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  • 特許-レーザ加工装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/082 20140101AFI20230105BHJP
   B23K 26/04 20140101ALI20230105BHJP
【FI】
B23K26/082
B23K26/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019156365
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021030292
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武知 孝洋
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-47455(JP,A)
【文献】特開2013-130856(JP,A)
【文献】特表2018-520007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/082
B23K 26/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを走査するガルバノスキャナと、当該ガルバノスキャナからのレーザビームを受光して被加工物に照射する集光レンズと、前記ガルバノスキャナの動作を制御する制御部とを備えるレーザ加工装置において、温度上昇特性が前記集光レンズと同等な材質の光透過部材であって前記ガルバノスキャナに入射されるレーザビームが入射されるものと、前記光透過部材の温度を検出する温度センサとを備え、前記制御部は前記温度センサの検出温度に基づいて前記ガルバノスキャナの走査位置の補正を行うことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
レーザビームを走査するガルバノスキャナと、当該ガルバノスキャナからのレーザビームを受光して被加工物に照射する集光レンズと、前記ガルバノスキャナの動作を制御する制御部とを備えるレーザ加工装置において、受光したレーザビームを反射して前記ガルバノスキャナに出力するとともに透過するためのビームスプリッタと、温度上昇特性が前記集光レンズと同等な材質の光透過部材であって前記ビームスプリッタで透過されたレーザビームが入射されるものと、前記光透過部材の温度を検出する温度センサとを備え、前記制御部は前記温度センサの検出温度に基づいて前記ガルバノスキャナの走査位置の補正を行うことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1あるいは2に記載のレーザ加工装置において、前記光透過部材の材質を前記集光レンズの材質と同じにしたことを特徴とするレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板に対してレーザ走査により穴あけ加工等を行うためのレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工装置において、レーザビームが集光レンズに入射すると、熱吸収による集光レンズの温度変化に伴い集光レンズ内の光の屈折率が変化し、ガルバノスキャナの走査位置のずれの要因となる。
【0003】
従来のレーザ加工装置には、例えば特許文献1の図1に示すように、レーザビームをガルバノスキャナの方向に反射する反射ミラーの裏面に設置した温度センサにより反射ミラーの裏面の温度を検出し、その検出温度に基づきガルバノスキャナの走査位置の補正を行うようにしたものが開示されている。また、特許文献2の図1に示すように、集光レンズの外周部に設置した温度センサにより集光レンズの温度を検出し、その検出温度に基づきガルバノスキャナの走査位置の補正を行うようにしたものが開示されている。
【0004】
特許文献1の構造のものにおいては、CO2レーザを用いる場合、一般的には、集光レンズの材質としてはゲルマニウム、セレン化亜鉛等が用いられ、反射ミラーの材質としては表面に反射膜が形成されたシリコン材が用いられており、集光レンズと反射ミラーの温度上昇特性は異なっている。
従って、集光レンズと温度上昇特性が異なる反射ミラーの温度を測定しており、ガルバノ補正制御の精度が悪い問題があった。また、反射ミラーの反射膜が劣化し交換する必要があり、交換するたびに、温度センサの検出温度によるガルバノスキャナの補正量を取り直す必要がある。
【0005】
また、特許文献2の構造のものでは、集光レンズの外周の温度を測定するため、レーザ入射位置から温度測定位置までの距離が大きく、レーザ入射位置と温度測定位置での温度差が大きく、温度測定精度が悪い。さらに、温度測定のタイムラグのためガルバノ補正制御が遅い問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-196639号公報
【文献】特開2013-130856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、ガルバノスキャナからのレーザビームを、集光レンズを経由させて被加工物に照射するレーザ加工において、集光レンズの熱吸収による加工位置誤差をガルバノスキャナで精度良く補正するレーザ加工装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願において開示される代表的なレーザ加工装置は、レーザビームを走査するガルバノスキャナと、当該ガルバノスキャナからのレーザビームを受光して被加工物に照射する集光レンズと、前記ガルバノスキャナの動作を制御する制御部とを備えるレーザ加工装置において、温度上昇特性が前記集光レンズと同等な材質の光透過部材であって前記ガルバノスキャナに入射されるレーザビームが入射されるものと、前記光透過部材の温度を検出する温度センサとを備え、前記制御部は前記温度センサの検出温度に基づいて前記ガルバノスキャナの走査位置の補正を行うことを特徴とする。
【0009】
なお、本願において開示される発明の代表的な特徴は以上のとおりであるが、ここで説明していない特徴については、後述する発明を実施するための形態において説明しており、また特許請求の範囲にも示したとおりである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、集光レンズの熱吸収によるレーザビームの位置ずれを、ガルバノスキャナの走査位置で精度よく補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1に係るレーザ加工装置を説明するための図である。
図2】実施例1に係るレーザ加工装置のブロック図である。
図3】実施例2に係るレーザ加工装置を説明するための図である。
図4】実施例2に係るレーザ加工装置のブロック図である。
図5】実施例1に係るレーザ加工装置において、温度センサの検出温度とガルバノスキャナの補正量の関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を実施例に沿って説明する。なお、以下の説明において、同等な各部には同一の符号を付して説明を省略する。
【0013】
本発明の実施例1について説明する。図2は、本発明の実施例1に係るレーザ加工装置のブロック図である。図2において、レーザビームで穴あけを行うべきプリント基板11は、図示しないテーブル上に載置されている。20はレーザビームを発振するレーザ発振器、24はレーザビームを直角方向に曲げるミラー、9は反射ミラー8からのレーザビームを2次元方向に走査するガルバノスキャナ、10はガルバノスキャナ9からのレーザビームをプリント基板11の穴あけ位置に照射する集光レンズ、6は光透過部材、7は後述するように光透過部材のレーザビームが照射されない部分に取り付けられ、光透過部材6の温度を検出する接触式の温度センサである。本実施例では温度センサ7として熱電対を用いた。
【0014】
27は装置全体の動作を制御する全体制御部であり、例えばプログラム制御の処理装置によって実現され、いくつかの要素が含まれる。22はレーザ発振器20での個々のレーザビームの発振を指示するレーザ発振指令信号を出力するレーザ発振制御部、28はガルバノスキャナ9の動作を指示するガルバノ動作制御信号を出力するガルバノスキャナ制御部である。これらの制御部のうちの一部または全部は全体制御部27と別個に設けられていてもよい。
なお、図2において、各構成要素や接続線は、主として本実施例を説明するために必要と考えられるものを示してあり、レーザ加工装置として必要なもの全てを示している訳ではない。
【0015】
図1図2における集光レンズ10の周辺の実装構造を示す図である。図1において、図2と同じ番号のものは同じものを示している。1は可動照射ユニット、2は固定ユニット、3はカバー、4は筒、5は穴、6は光透過部材、7は温度センサ、8は反射ミラー、9はガルバノスキャナ、10は集光レンズ、11はプリント基板である。
1は穴あけ加工を行うべきプリント基板11の厚みに応じて垂直方向となるZ方向に移動ができるように装置本体に取り付けられている可動照射ユニットであり、反射ミラー8、ガルバノスキャナ9及び集光レンズ10が配置されている。2は装置本体に固定されている固定ユニットである。可動照射ユニット1は固定ユニット2からレーザビームを反射ミラー8で受光する位置関係にあり、反射ミラー8で受光したレーザビームはガルバノスキャナ9及び集光レンズ10を経由してプリント基板11に照射されるようになっている。可動照射ユニット1内にはベースプレート15があり、集光レンズ10はこのベースプレート15に固定されており、ガルバノスキャナ9がその上を覆うように固定されている。また、反射ミラー8の上部には光透過部材6が配置されており、レーザビームは光透過部材6を透過して反射ミラー8で受光する。光透過部材6は、集光レンズ10と温度上昇特性が同等な材質で構成されている。
【0016】
本実施例では、レーザビームにCO2レーザを用い、集光レンズ10の材質をゲルマニウムとしたので、光透過部材6の材質を集光レンズの材質と同じゲルマニウムとした。また、光透過部材6はレーザビームが通過すればよいので光透過部材6の径はレーザビームが通過する程度に小さくした。さらに光透過部材6のレーザビームが照射されない部分には、接触式の温度センサ7が取り付けられており、この温度センサ7で光透過部材6の温度を検出する。
可動照射ユニット1は塵埃などが侵入しにくいようにカバー3で覆われている。可動照射ユニット1と固定ユニット2の間には伸縮自在の蛇腹状の筒4が設けられており、固定ユニット2からのレーザビームは筒4を通ってカバー3にあけられた穴5から可動照射ユニット1に入るようになっている。
【0017】
以上の構成において、穴あけ加工を行う前に、あらかじめガルバノスキャナ9の走査位置の補正をするための補正情報を以下のようにして得ておく。
レーザパルスの繰り返し周期によって集光レンズ10の温度の差がある。レーザパルスの繰り返し周期が最も短くなる場合には集光レンズ10の温度が最も高くなる。また、レーザパルスの繰り返し周期が最も長くなる場合には集光レンズ10の温度がもっとも低くなる。
そこで、集光レンズ10の温度が最も低い場合の光透過部材6の検出温度と、その時の穴あけ位置のずれ量を計測する。つぎに、動作中に集光レンズ10の温度が一番高い場合の温度センサ7による光透過部材6の検出温度とその時の穴あけ位置のずれ量を計測する。
【0018】
次に、穴あけ位置のずれ量からガルバノスキャナ9の補正量が定まるので、温度センサ7の最低検出温度と最高検出温度におけるガルバノスキャナ9の補正量との関係を求めることができ、その関係をガルバノスキャナ制御部28の中にある補正情報記憶部29に補正情報として記憶させておく。
【0019】
図5は、温度センサ7の検出温度とガルバノスキャナ9の補正量との関係を示す図である。ここでは、温度センサ7の最低検出温度と最高検出温度との間で、ガルバノスキャナ9の補正量を比例関数的に変化させており、この関係が補正情報として補正情報記憶部29に記憶される。
【0020】
穴あけ加工を行う場合は、ガルバノスキャナ制御部28は温度センサ7からの検出温度に基づいて補正情報記憶部29から該当する補正情報を読み出し、ガルバノスキャナ9の走査位置を最終的に決定して、ガルバノスキャナ9を動作させる。
【0021】
以上の実施例1によれば、光透過部材6の材質を集光レンズ10の材質と同じゲルマニウムとしている。従って、温度上昇特性が集光レンズ10と同じ光透過部材6の温度検出に基づいてガルバノスキャナ9の走査位置の補正を行うので、ガルバノスキャナ9の補正制御を精度よく行うことができる。
また、光透過部材6はレーザビームが通過すればよく、光透過部材6の径をレーザビームと同等に小さくできるので、レーザビームの入射位置と温度センサ7の位置が近くでき、レーザビームの入射位置と温度測定位置での温度の差が小さく、高精度に光透過部材6の温度を検出でき、ガルバノスキャナ9の位置補正を高精度にできる。
【0022】
また、レーザビームの入射位置と温度センサ7の位置が近いのでレーザビームによる熱が温度センサ7に伝達するまでの時間が短く、ガルバノ制御の遅れを小さくできる。
さらに、反射ミラーを使用した特許文献1の構造では、反射膜の劣化で反射ミラーを交換するたびに、温度センサの検出温度によるガルバノスキャナの補正量を取り直す必要があったのに対し、そのような必要がなくなる。
【実施例2】
【0023】
本発明の実施例2について説明する。図4は、本発明の実施例1に係るレーザ加工装置のブロック図である。図2と同じものには同一の符号を付けて説明を省略する。
13はビームスプリッタであり、反射ミラー24と光透過部材6の間に設置されている。ビームスプリッタ13のレーザビームの透過率としてはたとえば1~3%程度のものを用いる。反射ミラー24で反射したレーザビームはビームスプリッタ13に照射され、レーザビームの一部がビームスプリッタ13を通過した後、光透過部材6に入射し、さらに光透過部材6を通過してビームダンパ14に入射する。光透過部材6のレーザビームが照射されない部分には、接触式の温度センサ7が取り付けられており、この温度センサ7を用いて光透過部材6の温度を検出し、検出温度から実施例1と同様にガルバノスキャナ9の補正制御を行う。
【0024】
図3図4における集光レンズ10の周辺の実装構造を示す図である。図3において、図4と同じ番号のものは同じものを示している。
1は可動照射ユニット、2は固定ユニット、3はカバー、4は筒、5は穴、6は光透過部材、7は温度センサ、9はガルバノスキャナ、10は集光レンズ、11はプリント基板、13はビームスプリッタ、14はビームダンパである。
1は穴あけ加工を行うべきプリント基板11の厚みに応じて垂直方向となるZ方向に移動ができるように装置本体に取り付けられている可動照射ユニットであり、ビームスプリッタ13、ガルバノスキャナ9及び集光レンズ10が配置されている。2は装置本体に固定されている固定ユニットである。
【0025】
可動照射ユニット1は固定ユニット2からレーザビームをビームスプリッタ13で受光する位置関係にあり、ビームスプリッタ13で受光したレーザビームはガルバノスキャナ9及び集光レンズ10を経由してプリント基板11に照射されるようになっている。可動照射ユニット1内にはベースプレート15があり、集光レンズ10はこのベースプレート15にはめ込まれ、ガルバノスキャナ9がその上を覆うように固定されている。また、ビームスプリッタ13の下部には光透過部材6が配置されており、レーザビームの一部がビームスプリッタ13を透過した後、光透過部材6を透過しビームダンパ14で受光する。光透過部材6のレーザビームが照射されない部分には、レーザビームの受光に伴う熱吸収による光透過部材6の温度を検出する接触式の温度センサ7が取り付けられている。
【0026】
可動照射ユニット1は粉塵などが侵入しにくいようにカバー3で覆われている。可動照射ユニット1と固定ユニット2の間には伸縮自在の蛇腹状の筒4が設けられており、固定ユニット2からのレーザビームは筒4を通ってカバー3にあけられた穴5から可動照射ユニット1に入るようになっている。
【0027】
実施例2によれば、ビームスプリッタ13を透過したレーザビームが光透過部材6に入射し、光透過部材6の温度を検出するため、ビームスプリッタ13で反射したレーザビームは光透過部材6を通過することがない。このため、光透過部材6はレーザビームによる熱吸収に伴う膨張で中央部が厚くなってレンズ化することがなく、レーザビームの形状が変化せずにガルバノスキャナ9に入射するため、さらに高品質の加工が可能である。
【0028】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は当該実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもなく、様々な変形例が含まれる。
【0029】
たとえば、以上の実施例においては、光透過部材6の材質は集光レンズ10と同じゲルマニウムとしたが、セレン化亜鉛の如き温度上昇特性が同等な材質のものでもよい。
また、温度センサ7の最低検出温度と最高検出温度との間でガルバノスキャナ9の補正量を比例関数的に変化させたが、最低温度と最高温度の間にさらに温度と補正量の相関データを取り、ガルバノスキャナ9の位置補正の精度をもっと上げてもよい。
また、穴あけ加工を行うレーザ加工装置としたが、他の加工を行うレーザ加工装置でもよい。
【符号の説明】
【0030】
1:可動照射ユニット
2:固定ユニット
3:カバー
4:筒
5:穴
6:光透過部材
7:温度センサ
8:反射ミラー
9:ガルバノスキャナ
10:集光レンズ
11:プリント基板
12:温度検出部
13:ビームスプリッタ
14:ビームダンパ
15:ベースプレート
20:レーザ発振器
22:レーザ発振器制御部
24:反射ミラー
25:温度補正値算出部
26:Z軸制御部
27:全体制御部
28:ガルバノスキャナ制御部
29:補正情報記憶部
図1
図2
図3
図4
図5