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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】切断装置、及び、切断品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 55/02 20060101AFI20230105BHJP
   B26D 1/15 20060101ALI20230105BHJP
   B26D 7/00 20060101ALI20230105BHJP
   B28D 1/24 20060101ALI20230105BHJP
   B28D 7/02 20060101ALI20230105BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20230105BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
B24B55/02 D
B26D1/15
B26D7/00 A
B28D1/24
B28D7/02
B24B27/06 J
H01L21/78 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019207752
(22)【出願日】2019-11-18
(65)【公開番号】P2021079474
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】坂上 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】堀 聡子
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-042009(JP,A)
【文献】特開2007-111840(JP,A)
【文献】特開2016-209998(JP,A)
【文献】独国実用新案第202006017778(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B55/02
B24B27/06
B26D1/15
B26D7/00
B28D1/24
B28D7/02
H01L21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断対象物が載置されるように構成された切断テーブルと、
前記切断テーブルに加工液を供給するように構成された加工液供給部と、
前記切断対象物が前記加工液に浸漬された状態で、前記切断テーブルに対して相対的に移動させることで、前記切断対象物を切断するように構成された切断機構と、
を備え、
前記切断機構は、
ブレードと、
前記ブレードを回転させるように構成された回転機構と、
前記ブレードの前記切断対象物側の先端と前記ブレードの回転軸との間に設けられた遮断板とを含み、
前記遮断板は、前記移動方向の前後の端部において前記切断機構に固定されており、
前記切断機構は、前記ブレードを挟むことによって前記ブレードを固定する一対のフランジをさらに含み、
前記遮断板は、前記フランジの前記切断対象物側の先端と、前記ブレードの回転軸との間に設けられる、切断装置。
【請求項2】
前記切断機構は、前記ブレードに向かって前記加工液を噴射するように構成された加工液噴射部をさらに含む、請求項に記載の切断装置。
【請求項3】
前記加工液噴射部は、前記切断対象物側と反対側の先端から前記切断対象物側の先端に向かって前記ブレードが回転する領域の少なくとも一部に前記加工液を掛けるように構成されている、請求項に記載の切断装置。
【請求項4】
前記遮断板は、
前記切断対象物側と反対側の先端から前記切断対象物側の先端に向かって前記ブレードが回転する領域の少なくとも一部において、前記ブレードの刃と対向する一方、
前記切断対象物側の先端から前記切断対象物側と反対側の先端に向かって前記ブレードが回転する領域において、前記ブレードの刃と対向しない、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の切断装置。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の切断装置を用いた、切断品の製造方法であって、
前記切断対象物を前記切断テーブル上に載置するステップと、
前記切断テーブルに前記加工液を供給するステップと、
前記切断対象物が前記加工液に浸漬された状態で、前記切断機構により前記切断対象物を切断することによって切断品を製造するステップと、
を含む、切断品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断装置、及び、切断品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-117091号公報(特許文献1)は、被加工物を切削する切削装置を開示する。この切削装置においては、チャックテーブルに保持された被加工物が切削水に浸漬された状態で、切削ブレードによる被加工物の切削が行なわれる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-117091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている切削装置においては、切削ブレードが回転すると、切削ブレードの回転に起因した空気の流れによって、切削ブレードの周りから切削水(加工液)が逃げる。その結果、切削ブレードの回転時にブレードと加工液とが十分に接触しないという事態が生じ得る。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、ブレード回転時にブレードと加工液とが十分に接触する切断装置、及び、切断品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある局面に従う切断装置は、切断テーブルと、加工液供給部と、切断機構とを備える。切断テーブルは、切断対象物が載置されるように構成されている。加工液供給部は、切断テーブルに加工液を供給するように構成されている。切断機構は、切断対象物が加工液に浸漬された状態で、切断対象物を切断するように構成されている。切断機構は、ブレードと、回転機構と、遮断板とを含む。回転機構は、ブレードを回転させるように構成されている。遮断板は、ブレードの切断対象物側の先端とブレードの回転軸との間に設けられている。
【0007】
本発明の他の局面に従う切断品の製造方法は、切断対象物を切断テーブル上に載置するステップと、切断テーブルに加工液を供給するステップと、切断対象物が加工液に浸漬された状態で、切断機構により切断対象物を切断することによって切断品を製造するステップとを含む。切断機構は、ブレードと、回転機構と、遮断板とを含む。回転機構は、ブレードを回転させるように構成されている。遮断板は、ブレードの切断対象物側の先端とブレードの回転軸との間に設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ブレード回転時にブレードと加工液とが十分に接触する切断装置、及び、切断品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】切断装置の構成を模式的に示す図である。
図2】切断対象物を加工液に浸漬させた状態で対象物の切断を行なった場合に一般的に生じ得る問題点を説明するための図である。
図3】切断機構の平面図である。
図4】切断機構の側面図である。
図5図3のV-V断面の一部を示す図である。
図6】遮断板の斜視図である。
図7】切断機構の動作を説明するための図である。
図8】実施の形態2における切断機構の側面図である。
図9】第1の他の実施の形態における切断機構の側面を模式的に示す図である。
図10】第2の他の実施の形態における、切断機構の部分断面図と、該部分断面図の拡大図とを含む図である。
図11】第2の他の実施の形態における遮断板の斜視図である。
図12】第3の他の実施の形態における、切断機構の部分断面図と、該部分断面図の拡大図とを含む図である。
図13】第3の他の実施の形態における遮断板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
[1.実施の形態1]
<1-1.構成>
(1-1-1.切断装置の構成)
図1は、本実施の形態1に従う切断装置10の構成を模式的に示す図である。切断装置10は、たとえば、半導体チップが装着されたリードフレーム、又は、配線基板が樹脂封止されたパッケージ基板を切断し、複数の電子部品のパッケージへ分割するように構成されている。パッケージ基板としては、たとえば、QFN(Quad Flat No-leaded)パッケージ基板、BGA(Ball Grid Array)パッケージ基板、LGA(Land Grid Array)パッケージ基板、CSP(Chip Size Package)パッケージ基板、LED(Light Emitting Diode)パッケージ基板等が使用される。
【0012】
すなわち、切断装置10は、いわゆるシンギュレーション装置である。なお、図1における矢印F方向は切断装置10の「前方」を示し、矢印B方向は切断装置10の「後方」を示す。また、矢印L方向は切断装置10の「手前方向」を示し、矢印R方向は切断装置10の「奥方向」を示す。また、矢印U方向は切断装置10の「上方」を示し、矢印D方向は切断装置10の「下方」を示す。各矢印が示す方向は、各図面において共通である。
【0013】
図1に示されるように、切断装置10は、切断テーブル100と、加工液供給部300と、切断機構500とを含んでいる。
【0014】
切断テーブル100は、上面に切断対象物400が載置されるように構成されている。たとえば、切断テーブル100は、上面に載置された切断対象物400を吸着する機構を含む。この場合には、切断テーブル100の上面において切断対象物400が吸着されることによって、切断対象物400が切断テーブル100上に固定される。切断テーブル100の上面には凹部X1が形成されており、凹部X1内に切断対象物400が載置される。切断テーブル100は、矢印FB方向に移動可能であるとともに、平面視において90°回転可能に構成されている。
【0015】
加工液供給部300は、凹部X1内に加工液200を供給するように構成されている。加工液200は、たとえば純水であり、加工液供給部300は、たとえば貯水タンク又は水道から供給される加工液200を凹部X1内に供給する。なお、加工液200は、必ずしも純水である必要はなく、所定の原料を含む液体であってもよい。たとえば、切断装置10の作動中は、加工液供給部300による加工液200の供給が継続的に行なわれる。凹部X1内を満たす量の加工液200が供給された後は、加工液200が凹部X1から溢れ出る。
【0016】
切断機構500は、切断対象物400が加工液200に浸漬された状態で、切断対象物400を切断するように構成されている。切断対象物400が加工液200に浸漬された状態で切断対象物400が切断されることによって、切断時における切断対象物400等の温度上昇が抑制されるとともに、切断に伴なって生じる粉塵の飛散が抑制される。切断機構500は、矢印UD方向及び矢印LR方向に移動可能に構成されている。切断機構500については、後程詳しく説明する。
【0017】
切断装置10においては、切断機構500の矢印LRUD方向の位置決めが行なわれた後に、切断テーブル100が矢印FB方向に移動することによって、切断対象物400の切断が行なわれる。また、切断機構500が矢印U方向に退避した状態で、切断テーブル100が平面視において90°回転することによって、切断対象物400の切断方向が変更される。
【0018】
図2は、切断対象物を加工液に浸漬させた状態で対象物の切断を行なった場合に一般的に生じ得る問題点を説明するための図である。図2に示されるように、本実施の形態1とは異なる比較対象における切断機構900は、ブレード910を含んでいる。ブレード910は、高速回転することによって、切断対象物を切断する。ブレード910が高速回転すると、ブレード910の回転に起因してブレード910側から加工液側に向かう空気の流れが生じる。この空気の流れに基づいて、加工液がブレード910から逃げる方向に移動する。その結果、ブレード910の回転時にブレード910と加工液とが接さないという問題が生じ得る。
【0019】
本実施の形態1に従う切断装置10においては、切断機構500に構造的な工夫を施すことによって、このような問題が生じる可能性が抑制されている。以下、切断機構500について詳細に説明する。
【0020】
(1-1-2.切断機構の構成)
図3は、切断機構500の平面図である。図4は、切断機構500の側面図である。図5は、図3のV-V断面の一部を示す図である。
【0021】
図3図4及び図5を参照して、切断機構500は、回転機構502と、ブレードユニット504とを含んでいる。回転機構502は、ブレードユニット504を回転させるように構成されている。回転機構502は、回転機構本体部508と、回転部509と、複数(2つ)の固定部506と、遮断板550とを含んでいる。
【0022】
回転機構本体部508は、たとえば、ブレードユニット504を回転させるためのモータを含む。回転部509は、回転機構本体部508から供給される動力に基づいて回転軸S1周りを回転する。回転部509の側面視における中央部には、ネジ穴部511が形成されている。回転部509においては、矢印L方向から矢印R方向に向かうにつれて径が広がるテーパが外周面に形成されている。後述するように、ネジ穴部511は、回転部509へのブレードユニット504の固定に用いられる。固定部506は、回転機構本体部508の下端における矢印FB方向の両端部の各々から矢印L方向に延びている。
【0023】
図6は、遮断板550の斜視図である。図6に示されるように、遮断板550の長手方向及び短手方向の各々の中央部には、長手方向に延びるスリットH1が形成されている。スリットH1は、遮断板550において貫通している。また、遮断板550の長手方向の両端部の各々には、ネジ穴部551が形成されている。固定部506(図4)とネジ穴部551とは、ネジ552によって固定される。これにより、遮断板550は、回転機構本体部508に対して固定される。
【0024】
再び図3図4及び図5を参照して、ブレードユニット504は、回転部509の回転に基づいて回転軸S1周りを回転するように構成されている。ブレードユニット504は、ブレード510と、一対のフランジ520と、ナット530と、ボルト540とを含んでいる。
【0025】
ブレード510、フランジ520及びナット530の各々の側面視における形状は環状である。すなわち、ブレード510、フランジ520及びナット530の各々においては、側面視の中央部分に孔が形成されている。この孔内に回転部509を挿入することによって、各部材は回転部509に直接的又は間接的に取り付けられる。
【0026】
ブレード510は、外周に刃部を有している。フランジ520は、手前フランジ522と、奥フランジ524とを含んでいる。手前フランジ522及び奥フランジ524は、ブレード510を挟むことによって、ブレード510を固定する。フランジ520(奥フランジ524)の内周面には、回転部509の外周面のテーパに対応したテーパが形成されている。フランジ520が矢印R方向に押し込まれ、フランジ520の内周面と回転部509の外周面とが接することによって、フランジ520が回転部509に対して位置決めされる。なお、奥フランジ524の矢印L方向の端部の外周面上にはネジ部が形成されている。
【0027】
ナット530の内周面上にはネジ部が形成されている。ナット530の内周面上に形成されたネジ部は、奥フランジ524の矢印L方向の端部の外周面上に形成されたネジ部に締め込まれる。ネジ部同士の締込みが行なわれることで、ナット530は、手前フランジ522と接する位置に配置され、手前フランジ522を矢印R方向に押し込む。ボルト540が回転部509のネジ穴部511に締め込まれると、ボルト540は奥フランジ524を矢印R方向に押し込む。すなわち、ナット530及びボルト540は、フランジ520を矢印L方向から矢印R方向に押し込む。より具体的には、奥フランジ524は、回転部509の外周面のテーパと奥フランジ524の内周面のテーパとが嵌まるように配置され、ボルト540をネジ部511にR方向に締め込むことによって回転部509に固定される。手前フランジ522は、奥フランジ524の矢印L方向の端部に設けられたネジ部にナット530が矢印R方向に締め込まれることによって固定される。したがって、手前フランジ522はブレード510と共に奥フランジ524及びナット530に挟まれるように固定される。
【0028】
ブレードユニット504が回転部509に固定された状態で、ブレード510の一部は遮断板550のスリットH1に貫通している。すなわち、遮断板550は、ブレード510の切断対象物側の先端とブレード510の回転軸S1との間に設けられている。より具体的には、遮断板550は、ブレード510の切断対象物側の先端とフランジ520の切断対象物側の先端との間に設けられている。なお、スリットH1の短手方向の長さは、ブレード510の幅方向(矢印LR方向)の長さよりも僅かに長い。また、スリットH1の長手方向の長さは、スリットH1を貫通させるブレード510の領域の大きさに応じて適宜設定される。
【0029】
<1-2.動作>
図7は、切断機構500の動作を説明するための図である。図7に示されるように、切断機構500は、切断対象物400が加工液200に浸漬された状態で、切断対象物400の切断を行なう。すなわち、切断対象物400が切断テーブル100(図1)上に載置され、切断テーブル100に加工液200が供給された後に、切断機構500は、ブレード510を高速回転させ、ブレード510によって切断対象物400を切断する。これにより、切断品である電子部品のパッケージが製造される。なお、加工液200は、切断対象物400を切断する際の遮断板550の位置と略同じ位置又はわずかに高い位置となるよう凹部X1(図1)内に供給される。
【0030】
ブレード510が高速回転することによってブレード510の周りには、空気の流れが生じる。この空気の流れが加工液200の液面に向かうと、図2に示されるように、加工液200がブレード510から逃げる事態が生じ得る。本実施の形態1においては、切断機構500が遮断板550を含んでいる。切断機構500においては、遮断板550が加工液200側に向かう空気の流れを断ち切る。また、遮断板550のスリットH1とブレード510との隙間が小さいため、該隙間からの空気の進入も僅かである。加工液200側に向かう空気の流れが抑制されるため、ブレード510から逃げる加工液200の量が抑制される。
【0031】
したがって、本実施の形態1に従う切断装置10によれば、ブレード510の回転に起因する空気の流れが遮断板550によって遮断されるため、ブレード510の回転時にブレード510と加工液200とが接さないという事態が生じる可能性を低減することができる。また、ブレード510への加工液200の供給が安定することで、切断品質を安定させることができる。また、遮断板550を設けることで、ブレード510の回転による水しぶきを抑制することができ、装置内のメンテナンス性を向上させることができる。
【0032】
<1-3.効果等>
以上のように、本実施の形態1に従う切断装置10においては、遮断板550が、ブレード510の切断対象物側の先端とブレード510の回転軸との間に設けられる。したがって、切断装置10によれば、ブレード510の回転に起因する空気の流れが遮断板550によって遮断されるため、ブレード510の回転時にブレード510と加工液200とが接さないという事態が生じる可能性を低減することができる。
【0033】
[2.実施の形態2]
上記実施の形態1においては、切断対象物400が加工液200に浸漬された状態で切断対象物400の切断が行なわれるため、切断対象物400の切断中にブレード510に加工液200が接しやすくなっていた。しかしながら、切断対象物400の切断中にブレード510に加工液200がより接しやすくなる工夫が切断装置10にさらに施されてもよい。本実施の形態2においては、切断対象物400の切断中にブレード510に加工液200がより接しやすくなる工夫が施されている。この工夫によれば、ブレード510の冷却効果をさらに向上させることができる。以下では、上記実施の形態1と異なる部分のみについて説明し、共通する部分に関しては説明を繰り返さない。
【0034】
図8は、本実施の形態2における切断機構500Aの側面図である。図8に示されるように、切断機構500Aは、加工液噴射部560を含んでいる。加工液噴射部560は、ブレード510に向かって加工液200を噴射するように構成されている。加工液噴射部560は、たとえば貯水タンク又は水道から供給される加工液200をブレード510に向かって噴射する。たとえば、加工液噴射部560は、切断対象物側と反対側の先端(位置P1)から切断対象物側の先端(位置P2)に向かってブレード510が回転する領域の少なくとも一部に加工液200を噴射する。
【0035】
本実施の形態2における切断機構500Aを含む切断装置によれば、加工液噴射部560によって加工液200が回転中のブレード510に噴射されるため、ブレード510に対して加工液200をより多く接触させることができ、ブレード510をより効果的に冷却することができる。
【0036】
[3.他の実施の形態]
上記実施の形態1,2の思想は、以上で説明された実施の形態1,2に限定されない。以下、上記実施の形態1,2の思想を適用できる他の実施の形態の一例について説明する。
【0037】
<3-1>
遮断板550の構成は、上記実施の形態1,2における構成に限定されない。図9は、第1の他の実施の形態における切断機構500Bの側面を模式的に示す図である。図9に示されるように、切断機構500Bは、遮断板550Bを含んでいる。
【0038】
上記実施の形態1の遮断板550においてはスリットH1が遮断板550の長手方向の中央部に形成されていたが、遮断板550Bにおいてはスリットが長手方向の一端部から中央部にかけて形成されている。遮断板550Bは、切断対象物側と反対側の先端(位置P1)から切断対象物側の先端(位置P2)に向かってブレード510が回転する領域(図9におけるブレード510の左側領域)の少なくとも一部において、ブレード510の切れ刃と対向する。一方、遮断板550Bは、切断対象物側の先端(位置P2)から切断対象物側と反対側の先端(位置P1)に向かってブレード510が回転する領域(図9におけるブレード510の右側領域)において、ブレード510の切れ刃と対向しない。
【0039】
このような実施の形態であっても、ブレード510の回転に起因する空気の流れが遮断板550Bによって遮断されるため、ブレード510の回転時にブレード510と加工液200とが接さないという事態が生じる可能性が低減する。ブレード510を交換する際に遮断板550をブレード510から退避させる機構を設ける場合、ブレード510全体を覆う遮断板550の構成では、少なくとも遮断板550を下方に移動させる機構が必要になる。これに対して、ブレード510の少なくとも一部を覆わない遮断板550Bのような構成では、遮断板550Bを下方に移動させる機構が必要ではなく、たとえば、ブレード510から離れる方向に遮断板550Bを水平移動させる機構があればよい。このように、遮断板550Bがブレード510の少なくとも一部を覆わない構成とすることにより、ブレード510を交換する際に遮断板550Bをブレード510から退避させる機構の設計の自由度を増大させることができる。
【0040】
<3-2>
図10は、第2の他の実施の形態における、切断機構500Cの部分断面図と、該部分断面図の拡大図とを含む図である。図11は、第2の他の実施の形態における遮断板550Cの斜視図である。図10及び図11に示されるように、切断機構500Cは、遮断板550Cを含んでいる。遮断板550Cには、スリットH1Cが形成されている。スリットH1Cは、短手方向に広く開いたスリット部554Cと、各々が短手方向に狭く開いた複数(2つ)のスリット部553Cとを含んでいる。スリット部553Cは、スリット部554Cの長手方向の両端部の各々から遮断板550Cの長手方向側に延びている。
【0041】
各スリット部553Cはブレード510の周囲を覆い、スリット部554Cは手前フランジ522及び奥フランジ524の周囲を覆う。すなわち、第2の他の実施の形態において、遮断板550Cは、手前フランジ522及び奥フランジ524(フランジ520)の切断対象物側の先端と、ブレード510の回転軸S1との間に設けられる。より詳細には、遮断板550Cは、遮断板550Cの裏面と手前フランジ522及び奥フランジ524の切断対象物側の先端とが面一となる位置に設けられている。
【0042】
このような実施の形態によれば、上記実施の形態1と比較して、遮断板550Cの下方に位置するブレード510の領域が長いため、加工液200のより深い位置に配置された切断対象物400を切断することができ、より確実に切断対象物400を加工液200に浸漬させることができる。また、このような実施の形態によれば、上記実施の形態1と比較して、遮断板550Cの下方に位置するブレード510の領域が長いため、切断対象物400がより厚いとしても切断対象物400を切断することができる。
【0043】
<3-3>
図12は、第3の他の実施の形態における、切断機構500Dの部分断面図と、該部分断面図の拡大図とを含む図である。図13は、第3の他の実施の形態における遮断板550Dの斜視図である。図12及び図13に示されるように、切断機構500Dは、遮断板550Dを含んでいる。遮断板550Dには、スリットH1Dが形成されている。スリットH1Dは、短手方向に広く開いたスリット部554Dと、各々が短手方向に狭く開いた複数(2つ)のスリット部553Dとを含んでいる。スリット部553Dは、スリット部554Dの長手方向の両端部の各々から遮断板550Dの長手方向側に延びている。
【0044】
各スリット部553Dはブレード510の周囲を覆い、スリット部554Dは手前フランジ522及び奥フランジ524の周囲を覆う。すなわち、第3の他の実施の形態において、遮断板550Dは、手前フランジ522及び奥フランジ524(フランジ520)の切断対象物側の先端と、ブレード510の回転軸S1との間に設けられる。より詳細には、第3の他の実施の形態において、遮断板550Dは、上記第2の他の実施の形態における遮断板550Cよりもさらに回転軸S1寄りの位置に設けられる。
【0045】
このような実施の形態によれば、上記実施の形態1と比較して、遮断板550Dの下方に位置するブレード510の領域が長いため、加工液200のより深い位置に配置された切断対象物400を切断することができる。また、このような実施の形態によれば、上記実施の形態1と比較して、遮断板550Dの下方に位置するブレード510の領域が長いため、切断対象物400がより厚いとしても切断対象物400を切断することができる。
【0046】
<3-4>
上記実施の形態1,2においては、凹部X1の上方から加工液供給部300によって加工液200が供給された。しかしながら、加工液200の供給方法はこれに限定されない。たとえば、切断テーブル100の底面に加工液200の供給孔が設けられ、該供給孔を介して加工液200の供給が行なわれてもよい。
【0047】
<3-5>
上記実施の形態1,2において、切断装置10は、切断機構500を1つだけ含んでいた。しかしながら、切断装置10に含まれる切断機構500の数はこれに限定されない。たとえば、切断装置10は、複数の切断機構500を含んでいてもよい。
【0048】
<3-6>
また、上記実施の形態1,2においては、切断装置10の作動中に、加工液供給部300によって凹部X1内に加工液200が継続的に供給された。しかしながら、加工液200の供給方法はこれに限定されない。たとえば、切断対象物400の切断前に、切断対象物400が浸漬可能な量の加工液200を凹部X1内供給し、凹部X1内の加工液200が減少するのに応じて凹部X1内に加工液200を補充してもよい。
【0049】
<3-7>
また、上記実施の形態1,2においては、切断機構500の矢印LRUD方向の位置決めが行なわれた後に、切断テーブル100が矢印FB方向に移動することによって、切断対象物400の切断が行なわれた。しかしながら、切断方法はこれに限定されない。切断テーブル100が可能な動作は回転動作のみとし、切断機構502をFB方向に移動させることによって、切断対象物400の切断を行なってもよい。すなわち、切断テーブル100と切断機構502とを相対的に移動させて切断対象物400の切断が行なわれる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態について例示的に説明した。すなわち、例示的な説明のために、詳細な説明及び添付の図面が開示された。よって、詳細な説明及び添付の図面に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須でない構成要素が含まれることがある。したがって、それらの必須でない構成要素が詳細な説明及び添付の図面に記載されているからといって、それらの必須でない構成要素が必須であると直ちに認定されるべきではない。
【0051】
また、上記実施の形態は、あらゆる点において本発明の例示にすぎない。上記実施の形態は、本発明の範囲内において、種々の改良や変更が可能である。すなわち、本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じて具体的構成を適宜採用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 切断装置、100 切断テーブル、200 加工液、300 加工液供給部、400 切断対象物、500,500A,500B,500C,500D,900 切断機構、502 回転機構、504 ブレードユニット、506 固定部、508 回転機構本体部、509 回転部、510,910 ブレード、511,551 ネジ穴部、520 フランジ、522 手前フランジ、524 奥フランジ、530 ナット、540 ボルト、550,550B,550C,550D 遮断板、552 ネジ、553C,553D,554C,554D スリット部、560 加工液噴射部、H1,H1C,H1D スリット、P1,P2 位置、S1 回転軸、X1 凹部。
図1
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