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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】電極装着部材及び電気刺激用装着具
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/04 20060101AFI20230105BHJP
【FI】
A61N1/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021525462
(86)(22)【出願日】2019-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2019023192
(87)【国際公開番号】W WO2020250326
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390018913
【氏名又は名称】株式会社ホーマーイオン研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(72)【発明者】
【氏名】神谷 章平
(72)【発明者】
【氏名】土屋 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】只野 俊汰
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-282370(JP,A)
【文献】実公平6-1685(JP,Y2)
【文献】特表2005-522006(JP,A)
【文献】米国特許第5353744(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/04
A61N 1/22
A61N 1/18
A61N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の異なる2つの部位の間において電気刺激を付与する電流を流すために装着され、人体の異なる2つの部位のうち、少なくとも一方の部位に巻きつけて装着される電極装着部材であって、
炭素繊維製の糸を用いて織られた導電性を有する織物である帯状電極と、
前記帯状電極が固定されるとともに、第1接続部が設けられたバンドと、
前記バンド上において前記帯状電極を覆う電極カバーであって、人体に接する側に位置する生地と、一方の面が前記生地に接触し、他方の面が前記帯状電極に接する吸水繊維層とからなる前記電極カバーと、
前記第1接続部と着脱可能に接続する第2接続部が設けられ、前記第1接続部及び前記第2接続部の接続状態において、ベルト外縁の内側に前記バンドが配置されるベルトと、
を備えることを特徴とする電極装着部材。
【請求項2】
前記ベルトの一端に設けられた第1連結部と、
前記ベルトの他端に設けられた第2連結部であって、前記バンド及び前記ベルトの長さを調節するための調節開口部を備え、該電極装置部材の装着状態において、前記第1連結部と着脱可能に連結する第2連結部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の電極装着部材。
【請求項3】
前記第1接続部は前記バンドに一端側に設けられており、
前記ベルトの一端側に該電極装着部材の長さを調整するための複数の穴部が形成され、前記ベルトの他端側に前記第2接続部が設けられ、
前記第2接続部は、前記ベルトの厚み方向に貫通して延びており、前記ベルトの一方の面から突出する第1突出部と、前記ベルトの他方の面から突出する第2突出部とを有し、
前記第1突出部は、前記第1接続部と着脱可能に接続し、
前記第2突出部は、人体の巻き付き部位の長さに対応した所定の前記穴部と嵌合することを特徴とする請求項1に記載の電極装着部材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の前記電極装着部材を複数備えることを特徴とする電気刺激用装着具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極装着部材及び電気刺激用装着具に関し、特に電気信号出力装置から出力される電気信号を人体に伝達して電気刺激を付与する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
生体に電気刺激を付与する電気刺激装置として、導電性ゲル、電極エレメント、電線コード、粘着剤層、支持基材の順に積層した積層構造を有しインピーダンスが20Ω~100Ωの電気刺激用パット電極であって、電極エレメントが80Ω~1200Ωの表面抵抗と1~20kΩ・cmの厚み方向の抵抗を有するカーボン素材であり、電線コードの芯材がカーボンファイバーである電気刺激用パット電極が知られている(特許文献1参照)。また、特許文献1には、電極エレメントとして、カーボンファイバーシート、カーボンガスケット素材、カーボン練り込みフィルム等の態様が挙げられている。さらに、カーボンファイバーシートには、カーボンファイバーを織布としたものが含まれることが記載されている。さらに、カーボンファイバーシートの性状として、厚み方向の抵抗が高く、硬いことが記載されている。以上の記載から、特許文献1には、カーボンファイバーを織布とした後、これをエポキシ系の樹脂等で固めたカーボンファイバーシートが開示されているものと推察される。
【0003】
従来、医学やスポーツなどの業界では、筋肉増強、失禁の管理、脊椎奇形の管理、痙縮の管理などのために、骨格筋収縮を誘発する電気筋肉刺激(以下、EMSという場合がある)が行われている。このEMS技術によれば、慢性的な運動不足、過度の肥満、整形外科的疾患などのために運動不足となりがちな人々や、糖尿病性合併症、心血管系合併症などの臓器障害により運動制限を余儀なくされている患者に対して、過度な運動を強いることなく、筋肥大や代謝等を促進する処置を促すことができる。
【0004】
EMSに用いられる電極装置として、いわゆるベルト電極が知られている。このベルト電極は、人体の一点だけに装着されるパット電極とは異なり、人体の所定部位の全周を包囲するように装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-202336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
EMS技術では、電気刺激用の電極と人体の間の密着性が悪いと、電極における電流分布が偏り、この結果、人体に対して局所的な過電流が流れて痛みを感じるという不都合を生じる場合がある。特に、ベルト電極は、人体における所定部位を包囲するように巻き付けられるため、この問題が顕在化し易い。すなわち、人体の表面には凹凸があり、筋肉の張り方も人によって異なるため、電極が接触する接触面積の割合が人によって異なる。接触面積の割合が小さい状態で電気刺激を行うと、接触部位における電流密度が高くなるため、痛みを伴う場合がある。良好な治療効果を得るために強い筋肉運動が求められる場合には、この問題がより顕在化する。したがって、特許文献1に開示されたカーボンファイバーシートを用いてベルト電極としても、硬くて曲げ難いため、上述の課題を解決することができない。
【0007】
そこで、本願発明は、上記ベルト電極の特殊性に鑑み、人体に対する密着性の高い電極装着部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の電極装着部材は、人体の異なる2つの部位の間において電気刺激を付与する電流を流すために装着され、人体の異なる2つの部位のうち、少なくとも一方の部位に巻きつけて装着される電極装着部材であって、炭素繊維製の糸を用いて織られた導電性を有する織物である帯状電極を備えることを特徴とする。
【0009】
(2)前記帯状電極が固定されるとともに、第1接続部が設けられたバンドと、前記第1接続部と着脱可能に接続する第2接続部が設けられ、前記第1接続部及び前記第2接続部の接続状態において、ベルト外縁の内側に前記バンドが配置されるベルトと、前記ベルトの一端に設けられた第1連結部と、前記ベルトの他端に設けられた第2連結部であって、前記バンド及び前記ベルトの長さを調節するための調節開口部を備え、該電極装置部材の装着状態において、前記第1連結部と着脱可能に連結する第2連結部と、を有することを特徴とする上記(1)に記載の電極装着部材。
【0010】
(3)前記帯状電極が固定されるとともに、一端側に第1接続部が設けられたバンドと、一端側に該電極装着部材の長さを調整するための複数の穴部が形成され、他端側に第2接続部が設けられたベルトと、を備え、前記第2接続部は、前記ベルトの厚み方向に貫通して延びており、前記ベルトの一方の面から突出する第1突出部と、前記ベルトの他方の面から突出する第2突出部とを有し、前記第1突出部は、前記第1接続部と着脱可能に接続し、前記第2突出部は、人体の巻き付き部位の長さに対応した所定の前記穴部と嵌合することを特徴とする上記(1)に記載の電極装着部材。
【0011】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の前記電極装着部材を複数備えることを特徴とする電気刺激用装着具。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、人体に対する密着性の高い電極装着部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態における電気刺激用装着具の展開図及び電気信号出力装置の外観斜視図である。
図2】電気刺激用装着具の各部について、図1に示す面とは反対側の面を示す図である。
図3図1におけるA-A断面図である。
図4】第1実施形態における電極装着部材の装着方法を示す図である。
図5】第1実施形態における電気刺激用装着具の装着位置の一例を示す図である。
図6】第1実施形態の電気信号出力装置の回路構成を示すブロック図である。
図7】第1実施形態における電気信号出力装置による電気信号の出力パターンを示す図である。
図8】第1実施形態の変形例における第1装着ベルトを示す図である。
図9】第1実施形態の変形例における第1導電バンド及び第1装着ベルトの使用方法を示す図である。
図10】電気回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1から図9は、第1実施形態を示す図である。図1は、電気刺激用装着具の展開図及び電気信号出力装置の外観斜視図である。図2は電気刺激用装着具の展開図及び電気信号出力装置の外観斜視図であり、電気刺激用装着具の各部について、図1に示す面とは反対側の面を示している。
【0016】
電気刺激用装着具1は、電気信号出力装置5から出力される電気信号を用いて人体に電気刺激を付与する。電気刺激用装着具1は、第1電極装着部材10と、第2電極装着部材20とを備える。後述するように、第1電極装着部材10と第2電極装着部材20は、人体において異なる位置に巻き付けて装着される。第1電極装着部材10及び第2電極装着部材20を人体に装着した状態で、電気信号出力装置5を作動させることにより、第1電極装着部材10と第2電極装着部材20の間で人体に電流を流す(すなわち、電気刺激を付与する)ことができる。
【0017】
第1電極装着部材10は、第1導電バンド11と、第1装着ベルト12とを含む。後述するように、第1導電バンド11と、第1装着ベルト12とを接続することにより、第1電極装着部材10が構成される。第1導電バンド11は、人体に電流を流すための帯状部材であり、第1電極装着部材10の装着時に人体に接触する。第1装着ベルト12は、第1導電バンド11を人体に当接した状態に保つための帯状部材である。
【0018】
第1導電バンド11について説明する。第1導電バンド11は、バンド111と、帯状電極112(第1電極に相当する)と、電極カバー113と、帯状電極収納部114と、導電板115と、接続端子116(第1接続部に相当する)とを備える。バンド111は、人体の所定部位に巻きつけることができる長さで帯状に形成されている。帯状電極112は、電気信号出力装置5から出力される電気信号を人体に印加するための電極であり、帯状に形成されている。帯状電極112は、正極又は負極として構成することができる。後述するように、帯状電極112は、導電性の炭素繊維で形成された布(以下、炭素繊維布という場合がある)である。より具体的には、帯状電極112は、炭素繊維製の糸を織った織物である。
【0019】
ここで、炭素繊維の織り方には、綾織、平織、ニット(編物)織が含まれる。綾織は、経糸を二条の横糸に通過させた後に、1本の緯糸の下を通過させる工程を繰り返すことを特徴とした三つ綾と、経糸を三条の横糸を通過させた後に、1本の緯糸の下を通過させる工程を繰り返す四つ綾とが含まれ、いずれも好適に用いることができる。綾織は、糸の交差箇所が斜めになる点に特徴があり、伸縮性に優れ、比較的低コストである。平織は、経糸と緯糸を交互に織り、左右対称の模様が形成される点に特徴がある。ただし、綾織及びニット織よりも、伸縮性に劣る。ニット織は、糸で連続的なループを作りながら面を形成する織り方であり、伸縮性に優れている。ただし、綾織、平織よりもコストが高くなる。したがって、コスト及び伸縮性のバランスを考慮すると、炭素繊維の織り方は、好ましくは平織、ニット(編物)織であり、より好ましくは綾織である。
【0020】
炭素繊維は特に限定しないが、好ましくはPAN系の炭素繊維を用いることができる。また、炭素繊維の引張弾性率は特に限定しないが、好ましくは、200~280Gpaである。また、炭素繊維の引張強度は特に限定しないが、好ましくは、2500MPa以上である。つまり、標準弾性率タイプの炭素繊維を用いることが好ましい。この仕様であれば、比較的低コストで、本願発明の効果を得ることができる。
【0021】
炭素繊維のフィラメントは特に限定しないが、好ましくは1000~12000本である。炭素繊維の織度texは特に限定しないが、好ましくは66~800(g/1000m)である。
【0022】
本実施形態の帯状電極112は、炭素繊維を織ることによって構成されているため、抵抗値を低くすることができる。具体的には、抵抗値を100Ω未満に抑えることができる。これにより、帯状電極112の全体における電流分布がより均一となるため、刺激感覚がより均一になり、最適な電気治療を行うことができる。ここで記載する抵抗値は、帯状電極112に400mm離間した任意のA点及びB点を設け、デジタルマルチメーターにより測定することができる。以下、この抵抗値を電極の表面抵抗と称する場合がある。
【0023】
電極カバー113は、帯状電極112からの電流を受けるとともに人体に接触して通電を行うための導電部である。電極カバー113は、帯状電極112を覆うように配置される。電極カバー113の外縁部分は、バンド111に縫着されている。これにより、バンド111と電極カバー113との間にスペースが形成され、このスペース(言い換えると、帯状電極収納部114)に帯状電極112を収容することができる。
【0024】
導電板115は、バンド111の長手方向における一端側に設けられている。導電板115は、帯状電極112とともに帯状電極収納部114に収容されている。具体的には、導電板115は、帯状電極収納部114におけるバンド111と帯状電極112の間に収容されている。導電板115は、帯状電極112に対して電気的に接続され、固定されている。接続手段は、特に限定しないが、例えば、導電板115に設けられたボタン穴を用いて帯状電極112に縫着したり、或いは帯状電極112に融着することにより導電板115を接続することができる。
【0025】
接続端子116は、帯状電極収納部114において導電板115に電気的に接続され、固定されている。接続手段は、特に限定しないが、例えば、接続端子116及び導電板115を互いに溶接することができる。また、図2に示すように、接続端子116は、導電板115からループ状に延び、バンド111において帯状電極112が設けられる面とは反対側の面から突出している。後述するように、接続端子116は、第1装着ベルト12の接点1231(接点123)に接続することができる。例えば、接続端子116は、接点1231に対応する雌ホック又は雄ホックとして構成されている。なお、導電板115及び接続端子116は、それぞれ導電性を有する材料で形成されており、帯状電極112と電気的に接続することができる。ただし、接続端子116及び帯状電極112を電気的に直接接続することにより、導電板115を省略してもよい。
【0026】
第1装着ベルト12について説明する。第1装着ベルト12は、ベルト121と、連結具122と、接点123(第2接続部に相当する)とを備える。ベルト121は、人体の所定部位に巻きつけることができる長さで帯状に形成されている。接点123は、ベルト121の長手方向における一端側に設けられている。接点123は、導電性金属で形成されている。後述するように、接点123には、接続端子116と、電気信号出力装置5の導電線51とが接続される。接点123は、ベルト121の一方の面(図1参照)及び他方の面(図2参照)から突出している。つまり、接点123は、ベルト121を厚み方向に貫通して、突状に延びている。以下では、接点123のうちベルト121の一方の面から突出した部分を接点1231といい、接点123のうちベルト121の他方の面から突出した部分を接点1232という。
【0027】
接点1231には、第1導電バンド11の接続端子116が接続される。例えば、接点1231は、接続端子116に対応する雄ホック又は雌ホックとして構成されている。接続端子116と接点1231とが接続されると、第1導電バンド11は、ベルト121の一方の面に配置される。このとき、第1導電バンド11とベルト121とが重なり、第1電極装着部材10が構成される。すなわち、接点1231及び接続端子116の接続状態において、ベルト121の外縁の内側に第1導電バンド11が配置される。ここで、接続端子116と接点1231は互いに着脱可能に接続することができる。したがって、第1導電バンド11と第1装着ベルト12は、互いに容易に取り付けたり取り外したりすることができる。
【0028】
接点1232には、電気信号出力装置5から延びる導電線51が接続される。例えば、接点1232は、導電線51の先端に形成された雌ホックに接続する雄ホック又は導電線51の先端に形成された雄ホックに接続する雌ホックとして構成することができる。なお、接点123は、導電線51及び接続端子116と接続し、帯状電極112と電気的に接続することができる構成であればよい。
【0029】
第1電極装着部材10は、人体の所定部位に巻き付けて装着される。このとき、第1電極装着部材10は、連結具122を用いて装着位置に固定される(後述する)。連結具122には、例えば、サイドリリース式のバックルやフロントリリース式のバックルを用いることができる。以下では、サイドリリース式のバックルを一例に説明するが、これに限定されるものではない。
【0030】
連結具122は、メス部材122a(第1連結部に相当する)と、オス部材122b(第2連結部に相当する)と、調節具122cとを含む。メス部材122aは、ベルト121の長手方向における一端(言い換えると、ベルト121において接点123が設けられる側の一端)に固定されている。例えば、メス部材122aは、ベルト121の長手方向における一端に縫着されている。
【0031】
メス部材122aとオス部材122bは、互いに対応する形状で構成されている。これにより、メス部材122aとオス部材122bは、互いに連結したり分離したりすることができる。すなわち、メス部材122aとオス部材122bは、着脱可能に連結することができる。例えば、メス部材122aは、オス部材122bに対応する開口を有する。これにより、オス部材122bをメス部材122aに差し込んで嵌合させることで、オス部材122bとメス部材122aとを連結させることができる。
【0032】
調節具122cは、第1電極装着部材10を装着するときに第1電極装着部材10の長さを調節するために用いられる(後述する)。調節具122cは、オス部材122bに設けられている。調節具122cは、柱部122dによって隔てられた2つの開口(調節開口部に相当する)を有する。後述するように、第1電極装着部材10を装着するとき、調節具122cの2つの開口には、第1導電バンド11の他端及びベルト121の他端が挿通される。なお、調節具122cは、オス部材122bに設けずに、代わりにメス部材122aに設けてもよい。この場合、メス部材122aはベルト121の一端に固定されず、オス部材122bがベルト121の一端に固定される。すなわち、調節具122cは、メス部材122aとオス部材122bのいずれか一方に設けられていればよい。
【0033】
ここで、図3を参照して第1導電バンド11について説明する。図3は、図1における第1導電バンド11のA-A断面図である。図3に示すように、第1導電バンド11では、バンド111と、帯状電極112と、電極カバー113とが層状に配置されている。
【0034】
電極カバー113は、生地113aと、吸水繊維113bとを有する。生地113aは、人体に接触する表面を構成しており、吸水繊維113bを覆っている。吸水繊維113bの一方の面は、生地113aに接触しており、他方の面は帯状電極112と接触している。吸水繊維113bには、水などの液体を含浸させることができ、これにより人体に対する通電を容易にしている。吸水繊維113bは、吸水性や保水性を有する材料で構成することができる。例えば、吸水繊維113bには、ランシール(登録商標)を用いることができる。この他、吸水繊維113bには、ニット素材、織物、不織布などを用いることもできる。第1導電バンド11は、吸水繊維113bに液体を含浸させた状態で使用(装着)される。
【0035】
生地113aは、吸水繊維133bを覆うことで、吸水繊維113bに含浸させた液体を流出しにくくしている。また、生地113aは、人体に接触するため、摩擦等の耐久性が高い素材により構成されている。例えば、生地113aは、ポリエステル繊維で形成することができる。
【0036】
ここで、帯状電極112は、炭素繊維で形成された布であるため、吸水繊維113bとともに帯状電極112にも液体を含浸させることができる。これにより、通電時に帯状電極112と吸水繊維113bとの間で電流がより均一に流れやすくなり、過電流を生じにくくすることができる。このように過電流を抑えることによって、人体に対して通電を行う際の過電流による痛みを生じにくくしている。
【0037】
バンド111は、合成皮革などの防水性を有する材料で構成することができる。これにより、吸水繊維113b及び帯状電極112に含浸させた液体が染み出し、バンド111を透過して流出することを防止できる。
【0038】
図4は、第1電極装着部材10の装着方法を説明するための図である。まず、第1導電バンド11は、接続端子116と接点1231により、ベルト121(第1装着ベルト12)の長手方向における一端側で接続される。このとき、上述したように第1導電バンド11とベルト121とが重なり、一本の帯状に形成された第1電極装着部材10が構成される。図4に示すように、第1導電バンド11及びベルト121の他端側は、重なった状態で調節具122cの2つの開口に通される。このようにして、第1導電バンド11及びベルト121は、調節具122cの2つの開口を通り、柱部122dで折り返される。この状態において、第1電極装着部材10を人体の所定部位に巻き付け、メス部材122aとオス部材122bを連結することにより、第1電極装着部材10を装着することができる。すなわち、連結具122により、第1電極装着部材10を装着位置に固定することができる。
【0039】
ここで、第1電極装着部材10のうち、柱部122dで折り返された位置から第1電極装着部材10の他端までの長さを長くすると、人体の所定部位に巻きつける長さを短くすることができる。また、第1電極装着部材10のうち、柱部122dで折り返された位置から第1電極装着部材10の他端までの長さを短くすると、人体の所定部位に巻きつける長さを長くすることができる。言い換えると、第1電極装着部材10のうち、人体の所定部位に巻きつける長さは、柱部122dによって決まる第1電極装着部材10の折り返し位置によって調節することができる。
【0040】
このように、調節具122を設けることによって、人体の所定部位に巻きつける第1電極装着部材10の長さを調節することができる。すなわち、調節具122cを用いることで、所望の装着部位の大きさ(装着したい部位の周りの長さ)に応じて第1電極装着部材10の長さを変更することができる。また、第1電極装着部材10の長さを変更することで、装着時の締め付けの強さを変更することもできる。なお、調節具122cには、2つの開口を通る第1導電バンド11及びベルト121が滑って装着部位での締め付けが緩くならないように、滑り止め加工を施してもよい。
【0041】
ここで、本発明の帯状電極112は、導電性を備える炭素繊維布である。炭素繊維布は、炭素繊維製の糸を用いて織られた織物であるため、本発明の帯状電極112は、一般に電極として用いられる金属板や金属製ワイヤーに比べて高い柔軟性を有する。したがって、第1電極装着部材10の装着時においては、帯状電極112が第1電極装着部材10の装着部位である身体の凹凸に合わせて変形するため、金属板や金属製ワイヤーを用いた電極に比べて身体に密着しやすい。すなわち、本発明の帯状電極112は、金属板や金属製ワイヤーを用いた電極に比べて身体に対する密着性が高い。したがって、帯状電極112によれば、電極カバー113と身体の間に隙間が生じたり、身体に対する電極カバー113の接触圧力が偏ったりすることを抑えることができる。これにより、通電の際の電気抵抗や電流分布の偏りが生じにくくなり、結果として第1電極装着部材10(電極カバー113)と身体の間で局所的に生じる過電流を抑えることができ、通電の際の痛みを生じにくくすることができる。
【0042】
第2電極装着部材20は、以下で説明する点を除いて第1電極装着部材10と構成が共通するため、詳細な説明は省略する。第2電極装着部材20は、第1導電バンド11に対応する第2導電バンド21と、第1装着ベルト12に対応する第2装着ベルト22とを含む。すなわち、第1導電バンド11の符号111,112,113,113a,113b,114,115,116は、それぞれ、第2導電バンド21の符号211,212,213,213a(不図示),213b(不図示),214,215,216に対応している。すなわち、第1装着ベルト12の符号121,122,122a,122b,122c,122d,123,1231,1232は、それぞれ、第2装着ベルト22の221,222,222a,222b,222c,222d,223,2231,2232に対応している。
【0043】
ここで、帯状電極212(第2電極に相当する)は、帯状電極112とは異なる極性を有しており、負極又は正極によって構成される。接点223には、接続端子216と、電気信号出力装置5の導電線52とが接続される。すなわち、接続端子216は、第2装着ベルト22の接点2231に接続される。すなわち、接点2232には、電気信号出力装置5から延びる導電線52が接続される。第1電極装着部材10と第2電極装着部材20は、帯状電極112と帯状電極212の極性のみが異なり、他の構成は共通している。以下同様に、第1電極装着部材10について説明し、特に言及する場合を除いて第2電極装着部材20に関する説明を省略する。
【0044】
なお、電気刺激用装着具1は、一対の第1電極装着部材10及び第2電極装着部材20を複数備えることができる。この場合、電気信号出力装置5には、第1電極装着部材10及び第2電極装着部材20に応じた本数の導電線が設けられる。これにより、人体の複数の部位に対し、同時に電気刺激を与えることができる。なお、一つの電極装着部材を正極(負極)、二つの電極部材を負極(正極)とすることもできる。
【0045】
第1電極装着部材10及び第2電極装着部材20を装着し、導電線51及び52をそれぞれ接点123及び接点223に接続して電気信号出力装置5を作動させると、帯状電極112及び帯状電極212のうちの一方から他方に向かって電流を流すことができる。これにより、第1電極装着部材10の装着位置と第2電極装着部材20の装着位置との間の筋肉に電気刺激を与えることができる。ここで、電気信号出力装置5は、予め定められた周波数領域(例えば、4~20(Hz))からなる電気信号を帯状電極112、帯状電極212のそれぞれに出力する。
【0046】
図5は、電気刺激用装着具の装着位置の一例を示す図である。図5(A)は、人体の正面図であり、図5(B)は、人体の背面図である。例えば、図5に示すように、一対の第1電極装着部材10及び第2電極装着部材20のうち、第1電極装着部材10は、人体の右脚の鼠径部に装着することができる。第2電極装着部材20は、人体の右脚の膝上に装着することができる。これにより、人体の右脚(右脚の鼠径部と膝上の間)の筋肉を電気刺激することができる。なお、鼠径部とは、大腿四頭筋の起始部となる位置のことである。また、膝上とは、大腿四頭筋の停止部となる位置のことである。
【0047】
ここで、図5の例では電気刺激用装着具1がもう一対の第1電極装着部材10’及び第2電極装着部材20’を備えている。この場合、図5に示すように、第1電極装着部材10’は、人体の左脚の鼠径部に装着することができ、第2電極装着部材20’は、人体の左脚の膝上に装着することができる。これにより、図5に示す人体の左脚(左脚の鼠径部と膝上の間)の筋肉を電気刺激することができる。このようにして、図5に示す例によれば、両脚に対して同時に電気刺激を与えることができる。ここで、電気刺激を与える部位ごとに電気信号のチャンネルを独立させてもよい。すなわち、電気刺激を与える部位ごとに刺激強度を独立して調整できるように構成してもよい。例えば、図5に示す例では、右脚と左脚とでチャンネルを独立させることができる。
【0048】
なお、第1電極装着部材10及び第2電極装着部材20(第1電極装着部材10’及び第2電極装着部材20’)の装着位置は、図5で示した装着位置に限られない。例えば、第1電極装着部材10及び第2電極装着部材20は、人体の腕部(右腕、左腕)や腰部に装着してもよい。すなわち、ユーザは、装着位置に応じて電気刺激を与える部位を選択することができる。
【0049】
次に、電気信号出力装置5の構成について説明する。図6は、電気信号出力装置5の回路構成を示すブロック図である。
【0050】
電気信号出力装置5は、制御回路501と、電源回路502と、低周波出力用ドライバ503と、発振子504と、動作モード選択スイッチ505と、リセット回路506と、出力調整用メインボリューム507と、増幅回路508とを備える。
【0051】
制御回路501は、CPU等からなり、電気信号出力装置5全体の制御を実行する。電源回路502は、電気信号出力装置5に対して動作電力を供給する。低周波出力用ドライバ503は、制御回路501の制御信号に基づいて低周波のパルス信号を出力する。発振子504は、所定周波数のクロック信号を制御回路501に供給する。動作モード選択スイッチ505は、電気信号出力装置5から出力される電気信号による刺激パターン(後述する)を選択するために操作される。リセット回路506は、リセット信号を制御回路501に供給する。
【0052】
低周波出力用ドライバ503から出力された信号は、出力調整用メインボリューム507において無段階調整され、増幅回路508に出力される。増幅回路508は、低周波出力用ドライバ503から出力された信号を増幅し、この増幅された信号を電気刺激用装着具1に対して出力する。なお、電気刺激を与える部位ごとに(例えば、右脚と左脚ごとに)チャンネルを独立させる場合には、その部位ごとに(例えば、右脚用及び左脚用で)増幅回路508をそれぞれ設けるとともに、各増幅回路508から出力される信号の強度を個別に調整するための出力調整サブボリュームを設けることが望ましい。
【0053】
制御回路501は、電源回路502によるDC6Vの電源、及び発振子504で励起される例えば20MHzのクロック信号に基づいて駆動され、低周波出力用ドライバ503に対して制御信号を出力する。低周波出力用ドライバ503は、電源回路502から供給される上記DC6Vの電圧及び制御回路501からの制御信号に基づいて、低周波のパルス信号を出力する。
【0054】
動作モード選択スイッチ505は、使用者による図略の操作部の操作により入力される指示に従って、以下に示す第1出力モード及び第2出力モードを切り換えるために操作される。すなわち、動作モード選択スイッチ505は、使用者の選択に応じて、第1出力モード又は第2出力モードのいずれか一方を指示する指示信号を制御回路501に出力する。制御回路501は、動作モード選択スイッチ505からの指示信号に従って、第1出力モード又は第2出力モードのいずれかの出力パターンを生成するための制御信号を低周波出力用ドライバ503に出力する。低周波出力用ドライバ503は、電源回路502から供給される上記DC6Vの電圧に基づいて、制御回路501からの当該制御信号の示す第1出力モード又は第2出力モードに対応した周波数及び出力タイミングからなる電気信号を生成する。
【0055】
次に、電気信号出力装置5による電気信号の出力パターンを説明する。図7は、電気信号出力装置5による電気信号の出力パターンを示す図である。図7(A)は、電気信号出力装置5による第1出力モードの出力パターンを示す図である。図7(B)は、第2出力モードの出力パターンを示す図である。
【0056】
第1出力モードは、パルス信号の出力と停止を交互に繰り返す出力パターンで人体を刺激するモードである。パルス信号の出力時間と停止時間は、それぞれ任意で設定することができる。同様に、パルス信号の周波数は任意で設定することができる。例えば、第1出力モードでは、図7(A)に示すように、周波数が20(Hz)のパルス信号を連続的に5秒間出力した後に、2秒間出力を停止する刺激パターンが繰り返し実行される。
【0057】
第2出力モードは、パルス信号を出力し続ける出力パターンで人体を刺激するモードである。すなわち、第2出力モードには、パルス信号の出力を停止する時間がない。また、第1出力モードと同様に、パルス信号の周波数は任意で設定することができる。例えば、第2出力モードでは、図7(B)に示すように、周波数が4(Hz)のパルス信号を連続的に出力する。
【0058】
また、第1出力モード及び第2出力モードとは異なる第3出力モードを選択できるように構成することもできる。第3出力モードは、図7(C)に図示するように、第1電極装着部材10の帯状電極112及び第2電極装着部材20の帯状電極212の極性が互いに所定周期で交互に入れ替わるように構成されている(言い換えると、極性反転を実施している)。すなわち、第3出力モードでは、電圧値が徐々に上昇する漸増パターンと電圧を一定値に保持する保圧パターンとを連続させた特殊刺激モードを有しており、刺激停止時間を挟んで隣接する特殊刺激モードの極性を互いに異ならせている。
【0059】
例えば、第1電極装着部材10を右脚に装着し、第2電極装着部材20を左脚に装着した状態で、極性反転を実施することにより、左右両脚を交互に電気刺激することができる。ここで、左右両脚を電気刺激する別の方法として、腰と右脚、腰と左脚の二チャンネル構成とすることも考えるが、この方法では電極の装着作業が煩雑となる。本実施形態によれば、一チャンネル構成で、二つの異なる刺激部位を電気刺激できるため、電極の装着作業が容易になる。
【0060】
極性反転を実施した場合、極性反転前後の電圧差(言い換えると、バックパルス)により人体に痛みが発生し易い。本実施形態によれば、帯状電極112が炭素繊維からなる織物によって構成され、身体の凹凸に合わせて変形するため、金属板や金属製ワイヤーを用いた電極に比べて身体に密着しやすい。したがって、極性反転を実施した場合の課題である痛みを軽減することができる。
【0061】
なお、特殊刺激モードによる刺激時間は、好ましくは、2秒~6秒であり、より好ましくは、3秒又は5秒である。刺激休止時間は、好ましくは1~3秒であり、より好ましくは、2秒である。特殊刺激モードを構成する漸増パターン及び保圧パターンの時間割合は、周波数によって変動するための、特に限定しない。また、特殊刺激モードを構成する各パルス波は、電圧値が目標電圧値に向かって漸増するように方形波をなましたなまし方形波から構成することが望ましい。
【0062】
次に、電気刺激用装着具1及び電気信号出力装置5の使用方法について説明する。
(1)ステップ1において、まず、ユーザは、第1導電バンド11の電極カバー113及び帯状電極112(第2導電バンド21の電極カバー213及び帯状電極212)に液体を含浸させる。その後、ユーザは、図4で説明した方法によって、第1電極装着部材10と第2電極装着部材20とを装着する。すなわち、第1導電バンド11及び第1装着ベルトを組み合わせて第1電極装着部材10を形成し、第2導電バンド21及び第2装着ベルトを組み合わせて第2電極装着部材20を形成する。そして、ユーザは、第1電極装着部材10と第2電極装着部材20とを所定部位に巻き付けて装着する。このとき、ユーザは、電気刺激を与える部位を挟む位置に、第1電極装着部材10と第2電極装着部材20とを装着する。
【0063】
(2)ステップ2において、ユーザは、電気信号出力装置5から延びる導電線51を、第1電極装着部材10の接点1232(接点123)に接続し、電気信号出力装置5から延びる導電線51Bを、第2電極装着部材20の接点2232(接点223)に接続する。
【0064】
(3)ステップ3において、ユーザは、電気信号出力装置5の操作部を操作し、電気信号出力装置5に電源を投下するとともに、上記第1出力モード及び第2出力モードのうちいずれかの出力モードを選択して、電気信号出力装置5を動作させる。電気信号出力装置5から出力された電気信号は、第1電極装着部材10及び第2電極装着部材20を介して人体に伝達される。すなわち、第1電極装着部材10と第2電極装着部材20との間で電流が流れ、第1電極装着部材10が装着された部位と第2電極装着部材20が装着された部位の間の筋肉に電気刺激が与えられる。
【0065】
以上、本実施形態では、導電性の金属板や金属製ワイヤーに比べて柔軟性が高い炭素繊維製の糸を用いて織られた布で帯状電極112を構成しているため、装着時において、第1導電バンド11の電極カバー113が身体の凹凸に合わせて密着しやすくなる。言い換えると、帯状電極112によれば、電極カバー113と身体の間の隙間が形成されにくくなるため、この隙間を原因として生じる過電流による痛みを生じにくくできる。
【0066】
また、本実施形態では、接続端子116と接点1231(接点123)を互いに着脱可能となるように構成しているため、第1導電バンド11を第1装着ベルト12から取り外すことができる。したがって、第1導電バンド11が汚れた場合(特に身体に接触する電極カバー113が皮脂等で汚れた場合)、第1導電バンド11のみを取り外して洗浄(例えば、洗濯)することが可能である。また、第1導電バンド11が経年劣化した場合、第1導電バンド11のみを取り替えて第1装着ベルト12を使い回すことができる。
【0067】
また、第1導電バンド11を単体で流用することができるため、第1装着ベルト12を他の形状の装着用ベルトに変更して使用することができる。例えば、第1装着ベルト12は、以下の変形例で説明する第1装着ベルト12’に変更することができる。
【0068】
(変形例)
図8は、本実施形態の変形例における第1装着ベルト12’を示す図である。図8(A)は、第1装着ベルト12’の一方の面を示す図であり、図8(B)は、第1装着ベルト12’の他方の面を示す図である。第1装着ベルト12’は、上述の第1装着ベルト12のベルト121に相当し、第1導電バンド11とともに使用される(後述する)。第1装着ベルト12’は帯状に形成されており、接点123’と、複数の穴部124’とが設けられている。
【0069】
接点123’は、上述した接点123に相当する。接点123’は、第1装着ベルト12’の長手方向における一端側に設けられている。複数の穴部124’は、第1装着ベルト12’の他端側から第1装着ベルト12’の長手方向に沿って所定間隔で設けられている。
【0070】
接点123’は、第1装着ベルト12’の一方の面(図8(A)参照)及び他方の面(図8(B)参照)から突出している。ここで、接点123’のうち第1装着ベルト12’の一方の面から突出した部分を接点1231’(第1突出部に相当する)といい、接点123’のうち第1装着ベルト12’の他方の面から突出した部分を接点1232’(第2突出部に相当する)という。接点1231’は、上述した接点1231に相当し、接点1233は、上述した接点1232に相当する。このように、接点123’は、接点123と構成が共通するため、詳細な説明を上記説明に代えて省略する。後述するように、接続端子116と接点123’を用いて第1導電バンド11と第1装着ベルト12’を組み合わせることにより、第1電極装着部材10’を構成することができる
【0071】
図9は、第1導電バンド11及び第1装着ベルト12’の使用方法を示す図である。まず、第1導電バンド11の接続端子116と、第1装着ベルト12’の接点1231’を接続する。これにより、第1導電バンド11の一端と第1装着ベルト12’の一端とが繋がり、図9(A)に示す帯状の第1電極装着部材10’を構成することができる。
【0072】
図9(B)~図9(D)では、第1電極装着部材10’の装着手順を示している。まず、第1導電バンド11の長手方向における他端側(接続端子116が設けられていない側)から順に、電極カバー113を人体の所定部位に接触させつつ、第1導電バンド11を巻き付けると、図9(B)に示す状態になる。続けて、図9(C)に示すように第1導電バンド11に重ねて第1装着ベルト12’を巻き付ける。そして、図9(C)の一点鎖線の矢印で示すように、第1装着ベルト12’の長手方向における他端側(複数の穴部124’が設けられている側)を巻き付ける。その後、接点1232’をいずれかの穴部124’に挿通させるように嵌め込むと、図9(D)に示す状態となる。言い換えると、接点1232’がいずれかの穴部124’と嵌合すると、第1電極装着部材10’を装着位置に留めることができる。このようにして、第1電極装着部材10’は、装着位置に固定される。なお、穴部124’は複数設けられているため、ユーザは、いずれかの穴部124’を適宜選択すればよい。例えば、ユーザは、装着時の締め付け具合に応じていずれかの穴部124’を選択すればよい。第1電極装着部材10’が装着された状態において、接点1232’は穴部124’から突出しており、導電線51の先端と接続することができる。
【0073】
以上、変形例では、第1装着ベルト12’に設けられた複数の穴部124’のみを用いれば、第1電極装着部材10のように連結具122を用いておらず、第1装着ベルト12’に設けられた穴部124’と接点1232’を用いて、より簡易な構成で第1電極装着部材10’を装着することができる。
【0074】
また、第1電極装着部材10の長さが装着したい部位周りの長さに合わない場合、調節具122cを用いて、第1電極装着部材10を巻き付ける前又は第1電極装着部材10を巻き付けた後で長さを調整する必要がある。一方、変形例の第1電極装着部材10’は、装着したい部位に電極カバー113を当接させつつ、第1導電バンド11から順に巻き付けて装着される。このため、装着したい部位周りの長さに合わせて第1電極装着部材10’の長さが決まるため、使用者は第1電極装着部材10’の長さを調整する必要がない。
【0075】
(実施例)
以下、本発明について、実施例を示してより具体的に説明する。体格が互いに異なる二人の被験者A及びBを対象として、従来のベルト型ゴム電極(比較例)とベルト型カーボン電極(実施例)との最大電圧値(Vpeak)及び実効電流値(Irms)を測定して比較した。比較例のベルト型ゴム電極は、帯状に延びるシリコンゴムをベルトに張り付けることにより構成した。ベルト型カーボン電極は、トレカ(登録商標)のT300―3000(品番)からなる炭素繊維を綾織してシート状に形成することにより構成した。これらのベルト型ゴム電極及びベルト型カーボン電極をそれぞれ水に所定時間浸漬させて含水処理した後に、被験者に装着した。
【0076】
電気信号出力装置には、株式会社ホーマーイオン研究所製のパルストレーナーを使用した。図10は、電気信号出力装置と被験者とを電気的に接続する接続回路の概略図である。被験者A(B)の右脚の膝上に一方の極性のベルト型電極を巻き付け、左脚の膝上に他方極性のベルト型電極を巻き付け、座位で最大電圧値(Vpeak)及び実効電流値(Irms)を測定した。なお、被験者Aの左脚及び右脚の膝上周径はそれぞれ40.5cm及び40cmであった。被験者Bの左脚及び右脚の膝上周径はそれぞれ52cm及び52.5cmであった。
【0077】
20Hzの周波数で電気刺激を断続的に3分間行い、この間の最大電圧値(Vpeak)及び実効電流値(Irms)を測定した。具体的には、図7に示すモード(極性反転モード)にしたがって、漸増パターン:3570mSec、保圧パターン:2930mSec、刺激停止時間:500mSecに設定して、電気刺激を行った。試験を3回行い、夫々の試験における最大電圧値(Vpeak)及び実効電流値(Irms)を求めた後、算術平均値を求めた。電圧計には、Tektronix社製のTDS-2024Bを使用した。電流計には、IWATSU社製のVOAC22を使用した。試験結果を表1に示す。
【表1】
【0078】
表1に示す結果から、ベルト型カーボン電極は、ベルト型ゴム電極よりも低い電圧で電流値が高まることがわかった。したがって、ベルト型カーボン電極は、ベルト型ゴム電極よりも優しい刺激感覚で強い筋肉運動が得られると考えられる。言い換えると、ベルト型カーボン電極は、ベルト型ゴム電極よりも抵抗値が低くなることがわかった。
【符号の説明】
【0079】
1 電気刺激用装着具
10 第1電極装着部材
11 第1導電バンド
111 バンド
112 帯状電極
113 電極カバー
114 帯状電極収納部
115 導電板
116 接続端子
12 第1装着ベルト
121 バンド
122 連結具
122a メス部材
122b オス部材
122c 調節具
123 接点
12’ 第1装着ベルト
123’ 接点
124’ 穴部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10