(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】道路用の構造物および床版の施工方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20230105BHJP
【FI】
E01D19/12
(21)【出願番号】P 2019080083
(22)【出願日】2019-04-19
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】横関 耕一
(72)【発明者】
【氏名】冨永 知徳
(72)【発明者】
【氏名】瀬谷 和彦
(72)【発明者】
【氏名】柳 悦孝
(72)【発明者】
【氏名】藤川 敬人
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-225148(JP,A)
【文献】特開2001-081728(JP,A)
【文献】特開2010-229733(JP,A)
【文献】特開2002-155507(JP,A)
【文献】特開2010-209621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路用の
構造物であって、
前記道路の延長方向に延びる支持体と、
前記支持体によって支持され、前記道路の幅方向に架設され、路面を形成する複数の横梁部材
、および前記道路の延長方向に架設され、前記複数の横梁部材の下面または上面に接合されることによって前記複数の横梁部材を互いに連結する縦梁部材
を含む床版
と
を備える構造物。
【請求項2】
前記縦梁部材は、前記道路の延長方向の第1の区間に架設される第1の縦梁部材と、前記道路の延長方向の第2の区間に架設される第2の縦梁部材とを含み、前記第1の区間と前記第2の区間とは道路の延長方向に部分的に重複する、請求項1に記載の
構造物。
【請求項3】
前記複数の横梁部材は角形鋼管を含む、請求項1または請求項2に記載の
構造物。
【請求項4】
前記縦梁部材はH形鋼を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の
構造物。
【請求項5】
前記複数の横梁部材の下面または上面と前記縦梁部材とは、前記複数の横梁部材の下面または上面に形成される貫通孔に挿通される締結手段を用いて接合される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の
構造物。
【請求項6】
前記複数の横梁部材の前記貫通孔が形成されない上面または下面には、前記貫通孔に対向しない位置にアクセスホールが形成される、請求項5に記載の
構造物。
【請求項7】
前記複数の横梁部材の間に介挿されて路面を形成する、少なくとも1つの斜辺を有する平面形状のスペーサーをさらに備え、
前記スペーサーは前記縦梁部材が前記スペーサーの下面または上面に接合されることによって前記複数の横梁部材に連結される、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の
構造物。
【請求項8】
道路用の床版の施工方法であって、
路面を形成する横梁部材の下面または上面に縦梁部材を接合した組立体を、前記横梁部材が前記道路の幅方向に架設され、前記縦梁部材が前記道路の延長方向に架設されるように配置する第1の工程と、
前記横梁部材の前後に追加の横梁部材を配列し、前記追加の横梁部材の下面または上面に前記縦梁部材を接合することによって前記横梁部材と前記追加の横梁部材とを互いに連結する第2の工程と
を含む床版の施工方法。
【請求項9】
前記縦梁部材は、前記道路の延長方向の第1の区間に架設される第1の縦梁部材と、前記道路の延長方向の第2の区間に架設される第2の縦梁部材とを含み、前記第1の区間と前記第2の区間とは道路の延長方向に部分的に重複し、
前記第1の工程は、前記第1の区間において前記横梁部材の下面または上面に前記第1の縦梁部材を接合した組立体を配置する工程を含み、
前記第2の工程は、前記第2の区間との重複区間を除いた前記第1の区間で前記追加の横梁部材を配列する工程を含み、
前記第1の工程は、前記第2の区間において前記横梁部材の下面または上面に前記第2の縦梁部材を接合した組立体を配置する工程をさらに含み、
前記第2の工程は、前記第1の区間との重複区間を含む前記第2の区間で前記追加の横梁部材を配列する工程をさらに含む、請求項8に記載の床版の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路用の構造物および床版の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路工事では、工事中の迂回路や建設機械の通路として仮設橋を建設する場合がある。仮設構造物では、恒久的な構造物に比べて耐久性は要求されないが、耐震性は同様に要求される。また、仮設構造物では、設置および撤去が容易であることも求められる。このような要求に対し、仮設橋の上部構造を軽量化することによって、設置および撤去を容易にするとともに、下部構造にかかる地震荷重を低減することができる。上部構造の中でも、床版は死荷重を負担する割合が大きいため、構造の改善が種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、道路の延長方向(橋軸方向)に延びる複数の角形鋼管を平行に配列し、角形鋼管の側面に設けた開口部に棒状部材を挿通してせん断キーを構成するとともに、角形鋼管と棒状部材との交差部分にコンクリートなどの経時硬化性材料を充填する技術が記載されている。これによって、溶接を使用せずに複数の角形鋼管を接合して床版を構成することができ、設置時の施工性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、角形鋼管の内部にコンクリートなどの経時硬化性材料を充填するため、撤去時の施工性は必ずしも高いとはいえない。さらに、迂回路には車両の走行性も求められる。すなわち車両荷重に対して床版が変形した後にも、路面に顕著な凹凸がなく、走行が妨げられないことが求められる。変形後の路面が連続的であることは舗装の劣化も抑制できる。従来の技術ではこうした施工性や走行性の要求に対する解決方法が十分に提供されていない。
【0006】
そこで、本発明は、設置および撤去の施工性を向上させ、かつ車両の走行性を確保できる道路用の構造物および床版の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある観点によれば、道路用の床版であって、道路の幅方向に架設され、路面を形成する複数の横梁部材と、道路の延長方向に架設され、複数の横梁部材の下面または上面に接合されることによって複数の横梁部材を互いに連結する縦梁部材とを備える床版が提供される。
【0008】
上記の床版において、道路の延長方向の第1の区間に架設される第1の縦梁部材と、道路の延長方向の第2の区間に架設される第2の縦梁部材とを含み、第1の区間と第2の区間とは道路の延長方向に部分的に重複してもよい。
【0009】
上記の床版において、複数の横梁部材は角形鋼管を含んでもよい。
【0010】
上記の床版において、縦梁部材はH形鋼を含んでもよい。
【0011】
上記の床版において、複数の横梁部材の下面または上面と縦梁部材とは、複数の横梁部材の下面または上面に形成される貫通孔に挿通される締結手段を用いて接合されてもよい。この場合において、複数の横梁部材の貫通孔が形成されない上面または下面には、貫通孔に対向しない位置にアクセスホールが形成されてもよい。
【0012】
上記の床版は、複数の横梁部材の間に介挿されて路面を形成する、少なくとも1つの斜辺を有する平面形状のスペーサーをさらに備え、スペーサーは縦梁部材がスペーサーの下面または上面に接合されることによって複数の横梁部材に連結されてもよい。
【0013】
本発明の別の観点によれば、道路用の床版の施工方法であって、路面を形成する横梁部材の下面または上面に縦梁部材を接合した組立体を、横梁部材が道路の幅方向に架設され、縦梁部材が道路の延長方向に架設されるように配置する第1の工程と、横梁部材の前後に追加の横梁部材を配列し、追加の横梁部材の下面または上面に縦梁部材を接合することによって横梁部材と追加の横梁部材とを互いに連結する第2の工程とを含む床版の施工方法が提供される。
【0014】
上記の床版の施工方法において、縦梁部材は、道路の延長方向の第1の区間に架設される第1の縦梁部材と、道路の延長方向の第2の区間に架設される第2の縦梁部材とを含み、第1の区間と第2の区間とは道路の延長方向に部分的に重複し、第1の工程は、第1の区間において横梁部材の下面または上面に第1の縦梁部材を接合した組立体を配置する工程を含み、第2の工程は、第2の区間との重複区間を除いた第1の区間で追加の横梁部材を配列する工程を含み、第1の工程は、第2の区間において横梁部材の下面または上面に第2の縦梁部材を接合した組立体を配置する工程をさらに含み、第2の工程は、第1の区間との重複区間を含む第2の区間で追加の横梁部材を配列する工程をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0015】
上記の構成によれば、道路の幅方向に架設される複数の横梁部材を、横梁部材の下面または上面に接合される縦梁部材を用いて互いに連結するため、例えば溶接や経時硬化性材料の充填などの工程が必要とされず、従って設置および撤去の施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る道路用の床版を用いた仮設橋の部分切開斜視図である。
【
図2】
図1に示した仮設橋における縦梁部材の接続部の部分切開斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る道路用の床版を用いたトンネル内の仮設構造物の断面図である。
【
図4A】本発明の一実施形態に係る道路用の床版の施工方法の例を示す図である。
【
図4B】本発明の一実施形態に係る道路用の床版の施工方法の例を示す図である。
【
図4C】本発明の一実施形態に係る道路用の床版の施工方法の例を示す図である。
【
図4D】本発明の一実施形態に係る道路用の床版の施工方法の例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る道路用の床版における縦梁部材のバリエーションを示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る道路用の床版における縦梁部材のバリエーションを示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る道路用の床版における縦梁部材のバリエーションを示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る道路用の床版における縦梁部材のバリエーションを示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る道路用の床版における横梁部材のバリエーションを示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る道路用の床版における横梁部材のバリエーションを示す図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る道路用の床版における横梁部材のバリエーションを示す図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る道路用の床版における横梁部材のバリエーションを示す図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る道路用の床版における横梁部材のバリエーションを示す図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る道路用の床版における横梁部材のバリエーションを示す図である。
【
図15A】本発明の一実施形態に係る道路用の床版における横梁部材と縦梁部材との接合構造の第1の例を示す図である。
【
図16A】
図15A~
図15Cに示した接合構造によって横梁部材と縦梁部材とが接合される場合の、縦梁部材の接続部の平面図である。
【
図16B】
図15A~
図15Cに示した接合構造によって横梁部材と縦梁部材とが接合される場合の、縦梁部材の接続部の断面図である。
【
図19】本発明の一実施形態に係る道路用の床版における横梁部材と縦梁部材との接合構造の第2の例を示す図である。
【
図20】本発明の一実施形態に係る道路用の床版を、道路の湾曲部分に配置した例を示す図である。
【
図21】本発明の一実施形態に係る道路用の床版の構造的な利点について説明するための図である。
【
図22】本発明の一実施形態に係る道路用の床版の構造的な利点について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る道路用の床版を用いた仮設橋の部分切開斜視図である。図示された例において、仮設橋1は、床版10と、主桁20とを含む。床版10は、道路の幅方向(橋幅方向、図中のy方向)に架設される複数の横梁部材11と、道路の延長方向(橋軸方向、図中のx方向)に架設される縦梁部材12とを含む。
【0019】
図示された例において、横梁部材11は角形鋼管である。複数の横梁部材11は道路の延長方向について互いに略密着して配列され、横梁部材11の上に路面が形成される。なお、本明細書において、横梁部材11が路面を形成する、とは、道路を走行する車両等の荷重を支持する面が横梁部材11によって形成されることを意味する。具体的には、横梁部材11の上面に直接車両等を走行させても良いし、横梁部材11の上面に舗装材等を敷設し、その上に車両を走行させても良い。また、本明細書において、角形鋼管は、例えば冷間成形によって加工され、正方形または長方形の角が丸められた断面形状の鋼管を含む。それぞれの横梁部材11は、主桁20によって道路の幅方向について3点で支持されている。主桁20は、図示された例ではH形鋼であり、上フランジ部分にそれぞれの横梁部材11が載置される。
【0020】
縦梁部材12は、複数の横梁部材11の下面に接合される。縦梁部材12は、図示された例ではH形鋼であり、上フランジ部分でそれぞれの横梁部材11に接合される。複数の横梁部材11に共通の縦梁部材12を接合することによって、複数の横梁部材11を互いに連結し、道路の延長方向について連続的に挙動させることができる。図示された例において縦梁部材12および主桁20はいずれもH形鋼であるが、主桁20が床版10を支持する機能を有するのに対して、縦梁部材12は上記のように複数の横梁部材11を互いに連結する機能を有するため、例えば主桁20よりも小さい断面のH形鋼を用いることができる。
【0021】
図2は、
図1に示した仮設橋における縦梁部材の接続部の部分切開斜視図である。多くの場合において、縦梁部材12の長さは仮設橋の長さよりも短いため、橋の途中で複数の縦梁部材12を接続する必要が生じる。図示された例では、道路の延長方向(橋軸方向、図中のx方向)の第1の区間S1に架設される縦梁部材12Aと、同じく道路の延長方向の第2の区間S2に架設される縦梁部材12Bとが接続される。ここで、第1の区間S1と第2の区間とは道路の延長方向に部分的に重複しており、従って道路の延長方向で見た場合に縦梁部材12Aと縦梁部材12Bとは道路の延長方向に部分的に重複している。これによって、第1の区間S1と第2の区間S2とが重複する区間に配置される横梁部材11を縦梁部材12Aと縦梁部材12Bとの両方に接合し、第1の区間S1と第2の区間S2との間で複数の横梁部材11を連続的に挙動させることができる。なお、本実施形態において、縦梁部材12Aと縦梁部材12Bとを互いに接合する必要はない。
【0022】
図3は、本発明の一実施形態に係る道路用の床版を用いたトンネル内の仮設構造物の断面図である。図示された例において、トンネル2は、床版10と、覆工体30と、隔壁40とを含む。床版10の構成は上記で
図1を参照して説明した例と同様であるが、それぞれの横梁部材11は、覆工体30に取り付けられるブラケット31と、隔壁40の上面とによって、トンネル幅方向について4点で支持されている。このように、本実施形態に係る道路用の床版10について、それぞれの横梁部材11を支持する支持体は限定されず、またそれぞれの横梁部材11の支持点の数も限定されない。
【0023】
図4A~
図4Dは、本発明の一実施形態に係る道路用の床版の施工方法の例を示す図である。なお、これらの図では
図1および
図2に示した仮設橋1の施工方法が示されているが、
図3に示したトンネル内の仮設構造物についても同様に施工することが可能である。この例ではまず、
図4Aに示すように、道路の延長方向の第1の区間S1において、横梁部材11の下面に縦梁部材12Aを接合した組立体を配置する。より具体的には、横梁部材11が道路の幅方向に架設され、縦梁部材12Aが道路の延長方向に架設されるように、主桁20上に横梁部材11を載置する。組立体において縦梁部材12に接合される横梁部材11は、図示された例のように1本であってもよいし、2本以上であってもよい。次に、
図4Bに示すように、第2の区間S2との重複区間を除いた第1の区間S1で、上記の組立体を構成する横梁部材11の前後に追加の横梁部材11を配列し、追加の横梁部材11の下面を縦梁部材12Aに接合する。これによって、組立体として先に配置された横梁部材11と追加の横梁部材11とが互いに連結される。
【0024】
次に、
図4Cに示すように、道路の延長方向で隣接する第2の区間S2において、第1の区間S1の場合と同様に、横梁部材11の下面に縦梁部材12Bを接合した組立体を配置する。ここで、第1の区間S1と第2の区間S2は道路の延長方向に部分的に重複しているため、第1の区間S1と第2の区間S2との重複区間に横梁部材11を配置する前に、第2の区間S2に横梁部材11と縦梁部材12Bとの組立体を配置する。次に、
図4Dに示すように、第1の区間S1との重複区間を含む第2の区間S2で、上記の組立体を構成する横梁部材11の前後に追加の横梁部材11を配列し、追加の横梁部材11の下面を縦梁部材12Bに接合する。重複区間では、横梁部材11の下面が縦梁部材12Aおよび縦梁部材12Bの両方に接合される。
【0025】
上記のような施工方法の工程によれば、縦梁部材12Aおよび縦梁部材12Bが先行配置される横梁部材11とともに他の横梁部材11よりも先に配置されるため、残りの横梁部材11を設置するのが容易になる。
【0026】
図5~
図8は、本発明の一実施形態に係る道路用の床版における縦梁部材のバリエーションを示す図である。
図5は、
図1のV-V線断面図である。
図5および
図6の例において、横梁部材11の下面に接合される縦梁部材12はH形鋼である。
図5の例では横梁部材11が主桁20によって支持される支持点間に1本の縦梁部材12が配置されるのに対し、
図6の例では支持点間に2本の縦梁部材12が配置される。梁部材のたわみ変形量は支持点間距離の3乗に比例して増加するため、横梁部材11を疑似的に鉛直方向に支持する縦梁部材12を支持点間に適切な間隔で配置することによって横梁部材11のたわみ変形量を低減し、道路の延長方向に隣接する横梁部材11同士の間のたわみ変形量の差を小さくすることができる。
図7の例において、縦梁部材12Cは角形鋼管である。
図6に示された例と同様に、角形鋼管の縦梁部材12Cも支持点間に2本以上配置されてもよい。
【0027】
一方、
図8の例において、縦梁部材12Dは山形鋼であり、横梁部材11の上面に接合される。横梁部材11の上に舗装材(図示せず)が施工される場合は、舗装材を縦梁部材12Dよりも厚くすることで路面が平坦になる。また、走行の妨げにならない程度の突出高さであれば、縦梁部材12Dが路面上に突出しても問題はない。このような場合は、横梁部材11の上面に縦梁部材12Dを接合することによって、例えば先に架設された横梁部材11に後から縦梁部材12Dを接合する施工が容易になる。なお、縦梁部材の断面形状によって接合される面は限定されず、山形鋼の縦梁部材12Dを横梁部材11の下面に接合してもよく、H形鋼の縦梁部材12や角形鋼管の縦梁部材12Cを横梁部材11の上面に接合してもよい。
【0028】
図9~
図14は、本発明の一実施形態に係る道路用の床版における横梁部材のバリエーションを示す図である。
図9は、
図1のIX-IX線矢視図である。
図9の例において、横梁部材11は断面が角丸正方形の角形鋼管である。
図10の例において、横梁部材11Aは断面が角丸長方形の角形鋼管である。
図11の例において、横梁部材11BはH形鋼であり、下面になる下フランジ部分111Bで縦梁部材12に接合され、上面になる上フランジ部分112Bの上に路面が形成される。
図12の例において、横梁部材11CはZ形鋼である。
図13の例では、角形鋼管の横梁部材11とH形鋼の横梁部材11Bとが道路の延長方向について交互に配置される。このように、上面に路面を形成することが可能である限りにおいて横梁部材の断面形状は限定されず、また横梁部材に断面形状が互いに異なる部材が含まれてもよい。
【0029】
一方、
図14の例では、複数の角形鋼管を溶接などによって予め接合した横梁部材11Dが配置される。このように、複数の部材を予め接合した組立体を横梁部材として用いてもよい。断面が角丸正方形の角形鋼管の場合に限らず、上記の例において単体で横梁部材として用いられた断面が角丸長方形の角形鋼管や、H形鋼、Z形鋼などについても、複数の部材を予め接合して横梁部材として用いてもよい。施工上可能な範囲でサイズを大きくした横梁部材を用いることによって、例えば、縦梁部材に横梁部材を接合する工程が簡略化される。
【0030】
図15A~
図15Cは、本発明の一実施形態に係る道路用の床版における横梁部材と縦梁部材との接合構造の第1の例を示す図である。
図15Aは接合構造の平面図であり、
図15Bおよび
図15Cはそれぞれ
図15AのB-B線およびC-C線の断面図である。図示された例では、横梁部材11の下面と縦梁部材12とが、横梁部材11の下面に形成される貫通孔113、および縦梁部材12の上面(上フランジ部分)に形成される貫通孔121にそれぞれ挿通される締結手段であるボルト114およびナット115を用いて接合される。なお、締結手段はボルトおよびナットの組み合わせには限られず、タッピングボルトやピンなどであってもよい。また、貫通孔に挿通される締結手段以外にも、例えばスナップフィットのような凹凸の組み合わせによる機械式接合によって横梁部材と縦梁部材12とを接合してもよい。図示された例において、ボルト114を締結するためにレンチなどの工具を挿入するアクセスホール116は、横梁部材11の上面の貫通孔113に対向する位置に形成される。
【0031】
図16Aおよび
図16Bは、
図15A~
図15Cに示した接合構造によって横梁部材と縦梁部材とが接合される場合の、縦梁部材の接続部の平面図および断面図である。
図16Bは、
図16AのB-B線断面図である。この場合、図示されているように、道路の延長方向で見た場合に縦梁部材12Aと縦梁部材12Bとが重複する区間において、横梁部材11は貫通孔113に挿通されるボルト114およびナット115を用いて縦梁部材12Aおよび縦梁部材12Bの両方に接合される。
【0032】
図17A~
図17Cは、
図15A~
図15Cに示した接合構造を採用した場合の舗装材施工後の状態を示す図である。図示されているように、蓋117を用いてアクセスホール116を塞ぐことによって、横梁部材11の上面の他の部分と同様に舗装材118を施工することができる。
【0033】
図18A~
図18Cは、
図15A~
図15Cに示した接合構造においてアクセスホールの位置を変更した例を示す図である。図示された例では、アクセスホール116が、横梁部材11の上面の貫通孔113に対向しない位置に形成される。これによって、横梁部材11に貫通孔113およびアクセスホール116の両方が形成される断面が発生するのを避けることができ、貫通孔113およびアクセスホール116の形成による横梁部材11の断面欠損を最小限に抑えることができる。断面欠損が問題にならない程度である場合、アクセスホール116の位置は例えばボルト114を締結するためのレンチなどの工具の形状に応じて決定されてもよい。
【0034】
図19は、本発明の一実施形態に係る道路用の床版における横梁部材と縦梁部材との接合構造の第2の例を示す図である。図示された例では、上記で
図15A~
図15Cを参照して説明した例と同様に横梁部材11の下面に貫通孔113が形成されるが、貫通孔113に挿通される締結手段は、縦梁部材12の上面(上フランジ部分)から突出するスタッドボルト122である。
【0035】
図20は、本発明の一実施形態に係る道路用の床版を、道路の湾曲部分に配置した例を示す図である。図示された例において、床版10は、複数の横梁部材11および縦梁部材12に加えて、三角形の平面形状で、横梁部材11と同じ高さで形成されるスペーサー13を含む。複数の横梁部材11の間にスペーサー13を介挿することによって、横梁部材11が配列される方向(道路の延長方向)を湾曲させることができる。
【0036】
スペーサー13は、前後の横梁部材11と道路の延長方向について互いに略密着して、横梁部材11とともに路面を形成する。縦梁部材12は、複数の横梁部材11の下面に接合されるとともに、スペーサー13の下面にも接合される。横梁部材11とスペーサー13とに共通の縦梁部材12を接合することによって、横梁部材11とスペーサー13とを互いに連結し、道路の延長方向について連続的に挙動させることができる。
【0037】
なお、スペーサー13の平面形状は、図示された例のような三角形には限られず、台形のように少なくとも1つの斜辺を有する形状であればよい。また、横梁部材11と同様に、縦梁部材12がスペーサー13の上面に接合されてもよい。
【0038】
以上で説明したような本発明の一実施形態、およびその変形例によれば、道路用の床版の全体が鋼部材で形成されるため、例えばコンクリート床版を用いる場合に比べて同程度の剛性を確保しつつ床版を軽量化することができる。また、横梁部材や縦梁部材といった単位部材が軽量であるため、架設時の施工性が高い。単位部材の種類が少ないため、部材の製造や管理を効率化することができる。加えて、単位部材間で溶接や経時硬化性材料の充填などの工程を必要としないため、撤去時の施工性も高い。
【0039】
図21および
図22は、本発明の一実施形態に係る道路用の床版の構造的な利点について説明するための図である。
図21は、縦梁部材を設置せず、道路の延長方向に配列した角形鋼管の横梁部材を互いに溶接などによって直接的に接合した参考例を示す図であり、
図22は本発明の一実施形態において縦梁部材を接合することによって横梁部材を連結した例を示す図である。
【0040】
図21に示す参考例の場合、中央の横梁部材91と隣接する横梁部材91とがそれぞれの側面において直接的に接合されているため、中央の横梁部材91に鉛直方向の荷重がかかると隣接する横梁部材91にせん断変形が生じる。例えば図示された例のような角形鋼管の横梁部材の場合、断面のせん断変形に対する抵抗が小さいため、狭い影響範囲、実質的には中央の横梁部材91だけで荷重に抵抗することになる。この場合、中央の横梁部材91に大きな応力が発生し、中央の横梁部材91のたわみ変形量が突出して大きくなる結果、路面に顕著な凹凸が発生する。
【0041】
一方、
図22に示す本発明の一実施形態の場合、中央の横梁部材11と隣接する横梁部材11とは直接的に接合されておらず、縦梁部材12を介して連結されている。従って、中央の横梁部材11に鉛直方向の荷重がかかっても隣接する横梁部材11はせん断変形しない。また、それぞれの横梁部材11に連結された縦梁部材12もせん断変形せず(曲げ変形する)、中央の横梁部材11から隣接する横梁部材11に応力を伝達する。これによって、広い影響範囲で多数の横梁部材11が荷重に抵抗するため、中央の横梁部材11、および隣接する横梁部材11に発生する応力およびたわみ変形量は比較的小さく、路面の変形を緩やかにすることができる。
【0042】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、各種の変形例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0043】
1…仮設橋、2…トンネル、10…床版、11…横梁部材、11A…横梁部材、11B…横梁部材、11C…横梁部材、11D…横梁部材、12,12A,12B,12C,12D…縦梁部材、13…スペーサー、20…主桁、30…覆工体、31…ブラケット、40…隔壁、113…貫通孔、114…ボルト、115…ナット、116…アクセスホール、117…蓋、118…舗装材、121…貫通孔、122…スタッドボルト。