(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】細胞内感染の処置方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230105BHJP
A61K 31/404 20060101ALI20230105BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20230105BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20230105BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/404
A61K31/7105
A61K38/02
A61P31/18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019090712
(22)【出願日】2019-05-13
(62)【分割の表示】P 2016522137の分割
【原出願日】2014-06-25
【審査請求日】2019-06-05
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-05
(32)【優先日】2013-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2014-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2014-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】508300231
【氏名又は名称】ザ・ウォルター・アンド・エリザ・ホール・インスティテュート・オブ・メディカル・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ペルグリーニ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴール・クラウス-ピーター・イバート
(72)【発明者】
【氏名】コリン・グレン・ベグリー
【合議体】
【審判長】岡崎 美穂
【審判官】冨永 みどり
【審判官】齋藤 恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/049350(WO,A1)
【文献】特表2012-513988(JP,A)
【文献】特表2013-519669(JP,A)
【文献】国際公開第2010/150836(WO,A1)
【文献】PlosOne, 2012, Vol.7 No.10, p.e46096
【文献】平成10年度~13年度 科学研究費補助金特定領域研究 研究成果報告書 エイズ制御のための基礎研究, 2004, p.189-191
【文献】JBC., 2012, Vol.287 No.18, p.15118-15133
【文献】Trends Immunol., 2012, Vol.33 No.11, p.535-545
【文献】Biochem J., 2010, Vol.427, p.57-67
【文献】Blood, 2012, Vol.120 Issue 21, p.3565
【文献】Cancer Res., 2012, Vol.72 Issue 8 Supplement, Abstract Number3857
【文献】CLINICAL MICROBIOLOGY REVIEWS, 2009, Vol22 No.2, p.274-290
【文献】Cancer Res., 2012, Vol.72 Issue 8 Supplement, Abstract Number1939
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K38/00
JSTPLUS、JMEDPLUS、JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における
潜伏細胞内感染を処置する
ための、IAPアンタゴニストを含む組成物であって、
前記感染がHIVにより引き起こされ、
前記IAPアンタゴニストが、Smac模倣体及びIAP遺伝子の発現を低減させるアンタゴニストからなる群より選択され、
前記Smac模倣体が、一価Smac模倣体及び二価Smac模倣体からなる群より選択され、
前記IAPが、cIAP1及びcIAP2である、
組成物。
【請求項2】
前記Smac模倣体が、以下の特徴の1つ以上を含む、請求項
1に記載の
組成物:
(a)前記Smac模倣体は、二価である;
(b)前記Smac模倣体は、XIAP媒介カスパーゼ-3抑制を抑制解除する;
(c)前記Smac模倣体は、TRAF2に結合していないcIAP-1、及びTRAF2に結合しているcIAP1を分解する;
(d)前記Smac模倣体は、TRAF2に結合しているcIAP-2を分解するが、TRAF2に結合していないcIAP-2を分解しない;
(e)前記Smac模倣体は、TRAFに結合しているcIAP-2の分解に比べてTRAF2に結合していないcIAP-2を弱く分解する;並びに
(f)前記Smac模倣体が、一般構造[P1-P2-P3-P4]又は[P1-P2-P3-P4]-L-[P1'-P2'-P3'-P4'](式中、P1-P2-P3-及びP1'-P2'-P3'-は、成熟SmacのN-末端Ala-Val-Pro-トリペプチドのペプチド代替物又はペプチド模倣体に相当し、P4及びP4'は、Phe、Tyr、Ile又はValのアミノ酸代替物に相当し、Lは、[P1-P2-P3-P4]を[P1'-P2'-P3'-P4']に共有結合させる、結合基又は結合である)を有する。
【請求項3】
前記Smac模倣体が、ビリナパントである、請求項
2に記載の
組成物。
【請求項4】
前記
IAPアンタゴニストが、IAP遺伝子の発現を低減させる
アンタゴニストである、請求項1に記載の
組成物。
【請求項5】
前記IAP遺伝子が、cIAP1
及びcIAP2遺伝子である、請求項
4に記載の
組成物。
【請求項6】
前記
IAPアンタゴニストが、siRNA、shRNA又はmiRNAである、請求項
4又は
5に記載の
組成物。
【請求項7】
前記IAPアンタゴニストが、TNF-αと組み合わせて投与される、請求項
1に記載の
組成物。
【請求項8】
前記IAPアンタゴニストが、TNF-α又は他のTNF受容体アゴニストと併用投与される、請求項1から
7のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項9】
前記IAPアンタゴニストが、TRAILと併用投与される、請求項1から
8のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項10】
前記IAPアンタゴニストが、抗ウイルス性ヌクレオシド類似体と併用投与される、請求項1から
9のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項11】
前記ヌクレオシド類似体が、エンテカビルである、請求項
10に記載の
組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
出願データ
本出願は、2013年6月25日、2014年3月24日及び2014年5月26日にそれぞれ出願されたオーストラリア特許出願第2013902327号、同第2014901029号及び同第2014901977号に基づく優先権を主張するものである。これらの出願の各々の開示は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、細胞内感染の処置方法に関する。前記方法は、アポトーシス阻害因子(IAP)アンタゴニストの投与を含む。
【背景技術】
【0003】
病原体、例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ヒストプラズマ属種及びプラスモジウム属種による慢性重症感染は、二次的な宿主細胞傷害を引き起こす点で有害である病原体特異的免疫不全及び異常非特異的炎症反応と関連付けられる。様々な処置戦略が長年にわたって開発されてきたが、それらには殆ど効果がない。
【0004】
B型肝炎は、世界中に分布している一般的な疾患であり、推定280,000,000人がHBVの保有者である。世界的に、HBV感染は、東南アジア、アフリカ及び一部の南米の発展途上国において最もよく見られ、これらの諸国では、若年の乳児への垂直感染の結果としてHBVの慢性保有者になる感染個体の割合が高くなる。乳児のときにHBVを獲得した男性が、慢性HBV感染の結果、肝硬変又は原発性肝細胞癌によって死亡する可能性は、おおよそ40%である。対照的に、誕生時に感染した女性が慢性B型肝炎感染によって同様に死亡する可能性は、約15%である。
【0005】
B型肝炎感染は、インターフェロンα2b(IFN α2b)、IFN α2a、ラミブジン、アデフォビル及びエンテカビルをはじめとする幾つかの薬が現在臨床使用されているにもかかわらず依然として処置が難しい。処置は、初期の段階で効果がなく、又は薬物耐性ウイルスの出現によって効果がなくなることもある。既存の投薬計画には、長期である、高額である、及び望ましくない副作用を随伴するという欠点があることも公知である。例えば、ラミブジンは、HBV感染の処置に適用され、多少の成功を収めているが、処置の2年後には45~55%に達しうる耐性リスクの増加を伴う。さらに、かかる治療のもとで肝臓からHBVを完全に除去することはできず、その結果、多くの場合、処置中止後でさえHBV感染の再活性化が起こる。末期肝不全が慢性HBV感染患者において起こった場合、肝臓移植が他に採りうる唯一の処置形態である。しかし、HBV感染は持続するので、移植片が感染することもあり、かくして患者及び移植片生存が限られる。
【0006】
ヒト免疫不全ウイルス/後天性免疫不全症候群(HIV/AIDS)も、世界的な、特に発展途上国での、健康危機を象徴する。抗レトロウイルス薬の使用は、HIV感染個体の平均余命及び生活の質を有意に変えた。しかし、かかる抗ウイルス薬による介入にもかかわらず、持続的免疫活性化、CD4 T細胞及びB細胞崩壊並びに免疫機能喪失は、ほんの一部しか元に戻らない。患者には、非AIDS指標疾患、並びに死亡原因、例えば、癌、心血管疾患、肝及び腎不全、中枢神経系障害(例えば、トキソプラズマ脳炎)及び持続性感染のリスクもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第7,517,906号
【文献】米国特許第7,419,975号
【文献】米国特許第7,589,118号
【文献】米国特許第7,932,382号
【文献】米国特許第7,345,081号
【文献】米国特許第7,244,851号
【文献】米国特許第7,674,787号
【文献】米国特許第7,772,177号
【文献】米国特許第7,989,441号
【文献】米国特許出願公開第2010/0,324,083号
【文献】米国特許出願公開第2010/0,056,467号
【文献】米国特許出願公開第2009/0,069,294号
【文献】米国特許出願公開第2011/0,065,726号
【文献】米国特許出願公開第2011/0,206,690号
【文献】WO2011/098904
【文献】米国特許第8,283,372号
【文献】米国特許第5,075,109号
【文献】米国特許第4,452,775号
【文献】米国特許第4,667,014号
【文献】米国特許第4,748,034号
【文献】米国特許第5,239,660号
【文献】米国特許第3,832,253号
【文献】米国特許第3,854,480号
【文献】WO99/32619
【文献】WO99/53050
【文献】WO99/49029
【文献】WO01/34815
【文献】米国特許第6,326,174号
【文献】WO97/01633
【文献】WO02/085946
【文献】WO02/22175
【文献】WO2009/025743
【非特許文献】
【0008】
【文献】Fulda及びVucic、Nature Reviews Drug Discovery、2012、第11巻、109~124頁
【文献】Fulda、Leukemia、2012、第26巻、1155~1165頁
【文献】Rahman及びMcFadden、Nat Rev Microbio 2011、9:291~306頁
【文献】Hiscottら、Oncogene 2006、30:6844~67頁
【文献】Shuklaら、Carcinogenesis 2011、32:978~985頁
【文献】Lang's Handbook of Chemistry (Dean, J. A.編)、第13版、表7-2[1985]
【文献】Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing社、Easton、PA
【文献】Carterら、Apoptosis、2011、第16巻(1):67~74頁
【文献】Waterhouseら、1998、Proc Natl Acad Sci USA、95(23):13959~64頁
【文献】Smithら、2000、Nature、407:319~320頁
【文献】Millar及びWaterhouse、2005、Funct Integr Genomics、5(3):129~35頁
【文献】Pasquinelliら、2005、Curr Opin Genet Dev. 15(2):200~5頁
【文献】Almeida及びAllshire、2005、TRENDS Cell Biol、15(5):251~8頁
【文献】Breaker及びJoyce、Chemistry and Biology 1995;2:655
【文献】Santoro及びJoyce、Proc. Natl, Acad. Sci. USA 1997;943:4262
【文献】Khachigian、Curr Opin Mol Ther 4:119~21頁;2002
【文献】Janssenら、N Engl J Med、2013、第368巻(18):1685~94頁
【文献】Woodellら、Molecular Therapy、2013年5月;21(5):973~985頁
【文献】Buckheitら、AIDS Research and Human Retroviruses 7:295~302頁、1991
【文献】Chin R、Earnest-Silveira L、Koeberlein B、Franz S、Zentgraf H、Bowden S、Bock C-T、Torresi J.、Modulation of MAPK pathways and cell cycle byreplicating hepatitis B virus: factors contributing tohepatocarcinogenesis、J Hepatology 2007;47:325~37頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、細胞内感染の新規処置法の開発に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、第一の態様において、本発明は、対象における細胞内感染を処置する方法を提供し、この方法は、前記対象へのIAPアンタゴニストの投与を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】感染マウスの血清中の血清HBV DNAレベルの経時変化を8週間にわたって示す図である(上のパネル)。下のパネルは、血清中のビリオン(左)及びサブウイルス粒子(右)のEM顕微鏡写真を示す。
【
図2】感染マウスの血清中の血清HBV DNAレベルの経時変化を40週間にわたって示す図である。ウイルス血症の明白な制御にもかかわらず、感染マウスは、HBVウイルス複製の再発を示し、感染24週間後でさえ血清HBV DNAレベルが一過的に急上昇する。
【
図3】ビリナパント又はビヒクル対照(DMSO)で処置したマウスのHBV DNA血清レベルを示す図である。
【
図4】ビリナパントで処置したHBV感染(C57BL/6)マウスとビヒクル対照で処置したHBV感染(C57BL/6)マウスを比較する、イベント(HBV排除)までの時間のグラフを示す図である。
【
図5】全器官におけるcIAP2の完全欠損と共にcIAP1の欠損のある(肝臓特異的欠損)マウスが、ビリナパントで処置した野生型マウスと同程度にHBV感染を排除できることを示す図である。点線、赤色実線及び青色実線は、それぞれ、感染を排除した野生型マウス、肝臓特異的cIAP1欠損+全身cIAP2欠損マウス、及びXIAP欠損(全身)マウスの数(%)を経時的に示す。
【
図6】PBMCにおけるHIV-1 JR-CSF複製のビリナパントによる阻害を示す図である。
【
図7】PBMCにおけるHIV-1 JR-CSF複製のビリナパント+10ng/ml TNF-αによる阻害を示す図である。
【
図8】健常な2名のドナーから単離したPHA活性化PBMCを未感染のままにしておくか、又はHIV NL4.3(GFP+)に感染させ、その後、示されている濃度のビリナパント又はビヒクル対照(NT)で6時間又は24時間処置した。加えて、未感染無処置PBMCをビリナパント又はビヒクル対照で処置した。生きている(活性カスパーゼ3陰性)a)ビリナパント処置24時間後のHIV感染(GFP+)培養CD4+リンパ球の、処置前の生きている感染細胞に対する割合;ビリナパント処置6又は24時間後の生きているb)無処置培養若しくはc)PHA活性化、未感染CD4+リンパ球の、未処置細胞に対する割合のFACS分析の図である。
【
図9】DMSO対照(n=15)との比較での、ビリナパントで処置した(n=17、腹腔内注射として30μg/gで1週間間隔で3回投与した)結核菌(Mycobacterium tuberculosis)感染マウスにおける結核菌細菌量(CFU/肺Log
10)の図であり、0.33Log
10CFU/肺の有意な(P=0.012)低減を示している。
【
図10】TNF-αサイトカインへの拮抗がビリナパントの有効性を無効にすることを示す図である。
【
図11】ビリナパント以外のSMAC模倣体での実験結果の図である。
【
図12】ビリナパント(四角)又はビヒクル対照(丸)を投与した感染マウスの肺におけるレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)細菌量(CFU/ml)の図である。各点は、動物を表し、エラーバーは、SEMを表す。
*P<0.05。
【
図13】エンテカビル、ビリナパント及びエンテカビルの組合せで処置したHBV感染マウスの処置の結果を示す図である。
***P<0.001、
**P<0.01、ns=有意でない。
【
図14】アデノウイルス送達系と共に、TRAIL、ビリナパント、及びTRAILとビリナパントの組合せを使用する、HBVにインビトロで感染させた初代ヒト幹細胞の処置の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書を通して、文脈による別段の要求がない限り、「含む(comprise)」という語、又は語尾変化形、例えば「含む(comprises)」若しくは「含むこと(comprising)」は、述べられている要素若しくは整数又は要素若しくは整数の群の包含を意味するが、任意の他の要素若しくは整数又は要素若しくは整数の群の除外を意味しないと解釈するものとする。
【0013】
任意の先行刊行物(若しくはそこから得られる情報)への又は公知であるあらゆる事への本明細書における言及は、先行刊行物(若しくはそこから得られる情報)又は公知の事が、本明細書が関係する努力傾注分野における共通の一般知識の一部をなすことについての承認若しくは承諾又は何らかの形態の示唆とも見なされず、また見なすべきでない。
【0014】
本明細書において触れる全ての刊行物は、それら全体が参照により本明細書に援用される。
【0015】
本明細書において用いられる単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈による別段の明白な指示がない限り、複数の態様を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば、「薬剤(an agent)」への言及は、単一の薬剤はもちろん、2つ以上の薬剤も含む;「分子(a molecule)」への言及は、単一の分子はもちろん、2つ以上の分子も含む;等々。
【0016】
病原体を根絶するためのメカニズムは、感染細胞にとっては、プログラム細胞死の過程を活性化することである。これは、病原体と感染細胞の両方を死滅させ、微生物の広がりを防止する。しかし、多くの病原体は、それらの宿主細胞が自殺するのを防ぐための戦略を発達させてきた。アポトーシス阻害タンパク質(IAP)と呼ばれる、宿主細胞における分子群は、細胞死プログラムの調節及び炎症の修飾に幾つかの役割を果たす。
【0017】
本発明は、インビボでIAPに拮抗することにより、持続感染宿主細胞の排除及び病原体の除去が、その宿主に対する明白な有害な二次的損傷を生じさせることなく増進されるという発見に、一部で基づいている。これは、汎IAPアンタゴニストの使用によって達成でき、前記汎IAPアンタゴニストは、汎cIAPアンタゴニスト、例えば、cIAP1及び/又はcIAP2アンタゴニストであってもよい。
【0018】
したがって、第一の態様において、本発明は、対象にIAPアンタゴニストを投与する工程を含む、対象における細胞内感染を処置する方法を提供する。
【0019】
本明細書において用いられる用語「処置すること」は、処置される生物、例えばヒト患者の、細胞内感染の原因である病原体のレベル又は数を低減させることを意味する。
【0020】
タンパク質のIAPファミリーは、XIAP(BIRC4)、cIAP1(BIRC2)、cIAP2(BIRC3)、NAIP(BIRCl)、サバイビン(BIRC5)、アポロン(ブルース;BIRC6)、ML-IAP(BIRC7;リビン、KIAP)及びILP2(BIRC8)を含む。ファミリーメンバー間にはある程度の重複性があるが、XIAP+cIAP1+cIAP2の標的化合物欠失は、マウスにおいて胎児の早期致死を生じさせる。これらの分子は、炎症を促進し、細胞死シグナル伝達1を無効にする。本発明者らは、IAPが宿主における持続性細胞内感染の維持に重要な役割を果たすことを初めて証明した。
【0021】
ある実施形態において、IAPは、cIAP1若しくはcIAP2、又は両方である。
【0022】
cIAP1は、GenBank DQ068066.1で示される配列によってコードされる。cIAP1の転写物変異体としてはNCBI参照配列NM_001166.4、NM_001256163.1及びNM_001256166.1が挙げられる。
【0023】
cAIP2は、GenBank BC037420.1で示される配列によってコードされる。cIAP2の転写物変異体としてはNCBI参照配列NM_001165.4及びNM_182962.2が挙げられる。
【0024】
XIAP(X連鎖アポトーシス阻害因子)は、GenBank NCBI参照配列NG_007264.1.によってコードされる。XIAPの転写物変異体としては、NCBI参照配列NM_001167.3、NM_001204401.1及びNR_037916.1が挙げられる。
【0025】
好適なIAPアンタゴニストは、当業者には公知である。例としては、一価IAPアンタゴニストGDC-0145、GDC-0152及びGDC-0917(Genentech社、米国)、AT-IAP(Astex社、英国)及びAT-406(Ascenta社、米国)、並びに二価IAPアンタゴニストAEG40826(Aegera Therapeutics社、米国)、SM-1200(ミシガン大学)、HGS1029 (Human Genome Sciences社、米国)、BV6(Genentech社、米国)、AEG40730(Aegera Therapeutics社)、SM-164(ミシガン大学)、CS3(Genentech社)、MLlOl(Sanford-Burnham Medical Research Institute社)、AEG35156(Aegera Therapeutics社)及びビリナパント/TL32711(TetraLogic社、米国)が挙げられる。これらの幾つかは、Fulda及びVucic、Nature Reviews Drug Discovery、2012、第11巻、109~124頁、及びFulda、Leukemia、2012、第26巻、1155~1165頁においてさらに論じられており、これらの内容は、参照により本明細書に援用される。一価IAPアンタゴニストと二価IAPアンタゴニストの両方を本発明において使用することができると一般に考えられるが、IAPアンタゴニストが二価であることが今のところ好ましい。
【0026】
ある実施形態において、IAPアンタゴニストは、第二のミトコンドリア由来カスパーゼ活性化因子(Smac)の模倣体である。Smacは、IAPの内因性阻害因子であるアポトーシス促進性ミトコンドリアタンパク質である。Smac模倣体は、プログラム細胞死を刺激することが証明されており、それ故、新規癌治療の開発の焦点になっている2、3。
【0027】
Smacは、IAPとの直接相互作用によってIAP媒介カスパーゼ阻害に拮抗し、及び/又はIAPファミリーの一部のメンバー(cIAP1及びcIAP2)のプロテアソーム分解を誘導する。プロカスパーゼ-3のタンパク質分解活性化と成熟カスパーゼ-3の酵素活性の両方を促進するSmacの能力は、IAPと特異的に相互作用するその能力に依存する。Smacは、BIR1/BIR2リンカー領域とXIAPのBIR3とに結合してカスパーゼ-3及び-7とカスパーゼ-9の阻害を妨害し、かくしてアポトーシス又はプログラム細胞死を助長する。Smac及びSmac模倣体は、cIAP1及びcIAP2のプロテアソーム分解も誘導し、その結果、カノニカルNF-κB活性化を阻害することになる。多くのウイルスは、NF-κB活性化を変調して疾病病因を促進する(参考文献:Rahman及びMcFadden、Nat Rev Microbio 2011、9:291~306頁;Hiscottら、Oncogene 2006、30:6844~67頁;Shuklaら、Carcinogenesis 2011、32:978~985頁)。本発明の基礎をなすメカニズムの特定の解釈に拘束されることなく、これらの活性は、Smac模倣体をかかる感染の処置に使用することができるメカニズムを示唆している。
【0028】
SmacとIAP間の相互作用の結晶構造の解明がSmac模倣体の発見を可能にした。Smac模倣体は、IAPへの直接結合及び拮抗、cIAPの自己ユビキチン化及びプロテオソーム分解を促進することによるIAPの除去、並びにTNF刺激による細胞の外因性アポトーシス経路の活性化はじめとする複数のメカニズムによって、腫瘍細胞のアポトーシス細胞死を助長するようである。TNFは、多くの感染の制御に必要とされる肝要なサイトカインであり、自己免疫障害の処置のためにTNFが拮抗を受けると、多くの潜伏感染が再活性化する(http://cmr.asm.org/content/22/2/274.full#sec-49を参照されたい)。当然の結果として、これらの感染の際にTNF活性を促進することで、それらの排除を促進することができる。
【0029】
上で特定したものの一部を含むSmacペプチド模倣体(peptidomimetics)の例は、限定ではないが、米国特許第7,517,906号、米国特許第7,419,975号、米国特許第7,589,118号、米国特許第7,932,382号、米国特許第7,345,081号、米国特許第7,244,851号、米国特許第7,674,787号、米国特許第7,772,177号、米国特許第7,989,441号、米国特許出願公開第2010/0,324,083号、米国特許出願公開第2010/0,056,467号、米国特許出願公開第2009/0,069,294号、米国特許出願公開第2011/0,065,726号、米国特許出願公開第2011/0,206,690号、WO2011/098904に開示されており、これらのすべては、完全に記載されているかのごとく、参照により本明細書に援用される。それらに開示されている化合物、及び一般にSmac模倣体は、構造:
[P1-P2-P3-P4] (式I)
又は
[P1-P2-P3-P4]-L-[P1'-P2'-P3'-P4'] (式II)
を有し、式中、P1-P2-P3-及びP1'-P2'-P3'-は、成熟SmacのN-末端Ala-Val-Pro-トリペプチドのペプチド代替物(replacements)、すなわちペプチド模倣体に相当し、P4及びP4'は、第4のN末端アミノ酸、Phe、Tyr、Ile又はValのアミノ酸代替物に相当し、Lは、[P1-P2-P3-P4]を[P1'-P2'-P3'-P4']に共有結合させる結合基又は結合である。
【0030】
例えば、限定ではないが、Smac模倣体は、
P1及びP1'が、NHR1-CHR2-C(O)-である、
P2及びP2'が、-NH- CHR3-C(O)-である、
P3及びP3'が、ピロリジン、シクロアルキルと縮合しているピロリジン、又は-N-ヘテロ原子を有するヘテロシクロアルキルと縮合しているピロリジン(いずれの場合も、任意選択で置換されている)であり、P3/P3'のピロリジンが、アミド結合によってP2/P2'に結合している;
P4及びP4'が、-M-Qp-R7である、
式IIの化合物に属することがある。
【0031】
前記可変置換基は、例えば、
R1: -H又は-CH3、
R2: -CH3、-CH2CH3又は-CH2OH、
R3: C2~6アルキル、C2~6アルコキシ、C3~C6シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル、又はC6~C8アリール若しくはヘテロアリール(いずれの場合も、任意選択で置換されている)、
M: 共有結合、C1~6アルキレン、置換C1~C6アルキレン、例えば-C(O)-(これに限定されない)、
Q: 共有結合、C1~6アルキレン、置換C1~C6アルキレン、-O-又は-NR8-、
P: 0又は1、
R7: シクロアルキル、シクロアルキルアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アリール又はヘテロアリール(いずれの場合も、任意選択で置換されている)、
R8: -H又はC1~6アルキル
であることができる。Lは、[P1-P2-P3-P4]を[P1'-P2'-P3'-P4']に共有結合させる、結合基又は結合である。
【0032】
単独のとき又は別の用語(例えば、アルコキシ)の一部としての「アルキル」(一価)及び「アルキレン」(二価)は、別段の指定がない限り、12個以下の炭素原子を有する分岐又は非分岐の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。特定のアルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、n-ヘプチル、3-ヘプチル、2-メチルヘキシル等が挙げられるが、これらに限定されない。アルキル、アルケニル等を修飾するために用いられる用語「低級」は、分岐している又は直鎖状の1から4個の炭素原子を意味し、したがって、例えば、用語「低級アルキル」、「C1~C4アルキル」及び「1から4炭素原子のアルキル」は同義であり、メチル、エチル、1-プロピル、イソプロピル、1-ブチル、sec-ブチル又はt-ブチルを意味するために交換可能に用いられる。アルキレン基の例としては、メチレン、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレン及び2-メチル-ブチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
置換アルキルという用語は、炭化水素主鎖の1個又は複数の(多くの場合、4個以下の)炭素原子上の1個又は複数の水素に置き換わっている置換基を有する、アルキル部分を指す。かかる置換基は、ハロゲン[例えば、I、Br、Cl、又はF、特にフルオロ(F)]、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、メルカプト、アルコキシ[例えば、C1~C6アルコキシ、又は低級(C1~C4)アルコキシ、例えば、アルコキシアルキルを生じさせるためにメトキシ若しくはエトキシ]、アリールオキシ(例えば、アリールオキシアルキルを生じさせるためにフェノキシ)、ニトロ、オキソ(例えば、カルボニルを形成するために)、カルボキシル(実際には、単一炭素原子上のオキソ及びヒドロキシ置換基の組合せである)、カルバモイル[単一炭素原子上のオキソ及びアミノの置換であるアミノカルボニル、例えば、NR2C(O)-]、シクロアルキル(例えば、シクロアルキルアルキル)、アリール(例えばベンジル又はフェニルエチル等のアラルキルをもたらす)、ヘテロシクリルアルキル(例えば、ヘテロシクロアルキルアルキル)、ヘテロアリール(例えば、ヘテロアリールアルキル)、アルキルスルホニル(メチルスルホニル等の低級アルキルスルホニルを含む)、アリールスルホニル(例えば、フェニルスルホニル)、及び-OCF3(ハロゲン置換アルコキシである)から成る群より独立して選択される。本発明は、具体的にはアルコキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルアルキル(heterocyclyalkyl)及びヘテロアリールを含む、これらのアルキル置換基の幾つかが、下で提供するそれらのそれぞれの定義の各々に関連して定義されるように任意選択でさらに置換されていることをさらに企図している。加えて、特定のアルキル置換基部分は、単一炭素原子上のかかる置換の組合せの結果として生ずる。例えば、エステル部分、例えば、アルコキシカルボニル、例えばメトキシカルボニル又はtert-ブトキシカルボニル(Boc)が、かかる置換の結果として生ずる。詳細には、メトキシカルボニル及びBocは、オキソ(=O)及び非置換アルコキシ、例えばメトキシ(CH3-O)及びtert-ブトキシ[(CH3)3C-O-]の両方のメチル基(-CH3)に関する3個の水素をそれぞれ置き換える置換の結果として生ずる置換アルキルである。同様に、アミド部分、例えば、アルキルアミノカルボニル、例えばジメチルアミノカルボニル又はメチルアミノカルボニルは、オキソ(=O)と一非置換アルキルアミノ又は二非置換アルキルアミノ、例えばジメチルアミノ[-N-(CH3)2]又はメチルアミノ[-NH-(CH3)]との両方のメチル基(-CH3)に関する3個の水素を置き換える置換の結果として生ずる置換アルキルである[同様に、ジフェニルアミノカルボニル等のアリールアミノカルボニルは、オキソ(=O)と一非置換アリール(フェニル)アミノの両方のメチル基(-CH3)に関する置換の結果として生ずる置換アルキルである]。例示的置換アルキル基としては、シアノメチル、ニトロメチル、ヒドロキシアルキル類、例えばヒドロキシメチル、トリチルオキシメチル、プロピオニルオキシメチル、アミノアルキル類、例えばアミノメチル、カルボキシルアルキル類、例えばカルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシプロピル、2,3-ジクロロペンチル、3-ヒドロキシ-5-カルボキシヘキシル、アセチル[例えば、アセチルの場合、エチル基の-CH2部分の2個の水素原子がオキソ(=O)によって置き換えられている、アルカノイル]、2-アミノプロピル、ペンタクロロブチル、トリフルオロメチル、メトキシエチル、3-ヒドロキシペンチル、4-クロロブチル、1,2-ジメチル-プロピル、ペンタフルオロエチル、アルキルオキシカルボニルメチル、アリルオキシカルボニルアミノメチル、カルバモイルオキシメチル、メトキシメチル、エトキシメチル、t-ブトキシメチル、アセトキシメチル、クロロメチル、ブロモメチル、ヨードメチル、トリフルオロメチル、6-ヒドロキシヘキシル、2,4-ジクロロ(n-ブチル)、2-アミノ(イソプロピル)、シクロアルキルカルボニル(例えば、シクロプロピルカルボニル(cuclopropylcarbonyl))及び2-カルバモイルオキシエチルがさらに挙げられる。特定の置換アルキルは、置換メチル基である。置換メチル基の例としては、ヒドロキシメチル、保護ヒドロキシメチル(例えば、テトラヒドロピラニル-オキシメチル)、アセトキシメチル、カルバモイルオキシメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、カルボキシメチル、カルボキシル[メチルの3個の水素原子が置き換えられており、それらの水素のうちの2個はオキソ(=O)によって置き換えられており、他の水素はヒドロキシ(-OH)によって置き換えられている]、tert-ブトキシカルボニル{メチルの3個の水素原子が置き換えられており、それらの水素のうちの2個はオキソ(=O)によって置き換えられており、他の水素はtert-ブトキシ[-O-C(CH3)3]によって置き換えられている}、ブロモメチル及びヨードメチル等の基が挙げられる。本明細書及び特に請求項がアルキルの特定の置換基に言及するとき、その置換基は、そのアルキル上の置換可能な位置の1つ又は複数を占める可能性がある。例えば、アルキルがフルオロ置換基を有するという記述は、アルキル部分に関する一置換、二置換、及び場合によるとより高度の置換を包含することになる。
【0034】
置換アルキレンという用語は、アルキレンがアルキルについて上で述べたような基で同様に置換されている、炭化水素主鎖の1個又は複数(多くの場合、4個以下)の炭素原子上の1個又は複数の水素に置き換わっている置換基を有するアルキレン部分を指す。
【0035】
アルコキシは、-O-アルキルである。置換アルコキシは、アルコキシがアルキルについて上で述べたような基で同様に置換されている、-O-置換アルキルである。1つの置換アルコキシは、エトキシ(例えば--O-CH2-CH3)の水素のうちの2個がオキソ(=O)によって置き換えられて-O-C(O)-CH3となるアセトキシであり、もう1つは、アルコキシ中の水素のうちの1個がベンジルオキシ等のアリールによって置き換えられているアラルコキシであり、もう1つは、メトキシ(例えば-O-CH3)の水素のうちの2個がオキソ(=O)によって置き換えられ、その他の水素がアミノ(例えば、-NH2、-NHR又は-NRR)によって置き換えられて例えば-O-C(O)-NH2となるカルバマートである。低級アルコキシは、-O-低級アルキルである。
【0036】
単独のとき又は別の用語の一部としての「アルケニル」(一価)及び「アルケニレン」(二価)は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合、典型的には1つ又は2つの炭素-炭素二重結合を含有する不飽和炭化水素基であって、直鎖状であってもよいし又は分岐していてもよく、別段の指定がない限り少なくとも2個且つ12個以下の炭素原子を有する、不飽和炭化水素基を意味する。代表的なアルケニル基としては、例として、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブタ-2-エニル、n-ペンタ-2-エニル、及びn-ヘキサ-2-エニルが挙げられる。
【0037】
置換アルケニル及び置換アルケニレンという用語は、炭化水素主鎖の1個又は複数(多くの場合、4個以下)の炭素原子上の1個又は複数の水素に置き換わっている置換基を有するアルケニル及びアルケニレン部分を指す。かかる置換基は、ハロ(例えば、I、Br、Cl、F)、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、アルコキシ(例えば、C1~C6アルコキシ)、アリールオキシ(例えば、フェノキシ)、ニトロ、メルカプト、カルボキシル、オキソ、カルバモイル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルスルホニル、アリールスルホニル及び-OCF3から成る群より独立して選択される。
【0038】
「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合、典型的には1つの炭素-炭素三重結合を含有する一価不飽和炭化水素基であって、直鎖状であってもよいし又は分岐していてもよく、別段の指定がない限り少なくとも2個且つ12個以下の炭素原子を有する、一価不飽和炭化水素基を意味する。代表的なアルキニル基としては、例として、エチニル、プロパルギル、及びブタ-2-イニルが挙げられる。
【0039】
単独のとき又は別の用語の一部としての「シクロアルキル」は、別段の指定がない限り3から8個の炭素原子を有する、飽和又は部分不飽和環式脂肪族炭化水素基(炭素環基)、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを意味し、縮合シクロアルキル類、例えば、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン類(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル、及び1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)、インダニル類(インダン-1-イル、及びインダン-2-イル)、イソインデニル類(イソインデン-1-イル、イソインデン-2-イル、及びイソインデン-3-イル)及びインデニル類(インデン-1-イル、インデン-2-イル及びインデン-3-イル)をはじめとする多環式のものをさらに含む。低級シクロアルキルは、3から6個の炭素原子を有し、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを含む。
【0040】
置換シクロアルキルという用語は、炭化水素主鎖の1個又は複数(多くの場合、4個以下)の炭素原子上の1個又は複数の水素に置き換わっている置換基を有するシクロアルキル部分を指す。かかる置換基は、ハロ(例えば、I、Br、Cl、F)、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、アルコキシ(例えば、C1~C6アルコキシ)、置換アルコキシ、アリールオキシ(例えば、フェノキシ)、ニトロ、メルカプト、カルボキシル、オキソ、カルバモイル、アルキル、置換アルキル、例えばトリフルオロメチル、アリール、置換アリール類、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルスルホニル、アリールスルホニル及び-OCF3から成る群より独立して選択される。本明細書及び特に請求項がシクロアルキルの特定の置換基に言及するとき、その置換基は、そのシクロアルキル上の置換可能な位置の1つ又は複数を占める可能性がある。例えば、シクロアルキルがフルオロ置換基を有するという記述は、シクロアルキル部分に関する一置換、二置換及びより高度の置換を包含することになる。シクロアルキル類の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロナフチル及びインダニルが挙げられる。
【0041】
単独で又は別の用語の一部として用いるときの「アリール」は、縮合していようと、いなかろうと、示されている数の炭素原子を有する、又は数が示されていない場合には6個から14個までの炭素原子を有する、芳香族炭素環式の基を意味する。特定のアリール基としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントレニル、ナフタセニル、インドリル等が挙げられる{例えば、Lang's Handbook of Chemistry (Dean, J. A.編)、第13版、表7-2[1985]を参照されたい}。
【0042】
置換アリールという用語は、芳香族炭化水素コアの1個又は複数(通常は6個以下)の炭化水素上の1個又は複数の水素に置き換わっている置換基を有する、アリール部分を指す。かかる置換基は、ハロ(例えば、I、Br、Cl、F)、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、アルコキシ(例えば、C1~C6アルコキシ及び特に低級アルコキシ)、置換アルコキシ、アリールオキシ(例えば、フェノキシ)、ニトロ、メルカプト、カルボキシル、カルバモイル、アルキル、置換アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、アリール、-OCF3、アルキルスルホニル(低級アルキルスルホニルを含む)、アリールスルホニル、ヘテロシクリル及びヘテロアリールから成る群より独立して選択される。かかる置換フェニルの例としては、モノ又はジ(ハロ)フェニル基、例えば2-クロロフェニル、2-ブロモフェニル、4-クロロフェニル、2,6-ジクロロフェニル、2,5-ジクロロフェニル、3,4-ジクロロフェニル、3-クロロフェニル、3-ブロモフェニル、4-ブロモフェニル、3,4-ジブロモフェニル、3-クロロ-4-フルオロフェニル、2-フルオロフェニル、3-フルオロフェニル、4-フルオロフェニル、モノ又はジ(ヒドロキシ)フェニル基、例えば4-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシフェニル、2,4-ジヒドロキシフェニル、その保護ヒドロキシ誘導体;ニトロフェニル基、例えば3-又は4-ニトロフェニル;シアノフェニル基、例えば4-シアノフェニル;モノ又はジ(低級アルキル)フェニル基、例えば4-メチルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、2-メチルフェニル、4-(イソプロピル)フェニル、4-エチルフェニル、3-(n-プロピル)フェニル;モノ又はジ(アルコキシ)フェニル基、例えば3,4-ジメトキシフェニル、3-メトキシ-4-ベンジルオキシフェニル、3-メトキシ-4-(1-クロロメチル)ベンジルオキシ-フェニル、3-エトキシフェニル、4-(イソプロポキシ)フェニル、4-(t-ブトキシ)フェニル、3-エトキシ-4-メトキシフェニル;3-又は4-トリフルオロメチルフェニル;モノ若しくはジカルボキシフェニル又は(保護カルボキシ)フェニル基、例えば4-カルボキシフェニル;モノ若しくはジ(ヒドロキシメチル)フェニル又は(保護ヒドロキシメチル)フェニル、例えば3-(保護ヒドロキシメチル)フェニル又は3,4-ジ(ヒドロキシメチル)フェニル;モノ若しくはジ(アミノメチル)フェニル又は(保護アミノメチル)フェニル、例えば2-(アミノメチルフェニル)又は2,4-(保護アミノメチル)フェニル;或いはモノ又はジ[N-(メチルスルホニルアミノ)]フェニル、例えば3-(N-メチルスルホニルアミノ)フェニルが挙げられるが、これらに限定されない。また、置換基、例えば二置換フェニル基中の置換基は、同じであってもよく、又は、異なってもよく、例えば、3-メチル-4-ヒドロキシフェニル、3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル、2-メトキシ-4-ブロモフェニル、4-エチル-2-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシ-4-ニトロフェニル、2-ヒドロキシ-4-クロロフェニルのほか、例えば3-メトキシ-4-ベンジルオキシ-6-メチルスルホニルアミノ、3-メトキシ-4-ベンジルオキシ-6-フェニルスルホニルアミノのような、置換基が異なる三置換フェニル基、及び3-メトキシ-4-ベンジルオキシ-5-メチル-6-フェニルスルホニルアミノ等の、置換基が異なる四置換フェニル基である。特定の置換フェニル基は、2-クロロフェニル、2-アミノフェニル、2-ブロモフェニル、3-メトキシフェニル、3-エトキシ-フェニル、4-ベンジルオキシフェニル、4-メトキシフェニル、3-エトキシ-4-ベンジルオキシフェニル、3,4-ジエトキシフェニル、3-メトキシ-4-ベンジルオキシフェニル、3-メトキシ-4-(1-クロロメチル)ベンジルオキシ-フェニル、3-メトキシ-4-(1-クロロメチル)ベンジルオキシ-6-メチルスルホニルアミノフェニル基である。本明細書及び特に請求項がアリールの特定の置換基に言及するとき、その置換基は、そのアリール上の置換可能な位置の1つ又は複数を占める可能性がある。例えば、アリールがフルオロ置換基を有するという記述は、アリール部分に関する一置換、二置換、三置換、四置換及びより高度の置換を包含することになる。縮合アリール環もまた、本明細書中で指定する置換基で、例えば、1、2又は3個の置換基で、置換アルキル基と同様に置換されていることがある。アリール及び置換アリールという用語は、芳香族環が飽和又は部分不飽和脂肪族環と縮合している部分を含まない。
【0043】
単独での、及び複雑な基の中の部分として用いられるときの「複素環式の基」、「複素環式」、「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクロアルキル」又は「ヘテロシクロ」は交換可能に用いられ、示されている数の原子を有する、又は数が特に指定されていないときには5から14個の原子を有する、任意の単環、二環又は三環式で飽和又は不飽和の非芳香族ヘテロ原子含有環系であって、環原子が、炭素と少なくとも1個のヘテロ原子、通常は4個以下のヘテロ原子(すなわち、窒素、硫黄又は酸素)である環系を指す。この定義には、上記ヘテロ環式の環のいずれかが芳香族環[すなわち、アリール(例えばベンゼン)又はヘテロアリール環]と縮合しているあらゆる二環式の基が含まれる。特定の実施形態において、前記基には、1から4個のヘテロ原子が組み込まれている。典型的に、5員環は、0から1つの二重結合を有し、6又は7員環は、0から2つの二重結合を有し、窒素又は硫黄ヘテロ原子は、任意選択で酸化されていることもあり(例えば、SO、SO2)、いずれか窒素ヘテロ原子が任意選択で四級化されていることもある。特定の非置換非芳香族複素環としては、モルホリニル(モルホリノ)、ピロリジニル類、オキシラニル、インドリニル類、2,3-ジヒドロインドリル(dihydoindolyl)、イソインドリニル類、2,3-ジヒドロイソインドリル、テトラヒドロキノリニル類、テトラヒドロイソキノリニル類、オキセタニル、テトラヒドロフラニル類、2,3-ジヒドロフラニル、2H-ピラニル類、テトラヒドロピラニル類、アジリジニル類、アゼチジニル類、1-メチル-2-ピロリル、ピペラジニル類及びピペリジニル類が挙げられる。
【0044】
置換ヘテロシクロという用語は、ヘテロシクロ主鎖の1個又は複数(通常は6個以下)の原子上の1個又は複数の水素に置き換わっている置換基を有するヘテロシクロ部分を指す。かかる置換基は、ハロ(例えば、I、Br、Cl、F)、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、アルコキシ(例えば、C1~C6アルコキシ)、置換アルコキシ、アリールオキシ(例えば、フェノキシ)、ニトロ、カルボキシル、オキソ、カルバモイル、アルキル、置換アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、-OCF3、アリール、置換アリール、アルキルスルホニル(低級アルキルスルホニルを含む)、及びアリールスルホニルから成る群より独立して選択される。本明細書及び特に請求項がヘテロシクロアルキルの特定の置換基に言及するとき、その置換基は、そのヘテロシクロアルキル上の置換可能な位置の1つ又は複数を占める可能性がある。例えば、ヘテロシクロアルキルがフルオロ置換基を有するという記述は、ヘテロシクロアルキル部分に関する一置換、二置換、三置換、四置換及びより高度の置換を包含することになる。
【0045】
単独での、及び複雑な基の中の部分として用いられるときの「ヘテロアリール」は、示されている数の原子を有し、又は数が具体的に示されていない場合には少なくとも1つの環が5、6又は7員環であり且つ原子の総数が5から約14であり、且つ窒素、酸素及び硫黄から成る群より選択される1から4個のヘテロ原子を含有する、任意の単環、二環又は三環式芳香族環系を指す(Lang's Handbook of Chemistry、上掲)。この定義には、上記のヘテロアリール環のいずれかがベンゼン環と縮合しているあらゆる二環式の基が含まれる。以下の環系は、用語「ヘテロアリール」によって示されるヘテロアリール基の例である:チエニル類(代替的にチオフェニルと呼ばれる)、フリル類、イミダゾリル類、ピラゾリル類、チアゾリル類、イソチアゾリル類、オキサゾリル類、イソオキサゾリル類、トリアゾリル類、チアジアゾリル類、オキサジアゾリル類、テトラゾリル類、チアトリアゾリル類、オキサトリアゾリル類、ピリジル類、ピリミジニル類(例えば、ピリミジン-2-イル)、ピラジニル類、ピリダジニル類、チアジニル類、オキサジニル類、トリアジニル類、チアジアジニル類、オキサジアジニル類、ジチアジニル類、ジオキサジニル類、オキサチアジニル類、テトラジニル類、チアトリアジニル類、オキサトリアジニル類、ジチアジアジニル類、イミダゾリニル類、ジヒドロピリミジル類、テトラヒドロピリミジル類、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジニル及びプリニル類、並びにベンゾ縮合誘導体、例えば、ベンゾオキサゾリル類、ベンゾフリル類、ベンゾチエニル類、ベンゾチアゾリル類、ベンゾチアジアゾリル類、ベンゾトリアゾリル類、ベンゾイミダゾリル類、イソインドリル類、インダゾリル類、インドリジニル類、インドリル類、ナフチリジン類、ピリドピリミジン類、フタラジニル類、キノリル類、イソキノリル類及びキナゾリニル類。
【0046】
置換ヘテロアリールという用語は、ヘテロアリール主鎖の1個又は複数(通常は6個以下)の原子上の1個又は複数の水素に置き換わっている置換基を有するヘテロアリール部分(例えば、上で特定したもの)を指す。かかる置換基は、ハロ(例えば、I、Br、Cl、F)、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、アルコキシ(例えば、C1~C6アルコキシ)、アリールオキシ(例えば、フェノキシ)、ニトロ、メルカプト、カルボキシル、カルバモイル、アルキル、置換アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、-OCF3、アリール、置換アリール、アルキルスルホニル(低級アルキルスルホニルを含む)、及びアリールスルホニルから成る群より独立して選択される。本明細書及び特に請求項がヘテロアリールの特定の置換基に言及するとき、その置換基は、そのヘテロアリール上の置換可能な位置の1つ又は複数を占める可能性がある。例えば、ヘテロアリールがフルオロ置換基を有するという記述は、ヘテロアリール部分に関する一置換、二置換、三置換、四置換及びより高度の置換を包含することになる。
【0047】
特定の「ヘテロアリール類」(「置換ヘテロアリール類」を含む)は、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン、1,3-チアゾール-2-イル、4-(カルボキシメチル)-5-メチル-1、3-チアゾール-2-イル、1,2,4-チアジアゾール-5-イル、3-メチル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル、1,3,4-トリアゾール-5-イル、2-メチル-1,3,4-トリアゾール-5-イル、2-ヒドロキシ-1,3,4-トリアゾール-5-イル、2-カルボキシ-4-メチル-1,3,4-トリアゾール-5-イル、1,3-オキサゾール-2-イル、1,3,4-オキサジアゾール-5-イル、2-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-5-イル、2-(ヒドロキシメチル)-1,3,4-オキサジアゾール-5-イル、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル、1,3,4-チアジアゾール-5-イル、2-チオール-1,3,4-チアジアゾール-5-イル、2-(メチルチオ)-1,3,4-チアジアゾール-5-イル、2-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-5-イル、1H-テトラゾール-5-イル、1-メチル-1H-テトラゾール-5-イル、1-(1-(ジメチルアミノ)エタ-2-イル)-1H-テトラゾール-5-イル、1-(カルボキシメチル)-1H-テトラゾール-5-イル、1-(メチルスルホン酸)-1H-テトラゾール-5-イル、2-メチル-1H-テトラゾール-5-イル、1,2,3-トリアゾール-5-イル、1-メチル-1,2,3-トリアゾール-5-イル、2-メチル-1,2,3-トリアゾール-5-イル、4-メチル-1,2,3-トリアゾール-5-イル、ピリド-2-イル N-オキシド、6-メトキシ-2-(n-オキシド)-ピリダザ(pyridaz)-3-イル、6-ヒドロキシピリダザ-3-イル、1-メチルピリド-2-イル、1-メチルピリド-4-イル、2-ヒドロキシピリミド-4-イル、1,4,5,6-テトラヒドロ-5,6-ジオキソ-4-メチル-as-トリアジン-3-イル、1,4,5,6-テトラヒドロ-4-(ホルミルメチル)-5,6-ジオキソ-as-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-アストリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-as-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-2-メチル-アストリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-2-メチル-as-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-メトキシ-2-メチル-as-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-as-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-2-メチル-as-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-2,6-ジメチル-as-トリアジン-3-イル、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジン-6-イル、8-アミノテトラゾロ[1,5-b]-ピリダジン-6-イル、キノール-2-イル、キノール-3-イル、キノール-4-イル、キノール-5-イル、キノール-6-イル、キノール-8-イル、2-メチル-キノール-4-イル、6-フルオロ-キノール-4-イル、2-メチル,8-フルオロ-キノール-4-イル、イソキノール-5-イル、イソキノール-8-イル、イソキノール-1-イル、及びキナゾリン-4-イルを含む。「ヘテロアリール」の代替群は、5-メチル-2-フェニル-2H-ピラゾール-3-イル、4-(カルボキシメチル)-5-メチル-1,3-チアゾール-2-イル、1,3,4-トリアゾール-5-イル、2-メチル-1,3,4-トリアゾール-5-イル、1H-テトラゾール-5-イル、1-メチル-1H-テトラゾール-5-イル、1-(1-(ジメチルアミノ)エタ-2-イル)-1H-テトラゾール-5-イル、1-(カルボキシメチル)-1H-テトラゾール-5-イル、1-(メチルスルホン酸)-1H-テトラゾール-5-イル、1,2,3-トリアゾール-5-イル、1,4,5,6-テトラヒドロ-5,6-ジオキソ-4-メチル-as-トリアジン-3-イル、1,4,5,6-テトラヒドロ-4-(2-ホルミルメチル)-5,6-ジオキソ-as-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-2-メチル-as-トリアジン-3-イル、2,5-ジヒドロ-5-オキソ-6-ヒドロキシ-2-メチル-as-トリアジン-3-イル、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジン-6-イル、及び8-アミノテトラゾロ[1,5-b]ピリダジン-6-イルを含む。
【0048】
Lは、1つのモノマー[P1-P2-P3-P4]を他のモノマー[P1'-P2'-P3'-P4']に共有結合させる結合基又は結合である。一般に、-L-は、P2をP2'位置に、例えばR3で結合させる、又はP4をP4'に、例えばM、G、Q若しくはR7で結合させる、又はP2をP2'に結合させ且つP4をP4'に結合させる。したがって、Lは、単結合若しくは二重共有結合、又は、1から約100原子、典型的には1から約30原子の、分岐している又は分岐していない、置換されている又は非置換の連続鎖、例えば、-O-、-NH-及び-S-から選択される1~4個のヘテロ原子を任意選択で有する、2から20原子の、任意選択で置換されているアルキレン、アルケニレン、アルキニレン(alkylyne)、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アルキルアリールアルキル鎖であることができる。Lの実例は、単結合若しくは二重共有結合、C1~12アルキレン、置換C1~12アルキレン、C1~12アルケニレン、置換C1~12アルケニレン、C1~12アルキニレン、置換C1~12アルキニレン、Xn-フェニル-Yn、又はXn-(フェニル)2-Yn[式中、X及びYは、独立して、C1~6アルキレン、置換C1~6アルキレン、C1~6アルケニレン、置換C1~6アルケニレン、C1~6アルキニレン、置換C1~6アルキニレン、又はS(O)2である]である。
【0049】
実例となるP3/P3'基としては、限定ではないが、
【0050】
【0051】
が挙げられ、式中、R6は、-H、C1~6アルキル、置換C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、置換C1~6アルコキシ、C1~6アルキルスルホニル、アリールスルホニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換ヘテロアリールであり;R4、R5及びR12は、独立して-H、-OH、C1~6アルキル、C1~6ヘテロアルキル、C1~6アルコキシ、アリールオキシ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、C1~6アルキルアリール、又はヘテロアリール、又はC1~6アルキルヘテロアリールであり、これらは、R4が-H又は-OHであるときを除き、いずれの場合も、任意選択で置換されている。
【0052】
述べたように、特定の実例となる実施形態において、本発明の実施に使用されるSmac模倣体は、二価である。
【0053】
特定の実例となる実施形態において、選択されるSmac模倣体は、XIAP媒介カスパーゼ-3抑制を抑制解除し、且つ/又はTRAF2に結合しているcIAP-1はもちろん、TRAF2に結合していないcIAP-1(非TRAF2結合、例えば「細胞質」cIAP-1又は「遊離」cIAP-1)も分解し、且つ/又はTRAF2に結合しているcIAP-2を分解するが、TRAF2に結合していないcIAP-2を分解せず、又はTRAF2に結合しているcIAP-2の分解に比べてTRAF2に結合していないcIAP-2を弱く分解する。
【0054】
本発明の実施に使用されるSmac模倣体は、TRAF2に結合していないcIAP-2の分解を生じさせることができるが、百分率ベースでのかかる分解度は、TRAF2結合cIAP-2の分解度より低くなる。TRAF2に結合していないcIAP-2に対するSmac模倣体の効果の差の有意性は、動物におけるSmac模倣体の耐容性(又は安全性プロファイル)と相関することが認められた。第一のSmac模倣体が、TRAF2結合cIAP-2の分解に比べてTRAF2に結合していないcIAP-2の分解を、第二のSmac模倣体、すなわち構造的に異なるSmac模倣体より低く生じさせた場合には、第一のSmac模倣体の方が動物によく耐容される(すなわち、安全に投与される)可能性が高い。より具体的には、当業者は、TRAF2に結合していないcIAP-1、TRAF2結合cIAP-1及びTRAF2結合cIAP-2の分解を各々生じさせる、2つのSmac模倣体を選択することができ、一方が、TRAF2に結合していないcIAP-2の異なる(より低い)分解度を示すときには、TRAF2に結合していないcIAP-2のより低い分解を生じさせる化合物の方が、抗腫瘍作用を有意に喪失することなく、よく耐容される可能性が高い。
【0055】
非TRAF2結合cIAP-1、非TRAF2結合cIAP-2、TRAF2結合cIAP-1、及びTRAF2結合cIAP-2の分解速度を、ウエスタン分析によって測定することができる。分解度をある期間にわたってかかるアッセイで目視観察することができる。例えば、非TRAF2結合cIAP-2及びTRAF2結合cIAP-2の分解度は、Smac模倣体での細胞の処置直後は実質的に同じであるように見えることがあるが、数分後、例えば15から30分後、非TRAF2結合cIAP-2に比べてTRAF2結合cIAP-2の分解増加が処置細胞において観察されることがある。分解度の差を定量することもできる。例えば、緑色蛍光タンパク質標識cIAPを使用するウエスタン分析の場合、蛍光強度を測定する装置を使用して分解度を定量することができる。
【0056】
動物によりよく耐容される可能性が高いSmac模倣体について、非TRAF2結合cIAP-2の分解度は、少なくとも約15分、例えば30から120分(又は約30から約120分)間、相対濃度で、一般に、TRAF2結合cIAP-2の分解度の75%未満(又は約75%)、すなわち約75%以下となる。かかるアッセイにおいて使用されるSmac模倣体の量は、Smac模倣体の作用強度で変わるが、一般には1uM未満、例えば、約1nMと約500nMの間、又は約10nMと約150nMの間等となる。
【0057】
場合によっては、非TRAF2結合cIAP-2の分解度は、TRAF2結合cIAP-2の分解度の50%未満(若しくは約50%)、すなわち約50%以下、又は25%未満(若しくは約25%)、すなわち約25%以下、又は10%未満(若しくは約10%)、すなわち約10%以下となる。例えば、本発明のcIAP分解プロファイルを有するSmac模倣体に関するcIAP分解アッセイでは、TRAF2結合cIAP-2は、30分後に約70~75%分解可能である(すなわち、依然として検出可能であるのは、TRAF2結合cIAP-2の当初検出された量の約30%に過ぎない)のに対して、非TRAF2結合cIAP-2は、約35~40%しか分解可能でない(すなわち、非TRAF2結合cIAP-2の当初検出された量の60%~65%が依然として検出可能である)。この場合、Smac模倣体は、TRAF2結合cIAP-2の分解度の約50%以下で非TRAF2結合cIAP-2を分解するといえる[35%から40%÷(70%から75%)=約50%]。
【0058】
アポトーシスの誘導は、感受性腫瘍に対して高度に特異的であるのに対して、正常組織は免れるようである。例えば、特定のSmac模倣体は、ピコモル濃度範囲で腫瘍細胞をインビトロで死滅させることができるが、非腫瘍細胞に対しては100マイクロモル範囲で影響を及ぼさない。
【0059】
前臨床研究で有意な抗腫瘍活性を有する幾つかのSmac模倣体が開発されている。臨床に入っているもののうち、ビリナパント(TL32711)は、強力な二価小分子Smac模倣体である。ビリナパントは、米国特許第8,283,372号において化合物15として特定されている。ある実施形態において、IAPアンタゴニストは、ビリナパントである。
【0060】
【0061】
ビリナパント及び類似の化合物の活性に関するさらなる情報は、米国特許出願第17/246,956号に提供されており、この開示は参照により本明細書に援用される。
【0062】
Smac模倣体の医薬組成物は、治療有効量の上記化合物、又はその医薬的に許容されうる塩若しくは他の形態を、1つ又は複数の医薬的に許容されうる賦形剤と共に含むことがある。「医薬組成物」という句は、医学的又は獣医学的用途での投与に好適な組成物を指す。前記組成物は、さらなる活性薬剤も含むことがある。例えば、前記組成物は、サイトカイン、例えばTNF-α、又は小分子阻害剤、又は抗生物質を含むことがある。特定の患者のための適切な剤形、投薬量及び投与経路の決定は、薬学及び医学分野の通常の技術レベルの範囲内であることが理解される。
【0063】
好都合には、非経口投与に好適な組成物は、レシピエントの血液と好ましくは等張性である、本発明の化合物又は組成物の滅菌水性調製物を含む。この水性調製物は、好適な分散又は湿潤剤、乳化及び懸濁化剤を使用して公知の方法に従って配合することができる。様々な抗菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール及びソルビン酸を含めてもよい。滅菌注射用調製物は、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液のような、非毒性で非経口的に許容されうる希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液又は懸濁液であってもよい。利用することができる許容されうるビヒクル及び溶媒には、水、リンガー溶液、及び等張食塩溶液がある。加えて、好都合には、滅菌固定油を溶媒又は懸濁媒体として用いる。このために、合成モノ又はジグリセリドをはじめとする、いずれの無菌固定油を用いてもよい。加えて、オレイン酸等の脂肪酸を注射剤の調製に使用してもよい。注射可能な医薬形態の持続的吸収を、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらすことができる。皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与等に好適な担体製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing社、Easton、PAにおいて見いだすことができ、前記文献は、その全体が前記文献への参照により本明細書に援用される。
【0064】
静脈内単位剤形の医薬組成物は、例えば、バイアル若しくは充填済み注射器又は輸液バッグ若しくは装置を含んでもよく、これらの各々は、1つのバイアル又は注射器の内容物が一度に投与されるような、有効量又は有効量の都合のよい小部分を含む。
【0065】
蓄積有効量、例えば、感染の制御をもたらすための蓄積有効量を達成するために必要な場合には、投与をある期間にわたって1日約4回まで繰り返すことができる。投与計画は、例えば、1日1回又は週2回の、静脈若しくは皮下注射又は経口若しくは局所送達であることができ、又は3週間オン及び1週間オフのサイクルでの週1回投与であることができ、又は処置が有効である限り、例えば、感染が制御される又は薬物が耐容されなくなるまで、継続的であることができる。各注射で投与される有効用量は、有効であり、耐容される量である。
【0066】
有効用量は、例えば1又は複数の週であることもある治療過程にわたって、障害の処置、すなわち、疾患進行率の低下、疾患停止をもたらすものである。
【0067】
経口投与のための固体剤形としては、カプセル、錠剤、ピル、粉末及び顆粒が挙げられる。かかる固体剤形の場合、化合物は、少なくとも1つの医薬的に許容されうる不活性賦形剤、例えば、(a)例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及びケイ酸のような、充填剤又は増量剤、(b)例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及びアラビアゴムのような、結合剤、(c)例えばグリセロールのような、保水剤、(d)例えば寒天、炭酸カルシウム、馬鈴薯又はタピオカデンプン、アルギン酸、特定の複合ケイ酸塩及び炭酸ナトリウムのような、崩壊剤、(e)例えばパラフィンのような、溶解遅延剤、(f)例えば第四級アンモニウム化合物のような、吸収促進剤、(g)例えばセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールのような、湿潤剤、(h)例えばカオリン及びベントナイトのような、吸収剤、並びに(i)例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムのような、滑沢剤、又はこれらの混合物と混合される。カプセル、錠剤及びピルの場合、剤形は、緩衝剤も含むことがある。コーティング及び外皮を伴う、例えば腸溶コーティング及び当該技術分野で周知の他のものを伴う固体剤形、例えば錠剤、糖衣錠、カプセル、ピル及び顆粒を調製することもできる。固体剤形は、不透明化剤も含有することがあり、腸管の特定の部分で活性化合物を遅延様式で放出するような組成のものであることもできる。使用することができる包埋組成物の例は、高分子物質及びワックスである。活性化合物は、適切な場合には上述の賦形剤の1つ又は複数を伴うマイクロカプセル化形態であることもできる。かかる固体剤形は、一般に、1%から95%(w/w)の活性化合物を含有することができる。特定の実施形態において、活性化合物は、5%から70%(w/w)の範囲である。
【0068】
本発明の1つの態様は、別々に投与することができる医薬的に活性な薬剤の組合せでの疾患/状態の処置を企図しているので、本発明は、キット形態での別個の医薬組成物の組合せにさらに関する。このキットは、2つの別個の医薬組成物、すなわち、本発明の方法において使用されるSmac模倣体を含有する医薬組成物と、第二の活性医薬成分を含有する第二の医薬組成物とを備えている。キットは、別個の組成物を収容する容器、例えば、分かれたビン又は分かれたホイルパケットを備えている。容器のさらなる例としては、注射器、例えば充填済み注射器、箱及びバッグが挙げられる。典型的に、キットは、別個の成分の使用説明書を備えている。キット形態は、別個の成分が好ましくは異なる剤形(例えば、経口及び非経口)で投与され、異なる投薬間隔でされるとき、又は組合せの個々の成分滴定が処方医師若しくは獣医師によって望まれるときに、特に有利である。
【0069】
かかるキットの例は、いわゆるブリスターパックである。ブリスターパックは、包装業界では周知であり、医薬の単位剤形(錠剤、カプセル等)の包装に幅広く用いられている。ブリスターパックは、一般に、好ましくは透明のプラスチック材料のホイルで被覆された比較的堅い材料のシートから成る。包装過程でプラスチックホイルに凹部が形成される。凹部は、包装される錠剤又はカプセルのサイズ及び形状を有する。次に、錠剤又はカプセルが凹部に配置され、比較的堅い材料のシートによりプラスチックホイルの凹部が形成された方向とは反対側であるホイル面が密封される。結果として、錠剤又はカプセルはプラスチックホイルとシート間の凹部に密封される。好ましくは、シートの強度は、凹部に手で圧力をかけ、それによってシートの凹部位置に開口部を形成することにより錠剤又はカプセルをブリスターパックから取り出すことができるような強度である。その場合、前記開口部を通して錠剤又はカプセルを取り出すことができる。
【0070】
キット上にメモリーエイドを設けること、例えば、錠剤又はカプセルの隣の数字の形態であって、それによって、そのようにして数字が指定した錠剤又はカプセルを摂取すべきである投薬計画の日に数字が対応する形態のメモリーエイドを設けることが望ましいこともある。かかるメモリーエイドのもう1つの例は、例えば、「第一週、月曜、火曜、・・・等・・・第二週、月曜、火曜、・・・」等のように、カードに印刷されたカレンダーである。メモリーエイドの他の変形形態は、容易に分かる。「日用量」は、所定の日に摂取される単一の錠剤若しくはカプセル又は数個のピル若しくはカプセルであることができる。また、本発明の物質の日用量は、錠剤又はカプセルから成ることができ、その一方で第二の物質の日用量は、数個の錠剤又はカプセルから成ることができ、またその逆もできる。メモリーエイドは、これを示し、活性薬剤の正確な投与を助けるものである。
【0071】
本発明のもう1つの特定の実施形態では、日用量を、1度に1用量、それらの所期の使用順序で分配するように設計されたディスペンサーを提供する。好ましくは、ディスペンサーは、投与計画の順守をさらに助長するためにメモリーエイドを装備している。かかるメモリーエイドの例は、分配された日用量の数を示す機械式カウンターである。かかるメモリーエイドのもう1つの例は、例えば、最後の日用量を摂取した日を読みだす、及び/又は次の用量を摂取すべきときを思い出させる、液晶読み出し又は可聴リマインダー信号と連結された電池式マイクロチップメモリーである。
【0072】
経口投与のための液体剤形は、医薬的に許容されうるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルを含む。前記化合物又は組成物に加えて、液体剤形は、当該技術分野で一般的に使用されている不活性希釈剤、例えば、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油類、特に綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール類、並びにソルビタンの脂肪酸エステル、又はこれらの物質の混合物等を含有することもある。かかる不活性希釈剤に加えて、前記組成物は、アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化及び懸濁化剤、甘味、着香及び芳香剤も含むことができる。
【0073】
本発明の方法において使用される化合物及び組成物は、持効性、遅延放出又は徐放送達系はじめとする、様々な送達系の恩恵を受けることもある。かかる選択肢は、前記化合物及び組成物が、下でより詳細に説明する他の処置プロトコルと併せて使用されるとき、特に有益でありうる。
【0074】
多くのタイプの制御放出送達系が利用可能であり、当業者に公知である。それらとしては、ポリマーベースの系、例えば、ポリ(ラクチド-グリコリド)、コポリオキサラート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、及びポリ無水物が挙げられる。薬物を含有する上述のポリマーのマイクロカプセルは、例えば、米国特許第5,075,109号に記載されている。送達系は、ステロール類、例えばコレステロール、コレステロールエステル、及び脂肪酸又は天然脂肪類、例えばモノ、ジ及びトリグリセリドを含む、脂質類;ヒドロゲル放出系;サイラスティック(sylastic)系;ペプチドベースの系;ワックスコーティング;従来の結合剤及び賦形剤を使用する圧縮錠剤;部分融合インプラント等である、非ポリマー系も含む。具体的な例としては、(a)活性化合物をマトリックス内の形態で含有する浸食性の系、例えば、米国特許第4,452,775号、米国特許第4,667,014号、米国特許第4,748,034号及び米国特許第5,239,660号に記載されているもの、並びに(b)活性化合物が、制御された速度でポリマーから浸透する拡散性の系、例えば、米国特許第3,832,253号及び米国特許第3,854,480号に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。加えて、ポンプベースの機器送達系を使用することができ、それらの一部は、体内移植に適している。
【0075】
長期徐放インプラントの使用が望ましいこともある。本明細書で用いられる長期放出は、インプラントが、治療レベルの活性化合物を少なくとも30日間、好ましくは60日間、送達するように構成及び配置されていることを意味する。長期徐放インプラントは、当業者に周知であり、上記の放出系の一部を含む。
【0076】
IAPアンタゴニストは、cIAP1及びcIAP2等のIAP遺伝子の発現を低減させる分子も含む。IAP遺伝子の発現を低減させることができる好適なアンタゴニストは、当業者に公知である。例としては、標的遺伝子の発現に干渉する、核酸分子、例えばRNA又はDNA分子(二本鎖のもの又は一本鎖のものを含む)、及びペプチド類、例えばアンチセンスペプチド核酸が挙げられる。
【0077】
有用なDNA分子には、センス(例えば、コード及び/又は調節)DNA分子ばかりでなく、アンチセンスのものも含まれる。アンチセンスDNA分子は、短鎖オリゴヌクレオチドを含む。当業者は、本発明による使用に好適な短鎖オリゴヌクレオチドを設計することができる。例は、Carterら(Apoptosis、2011、第16巻(1):67~74頁)によって記載されたようなXIAPアンチセンスオリゴヌクレオチド、AEG35156である。有用なDNA分子の他の例としては、干渉RNA、例えばshRNA及びsiRNAをコードするものが挙げられる。さらにもう1つの例は、DNAザイムとして公知の触媒性DNA分子である。
【0078】
本明細書中でRNA干渉分子とも呼ぶ、IAP遺伝子の発現を低減させることができる有用なRNA分子としては、siRNA、dsRNA、stRNA、shRNA及びmiRNA[例えば、短鎖一過性RNA(short temporal RNA)及び短鎖調節性RNA(small modulatory RNA)]並びにリボザイムが挙げられる。
【0079】
RNA干渉(RNAi)は、特定のタンパク質の生産を特異的に阻害するのに特に有用である。理論により拘束されることを望まないが、Waterhouseら(1998)は、dsRNAを使用してタンパク質生産を低減させることができるメカニズムのためのモデルを提供した。この技術は、目的の遺伝子のmRNA又はその一部と本質的に同一である配列を含有するdsRNA分子の存在に依存し、この場合にはmRNAは本発明によるポリペプチドをコードするmRNAである。好都合には、組換えベクター又は宿主細胞において単一プロモーターからdsRNAを生産することができ、この場合、センス及びアンチセンス配列に、そのセンス及びアンチセンス配列のハイブリダイゼーションを可能にする無関係の配列を隣接させて、その無関係の配列がループ構造を形成しているdsRNA分子を形成する。本発明に好適なdsRNA分子の設計及び生産は、特に、Waterhouseら、1998、Proc Natl Acad Sci USA、95(23):13959~64頁、Smithら、2000、Nature、407:319~320頁、WO99/32619、WO99/53050、WO99/49029、及びWO01/34815を考慮すれば、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0080】
1つの実施形態では、不活性化される標的遺伝子と相同性である少なくとも部分的に二本鎖のRNA産物の合成を指示するDNAを導入する。したがって、前記DNAは、センス配列とアンチセンス配列両方を含み、これらは、RNAに転写されるとハイブリダイズして二本鎖RNA領域を形成することができる。好ましい実施形態において、センス配列とアンチセンス配列は、RNAに転写されると切り出されるイントロンを含むスペーサー領域によって隔てられている。この配置は、高い遺伝子サイレンシング効率をもたらすことが証明されている。二本鎖領域は、いずれか一方のDNA領域又は両方から転写された、1又は2個のRNA分子を含むことがある。二本鎖分子の存在は、二本鎖RNAも標的遺伝子からの相同RNA転写物も破壊する細胞からの応答を誘発して、標的遺伝子の活性を効率的に低減又は除去すると考えられる。
【0081】
ハイブリダイズするセンス及びアンチセンス配列の長さは、各々、連続する少なくとも19ヌクレオチド、好ましくは少なくとも30又は50ヌクレオチド、さらに好ましくは少なくとも100、200、500又は1000ヌクレオチドであるべきである。全遺伝子転写物に相当する完全長配列を使用してもよい。前記長さは、最も好ましくは100~2000ヌクレオチドである。標的転写物へのセンス及びアンチセンス配列の同一度は、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは95~100%であるべきである。もちろん、RNA分子は、その分子を安定化するように機能することができる無関係の配列を含むこともある。RNA分子をRNAポリメラーゼII又はRNAポリメラーゼIIIプロモーターの制御下で発現させることができる。前記ポリメラーゼの例としては、tRNA又はsnRNAプロモーターが挙げられる。
【0082】
好ましい短鎖干渉RNA(「siRNA」)分子は、標的mRNAの連続する約19~21ヌクレオチドと同一であるヌクレオチド配列を含む。好ましくは、標的mRNA配列は、ジヌクレオチドAAで始まり、約30~70%(好ましくは30~60%、さらに好ましくは40~60%、さらに好ましくは約45%~55%)のGC含有量を有し、及び例えば標準的なBLAST検索によって判定して、該配列を導入することになる細胞のゲノム内の標的以外のいずれのヌクレオチド配列とも高い同一率を有さない。
【0083】
本発明での使用に好適なRNAi分子の合成は、AAジヌクレオチド配列のAUG開始コドンの下流の標的のmRNA配列を先ず走査することによって果たすことができる。AAと3'隣接19ヌクレオチド各々の発生頻度を潜在的siRNA標的部位として記録する。好ましくは、siRNA標的部位をオープンリーディングフレームから選択する。次に、BLAST等の任意の配列アラインメントソフトウェアを使用して、潜在的標的部位を適切なゲノムデータベースと比較する。他のコード配列との有意な相同性を示す推定標的部位をフィルターで除去する。適格標的配列をsiRNA合成のテンプレートとして選択する。好ましい配列は、低いG/C含有量を有する配列である。これらは、55%より高いG/C含量を有するものに比べて遺伝子サイレンシングの媒介に有効であることが証明されているからである。好ましくは、評価のために標的遺伝子の長さに沿って幾つかの標的部位を選択する。
【0084】
マイクロRNA調節は、従来のRNAi/PTGSとは異なる、遺伝子調節に進展するRNAサイレンシング経路の、明らかに専門化された枝分かれである。マイクロRNAは、固有の逆方向反復配列で構成された遺伝子様要素にコードされている短鎖RNAの特殊クラスである。転写されると、マイクロRNA遺伝子は、ステム-ループ状RNA前駆体を生じさせ、その後、その前駆体からマイクロRNAがプロセッシングされる。マイクロRNAは、典型的に長さが約21ヌクレオチドである。放出されたmiRNAは、配列特異的遺伝子抑制をもたらすアルゴノートタンパク質の特定のサブセットを含有するRISC様複合体に組み込まれる(例えば、Millar及びWaterhouse、2005、Funct Integr Genomics、5(3):129~35頁;Pasquinelliら、2005、Curr Opin Genet Dev. 15(2):200~5頁;Almeida及びAllshire、2005、TRENDS Cell Biol、15(5):251~8頁を参照されたい)。
【0085】
DNAザイムは、一本鎖標的配列と二本鎖標的配列両方を切断することができる一本鎖及び二本鎖ポリヌクレオチドを切断することができる一本鎖ポリヌクレオチドである(Breaker及びJoyce、Chemistry and Biology 1995;2:655;Santoro及びJoyce、Proc. Natl, Acad. Sci. USA 1997;943:4262)。DNAザイムの一般モデル(「10-23」モデル)が報告されている。「10-23」DNAザイムは、各々7から9デオキシリボヌクレオチドの2つの基質認識ドメインが隣接している、15デオキシリボヌクレオチドの触媒性ドメインを有する。このタイプのDNAザイムは、その基質RNAをプリン:ピリミジン接合点で有効に切断することができる(Santoro及びJoyce、上掲;DNAザイムの総説については、Khachigian、Curr Opin Mol Ther 4:119~21頁;2002を参照されたい)。
【0086】
一本及び二本鎖標的切断部位を認識する合成、改変DNAザイムの構築及び増幅の例は、Joyceらの米国特許第6,326,174号に開示されている。
【0087】
用語「二本鎖RNA」又は「dsRNA」は、2本の鎖から成るRNA分子を指す。二本鎖分子は、自らを折り畳んで二本鎖構造を形成する単一RNA分子から成るものを含む。例えば、一本鎖miRNAが由来する前駆分子のステムループ構造は、プレmiRNAと呼ばれており、dsRNA分子を含む。
【0088】
他の好適なRNA干渉分子としては、短鎖一過性RNA(stRNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)及び二本鎖RNA(dsRNA)を含む、未修飾及び修飾二本鎖(ds)RNA分子が挙げられる。dsRNA分子(例えば、siRNA)は、3'オーバーハング、例えば、3'UU又は3'TTオーバーハングも含有することがある。
【0089】
ある実施形態において、本発明のsiRNA分子は、二本鎖構造を有する。ある実施形態において、本発明のsiRNA分子は、それらの長さの約25%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約90%超が二本鎖である。
【0090】
本明細書において用いられる、RNA干渉によって誘導される「遺伝子サイレンシング」は、標的遺伝子(例えば、cIAP1遺伝子及び/又はcIAP2遺伝子)についての細胞内mRNAレベルを、RNA干渉不在下の前記細胞において見いだされるmRNAレベルの少なくとも約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%、約100%減少させることを指す。
【0091】
RNA干渉分子は、1個又は複数の非天然ヌクレオチド、すなわち、アデニン「A」、グアニン「G」、ウラシル「U」又はシトシン「C」以外のヌクレオチドを有する修飾RNA分子も含む。修飾ヌクレオチド残基、又は天然ヌクレオチドの誘導体若しくは類似体も使用することができる。いずれの修飾残基、誘導体又は類似体も、それが分子のRNAi活性を除去しない又は実質的に(少なくとも50%)低減させない程度に使用することができる。好適な修飾残基の例としては、アミノアリルUTP、プソイドUTP、5-I-UTP、5-I-CTP、5-Br-UTP、α-S ATP、α-S CTP、α-S GTP、α-S UTP、4-チオUTP、2-チオ-CTP、2'NH2 UTP、2'NH2 CTP、及び2'F UTPが挙げられる。好適な修飾ヌクレオチドとしては、遊離pho(NTP)RNA分子はもちろん、全ての他の有用なヌクレオチド形態も含めて、アミノアリルウリジン、プソイド-ウリジン、5-I-ウリジン、5-I-シチジン、5-Br-ウリジン、α-Sアデノシン、α-Sシチジン、α-Sグアノシン、α-Sウリジン、4-チオウリジン、2-チオ-シチジン、2'NH2ウリジン、2'NH2シチジン及び2'Fウリジンも挙げられる。
【0092】
RNA干渉分子はまた、リボース糖の修飾はもちろん、ヌクレオチド鎖のリン酸主鎖の修飾も有することがある。例えば、RNAにおいて見いだされる天然に存在するα-D-リボヌクレオシドの代わりにα-D-アラビノフラノシル構造を有するsiRNA又はmiRNA分子を、本発明に従ってRNA干渉分子として使用することができる。他の例としては、糖とヌクレオシドの複素環式塩基との間にo-結合を含有するRNA分子であって、ヌクレアーゼ耐性を付与し、且つ2'-O-メチルリボース、アラビノース及び特にα-アラビノースを含有するオリゴヌクレオチドに類似したオリゴヌクレオチド分子への緊密な相補鎖結合をもたらす、前記RNA分子が挙げられる。ホスホロチオエート結合を用いて、siRNA及びmiRNA分子を安定化することもできる。
【0093】
「siRNA」は、二本鎖RNAを形成する核酸であって、遺伝子又は標的遺伝子の発現を、そのsiRNAがその遺伝子又は標的遺伝子と同じ細胞において発現されたときに低減させる又は阻害する能力がある前記核酸を指す。それ故、「siRNA」は、相補鎖によって形成された二本鎖RNAを指す。二本鎖分子を形成するようにハイブリダイズするsiRNAの相補部分は、実質的又は完全同一性を典型的に有する。ある実施形態において、siRNAは、標的遺伝子と実質的又は完全同一性を有し、二本鎖siRNAを形成する核酸を指す。siRNAの配列は、完全長標的遺伝子に相当することもあり、又はその部分配列に相当することもある。
【0094】
ある実施形態において、siRNAは、長さが少なくとも約15~50ヌクレオチドである(例えば、二本鎖siRNAの各相補配列は、長さが約15~50ヌクレオチドであり、二本鎖siRNAは、長さが約15~50塩基対、好ましくは約19~30塩基ヌクレオチド、好ましくは、長さが約20~25ヌクレオチド、例えば、長さが20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30ヌクレオチドである)。
【0095】
好適なsiRNAとしては、短鎖ヘアピン(ステムループとも呼ばれる)RNA(shRNA)も挙げられる。ある実施形態において、shRNAは、短い、例えば約19から約25ヌクレオチドのアンチセンス鎖、続いて約5から約9ヌクレオチドのヌクレオチドループ、及び類似のセンス鎖を含む。代替的に、センス鎖がヌクレオチドループ構造より前にあることもあり、アンチセンス鎖が後に続くこともある。
【0096】
ある実施形態において、IAPのアンタゴニストは、siRNA、shRNA又はmiRNAである。
【0097】
当業者は、標的遺伝子の配列を考慮して特定のRNA干渉分子、例えばsiRNA、shRNA又はmiRNA分子を容易に設計することができる。
【0098】
ある実施形態において、siRNA、shRNA又はmiRNAは、NCBI参照配列:NM_001166.4、NCBI参照配列:NM_001256163.1、NCBI参照配列:NM_001256166.1、GenBank:DQ068066.1、NCBI参照配列:NM_001165.4、NCBI参照配列:NM_182962.2、GenBank:BC037420.1、NCBI参照配列:NM_001167.3、NCBI参照配列:NM_001204401.1、NCBI参照配列:NR_037916.1、及びNCBI参照配列:NG_007264.1から成る群より選択される配列に対して標的化される。
【0099】
メッセンジャーRNA(及び前駆体プレメッセンジャーRNA)、小核RNA、小核小体RNA、転移RNA及びリボソームRNAをはじめとする、一本鎖である又はRNA干渉分子とみなされない他のRNA分子も、本発明に従って治療薬として有用でありうる。
【0100】
本明細書に記載する、IAP遺伝子の発現を低減させることができるIAPアンタゴニスト(例えば、RNA干渉分子、例えばsiRNA、dsRNA、stRNA、shRNA及びmiRNA)を、当業者に公知であるような任意の好適な投与の手段及び経路(例えば、遺伝子療法又は遺伝子送達法)によって、それを必要とする対象に投与することができる。IAPアンタゴニストが対象の細胞に、その細胞が病原体に感染しているにせよ、少なくとも病原体に感染する可能性があるにせよ、確実に接触して侵入することができるように、IAPアンタゴニストを対象に投与すべきであることは、理解される。好適な投与経路の例としては、静脈内経路、筋肉内経路、局所経路、経口経路、鼻腔内経路、又は遺伝子銃若しくは皮下噴射器具使用による経路が挙げられる。
【0101】
或いは、処置方法は、対象から採取した細胞をIAPアンタゴニストと、エクスビボ又はインビトロで、前記IAPアンタゴニストの前記細胞への進入(すなわちトランスフェクション)を助長することになる条件下で接触させることを含むこともある。標準的なトランスフェクション技術は、当業者に公知である。ある実施形態では、IAPアンタゴニストを、対象からの自家細胞と、前記細胞へのIAPアンタゴニストの侵入及びその後のトランスフェクションに有利に働く条件下で接触させるので、前記IAPアンタゴニストは、トランスフェクトされた細胞におけるそのIAP遺伝子の発現を阻止又は少なくとも部分的に阻害することができる。その後、トランスフェクトされた細胞を対象に投与し、そこでその細胞は感染に対して少なくともある程度耐性になる。インビトロ又はエクスビボでのトランスフェクションに選択される細胞のタイプは、好ましくは、少なくとも病原体に感染する可能性がある細胞である。したがって、インビトロ又はエクスビボでのトランスフェクションに選択される細胞のタイプは、対象の処置すべき感染のタイプに依存する。例えば、感染性病原体がHIVである場合、前記自家細胞は、Tリンパ球である。本発明によるインビトロ又はエクスビボでのトランスフェクションに好適でありうる他の細胞タイプとしては、マクロファージ、線維芽細胞、単球、好中球、Bリンパ球、幹細胞(例えば、体性幹細胞)及び前駆細胞が挙げられる。本発明の方法に従ってトランスフェクトすることができる前駆細胞の例としては、赤血球及び造血幹細胞の前駆体が挙げられる。
【0102】
本発明の方法を用いて、他の病原体による細胞内感染を処置することもできる。例えば、結核菌に絶対必要なことは、マクロファージ内に定住する細胞内細菌にとって非常に複雑な試みである、宿主細胞における潜伏の確立である。したがって、結核菌は、マクロファージでのその残留持続を可能にする10~13ために全ての細胞死シグナル伝達を決定的に無効にしなければならない4~6。結核菌感染マクロファージは、アポトーシスを誘導すべきである相当な細胞ストレス下にある14。あまり理解されていないメカニズムを介して、感染細胞及びその定住微生物の消滅を確実にする細胞死プログラムは、この病原体によって拮抗される14。本発明者らは、結核菌に感染した細胞におけるプログラム細胞死の促進が病原体の排除を助けることになるという考えを強く裏付けるデータを明らかにした。同様に、増殖性生活環を可能するために、及び潜伏を促進するために、HIVは、幾つかの細胞において及び何らかの時点で、宿主細胞死に拮抗しなければならない15~19。宿主細胞死は、微生物感染の感知の結果であることもあり、又は免疫細胞によって遊離された死滅誘導分子の効果によることもある。細胞内病原体は、これらの応答に拮抗して、それらの残存及び播種を助長する4~6。IAPでの干渉は、病原体の排除を促進する細胞死誘導因子及び経路に感染細胞を再び感作させるために用いることができるメカニズムである。
【0103】
ある実施形態において、感染は、ウイルス、細菌、真菌、酵母又は原生動物によって引き起こされる。
【0104】
ある実施形態において、感染は、ヒト乳頭腫ウイルス、ヘルペスウイルス、例えば単純ヘルペス1/2、水痘帯状疱疹、EBV、CMV、HHV-6/7、HTLV、ヒトパポーバウイルス、例えばJCウイルス及びBKウイルス、アデノ及びパルボウイルス、HIV、HBV及びHCVから成る群より選択されるウイルスによって引き起こされる。
【0105】
ある実施形態において、感染は、サルモネラ属種、エーリキア属種、マイコバクテリア属種、スピロヘータ、レジオネラ属種、リステリア属種、リッケチア属種、クラミジア属種、マイコプラズマ属種、コクシエラ属種、エルシニア属種、フランシセラ属種、ブルセラ属種、ナイセリア属種及びノカルジア属種から成る群より選択される細菌によって引き起こされる。
【0106】
ある実施形態において、感染は、ヒストプラズマ属種、アスペルギルス属種、クリプトコッカス属種及びニューモシスチス・イロベチ(Pneunocystis jirovecii)から成る群より選択される真菌又は酵母によって引き起こされる。
【0107】
ある実施形態において、感染は、トリパノソーマ(例えば、リーシュマニア属種)、アピコンプレックス、例えば肝臓型のプラスモジウム属種、トキソプラズマ属種及びクリプトスポリジウム属種から成る群より選択される原生動物によって引き起こされる。
【0108】
本発明は、対象における細胞内感染を処置するためのIAPアンタゴニストの使用も提供する。
【0109】
本発明の方法は、1つ又は複数のさらなる治療薬の投与をさらに含むこともある。さらなる治療薬のタイプが、処置すべき感染に依存することになることは、当業者には理解される。例えば、感染が、HBV感染などのウイルス感染である場合、対象にヌクレオシド類似体抗ウイルス剤をさらに投与してもよい。かかる薬剤の例としては、ジダノシン、ビダラビン、シタラビン、エムトリシタビン、ラミブジン、ザルシタビン、アバカビル、アシクロビル、エンテカビル、スタブジン、テルビブジン、ジドブジン(アジドチミジン、すなわちAZT)及びイドクスウリジンをはじめとする、ヌクレオシド類似体薬が挙げられる。好ましい薬剤は、ラミブジン、アデフォビル、テノフォビル、テルビブジン及びエンテカビルから成る群より選択される。感染が、HCV感染である場合、対象にPEG化IFNα及びリバビリン、及び/又はミラビルセン[Janssenら、N Engl J Med、2013、第368巻(18):1685~94頁]をさらに投与してもよい。
【0110】
もう1つの好ましいさらなる治療薬は、TRAILである。TRAILに関するさらなる情報は、WO97/01633、WO02/085946、WO02/22175及びWO2009/025743において見つけることができる。これらの文献の各々の開示は、参照により本明細書に含まれる。
【0111】
さらなる治療薬を同時に(例えば、IAPアンタゴニストと同じ製剤で)投与してもよいし、又は逐次的に、すなわち、IAPアンタゴニストの投与前若しくは後のいずれかに投与してもよい。逐次投与については、さらなる治療薬をIAPアンタゴニストの数秒、数分、数時間、数日又は数週間以内に投与してもよい。
【0112】
IAPアンタゴニストを、それを必要とする対象に、当業者に周知の好適な手段によって送達することができる。例えば、IAPアンタゴニストがRNA干渉分子である場合、その投与方法はIAPアンタゴニストが標的配列と相互作用できる細胞質へのIAPアンタゴニストの送達を助長する必要があることは、当業者には分かる。IAPアンタゴニストがsiRNA分子である場合、そのRNA干渉分子を対象に、肝細胞標的化、N-アセチルガラクトサミン複合メリチン様ペプチド(NAG-MLP)と肝臓指向性コレステロール複合siRNAの併用投与(co-administration)によって送達することができる[例えば、Woodellら、Molecular Therapy、2013年5月;21(5):973~985頁を参照されたい]。分子が、アンチセンスDNAオリゴヌクレオチド分子である場合、Janssenら(N Engl J Med、2013、第368巻(18):1685~94頁)によって記載された方法により、前記分子を、それを必要とする対象に送達することができる。
【0113】
代替実施形態では、遺伝子療法を対象に対して行って、その対象の1つ若しくは複数のIAP遺伝子の発現を減少させる、又はその対象の1つ若しくは複数のIAP遺伝子を不活性化することができる。
【0114】
送達方法は、対象に投与可能である溶液及び懸濁液の使用を含む。好適な投与方式は、当業者に公知である。例としては、静脈内、皮下、筋肉内又は腹腔内投与方式が挙げられる。
【0115】
感染を処置すべき対象は、ヒトであってもよいし、又はヒトにとって経済的に重要及び/又は社会的に重要な哺乳動物、例えば、ヒト以外の肉食動物(例えば、ネコ及びイヌ)、ブタ(子ブタ、成長したブタ及びイノシシ)、反芻動物(例えば、畜牛、雄ウシ、ヒツジ、キリン、シカ、ヤギ、バイソン及びラクダ)、ウマ、並びに同じくヒトにとって経済的に重要であるので鳥類(絶滅に瀕している種類の鳥類、動物園で飼育されている種類の鳥類、及び鶏、より詳細には家畜化された鶏、例えば家禽類、例えばシチメンチョウ、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ホロホロチョウ等を含む)であってもよい。用語「対象」は、特定の年齢を示さない。したがって、成人/成体対象と新生児/新生仔対象の両方を包含することを意図している。
【0116】
本発明は、対象における細胞内感染を処置するための医薬品の製造におけるIAPアンタゴニストの使用も提供する。
【0117】
医薬品は、医薬的に許容されうる好適な担体、希釈剤又は賦形剤のさらなる量を含むことがある。これらは、全て公知の溶媒、分散媒、充填剤、固体担体、キャスティング、抗真菌及び抗菌剤、界面活性剤、等張及び吸収剤等を含む。医薬品が、本明細書に記載の1つ又は複数のさらなる治療薬も(すなわち、IAPアンタゴニストに加えて)含むことがあることは理解される。例えば、感染がHBV感染である場合、医薬品は、ラミブジン、アデフォビル、テノフォビル、テルビブジン及びエンテカビルから成る群より選択されるHBV抗ウイルス剤をさらに含むことがある。感染がHCV感染である場合、医薬品は、PEG化IFNα及びリバビリン、及び/又はミラビルセン[Janssenら、N Engl J Med、2013、第368巻(18):1685~94頁]をさらに含むことがある。
【0118】
本発明は、限定されるものではないが、TNF-αアゴニスト、例えばTNF-α、TRAIL(TNF関連アポトーシス誘導リガンド)又はTRAILアゴニスト、例えばこれに限定されないがTRAIL受容体抗体を含めた他の医薬活性薬剤との共製剤化(co-formulation)及び/又は併用投与も企図している。
【0119】
本明細書に記載する本発明に、具体的に記載するもの以外の変形及び修飾の余地があることは、当業者には理解される。本発明が、その精神及び範囲に入る全てのかかる変形形態及び修飾形態を含むことを理解されたい。本発明は、本明細書において個々に又は集合的に言及する又は示す工程、特徴、組成物及び化合物の全て、並びに前記工程又は特徴のいずれか2つ以上の任意の及び全ての組合せも含む。
【0120】
別段の定義がない限り、本明細書において用いるすべての専門及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味をもつ。本明細書に記載するものと同様又は均等の任意の材料及び方法を使用して本発明を実施又は試験することができるが、好ましい材料及び方法を次に説明する。
【実施例】
【0121】
(実施例1)
マウスのB型肝炎感染
本発明者らは、マウスにおいてHBV感染を引き起こすために用いることができる技術7、8を採用した。アデノ随伴ウイルスの逆方向末端反復配列が隣接しているゲノム長より大きいHBV1.2を含有する裸のプラスミドDNAを、ハイドロダイナミック法により注入して、実質的な下大静脈圧を生じさせて前記DNAを肝臓に押し込み、そこで前記DNAが肝細胞に取り込まれる7、8。重要なこととして、動物に注入したDNAは、アデノ随伴ウイルスコード配列を含有しない。プラスミドが封入されないので、注入された調製物中にウイルス構造タンパク質も非構造タンパク質も存在しない。
【0122】
マウスから間欠的に採血し、それらの血清を単離した。QiagenウイルスDNA抽出キットを使用して、ウイルスDNAを精製した。以前に記載された9ように、RT-PCRによってHBVゲノムの絶対定量を達成した。
【0123】
この技術を用いて、C57BL/6マウス(いずれかの性別の6~12週齢)をHBVに感染させ、するとそれらのマウスは、表面抗原、コア抗原及びe抗原を発現し、高レベルの血清HBV DNAを明示した(
図1参照)。加えて、ビリオンが感染動物の血清中で同定され、肝臓の組織学的検査は、肝細胞のおおよそ20%がHBVに感染した(HBcAgを発現する)ことを示した。これは、ヒト感染に近似している。また、ヒト感染の場合に酷似して、マウスは、感染8~12週後にウイルス血症を制御し始めたが、HBV DNAは、感染後24週を越えてマウスの血清中で依然として検出することができた(
図2参照)。これは、HBVの全複製生活環がマウス肝細胞において繰り返されていること、及びエピソームHBV転写テンプレートが、一部の肝細胞内に残存して、感染24時間後に観察されるウイルス血症の再発を生じさせる可能性が高いことを示す。
【0124】
(実施例2)
ビリナパントでのマウスの処置
C57BL/6マウスをHBVに感染させ、感染6日後、週用量のビリナパント(腹腔内投与する30mg/kg)又はビヒクル対照(DMSO)で、合計3週間(3用量)、処置した。
【0125】
HBV感染6日後、マウスをビリナパント又はビヒクル対照で処置した。ビリナパントの3用量後、HBVウイルス量は、ビヒクル対照で処置したマウスのウイルス量と比較して2 log低減された。ビリナパントで処置したHBV感染マウス全てが、ビリナパントの初回投与39日後には血清中に検出可能なHBV DNAを有さなかった。平均すると、ビヒクル対照で処置したマウスは、この時点で血清中におおよそ10
6のHBV DNAコピーを有した(
図3参照)。HBV排除を促進する点、3用量のビリナパントが6用量のビリナパントと同等の効力を有することが判明した。ビリナパント処置は、初回処置投与後10日ほども早期にHBV排除を達成した(
図4参照)。
【0126】
(実施例3)
ビリナパント処置で見られたHBV排除速度を再現したcIAP1及びcIAP2の遺伝子標的化
全組織におけるcIAP2の欠損と共にcIAP1の欠損のある(肝臓特異的欠損)遺伝子標的マウスは、ビリナパントで処置したマウスと同様の速度でHBV感染を排除することができた(
図5参照)。
【0127】
(実施例4)
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)中のHIV-1JR-CSFに対するビリナパントの活性
方法
ウイルス分離体
HIV-1分離体JR-CSF(AIDS認知症患者の濾過脳脊髄液から分離された、グループM、サブタイプB、CCR5指向性)をNIAID AIDS Research and Reference Reagent Programから入手した。採取したてのヒトPBMCを使用して低継代ウイルスストックを調製し、液体窒素中で保管した。ウイルスの力価測定済みアリコートを使用直前に冷凍庫から取り出し、バイオハザード対策用キャビネット内で室温に急速解凍した。
【0128】
採取したてのヒトPBMCにおける抗HIV効力評価
HIV及びHBVに対して血清反応陰性の採取したてのヒトPBMCを、検査を受けるドナーから分離した(Biological Specialty社、ペンシルバニア州コルマール)。細胞を低速遠心分離によって2~3回、ペレット化/洗浄し、PBSに再浮遊させて汚染血小板を除去した。次いで、白血球フェレーシスを行った(Leukophoresed)血液をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で1:1希釈し、50mL遠心管の中の14mLのリンパ球分離培地(LSM;Mediatech社によるCellgro(登録商標);密度1.078+/-0.002g/ml;カタログ番号85-072-CL)上に積層し、次いで30分間、600×gで遠心分離した。結果として生じた界面から帯状PBMCを穏やかに吸引し、その後、低速遠心分離によりPBSで2回洗浄した。最後の洗浄の後、細胞をトリパンブルー排除により計数し、15%ウシ胎仔血清(FBS)と2mM L-グルタミンと4μg/mLフィトヘマグルチニン(PHA、Sigma社)とを補足したRPMI 1640に1×106細胞/mLで再浮遊させた。細胞を放置して48~72時間、37℃でインキュベートした。インキュベーション後、PBMCを遠心分離し、15%FBSと2mM L-グルタミンと100U/mLペニシリンと、100μg/mLストレプトマイシンと20U/mL組換えヒトIL-2(R&D System社)とを補足したRPMI 1640に再浮遊させた。IL-2を培養培地に含めて、PHA細胞分裂刺激により開始された細胞分裂を維持した。PBMCをこの培地中1~2×106細胞/mLの濃度で維持し、アッセイで使用するまで週2回培地を交換した。細胞を、アッセイで使用するには古すぎると思われ廃棄することになるまで、最大2週間培養し続けた。単球由来マクロファージ(MDM)は、組織培養フラスコへの接着の結果として培養物から剥脱される。
【0129】
標準PBMCアッセイのために、少なくとも2名の正常ドナーからのPHA刺激細胞をプールし(混合し)、新たな培地で1×106細胞/mLの最終濃度に希釈し、96ウェル丸底マイクロプレートの内部ウェルに50μL/ウェル(5×104細胞/ウェル)でプレーティングした。1名より多くのドナーからの単核細胞のプーリング(混合)を用いて、HIV感染の量的及び質的相違並びに初代リンパ球集団のPHA及びIL-2への全応答の結果として生ずる個々のドナー間で観察される差異を最小にした。各プレートは、ウイルス/細胞対照ウェル(細胞+ウイルス)及び実験ウェル(薬物+細胞+ウイルス)を含んだ。このインビトロアッセイにおいて、PBMC生存率は、インキュベーション継続期間を通して高いままである。それ故、感染ウェルを抗ウイルス活性と細胞毒性両方の評定に使用する。試験薬希釈物をマイクロタイターチューブの中で2X濃度で調製し、標準形式を用いて適切なウェルに各濃度(合計9種の濃度)の100μLを配置する。ウイルスストックの50μLの所定希釈物を各試験ウェルに配置した(最終MOI≒0.1)。PBMC培養物を感染後6日間、37℃、5%CO2で維持した。この期間の後、無細胞上清試料を逆転写酵素活性の分析のために採集した。上清試料の除去後、細胞生存率判定用のプレートにMTSを添加することにより化合物細胞毒性を測定した。ウェルの顕微鏡検査も行い、あらゆる異常を書き留めた。
【0130】
逆転写活性アッセイ
マイクロタイタープレートベースの逆転写酵素(RT)反応を利用した(Buckheitら、AIDS Research and Human Retroviruses 7:295~302頁、1991)。トリチウム化チミジン三リン酸(3H-TTP、80Ci/mmol、NEN社)を1:1のdH2O:エタノール中、1mCi/mlで受け取った。150μlのポリrA(20mg/ml)を0.5mlのオリゴdT(20単位/ml)及び5.35mlの滅菌dH2Oと併せ、続いて等分(1.0ml)することによりポリrA:オリゴdテンプレート:プライマー(Pharmacia社)をストック溶液として調製し、-20℃で保管した。RT反応バッファーを毎日新たに調製し、これは、125μlの1.0M EGTA、125μlのdH20、125μlの20%Triton X100、50μlの1.0M Tris(pH7.4)、50μlの1.0M DTT、及び40μlの1.0M MgCl2から成った。1部の3H-TTPと4部のdH20と2.5部のポリrA:オリゴdTストックと2.5部の反応バッファーとを併せることにより最終反応混合物を調製した。10マイクロリットルのこの反応混合物を丸底マイクロタイタープレートに配置し、15μlのウイルス含有上清を添加し、混合した。プレートを37℃で60分間インキュベートした。インキュベーション後、その反応容量をDE81フィルター-マット(Wallac社)にスポッティングし、5分間、5回、各々5%リン酸ナトリウムバッファー又は2X SSC(Life Technologies社)中で、1分間、2回、各々蒸留水中で、1分間、2回、各々70%エタノール中で洗浄し、その後、乾燥させた。組み込まれた放射活性(カウント毎分、CPM)を、標準液体シンチレーション技術を用いて定量した。
【0131】
細胞毒性を測定するためのPBMC生存率についてのMTS染色
アッセイ終了時、アッセイプレートを可溶性テトラゾリウム系染料MTS(CellTiter(登録商標)96 Reagent、Promega社)で染色して、細胞生存率を判定し、化合物毒性を定量した。MTSは、代謝活性細胞のミトコンドリア酵素によって代謝されて可溶性ホルマザン産物を生じさせ、それにより細胞生存率及び化合物細胞毒性の迅速な定量的分析が可能になる。この試薬は、使用する前に調製する必要がない安定した単一溶液である。アッセイ終了時、10~25μLのMTS試薬をウェルごとに添加し(容量に基づいて10%最終濃度)、次いで、それらのマイクロタイタープレートを4~6時間、37℃、5%CO2でインキュベートして細胞生存率を評定した。接着プレートシーラーを蓋の代わりに使用し、密封されたプレートを数回反転させて可溶性ホルマザン産物を混合し、Molecular Devices Vmax又はSpectraMax Plusプレートリーダーを用いて490/650nmで分光光度的にプレートを読み取った。
【0132】
データ解析
社内コンピュータプログラムを用いるPBMCデータ解析は、IC50(ウイルス複製の50%阻害)、IC90(ウイルス複製の90%阻害)、IC95(ウイルス複製の95%阻害)、TC50(50%細胞毒性)、TC90(90%細胞毒性)、TC95(95%細胞毒性)及び治療指数値(TI=TC/IC;抗ウイルス指数又はAIとも呼ばれる)の計数を含んだ。抗ウイルス活性及び毒性両方についての生データをそのデータのグラフ表示と共に下に提供する。
【0133】
結果
固定濃度のTNF-αを伴う又は伴わないビリナパントをHIV-1に対する抗ウイルス効力について評価した。結果を表1(表1)にまとめる。加えて、PBMCにおけるHIV JR_CSF複製の、単独での又は10ng/ml TNF-αと組み合わせての様々な濃度のビリナパントによる阻害をそれぞれ
図6及び
図7に示す。
【0134】
【0135】
ビリナパントは、PBMCにおいてHIV-1に対する抗ウイルス活性はもちろん、多少の細胞毒性も明示した。固定濃度(10ng/mL)のTNF-αの存在下では、抗ウイルス力の6倍増加があった。細胞毒性の1.6倍増加は、このアッセイの予想生物学的変動の範囲内である。単独でのTNF-αは、このアッセイにおいてHIV複製の35%低減をもたらし、MTSエンドポイントを用いて細胞生存率に影響を及ぼさなかった。
【0136】
(実施例5)
HIV感染細胞に対するビリナパントの活性
方法
単離及び活性化。健常ドナーからのPBMCをFicoll(GE社)勾配遠心分離によって単離し、磁性ビーズ(Miltenyi社)を使用してCD8+細胞を剥脱した。残存PBMCを未処置状態で維持するか、又はPHA(10μg/mL)中で活性化させ、IL-2(10U/mL)とIL-7(25ng/mL)とを補足したRF10(RPMI、10%FCS、2%グルタミン)中で3日間培養した。
【0137】
HIV感染。活性化PBMCを37℃で2時間、0.1のMOIでHIV NL4.3(GFP+、Nef欠失)に感染させるか、又は未感染のままにしておいた。インキュベーション後、細胞を3回、PBS中で洗浄し、IL-2とIL-7とを補足したRF10に再浮遊させ、1×106細胞/mLでさらに3日間培養した。
【0138】
ビリナパント処置。新たな培地をPBMCに補足し、続いてビリナパント(0.1μM、1μM、若しくは10μM)、又はDMSOのみ(1%最終濃度)で6時間又は24時間処置した。処置後、細胞を2%(w/v)パラホルムアルデヒドの最終濃度で固定した。
【0139】
FACS。固定された細胞を、PermWash(BD社)を使用して透過性処理し、CD4に対する抗体(APC-H7;1:20)、CD3に対する抗体(PE-Cy7、1:40)及び活性カスパーゼ3に対する抗体(AF647、1:25)(全てBD社から購入した抗体)で1時間、4℃で染色した。
【0140】
結果
結果を
図8に示す。10uMビリナパントの単回投与後、HIV感染細胞の55%は、24時間以内に死滅する。ビリナパントが未処置細胞の生存率に及ぼす効果は最小限であり、活性化T細胞に及ぼす効果はわずかである。
【0141】
(実施例5)
結核菌感染に対するビリナパントの活性
合計32匹のマウスを結核菌(H37Rv株)に感染させ、4週間の安静後、17匹のマウスをビリナパントで(腹腔内注射により、30μg/gで)処置し、15匹のマウスをDMSOで処置し、両方の処置を週1回投与で施した。3用量後、マウスを安楽死させ、肺を採取し、均質化し、そのホモジネートを系列希釈でMiddlebrook 7H11寒天プレートにプレーティングした。3週間の培養後にコロニー形成単位(CFU)を判定した。結果を
図9に示す。
【0142】
マウスを切開すると、肉眼的に、ビリナパント処置群の肺は、外観がピンク色で、均一で、より健常に見えたことが注目すべき点であった。脾臓もDMSO群との比較で腫脹していた。結果は、ビリナパント群の細菌量(0.33Log10CFU/肺)の統計的に有意な低減(p=0.012)を示した。
【0143】
(実施例6)
ビリナパントの活性に対するTNF-αサイトカインへの拮抗の効果
マウスをHBVに感染させ、その後、示されている様々な時点で、TNF-α拮抗抗体を(腹腔内)注射した。対照として、HBV感染マウスの別のコホートに無関係のIgG1アイソタイプ対照抗体を注射した。
【0144】
この実験の結果を
図10に示す。この図に示されているように、TNF-αの活性への拮抗は、ビリナパントの効力を無効にする。したがって、ビリナパントは、感染肝細胞を死滅させる又はHBVレベルを低下させる内因的に生産されたTNF-αの能力を少なくともある程度は促進している。
【0145】
ビリナパントは、内因的に生産されたTNF-αの活性を助長し、強化し、このサイトカインの感染を除去する能力を促進するようである。IAPが内因性TRAIL(別のTNFスーパーファミリーメンバー)シグナル伝達を変調させることも公知であり、したがって、ビリナパントは、IAPに拮抗するその能力により、感染細胞を根絶するTRAILの能力を促進することもできる。
【0146】
このデータは、ビリナパントが内因性TNF-αの活性を促進し、このサイトカインの感染細胞を根絶する能力を助長することを示す。したがって、同時に投与されるビリナパントと外因性TNF-α様分子の組合せは、ビリナパント単独と比較してHBV根絶効力の顕著な増加を示す可能性が高い。(このことは、実施例4においてHIVで実証した)。その毒性のため、TNF-αはヒトへの投与が難しいが、関連分子TRAILはヒトの試験で使用されており、毒性であると判明していない。したがって、本発明のIAPアンタゴニスト、特にビリナパントとTRAILとの組合せを使用して、ビリナパントの効力を強化すること及び感染細胞の排除を促進することができる。
【0147】
(実施例7)
他のIAPアンタゴニストの活性
マウスをHBVに感染させ、ビリナパント、又はFanら、2013(20)に記載されているGT13072と呼ばれる別のIAPアンタゴニスト(SMAC模倣体)のいずれかで処置した。
【0148】
C57BL/6マウスをHBVに感染させ、感染6日後、マウスを無作為に3つのコホートに分けた。1つのコホートを(実施例2に記載したように)ビリナパントで処置し、もう1つのコホートを週用量のGT13072(15mg/kgを腹腔内投与、3週間にわたって合計3用量)で処置し、第三のコホートをビヒクル対照で処置した。結果を
図11に示す。
【0149】
図11に示した結果は、HBV感染を排除するビリナパントの能力が他のSMAC模倣体によって共有されることを示す。したがって、薬物群としてのSMAC模倣体/IAPアンタゴニストは、細胞内感染の処置に有効である。
【0150】
(実施例8)
レジオネラ・ニューモフィラ感染に対するビリナパントの活性
6から12週齢C57BL/6マウスをレジオネラ・ニューモフィラ(50μlのリン酸緩衝生理食塩水中、2.5×10
6コロニー形成単位)に鼻腔内感染させた。感染6時間後、マウスを単回用量のビリナパント(10mg/Kgを腹腔内投与、四角)で処置するか、又はビヒクル対照(丸)で処置した。感染2日後、肺を動物から採取し、培養により細菌数を定量した。結果を
図12に示す。図中の各点は動物を表し、エラーバーはSEMを表す。
*P<0.05。このデータは、ビリナパント処置が、対照処置と比較してレジオネラ・ニューモフィラの排除及び疾患寛解を促進することを示す。
【0151】
(実施例9)
ビリナパントと組み合わせたエンテカビルの効果
C57Bl/6マウスをHBVに感染させ、6日後、ビリナパント単独(30mg/kgを2週間、週1回腹腔内投与、合計2用量になる)、又はエンテカビル(3.2mg/kgを8日間、1日1回強制栄養により投与、合計8用量になる)、又は上に示した用量及び継続期間のビリナパント+エンテカビルでの処置を開始した。
【0152】
結果を
図13に示す。図中、灰色陰影エリアは、エンテカビル処置継続期間を示し、矢印は、ビリナパント投与を示す。
***P<0.001、
**P<0.01、ns=有意でない、各群にマウス6匹。これらの研究結果は、3回の独立した実験で再現された。
【0153】
これらの結果から明らかであるように、ビリナパントとヌクレオシド類似体エンテカビルの組合せは、単独薬剤として与えたいずれかの薬物の効力と比較して、感染マウスの血清HBV DNA排除を促進する効力を向上させる。
【0154】
(実施例10)
ビリナパントと組み合わせたTRAILの効果
以前に記載されたように(Chin R、Earnest-Silveira L、Koeberlein B、Franz S、Zentgraf H、Bowden S、Bock C-T、Torresi J.、Modulation of MAPK pathways and cell cycle byreplicating hepatitis B virus: factors contributing tohepatocarcinogenesis、J Hepatology 2007;47:325~37頁)、アデノウイルス送達系を使用して初代ヒト肝細胞をインビトロでHBVに感染させた。この送達系は、緑色蛍光タンパク質マーカーを備えていたので、感染細胞の割合を定量することができた。この系を使用して、肝細胞のほぼ100%をHBVに感染させた。感染後2日間、細胞を休ませ、その後、示されている薬剤で処置した。処置48時間後、CellTiter-Glo(登録商標)(Promega社、米国ウィスコンシン州マディソン)をその製造業者のプロトコルに従って使用して細胞生存率を評定した。この実験を3つ組で行い、2名の独立したドナーを用いて2回反復した。3つ組未処置試料の1つからの最高CellTiter-Glo結果を用いて、100%生存率マークを設定した。結果を
図14に示す。
【0155】
この実験の結果から、単剤として使用したときのTRAILには、HBVに感染したヒト初代肝細胞の死滅の促進に事実上効力がないことは明白であった。本発明者らは、TNF-αシグナル伝達を無効にしたときビリナパントがHBV感染のインビボ制御に効果がないことを証明した。同様に、TNF-α不在下ではビリナパントは感染肝細胞のインビトロでの致死に効果がなかった。しかし、TRAILとビリナパントの組合せは、TNF-α不在下でさえHBVに感染した初代ヒト肝細胞を非常に有効に死滅させる。これらのデータは、TRAILが、感染細胞を排除するビリナパントの効力を促進できること、及びビリナパントのインビボ効力をTRAILアゴニストの同時投与で促進できることを示す。
【0156】
要約
これらの結果は、ビリナパント処置がHBV感染を排除することを示す。同様に、IAPの遺伝子標的欠失は、HBV感染の排除を促進する。まとめると、これらのデータは、IAPに拮抗するいずれの方法も、HBV感染の排除に治療的効力があることを示す。HBV感染マウスのビリナパント処置に関する毒性は一切同定されず、HBVに感染したIAP欠損動物も健常に見えた。これらのデータは、IAPへの拮抗が、感染細胞を死滅に感作させるが、正常又は非感染細胞をプログラム細胞死に感作しないことを示す。さらに、IAPの阻害は、有害な炎症反応を防止した。これらの結果は、HIV、結核菌及びレジオネラ・ニューモフィラ感染細胞に対するビリナパントの活性も示す。これらの結果は、HCV、HPV、CMV、並びに他の細胞内ウイルス、細菌、真菌、酵母及び寄生虫を含めて、宿主細胞内で持続する他の感染に容易に拡大することができると考えられる。
【0157】