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特許7203624光学透明粘着シート、積層シート及び貼り合わせ構造物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】光学透明粘着シート、積層シート及び貼り合わせ構造物
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/50 20180101AFI20230105BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230105BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20230105BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230105BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230105BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
C09J7/50
C09J7/38
C09J133/04
B32B27/00 M
B32B27/30 A
B32B27/40
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019019947
(22)【出願日】2019-02-06
(65)【公開番号】P2020125432
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】高木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】谷口 仁
(72)【発明者】
【氏名】高濱 瞬
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-119562(JP,A)
【文献】特開2013-75999(JP,A)
【文献】特開2016-166280(JP,A)
【文献】特開2009-155306(JP,A)
【文献】特開2005-272558(JP,A)
【文献】特開2005-200513(JP,A)
【文献】特開2007-177125(JP,A)
【文献】特開2016-222778(JP,A)
【文献】特開2016-132697(JP,A)
【文献】国際公開第2017/187800(WO,A1)
【文献】特開2010-174260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00-27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のアクリル粘着剤層と、第一のプライマー層と、熱硬化ポリウレタン層と、第二のプライマー層と、第二のアクリル粘着剤層とをこの順に有し、
前記第一のプライマー層及び前記第二のプライマー層は、アクリル系樹脂及び/又はエステル系樹脂を含み、かつ、ガラス転移温度が-7℃以下であり、
前記第一のアクリル粘着剤層及び前記第二のアクリル粘着剤層のガラス転移温度は、前記第一のプライマー層及び前記第二のプライマー層のガラス転移温度よりも高い
ことを特徴とする光学透明粘着シート。
【請求項2】
前記第一のプライマー層及び前記第二のプライマー層を構成する樹脂成分は、酸分が6mol%以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学透明粘着シート。
【請求項3】
前記第一のプライマー層及び第二のプライマー層は、厚みが1~50μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学透明粘着シート。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の光学透明粘着シートと、前記光学透明粘着シートの一方の面を覆う第一の離型フィルムと、前記光学透明粘着シートの他方の面を覆う第二の離型フィルムとが積層されたものであることを特徴とする積層シート。
【請求項5】
第一の被着体と、第二の被着体と、前記第一の被着体及び前記第二の被着体を接合する請求項1~3のいずれかに記載の光学透明粘着シートとを備えることを特徴とする貼り合わせ構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学透明粘着シート、積層シート及び貼り合わせ構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
光学透明粘着(OCA:Optically Clear Adhesive)シートは、光学部材の貼り合わせに利用される透明な粘着シートである。OCAシートの使用例としては、表示装置内において、液晶モジュール等の表示パネルと表示装置の最表面に設けられるカバーパネルとの接合に用いられることがある。OCAシートによって、表示パネルとカバーパネルとの間の空間が埋められることで、表示パネルの画面の視認性を向上することができる。
【0003】
OCAシート関連分野における先行技術を開示した文献としては、例えば、特許文献1が挙げられる。特許文献1には、末端に(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量が1万~30万のポリウレタン(A)、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル(B)、所定の構造を有する(メタ)アクリル酸エステル(C)、(A)~(C)成分以外の重合性単量体(D)および光重合開始剤(E)を含有し、酸価が0~5mgKOH/gであることを特徴とする透明粘着シート用光硬化性組成物を硬化して得られる屈折率が1.50~1.60である透明粘着シートが開示されている。また、特許文献1には、透明粘着シートを三層構造とし、両側の層と中心層の組成を変えて凝集力と粘着力のバランスを図ることが開示されている。
【0004】
ところで、表示装置の多様化に伴い、カバーパネルとして、従来一般的であったガラスパネルよりもデザイン性、安全性(割れたときの飛散防止)及び価格面において有利な樹脂パネルの採用について、近年検討がなされている。そのため、OCAシートとして、樹脂パネルとの接合に適したものが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-20477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、表示パネルとタッチパネル本体との貼り合わせに適したOCAシートを実現するため、第一のアクリル粘着剤層、熱硬化ポリウレタン層及び第二のアクリル粘着剤層を積層した多層構造を有するOCAシートの開発を進めてきた。この多層構造を有するOCAシートは、熱硬化ポリウレタン層によって優れた柔軟性を得るとともに、第一及び第二のアクリル粘着剤層によって優れた粘着性を得ることができることから、せん断応力に対して剥離しにくい等の優れた特性を発揮することができる。
【0007】
しかしながら、このOCAシートは、流れ方向の端部と中央部において粘着力及び粘弾性のムラが生じてしまい、安定した性能を有するOCAシートを得られない(以下、生産安定性ともいう)ことがあった。
また、この多層構造を有するOCAシートと樹脂パネルとを接合して作製した貼り合わせ構造物を、高温・高湿環境下に放置すると、OCAシートが剥離してしまうことがあった。
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、生産安定性及び高温・高湿環境下における信頼性に優れる光学透明粘着シート、並びに、該光学透明粘着シートを用いた積層シート及び貼り合わせ構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光学透明粘着シートは、第一のアクリル粘着剤層と、第一のプライマー層と、熱硬化ポリウレタン層と、第二のプライマー層と、第二のアクリル粘着剤層とをこの順に有し、上記第一のプライマー層及び上記第二のプライマー層は、アクリル系樹脂及び/又はエステル系樹脂を含み、かつ、ガラス転移温度が-7℃以下であり、上記第一のアクリル粘着剤層及び上記第二のアクリル粘着剤層のガラス転移温度は、上記第一のプライマー層及び上記第二のプライマー層のガラス転移温度よりも高いことを特徴とする。
【0010】
上記第一のプライマー層及び上記第二のプライマー層を構成する樹脂成分は、酸分が6mol%以下であることが好ましい。
【0011】
上記第一のプライマー層及び第二のプライマー層は、厚みが1~50μmであることが好ましい。
【0012】
本発明の積層シートは、本発明の光学透明粘着シートと、上記光学透明粘着シートの上記第一の表面を覆う第一の離型フィルムと、上記光学透明粘着シートの他方の面を覆う第二の離型フィルムとが積層されたものであることを特徴とする。
【0013】
本発明の貼り合わせ構造物は、第一の被着体と、第二の被着体と、上記第一の被着体及び上記第二の被着体を接合する上記光学透明粘着シートとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学透明粘着シートによれば、生産安定性、及び、高温・高湿環境下における信頼性を高めることができる。本発明の積層シートによれば、本発明の光学透明粘着シートの取り扱い性を高めることができる。本発明の貼り合わせ構造物によれば、高温・高湿環境下における信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の光学透明粘着シートの一例を模式的に示した断面図である。
図2】光学透明粘着シートの流れ方向を説明する模式図である。
図3】粘着力の評価方法を説明するための模式図である。
図4】本発明の積層シートの一例を模式的に示した断面図である。
図5】ベゼルオン貼合構造を有する本発明の貼り合わせ構造物の構成を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[光学透明粘着シート]
図1は、本発明の光学透明粘着シートの一例を模式的に示した断面図である。図1に示した光学透明粘着シート10は、第一の表面(粘着面)を構成する第一のアクリル粘着剤層11と、第一のプライマー層12と、熱硬化ポリウレタン層13と、第二のプライマー層14と、第二の表面(粘着面)を構成する第二のアクリル粘着剤層15とをこの順に有する。これにより、層間密着性を好適に付与することができる。
【0017】
<アクリル粘着剤層>
第一のアクリル粘着剤層11及び第二のアクリル粘着剤層15は、アクリル系樹脂組成物を硬化させたものである。上記アクリル系樹脂組成物としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、又は、これらの共重合体(以下、(メタ)アクリル系共重合体ともいう)と、架橋剤とを含有するものが挙げられる。
【0018】
上記(メタ)アクリル系共重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、カルボキシル基含有モノマーとの共重合体が挙げられる。
【0019】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(CH=CR-COOR;Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数1~18のアルキル基である)であるものが挙げられ、上記アルキル基の炭素数は4~12が好ましい。
【0020】
上記アルキル基の炭素数が1~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデカ(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0021】
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸β-カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸5-カルボキシペンチル、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0022】
上記架橋剤としては、例えば、上記(メタ)アクリル系共重合体が有する、架橋性官能基含有モノマー由来の架橋性官能基と架橋反応を起こすことができる成分を用いることができ、具体的には、イソシアネート化合物、金属キレート化合物、エポキシ化合物等が挙げられる。上記架橋剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0023】
上記架橋剤の含有量としては、ガラス転移温度を好適に調整する観点から、上記(メタ)アクリル系共重合体全体に対して、0.01~20重量%であることが好ましく、0.02~10重量%であることがより好ましい。
【0024】
第一のアクリル粘着剤層11及び第二のアクリル粘着剤層15のガラス転移温度は、後述する第一のプライマー層12及び第二のプライマー層14のガラス転移温度よりも高い。
光学透明粘着シート10は、第一のアクリル粘着剤層11及び第二のアクリル粘着剤層15と、熱硬化ポリウレタン層13との間に、第一のプライマー層12及び第二のプライマー層14を有しているので、層間密着性を好適に付与することができるので、流れ方向の端部と中央部における粘弾性及び粘着力のムラを抑制することができる。
図2は、光学透明粘着シートの流れ方向を説明する模式図である。
図2は、光学透明粘着シート10の製造工程の一例を示しており、吐出装置70により、アクリル系樹脂組成物、プライマー組成物等が塗布された後、搬送ローラー80によって搬送され、ロール60によって成形されることにより、光学透明粘着シート10が得られる。矢印の方向は、製造工程の進行方向を表している。
本明細書において、流れ方向とは、光学透明粘着シート10における製造工程の進行方向(矢印の方向)を意味する。
【0025】
第一のアクリル粘着剤層及び第二のアクリル粘着剤層のガラス転移温度としては、特に限定されないが、例えば、10℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-5℃以下であることが更に好ましい。
なお、本明細書において、ガラス転移温度は、架橋後のガラス転移温度を意味する。
ここで、ガラス転移温度は、JIS K7121の規定に準拠して始点法により求めることができ、例えば、示差走査熱量計(NETZSCH社製、DSC3500A)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを-100℃から毎分20℃の昇温速度で150℃まで昇温を複数回繰り返すことで安定させたDSC曲線から求めることができる。
ガラス転移温度は、上記(メタ)アクリル系共重合体を構成するモノマー成分、上記架橋剤の種類や含有量を適宜選択することにより調整することができる。
【0026】
第一のアクリル粘着剤層11及び第二のアクリル粘着剤層15の厚みは、特に限定されないが、例えば、3~100μmであることが好ましい。上記厚みが3μm未満であると、遅れ泡が発生するおそれがある。一方で、上記厚みが100μmを超えると、上記光学透明粘着シートを貼り付ける被着体の表面に存在する段差に追従して変形できる程度の柔軟性(段差追従性)が得られなくなるおそれがある。また、ガラス基材と樹脂基材との貼り合わせのように、環境変化時の伸縮性が異なる基材同士の貼り合わせに上記光学透明粘着シートを用いた場合には、上記光学透明粘着シートが環境変化時の基材の寸法変化に追従できず剥離するおそれがある。第一のアクリル粘着剤層11及び第二のアクリル粘着剤層15の厚みは、3~40μmであることがより好ましい。
【0027】
<プライマー層>
第一のプライマー層12及び第二のプライマー層14は、プライマー組成物を硬化させたものである。上記プライマー組成物としては、例えば、樹脂成分と架橋剤とを含有するものが挙げられる。
第一のプライマー層12及び第二のプライマー層14を有することにより、第一のアクリル粘着剤層11及び第二のアクリル粘着剤層15と、熱硬化ポリウレタン層13との層間接着力を好適に付与することができる。
【0028】
上記樹脂成分としては、アクリル系樹脂及び/又はエステル系樹脂である。
このような樹脂成分を用いることにより、後述するガラス転移温度を満たすことができ、層間密着性を好適に付与することができる。
【0029】
上記アクリル系樹脂としては、例えば、メタクリル酸メチルを主成分とし、これにメタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルや共重合性モノマーを共重合した共重合体が用いられる。
【0030】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキルエステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s-ブチルエステル、t-ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステル等のアルキル基の炭素数1~30、特に炭素数4~18の直鎖状または分岐鎖状のアルキルエステル等が挙げられる。
【0031】
上記共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸やマレイン酸、フマール酸やクロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸や無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルや(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルや(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、[4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]メチル=アクリレート、(メタ)アクリル酸N-ヒドロキシメチルアミド等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;ジメチルアミノエチルメタクリレート、t -ブチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルエステル等のエポキシ基含有モノマー;その他(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等;が挙げられる。上記メタクリル酸メチルと共重合する上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルや共重合性モノマーの使用量は、全モノマー成分の50重量%以下が好ましい。
【0032】
さらに、プライマー層の樹脂成分として用いるアクリル系樹脂は、上記共重合性モノマーとしてカルボキシル基含有モノマー、酸無水物モノマーを用いた場合には、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル等のエポキシ化合物により変性したものや、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン等の一級または二級アミンによりアミド化したものを用いることもできる。さらには、エチレンイミン等をグラフト化させポリエチレンイミンのグラフト化物とすることもできる。
【0033】
上記エステル系樹脂としては、ジカルボン酸とジオールを重縮合して得られるポリエステルを主成分として含むポリエステル系樹脂が用いられる。
【0034】
上記ポリエステル系樹脂を構成するジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-スルホイソフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’-ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸等の脂肪族ジカルボン酸;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸;これらの誘導体(例えば、テレフタル酸等の上記ジカルボン酸の低級アルキルエステル等);等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。いくつかの態様において、芳香族ジカルボン酸を好ましく採用することができる。なかでも好ましいジカルボン酸として、テレフタル酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。例えば、上記ポリエステルを構成するジカルボン酸のうち50重量%以上(例えば80重量%以上、典型的には95重量%以上)が、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸またはこれらの併用であることが好ましい。上記ジカルボン酸は、実質的にテレフタル酸のみ、実質的に2,6-ナフタレンジカルボン酸のみ、または実質的にテレフタル酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸のみから構成されていてもよい。
【0035】
上記ポリエステル系樹脂を構成するジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、ポリオキシテトラメチレングリコール等の脂肪族ジオール;1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,1-シクロヘキサンジメチロール、1,4-シクロヘキサンジメチロール等の脂環式ジオール、キシリレングリコール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン等の芳香族ジオール;等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、透明性等の観点から脂肪族ジオールが好ましく、エチレングリコールが特に好ましい。上記ポリエステルを構成するジオールに占める脂肪族ジオール(好ましくはエチレングリコール)の割合は、50重量%以上(例えば80重量%以上、典型的には95重量%以上)であることが好ましい。上記ジオールは、実質的にエチレングリコールのみから構成されていてもよい。
【0036】
上記ポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。
【0037】
上記架橋剤としては、上述したアクリル粘着剤層で記載したものと同様のものを用いることができる。
なかでも、イソシアネート化合物、エポキシ化合物が好ましく、このような架橋剤を用いることにより、ガラス転移温度を好適に調整することができる。
上記架橋剤の含有量としては、ガラス転移温度を好適に調整する観点から、プライマー組成物の全体に対して、0.01~20重量%であることが好ましく、0.02~10重量%であることがより好ましい。
【0038】
上記樹脂成分は、層間接着力を好適に付与でき、光学透明粘着シート10の粘着力及び粘弾性のムラを好適に防止できる観点から、酸分が6mol%以下であることが好ましい。
また、本発明の光学透明粘着シートをタッチパネル等の貼り合わせに用いた場合に、タッチセンサーが腐食することを好適に防止することもできる。
上記樹脂成分は、酸分が3mol%以下であることがより好ましく、酸分を含まないことが更に好ましい。
ここで、上記酸分とは、上記樹脂成分中に含まれる酸性基由来の構造単位の割合を意味する。なお、酸性基としては、カルボキシル基、スルホ基、スルフィノ基、リン酸基等が挙げられる。
【0039】
第一のプライマー層12及び第二のプライマー層14は、ガラス転移温度が-7℃以下である。
このようなガラス転移温度を有することにより、層間密着性を付与できるので、光学透明粘着シート10の流れ方向における粘弾性及び粘着力のムラを抑制でき、生産安定性を向上することができる。
上記樹脂成分は、ガラス転移温度が-10℃以下であることが好ましく、-15℃以下であることがより好ましい。
ガラス転移温度は、上記樹脂成分、上記架橋剤の種類や含有量を適宜選択することにより調整することができる。
【0040】
第一のプライマー層12及び第二のプライマー層14は、厚みが1~50μmであることが好ましく、10~25μmであることがより好ましい。
第一のプライマー層12及び第二のプライマー層14の厚みが1μm未満であると、第一のプライマー層12及び第二のプライマー層14に層間密着性を充分に付与できないことがある。一方、第一のプライマー層12及び第二のプライマー層14の厚みが50μmを超えると、第一のプライマー層12及び第二のプライマー層14が凝集破壊しやすくなることがある。
【0041】
<熱硬化ポリウレタン層>
熱硬化ポリウレタン層13は、熱硬化ポリウレタンを硬化させたものである。熱硬化ポリウレタンは、溶剤を用いずに成膜できるため、熱硬化ポリウレタン層13が熱硬化ポリウレタンを含有することで、熱硬化ポリウレタン層13の厚膜化が可能となる。また、熱硬化ポリウレタン層13が熱硬化ポリウレタンを含有することで、厚膜に形成しても、優れた柔軟性及び透明性を有し、かつ、高温・高湿環境下においても信頼性が高い光学透明粘着シートを好適に得ることができる。
【0042】
熱硬化ポリウレタンは、アクリル変性されていないことが好ましく、主鎖中にアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等に由来する部位が含まれないことが好ましい。熱硬化ポリウレタンがアクリル変性されると、疎水化されるため、高温・高湿下において水分の凝集が生じやすくなる。この水分の凝集は、白化、発泡等を引き起こし、光学特性を損なうことがある。したがって、熱硬化ポリウレタンをアクリル変性されていないものとすることで、高温・高湿下において白化、発泡等による光学特性の低下を防止することができる。上記熱硬化ポリウレタンは、ポリオール成分に由来する単量体単位と、ポリイソシアネート成分に由来する単量体単位との合計量が、熱硬化ポリウレタン全体を構成する単量体単位の80モル%以上であることが好ましい。
【0043】
上記熱硬化ポリウレタンは、熱硬化性ポリウレタン組成物の硬化物である。上記熱硬化性ポリウレタン組成物は、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を含有することが好ましい。上記ポリオール成分及び上記ポリイソシアネート成分としては、いずれも常温(23℃)で液体のものを用いることができ、溶剤を用いずに熱硬化ポリウレタンを得ることができる。シランカップリング剤、タッキファイヤー等の他の成分は、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分のいずれかに添加することができ、好ましくは、ポリオール成分に添加される。熱硬化ポリウレタン層13を作製する際には、溶剤の除去が必要ないため、均一なシートを厚く形成することができる。また、熱硬化ポリウレタン層13は厚く形成しても光学特性を維持することができるものであり、色付き、発泡(被着体との界面での気泡の発生)を充分に抑制することができる。更に、熱硬化ポリウレタン層13は、厚膜化できるとともに柔軟であることから、耐衝撃性に優れる。熱硬化ポリウレタン層13を備えた光学透明粘着シートは、透明導電膜を表層に有する透明部材とカバーパネルとの貼り合わせに用いることができ、更に他の部材を用いる場合には、表示パネル、又は、透明導電膜を表層に有する透明部材と、他の部材との貼り合わせにも用いることができる。熱硬化ポリウレタン層13を備えた光学透明粘着シートを、表示パネルと透明導電膜を表層に有する透明部材(タッチパネル)との貼り合わせに用いる場合、表示パネルの外縁上に配置されたベゼルによって形成された段差を光学透明粘着シートによって被覆することができる。
【0044】
上記ポリオール成分としては特に限定されず、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
上記ポリオール成分は、オレフィン骨格を有するものが好ましい。すなわち主鎖がポリオレフィン又はその誘導体によって構成されていることが好ましい。上記オレフィン骨格を有するポリオール成分としては、例えば、1,2-ポリブタジエンポリオール、1,4-ポリブタジエンポリオール、1,2-ポリクロロプレンポリオール、1,4-ポリクロロプレンポリオール等のポリブタジエン系ポリオールや、ポリイソプレン系ポリオール、それらの二重結合を水素又はハロゲン等で飽和化したものが挙げられる。また、上記ポリオール成分は、ポリブタジエン系ポリオール等に、スチレン、エチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル等のオレフィン化合物を共重合させたポリオールやその水添物であってもよい。上記ポリオール成分は、直鎖構造を有するものであってもよく、分岐構造を有するものであってもよい。上記ポリオール成分は、1種類のみ用いられてもよいし、2種類以上用いられてもよい。上記熱硬化ポリウレタンに用いられるポリオール成分は、オレフィン骨格を有するポリオール成分を80モル%以上含むことが好ましく、より好ましくは、オレフィン骨格を有するポリオール成分のみからなる。
【0046】
上記ポリイソシアネート成分としては特に限定されず、従来公知のポリイソシアネートを用いることができ、親水性ユニットを有する親水性ポリイソシアネート、及び、親水性ユニットを有さない疎水性ポリイソシアネートのいずれか一方、又は、両方を用いてもよい。なお、上記親水性ユニットを有する親水性ポリイソシアネートとは、イソシアヌレート構造やビウレット構造のようにイソシアネート基に由来する構造のみによって親水性を向上させたものではなく、親水性を高める官能基(親水性ユニット)が付加されたポリイソシアネートを意味する。上記ポリイソシアネート成分中に親水性ユニットが含まれることで、吸湿による白化を抑制する作用が得られる。
【0047】
上記親水性ユニットとしては、エチレンオキシドユニットが好適である。上記エチレンオキシドユニットの含有量は、熱硬化性ポリウレタン組成物の全体に対して、0.1重量%以上、20重量%以下であることが好ましい。上記含有量が0.1重量%未満であると、白化を抑制する効果が充分に得られないおそれがある。上記含有量が20重量%を超えると、低極性のオレフィン系ポリオール成分、タッキファイヤー、可塑剤等との相溶性が低下することによって、ヘイズ等の光学特性が低下するおそれがある。上記エチレンオキシドユニットの含有量は、0.1~5重量%であることがより好ましい。上記含有量が5重量%を超えると、上記高温・高湿環境での吸湿量が多くなりすぎるおそれがある。
【0048】
エチレンオキシドユニット以外の親水性ユニットとしては、例えば、カルボン酸基、カルボン酸のアルカリ金属塩基、スルホン酸基、スルホン酸のアルカリ金属塩基、ヒドロキシル基、アミド基、アミノ基等を含むユニットが挙げられる。さらに詳しくは、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩、スルホン酸基含有共重合体、スルホン酸基含有共重合体のアルカリ金属塩、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0049】
ポリイソシアネート成分は、イソシアネート基を有する脂肪族及び/又は脂環族ポリイソシアネートと、エチレンオキシドユニットを有するエーテル化合物とを反応させて得られる変性ポリイソシアネートであることが好ましい。脂肪族及び/又は脂環族ポリイソシアネートを用いることにより、着色や変色がより発生しにくく、長期に渡って光学透明粘着シートの透明性をより確実に確保することができる。また、エチレンオキシドユニットを有するエーテル化合物を反応させた変性体とすることによって、ポリイソシアネート成分は、親水性部分(エチレンオキシドユニット)の作用によって白化を抑制することができ、疎水性部分(その他のユニット)の作用によって低極性のタッキファイヤー、可塑剤等との相溶性を発揮することができる。
【0050】
熱硬化性ポリウレタン組成物は、α比(ポリオール成分由来のOH基のモル数/ポリイソシアネート成分由来のNCO基のモル数)が1以上であることが好ましい。α比が1未満である場合には、ポリイソシアネート成分の配合量が、ポリオール成分の配合量に対して過剰であるため、熱硬化ポリウレタンが硬くなり、光学透明粘着シートに要求される柔軟性を確保することが困難となることがある。熱硬化ポリウレタン層13の柔軟性が低いと、特に、タッチパネル等の光学部材を貼り合わせる場合、貼り合わせ面に存在する凹凸及び段差を被覆することができない。また、α比が1未満であると、光学透明粘着シートに要求される粘着力を確保することができないおそれがある。上記α比は、2.0未満であることが好ましい。α比が2.0以上である場合には、熱硬化性ポリウレタン組成物が充分に硬化しないことがある。
【0051】
上記熱硬化ポリウレタンは、シランカップリング剤を含有してもよい。
上記シランカップリング剤としては、エポキシ基又はイソシアヌレート構造を有するものであり、エポキシ基又はイソシアヌレート構造を有し、かつアルコキシ基を有するものが好適に用いられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。エポキシ基を有するシランカップリング剤としては特に限定されず、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。イソシアヌレート構造を有するシランカップリング剤としては特に限定されず、例えば、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0052】
上記熱硬化性ポリウレタン組成物は、更に、可塑剤を含有してもよい。上記可塑剤としては、熱硬化ポリウレタンに柔軟性を付与するために用いられる化合物であれば特に限定されないが、相溶性及び耐候性の観点から、カルボン酸系可塑剤を含むことが好ましい。
【0053】
上記熱硬化性ポリウレタン組成物は、更に、触媒を含有してもよい。触媒としては、ウレタン化反応に用いられる触媒であれば特に限定されず、例えば、ジラウリル酸ジ-n-ブチル錫、ジラウリル酸ジメチル錫、ジブチル錫オキシド、オクタン錫等の有機錫化合物;有機チタン化合物;有機ジルコニウム化合物;カルボン酸錫塩;カルボン酸ビスマス塩;トリエチレンジアミン等のアミン系触媒が挙げられる。
【0054】
上記熱硬化性ポリウレタン組成物には、光学透明粘着シートの要求特性を阻害しない範囲で、必要に応じて、着色剤、安定剤、酸化防止剤、防徽剤、難燃剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
【0055】
熱硬化ポリウレタン層13の厚みは、100~2000μmであることが好ましい。上記厚みが100μm未満である場合には、光学透明粘着シート全体の柔軟性が低下し、光学透明粘着シートの一方の面を光学部材の表面に貼り付けたときに、光学透明粘着シートによって光学部材の表面に存在する凹凸又は段差を被覆することができず、光学透明粘着シートの他方の面と他の光学部材の表面とを充分な接着力で貼り合わせることができないことがある。上記厚みが2000μmを超える場合には、ヘイズや全光線透過率等の光学特性が充分に得られないことがある。熱硬化ポリウレタン層13の厚みの、より好ましい下限は150μmであり、更に好ましい下限は200μmであり、特に好ましい下限は250μmである。熱硬化ポリウレタン層13の厚みの、より好ましい上限は1500μmであり、更に好ましい上限は1000μmである。
【0056】
光学透明粘着シート10は、第一のアクリル粘着剤層11と第一のプライマー層12と熱硬化ポリウレタン層13と第二のプライマー層14と第二のアクリル粘着剤層15とをこの順に有していればよく、更に他の層を有してもよい。第一のアクリル粘着剤層11及び第二のアクリル粘着剤層15は、それぞれ光学透明粘着シート10の最表面(被着体と接する面)に位置することが好ましい。また、第一のアクリル粘着剤層11と第一のプライマー層12、該第一のプライマー層12と熱硬化ポリウレタン層13は、互いに接することが好ましい。また、第二のアクリル粘着剤層15と第二のプライマー層14、該第二のプライマー層14と熱硬化ポリウレタン層13は、互いに接することが好ましい。
【0057】
<光学透明粘着シート>
光学透明粘着シート10は、光学透明粘着シートとしての性能を確保するために、ヘイズが1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。また、本発明の光学透明粘着シート10は、全光線透過率が90%以上であることが好ましい。ヘイズ及び全光線透過率は、例えば、日本電色工業社製の濁度計「HazeMeter NDH2000」を用いて測定することができる。ヘイズは、JIS K 7136に準拠した方法で測定され、全光線透過率は、JIS K 7361-1に準拠した方法で測定される。
【0058】
光学透明粘着シート10全体の厚みは106μm以上であることが好ましい。光学透明粘着シート10全体の厚みの上限は特に限定されないが、例えば、3000μmである。光学透明粘着シート10は、被着体の貼り付け面に存在する凹凸又は段差の高さに対して3倍以上の厚みを有することが好ましい。上記厚みのより好ましい下限は500μmであり、更に好ましい下限は750μmであり、好ましい上限は2000μmであり、より好ましい上限は1750μmである。
【0059】
光学透明粘着シート10は、流れ方向における端部と中央部との粘弾性の差が極めて少ない性質を有するため生産安定性に優れる。一方で、流れ方向における端部と中央部との粘弾性のムラが大きいと、安定した性質を有する光学透明粘着シートを得ることができない。
光学透明粘着シート10は、端部と中央部における85℃における損失正接(tanδ85℃)の差が0.02以下であることが好ましく、0.01以下であることがより好ましい。
なお、上記端部とは、幅方向における端から0~30%の部分を意味し、中央部とは、幅方向における端から31~69%の部分を意味する。
ここで、上記損失正接は、例えば、アントンパール社(Anton Paar Germany GmbH)製の粘弾性測定装置「Physica MCR301」を用いて測定することができる。測定条件は、測定プレートとしてPP12を用い、ひずみ0.1%、周波数1Hz、セル温度25℃~100℃(昇温速度3℃/分)で測定し、目的の温度における測定値を採用することができる。
【0060】
光学透明粘着シート10は、第一のアクリル粘着剤層11及び第二のアクリル粘着剤層15の常温(23℃)におけるガラスに対する粘着力が、7N/25mm以上であることが好ましい。上記第一及び第二のアクリル粘着剤層の常温におけるガラスに対する粘着力がともに7N/25mm以上であることで、光学透明粘着シート10は、ガラス基材を有する被着体に対して、充分な粘着性を有することができる。上記常温における粘着力は、180°剥離試験で測定される粘着力である。180°剥離試験の試験方法の詳細については後述する。上記常温における粘着力は、10N/25mm以上であることがより好ましく、30N/25mm以上であることが更に好ましい。
【0061】
光学透明粘着シート10は、生産性を高める観点から、上記端部及び中央部において、常温(23℃)におけるガラスに対する粘着力の差が少ないことが好ましい。
具体的には、端部と中央部において、常温(23℃)におけるガラスに対する粘着力差が5N/25mm未満であることが好ましく、3N/25mm未満であることがより好ましい。
【0062】
光学透明粘着シート10は、第一のアクリル粘着剤層11及び第二のアクリル粘着剤層15の85℃におけるガラスに対する粘着力が、1.0N/25mm以上であることが好ましい。上記85℃における粘着力は、180°剥離試験で測定される粘着力である。上記第一及び第二のアクリル粘着剤層の85℃におけるガラスに対する粘着力がともに1.0N/25mm以上であることで、本発明の光学透明粘着シートは、ガラス基材を有する被着体に対して、高温・高湿環境下においても充分な粘着性を維持することができる。上記85℃における粘着力の上限は特に限定されないが、例えば、15N/25mmである。
【0063】
図3は、粘着力の評価方法を説明するための模式図である。上記180°剥離試験は、例えば、長さ75mm×幅25mmに裁断した光学透明粘着シート10を試験片とし、それぞれの試験片の片面を長さ75mm×幅25mmのスライドガラス31に貼り付け、圧力0.4MPaで30分間保持し、光学透明粘着シート10とスライドガラス31とを貼り合わせる。次に、図3(a)に示すように、光学透明粘着シート10のスライドガラス31とは反対側の面に、PETシート32を貼り合わせる。その後、所定の温度で、一定時間放置した後、図3(b)に示すように、PETシート32を180°方向に引っ張り、光学透明粘着シート10をスライドガラス31との界面で剥離させ、スライドガラス31に対する光学透明粘着シート10の粘着力を測定する。上記PETシートとしては、例えば、厚み125μmのPETシート(帝人デュポンフィルム社製の「メリネックス(登録商標)S」)等を用いることができる。
【0064】
[光学透明粘着シートの製造方法]
第一のアクリル粘着剤層11と、熱硬化ポリウレタン層13と、第二のアクリル粘着剤層15とをこの順に積層する方法としては特に限定されず、例えば、第一のアクリル粘着剤層11、第二のアクリル粘着剤層15及び熱硬化ポリウレタン層13を個別に作製し、熱硬化ポリウレタン層13の一方の面に第一のプライマー層12を形成し、もう一方の面に第二のプライマー層14を形成した後、第一のプライマー層12が形成された側に第一のアクリル粘着剤層11、第二のプライマー層14が形成された側に第二のアクリル粘着剤層15を貼り合わせる方法が挙げられる。
【0065】
第一のアクリル粘着剤層11及び第二のアクリル粘着剤層15の製法は特に限定されず、例えば、アクリル樹脂組成物を各種コーティング装置、バーコート、ドクターブレード等の汎用の成膜装置や成膜方法を用いるものであってもよい。また、遠心成形法を用いて第一のアクリル粘着剤層11及び第二のアクリル粘着剤層15を作製してもよい。
【0066】
第一のプライマー層12及び第二のプライマー層14の製法は特に限定されず、例えば、プライマー組成物を各種コーティング装置、バーコート、ドクターブレード等の汎用の成膜装置や成膜方法を用いるものであってもよい。また、遠心成形法を用いて第一のプライマー層12及び第二のプライマー層14を作製してもよい。
【0067】
熱硬化ポリウレタン層13の製法は特に限定されず、例えば、熱硬化性ポリウレタン組成物を調製した後、この組成物を従来公知の方法で熱硬化させつつ成形する方法が挙げられ、好ましくは、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、シランカップリング剤、及び、タッキファイヤーを攪拌混合して熱硬化性ポリウレタン組成物を調製する工程と、熱硬化性ポリウレタン組成物を硬化する工程とを含む。
【0068】
製法の具体例としては、まず、所定量のタッキファイヤーを、ポリオール成分に添加し、加温及び攪拌して溶解させることによって、マスターバッチを調製する。続いて、得られたマスターバッチ、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、シランカップリング剤、及び、必要に応じて触媒等の他の成分を混合し、ミキサー等で攪拌することによって、液状又はゲル状の熱硬化性ポリウレタン組成物を得る。その後、即座に熱硬化性ポリウレタン組成物を成形装置に投入し、第一及び第二の離型フィルムによって挟んだ状態で熱硬化性ポリウレタン組成物を移動させながら硬化反応(架橋反応)させることで、熱硬化性ポリウレタン組成物が半硬化され、第一及び第二の離型フィルムと一体化されたシートを得る。その後、炉で一定時間架橋反応させることで、熱硬化ポリウレタン層13が得られる。
【0069】
熱硬化ポリウレタン層13の製法としては、硬化前の熱硬化性ポリウレタン組成物を調製した後、各種コーティング装置、バーコート、ドクターブレード等の汎用の成膜装置や成膜方法を用いるものであってもよい。また、遠心成形法を用いて熱硬化ポリウレタン層13を作製してもよい。
【0070】
[積層シート]
本発明の光学透明粘着シートの両面には離型フィルムが貼り付けられてもよい。図4は、本発明の積層シートの一例を模式的に示した断面図である。本発明の光学透明粘着シート10と、光学透明粘着シート10の一方の面を覆う第一の離型フィルム21と、光学透明粘着シート10の他方の面を覆う第二の離型フィルム22とが積層された積層シート20もまた、本発明の一態様である。本発明の積層シートによれば、第一の離型フィルム及び第二の離型フィルムによって、本発明の光学透明粘着シートの両面を、被着体に貼り付ける直前まで保護することができる。これにより、本発明の光学透明粘着シートに対する、粘着性の低下、及び、異物の付着が防止される。また、本発明の光学透明粘着シートが被着体以外に貼り付いてしまうことも防止されるため、取り扱い性が高まる。
【0071】
第一の離型フィルム及び第二の離型フィルムは、PETフィルム等の樹脂フィルムであってもよいし、離型処理が施された紙(離型紙)であってもよい。第一の離型フィルム及び第二の離型フィルムの材質及び厚みは、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0072】
本発明の光学透明粘着シート及び第一の離型フィルムの貼り合わせ強度(剥離強度)と、本発明の光学透明粘着シート及び第二の離型フィルムの貼り合わせ強度(剥離強度)とは、互いに異なることが好ましい。このように貼り合わせ強度が互いに異なることにより、第一の離型フィルム及び第二の離型フィルムのうちの一方(貼り合わせ強度が低い方の離型フィルム)のみを本発明の積層シートから剥離し、露出させた光学透明粘着シートの一方の面と第一の被着体とを貼り合わせ、その後、第一の離型フィルム及び第二の離型フィルムのうちの他方(貼り合わせ強度が高い方の離型フィルム)を剥離し、露出させた光学透明粘着シートの他方の面と第二の被着体とを貼り合わせることが容易になる。
【0073】
第一の離型フィルムの本発明の光学透明粘着シートと接する側の表面、及び、第二の離型フィルムの本発明の光学透明粘着シートと接する側の表面のうちの少なくとも一方には、離型処理(易剥離処理)が施されていてもよい。易剥離処理としては、例えば、シリコーン処理等が挙げられる。
【0074】
[貼り合わせ構造物]
本発明の光学透明粘着シートの用途は特に限定されない。第一の被着体と、第二の被着体と、上記第一の被着体及び上記第二の被着体を接合する上記光学透明粘着シートとを備える貼り合わせ構造物もまた、本発明の一態様である。
【0075】
本発明の光学透明粘着シートは、液晶モジュールとカバーパネルとの接合に用いることができる。液晶モジュールとカバーパネルとを光学透明粘着シートによって接合し、液晶モジュールとカバーパネルとの間に存在する空気層をなくすことで、液晶モジュールの視認性を向上することができる。この場合、第一の被着体及び第二の被着体は、液晶モジュール及びカバーパネルである。表示部に開口が設けられた筐体(ベゼル)内に液晶モジュールが配置される場合、液晶モジュールの外縁上にベゼルが配置されることになる。そのため、ベゼルの厚みに対応する段差が形成される。液晶モジュールの中央だけでなく、ベゼルが配置された領域にも光学透明粘着シートを重ねて液晶モジュールとカバーパネルとの接合を行う方式を「ベゼルオン貼合」ともいう。ベゼルオン貼合により形成される貼り合わせ構造を「ベゼルオン貼合構造」ともいう。
【0076】
本発明の光学透明粘着シートは、柔軟であり、かつ厚膜化が可能であることから、ベゼルオン貼合に適用可能である。本発明の貼り合わせ構造物は、光学透明粘着シート及び支持部材を第一の基材と第二の基材との間に備える構造を有し、上記支持部材は、上記第一の基材の外縁上に配置された段差形成部を有し、上記光学透明粘着シートは、上記第一の基材と上記第二の基材とを接着する厚膜部と、上記段差形成部と上記第二の基材との間に挟み込まれた端部とを含むものであってもよい。
【0077】
図5は、ベゼルオン貼合構造を有する本発明の貼り合わせ構造物の構成を模式的に示した断面図である。図5に示した貼り合わせ構造物50は、第一の基材51及び第二の基材52との間に、光学透明粘着シート10及び上ベゼル(支持部材)41が設けられた構成を有し、例えば、表示装置等の電子機器の一部であってもよい。上ベゼル41は、下ベゼル42と一体化され、第一の基材51を収容する筐体(ベゼル)を構成する。
【0078】
貼り合わせ構造物50において、光学透明粘着シート10は、第一の基材51と第二の基材52とを接着する厚膜部と、上ベゼル41の段差形成部と第二の基材52との間に挟み込まれた端部とを含む。光学透明粘着シート10の端部は、第二の基材52と上ベゼル41の段差形成部との間に挟み込まれているため、剥がれにくい。また、光学透明粘着シート10が上ベゼル41の段差形成部まで到達していることから、第一の基材51の上面は全て、上ベゼル41の段差形成部又は光学透明粘着シート10によって被覆されており、第一の基材51の吸湿を防止できる。第一の基材51の上面に偏光板が位置する場合には、偏光板の吸湿を防止できる。偏光板が吸湿すると、性能劣化が早まったり、高温環境下で吸湿された水分が蒸発することで遅れ泡を引き起こしたりすることがある。
【0079】
第一の基材51と第二の基材52との組み合わせは特に限定されず、例えば、表示パネル、タッチパネル(ITO透明導電膜付きガラス基板)、カバーパネル(カバーガラス)等の表示装置を構成する各種部材が挙げられる。表示パネルの種類は特に限定されず、例えば、液晶パネル、有機エレクトロルミネッセンスパネル(有機ELパネル)等が挙げられる。また、表示パネルの光学透明粘着シート10が貼り付けられる面には、偏光板、位相差フィルム等が配置されていてもよい。光学透明粘着シート10を用いて表示装置内の各種部材を貼り合わせれば、表示装置内の空気層(エアギャップ)を無くすことができ、表示画面の視認性を向上することができる。また、偏光板が配置されている場合には、光学透明粘着シート10によって偏光板の吸湿を効果的に防止することができる。第一の基材51が液晶モジュール等の表示パネルであり、第二の基材52がカバーパネル(カバーガラス)又はタッチセンサーガラスである組み合わせが好適である。
【0080】
第一の基材51及び第二の基材52の材質は特に限定されず、例えば、ガラス、樹脂等が挙げられる。第一の基材51及び/又は第二の基材52を構成する樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、トリアセチルセルロース(TAC)等が挙げられる。例えば、第一の基材51の光学透明粘着シート10が貼り付けられる面に偏光板が配置される場合には、光学透明粘着シート10と接する表面はTACで構成されることがある。なお、偏光板は、TAC、ポリビニルアルコール(PVA)及びTACの積層構造を有するものであってもよいし、上記積層構造のTAC表面にAG(アンチグレア)処理を施したものであってもよいし、上記積層構造のTAC表面にHC(ハードコート)処理を施したものであってもよいし、上記積層構造のTAC表面にAG処理及びHC処理を施したものであってもよい。
【0081】
上ベゼル41は、平面視したときに、光学透明粘着シート10の周囲に配置された枠状の部材であり、少なくとも一部が第一の基材51の外縁上に配置されている。第一の基材51の外縁上に配置された部分(段差形成部)の側面が段差を形成する。段差形成部の側面の形状は特に限定されず、第一の基材51の上面に対して段差形成部の側面が垂直であってもよい。第一の基材51が表示パネルである場合には、上ベゼル41が表示装置の額縁領域に配置されるが、表示装置の使用者から上ベゼル41が見えないように、第一の基材51の外縁に遮光部52Aが設けられてもよい。上ベゼル41の材質は特に限定されず、例えば、金属、樹脂等が挙げられる。
【0082】
上ベゼル41の厚み(段差の大きさ)は特に限定されないが、例えば、200~1000μmとされる。上ベゼル41の厚みが200μmを超えると、光学透明粘着シート10の厚みを300μm以上にすることが必要となるため、通常の光学透明粘着シートよりも厚い光学透明粘着シートが用いられる。
【0083】
光学透明粘着シート10の厚膜部の厚みは、上ベゼル41の段差形成部の厚みの1.5倍以上であり、2倍以上であることがより好ましい。これにより、上ベゼル41の段差形成部と第二の基材52との間に挟み込まれた光学透明粘着シート10の端部において充分な厚みを確保することができ、端部の剥離を防止できる。なお、貼り合わせ構造物50における光学透明粘着シート10の厚膜部の厚みは、光学透明粘着シート10の貼り合わせ前の厚みと実質的に同じである。すなわち、光学透明粘着シート10の貼り合わせ前の厚みは、上ベゼル41の厚みの1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましい。
【実施例
【0084】
以下、本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0085】
<アクリル系樹脂組成物>
(A-1)
アクリル系樹脂(綜研化学社製の「SK1838」)に、アクリル系樹脂組成物全体に対して、0.15重量%となるようにエポキシ系架橋剤(綜研化学社製の「E-AX」)を添加し、アクリル系樹脂組成物(架橋後のガラス転移温度:-5.2℃)を作製した。
【0086】
<プライマー組成物>
(P-1)
樹脂成分(綜研化学社製の「SK1875」)に、プライマー組成物の全体に対して、0.7重量%となるようにイソシアネート系架橋剤(綜研化学社製の「DY-70」)を添加し、プライマー組成物(架橋後のガラス転移温度:-12.4℃、酸分:0mol%)を作製した。
(P-2)
樹脂成分(東亜合成社製の「MPT-54」)に、プライマー組成物の全体に対して、0.06重量%となるようにイソシアネート系架橋剤(東亜合成社製の「硬化剤02」)を添加し、プライマー組成物(架橋後のガラス転移温度:-18.7℃、0mol%)を作製した。
(P-3)
樹脂成分(東亜合成社製の「MPT-29」)に、プライマー組成物の全体に対して、0.07重量%となるようにイソシアネート系架橋剤(東亜合成社製の「硬化剤02」)を添加し、プライマー組成物(架橋後のガラス転移温度:-4.3℃、0mol%)を作製した。
(P-4)
樹脂成分(日本カーバイド工業社製の「SZ8580」)に、プライマー組成物の全体に対して、0.14重量%となるようにイソシアネート系架橋剤(日本カーバイド工業社製の「CK-121」)を添加し、プライマー組成物(架橋後のガラス転移温度:-18.5℃、0mol%)を作製した。
(P-5)
樹脂成分(日本カーバイド工業社製の「KP-2984」)に、プライマー組成物の全体に対して、0.1重量%となるようにイソシアネート系架橋剤(日本カーバイド工業社製の「CK-121」)を添加し、プライマー組成物(架橋後のガラス転移温度:-7.2℃、酸分有り)を作製した。
(P-6)
樹脂成分(トーヨーケム社製の「BPS6660Q」)に、プライマー組成物の全体に対して、0.2重量%となるようにイソシアネート系架橋剤(トーヨーケム社製の「BXX6450」)を添加し、プライマー組成物(ガラス転移温度:-26.0℃、0mol%)を作製した。
なお、酸分については、それぞれの樹脂成分中に含まれる酸性基由来の構造単位の割合を求めたものである。
【0087】
<ガラス転移温度(Tg)>
上記ガラス転移温度(Tg)は、架橋後の(A-1)及び(P-1)~(P-6)について、示差走査熱量計(NETZSCH社製、DSC3500A)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを-100℃から毎分20℃の昇温速度で150℃まで昇温を複数回繰り返すことで安定させたDSC曲線を得た後、JIS K7121の規定に準拠して始点法により求めた値である。
【0088】
<熱硬化性ポリウレタン組成物>
(U-1)
ポリオレフィンポリオール(出光興産社製の「EPOL(エポール、登録商標)」)85重量部、IPDI(イソホロンジイソシアネート)系ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン社製の「デスモジュールI」)4.0重量部、エチレンオキシドユニットを含む変性ポリイソシアネート(東ソー社製の「コロネート4022」)4.0重量部、タッキファイヤー(出光興産社製の「アイマーブP-100」)8.5重量部、及び、触媒(ジラウリル酸ジメチル錫)0.1重量部を、往復回転式撹拌機アジターを用いて攪拌混合し、α比が1.42であるポリウレタン組成物を調製した。ポリウレタン組成物において、IPDI系ポリイソシアネート(A)と変性ポリイソシアネート(B)との混合比(モル比)は、A:B=2:1であった。
なお、東ソー社製の「コロネート4022」は、ヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はヘキサメチレンジイソシアネートモノマーを出発物質とするポリイソシアネートに対して、エチレンオキシドユニットを1分子当たり平均3個以上有するエーテルポリオールを反応させて得られたものである。
【0089】
(実施例1)
熱硬化性ポリウレタン組成物(U-1)を、炉内温度50~90℃、炉内時間数分間の条件で架橋硬化させた。その後、加熱装置で10~15時間架橋反応させ、熱硬化性ポリウレタン組成物(U-1)からなる熱硬化ポリウレタン層を作製した。熱硬化ポリウレタン層の厚みは1460μmであった。
【0090】
その一方で、アクリル系樹脂組成物(A-1)を離型フィルムにコンマコーターにて塗工した後、80℃~120℃の乾燥炉において乾燥後、更にアクリル系樹脂組成物(A-1)を塗工した面に離型フィルムを重ねた。その後、40℃で1週間加熱することにより硬化を完了させ、アクリル粘着剤層を作製した。アクリル粘着剤層の厚みは10μmであった。
得られたアクリル粘着剤層から一方の離型フィルムを剥離し、一枚目のアクリル粘着剤層の上記離型フィルムを剥離した面にプライマー組成物(P-1)を塗工し、80℃~120℃の乾燥炉において乾燥後、更にプライマー組成物(P-1)を塗工した面に離型フィルムを重ねた。その後、40℃で1週間加熱することにより硬化を完了させ、アクリル粘着剤層の一方の面上に、プライマー層を形成した。プライマー層の厚みは10μmであった。
【0091】
その後、上記プライマー層が形成されたアクリル粘着剤層を二枚と、上記熱硬化ポリウレタン層を一枚とを準備した。一枚目のプライマー層が形成されたアクリル粘着剤層からプライマー層が形成された側の離型フィルムを剥離し、一枚目のアクリル粘着剤層の上記プライマー層が形成された側の面に熱硬化ポリウレタン層を積層した。更に、二枚目のプライマー層が形成されたアクリル粘着剤層からプライマー層が形成された側の離型フィルムを剥離し、上記熱硬化ポリウレタン層の上記一枚目のプライマー層が形成されたアクリル粘着剤層(第一のアクリル粘着剤層及び第一のプライマー層)を積層した面と反対側の面に、二枚目のプライマー層が形成されたアクリル粘着剤層(第二のアクリル粘着剤層及び第二のプライマー層)を積層した。これにより、離型フィルム、第一のアクリル粘着剤層、第一のプライマー層、熱硬化ポリウレタン層、第二のプライマー層、第二のアクリル粘着剤層及び離型フィルムがこの順で積層された離型フィルム付き光学透明粘着シートを作製した。光学透明粘着シートの厚みは1500μmであった。
【0092】
光学透明粘着シートの損失正接(tanδ)の測定
アントンパール社(Anton Paar Germany GmbH)製の粘弾性測定装置「Physica MCR301」を用いて、得られた光学透明粘着シートの損失正接を測定した。測定プレートは、PP12を用い、測定条件は、ひずみ0.1%、周波数1Hz、セル温度25℃~100℃(昇温速度3℃/分)とした。85℃での光学透明粘着シートの損失正接を表1に示す。
なお、上記損失正接(tanδ)の測定は、幅方向における端から0~30%の部分(端部)、及び、端から31~69%の部分(中央部)のそれぞれについて行った。
【0093】
(比較例1)
ポリウレタン組成物(B-1)を一対の離型フィルム(表面に離型処理が施されたPETフィルム)によって挟んだ状態で搬送しつつ、炉内温度50~90℃、炉内時間数分間の条件で架橋硬化させ、離型フィルム付きのシートを得た。その後、加熱装置で10~15時間架橋反応させ、両面に離型フィルムが設けられた、ポリウレタン組成物(B-1)を含有する熱硬化ポリウレタン層を作製した。熱硬化ポリウレタン層の厚みは1480μmであった。
【0094】
その一方で、アクリル系樹脂組成物(A-1)を離型フィルムにコンマコーターにて塗工した後、80℃~120℃の乾燥炉において乾燥後、更にアクリル系樹脂組成物(A-1)を塗工した面に離型フィルムを重ねた。その後、40℃で1週間加熱することにより硬化を完了させ、アクリル粘着剤層を作製した。アクリル粘着剤層の厚みは10μmであった。
【0095】
その後、上記離型フィルム付きアクリル粘着剤層を二枚と、上記離型フィルム付き熱硬化ポリウレタン層を一枚とを準備した。一枚目の離型フィルム付きアクリル粘着剤層から一方の離型フィルムを剥離し、一枚目のアクリル粘着剤層の上記離型フィルムを剥離した面に熱硬化ポリウレタン層を積層した。更に、二枚目の離型フィルム付きアクリル粘着剤層から一方の離型フィルムを剥離し、上記熱硬化ポリウレタン層の上記一枚目のアクリル粘着剤層(第一のアクリル粘着剤層)を積層した面と反対側の面に、二枚目のアクリル粘着剤層(第二のアクリル粘着剤層)を積層した。これにより、離型フィルム、第一のアクリル粘着剤層、熱硬化ポリウレタン層、第二のアクリル粘着剤層及び離型フィルムがこの順で積層された離型フィルム付き光学透明粘着シートを作製した。光学透明粘着シートの厚みは1500μmであった。
【0096】
(実施例2~5及び比較例2)
プライマー組成物の種類及びプライマー層の厚みを変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~5及び比較例2に係る光学透明粘着シートをそれぞれ作製した。
なお、実施例2~5及び比較例2のそれぞれにおいて、第二のプライマー層は、第一のプライマー層と同じ種類のプライマー組成物を用い、同じ厚みとした。
【0097】
実施例2~5及び比較例1~2で得られた光学透明粘着シートについて、実施例1と同様にして損失正接を測定した。
【0098】
【表1】
【0099】
上記表1から分かるように、実施例1~5では、85℃において測定した端部及び中央部において損失正接が小さいので、高温環境においても粘着力の差が小さく、安定した粘着力を有しており、また、生産安定性にも優れることが確認された。
一方、プライマー層を形成しない比較例1、プライマー層のガラス転移温度が-7℃を超えており、アクリル粘着剤層よりも高い比較例2では、85℃において測定した端部及び中央部において損失正接の差が大きいので、高温環境においても安定した粘着力を発揮することができず、また、生産安定性においても劣っていた。
【符号の説明】
【0100】
10:光学透明粘着シート
11:第一のアクリル粘着剤層
12:第一のプライマー層
13:熱硬化ポリウレタン層
14:第二のプライマー層
15:第二のアクリル粘着剤層
20:積層シート
21:第一の離型フィルム
22:第二の離型フィルム
31:スライドガラス
32:PETシート
41:上ベゼル(支持部材)
42:下ベゼル
50:貼り合わせ構造物
51:第一の基材
52:第二の基材
52A:遮光部
60:ロール
70:吐出装置
80:搬送ローラー
図1
図2
図3
図4
図5