(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置およびヘルメット
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20230105BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
(21)【出願番号】P 2018238267
(22)【出願日】2018-12-20
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591182112
【氏名又は名称】NSウエスト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390005429
【氏名又は名称】株式会社SHOEI
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(72)【発明者】
【氏名】平松 将紀
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 航
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-003962(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129568(WO,A1)
【文献】特開2000-284214(JP,A)
【文献】特開2017-116625(JP,A)
【文献】特開平03-225317(JP,A)
【文献】特開2018-124486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00-30/60
H04N 5/64-5/655
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメットに搭載されるヘッドアップディスプレイ装置であって、
表示光を
生成して投射する
投射モジュールと、
前記投射モジュールから投射された表示光を、前記ヘルメットの前部に設けられた窓開口の開口面に沿う所定の方向における一方側から受け、前記ヘルメットを着用したユーザが視認可能な方向に向けて反射するコンバイナと、
前記コンバイナを、前記ヘルメットを着用したユーザの眼前に位置させるように支持する支持機構と、を備え、
前記投射モジュールと前記コンバイナとは、互いに分離して別個に配置され、
前記支持機構は、前記コンバイナの位置を、前記所定の方向におけるスライド移動を以て、
前記投射モジュールに対して変化させると共に、ユーザにより異なる視線位置に合わせて調整可能に構成される
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたヘッドアップディスプレイ装置において、
前記投射モジュールは、前記表示光を出射する光出射器と、該光出射器から出射された前記表示光を前記コンバイナに向けて反射するミラーと、を備え、
前記光出射器と前記ミラーとは、互いに分離して別個に配置される
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載されたヘッドアップディスプレイ装置において、
前記所定の方向は、前記ヘルメットの上下方向である
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
請求項1
~3のいずれか1項に記載されたヘッドアップディスプレイ装置において、
前記支持機構は、前記コンバイナに向かう表示光の光軸に沿う方向において前記コンバイナの位置を調整可能に構成されている
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載されたヘッドアップディスプレイ装置において、
前記支持機構は、前記コンバイナに取り付けられたステーと、該ステーを長手方向において前記所定の方向に沿う姿勢とした状態でスライド可能に保持する保持部品とを備える
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載されたヘッドアップディスプレイ装置において、
前記支持機構は、前記コンバイナを回転可能に支持する枢支部を備える
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項7】
ヘッドアップディスプレイ装置が搭載されたヘルメットであって、
前記ヘッドアップディスプレイ装置は、
表示光を
生成して投射する
投射モジュールと、
前記投射モジュールから投射された表示光を、当該ヘルメットの前部に設けられた窓開口の開口面に沿う所定の方向における一方側から受け、当該ヘルメットを着用したユーザが視認可能な方向に向けて反射するコンバイナと、
前記コンバイナを、当該ヘルメットを着用したユーザの眼前に位置させるように支持する支持機構と、を備え、
前記投射モジュールと前記コンバイナとは、互いに分離して別個に配置され、
前記支持機構は、前記コンバイナの位置を、前記所定の方向におけるスライド移動を以て、
前記投射モジュールに対して変化させると共に、ユーザにより異なる視線位置に合わせて調整可能に構成される
ことを特徴とするヘルメット。
【請求項8】
請求項7に記載されたヘルメットにおいて、
前記投射モジュールは、ヘルメット本体の顎部に内蔵され、
前記支持機構は、前記コンバイナに取り付けられたステーと、該ステーを長手方向においてヘルメット本体の上下方向に沿う姿勢とした状態で保持する保持部品と、を備え、
前記保持部品は、ヘルメット本体の額部に内蔵される
ことを特徴とするヘルメット。
【請求項9】
請求項
7に記載されたヘルメットにおいて、
前記支持機構は、前記コンバイナに取り付けられたステーと、該ステーを長手方向において前記所定の方向に沿う姿勢とした状態でスライド可能に保持する保持部品と、を備え、
前記ステ
ーには、前記コンバイナを回転可能に支持する枢支部が設けられる
ことを特徴とするヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘルメットに搭載されるヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップディスプレイ装置が搭載されたヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動二輪車を運転する際に着用されるヘルメットにヘッドアップディスプレイ(Head Up Display)装置(以下「HUD装置」と称する)を搭載することにより、当該ヘルメットを着用したユーザ(運転者)に対し、車速などの車両情報、ナビゲーションシステムによる地図情報、警告情報といった各種情報を虚像として視界前方に視認させるようにして、車両運転時の利便性や安全性を高めることが知られている。
【0003】
ヘルメットに搭載されるHUD装置は、表示する情報に応じた表示光を投射する投射モジュールと、投射モジュールによって投射された表示光をヘルメットの着用者であるユーザの眼に向けて反射するコンバイナとを備える。コンバイナは、ハーフミラーからなり、ヘルメットの前部に設けられた窓開口内でユーザの前方視界に入る位置に配置され、ユーザの前方からの光を透過させる。したがって、ユーザは、コンバイナ越しに風景と重畳した状態で表示光による虚像(表示像)を視認できる。このようなHUD装置の一例は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ヘルメットを着用した状態での窓開口に対するユーザの視線位置には個人差がある。上述したHUD装置では、コンバイナの位置がヘルメットに対して固定されているため、ユーザによってはコンバイナの位置が視線位置に合わず、コンバイナで反射された表示光がユーザの前方視界から外れる方向へ進行してしまい、表示像が一部欠けたり全く視認できなかったり、運転支援に最適な位置で視認できなかったりする事態に陥る。このため、ユーザに対し、ヘルメット着用時における視線位置の個人差に拘わらず、コンバイナを介した表示像を所望の位置で良好に視認させられるようにすることが求められる。
【0006】
そこで、コンバイナの角度を回動動作により調整可能とする機構を組み込み、ユーザの視線位置に合わせてコンバイナの角度を調整できるようにすることが考えられる。しかしながら、ヘルメットの前部には窓開口を開閉し得るシールドが設けられているため、コンバイナの回動範囲がシールドとの当接により制限される。コンバイナの回動範囲を広げるためには、シールドを前方に迫り出させて閉状態のシールド内にコンバイナの回動動作に必要なスペースを確保する必要がある。そうすると、ヘルメットの見た目が大きくなって意匠性を損なってしまう。
【0007】
本開示の技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、省スペースな構成を以て、ユーザに対し、ヘルメット着用時における視線位置の個人差に拘わらず、コンバイナを介した表示像を所望の位置で良好に視認させられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本開示の技術では、コンバイナの位置をヘルメットの前部に設けられた窓開口の開口面に沿う所定の方向においてスライド調整可能にした。
【0009】
具体的には、本開示の技術は、ヘルメットに搭載されるHUD装置を対象とする。
【0010】
本開示の技術に係るHUD装置は、表示光を出射する光出射器と、光出射器から出射された表示光を、ヘルメットの前部に設けられた窓開口の開口面に沿う所定の方向における一方側から受け、ヘルメットを着用したユーザが視認可能な方向に向けて反射するコンバイナと、コンバイナを、ヘルメットを着用したユーザの眼前に位置させるように支持し、当該コンバイナの位置を上記所定の方向におけるスライド移動を以て調整可能に構成された支持機構とを備える。ここでいう「窓開口の開口面」とは、窓開口の周縁によって囲まれた仮想面であって、平面でもよく、曲面でも構わない。
【0011】
この構成によると、コンバイナを、表示光が投射される所定の方向においてコンバイナの位置調整が可能な支持機構により支持するようにしたので、ヘルメットを着用したユーザの視線位置に合わせてコンバイナの位置を調整することができる。また、コンバイナの位置調整は、所定の方向へのスライド移動によるため、コンバイナの角度を回動動作により調整可能とするだけの場合のように閉状態のシールド内に比較的広いスペースを必要とせず、コンバイナの位置を調整可能な構成が省スペースに実現できる。したがって、省スペースな構成を以て、ユーザに対し、ヘルメット着用時における視線位置の個人差に拘わらず、コンバイナを介した表示像を所望の位置で良好に視認させることができる。
【0012】
コンバイナの位置調整が可能な所定の方向は、ヘルメットの上下方向であることが好ましい。ここでいう「ヘルメットの上下方向」とは、当該ヘルメットを着用したユーザの顔の上下に相当する方向を意味する。
【0013】
ヘルメットの窓開口に対するユーザの視線位置のばらつきは、ユーザの視線高さの個人差によるところが大きい。上記の構成によると、コンバイナの位置をヘルメットの上下方向において調整可能としているので、ヘルメットを着用したユーザの視線高さに合わせてコンバイナの位置を調整することができ、ユーザに対し、コンバイナを介した表示像を所望の位置で良好に視認させることができる。
【0014】
上記HUD装置において、支持機構は、コンバイナに向かう表示光の光軸に沿う方向においてコンバイナをスライド移動させられるように構成されていることが好ましい。
【0015】
コンバイナの位置調整を行うときのスライド移動の方向がコンバイナに向かう表示光の光軸に沿う方向からずれているほど、コンバイナのスライド移動に伴って表示光の光軸とコンバイナの位置とのずれが大きくなるから、表示光全てをコンバイナに照射するためには、コンバイナの表示光を受けて反射する反射面を広くする必要がある。そのため、表示光の光軸の向きを調整する手段を別途設けないことには、ヘルメットのシールド内の省スペース化に不利になる。
【0016】
これに対し、上記の構成によると、支持機構をコンバイナの位置が表示光の光軸に沿う方向において調整される構成としたので、コンバイナの反射面をスライド移動に伴う表示光の光軸からのずれを考慮して広くする必要がない。それにより、表示光の光軸の向きを調整する手段を別途設けなくても、コンバイナをコンパクトに構成することができ、ヘルメットのシールド内の省スペース化に有利になる。
【0017】
また、上記HUD装置において、支持機構は、コンバイナに取り付けられたステーと、ステーを長手方向において上記所定の方向に沿う姿勢とした状態でスライド可能に保持する保持部品とを備えていてもよい。
【0018】
この構成によると、コンバイナの位置を調整可能な支持機構を簡単な構成で実現することができる。
【0019】
また、本開示の技術は、HUD装置が搭載されたヘルメットを対象とする。
【0020】
本開示の技術に係るヘルメットでは、HUD装置が表示光を出射する光出射器と、光出射器から出射された表示光を、ヘルメットの前部に設けられた窓開口の開口面に沿う所定の方向における一方側から受け、ヘルメットを着用したユーザが視認可能な方向に向けて反射するコンバイナと、コンバイナを、ヘルメットを着用したユーザの眼前に位置させるように支持し、コンバイナの位置を上記所定の方向におけるスライド移動を以て調整可能に構成された支持機構とを備える。
【0021】
この構成によると、コンバイナを、表示光が投射される所定の方向においてコンバイナの位置調整が可能な支持機構により支持するようにしたので、ヘルメットを着用したユーザの視線位置に合わせてコンバイナの位置を調整することができる。また、コンバイナの位置調整は、所定の方向へのスライド移動によるため、コンバイナの角度を回動動作により調整可能とするだけの場合のように閉状態のシールド内に比較的広いスペースを必要とせず、コンバイナの位置を調整可能な構成を省スペースに実現できる。したがって、省スペースな構成を以て、ユーザに対し、ヘルメット着用時における視線位置の個人差に拘わらず、コンバイナを介した表示像を所望の位置で良好に視認させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示の技術に係るHUD装置によれば、省スペースな構成を以て、ユーザに対し、ヘルメット着用時における視線位置の個人差に拘わらず、コンバイナを介した表示像を所望の位置で良好に視認させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施形態に係る情報提示システムの概略的な全体構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る情報提示システムの概略的なブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットにおけるコンバイナの高さ位置を下側に設定した状態での正面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットにおけるコンバイナの高さ位置を下側に設定した状態での側面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットにおけるコンバイナの高さ位置を上側に設定した状態での正面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットにおけるコンバイナの高さ位置を上側に設定した状態での側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、便宜上、ヘルメットおよびヘルメットに搭載されるHUD装置について、ヘルメットを着用したユーザの顔の上下に相当する方向における上側を「上」、下側を「下」と称し、ヘルメットを着用したユーザの顔の前後に相当する方向における前側を「前」、後側を「後」と称し、ヘルメットを着用したユーザの顔の前方を向いてその顔の左右に相当する方向における左側を「左」、右側を「右」と称する。
【0025】
<情報提示システムの構成>
図1は、この実施形態に係る情報提示システム1の概略的な全体構成図である。
図2は、情報提示システム1の概略的なブロック図である。なお、
図1において、二点鎖線の矢印は、表示光の経路および進行方向を示している。情報提示システム1は、自動二輪車のライダー(ユーザ)に向けて運転支援に寄与する情報を提供するシステムであって、
図1および
図2に示すように、自動二輪車のヘルメット101に搭載されたHUD装置3と、HUD装置3に表示され得る各種情報を提供する情報端末5とを備えている。
【0026】
- 情報端末の構成 -
情報端末5としては、スマートフォンと呼ばれる小型の多機能携帯電話機が用いられる。この情報端末5は、GPS衛星Sからの電波を受信して測位情報を生成するGPS(Global Positioning System)受信機7と、外部との無線通信を行う無線通信モジュール9と、当該情報端末5の動作を総合的に制御するマイクロコンピュータ11と、入出力装置としてのタッチパネル付き表示装置13と、当該情報端末5を動作させるのに必要な電力を供給する電源15とを備えている。
【0027】
GPS受信機7は、図示しないGPSアンテナなどを備えて構成されている。GPSアンテナは、地球軌道に打ち上げられた複数のGPS衛星Sから送信されるGPS信号を受信する。GPS受信機7は、GPSアンテナで受信したGPS信号に基づいて、情報端末5の現在位置(例えば緯度、経度および高度)の情報を取得する。このGPS受信機7は、マイクロコンピュータ11からの要求に応じて、測位した情報端末5の位置情報をマイクロコンピュータ11に含まれるメモリ21に保存し、逐次更新する。
【0028】
無線通信モジュール9は、インターネットなどの広域通信網である外部ネットワークNと通信を行うネットワーク通信部17と、HUD装置3と近距離で無線通信を行う近距離通信部19とを備えている。
【0029】
ネットワーク通信部17は、WiFi(Wireless Fidelity;登録商標)などの無線LAN(Local Area Network)の機能やLTE(Long Time Evolution;登録商標)といったモバイル通信規格での通信機能を有している。このネットワーク通信部17は、マイクロコンピュータ11からの要求に応じて、外部ネットワークNから地図情報や、工事や渋滞などに関する道路情報、GPS受信機7で取得された現在位置に基づく周辺施設の情報、災害情報などのネット情報を受信して、マイクロコンピュータ11に含まれるメモリ21に一時的に蓄積する。
【0030】
近距離通信部19は、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)などの近距離無線通信規格での通信機能を有している。この近距離通信部19は、マイクロコンピュータ11からの要求に応じて、GPS受信機7で取得された情報端末5の位置情報や、ネットワーク通信部17で取得されたネット情報、後述する各種のアプリケーションソフトウェア(以下「アプリ」と称する)により取得されるアプリ情報などをマイクロコンピュータ11に含まれるメモリ21から読み出して、無線通信によりHUD装置3へと送信する。
【0031】
マイクロコンピュータ11は、メモリ21およびCPU(Central Processing Unit)23を含んでいる。メモリ21は、情報端末5を動作させるためのプログラムを含む様々な情報を一時的または恒久的に保存する。このメモリ21は、典型的には、RAM(Random Access Memory)とROM(Read Only Memory)の組合せによって実現される。当該メモリ21に記憶される各種のプログラムには、モバイルOS(Operating System)や、モバイルOS上で特定機能を実現すべく動作する複数のアプリが含まれている。
【0032】
複数のアプリには、時刻アプリ25、速度アプリ27、ナビゲーションアプリ(以下「ナビアプリ」と称する)29および連携アプリ31が含まれている。これら複数のアプリ27,29,31,33は、情報端末5に予めインストールされてメモリ21に保存されている。
【0033】
時刻アプリ25は、現在時刻を取得するソフトウェアである。この時刻アプリ25では、例えば、基地局との通信で取得されるタイムスタンプやGPS受信機7で取得される時刻情報に基づき、さらにはNITZ(Network Identity and Time Zone)やNTP(Network Time Protocol)といった時刻同期技術を用いて、現在時刻を取得する。
【0034】
速度アプリ27は、情報端末5の移動速度を検出するソフトウェアである。この速度アプリ27では、例えば、GPS受信機7で取得される情報端末5の位置情報に基づいて、情報端末5の移動速度を検出する。
【0035】
ナビアプリ29は、ユーザによって設定された目的地への経路案内を行うソフトウェアである。このナビアプリ29では、例えば、ネットワーク通信部17で取得された、またはメモリ21に予め保存された地図情報と、GPS受信機7で取得される情報端末5の位置情報とに基づいて、目的地への経路案内を行う。
【0036】
連携アプリ31は、近距離通信部19による無線通信を用いてHUD装置3と連携し、HUD装置3へアプリ情報やネット情報、HUD装置3での表示設定の情報などの各種情報を送信するソフトウェアである。
【0037】
この連携アプリ31では、HUD装置3の表示設定を行えるようになっている。具体的には、表示設定として、HUD装置3で表示する項目を現在時刻、移動速度および経路案内情報(ナビゲーション情報)を含む複数の項目から設定したり、HUD装置3によって表示される表示像の明るさを設定したりできる。当該連携アプリ31で設定された表示設定の情報は、メモリ21に保存される。
【0038】
CPU23は、典型的には、IC(Integrated Circuit)やLSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integration Circuit)などによって実現される。このCPU23は、各種データを処理するための演算を行い、無線通信モジュール9およびタッチパネル付き表示装置13の動作と各種アプリ25,27,29,31の実行とを制御する。
【0039】
マイクロコンピュータ11は、CPU23の機能により、GPS受信機7に現在位置の情報を取得させ、ネットワーク通信部17に外部ネットワークNとの接続を確立させてネット情報を収集すると共に、連携アプリ31の実行により、近距離通信部19にHUD装置3との接続を確立させ、それ以外の各種アプリ25,27,29の実行に応じた種々の処理を行って取得したアプリ情報やネット情報、表示設定の情報をHUD装置3に送信する。
【0040】
タッチパネル付き表示装置13は、情報端末5の画面33に画像を表示する表示装置と、ユーザがタッチした画面33内の位置(触れた位置)を検出するタッチパネルとが一体化された電子装置であって、画像の出力機能とユーザ操作の入力機能とを兼ね備えている。情報端末5では、このタッチパネル付き表示装置13へのタッチ操作により、各種アプリ25,27,29,31の実行や、連携アプリ31の実行時においては上述したHUD装置3での表示設定を行えるようになっている。
【0041】
電源15は、リチウムイオンバッテリなどの二次電池によって構成されている。当該電源15は、無線通信モジュール9、マイクロコンピュータ11およびタッチパネル付き表示装置13に配線を介して電気的に接続されている。情報端末5は、図示しない電源スイッチで電源を入れる操作がされると、電源15から無線通信モジュール9、マイクロコンピュータ11およびタッチパネル付き表示装置13に電力を供給して、ユーザの操作に応じた所定の動作をするようになっている。
【0042】
- HUD装置の構成 -
図3および
図5は、HUD装置3が搭載されたヘルメット101の正面図である。
図3は、コンバイナ63の高さ位置を下側に設定した状態を示す。
図5は、コンバイナ63の高さ位置を上側に設定した状態を示す。また、
図4および
図6は、HUD装置3が搭載されたヘルメット101の側面図である。
図4は、コンバイナ63の高さ位置を下側に設定した状態を示す。
図6は、コンバイナ63の高さ位置を上側に設定した状態を示す。なお、
図3および
図5においては、PCB(Printed Circuit Board)モジュール47の図示を省略する。
【0043】
HUD装置3は、ヘルメット101(ヘルメット本体105)を着用したユーザの視野に視覚情報を映し出す投射型表示装置である。このHUD装置3は、
図1および
図2に示すように、外部との無線通信を行う無線通信モジュール35と、当該HUD装置3での表示動作を制御する制御ユニット37と、表示光を生成して投射する投射モジュール39と、投射モジュール39から投射された表示光による表示像を虚像としてユーザに視認させるためのコンバイナユニット41と、当該HUD装置3へのユーザによる操作を入力するための操作ユニット43と、当該HUD装置3を動作させるのに必要な電力を供給する電源45とを備えている。
【0044】
この実施形態に係るHUD装置3が搭載されるヘルメット101は、フルフェイス型のヘルメットであって、着用したユーザに視界を提供するための窓開口103が前部に形成されたヘルメット本体105と、ヘルメット本体105に対し取り替え可能に装着されて窓開口を開閉し得る透明なシールド107とを備えている。
【0045】
ヘルメット本体105は、その外殻を構成するシェル(帽体)の内側に、発泡ポリスチレンなどからなる衝撃を吸収する緩衝体としてのライナー(不図示)が設けられた構造を有している。シールド107は、ヘルメット本体105における窓開口103の左右両側に留め具109などを用いて所定の角度範囲だけ回転可能に取り付けられており、上下方向への回動動作を以て窓開口103を開閉するようになっている。
【0046】
シールド107は、窓開口103を閉じた状態で、窓開口103を通して飛び込む塵埃などの異物や風、紫外線などをブロックする機能を有している。このシールド107は、留め具109を外して取り外せるようになっている。当該シールド107には、天候や昼夜などによる外部環境の明るさに合わせて、無色透明なシールド、スモークシールドなどの色付き透明なシールド、ミラーシールドなどの光透過率の異なる様々なシールドが採用され得る。
【0047】
無線通信モジュール35は、ブルートゥースなどの近距離無線通信規格での通信機能を有している。この無線通信モジュール35は、制御ユニット37が備えるマイクロコンピュータ53からの要求に応じて、情報端末5の近距離通信部19から送信されたネット情報やアプリ情報、表示設定の情報を受信し、マイクロコンピュータ53に含まれるメモリ49に一時的に蓄積する。この無線通信モジュール35は、制御ユニット37と共にPCB上に設けられ、PCBモジュール47としてヘルメット本体105の左頬下部分111に内蔵されている。
【0048】
制御ユニット37は、無線通信モジュール35の通信動作や、投射モジュール39に含まれる光出射器57での表示光の生成を制御する。この制御ユニット37は、メモリ49およびCPU51を含むマイクロコンピュータ53と、画像表示に関する処理を担当する集積回路であるGDC(Graphics Display Controller)55とを有している。
【0049】
メモリ49は、HUD装置3を動作させるためのプログラムを含む様々な情報を一時的または恒久的に保存する。このメモリ49には、無線通信モジュール35で受信したネット情報、アプリ情報および表示設定の情報も一時的に保存される。当該メモリ49は、典型的には、RAMとROMの組合せによって実現される。
【0050】
CPU51は、典型的には、ICやLSI、ASICなどによって実現される。このCPU51は、各種データを処理するための演算を行い、無線通信モジュール35、投射モジュール39およびGDC55の動作を制御する。
【0051】
GDC55は、メモリ49に保存されたネット情報やアプリ情報、表示設定の情報に基づき、コンバイナユニット41に含まれるコンバイナ63を介してユーザに視認させる表示像のデータを生成する。このGDC55で生成される表示像のデータは、情報端末5の連携アプリ31の表示設定で設定された項目の情報を表す画像データである。マイクロコンピュータ53は、CPU51の機能により、GDC55に表示像のデータを生成させ、その画像信号を投射モジュール39に含まれる光出射器57に出力させる。
【0052】
投射モジュール39は、ヘルメット本体105の顎部113に内蔵されている。この投射モジュール39は、GDC55から入力された画像信号に基づいて表示像に対応するパターンの表示光を生成して出射する光出射器57と、光出射器57から出射された表示光をコンバイナユニット41に含まれるコンバイナ63に向けて反射する凹面ミラー59とを備えている。これら光出射器57と凹面ミラー59とは、ヘルメット101の顎部113における左右両側に分けて設けられている。
【0053】
光出射器57は、ヘルメット本体105の顎部113左側でPCBモジュール47の近傍位置に内蔵されている。この光出射器57は、図示しないが、LED(Light Emitting Diode)などの光源およびLCOS(Liquid Crystal On Silicon)などの反射型表示パネルからなる表示素子と、凸レンズや凹レンズなどの光学レンズ、拡散板、TIR(Total Internal Reflection)プリズムといった複数の光学部材とを組み合わせて構成されている。当該光出射器57は、HUD装置3によって表示される表示像が情報端末5で設定された明るさレベルとなる光の強さで表示光を生成し、生成した表示光を凹面ミラー59に向けて出射する。
【0054】
凹面ミラー59は、ヘルメット本体105の顎部113右側に内蔵されている。この凹面ミラー59は、回転対称性を持たない自由曲面形状の反射面61(図示では平面状)を有している。当該凹面ミラー59は、光出射器57から受けた表示光を、その反射面61により、上方あるコンバイナユニット41に含まれるコンバイナ63に向けて反射すると共に、ユーザに視認される表示像が運転中の表示に適したサイズおよび位置となるように整形する。この実施形態において、凹面ミラー59の姿勢は固定されている。
【0055】
コンバイナユニット41は、凹面ミラー59により反射された表示光を下方から受けてユーザが視認可能な方向に反射するコンバイナ63と、コンバイナ63をヘルメット101を着用したユーザの眼前に位置させるように支持する支持機構65とを備えている。
【0056】
コンバイナ63は、透明または半透明な板状部品であって、回転対称性を持たない自由曲面形状の半透過反射面67(図示では平面状)を有している。このコンバイナ63は、閉じた状態にあるシールド107の内側に位置するように配置されている。当該コンバイナ63は、ハーフミラーによって構成されている。ハーフミラーは、入射した光の一部を反射させて一部を透過させる性質を有している。コンバイナ63の裏面には、フッ化マグネシウム(MgF2)などからなるAR(Anti Reflection)コートと呼ばれる反射防止膜が設けられている。
【0057】
支持機構65は、ヘルメット本体105の前部に設けられた窓開口103内でユーザの前方視界に入る位置にコンバイナ63を支持する。コンバイナ63は、この支持機構65により、ユーザの右眼Eの前方位置において、半透過反射面67がユーザの顔側に位置するように、後端が上方に位置する一方で前端が下方に位置する前傾姿勢で支持される。支持機構65は、上下方向に延びるステー69と、ステー69を長手方向においてヘルメット101の上下方向に沿う姿勢とした状態で保持する保持部品71とを備えている。
【0058】
ステー69の下端部には、回転軸73を左右方向に延びる姿勢で回転可能に支持する枢支部75が設けられている。枢支部75には、回転軸73を介してコンバイナ63の上端部が連結されている。そのことで、コンバイナ63は、回転軸73周り(
図1にてDrで示す方向)の回転動作を以て、半透過反射面67の向きを上下に調整可能とされている。このようにコンバイナ63の向きを調整可能に支持するステー69は、保持部品71に挿通された状態で保持されている。
【0059】
保持部品71は、ヘルメット本体105の額部115の右上部位に内蔵されている。保持部品71には、ステー69が挿通される挿通孔(不図示)が設けられている。この挿通孔の内周面とステー69の外周面との互いに対向する部位には、例えば凹凸形状の噛み合い構造からなるラチェット機構などの、ステー69を保持部品71に保持するための手段が設けられている。そして、保持部品71は、ステー69の保持状態を解除するなどして、ヘルメット101の上下方向においてステー69をスライド可能な構成とされている。
【0060】
保持部品71に保持されたステー69がスライド可能な方向Dsは、コンバイナ63に向かう表示光の光軸LXに沿う方向に設定されている。このように、支持機構65は、コンバイナ63に向かう表示光の光軸LXに沿う方向におけるステー69のスライド移動を以て、コンバイナ63の位置を調整可能になっている。そのことで、この実施形態のHUD装置3においては、ユーザの視線高さに合わせてコンバイナ63の位置を調整できるようになっている。
【0061】
例えば、
図3および
図4に示すように、窓開口103に対する視線高さが比較的低いユーザがヘルメット101を着用して情報提示システム1を使用する場合には、ステー69を表示光の光軸LXに沿わせて下方にスライド移動させることにより、コンバイナ63の位置をその可変範囲の下側に配置するように調整すれば、当該ユーザの眼Eが前方を向いているときの視線高さにコンバイナ63の位置を合わせることができる。
【0062】
また、
図5および
図6に示すように、窓開口103に対する視線高さが比較的高いユーザがヘルメット101を着用して情報提示システム1を使用する場合には、ステー69を表示光の光軸LXに沿わせて上方へスライド移動させることにより、コンバイナ63の位置をその可変範囲の上側に配置するように調整すれば、当該ユーザの眼Eが前方を向いているときの視線高さにコンバイナ63の位置を合わせることができる。
【0063】
なお、ステー69は、保持部品71の挿通孔から下方へ引き抜くことができる。これによって、コンバイナ63に擦り傷が付くなどの損傷が生じた場合には、コンバイナ63をステー69ごと簡単に取り換えることができるようになっている。
【0064】
操作ユニット43は、図示しないが例えば、ヘルメット本体105のPCBモジュール47に対応する箇所に設けられている。この操作ユニット43は、電源スイッチと、操作スイッチとを含んでいる。電源スイッチは、HUD装置3の電源のオンおよびオフ(入切)を切り替える機能を持たせたプッシュボタン式のスイッチである。操作スイッチは、HUD装置3の表示のオンおよびオフを切り替える機能を持たせたプッシュボタン式のスイッチである。
【0065】
電源45は、ヘルメット本体105の後頭部に内蔵されている。この電源45は、リチウムイオンバッテリなどの二次電池によって構成されている。当該電源45は、無線通信モジュール35、制御ユニット37および光出射器57と配線を介して電気的に接続されている。HUD装置3は、操作ユニット43にて電源スイッチで電源を入れる操作がされると、電源45からそれら無線通信モジュール35、制御ユニット37および光出射器57に電力を供給して、操作スイッチの操作による表示のオンとオフの切り替えに応じた表示作動をするようになっている。
【0066】
<情報提示システムの動作>
上記構成の情報提示システム1では、HUD装置3の電源が入れられて、情報端末5で連携アプリ31が実行されると、ネット情報やアプリ情報、表示設定の情報がHUD装置3で受信される。そして、受信したネット情報やアプリ情報に基づいて、表示設定の情報に含まれる予め設定された項目に対応する表示像のデータがGDC55にて生成される。このとき、HUD装置3の表示がオン状態であると、光出射器57において、GDC55で生成された表示像のデータに対応する表示光が、情報端末5で設定された表示像の明るさレベルに対応する光の強さで生成される。この表示光は、光出射器57から出射された後に凹面ミラー59で反射されて、コンバイナ63に投光され、コンバイナ63でユーザの視界に入るように反射される。これにより、ユーザは、コンバイナ63越しに前方視界の風景に重畳した状態で、表示光による表示像を虚像として視認させられる。
【0067】
この実施形態に係るHUD装置3によると、コンバイナ63を、ヘルメット101の上下方向においてコンバイナ63の位置調整が可能な支持機構65により支持するようにしたので、ヘルメット101を着用したユーザの視線高さに合わせてコンバイナ63の位置を調整することができる。また、コンバイナ63の位置調整は、ヘルメット101の上下方向におけるスライド移動によるため、コンバイナ63の角度を回動動作により調整可能とするだけの場合のように閉状態のシールド107内に比較的広いスペースを必要とせず、コンバイナ63の位置を調整可能な構成が省スペースに実現できる。したがって、省スペースな構成を以て、ユーザに対し、ヘルメット101着用時における視線高さの個人差に拘わらず、コンバイナ63を介した表示像を所望の位置で良好に視認させることができる。
【0068】
しかも、HUD装置3によれば、支持機構65をコンバイナ63の位置が表示光の光軸LXに沿う方向において調整される構成としたので、コンバイナ63の半透過反射面67をスライド移動に伴う表示光の光軸LXからのずれを考慮して広くする必要がない。それにより、表示光の光軸LXの向きを調整する手段を別途設けなくても、コンバイナ63をコンパクトに構成することができ、ヘルメット101のシールド107内の省スペース化に有利になる。
【0069】
以上のように、本開示の技術の例示として、好ましい実施形態について説明した。しかし、本開示の技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須でない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることを以て、直ちにそれらの必須でない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0070】
例えば、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0071】
上記実施形態では、光出射器57および凹面ミラー59がヘルメット本体105の顎部113に内蔵され、コンバイナ63がヘルメット本体105の額部115に支持機構65で支持される構成を例示したが、本開示の技術はこれに限らない。例えば、光出射器57および凹面ミラー59がヘルメット本体105の額部115に内蔵され、コンバイナ63がヘルメット本体105の顎部113に支持機構65で支持される構成を採ってもよい。
【0072】
上記実施形態では、支持機構65について、コンバイナ63に向かう表示光の光軸LXに沿う方向においてコンバイナ63の位置を調整可能とする構成を例示したが、本開示の技術はこれに限らない。支持機構65は、コンバイナ63に向かう表示光の光軸LXに沿う方向にコンバイナ63の位置を調整可能なことが好ましいが、当該光軸LXから外れる方向、つまり当該光軸LXを交差する方向においてコンバイナ63の位置を調整可能な構成とされていてもよい。
【0073】
上記実施形態では、支持機構65がコンバイナ63の位置をヘルメット101の上下方向におけるスライド移動を以て調整可能に構成されたHUD装置3を例に挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限らない。例えば、コンバイナ63が光出射器57から出射された表示光をヘルメット101の左右方向における一方側から受けてヘルメット101を着用したユーザが視認可能な方向に向けて反射する態様をHUD装置3に採用する場合には、支持機構65がコンバイナ63の位置をヘルメット101の左右方向におけるスライド移動を以て調整可能に構成されていてもよい。
【0074】
要は、コンバイナ63が、光出射器57から出射された表示光を、ヘルメット101の窓開口103の開口面に沿う所定の方向における一方側から受けて、ヘルメット101を着用したユーザが視認可能な方向に向けて反射し、支持機構65が、コンバイナ63の位置を、表示光が投射される所定の方向においてスライド移動により調整可能になっていればよい。このような構成によれば、ヘルメット101を着用したユーザの視線位置に合わせてコンバイナ63の位置を調整することができる。
【0075】
上記実施形態では、光出射器57に用いる表示素子としてLCOS(Liquid Crystal On Silicon)などの反射型表示パネルを例示したが、本開示の技術はこれに限らない。光出射器57の表示素子には、例えば、有機EL(Electro Luminescence)表示パネルやVFD(Vacuum Fluorescent Display)などの自発光型の表示素子が用いられてもよい。
【0076】
上記実施形態では、凹面ミラー59については姿勢が固定されているとしたが、本開示の技術はこれに限らない。凹面ミラー59の姿勢は、ユーザの視野における表示像の位置を変更できるように可変とされていてもよい。
【0077】
上記実施形態では、投射モジュール39が凹面ミラー59を有しているとしたが、本開示の技術はこれに限らない。投射モジュール39は、凹面ミラー59に代えて、凸面ミラーまたは平面ミラーを有していてもよい。
【0078】
上記実施形態では、コンバイナ63が支持機構65により半透過反射面67の向きを上下に調整可能とされているとしたが、本開示の技術はこれに限らない。コンバイナ63は、半透過反射面67の向きが不変となるようにステー69に固定されていてもよい。
【0079】
上記実施形態では、HUD装置3によりユーザに表示像として提示される情報が現在時刻、速度、経路案内の情報であるとしたが、本開示の技術はこれに限らない。これら現在時刻、速度、経路案内の情報は、HUD装置3により提示し得る情報の一例に過ぎず、それら以外の自動二輪車の運転に寄与する情報であってもよく、情報端末5の連携アプリ31で設定するなどして、走行地域の周辺施設などといったユーザにとって有用なその他の情報がHUD装置3で表示する項目とされていても構わない。
【0080】
上記実施形態では、HUD装置3と連携する情報端末5としてスマートフォンを例示したが、本開示の技術はこれに限らない。当該情報端末5は、スマートウォッチやタブレット端末、PDA(Personal Data Assistant)などのスマートフォンに類する機能を備えた端末であってもよく、外部ネットワークNに接続する機能やGPS受信機7を備え、HUD装置3と通信できるものあれば、その他の携帯型の情報端末であっても構わない。また、HUD装置3は、情報端末5に代えまたは情報端末5に加えて、自動二輪車と通信して同車に搭載された各種センサによる検知情報を受信して表示像とするようになっていてもよい。
【0081】
上記実施形態では、HUD装置3が搭載されるヘルメット101としてフルフェイス型のヘルメットを例に挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限らない。フルフェイス型のヘルメット101は、HUD装置3が搭載されるヘルメット101の一例に過ぎず、投射モジュールを内蔵し得る部位を備えているものであれば、オープンフェイス型(ジェット型)やセミジェット型(スリークォーターズ型)など、任意のタイプのヘルメットをHUD装置3が搭載されるヘルメット101として採用することが可能である。
【0082】
上記実施形態では、HUD装置3が搭載されたヘルメット101として、自動二輪車を運転する際に着用されるヘルメット101を例に挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限らない。HUD装置3は、水上バイクや自転車などの二輪車、スノーモービル(雪上バイク)などの他の乗物において着用されるヘルメットにも勿論適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上説明したように、本開示の技術は、ヘルメットに搭載されるHUD装置およびHUD装置が搭載されたヘルメットについて有用である。
【符号の説明】
【0084】
N…外部ネットワーク
S…GPS衛星
LX…光軸
1…情報提示システム
3…HUD装置
5…情報端末
7…無線通信モジュール
9…GPS受信機
11…マイクロコンピュータ
13…タッチパネル付き表示装置
15…電源
17…ネットワーク通信部
19…近距離通信部
21…メモリ
23…CPU
25…時刻アプリ
27…速度アプリ
29…ナビアプリ
31…連携アプリ
33…画面
35…無線通信モジュール
37…制御ユニット
39…投射モジュール
41…コンバイナユニット
43…操作ユニット
45…電源
47…PCBモジュール
49…メモリ
51…CPU
53…マイクロコンピュータ
55…GDC
57…光出射器
59…凹面ミラー
61…反射面
63…コンバイナ
65…支持機構
67…半透過反射面
69…ステー
71…保持部品
73…回転軸
75…枢支部
101…ヘルメット
103…窓開口
105…ヘルメット本体
107…シールド
109…留め具
111…左頬下部分
113…顎部
115…額部