(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】偏平バーナ
(51)【国際特許分類】
F23D 14/08 20060101AFI20230105BHJP
F23C 99/00 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
F23D14/08 E
F23C99/00 329
(21)【出願番号】P 2018112608
(22)【出願日】2018-06-13
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴大
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-220314(JP,A)
【文献】特開2002-213714(JP,A)
【文献】特開平06-147439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/00-14/84
F23C 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に長手の偏平バーナであって、上端に、主炎口と、主炎口の横方向の少なくとも片側に位置する袖火炎口と、主炎口と袖火炎口との間に位置する、ガスを噴出しない盲空隙とを備え、燃料として水素含有燃料を用いるものにおいて、
主炎口からは、理論空燃比より燃料濃度が希薄な燃料と空気の混合ガスを噴出し、袖火炎口からは、燃料のみのガスを噴出する
ようにし、
更に、袖火炎口の主炎口側の上端の高さを、主炎口の上端の高さよりも低くして、袖火炎口からの噴出燃料に主炎口からの噴出希薄混合ガス中の過剰空気が混合し始める位置を袖火炎口と主炎口との高低差分だけ袖火炎口の主炎口側の上端から遠ざけることを特徴とする偏平バーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料として水素含有燃料を用いる偏平バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前後方向に長手の偏平バーナであって、上端に、主炎口と、主炎口の横方向の少なくとも片側に位置する袖火炎口とを備えるものでは、燃料としてメタン、プロパン等の炭化水素を主成分とする燃料を用いている。そして、主炎口から理論空燃比より燃料濃度が希薄な燃料と空気の混合ガス(淡混合気)を噴出して、淡混合気の燃焼で生ずる主炎の温度を淡混合気に含まれる過剰空気で低下させることによりNOxの発生量を低減させ、また、袖火炎口から理論空燃比より燃料濃度が濃い燃料と空気の混合ガス(濃混合気)を少量噴出して、濃混合気の燃焼で生ずる袖火により主炎を保炎するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、最近は、地球温暖化対策のため再生可能エネルギーの利用が勧められており、風力や太陽光による発電設備も増加すると予測されるが、これにより余剰電力も多く発生してしまう。そのため、余剰電力対策を講ずる必要があり、その一つとして、余剰電力を水素に変換して貯蔵し、この水素をガスパイプラインに注入して、CO2排出量を低減できる水素含有燃料として供給することが考えられている。
【0004】
ここで、上記偏平バーナにおいて、燃料として水素含有燃料を用いたのでは、以下の不具合を生ずる。即ち、水素含有燃料は燃焼速度が非常に速く、ガス噴出速度が比較的遅くなる袖火炎口での逆火を生じやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、燃料として水素含有燃料を用いる偏平バーナであって、袖火炎口での逆火を防止できるようにしたものを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、前後方向に長手の偏平バーナであって、上端に、主炎口と、主炎口の横方向の少なくとも片側に位置する袖火炎口と、主炎口と袖火炎口との間に位置する、ガスを噴出しない盲空隙とを備え、燃料として水素含有燃料を用いるものにおいて、主炎口からは、理論空燃比より燃料濃度が希薄な燃料と空気の混合ガスを噴出し、袖火炎口からは、燃料のみのガスを噴出するようにし、更に、袖火炎口の主炎口側の上端の高さを、主炎口の上端の高さよりも低くして、袖火炎口からの噴出燃料に主炎口からの噴出希薄混合ガス中の過剰空気が混合し始める位置を袖火炎口と主炎口との高低差分だけ袖火炎口の主炎口側の上端から遠ざけることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、袖火炎口から燃料のみのガスが噴出するため、袖火炎口上に形成される袖火は拡散火炎となる。そして、主炎口から噴出する淡混合気の燃焼で形成される主炎と袖火との間に存在する燃焼速度が最も速く且つ最も高温になる理論空燃比の混合ガス(袖火炎口からの噴出燃料に主炎口からの噴出淡混合気中の過剰空気が混合した混合ガス)が燃焼反応する領域を袖火炎口の上端からかなり離れた位置にすることができる。その結果、袖火炎口の上端の温度上昇が抑制され、逆火を防止することができる。
【0009】
また、本発明においては、上記の如く袖火炎口の主炎口側の上端の高さを、主炎口の上端の高さよりも低くして、袖火炎口からの噴出燃料に主炎口からの噴出淡混合気中の過剰空気が混合し始める位置を袖火炎口と主炎口との高低差分だけ袖火炎口の主炎口側の上端から遠ざけることにより、主炎と袖火との間に存在する理論空燃比の混合ガスが燃焼する領域を袖火炎口の主炎口側の上端からより遠ざけることができ、逆火防止の確実性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態の偏平バーナを備える燃焼装置の切断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照して、1は給湯用熱源機等の燃焼装置を構成する燃焼筐を示している。燃焼筐1の上面は開放されており、燃焼筐1の上に図示省略した熱交換器等の被加熱物が設置される。燃焼筐1内には、燃焼筐1内の空間を燃焼室2とその下側の給気室3とに仕切る仕切り板4が設けられている。給気室3の底面には図外のファンがダクト5を介して接続されており、ファンから給気室3に空気が供給される。仕切り板4には、多数の分布孔4aが形成されており、給気室3に供給された空気がこれら分布孔4aを介して燃焼室2に二次空気として供給される。
【0012】
燃焼室2内には、前後方向に長手の偏平バーナ6が横方向に複数並設されている。また、仕切り板4の前縁に立上り部41を曲成すると共に、立上り部41の前側に燃焼筐1の下部前面を塞ぐようにしてマニホールド7を装着している。マニホールド7には、各偏平バーナ6の後述する流入管部65,67の流入口65a,67aに臨むガスノズル71,72が設けられている。
【0013】
図2乃至
図4を参照して、本発明の実施形態の偏平バーナ6は、前後方向に長手のバーナ本体61と、バーナ本体61の上部に被せたバーナキャップ62とを備えている。バーナ本体61の上端には、上方に開口する細長形状の主炎口63が設けられている。また、バーナキャップ62により、主炎口63の横方向両側に位置する袖火炎口64が設けられている。
【0014】
バーナ本体61は、横方向に対峙する一対の側板61a,61aで構成されている。尚、両側板61a,61aは、一枚の板をバーナ本体61の下縁となる折り曲げ線で合掌状態に折り曲げることにより形成されている。そして、各側板61aのプレス加工により、バーナ本体61に、上端の主炎口63と、下部の主炎用流入管部65と、この流入管部65からのガスを主炎口63に導く分布室部66とが形成されている。
【0015】
主炎用流入管部65は、バーナ本体61の下部前端に位置する流入口65aから後方にのびている。そして、主炎用流入管部65の後端部から分布室部66が前方に広がりながら上方にのびている。また、バーナ本体61の前部には、主炎用流入管部65と分布室部66との間に位置させて、袖火用流入管部67が形成されている。袖火用流入管部67は、バーナ本体61の前端に位置する流入口67aから後方に少しのびて終端しており、その後端部側面に通気孔67bが開設されている。
【0016】
バーナキャップ62は、バーナ本体61の一対の側板61a,61aの外側に被せられる一対の側板62a,62aと、両側板62a,62aをその上縁で連結する前後複数個所のブリッジ部62bとを有している。そして、バーナ本体61の側板61aとバーナキャップ62の側板62aとの間に、上端の袖火炎口64と、袖火用流入管部67から通気孔67bを介してバーナ本体1の外側に流出するガスを袖火炎口64に導く通路が画成される。また、バーナキャップ62の側板62aのブリッジ部62bに合致する前後複数個所には、バーナ本体61の側板61aの外側面に当接して、袖火炎口64を前後方向に分断する凹部62cが形成されている。
【0017】
また、主炎口63内には、横方向に並設した複数の整流板68aを有する整流部材68が装着されている。整流部材68には、バーナキャップ62のブリッジ部62bに合致する前後複数個所に、整流板68a同士を当接させて、各整流板68a間に画成される炎口流路を前後方向に分断する当接部68bが形成されている。また、バーナ本体61の側板61aの上部には、整流部材68の外側面に当接する前後方向に長手の凹部63aが形成されている。そして、凹部63aより上方の側板61aの部分と整流部材68との間に、即ち、主炎口63と袖火炎口64との間に、ガスが噴出しない盲空隙63bが画成され、主炎口63から噴出するガスの一部が盲空隙63b上に還流するようにしている。
【0018】
ここで、本実施形態の偏平バーナ6は、燃料として水素含有燃料を用いる。但し、水素含有燃料は燃焼速度が非常に速く、ガス噴出速度が比較的遅くなる袖火炎口64での逆火を生じやすくなる。
【0019】
そこで、本実施形態では、主炎口63からは、理論空燃比より燃料濃度が希薄な燃料と空気の混合ガス(淡混合気)、例えば、空気過剰率が2.0以上の淡混合気を噴出し、袖火炎口64からは、燃料のみのガスを噴出するようにした。
図1を参照して、主炎用流入管部65の流入口65aには、これに対向する主炎用ガスノズル71から噴射された燃料が流入すると共に空気が流入し、この燃料と空気とが混合して生成される淡混合気が主炎口3から噴出する。また、仕切り板4の前縁の立上り部41の前面に重ねたダンパ69には、袖火用ガスノズル72の先端部が内嵌する遮蔽筒69aが突設され、袖火用流入管部7の流入口67aに空気が流入しないようにしている。そのため、袖火用ガスノズル72から噴射された燃料のみが袖火用流入管部67の流入口67aに流入し、燃料のみのガスが袖火炎口64から噴出する。
【0020】
淡混合気の空気過剰率を2.0以上にすれば、燃焼速度の速い水素含有燃料であっても、主炎口63の上端から十分に離れた位置に火炎(主炎)が形成されて、主炎口63の上端の温度上昇が抑制され、主炎口63での逆火を防止できる。
【0021】
また、袖火炎口64から燃料のみのガスが噴出するため、袖火炎口64上に形成される袖火は、袖火炎口64からの噴出燃料に主炎口63からの噴出淡混合気中の過剰空気と袖火炎口64の周囲の二次空気とが混合した混合ガスが燃焼する拡散火炎となる。そして、主炎口63から噴出する淡混合気の燃焼で形成される主炎と袖火との間に存在する燃焼速度が最も速く且つ最も高温になる理論空燃比の混合ガスが燃焼反応する領域を袖火炎口64の上端からかなり離れた位置にすることができる。その結果、袖火炎口4の上端の温度上昇が抑制され、逆火を防止することができる。
【0022】
更に、本実施形態では、袖火炎口64の主炎口63側の上端の高さ(バーナ本体61の側板61aの上端の高さに合致)を、主炎口63の上端の高さ(整流部材68の上端の高さに合致)よりも低くしている。これによれば、袖火炎口64からの噴出燃料に主炎口63からの噴出淡混合気中の過剰空気が混合し始める位置が袖火炎口64と主炎口63との高低差分だけ袖火炎口64の主炎口63側の上端から遠ざかることになる。そのため、主炎と袖火との間に存在する理論空燃比の混合ガスが燃焼する領域を袖火炎口64の主炎口63側の上端からより遠ざけることができ、逆火防止の確実性が向上する。
【0023】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、袖火炎口64の主炎口63側とは反対側の上端の高さ(バーナキャップ62の側板62aの上端の高さに合致)を、袖火炎口64の主炎口63側の上端の高さよりも高く、主炎口63の上端の高さより若干低くしているが、これを袖火炎口64の主炎口63側の上端の高さと同等、或いは、主炎口63の上端の高さと同等としてもよく、要は、袖火炎口64の主炎口63側とは反対側の上端の高さは、袖火炎口64の主炎口63側の上端の高さと同等以上で主炎口63の上端の高さと同等以下であればよい。また、上記実施形態の偏平バーナ6は、主炎口63の横方向両側に袖火炎口64を備えているが、主炎口の横方向片側のみに袖火炎口を備えるものであってもよい。また、水素含有燃料は、水素以外の成分を有するものであっても、水素以外の成分を有しないものであってもよい。
【符号の説明】
【0024】
6…偏平バーナ、63…主炎口、64…袖火炎口。