IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 渡辺パイプ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-簡易構築物の引き抜き抵抗アンカー 図1
  • 特許-簡易構築物の引き抜き抵抗アンカー 図2
  • 特許-簡易構築物の引き抜き抵抗アンカー 図3
  • 特許-簡易構築物の引き抜き抵抗アンカー 図4
  • 特許-簡易構築物の引き抜き抵抗アンカー 図5
  • 特許-簡易構築物の引き抜き抵抗アンカー 図6
  • 特許-簡易構築物の引き抜き抵抗アンカー 図7
  • 特許-簡易構築物の引き抜き抵抗アンカー 図8
  • 特許-簡易構築物の引き抜き抵抗アンカー 図9
  • 特許-簡易構築物の引き抜き抵抗アンカー 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】簡易構築物の引き抜き抵抗アンカー
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/14 20060101AFI20230105BHJP
   E02D 5/80 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
A01G9/14 B
E02D5/80 102
E02D5/80 103
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019097683
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2020191787
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-01-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行日 平成31年 4月15日 発行者 渡辺パイプ株式会社 刊行物 SEDIA 北海道 2019>2020 渡辺パイプの強いハウス勉強会 選べる!「強いハウス」読本 第3,4頁(外、添付証明書B)~T)に記載の通り) 発行日 平成31年 4月22日 発行者 渡辺パイプ株式会社 刊行物 2019年度版総合カタログ「Rakuchin(日本の農業・施設園芸総合カタログ 2019)」第16,17,66,67頁
(73)【特許権者】
【識別番号】000218362
【氏名又は名称】渡辺パイプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(72)【発明者】
【氏名】阿部 茂喜
(72)【発明者】
【氏名】武田 雅史
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-015722(JP,A)
【文献】特公平05-001851(JP,B2)
【文献】実開昭61-107845(JP,U)
【文献】特開平09-013371(JP,A)
【文献】実開昭50-099145(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14
E02D 5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状体のアンカー板と連結体とを備えた栽培温室用の引き抜き抵抗アンカーであって、
アンカー板は、先端側が尖がり状であり、後縁部が押し込み治具の受け部であり、一面に直進案内用の凸状部が先端から後端まで設けられており、凸状部の中央部に連結体との接合部が形成されており、
連結体は、先端部がアンカー板の重心中央付近で接合し、後端部に地上部材との接合部を備え、先端部は凸状部と分離可能であり
連結体とアンカー板の中央部とは回動が自由となる接合構造であることを特徴とする引き抜き抵抗アンカー。
【請求項2】
連結体の先端部は、折り返して環状部が形成されており、環状部はアンカー板通し間隔が設けられた開放形であって、
アンカー板の凸状部は、板体であって、接合用の穴を有し、穴から上辺までの肉厚が前記環状部のアンカー板通し間隔よりも小さくしたことを特徴とする請求項記載の引き抜き抵抗アンカー。
【請求項3】
アンカー板は、後縁部に連結体との接合部がある面と反対方向に屈曲する姿勢案内部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の引き抜き抵抗アンカー。
【請求項4】
連結体は、棒状体あるいは線状体であり、後端側に長さ調整部を備えていることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の引き抜き抵抗アンカー。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載された引き抜き抵抗アンカーを地盤に押し込む押し込み治具であって、棒状体の後端側が押圧部であり、棒状体の先端側にアンカーの板状体の後縁部を拘束するT形挿入溝又は十字形挿入溝が設けられた爪部を備えていることを特徴とする押し込み治具。
【請求項6】
請求項1~に記載されたいずれかの引き抜き抵抗アンカーを請求項に記載された押し込み治具を使用して、引き抜き抵抗アンカーを施工する方法であって、
簡易構築物の基礎梁あるいは支柱に沿って引き抜き抵抗アンカーのアンカー板を、先端を下にして地盤上に位置決めし、
押し込み治具をアンカー板の後端部に設置し、
押し込み治具の後端部を押し込んで、アンカー板を地盤の設置予定深さより、所定深さ分深く位置させ、
押し込み治具を引き抜き、
連結体を姿勢変更分引き上げて、アンカー板を水平方向に姿勢を調整し、
簡易構築物の基礎梁、支柱又はロープと引き抜き抵抗アンカーの後端部とを接続する施工工程を、
備えていることを特徴とする引き抜きアンカーを施工する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培用温室のように地表に直接設置する簡易構築物を引き抜き力に対して抵抗する抵抗アンカーに関する。
【背景技術】
【0002】
栽培ハウスは、施設農業として、注目されており、普及している。
特に、日本農業の抱える構造的課題、農業の再生、競争力強化が農業に求められている。農商工連、六次産業化、TPP、企業の参入など変革点にある。市場から農業の産業化として、品質の安定化、出荷数量の安定化、周年供給など要素の充足が求められている。農産物を生産する供給サイドから見ると、このような3要素を充足することができれば、安定した売り先(市場)を確保でき、経営の安定化を計ることができるようになって、家業から事業へ転換でき、産業として成長することが期待できる。
ハウス栽培は、天候変動の影響を緩和して、栽培環境をコントロールし、計画栽培、安定出荷の手段として有効である。農業の課題を解決する技術的に有効な手段の1つである。
【0003】
ハウスの例としては、丸パイプをアーチ型に曲げたパイプフレームを60~100cm程度の間隔で多数立列設し、基礎の梁と連結し、スクリュー状の羽根を設けた杭を基礎張りに連結したビニールハウス(図9参照、特許文献1:特開2013-169200号公報)等がある。
パイプハウスなどの栽培用温室は、大型化しており、また、強風による風害による倒壊などが発生している。
畑にパイプや杭を差し込んで固定した軽量なパイプハウスは、風にあおられて巻き上げられる上方に引っ張る力が加わることによって、倒壊などが発生する。
パイプハウスなどの栽培用温室の基礎を安定させるために、アンカーがいろいろ提案されている。
特許文献2(特開2003-306935号公報)や特許文献3(特開平9-13371号公報)には、アンカー支持棒の先端に拡開するアンカー羽根や後部側を開口した立体的な回転するアンカー本体が開示されている。
【0004】
特許文献4(特開2016-98530号公報)には、打ち込み用の打撃付与工具に回転可能に支持された円盤状のアンカー本体(図10参照)が開示されている。この円盤状のアンカーは、傾斜状態で打ち込まれるものであって、傾斜に対して直角方向に大きな抵抗が発生するので、支柱や果樹本体から離れた位置に設置されることとなり、また、地盤中の石などを回転して避けて打ち込むことができるものであり、打ち込み箇所が変わる可能性があるものである。本例は、明細書中にもあるように、果樹の柵などのように、多方角から変化しながら加わる単位支柱に対して特に有効なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-169200号公報
【文献】特開2003-306935号公報
【文献】特開平09-013371号公報
【文献】特開2016-098530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、少ない抵抗で打ち込めて、水平方向に姿勢変更することにより、大きな引き抜き抵抗力を発揮する栽培用温室などに使用される引き抜き抵抗アンカーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1.板状体のアンカー板と連結体とを備えた栽培温室用の引き抜き抵抗アンカーであって、
アンカー板は、先端側が尖がり状であり、後縁部が押し込み治具の受け部であり、一面に直進案内用の凸状部が先端から後端まで設けられており、凸状部の中央部に連結体との接合部が形成されており、
連結体は、先端部がアンカー板の重心中央付近で接合し、後端部に地上部材との接合部を備え、先端部は凸状部と分離可能であり
連結体とアンカー板の中央部とは回動が自由となる接合構造であることを特徴とする引き抜き抵抗アンカー。
2.連結体の先端部は、折り返して環状部が形成されており、環状部はアンカー板通し間隔が設けられた開放形であって、
アンカー板の凸状部は、板体であって、接合用の穴を有し、穴から上辺までの肉厚が前記環状部のアンカー板通し間隔よりも小さくしたことを特徴とする1.記載の引き抜き抵抗アンカー。
3.アンカー板は、後縁部に連結体との接合部がある面と反対方向に屈曲する姿勢案内部を設けたことを特徴とする1.又は2.に記載の引き抜き抵抗アンカー。
4.連結体は、棒状体あるいは線状体であり、後端側に長さ調整部を備えていることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の引き抜き抵抗アンカー。
5. 1.~4.のいずれかに記載された引き抜き抵抗アンカーを地盤に押し込む押し込み治具であって、棒状体の後端側が押圧部であり、棒状体の先端側にアンカーの板状体の後縁部を拘束するT形挿入溝又は十字形挿入溝が設けられた爪部を備えていることを特徴とする押し込み治具。
6. 1.~4.に記載されたいずれかの引き抜き抵抗アンカーを.に記載された押し込み治具を使用して、引き抜き抵抗アンカーを施工する方法であって、
簡易構築物の基礎梁あるいは支柱に沿って引き抜き抵抗アンカーのアンカー板を、先端を下にして地盤上に位置決めし、
押し込み治具をアンカー板の後端部に設置し、
押し込み治具の後端部を押し込んで、アンカー板を地盤の設置予定深さより、所定深さ分深く位置させ、
押し込み治具を引き抜き、
連結体を姿勢変更分引き上げて、アンカー板を水平方向に姿勢を調整し、
簡易構築物の基礎梁、支柱又はロープと引き抜き抵抗アンカーの後端部とを接続する施工工程を、
備えていることを特徴とする引き抜きアンカーを施工する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の引き抜き抵抗アンカーは、平板の背中に凸状部が設けられているアンカー板なので、土中で曲がらずに所定の方向に挿入することができ、正確な位置に設置でき、凸状部に設けられた連結体を少し引き上げて、アンカー板を土中で水平姿勢に変更して、大きな引き抜き抵抗を発揮させることができる。小さな板状体であっても、地中で水平になって、大きな引き抜き抵抗を発揮することができる。
土中に挿入する際は、縦方向の平板状であるので、挿入抵抗が小さいので、緊急時などに即応でき、風害対策に有効である。
アンカー板と連結体はアンカー板の本体から上方に離れた箇所で、ほぼ重心上に設けられているので、連結体を引き上げると、アンカー板を土中で水平方向に姿勢変更することができる。アンカー板と連結体は別体とされ、現場で組み合わせて用いることにより、アンカー体の大きさと連結体の長さを適宜選択して使用することができる。
アンカー板を土中に挿入する押し込み治具は、アンカー板の後縁と凸状部を挟さむことによって、アンカー板を安定させることができる。
軽量で簡易な構造の栽培用温室の風害対策に臨機応変に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】引き抜き抵抗アンカーの例
図2】引き抜き抵抗アンカーの分解図
図3】アンカー板と連結体の接合部拡大図
図4】アンカー板が土中で水平姿勢となる変化を示す図
図5】調整部付き連結体後端部の例
図6】押し込み治具の例(連結体を省略して示す)
図7】姿勢案内部付きアンカー板の例
図8】引き抜き抵抗アンカーの使用例を示す図
図9】パイプハウスの骨組みの例とスクリュー杭の例を示す図
図10】従来例(特許文献4)に示される回転円盤型アンカーを示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、栽培用温室などの簡易構築物に使用する引き抜き抵抗アンカーであって、挿入方向に向いた状態で土壌中に挿入され、水平方向に姿勢が変更して大きな抵抗を発揮するアンカー板と、アンカー板と地上の簡易構築物に接続する連結体から構成される。さらに加えて、アンカー板を土壌中へ押し込み治具を備えている。
アンカー板は、板状であり、先端側が先尖りであり、板体の中央線上に先端に向けて凸状部を備えており、凸状部には、押し込み方向がぶれないように案内する機能と、連結体との接合部と、姿勢変更付勢機能がある。アンカー板の後縁は直線状が基本で、押し込み治具との係合部や姿勢案内部が設けられることがある。
アンカー板は、平板状で土壌中に曲がって押し込まれてしまう恐れがあるので、背中に凸状部を設けて直進性を向上させる。この凸状部に連結体を結合する穴を設ける。アンカー板を押し込んで、引き上げると、アンカー板の中心線から離れている穴に引き上げ力が加わるので、離れている距離分のモーメントが働いて、アンカー板の後縁は水平方向に変更するように付勢される。また、穴は、アンカー板の中央部付近に設けて、連結体とアンカー板が直角方向で安定するようにすることが好ましい。
押し込み治具は、アンカー板の後縁部を押してアンカー板を土壌中に所定深さまで侵入させる治具である。押し込み治具は、アンカー板の後縁部を拘束する爪などを設けると、アンカー板を安定して保持できる。裏面側の爪を短くすると、アンカー板を水平方向へ姿勢変更する際に抑え機能を発揮できる。
本発明の引き抜き抵抗アンカーは、従来のスクリューアンカーや螺旋杭よりも大きな引き抜き抵抗を発揮する。簡易構築物の構築初期や強風が予測されるときに臨時に対応する場合に、従来のアンカーよりも設置数が少なくて済む。特に、緊急の風害対応の補強対策として能力を発揮する。
以下図に沿って、実施態様を説明する。
【0011】
(実施態様1)
図1、2、3に、五角形のアンカー板1と先端と後端を同形の「P」形とした棒状の連結体2を備えた引き抜き抵抗アンカー10が示されている。アンカー板体の基本形状は先端が尖っていると土中に突き刺さりやすく抵抗が小さく、全体として、三角形や五角形など尖っている形状が適している。円盤は、土中の抵抗で左右に曲がりやすく、所定の挿入位置に設置することが難しく、栽培施設などの建物には不向きである。
図1(a)は、全体図であり、図1(b)は、連結体2を引き上げた状態のアンカー板1と連結体の接合部31を示す。図2は、アンカー板1の斜視図(a)、アンカー板1の平面図(b)、連結体2の平面図(c)を示す。図3は、アンカー板1と連結体2の先端部22を示し(a)、アンカー板1と連結体2の先端部22との結合状態(b)を示している。
【0012】
アンカー板1は、平面視で五角形の板状体で、先端側11の先端の尖がっている個所から中央線に沿って凸状部3が設けられている。凸状部3の中間には穴33が形成されている。穴33は、アンカー板1を引き上げたとき水平になる重心中央付近からやや先端側に形成することが好ましい。これは、アンカー板1が土壌中で水平方向になって、引き上げ力が加わった時に、アンカー板が前後に動かないように、前後にベクトルが働かないようにするためである。
アンカー板1の本体と穴33の立ち上がり距離hがあるので、土中に挿入されたアンカー体1を連結体2で引き上げた時、離れている分曲げモーメントが働いて、アンカー板1を水平方向に変更させる力となる。
【0013】
図1(a)では、アンカー板1と連結体2が分離可能な別体型の例を示している。図2(c)に示す連結体2は、丸棒の先端と後端に環状部を形成した例を示している。すなわち、先端部22と後端部23に環状部24が形成されており、中間部が直線状の軸部21となっている。本例では、先端部と後端部は同形状であるが、別形状であっても差し支えない。本例では、環状部は閉鎖しておらず、開口している。これは、図3(a)に示すように、環状部24に存在する開口25の開口幅が、アンカー板1の凸状部3に設けられている穴33と上辺35との間の肉厚35dより大きくなっており、連結体2とアンカー板1を分離でき、現場で組み合わせて使用できるようになっている。これは、アンカー板1と連結体2を別々に収納したほうがコンパクトで、現場の状況に応じて必要な長さの連結体2を組み合させて使用することができる等の利点がある。別体として、アンカー板の大きさと連結体の長さを複数種類設けることにより、現場で適宜組み合わせて用いることができる。
なお、連結体2の先端部22に設けられている環状部は閉鎖して、アンカー板1と連結体2が一体化することもできる。
また、連結体2は簡易構築物に加わる引っ張りに対して抵抗する機能であるので、棒状体のほか、ロープや鎖とすることができる。
【0014】
図4に地中に挿入されたアンカー板1が、姿勢を水平に変更する状態を模式的に示す。
(a)はアンカー板1が挿入された土中での鉛直方向を向いた初期の姿勢を示しており、この状態から連結体2を力Fで上方に引くと、力Fが作用する穴33と引き上げ抵抗となるアンカー板1の後縁部12が離れているので、連結体1が引き上げられるに従いアンカー体1は、傾斜して、一番抵抗の大きくなる連結体2とアンカー体1が直角の関係になる。途中の傾斜状態を(b)に示し、アンカー体1が水平になった状態を(c)に示す。
なお、図示の例は鉛直にアンカー板1を土中に挿入した状態を示しているが、斜めに挿入して、連結体2を斜めに取り付ける場合もある。その場合、アンカー板1は連結体2とほぼ直角になる姿勢になる。連結体を取り付ける簡易構築物の箇所とアンカー板1を設置できる箇所との関係で、アンカー板1を鉛直に挿入するか、傾斜させるか決まる。
例えば、幅10cm、長さ6cm、凸状部3の高さ3cmのサイズのアンカー板1を50cm程度土中に挿入した場合、引き抜き抵抗は約200kg発揮し、らせん杭の30%ほど高い引き抜き強度を計測できた。
【0015】
図5に連結体2の後端部に長さ調整部を設けた例を示す。
図示の例では、連結体2の環状の後端部23にさらに調整部25としてターンバックルを設けている。アンカー板1を所定の深さに挿入するが、姿勢変更に伴い連結体の後端の高さが変化するので、調整部を設けることにより簡易構築物との取り付け位置の調整ができる。調整具としては、ターンバックルに限るものではない。
【0016】
図6に押し込み治具5の例を示す。(a)は、押し込み治具5の例であり、下方に底面の拡大を示している。(b)は連結体を省略したアンカー板1のみを示した引き抜き抵抗アンカーを示している。(c)は、アンカー板1の後縁部に押し込み治具5をセットした状態を示している。
押し込み治具5は、棒状部材であって、先端側にアンカー板1の後縁部が挿入できる挿入溝53が形成された爪部51が設けられている。後端部は槌などで打撃する押圧部52となり、膨出させてもよい。
先端の爪部5は別体として押し込み治具の下端に取りつけることもできるが、本例では、押し込み治具の下部に「T」形のT形挿入溝53a、あるいは、十字形の十字形挿入溝53bを設けた例を示している。溝にはアンカー板1の後縁部12と凸状部3がはめ込まれた状態(図6(c)参照)となる。この図6(c)の状態で、地面に立てて、打ち込まれて、土中の所望の位置にアンカー板1が挿入され、押し込み治具5は引き抜かれる。その状態が、図4(a)であり、その後、図4(b)、(c)とアンカー板1は姿勢を変更する。
【0017】
図7に姿勢案内部を設けたアンカー板1の例を示す。
中心線状に凸状部3が設けられたアンカー板1の後縁部12の左右に小片状の姿勢案内部14が設けられている。姿勢案内部14は、凸状部3と反対側に傾斜して設けられており、所望深さに挿入されたアンカー板1を図4に示すように、少し引き上げてアンカー板1を水平方向に姿勢を変更する案内板(舵)の機能を果たす。これにより、垂直になっているアンカー板1が水平方向に付勢されて姿勢が安定することとなる。図6の図示の例では、押し込み治具5のセット場所となる後縁部12の中央部には姿勢案内部14は設けられていないが、十字形挿入溝の場合は、凸状部が挿入されない溝側にも姿勢案内部を設けることができる。
【0018】
図8に本発明の引き抜き抵抗アンカー10を使用する例を示す。
この例は簡易構築物100のパイプハウスを構成する骨組み120に浮き上がり抑えるようにワイヤ110をかけて、左右端をグランドレベルとしている。被覆しているビニールを擦らないようにビニールの内側にワイヤをかけるので、立ち上がっている支柱の内側に引き抜き抵抗アンカー10を設置する。
土中にアンカー板1を挿入して、水平姿勢とし、地上に出ている連結体2の後端部23に設けられた調整部25とワイヤ110を連結して、ターンバックルを締めて、ワイヤ110を緊張させる。簡易構築物のサイズや風の強さなどを考慮して、設けるワイヤ110の数を決定する。
本例では、緊急対応のために補強用ワイヤを設けた例を示したが、ワイヤのほか、図9に示される土台に取りつけるスクリュー杭に代えるあるいは、新たに追加して使用することができる。また、支柱など適宜引き抜きを抑える必要がある箇所に適用することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 板状体のアンカー板
11 アンカー板の先端側
12 アンカー板の後縁部
14 姿勢案内部
10 引き抜き抵抗アンカー
2 連結体
22 連結体の先端部
23 連結体の後端部
24 環状部
25 開口
3 直進案内用の凸状部
31 連結体との接合部
33 穴
35 上辺
35d 肉厚
5 押し込み治具
51 拘束する爪部
52 押圧部
53 挿入溝
100 簡易構築物
110 ワイヤ
120 骨組み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10