(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】磁気センサ集合体及び磁気センサ集合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10N 50/01 20230101AFI20230105BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20230105BHJP
H10N 50/00 20230101ALI20230105BHJP
【FI】
H01L43/12
G01R33/02 D
H01L43/00
(21)【出願番号】P 2017190448
(22)【出願日】2017-09-29
【審査請求日】2020-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149113
【氏名又は名称】加藤 謹矢
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大三
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-192222(JP,A)
【文献】特開2002-228700(JP,A)
【文献】国際公開第2014/203862(WO,A2)
【文献】特開2004-333247(JP,A)
【文献】特開平10-090380(JP,A)
【文献】特開平10-195649(JP,A)
【文献】特開平10-116715(JP,A)
【文献】特開平04-218905(JP,A)
【文献】特開2003-161770(JP,A)
【文献】特開平08-330644(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0053113(US,A1)
【文献】特開2003-035757(JP,A)
【文献】国際公開第2010/100710(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 43/12
G01R 33/02
H01L 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の基板の上に複数の磁気センサが配置された磁気センサ集合体であって、
磁界を感受する感受部が長手方向と短手方向とを有し、
当該短手方向に一軸磁気異方性が付与され、磁気インピーダンス効果により磁界を感受し、当該短手方向が前記基板の径方向を向くように、
全ての前記複数の磁気センサが配置された磁気センサ集合体。
【請求項2】
複数の前記磁気センサのそれぞれは、前記感受部の短手方向と交差する方向に磁界を形成する、硬磁性体で構成された薄膜磁石を備えることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ集合体。
【請求項3】
マグネトロンスパッタリングにより、基板上に磁界を感受する感受部を構成する軟磁性体層を堆積する軟磁性体層堆積工程と、
前記感受部は長手方向と短手方向とを有し、当該短手方向が前記軟磁性体層堆積工程において形成された磁界の方向を向くように当該感受部を形成する感受部形成工程と、を含み、
それぞれが前記感受部を備えた複数の磁気センサを備える、磁気センサ集合体の製造方法。
【請求項4】
前記マグネトロンスパッタリングは、前記基板の表面に対向する面内において、磁界を形成する磁石が回転するカソードを用いて行うことを特徴とする請求項3に記載の磁気センサ集合体の製造方法。
【請求項5】
前記感受部の短手方向と交差する方向に磁界を形成する、硬磁性体で構成された薄膜磁石が設けられた基板に対して、前記軟磁性体層堆積工程と、前記感受部形成工程とを行うことを特徴とする請求項3又は4に記載の磁気センサ集合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサの製造方法及び磁気センサ集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
公報記載の従来技術として、磁気インピーダンス効果を利用した磁気検出素子であって、非磁性基板上に高透磁率磁性膜を形成して構成され、前記高透磁率磁性膜は、磁界検出方向に沿った複数本の直線部分が所定間隔で平行に並び、順次折り返すように連結され、電気的に直列接続されたつづら折り状パターンに形成され、且つ磁化容易軸方向が磁界検出方向に対し膜面内で垂直な方向になるように磁気異方性が付けられており、該高透磁率磁性膜の両端部から高周波電流を印加し外部磁界により前記両端部間に発生するインピーダンスの変化を電気信号に変換して出力を得られるようにした磁気検出素子が存在する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、磁気インピーダンス効果を用いた磁気センサでは、短手方向に一軸異方性が付与された短冊状の軟磁性体が感受部として用いられる。そして、軟磁性体の一軸異方性は、感受部が形成された後に、磁界中熱処理などにより付与されていた。
本発明は、磁界中熱処理を用いる場合に比べて、製造に要する工程が簡略化された磁気センサの製造方法などを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が適用される磁気センサ集合体は、円形の基板の上に複数の磁気センサが配置された磁気センサ集合体であって、磁界を感受する感受部が長手方向と短手方向とを有し、短手方向に一軸磁気異方性が付与され、磁気インピーダンス効果により磁界を感受し、短手方向が基板の径方向を向くように、全ての複数の磁気センサが配置されている。
このような磁気センサ集合体において、複数の磁気センサのそれぞれは、感受部の短手方向と交差する方向に磁界を形成する、硬磁性体で構成された薄膜磁石を備えることを特徴とすることができる。
他の観点から捉えると、本発明が適用される、それぞれが感受部を備えた複数の磁気センサを備える磁気センサ集合体の製造方法は、マグネトロンスパッタリングにより、基板上に磁界を感受する感受部を構成する軟磁性体層を堆積する軟磁性体層堆積工程と、感受部は長手方向と短手方向とを有し、短手方向が軟磁性体層堆積工程において形成された磁界の方向を向くように感受部を形成する感受部形成工程と、を含む。
このような磁気センサ集合体の製造方法において、マグネトロンスパッタリングは、基板の表面に対向する面内において、磁界を形成する磁石が回転するカソードを用いて行うことを特徴とすることができる。
さらに、感受部の短手方向と交差する方向に磁界を形成する、硬磁性体で構成された薄膜磁石が設けられた基板に対して、軟磁性体層堆積工程と、感受部形成工程とを行うことを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、磁界中熱処理を用いる場合に比べて、製造に要する工程が簡略化された磁気センサの製造方法などが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態が適用される磁気センサの一例を説明する図である。(a)は、平面図、(b)は、(a)のIB-IB線での断面図である。
【
図2】磁気センサの製造方法の一例を説明する図である。(a)~(c)は、磁気センサの製造方法における工程を示す。
【
図3】マグネトロンスパッタリング装置の概要を説明する断面図である。
【
図4】マグネトロンスパッタリング装置における磁気回路の構成及び基板に形成された磁気センサの配置(磁気センサ集合体)を示す図である。(a)は、ターゲット側から見た磁気回路の構成、(b)は、基板に形成された磁気センサの配置(磁気センサ集合体)を示す。
【
図5】マグネトロンスパッタリング装置における磁気回路の変形例1と、基板に形成された磁気センサの配置(磁気センサ集合体)を示す図である。(a)は、ターゲット側から見た変形例1の磁気回路の構成、(b)は、基板に形成された磁気センサの配置(磁気センサ集合体)を示す。
【
図6】マグネトロンスパッタリング装置における磁気回路の変形例2の構成と、基板に形成された磁気センサの配置(磁気センサ集合体)を示す図である。(a)は、ターゲット側から見た変形例2の磁気回路の構成、(b)は、基板10に形成された磁気センサの配置(磁気センサ集合体)を示す。
【
図7】第2の実施の形態が適用される磁気センサの一例を説明する図である。(a)は、平面図、(b)は、(a)のVIIB-VIIB線での断面図である。
【
図8】第3の実施の形態が適用される磁気センサの一例を説明する図である。(a)は、平面図、(b)は、(a)のVIIIB-VIIIB線での断面図である。
【
図9】第4の実施の形態が適用される磁気センサの一例を説明する図である。(a)は、平面図、(b)は、(a)のIXB-IXB線での断面図である。
【
図10】第4の実施の形態が適用される磁気センサの製造方法の一例を説明する図である。(a)~(g)は、磁気センサの製造方法における工程を示す。
【
図11】第5の実施の形態が適用される磁気センサの一例を説明する図である。(a)は、平面図、(b)は、(a)のXIB-XIB線での断面図である。
【
図12】第6の実施の形態が適用される磁気センサの一例を説明する図である。(a)は、平面図、(b)は、(a)のXIIB-XIIB線での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で説明する磁気センサは、いわゆる磁気インピーダンス効果素子を用いたものである。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
[第1の実施の形態]
(磁気センサ1の構成)
まず、第1の実施の形態が適用される磁気センサ1の構成を説明する。
図1は、第1の実施の形態が適用される磁気センサ1の一例を説明する図である。
図1(a)は、平面図、
図1(b)は、
図1(a)のIB-IB線での断面図である。
図1(a)、(b)に示すように、磁気センサ1は、基板10と、基板10上に設けられ、軟磁性体(後述する軟磁性体層101)で構成された磁気センサ本体20とを備える。
図1(a)に示すように、磁気センサ本体20は、磁界(外部磁界)の変化を感知する複数の感受部21と、複数の感受部21を直列(つづら折り)接続する接続部22と、感受部21に電流を供給する電線が接続される端子部23とを備える。なお、本明細書においては、感受部21を構成する軟磁性体層101を( )内に表記する。他の場合も同様である。
【0011】
ここで軟磁性体とは、外部磁界によって容易に磁化されるが、外部磁界を取り除くと速やかに磁化のないか又は小さい元の状態に戻る、いわゆる保磁力の小さい材料である。軟磁性体としては、例えば、Coを主成分にした合金(以下では、感受部21を構成するCo合金と表記する。)に高融点金属Nb、Ta、W等を添加したアモルファス合金が用いうる。感受部21を構成するCo合金としては、CoNbZr、CoFeTa、CoWZr等が挙げられる。なお、本明細書においては、合金の組成比は、特に示していない。以下同様である。
【0012】
基板10は、非磁性体からなる基板であって、例えば、ガラス、サファイア等の酸化物基板や、シリコン等の半導体基板が用いうる。ここでは、基板10は、ガラスであるとして説明する。なお、基板10は、一例として直径が約95mmの円盤状であって、厚さは約0.5mmである。そして、複数の磁気センサ1が基板10上に一括して製造されたのち、個々の磁気センサ1に分割される(切り出される)。
図1は、切り出された1個の磁気センサ1である。
なお、基板10が導電体である場合には、基板10上に電気的な絶縁層を設けておけばよい。
【0013】
次に、磁気センサ本体20を説明する。
感受部21は、後述する軟磁性体層101で構成された、長手方向に電流が流れるように設けられた短冊状の部材である。そして、複数の感受部21(ここでは、4個)が、長手方向が平行に配置(配列)されている。なお、感受部21は1個でもよい。
【0014】
そして、接続部22は、軟磁性体層101で構成され、隣接する感受部21の端部間に設けられている。そして、接続部22は、複数の感受部21を直列(つづら折り)に接続する。ここでは、感受部21が4個あるため、接続部22は3個である。感受部21が2個である場合には、接続部22は1個でよい。なお、感受部21が1個である場合には、接続部22を備えなくともよい。接続部22の幅は、感受部21と同様であればよい。
【0015】
さらに、端子部23は、軟磁性体層101で構成され、接続部22で接続されていない感受部21の端部(2個)にそれぞれ設けられている。端子部23は、感受部21から引き出す引き出し部分と、電流を供給する電線を接続する部分(パッド)とを備える。なお、電線を接続する部分は、電線を接続しうる大きさであればよい。
【0016】
図1(a)、(b)に示すように、感受部21、接続部22及び端子部23は、同一の軟磁性体層101を加工して形成されていて、連続している。
【0017】
磁気センサ1は、感受部21の長手方向と交差する短手方向(幅方向)に磁化容易軸が向いた、一軸磁気異方性が付与されている。
使用時には、外部から感受部21の長手方向に磁束が透過するように、例えばコイルに電流を流して発生させたバイアス磁界が印加される。そして、バイアス磁界が印加された状態で、2個の端子部23から感受部21に高周波電流を流して、端子部23間の抵抗値(インピーダンス)を計測する。端子部23間の抵抗値(インピーダンス)は、外部磁界の感受部21の長手方向に沿った方向の成分を感受する。よって、端子部23間の抵抗値(インピーダンス)の計測から、外部磁界又は外部磁界の変化が測定される。
【0018】
なお、バイアス磁界は、外部磁界の変化に対して、端子部23間の抵抗値(インピーダンス)変化が大きい状態に設定する。つまり、バイアス磁界を印加して、外部磁界に対してインピーダンス変化の急峻なところを使うと、微弱な外部磁界の変化を捉えることが可能となる。
【0019】
感受部21は、例えば短手方向の幅が数10μm、長手方向の長さが約1mm、厚さが0.5μm~5μmである。そして、平行して配置(配列)される2個の感受部21の間隔は、50~100μmである。よって、磁気センサ1の平面形状は、数mm角である。
なお、計測する外部磁界の値や用いる軟磁性体材料などによって、他の値を用いてもよい。
【0020】
(磁気センサ1の製造方法)
次に、磁気センサ1の製造方法を説明する。複数の磁気センサ1が一括して製造される。ここでは、1個の磁気センサ1に着目して説明する。以下で説明する製造方法では、リフトオフ法を用いる。なお、エッチング法を用いてもよい。
図2は、磁気センサ1の製造方法の一例を説明する図である。
図2(a)~(c)は、磁気センサ1の製造方法における工程を示す。なお、
図2(a)~(c)は、代表的な工程であって、
図2(a)~(c)の順に進む。
図2(a)~(c)は、
図1(b)の断面図に対応する。
【0021】
図2(a)は、レジストパターン形成工程であって、次の
図2(b)で堆積する軟磁性体層101をリフトオフするためのレジストパターン201を基板10上に形成する。
ここでは、基板10を洗浄した後、基板10の一方の面(以下、表面と表記する。)上に、磁気センサ本体20が形成される部分を開口部とするレジストパターン201を、公知のフォトリソグラフィにより形成する。
【0022】
なお、レジストパターン201は、磁気センサ本体20の感受部21が、後述するマグネトロン方式のスパッタリング装置300(マグネトロンスパッタリング装置300)で用いられる磁界内に配置され、且つ、感受部21の短手方向(幅方向)が磁界の方向に向くように形成されている。
ここで、短手方向(幅方向)が磁界の方向を向くとは、磁界の方向と短手方向とのなす角度が45°未満であることをいう。なお、磁界の方向と短手方向とのなす角度は、より小さいほどよい。
【0023】
図2(b)は、軟磁性体層堆積工程であって、レジストパターン201が形成された基板10の表面上に軟磁性体の層(軟磁性体層101)を堆積する。
ここでは、軟磁性体層101は、マグネトロンスパッタリング装置300により、軟磁性体で構成されたターゲット(後述する
図3に示すターゲット)を用いて、基板10上に堆積される。なお、軟磁性体は、前述した感受部21を構成するCo合金である。
なお、マグネトロンスパッタリング装置300により軟磁性体層101など堆積することを、マグネトロンスパッタリングにより軟磁性体層101などを堆積すると表記することがある。
【0024】
図2(c)は、軟磁性体層リフトオフ工程であって、基板10上に堆積された軟磁性体層101が、リフトオフにより感受部21、接続部22及び端子部23を含む磁気センサ本体20に加工される。
ここでは、レジストパターン201を除去することで、レジストパターン201上に堆積した軟磁性体層101が除去される。これにより、レジストパターン201の開口部に軟磁性体層101が残る。このようにして、磁気センサ本体20が形成される。
なお、この軟磁性体層リフトオフ工程は、感受部形成工程の一例である。エッチング法を用いる場合には、エッチングにより感受部21を形成する工程が感受部形成工程となる。
【0025】
ここでは、磁気センサ本体20の感受部21がマグネトロンスパッタリング装置300の磁界内にあり、且つ、感受部21の短手方向(幅方向)が、マグネトロンスパッタリング装置300の磁界の方向に向くように設定されている。よって、軟磁性体層101は、成膜(堆積)中に、感受部21の短手方向(幅方向)に磁化容易軸が向いた一軸磁気異方性が付与される。つまり、一軸磁気異方性は、マグネトロンスパッタリング装置300の磁界によって誘導されて付与される。よって、この一軸磁気異方性は、誘導磁気異方性と表記されることがある。これにより、磁気センサ1が形成された後に、磁界中熱処理を行うことを要しない。
【0026】
なお、磁界中熱処理は、例えば3kG(0.3T)の回転磁界中における400℃での熱処理と、それに引き続く3kG(0.3T)の静磁界中における400℃での熱処理である。
つまり、第1の実施の形態が適用される磁気センサ1の製造方法では、400℃などの高温での磁界中熱処理を要しない。
【0027】
(マグネトロンスパッタリング装置300)
ここで、
図2(b)におけるマグネトロンスパッタリング装置300を用いた軟磁性体層101の形成について説明する。まず、マグネトロンスパッタリング装置300を説明する。
図3は、マグネトロンスパッタリング装置300の概要を説明する断面図である。ここでのマグネトロンスパッタリング装置300は、
図3のO-O線を回転の軸とする円筒状である。
マグネトロンスパッタリング装置300は、隔壁310とマグネトロンカソード320とを備える。隔壁310とマグネトロンカソード320とは、ポリテトラフルオロエチレンなどの絶縁部材311を介して、密閉された空間であるチャンバ340を構成する。
チャンバ340内には、基板10を保持する基板ホルダ350を備える。
【0028】
隔壁310は、接地(GND)されている。基板ホルダ350は、隔壁310を介して接地(GND)されアノードとして機能する。つまり、接地された基板ホルダ350とマグネトロンカソード320との間に、高周波電源360が接続されている。なお、高周波電源360の代わりに、直流電源が接続され、基板ホルダ350とマグネトロンカソード320との間に、直流(DC)が印加されるようにしてもよい。
【0029】
なお、
図3では図示していないが、マグネトロンスパッタリング装置300には、上記の他にチャンバ340内を減圧する真空ポンプ、チャンバ340内にスパッタリングに用いるガス、例えばArなどを導入するガス供給機構やチャンバ340内の圧力を予め定められた値に保持する圧力調整機構を備える。また、マグネトロンカソード320を冷却するために、マグネトロンカソード320に冷却液を供給する冷却機構を備えてもよい。そして、基板10を加熱するための加熱機構、例えば赤外線ランプや、逆に、基板10を冷却するために、基板ホルダ350に冷却液を供給する冷却機構を備えてもよい。
【0030】
マグネトロンカソード320は、カソード筐体321、基板10上に形成する薄膜の材料であるターゲット322、ターゲット322を保持するバッキングプレート323、及び、バッキングプレート323を透過して磁界をターゲット322側に生じさせる磁気回路330を備える。
【0031】
ターゲット322は、前述した感受部21を構成するCo合金で構成されている。
バッキングプレート323は、導電率の高い無酸素銅などで構成されている。そして、表面に、ターゲット322が導電性の接着剤などで固定されている。
カソード筐体321は、ステンレス鋼などで構成されている。カソード筐体321にターゲット322が取り付けられたバッキングプレート323が固定され、バッキングプレート323のターゲット322の設けられていない側に、磁気回路330が設けられている。
ターゲット322の大きさ(直径)は、基板10の予め定められた領域(範囲)に膜が形成(堆積)されるように設定されている。ここでは、ターゲット322の直径は、基板10の直径より大きくしている。
【0032】
磁気回路330は、バッキングプレート323側にN極が露出した磁石(マグネット)331と、S極が露出した磁石332と、磁石331、332のバッキングプレート323側とは反対側に設けられ、磁石332のN極からの磁束を磁石331のS極に誘導するヨーク333を備える。磁石331、332には、一般に永久磁石が用いられる。
ここでは、後述する
図4に示すように、磁石331、332は、バッキングプレート323側にN極が露出した磁石331が外側、S極が露出した磁石332が内側になるように同心円状に設けられている。
【0033】
すると、磁石331のN極から磁石332のS極に向かう磁力線(矢印で示す)が、バッキングプレート323及びターゲット322を貫いて、チャンバ340内に発生する。そして、この磁力線の一部は、基板ホルダ350に保持された基板10に到達し、基板10を、表面に平行な方向に通過する。つまり、基板10には、磁力線が通過する部分において、表面に平行な方向の磁界が発生する。
すなわち、基板10に発生する表面に平行な方向の磁界により、基板10上に堆積(形成)される軟磁性体層101の堆積に伴って一軸磁気異方性が付与される。
【0034】
なお、マグネトロンスパッタリング装置300では、高周波電源360によって発生させた放電によって発生した電子を、ターゲット322の表面の磁力線によって、ターゲット322の近傍に集中させる(閉じ込める)。これにより、電子とガスとの衝突確率を増加させてガスの電離を促進し、膜の堆積速度(成膜速度)を向上させている。なお、磁力線によって電子を集中させたターゲット322の表面が、電離したガスのイオンの衝撃で浸食(エロージョン)される範囲となる。
【0035】
基板ホルダ350は、ステンレス鋼などで構成されている。そして、基板ホルダ350は、基板10を保持する機構(不図示)により、基板10を保持する。
前述したように、マグネトロンスパッタリング装置300は、円筒状である。そして、ターゲット322も円形(円盤状)である。そして、基板10も円形(円盤状)であって、ターゲット322に対向するように基板ホルダ350に保持されている(後述する
図4参照)。
【0036】
以上説明したように、
図3に示すマグネトロンスパッタリング装置300は、いわゆる基板10の一枚毎に、膜を形成(堆積)する枚葉式のスパッタリング装置である。
また、
図3に示すマグネトロンスパッタリング装置300では、基板10の表面(ターゲット322の表面)を水平(
図3の紙面における左右方向)に配置するように構成したが、垂直(
図3の紙面における上下方向に)に配置するように構成してもよい。
【0037】
図4は、マグネトロンスパッタリング装置300における磁気回路330の構成及び基板10に形成された磁気センサ1の配置(磁気センサ集合体)を示す図である。
図4(a)は、ターゲット322側から見た磁気回路330の構成、
図4(b)は、基板10に形成された磁気センサ1の配置(磁気センサ集合体)を示す。
【0038】
図4(a)に示すように、ターゲット322は、円形である。そして、ターゲット322を通して見た磁気回路330は、同心円状に磁石331のN極と磁石332のS極とが設けられている。そして、ターゲット322を透過して、磁石331のN極から磁石332のS極に向かう磁力線(矢印)が形成されている。
【0039】
そして、
図4(b)に示すように、基板10は、ターゲット322に対向して設けられた円板状である。なお、
図4(b)には、対向する磁気回路330の磁石331、332の位置を合わせて示している。そして、磁気センサ1は、基板10上の磁力線が通過する部分(磁界)において、磁力線の通過する方向に軟磁性体層101で形成される感受部21の短手方向(幅方向)が向くように配置(配列)されている。例えば、磁気センサ1は、磁気回路330における磁石331のN極の作る円と磁石332のS極が作る円との内側に、感受部21の短手方向(幅方向)が円の径方向に沿うように配置(配列)されている。
【0040】
ここでは、磁気回路330における磁石331のN極の作る円と磁石332のS極が作る円との間に1個の磁気センサ1を記載している。これは、磁気センサ1の感受部21と、磁石331のN極と磁石332のS極との作る磁界との関係を説明するためである。磁気センサ1は、磁気センサ本体20における感受部21の短手方向が磁界の方向に沿うように配置されている。そして、複数の磁気センサ1が、円周方向に沿って配置されている。
なお、磁気センサ1の平面形状は、前述したように数mm角である。よって、実際には、磁石331のN極と磁石332のS極とで形成される磁界の方向には、複数の磁気センサ1が配置されている。また、円周方向においても同様である。
【0041】
なお、基板10の中心部や外周部は、磁気回路330による磁界の影響を受けにくい。つまり、磁気回路330による磁界によって、軟磁性体層101に一軸磁気異方性が付与されにくい。基板10上の磁気センサ1を設ける領域は、予め定められた一軸磁気異方性が付与される領域であればよい。なお、磁石331のN極と磁石332のS極との間が、磁界が強い。よって、磁石331のN極と磁石332のS極との間に、磁気センサ1を配置することがよい。なお、予め定められた一軸磁気異方性が付与されるならば、磁気センサ1を配置する領域は磁石331のN極と磁石332のS極との間でなくともよい。よって、一軸磁気異方性が付与しづらい基板10の中心部や外周部には、磁気センサ1を配置しないことがよい。しかし、基板10の中心部や外周部に磁気センサ1を配置した場合には、基板10の中心部や外周部に配置された磁気センサ1には、磁界中熱処理などにより、一軸磁気異方性を付与すればよい。
【0042】
そして、基板10上に複数の磁気センサ1が形成された状態を、磁気センサ集合体と表記する。磁気センサ1は、複数の磁気センサ1が形成された基板10のまま出荷されることがある。つまり、出荷先において、基板10が分割(切断)され、個々の磁気センサ1にされる。なお、基板10は、一部であってもよい。
【0043】
図4(b)では、基板10から個々の磁気センサ1が切り出されていない磁気センサ集合体を示している。しかし、磁気センサ集合体は、基板10を粘着シートに貼り付け、レーザなどの切断手段により基板10を磁気センサ1毎に切断した後、磁気センサ1を取り出しやすいように粘着シートを引き延ばした状態であってもよい。磁気センサ1は、このような状態においても出荷されうる。つまり、出荷先において、粘着テープから個々の磁気センサ1が取り出される。なお、基板10は、一部であってもよい。
【0044】
いずれの磁気センサ集合体においても、磁気センサ1は、軟磁性体層101を形成するマグネトロンスパッタリング装置300のマグネトロンカソード320における磁気回路330の磁石331、332の配置を反映した状態で配置されている。
【0045】
以上説明したように、第1の実施の形態では、軟磁性体層101の形成(堆積)にマグネトロンスパッタリング装置300を用いることにより、軟磁性体層101の堆積速度を向上させて、堆積(成膜)に係る所要時間を短縮するとともに、軟磁性体層101の堆積と同時に一軸磁気異方性を付与している。よって、磁気センサ1の製造において、一軸磁気異方性を付与するための磁界中熱処理工程を不要にし、製造に要する工程を簡略化している。
【0046】
(変形例1)
次に、マグネトロンスパッタリング装置300における磁気回路330の変形例1を説明する。
図5は、マグネトロンスパッタリング装置300における磁気回路330の変形例1と、基板10に形成された磁気センサ1の配置(磁気センサ集合体)を示す図である。
図5(a)は、ターゲット322側から見た変形例1の磁気回路330の構成、
図5(b)は、基板10に形成された磁気センサ1の配置(磁気センサ集合体)である。
【0047】
図5(a)に示すように、変形例1の磁気回路330におけるターゲット322の平面形状は、長方形である。つまり、変形例1の磁気回路330を備えるマグネトロンスパッタリング装置300は、チャンバ340が円筒状でなく、角柱状である。なお、他の構成は、
図3に示したマグネトロンスパッタリング装置300と同様である。よって、同様の部分の説明を省略する。
そして、ターゲット322を通して見た変形例1の磁気回路330は、長方形のターゲット322の内側に、磁石331のN極が長方形の辺に沿って設けられ、磁石332のS極がその内側において、長方形の辺に沿って配置(配列)されている。
【0048】
ここでは、
図5(b)に示すように、基板10は、ターゲット322に対向して設けられた長方形である。なお、
図5(b)には、対向する磁気回路330の磁石331、332の位置を合わせて示している。そして、磁気センサ1は、基板10上の磁力線が通過する部分において、磁力線の通過する方向(磁界の方向)に軟磁性体層101で形成された感受部21の短手方向(幅方向)が向くように配置されている。つまり、磁気センサ1は、磁気回路330の磁石331のN極と磁石332のS極とが作る磁界の内側に、感受部21の短手方向(幅方向)が磁界の方向に沿うように設けられている。
【0049】
ここでも、磁気回路330における磁石331のN極と磁石332のS極との間に1個の磁気センサ1を記載している。これは、磁気センサ1の感受部21と、磁石331のN極と磁石332のS極との作る磁界との関係を説明するためである。磁気センサ1は、磁気センサ本体20における感受部21の短手方向が磁界の方向に沿うように、磁石331、332の設けられた長方形の辺に沿って配置されている。
なお、磁気センサ1の平面形状は、前述したように数mm角である。よって、磁石331のN極と磁石332のS極との間には、複数の磁気センサ1が配置されている。また、磁石331、332の設けられた長方形の辺に沿う方向においても同様である。
【0050】
図5(b)では、基板10から個々の磁気センサ1が切り出されていない磁気センサ集合体を示している。しかし、磁気センサ集合体は、基板10を粘着シートに貼り付け、レーザなどの切断手段により基板10を磁気センサ1毎に切断した後、磁気センサ1を取り出しやすいように粘着シートを引き延ばした状態であってもよい。磁気センサ1は、このような状態においても出荷されうる。つまり、出荷先において、粘着テープから個々の磁気センサ1が取り出される。なお、基板10は、一部であってもよい。
【0051】
いずれの磁気センサ集合体においても、磁気センサ1は、軟磁性体層101を形成するマグネトロンスパッタリング装置300のマグネトロンカソード320における磁気回路330の磁石331、332の配置を反映した状態で配置されている。
【0052】
なお、
図5(b)に示すように、基板10は、ターゲット322の平面形状に対応するように、長方形とした。しかし、基板10は、
図4(b)に示すような円形であってもよい。複数の磁気センサ1が、磁気回路330の磁石331のN極と磁石332のS極との作る磁界に対応して配置されていればよい。
【0053】
なお、
図5(a)では、変形例1の磁気回路330を構成する磁石331、332は、長方形であるとしたが、正方形であってもよく、多角形であってもよい。そして、製造される磁気センサ1の感受部21の短手方向が磁石331、332の発生する磁界の方向に配置されていればよい。
【0054】
(変形例2)
次に、マグネトロンスパッタリング装置300における磁気回路330の変形例2を説明する。
図6は、マグネトロンスパッタリング装置300における磁気回路330の変形例2の構成と、基板10に形成された磁気センサ1の配置(磁気センサ集合体)を示す図である。
図6(a)は、ターゲット322側から見た変形例2の磁気回路330の構成、
図6(b)は、基板10に形成された磁気センサ1の配置(磁気センサ集合体)を示す。
【0055】
図6(a)に示すように、変形例2の磁気回路330では、
図4に示した磁気回路330と同様に、ターゲット322が円盤状であって、磁石331が、磁石332を取り囲むように設けられている。しかし、磁石331は、その端がターゲット322の中心Cから、距離αの部分と、距離αより短い距離βの部分とを含むように構成されている(α>β)。そして、磁石331と磁石332との間の距離γは、大略等しく設けられている。
なお、変形例2の磁気回路330を備えるマグネトロンスパッタリング装置300の他の構成は、
図3に示したマグネトロンスパッタリング装置300と同様である。よって、同様の部分の説明を省略する。
【0056】
そして、磁石331及び磁石332は、この状態を維持して、ターゲット322の中心Cを回転軸として回転するようになっている。なお、磁石331、332を備える磁気回路330が回転し、ターゲット322(バッキングプレート323)は回転しない。つまり、磁気回路330は、ターゲット322(バッキングプレート323)の裏面において、ターゲット322(バッキングプレート323)の面に平行な仮想的な面(磁石331のN極の端部と磁石332のS極の端部とを含む面)内で回転する。ここでは、ターゲット322と基板10とは、平行に配置されているので、磁気回路330は、基板10の表面に平行な面内で回転する。なお、基板10に対して必ずしも平行な面内で回転することを要せず、基板10の表面に対向する面内で回転すればよい。
【0057】
このようにすることで、ターゲット322上には、中心Cから距離αと距離α-γの部分にできる磁界と、距離βと距離β-γの部分にできる磁界とが、交互に発生する。このようにすることで、
図4(a)に示した場合に比べ、電子が補足される領域(面積)が拡大する。これにより、ターゲット322がイオンの衝撃で浸食(エロージョン)される範囲が広がり、ターゲット322の使用効率が高くなる。
【0058】
また、基板10上においても、磁界が形成される面積が拡大することから、軟磁性体層101に一軸磁気異方性が付与される面積が拡大する。つまり、磁気センサ1を形成しうる領域が拡大する。よって、
図6(b)に示すように、磁気センサ1は、磁気回路330における磁石331、332が作る磁力線が通過する部分において、磁力線の通過する方向(磁界の方向)に軟磁性体層101で形成された感受部21の短手方向(幅方向)が向くように配置されている。例えば、磁気センサ1は、磁気回路330における磁石331、332が作る磁界の内側
すなわち、中心Cから磁石331のN極までの最大距離を半径とする円と、中心Cから磁石332のS極までの最小距離を半径とする円との間に配置されている。このように、
図4(b)に示した場合に比べ、基板10上に製造できる磁気センサ1の数が増加する。
なお、
図6(b)には、対向する磁気回路330の磁石331、332の位置を合わせて示している。
【0059】
ここでは、中心Cから磁石331のN極までの最大距離を半径とする円と、中心Cから磁石332のS極までの最小距離を半径とする円との間の直径方向に3個の磁気センサ1を記載している。これは、磁気センサ1の感受部21と、磁石331のN極と磁石332のS極との作る磁界との関係を説明するためである。磁気センサ1は、磁気センサ本体20における感受部21の短手方向が磁界の方向に沿うように、円周に沿って配置されている。
なお、磁気センサ1の平面形状は、前述したように数mm角である。よって、磁石331のN極と磁石332のS極とが作る磁界の方向(直径方向)には、複数の磁気センサ1が配置されている。また、円周方向においても同様である。
【0060】
図6(b)では、基板10から個々の磁気センサ1が切り出されていない磁気センサ集合体を示している。しかし、磁気センサ集合体は、基板10を粘着シートに貼り付け、レーザなどの切断手段により基板10を磁気センサ1毎に切断した後、磁気センサ1を取り出しやすいように粘着シートを引き延ばした状態であってもよい。磁気センサ1は、このような状態においても出荷されうる。つまり、出荷先において、粘着テープから個々の磁気センサ1が取り出される。なお、基板10は、一部であってもよい。
【0061】
いずれの磁気センサ集合体においても、個々の磁気センサ1は、軟磁性体層101を形成するマグネトロンスパッタリング装置300のマグネトロンカソード320における磁気回路330の磁石331、332の配置を反映した状態で配置されている。
【0062】
なお、磁気回路330を構成する磁石331、332の配置及び形状は、
図6に示す以外の配置及び形状にしてもよい。基板10上に形成される軟磁性体層101の一軸磁気異方性が得られる面積が広がるように設定すればよい。
【0063】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態が適用される磁気センサ2では、接続部22、端子部23が電導性の材料で構成されている。以下では、第1の実施の形態と異なる部分を主に説明し、同様の部分は同じ符号を付して説明を省略する。
【0064】
(磁気センサ2)
図7は、第2の実施の形態が適用される磁気センサ2の一例を説明する図である。
図7(a)は、平面図、
図7(b)は、
図7(a)のVIIB-VIIB線での断面図である。
図7(a)に示すように、磁気センサ本体20は、感受部21と、複数の感受部21を直列(つづら折り)接続する接続導電体部31と、感受部21に電流を供給する電線が接続される端子導電体部32とを備える。
【0065】
接続導電体部31及び端子導電体部32は、導電性に優れた導電体であればよく、例えばCu、Au、Al等が用いうる。
接続導電体部31を用いることで、
図1の磁気センサ1における磁気センサ本体20の接続部22において磁気インピーダンス効果を生じないようにし、感受部21のみの磁気インピーダンス効果で磁界を検出する。このようにすることで、磁界を検出する方向の磁気インピーダンス効果のみが引き出されるので、検出感度が向上する。
【0066】
なお、端子導電体部32を導電体とすることで、感受部21に電流を供給する電線が接続しやすくなる。
【0067】
接続導電体部31及び端子導電体部32は、例えば、メタルマスクを用いて、スパッタリング法又は真空蒸着法にて形成することができる。つまり、接続導電体部31及び端子導電体部32は、
図2(c)の後に、接続導電体部31及び端子導電体部32の領域が開口となったメタルマスクを通して、導電体層102を堆積すればよい。
また、接続導電体部31及び端子導電体部32は、フォトレジストを用いたリフトオフ法によって形成してもよい。つまり、接続導電体部31及び端子導電体部32は、
図2(c)の後に、接続導電体部31及び端子導電体部32を形成する領域が開口となったレジストパターンを形成した後、導電体層102を堆積し、レジストパターンを除去することで形成される。
【0068】
なお、いずれの場合であっても、接続導電体部31を軟磁性体層101の接続部22に重ねて設けてもよく、接続部22を設けないで感受部21を接続するように設けてもよい。端子導電体部32も同様である。
また、端子導電体部32の厚さを接続導電体部31より厚くしたい場合などには、接続導電体部31と端子導電体部32とを別工程で形成してもよい。
【0069】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態が適用される磁気センサ3では、感受部21が、反磁界抑制層を挟んで設けられた二つの軟磁性体層で構成されている。以下では、第1の実施の形態と異なる部分を主に説明し、同様の部分は同じ符号を付して説明を省略する。
【0070】
(磁気センサ3)
図8は、第3の実施の形態が適用される磁気センサ3の一例を説明する図である。
図8(a)は、平面図、
図8(b)は、
図8(a)のVIIIB-VIIIB線での断面図である。
【0071】
図8(b)に示すように、磁気センサ3では、磁性体層101′は、下層(基板10)側の下層軟磁性体層101aと、反磁界抑制層101bと、上層(基板10と反対)側の上層軟磁性体層101cとを備える。つまり、下層軟磁性体層101aと上層軟磁性体層101cとは、反磁界抑制層101bを挟んで設けられている。下層軟磁性体層101aと上層軟磁性体層101cには、第1の実施の形態における軟磁性体と同様に、Coを主成分にした合金(感受部21を構成するCo合金)に高融点金属Nb、Ta、W等を添加したアモルファス合金が用いうる。感受部21を構成するCo合金としては、CoNbZr、CoFeTa、CoWZr等が挙げられる。
反磁界抑制層101bには、Ru又はRu合金が用いうる。
【0072】
ここで、Ru又はRu合金の反磁界抑制層101bの膜厚を0.4nm~1.0nm又は1.6nm~2.6nmの範囲とすることで、下層軟磁性体層101aと上層軟磁性体層101cとが反強磁性結合(AFC)構造となる。つまり、反磁界が抑制され、感受部21の感度が向上する。
【0073】
この磁気センサ3は、
図2(b)に示した軟磁性体層堆積工程において、軟磁性体層101の堆積の代わりに、下層軟磁性体層101a、反磁界抑制層101b、上層軟磁性体層101cをこの順に連続堆積すればよい。これらの堆積は、第1の実施の形態と同様に、マグネトロンスパッタリング装置300を用いて行う。他の工程は同様であるので、説明を省略する。
【0074】
このようにすることで、下層軟磁性体層101a、上層軟磁性体層101cの堆積時に、一軸磁気異方性が付与される。このため、磁界中加熱による一軸磁気異方性付与の工程を行うことを要しない。よって、磁気センサ3の製造において、一軸磁気異方性を付与するための磁界中熱処理工程を不要にし、製造に要する工程を簡略化している。
また、第2の実施の形態と同様に、接続導電体部31、端子導電体部32を設けてもよい。
【0075】
[第4の実施の形態]
(磁気センサ4の構成)
第1の実施の形態から第3の実施の形態が適用される磁気センサ1、2、3は、外部からバイアス磁界を印加する。
第4の実施の形態が適用される磁気センサ4は、バイアス磁界を印加する硬磁性体で構成された薄膜磁石(後述する
図9の薄膜磁石40)を内蔵している。ここで硬磁性体とは、外部磁界によって磁化されると、外部磁界を取り除いても磁化された状態が保持される、いわゆる保磁力の大きい材料である。
図9は、第4の実施の形態が適用される磁気センサ4の一例を説明する図である。
図9(a)は、平面図、
図9(b)は、
図9(a)のIXB-IXB線での断面図である。
図9(b)に示すように、第4の実施の形態が適用される磁気センサ4は、硬磁性体(硬磁性体層105)で構成された薄膜磁石40と、薄膜磁石40に対向して設けられ、軟磁性体(軟磁性体層101)で構成されて磁界(外部磁界)を感受する磁気センサ本体20とを備える。磁気センサ本体20は、第2の実施の形態が適用される磁気センサ2で説明したように、感受部21、接続導電体部31及び端子導電体部32を備える。なお、磁気センサ本体20は、第1の実施の形態が適用される磁気センサ1と同様であってもよい。
【0076】
さらに、磁気センサ4は、薄膜磁石40の磁気異方性が面内方向に発現するように制御する制御層104を備える。制御層104は、薄膜磁石40に対して、感受部21が設けられた側と反対側に設けられている。
【0077】
磁気センサ本体20は、第2の実施の形態が適用される磁気センサ2と同様であるので、説明を省略する。
図9(b)に示すように、磁気センサ4は、薄膜磁石40のN極とS極から発生する磁束が、感受部21を長手方向に透過するように、薄膜磁石40のN極から感受部21の長手方向の一方の端部に磁束を誘導するヨーク50aと、感受部21の長手方向の他方の端部から薄膜磁石40のS極に磁束を誘導するヨーク50bとを備える。ヨーク50a、50b(区別しない場合は、ヨーク50と表記する。)は、磁束が透過しやすい軟磁性体で構成されている。ここでは、ヨーク50は、感受部21を構成する軟磁性体層101で構成されている。このようにして、薄膜磁石40は、感受部21にバイアス磁界を印加する。
【0078】
次に、
図9(b)により、磁気センサ4の断面構造を詳細に説明する。磁気センサ4は、非磁性の基板10上に、密着層103、制御層104、薄膜磁石40(硬磁性体層105)、絶縁層106及び磁気センサ本体20がこの順に配置(積層)されて構成されている。密着層103、制御層104、薄膜磁石40(硬磁性体層105)及び絶縁層106は、少なくとも二つの対向する側面が露出するように加工されている。なお、露出させる少なくとも二つの側面は、露出した薄膜磁石40を構成する硬磁性体層105の二つの側面が、N極及びS極となるように設定されている。そして、ヨーク50a、50bは、それぞれ、露出した薄膜磁石40のN極、S極に接して設けられ、発生する磁束が感受部21を長手方向に透過するように誘導する。なお、ヨーク50a、50bは、露出した薄膜磁石40のN極及びS極に接して設けられていなくてもよく、空隙(ギャップ)があってもよい。なお、ヨーク50a、50bが露出した薄膜磁石40のN極及びS極に接していると磁束が漏れることが抑制される。
【0079】
なお、
図9(a)に示すように、ヨーク50(ヨーク50a、50b)は、基板10の上側から見た形状が、感受部21に近づくにつれて狭くなるように構成されている。これは、薄膜磁石40が発生した磁束を、感受部21に集中させる(磁束密度を高める)ためである。つまり、薄膜磁石40のN極及びS極の幅を、複数の感受部21が設けられている部分の幅より広くして、感受部21に対するバイアス磁界が強くなるようにしている。よって、ヨーク50(ヨーク50a、50b)の感受部21に対向する部分の幅は、複数の感受部21が設けられている部分の幅より広く設定されていればよい。なお、ヨーク50(ヨーク50a、50b)の感受部21に対向する部分の幅を狭くしなくてもよい。
【0080】
ここで、ヨーク50(ヨーク50a、50b)と感受部21の長手方向の端部との間隔は、例えば1μm~100μmであればよい。
【0081】
密着層103は、制御層104の基板10に対する密着性を向上させる。密着層103としては、Cr又はNiを含む合金を用いるのがよい。Cr又はNiを含む合金としては、CrTi、CrTa、NiTa等が挙げられる。密着層103の厚さは、例えば5nm~50nmである。なお、基板10に対する制御層104の密着性に問題がなければ、密着層103を設けることを要しない。
【0082】
制御層104は、硬磁性体層105で構成される薄膜磁石40の磁気異方性が膜の面内方向に発現するように制御する層である。制御層104としては、Cr、Mo若しくはW又はそれらを含む合金(以下では、制御層104を構成するCr等を含む合金と表記する。)を用いるのがよい。制御層104を構成するCr等を含む合金としては、CrTi、CrMo、CrV、CrW等が上げられる。制御層104の厚さは、例えば5nm~100nmである。
【0083】
薄膜磁石40を構成する硬磁性体(硬磁性体層105)は、Coを主成分とし、Cr又はPtのいずれか一方又は両方を含む合金(以下では、薄膜磁石40を構成するCo合金と表記する。)を用いることがよい。薄膜磁石40を構成するCo合金としては、CoCrPt、CoCrTa、CoNiCr、CoCrPtB等が挙げられる。なお、Feが含まれていてもよい。薄膜磁石40を構成する硬磁性体(硬磁性体層105)の厚さは、例えば50nm~500nmである。
【0084】
制御層104を構成するCr等を含む合金は、bcc(body-centered cubic(体心立方格子))構造を有する。よって、薄膜磁石40を構成する硬磁性体(硬磁性体層105)は、bcc構造のCr等を含む合金で構成された制御層104上において、結晶成長しやすいhcp(hexagonal close-packed(六方最密充填))構造であるとよい。bcc構造上にhcp構造の硬磁性体層105を結晶成長させると、hcp構造のc軸が面内に向くように配向しやすい。よって、硬磁性体層105によって構成される薄膜磁石40が面内方向に磁気異方性を有するようになりやすい。なお、硬磁性体層105は、多結晶であって、各結晶が面内方向に磁気異方性を有する。よって、この磁気異方性は、結晶磁気異方性と呼ばれることがある。
【0085】
なお、制御層104を構成するCr等を含む合金及び薄膜磁石40を構成するCo合金の結晶成長を促進するために、基板10は、100℃~600℃に加熱されているとよい。この加熱により、制御層104を構成するCr等を含む合金が結晶成長し、hcp構造を持つ硬磁性体層105が面内に磁化容易軸を持つように結晶配向されやすくなる。つまり、硬磁性体層105の面内に磁気異方性が付与されやすくなる。
【0086】
絶縁層106は、非磁性の絶縁体で構成され、薄膜磁石40と磁気センサ本体20との間を電気的に絶縁する。絶縁層106を構成する絶縁物としては、SiO2、Al2O3等の酸化物、又は、Si2N4、AlN等の窒化物等が挙げられる。絶縁層106の厚さは、例えば100nm~500nmである。
【0087】
ヨーク50(ヨーク50a、50b)は、透磁率の高い軟磁性体から構成されるのがよい。ここでは、ヨーク50は、磁気センサ本体20の感受部21を構成する軟磁性体層101で構成されている。
ヨーク50を設けることにより、薄膜磁石40から発生する磁束がヨーク50を介して感受部21にバイアス磁界として作用する。ヨーク50によって、薄膜磁石40からの磁束の漏れが減り、感受部21に対して効率的にバイアス磁界が掛けられる。この薄膜磁石40によって、コイルなどにより外部からバイアス磁界を印加することを要しない。よって、磁気センサ4の省電力化及び小型化を図ることができる。
【0088】
なお、薄膜磁石40を、感受部21と同様に、複数の薄膜磁石片とし、薄膜磁石片を各感受部21に対応させて設けてもよい。つまり、薄膜磁石片上に絶縁層106を介して感受部21が積層された構成としてもよい。このようにすることで、薄膜磁石40内部で発生する反磁界が小さくなり、薄膜磁石40からの磁束発生効率が高くなる。
【0089】
(磁気センサ4の製造方法)
次に磁気センサ4の製造方法の一例を説明する。
図10は、第4の実施の形態が適用される磁気センサ4の製造方法の一例を説明する図である。
図10(a)~(g)は、磁気センサ4の製造方法における工程を示す。なお、
図10(a)~(g)は、代表的な工程であって、
図10(a)~(g)の順に進む。
図10(a)~(g)は、
図9(b)の断面図に対応する。
【0090】
基板10は、前述したように、非磁性材料からなる基板であって、例えばガラス、サファイアなどの酸化物基板、又は、シリコン等の半導体基板である。基板10には、研磨機などを用いて、例えば曲率半径Raが0.1nm~100nmの筋状の溝又は筋状の凹凸が設けられていてもよい。なお、この筋状の溝又は筋状の凹凸の筋の方向は、硬磁性体層105によって構成される薄膜磁石40のN極とS極とを結ぶ方向に設けられているとよい。よって、
図4(a)、(b)又は
図6(a)、(b)に示す磁気センサ1のように磁気センサ4を配置する場合には、同心円状に筋状の溝又は筋状の凹
凸を形成することがよい。
【0091】
このようにすることで、硬磁性体層105における結晶成長が、溝の方向へ促進される。よって、硬磁性体層105により構成される薄膜磁石40の磁化容易軸がより溝方向(薄膜磁石40のN極とS極とを結ぶ方向)に向きやすい。つまり、薄膜磁石40の着磁を、より容易にする。
【0092】
以下で説明する製造方法では、主にリフトオフ法を用いる。なお、エッチング法を用いてもよい。
【0093】
まず、基板10を洗浄した後、
図10(a)に示すように、基板10の表面上に、薄膜磁石40が形成される部分を開口とするレジストパターン202を、公知のフォトリソグラフィにより形成する。ここでは、
図10(e)において用いるマグネトロンスパッタリング装置300(
図3参照)の磁界の向きが、磁気センサ本体20の感受部21の短手方向になるように磁気センサ4の向きが設定されている。
【0094】
次に、
図10(b)に示すように、レジストパターン202が形成された基板10の表面上に、密着層103、制御層104及び薄膜磁石40を構成する硬磁性体層105を順に成膜(堆積)する。例えばスパッタリング法を用いて、密着層103となるCr又はNiを含む合金の層(膜)、制御層104となるCr等を含む合金の層(膜)、及び、硬磁性体層105となるCo合金の層(膜)を順に連続して成膜(堆積)する。前述したように、制御層104及び硬磁性体層105の形成では、結晶成長を促進するために、基板10を例えば100~600℃に加熱するとよい。
【0095】
なお、密着層103の成膜では、基板10の加熱を行ってもよく、行わなくてもよい。基板10に吸着している水分などを除去するために、密着層103を成膜する前に、基板10を加熱してもよい。
【0096】
次に、絶縁層106となるSiO2、Al2O3等の酸化物、又は、Si2N4、AlN等の窒化物等の層(膜)を成膜(堆積)する。絶縁層106の成膜は、プラズマCVD、反応性スパッタリング法などで行える。
【0097】
そして、
図10(c)に示すように、レジストパターン202を除去するとともに、密着層103、制御層104、硬磁性体層105及び絶縁層106のレジストパターン202上に堆積した部分を除去する(リフトオフ)。このようにして、基板10上に、密着層103、制御層104、硬磁性体層105及び絶縁層106が形成される。この硬磁性体層105が、薄膜磁石40になる。
【0098】
次に、
図10(d)に示すように、基板10上に、磁気センサ本体20の感受部21が形成される部分及びヨーク50(ヨーク50a、50b)が形成される部分を開口とするレジストパターン203を形成する。
【0099】
そして、
図10(e)に示すように、レジストパターン203が形成された基板10上に、感受部21及びヨーク50を構成する軟磁性体層101となるCo合金の膜を成膜(堆積)する。ここでは、
図3に示したマグネトロンスパッタリング装置300を用いる。
【0100】
図10(f)に示すように、レジストパターン203を除去することで、軟磁性体層101のレジストパターン203上に堆積した部分を除去する。薄膜磁石40(硬磁性体層105)上に絶縁層106を介して積層された軟磁性体層101が、磁気センサ本体20の感受部21となる。そして、一部が薄膜磁石40のN極又はS極に接し、他の一部が感受部21に対向するように延びた軟磁性体層101が、ヨーク50(ヨーク50a、50b)になる。つまり、磁気センサ本体20の感受部21とヨーク50とが、1回の軟磁性体層101の成膜で形成される。
【0101】
次に、
図10(g)に示すように、感受部21をつづら折りに接続する接続導電体部31及び端子導電体部32を、導電体層102によって形成する。
【0102】
この後、薄膜磁石40を構成する硬磁性体層105を着磁する。硬磁性体層105の着磁は、静磁界中又はパルス状の磁界中において、硬磁性体層105の保磁力より大きい磁界を、硬磁性体層105の磁化が飽和するまで掛ける(印加する)。こうして、着磁された硬磁性体層105は、薄膜磁石40になり、薄膜磁石40からの磁束がヨーク50を経て磁気センサ本体20の感受部21にバイアス磁界を供給する。
このようにして、磁気センサ4が製造される。
【0103】
なお、制御層104を備えない場合には、硬磁性体層105を成膜後、800℃以上に加熱して結晶成長させることで、面内に磁気異方性を付与することが必要となる。しかし、第4の実施の形態が適用される磁気センサ4では、制御層104により結晶成長が促進されるため、800℃以上の加熱による結晶成長を要しない。
【0104】
さらに、軟磁性体層101の形成(堆積)にマグネトロンスパッタリング装置300を用いることにより、軟磁性体層101の堆積速度を向上させて、堆積(成膜)に係る所要時間を短縮するとともに、軟磁性体層101の堆積と同時に一軸磁気異方性を付与している。よって、磁気センサ4の製造において、一軸磁気異方性を付与するための磁界中熱処理の工程を不要にし、製造に要する工程を簡略化している。
【0105】
[第5の実施の形態]
第5の実施の形態が適用される磁気センサ5では、第4の実施の形態で説明した磁気センサ4の磁気センサ本体20における感受部21が、第3の実施の形態と同様に、反磁界抑制層を挟んで設けられた二つの軟磁性体層で構成されている。以下では、第4の実施の形態が適用される磁気センサ4と異なる部分を主に説明し、同様の部分は同じ符号を付して説明を省略する。
【0106】
(磁気センサ5)
図11は、第5の実施の形態が適用される磁気センサ5の一例を説明する図である。
図11(a)は、平面図、
図11(b)は、
図11(a)のXIB-XIB線での断面図である。
【0107】
図11(b)に示すように、磁気センサ5では、
図8に示した磁気センサ3と同様に、磁気センサ本体20における感受部21を構成する磁性体層101′は、下層軟磁性体層101aと、反磁界抑制層101bと、上層軟磁性体層101cとを備える。
なお、ヨーク50(ヨーク50a、50b)は、軟磁性体層107で構成されている。
【0108】
磁気センサ5は、
図10に示した磁気センサ4の製造方法を変更することで製造される。つまり、
図10(e)において、軟磁性体層101の代わりに、下層軟磁性体層101a、反磁界抑制層101b及び上層軟磁性体層101cから構成される磁性体層101′を堆積する。なお、このとき、レジストパターン203は、感受部21のみが開口となっている。
そして、
図10(f)の後に、ヨーク50(ヨーク50a、50b)が開口となったレジストパターンを形成し、軟磁性体層107を堆積する。そして、レジストパターンとともに、レジストパターン上の軟磁性体層107を除去(リフトオフ)することで、(ヨーク50a、50b)を形成すればよい。
【0109】
[第6の実施の形態]
第6の実施の形態が適用される磁気センサ6は、磁気センサ本体20の感受部21が第5の実施の形態の磁気センサ5と同様に、反磁界抑制層を挟んで設けられた二つの軟磁性体層で構成されている。さらに、ヨーク50も、反磁界抑制層を挟んで設けられた二つの軟磁性体層で構成されている。以下では、第5の実施の形態の磁気センサ5と異なる部分を主に説明し、同様の部分は同じ符号を付して説明を省略する。
【0110】
(磁気センサ6)
図12は、第6の実施の形態が適用される磁気センサ6の一例を説明する図である。
図12(a)は、平面図、
図12(b)は、
図12(a)のXIIB-XIIB線での断面図である。
第6の実施の形態が適用される磁気センサ6は、ヨーク50(ヨーク50a、50b)が異なる。
【0111】
図12(b)に示すように、磁気センサ6では、ヨーク50(ヨーク50a、50b)は、第5の実施の形態が適用される磁気センサ5の磁気センサ本体20の感受部21と同じ磁性体層101′で構成されている。つまり、ヨーク50(ヨーク50a、50b)は、下層軟磁性体層101a、反磁界抑制層101b及び上層軟磁性体層101cを備える。
【0112】
このようにすることで、磁気センサ6の製造方法は、
図10(e)に示した軟磁性体層101の堆積の代わりに、磁性体層101′を構成する下層軟磁性体層101a、反磁界抑制層101b及び上層軟磁性体層101cを順に成膜(堆積)すればよい。
【0113】
以上第1の実施の形態から第6の実施の形態を説明したが、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な変形を行っても構わない。
【符号の説明】
【0114】
1~6…磁気センサ、10…基板、20…磁気センサ本体、21…感受部、22…接続部、23…端子部、31…接続導電体部、32…端子導電体部、40…薄膜磁石、50、50a、50b…ヨーク、101、107…軟磁性体層、101′…磁性体層、101a…下層軟磁性体層、101b…反磁界抑制層、101c…上層軟磁性体層、102…導電体層、103…密着層、104…制御層、105…硬磁性体層、106…絶縁層、201、202、203…レジストパターン、300…マグネトロンスパッタリング装置、310…隔壁、320…マグネトロンカソード、321…カソード筐体、322…ターゲット、323…バッキングプレート、330…磁気回路、331、332…磁石、333…ヨーク、340…チャンバ、350…基板ホルダ、360…高周波電源