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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】油性固形化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20230105BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20230105BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230105BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20230105BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20230105BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/891
A61K8/92
A61Q19/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019040271
(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公開番号】P2019172658
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2018066214
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】竹内 俊吾
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-509911(JP,A)
【文献】特開2000-344627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/86
A61K 8/31
A61K 8/37
A61K 8/891
A61K 8/92
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(D);
(A)ポリエチレングリコール
(B)抱水性油剤として、ダイマージリノール酸ジ(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、及びジペンタエリトリット脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1又は2種以上
(C)B以外の25℃で液状及び/又はペースト状の油剤として、流動イソパラフィン、流動パラフィン、グリセライド油、及びシリコーン油からなる群から選択される1又は2種以上
(D)25℃で固形状のワックス
を含有し、成分(A)(B)(C)と成分(D)の含有質量割合{(A)+(B)+(C)}/(D)が4~9であり、テクスチャーアナライザーを用いて測定した延展性が26~45である油性固形化粧料
【請求項2】
前記成分(D)が、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスから選択される1種又は2種以上である請求項1に記載の油性固形化粧料
【請求項3】
前記成分(A)が、重量平均分子量10000以下であることを特徴とする請求項1または請求項2何れかに記載の油性固形化粧料
【請求項4】
前記成分(B)と成分(C)のIOB値が重量平均で0.15~0.28であることを特徴とする請求項1~3何れかに記載の油性固形化粧料
【請求項5】
マッサージ用であることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の油性固形化粧料。
【請求項6】
前記成分{(A)+(B)/(C)}の含有質量割合が0.15以上である請求項1~5の何れかに記載の油性固形化粧料
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性剤型でありながら塗布後の保湿性に優れ、かつ使用時の滑らかな延展性による肌への負担感の低さを実現しながらも、一方でマッサージの際に折れてしまったりする事がない様に強度を保ったマッサージ用油性固形化粧料を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、肌質改善や美容目的で、顔面その他身体各部の皮膚をマッサージすることが行われている。マッサージの際に併用して用いられる製剤として、油剤を中心とした潤滑剤を用いることで皮膚への刺激を和らげ、物理的に刺激を加えることで、血行状態の改善を促す事が知られている。潤滑剤として液状油を用いることで手の滑りを良くする、あるいは良い香りを付与してアロマ効果により心身ともにリラックスさせるなど様々な効果があることも示唆されている。(例えば特許文献1参照)一般的に、油性固形化粧料は、使用性や携帯性に優れるため、化粧料に広く応用されている剤型の一つであり、乳化型化粧料などと比較して延展性に優れながら固形分の量にもよるが肌への適度な心地よい抵抗感なども得られ、かつ塗布中の変化も少ないためマッサージ用途として用いられる事が多い。また、配合される固形油、半固形油、液状油の成分や配合量を変えることで様々な官能を演出する検討がなされてきた(例えば特許文献2や特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-001206号公報
【文献】特開2011-74006号公報
【文献】特開2016-17075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、皮膚面からの水分蒸散を抑制し、肌感触を向上させるが、液体であるために、たれ落ちといった使用性の悪さや抵抗感がないためマッサージ圧を強める必要がある。また、特許文献2のように、滑らかで崩れるように設計された油性固形化粧料においては、マッサージ用途に用いると強度が足りず折れるなど使用性が満足でない。また、特許文献3のように滑らかな使用感であっても油性固形では経時において保湿効果が得られにくい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる実情において、本発明者は鋭意研究した結果、一般的な油性固形化粧料の構成成分である固形油と、液状及び/又はペースト状の油剤に加え、ポリエチレングリコール、及び抱水性油剤を組み合わせる事により肌への塗布後の保湿性を向上させる一方、油性成分以外の添加により油性固形化粧料自体の構造強度を損ねてマッサージの際に折れてしまったりする事がない様に強度を保ちながらも使用時の滑らかな延展性により肌への負担感の低さを実現した領域の組成物を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち本発明は、次の成分(A)~(D);
(A)ポリエチレングリコール
(B)抱水性油剤から選ばれる1種以上
(C)B以外の25℃で液状及び/又は~ペースト状の油
(D)25℃で固形状のワックス
を含有し、成分(A)(B)(C)と成分(D)の含有質量割合{(A)+(B)+(C)}/(D)が4~9であり、テクスチャーアナライザーを用いて測定した延展性が26~45である油性固形化粧料を提供するものである。
【0007】
さらに成分(D)が、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスから選択される1種又は2種以上である油性固形化粧料を提供するものである。
【0008】
さらに成分(A)が、重量平均分子量10000以下である油性固形化粧料を提供するものである。
【0009】
さらに成分(B)と成分(C)のIOB値が重量平均で0.15~0.28である油性固形化粧料を提供するものである。
【0010】
さらに成分(B)が、ジリノール酸ジ(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1又は2種以上である油性固形化粧料を提供するものである。
【0011】
さらに、マッサージ用であることを特徴とする油性固形化粧料を提供するものである。
【0012】
さらに、前記成分{(A)+(B)/(C)}の含有質量割合が0.15以上である油性固形化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、油性剤型でありながら塗布後の保湿性に優れ、かつ使用時の滑らかな延展性により肌への負担感の低さを実現しながらも、一方でマッサージの際に折れてしまったりする事がない様に強度を保った油性固形化粧料を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
【0015】
本発明における成分(A)のポリエチレングリコールは、通常化粧料又は皮膚外用剤等に用いられるものであればいずれのものも使用する事が出来、肌への保湿性の向上の観点から、重量平均分子量200~10000のものが好ましく、きしみやベタツキの発生しにくさから380~1540のものがより好ましい。また、成形性と保湿性の向上の観点から互いに異なる重合度のポリエチレングリコールを2種以上用いるのも好ましい。例えば、重量平均分子量が200~1000程度のものと、1000を超えて10000程度のものをそれぞれ用いるのも好ましい。本発明に使用可能な成分(A)ポリエチレングリコールは、例えば、International Nomenclature Cosmetic Ingredientに収載されているPEG-4,PEG-6,PEG-8,PEG-12,PEG-15、PEG-20、PEG-30、PEG-32、PEG-40、PEG-80、PEG-120、PEG-150等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。また、重量平均分子量は、化粧品原料基準第二版に記載の方法により求められた値である。
【0016】
本発明における成分(A)の含有量は特に限定されないが、保湿性およびマッサージ時のべたつきのなさの観点から0.01~15質量%(以下、単に「%」と略す)が好ましく、5~10%が更に好ましい。
【0017】
本発明における成分(B)抱水性油剤とは、構造中に水と結合しやすい官能基を持つことや、又物質としての粘性に起因して油性成分にも関わらず、水を混合した際に保持する特性を持つ油剤を指し、本発明では特に以下の試験法により抱水力100以上のものである。
【0018】
試験法:50℃に加熱した油剤10gを200mlビーカーに秤り取り、デスパーミキサーにて3000rpmで攪拌しながら50℃の水を徐々に添加し、水が排液しない最大限の質量を測定し、この数値を10で除し、100倍して抱水力とした。
【0019】
本発明における成分(B)は、皮膚外用剤又は化粧料に使用できるものであればいずれのものも使用でき、N-アシルアミノ酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ダイマー酸エステル、ジペンタエリストール脂肪酸エステル、ステロール誘導体等が挙げられる。これら成分(B)としては、例えば、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジオクチルドデシル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)等のN-アシルアミノ酸エステル、ヒマシ油、シア脂、ヘキサグリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、(アジピン酸/2-エチルヘキサン酸/ステアリン酸)グリセリルオリゴエステル、ステアリン酸硬化ヒマシ油、ヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油等のグリセリン脂肪酸エステル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビスイソステアリル等のダイマー酸エステル、(12-ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリトール、(12-ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリトール等のジペンタエリストール脂肪酸エステル、コレステロール、イソステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、リシノール酸コレステリル等の脂肪酸コレステリルエステル、フィトステロール、オレイン酸フィトステリル、マカデミアンナッツ油脂肪酸フィトステリル等の脂肪酸フィトステリルエステル等のステロール誘導体などが挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
これらの中でも、脂肪酸フィトステリル、ダイマー酸エステルが保湿感に優れるため好ましく、さらに、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステルが、保湿効果の持続性を高めるため、より好ましい。
【0021】
成分(B)の市販品としては、PLANDOOL-S(抱水力300%)(日本精化社製)、PLANDOOL-MAS(抱水力102%)(日本精化社製)、コスモール168ARNV(抱水力235%)(日清オイリオグループ社製)等が挙げられる。
【0022】
本発明における成分(B)の含有量は、特に限定されないが、0.01~10%が好ましく、1~5%が保湿効果の持続、ならびにべたつきを感じないため更に好ましい。
【0023】
本発明における成分(C)25℃で液状~ペースト状の油剤は、通常の化粧料に使用される25℃で液状~ペースト状の油剤であれば、いずれのものも使用することができ、例えば、炭化水素油、エステル油、グリセライド油、高級脂肪酸、天然動植物油剤および半合成油剤、シリコーン油、フッ素系油剤よりなる群から選ばれる一種又は二種以上のものを使用することができる。本発明では、25℃で等量の重りを乗せた際に目視で変形が確認できる程度の流動性を有するものをペースト状と定義し、(D)固形油と区別する。
【0024】
炭化水素油としては、直鎖状、分岐状、さらに揮発性の炭化水素油等が挙げられ、具体的には、α-オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、合成スクワラン、植物性スクワラン、スクワレン、流動パラフィン、流動イソパラフィン等が挙げられる。エステル油としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、クエン酸トリエチル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸アミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、リンゴ酸ジイソステアリル等が挙げられる。グリセライド油としては、アセトグリセリル、トリイソオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、ミリスチン酸イソステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、イソステアリン酸ジグリセリルなどが挙げられる。高級脂肪酸としては、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イソステアリン酸等が挙げられる。また、天然動植物油剤及び半合成油剤としては、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、キョウニン油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サザンカ油、サフラワー油、シナモン油、タートル油、大豆油、茶実油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、ナタネ油、日本キリ油、胚芽油、パーシック油、ヒマシ油、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、ヒマワリ油、ブドウ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミンク油、メドウフォーム油、綿実油、落花生油、液状ラノリン、酢酸ラノリンアルコール、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、卵黄油等が挙げられる。シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルトリメチコン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等の低粘度から高粘度のオルガノポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラトリフロロプロピルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルペンタトリフロロプロピルシクロペンタシロキサン等の環状シロキサン等が挙げられる。フッ素系油剤としては、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン等が挙げられる。
【0025】
本発明における成分(C)の含有量は特に限定されないが、後肌の油膜感およびさらさら感の観点から、57~89%が好ましく、68~81%がさらに好ましい。
【0026】
本発明における成分(D)は、25℃において固体の油であり必要に応じて1種または2種以上用いる事ができる。通常の化粧料に使用されるものであれば、いずれのものも使用することができ、25℃において固体の油としては、固体油脂、ロウ類、固形炭化水素、高級アルコールが挙げられる。例えば、カカオ脂、硬化ヒマシ油等の固体油脂、モクロウ、カルナウバロウ、ミツロウ、サラシミツロウ、キャンデリラロウ、ホホバロウ等のロウ類、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素ワックス、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール等の高級アルコール、シリコーンワックス等が例示される。その中でも特にパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素ワックスがマッサージ化粧料としての強度、延展性の観点により好ましい。
【0027】
本発明に用いられる成分(D)の含有量は、特に限定されないが、好ましくは10~18%より好ましくは13~16%である。この範囲であると、マッサージ用途で固形化粧料を使用する使用性および肌への官能が優れるためより好ましい。
【0028】
組成物の安定性ならびに使用感を向上する観点から、本発明における成分(A)、(B)、(C)及び成分(D)の含有質量割合は、{(A)+(B)+(C)}/(D)=4~9であり、5~7がより好ましく、6~6.5がさらに好ましい。この値が9を超えると、油性固形を安定的に形成することができず、肌へ十分な圧をかけることができない。また4未満であると肌に負担がかかり、使用性の観点で望ましくない。
【0029】
本発明品で用いた成分(B)と成分(C)は合計した際のIOB値の重量平均が0.15~0.28が好ましく、0.20~0.24がより好ましい。この範囲であれば炭化水素ワックスが油内でワックス構造を形成する効果に優れながらも、油性固形としてマッサージに適した使用性に優れる。なお、本発明におけるIOB値とは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。IOB値は、具体的には、「IOB値=無機性値/有機性値」として表される。ここで、「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、同水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のIOB値を算出することができる(例えば、藤田著、「化学の領域」第11巻、第10号、第719頁~第725頁、1957年参照)。
【0030】
本発明は前記成分(A)~(D)の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(A)以外の保湿剤、成分(B)と成分(C)、(D)以外の油性成分、粉体、界面活性剤、水性成分、紫外線吸収剤、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、色素、香料等の通常公知の成分を含有することができる。
【0031】
粉体としては、通常の化粧料に使用されるものであれば、その形状(球状、針状、板状、等)や粒子径(煙霧状、微粒子、顔料級等)、粒子構造(多孔質、無孔質等)を問わず、いずれのものも使用することができる。粉体の含有量は、特に限定されるものではないが、安定性および使用感の観点から、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下が最も好ましい。
【0032】
界面活性剤としては、化粧料に一般に用いられている界面活性剤であれば、特に限定されず、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、レシチン等が挙げられる。
【0033】
水性成分としては、水に可溶な成分であれば何れでもよく、水の他に、例えば、エチルアルコール等のアルコール類、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液が挙げられる。
【0034】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系等の紫外線吸収剤、例えば、4-tert-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、2,4,6-トリス[4-(2-エチルへキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン等が挙げられる。
【0035】
保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等が挙げられ、酸化防止剤としては、例えばα-トコフェロール、アスコルビン酸等が挙げられ、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等が挙げられ、防腐剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素、ビス(2-ピリジルチオ-1-オキシド)亜鉛、イソプロピルメチルフェノール、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0036】
本発明の油性固形化粧料における油性とは、油を連続相とし、実質的に水を含有しないものである。ここで、実質的に含有しないとは、全く含有しないか、含有したとしても、本発明に影響を与えない程度に微量であることを意味するものであり、含有量としては、例えば、1%以下を意味するものである。
【0037】
本発明の油性固形化粧料の製造方法は、公知の手法で製造することができる。特に限定されるものではないが、例えば、成分(A)~成分(D)を、必要に応じて加熱し、混合して得られる。また、成分(A)~成分(D)を含有すれば、各成分を添加する順番は限定されず、その他の成分を添加混合する場合、いずれの製造段階で添加しても良い。
【0038】
本発明の油性固形化粧料は、テクスチャーアナライザーTA.XTplus(Stable Micro Systems社製)を用いて延展性を測定する事が出来る。本明細書で定義される延展性は、測定された応力によって評価しており、その値が小さい程潤滑性を有し肌負担が少なく、大きい程肌に食いつきを持ちマッサージ性を有する傾向にあり、その好ましい領域にて負担感なく心地よさを感じることができる油性固形料となる。延展性の具体的測定条件としては、55グラムの荷重を有する治具に、12φ(直径12mmの円形)の面積を有する容器に充填した油性固形化粧料を固定し、人工被膜(出光石油化学社製サプラーレPBZ13001)上に設置し、20mm/秒の速度にて力を重力に対し垂直な方向に加え塗布方向と垂直にかかる応力を測定することにより延展性として評価した。
【0039】
本発明の油性固形化粧料としては、特に限定されないが、化粧料、並びに医薬品及び医薬部外品等の皮膚外用剤として有用であり、目的に応じて種々の製品形態とすることができる。例えば、製品形態としては、口紅、リップクリーム、リップグロス、フェイスクリーム、アイクリーム、マッサージ料、ハンドクリーム、ボディクリーム等とすることができ、より好ましい用途はフェイスクリーム、アイクリーム等の全顔用マッサージ化粧料である。
【実施例
【0040】
以下に実施例をあげて本発明を詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
実施例1~21、比較例1~6:油性固形化粧料
表1~4に示す組成の油性固形化粧料を、下記製造方法により調製し、(イ)使用感、(ロ)保湿性、(ハ)使用時の安定性<強度>、(ニ)延展性の項目について、以下に示す評価方法及び判定基準により評価判定した。結果を併せて表1~4に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
※1 POLYGLYKOL400(クラリアントジャパン社製)
※2 PEG-1500(東邦化学工業社製)
※3 PEG-6000P(三洋化成工業社製)
※4 PEG♯20000(日油社製)
※5 PLANDOOL-S(日本精化社製)
※6 PLANDOOL-MAS(日本精化社製)
※7 コスモール168ARV(日清オイリオグループ社製)
※8 MYRITOL GTEH(BASF社製)
※9 コスモール42V(日清オイリオグループ社製)
※10 コスモール43V(日清オイリオグループ社製)
※11 パールリーム6(日油社製)
※12 SH556 FLUID(東レ・ダウコーニング社製)
※13 パールリーム46(日油社製)
※14 CARNATION(島貿易社製)
※15 合成セレシンJNP81(日本ナチュラルプロダクツ社製)
※16 PM WAX82(日興リカ社製)
※17 MULTIWAX W445 (島貿易社製)
※18 キャンデリラワックス SR-3(日本ナチュラルプロダクツ社製)
【0046】
(製造方法)
(1)成分5~18を100℃で均一に溶解する。
(2)成分1~4、19を70℃で均一に溶解する。
(3)(1)に(2)を添加して、ディスパーミキサーにて均一に混合する。
(4)85℃で容器に充填して油性固形化粧料を得た。
【0047】
(イ:使用感)、(ロ:保湿性)
化粧品評価専門パネル20名に、洗顔後に実施例1~21及び比較例1~6の各試料を使用し、全顔を30秒マッサージした時に負担なくマッサージできる使用感か、使用後の保湿性について下記評価基準に従って5段階評価をつけ、全パネルの評点の平均点を、以下の判定基準に従って判定した。なお(イ)負担感は各試料を全顔に使用した際に肌負担なく皮膚に外部刺激を与えることができ、心身ともにリラックスできるのかという観点、(ロ)保湿性は時間経過に伴う肌のうるおい感、乾燥感及びごわつきのなさという観点での評価である。
【0048】
5段階評価基準:
[評 点]:[評価結果]
5点 :非常に良好
4点 :良好
3点 :普通
2点 :やや不良
1点 :不良
【0049】
判定基準:
[判 定]:[評点の平均点]
◎◎ :4.5以上
◎ :4.00以上4.5未満
○ :3.25以上4.0未満
△ :2.0以上3.25未満
× :2.0未満
【0050】
(ハ:使用時の安定性<強度>)
化粧品評価専門パネル20名に、洗顔後に実施例1~21及び比較例1~6の各試料を使用し、全顔を30秒マッサージした後のそれぞれの状態を評価基準に従って5段階評価し、各試料に評点をつけ、全パネルの評点の平均点を、以下の判定基準に従って判定した。
【0051】
5段階評価基準:
[評 点]:[評価結果]
5点 :全く変化がない。
4点 :ほとんど変化がない。
3点 :一部崩れている。
2点 :ひび割れ、崩れている。
1点 :折れている。
【0052】
判定基準:
[判 定]:[評点の平均点]
◎◎ :4.5以上
◎ :4.0以上4.5未満
○ :3.5以上4.0未満
△ :1.5以上3.5未満
× :1.5未満
【0053】
(ニ:延展性)
実施例1~21及び比較例1~6の各試料の延展性を測定した。測定機器、測定条件に関しては前述した様にテクスチャーアナライザーTA.XTplus(Stable Micro Systems社製)を用いて、55グラムの荷重を有する治具に、12φ(直径12mmの円形)の面積を有する容器に充填した油性固形化粧料を固定し、人工被膜(出光石油化学社製サプラーレPBZ13001)上に設置し、20mm/秒の速度にて力を重力に対し垂直な方向に加え塗布方向と垂直にかかる応力を測定することにより延展性として評価した。
全サンプルの延展性を、以下の判定基準に従って判定した。
【0054】
判定基準:
[判 定]:[延展性]
◎ :35以上41未満
○ :26以上35未満、若しくは41以上45以下、
× :26未満、若しくは45を超える
【0055】
実施例1~21はべたつきがなく肌上で崩れ、肌への刺激感なく心身をリラックスさせ「使用感」に優れたものであった。使用後の肌は肌のうるおい感に優れ、時間が経っても乾燥感を感じない、「保湿性」に優れていた。そして、「使用時の安定性<強度>」においても優れていた製剤であった。
これに対し、成分(A)を含まない比較例1および成分(B)を含まない比較例2は、保湿性で満足できるものではなかった。成分(D)の含有量が9%以下であり、成分(A)、(B)、(C)及び(D)の質量含有量比(A+B+C)/(D)が9を超える比較例3では、柔らかく使用時の安定性が満足できるものではなかった。成分(D)の含有量が20%を超え、成分(A)、(B)、(C)及び(D)の含有量比(A+B+C)/(D)が4を下回る比較例4では、固い固形となり肌に負担感を感じ、使用感が満足できるものではなかった。重質流動イソパラフィンを配合し、延展性が45を超える比較例5では、非常に肌にくいつき負担感が大きく使用感が満足できるものではなかった。(D)成分の配合がない実施例6は固形とならなかったため評価省略とした。
【0056】
実施例22ボディ用油性固形化粧料
(成分) (%)
1.ポリエチレングリコール400 3
2.ポリエチレングリコール1500 7
3.ジリノール酸ジ(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル) 4
4.トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 残量
5.ジイソステアリン酸ポリグリセリル 5
6.トリイソステアリン酸ジグリセリル 30
7.流動イソパラフィン 2
8.メチルフェニルポリシロキサン 2
9.流動パラフィン 15
10.パラフィン・マイクロクリスタリンワックス混合物(融点80℃) 6
11.マイクロクリスタリンワックス・ポリエチレンワックス混合物(融点75℃)6
12.マイクロクリスタリンワックス(融点60~85℃) 4
13.香料 0.3
(製造方法)
(1)成分3~12を100℃で均一に溶解する。
(2)成分1、2及び13を70℃で均一に溶解する。
(3)(1)に(2)を添加して、ディスパーミキサーにて均一に混合する。
(4)85℃で容器に充填してボディ用油性固形化粧料を得た。
【0057】
実施例22のボディ用油性固形化粧料は、「使用感」、「保湿性」「使用時の安定性<強度>」「延展性」全ての項目に優れたものであった。
【0058】
実施例23 ハンドマッサージ用油性固形化粧料
(成分) (%)
1.ポリエチレングリコール400 7
2.ポリエチレングリコール1500 4
3.ジリノール酸ジ(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル) 2
4.トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 残量
5.ジイソステアリン酸ポリグリセリル 5
6.トリイソステアリン酸ジグリセリル 30
7.流動イソパラフィン 2
8.メチルフェニルポリシロキサン 2
9.流動パラフィン 25
10.パラフィン・マイクロクリスタリンワックス混合物(融点80℃) 5
11.マイクロクリスタリンワックス・ポリエチレンワックス混合物(融点75℃)6
12.マイクロクリスタリンワックス(融点60~85℃) 4
13.香料 0.3
(製造方法)
(1)成分3~12を100℃で均一に溶解する。
(2)成分1、2及び13を70℃で均一に溶解する。
(3)(1)に(2)を添加して、ディスパーミキサーにて均一に混合する。
(4)85℃で容器に充填してハンドマッサージ用油性固形化粧料を得た。
【0059】
実施例23のハンドマッサージ用油性固形化粧料は、「使用感」、「保湿性」「使用時の安定性<強度>」「延展性」全ての項目に優れたものであった。
【0060】
実施例24 首・鎖骨上部マッサージ用油性固形化粧料
(成分) (%)
1.ポリエチレングリコール400 5
2.ポリエチレングリコール6000 3
3.ポリエチレングリコール20000 3
4.マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 2
4.トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 残量
5.ジイソステアリン酸ポリグリセリル 5
6.トリイソステアリン酸ジグリセリル 30
7.流動イソパラフィン 2
8.メチルフェニルポリシロキサン 2
9.流動パラフィン 15
10.パラフィン・マイクロクリスタリンワックス混合物(融点85℃) 3
11.マイクロクリスタリンワックス・ポリエチレンワックス混合物(融点75℃)5
12.マイクロクリスタリンワックス(融点60~85℃) 3
13.香料 0.3
(製造方法)
(1)成分4~12を100℃で均一に溶解する。
(2)成分1~3、13を70℃で均一に溶解する。
(3)(1)に(2)を添加して、ディスパーミキサーにて均一に混合する。
(4)85℃で容器に充填して首・鎖骨上部マッサージ用油性固形化粧料を得た。
【0061】
実施例24の首・鎖骨上部マッサージ用油性固形化粧料は、「使用感」、「保湿性」「使用時の安定性<強度>」「延展性」の項目に優れたものであった。