(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】樹脂成形装置および樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20230105BHJP
B29C 45/02 20060101ALI20230105BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C45/02
H01L21/56 T
(21)【出願番号】P 2019221116
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市橋 秀男
(72)【発明者】
【氏名】竹内 慎
(72)【発明者】
【氏名】西平 貴則
(72)【発明者】
【氏名】原 彰良
(72)【発明者】
【氏名】杉本 陽滉
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-343576(JP,A)
【文献】特開2012-111202(JP,A)
【文献】特開2009-202507(JP,A)
【文献】特開2008-311577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 - 33/76
B29C 45/00 - 45/85
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型と、
前記成形型に樹脂を移送可能に構成されたプランジャ列と、
前記プランジャ列のトランスファ出力に関する検出値を検出可能に構成された検出器と、
前記トランスファ出力を制御可能に構成された制御部と、を備えた樹脂成形装置であって、
前記樹脂成形装置は、前記プランジャ列の列数を単数または複数のいずれにも適用可能に構成されており、
前記制御部は、前記プランジャ列の前記列数に応じて、前記トランスファ出力を生成するように、前記検出器により検出された前記検出値を校正する校正値を切り替え可能に構成されて
おり、
前記制御部と前記検出器とに接続された増幅器をさらに備える、樹脂成形装置。
【請求項2】
成形型と、
前記成形型に樹脂を移送可能に構成されたプランジャ列と、
前記プランジャ列のトランスファ出力に関する検出値を検出可能に構成された検出器と、
前記トランスファ出力を制御可能に構成された制御部と、を備えた樹脂成形装置であって、
前記樹脂成形装置は、前記プランジャ列の列数を単数または複数のいずれにも適用可能であって、単数列の前記プランジャ列と複数列の前記プランジャ列とを交換して用いることができるように構成されており、
前記制御部は、樹脂成形前に決定された前記プランジャ列の前記列数に応じた校正値を用いて前記トランスファ出力を生成するように、前記検出器により検出された前記検出値を校正する前記校正値を切り替え可能に構成されている、樹脂成形装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記校正値を記憶するように構成された記憶部を備える、請求項1または請求項2に記載の樹脂成形装置。
【請求項4】
前記プランジャ列を昇降可能に構成されたトランスファ駆動機構をさらに備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂成形装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の樹脂成形装置を用いて樹脂成形品を製造するための樹脂成形品の製造方法であって、
前記成形型に成形対象物を設置する工程と、
前記成形型を型締めする工程と、
前記成形対象物を樹脂成形する工程と、
前記成形型を型開きする工程と、を備える、樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記校正値を決定する工程をさらに備え、
前記樹脂成形する工程は、前記制御部が前記校正値を用いて前記トランスファ出力を制御する工程を備える、請求項5に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂成形装置および樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特許文献1には、プランジャに掛かる力を注入抵抗力と摺動抵抗力に区別してモニターすることにより、未充填、巣不良の原因が樹脂特性異常か装置異常によるものかを区別して装置を的確に自動制御する半導体樹脂封止装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の半導体樹脂封止装置は、成形中の注入抵抗力と、装置駆動制御部によりプランジャを上昇させたときにプランジャの下部のロードセルより得られた閾値(摺動閾値)とを比較して、樹脂異常が発生したかどうかを判定する。
【0005】
半導体樹脂封止装置のプランジャを一方向に並べてプランジャ列を構成し、プランジャ列の列数を単数または複数にして樹脂成形品を製造することがある。しかしながら、プランジャ列の列数が単数および複数のいずれの場合にも同一の閾値を用いたときには、プランジャに適正なトランスファ出力を加えることができないことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示された実施形態によれば、成形型と、成形型に樹脂を移送可能に構成されたプランジャ列と、プランジャ列のトランスファ出力に関する検出値を検出可能に構成された検出器と、トランスファ出力を制御可能に構成された制御部と、を備えた樹脂成形装置であって、樹脂成形装置は、プランジャ列の列数を単数または複数のいずれにも適用可能に構成されており、制御部は、プランジャ列の列数に応じて、トランスファ出力を生成するように、検出器により検出された検出値を校正する校正値を切り替え可能に構成されている、樹脂成形装置を提供することができる。
【0007】
ここで開示された実施形態によれば、上記の樹脂成形装置を用いて樹脂成形品を製造するための樹脂成形品の製造方法であって、成形型に成形対象物を設置する工程と、成形型を型締めする工程と、成形対象物を樹脂成形する工程と、成形型を型開きする工程と、を備える、樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0008】
ここで開示された実施形態によれば、トランスファ出力をより正確に把握することが可能な樹脂成形装置および樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の樹脂成形品の製造装置の模式的な平面図である。
【
図2】実施形態の樹脂成形装置の模式的な斜視図である。
【
図3】実施形態の樹脂成形装置の模式的な部分断面図である。
【
図4】実施形態の樹脂成形装置に用いられるトランスファ駆動機構の一例の模式的な側面図である。
【
図5】
図4に示されるトランスファ駆動機構の模式的な平面図である。
【
図6】実施形態の樹脂成形装置に用いられるトランスファ駆動機構の他の一例の模式的な側面図である。
【
図7】
図6に示されるトランスファ駆動機構の模式的な平面図である。
【
図8】実施形態の樹脂成形品の製造方法のフローチャートである。
【
図9】校正値を決定する工程の一例を図解する模式的な部分断面図である。
【
図10】実施形態の樹脂成形装置の要部のブロック図である。
【
図11】成形対象物を設置する工程の一例を図解する模式的な部分断面図である。
【
図12】実施形態の樹脂成形装置に用いられる第2型の一例の模式的な平面図である。
【
図13】成形対象物を設置する工程の一例を図解する模式的な部分断面図である。
【
図14】実施形態の樹脂成形品の製造方法の型締めする工程を図解する模式的な部分断面図である。
【
図15】プランジャの移動による樹脂のキャビティ内への移送を図解する模式的な拡大部分断面図である。
【
図16】プランジャの移動による樹脂のキャビティ内への移送を図解する模式的な拡大部分断面図である。
【
図17】実施形態の樹脂成形装置に用いられる第2型の他の一例の模式的な平面図である。
【
図18】実施形態の樹脂成形装置の制御部がプランジャ列のトランスファ出力を制御する動作の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について説明する。なお、実施形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0011】
図1に、実施形態の樹脂成形品の製造装置の模式的な平面図を示す。
図1に示すように、実施形態1の樹脂成形品の製造装置は、モールディングモジュールAと、インローダモジュールBと、アウトローダモジュールCとを備えている。
【0012】
モールディングモジュールAは、たとえばリードフレームに搭載された半導体チップ等の成形対象物を樹脂成形可能に構成されたモールド機構部1000を備えている。インローダモジュールBは、モールディングモジュールAに成形対象物と樹脂とを供給可能に構成されたインローダ2000を備えている。アウトローダモジュールCは、モールディングモジュールAから樹脂形品を取り出し可能に構成されたアウトローダ3000を備えている。インローダ2000およびアウトローダ3000は、
図1の矢印で示される方向に移動可能に構成されている。
【0013】
モールディングモジュールAとインローダモジュールBとは、たとえばボルトやピン等の連結機構によって、互いに着脱可能に連結されている。また、モールディングモジュールAとアウトローダモジュールCも、たとえばボルトやピン等の連結機構によって、互いに着脱可能に連結されている。
【0014】
図1に示される実施形態の樹脂成形品の製造装置は、2個のモールディングモジュールAを備えているが、モールディングモジュールAの個数は生産量に応じて増減調整することが可能である。実施形態の樹脂成形品の製造装置は、たとえば、1個のモールディングモジュールAを備えていてもよく、4個に増設されたモールディングモジュールAを備えていてもよい。すなわち、実施形態の樹脂成形品の製造装置は、モールディングモジュールAの個数を増減可能な構成とすることができる。
【0015】
また、
図1に示される実施形態の樹脂成形品の製造装置においては、モールディングモジュールA、インローダモジュールB、およびアウトローダモジュールCは、
図1に示される順に配置されているが、たとえば、モールディングモジュールA、インローダモジュールB、およびアウトローダモジュールCが一体となった1つの親機と、モールディングモジュールAのみを備えた1つまたは複数の子機とによって樹脂成形品の製造装置が構成されてもよい。なお、1個のモールディングモジュールAを実施形態の樹脂成形品の製造装置と捉えることもできる。
【0016】
図2に、実施形態の樹脂成形装置の模式的な斜視図を示す。
図2に示される実施形態の樹脂成形装置は、
図1に示される実施形態の樹脂成形品の製造装置のモールド機構部1000に配置されている。
【0017】
図2に示すように、実施形態の樹脂成形装置は、第1プラテン200と、第2プラテン400と、可動プラテン300と、タイバー500とを備えている。第2プラテン400は、第1プラテン200と離れて向かい合っている。
【0018】
可動プラテン300は、第1プラテン200と第2プラテン400との間に位置しており、第1プラテン200と第2プラテン400との間をタイバー500に沿って第1プラテン200に対して移動可能に構成されている。
【0019】
タイバー500は、第1プラテン200と第2プラテン400との間に延びる棒状部材である。タイバー500の一端は第1プラテン200に固定され、タイバー500の他端は第2プラテン400に固定されている。
【0020】
図2に示される実施形態の樹脂成形装置は、第1プラテン200に取り付けられた第1型ホルダ30と、可動プラテン300に取り付けられた第2型ホルダ取付ブロック50と、第2型ホルダ取付ブロック50に取り付けられた第2型ホルダ40と、第2型ホルダ取付ブロック50内のトランスファ駆動機構60と、可動プラテン300と第2プラテン400との間の型締機構600とを備えている。ここで、第2型ホルダ40は、第2型ホルダ取付ブロック50を介して可動プラテン300に取り付けられることになる。
【0021】
図3に、実施形態の樹脂成形装置の模式的な部分断面図を示す。
図3に示すように、実施形態の樹脂成形装置は、第1型ホルダ30に保持される成形型としての第1型10と、第2型ホルダ40に保持される成形型としての第2型20とを備えている。
【0022】
型締機構600は、可動プラテン300を第1プラテン200に対して移動させ、第1型10と第2型20とをプレスすることによって、第1型10と第2型20とを型締め可能に構成されている。
【0023】
第1型ホルダ30は、第1プレート31と、第1アシストブロック32とを備えている。第1プレート31は、第1プラテン200に取り付け可能に構成されており、断熱プレートおよびヒータプレートを第1プラテン200側からこの順に備えている。第1アシストブロック32は、第1プレート31の下に第1型10を固定可能に構成されている。
【0024】
第2型ホルダ40は、第2アシストブロック41と、第2プレート42とを備えている。第2プレート42は、第2型ホルダ取付ブロック50に取り付け可能に構成されており、断熱プレートおよびヒータプレートを第2型ホルダ取付ブロック50側からこの順に備えている。第2アシストブロック41は、第2プレート42上に第2型20を固定可能に構成されている。
【0025】
第1型10は、第1凹部11と、カル部12と、第1型プレート13とを備えている。第1凹部11は、成形対象物の樹脂成形後の形状に応じた形状を備え得る。カル部12は、成形対象物に樹脂が移送される前の樹脂の溜まり部として用いられる。第1型プレート13は、第1型ホルダ30の第1プレート31に固定可能に構成されている。
【0026】
第2型20は、第2凹部21と、ポット22と、第2型プレート23とを備えている。第2凹部21は、成形対象物の樹脂成形後の形状に応じた形状を備え得る。ポット22は、成形対象物の樹脂成形に用いられる樹脂の設置部として用いられる。第2型プレート23は、第2型ホルダ40の第2プレート42に固定可能に構成されている。
【0027】
図4に、実施形態の樹脂成形装置に用いられるトランスファ駆動機構の一例の模式的な側面図を示す。
図4に示すように、実施形態のトランスファ駆動機構60は、第1のトランスファ駆動軸63aと、第1のトランスファ駆動軸63a上のロードセル等の第1の検出器66aとを備えている。また、実施形態のトランスファ駆動機構60は、第3のトランスファ駆動軸63cと、第3のトランスファ駆動軸63c上のロードセル等の第3の検出器66cとを備えている。
【0028】
また、実施形態のトランスファ駆動機構60は、第1の検出器66a上および第3の検出器66c上のプランジャユニット支持プレート62と、プランジャユニット支持プレート62上のプランジャユニット61とを備えている。
【0029】
プランジャユニット61は、成形型に樹脂を注入するためのプランジャ64と、プランジャユニット本体65とを備えている。プランジャ64はZ軸方向に直線状に延在する棒状部材である。
図4に示す例においては、プランジャ64の先端740がプランジャユニット本体65の外部に位置するとともに、プランジャ64の先端740の他端(図示せず
)がプランジャユニット本体65の内部に位置している。
【0030】
図5に、実施形態のトランスファ駆動機構60の模式的な平面図を示す。
図5は、
図4に示されるトランスファ駆動機構60をプランジャ64の先端740から見たときの模式的な平面視である。
【0031】
図5の平面視に示すように、プランジャ64は、X軸方向に並んで単数列のプランジャ列641を構成している。
図5の平面視に示すように、単数列のプランジャ列641は、プランジャ64のそれぞれの先端740が任意の直線741上に位置することによって構成されている。
【0032】
図5の平面視に示すように、プランジャ列641は、プランジャユニット本体65のY軸方向の幅を2等分するX軸方向に延びる中心線C-Cで区切られた2つの領域R1と領域R2のうち一方の領域R1に位置している。また、プランジャ列641を構成するプランジャ64のそれぞれの先端740を通りX軸方向に延びる直線741が領域R1に位置している。
【0033】
なお、単数のプランジャ列641または直線741はプランジャユニット本体65の中心線C-Cで区切られた2つの領域R1および領域R2のうち他方の領域R2に位置していてもよい。なお、単数列のプランジャ列641または直線741が領域R1または領域R2のいずれか一方に位置する構成は、多品種少量生産等の様々な理由により要望がある。
【0034】
図5の平面視に示すように、トランスファ駆動機構60は、第1のトランスファ駆動軸63aと、第2のトランスファ駆動軸63bと、第3のトランスファ駆動軸63cとを備えている。
図5の平面視に示すように、第1のトランスファ駆動軸63aと、第3のトランスファ駆動軸63cと、第2のトランスファ駆動軸63bとが、X軸方向にこの順で位置している。
【0035】
図5の平面視に示すように、実施形態のトランスファ駆動機構60においては、第1のトランスファ駆動軸63aの中心631aと第2のトランスファ駆動軸63bの中心631bとを通る直線632上以外の箇所に第3のトランスファ駆動軸63cの中心631cが位置している。
【0036】
また、
図5の平面視に示すように、トランスファ駆動機構60は、第1のトランスファ駆動軸63aとプランジャユニット支持プレート62との間の第1の検出器66a、第2のトランスファ駆動軸63bとプランジャユニット支持プレート62との間の第2の検出器66bと、第3のトランスファ駆動軸63cとプランジャユニット支持プレート62との間の第3の検出器66cとを備えている。
【0037】
トランスファ駆動機構60は、たとえばボールねじ等を備えた第1のトランスファ駆動軸63a、第2のトランスファ駆動軸63bおよび第3のトランスファ駆動軸63cによって、プランジャユニット本体65を昇降可能、すなわち、プランジャ列641を昇降可能に構成されている。
【0038】
トランスファ駆動機構60のプランジャ列641は、プランジャ列641が上昇することによって、プランジャ列641の上方に配置された樹脂を成形型に移送可能に構成されている。プランジャ列641を上昇させるためにトランスファ駆動機構60が印加する力が、プランジャ列641のトランスファ出力である。第1の検出器66a、第2の検出器66bおよび第3の検出器66cは、プランジャ列641のトランスファ出力に関する検出値を検出可能に構成されている。
【0039】
図6に、実施形態の樹脂成形装置に用いられるトランスファ駆動機構60の他の一例の模式的な側面図を示す。
図6に示されるトランスファ駆動機構60は、複数列のプランジャ列を備えていることを特徴としている。このように、実施形態の樹脂成形装置は、単数列のプランジャ列を備えたトランスファ駆動機構60と、複数列のプランジャ列を備えたトランスファ駆動機構60とを交換して用いることができるように構成されている。すなわち、実施形態の樹脂成形装置は、プランジャ列の列数が単数または複数のいずれの場合にも適用可能であるように構成されている。
【0040】
図6に示す実施形態のトランスファ駆動機構60のプランジャユニット61は、成形型に樹脂を注入するためのプランジャ64a,64bを備えている。プランジャ64a,64bもZ軸方向に直線状に延びる棒状部材である。
図6に示す例においては、プランジャ64aの先端740aがプランジャユニット本体65の外部に位置するとともに、プランジャ64aの先端740aの他端(図示せず)がプランジャユニット本体65の内部に位置している。また、プランジャ64bの先端740bがプランジャユニット本体65の外部に位置するとともに、プランジャ64bの先端740bの他端(図示せず)がプランジャユニット本体65の内部に位置している。
【0041】
図7に、実施形態のトランスファ駆動機構60の模式的な平面図を示す。
図7は、
図6に示されるトランスファ駆動機構60をプランジャ64a,64bの先端740a,740bから見たときの模式的な平面視である。
【0042】
図7の平面視に示すように、トランスファ駆動機構60は、複数列のプランジャ列643を備えている。複数列のプランジャ列643は、単数列のプランジャ列641と単数列のプランジャ列642とがY軸方向に互いに間隔を空けて並ぶことによって構成されている。単数列のプランジャ列641は複数のプランジャ64aにより構成され、単数列のプランジャ列642は複数のプランジャ64bにより構成されている。単数列のプランジャ列641および単数列のプランジャ列642はそれぞれX軸方向に延在している。
【0043】
図7の平面視に示すように、プランジャユニット本体65の中心線C-Cで区切られた2つの領域R1および領域R2のうち一方の領域R1に単数列のプランジャ列641が位置し、他方の領域R2に単数列のプランジャ列642が位置している。また、単数列のプランジャ列641を構成する複数のプランジャ64aのそれぞれの先端740aを通りX軸方向に延在する直線741aが領域R1に位置し、単数列のプランジャ列642を構成する複数のプランジャ64bのそれぞれの先端740bを通りX軸方向に延在する直線741bが領域R2に位置している。
【0044】
複数列のプランジャ列643の構成は、
図7の平面視に示される構成に限定されないことは言うまでもなく、複数列のプランジャ列643は、たとえば単数列のプランジャ列が3列以上Y軸方向に互いに間隔を空けて並んで構成されていてもよい。
【0045】
以下、
図8~
図18を参照して、実施形態の樹脂成形装置を用いて樹脂成形品を製造する方法の一例である実施形態の樹脂成形品の製造方法について説明する。
図8に、実施形態の樹脂成形品の製造方法のフローチャートを示す。
図8に示すように、実施形態の樹脂成形品の製造方法は、校正値を決定する工程(S10)と、成形対象物を設置する工程(S20)と、型締めする工程(S30)と、樹脂成形する工程(S40)と、型開きする工程(S50)とを備える。以下、各工程についてより詳細に説明する。
【0046】
図8に示すように、実施形態の樹脂成形品の製造方法は、校正値を決定する工程(S10)から開始する。校正値を決定する工程(S10)は、たとえば以下のように行うことができる。まず、
図4または
図6に示されるトランスファ駆動機構60のプランジャユニット61を
図9の模式的部分断面図に示される検定治具900に交換する。検定治具900は、ダミープランジャユニット本体65cと、ダミープランジャユニット本体65c上のダミープランジャ64cとを備えている。また、
図3に示される実施形態の樹脂成形装置から第2型20を取り除く。
【0047】
次に、
図3に示される実施形態の樹脂成形装置において、トランスファ駆動機構60に代えて
図9に示される検定治具900を設置する。次に、
図9に示すように、第2プレート42上に外部校正されたロードセル等の基準検出器800を設置する。次に、たとえばボールねじ等によって、第1のトランスファ駆動軸63a、第2のトランスファ駆動軸63bおよび第3のトランスファ駆動軸63cを駆動させて検定治具900を上昇させる。これにより、検定治具900のダミープランジャ64cが基準検出器800に力を印加して、基準検出器800はダミープランジャ64cに印加された力の測定値を検出する。また、同時に、第1の検出器66a、第2の検出器66bおよび第3の検出器66cによっても、力の測定値が検出される。なお、基準検出器800は増幅器を内蔵しており、基準検出器800から出力される測定値は増幅器により増幅された値となる。
【0048】
ここで、基準検出器800は外部校正されているため、基準検出器800によって検出された力の測定値は、第1の検出器66a、第2の検出器66bおよび第3の検出器66cによって検出された検出値に基づく力の測定値よりも正確な値である。このように、基準検出器800によって検出された力の測定値を基準として、第1の検出器66a、第2の検出器66bおよび第3の検出器66cによる検出値に基づく力の測定値を校正する。実施形態の樹脂成形装置においては、当該校正値を用いることによって、プランジャ列のトランスファ出力のより正確な値を検出することが可能となる。当該校正値は、プランジャ列の列数のそれぞれに対応した値が決定される。
【0049】
なお、たとえば
図5に示される単数列のプランジャ列641を用いる場合には、基準検出器800は、
図5の平面視において、X軸方向に延在する直線741がプランジャユニット本体65で切り取られた線分の中点751に設置して校正値を決定する工程が行われる。また、
図7に示される複数列のプランジャ列643を用いる場合には、基準検出器800は、
図7の平面視において、X軸方向に延在する中心線C-Cがプランジャユニット本体65で切り取られた線分の中点752に設置されて校正値を決定する工程が行われる。
【0050】
図10に、実施形態の樹脂成形装置の要部のブロック図を示す。
図10に示すように、実施形態の樹脂成形装置は、たとえばタッチパネル等の入出力部67と、入出力部67に接続された制御部68と、制御部68に接続されたトランスファ駆動機構60と、制御部68に接続されたアンプ等の増幅器69と、増幅器69に接続された検出器66(第1の検出器66a、第2の検出器66bおよび第3の検出器66c)とを備えている。
【0051】
校正値を決定する工程において、実施形態の樹脂成形装置は、たとえば以下のように動作する。まず、入出力部67から制御部68に校正値を決定する工程を行うように指令を出力する。これにより、制御部68はトランスファ駆動軸(第1のトランスファ駆動軸63a、第2のトランスファ駆動軸63bおよび第3のトランスファ駆動軸63c)に駆動するように指令を出力する。制御部68からの指示を受けて、トランスファ駆動軸は、検定治具900を上昇させる。
【0052】
検出器66(第1の検出器66a、第2の検出器66bおよび第3の検出器66c)は、基準検出器800によるダミープランジャ64cに印加した力の測定と同時に検出を行う。次に、第1の検出器66a、第2の検出器66bおよび第3の検出器66cは、検出値を増幅器69で増幅した後に制御部68に出力する。
【0053】
その後、基準検出器800から出力されてきた力の値を基準として、第1の検出器66a、第2の検出器66bおよび第3の検出器66cから増幅器を介して出力された値により校正値を決定する。この校正値の決定は制御部68により行うことが可能である。制御部68は、記憶部を備えている。制御部68の記憶部は、プランジャ列が単数列の場合と、プランジャ列が複数(2列以上)の場合とのプランジャ列の列数に対応したそれぞれ校正値とを記憶する。制御部68は、記憶部以外にも、たとえば、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)またはHMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)などを含み得る。
【0054】
次に、
図8に示すように、校正値を決定する工程(S10)の後には、成形対象物を設置する工程(S20)が行われる。成形対象物を設置する工程(S20)は、たとえば以下のように行うことができる。まず、
図11の模式的な部分断面図に示すように、第1型10と第2型20との間に成形対象物1を設置する。
図11に示す例においては、成形対象物1は第2型20の凹部21に設置されている。成形対象物1としては、たとえばリードフレームに搭載された半導体チップ等を用いることができる。
【0055】
図12に、実施形態で用いられる第2型20の一例の模式的な平面図を示す。
図12に示すように、第2型20の第2凹部21は、プランジャ64が移動する通路でもあるポット22の片側のみに設けられている。また、
図12に示す例においては、第2凹部21の形状は矩形となっており、ポット22の形状は円形となっているが、これらの形状には限定されない。
【0056】
次に、型締めする工程(S30)が行われる。型締めする工程(S30)は、たとえば以下のように行うことができる。まず、型締機構600が可動プラテン300を上昇させ、固定された第1型10に対して第2型20を移動させ、
図13の模式的な部分断面図に示すように、第1型10と第2型20とをプレスすることによって行なうことができる。なお、第1型10と第2型20との型締めは、固定された第2型20に対して第1型10を移動させることにより行なってもよく、第1型10および第2型20の両方を移動させることにより行なってもよい。
【0057】
次に、樹脂成形する工程(S40)が行われる。樹脂成形する工程(S40)は、たとえば以下のように行なうことができる。まず、
図4に示されるトランスファ駆動機構60がプランジャユニット支持プレート62を介してプランジャユニット61を上昇させる。これにより、プランジャ64が上昇し、
図14の模式的な部分断面図に示されるように、ポット22内に供給された樹脂をポット22の外部に押し出す。
【0058】
次に、ポット22の外部に押し出された樹脂が溶融してカル部12に溜まる。次に、第1型10の凹部11と第2型20の凹部21とによって構成されたキャビティ90内に溶融後の樹脂が移送される。その後、樹脂が固化することによって成形対象物1を封止すること等によって成形対象物1の樹脂成形が行なわれる。
【0059】
図15および
図16に、実施形態の樹脂成形装置におけるプランジャ64の移動による樹脂70のキャビティ90内への移送を図解する模式的な拡大部分断面図を示す。
図15に示すように、成形対象物を設置する工程(S20)の後であって型締めする工程(S30)の前においては、ポット22内に固形の樹脂70aが設置されており、プランジャ64は固形の樹脂70aの下側に位置している。
【0060】
その後の成形対象物1を樹脂成形する工程(S40)においては、
図16に示すように、プランジャ64がポット22内の固形の樹脂70aを第1型10のカル部12に向けて押し出し、第1型10の図示しないヒータプレートによって固形の樹脂70aが溶融し、溶融した樹脂70がカル部12の内部に溜まる。その後、溶融した樹脂70は、プランジャ64の移動によって生じる圧力によって樹脂通路14を通ってキャビティ90内の成形対象物1上に移送される。その後、溶融した樹脂70が固化して、成形対象物1の樹脂成形が完了する。
【0061】
なお、上記においては、実施形態の樹脂成形装置が、
図5に示される複数のプランジャ64から構成される単数列のプランジャ列641を有するトランスファ駆動機構60を用いた場合の実施形態の樹脂成形品の製造方法について説明したが、実施形態の樹脂成形装置は、たとえば
図17の模式的平面図に示されるような第2型20を用いるとともに、たとえば
図6および
図7に示されるような複数列のプランジャ列を有するトランスファ駆動機構60に切り替えて樹脂成形品を製造することもできる。
【0062】
制御部68は、プランジャ列のトランスファ出力を制御可能に構成されている。
図18に、実施形態の樹脂成形装置の制御部68が、プランジャ列のトランスファ出力を制御する動作の一例のフローチャートを示す。制御部68は、まず、入出力部67から動作条件を取得する。ここで、動作条件には、プランジャ列の列数およびそのプランジャ列の列数に対応して予め設定されたトランスファ出力値(トランスファ出力の設定値)が含まれる。
【0063】
次に、制御部68は、動作条件に基づいて増幅器69に対して指令値(校正値)を出力する。制御部68は、プランジャ列の列数に応じて、制御部68の記憶部が記憶する校正値を出力する。すなわち、制御部68は、プランジャ列の列数が単数のトランスファ駆動機構60を用いた場合には、プランジャ列の列数が単数のときの校正値を出力する。プランジャ列の列数が単数のトランスファ駆動機構60をプランジャ列の列数が複数のトランスファ駆動機構60に交換した場合には、制御部68は、当該プランジャ列の列数に応じた校正値に切り替えて増幅器69に出力する。
【0064】
次に、制御部68は、動作条件に基づいてトランスファ駆動機構60に対して指令値(トランスファ出力の設定値)を出力する。制御部68は、プランジャ列の列数に応じて、制御部68の記憶部が記憶するトランスファ出力の設定値を出力する。たとえばプランジャ列の列数が単数の場合には、制御部68は、プランジャ列の列数が単数のときのトランスファ出力の設定値を出力する。また、たとえばプランジャ列の列数が複数の場合には、制御部68は、当該プランジャ列の列数に対応したトランスファ出力の設定値を出力する。
【0065】
次に、制御部68は、トランスファ駆動機構60のプランジャ列のトランスファ出力がトランスファ出力の設定値に到達したか否かを確認する。制御部68は、検出器66(第1の検出器66a、第2の検出器66bおよび第3の検出器66c)による検出に基づくプランジャ列のトランスファ出力値を増幅器69を通して取得する。ここで、増幅器69からのトランスファ出力値は、校正値に基づき、検出器66による検出に基づくプランジャ列のトランスファ出力値が校正された値である。そして、制御部68は、取得したトランスファ出力値がトランスファ出力の設定値に到達しているか否かを、これらの値の比較に基づき判断する。なお、トランスファ出力を生成する際の校正を、制御部68または検出器66(第1の検出器66a、第2の検出器66bおよび第3の検出器66c)で行なってもよい。さらに、制御部68と増幅器69との間に校正部を設け、この校正部でトランスファ出力を生成する際の校正を行なってもよい。
【0066】
制御部68は、プランジャ列のトランスファ出力の校正後の値がトランスファ出力の設定値に到達していると判断した場合には、トランスファ駆動機構60に対して、プランジャ列のトランスファ出力を変更する旨の指令を出力しない。すなわち、制御部68は、プランジャ列の上昇動作を停止させるようにトランスファ出力値を一定値に維持する。
【0067】
一方、制御部68が、トランスファ出力の校正後の値がトランスファ出力の設定値に到達していないと判断した場合には、トランスファ駆動機構60に対して、プランジャ列のトランスファ出力を上昇させるための指令を出力する。制御部68は、プランジャ列のトランスファ出力値がトランスファ出力の設定値に到達したと判断するときまで、トランスファ駆動機構60に対して、プランジャ列のトランスファ出力を上昇させるための指令を出力する。
【0068】
表1の左欄に、トランスファ駆動機構60に代えて
図9に示される検定治具900に実際に印加され、基準検出器によって検出されたプランジャ列のトランスファ出力値を示す。さらに、表1の中欄に、
図4および
図5に示される単数列のプランジャ列641を有するトランスファ駆動機構60を用いた実施形態の樹脂成形装置で実際に印加され、検出器66(第1の検出器66a、第2の検出器66bおよび第3の検出器66c)に基づくプランジャ列のトランスファ出力値を示す。表1の右欄に、これらの出力値の差を示す。
【0069】
表2および表3の左欄に、トランスファ駆動機構60に代えて
図9に示される検定治具900に実際に印加され、基準検出器によって検出されたプランジャ列のトランスファ出力値を示す。さらに、表2および表3の中欄に、
図6および
図7に示される2列のプランジャ列643を有するトランスファ駆動機構60を用いた実施形態の樹脂成形装置で実際に印加され、検出器66(第1の検出器66a、第2の検出器66bおよび第3の検出器66c)に基づくプランジャ列のトランスファ出力値を示す。表2および表3の右欄に、これらの出力値の差を示す。
【0070】
表1~表3における「基準検出器の出力値[kN]」の欄の数値が基準検出器800によって実際に印加されたプランジャ列のトランスファ出力値を示し、「検出器の出力値[kN]」の欄の数値が実施形態の樹脂成形装置の検出器66(第1の検出器66a、第2の検出器66bおよび第3の検出器66c)によって実際に検出された検出値に基づくプランジャ列のトランスファ出力値を示している。また、表1~表3における「差[kN]」の欄の数値は、「基準検出器の出力値[kN]」の欄の数値と「検出器の出力値[kN]」の欄の数値との差を示している。表1~表3における「差[kN]」の欄の数値が小さい方が、実際のプランジャ列のトランスファ出力の値をより正確に把握することができることを示している。
【0071】
なお、表1および表2の「検出器の出力値[kN]」は、プランジャ列の列数が単数である場合の校正値で校正した後の値を示しているのに対し、表3の「検出器の出力値[kN]」の欄の数値はプランジャ列の列数が2列である場合の校正値に基づいて演算した出力値を示している。
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
表2の「差[kN]」の欄の数値と、表3の「差[kN]」の欄の数値との比較から明らかなように、2列のプランジャ列を有するトランスファ駆動機構を用いた場合には、単数列のプランジャ列に応じた校正値に基づいて演算するよりも、2列のプランジャ列に応じた校正値に基づいて演算した方が、実際のプランジャ列のトランスファ出力の値をより正確に把握することができることが確認された。
【0076】
このように、実施形態の樹脂成形装置は、制御部が、プランジャ列の列数に応じて検出器により検出されたトランスファ出力値を校正する校正値を切り替え可能に構成されているため、プランジャ列のトランスファ出力をより正確に制御可能である。
【0077】
以上のように実施形態について説明を行なったが、上述の実施形態の各構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0078】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0079】
1 成形対象物、10 第1型、11 第1凹部、12 カル部、13 第1型プレート、14 樹脂通路、20 第2型、21 第2凹部、22 ポット、23 第2型プレート、30 第1型ホルダ、31 第1プレート、32 第1アシストブロック、40 第2型ホルダ、41 第2アシストブロック、42 第2型プレート、50 第2型ホルダ取付ブロック、60 トランスファ駆動機構、61 プランジャユニット、62 プランジャユニット支持プレート、63a 第1のトランスファ駆動軸、63b 第2のトランスファ駆動軸、63c 第3のトランスファ駆動軸、64,64a,64b プランジャ、64c ダミープランジャ、65 プランジャユニット本体、65c ダミープランジャユニット本体、66 検出器、66a 第1の検出器、66b 第2の検出器、66c 第3の検出器、67 入出力部、68 制御部、69 増幅器、70,70a 樹脂、90 キャビティ、200 第1プラテン、300 可動プラテン、400 第2プラテン、500 タイバー、600 型締機構、631a,631b,631c 中心、632,741,741a,741b 直線、641,642,643 プランジャ列、740,740a,740b 先端、751,752 中点、800 基準検出器、900 検定治具、1000 モールド機構部、2000 インローダ、3000 アウトローダ。