(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御方法およびハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/08 20060101AFI20230105BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20230105BHJP
B60W 20/12 20160101ALI20230105BHJP
B60W 20/17 20160101ALI20230105BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20230105BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20230105BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20230105BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20230105BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20230105BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20230105BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20230105BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20230105BHJP
F02N 11/08 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/48 ZHV
B60W20/12
B60W20/17
B60W10/26 900
B60W10/06 900
B60L3/00 S
B60L50/16
B60L15/20 J
G01C21/26 A
F02D29/06 D
F02D29/02 321B
F02N11/08 L
(21)【出願番号】P 2018155444
(22)【出願日】2018-08-22
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002549
【氏名又は名称】弁理士法人綾田事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 孝信
(72)【発明者】
【氏名】手塚 淳
(72)【発明者】
【氏名】平田 武司
(72)【発明者】
【氏名】東條 智也
(72)【発明者】
【氏名】中尾 圭一
(72)【発明者】
【氏名】大塩 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】平野 智久
(72)【発明者】
【氏名】池上 尭史
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-071370(JP,A)
【文献】特開2013-177089(JP,A)
【文献】特開2009-138721(JP,A)
【文献】特開2000-197214(JP,A)
【文献】特開2016-165918(JP,A)
【文献】特開平11-041714(JP,A)
【文献】特開2018-052354(JP,A)
【文献】特開2006-170056(JP,A)
【文献】特開2007-223357(JP,A)
【文献】特開2015-227145(JP,A)
【文献】特開2013-210319(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0314775(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 20/50
B60K 6/20 - 6/547
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
F02D 29/02
F02D 29/06
F02N 11/08
G01C 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機と、該発電機を駆動するエンジンと、前記発電機により充電されるバッテリと、該バッテリにより駆動される走行用の駆動モータと、を有し、
現在の走行経路上で前記エンジンが始動していない状態での前記駆動モータによる走行を制御するハイブリッド車両の制御方法において、
現在の走行経路の路面粗さを予測し、
前記予測した路面粗さに基づき、路面粗さが粗い区間の前の路面粗さが粗くない区間で、前記エンジンが始動していない状態での前記駆動モータによる走行を優先
し、
前記路面粗さが粗い区間の前の路面粗さが粗くない区間では、アクセルペダルの踏込量によるエンジン始動の閾値を高く設定する、
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御方法において、
前記路面粗さが粗い区間では、前記エンジンを始動して前記発電機を駆動することにより、バッテリの充電を行う、
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御方法において、
前記現在の走行経路の路面粗さの予測では、ナビゲーションシステムから走行経路情報を入手し、現在の走行経路での路面粗さを判断する閾値を設定する、
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御方法。
【請求項4】
請求項
3に記載のハイブリッド車両の制御方法において、
前記ナビゲーションシステムに走行経路が設定されてなく、枝分かれのない走行経路を走行している場合には、前記ナビゲーションシステム、あるいは他車両からの走行経路情報により、枝分かれするまでの路面粗さを予測する、
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載のハイブリッド車両の制御方法において、
前記枝分かれするまでの走行経路の路面粗さの予測では、前記ナビゲーションシステム、あるいは前記他車両からの走行経路情報を入手し、前記枝分かれするまでの走行経路での路面粗さを判断する閾値を設定する、
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御方法。
【請求項6】
請求項
1に記載のハイブリッド車両の制御方法において、
車室音センサからの実際の車室音情報を取得し、
実際の車室音が高のときには、前記エンジンを始動し、前記発電機を駆動して、発電を行う、
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御方法。
【請求項7】
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御方法において、
振動センサからの実際の車両振動情報およびバッテリの充電状態情報を取得し、
実際の車両振動が大きくなり、バッテリの充電状態が規定値よりも低いときには、前記エンジンを始動し、前記発電機を駆動して、発電を行う、
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御方法。
【請求項8】
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御方法において、
車室音センサ、振動センサからのセンサ情報を取得し、
前記予測した路面粗さと前記センサ情報による車室音の高低区間とが、一定時間、乖離しているときには、予測制御を終了するようにした、
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御方法。
【請求項9】
発電機と、該発電機を駆動するエンジンと、前記発電機により充電されるバッテリと、該バッテリにより駆動される走行用の駆動モータと、を有し、
現在の走行経路上で前記エンジンが始動していない状態での前記駆動モータによる走行を制御するハイブリッド車両の制御装置において、
前記現在の走行経路の路面粗さを予測する路面粗さ予測手段と、
前記予測した路面粗さに基づき、路面粗さが粗い区間の前の路面粗さが粗くない区間で、前記エンジンが始動していない状態での前記駆動モータによる走行を優先し、
前記路面粗さが粗い区間の前の路面粗さが粗くない区間では、アクセルペダルの踏込量によるエンジン始動の閾値を高く設定する、優先制御手段と、を備える、
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御方法およびハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数あるルートのうち、充電効率が最も高いルートを選定するようにしている技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1においては、発電ありきのため、車室音が低いときに、エンジンが始動してしまい、ドライバが静かな道路での静かな運転を享受することができないという問題があった。
本発明の目的は、エンジンの始動時の騒音、振動をドライバが感じにくくなるハイブリッド車両の制御方法およびハイブリッド車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、現在の走行経路の路面粗さを予測し、予測した路面粗さに基づき、路面粗さが粗い区間の前の路面粗さが粗くない区間で、エンジンが始動していない状態での駆動モータによる走行を優先する。
【発明の効果】
【0006】
よって、路面粗さが粗い区間でエンジンを始動し充電ができるので、その手前の路面粗さが粗くない区間において、エンジンが始動していない状態での駆動モータによる走行ができ、ドライバが、静かな運転を充分に享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明が適用されるハイブリッド車両の制御装置の制御システムブロック図である。
【
図2】実施例1の制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】実施例1の制御の処理実行時の一例を示すタイムチャートである。
【
図4】実施例2の制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】実施例2の制御の処理実行時の一例を示すタイムチャートである。
【
図6】実施例3の制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】実施例3の制御の処理実行時の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施例1〕
図1は、本発明が適用されるハイブリッド車両の制御装置の制御システムブロック図である。
【0009】
まず、制御システム全体の構成を、
図1により説明する。
ハイブリッド車両用制御装置としてのシリーズハイブリッド車両用のシステムコントローラ1は、車室音予測手段1aと優先制御手段1bを備え、不図示の自動変速機を介して一対の駆動輪7に駆動力を伝達するエンジン2を制御するエンジンコントローラ2a、発電機インバータ3bを介してエンジン2にて駆動される発電機3を制御する発電機コントローラ3a、バッテリ4を制御するバッテリコントローラ4a、駆動インバータ5bを介して、一対の駆動輪7に減速機6を介して駆動力を伝達する駆動モータ5を制御する駆動モータコントローラ5aと相互通信を行い、各コントローラに指示を与えて、シリーズハイブリッド車両を制御している。
さらに、システムコントローラ1には、表示装置9を備えるナビゲーションシステム8や車載通信装置10を介して、外部のデータセンタや他車両11からの路面情報、マップ情報が、さらに、車室音センサ(マイク等)12、振動センサとしての車両の上下振動を検知する変位量センサ13、振動センサとしての車両の上下加速度を検知する加速度センサ14からの情報が入力されている。
【0010】
図2は、実施例1の制御の処理の流れを示すフローチャートである。
すなわち、車室音予測手段1aと、優先制御手段1bを備えるシステムコントローラ1の制御の処理の流れを示している。
このフローチャートは、所定の演算周期で繰り返し実行される。
【0011】
ステップS1では、車室音予測手段1aが、ナビゲーションシステム8から現在地から目的地までの走行経路、さらに、ナビゲーションシステム8や車載通信装置10を介して外部のデータセンタや他車両11から、現在の走行経路の道路の路面情報(路面粗さ)を取得する。
なお、ナビゲーションシステム8に現在地から目的地までの走行経路が設定されていない場合には、現在の走行経路がナビゲーションシステム8や車載通信装置10を介して同じ走行経路を先行して走行している他車両11からの走行経路情報から、現在の走行経路が枝分かれのない道路であると判定した場合には、枝分かれするまでの走行経路において、現在の走行経路の路面粗さが、車室音が高い粗い区間と車室音が低い粗くない(滑らか)区間を予測している。
これにより、予測する機会を増やすことができ、より、ドライバが、静かな運転を享受することができる。
ステップS2では、車室音予測手段1aが、取得した現在の走行経路の路面情報(路面粗さ)から、路面が粗いと判断する閾値を設定し、現在の走行経路の路面粗さが、車室音が高い粗い区間と車室音が低い粗くない(滑らか)区間を予測する。
閾値としては、例えば路面の状況を4段階に分けて、走行経路の路面状況に応じて、選択するようにし、相対的に車室音が高い粗い区間と車室音が低い粗くない(滑らか)区間を予測する。
このように、走行経路の路面情報に基づき、路面が粗いと判断する閾値を設定することにより、道路状況に応じて、柔軟に、現在の走行経路の路面粗さが、車室音が高い粗い区間と車室音が低い粗くない(滑らか)区間を予測することができる。
ステップS3では、車室音予測手段1aが、路面粗さが粗い区間までの距離を取得する。
ステップS4では、車室音予測手段1aが、現在のバッテリ4の充電状態(SOC)および現在の走行経路の勾配情報(走行負荷)を取得する。
なお、取得するバッテリ4の充電状態(SOC)情報は、駆動モータ5での走行距離、勾配情報は、走行負荷(バッテリ4の充電状態(SOC)の減少度合い)を予測するためである。
ステップS5では、車室音予測手段1aにて、取得した路面情報、バッテリ4の充電状態(SOC)および勾配情報から、路面粗さが粗い(車室音が高い)区間まで、エンジン2を始動しない状態での駆動モータ5による走行が可能か否かを判定する。
路面粗さが粗い(車室音が高い)区間まで、エンジン2を始動しない状態での駆動モータ5による走行が可能なときには、ステップS6へ進み、路面粗さが粗い(車室音が高い)区間まで、エンジン2を始動しない状態での駆動モータ5による走行が可能でないときには、ステップS1へ戻る。
ステップS6では、優先制御手段1bが、エンジン2を始動しない状態での駆動モータ5による走行を実施する。
ステップ7では、要求駆動力(ドライバによるアクセルペダルの踏込量)によるエンジン2の始動の閾値(ドライバによるアクセルペダルの踏込量の閾値)を高く設定する。
これにより、ドライバによるアクセルペダルのちょっとした踏込みに対するエンジン2の始動を防止することができる。
【0012】
ステップS8では、自車両の車速が、閾値(例えば、40km/h)以上か否か、要求駆動力(ドライバによるアクセルペダルの踏込量)はエンジン始動閾値(例えば、1/4開度)以上か否か、現在のバッテリ4の充電状態(SOC)が規定値である下限閾値以下か否か、現在の走行している区間は路面粗さが粗い(車室音が高い)区間(予測)か否かを判定する。
車速が閾値(例えば、40km/h)以上のとき、あるいは、要求駆動力(ドライバによるアクセルペダルの踏込量)がエンジン始動閾値(例えば、1/4開度)以上のとき、現在のバッテリ4の充電状態(SOC)が下限閾値以下のとき、現在の走行している区間は路面粗さが粗い(車室音が高い)区間(予測)のときのいずれか1つを満足すると、ステップS9へ進み、いずれも満足しないときには、ステップS6へ戻る。
なお、車速が閾値(例えば、40km/h)以上のときには風切り音等が増加し、要求駆動力(ドライバによるアクセルペダルの踏込量)がエンジン始動閾値(例えば、1/4開度)以上のときには、駆動力を増加するためにエンジン2の始動による発電が必要であり、現在のバッテリ4の充電状態(SOC)が下限閾値以下のときには、駆動モータ5による走行が不可能になるので、エンジン2の始動による発電が必要で、結果として車室音が高い区間になるためである。
ステップS9では、優先制御手段1bが、エンジン2を始動して、発電機3を駆動して発電し、バッテリ4の充電を開始する。
ステップS10では、バッテリ4の現在の充電状態(SOC)が上限閾値以下か否かを判定する。
バッテリ4の現在のSOCが上限閾値以下のときには、ステップS11へ進み、バッテリ4の現在の充電状態(SOC)が上限閾値以下でないときには、ステップS1へ戻る。
ステップS11では、現在の走行している区間は路面粗さが粗い(車室音が高い)区間(予測)か否かを判定する。
現在の走行している区間は路面粗さが粗い(車室音が高い)区間(予測)のときには、ステップS12へ進み、現在の走行している区間は路面粗さが粗い(車室音が高い)区間(予測)でないときには、ステップS1へ戻る。
ステップS12では、目的地に到着したか否かを判定する。
目的地に到着したときには、制御を終了し、目的地に到着していないときには、ステップS1へ戻る。
【0013】
図3は、実施例1の制御の処理実行時の一例を示す第1タイムチャートである。
【0014】
横軸は、時間であり、一番上が予測による路面状況、つぎに、実際の路面状況、車速、使用可能な範囲である上限閾値と下限閾値を有するバッテリ4の充電状態(SOC)、エンジン2の状態の変化を示している。
なお、バッテリ4の充電状態(SOC)、エンジン2の状態の変化は、実線は実施例1を、破線は比較例を示している。
【0015】
実施例1では、時刻t0から時刻t2までは、粗くない滑らかな(車室音が低い)路面の区間、時刻t2から時刻t4までは、粗い路面(車室音が高い)の区間、時刻t4から目的地に到着する時刻t7までは、粗くない滑らかな(車室音が低い)路面の区間と予測している。
なお、実際の路面状況は、予測の路面状況と一致している。
このため、実施例1では、優先制御手段1bは、時刻t2から始まる粗い路面(車室音が高い)の区間まで、エンジン2を始動しない状態での駆動モータ5による走行が可能と判断して(
図2のステップS5)、時刻t0から時刻t2まで、エンジン2を始動しない状態での駆動モータ5による走行を実行する(
図2のステップS6)。
時刻t2の少し前と時刻t4から時刻t5までは、自車両が減速し、回生によるバッテリ4への充電を行っているので、バッテリ4の充電状態(SOC)を増加させている。
このように、自車両の減速タイミングが、予測できる場合には、減速による回生充電を考慮して、エンジン2の停止タイミングを決定するようにしている。
これにより、エンジン2の始動している時間を短くできるので、ドライバが、静かな運転をより享受することができる。
時刻t2から時刻t4までは、粗い路面(車室音が高い)の区間なので、優先制御手段1bは、エンジン2を始動して、発電機3を駆動して発電し、バッテリ4の充電を実行する(
図2のステップS9)。
これにより、粗い路面の区間なので、車室音が高く、エンジン2を始動して、発電機3を駆動して発電し、バッテリ4の充電を実行しても、ドライバに対し、エンジン音が騒音となることを抑制することができる。
また、時刻t4までは、バッテリ4の充電状態(SOC)を上限閾値近くまで、充電することができ、次の粗くない滑らかな(車室音が低い)路面の区間でのエンジン2を始動しない状態での駆動モータ5による走行を可能としている。
時刻t4から目的地に到着する時刻t7までは、粗くない滑らかな(車室音が低い)路面の区間と予測しているので、エンジン2を始動しない状態での駆動モータ5による走行を実行する(
図2のステップS6)。
時刻t7で、目的地に到着するので、制御を終了する(
図2のステップS12)。
【0016】
これに対して、比較例では、粗くない滑らかな(車室音が低い)路面の区間であるにも拘らず、時刻t0から時刻t1の間、時刻t2から時刻t3の間および時刻t5から時刻t6の間では、自車両が加速を開始する(ドライバの操作によりアクセルペダルが大きく踏み込まれる)ため、エンジンを始動して、発電機3を駆動して発電し、バッテリ4の充電を実行する。
このため、粗くない滑らかな(車室音が低い)路面の区間であるにも拘らず、エンジンが始動されるため、ドライバに対し、エンジン音が騒音となってしまう。
【0017】
次に、作用効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車両の制御方法およびハイブリッド車両の制御装置にあっては、以下に列挙する作用効果を奏する。
【0018】
(1)車室音予測手段1aが、現在の走行経路の路面粗さが、車室音が高い粗い区間と車室音が低い粗くない(滑らか)区間を予測し、予測した車室音の高低に基づき、優先制御手段1bは、車室音が高い粗い区間の前の車室音が低い粗くない(滑らか)区間で、エンジン2が始動していない状態での駆動モータ5による走行を優先し、実行するようにした。
よって、車室音が低い道路において、エンジン2が始動していない状態での駆動モータ5による走行ができ、その後の車室音が高い区間において、エンジン2を始動して、発電機3を駆動して発電し、バッテリ4の充電を実行するので、エンジン始動時の騒音、振動等を、ドライバが、感じにくくなり、車室音が低い区間において、静かな運転を充分に享受することができる。
【0019】
(2)車室音予測手段1aが、ナビゲーションシステム8から現在地から目的地までの走行経路、さらに、ナビゲーションシステム8や載通信装置10を介して外部のデータセンタや他車両11から、現在の走行経路の路面情報(路面粗さ)を取得するようにした。
よって、車室音の高低の予測の精度を向上することができる。
【0020】
(3)車室音予測手段1aは、取得した現在の走行経路の路面情報(路面粗さ)から、路面が粗いと判断する閾値を設定し、現在の走行経路の路面粗さを、閾値に基づき、車室音が高い粗い区間と車室音が低い粗くない(滑らか)区間を予測するようにした。
よって、走行経路の路面情報に基づき、路面が粗いと判断する閾値を設定することにより、走行経路の状況に応じて、柔軟に、現在の走行経路の路面粗さが、車室音が高い粗い区間と車室音が低い粗くない(滑らか)区間を予測することができる。
【0021】
(4)ナビゲーションシステム8に現在地から目的地までの走行経路が設定されていない場合には、車室音予測手段1aは、現在の走行経路がナビゲーションシステム8や車載通信装置10を介して同じ走行経路を先行して走行している他車両11からの情報から、現在の走行経路が枝分かれのない区間であると判定した場合には、枝分かれするまでの走行経路において、路面が粗いと判断する閾値を設定し、現在の走行経路の路面粗さが、車室音が高い粗い区間と車室音が低い粗くない(滑らか)区間を予測するようにした。
よって、走行経路の路面情報に基づき、路面が粗いと判断する閾値を設定することにより、走行経路の状況に応じて、柔軟に、現在の走行経路の路面粗さが、車室音が高い粗い区間と車室音が低い粗くない(滑らか)区間を予測することができ、また、予測する機会を増やすことができるので、より、ドライバが、静かな運転を享受することができる。
【0022】
(5)自車両の減速タイミングが、予測できる場合には、減速による回生充電を考慮して、エンジン2の停止タイミングを決定するようにした。
よって、エンジン2の始動している時間を短くできるので、ドライバが、静かな運転をより享受することができる。
【0023】
図4は、実施例2の制御の処理の流れを示すフローチャートである。
すなわち、車室音予測手段1aと、優先制御手段1bを備えるシステムコントローラ1の制御の処理の流れを示している。
このフローチャートは、所定の演算周期で繰り返し実行される。
【0024】
実施例1とは異なり、ステップS8aで、車室音センサ12、自車両の上下動を検知する変位量センサ13、自車両の上下動を検知する加速度センサ14からの検知情報(センサ値)に基づいて、路面粗さが粗い(車室音が高い)区間を走行中か否かを判定するようにした。
特に、変位量センサ13(振動センサ)、加速度センサ14(振動センサ)からの検知情報(センサ値)により、実際の車両振動が大きくなりバッテリの充電状態(SOC)が下限閾値以下のときには、エンジンを始動して、発電機3を駆動して発電し、バッテリ4の充電を実行するようにした。
実際の車両振動が大きいので、エンジン始動時の騒音、振動等を、ドライバが、感じにくいので、ドライバが騒音として感じることを抑制できる。
その他の構成は実施例1と同じであるため、実施例1と共通するステップについては実施例1と同じ符号を付して、説明を省略する。
【0025】
図5は、実施例2の制御の処理実行時の一例を示すタイムチャートである。
【0026】
横軸は、時間であり、一番上が予測による路面状況、つぎに、車室音センサ12、変位量センサ13,加速度センサ14からの検知情報(センサ値)による実際の路面状況、車速、使用可能な範囲である上限閾値と下限閾値を有するバッテリ4の充電状態(SOC)、エンジン2の状態の変化を示している。
なお、バッテリ4の充電状態(SOC)、エンジン2の状態の変化は、実線は実施例2を、一点鎖線は実施例1を示している。
【0027】
時刻t1aにて、実施例1の予測による路面状況では、車室音が低い粗くない(滑らか)区間と予測しているが、車室音センサ12、変位量センサ13,加速度センサ14からの検知情報(センサ値)により実際には、車室音が高い粗い区間を走行しているので、実施例2では、優先制御手段1bが、時刻t1aにて、エンジン2を始動して、発電機3を駆動して発電し、バッテリ4の充電を実行する(
図4のステップS9)。
このように、予測が外れた場合でも、実際の状態を検知することにより、的確に制御することができる。
なお、予測が外れる場合としては、道路工事による騒音、路面の劣化、高速道路のつなぎ目、凹凸のある道路によるロードノイズ等が考えられる。
【0028】
次に、作用効果を説明する。
実施例2のハイブリッド車両の制御方法およびハイブリッド車両の制御装置にあっては、実施例1の作用効果に加え、以下に列挙する作用効果を奏する。
【0029】
(1)車室音センサ12、変位量センサ13,加速度センサ14を備え、車室音センサ12、変位量センサ13,加速度センサ14からの検知情報(センサ値)に基づいて、実際には、路面粗さが粗い(車室音が高い)区間を走行中か否かを判定するようにした。
よって、予測が外れた場合でも、実際の車室音等を検知することにより、的確に制御することができる。
【0030】
(2)変位量センサ13(振動センサ)、加速度センサ14(振動センサ)からの検知情報(センサ値)により、実際の車両振動が大きくなりバッテリの充電状態(SOC)が下限閾値以下のときには、エンジンを始動して、発電機3を駆動して発電し、バッテリ4の充電を実行するようにした。
よって、実際の車両振動が大きいので、エンジン始動時の騒音、振動等を、ドライバが、感じにくいので、ドライバが騒音として感じることを抑制できる。
【0031】
図6は、実施例3の制御の処理の流れを示すフローチャートである。
すなわち、車室音予測手段1aと、優先制御手段1bを備えるシステムコントローラ1の制御の処理の流れを示している。
このフローチャートは、所定の演算周期で繰り返し実行される。
【0032】
実施例1とは異なり、ステップS13とステップS14を追加している。
すなわち、ステップS13では、車室音センサ12、自車両の上下動を検知する変位量センサ13、自車両の上下動を検知する加速度センサ14からの検知情報(センサ値)により、路面粗さが粗い(車室音が高い)区間を走行中か否かを判定するようにした。
なお、振動センサとしての自車両の上下動を検知する変位量センサ13、振動センサとしての自車両の上下動を検知する加速度センサ14は、高速道路のつなぎ目、凹凸のある道路等による自車両の上下動を検知する。
路面粗さが粗い(車室音が高い)区間を走行中のときには、ステップS9に進み、路面粗さが粗い(車室音が高い)区間を走行中でないときには、ステップS14へ進む。
ステップS14では、不図示のタイマにより、一定時間以上、予測と検知情報(センサ値)が乖離しているか否かを判定する。
一定時間以上、予測とセンサ値が乖離しているときには、制御を終了し、一定時間以上、予測と検知情報(センサ値)が乖離していないときには、ステップS6へ戻る。
すなわち、予測した車室音高低区間が、一定時間以上、車室音センサ12、変位量センサ13,加速度センサ14による検知情報(センサ値)による車室音高低区間と乖離があると、予測の精度が悪いので、通常制御に戻すようにして、予測制御自体の精度を向上するようにした。
その他の構成は実施例1と同じであるため、実施例1と共通するステップについては実施例1と同じ符号を付して、説明を省略する。
【0033】
図7は、実施例3の制御の処理実行時の一例を示すタイムチャートである。
【0034】
横軸は、時間であり、一番上が予測による路面状況、つぎに、車室音センサ12等からの検知情報による実際の路面状況、車速、使用可能な範囲である上限閾値と下限閾値を有するバッテリ4の充電状態(SOC)、エンジン2の状態の変化を示している。
なお、バッテリ4の充電状態(SOC)、エンジン2の状態の変化は、実線は実施例3を、一点鎖線は実施例1を示している。
【0035】
時刻t2にて、実施例1の予測による路面状況では、車室音が高い粗い区間と予測しているが、車室音センサ12、変位量センサ13,加速度センサ14からの検知情報(センサ値)により実際には、車室音が低い粗くない(滑らか)区間を走行しているので、実施例3では、優先制御手段1bが、時刻t2から一定時間後の時刻t3まで、予測した車室音の高低区間と検知情報(センサ値)による車室音の高低区間が、乖離しているので、時刻t3で、予測制御を終了し、エンジン2の停止を実行する(
図6のステップS14)。
また、時刻t4にて、実施例1の予測による路面状況では、車室音が低い粗くない(滑らか)区間と予測しているが、車室音センサ12、変位量センサ13,加速度センサ14からの検知情報(センサ値)により実際には、車室音が高い粗い区間を走行しているので、実施例3では、優先制御手段1bが、時刻t4から一定時間後の時刻t5まで、予測した車室音の高低区間と検知情報(センサ値)による車室音の高低区間が、乖離しているので、時刻t5で、予測制御を終了し、エンジン2の始動を実行する(
図6のステップS14)。
このように、予測した車室音の高低区間と検知情報(センサ値)による車室音の高低区間が、乖離している、すなわち、予測が外れた場合でも、的確に制御することができる。
【0036】
次に、作用効果を説明する。
実施例3のハイブリッド車両の制御方法およびハイブリッド車両の制御装置にあっては、実施例1の作用効果に加え、以下に列挙する作用効果を奏する。
(1)車室音センサ12、変位量センサ13,加速度センサ14を備え、車室音センサ12、変位量センサ13,加速度センサ14からの検知情報(センサ値)に基づいて、一定時間、予測した車室音の高低区間と検知情報(センサ値)による車室音の高低区間が、乖離しているときには、予測制御を終了するようにした。
よって、予測が外れた場合でも、実際の車室音、自車両の上下動を検知することにより、的確に制御することができる。
【0037】
[他の実施例]
以上、本発明を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は実施例に示した構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、実施例では、シリーズハイブリッド車両で説明したが、その他のタイプのハイブリッド車両にも適用できることは言うまでもない。
また、手動運転車両でも自動運転車両でも、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 システムコントローラ(ハイブリッド車両の制御装置)
1a 車室音予測手段
1b 優先制御手段
2 エンジン
3 発電機
4 バッテリ
5 駆動モータ
8 ナビゲーションシステム
12 車室音センサ
13 変位量センサ(振動センサ)
14 加速度センサ(振動センサ)