IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧 ▶ JFEスチール株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社神戸製鋼所の特許一覧 ▶ 新日鉄住金エンジニアリング株式会社の特許一覧

特許7203680ガス吹込み条件の設定方法及びガス吹込み条件の設定方法のプログラム
<>
  • 特許-ガス吹込み条件の設定方法及びガス吹込み条件の設定方法のプログラム 図1
  • 特許-ガス吹込み条件の設定方法及びガス吹込み条件の設定方法のプログラム 図2
  • 特許-ガス吹込み条件の設定方法及びガス吹込み条件の設定方法のプログラム 図3
  • 特許-ガス吹込み条件の設定方法及びガス吹込み条件の設定方法のプログラム 図4
  • 特許-ガス吹込み条件の設定方法及びガス吹込み条件の設定方法のプログラム 図5
  • 特許-ガス吹込み条件の設定方法及びガス吹込み条件の設定方法のプログラム 図6
  • 特許-ガス吹込み条件の設定方法及びガス吹込み条件の設定方法のプログラム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】ガス吹込み条件の設定方法及びガス吹込み条件の設定方法のプログラム
(51)【国際特許分類】
   C21B 5/00 20060101AFI20230105BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20230105BHJP
   F27D 19/00 20060101ALI20230105BHJP
   C21B 5/06 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
C21B5/00 321
F27D17/00 104G
F27D19/00 Z
C21B5/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019080924
(22)【出願日】2019-04-22
(65)【公開番号】P2020176318
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-12-03
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「環境調和型製鉄プロセス技術開発(STEP2)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(72)【発明者】
【氏名】西岡 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】酒井 博
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/105107(WO,A1)
【文献】特開2016-113677(JP,A)
【文献】特開2018-070952(JP,A)
【文献】特開2015-129325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 5/00
F27D 17/00
F27D 19/00
C21B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉の炉頂から排出される炉頂排ガスを、HO及びCOを除去する除去装置に供給し、前記炉頂排ガスからHO及びCOの少なくとも一部を除去して生成した調整炉頂排ガスを、シャフト羽口と通常羽口の少なくとも一方の羽口を介して吹き込む高炉を対象として解析を行う、物質収支、運動量収支、及びエネルギー収支を考慮した高炉数学モデルのガス吹込み条件の設定方法であって、
前記除去装置に供給される前記炉頂排ガスの各成分のモル流量を求める第1工程と、
前記第1工程で求めた前記炉頂排ガス中のCOのモル流量と、前記除去装置のCO除去率から、前記除去装置から排出される前記調整炉頂排ガス中のCOのモル流量を求める第2工程と、
前記除去装置から排出される前記調整炉頂排ガス中のHOのモル流量を、前記第1工程で求めた前記炉頂排ガス中のHOのモル流量よりも低い値に設定する第3工程と、
前記第1工程で求めたCO及びHO以外の前記炉頂排ガスの各成分のモル流量と、前記第2工程で求めた前記調整炉頂排ガス中のCOのモル流量と、前記第3工程で設定した前記調整炉頂排ガス中のHOのモル流量から、前記除去装置から排出される前記調整炉頂排ガスの成分及び流量を求める第4工程と、
前記第4工程で求めた前記調整炉頂排ガスの成分及び流量から、前記高炉数学モデルのガス吹込み条件として、前記羽口から前記高炉に吹き込まれる前記調整炉頂排ガスの成分及び流量を設定する第5工程と、
を有することを特徴とするガス吹込み条件の設定方法。
【請求項2】
前記除去装置は、COを除去するCO除去装置と、前記CO除去装置からの前記炉頂排ガスを昇圧して前記炉頂排ガス中のHOを凝縮させて、前記炉頂排ガスからHOの少なくとも一部を除去するブロワとを含み、
前記第3工程は、前記ブロワにより昇圧された前記炉頂排ガスの温度と圧力における飽和水蒸気量から求められる値を、前記除去装置から排出される前記調整炉頂排ガス中のHOのモル流量として設定することを特徴とする請求項1に記載のガス吹込み条件の設定方法。
【請求項3】
前記第1工程は、前記除去装置に供給される前記炉頂排ガス中の各成分のモル流量として、所定期間の間に前記除去装置に供給される前記炉頂排ガスの各成分のモル流量の平均値を求めることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス吹込み条件の設定方法。
【請求項4】
前記高炉は、被加熱ガスを予熱ガスバーナーで予熱した予熱ガスを、予熱羽口から吹きこむ高炉であり、
前記ガス吹込み条件の設定方法は、さらに、
前記予熱ガスバーナーに供給される前記被加熱ガスの流量、温度、及び組成から、前記予熱ガスバーナーで生成される前記予熱ガスの流量、温度及び組成の少なくともいずれか一つの条件を求める第6工程と、
前記第6工程で求めた前記条件から、前記高炉数学モデルのガス吹込み条件として、前記予熱羽口から前記高炉に吹き込まれる前記予熱ガスの流量、温度及び組成の少なくともいずれか一つの条件を設定する第7工程と、
を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のガス吹込み条件の設定方法。
【請求項5】
高炉の炉頂から排出される炉頂排ガスをHO及びCOを除去する除去装置に供給し、前記炉頂排ガスからHO及びCOの少なくとも一部を除去して生成した調整炉頂排ガスを、シャフト羽口と通常羽口の少なくとも一方の羽口を介して吹き込む高炉を対象として解析を行う、物質収支、運動量収支、及びエネルギー収支を考慮した高炉数学モデルのガス吹込み条件を設定するために、コンピュータに下記工程を実行させるプログラムであって、
前記除去装置に供給される前記炉頂排ガスの各成分のモル流量を求める第1工程と、
前記第1工程で求めた前記炉頂排ガス中のCOのモル流量と、前記除去装置のCO除去率から、前記除去装置から排出される前記調整炉頂排ガス中のCOのモル流量を求める第2工程と、
前記除去装置から排出される前記調整炉頂排ガス中のHOのモル流量を、前記第1工程で求めた前記炉頂排ガス中のHOのモル流量よりも低い値に設定する第3工程と、
前記第1工程で求めたCO及びHO以外の前記炉頂排ガスの各成分のモル流量と、前記第2工程で求めた前記調整炉頂排ガス中のCOのモル流量と、前記第3工程で設定した前記調整炉頂排ガス中のHOのモル流量から、前記除去装置から排出される前記調整炉頂排ガスの成分及び流量を求める第4工程と、
前記第4工程で求めた前記調整炉頂排ガスの成分及び流量から、前記高炉数学モデルのガス吹込み条件として、前記羽口から前記高炉に吹き込まれる前記調整炉頂排ガスの成分及び流量を設定する第5工程と、
を有することを特徴とするガス吹込み条件の設定方法のプログラム。
【請求項6】
前記除去装置は、COを除去するCO除去装置と、前記CO除去装置からの前記炉頂排ガスを昇圧して前記炉頂排ガス中のHOを凝縮させて、前記炉頂排ガスからHOの少なくとも一部を除去するブロワとを含み、
前記第3工程は、前記ブロワにより昇圧された前記炉頂排ガスの温度と圧力における飽和水蒸気量から求められる値を、前記除去装置から排出される前記調整炉頂排ガス中のHOのモル流量として設定することを特徴とする請求項5に記載のガス吹込み条件の設定方法のプログラム。
【請求項7】
前記第1工程は、前記除去装置に供給される前記炉頂排ガス中の各成分のモル流量として、所定期間の間に前記除去装置に供給される前記炉頂排ガスの各成分のモル流量の平均値を求めることを特徴とする請求項5又は6に記載のガス吹込み条件の設定方法のプログラム。
【請求項8】
前記高炉は、被加熱ガスを予熱ガスバーナーで予熱した予熱ガスを、予熱羽口から吹きこむ高炉であり、
さらに、
前記予熱ガスバーナーに供給される前記被加熱ガスの流量、温度、及び組成から、前記予熱ガスバーナーで生成される前記予熱ガスの流量、温度及び組成の少なくともいずれか一つの条件を求める第6工程と、
前記第6工程で求めた前記条件から、前記高炉数学モデルのガス吹込み条件として、前記予熱羽口から前記高炉に吹き込まれる前記予熱ガスの流量、温度及び組成の少なくともいずれか一つの条件を設定する第7工程と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項5から7のいずれか一つに記載のガス吹込み条件の設定方法のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉数学モデルに用いられるガス吹込み条件の設定方法と、ガス吹込み条件の設定方法のプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の観点から、CO排出量の削減が喫緊の課題となっている。高炉からのCO排出量を削減するには、高炉で使用するコークスや微粉炭等、炭素を多く含む還元材(以下、「炭素還元材」ともいう)の削減、すなわち溶銑1tあたりの炭素消費量(炭素消費原単位)の削減が不可避である。
【0003】
そこで、近年、高炉の炉頂から排出される炉頂排ガス(以下、「BFG」ともいう)からCOおよびHOの少なくとも一部を除去したガス(以下、「調整BFG」ともいう)を、炉下部に設けられる通常羽口や、シャフト部に設けられるシャフト羽口から吹き込み、これらのガスに含まれるCOやHを炭素還元材の代替として使用することが検討されている(例えば、特許文献1~3)。
【0004】
このような新たな操業の設計を行うには、高炉数学モデルによる数値シミュレーション(以下、「解析」ともいう)を行うことが必要不可欠である。高炉数学モデルとしては、高炉の内部領域を複数の小領域(以下、「計算格子」ともいう)に分割し、各計算格子において、物質収支、運動量収支及びエネルギー収支の数式を解くことにより、高炉内の温度分布、ガス濃度分布、鉱石の還元率分布等の炉内状態を解析する数学モデルがある(非特許文献1)。特許文献4では、高炉数学モデルにより炉内状態を解析するとともに、解析した炉内状態と実測した炉内状態とに基づき、的確な操業条件を決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2015/105107号
【文献】特開2016-113677号公報
【文献】特開2018-70952号公報
【文献】特開平8-295910号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Kouji Takatani,Takanobu Inada,Yutaka Ujisawa,「Three-dimensionalDynamic Simulator for Blast Furnace」、ISIJInternational、一般社団法人日本鉄鋼協会、1999年、Vol.39、No.1、p15-22
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高炉に吹き込まれる調整BFGは、BFGからHO及びCOの少なくとも一部を除去することで生成されている。BFGからHO及びCOを除去するには、通常、HO及びCOの除去装置(分離・回収装置)が使用される。従来、調整BFGを吹き込む高炉を解析対象として、高炉数学モデルによる解析を行う場合、調整BFGが、BFGからCOおよびHOが完全に除去されたガスであると仮定して計算を行っていた。しかしながら、HO及びCOの除去装置には、HOの除去率やCOの除去率などの仕様があり、BFGからCOおよびHOをすべて除去できるとは限らない。
【0008】
また、特許文献2には、高炉操業シミュレーション(高炉数学モデル)において、炉頂排ガスの組成を計算し、その結果に応じて改質炉頂排ガスの入力条件を逐次更新することが開示されているものの、改質炉頂排ガスの入力条件を取得する具体的な方法については開示されていない。
【0009】
本発明は、BFGからHO及びCOを除去する除去装置で生成した調整BFGを、シャフト羽口及び/又は通常羽口から吹き込む高炉を解析対象とした、高炉数学モデルのガス吹込み条件の設定方法に係る新規な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る高炉数学モデルのガス吹き込み条件の設定方法は、(1)高炉の炉頂から排出される炉頂排ガスを、HO及びCOを除去する除去装置に供給し、前記炉頂排ガスからHO及びCOの少なくとも一部を除去して生成した調整炉頂排ガスを、シャフト羽口と通常羽口の少なくとも一方の羽口を介して吹き込む高炉を対象として解析を行う、物質収支、運動量収支、及びエネルギー収支を考慮した高炉数学モデルのガス吹き込み条件の設定方法であって、前記除去装置に供給される前記炉頂排ガスの各成分のモル流量を求める第1工程と、前記第1工程で求めた前記炉頂排ガス中のCOのモル流量と、前記除去装置のCO除去率から、前記除去装置から排出される前記調整炉頂排ガス中のCOのモル流量を求める第2工程と、前記除去装置から排出される前記調整炉頂排ガス中のHOのモル流量を、前記第1工程で求めた前記炉頂排ガス中のHOのモル流量よりも低い値に設定する第3工程と、前記第1工程で求めたCO及びHO以外の前記炉頂排ガスの各成分のモル流量と、前記第2工程で求めた前記調整炉頂排ガス中のCOのモル流量と、前記第3工程で設定した前記調整炉頂排ガス中のHOのモル流量から、前記除去装置から排出される前記調整炉頂排ガスの成分及び流量を求める第4工程と、前記第4工程で求めた前記調整炉頂排ガスの成分及び流量から、前記高炉数学モデルのガス吹き込み条件として、前記羽口から前記高炉に吹き込まれる前記調整炉頂排ガスの成分及び流量を設定する第5工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
(2)前記除去装置は、COを除去するCO除去装置と、前記CO除去装置からの前記炉頂排ガスを昇圧して前記炉頂排ガス中のHOを凝縮させて、前記炉頂排ガスからHOの少なくとも一部を除去するブロワとを含み、前記第3工程は、前記ブロワにより昇圧された前記炉頂排ガスの温度と圧力における飽和水蒸気量から求められる値を、前記除去装置から排出される前記調整炉頂排ガス中のHOのモル流量として設定することを特徴とする(1)に記載のガス吹き込み条件の設定方法。
【0012】
(3)前記第1工程は、前記除去装置に供給される前記炉頂排ガス中の各成分のモル流量として、所定期間の間に前記除去装置に供給される前記炉頂排ガスの各成分のモル流量の平均値を求めることを特徴とする(1)又は(2)に記載のガス吹き込み条件の設定方法。
【0013】
(4)前記高炉は、被加熱ガスを予熱ガスバーナーで予熱した予熱ガスを、予熱羽口から吹きこむ高炉であり、前記ガス吹き込み条件の設定方法は、さらに、前記予熱ガスバーナーに供給される前記被加熱ガスの流量、温度、及び組成から、前記予熱ガスバーナーで生成される前記予熱ガスの流量、温度及び組成の少なくともいずれか一つの条件を求める第6工程と、前記第6工程で求めた前記条件から、前記高炉数学モデルのガス吹き込み条件として、前記予熱羽口から前記高炉に吹き込まれる前記予熱ガスの流量、温度及び組成の少なくともいずれか一つの条件を設定する第7工程と、を有することを特徴とする(1)から(3)のいずれか一つに記載ガス吹き込み条件の設定方法。
【0014】
(5)高炉の炉頂から排出される炉頂排ガスをHO及びCOを除去する除去装置に供給し、前記炉頂排ガスからHO及びCOの少なくとも一部を除去して生成した調整炉頂排ガスを、シャフト羽口と通常羽口の少なくとも一方の羽口を介して吹き込む高炉を対象として解析を行う、物質収支、運動量収支、及びエネルギー収支を考慮した高炉数学モデルのガス吹込み条件を設定するために、コンピュータに下記工程を実行させるプログラムであって、前記除去装置に供給される前記炉頂排ガスの各成分のモル流量を求める第1工程と、前記第1工程で求めた前記炉頂排ガス中のCOのモル流量と、前記除去装置のCO除去率から、前記除去装置から排出される前記調整炉頂排ガス中のCOのモル流量を求める第2工程と、前記除去装置から排出される前記調整炉頂排ガス中のHOのモル流量を、前記第1工程で求めた前記炉頂排ガス中のHOのモル流量よりも低い値に設定する第3工程と、前記第1工程で求めたCO及びHO以外の前記炉頂排ガスの各成分のモル流量と、前記第2工程で求めた前記調整炉頂排ガス中のCOのモル流量と、前記第3工程で設定した前記調整炉頂排ガス中のHOのモル流量から、前記除去装置から排出される前記調整炉頂排ガスの成分及び流量を求める第4工程と、前記第4工程で求めた前記調整炉頂排ガスの成分及び流量から、前記高炉数学モデルのガス吹込み条件として、前記羽口から前記高炉に吹き込まれる前記調整炉頂排ガスの成分及び流量を設定する第5工程と、を有することを特徴とするガス吹込み条件の設定方法のプログラム。
【0015】
(6)前記除去装置は、COを除去するCO除去装置と、前記CO除去装置からの前記炉頂排ガスを昇圧して前記炉頂排ガス中のHOを凝縮させて、前記炉頂排ガスからHOの少なくとも一部を除去するブロワとを含み、前記第3工程は、前記ブロワにより昇圧された前記炉頂排ガスの温度と圧力における飽和水蒸気量から求められる値を、前記除去装置から排出される前記調整炉頂排ガス中のHOのモル流量として設定することを特徴とする(5)に記載のガス吹込み条件の設定方法のプログラム。
【0016】
(7)前記第1工程は、前記除去装置に供給される前記炉頂排ガス中の各成分のモル流量として、所定期間の間に前記除去装置に供給される前記炉頂排ガスの各成分のモル流量の平均値を求めることを特徴とする(5)又は(6)に記載のガス吹込み条件の設定方法のプログラム。
【0017】
(8)前記高炉は、被加熱ガスを予熱ガスバーナーで予熱した予熱ガスを、予熱羽口から吹きこむ高炉であり、さらに、前記予熱ガスバーナーに供給される前記被加熱ガスと、前記予熱ガスバーナーに供給される支燃性ガスと、前記予熱ガスバーナーの燃料として用いられる燃料ガスのそれぞれのガスの流量、温度、及び組成から、前記予熱ガスバーナーで生成される前記予熱ガスの流量、温度及び組成の少なくともいずれか一つの条件を求める第6工程と、前記第6工程で求めた前記条件から、前記高炉数学モデルのガス吹込み条件として、前記予熱羽口から前記高炉に吹き込まれる前記予熱ガスの流量、温度及び組成の少なくともいずれか一つの条件を設定する第7工程と、をコンピュータに実行させることを特徴とする(5)から(7)のいずれか一つに記載のガス吹込み条件の設定方法のプログラム。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、BFGからHO及びCOを除去する除去装置で生成した調整BFGを、シャフト羽口及び/又は通常羽口から吹き込む高炉を解析対象とした、高炉数学モデルのガス吹込み条件の設定方法に係る新規な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】対象高炉の一例を説明する説明図である。
図2】対象高炉の一例を説明する説明図である。
図3】対象高炉の一例を説明する説明図である。
図4】調整BFGのガス吹込み条件を設定する手順を示すフローチャートである。
図5】予熱ガスのガス吹込み条件を設定する手順を示すフローチャートである。
図6】ベース操業条件下における解析結果を示す図である。
図7】調整BFG吹込み操業条件下における解析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態について説明する。本実施形態は、高炉数学モデルに用いるガス吹込み条件の設定方法に関する。
【0021】
本実施形態によりガス吹込み条件を設定する対象の高炉(以下、「対象高炉」ともいう)は、高炉の炉頂から排出される炉頂排ガス(BFG)からHO及びCOの少なくとも一部を除去したガス(調整BFG)を吹き込む高炉である。より具体的には、HO及びCOを除去する除去装置(以下、単に「除去装置」ともいう)にBFGを供給し、BFGからHO及びCOの少なくとも一部を除去することで生成した調整BFGを、シャフト羽口及び/又は通常羽口から吹き込む高炉が対象高炉である。本実施形態は、この対象高炉に吹き込まれる調整BFGのガス吹込み条件を設定する方法である。なお、シャフト羽口及び通常羽口の詳細は後述する。
【0022】
対象高炉の一例を、図1を用いてより具体的に説明する。図1は、対象高炉1の一例を説明する説明図である。
【0023】
図1に示すように、対象高炉1には、通常羽口2が設けられている。通常羽口2は、炉下部1aに設けられる熱風の送風羽口であり、炉周方向に所定間隔をあけて複数設置できる。通常羽口2からは、熱風炉11において所定の温度(1000℃~1200℃)に加熱された酸素富化空気(空気よりも酸素の濃度が高い空気)が対象高炉1に吹き込まれる。酸素富化空気は、適宜調湿される。また、通常羽口2からは、酸素富化空気とともに微粉炭が吹き込まれてもよい。対象高炉1に吹き込まれる酸素富化空気は、高炉1内のコークス(及び微粉炭)と反応することで、高温の還元ガス(主としてCOガス)を発生させる。還元ガスは、高炉1内を上昇し、鉱石を加熱しながら還元する。
【0024】
対象高炉1には、通常羽口2に加えて、シャフト羽口3が設けられていてもよい。シャフト羽口3は、シャフト部1b(例えば、シャフト部1bの下部)に設けられるガスの吹込み口であり、炉周方向に所定間隔をあけて等間隔で複数設置できる。なお、シャフト部1bとは、下方に向かって炉径が拡大する部位を指す。また、シャフト部1b及び炉下部1aの間には、炉腹部1c及び朝顔部1dがある。シャフト羽口3には、調整BFGが流通するガス流路が接続されている。このガス流路には、調整BFGを加熱する加熱手段12が設けられており、加熱された調整BFGが、シャフト羽口3を介して対象高炉1に吹き込まれる。調整BFGの加熱方法は任意であるが、電気ヒーターで加熱する方法や、加熱バーナーから生成される熱を利用して間接的に加熱する方法を用いることができる。加熱されるガス(調整BFG)の温度は、例えば、700~900℃程度とすることができる。
【0025】
シャフト羽口3に接続されるガス流路は、CO及びHOの除去装置13に接続されている。調整BFGは、この除去装置13で生成され、シャフト羽口3と除去装置13をつなぐガス流路に排出される。シャフト羽口3と除去装置13をつなぐガス流路は、調整BFGが加熱される位置よりも調整BFGの流れの上流において分岐し、分岐するガス流路は、通常羽口2に接続されていてもよい。分岐するガス流路が通常羽口2に接続されていることにより、除去装置13で生成される調整BFGは、シャフト羽口3に加えて、通常羽口2からも対象高炉1に吹き込まれる。
【0026】
ここで、炉頂から排出されるBFGの組成や流量は、時間の経過とともに変動するため、除去装置13から排出される調整BFGの組成や流量も、時間の経過とともに変動する。しかしながら、このような変動は、高炉1の操業上、抑制することが好ましい。対象高炉1では、このような変動を抑制するため、除去装置13と羽口(通常羽口2及びシャフト羽口3)をつなぐガス流路に特定の成分のガスを供給するガス供給手段14が設けられていてもよい。このガス供給手段14は、調整BFGの組成や流量に変動が生じたときに、調整BFGに含まれる特定の成分のガスを供給し、ガス流路を流通する調整BFGの組成や流量を平均化する。調整BFGに供給される特定の成分のガスは、例えば、特開2017-104808号公報に記載されるような、圧力スイング吸着法を用いて回収した特定の成分のガスを用いることができる。なお、圧力スイング吸着法とは、加圧した混合ガス中の特定の成分のみを吸着材に吸着させ、次いで圧力を低下させることにより、混合ガス中の特定の成分のみを回収する方法である。
【0027】
調整BFGを生成する除去装置13は、調整BFGを排出する流路(つまり、通常羽口2及びシャフト羽口3につながるガス流路)に加え、他のガス流路にも接続されている。他のガス流路には、炉頂付近で回収されたBFGが流通しており、その一部が除去装置13に供給されている。除去装置13は、このガス流路を介して供給されるBFGからCO及びHOの少なくとも一部を除去して調整BFGを生成している。除去装置13において、BFGからCOを除去する方法は、任意であるが、例えば、特開2015-131736号公報に記載されるように、COを吸収する吸収液にBFGを接触させ、BFGからCOを除去する方法を用いることができる。
【0028】
また、除去装置13において、BFGからHOを除去する方法は、任意であるが、例えば、BFGを冷却したり、BFGに圧力(例えば、除去装置13から調整BFGを排出するために加える送風圧)を加えたりすることでBFG中のHOを凝縮させ、BFGからHOを除去する方法を用いることができる。なお、図1に示す対象高炉1において、CO及びHOは単一の除去装置13によって除去されるが、除去装置13の構成はこれに限定されず、図2に示すように、COの除去装置13A及びHOの除去装置13Bが直列に接続される構成であってもよい。
【0029】
好ましくは、除去装置13Bはブロワを備え、ブロワでBFGを昇圧してHOを凝縮させて除去する。BFG中のHOは、ブロワに供給されるよりも前に一部除去されていてもよい。例えば、炉頂から排出されるBFGはベンチュリースクラバーなどの湿式集塵装置(不図示)によって水をかけて洗浄されるところ、この時点でBFGの温度は常温程度まで低下してBFG中のHOは一部凝縮して除去される。
【0030】
COの除去装置13A及びHOの除去装置13Bが別個に設けられている場合において、その順番は特に限定しないが、吸収液によってCOを除去する場合、COの除去装置13Aよりも後(下流側)にHOの除去装置13Bが設けられていることが好ましい。このとき、吸収液が常温よりも高い温度である場合、COの除去装置13Aを出た後のBFG(調整BFG)中の水分量は、ベンチュリースクラバーを出た後のBFG中の水分量よりも多くなる。
【0031】
このように、図1又は図2に示す対象高炉1では、炉頂から排出されるBFGの少なくとも一部を除去装置13(13A,13B)に供給してBFGから調整BFGを生成し、除去装置13(13A,13B)で生成された調整BFGをシャフト羽口3及び通常羽口2を介して対象高炉1内に吹き込んでいる。調整BFGが対象高炉1内に吹き込まれることで、調整BFG中のCOやHが、還元ガスとして使用される。このため、図1又は図2に示す対象高炉1では、コークスや微粉炭等の還元材の使用量を削減することができる。
【0032】
また、図1又は図2に示す対象高炉1では、調整BFGや酸素冨化空気に加えて、コークス炉から排出されるコークス炉ガス(以下、「COG」ともいう)を、通常羽口2を介して吹き込んでいる。COGが吹き込まれることで、COG中のCOやHが還元ガスとして使用される。このため、図1又は図2に示す対象高炉1では、コークスや微粉炭等の還元材の使用量をさらに削減できる。
【0033】
なお、対象高炉は、図1又は図2に示す高炉1に限定されるものではなく、BFGをHO及びCOを除去する装置に供給し、BFGからHO及びCOの少なくとも一部を除去することで生成した調整BFGを、シャフト羽口3及び/又は通常羽口2から吹き込む高炉であればよい。例えば、図1又は図2に示す高炉1において、通常羽口2からCOGを吹き込まない高炉であってもよく、シャフト羽口3から改質COG(COGを改質して水素濃度を高めたガス)を吹き込む高炉であってもよい。また、例えば、図1又は図2に示す高炉1において、調整BFGをシャフト羽口3のみから吹き込む高炉であってもよい。また、例えば、図1又は図2に示す高炉1において、調整BFGを通常羽口2のみから吹き込む高炉であってもよい。このような場合であっても、調整BFGに含まれるCOやHを還元ガスとして使用できる。
【0034】
ここで、図1又は図2に示す対象高炉1のように、通常羽口2からCOG及び調整BFGのような還元ガスを吹き込む高炉においては、酸素富化率を高くすることにより羽口前温度が維持される。酸素富化率の高い空気を吹き込む高炉では、酸素富化率の低い空気を吹き込む高炉と比較して、高炉に吹き込まれる熱風量が少ない。このため、熱流比(高炉内を流通するガス(気体)の熱容量に対する固体(鉱石など)の熱容量の比率)が上昇し、高炉内を流通するガスにより固体(鉱石など)が加熱されにくくなる。その結果、炉頂付近の温度が低下しやすくなる傾向にある。また、COによる鉱石の還元反応が発熱反応であるのに対し、COGや調整BFGに含まれるHによる鉱石の還元反応は吸熱反応である。このため、図1又は図2に示す対象高炉1のように、COGや調整BFGに含まれるHにより鉱石を還元する高炉では、鉱石の昇温速度が低下する。従って、図1又は図2に示す対象高炉1では、高炉1内の温度が低下しやすく、低温領域で発生しやすい鉱石の粉化(以下、「還元粉化」ともいう)が生じやすい傾向にある。
【0035】
一方、図1又は図2に示す対象高炉1において、調整BFGを通常羽口2のみから吹き込む場合(つまり、シャフト羽口3から加熱した調整BFGを高炉内に吹き込まない場合)には、高炉1内が低温になりやすく、還元粉化が生じやすい傾向にある。このため、調整BFGを通常羽口2のみから吹き込む対象高炉1では、図3に示すように、予熱ガスバーナー15でBFGを予熱して生成した予熱ガスを、予熱羽口4を介して高炉1に吹き込むことが好ましい。予熱ガスを予熱羽口4から供給することで、調整BFGを通常羽口2のみから吹き込む場合であっても、高炉1内が低温になることを抑制でき、還元粉化を抑制できる。なお、予熱羽口4は、シャフト部1bの中部から上部に設けられる予熱ガスの吹込み口であり、炉周方向における所定の間隔で複数設置できる。
【0036】
BFGを予熱ガスバーナー15で予熱する方法は、任意であり、例えば、燃料ガス(例えば、COGや都市ガス)と支燃性ガス(例えば、酸素や空気)を混合して予熱ガスバーナー15で燃焼させ、BFGを予熱する方法を用いることができる。予熱ガスの温度は、還元粉化を抑制できる温度であればよいが、700℃以上1000℃未満であることが好ましい。700℃未満は還元粉化が生じやすい温度であるため、予熱ガス温度が700℃未満では、還元粉化を助長させる恐れがある。一方、予熱ガス温度が1000℃以上では、予熱ガスにCOが含まれると、このCOとコークス中のカーボンがソルーションロス反応を生じやすくなり、コークスの劣化が生じやすくなる。
【0037】
なお、図3に示す対象高炉1では、予熱ガスバーナー15で予熱した予熱ガスが他のガスと混合されることなく、予熱羽口4を介して対象高炉1に吹き込まれているが、予熱ガスバーナー15で予熱した予熱ガスは、温度調整を目的として、低温のガス(例えば、BFG)と混合された上で予熱羽口4を介して対象高炉1に吹き込まれてもよい。また、図3に示す対象高炉1では、BFGを予熱ガスバーナー15で予熱することで予熱ガスを生成しているが、予熱ガスを生成するために使用するガスはBFGでなくてもよい。予熱ガスを生成するために使用するガスとしては、BFGまたは、N等の不活性ガスなどを被加熱ガスとして用いることができる。
【0038】
次に、上述した対象高炉1を解析対象とする、高炉数学モデルに用いられるガス吹込み条件の設定方法について説明する。
【0039】
まず、高炉数学モデルにおいて用いられるガス吹込み条件として、シャフト羽口3及び/又は通常羽口2を介して吹き込まれる調整BFGの成分及び流量を設定する方法について、図4を用いて説明する。図4は、ガス吹込み条件を設定する手順を示すフローチャートである。図4に示すように、本実施形態のガス吹込み条件の設定方法では、ステップS101~ステップS105の処理を行う。
【0040】
ステップS101の処理では、実際に操業している対象高炉1を用いて、除去装置13に供給されるBFGの各成分のモル流量を求める。ここで、BFGに含まれる主要な成分は、CO、CO、H、HO、Nの5成分である。このため、ステップS101では、BFGの各成分のモル流量として、これらの5成分のモル流量を求めることができる。除去装置13に供給されるBFGの各成分のモル流量の求め方は、任意であるが、例えば、下記式(1)~(5)から求めることができる。このほか、SiOなどの微量成分を考慮してもよい。
【0041】
【0042】
上記式(1)において、COBFGは、除去装置13に供給されるBFG中のCOのモル流量[mol/min]を示す。上記式(2)において、CO2BFGは、除去装置13に供給されるBFG中のCOのモル流量[mol/min]を示す。上記式(3)において、H2BFGは、除去装置13に供給されるBFG中のHのモル流量[mol/min]を示す。上記式(4)において、HBFGは、除去装置13に供給されるBFG中のHOのモル流量[mol/min]を示す。上記式(5)において、N2BFGは、除去装置13に供給されるBFG中のNのモル流量[mol/min]を示す。また、上記式(1)~(5)において、ρ0,iは、成分i(i=CO、CO、H、HO、N)の標準状態の密度[g/Nm]を示し、xi,BFGは、BFG中の成分iの体積比率[-]を示し、vall,BFGは、除去装置13に供給されるBFGの流量[Nm/min]を示し、MWは、成分iのモル質量[g/mol]を示す。ρ0,iをMWで除したものを体積モル濃度・モル密度[mol/Nm]として用いてもよい。
【0043】
上記式(1)~(5)における、成分iの体積比率xi,BFGは、例えば、対象高炉1の炉頂から排出されるBFGをサンプリングし、サンプリングしたBFGをガスクロマトグラフィーで分析することにより得ることができる。また、上記式(1)~(5)における、BFGの流量vall,BFGは、例えば、炉頂から排出されたBFGの流量を流量計で測定することにより得ることができる。ここで、BFGの流量を測定した位置よりもガス(BFG)の流れの下流において、BFGが流通するガス流路が分岐し、その一部のガス流路のみが除去装置13に接続されている場合には、当該一部のガス流路にも流量計を設置して流量を測定して得た値を、BFGの流量vall,BFGとして用いることができる(ガス流路が二分される場合には、一方のガス流路に流量計を設置して他方のガス流路の流量を推定してもよく、ガス流路が三本以上に分岐する場合も同様である)。一方、流量を測定した位置よりもガス(BFG)の流れの下流において、ガス流路が分岐することなく除去装置13に接続されている場合には、測定したBFGの流量を、BFGの流量vall,BFGとして用いることができる。
【0044】
ステップS101で求める各成分のモル流量は、所定期間の間に除去装置13に供給されるBFGの各成分のモル流量の平均値であってもよい。これにより、除去装置13に供給されるBFGの成分の変動を抑えることができ、除去装置13の上流にBFG用のバッファタンクが設けられている場合を考慮することもできる。
【0045】
モル流量の平均値の求め方は、任意であるが、例えば、所定期間の間に複数回、BFGに含まれる各成分のモル流量を求め、求めたモル流量を成分毎に加算平均することにより求めることができる。また、例えば、所定期間の間に複数回、上記式(1)~(5)に示す体積比率xi,BFG及び流量vall,BFGを取得して、取得した体積比率xi,BFG及び流量vall,BFGをそれぞれ加算平均した値を、上記式(1)~(5)に代入することにより求めることができる。各成分のモル流量の平均値を取るための期間は、抑えたい成分の変動レベルやバッファタンクの容量により適宜設定することができ、例えば数十分または数時間とすることができる。または、数日から数週間程度であってもよい。
【0046】
ステップS102の処理では、除去装置13から排出される調整BFG中のCOのモル流量を求める。除去装置13から排出される調整BFG中のCOのモル流量は、ステップS101で求めたCOのモル流量と、除去装置13のCO除去率とから、下記式(6)を用いて求めることができる。
【0047】
上記式(6)において、CO2a-BFGは、除去装置13から排出される調整BFG中のCOのモル流量[mol/min]を示し、CO2BFGは、除去装置13に供給されるBFG中のCOのモル流量[mol/min]を示し、RCO2は、除去装置13のCO除去率[-]を示す。
【0048】
上記式(6)におけるCO除去率RCO2は、除去装置13に供給されるBFG中のCO量に対する、除去装置13で除去されるCO量の割合である。上記式(6)におけるCO除去率RCO2は、0以上1以下の範囲内において、除去装置13のCO除去能力に応じた値を設定すればよい。CO除去率RCO2は、除去装置13毎に予め設定される固定値であってもよいが、除去装置13によっては吹き込まれるBFGの状態(温度、圧力、流量、組成など)に応じてCO除去率が変化することがあるため変動値であってもよい。例えば、CO除去率RCO2が除去装置13に供給されるCOの流量に応じて変化する場合には、除去装置13に供給されるCOのモル流量とCO除去率RCO2との関係を予め求めておき、除去装置13に供給されるCOのモル流量(つまり、ステップS101で求めたCOのモル流量)から、CO除去率RCO2を決定してもよい。
【0049】
ステップS103の処理では、除去装置13から排出される調整BFG中のHOのモル流量を、ステップS101で求めた炉頂排ガス中のHOのモル流量よりも低い値に設定する。当該値は、ステップS101で求めた炉頂排ガス中のHOのモル流量よりも低いものであればよく、除去装置13のHO除去能力に応じた値を設定すればよい。当該値は、例えば、固定値であってもよく、また、除去装置13の出口のBFGの状態(温度、圧力、流量、組成など)によって変動する変動値であってもよい。
【0050】
ここで、除去装置13において、BFG中のHOを凝縮することで、BFGからHOを除去している場合には、除去装置13から排出される調整BFG中のHO量は、除去装置13内のBFGの温度及び圧力における飽和水蒸気量から求めることができる。従って、除去装置13において、BFG中のHOを凝縮することで、BFGからHOを除去している場合、除去装置13の出口のBFGの温度及び圧力における飽和水蒸気量を用いて、下記式(7)から求めた値を用いることができる。
【0051】
【0052】
上記式(7)において、PH2Oは、除去装置13から排出される調整BFG中のHOのモル流量として設定する値[mol/min]を示し、CH2O,a-BFGは、除去装置13の出口のBFGの温度及び圧力における飽和水蒸気量[g/m3]を示し、vall,a-BFGは、除去装置13から排出される調整BFGの流量[Nm/min]を示し、MWH2OはHOの分子量を示す。また、Tは、除去装置13の出口のBFGの温度[℃]を示し、pは、除去装置13の出口のBFGの圧力[hpa]を示す。
【0053】
上記式(7)における飽和水蒸気量CH2O,a-BFGは、下記式(8)から求めることができる。
【0054】
【0055】
上記式(8)において、CH2O,a-BFGは、除去装置13の出口のBFGの温度及び圧力における飽和水蒸気量[g/m3]を示し、Tは、除去装置13の出口のBFGの温度[℃]を示し、e(T)は、温度Tにおける飽和水蒸気圧[hPa]を示す。ここで、飽和水蒸気圧e(t)は、温度Tで規定される公知の関数から求めることができる。
【0056】
上記式(8)おける温度Tとしては、除去装置13から排出された調整BFGの温度を用いることができる。上記式(8)おける温度Tの測定方法は、任意であり、例えば、温度計を用いて測定することができる。
【0057】
ステップS104の処理では、除去装置13から排出される調整BFGの成分及び流量を求める。除去装置13から排出される調整BFGの流量は、ステップS101で求めたCO及びHO以外のBFG中の各成分(例えば、CO、H、N、O及びSiO)のモル流量と、ステップS102で求めた調整BFG中のCOのモル流量と、ステップS103で設定した調整BFG中のHOのモル流量を合計するとともに、合計したモル流量[mol/min]を流量[Nm/min]に変換することで求めることができる。例えば、ステップS101で求めた各成分が、CO、CO、H、HO、Nの5成分である場合、除去装置13から排出される調整BFGの流量は、下記式(9)に基づいて求めることができる。
【0058】
【0059】
上記式(9)において、vall,a-BFGは、除去装置13から排出される調整BFGの流量[Nm/min]を示し、COBFGは、除去装置13に供給されるBFG中のCOのモル流量[mol/min]を示し(ステップS101で求めたCOのモル流量を示し)、H2BFGは、除去装置13に供給されるBFG中のHのモル流量[mol/min]を示し(ステップS101で求めたHのモル流量を示し)、N2BFGは、除去装置13に供給されるBFG中のNのモル流量[mol/min]を示し(ステップS101で求めたNのモル流量を示し)、CO2a-BFGは、除去装置13から排出される調整BFG中のCOのモル流量[mol/min]を示し(ステップS102で求めたCOのモル流量を示し)、Ha-BFGは、除去装置13から排出される調整BFG中のHOのモル流量[mol/min](ステップS103で設定したHOのモル流量)を示す。
【0060】
ステップS105の処理では、ステップS104で求めた調整BFGの成分及び流量から、高炉数学モデルのガス吹込み条件として、羽口(シャフト羽口3及び/又は通常羽口2)から高炉1に吹き込まれる調整BFGの成分及び流量(以下、「調整BFG流量」ともいう)を設定する。
【0061】
ここで、ステップS105の処理で設定する成分及び調整BFG流量は、調整BFGをシャフト羽口3と通常羽口2のいずれか一方の羽口から吹き込む高炉1が対象高炉である場合、その一方の羽口から吹き込まれる調整BFGの成分及び流量を指す。また、調整BFGをシャフト羽口3と通常羽口2の両方の羽口から吹き込む高炉1が対象高炉である場合、ステップS105の処理で設定する成分及び調整BFG流量は、それぞれの羽口から吹き込まれる調整BFGの成分及び流量(つまり、シャフト羽口3から吹き込まれる調整BFGの成分及び流量と通常羽口2から吹き込まれる調整BFGの成分及び流量)を指す。それぞれの羽口から吹き込む調整BFG量の配分は、対象高炉1の想定する操業緒元に応じて設定することができる。
【0062】
なお、対象高炉1において、通常羽口2が複数設けられている場合、ステップS105で設定する成分及び調整BFG流量は、各通常羽口2から吹き込まれる調整BFGの成分及び流量であってもよい。このような場合には、上述した条件を考慮して求めた調整BFGの流量を、通常羽口2の数で除した値を調整BFG流量として設定できる。同様に、対象高炉1において、シャフト羽口3が複数設けられている場合、ステップS105で設定する調整BFG流量は、各シャフト羽口3から吹き込まれる調整BFGの流量であってもよい。このような場合には、上述した条件を考慮して求めた調整BFGの流量を、シャフト羽口3の数で除した値を調整BFG流量として設定できる。
【0063】
本実施形態では、上述したステップS101~S105の処理により、高炉数学モデルに用いられるガス吹込み条件(シャフト羽口3及び/又は通常羽口2を介して吹き込まれる調整BFGの成分及び流量)を設定する。なお、本実施形態において、ステップS102の処理とステップS103の処理の順序は、特に限定されるものではなく、ステップS102の処理の後にステップS103の処理が行われてもよく、ステップS103の処理の後にステップS102の処理が行われてもよい。
【0064】
本実施形態で設定したガス吹込み条件(シャフト羽口3及び/又は通常羽口2を介して吹き込まれる調整BFGの成分及び流量)は、対象高炉1を解析対象とする高炉数学モデルにおいて用いられる。ガス吹込み条件が用いられる高炉数学モデルは、高炉1の内部領域を分割して複数の小領域(計算格子)に区画し、各計算格子において、物質収支、運動量収支及びエネルギー収支の数式を解くことにより、高炉1内の温度分布、ガス濃度分布、鉱石の還元率分布等の炉内状態を解析する数学モデルである。高炉1の内部領域は、2次元方向(炉半径方向及び炉高方向)に分割されて小領域を形成してもよく、3次元方向(炉半径方向、炉高方向及び炉周方向)に分割されて小領域を形成していてもよい。高炉数学モデルは、例えば、非特許文献1に記載されているため詳細な説明は省略する。
【0065】
高炉数学モデルにおいて、シャフト羽口3及び/又は通常羽口2を介して吹き込まれる調整BFGの入力条件には、本実施形態で設定する成分及び流量以外にも、例えば、ガスの温度がある。また、高炉数学モデルで用いる温度については、通常羽口2及び/又はシャフト羽口3から対象高炉1に吹き込まれる調整BFGの温度を考慮して適宜設定すればよく、調整BFG用の加熱手段12がある場合には、当該加熱手段12による設定温度を用いればよい。なお、温度は、時間の経過によって変化するものであってもよく、時間経過によって変化しないものであってもよい。
【0066】
ここで、対象高炉1に用いられる除去装置13に、BFGの処理量に下限値がある場合において、除去装置13に供給されるBFGの供給量がこの下限値を下回る場合、除去装置13は作動しないことがある。このため、対象高炉1に用いられる除去装置13に、BFGの処理量に下限値がある場合、高炉数学モデルでは、この下限値を制約条件としておくことが好ましい。具体的には、高炉数学モデルにおいて、除去装置13に供給されるBFGの供給量が、除去装置13のBFG処理量の下限値を下回っている場合、警告を表示する機能を備えておくことが好ましい。
【0067】
また、対象高炉1に用いられる除去装置13に、BFGの処理量に上限値がある場合において、除去装置13に供給されるBFGの供給量がこの上限値を上回る場合、超過分のBFGは系外に排出(その後、焼却処理)されることがある。このため、対象高炉1に用いられる除去装置13に、BFGの処理量に上限値がある場合、高炉数学モデルでは、この上限値を制約条件としておくことが好ましい。具体的には、高炉数学モデルにおいて、除去装置13に供給されるBFGの供給量が、除去装置13のBFG処理量の上限値を上回っている場合、除去装置13に供給されるBFGの供給量を、除去装置13のBFG処理量の上限値とする機能を備えておくことが好ましい。そのうえ、除去装置13に供給されるBFGの供給量と除去装置13のBFG処理量の上限値との差を、系外排出量として計算する機能を備えることがより好ましい。
【0068】
また、対象高炉1に用いられる除去装置13に、調整BFGの排出量に下限値がある場合において、羽口(通常羽口2及び/又はシャフト羽口3)から吹き込む調整BFGの総量がこの下限値を下回っている場合、除去装置13から排出される調整BFGが、羽口から吹き込まれず、系外に排出(その後、焼却処理)されることがある。このため、対象高炉1に用いられる除去装置13に、調整BFG排出量の下限値がある場合、高炉数学モデルでは、この下限値を制約条件としておくことが好ましい。具体的には、高炉数学モデルにおいて、羽口から吹き込む調整BFGの総量が、除去装置13の調整BFG排出量の下限値を下回っている場合、除去装置13の調整BFG排出量の下限値と羽口から吹き込む調整BFGの総量との差を、系外排出量として計算する機能を備えることが好ましい。
【0069】
また、対象高炉1に用いられる除去装置13に、調整BFGの排出量に上限値がある場合において、羽口(通常羽口2及び/又はシャフト羽口3)から吹き込む調整BFGの総量はこの上限値以下となる。このため、対象高炉1に用いられる除去装置13に、調整BFG排出量の上限値がある場合、高炉数学モデルでは、この上限値を制約条件としておくことが好ましい。具体的には、高炉数学モデルにおいて、羽口から吹き込む調整BFGの総量が、除去装置13の調整BFG排出量の上限値を超える場合、警告を表示する機能を備えておくことが好ましい。
【0070】
以上説明した本実施形態のガス吹込み条件の設定方法によれば、除去装置13のCO除去能力やHOの除去能力を考慮したガス吹込み条件(シャフト羽口3及び/又は通常羽口2を介して吹き込まれる調整BFGの成分及び流量)を設定することができる。
【0071】
ここで、本実施形態に係る対象高炉1は、図3に示すように、調整BFGをシャフト羽口3及び/又は通常羽口2から吹き込むことに加え、被加熱ガス(BFG、Nなど)を支燃性ガス(例えば、酸素や空気)とともに燃料ガス(例えば、COGや都市ガス)を用いて予熱ガスバーナー15で予熱して生成した予熱ガスを、予熱羽口4から吹きこむ高炉1であってもよい。対象高炉がこのような高炉1である場合、本実施形態では、調整BFG流量に加えて、予熱羽口4を介して対象高炉1に吹き込まれる予熱ガスの条件を設定してもよい。
【0072】
次に、高炉数学モデルのガス吹込み条件として、予熱羽口4を介して対象高炉1に吹き込まれる予熱ガスの条件を設定する方法について、図5を用いて説明する。図5は、予熱羽口4を介して吹き込まれる予熱ガスの条件を設定する手順を示すフローチャートである。図5に示すように、本実施形態のガス吹込み条件の設定方法では、ステップS201~ステップS202の処理を行う。なお、予熱ガスの条件とは、流量[Nm/min]、温度[℃]、及び組成からなる群から選択される少なくとも一つの条件を指す。
【0073】
ステップS201の処理では、予熱ガスバーナー15で生成される予熱ガスの条件を求める。予熱ガスバーナー15で生成される予熱ガスの条件は、予熱ガスバーナー15に供給される被加熱ガスと、予熱ガスバーナー15に供給される支燃性ガス(例えば、酸素や空気)と、予熱ガスバーナー15の燃料として用いられる燃料ガスの3種類のガスそれぞれの流量、温度、及び組成から求めることができる。
【0074】
具体的な方法としては、被加熱ガスを予熱ガスバーナー15で予熱する燃焼シミュレーションの結果から求める方法や、被加熱ガスを予熱ガスバーナー15で予熱する燃焼試験結果から求める方法や、燃焼率、ヒートロス等を仮定した熱物質収支に基づいて求める方法が挙げられる。ここで、燃焼シミュレーションには、例えば、汎用の熱流体解析ソフトウェア(例えばANSYS Fluent, ANSYS CFXなど)を用いることができる。燃焼シミュレーションでは、対象高炉1で使用される予熱ガスバーナー15の構造をモデルとして使用し、予熱ガスバーナー15に供給される被加熱ガスと、予熱ガスバーナー15に供給される支燃性ガス(例えば、酸素や空気)と、予熱ガスバーナー15の燃料として用いられる燃料ガスのそれぞれのガスについて流量、温度、及び組成を入力することで、予熱ガスバーナー15で生成される予熱ガスの条件を求めることができる。燃焼シミュレーションでは、その他にも、次元(三次元)、時間(定常)、乱流モデル/燃焼モデル/ふく射モデルの種類等を設定してもよい。
【0075】
ステップS202の処理では、ステップS201で求めた予熱ガスの条件から、予熱羽口4を介して対象高炉1に吹き込まれる予熱ガスの条件(流量[Nm/min]、温度[℃]、組成の少なくとも一つの条件)を設定する。予熱羽口4から対象高炉1に吹き込まれる予熱ガスの条件は、予熱ガスバーナー15で生成された予熱ガスが予熱羽口4に到達するまでの間に、ステップS201で求めた条件に影響を与える条件を考慮して、ステップS201で求めたガス吹込み条件から設定することができる。
【0076】
ステップS201で求めた予熱ガスの条件に影響を与える条件としては、予熱ガスバーナー15で生成された予熱ガスが予熱羽口4に到達するまでの間に混合されるガスを挙げることができる。予熱ガスバーナー15で生成された予熱ガスは、上述したように、予熱羽口4に到達するまでの間に、温度調整を目的として、低温のガス(例えば、BFG)と混合されることがあるが、このような場合、予熱羽口4に吹き込まれる予熱ガスの流量、温度、及び組成は、予熱ガスバーナー15で生成された予熱ガスの流量、温度、及び組成とは異なる。
【0077】
このため、予熱ガスバーナー15で生成された予熱ガスが予熱羽口4に到達するまでの間にガスと混合される場合、ステップS202で設定する予熱ガスのガス吹込み条件(流量)としては、ステップS201で求めたガス吹込み条件(流量)に、混合されるガスの流量を加えた値を設定できる。また、予熱ガスバーナー15で生成された予熱ガスが予熱羽口4に到達するまでの間にガスと混合される場合、ステップS202で設定する予熱ガスのガス吹込み条件(温度)としては、予熱ガスバーナー15で生成された予熱ガスにガスを混合した後の予熱ガスの温度を設定できる。また、予熱ガスバーナー15で生成された予熱ガスが予熱羽口4に到達するまでの間にガスと混合される場合、ステップS202で設定する予熱ガスのガス吹込み条件(組成)としては、予熱ガスバーナー15で生成された予熱ガスにガスを混合した後の予熱ガスの組成を設定できる。
【0078】
一方、予熱ガスバーナー15で生成された予熱ガスが予熱羽口4に到達するまでの間に、ステップS201で求めた条件に影響を与える条件が無い場合や、影響を与える条件があったとしてもその影響が小さい場合には、ステップS201で求めたガス吹込み条件を、予熱羽口4を介して対象高炉1に吹き込まれる予熱ガスのガス吹込み条件として設定することができる。
【0079】
ステップS201~S202の処理を含む本実施形態のガス吹込み条件の設定方法によれば、予熱ガスバーナー15で使用される燃料ガス及び支燃性ガスの影響を考慮した予熱ガスのガス吹込み条件を設定することができる。
【0080】
なお、図4及び図5で説明した処理(いわゆる機能)は、プログラムによって実現可能である。具体的には、各機能を実現するために予め用意されたコンピュータプログラムを補助記憶装置に格納しておき、CPU等の制御部が補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置に読み出し、主記憶装置に読み出されたプログラムを制御部が実行することにより、各機能を動作させることができる。各機能は、1つの制御装置で動作させることもできるし、互いに接続された複数の制御装置によって動作させることもできる。
【0081】
上記プログラムは、コンピュータで読取可能な記録媒体に記録された状態において、コンピュータに提供することも可能である。記録媒体としては、CD-ROM等の光ディスク、DVD-ROM等の相変化型光ディスク、MO(Magnet Optical)やMD(Mini Disk)などの光磁気ディスク、フロッピー(登録商標)ディスクやリムーバブルハードディスクなどの磁気ディスク、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、SDメモリカード、メモリスティック等のメモリカードが挙げられる。また、本発明の目的のために特別に設計されて構成された集積回路(ICチップ等)等のハードウェア装置も記録媒体として含まれる。
【実施例
【0082】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0083】
図1に示すように、通常羽口2及びシャフト羽口3が設けられる試験高炉1を用意した。この試験高炉1を用いて、下記表1に示す操業諸元で、所定期間ベース操業を行った。なお、ベース操業は、通常羽口2から酸素富化空気及び微粉炭を吹き込む操業であり、通常羽口2やシャフト羽口3からは調整BFGやCOGが吹き込まれていない。
【0084】
[表1]
【0085】
このベース操業を前提として、炉頂から排出されるBFGを除去装置13に供給するとともに、除去装置13で生成した調整BFGを通常羽口2及びシャフト羽口3から吹き込む操業(以下、「調整BFG吹込み操業」ともいう)について解析を行った。通常羽口2には、調整BFGに加えてCOGを吹き込むとともに、通常羽口2から吹き込んでいた酸素富化空気における酸素富化率を7%から約26%に変更することとした。
【0086】
調整BFG吹込み操業について、炉頂から排出されるBFGの流量、及び、BFGに含まれる各成分の体積比率を得た。得られた流量及び体積比率を用いて、上記式(1)~(5)から、BFGに含まれる各成分のモル流量を求めた。
【0087】
次に、上記式(2)で求めたCOのモル流量CO2BFGを用いて、上記式(6)から、除去装置13から排出される調整BFG中のCOのモル流量CO2a-BFGを求めた。なお、上記式(6)における除去率RCO2としては、試験高炉1で使用した除去装置13のCO除去能力に応じた値を用いた。
【0088】
次に、除去装置13から排出される調整BFGの温度、及び、除去装置13から調整BFGを排出する際に加えられる送風圧力を用いて、上記式(8)から、除去装置13の出口のBFGの温度及び圧力における飽和水蒸気量CH2O,a-BFGを求めた。さらに、求めた飽和水蒸気量CH2O,a-BFGを用いて、上記式(7)から、除去装置13から排出される調整BFG中のHOのモル流量PH2Oを求めた。
【0089】
次に、CO及びHO以外のBFGの各成分のモル流量(上記式(1),(3),(5)で求めたモル流量)と、除去装置13から排出された調整BFG中のCOのモル流量(上記式(6)から求めたモル流量)CO2a-BFGと、除去装置13から排出された調整BFG中のHOのモル流量(上記式(7)から求めたモル流量)PH2Oを用いて、上記式(9)から、除去装置13から排出される調整BFGの成分及び流量vall,a-BFGを求めた。
【0090】
設定した調整BFGの成分及び調整BFG流量を用いて、試験高炉1を解析対象とした高炉数学モデルによる解析を行った。高炉数学モデルとしては、非特許文献1に記載の高炉数学モデルを使用した。なお、高炉数学モデルで使用した計算格子は、高炉1の内部領域を2次元方向(炉半径方向及び炉高方向)に分割することで形成した。高炉数学モデルでの解析において、出銑量は試験高炉1の設計出銑量である34t/dとした。また、出銑温度は過去の実績に合わせ1480℃とした。通常羽口2を介して対象高炉1に吹き込むCOG組成については、下記表2に示す組成を使用した。計算格子は、炉高方向に60個とし、炉半径方向に6個とし、時間刻みの初期値は5sとした。装入物分布は3バッチ装入を使用した。焼結鉱、コークスの平均粒度は、それぞれ13mm、27mmとした。通常羽口2及びシャフト羽口3から対象高炉1に吹き込まれる調整BFGの組成は、下記表3に示すBFGの組成(mol%)から計算して求めた下記表4の組成(mol%)を用いた。また、調整BFGとCOGの温度及び流量には、下記表5に示す温度及び流量を使用した。なお、下記表5において、調整BFGの流量は、解析に先立って設定した調整BFG流量を、製造される銑鉄1t当たりの流量に変換した値である。
【0091】
[表2]
【0092】
[表3]
【0093】
[表4]
【0094】
[表5]
【0095】
ベース操業条件下における解析結果(温度分布、H濃度分布、N濃度分布、還元率分布)を図6に示す。調整BFG吹込み操業条件下における解析結果(温度分布、H濃度分布、N濃度分布、還元率分布)を図7に示す。
【0096】
図6及び図7に示すように、調整BFG吹込み操業条件下における解析結果では、ベース操業条件下における解析結果と比較してN濃度が低下しており、高酸素富化に伴うN濃度の低下を確認することができた。また、調整BFG吹込み操業条件下における解析結果では、ベース操業条件下における解析結果と比較してH濃度が上昇しており、調整BFGやCOGの吹き込みに伴うHガス濃度の上昇を確認することができた。この結果から、本実施形態のガス吹込み条件の設定方法によれば、除去装置13のCO除去能力やHOの除去能力を考慮した、高炉数学モデルのガス吹込み条件(シャフト羽口3及び/又は通常羽口2から吹き込まれる調整BFGの成分及び流量)を設定できることが理解できた。
【符号の説明】
【0097】
1:高炉、2:通常羽口、3:シャフト羽口、4:予熱羽口、11:熱風炉、
12:加熱手段、13,13A,13B:除去装置、14:ガス供給手段、
15:予熱ガスバーナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7