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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】増幅器回路及び方法
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/68 20060101AFI20230105BHJP
   H03F 3/189 20060101ALI20230105BHJP
   H03F 1/42 20060101ALI20230105BHJP
   H03F 3/20 20060101ALN20230105BHJP
【FI】
H03F3/68 220
H03F3/189
H03F1/42
H03F3/20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018098770
(22)【出願日】2018-05-23
(65)【公開番号】P2019033473
(43)【公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-05-18
(31)【優先権主張番号】17185334.4
(32)【優先日】2017-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505141602
【氏名又は名称】ローデ ウント シュワルツ ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ザオアービーア クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッテ マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ガルテン オレル
(72)【発明者】
【氏名】ゲリッツ レイモン
(72)【発明者】
【氏名】ダリスダ ウーベ
(72)【発明者】
【氏名】オニマス フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】デューベン ライモ
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-252773(JP,A)
【文献】特開平10-145307(JP,A)
【文献】特開2002-043873(JP,A)
【文献】特開2005-151185(JP,A)
【文献】特開平05-232211(JP,A)
【文献】米国特許第6252461(US,B1)
【文献】米国特許第6552634(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00- 1/56
H03F 3/00- 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号(101,201,301)を増幅する増幅器回路(100,200,300)であって、
なくとも2つの信号経路(109,110,209,210,309,310,328)であって、それぞれが異なる周波数帯域(550,551,552)内の信号を増幅するように構成されており、前記異なる周波数帯域(550,551,552)は互いに重複している信号経路(109,110,209,210,309,310,328)と、
前記入力信号(101,201,301)を受けるように構成された入力ポート(103,203,303)を備えた信号分配器(102,202,302)であって、前記信号経路(109,110,209,210,309,310,328)の入力側に連結され、前記入力信号(101,201,301)を、前記信号経路(109,110,209,210,309,310,328)に対する分配信号(107,108,207,208,307,308,335)に分配するように構成された信号分配器(102,202,302)と、
前記信号経路(109,110,209,210,309,310,328)の出力側に連結され、増された信号(113,114,213,214,313,314,330)を合成して合成増幅信号(118,218,318)を提供するように構成されたダイプレクサ(115,215,315)と
前記信号経路(109,110,209,210,309,310,328)のうちのいくつかに対して設けられる振幅調整素子(119,219,319,332)であって、それぞれが対応する前記信号経路(109,110,209,210,309,310,328)に対する前記分配信号(107,108,207,208,307,308,335)の振幅を所定の倍率で調整するように構成されており、少なくとも1つの信号経路(109,110,209,210,309,310,328)は振幅調整素子(119,219,319,332)を備えておらず、少なくとも1つの振幅調整素子(119,219,319,332)は減衰抵抗器又は増幅器(111,112,211,212,311,312,329)を備えている振幅調整素子(119,219,319,332)とを備えた増幅器回路(100,200,300)。
【請求項2】
各信号経路(109,110,209,210,309,310,328)は、当該信号経路(109,110,209,210,309,310,328)の前記周波数帯域(550,551,552)内の前記分配信号(107,108,207,208,307,308,335)を増幅するように構成された増幅器(111,112,211,212,311,312,329)を備えている請求項1記載の増幅器回路(100,200,300)。
【請求項3】
前記ダイプレクサ(115,215,315)は、各信号経路(109,110,209,210,309,310,328)に対して第1周波数選択素子(116,117,216,217,316,317,331)を備えており、
各前記第1周波数選択素子(116,117,216,217,316,317,331)は、対応する前記信号経路(109,110,209,210,309,310,328)の前記周波数帯域(550,551,552)の信号を前記ダイプレクサ(115,215,315)の加え合わせ点(121)まで通過させるように構成されており、
前記ダイプレクサ(115,215,315)は、特に、非絶縁型ダイプレクサ(115,215,315)から構成されており、
前記第1周波数選択素子(116,117,216,217,316,317,331)は、重複する周波数範囲を備え、各第1周波数選択素子(116,117,216,217,316,317,331)のコーナー周波数は、その隣接する周波数帯域(550,551,552)に対する第1周波数選択素子(116,117,216,217,316,317,331)の伝送帯域内にある請求項1又は2記載の増幅器回路(100,200,300)。
【請求項4】
前記信号分配器(102,202,302)は、各信号経路(109,110,209,210,309,310,328)に対して、信号入力部と当該信号経路(109,110,209,210,309,310,328)との間に連結された第1抵抗器(104,105)を備えた抵抗分配器から構成されており、
前記信号分配器(102,202,302)は、特に、前記入力ポート(103,203,303)と前記第1抵抗器(104,105)との間に連結された第2抵抗器(106)を備えている請求項記載の増幅器回路(100,200,300)。
【請求項5】
前記振幅調整素子(119,219,319,332)のうちの少なくとも1つの前記減衰抵抗器は、対応する前記信号経路(109,110,209,210,309,310,328)に対する、前記信号分配器(102,202,302)の前記第1抵抗器(104,105)から構成されている請求項記載の増幅器回路(100,200,300)。
【請求項6】
前記信号分配器(102,202,302)は、各信号経路(109,110,209,210,309,310,328)に対して第2周波数選択素子(225,226,325,326,327)を備えており、
各前記第2周波数選択素子(225,226,325,326,327)は、対応する前記信号経路(109,110,209,210,309,310,328)の前記周波数帯域(550,551,552)の信号を当該信号経路(109,110,209,210,309,310,328)まで通過させるように構成されている請求項1乃至記載のいずれかの増幅器回路(100,200,300)。
【請求項7】
前記信号経路(109,110,209,210,309,310,328)のいくつかに対して位相シフタ(120,220,320,333)を備え、
各前記位相シフタ(120,220,320,333)は、対応する前記信号経路(109,110,209,210,309,310,328)に対する前記分配信号(107,108,207,208,307,308,335)の位相を所定の倍率で調整するように構成されており、
特に、1つの信号経路(109,110,209,210,309,310,328)は、位相シフタ(120,220,320,333)を備えていない請求項1乃至記載のいずれかの増幅器回路(100,200,300)。
【請求項8】
入力信号(101,201,301)を増幅する方法であって、
前記入力信号(101,201,301)を受けること(S1)と、
前記入力信号(101,201,301)を、少なくとも2つの信号経路(109,110,209,210,309,310,328)に対する分配信号(107,108,207,208,307,308,335)に分配すること(S2)と、
異なる周波数帯域(550,551,552)を備え、該異なる周波数帯域(550,551,552)は互いに重複している前記信号経路(109,110,209,210,309,310,328)のそれぞれにおいて前記分配信号(107,108,207,208,307,308,335)を増幅すること(S3)と、
された信号(113,114,213,214,313,314,330)を二重化して合成増幅信号(118,218,318)を提供すること(S4)と
前記信号経路(109,110,209,210,309,310,328)のうちのいくつかに対する前記分配信号(107,108,207,208,307,308,335)の振幅を所定の倍率で調整することとを含み、
特に、少なくとも1の前記信号経路(109,110,209,210,309,310,328)に対する前記分配信号(107,108,207,208,307,308,335)の振幅は調整せず、調整は減衰抵抗器又は増幅器(111,112,211,212,311,312,329)を用いて行われる方法。
【請求項9】
各前記信号経路(109,110,209,210,309,310,328)において、当該信号経路(109,110,209,210,309,310,328)の前記周波数帯域(550,551,552)内の前記分配信号(107,108,207,208,307,308,335)を増幅することを含む請求項記載の方法。
【請求項10】
二重化は、各信号経路(109,110,209,210,309,310,328)について、当該信号経路(109,110,209,210,309,310,328)の前記周波数帯域(550,551,552)の信号を加え合わせ点(121)まで通過させることを含み、
二重化は、特に、非絶縁型ダイプレクサ(115,215,315)を用いて行われ、
それぞれの信号経路(109,110,209,210,309,310,328)の前記周波数帯域(550,551,552)の信号を通過させる際、重複する周波数範囲が用いられ、コーナー周波数は、その隣接する周波数帯域(550,551,552)の伝送帯域内にある請求項又は記載の方法。
【請求項11】
分配は、各信号経路(109,110,209,210,309,310,328)に対して第1抵抗器(104,105)を備えた信号分配器(102,202,302)を用いて行われ、
前記信号分配器(102,202,302)は、特に、その入力部と前記第1抵抗器(104,105)との間に連結された第2抵抗器(106)を備えている請求項記載の方法。
【請求項12】
前記信号経路(109,110,209,210,309,310,328)のうちの少なくとも1つの振幅の調整は、当該信号経路(109,110,209,210,309,310,328)に対する、前記信号分配器(102,202,302)の前記第1抵抗器(104,105)を用いて行われる請求項11記載の方法。
【請求項13】
分配は、各信号経路(109,110,209,210,309,310,328)に対する第2周波数選択素子(225,226,325,326,327)を用いて行われ、
各前記第2周波数選択素子(225,226,325,326,327)は、対応する前記信号経路(109,110,209,210,309,310,328)の前記周波数帯域(550,551,552)の信号を当該信号経路(109,110,209,210,309,310,328)まで通過させる、及び/又は
前記信号経路(109,110,209,210,309,310,328)のいくつかについて、当該信号経路(109,110,209,210,309,310,328)に対する前記分配信号(107,108,207,208,307,308,335)の位相を所定の倍率で調整することを含み、
特に、前記信号経路(109,110,209,210,309,310,328)のうちの少なくとも1つに対する前記分配信号(107,108,207,208,307,308,335)の位相は調整しない請求項乃至11記載のいずれかの方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅器回路に関する。本発明は、さらに、対応する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明及びその根底にある課題は、原則として、広帯域の信号増幅を必要とするいかなるシステムにも適用可能であるが、以下では、入力信号に対する瞬時帯域幅を備えた広帯域増幅器と組み合わせて説明する。
【0003】
現代のエレクトロニクス応用では、データ伝送信号の周波数は、帯域幅要件の増加に伴って上昇し続けている。さらに、例えばワイヤレスセンサネットワークなどといったさらなる応用が出現しており、これらは、例えば2~8GHzの範囲の周波数帯域を使用している。
【0004】
したがって、特にこのような現代の応用のための装置の開発・適合性試験において、例えば数MHzから数GHzまで、例えば10MHzから10GHzまでといった高い帯域幅の信号に対処可能、例えば測定又は生成可能であることが必要である。
【0005】
このような応用のための一般的な増幅器配置は、通常、周波数範囲が同じ複数の高帯域幅又は広帯域増幅器を備えている。個々の広帯域増幅器の信号を合成するために、通常、例えばウィルキンソン(Wilkinson)型結合器、n*λ/4結合型又はブランチライン(Branchline)型結合器、ガネラ(Guanella)型結合器、又はマーチャンド(Marchand)型結合器といった合成器が用いられる。
【0006】
しかしながら、これらの結合器は、帯域幅が制限されており、また、各々の広帯域増幅器全てが対象周波数帯域全体に対応していることを必要とする。さらに、全ての広帯域増幅器が等しい位相・振幅周波数応答で稼働しなければならない。
【0007】
したがって、このような配置は複雑であり高コストである。
【0008】
こういった背景に対して、本発明が取り組む課題は、瞬時帯域幅が大きい単純化された増幅器配置の提供である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、請求項1の特徴を備えた増幅器回路及び請求項11の特徴を備えた方法によってこの課題を解決する。
【0010】
したがって、入力信号を増幅する増幅器回路であって、別々の重複する周波数帯域の信号を増幅するように構成された少なくとも2つの信号経路と、前記入力信号を受けるように構成された入力ポートを備えた信号分配器であって、前記信号経路の入力側に連結され、前記入力信号を、前記信号経路に対する分配信号に分配するように構成された信号分配器と、前記信号経路の出力側に連結され、前記増幅信号を合成して合成増幅信号を提供するように構成されたダイプレクサとを備えた増幅器回路を提供する。
【0011】
さらに、入力信号を増幅する方法であって、前記入力信号を受けることと、前記入力信号を、少なくとも2つの信号経路に対する分配信号に分配することと、別々の重複する周波数帯域を備えた前記信号経路において前記分配信号を増幅することと、前記増幅信号を二重化して合成増幅信号を提供することとを含む方法を提供する。
【0012】
本発明は、瞬時帯域幅が非常に大きい広帯域増幅器は製造が難しく複雑であるという調査結果に基づくものである。
【0013】
したがって、本発明は、複数の同一の増幅器又は非常に大きい同じ帯域幅に対応している複数の増幅器を用いない増幅器回路を提供する。このような増幅器及び他の全ての増幅器では、常に、帯域幅と増幅力との間にトレードオフが存在する。したがって、増幅力が大きい高帯域幅増幅器を提供することは非常に複雑である。
【0014】
したがって、本発明は、ハイパワーで別々の周波数範囲で機能し、個々の信号部分の増幅後に該信号を二重化する複数の増幅器を用いる。これは、1つの広帯域増幅器の場合と比較して、周波数帯域又は範囲が小さい増幅器を用いることができることも意味する。これにより、ハイパワー増幅の提供が簡単になる。
【0015】
したがって、本発明は、増幅特性がそれぞれ異なる信号経路を提供する。信号分配器は、入力ポートを介して入力信号を受け、該入力信号を個々の信号経路に対する分配信号に分配する。
【0016】
個々の信号経路は、その後、それぞれ異なるが重複する周波数帯域内の各々の分配信号を増幅することができる。3つ以上の信号経路が設けられる場合、「重複」は、第1の信号経路の周波数帯域が第2の信号経路の周波数帯域の一端と重複し、第3の信号経路の周波数帯域が第2の信号経路の周波数帯域の他端と重複することを指す。したがって、第2の信号経路の周波数帯域は、第1の信号経路と第3の信号経路の周波数帯域の間に存在する。信号経路が2つだけ設けられる場合、これら信号経路の周波数帯域は中心で重複することができる。周波数帯域間の重複は、例えば、約50MHzから1GHzまでの所定の重複、例えば、100MHz、200MHz、300MHz又は400MHzとすることができる。
【0017】
個々の信号経路の出力、即ち、増幅分配信号は、その後、ダイプレクサに供給される。ダイプレクサは、個々の増幅分配信号を合成して1つの出力信号、即ち、合成増幅信号とすることになる。
【0018】
ダイプレクサは、例えば、一種の周波数多重化を行う受動装置とすることができる。ダイプレクサは、入力ポートを出力ポートに向けて、即ち、増幅分配信号を合成増幅信号に向けて多重化する。合成器とは異なり、一般的なダイプレクサの入力ポートにおける信号は、非同一周波数帯域を占めている。しかしながら、本発明のダイプレクサは、増幅分配信号、例えば、周波数帯域がそれぞれ異なるが重複している信号を多重化するように配置される。これは、該ダイプレクサは、重複する周波数領域においてのみ合成器のように機能することを意味する。したがって、増幅分配信号は、重複する周波数領域は別として、出力ポートにおいて、互いに干渉することなく共存する。
【0019】
2つの信号経路及び対応するダイプレクサに対する例示的な周波数帯域は、例えば、低周波数帯域、例えば20MHz~1.6GHz、及び高周波数帯域、例えば、1.2GHz~8GHzから構成することができる。本例における周波数帯域は、1.2GHzから1.6GHzの400MHzの範囲で重複していることが分かる。これは、ダイプレクサは、1.2GHzから1.6GHzの周波数範囲で合成器のように機能し、二重化されて合成された増幅分配信号を出力することになることを意味する。
【0020】
ダイプレクサは、2つ以上の入力ポートを備えることができることが理解される。3つ以上の入力ポート備えたダイプレクサは、トリプレクサ、クワッドプレクサ、クワドロプレクサなどと呼ぶこともできる。
【0021】
本発明では、複数の特定の周波数帯域に対してそれぞれ1つとして複数の増幅器を備えた広帯域増幅器回路を提供することが可能である。各々の増幅器は、当該広帯域増幅器回路の周波数範囲全体に対応している必要はなく、例えば、利得/電力や利得帯域幅積について個別に最適化することができる。さらに、帯域幅が制限された多数の増幅器は、全周波数範囲に対して1つの広帯域増幅器の場合と比較して、製造がより単純で簡単である。
【0022】
したがって、増幅器回路の周波数・電力性能は、ダイプレクサの構成要素選択及び設計によってのみ限定される。
【0023】
本発明のさらなる実施形態については、本願のさらなる副請求項に挙げており、以下の説明において図面を参照しながら説明する。
【0024】
可能な実施形態では、各信号経路は、当該信号経路の周波数帯域内の分配信号を増幅する増幅器を備えることができる。
【0025】
この増幅器は、例えば、10Wから1000Wまでのパワー範囲のハイパワー増幅器、例えば50W増幅器、100W増幅器、200W増幅器などとすることができる。上記で既に説明したように、同時に大きな帯域幅を備えるハイパワー増幅器を提供するのは難しい。
【0026】
しかしながら、本発明では、同時にハイパワー出力を提供する、帯域幅が比較的小さい増幅器を用いることができる。信号経路における増幅器は、それぞれ、各々の周波数帯域内の信号を増幅するように適合させるだけでよく、よって、出力パワーに重点を置くことができる。
【0027】
さらに、各増幅器の各々の周波数帯域より上及び下の信号範囲における挙動は、これらの信号はダイプレクサにより除去されることになるため無関係である。
【0028】
個々の増幅器は、一実施形態においては、線形増幅器とすることができる。
【0029】
可能な実施形態では、ダイプレクサは、各信号経路に対して第1周波数選択素子を備えることができ、該第1周波数選択素子は、対応する信号経路の周波数帯域の信号をダイプレクサの加え合わせ点まで通過させるように構成することができる。
【0030】
第1周波数選択素子は、例えば、ハイパスフィルタやローパスフィルタ、バンドパスフィルタから構成することができる。上記で説明したように、個々の信号経路は、それぞれ異なる周波数帯域又は範囲内の信号に作用する、即ち、増幅する。
【0031】
第1周波数選択素子は、対応する周波数範囲に適合させる。これは、第1周波数選択素子は、少なくとも対応する信号経路の周波数帯域を備えた伝送帯域を有することになることを意味する。
【0032】
例えば、信号経路が20MHzから1.6GHzまでの周波数帯域内の信号を増幅する場合、対応する第1周波数選択素子は、少なくとも20MHzから1.6GHzまでの伝送帯域を備えることになる。
【0033】
したがって、上記の、20MHzから1.6GHzまで及び1.2GHzから8GHzまでの周波数帯域を備えた2つの信号経路の例に対する第1周波数選択素子であれば、少なくとも20MHzから1.6GHzまで及び1.2GHzから8GHzまでの伝送帯域を備える。信号経路が2つだけであれば、20MHzから1.6GHzまでの伝送帯域の周波数下限は20MHz未満であってもよい。1.2GHzから8GHzまでの伝送帯域の周波数上限についても同様である。上限周波数は、例えば、8GHz超であってもよい。それぞれの周波数帯域外の周波数の信号成分は、いかなる場合も、信号経路からダイプレクサに供給されることはない。
【0034】
第1周波数選択素子の個々の素子の正確な寸法は、例えば、回路トポロジーを決めた後に算出する、又は、そのトポロジーのシミュレーションによって決定することができる。
【0035】
可能な実施形態では、ダイプレクサは、非絶縁型ダイプレクサから構成することができ、第1周波数選択素子は、重複する周波数範囲を備えることができ、各第1周波数選択素子のコーナー周波数は、その隣接する周波数帯域に対する第1周波数選択素子の伝送帯域内に存在している。
【0036】
絶縁型ダイプレクサは、例えば、個々の信号入力部間に抵抗素子を備えることができ、該抵抗素子は、少なくとも特定の周波数範囲におけるエネルギーを獲得する又は消費する。これは、少なくとも特定の周波数範囲におけるエネルギーは、一方の入力部から他方の入力部に伝達されない、又は少なくとも減衰されることを意味する。
【0037】
非絶縁型ダイプレクサでは、個々の第1周波数選択素子は抵抗素子を備えていない。このような第1周波数選択素子は、例えば、キャパシタやインダクタだけで構成することができる。このような非絶縁型ダイプレクサでは、第1周波数選択素子の重複する周波数範囲又は帯域における信号は、ダイプレクサの一入力部から、加え合わせ点、即ち、出力部を介して別の入力部へ伝達され得る。これによって、重複する周波数帯域におけるダイプレクサの合成器のような挙動が確実となるとともに、両信号経路からの重複する周波数帯域内の信号が加え合わせ点へ伝達される。
【0038】
対応する周波数範囲及び必要な最大増幅力に応じて、様々な技術を用いて非絶縁型ダイプレクサを製造することができることが理解される。第1周波数選択素子の回路素子は、例えば、集中定数素子とも呼ばれる個別素子として、又は、分布定数素子、例えば、PCB上の導電性領域のトレースによって形成されたキャパシタ又はインダクタとして設けることができる。
【0039】
可能な実施形態では、増幅器回路は、信号経路のうちのいくつか、即ち、1つ以上に対して振幅調整素子を備えることができ、1つの信号経路は、振幅調整素子を備えなくてもよい。各振幅調整素子は、対応する信号経路に対する分配信号の振幅を所定の倍率で調整するように構成することができる。
【0040】
振幅調整素子を備えていない信号経路は、ベース振幅を定義する一種の基準信号経路として考えることができる。ベース振幅とは、重複する周波数帯域内の信号の、ダイプレクサの加え合わせ点又は出力部での振幅を指す。
【0041】
振幅調整素子を備えていない信号経路は、例えば、最も低い周波数帯域に対する信号経路とすることができる。重複する周波数帯域では、この信号経路の増幅分配信号とすぐ上の周波数帯域に対する信号経路の増幅分配信号とが混合されることになる。これらの信号の振幅が同一でない場合、信号振幅が小さい方の信号経路は、振幅が大きい方の信号経路の信号部分による負荷変調を受けることになる。このような負荷変調を避けるために、両信号経路の振幅を、例えば各々の信号経路の増幅器によって、入力された分配信号を増幅前に調整することによって等しくすることができる。
【0042】
増幅器は、それぞれ異なる増幅特性を備えることができることが理解される。基準信号経路における増幅器は、例えば、10mWの入力パワーで100Wの出力パワーを提供することができる。その隣の信号経路の増幅器は、例えば、20mWの入力パワーで100Wの出力パワーを提供することができる(「隣」とは、隣の周波数帯域に対する信号経路を指す)。この場合、該隣の信号経路の振幅調整素子の倍率は、例えば、2とすることができる。これは、該振幅調整素子は、その分配信号の信号レベルに2を掛けることになることを意味する。このような振幅調整素子は、例えば、2という低増幅の増幅器とすることができる。
【0043】
一方、他方の信号経路が、基準信号経路と同じ出力パワーを提供するためにより低い信号レベルを必要とする場合、その分配信号の減衰を行うことができる。例えば、基準信号経路の増幅器が20mWの入力パワーで100Wの出力パワーを提供し、その隣の信号経路の増幅器が10mWの入力パワーで100Wの出力パワーを提供する場合、該隣の信号経路について、その振幅調整素子は、入力された分配信号を1/2に減衰することができる。このような振幅調整素子は、例えば、分圧器から構成することができる。
【0044】
3つ以上の信号経路が設けられる場合、前記基準信号経路は、同様に第2の又は隣の信号経路の基準であることが理解される。このとき、該第2の信号経路が第3の信号経路の基準信号経路となり、以降同様である。
【0045】
可能な実施形態では、振幅調整素子のうちの少なくとも1つは、減衰抵抗器又は増幅器を備えることができる。
【0046】
各振幅調整素子は、対応する信号経路に対する分配信号を増幅しなければならないか減衰しなければならないかに応じて、抵抗器又は増幅器を備えることができる。減衰抵抗器は、基準信号経路の分配信号の信号レベルに対して他の信号経路における分配信号レベルを低下させなければならないいかなる場合にも用いることができる。
【0047】
増幅器は、通常、高い増幅倍率を必要としないことが理解される。上記の例では、増幅倍率は2となっている。他の増幅倍率、例えば1から10の倍率が可能であることが理解される。分配信号のような低いレベルの信号に対する最大10までの低い増幅倍率を備えた増幅器は、増幅器回路に容易に一体化させることができる非常に単純な素子である。さらに、上記で説明したように、増幅と帯域幅との間にはトレードオフが存在する。したがって、低い増幅倍率であれば、高い帯域幅を増幅することができる。
【0048】
振幅調整素子は、設定変更可能、又は少なくとも調整可能であることが理解される。振幅調整素子は、例えば、当該増幅器回路の生産時、例えば線路試験の最終段階又はキャリブレーション工程で調整又は設定することができる。抵抗器を用いる場合には、ポテンショメータのような調整可能な抵抗器を用いることができる。或いは、例えば抵抗ペースト又は銅トレースの抵抗トラックを、例えばレーザー切断によって該トラックのサイズを調整することによって調整することができる。
【0049】
振幅調整素子において増幅器を用いる場合、該増幅器を、例えば電圧制御することができ、各増幅器の制御電圧は、その製造工程で調整することができる。
【0050】
振幅調整素子の設定は、一度決定した後、当該増幅器回路の寿命にわたって固定することができることが理解される。しかしながら、振幅調整素子に対して、信号経路及びダイプレクサにおける摩耗影響及び劣化影響を考慮した制御を実施することができることも理解される。
【0051】
可能な実施形態では、信号分配器は、各信号経路に対して、信号入力部と該信号経路との間に連結された第1抵抗器を備えた抵抗分配器から構成することができ、該信号分配器は、特に、入力ポートと第1抵抗器との間に連結された第2抵抗器を備えることができる。
【0052】
抵抗型の信号分配器は、非常に単純な種類の分配器である。2つの信号経路を備えた増幅器回路の場合、分配器には抵抗器を2つ又は3つだけ設けることができる。第2抵抗器は、例えば、入力ポートと分配点との間に設けることができる。このとき、第1抵抗器は、分配点と対応する信号経路との間に連結することができる。
【0053】
抵抗型の信号分配器は、製造が簡単なだけではない。このような抵抗型の信号分配器は、さらに、非常に大きな伝送帯域又は範囲を備えることができる。理論上、伝送帯域又は範囲は制限されない。しかしながら、実際の適用では、伝送帯域又は範囲は、寄生容量や寄生インダクタンスによって制限されることになる。この種の分配器には、集中定数又は分布定数素子、或いは両方を組み合わせたものを設けることもできることが理解される。
【0054】
抵抗分配器は、個々の信号経路に対して等しい分配信号を提供することができる。このような抵抗分配器は、出力部における2つの電圧が等しい一種の分圧器として考えることができる。
【0055】
可能な実施形態では、振幅調整素子のうちの少なくとも1つの減衰抵抗器を、対応する信号経路に対する信号分配器の第1抵抗器から構成することができる。
【0056】
上記で説明したように、信号分配器は、個々の信号経路に対して等しい信号を提供することができる。しかしながら、基準信号経路がダイプレクサの加え合わせ点における信号レベルが最も低い信号経路である場合、その他の信号経路の信号レベルを減衰させるだけでよい。これは、好ましくは、非常に単純な電子素子である抵抗器によって行うことができる。
【0057】
さらに、振幅調整素子の抵抗器と、対応する信号経路に対する信号分配器の第1抵抗器とを組み合わせることが可能である。それぞれの信号経路に対する信号分配器の出力信号レベルは、例えば、必要に応じて調節することができる。
【0058】
上記に挙げた例では、例えば第2の信号経路に対する信号分配器の出力部における信号レベルは、基準信号経路に対する出力部の信号レベルの半分とすることができる。したがって、信号分配器の出力レベルは、2:1の関係を備えることができる。これらの値は例示的な値にすぎないこと、及びそれぞれの適用において必要に応じて他の値を与えることができることが理解される。
【0059】
可能な実施形態では、信号分配器は、各信号経路に対して第2周波数選択素子を備えることができ、該第2周波数選択素子は、対応する信号経路の周波数帯域の信号を該信号経路まで通過させるように構成することができる。
【0060】
抵抗分配器の代わりに、個々の信号経路に対して、該信号経路の周波数帯域内の信号部分のみを供給する周波数選択性の分配器を設けてもよい。
【0061】
各第2周波数選択素子は、対応する信号経路に対する第1周波数選択素子と同じとすることができることが理解される。各第2周波数選択素子は、例えば、配置を反転させた、即ち、出力部が入力部となり、入力部が出力部となった第1周波数選択素子とすることができる。しかしながら、第1周波数選択素子の方が小さいパワー値に対する寸法となるようにすることもできることも理解される。上記で既に説明したように、入力側、即ち、入力ポートのパワーレベルは、ミリワットの範囲とすることができ、一方、出力側のパワーレベルは、数百ワットの範囲とすることができる。しかしながら、各第2周波数選択素子のトポロジー及び個々の電子素子、例えば、キャパシタやインダクタンスの値は、対応する第1周波数選択素子のものと同じとすることができる。
【0062】
可能な実施形態では、増幅器回路は、信号経路のうちのいくつか、即ち、1つ以上に対して位相シフタを備えることができ、信号経路のうちの1つは、位相シフタを備えなくてもよい。位相シフタは、対応する信号経路に対する分配信号の位相を所定の倍率で調整するように構成することができる。
【0063】
位相シフタを備えない信号経路は、振幅調整素子を備えない信号経路と同じとすることができる。したがって、この信号経路は、加え合わせ点における信号の位相についての基準信号経路としての役割も果たす。
【0064】
重複する周波数帯域又は範囲を備えている2つの信号経路の信号の位相が一致しない場合、必要に応じて信号レベルを加え合わせなくてもよい。位相シフトに応じて、信号同士が、例えば、部分的に打ち消し合ったり、或いは互いを完全に打ち消したりすることさえある。これは、180°の位相シフトを伴う場合である。さらに、振幅が異なる場合のように、位相シフトがある場合、瞬間的に信号レベルが低くなる信号経路が負荷変調を受けることがある。
【0065】
したがって、増幅器回路は、必要な場合に信号経路の位相を調整する位相シフタを備えている。この場合も、基準信号経路は、基準、この場合は基準位相を提供する。位相シフタを、振幅調整素子として、対応する信号経路の増幅器の手前に設けることができる。これは、位相シフタを高パワー信号に適合させる必要がないことを意味する。
【0066】
個々の信号経路における何らかの素子により、分配信号に対して一定の位相シフトがもたらされることがある。これは、加え合わせ点において、振幅調整を行った増幅分配信号であっても、重複する周波数帯域内の基準振幅とは異なる瞬間振幅を備えることがあること意味する。
【0067】
位相シフタを備える場合、この振幅の違いを、加え合わせ点における重複する周波数帯内の信号が同じ位相を備えるように相殺することができる。
【0068】
位相シフタは、例えば、設定変更可能な遅延線とすることができる。信号を遅延させた場合、該信号は、対応する信号経路の増幅器に遅れて到達することになる。これにより、基準信号経路を基準とした位相シフトが引き起こされることになる。遅延線の長さは、その信号線を基板上に設けて該信号線のある特定の部位を切断することにより変更することができる。必要な遅延、つまりは遅延線の長さは、重複する周波数帯域の周波数によって決まることが理解される。この遅延線は一例にすぎず、他の遅延素子も可能である。位相シフタは、例えば、当該増幅器回路の生産時、例えば線路試験の最終段階又はキャリブレーション工程で調整又は設定することができる。
【0069】
位相シフトは、それぞれ異なる信号経路からの信号が重複して混合される重複する周波数帯域においてのみ必要であることが理解される。
【0070】
振幅調整素子を備える場合のように、位相シフタの設定は、一度決定した後、当該増幅器回路の寿命にわたって固定することができることが理解される。しかしながら、位相シフタ素子に対して、信号経路及びダイプレクサにおける摩耗影響及び劣化影響を考慮した制御を実施することができることも理解される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
本発明及びその利点をより完全に理解するために、ここで、添付の図面と併せた以下の説明を参照する。以下では、添付の図面の概略図に特定された例示的な実施形態を用いて本発明をより詳細に説明している。
【0072】
図1】本発明にかかる増幅器回路の実施形態のブロック図である。
図2】本発明にかかる増幅器回路の別の実施形態のブロック図である。
図3】本発明にかかる増幅器回路の別の実施形態のブロック図である。
図4】本発明にかかる方法の実施形態のフロー図である。
図5】本発明にかかる増幅器回路の実施形態の可能な周波数応答曲線を含む図である。
【0073】
添付図面は、本発明の実施形態のさらなる理解をもたらすことを意図したものである。これらの図は、実施形態を図示しており、以下の説明と協働して、本発明の原理及び概念の説明の助けとなるものである。他の実施形態及び言及する利点の多くは、図面を見れば容易に理解できる。図面の各要素は必ずしも同じ縮尺で示されていない。
【0074】
図面において、機能的に同等であり、同じように動作する同様の要素、特徴及び構成物は、特に明記されていない限り、いずれの場合も同様の参照符号が付与されている。
【発明を実施するための形態】
【0075】
図1は、増幅器回路100のブロック図を示している。増幅器回路100は、入力信号101を受けるための入力ポート103を備えた信号分配器102を備えている。信号分配器102は、2つの信号経路109,110に連結されている。2つの信号経路109,110は、合成増幅信号118出力するダイプレクサ115に連結されている。
【0076】
信号分配器102は、一方のポートにおいて入力ポート103に連結された第2抵抗器106を備えている。第2抵抗器106の他方のポートと信号経路109の入力部との間に第1抵抗器104が連結されている。第2抵抗器106他方のポートと信号経路110の入力部との間にもう一つの第1抵抗器105が連結されている。第2抵抗器106は任意とすることができ、いくつかの実施形態では省略してもよい。さらに、例えば、第1抵抗器104,105を等価の抵抗器として、2つの信号経路109,110に等しい分配信号107,108を供給することができる。しかしながら、以下に説明するが、第1抵抗器104,105は、それぞれ異なる抵抗値を備えていてもよい。
【0077】
信号経路109では、分配信号107が増幅器111に供給され、該増幅器111は、分配信号107を増幅して増幅信号113を供給する。信号経路110では、同様に分配信号108が増幅器112に供給され、該増幅器112は、増幅信号114を供給する。しかしながら、信号経路110では、増幅器112の手前の信号線に、任意の振幅調整素子119及び任意の位相シフタ120が設けられている。
【0078】
ダイプレクサ115には、2つの第1周波数選択素子116,117が設けられている。上側の第1周波数選択素子116は、明確にするために個別に示してはいないが、2つの直列インダクタンスと、該2つのインダクタンスの結合又は接続点と地面との間に接続されたキャパシタとの例示的な配置を備えている。上側の第1周波数選択素子116の入力部は、増幅器111の出力部に接続されており、増幅信号113を受ける。上側の第1周波数選択素子116の出力部は、加え合わせ点121に接続されている。
【0079】
下側の第1周波数選択素子117は、3つの直列キャパシタを備えており、第1のキャパシタと第2のキャパシタの第1の結合又は接続点と地面との間にインダクタが連結され、第2のキャパシタと第3のキャパシタの第2の結合又は接続点と地面との間にインダクタが連結されている。下側の第1周波数選択素子117の入力部は、増幅器112に連結されており、増幅信号114を受ける。下側の第1周波数選択素子117の出力部は、加え合わせ点121に連結されている。
【0080】
増幅器回路100の動作時、信号分配器102は、入力ポート103を介して入力信号101を受ける。信号分配器102、即ち、第1抵抗器104,105及び第2抵抗器106は、入力信号101を分配信号107,108に分配する。
【0081】
信号経路109において、増幅器111によって分配信号107が増幅される。信号経路110において、増幅器112によって分配信号108が増幅される。しかしながら、信号経路110では、振幅調整素子119によって分配信号108の振幅を適合させることができる。さらに、位相シフタ120によって分配信号108の位相を適合させることができる。増幅器112の出力振幅及び出力位相が増幅器111のものと合致している場合は、振幅調整素子119及び位相シフタ120を省略してもよいことが理解される。さらに、振幅調整素子119及び位相シフタ120は増幅器112の後方に設けてもよいことが理解される。振幅調整素子119は、第1抵抗器105に一体化させることもできる。この場合、第1抵抗器104,105は、それぞれ異なる値を有する。
【0082】
増幅信号113,114は、その後、ダイプレクサ115、即ち、上側の第1周波数選択素子116及び下側の第1周波数選択素子117に供給される。
【0083】
上側の第1周波数選択素子116はローパスフィルタであること、及び下側の第1周波数選択素子117はハイパスフィルタであることが分かる。上側の第1周波数素子116及び下側の第1周波数素子117は、対応する増幅器111,112によって増幅される周波数帯域に応じて適合させている。これは、それぞれのフィルタが通過させる通過帯域又は周波数範囲は、少なくとも、対応する信号経路109,110の周波数帯域と同じ大きさであることを意味する。さらに、周波数帯域が重複する中央部分では、上側の第1周波数選択素子116と下側の第1周波数選択素子117の通過帯域が重複している。
【0084】
したがって、加え合わせ点121では、増幅信号113と増幅信号114の両方の信号が存在することになる。
【0085】
振幅調整素子119は及び位相フィルタ120は、増幅信号114が、少なくとも重複する周波数帯域において、振幅及び位相の点で増幅信号113と合致するように一度設定することができる。例えば、増幅器回路100の生産時にこのような設定を行うことができる。
【0086】
図2は、増幅器回路200のブロック図を示している。増幅器回路200は、増幅器回路100を基にしたものである。したがって、増幅器回路200も、入力信号201を受けるための入力ポート203を備えた信号分配器202を備えている。信号分配器202は、信号経路209及び信号経路210に連結されている。両信号経路209,210は、ダイプレクサ215に連結されている。
【0087】
増幅器回路100と異なり、増幅器回路200では、信号分配器202は、第1及び第2抵抗器104,105,106ではなく、第2周波数選択素子225,226を備えている。
【0088】
第2周波数選択素子225,226は、上側の第1周波数選択素子216及び下側の第1周波数選択素子217に対応するハイパスフィルタ及びローパスフィルタから構成することができる。
【0089】
上側の第2周波数選択素子225は、上側の第1周波数選択素子216と同じ設定を備えることができることが理解される。下側の第2周波数選択素子226は、下側の第1周波数選択素子217と同じ設定を備えることができる。
【0090】
これに関して、同じ設定とは、第2周波数選択素子226が同じ周波数応答を備えることを指す。これは、上側の第1周波数選択素子216と同じ電子素子及び素子値を備えた同じトポロジーを用いることができることを意味する。しかしながら、入力信号201の信号パワーは増幅信号213,214の信号パワーより低いため、素子の電流容量又はパワー定格は減少させてもよいことが理解される。
【0091】
図示していないが、例えばノッチフィルタのような周波数選択素子を信号経路209の増幅器211の手前又は後方に挿入してもよいことが理解される。
【0092】
図3は、増幅器回路300のブロック図を示している。増幅器回路300は、増幅器回路200を基にしたものである。したがって、増幅器300も、入力信号301を受けるための入力ポート303を備えた信号分配器302を備えている。信号分配器302は、信号経路309及び信号経路310に連結されている。両信号経路309,310は、ダイプレクサ315に連結されている。
【0093】
しかしながら、増幅器回路200と異なり、増幅器回路300は、追加の信号経路328を備えており、さらに可能な信号経路を3つの点で示唆している。
【0094】
信号経路328は、さらに、信号分配器302においてさらなる第2周波数選択素子327、ダイプレクサ315においてさらなる第1周波数選択素子331を伴っている。
【0095】
信号経路328も、増幅信号330を第1周波数選択素子331に供給する増幅器329の手前に、振幅調整素子332及び位相シフタ3333を備えている。
【0096】
増幅器回路300では、信号経路309と信号経路328の周波数帯域が重複し、信号経路328と信号経路310の周波数帯域が重複することができる。
【0097】
追加の信号経路が設けられる場合、いかなる場合も、信号経路のうちの2つの周波数帯域が重複することになることが理解される。したがって、中間の信号経路は、下端において別の信号経路の周波数帯域と重複し、上端において別の信号経路の周波数帯域と重複する周波数帯域を有することができる。
【0098】
増幅器回路100の場合と同様に、振幅調整素子及び位相シフタは、増幅器回路200及び増幅器回路300においても任意とする、又は必要に応じて設けることができることが理解される。
【0099】
明確にするために、以下の図4を基にした方法の説明において、上記の図1乃至図3を基にした装置の説明において用いた参照符号は維持される。図5の説明についても同様である。
【0100】
図4は、入力信号101,201,301を増幅する方法のフロー図を示している。
【0101】
この方法は、入力信号101,201,301を受けることS1と、入力信号101,201,301を、少なくとも2つの信号経路109,110,209,210,309,310,328に対する分配信号107,108,207,208,307,308,335に分配することS2と、別々の重複する周波数帯域550,551,552を備えた信号経路109,110,209,210,309,310,328において分配信号107,108,207,208,307,308,335を増幅することS3と、増幅信号113,114,213,214,313,314,330を二重化して合成増幅信号118,218,318を提供することS4を含む。
【0102】
この方法は、さらに、信号経路109,110,209,210,309,310,328において、当該信号経路109,110,209,210,309,310,328の周波数帯域550,551,552内の分配信号107,108,207,208,307,308,335を増幅する、即ち、分配信号107,108,207,208,307,308,335を信号経路109,110,209,210,309,310,328において個別に増幅することを含むことができる。
【0103】
二重化することS4は、各信号経路109,110,209,210,309,310,328について、当該信号経路109,110,209,210,309,310,328の周波数帯域550,551,552の信号を加え合わせ点121まで通過させることを含むことができる。
【0104】
二重化することS4は、例えば、非絶縁型ダイプレクサ115,215,315を用いて行うことができる。それぞれの信号経路109,110,209,210,309,310,328の周波数帯域550,551,552の信号を通過させる際、重複する周波数範囲を用いることができ、このとき、コーナー周波数は、その隣接する周波数帯域550,551,552の伝送帯域内にある。
【0105】
この方法は、さらに、信号経路109,110,209,210,309,310,328のうちのいくつかに対する分配信号107,108,207,208,307,308,335の振幅を所定の倍率で調整することを含むことができる。信号経路109,110,209,210,309,310,328のうちの少なくとも1つ、例えば選択された基準信号経路109,110,209,210,309,310,328に対する分配信号107,108,207,208,307,308,335の振幅は、必ずしも調整する必要はない。
【0106】
減衰抵抗器又は増幅器111,112,211,212,311,312,329を用いて調整を行うことができる。分配することS2は、各信号経路109,110,209,210,309,310,328に対して第1抵抗器104,105を備えた抵抗分配器を用いて行うことができる。信号分配器102,202,302は、さらに、その入力部と第1抵抗器104,105との間に連結された第2抵抗器106を備えることができる。
【0107】
このとき、信号経路109,110,209,210,309,310,328のうちの少なくとも1つの振幅を調整することは、当該信号経路109,110,209,210,309,310,328に対する、信号分配器102,202,302の第1抵抗器104,105を用いて行うことができる。
【0108】
或いは、分配することS2は、各信号経路109,110,209,210,309,310,328に対する第2周波数選択素子225,226,325,326,327を用いて行うことができる。第2周波数選択素子225,226,325,326,327は、対応する信号経路109,110,209,210,309,310,328の周波数帯域550,551,552の信号を当該信号経路109,110,209,210,309,310,328まで通過させることができる。
【0109】
この方法は、さらに、信号経路109,110,209,210,309,310,328のうちのいくつかについて、当該信号経路109,110,209,210,309,310,328に対する分配信号107,108,207,208,307,308,335の位相を所定の倍率で調整することを含むことができる。このとき、信号経路109,110,209,210,309,310,328うちの少なくとも1つに対する分配信号107,108,207,208,307,308,335の位相は、必ずしも調整する必要はない。
【0110】
図5は、増幅器回路100,200の可能な周波数応答曲線を含む図を示している。増幅器回路300の可能な周波数応答曲線は3つ以上の周波数帯域を備えるが、これについても以下に説明する基本原理が当てはまることが理解される。
【0111】
図5の図は、上側部分と下側部分に分かれている。上側部分は、2つ信号経路109,110,209,210を備えた増幅器回路100,200の周波数に対する出力パワーを示している。下側部分は、増幅器回路100,200の複合出力周波数帯域を示している。
【0112】
図の上側部分では、2つの周波数帯域550,551が示されている。これら2つの周波数帯域550,551は、2つの信号経路109,110,209,210の2つの重複する周波数帯域550,551を表している。
【0113】
上記で既に説明したように、周波数帯域550,551の立ち下がりエッジは、各々、他方の周波数帯域550,551の通過帯域領域内に存在することが分かる。
【0114】
図の下側部分には、複合又は出力周波数帯域552が示されている。出力周波数帯域552は、周波数帯域550の(周波数に関する)低方部分と、周波数帯域551の(周波数に関する)高方部分とを備えていることが分かる。重複する領域には、小さな信号オーバーシュートが存在している。
【0115】
本明細書では具体的な実施形態を図示・説明したが、当業者には、多種多様な代替的且つ/又は同等の実施物が存在することが認識されるであろう。上記の例示的な実施形態は、例にすぎず、決して、範囲、利用可能性又は構造を限定するよう意図されたものでないことが認識されるべきである。むしろ、上記概要及び詳細な説明は、当業者に対して、少なくとも1つの例示的な実施形態を実施するための便利なロードマップを提供するものであり、添付の特許請求の範囲及びその法的同等物に記載されるような範囲を逸脱することなく、例示的な実施形態で説明した要素の機能及び配置において様々な変更を加えることができることが理解される。全体として、本願は、本明細書で論じた具体的な実施形態のあらゆる適合形態又は変化形態を包括するように意図されている。
【0116】
上記の詳細な説明では、開示の効率化を目的として、1つ又は複数の例において様々な特徴をグループ化している。上記の記述は、説明することを意図されたものであり、制限することを意図されたものではないことが理解される。本発明の範囲に含まれ得る全ての代替物、変形物及び同等物を包括することが意図されている。当業者には、上記明細書を精査することにより、多くの他の例が明らかになるであろう。
【0117】
上記明細書で用いた具体的な術語は、本発明の完全な理解を提供するために用いたものである。しかしながら、当業者には、本明細書を踏まえると、具体的詳細は本発明を実行するために必要でないことが明らかになるであろう。かくして、上記の本発明の具体的な実施形態についての記述は、説明を目的として提示したものである。該記述は、全てを網羅すること、又は本発明を開示した形態そのものに限定することを意図されたものではなく、上記教示を考慮すると多くの変形形態及び変化形態が可能であることが明らかである。上記実施形態は、他の当業者が、本発明や、考えられる特定の使用に適合するような様々な変形を伴った様々な実施形態を最良に活用できるように、本発明の原理及びその実際の適用を最良に説明するために選択して説明したものである。本明細書全体を通して、「including」及び「in which」は、それぞれ、「comprising」及び「wherein」と同等の平易な英語として用いたものである。さらに、「第1」、「第2」、「第3」等は、単にラベルとして用いたものであり、それらの対象物に数値的要件を課すこと、又はある特定の重要性の順位付けを行うこと意図されたものではない。
【符号の説明】
【0118】
100,200,300 増幅器回路
101,201,301 入力信号
102,202,302 信号分配器
103,203,303 入力ポート
104,105 第1抵抗器
106 第2抵抗器
107,108,207,208 分配信号
307,308,335 分配信号
109,110,209,210 信号経路
309,310,328 信号経路
111,112,211,212 増幅器
311,312,329 増幅器
113,114,213,214 増幅信号
313,314,330 増幅信号
115,215,315 ダイプレクサ
116,117,216,217 第1周波数選択素子
316,317,331 第1周波数選択素子
118,218,318 合成増幅信号
119,219,319,332 振幅調整素子
120,220,320,333 位相シフタ
121 加え合わせ点
225,226,325,326,327 第2周波数選択素子
550,551,552 周波数帯域
S1-S4 方法工程
図1
図2
図3
図4
図5