック層81が呈する色は、もちろん、完全な無彩色の黒色に限らず、色味をいくらかもっていてもよい。
【0032】
ブラック層81の形状、具体的には赤外線透過フィルタ8を垂線方向で見た場合のブラック層81の形状は適宜設定できる。赤外線透過フィルタ8を垂線方向で見た場合、ブラック層81の大きさが、基材84の大きさよりも小さいことが好ましい。
【0033】
ブラック層81はベタ層であることが好ましい。ここで、「ベタ層」は、べた状の層を意味する。すなわち、ブラック層81がベタ状をなすことが好ましい。
【0034】
ブラック層81の厚みは特に限定されないものの、たとえば1μm~50μmが好ましい。なお、ブラック層81は、単層構成であってもよく、複層構成であってもよい。
【0035】
ブラック層81は樹脂を含むことができる。樹脂として、たとえば、天然樹脂、アクリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸系樹脂、スチレン-マレイン酸-アクリル系樹脂、硝酸セルロース、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニルなどを挙げることができる。これらは、一種または二種以上を使用することができる。
【0036】
ブラック層81は着色剤を含むことができる。着色剤として、近赤外線の透過性に優れた着色剤を使用することができる。たとえば、波長800nm~1300nmのなかの少なくとも一波長、好ましくは波長830nm~1250nmのなかの少なくとも一波長の透過性に優れた着色剤を使用することができる。なお、着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。
【0037】
ブラック層81は添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては、たとえば、消泡剤、レベリング剤、滑剤などを挙げることができる。これらは、一種または二種以上を使用することができる。
【0038】
ブラック層81はインキで形成することができる。インキは、ブラック層81の含有可能成分(具体的には、上述した樹脂や着色剤など)に加えて、たとえば溶剤などを含むことができる。溶剤としては、たとえば、有機溶剤(たとえば、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、グリコール系溶剤など)、水などを挙げることができる。ブラック層81を形成ためのインキとして、たとえば、IR BLACK NX、IR BLACK OL、IR BLACK 改A、IR BLACK PEX、IR BLACK BN、IR BLACK FLATといった、セイコーアドバンス社製のIRインキを挙げることができる。
【0039】
<1.2.パール層>
赤外線透過フィルタ8はパール層82を備える。赤外線透過フィルタ8がパール層82を備えるため、反射光(たとえば干渉光)を発生させることができる。具体的には、パール層82中のパール顔料で反射光を発生させることができる。
【0040】
パール層82は、少なくともブラック層81と意匠層83との両者に接していることが好ましい。言い換えると、パール層82は、ブラック層81と意匠層83との間で、少なくともブラック層81と意匠層83とを接続していることが好ましい。
【0041】
パール層82の形状、具体的には赤外線透過フィルタ8を垂線方向で見た場合のパール層82の形状は適宜設定できる。赤外線透過フィルタ8を垂線方向で見た場合、パール層82の大きさが、基材84の大きさよりも小さいことが好ましい。
【0042】
パール層82はベタ層であることが好ましい。ここで、「ベタ層」は、抜けが形成されていてもよい、べた状の層を意味する。すなわち、パール層82がベタ状をなすことが好ましい。パール層82がベタ層であると、網点面積率100%未満である場合に比べて、ブラック層81の色の、意匠層83への色への影響を低減することができる。
【0043】
パール層82の厚みは特に限定されないものの、たとえば1μm~50μmが好ましい。なお、パール層82は、単層構成であってもよく、複層構成であってもよい。
【0044】
パール層82の厚みは、ブラック層81の厚みと同じであってもよく、ブラック層81の厚みより大きくてもよく、ブラック層81の厚みより小さくてもよい。
【0045】
パール層82は樹脂を含むことができる。樹脂として、たとえば、天然樹脂、アクリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸系樹脂、スチレン-マレイン酸-アクリル系樹脂、硝酸セルロース、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニルなどを挙げることができる。これらは、一種または二種以上を使用することができる。
【0046】
パール層82はパール顔料を含む。パール層82がパール顔料を含むため、パール顔料で反射光(たとえば干渉光)を発生させることができる。
【0047】
パール顔料は、真珠光沢を発現させることが可能な顔料である。パール顔料は、いわゆる干渉タイプであっても、いわゆる着色タイプであっても、いわゆる複合タイプであってもよい。なお、パール顔料は、一種または二種以上を使用することができる。
【0048】
パール顔料は、基材と、基材を被覆する金属酸化物を備えることが好ましい。パール顔料の基材として、たとえば雲母、ガラス、オキシ塩化ビスマス、アルミナ、シリカを挙げることができる。金属酸化物として、たとえば、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、酸化鉄を挙げることができる。パール顔料は、有機着色層をさらに備えていてもよい。すなわち、パール顔料は、有機着色層でさらに被覆されていてもよい。
【0049】
パール顔料のサイズ(たとえば粒径)は、近赤外線の透過率に影響を与えるため、近赤外線の透過率を考慮して、パール顔料のサイズを適宜設定することが好ましい。
【0050】
パール顔料の含有量は、インキ100質量%中、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上がさらに好ましく、3.0質量%以上がさらに好ましい。パール顔料の含有量は、インキ100質量%中、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。なぜなら、パール顔料の含有量が少ない程、近赤外線の透過率が高くなる傾向があるためである。
【0051】
パール層82は添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては、たとえば、消泡剤、レベリング剤、滑剤などを挙げることができる。これらは、一種または二種以上を使用することができる。
【0052】
パール層82はインキで形成することができる。インキは、パール層82の含有可能成分(具体的には、パール顔料や樹脂など)に加えて、たとえば溶剤などを含むことができる。溶剤としては、たとえば、有機溶剤(たとえば、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、グリコール系溶剤など)、水などを挙げることができる。
【0053】
<1.3.意匠層>
赤外線透過フィルタ8は意匠層83を備える。赤外線透過フィルタ8が意匠層83を備えるため、意匠層83を、色フィルタとして機能させることができる。具体的には、パール顔料からの反射光に含まれる可視光のうち、ある波長の光を吸収する色フィルタとして意匠層83を機能させることができる。その結果、赤外線透過フィルタ8にデザインを施すことができる。
【0054】
意匠層83は基材84に設けられていることができる。具体的には、意匠層83が、基材84の両面のうち一方の面に設けられていることができる。
【0055】
意匠層83は、パール層82の少なくとも一部と、直接的または間接的に重なる。なかでも、意匠層83は、パール層82の少なくとも一部と直接的に重なることが好ましい。
【0056】
意匠層83の形状、具体的には赤外線透過フィルタ8(または意匠層83)を垂線方向で見た場合の意匠層83の形状は、デザインに応じて適宜設定できる。もちろん、赤外線透過フィルタ8を垂線方向で見た場合における、意匠層83の大きさは、基材84の大きさよりも小さくてもよいし、同じであってもよい。
【0057】
図2および
図3に示すように、意匠層83は、複数の第1色ドット831により構成された第1色パターン層、および複数の第2色ドット832により構成された第2色パターン層を備える。第2色パターン層は、第1色パターン層の少なくとも一部に重なっていてもよく、重なっていなくてもよい。ここで、「第2色パターン層は、第1色パターン層の少なくとも一部に重な」るとは、意匠層83を垂線方向で見たときに、両者(すなわち、第1色パターン層および第2色パターン層)が重なった領域において、第1色ドット831と第2色ドット832とが混在することを意味する。ちなみに、この領域では、第2色ドット832の少なくとも一つが、第1色ドット831の少なくとも一つに重なっていてもよい。なお、
図2では、意匠層83の構成の把握が容易となるように、ブラック層81およびパール層82を省いている。意匠層83が、第1色パターン層および第2色パターン層を備えるため、混色が可能であり、それによって、幅広いデザイン(たとえば、模様、絵、写真といったデザイン)を施すことが可能となる。
【0058】
これに加えて、意匠層83が、第1色パターン層の少なくとも一部、および/または第2色パターン層の少なくとも一部に重なっていてもよい、複数の第3色ドット833により構成された第3色パターン層をさらに備える。第1色ドット831、第2色ドット832、および第3色ドット833の色の組み合わせが、たとえば、減法混色の三原色である場合、減法混色が可能であるため、減法混色を利用したデザイン(たとえば、絵や写真といった、色分解を経るデザイン)を施すことができる。
【0059】
第1色パターン層、第2色パターン層および第3色パターン層の広がりは、デザインに応じてそれぞれ独立に設定できる。ここで、第1色パターン層、第2色パターン層および第3色パターン層の広がりとは、赤外線透過フィルタ8(または意匠層83)を垂線方向で見た場合の、これらの層の広がりを意味する。
【0060】
第1色ドット831、第2色ドット832、および第3色ドット833は円形で示されているものの、これらの形状は、たとえば、矩形であってもよく、多角形であってもよく、その他の形状であってもよい。第1色ドット831、第2色ドット832、および第3色ドット833の形状は、それぞれ独立に設定できる。
【0061】
第1色パターン層の網点面積率、すなわち第1色ドット831で覆われた面積が単位面積に占める比率は、デザインに応じて適宜設定できるところ、たとえば1%~99%であることができる。ここで、「(網点面積率が)1%~99%である」とは、網点面積率が1%以上99%以下に収まることを意味する。よって、たとえば、網点面積率30%の第1色パターン層や、網点面積率が10%から90%に渡る第1色パターン層は、「(網点面積率が)1%~99%である」に該当することになることを念のため断っておく。網点面積率は、5%以上であってもよく、10%以上であってもよく、20%以上であってもよく、30%以上であってもよく、40%以上であってもよく、50%以上であってもよく、60%以上であってもよく、70%以上であってもよく、80%以上であってもよく、90%以上であってもよい。網点面積率は、95%以下であってもよく、90%以下であってもよい。なお、第1色パターン層は、ドットグラデーションのように、部位によって異なる網点面積率を有していていてもよい。
【0062】
第2色パターン層の網点面積率の説明は、第1色パターン層の網点面積率の説明(網点面積率の値や、網点面積率が部位によって異なっていてもよい、といった説明)と重複するため省略する。よって、第1色パターン層の網点面積率の説明を、第2色パターン層の網点面積率の説明としても扱うことができる。第3色パターン層の網点面積率の説明も、同様の理由で省略する。よって、第1色パターン層の網点面積率の説明を、第3色パターン層の網点面積率の説明としても扱うことができる。第1色パターン層、第2色パターン層および第3色パターン層の網点面積率は、それぞれ独立に設定できる。
【0063】
第1色ドット831、第2色ドット832、および第3色ドット833が呈する色は、互いに異なっているところ、それぞれが、シアン色、マゼンダ色、およびイエロー色からなる群より選ばれた一種であることが好ましい。これらの色は、減法混色の三原色であるので、これらの色の組み合わせで減法混色が可能であるため、減法混色を利用したデザイン(たとえば、絵や写真といった、色分解を経るデザイン)を施すことができる。
【0064】
個別に説明すると、第1色ドット831が呈する色は、特に限定されないものの、シアン色、マゼンダ色、およびイエロー色からなる群より選ばれた一種であることが好ましい。第2色ドット832が呈する色も、特に限定されないものの、シアン色、マゼンダ色、およびイエロー色からなる群より選ばれた一種であり、かつ、第1色ドット831とは異なった色であることが好ましい。第3色ドット833が呈する色も、特に限定されないものの、シアン色、マゼンダ色、およびイエロー色からなる群より選ばれた一種であり、かつ、第1色ドット831とも第2色ドット832とも異なった色であることが好ましい。
【0065】
第1色ドット831、第2色ドット832、および第3色ドット833は樹脂を含むことができる。樹脂として、たとえば、天然樹脂、アクリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸系樹脂、スチレン-マレイン酸-アクリル系樹脂、硝酸セルロース、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニルなどを挙げることができる。これらは、一種または二種以上を使用することができる。第1色ドット831、第2色ドット832、および第3色ドット833の樹脂は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0066】
第1色ドット831、第2色ドット832、および第3色ドット833は、可視光のうち、ある波長の光を吸収することができる着色剤を含む。着色剤としては、色を指標とすると、たとえば、シアン着色剤、マゼンダ着色剤、イエロー着色剤を挙げることができる。なお、着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。なかでも顔料が好ましい。第1色ドット831、第2色ドット832、および第3色ドット833において、一種または二種以上の着色剤を使用することができる。
【0067】
個別に説明すると、第1色ドット831の着色剤の色は、特に限定されないものの、シアン色、マゼンダ色、およびイエロー色からなる群より選ばれた一種であることが好ましい。第2色ドット832の着色剤の色も、特に限定されないものの、シアン色、マゼンダ色、およびイエロー色からなる群より選ばれた一種であり、かつ、第1色ドット831の着色剤の色とは異なった色であることが好ましい。第3色ドット833の着色剤の色も、特に限定されないものの、シアン色、マゼンダ色、およびイエロー色からなる群より選ばれた一種であり、かつ、第1色ドット831の着色剤の色とも、第2色ドット832の着色剤の色とも異なった色であることが好ましい。
【0068】
第1色ドット831、第2色ドット832、および第3色ドット833は添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては、たとえば、消泡剤、レベリング剤、滑剤などを挙げることができる。これらは、一種または二種以上を使用することができる。第1色ドット831、第2色ドット832、および第3色ドット833の添加剤は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0069】
第1色ドット831、第2色ドット832、および第3色ドット833はインキで形成することができる。インキは、これら(すなわち第1色ドット831、第2色ドット832、および第3色ドット833)の含有可能成分(具体的には、樹脂や着色剤など)に加えて、たとえば溶剤などを含むことができる。溶剤としては、たとえば、有機溶剤(たとえば、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、グリコール系溶剤など)、水などを挙げることができる。
【0070】
<1.4.基材>
赤外線透過フィルタ8は、透明性を有する基材84を備える。赤外線透過フィルタ8が基材84を備えるため、ブラック層81やパール層82、意匠層83を基材84で保護することができる。しかも、基材84が透明性を有するため、基材84越しに意匠層83を視認することができる。なお、基材84は、赤外線透過性も有する。
【0071】
基材84として、たとえば、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルムなどを例示することができる。ポリエステルフィルムとして、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)、ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム)などを例示することができる。ポリオレフィンフィルムとして、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどを例示することができる。なお、ポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、ホモポリマーであってもよく、コポリマーであってもよい。
【0072】
基材84の片面または両面には易接着処理が施されていてもよい。すなわち、基材84は、たとえば、プラスチック層と、プラスチック層の少なくとも一方の面に易接着層とを有していてもよい。なお、プラスチック層は、単層構成であってもよく、複層構成であってもよい。
【0073】
基材84の厚みは、たとえば、10μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましい。基材84の厚みは、たとえば、1000μm以下であってもよく、700μm以下であってもよく、500μm以下であってもよく、300μm以下であってもよい。
【0074】
<1.5.周辺層>
赤外線透過フィルタ8は、赤外線透過フィルタ8を垂線方向で見た場合にブラック層81を取り囲むように設けられた層、すなわち周辺層85をさらに備える。赤外線透過フィルタ8を垂線方向で見た場合に、周辺層85の縁(厳密には内側の縁)は、ブラック層81の縁(厳密には外側の縁)と、全体的または部分的に重なっていてもよいし、重なっていなくともよい。なお、周辺層85は、基材84上に設けられていることができる。
【0075】
周辺層85は、赤外線透過性を有していてもよく、赤外線透過性を有していなくてもよい。ここで、周辺層85が赤外線透過性を有するかどうかは、たとえば、赤外線透過フィルタ8の周辺層85の形成された領域において、近赤外線の透過率、具体的には波長800nm~1300nmのなかの少なくとも一波長、好ましくは波長830nm~1250nmの少なくとも一波長の光の透過率が50%以上である場合に、周辺層85が赤外線透過性を有する、と判断することができる。
【0076】
周辺層85は樹脂を含むことができる。樹脂として、たとえば、天然樹脂、アクリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸系樹脂、スチレン-マレイン酸-アクリル系樹脂、硝酸セルロース、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニルなどを挙げることができる。これらは、一種または二種以上を使用することができる。
【0077】
周辺層85は着色剤を含むことができる。たとえば、周辺層85が、赤外線透過性を有する場合、着色剤として、近赤外線の透過性に優れた着色剤を使用することができる。たとえば、波長800nm~1300nmのなかの少なくとも一波長、好ましくは波長830nm~1250nmのなかの少なくとも一波長の透過性に優れた着色剤を使用することができる。なお、着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。
【0078】
周辺層85は添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては、たとえば、消泡剤、レベリング剤、滑剤などを挙げることができる。これらは、一種または二種以上を使用することができる。
【0079】
周辺層85はインキで形成することができる。インキは、周辺層85の含有可能成分(具体的には、樹脂や着色剤など)に加えて、たとえば溶剤などを含むことができる。溶剤としては、たとえば、有機溶剤(たとえば、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、グリコール系溶剤など)、水などを挙げることができる。周辺層85を形成ためのインキとして、たとえば、IR BLACK NX、IR BLACK OL、IR BLACK 改A、IR BLACK PEX、IR BLACK BN、IR BLACK FLATといった、セイコーアドバンス社製のIRインキを挙げることができる。
【0080】
周辺層85を形成するために、ブラック層81を形成するためのインキと同一組成のインキを使用してもよい。すなわち、周辺層85の組成が、ブラック層81の組成と同一であってもよい。この場合、周辺層85とブラック層81とで共通のインキを使用することができるため、周辺層85とブラック層81とを一括して印刷することができ、その結果、工数を低減することができる。
【0081】
<1.5.赤外線透過性やデザイン>
赤外線透過フィルタ8は、少なくともブラック層81、パール層82、および意匠層83が、赤外線透過フィルタ8の厚み方向にこの順に並んでいる領域において、近赤外線の透過率、具体的には波長800nm~1300nmのなかの少なくとも一波長、好ましくは波長830nm~1250nmのなかの少なくとも一波長の光の透過率が50%以上であることが好ましい。ここで、「少なくともブラック層81、パール層82、および意匠層83が、赤外線透過フィルタ8の厚み方向にこの順に並んでいる領域」の「少なくとも」は、「ブラック層81、パール層82、および意匠層83」を修飾することを念のため断っておく。この透過率は、55%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましい。
【0082】
赤外線透過フィルタ8は、全面にわたって赤外線透過性を有することが好ましい。具体的には、赤外線透過フィルタ8は、全面にわたって近赤外線の透過率、具体的には波長800nm~1300nmのなかの少なくとも一波長、好ましくは波長830nm~1250nmのなかの少なくとも一波長の光の透過率が50%以上であることが好ましい。赤外線透過フィルタ8が、全面にわたって赤外線透過性を有する、すなわち、赤外線透過性を有さない層(すなわち赤外線カット層。たとえば、上述の赤外線透過性を有さない周辺層85)を備えないため、その層を形成するためのコストを低減することができる。
【0083】
赤外線透過フィルタ8に施されるデザインは特に限定されない。そのデザインは、たとえば、模様や柄、絵、写真、図形のような図案状であってもよく、文字や符号、標章のような記号状であってもよく、これらのうちの二種以上の任意の組み合わせであってもよい。また、無地であってもよい。
【0084】
<2.赤外線透過フィルタの作製方法>
赤外線透過フィルタ8は、たとえば、基材84の上に、インキを印刷し、乾燥することによって意匠層83を形成し、意匠層83が形成された基材84に、インキを印刷し、乾燥することによってパール層82を形成し、パール層82に、インキを印刷し、乾燥することによってブラック層81を形成し、必要に応じて、インキを印刷し、乾燥することによって周辺層85を形成する、という手順で作成することができる。各層の印刷方法は特に限定されず、たとえば、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷などを挙げることができる。各層(具体的には、意匠層83やパール層82、ブラック層81、周辺層85)の印刷方法は、独立に定めることができる。なお、意匠層83を構成する各層(たとえば、第1色パターン層や、第2色パターン層、第3色パターン層など)の印刷方法も、独立に定めることができる。なかでも、スクリーン印刷が好ましい。
【0085】
<3.赤外線透過フィルタの使用例>
赤外線透過フィルタ8は、たとえば赤外線カメラや赤外線センサといった機器に使用することができる。
【0086】
<4.加飾用フィルム>
図4に示すように、本実施形態の加飾用フィルム80は、パール層82と、意匠層83と、基材84とを備える。加飾用フィルム80は周辺層85をさらに備える。加飾用フィルム80の少なくとも一部で、パール層82、意匠層83、および基材84が、加飾用フィルム80の厚み方向にこの順に並んでいる。
【0087】
すなわち、加飾用フィルム80は、ブラック層81を備えていないこと以外は、赤外線透過フィルタ8と同様の構造を備えている。したがって、加飾用フィルム80の構造や部材(具体的には、パール層82、意匠層83、基材84、周辺層85)などの説明は、赤外線透過フィルタ8の構造や部材などの説明と重複するため省略する。よって、赤外線透過フィルタ8の構造や部材などの説明を、加飾用フィルム80の構造や部材などの説明としても扱うことができる。
【0088】
加飾用フィルム80は、赤外線透過フィルタ、たとえば未加飾の赤外線透過フィルタを加飾するために使用することができる。未加飾の赤外線透過フィルタとして、たとえば、黒色を呈する赤外線透過フィルタを挙げることができる。
【0089】
加飾用フィルム80を使用する際、赤外線透過フィルタ(たとえば未加飾の赤外線透過フィルタ)よりも加飾用フィルム80が手前になるように加飾用フィルム80を配置することができる。このとき、加飾用フィルム80の基材84が手前になるように配置することができる。すなわち、加飾用フィルム80のパール層82が、基材84よりも赤外線透過フィルタ寄りとなるように配置することができる。
【0090】
赤外線透過フィルタを加飾するために、たとえば、加飾用フィルム80を赤外線透過フィルタに接着剤や粘着剤でくっつけてもよい。その方法として、たとえば、加飾用フィルム80の周辺層85と赤外線透過フィルタとを接着剤や粘着剤、両面テープ(たとえば両面粘着テープ)でくっつける方法を挙げることができる。いっぽう、赤外線透過フィルタが機器にはめ込まれている場合には、赤外線透過フィルタよりも加飾用フィルム80が手前となるように、赤外線透過フィルタと同じように加飾用フィルム80を機器にはめ込んでもよい。この場合、接着剤や粘着剤、両面テープでくっつける必要はないものの、接着剤や粘着剤、両面テープでくっつけてもよい。
【0091】
<4.本実施形態には種々の変更を加えることができる>
上述の本実施形態には、種々の変更を加えることができる。たとえば、以下の変形例から、一つまたは複数を選択して、上述の本実施形態に変更を加えることができる。
【0092】
上述の本実施形態では、赤外線透過フィルタ8が基材84を備える、という構成を説明した(
図1参照)。しかしながら、本実施形態は、この構成に限定されない。たとえば、赤外線透過フィルタ8が、基材84を備えていなくてもよい。これと同様に、加飾用フィルム80も、基材84を備えていなくてもよい。
【0093】
上述の本実施形態では、赤外線透過フィルタ8が周辺層85を備える、という構成を説明した(
図1参照)。しかしながら、本実施形態は、この構成に限定されない。たとえば、赤外線透過フィルタ8が、周辺層85を備えていなくてもよい。これと同様に、加飾用フィルム80も、周辺層85を備えていなくてもよい。
【0094】
上述の本実施形態では、パール層82がベタ層であることを説明した。しかしながら、本実施形態は、この構成に限定されない。たとえば、パール層82が、ベタ層だけでなく、ベタ層を取り囲むように設けられた(具体的には、赤外線透過フィルタ8を垂線方向で見た場合にベタ層を取り囲むように設けられた)、複数のドットで構成された層をさらに備えていてもよい。なお、このドットで構成された層は、ベタ層とともにドットグラデーションをなしてもよい。もちろん、ドットは、パール層82の含有可能成分(具体的には、パール顔料や樹脂など)を含むことができる。
【0095】
上述の本実施形態では、意匠層83が、第1色パターン層、第2色パターン層、および第3色パターン層で構成されることを説明したものの、本実施形態は、これに限定されない。
たとえば、意匠層83が、複数の第4色ドットにより構成された第4色パターン層をさらに備えていてもよい。第4色パターン層や第4色ドットの説明(たとえば、形状、網点面積率、色、含有可能成分、インキなど)は、第1色パターン層や第1色ドット831の説明と重複するため省略する。よって、第1色パターン層や第1色ドット831の説明を、第4色パターン層や第4色ドットの説明としても扱うことができる。なお、第1色ドット831、第2色ドット832、第3色ドット833、および第4色ドットのうちで、第1色ドット831が最初に基材84に印刷される場合、これらのドットのうちで、第1色ドット831の彩度が最も低く、しかも、第1色ドット831の明度が最も低いことが好ましい。このような第1色ドット831が呈する色として黒色を挙げることができる。このとき、第1色ドット831を形成するために、ブラック層81を形成するためのインキと同一組成のインキを使用してもよい。すなわち、第1色ドット831の組成が、ブラック層81の組成と同一であってもよい。この場合、第1色ドット831とブラック層81とで共通のインキを使用することができるため、インキ数を減らすことができる。ちなみに、この場合(具体的には、第1色ドット831が最初に基材84に印刷される場合)、第2色ドット832が呈する色が、シアン色、マゼンダ色、およびイエロー色からなる群より選ばれた一種であり、第3色ドット833が呈する色が、シアン色、マゼンダ色、およびイエロー色からなる群より選ばれた一種であり、かつ、第2色ドット832とは異なった色であり、第4色ドットが呈する色が、シアン色、マゼンダ色、およびイエロー色からなる群より選ばれた一種であり、かつ、第2色ドット832とも第3色ドット833とも異なった色であることが好ましい。
いっぽう、
図5に示すように、意匠層83が第1色パターン層だけで構成されていてもよい。
これらとは別の例を挙げることもできる。たとえば、意匠層83が、ベタ層を備える例である。ここで、「ベタ層」は、抜けが形成されていてもよい、べた状の層を意味する。この場合、意匠層83が、ベタ層で構成されていてもよいし、意匠層83が、ベタ層と、複数のドットで構成された層を備えていてもよい。後者に関して、たとえば、意匠層83が、ベタ層と、ベタ層を取り囲むように設けられた(具体的には、赤外線透過フィルタ8を垂線方向で見た場合にベタ層を取り囲むように設けられた)、複数のドットで構成された層をさらに備えていることができる。ここで、複数のドットで構成された層は、たとえば、第1色パターン層で構成されていてもよく、第1色パターン層および第2色パターン層で構成されていてもよく、第1色パターン層、第2色パターン層、および第3色パターン層で構成されていてもよく、第1色パターン層、第2色パターン層、第3色パターン層、および第4色パターン層で構成されていてもよい。なお、複数のドットで構成された層は、ベタ層とともにドットグラデーションをなしてもよい。ベタ層やドットは、意匠層83の含有可能成分(具体的には、樹脂や着色剤など)を含むことができる。このように、意匠層83がベタ層を備えると、ベタ印刷を利用したデザインが可能となる。
【0096】
上述の本実施形態では、赤外線透過フィルタ8の少なくとも一部において、ブラック層81、パール層82、意匠層83、および基材84が、赤外線透過フィルタ8の厚み方向にこの順に並んでいる、という構成を説明したものの(
図1や
図3参照)、本実施形態は、この構成に限定されない。
たとえば、
図6に示すように、赤外線透過フィルタ8の少なくとも一部において、基材84、ブラック層81、パール層82、および意匠層83が、赤外線透過フィルタ8の厚み方向にこの順に並んでいてもよい。なお、意匠層83が、抜けが形成されたベタ層を備え、パール層82も、抜けが形成されたベタ層を備える場合、意匠層83の抜けの少なくとも一部が、パール層82の抜けの少なくとも一部と重複していることが好ましい(これは図示していない)。すなわち、赤外線透過フィルタ8を垂線方向で見た場合に、意匠層83の抜けの少なくとも一部を通して、ブラック層81(厳密には、ブラック層81の一部)を視認することができるように構成されていることが好ましい。これにより、ブラック層81をデザインに活かすことができる。
いっぽう、
図7に示すように、赤外線透過フィルタ8の少なくとも一部において、ブラック層81、基材84、パール層82、および意匠層83が、赤外線透過フィルタ8の厚み方向にこの順に並んでいてもよい。なお、意匠層83が、抜けが形成されたベタ層を備え、パール層82も、抜けが形成されたベタ層を備える場合、意匠層83の抜けの少なくとも一部が、パール層82の抜けの少なくとも一部と重複していることが好ましい(これは図示していない)。すなわち、赤外線透過フィルタ8を垂線方向で見た場合に、意匠層83の抜けの少なくとも一部を通して、基材84(厳密には、基材84の一部)やブラック層81(厳密には、ブラック層81の一部)を視認することができるように構成されていることが好ましい。これにより、ブラック層81をデザインに活かすことができる。
【0097】
上述の本実施形態では、加飾用フィルム80の少なくとも一部において、パール層82、意匠層83、および基材84が、加飾用フィルム80の厚み方向にこの順に並んでいる、という構成を説明した(
図4参照)。しかしながら、本実施形態は、この構成に限定されない。たとえば、
図8に示すように、加飾用フィルム80の少なくとも一部において、基材84、パール層82、および意匠層83が、加飾用フィルム80の厚み方向にこの順に並んでいてもよい。
【0098】
上述の本実施形態では、デザインを持つ層に関して、意匠層83だけが、パール層82の少なくとも一部と、直接的または間接的に重なる、という構成を説明した(
図1参照)。しかしながら、本実施形態は、この構成に限定されない。たとえば、意匠層83以外のデザインを持つ層がパール層82の他の部分と、直接的または間接的に重なっていてもよい。
【0099】
上述の本実施形態では、赤外線透過フィルタ8がクリア層を備える、という構成については説明なかったものの、赤外線透過フィルタ8がクリア層をさらに備えていてもよい。たとえば、
図9に示すように、赤外線透過フィルタ8がクリア層88をさらに備えていてもよい。この場合、赤外線透過フィルタ8の少なくとも一部において、クリア層88、ブラック層81、パール層82、意匠層83、および基材84が、赤外線透過フィルタ8の厚み方向にこの順に並んでいることができる。クリア層88は透明性を有することができる。クリア層88は樹脂を含むことができる。クリア層88は、着色剤を含まないことが好ましい。着色剤として、顔料、染料を挙げることができる。クリア層88は添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては、たとえば、消泡剤、レベリング剤、滑剤などを挙げることができる。これらは、一種または二種以上を使用することができる。クリア層88は、たとえば印刷で形成されてもよく、ラミネート(たとえば粘着フィルムのラミネート)によって形成されてもよい。これと同様に、加飾用フィルム80も、クリア層(たとえばクリア層88)をさらに備えていてもよい。
【実施例】
【0100】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ質量部および質量%を意味する。
【0101】
<近赤外線の透過率の測定方法>
近赤外線の透過率、具体的には波長850nm、940nm、1100nm、1200nmの光の透過率は、紫外可視近赤外線分光光度計V-570(日本分光社製)で測定した。
【0102】
<比較例1_IRブラック>
基材フィルム(東山フィルム社製のHK33WF)の上に、ブラックインキ(セイコーアドバンス社製のIR BLACK BN)をスクリーン印刷することによってべた状のブラックインキ層を形成した。このような手順で、試験用フィルタを作製した。
試験用フィルタの波長940nmの透過率は87.0%であった。
【0103】
<実施例1_KMCY+パール+IRブラック>
基材フィルム(東山フィルム社製のHK33WF)の上に、ブラックインキ(セイコーアドバンス社製のIR BLACK BN)をスクリーン印刷することによってべた状のブラックインキ層を形成し、ブラックインキ層の上に、マゼンダインキ(具体的には、マゼンダ顔料を含むインキ)をスクリーン印刷することによってべた状のマゼンダインキ層を形成し、マゼンダインキ層の上に、シアンインキ(具体的には、シアン顔料を含むインキ)をスクリーン印刷することによってべた状のシアンインキ層を形成し、シアンインキ層の上に、イエローインキ(具体的には、イエロー顔料を含むインキ)をスクリーン印刷することによってべた状のイエローインキ層を形成し、イエローインキ層の上に、白パール含有インキをスクリーン印刷することによってべた状のパール層を形成し、パール層の上に、上述のブラックインキをスクリーン印刷することによってべた状のブラックインキ層を形成した。このような手順で、試験用フィルタを作製した。なお、白パール含有インキに使用したパール顔料は、「Spectraval White」(メルク社製)であった。このパール顔料は、インキ100質量%として15質量%で使用した。
試験用フィルタの波長850nmの透過率は59.6%、波長940nmの透過率は64.1%、波長1100nmの透過率は68.1%、波長1200nmの透過率は73.5%であった。これらの透過率は、比較例1の試験用フィルタに比べて低いものの、赤外線透過フィルタとして使用可能な値である。
【0104】
<実施例2_KMCY+パール>
パール層の上にブラックインキ層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の手順で試験用フィルタを作製した。なお、この試験用フィルタは、本発明の加飾用フィルムを具現化した例として位置づけることができる。
この試験用フィルタの波長940nmの透過率は67.7%であった。この結果によれば、この試験用フィルタを、未加飾の赤外線透過フィルタ(たとえば、黒色を呈する赤外線透過フィルタ)に重ねることによって、透過率が大きく落ちることは無い。したがって、この試験用フィルタは、赤外線透過フィルタを加飾するために使用することが可能である。
【符号の説明】
【0105】
8…赤外線透過フィルタ、81…ブラック層、82…パール層、83…意匠層、831…第1色ドット、832…第2色ドット、833…第3色ドット、84…基材、85…周辺層、80…加飾用フィルム、88…クリア層
【要約】
【課題】本発明は、デザインを施すことが可能な赤外線透過フィルタを提供することを目的とする。
【解決手段】赤外線透過性を有するブラック層81と、パール顔料を含むパール層82と、意匠層83と、を備える赤外線透過フィルタ8であって、赤外線透過フィルタ8の少なくとも一部において、ブラック層81、パール層82、および意匠層83が、赤外線透過フィルタ8の厚み方向にこの順に並んでいる。意匠層83は、可視光のうち、ある波長の光を吸収することができる着色剤(たとえば、顔料、染料)を含む。
【選択図】
図1