(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20230105BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230105BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/38 120
H02J3/32
(21)【出願番号】P 2018185402
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】藤本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
(72)【発明者】
【氏名】西田 竜太
(72)【発明者】
【氏名】門脇 昌作
(72)【発明者】
【氏名】村上 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 晋太朗
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-262457(JP,A)
【文献】特開2003-324850(JP,A)
【文献】特開2005-261056(JP,A)
【文献】特開2006-166608(JP,A)
【文献】特開2017-163780(JP,A)
【文献】特開2018-129939(JP,A)
【文献】国際公開第2017/098631(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の事業者の一の施設に設けられ、当該事業者の他の施設から再生可能エネルギーに由来する電力の自己託送が可能な電力供給システムであって、
再生可能エネルギーに基づいて電力を発電可能な発電部と、
前記発電部により得られた電力を充放電可能な蓄電池と、
前記一の施設の電力需要に対して前記他の施設から電力の自己託送を行う際に、前記蓄電池からの放電電力も併せて前記電力需要に供給させる制御装置と、
を具備する電力供給システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記発電部からの発電電力、前記蓄電池からの放電電力、及び前記他の施設から自己託送される電力で前記電力需要を賄うことができない場合、他社の再生可能エネルギーに由来する電力を購入して前記電力需要へと供給させる、
請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記発電部からの発電電力、及び前記蓄電池からの放電電力で前記電力需要を賄うことができる場合、前記自己託送を行わせない、
請求項1又は請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記発電部からの発電電力で前記電力需要を賄うことができる場合、前記蓄電池の放電を行わせない、
請求項3に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記発電部からの発電電力が前記電力需要に対して余剰する場合、当該余剰する電力を前記蓄電池に充電させる、
請求項4に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記制御装置は、
少なくとも前記電力需要の予測値及び前記発電部からの発電電力の予測値に基づいて、前記他の施設から自己託送される電力を予め計画する、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記電力需要の予測値から、前記発電部からの発電電力の予測値及び前記蓄電池から放電する予定の放電電力を差し引いた値を、前記他の施設から自己託送される電力として計画する、
請求項6に記載の電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力需要に対して適宜電力を供給可能な電力供給システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自家用発電設備を設置する事業者が、当該自家用発電設備を用いて発電した電気を一般電気事業者が運用する送配電ネットワークを介して、当該事業者の別の場所にある工場等に送電する「自己託送」に関する技術が公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
このような自己託送を行う場合、事業者は、自己託送の計画(自己託送する電力量(自己託送量))を一般電気事業者に事前に申告し、当該計画に従って自己託送を行う必要がある。もし計画と実績(実際の自己託送量)に差(インバランス)が生じた場合には、ペナルティ(事後的な料金精算)が課せられる。
【0004】
実際の電力需要は予想(計画)通りにならない場合があるため、例えば電力需要が計画していた自己託送量を超過した場合、当該超過分については一般電気事業者から電力を購入することになり、当該購入した電力についてペナルティが課される。
【0005】
また、RE100(事業運営を100%再生可能エネルギーで調達すること)を達成するために、上記自己託送を活用する場合も想定されるが、上述のように一般電気事業者から例えば化石燃料由来の電力を購入することになった場合、当該RE100の達成が困難になるおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、一般電気事業者からの電力の購入を極力回避することが可能な電力供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、所定の事業者の一の施設に設けられ、当該事業者の他の施設から再生可能エネルギーに由来する電力の自己託送が可能な電力供給システムであって、再生可能エネルギーに基づいて電力を発電可能な発電部と、前記発電部により得られた電力を充放電可能な蓄電池と、前記一の施設の電力需要に対して前記他の施設から電力の自己託送を行う際に、前記蓄電池からの放電電力も併せて前記電力需要に供給させる制御装置と、を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、前記制御装置は、前記発電部からの発電電力、前記蓄電池からの放電電力、及び前記他の施設から自己託送される電力で前記電力需要を賄うことができない場合、他社の再生可能エネルギーに由来する電力を購入して前記電力需要へと供給させるものである。
【0011】
請求項3においては、前記制御装置は、前記発電部からの発電電力、及び前記蓄電池からの放電電力で前記電力需要を賄うことができる場合、前記自己託送を行わせないものである。
【0012】
請求項4においては、前記制御装置は、前記発電部からの発電電力で前記電力需要を賄うことができる場合、前記蓄電池の放電を行わせないものである。
【0013】
請求項5においては、前記制御装置は、前記発電部からの発電電力が前記電力需要に対して余剰する場合、当該余剰する電力を前記蓄電池に充電させるものである。
【0014】
請求項6においては、前記制御装置は、少なくとも前記電力需要の予測値及び前記発電部からの発電電力の予測値に基づいて、前記他の施設から自己託送される電力を予め計画するものである。
【0015】
請求項7においては、前記制御装置は、前記電力需要の予測値から、前記発電部からの発電電力の予測値及び前記蓄電池から放電する予定の放電電力を差し引いた値を、前記他の施設から自己託送される電力として計画するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、一般電気事業者からの電力の購入を極力回避することができる。
【0018】
請求項2においては、再生可能エネルギー由来の電力の利用を促すことができる。
【0019】
請求項3においては、効率的に電力を使用することができる。
【0020】
請求項4においては、蓄電池に充電された電力を節約することができる。
【0021】
請求項5においては、再生可能エネルギー由来の電力の利用を促すことができる。
【0022】
請求項6においては、適切な自己託送量を計画することができる。
【0023】
請求項7においては、一般電気事業者からの電力の購入を極力回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電力供給システムの構成を示した模式図。
【
図2】電力供給システムの制御態様を示したフローチャート。
【
図3】本実施形態に係る制御を行った結果の一例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、
図1を用いて、本発明の一実施形態に係る電力供給システム1の構成について説明する。
【0026】
本実施形態に係る電力供給システム1は、所定の事業者(以下、「当該事業者」とも称する)の施設(工場等)に設けられ、当該施設における電力需要へと電力を適宜供給するためのものである。特に本実施形態に係る電力供給システム1は、当該事業者の他の施設において発電された再生可能エネルギー由来の電力の供給を受ける、いわゆる「自己託送」が可能なものである。
【0027】
本実施形態では、電力供給システム1が設けられる当該事業者の施設を電力消費施設Aと称する。また、当該事業者の他の施設(電力消費施設Aへと供給する電力を発電可能な施設)を電力供給施設Bと称する。なお本実施形態では、主に電力供給施設Bから供給される電力を電力消費施設Aが使用する場合を想定しているため、上記名称(「電力消費施設A」及び「電力供給施設B」)を用いているが、電力消費施設Aから電力供給施設Bへと電力を供給する(自己託送する)ことも可能である。
【0028】
電力供給システム1は、主として太陽光発電部(PV)11、蓄電池12、パワコン13及びEMS14を具備する。
【0029】
太陽光発電部11は、太陽光を利用して発電する装置である。太陽光発電部11は、太陽電池パネル等により構成される。太陽光発電部11は、例えば、工場の屋根の上等の日当たりの良い場所に設置される。太陽光発電部11により得られる電力は、再生可能エネルギー(RE)である太陽光に由来するものである。
【0030】
蓄電池12は、電力を充放電可能に構成されるものである。蓄電池12は、例えば、リチウムイオン電池により構成される。
【0031】
パワコン13は、電力を適宜変換可能なもの(パワーコンディショナ)である。パワコン13は、太陽光発電部11、蓄電池12、及び系統電源Kにそれぞれ接続される。
【0032】
系統電源Kは、一般電気事業者(電力会社)が保有する商用の配電線網との電力のやり取りを可能とするものである。本実施形態の電力供給システム1(電力消費施設A)は、系統電源Kを介して自社RE、他社RE及び一般電力の供給を受けることができる。
【0033】
自社REとは、当該事業者の他の施設(本実施形態では、電力供給施設B)で得られた再生可能エネルギーに由来する電力である。自社REは、電力供給施設Bに設けられた、太陽光や風力等の再生可能エネルギーから電力を得るための適宜の発電設備によって得ることができる。
【0034】
他社REとは、当該事業者とは異なる事業者(他社)の施設で得られた再生可能エネルギーに由来する電力である。
【0035】
一般電力とは、電力会社が供給する電力である。特に本実施形態では、一般電力とは再生可能エネルギー以外のエネルギー(例えば、石油、石炭、天然ガス等の化石燃料エネルギー)を含めたエネルギー源から得られた電力を指す。
【0036】
電力供給システム1が系統電源Kを介してどの電力(自社RE、他社RE及び一般電力のいずれか)の供給を受けるかは、例えば当該事業者と電力会社とを仲介する事業者(アグリゲータ)によって調整することが可能である。
【0037】
EMS14は、電力供給システム1の動作を管理するエネルギーマネジメントシステム(Energy Management System)である。EMS14は、CPU等の演算処理部、RAMやROM等の記憶部や、タッチパネル等の入出力部等を具備する。EMS14の記憶部には、電力供給システム1の動作を制御する際に用いられる種々の情報やプログラム等が予め記憶される。EMS14の演算処理部は、前記プログラムを実行して前記種々の情報を用いた所定の演算処理等を行うことで、電力供給システム1を動作させることができる。
【0038】
EMS14は、パワコン13と電気的に接続される。EMS14は、所定の信号をパワコン13に送信し、各部の動作を制御することができる。例えばEMS14は、太陽光発電部11、蓄電池12及び系統電源Kからの電力を、電力消費施設Aで生じる電力需要Hに対して供給させることができる。またEMS14は、太陽光発電部11からの電力を蓄電池12に充電させたり、自己託送によって他の施設(例えば、電力供給施設B)へと送電させたりすることができる。またEMS14は、必要に応じて太陽光発電部11からの電力を逆潮流させることもできる。また、EMS14は、パワコン13から所定の信号が入力可能に構成され、パワコン13が有する各種の情報を取得することができる。またEMS14は、図示せぬ各種センサを用いて、太陽光発電部11の発電電力、蓄電池12の充電量、電力需要H等を検出することができる。
【0039】
本実施形態に係る電力供給システム1は、当該事業者の電力消費施設Aにおける事業運営を100%再生可能エネルギーで行うこと(RE100を達成すること)を目的として、電力の供給を適宜制御する。
【0040】
再生可能エネルギー由来の電力を供給可能な電源としては、電力消費施設Aに設置された太陽光発電部11(オンサイト電源)、当該太陽光発電部11で発電された電力を蓄電した蓄電池12、再生可能エネルギー由来の電力を得ることができる電力供給施設Bからの自己託送(オフサイト電源(自社RE))、再生可能エネルギー由来の電力を得ることができる他社からの購入(他社RE)がある。
【0041】
このうち、他社からの購入では、電力コストが高くなるおそれがあることや、100%再生可能エネルギーであることの保証が難しいことなどが懸念される。従って、電力消費施設Aの電力需要Hは、基本的には太陽光発電部11(オンサイト電源)、蓄電池12及び自社RE(オフサイト電源)のみで賄うことが望ましい。また、やむなく電力を他社から購入する場合には、当該購入電力を最小限に抑えることが望ましい。
【0042】
以下では、上述の観点に基づいて実行される電力供給システム1の制御態様について、
図2を用いて具体的に説明する。なお、
図2には図示していないが、太陽光発電部11で発電された電力は、電力需要Hが生じていれば、パワコン13を介して当該電力需要Hへと供給される。
【0043】
ステップS101において、EMS14は、電力消費施設A内の電力需要Hが、当該電力消費施設A内の発電電力(すなわち、太陽光発電部11による発電電力)で賄えるか否かを判定する。具体的には、EMS14は、電力需要Hが太陽光発電部11の発電電力(オンサイト発電電力)以下か否かを判定する。電力需要Hが太陽光発電部11の発電電力以下であれば、当該太陽光発電部11からの発電電力だけで電力需要Hを賄うことができる。
【0044】
EMS14は、電力需要Hが太陽光発電部11の発電電力以下である場合、ステップS102に移行する。
またEMS14は、電力需要Hが太陽光発電部11の発電電力より大きい場合、ステップS105に移行する。
【0045】
ステップS102において、EMS14は、蓄電池12が満蓄(満充電)であるか否かを判定する。
EMS14は、蓄電池12が満蓄であると判定した場合、ステップS104に移行する。
またEMS14は、蓄電池12が満蓄ではないと判定した場合、ステップS103に移行する。
【0046】
ステップS103において、EMS14は、太陽光発電部11の発電電力のうち、電力需要Hに対して余剰した電力(余剰電力)を蓄電池12に充電させる。EMS14は、ステップS103の処理を行った後、本制御を終了する。
【0047】
ステップS104において、EMS14は、余剰電力を自己託送によって他の施設(例えば、電力供給施設B)へと送電する。又は、EMS14は、太陽光発電部11の出力を絞って、余剰電力が系統電源Kへと逆潮流するのを防止することも可能である。EMS14は、ステップS104の処理を行った後、本制御を終了する。
【0048】
このようにEMS14は、電力需要Hが太陽光発電部11による発電電力で賄える場合(ステップS101でYES)、余剰電力を蓄電池12に充電させる(ステップS103)。また蓄電池12が満蓄であれば(ステップS102でYES)、余剰電力を自己託送させる等する(ステップS104)。このようにして、電力需要Hを再生可能エネルギー由来の電力で賄うと共に、当該再生可能エネルギー由来の電力を蓄電池12に蓄えておくことができる。
【0049】
ステップS101から移行したステップS105において、EMS14は、蓄電池12の残量(充電量)が所定の閾値(例えば、30%)を超えているか否かを判定する。当該閾値は、後述する自己託送を行う際の放電の備えや、停電などの非常時の備えとして、蓄電池12に蓄えておくべき電力量に基づいて定められる。
【0050】
EMS14は、蓄電池12の残量が所定の閾値を超えていると判定した場合、ステップS106に移行する。
またEMS14は、蓄電池12の残量が所定の閾値以下であると判定した場合、ステップS108に移行する。
【0051】
ステップS106において、EMS14は、電力需要Hが、太陽光発電部11による発電電力及び蓄電池12の放電電力で賄えるか否かを判定する。具体的には、EMS14は、蓄電池12の放電能力(最大放電電力)が、電力需要Hと太陽光発電部11による発電電力の差を超えているか否かを判定する。蓄電池12の放電能力が、当該差を超えていれば、太陽光発電部11及び蓄電池12の電力で電力需要Hを賄うことができる。
【0052】
EMS14は、蓄電池12の放電能力が当該差を超えていると判定した場合、ステップS107に移行する。
またEMS14は、蓄電池12の放電能力が当該差以下であると判定した場合、ステップS108に移行する。
【0053】
ステップS107において、EMS14は、蓄電池12から電力を放電させる。この際、蓄電池12は、電力需要H(より詳細には、太陽光発電部11の発電電力では賄いきれない分の電力需要H)に応じた負荷追従運転により放電を行う。EMS14は、ステップS107の処理を行った後、本制御を終了する。
【0054】
このようにEMS14は、電力需要Hを太陽光発電部11及び蓄電池12からの電力で賄うことで(ステップS107)、電力需要Hを再生可能エネルギー由来の電力で賄うことができる。なお、本実施形態では、蓄電池12には、太陽光発電部11からの電力(すなわち、再生可能エネルギー由来の電力)のみが充電されることを想定している(ステップS103)。
【0055】
ステップS105又はステップS106から移行したステップS108において、EMS14は、自社REの自己託送を行うと共に、蓄電池12から電力を放電させる。すなわちEMS14は、太陽光発電部11からの電力に加えて、自社REと蓄電池12からの電力によって、電力需要Hを賄う。
【0056】
この際、EMS14は、自己託送量(自己託送により電力需要Hへと供給される電力量)を、電力需要Hと太陽光発電部11による発電量との差よりも小さく設定する。これによって、太陽光発電部11からの電力と自己託送量だけでは電力需要Hを賄うことができず、不足分が蓄電池12から放電されることになる。例えばEMS14は、自己託送量を、電力需要Hと太陽光発電部11による発電量との差よりも1kWだけ小さく設定し、不足分(1kW)を蓄電池12からの放電で賄う。なお、この場合も蓄電池12は負荷追従運転により放電を行う。すなわちこの場合の蓄電池12の放電電力は、電力需要Hから、発電電力と自己託送量の和を差し引いた値となる。
【0057】
上述の自己託送量の設定方法としては、予め予測された電力需要Hと太陽光発電部11の発電量の値に基づいて事前に設定する方法や、現時点(リアルタイム)での電力需要Hと太陽光発電部11の発電量に基づいて設定する方法等が考えられる。
【0058】
例えばEMS14は、ある日(当日)の自己託送量を設定する場合、当日予測される電力需要Hや太陽光発電部11の発電量等に基づいて、当該自己託送量を事前に(例えば前日までに)計画(設定)することができる。電力需要Hや太陽光発電部11の発電量等の予測は、任意の方法(過去データの学習等)により行うことができる。
【0059】
具体的には、EMS14は、予測される電力需要Hから太陽光発電部11の発電量を差し引いた値を自己託送量として設定すれば、電力需要Hに対して太陽光発電部11の発電量では不足する電力を、自己託送により供給することができる。
【0060】
しかし、特に本実施形態では、自己託送を行うと同時に蓄電池12を放電させるために、自己託送量として、電力需要Hの予測値から、太陽光発電部11の発電電力の予測値及び蓄電池12から放電する予定の放電電力(例えば、上述のように1kW)を差し引いた値が設定される。なお、当該蓄電池12から放電する予定の放電電力は、任意に設定することが可能であるが、電力需要Hの変動を十分吸収できる程度の値とされることが好ましい。
【0061】
このように、自己託送を行う際に、あえて蓄電池12も放電させることで、インバランスの発生を抑制することができる。すなわち、電力需要Hが変動(特に、増加)しても、当該変動分の電力を蓄電池12からの電力で賄うことができるため、一般電力を購入する事態の発生を防止することができる。また一般電力を購入しないため、RE100を達成し易くすることができる。
【0062】
EMS14は、ステップS108の処理を行った後、ステップS109に移行する。
【0063】
ステップS109において、EMS14は、自己託送を行うことで電力需要Hを賄うことができるか否かを判定する。具体的には、EMS14は、設定された自己託送量が、電力需要Hから太陽光発電部11による発電電力と蓄電池12の放電電力を差し引いた値を超えているか否かを判定する。設定された自己託送量が、当該値を超えていない(当該値以下である)場合、自己託送を行っても電力需要Hを賄うことができない。
【0064】
EMS14は、設定された自己託送量が当該値以下であると判定した場合、ステップS110に移行する。
またEMS14は、設定された自己託送量が当該値を越えていると判定した場合、本制御を終了する。
【0065】
ステップS110において、EMS14は、他社REを購入する。すなわちEMS14は、電力需要Hを、太陽光発電部11(オンサイト電源)、蓄電池12及び自社RE(オフサイト電源)のみで賄うことが難しい場合、不足分を他社REで補う。このように、電力需要Hを太陽光発電部11等の電力では賄えない場合であっても、再生可能エネルギー由来の電力を購入することで、RE100を達成し易くすることができる。EMS14は、ステップS110の処理を行った後、本制御を終了する。
【0066】
EMS14は、上述の制御(
図2参照)を繰り返し行うことで、電力需要Hを再生可能エネルギー由来の電力で賄うことができる。
【0067】
以下では、
図2及び
図3を用いて、上述の制御(
図2参照)を実行した場合の一例について説明する。
図3には、ある一日において上記制御(
図2参照)を行った結果の一例を示している。
【0068】
図3の例では、0時の時点で蓄電池12に電力が蓄えられていない場合を想定している。また電力供給施設Bにおいても再生可能エネルギー由来の電力(自社RE)を得られていない場合を想定している。
【0069】
0時から5時までは、太陽光発電電力(PV)及び蓄電池12の残量は無く(ステップS101でNO、かつステップS105でNO)、また自社REの自己託送もできないため(ステップS109でNO)、電力需要Hに対して他社REを購入して電力を供給している(ステップS110)。
【0070】
6時以降、太陽光発電電力(PV)が得られると、当該太陽光発電電力が電力需要Hへと供給される。7時から9時まで、及び12時においては、太陽光発電電力が電力需要Hに対して余剰するため(ステップS101でYES)、当該余剰電力が蓄電池12に充電されている(ステップS103)。
【0071】
14時においては、太陽光発電電力(PV)が電力需要Hに対して不足するため(ステップS101でNO)、蓄電池12からの放電電力によって当該不足分が補われる(ステップS107)。
【0072】
16時以降、太陽光発電電力(PV)が電力需要Hに対して不足し(ステップS101でNO)、かつ蓄電池12の残量や放電能力が少ないため(ステップS105又はステップS106でNO)、自己託送により自社REが電力需要Hに対して供給される(ステップS108)。なお、当該自社REは、昼間の太陽光や風力等を利用して得られた電力である。この際、自己託送量は若干小さく設定され、不足分が蓄電池12からの放電電力で賄われる。これによって、電力需要Hの変動等に伴う自己託送量の超過や不足を、蓄電池12からの電力で吸収する(蓄電池12の放電量の増減で打ち消す)ことができ、インバランスの発生(ひいてはペナルティの発生)を抑制することができる。
【0073】
このように本実施形態の制御によって、電力需要Hを再生可能エネルギー由来の電力だけで賄うことができ、RE100の達成が可能となる。
【0074】
以上の如く、本実施形態に係る電力供給システム1は、
所定の事業者の電力消費施設A(一の施設)に設けられ、当該事業者の電力供給施設B(他の施設)から再生可能エネルギーに由来する電力の自己託送が可能な電力供給システム1であって、
再生可能エネルギーに基づいて電力を発電可能な太陽光発電部11(発電部)と、
前記太陽光発電部11により得られた電力を充放電可能な蓄電池12と、
前記電力消費施設Aの電力需要Hに対して前記電力供給施設Bから電力の自己託送を行う際に、前記蓄電池12からの放電電力も併せて前記電力需要Hに供給させるEMS14(制御装置)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、一般電気事業者(電力会社)からの電力の購入を極力回避することができる。すなわち、電力需要Hの変動等に伴う自己託送量の超過や不足を、蓄電池12からの電力で吸収することができる。これによって、電力会社からの電力の購入を極力回避することができ、ひいてはインバランスの発生を抑制することができる。
【0075】
また、前記EMS14は、
前記太陽光発電部11からの発電電力、前記蓄電池12からの放電電力、及び前記電力供給施設Bから自己託送される電力で前記電力需要Hを賄うことができない場合、他社の再生可能エネルギーに由来する電力(他社RE)を購入して前記電力需要Hへと供給させるものである。
このように構成することにより、再生可能エネルギー由来の電力の利用を促すことができる。すなわち、自社REで電力需要Hを賄うことができない場合であっても、他社REを購入することで、再生可能エネルギー由来の電力の利用を促すことができる。これによって、RE100を達成し易くすることができる。
【0076】
また、前記EMS14は、
前記太陽光発電部11からの発電電力、及び前記蓄電池12からの放電電力で前記電力需要Hを賄うことができる場合、前記自己託送を行わせないものである。
このように構成することにより、効率的に電力を使用することができる。すなわち、電力消費施設A内の電力で電力需要Hを賄うことで、自己託送による送電ロスや自己託送料の削減を図ることができる。
【0077】
また、前記EMS14は、
前記太陽光発電部11からの発電電力で前記電力需要Hを賄うことができる場合、前記蓄電池12の放電を行わせないものである。
このように構成することにより、蓄電池12に充電された電力を節約することができる。これによって、自己託送や非常時のための蓄電池12の残量を確保し易くすることができる。
【0078】
また、前記EMS14は、
前記太陽光発電部11からの発電電力が前記電力需要Hに対して余剰する場合、当該余剰する電力を前記蓄電池12に充電させるものである。
このように構成することにより、再生可能エネルギー由来の電力の利用を促すことができる。すなわち、太陽光発電電力(再生可能エネルギー由来の電力、自社RE)を蓄電池12に蓄えて、当該自社REの利用を促すことができる。
【0079】
また、前記EMS14は、
少なくとも前記電力需要Hの予測値及び前記太陽光発電部11からの発電電力の予測値に基づいて、前記電力供給施設Bから自己託送される電力を予め計画するものである。
このように構成することにより、適切な自己託送量を計画することができる。すなわち、電力需要Hと太陽光発電部11の発電電力に基づいて必要な(不足する)電力を把握することができ、当該不足分を自己託送量として設定することで、電力需要Hを適切に賄うことができる。
【0080】
また、前記EMS14は、
前記電力需要Hの予測値から、前記太陽光発電部11からの発電電力の予測値及び前記蓄電池12から放電する予定の放電電力を差し引いた値を、前記電力供給施設Bから自己託送される電力として計画するものである。
このように構成することにより、一般電気事業者(電力会社)からの電力の購入を極力回避することができる。すなわち、蓄電池12を放電させることを前提とした自己託送量を設定することができる。これにより、電力需要Hの変動等に伴う自己託送量の超過や不足を、蓄電池12からの電力で吸収することができる。
【0081】
なお、本実施形態に係る電力消費施設Aは、本発明に係る一の施設の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る電力供給施設Bは、本発明に係る他の施設の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る太陽光発電部11は、本発明に係る発電部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るEMS14は、本発明に係る制御装置の実施の一形態である。
【0082】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0083】
例えば、電力供給システム1は、再生可能エネルギーに基づいて発電可能な太陽光発電部11を具備するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、その他種々の再生可能エネルギーに基づいて発電可能な発電部(例えば、風力発電部等)を具備するものであってもよい。
【0084】
また、本実施形態では、説明の便宜上、主に電力供給施設Bから電力消費施設Aへと自己託送により電力を供給する例を挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、電力消費施設Aから他の施設へと自己託送により電力を供給することも当然可能である。
【0085】
また、本実施形態では、電力供給システム1はRE100を達成することを目的として電力の供給を制御するものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、必ずしもRE100の達成を目的としなくてもよい。例えば、単にインバランスの抑制を目的として電力供給システム1を利用することも可能である。
【0086】
また、本実施形態では、EMS14が電力供給システム1の各部の動作を適宜制御するものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、制御の主体は任意に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 電力供給システム
11 太陽光発電部
12 蓄電池
13 パワコン
14 EMS