(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】大型環状物品の輸送用トレーラ
(51)【国際特許分類】
B62D 53/06 20060101AFI20230105BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
B62D53/06 Z
B60P3/00 J
(21)【出願番号】P 2019217778
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2021-08-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和元年8月1日に日本ジャイアントタイヤ株式会社にて公開。
(73)【特許権者】
【識別番号】519429026
【氏名又は名称】河野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】河野 敏彦
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-126862(JP,A)
【文献】特開2013-159133(JP,A)
【文献】特開2009-018878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 53/06
B60P 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両によって牽引され、大型環形状の物品を搭載して輸送するためのトレーラであって、
床面の車体前後方向中央が低床構造をなし、該低床部(13)には左右の拡幅床面が設けられ、該左右の拡幅床面は駆動手段(20)によって車幅方向左右にスライド可能な構造をなし、
上記左右の拡幅床面には各々収納函(21)が搭載されて固定され、該収納函(21)は上面が開放され前後壁面(21C)が底窄まり状に傾斜し大型環状物品
(22)が縦にかつ輪状外面を車体前後方向にして収納可能な立体形状をなし、
上記収納函(21)の前後の壁面(21C)には駆動手段(21D)によって前後位置が調節可能に構成された受け部材(23)が設けられ、前後の受け部材(23)の前後位置を調節することによって異なる大きさの大型環状物品(22)の輪状外面を受け得るようになっていることを特徴とする大型環状物品の搬送トレーラ。
【請求項2】
上記収納函(21)は車幅方向に2つ、車体前後方向に2つ設けられている請求項1記載の大型環状物品の搬送トレーラ。
【請求項3】
上記大型環状物品(22)は大型タイヤである請求項1記載の大型環状物品の搬送トレーラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大型環状物品の輸送用トレーラに関し、例えば露天掘りを行う鉱山の大型作業用車両等に用いる超大型タイヤを輸送するためのトレーラに関する。
【背景技術】
【0002】
露天掘り式鉱山等で掘削した鉱石を運搬する場合、非常に大型のダンプ車両などの作業車両が利用されている。この大型作業車両には直径が3mを越えるような超大型タイヤが装着されている。
【0003】
かかる超大型タイヤは工場で製造された後、工場から鉱山等の現地又は港湾設備まで陸上を輸送し、現地において超大型の作業車両に取り付けられるが、超大型タイヤを輸送する場合に様々な制約を受ける。
【0004】
例えば、道路を走行する車両については、走行安全性の確保や円滑な交通等のために各種の法規が定められており、車両の横幅や積載貨物を含めた車両の高さについて規制がある。
現行法において、道路を通常走行するためには車両の横幅が2500mmを、車両の全高は積載貨物を含めて規制緩和された指定道路の場合には4100mm、一般的には3800mmを越えないよう制限される。
【0005】
従来、超大型タイヤを輸送する場合、車両によって牽引される低床式トレーラに例えば外径3550mmの複数の超大型タイヤを荷台に横積みにして輸送することが多い。この場合には、車両の全高は指定道路の制限値以内に収めることができるものの、横幅が3mを越えるので、走行する場合には特別な許可を得て夜間走行しなければならない。
【0006】
また、超大型タイヤの直径上の対向する2個所に当板を置き、それぞれの当板を棒材又はチェーン等を用いて締め付け、超大型タイヤを圧縮し、自由状態から変形させ、これによりタイヤの直径を縮小し、道路を通常走行する場合の制限値を越えないようにするとともに、倉庫等に格納する場合の所要スペースを縮小するようにした超大型タイヤの輸送方法が提案されている(特許文献1)。
【0007】
しかし、特許文献1記載の方法ではタイヤの外径を縮小すると、材料の硬質ゴムに圧縮や引張り等の歪みが生じ、歪みが残留したときは使用時の強度が低下するおそれがあるばかりでなく、超大型タイヤの外径を縮小するには強大な力を作用させなければならず、専用の器具等を準備する必要もある。
【0008】
他方、トラクタによって牽引されるトレーラの床面の中央部分を低床構造となし、低床部に超大型タイヤを縦に収容する収納する複数の収納函を車幅方向にスライド可能に搭載し、各収納函は上面を開放させ前後壁面を底窄まり状に傾斜させた立体形状となし、フォークリフトのフォークで超大型タイヤを吊り下げ、油圧シリンダによって収納函を車幅方向外方にスライドさせ、吊り下げた超大型タイヤを収納函に収納して3点支持にて受けた後、収納函を元の位置に復帰させるようにした大型円環状物品の搬送用トレーラが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2003-72956号公報
【文献】特開2013-126862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2記載の搬送用トレーラは超大型タイヤを強度低下させることがなく、しかも超大型タイヤを圧縮する専用の器具等を準備する必要もなく、この点が優れている。
【0011】
ところで、大型ダンプには複数の超大型タイヤが装着されており、超大型タイヤを交換する場合にはタイヤのバランス上、左右のタイヤごとに交換するのが望ましい。
しかし、特許文献2記載の搬送用トレーラでは複数の各収納函を個別にスライド・復帰させるようにしているので、複数の収納函について個別にスライドさせ復帰させる作業が必要であり、繁雑であった。
【0012】
本発明はかかる点に鑑み、複数の収納函を一度にスライド・復帰させることができ、作業性を大幅にアップさせるようにした大型円環状物品の搬送用トレーラを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明に係る大型環状物品の搬送トレーラは、車両によって牽引され、大型環形状の物品を搭載して輸送するためのトレーラであって、床面の車体前後方向中央が低床構造をなし、該低床部には左右の拡幅床面が設けられ、該左右の拡幅床面は駆動手段によって車幅方向左右にスライド可能な構造をなし、上記左右の拡幅床面には各々収納函が搭載されて固定され、該収納函は上面が開放され前後壁面が底窄まり状に傾斜し大型環状物品が縦にかつ輪状外面を車体前後方向にして収納可能な立体形状をなし、上記収納函の前後の壁面には駆動手段によって前後位置が調節可能に構成された受け部材が設けられ、前後の受け部材の前後位置を調節することによって異なる大きさの大型環状物品の輪状外面を受け得るようになっていることを特徴とする。
【0014】
本発明の特徴の1つは低床部に拡幅床面を左右スライド可能に設け、拡幅床面に収納函を固定するようにした点にある。
【0015】
これにより、拡幅床面を車幅方向にスライドさせて拡げ、フォークリフトのフォークを大型環状物品の中央穴に差し込んで吊り上げ、大型環状物品を収納函に収納した後、拡幅床面を車幅方向にスライド復帰させると、大型環状物品のトレーラへの積込みを完了させることができ、大型環状物品の搭載作業の煩わしさを解消できる。
【0016】
また、大型環状物品をトレーラに積込み・積降ろしする場合には大型のフォークリフトを使用し、フォークを大型環状物品の中心穴に差し込み、吊り上げて収納函に収納し、吊り上げて収納函から取出すが、拡幅床面を車幅方向にスライドさせることによって左右の収納函の間隔をあけることができるので、フォークの先端が他方の大型環状物品と干渉することはなく、フォークリフトを使用した荷役作業を円滑に行うことができ、又大掛かりなクレーン設備等を要することなく荷役作業が可能となる。
【0017】
また、本発明の第2の特徴は収納函の前後壁面には受け部材を回動可能に取付け、駆動手段によって受け部材の角度を調節可能に構成した点にある。
【0018】
これにより、異なる大きさの大型環状物品の輪状外面を受けることができ、大型環状物品をガタつかせることなく安定して収納函に収納して輸送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る大型環状物品の搬送用トレーラの好ましい実施形態においてタイヤを積載した状態を概略的に表す図である。
【
図4】上記実施形態における低床部の平面及び側面を示す図である。
【
図6】上記実施形態における収納函を示す図である。
【
図7】上記実施形態における収納函の前後壁面の受けロッドを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。
図1ないし
図7は本発明に係る大型環状物品の輸送用トレーラの好ましい実施形態を示し、これは大型タイヤを輸送するトレーラに適用した例である。図において、トレーラ10は牽引するトラクタ(図示せず)に連結されるグースネック部11、後部床面12及びその間の低床面(低床部)13から構成され、後部床面12には車軸が取付けられ、車軸には車輪14が支持されている。
【0021】
低床部13には中央のメインフレーム15が車体前後方向に延びて設けられ、メインフレーム15にはサイドフレーム16が取付けられ、サイドフレーム16の外側には拡幅フレーム17がスライド自在に取付けられ、拡幅フレーム17には受けプレート18が取付けられ、拡幅フレーム17及び受けプレート18によって拡幅床面19が構成され、又メインフレーム16と拡幅フレーム17の間には駆動シリンダ(駆動手段)20が介設されている。
【0022】
また、左右の拡幅床面19には収納函21が車幅方向に2つ、車体前後方向に2つ搭載されて固定されている。この収納函21は側壁面21A、底壁面21B及び前後壁面21Cから構成され、上面が開放され、前後壁面21Cが底窄まり状に傾斜し、大型タイヤ22を縦にして、かつタイヤ22の輪状外面を車体前後方向にして収納できる立体形状に形成されている。
【0023】
また、収納函21の前後壁面21Cにはアーム24の下端が回転自在に取付けられ、アーム24の上端部には受けロッド(受け部材)23が取付けられ、駆動シリンダ(駆動手段)21Dによってアーム24の傾斜角度が調節可能に構成され、受けロッド23を前後に変位できるようになっている。
【0024】
大型タイヤ22を運搬する場合、駆動シリンダ20のロッドを伸長させてトレーラ10の拡幅床面19を車幅方向外方にスライドさせ、左右の収納函21の間に間隔をあける一方、フォークリフトのフォークを大型タイヤ22の中心穴に差し込んで吊り上げ、収納函21に降ろし、大型タイヤ22を縦に、かつ輪状外面を車体前後方向にして収納する。
【0025】
次に、駆動シリンダ21Dを作動させて受けロッド23を前進させて大型タイヤ22の環状外面に押し付け、これによって大型タイヤ22は収納函21の底壁面21B及び前後の受けロッド23の3箇所で受けられ、安定して収納函21に収納される。
【0026】
同様に、他の大型タイヤ22も空の収納函21に収納する。このとき、左右に隣接する収納函21は間隔があけられているので、フォークリフトのフォークが既に収納した大型タイヤ22と干渉することなく円滑に収納できる。
【0027】
大型タイヤ22を全てトレーラ10に搭載できると、駆動シリンダ20を作動させて拡幅床面13を車幅方向内方にスライド復帰させると、車幅方向に隣接する2つの大型タイヤ22を車両の横幅(例えば2500mm)以内に、又は高さを一般的な制限高さ3800mm以内に並べて搭載できる。
【符号の説明】
【0028】
13 低床部
20 駆動シリンダ
21 収納函
21C 前後壁面
21D 駆動シリンダ
22 大型環状部品
23 受け部材