(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】多節リンク膝継手
(51)【国際特許分類】
A61F 2/64 20060101AFI20230105BHJP
B25J 11/00 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
A61F2/64
B25J11/00 Z
(21)【出願番号】P 2018076108
(22)【出願日】2018-04-11
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】奥田 正彦
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0074243(US,A1)
【文献】特開2007-000616(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0085234(US,A1)
【文献】国際公開第13/132662(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/199086(WO,A1)
【文献】特表2004-506480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/64
B25J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部リンク部と、下部リンク部と、前記上部リンク部および前記下部リンク部を連結する追加のリンク部とを有する多節リンク機構により、前記上部リンク部が前記下部リンク部に対して回転する膝部と、
前記膝部の動きを補助する補助駆動部であって、前記上部リンク部の回転にしたがって移動するように設けられる補助駆動部と、
前記下部リンク部に対する前記補助駆動部の相対位置を検出する位置検出部と、
検出された前記補助駆動部の相対位置から前記膝部の屈曲角度を求める角度検出部と、
を備え
、
前記補助駆動部は、前記上部リンク部と前記下部リンク部とを連結するように設けられたシリンダ装置であり、
前記位置検出部は、前記補助駆動部の相対位置として、前記下部リンク部に対する前記シリンダ装置の距離を検出し、
前記角度検出部は、検出された前記距離から前記膝部の屈曲角度を求めることを特徴とする多節リンク膝継手。
【請求項2】
前記位置検出部および前記角度検出部は、同一の部位に設けられることを特徴とする請求項
1に記載の多節リンク膝継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多節リンク膝継手に関する。
【背景技術】
【0002】
病気や事故などで膝の上側で足を切断した人が使用する義足には、生体の膝関節と同様に屈曲する膝継手が設けられる。使用者の動きに応じて膝継手が曲がることで、立つ、座る、歩くといった動作が可能になる。
【0003】
特許文献1には、多節リンク機構により屈曲する膝部と、屈曲角度に応じて膝部の動きを補助する補助駆動部としての流体シリンダとを備える膝継手が開示されている。この膝継手では、多節リンク機構により膝部の動きが生体の膝関節に近づくので、より自然に動きやすくなる。また、流体シリンダにより歩行動作がサポートされるので、歩行の安定性が向上する。
【0004】
特許文献1に係る膝継手では、流体シリンダのシリンダチューブに磁気センサを設けるとともに流体シリンダのピストンロッドの内部に磁石を設けることで、シリンダチューブに対するピストンロッドの位置を検出可能とし、このピストンロッドの位置に基づいて膝部の屈曲角度を求め、流体シリンダの特性を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に係る膝継手は、ピストンロッドに磁石が内蔵された特殊な流体シリンダを用いる必要があるので、高価になりがちである。
【0007】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、安価な構成で膝部の屈曲角度を検出できる多節リンク膝継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、多節リンク膝継手である。この多節リンク膝継手は、上部リンク部および下部リンク部を含む複数のリンク部を有する多節リンク機構により、上部リンク部が下部リンク部に対して回転する膝部と、膝部の動きを補助する補助駆動部であって、上部リンク部の回転にしたがって移動するように設けられる補助駆動部と、下部リンク部に対する補助駆動部の相対位置を検出する位置検出部と、検出された補助駆動部の相対位置から膝部の屈曲角度を求める角度検出部とを備える。
【0009】
この態様によれば、下部リンク部に対する補助駆動部の相対位置を検出し、この検出結果から膝部の屈曲角度を求めるので、特殊な補助駆動部を用いる必要はなく、安価な構成で膝部の屈曲角度を検出できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安価な構成で膝部の屈曲角度を検出できる多節リンク膝継手を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る多節リンク膝継手の側面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る多節リンク膝継手の断面概略図である。
【
図3】
図3(a)~(d)は、第1実施形態に係る多節リンク膝継手において膝部が屈曲する様子を示す図である。
【
図4】制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る多節リンク膝継手の断面概略図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る多節リンク膝継手の断面概略図である。
【
図7】
図7(a)~(d)は、第3実施形態に係る多節リンク膝継手において膝部が屈曲する様子を示す図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る多節リンク膝継手の断面概略図である。
【
図9】
図9(a)~(d)は、第4実施形態に係る多節リンク膝継手において膝部が屈曲する様子を示す図である。
【
図10】本発明の第4実施形態に係る多節リンク膝継手の第1変形例の断面概略図である。
【
図11】本発明の第4実施形態に係る多節リンク膝継手の第2変形例の断面概略図である。
【
図12】本発明の第4実施形態に係る多節リンク膝継手の第3変形例の断面概略図である。
【
図13】本発明の第4実施形態に係る多節リンク膝継手の第4変形例の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施形態では、同一の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略する。
【0013】
実施形態に係る多節リンク膝継手を具体的に説明する前に、概要を説明する。実施形態に係る多節リンク膝継手は、多節リンク機構により上部リンク部が下部リンク部に対して回転する膝部と、膝部の動きを補助する補助駆動部とを備える。補助駆動部は上部リンク部の回転にしたがって移動するように設けられる。補助駆動部は、例えばシリンダ装置やロータリダンパであってよい。多節リンク膝継手は、下部リンク部に対する補助駆動部の相対位置を検出する位置検出部を備えている。補助駆動部の相対位置は、例えば、下部リンク部に対する補助駆動部の距離、下部リンク部に対する補助駆動部の傾斜角度、下部リンク部に対する補助駆動部の回転角度などであってよい。検出された補助駆動部の相対位置から膝部の屈曲角度を求めることができる。
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態に係る多節リンク膝継手100の側面図である。
図2は、本発明の第1実施形態に係る多節リンク膝継手100の断面概略図である。以下の説明では、各図に示すxyz直交座標系において、x軸に平行な方向を左右方向として、x軸の正方向を「左」、負方向を「右」という。y軸に平行な方向を前後方向として、y軸の正方向を「前」、負方向を「後ろ」という。また、z軸に平行な方向を上下方向として、z軸の正方向を「上」、負方向を「下」という。
【0015】
多節リンク膝継手100は、膝部10を備える。膝部10は、複数のリンク部を有する多節リンク機構により屈曲する。第1実施形態では、多節リンク機構は、上部リンク部50、下部リンク部52、前部リンク部54および後部リンク部56の4つのリンク部から構成される。本明細書においては、リンクと、該リンクに固定されてリンクと共に動く部位とを合わせて「リンク部」と称する。上部リンク部50は、上部リンク16と、大腿接続部32とを含む。下部リンク部52は、下部リンク18と、下腿部12とを含む。前部リンク部54は、前部リンク20を含む。後部リンク部56は、後部リンク22を含む。
【0016】
上部リンク16には第1軸24および第2軸26が設けられ、下部リンク18には第3軸28および第4軸30が設けられている。各軸は、軸方向がx軸に平行で回転可能に設けられている。前部リンク20は、第1軸24および第3軸28の端部に取り付けられている。後部リンク22は、第2軸26および第4軸30の端部に取り付けられている。上部リンク16は、前部リンク20および後部リンク22に支持されて下部リンク18に対して回転する。上部リンク16から突出する大腿接続部32は、使用者の大腿部に取り付けられるソケットに接続される。大腿接続部32が突出する方向とz軸とがなす角を、膝部10の屈曲角度と定義する。
図1および
図2に示される屈曲角度は0°であり、膝部10が完全に伸びた状態である。
【0017】
下腿部12は、筒状に形成されており、下部リンク18の下側に固定される。また、下腿部12の下側には義足を構成する足部に接続する足接続部40が設けられている。
【0018】
多節リンク膝継手100はさらに、膝部10の動きを補助する補助駆動部としてシリンダ装置60を備える。シリンダ装置60は、エアシリンダや油圧シリンダであってよい。
【0019】
シリンダ装置60は、シリンダチューブ62と、シリンダチューブ62に対して移動可能であるピストンロッド64と、シリンダチューブ62に移動可能に収納されてピストンロッド64が固定されたピストン66とを備える。シリンダ装置60は、上部リンク部50と下部リンク部52とを連結するように設けられる。より具体的には、シリンダチューブ62は、下部リンク部52の下腿部12に設けられた下軸68により回転可能に支持され、ピストンロッド320は、上部リンク部50の上部リンク16に設けられた上軸70により回転可能に支持される。このように設けられたシリンダ装置60は、下軸68を中心として、上部リンク部50の回転にしたがって前後方向に移動する。
【0020】
多節リンク膝継手100はさらに、位置検出部58を備える。この位置検出部58は、下腿部12に設置され、下腿部12に対するシリンダ装置60の距離dを計測する。位置検出部58は、シリンダ装置60までの距離dを検出できるものであれば特に限定されず、例えば赤外線センサを用いることができる。あるいは、シリンダチューブ62の外表面に磁石を取り付け、位置検出部58としてホール素子を用いて距離dを検出してもよい。
【0021】
図3(a)~(d)は、第1実施形態に係る多節リンク膝継手100において膝部10が屈曲する様子を示す図である。
図3(a)~(d)に示す膝部10の屈曲角度は、それぞれ0°、45°、90°、160°である。屈曲角度が大きくなると、前部リンク20と後部リンク22とが交差する。上部リンク16は、下部リンク18に対して後方に移動しながら回転する。上部リンク16の回転により、膝部10は生体の膝関節と同様に屈曲する。
【0022】
上述したように、シリンダ装置60のピストンロッド64は上部リンク16の上軸70に回転可能に支持され、シリンダ装置60のシリンダチューブ62は下腿部12の下軸68により回転可能に支持されている。従って、膝部10の屈曲角度の変化、すなわち上部リンク16の回転に応じて、下腿部12に対するシリンダ装置60の距離dが変化する。
図3(a)~(d)から分かるように、第1実施形態に係る多節リンク膝継手100では、膝部10の屈曲角度が大きくなるにつれて、下腿部12に対するシリンダ装置60の距離dが小さくなる。
【0023】
多節リンク膝継手100はさらに、制御装置14を備える。この制御装置14は、下腿部12内に収納されている。制御装置14は、位置検出部58の検出値を受信し、この検出値から膝部10の屈曲角度を求め、シリンダ装置60を制御する。
【0024】
図4は、制御装置14の機能構成を示すブロック図である。本明細書のブロック図で示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0025】
制御装置14は、角度検出部42および制御部44を備える。角度検出部42は、位置検出部58の検出値から膝部10の屈曲角度を求める。例えば膝部10の屈曲角度と位置検出部58の検出値との関係を予め測定してテーブルを作成しておけば、該テーブルを参照して位置検出部58の検出値から膝部10の屈曲角度を求めることができる。
【0026】
制御部44は、屈曲角度に応じてシリンダ装置60を制御して膝部10の動きを補助する。制御部44は、屈曲角度が0°に近い立脚時には、第3軸28の回転を制限するようにシリンダ装置60を制御する。これにより、使用者の意思に反して膝部10が屈曲する膝折れを防ぐ。また、歩行時など屈曲角度が変化する遊脚時には、角度の変化方向に合わせて第3軸28を回転させるようにシリンダ装置60を制御する。これにより、足の振り出しに合わせて下腿部12がスイングするので、使用者は快適に歩行できる。
【0027】
以上の構成による使用方法および動作は以下の通りである。多節リンク膝継手100は、足接続部40に足部が接続された状態で、大腿接続部32が使用者の大腿部に取り付けられたソケットに接続されて使用される。膝部10は、多節リンク機構により上部リンク16が下部リンク18に対して回転することで屈曲する。膝部10が屈曲すると、角度検出部42が位置検出部58の検出値から屈曲角度を求める。制御部44は、屈曲角度に応じてシリンダ装置60を制御して膝部10の動きを補助する。
【0028】
第1実施形態に係る多節リンク膝継手100では、下部リンク部52(より詳細には下腿部12)に位置検出部58を設け、下部リンク部52(より詳細には下腿部12)に対するシリンダ装置60の距離dを測定し、この距離dに基づいて膝部10の屈曲角度を求めている。したがって、シリンダ装置60として例えばピストンロッドに磁石が内蔵された特殊なものを用いる必要がないので、比較的安価な構成で膝部10の屈曲角度を検出できる。
【0029】
また第1実施形態に係る多節リンク膝継手100では、位置検出部58と角度検出部42(制御装置14)とが共に下部リンク部52に設けられている。角度検出部42は、位置検出部58の検出結果から膝部10の屈曲角度を求めるので、位置検出部58の検出情報を角度検出部42に伝送するために、位置検出部58と角度検出部42は配線で接続される必要がある。仮に位置検出部58と角度検出部42が互いに変位する別々の部位に設けられている場合、配線に切断等に不具合が生じないような構成をとる必要がある。これは膝継手のコストアップにつながるため好ましくない。一方、第1実施形態に係る多節リンク膝継手100では、位置検出部58と角度検出部42(制御装置14)とが同一の下部リンク部に設けられているので、配線を簡単な構成にできる。その結果、膝継手の低コスト化を図ることができる。
【0030】
上述の第1実施形態では、下腿部12に位置検出部58を設けたが、位置検出部58は下部リンク18に設けられてもよい。
【0031】
図5は、本発明の第2実施形態に係る多節リンク膝継手200の断面概略図である。
図5に示す多節リンク膝継手200は、位置検出部58がシリンダ装置60のシリンダチューブ62の外表面に設けられている点が、第1実施形態に係る多節リンク膝継手100と異なる。第2実施形態においても、位置検出部58は、下部リンク部52に対するシリンダ装置60の距離dを測定し、制御装置14の角度検出部42は距離dに基づいて膝部10の屈曲角度を求める。
【0032】
第2実施形態に係る多節リンク膝継手200においても、シリンダ装置60として特殊なものを用いる必要がないので、比較的安価な構成で膝部10の屈曲角度を検出できる。
【0033】
第2実施形態では、制御装置14が下腿部12に設けられているが、制御装置14がシリンダ装置60に設けられてもよい。この場合、位置検出部58と制御装置14とが同一の部位に設けられているので、両者をつなぐ配線を簡単な構成にできる。
【0034】
図6は、本発明の第3実施形態に係る多節リンク膝継手300の断面概略図である。第3実施形態に係る多節リンク膝継手300は、回転検出部236の構成が第1実施形態に係る多節リンク膝継手100と異なる。具体的には、多節リンク膝継手300では、位置検出部72が下部リンク部52に対するシリンダ装置60の傾斜角度θを検出するよう構成および配置されている。ここでは、シリンダ装置60の長手方向(言い換えるとピストンロッド64の伸縮方向)とz軸とがなす角を、シリンダ装置60の傾斜角度θとする。
【0035】
第3実施形態において、位置検出部72は、下腿部12に取り付けられる。位置検出部72としては、例えばポテンショメータ、ロータリエンコーダ、レゾルバ等を用いることができる。
【0036】
図7(a)~(d)は、第3実施形態に係る多節リンク膝継手300において膝部10が屈曲する様子を示す図である。
図7(a)~(d)に示す膝部10の屈曲角度は、それぞれ0°、45°、90°、160°である。膝部10の屈曲角度の変化に応じて、下腿部12に対するシリンダ装置60の傾斜角度θが変化する。第3実施形態に係る多節リンク膝継手300では、膝部10の屈曲角度が大きくなるにつれて、下腿部12に対するシリンダ装置60の傾斜角度θが小さくなる。
【0037】
制御装置14の角度検出部42(
図4参照)は、位置検出部72の検出値から屈曲角度を求める。例えば膝部10の屈曲角度と位置検出部72の検出値との関係を予め測定してテーブルを作成しておけば、該テーブルを参照して位置検出部72の検出値から膝部10の屈曲角度を求めることができる。制御部44(
図4参照)は、屈曲角度に応じてシリンダ装置60を制御して膝部10の動きを補助する。
【0038】
第3実施形態に係る多節リンク膝継手300においても、シリンダ装置60として特殊なものを用いる必要がないので、比較的安価な構成で膝部10の屈曲角度を検出できる。
【0039】
また第3実施形態に係る多節リンク膝継手300では、位置検出部72と角度検出部42(制御装置14)とが同一の部位(下腿部12)に設けられているので、配線を簡単な構成にできる。
【0040】
上述の第3実施形態では、位置検出部72を下腿部12に取り付け、下腿部12に対するシリンダ装置60の傾斜角度を検出しているが、位置検出部72をシリンダ装置60に取り付けて、下腿部12に対するシリンダ装置60の傾斜角度を検出してもよい。
【0041】
図8は、本発明の第4実施形態に係る多節リンク膝継手400の断面概略図である。多節リンク膝継手400は、膝部10の動きを補助する補助駆動部としてロータリダンパ80を備える点が第1実施形態に係る多節リンク膝継手100と異なる。
【0042】
ロータリダンパ80は、回転軸80a周りに回転可能な円盤状の回転部80bと、回転部80bの回転に抵抗力を与える減衰部(図示せず)とを含む。減衰部が付与する抵抗力は、制御装置14の制御部44により制御される。ロータリダンパ80の回転軸80aは、x軸と平行になるようにして下腿部12に取り付けられている。
【0043】
ロータリダンパ80の回転部80bは、ダンパリンク82を介して、後部リンク22と連結されている。より具体的には、ダンパリンク82の一端が上軸82aによって後部リンク22に回転可能に取り付けられ、ダンパリンク82の他端が下軸82bによってロータリダンパ80の回転部80bに回転可能に取り付けられる。
【0044】
図9(a)~(d)は、第4実施形態に係る多節リンク膝継手400において膝部10が屈曲する様子を示す図である。
図9(a)~(d)に示す膝部10の屈曲角度は、それぞれ0°、45°、90°、160°である。
図9(a)~(d)から、下部リンク部52に対して上部リンク部50が回転すると、それに応じて後部リンク22も回転し、その後部リンク22の回転に応じてダンパリンク82を介してロータリダンパ80の回転部80bが回転することが分かる。膝部10の屈曲角度に応じて回転部80bの回転に対する抵抗力を制御することにより、膝部10の動きを補助することができる。
【0045】
第4実施形態に係る多節リンク膝継手400は、ロータリダンパ80の回転部80bの回転角度を検出するための位置検出部84を備える。位置検出部84は、下腿部12に取り付けられ、下腿部12に対する回転部80bの回転角度を検出する。位置検出部84としては、例えばポテンショメータ、ロータリエンコーダ、レゾルバ等を用いることができる。
【0046】
制御装置14の角度検出部42(
図4参照)は、位置検出部84の検出値から屈曲角度を求める。例えば膝部10の屈曲角度と位置検出部84の検出値との関係を予め測定してテーブルを作成しておけば、該テーブルを参照して位置検出部84の検出値から膝部10の屈曲角度を求めることができる。制御部44(
図4参照)は、屈曲角度に応じてロータリダンパ80を制御して膝部10の動きを補助する。
【0047】
第4実施形態に係る多節リンク膝継手400においても、ロータリダンパ80として特殊なものを用いる必要がないので、比較的安価な構成で膝部10の屈曲角度を検出できる。
【0048】
また第4実施形態に係る多節リンク膝継手400では、位置検出部84と角度検出部42(制御装置14)とが同一の部位(下腿部12)に設けられているので、配線を簡単な構成にできる。
【0049】
上述の第4実施形態では、位置検出部84を下腿部12に取り付け、下腿部12に対するロータリダンパ80の回転角度を検出しているが、位置検出部84をロータリダンパ80に取り付けて、下腿部12に対するロータリダンパ80の回転角度を検出してもよい。
【0050】
図10は、第4実施形態に係る多節リンク膝継手400の第1変形例を示す。
図8に示す実施形態では、ロータリダンパ80と後部リンク22とをダンパリンク82で連結したが、ロータリダンパ80は他のリンクに連結されてもよい。例えば、
図10に示すように、ロータリダンパ80の回転部80bは、ダンパリンク82を介して、上部リンク16に設けられた上軸82aと連結されてもよい。
【0051】
図11は、第4実施形態に係る多節リンク膝継手400の第2変形例を示す。
図8に示す実施形態では、ロータリダンパ80の回転部80bの回転角度を検出するための位置検出部84として、下腿部12に対する回転部80bの回転角度を直接的に検出するポテンショメータ、ロータリエンコーダ、レゾルバ等を例示したが、他の方法を用いることもできる。
【0052】
本第2変形例では、ロータリダンパ80の回転部80bに溝80cが形成されている。この溝80cは、回転部80bの外周面に、回転部80bの回転方向に沿って円弧状に延びるように形成されている。溝80cは、延在方向に沿って深さが変化するように形成されている。
【0053】
また、本第2変形例に係る多節リンク膝継手400では、位置検出部84は、下腿部12に取り付けられ、ロータリダンパ80の溝80cの底までの距離dを検出する。例えば位置検出部84は赤外線センサや超音波センサであってよい。上記のように溝80cの深さは延在方向に沿って深さが変化するように形成されているので、ロータリダンパ80の回転部80bの回転に応じて、位置検出部84の検出値は変化する。例えば位置検出部84の検出値と回転部80bの回転角度との関係を予め測定してテーブルを作成しておけば、該テーブルを参照して位置検出部84の検出値から回転部80bの回転角度を間接的に検出できる。
【0054】
図12は、第4実施形態に係る多節リンク膝継手400の第3変形例を示す。本第3変形例では、位置検出部84は、磁石85と、磁石85が発生させる磁場の強度を検出する磁気センサ86とを備える。磁石85は、例えば角型のアルニコ磁石であってよい。磁気センサ86は、例えばホール素子であってよい。磁気センサ86は、ロータリダンパ80の回転部80bに設けられる。磁石85は、下腿部12に設けられる。
【0055】
回転部80bに設けられた磁気センサ86は、下腿部12に設けられた磁石85との距離dに応じた検出値を出力する。磁石85により形成される磁場の強度は、磁石85から離れるにつれて小さくなる。従って、ロータリダンパ80の回転部80bの回転に応じて、磁気センサ86の検出値は変化する。例えば磁気センサ86の検出値と回転部80bの回転角度との関係を予め測定してテーブルを作成しておけば、該テーブルを参照して磁気センサ86の検出値から回転部80bの回転角度を間接的に検出できる。
【0056】
図13は、第4実施形態に係る多節リンク膝継手400の第4変形例を示す。本第4変形例では、位置検出部84は、突当部材90と、ケース91と、ばね92と、磁石93と、ホール素子94とを備える。
【0057】
ケース91は、上端が開放された収納空間を有する。ケース91は、下腿部12に固定される。ケース91の収納空間内には、突当部材90とばね94が収納される。ばね94は、突当部材90の上部が収納空間から突出するように、突当部材90を付勢している。磁石93は突当部材90に取り付けられる。ホール素子は、ケース91に取り付けられ、磁石262との距離に応じた検出値を出力する。
【0058】
また、本第4変形例では、ロータリダンパ80の回転部80bに溝80cが形成されている。この溝80cは、回転部80bの外周面に、回転部80bの回転方向に沿って円弧状に延びるように形成されている。溝80cは、延在方向に沿って深さが変化するように形成されている。位置検出部84は、突当部材90の上部が回転部80bの溝80cに嵌り込むように下腿部12に取り付けられる。突当部材90は、ばね92により付勢されて溝80cの底に突き当てられている。従って、ロータリダンパ80の回転部80bの回転に応じて、突当部材90が移動する。
【0059】
突当部材90の移動により、突当部材90に取り付けられた磁石93とケース91に取り付けられたホール素子94との距離が変化する。すなわち、ロータリダンパ80の回転部80bの回転に応じて、ホール素子94の検出値は変化する。例えばホール素子94の検出値と回転部80bの回転角度との関係を予め測定してテーブルを作成しておけば、該テーブルを参照してホール素子94の検出値から回転部80bの回転角度を間接的に検出できる。
【0060】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、また、そうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0061】
10 膝部、 12 下腿部、 14 制御装置、 16 上部リンク、 18 下部リンク、 20 前部リンク、 22 後部リンク、 42 角度検出部、 44 制御部、 50 上部リンク部、 52 下部リンク部、 54 前部リンク部、 56 後部リンク部、 58,72,84 位置検出部、 60 シリンダ装置、 62 シリンダチューブ、 64 ピストンロッド、 80 ロータリダンパ、 82 ダンパリンク、 85,93 磁石、 86 磁気センサ、 90 突当部材、 91 ケース、 92 ばね、 94 ホール素子、 100,200,300,400 多節リンク膝継手。