(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】排ガス処理装置および排ガス処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/64 20060101AFI20230105BHJP
B01D 53/83 20060101ALI20230105BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20230105BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20230105BHJP
F27D 19/00 20060101ALI20230105BHJP
F23J 15/00 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
B01D53/64 100
B01D53/83 ZAB
F27D17/00 104G
F27D21/00 A
F27D19/00 Z
F23J15/00 J
(21)【出願番号】P 2019183519
(22)【出願日】2019-10-04
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】古林 通孝
(72)【発明者】
【氏名】山本 常平
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-205761(JP,A)
【文献】特開2015-196127(JP,A)
【文献】国際公開第2016/132894(WO,A1)
【文献】特開2004-354067(JP,A)
【文献】特開2019-063765(JP,A)
【文献】特開2017-213499(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043471(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-53/73,53/74-53/85,53/92,53/96
F27D 17/00-99/00
F23J 15/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス処理装置であって、
排ガスが流れる煙道において前記排ガスに水銀吸着剤を供給する吸着剤供給部と、
前記煙道において前記水銀吸着剤を捕集する吸着剤捕集部と、
前記煙道において、前記吸着剤捕集部に対して前記排ガスの流れ方向上流側に配置され、前記排ガスの0価水銀濃度を測定する0価水銀測定状態と、前記排ガス中の2価水銀が還元された0価水銀、および、前記排ガス中に元から含まれる0価水銀の総濃度を全水銀濃度として測定する全水銀測定状態とが切換可能である水銀濃度計と、
前記0価水銀測定状態である前記水銀濃度計の前記0価水銀濃度に基づいて前記吸着剤供給部による前記水銀吸着剤の供給量を制御し、前記0価水銀濃度が第1閾値よりも大きい期間において前記排ガス中の0価水銀の積算量を示す評価値を前記0価水銀濃度に基づいて取得し、前記期間に続いて前記0価水銀濃度が前記第1閾値以下となる際に、前記評価値と第2閾値とを比較し、前記評価値が前記第2閾値よりも大きい場合に、前記水銀濃度計を前記全水銀測定状態に切り換えて、前記全水銀濃度に基づいて前記水銀吸着剤の供給量を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス処理装置であって、
前記制御部が、前記全水銀濃度が第3閾値以下となる場合に、前記全水銀測定状態である前記水銀濃度計を前記0価水銀測定状態に切り換えて、前記0価水銀濃度に基づいて前記水銀吸着剤の供給量を制御することを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の排ガス処理装置であって、
前記煙道において、前記吸着剤捕集部に対して前記排ガスの流れ方向下流側に配置され、前記排ガス中の2価水銀が還元された0価水銀、および、前記排ガス中に元から含まれる0価水銀の総濃度を下流側水銀濃度として測定する下流側水銀濃度計をさらに備え、
前記下流側水銀濃度が第4閾値よりも大きい場合に、前記制御部が、前記水銀吸着剤の供給量の制御を、前記0価水銀濃度または前記全水銀濃度に基づく制御から、少なくとも前記下流側水銀濃度に基づく制御に切り替えることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項4】
排ガス処理装置における排ガス処理方法であって、
前記排ガス処理装置が、
排ガスが流れる煙道において前記排ガスに水銀吸着剤を供給する吸着剤供給部と、
前記煙道において前記水銀吸着剤を捕集する吸着剤捕集部と、
前記煙道において、前記吸着剤捕集部に対して前記排ガスの流れ方向上流側に配置され、前記排ガスの0価水銀濃度を測定する0価水銀測定状態と、前記排ガス中の2価水銀が還元された0価水銀、および、前記排ガス中に元から含まれる0価水銀の総濃度を全水銀濃度として測定する全水銀測定状態とが切換可能である水銀濃度計と、
を備え、
前記排ガス処理方法が、
前記0価水銀測定状態である前記水銀濃度計の前記0価水銀濃度に基づいて前記吸着剤供給部による前記水銀吸着剤の供給量を制御する工程と、
前記0価水銀濃度が第1閾値よりも大きい期間において前記排ガス中の0価水銀の積算量を示す評価値を前記0価水銀濃度に基づいて取得する工程と、
前記期間に続いて前記0価水銀濃度が前記第1閾値以下となる際に、前記評価値と第2閾値とを比較し、前記評価値が前記第2閾値よりも大きい場合に、前記水銀濃度計を前記全水銀測定状態に切り換えて、前記全水銀濃度に基づいて前記水銀吸着剤の供給量を制御する工程と、
を備えることを特徴とする排ガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理装置および排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ等の廃棄物を焼却した場合に、水銀を含む排ガスが発生することがある。この場合、排ガス中の水銀を除去するため、排ガスに水銀吸着剤が供給される。水銀吸着剤の供給量は、水銀濃度に基づいて制御される。一方、排ガスに含まれる水銀は、主に、0価である原子状水銀(以下、「0価水銀」という。)、および、塩化水銀等の水銀化合物を構成する2価の水銀(以下、「2価水銀」という。)として存在している。従来、排ガスに含まれる水銀濃度の測定では、取り込んだ排ガス中の2価水銀を0価水銀に還元し、2価水銀が還元された0価水銀、および、排ガス中に元から含まれる0価水銀(以下、これらの0価水銀をまとめて「全水銀」という。)の総濃度を水銀濃度として検出している。
【0003】
なお、特許文献1では、ガス中の0価水銀(金属水銀)と2価水銀を分別して連続的に測定可能な水銀測定装置が開示されている。当該装置では、第1カラムと第2カラムとが並列に接続される。第1カラムでは、第1固定触媒によりガス中に含まれる2価水銀が捕集され、0価水銀のみが水銀測定器に送られる。第2カラムでは、第2固定触媒によりガス中の2価水銀が0価水銀に還元され、還元された0価水銀と予めガス中に存在する0価水銀とが全水銀(総水銀)として他の水銀測定器に送られる。2つの水銀測定器では、それぞれ0価水銀の濃度および全水銀の濃度が測定され、全水銀の濃度から0価水銀の濃度を減算することにより、2価水銀の濃度が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の水銀測定装置では、2つの濃度取得部(水銀測定器)が必要となるため、装置の製造コストが高くなる。そこで、1つの濃度取得部のみを用い、0価水銀濃度を測定する0価水銀測定状態と、全水銀濃度を測定する全水銀測定状態とを切り換えることが考えられる。このような水銀濃度計では、製造コストを削減することが可能となる。一方、廃棄物等の焼却により発生する排ガスでは、0価水銀濃度が下がった後に全水銀濃度が長時間に亘って高くなる場合がある。この場合、上記水銀濃度計を用いる排ガス処理装置では、0価水銀測定状態である水銀濃度計の0価水銀濃度に基づいて水銀吸着剤の供給量を制御する際に、全水銀濃度を測定することができない。その結果、上記の場合に、排ガスの水銀濃度を適切に低下させることができない。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、排ガスにおいて0価水銀濃度が下がった後に全水銀濃度が長時間に亘って高くなる場合であっても、排ガス処理装置において排ガスの水銀濃度を適切に低下させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、排ガス処理装置であって、排ガスが流れる煙道において前記排ガスに水銀吸着剤を供給する吸着剤供給部と、前記煙道において前記水銀吸着剤を捕集する吸着剤捕集部と、前記煙道において、前記吸着剤捕集部に対して前記排ガスの流れ方向上流側に配置され、前記排ガスの0価水銀濃度を測定する0価水銀測定状態と、前記排ガス中の2価水銀が還元された0価水銀、および、前記排ガス中に元から含まれる0価水銀の総濃度を全水銀濃度として測定する全水銀測定状態とが切換可能である水銀濃度計と、前記0価水銀測定状態である前記水銀濃度計の前記0価水銀濃度に基づいて前記吸着剤供給部による前記水銀吸着剤の供給量を制御し、前記0価水銀濃度が第1閾値よりも大きい期間において前記排ガス中の0価水銀の積算量を示す評価値を前記0価水銀濃度に基づいて取得し、前記期間に続いて前記0価水銀濃度が前記第1閾値以下となる際に、前記評価値と第2閾値とを比較し、前記評価値が前記第2閾値よりも大きい場合に、前記水銀濃度計を前記全水銀測定状態に切り換えて、前記全水銀濃度に基づいて前記水銀吸着剤の供給量を制御する制御部とを備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の排ガス処理装置であって、前記制御部が、前記全水銀濃度が第3閾値以下となる場合に、前記全水銀測定状態である前記水銀濃度計を前記0価水銀測定状態に切り換えて、前記0価水銀濃度に基づいて前記水銀吸着剤の供給量を制御する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の排ガス処理装置であって、前記煙道において、前記吸着剤捕集部に対して前記排ガスの流れ方向下流側に配置され、前記排ガス中の2価水銀が還元された0価水銀、および、前記排ガス中に元から含まれる0価水銀の総濃度を下流側水銀濃度として測定する下流側水銀濃度計をさらに備え、前記下流側水銀濃度が第4閾値よりも大きい場合に、前記制御部が、前記水銀吸着剤の供給量の制御を、前記0価水銀濃度または前記全水銀濃度に基づく制御から、少なくとも前記下流側水銀濃度に基づく制御に切り替える。
【0010】
請求項4に記載の発明は、排ガス処理装置における排ガス処理方法であって、前記排ガス処理装置が、排ガスが流れる煙道において前記排ガスに水銀吸着剤を供給する吸着剤供給部と、前記煙道において前記水銀吸着剤を捕集する吸着剤捕集部と、前記煙道において、前記吸着剤捕集部に対して前記排ガスの流れ方向上流側に配置され、前記排ガスの0価水銀濃度を測定する0価水銀測定状態と、前記排ガス中の2価水銀が還元された0価水銀、および、前記排ガス中に元から含まれる0価水銀の総濃度を全水銀濃度として測定する全水銀測定状態とが切換可能である水銀濃度計とを備え、前記排ガス処理方法が、前記0価水銀測定状態である前記水銀濃度計の前記0価水銀濃度に基づいて前記吸着剤供給部による前記水銀吸着剤の供給量を制御する工程と、前記0価水銀濃度が第1閾値よりも大きい期間において前記排ガス中の0価水銀の積算量を示す評価値を前記0価水銀濃度に基づいて取得する工程と、前記期間に続いて前記0価水銀濃度が前記第1閾値以下となる際に、前記評価値と第2閾値とを比較し、前記評価値が前記第2閾値よりも大きい場合に、前記水銀濃度計を前記全水銀測定状態に切り換えて、前記全水銀濃度に基づいて前記水銀吸着剤の供給量を制御する工程とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、排ガスにおいて0価水銀濃度が下がった後に全水銀濃度が長時間に亘って高くなる場合であっても、排ガス処理装置において排ガスの水銀濃度を適切に低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】0価水銀測定状態における上流側水銀濃度計を示す図である。
【
図4】全水銀測定状態における上流側水銀濃度計を示す図である。
【
図5】0価水銀濃度および全水銀濃度の変化を示す図である。
【
図6】0価水銀濃度および全水銀濃度の変化を示す図である。
【
図7】排ガス処理装置における排ガス処理の流れを示す図である。
【
図8】排ガス処理装置における排ガス処理の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る焼却設備1の構成を示す図である。焼却設備1は、都市ごみ等の廃棄物を焼却処理する設備である。焼却設備1は、焼却炉21と、煙道3と、排ガス処理装置4と、煙突22とを備える。焼却炉21では、廃棄物の燃焼と、廃棄物から発生した可燃性ガスの燃焼とが行われる。煙道3は、焼却炉21と煙突22とを接続するガス流路である。
図1では、煙道3を太い実線にて示している。排ガス処理装置4は、煙道3に設けられる。煙道3には、図示省略の誘引通風機も設けられる。当該誘引通風機により、焼却炉21にて発生する排ガス(燃焼ガス)が煙道3へと排出され、排ガス処理装置4を介して煙突22へと導かれる。焼却設備1では、焼却炉21を発生源とする排ガスが、焼却炉21から煙突22に向かって煙道3内を流れつつ、排ガス処理装置4により排ガスに対して所定の処理が行われる。煙道3では、脱硝装置等も設けられてもよい。以下の説明では、煙突22の内部も煙道3の一部と捉えられるものとする。
【0014】
排ガス処理装置4は、制御部40と、吸着剤供給部41と、バグフィルタ42と、上流側水銀濃度計45と、下流側水銀濃度計46とを備える。制御部40は、例えば、CPU等を備えるコンピュータであり、排ガス処理装置4の全体制御を担う。制御部40は、焼却設備1の制御部を兼ねてもよい。バグフィルタ42は、煙道3に設けられる。煙道3では、バグフィルタ42よりも上流側(焼却炉21側)に、上流側水銀濃度計45の取込口、および、吸着剤供給部41の供給口が設けられ、バグフィルタ42よりも下流側(煙突22側)に、下流側水銀濃度計46の取込口が設けられる。
図1では、下流側水銀濃度計46の取込口は、煙突22に設けられる。
【0015】
上流側水銀濃度計45は、煙道3を流れる排ガスに含まれる水銀濃度を測定する。上流側水銀濃度計45の詳細については後述する。吸着剤供給部41は、例えばテーブルフィーダ等を有し、煙道3を流れる排ガスに粉状の水銀吸着剤を供給する(吹き込む)。水銀吸着剤は、例えば活性炭である。水銀吸着剤として、活性炭の表面に例えばヨウ素や硫黄を添着した添着活性炭等が用いられてもよい。排ガス処理装置4では、バグフィルタ42よりも上流側において、排ガスにアルカリ薬剤を供給するアルカリ薬剤供給部が設けられてもよい。アルカリ薬剤は、脱塩および脱硫用の薬剤であり、例えば粉状の消石灰等である。
【0016】
バグフィルタ42は、ろ過式であり、排ガスに含まれる飛灰をろ布により捕集する。また、吸着剤供給部41により供給される水銀吸着剤も、ろ布に捕集される。飛灰および水銀吸着剤は、ろ布上に堆積する。バグフィルタ42は、煙道3において水銀吸着剤を捕集する吸着剤捕集部である。バグフィルタ42の内部では、排ガスがろ布を通過する際に、当該ろ布に堆積する水銀吸着剤が排ガスに含まれる水銀を吸着する。水銀吸着剤における水銀の吸着は、煙道3においても生じる。水銀吸着剤が、排ガスに含まれるダイオキシン類等をさらに吸着してもよい。なお、既述のアルカリ薬剤が供給される場合には、当該アルカリ薬剤もろ布に捕集される。排ガスに含まれる酸性ガス(塩化水素、硫黄酸化物等)とろ布上のアルカリ薬剤との反応が生じることにより、排ガスから当該酸性ガスが除去される。
【0017】
バグフィルタ42では、ろ布に堆積した飛灰および水銀吸着剤等が、圧縮ガスを利用した逆洗動作により、払い落とされる。逆洗動作では、排ガスの流れ方向における下流側から上流側に向かって、ろ布に対して圧縮ガス(パルスジェット)が供給される。圧縮ガスは、例えば圧縮空気である。実際のバグフィルタ42では、複数のろ布群が設けられており、上記逆洗動作は、各ろ布群に対して個別に行われる。排ガス処理における後述の通常時には、複数のろ布群に対して逆洗動作が設定周期にて順に実行される。ろ布から払い落とされた飛灰および水銀吸着剤等、すなわち、バグフィルタ42による捕集物は、図示省略の排出処理部に排出される。排出処理部では、捕集物に対してキレート処理等が必要に応じて施される。
【0018】
図2は、上流側水銀濃度計45の構成を示す図である。上流側水銀濃度計45は、第1取込口51と、第2取込口52と、還元部53と、濃度取得部54と、切替部55とを備える。切替部55は、第1流路551と、第2流路552と、3個の三方弁553~555と、第1補助流路556と、第2補助流路557とを備える。第1取込口51および第2取込口52は、煙道3に取り付けられる。第1取込口51は、第1流路551により濃度取得部54に接続される。第2取込口52は、第2流路552により濃度取得部54に接続される。詳細には、濃度取得部54の近傍において、第1流路551および第2流路552は三方弁555を介して合流し、1つの流路となる。濃度取得部54は、紫外線吸収法等により、0価水銀(金属水銀)に基づいて水銀濃度の測定値を取得する。水銀濃度の測定値は、制御部40に出力される。
【0019】
第1流路551では、第1取込口51から三方弁555に向かって順に、フィルタ591、還元部53および三方弁553が設けられる。フィルタ591は、第1取込口51から取り込まれた排ガス(サンプリングガス)に含まれる飛灰を除去する。還元部53は、2価水銀を0価水銀に還元する還元触媒を含む。還元部53は、加熱部531により所定の温度(例えば350~400℃)に常時加熱される。還元部53には、塩化水素等を除去するスクラバが設けられてもよい。三方弁553には、第1補助流路556の一端が接続される。第1補助流路556の他端は、第1取込口51よりも下流側において煙道3に接続される。三方弁553では、第1流路551を流れるガスの経路が、三方弁555に向かう流路と、第1補助流路556とで切り替えられる。
【0020】
第2流路552では、第2取込口52から三方弁555に向かって順に、フィルタ592および三方弁554が設けられる。フィルタ592は、第2取込口52から取り込まれた排ガスに含まれる飛灰を除去する。三方弁554には、第2補助流路557の一端が接続される。第2補助流路557の他端は、第2取込口52よりも下流側において煙道3に接続される。三方弁554では、第2流路552を流れるガスの経路が、三方弁555に向かう流路と、第2補助流路557とで切り替えられる。
【0021】
上流側水銀濃度計45では、煙道3を流れる排ガスに含まれる0価水銀の濃度(以下、「0価水銀濃度」という。)の測定と、当該排ガスに含まれる0価水銀および2価水銀の総濃度(以下、「全水銀濃度」という。)の測定とを選択的に行うことが可能である。換言すると、0価水銀濃度を測定する0価水銀測定状態と、全水銀濃度を測定する全水銀測定状態とが切換可能である。以下、上流側水銀濃度計45における0価水銀測定状態および全水銀測定状態について説明する。
【0022】
図3は、0価水銀測定状態における上流側水銀濃度計45を示す図であり、
図4は、全水銀測定状態における上流側水銀濃度計45を示す図である。
図3および
図4では、各三方弁553~555を示す3個の三角のうち、2個の三角を塗りつぶすことにより、当該三方弁553~555により接続される流路を示している。
【0023】
0価水銀測定状態では、
図3に示すように、第1取込口51から取り込まれて第1流路551を流れる排ガスが、三方弁553により第1補助流路556に導かれ、煙道3へと戻される。また、第2取込口52から取り込まれて第2流路552を流れる排ガスが、三方弁554により三方弁555側へと導かれ、さらに三方弁555により濃度取得部54に導かれる。これにより、濃度取得部54では、排ガスに含まれる2価水銀を0価水銀に還元しない状態で、排ガスに元から含まれる0価水銀の濃度(すなわち、0価水銀濃度)の測定値が取得される。このように、0価水銀測定状態では、0価水銀は検出されるが、2価水銀は検出されない。したがって、2価水銀を0価水銀に還元するために要する時間を省略して、水銀濃度の測定値を迅速に取得することが可能となる。
【0024】
全水銀測定状態では、
図4に示すように、第2流路552を流れる排ガスが、三方弁554により第2補助流路557に導かれ、煙道3へと戻される。また、第1流路551を流れる排ガスが、三方弁553により三方弁555側へと導かれ、さらに三方弁555により濃度取得部54に導かれる。これにより、濃度取得部54では、排ガス中の2価水銀が還元された0価水銀、および、排ガス中に元から含まれる0価水銀の総濃度(すなわち、全水銀濃度)の測定値が取得される。このように、全水銀測定状態では、0価水銀および2価水銀の双方が検出されるため、水銀濃度の測定値を正確に取得することが可能となる。
【0025】
既述のように、第1取込口51で取り込まれた排ガスは、全水銀測定状態のみならず、0価水銀測定状態においても還元部53に流入する。すなわち、排ガスが煙道3を流れる間、常時、排ガスが還元部53に流入する。したがって、0価水銀測定状態から全水銀測定状態に切り替えた直後に、濃度取得部54では、全水銀濃度の測定値を安定して取得することが可能である。同様に、第2取込口52で取り込まれた排ガスは、0価水銀測定状態のみならず、全水銀測定状態においても第2流路552に流入する。したがって、排ガスにより第2流路552を常時暖めることができ、全水銀測定状態から0価水銀測定状態に切り替えた直後に、0価水銀濃度の測定値が不安定となることが防止または抑制される。
【0026】
図1の下流側水銀濃度計46は、バグフィルタ42よりも下流側において、排ガス中の全水銀濃度、すなわち、排ガス中の2価水銀が還元された0価水銀、および、排ガス中に元から含まれる0価水銀の総濃度を測定する。下流側水銀濃度計46は、例えば、
図2の上流側水銀濃度計45において、第2流路552、第1補助流路556および第2補助流路557を省略した構成を有する。下流側水銀濃度計46による測定値は、制御部40に出力される。既述のように、
図1の例では、下流側水銀濃度計46の取込口は、煙突22に設けられる。以下の説明では、下流側水銀濃度計46により測定される全水銀濃度を「下流側水銀濃度」という。
【0027】
図5および
図6は、排ガス中の0価水銀濃度および全水銀濃度の変化を示す図である。ここでは、上流側水銀濃度計45ではなく、0価水銀濃度測定用の水銀濃度計、および、全水銀濃度測定用の水銀濃度計、すなわち、2つの水銀濃度計を用いて、バグフィルタ42よりも上流側における排ガスの水銀濃度を測定した。
図5および
図6では、0価水銀濃度を実線L1,L3で示し、全水銀濃度を破線L2,L4で示している。また、
図5では、4時間の濃度変化を示し、
図6では、1時間の濃度変化を示している。
【0028】
上記2つの水銀濃度計を用いた測定により、0価水銀濃度および全水銀濃度の変化が、第1パターンと第2パターンとに分類されることが確認された。第1パターンでは、
図5に示すように、0価水銀濃度の線L1においてシャープな凸部P1が検出された後、全水銀濃度の線L2においてブロードな凸部P2が検出される。第2パターンでは、
図6に示すように、0価水銀濃度の線L3においてシャープな凸部P3が検出された後、全水銀濃度の線L4では、
図5の凸部P2のようなブロードな凸部は検出されない。また、後述するように、凸部P1,P3に対して、その高さおよび幅に相当する0価水銀濃度および期間等に基づいて0価水銀の積算量を算出した場合、第1パターンにおける凸部P1に対応する0価水銀の積算量は、第2パターンにおける凸部P3に対応する0価水銀の積算量よりも十分に大きくなる。0価水銀の積算量の算出については後述する。なお、既述のように、
図5および
図6の横軸のスケールは相違する。
【0029】
後述するように、排ガス処理における通常時には、0価水銀濃度に基づいて吸着剤供給部41による水銀吸着剤の供給量が制御される。すなわち、0価水銀濃度が比較的高い場合に、水銀吸着剤の供給量が増大され、0価水銀濃度が比較的低い場合に、水銀吸着剤の供給量が減少される。したがって、第1パターンおよび第2パターンのいずれにおいても、0価水銀濃度のシャープな凸部P1,P3に合わせて水銀吸着剤の供給量が増大され、0価水銀濃度が小さくなると、水銀吸着剤の供給量が減少される。
【0030】
このとき、
図6に示す第2パターンでは、0価水銀濃度が小さくなった後、全水銀濃度も小さくなるため、水銀吸着剤の供給量を増大しなくても、バグフィルタ42を通過する排ガスの水銀濃度を適切に低下させることが可能となる。これに対し、
図5に示す第1パターンでは、0価水銀濃度が小さくなった後、全水銀濃度が長時間に亘って大きくなるため、水銀吸着剤の供給量を増大しない場合、バグフィルタ42を通過する排ガスの水銀濃度を適切に低下させることができない。また、既述のように実際の排ガス処理装置4では、上流側水銀濃度計45において0価水銀測定状態と全水銀測定状態とを切り換えるため、0価水銀測定状態である上流側水銀濃度計45の0価水銀濃度に基づいて水銀吸着剤の供給量を制御する際に、全水銀濃度を測定することができない。したがって、全水銀濃度の測定による第1パターンの検出が不可能である。以下、第1パターンおよび第2パターンの双方において、排ガスの水銀濃度を適切に低下させることが可能な、排ガス処理装置4における排ガス処理について説明する。
【0031】
図7は、排ガス処理装置4における排ガス処理の流れを示す図である。以下の説明における排ガス処理は、吸着剤供給部41による水銀吸着剤の供給量を制御して、排ガスの水銀濃度を低下させる処理である。排ガス処理装置4では、原則として、上流側水銀濃度計45による水銀濃度(0価水銀濃度または全水銀濃度)の測定、および、下流側水銀濃度計46による下流側水銀濃度の測定が継続的に行われる。
図7では、上流側水銀濃度計45のみを用いた制御を示しており、上流側水銀濃度計45および下流側水銀濃度計46を用いた制御については後述する。以下、単に「全水銀濃度」という場合は、上流側水銀濃度計45により測定される全水銀濃度を意味するものとする。
【0032】
排ガス処理における通常時には、0価水銀測定状態である上流側水銀濃度計45において0価水銀濃度が測定されており、制御部40では、0価水銀濃度(の測定値)に基づいて吸着剤供給部41による水銀吸着剤の供給量が制御される(後述のステップS18参照)。以下の説明では、0価水銀濃度に基づく水銀吸着剤の供給量の制御を、単に「0価水銀濃度に基づく制御」という(後述の全水銀濃度に基づく制御、および、下流側水銀濃度に基づく制御も同様である。)。0価水銀濃度に基づく制御では、例えば、0価水銀濃度が比較的高い場合に、水銀吸着剤の供給量が増大され、0価水銀濃度が比較的低い場合に、水銀吸着剤の供給量が減少される。なお、水銀吸着剤が活性炭である場合、活性炭はダイオキシン類も吸着するため、排ガスが煙道3を流れる間、所定量以上の水銀吸着剤が煙道3に常時供給されることが好ましい。
【0033】
ここで、水銀吸着剤による水銀の吸着は、主としてバグフィルタ42において生じる。また、0価水銀濃度に基づく制御では、バグフィルタ42よりも下流側で得られる下流側水銀濃度は用いられず、バグフィルタ42よりも上流側で得られる0価水銀濃度が用いられる。したがって、0価水銀濃度に基づく制御は、フィードフォワード制御(FF制御)であるといえる。後述する全水銀濃度に基づく制御において同様である。
【0034】
既述のように、0価水銀測定状態では、2価水銀の還元に起因するタイムラグが生じない。これにより、0価水銀濃度に基づく制御では、第2取込口52の近傍を流れる排ガスにおける、0価水銀濃度の変化に迅速に対応して、すなわち、応答性よく水銀吸着剤の供給量を制御することが可能となる。制御部40において、制御に用いられる0価水銀濃度は、一定時間における移動平均等であってもよい(全水銀濃度および下流側水銀濃度において同様)。
【0035】
制御部40では、0価水銀濃度に基づく制御に並行して、0価水銀濃度が所定の第1閾値と比較される。第1閾値は、例えば10~50μg/m3N(酸素12%換算)である。水銀を多く含む廃棄物の焼却等により、0価水銀濃度が第1閾値よりも大きくなると(ステップS11)、排ガス中の0価水銀の量の積算が開始される(ステップS12)。0価水銀の量の積算は、例えば、一定の時間ΔH[h]毎に行われる。制御部40には、0価水銀濃度の値A[μg/m3N]、および、排ガスの流量B[m3N/h]が常時入力されており、0価水銀の量の積算では、Σ(A×B×ΔH)により積算開始時から現在までの0価水銀の積算量が求められる。0価水銀の積算量は、後述の判定に利用される評価値である。0価水銀の量の積算は、0価水銀濃度に基づく制御に並行して行われる。
【0036】
0価水銀濃度が第1閾値以下となると(ステップS13)、評価値が、所定の第2閾値と比較される。典型的には、評価値は、0価水銀の積算量そのものであり、既述のようにその積算期間は、0価水銀濃度が第1閾値よりも大きくなった時から第1閾値以下となる直前までの期間、すなわち、0価水銀濃度が第1閾値よりも大きい期間である。第2閾値は、ごみ処理量が100t/日では、例えば0.5~2gである。第2閾値は、焼却設備のごみ処理量に比例して変更される。評価値は、上記期間の全体における0価水銀の積算量以外であってもよく、後述するように、0価水銀濃度の変化が、第1パターンまたは第2パターンのいずれを示すかを判定することが可能であるならば、上記期間の一部における積算量であってもよい。また、評価値は、0価水銀の積算量と相関関係がある他の値であってもよい。このように、評価値は、0価水銀濃度が第1閾値よりも大きい期間の少なくとも一部を含む積算期間において、排ガス中の0価水銀の積算量を示す値であればよい。以下の説明では、評価値が上記期間の全体における0価水銀の積算量であるものとする。
【0037】
評価値(ここでは、0価水銀の積算量)が第2閾値以下である場合には(ステップS14)、0価水銀の積算量が、0に戻され、リセットされる(ステップS15)。また、ステップS11に戻って、0価水銀濃度が第1閾値と比較される。このとき、0価水銀濃度は第1閾値以下であるため、水銀吸着剤の供給量も比較的少なくなっている。後述するように、上記第2閾値は、当該評価値が得られた0価水銀濃度の変化が、第1パターンまたは第2パターンのいずれを示すかを判定するためのものであり、評価値が第2閾値以下である場合には、0価水銀濃度の変化が第2パターンを示すものであると推測される。第2パターンでは、
図6に示すように、0価水銀濃度が小さくなった後、全水銀濃度も小さくなる。したがって、0価水銀濃度に基づく制御を継続しても、排ガスの水銀濃度を適切に低下させることが可能となる。
【0038】
一方、評価値が第2閾値よりも大きい場合には(ステップS14)、上流側水銀濃度計45が全水銀測定状態に切り替えられる。これにより、水銀吸着剤の供給量の制御が、0価水銀濃度に基づく制御から、全水銀濃度に基づく制御に切り替えられる(ステップS16)。全水銀濃度に基づく制御では、全水銀濃度に基づいて水銀吸着剤の供給量が制御される。したがって、全水銀濃度が比較的高い場合に、水銀吸着剤の供給量が増大され、全水銀濃度が比較的低い場合に、水銀吸着剤の供給量が減少される。
【0039】
既述のように、第1パターンにおける凸部P1に対応する0価水銀の積算量は、第2パターンにおける凸部P3に対応する0価水銀の積算量よりも十分に大きい。排ガス処理装置4では、0価水銀の積算量を示す評価値と比較することにより、当該評価値が得られた0価水銀濃度の変化が、第1パターンまたは第2パターンのいずれを示すかを判定するための第2閾値が予め設定されている。評価値が第2閾値よりも大きい場合には、0価水銀濃度の変化が第1パターンを示すものであると推測される。第1パターンでは、
図5に示すように、0価水銀濃度が小さくなった後、全水銀濃度が長時間に亘って大きくなるが、排ガス処理装置4では、全水銀濃度に基づいて水銀吸着剤の供給量を制御することにより、排ガスの水銀濃度を適切に低下させることが可能となる。また、全水銀測定状態では、正確な水銀濃度が得られるため、全水銀濃度に基づく制御では、水銀吸着剤の供給量を過不足を少なく制御することが可能となる。
【0040】
制御部40では、全水銀濃度に基づく制御に並行して、全水銀濃度が所定の第3閾値と比較される。第3閾値は、例えば50~200μg/m3N(酸素12%換算)である。典型的には、第3閾値は、第1閾値よりも大きい。全水銀濃度が第3閾値よりも大きい場合には(ステップS17)、全水銀濃度に基づく制御が継続される。全水銀濃度が第3閾値以下となると(ステップS17)、上流側水銀濃度計45が、全水銀測定状態から0価水銀測定状態に切り替えられる。これにより、水銀吸着剤の供給量の制御が、全水銀濃度に基づく制御から、0価水銀濃度に基づく制御に切り替えられ、通常時の制御に戻される(ステップS18)。
【0041】
このとき、バグフィルタ42では、ろ布上の水銀吸着剤が多くの水銀を吸着しているため、通常時における設定周期よりも短周期での逆洗動作が行われることが好ましい。これにより、ろ布上の水銀吸着剤から水銀が脱離して下流側水銀濃度が高くなることが抑制される。また、バグフィルタ42の上流側における水銀濃度(全水銀濃度)が低くなっていることにより、逆洗動作により水銀吸着剤が堆積していないろ布を水銀濃度が高い排ガスが通過することによる下流側水銀濃度の上昇が抑制される。
【0042】
制御部40では、0価水銀の積算量がリセットされる(ステップS15)。そして、ステップS11に戻って、0価水銀濃度が第1閾値と比較される。排ガス処理装置4では、排ガスが煙道3を流れている間、
図7の処理が継続して行われる。
【0043】
以上に説明したように、排ガス処理装置4の上流側水銀濃度計45では、0価水銀測定状態と全水銀測定状態とが切換可能とされる。これにより、1つの濃度取得部54を用いて0価水銀濃度と全水銀濃度とを選択的に測定することができるとともに、上流側水銀濃度計45の製造コストを削減することができる。排ガス処理装置4による排ガス処理では、通常時には、0価水銀測定状態である上流側水銀濃度計45の0価水銀濃度に基づいて水銀吸着剤の供給量が制御される。また、0価水銀濃度が第1閾値よりも大きい期間において、排ガス中の0価水銀の積算量を示す評価値が0価水銀濃度に基づいて取得される。当該期間に続いて、0価水銀濃度が第1閾値以下となる際には、評価値と第2閾値とが比較される。そして、当該評価値が第2閾値よりも大きい場合に、上流側水銀濃度計45が全水銀測定状態に切り換えられ、全水銀濃度に基づいて水銀吸着剤の供給量が制御される。これにより、排ガスにおいて0価水銀濃度が下がった後に全水銀濃度が長時間に亘って高くなる場合(
図5の第1パターン参照)であっても、排ガス処理装置4において排ガスの水銀濃度を適切に低下させることができる。
【0044】
また、全水銀濃度が第3閾値以下となる場合に、全水銀測定状態である上流側水銀濃度計45が0価水銀測定状態に切り換えられ、0価水銀濃度に基づいて水銀吸着剤の供給量が制御される。これにより、全水銀濃度が低くなった後、0価水銀濃度に基づく制御に戻して、応答性よく水銀吸着剤の供給量を制御することが可能となる。
【0045】
次に、上流側水銀濃度計45および下流側水銀濃度計46を用いた制御について説明する。
図8は、排ガス処理装置4における排ガス処理の他の例を示す図である。
図8中のステップS19~S21は、
図7中のステップS17とステップS18との間に行われる処理である。以下、ステップS16において、水銀吸着剤の供給量の制御が、0価水銀濃度に基づく制御から、全水銀濃度に基づく制御に切り替えられた後の処理について説明する。
【0046】
制御部40では、全水銀濃度に基づく制御に並行して、全水銀濃度が第3閾値と比較される。全水銀濃度が第3閾値以下となると(ステップS17)、下流側水銀濃度計46により得られる下流側水銀濃度が所定の第4閾値と比較される。第4閾値は、例えば20~50μg/m
3N(酸素12%換算)である。ここで、0価水銀濃度に基づく制御、および、全水銀濃度に基づく制御では、水銀吸着剤の供給により、通常、下流側水銀濃度は低い状態が保たれる。下流側水銀濃度が第4閾値以下である、すなわち、下流側水銀濃度が低い状態が保たれている場合には(ステップS19)、上流側水銀濃度計45が全水銀測定状態から0価水銀測定状態に切り替えられる。これにより、水銀吸着剤の供給量の制御が、全水銀濃度に基づく制御から、0価水銀濃度に基づく制御に切り替えられ、通常時の制御に戻される(ステップS18)。なお、
図7の処理と同様に、ステップS17において全水銀濃度が第3閾値以下となった際に、バグフィルタ42において通常時における設定周期よりも短周期での逆洗動作が行われてもよい。
【0047】
一方、バグフィルタ42のろ布上の水銀吸着剤が多くの水銀を含み、当該水銀吸着剤から水銀が脱離している場合等には、下流側水銀濃度と第4閾値との比較において、下流側水銀濃度が第4閾値よりも大きくなる(ステップS19)。この場合、制御部40において、水銀吸着剤の供給量の制御が、全水銀濃度に基づく制御から、下流側水銀濃度に基づく制御に切り替えられる(ステップS20)。下流側水銀濃度に基づく制御では、下流側水銀濃度が比較的高い場合に、水銀吸着剤の供給量が増大され、下流側水銀濃度が比較的低い場合に、水銀吸着剤の供給量が減少される。
【0048】
下流側水銀濃度に基づく制御では、バグフィルタ42よりも上流側で得られる0価水銀濃度または全水銀濃度は用いられず、バグフィルタ42よりも下流側で得られる下流側水銀濃度が用いられる。したがって、下流側水銀濃度に基づく制御は、フィードバック制御(FB制御)であるといえる。下流側水銀濃度に基づく制御により、大気に排出される排ガスの水銀濃度を、より確実に低くすることが可能となる。なお、下流側水銀濃度に基づく制御への切替に伴って、上流側水銀濃度計45が、全水銀測定状態から0価水銀測定状態に切り替えられてもよい。
【0049】
バグフィルタ42の上流側の水銀濃度(0価水銀濃度または全水銀濃度)を用いたフィードフォワード制御から、下流側の水銀濃度(下流側水銀濃度)を用いたフィードバック制御への切替は、操作者により手動で行われてもよい。例えば、全水銀濃度に基づく制御の際に、全水銀濃度が第3閾値以下となり、かつ、下流側水銀濃度が第4閾値よりも大きい場合に(ステップS17,S19)、制御部40により、フィードバック制御への切替を促す報知が操作者に対して行われる。切替を促す報知は、例えばディスプレイへの表示、音声の出力等により行われる。排ガス処理装置4では、フィードフォワード制御からフィードバック制御への切替を指示する切替スイッチが設けられており、操作者が、切替を促す報知に応じて切替スイッチを操作することにより、フィードフォワード制御からフィードバック制御への切替が行われる(ステップS20)。
【0050】
下流側水銀濃度に基づく制御において、上流側水銀濃度計45により得られる水銀濃度(0価水銀濃度または全水銀濃度)が用いられてもよい。すなわち、ステップS20では、フィードフォワード制御から、フィードフォワード制御およびフィードバック制御を併用した制御に切り替えられてもよい。両者を併用した制御への切替も、手動により行われてよい。
【0051】
制御部40では、下流側水銀濃度が所定の第5閾値と比較される。第5閾値は、例えば20~50μg/m3N(酸素12%換算)である。第5閾値は、第4閾値と同じであってもよい。下流側水銀濃度が第5閾値よりも大きい場合には(ステップS21)、下流側水銀濃度に基づく水銀吸着剤の供給量の制御が継続される。下流側水銀濃度が第5閾値以下となった場合には(ステップS21)、水銀吸着剤の供給量の制御が、下流側水銀濃度に基づく制御から、0価水銀濃度に基づく制御に切り替えられる(ステップS18)。すなわち、排ガス処理装置4における通常時の制御に戻される。
【0052】
以上に説明したように、
図8の排ガス処理では、下流側水銀濃度が第4閾値よりも大きい場合に、制御部40において、水銀吸着剤の供給量の制御が、全水銀濃度に基づく制御から、下流側水銀濃度に基づく制御に切り替えられる。これにより、大気に排出される排ガスの水銀濃度を、より確実に低くすることが可能となる。
【0053】
図8の排ガス処理では、全水銀濃度に基づく制御から下流側水銀濃度に基づく制御に切り替えられるが、0価水銀濃度もしくは全水銀濃度に基づく制御中に下流側水銀濃度が第4閾値よりも大きくなる場合に、水銀吸着剤の供給量の制御が、下流側水銀濃度に基づく制御に切り替えられてもよい。また、既述のように、下流側水銀濃度に基づく制御において、下流側水銀濃度のみならず、0価水銀濃度または全水銀濃度が用いられてもよい。以上のように、排ガス処理装置4では、下流側水銀濃度が第4閾値よりも大きい場合に(例えば、0価水銀濃度および全水銀濃度が所定の閾値以下であり、かつ、下流側水銀濃度が第4閾値よりも大きい場合に)、水銀吸着剤の供給量の制御が、0価水銀濃度または全水銀濃度に基づく制御から、少なくとも下流側水銀濃度に基づく制御に切り替えられることが好ましい。これにより、大気に排出される排ガスの水銀濃度をより確実に低くすることが実現される。
【0054】
上記排ガス処理装置4では様々な変形が可能である。
【0055】
図1の排ガス処理装置4では、焼却炉21と吸着剤供給部41との間に、他のバグフィルタが配置されてもよい。この場合、当該他のバグフィルタにより、排ガスに含まれる飛灰が捕集され、バグフィルタ42では、吸着剤供給部41により煙道3に供給された水銀吸着剤(アルカリ薬剤も供給する場合、水銀吸着剤およびアルカリ薬剤)が主として捕集される。
【0056】
煙道3では、上流側水銀濃度計45の取込口が、バグフィルタ42に対して排ガスの流れ方向上流側における任意の位置に配置されてよい。また、下流側水銀濃度計46の取込口が、バグフィルタ42に対して排ガスの流れ方向下流側における任意の位置に配置されてよい。
【0057】
排ガス処理装置4は、焼却設備1以外の設備において用いられてもよい。
【0058】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。また、文中の数値は日本に合わせた規制値であり、他の国に適用する場合はその国の規制値に対応させる必要がある。
【符号の説明】
【0059】
3 煙道
4 排ガス処理装置
40 制御部
41 吸着剤供給部
42 バグフィルタ
45 上流側水銀濃度計
46 下流側水銀濃度計
S11~S21 ステップ