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特許7203739液体中の血液または血液成分を検出するためのデバイスを校正するための方法およびアセンブリ
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  • 特許-液体中の血液または血液成分を検出するためのデバイスを校正するための方法およびアセンブリ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】液体中の血液または血液成分を検出するためのデバイスを校正するための方法およびアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/49 20060101AFI20230105BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20230105BHJP
   G01N 21/01 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
G01N21/49 A
A61M1/16 113
G01N21/01 A
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2019543975
(86)(22)【出願日】2018-02-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2018053797
(87)【国際公開番号】W WO2018149921
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】102017001484.1
(32)【優先日】2017-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501276371
【氏名又は名称】フレセニウス・メディカル・ケア・ドイチュラント・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ローゼ、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ハイニッツ、シルビア
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-071036(JP,A)
【文献】特表2014-504175(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0154789(US,A1)
【文献】特開平11-326331(JP,A)
【文献】米国特許第06174728(US,B1)
【文献】特表2000-512752(JP,A)
【文献】米国特許第06372503(US,B1)
【文献】特開2004-264279(JP,A)
【文献】米国特許第06470279(US,B1)
【文献】実開平07-026766(JP,U)
【文献】特開2007-322206(JP,A)
【文献】特開昭54-028681(JP,A)
【文献】特開2011-120822(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0144459(US,A1)
【文献】米国特許第05601080(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/61
G01N 33/48-33/98
A61M 1/16-1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中、特に透析液中の血液または血液成分を検出するためのデバイスを校正するための方法であって、前記デバイスは、送光器および受光器と、前記受光器から信号を受信し、前記液体中の血液または血液成分が、前記液体を通過する放射の減衰に基づいて検出されるように設計された評価ユニットとを備え、
血液または血液成分を検出するための前記デバイスの前記校正が、血液を使用せずに、
血液における光の吸収に関して所定の光学特性を有する吸収標準器を使用し、ここにおいて、前記吸収標準器が、前記送光器と前記受光器との間のビーム経路に配置され、
血液における光の散乱に関して所定の光学特性を有する散乱標準器を使用することで実施され、ここにおいて、前記散乱標準器が、前記送光器と前記受光器との間の前記ビーム経路に配置される、
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記送光器からの光のスペクトル分布が測定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
血液または血液成分を検出するための前記デバイスの特徴的性質を示す校正データセットが決定されることを特徴とし、前記校正データセットは、血液または血液成分を検出するための前記デバイスを識別するためのデータを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記校正データセットが、血液または血液成分を検出するための前記デバイスの記憶媒体に、または中央記憶装置に記憶されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記吸収標準器が、2つの平行面を有し、さらに染料が埋め込まれた透明な流込み成形材料からできた吸収体を備えることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記透明な流込み成形材料が、2つの平行なガラス板の間に封入されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記吸収標準器が、液体、特にRO水または透析液が充填されたキュベットを備えることを特徴とし、前記吸収体は、前記キュベット内に配置される、請求項5乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記染料の透過率スペクトルが、少なくとも2つの波長範囲についての血液の透過率スペクトルに対応することを特徴とし、一方の波長範囲は、550nmから575nmの間であり、他方の波長範囲は、630から780nmの間である、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記染料が、MACROLEX(登録商標) Red Violet R であることを特徴とする、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記散乱標準器が、片側がつや消しまたは粗くされたプレートを有する散乱体を備えることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記プレートの前記つや消しされた側には、透明なラッカーまたは透明なコーティングでできたシールが設けられることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記散乱標準器が、2つのプレートを備える散乱体を有し、そのうちの一方のプレートは片側がつや消しされ、前記2つのプレートが、前記一方のプレートの前記つや消しされた側が内側にくるように互いに配置されるか、または、前記散乱標準器が、片側がつや消しされた2つのプレートを備える散乱体を有し、前記2つのプレートが、前記2つのプレートの前記つや消しされた側が内側にくるように互いに配置されることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記散乱標準器が、散乱粒子、特に不溶性塩、ポリスチレン粒子、二酸化チタン、または石膏が埋め込まれた透明な流込み成形材料からできた散乱体を備えることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記散乱標準器が、液体、特にRO水または透析液が充填されたキュベットを備えることを特徴とし、前記散乱体は、前記キュベットに配置される、請求項10乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記散乱標準器が、散乱粒子を含む液体が充填された、特に脂質含有溶液が充填されたキュベットを備えることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記光の前記スペクトル分布を測定するために、ビーム偏向ユニット、特に偏向ミラーが、前記送光器と前記受光器との間の前記ビーム経路に配置されることを特徴とし、前記ビーム偏向ユニットによって偏向された前記光は、分光計内に結合される、請求項2と請求項2を直接的または間接的に引用する請求項3乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
液体中、特に透析液中の血液または血液成分を検出するためのデバイスを校正するためのアセンブリであって、血液または血液成分を検出するための前記デバイスは、送光器および受光器と、前記受光器から信号を受信し、前記液体中の血液または血液成分が、前記液体を通過する放射の減衰に基づいて検出されるように設計された評価ユニットとを備え、血液または血液成分を検出するための前記デバイスは、ホルダに差し込まれたキュベットが前記送光器と前記受光器との間のビーム経路に配置されるように設計されたキュベットのための前記ホルダを備え、
前記アセンブリが、
前記キュベットのための前記ホルダに差し込まれることができ、さらに血液における光の吸収に関して所定の光学特性を有する吸収標準器と、
前記キュベットのための前記ホルダに差し込まれることができ、さらに血液における光の散乱に関して所定の光学特性を有する散乱標準器と、
血液または血液成分を検出するための前記デバイスの特徴的性質を示す校正データセットを決定するための評価ユニットと、を備え、前記校正データセットは、血液または血液成分を検出するための前記デバイスを識別するためのデータを含む、
ことを特徴とする、アセンブリ。
【請求項18】
前記アセンブリが、血液または血液成分を検出するための前記デバイスの前記送光器からの光のスペクトル分布を測定するための分光計を備えることを特徴とする、請求項17に記載のアセンブリ。
【請求項19】
前記吸収標準器が、2つの平行面を有し、さらに染料が埋め込まれた透明な流込み成形材料からできた吸収体を備えることを特徴とする、請求項17または18に記載のアセンブリ。
【請求項20】
前記透明な流込み成形材料が、2つの平行なガラス板の間に封入されることを特徴とする、請求項19に記載のアセンブリ。
【請求項21】
前記染料の透過率スペクトルが、少なくとも2つの波長範囲についての血液の透過率スペクトルに対応することを特徴とし、一方の波長範囲は、550nmから575nmの間であり、他方の波長範囲は、630から780nmの間である、請求項19または20に記載のアセンブリ。
【請求項22】
前記吸収標準器が、液体、特にRO水または透析液が充填され、さらに前記ホルダに差し込まれることができるキュベットを備えることを特徴とし、前記吸収体は、前記キュベットに配置される、請求項19と請求項19を直接的または間接的に引用する請求項20と21のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項23】
前記散乱標準器が、片側がつや消しされたプレートを有する散乱体を備えることを特徴とする、請求項17乃至22のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項24】
前記散乱標準器が、2つのプレートを備える散乱体を有し、そのうちの一方のプレートは片側がつや消しされ、前記2つのプレートが、前記一方のプレートの前記つや消しされた側が内側にくるように互いに配置されるか、または、前記散乱標準器が、片側がつや消しされた2つのプレートを備える散乱体を有し、前記2つのプレートが、前記2つのプレートの前記つや消しされた側が内側にくるように互いに配置されることを特徴とする、請求項17乃至22のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項25】
前記散乱標準器が、散乱粒子、特に不溶性塩、ポリスチレン粒子、または石膏が埋め込まれた透明な流込み成形材料からできた散乱体を備えることを特徴とする、請求項17乃至22のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項26】
前記散乱標準器が、液体、特にRO水または透析液が充填され、さらに前記ホルダに差し込まれることができるキュベットを備えることを特徴とし、前記散乱体は、前記キュベットに配置される、請求項23乃至25のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項27】
前記散乱標準器が、散乱粒子を含む液体が充填された、特に脂質含有溶液が充填されたキュベットを備えることを特徴とする、請求項17乃至22のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項28】
前記光の前記スペクトル分布を測定するために、ビーム偏向ユニット、特に偏向ミラーは、前記送光器と前記受光器との間の前記ビーム経路に配置されることを特徴とする、請求項18と請求項18を直接的または間接的に引用する請求項19乃至27のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体、特に透析液中の血液または血液成分を検出するためのデバイスを校正するための方法およびアセンブリに関し、当該デバイスは、送光器および受光器と、受光器から信号を受信し、液体中の血液または血液成分が、液体を通過する放射の減衰(weakening of radiation)に基づいて検出されるように設計された評価ユニットと、を備える。
【背景技術】
【0002】
透析中の患者を保護するために、万一透析器の膜が破裂した場合に起こり得る血液の透析液への進入を確実に検出することができるデバイスが使用される。これらのデバイスは、漏血検出器とも称される。
【0003】
DE202013011936U1は、透析液中の血液または血液成分を検出するためのデバイスを説明しており、当該デバイスは、第1の波長範囲の光を送信するため、および第2の波長範囲の光を送信するための送光器を備え、第1および第2の波長範囲にある光の波長は、第1の波長範囲の液体を通過する光が、第2の波長範囲の液体を通過する光よりも強く吸収されるように、波長に依存する血液または血液成分の吸収特性に適応される。さらにデバイスは、液体を通過する光を受信するための受光器と、第1および第2の波長範囲の光が吸収される可変程度に基づいて、液体中の血液または血液成分の存在が結論付けられるように構成される評価ユニットと、を備える。
【0004】
血液または血液成分を検出するための既知のデバイスは、製造後に校正されなければならない。まず、透析液またはRO水に基づくゼロ調整が実施される。この目的のために、透析液またはRO水が充填されたキュベットが、送光器と受光器との間の漏血検出器のビーム経路中に据えられる。次いで、牛の血液から得られた校正溶液を使用して校正が行われる。初めて使用されるとき、牛の血液は、そのヘマトクリット値について測定され、所定の混合比で透析液と希釈される。しかしながら、牛の血液の使用は、実際上問題があると証明されている。調達するのが高価であることに加えて、血液溶液の時間にわたる不安定性が重大な欠点である。温度揺らぎ、入射光放射および生理的(分解)プロセスにより、血液溶液の光学特性が、1作業日以内でも変化する場合もある。
【発明の概要】
【0005】
本発明が対処する課題は、液体、特に透析液中の血液または血液成分を検出するためのデバイスを校正するための簡易化された方法を提供することである。さらに本発明が対処する別の課題は、簡単な校正を可能にする、液体、特に透析液中の血液または血液成分を検出するためのデバイスを校正するためのアセンブリを提供することである。
【0006】
これらの課題は、独立請求項に記載の特徴によって本発明にしたがって解決される。従属請求項は、本発明の好ましい実施形態に関連する。
【0007】
本発明による方法は、血液または血液成分を検出するためのデバイスの校正が、血液を使用せずに実施されるという事実に基づいており、これは本方法を大いに簡易化する。校正は、血液含有校正溶液を使用して実施されないが、血液の特定の光学特性を考慮に入れた2つの異なる校正標準器(calibration standard)を使用して実施される。
【0008】
本発明による方法では、校正は、血液における光の吸収に関して所定の光学特性を有する吸収標準器(absorption standard)を使用して実施され、吸収標準器は、送光器と受光器との間のビーム経路に配置される。
【0009】
吸収標準器は、血液の成分、特にヘモグロビンに依存して光の定義されたスペクトルの減衰を特定することを可能にする。吸収標準器を使用すると、デバイスのビーム経路は、血液を検出するために標的化方式で影響を受けることができ、それにより、それが、受光器または評価ユニットがスペクトルの減衰を検出し正しく解釈することが可能であるかどうかをチェックすることが可能となる。しかしながら、血液と対照してみると、吸収標準器は散乱を引き起こさず、つまり、ビーム経路は血液とは異なって影響を受ける。それゆえ、吸収標準器は血液の代替物とみなされることはできない。
【0010】
製造公差により、血液中、特に赤血球による光の散乱は、血液の検出に悪影響を及ぼす場合もある。赤血球の散乱効果は、ビーム経路の均質化につながる。しかしながら、構成要素またはアセンブリ公差が守られていないためにビーム経路が仕様に準拠するようにされていない場合、光散乱による均質化効果は、測定誤りを引き起こす場合もある。この場合、血液を検出するためのデバイスの十分な感度が確保されないことになる。それゆえ、校正は、吸収標準器を使用して実施されるだけでなく、血液における光の散乱に関して所定の光学特性を有する散乱標準器(scattering standard)も使用して実施される。吸収標準器のように、散乱標準器は、送光器と受光器との間のビーム経路に配置される。
【0011】
吸収標準器および散乱標準器が血液を含まないので、調達するのが高価であり時間にわたって不安定であるという課題は生まれない。校正は、取り扱いやすい、血液を含まない吸収標準器および散乱標準器を使用していつでも実施されることができる。
【0012】
吸収標準器および散乱標準器の所定の光学特性は、それぞれ光の吸収の観点および光の散乱の観点から、血液、特に人間の血液の光学特性に対応することを意図している。しかしながら、校正のために、吸収標準器および散乱標準器の光学特性が血液の光学特性と同一である必要はなく、実際上は、吸収標準器および散乱標準器が同様の光学特性を有することが十分である。校正されることになる血液を検出するためのデバイスが、様々な波長範囲の光の異なる吸収の評価に基づく場合、吸収標準器および散乱標準器の光学特性は、少なくとも関連した波長範囲の血液の光学特性に対応することを意図している。例えば、吸収標準器の透過率スペクトル(transmittance spectrum)は、少なくとも2つの波長範囲についての血液の透過率スペクトルに対応することを意図し、一方の波長範囲は、550nmから575nmの間であり、他方の波長範囲は、630から780nmの間である。このコンテキストでは、吸収および散乱に関する所定の光学特性は、血液の光学特性であると理解される。使用される吸収標準器および散乱標準器の関連した光学特性は、既知の測定方法を使用して決定されることができ、続いて、それらの特性が血液の特性と十分に合致するかどうかがチェックされることができる。
【0013】
血液または血液成分を検出するためのデバイスにおいて、送光器からの光のスペクトル分布もまた、血液検出の精度に影響する。それゆえ本発明による方法は、送光器からの光のスペクトル分布の測定値を提供する。特に、本発明による方法は、使用される波長範囲のスペクトルの測定値を提供する。
【0014】
校正中に、血液または血液成分を検出するためのデバイスの特徴的性質を示す校正データセットが好ましくは決定される。校正データセットは、例えば、受光器からの信号を評価するときに考慮に入れられる補正データを含み得る。補正データは、例えば補正係数であり得る。校正データセットは、送光器からの光のスペクトル分布を示すデータも含み得る。さらに校正データセットは、血液または血液成分を特定するための校正されたデバイスを識別するためのさらなるデータを含み、それゆえ、決定された校正データセットは、血液を検出するための個々のデバイスに割り当てられることができる。
【0015】
決定された校正データセットは、好ましくは、血液または血液成分を検出するためのデバイスの記憶媒体に、または中央記憶装置の記憶媒体、例えばサーバの記憶媒体に記憶される。校正データセットがテストベッド上のサーバの記憶媒体に記憶される場合、データは、後の時点で好適なインターフェースを介して読み出されることができる。識別データは、例えばシリアルナンバまたはMACアドレスであり得る。
【0016】
吸収標準器は、好ましくは2つの平行面を有する吸収体(absorption body)を備え、その結果、光は一方の表面を通じて入り、他方の表面から出ることができる。平行平面カラーフィルタ(plane-parallel colour filter)が使用される場合、これはビーム経路に正確に置かれて配向される必要があり、これは、好適な設計手段によって、例えば好適なフィルタホルダによって達成されることができる。
【0017】
吸収標準器の好ましい実施形態は、吸収体が、染料が埋め込まれた透明な流込み成形材料(casting compound)であることを提供する。染料粒子が流込み成形材料に入れられるので、染料粒子は、安定的かつ均質に分散することができる。流込み成形材料に染料を埋め込むことは、所定の光学特性を有し、および高い長期安定性によって特徴付けられる吸収体を複製可能に製造することを可能にする。
【0018】
試験では、ポリメチルメタクリレート(PMMA:polymethyl methacrylate)が流込み成形材料として特に有利であることが証明されている。平行平面カラーフィルタを製造するために、染料は、液体の流込み成形材料、特にPMMAに溶解され、溶液は、2つの平行面を有する本体の形態で、例えば平面の丸いまたは矩形のプレートの形態で硬化される。しかしながら、硬化されたブロックから2つの平行面を有する本体を切り取ることも可能である。吸収体の表面は、好適なプロセスを使用して処理され得、例えばそれらは、平滑な表面を作り出すために研磨またはつや出しされ得る。
【0019】
染料の光学特性は、血液の光学特性に実質的に対応することを意図している。染料の透過率スペクトルは、少なくとも使用される波長範囲、特に2つの波長範囲についての血液の透過率スペクトルに対応することを意図し、一方の波長範囲は、550nmから575nmの間であり、他方の波長範囲は、630から780nmの間である。
【0020】
試験では、Lanxess Deutschland GmbH社からの商品名 MACROLEX(著作権) RED VIOLET R で知られる染料が特に好適であることが示された。この染料の透過率スペクトルは血液の透過率スペクトルと同一ではないが、ここで関連する波長範囲の光学特性は、染料がスペクトルの減衰のために使用されることができる程度に血液の光学特性と合致している。
【0021】
吸収標準器の別の好ましい実施形態は、透明な流込み成形材料が2つの平行なガラス板の間に封入される(encapsulated)ことを提供し、これは、ガラス板および流込み成形材料を通して光学的に均質の光路を作り出す。
【0022】
吸収標準器の別の好ましい実施形態は、その中に吸収体が配置される、液体が充填されたキュベットを備える。キュベットは、好ましくはガラスキュベット、特に円筒状のガラスキュベットである。
【0023】
キュベットには、光学的に透明および無色であることによって特徴付けられる透析液が充填されることができる。しかしながら、透析液は長期的には安定性がない。それゆえ、特に好ましい実施形態は、逆浸透浄化プロセスを使用して用意された水(RO水)を当該キュベットに充填することを提供する。ポリエチレングリコール(PEG:polyethylene glycol)を添加することによって、細菌がRO水中に発生するリスクをさらに低減することができ、つまり長期安定性をさらに増加させることができる。キュベットにRO水を充填することはまた、キュベットから吸収標準器の吸収体への移行間の屈折率が、同様に好ましくはRO水が充填されているが吸収体を含まない、血液を検出するためのデバイスのゼロ調整のための校正標準器に調整されるという利点も有する。
【0024】
散乱標準器の好ましい実施形態は、片側がつや消しまたは粗くされた散乱体(scattering body)を設ける。散乱体は、例えば矩形または丸いプレートであり得る。プレートは、好ましくはガラスプレートである。プレートは、好適な処理によってつや消しにされ得る。例えば、プレートの表面はサンドブラストまたはエッチングされ得る。プレートのつや消しの側面には、透明なラッカーまたは透明なコーティングでできたシールが設けられ得、その結果、光学特性は、プレートが入れられ得る液体によって変化できない。コーティングは、好ましくはエポキシ樹脂の層である。
【0025】
改善された測定効果によって特徴付けられる、散乱標準器の特に好ましい実施形態は、散乱標準器が、2つのプレートを備える散乱体を有することを提供し、そのうちの一方のプレートは、片側がつや消しまたは粗くされており、2つのプレートは、当該一方のプレートのつや消しまたは粗くされた側面が内側にくるように互いに付着して配置される。特に好ましい代替的な実施形態は、片側がつや消しまたは粗くされた2つのプレートを備える散乱体を提供し、2つのプレートは、2つのプレートのつや消しの側面が内側にくるように互いに付着して配置される。2つのプレートは、互いに接着されることができる。これらの実施形態でも、当該一方のプレートのつや消しまたは粗くされた側面もしくは2つのプレートのつや消しまたは粗くされた側面は、液体と接触することはできない。
【0026】
散乱標準器はまた、散乱粒子、特に不溶性塩、ポリスチレン粒子(polystyrene particle)、または石膏が埋め込まれた透明な流込み成形材料からできた散乱体も備え得る。
【0027】
吸収標準器のように、散乱標準器は、その中に散乱体が配置される、液体、好ましくは透析液またはRO水が充填されたキュベットを備える。吸収標準器のキュベットのように、散乱標準器のキュベットは、血液を検出するためのデバイスの送光器と受光器との間のビーム経路に差し込まれる。
【0028】
固体の散乱体を設けない代替的な実施形態では、散乱標準器は、散乱粒子を含む液体が充填されたキュベットを備える。キュベットには、好ましくは液体に溶解した脂質が充填される。キュベットには、例えば、Fresenius Kabi AG社からの商品名 Smoflipid または Intralipid で知られる非経口の栄養溶液が充填され得る。
【0029】
しかしながら、散乱粒子を含む液体を、2つの透明なプレート、特にガラスプレート間の空間に投入することによって散乱体を作り出すことも可能であり、当該空間は外側からシールされている。この散乱体は、次に、液体、特に透析液またはRO水が充填されたキュベット内の、血液または血液成分を検出するためのデバイスのビーム経路に差し込まれることができる。
【0030】
光のスペクトル分布を測定するために、好ましくはビーム偏向ユニット、特に偏向ミラーが、送光器と受光器との間のビーム経路に配置される。偏向ミラーは、光を45°だけ偏向することができ、その結果、光は容易に分光計(spectrometer)内に結合されることができる。ミラーの反射率は、約350nmから800nmの関連した波長範囲においてできる限り高く、および一定であることを理想的には意図しており、その結果、わずかな光は反射によりなくなる。
【0031】
本発明によるアセンブリは、液体中の血液または血液成分を検出するためのデバイスを校正することを意図しており、当該デバイスは、ホルダに差し込まれたキュベットが送光器と受光器との間のビーム経路に配置されるように設計された、キュベットのためのホルダを備える。
【0032】
本発明によるアセンブリは、キュベットのためのホルダに差し込まれることができ、および血液における光の吸収に関して所定の光学特性を有する吸収標準器と、キュベットのためのホルダに差し込まれることができ、および血液における光の散乱に関して所定の光学特性を有する散乱標準器と、を備える。さらに、アセンブリは、血液または血液成分を検出するためのデバイスの特徴的性質を示す校正データセットを決定するための評価ユニットを備え、当該校正データセットは、血液または血液成分を検出するためのデバイスを識別するためのデータを含む。アセンブリはまた、血液または血液成分を検出するためのデバイスの送光器からの光のスペクトル分布を測定するための分光計も備え得る。
【0033】
本発明は、以下の図面を参照して、下記により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】透析液中の血液または血液成分を検出するためのデバイスを備える体外血液処理のための装置の簡易化された概略図である。
図2】キュベットがビーム経路中に据えられている、血液または血液成分を検出するためのデバイスの断面図である。
図3】ビーム偏向ユニットがビーム経路中に据えられている、血液または血液成分を検出するためのデバイスの断面図である。
図4】ゼロ調整のためのキュベットの簡易図である。
図5】吸収標準器の簡易図である。
図5A】吸収標準器の吸収体の第1の実施形態の簡易図である。
図5B】吸収標準器の吸収体の第2の実施形態の簡易図である。
図6】散乱標準器の簡易図である。
図6A】散乱標準器の散乱体の第1の実施形態の簡易図である。
図6B】散乱標準器の散乱体の第2の実施形態の簡易図である。
図7】散乱標準器の別の実施形態の簡易図である。
【詳細な説明】
【0035】
図1は、体外血液処理のための装置、例えば透析装置の非常に簡易化された概略図である。体外血液処理装置は、透析器またはフィルタ1を備え、それは、半透膜2によって血液チャンバ3と透析液チャンバ4に分けられている。動脈血ライン5は、患者から血液チャンバ3に通じ、一方、静脈血ライン6は、血液チャンバ3から遠ざかり患者に通じる。動脈血ライン5に配置された血液ポンプ7は、体外血液回路Iにおいて血液を運搬する。透析装置の透析液ブランチIIは、略図でしか示されていない。透析液ブランチIIは、透析液チャンバ4に通じる透析液供給ライン8と、透析液チャンバ4から遠ざかる透析液除去ライン9とを備える。さらに血液処理装置は、個々の構成要素、例えば血液ポンプ7を制御する、中央制御ユニット10を備える。
【0036】
万一透析器1の膜2が破裂した場合、患者の血液は透析液に入ることになる。それゆえ、血液処理装置は、透析液中の血液または血液成分、特にヘモグロビンを検出するためのデバイス11を有する。
【0037】
図2は、血液または血液成分を検出するためのデバイス11の本質的な構成要素を示す。デバイスは、キュベット14がその中に収まることができる、ホルダ13を有する収容体12を備える。
【0038】
キュベット14のためのホルダ13は、第1の開口絞り15および第2の開口絞り16を有する。送光器17が2つの開口絞りのうちの一方の開口絞り16の前に配置され、受光器18が他方の開口絞り17の前に配置され、その結果、ビーム経路19が一方の開口絞り16を通過し、キュベット14に入り、キュベットを出て、他方の開口絞り15を通過し、受光器18に衝突する。キュベットは、透析液除去ライン9の構成要素であり、それゆえ、透析液がキュベットを流れる。
【0039】
送光器17、例えば二色LEDは、550nmから575nmの間、好ましくは555nmから570nmの間、特に好ましくは560nmから565nmの間の波長を有する緑色の光と、630nmから780nmの間、好ましくは630nmから675nmの間、特に好ましくは640nmから660nmの間の波長を有する、近赤外範囲(NIR)に達する光または赤色の光を交互に発する。受光器18は、受信された光の強度に比例する出力信号を生成する。評価ユニット20が、受光器からの信号を評価するために設けられるが、図2では概略的にしか示されていない。
【0040】
放射および送信された光の強度I0、I1の関係は、以下の式(ランベルト・ベールの法則)を示す。
lg(I1/I0)=-αcd
ここで、αは吸収係数であり、cは液体の濃度であり、dはキュベットの内径である。
【0041】
評価ユニット20は、光の強度に比例する受光器18からの出力信号を受信し、第1の波長範囲の光の強度と第2の波長範囲の光の強度とを互いに比較する。透析液への血液または血液成分、特にヘモグロビンの進入は、光の測定された強度の比較に基づいて結論付けられる。測定信号を評価するために、特徴的制限値が指定されることができる。例えば、DE3726524A1に説明されている方法が、評価のために使用されることができる。
【0042】
測定された値を評価するとき、評価ユニット20は校正データセットに含まれるデータを考慮に入れ、それは、送光器17からの光のスペクトル分布または校正中に決定される補正係数を含み得る。校正データセットは、評価ユニット20の記憶媒体20Aに記憶される。
【0043】
以下に、血液または血液成分を検出するためのデバイス11の、血液を含まない校正のためのアセンブリが説明される。
【0044】
校正のために様々な測定値が得られ、測定された値は、校正中に決定される血液または血液成分を検出するためのデバイス11の特徴的性質を示す校正データセットを決定する評価ユニット21を使用して評価される。血液または血液成分を検出するためのデバイスを識別するために、校正データセットは、さらなるデータ、例えばシリアルナンバまたはMACアドレスを含む。校正データセットは、データライン(図示せず)を介して、血液または血液成分を検出するためのデバイス11の評価ユニット20の記憶媒体20Aに入力されることができ、その結果、測定された値は、校正データセットに基づいて血液または血液成分を検出するために評価されることができる。代替的に、校正データセットはまた、中央記憶デバイス(サーバ)(図示せず)の記憶媒体にも記憶されることができ、そこからデータは次いで、血液または血液成分を検出するためのデバイス11の評価ユニット20に、または血液処理装置の中央制御ユニット10の記憶媒体に入力されることができ、その結果、評価ユニット20はデータにアクセスすることができる。
【0045】
血液または血液成分を検出するためのデバイス11のホルダ13に差し込まれる、用意されたキュベットが校正のために使用され、それにより様々な測定値を得ることが可能となる。校正は、連続して横断される個別の校正ゾーンにおいて実施される。個別の測定値が校正ゾーンで得られ、測定された値は、校正状態を評価するためのユニット21において評価される。
【0046】
第1の校正ゾーンでは、血液または血液成分を検出するためのデバイス11の送光器17のスペクトル、特に緑色および赤色の光のスペクトルが測定される。測定のために、キュベットではなくビーム偏向ユニット22が、血液または血液成分を検出するためのデバイス11のホルダ13に収められる。図3は、血液または血液成分を検出するためのデバイス11を、ビーム偏向ユニット22と共に示す。
【0047】
ビーム偏向ユニット22は、その中に偏向ミラー24が配置された収容体23を備え、当該偏向ミラーは、ビーム経路19と共に45°の角度を含む。ミラーではなくプリズムが、ビーム経路に同等に良好に配置され得る。ビーム経路19では、開口絞り25がミラー24の前に置かれ、1つの実施形態では、コサインコレクタ(cosine corrector)26がミラーの後ろに置かれ、それによって、データライン28Aを介して評価ユニット22に接続された分光計27内に光が結合される。スペクトル測定値は、ヘモグロビンの吸収に関連してスペクトルの位置を判定するために使用される。
【0048】
RO水に基づくゼロ調整が第2の校正ゾーンで行われ、PEGが好ましくはこの水に添加される(1%のPEG溶液)。このステップでは、送光器17からの光の強度が測定されることができる。ゼロ調整のために、RO水が充填されたキュベットが、送光器17と受光器18との間の血液または血液成分を検出するためのデバイスのビーム経路に差し込まれ、その結果、送光器からの光が、キュベットを通過し、受光器に衝突することができる。受光器18からの出力信号は、校正状態を評価するためのユニット21を使用して評価される。評価ユニットは、データライン28Bを介して受光器18から信号を受信する。
【0049】
図4は、ゼロ調整のための円筒状のガラスキュベット29の側面図と平面図であり、それはシール部29A、29Bによって上部と下部でシールされている。
【0050】
所定のスペクトルの減衰について、指定された出力信号が生成されるかどうかをチェックするために、吸収が、吸収標準器を使用して第3の校正ゾーンで測定される。吸収測定のために、血液または血液成分を検出するためのデバイス11のホルダ13に吸収標準器が差し込まれ、その結果、送光器17からの光は吸収標準器を通過し、受光器18に衝突することができる。受光器18からの出力信号は、評価ユニット21において評価される。
【0051】
図5は、シール部31A、31Bによって上部と下部でシールされている円筒状のガラスキュベット31を備える吸収標準器30を示す。ガラスキュベット31には、RO水またはRO水とPEGの溶液が充填されている。吸収体32がキュベットに配置されている。2つのシール部31A、31Bは、吸収体32のための取付け台として設計されている。
【0052】
図5Aは、吸収体32の第1の実施形態を示す。この実施形態では、吸収体は、つや出しされた表面を有し、および染料、MACROLEX(著作権) Red Violet R の均質分散を含む流込み成形材料からできたプレート33である。流込み成形材料は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)である。プレートは、ブロックから切り取られ得るか、または流込み成形材料は、プレートの形態の鋳造物であり得る。図5Bは、プレート33が2つの平行なガラス板34、35間に封入される代替的な実施形態を示す。
【0053】
第4の校正ゾーンでは、吸収標準器30に代えて、血液または血液成分を検出するためのデバイス11のホルダ13に差し込まれる散乱標準器を使用して、血液の散乱効果が模倣される。受光器18からの出力信号は、評価ユニット21によって再度評価される。
【0054】
図6は、シール部37A、37Bによって上部と下部でシールされており、およびその中に散乱体38が配置された、円筒状のガラスキュベット37を備える散乱標準器36を示す。2つのシール部37A、37Bは、散乱体38のための取付け台として設計されている。キュベット37には、RO水またはRO水とPEGの溶液が充填されている。
【0055】
図6Aは、散乱体38の第1の実施形態を示す。この実施形態では、散乱体38は、片側40がつや消しまたは粗くされたガラスプレート39である。図6Bは、互いに接着された2つのガラスプレート41、42を備える散乱体38の代替的な実施形態を示す。2つのガラスプレート41、42は、内面41A、42Bがつや消しまたは粗くされている。しかしながら、2つのガラスプレートのうちの一方だけの内面がつや消しまたは粗くされることが可能である。
【0056】
しかしながら、吸収体のように散乱体もまた、染料に代えて、均質に分散するように散乱粒子が添加された透明な流込み成形材料からでき得る。散乱粒子は、不溶性塩、ポリスチレン粒子、二酸化チタン、または石膏であり得る。
【0057】
図7は、散乱体の代わりに散乱液(scattering liquid)44を含む散乱標準器43の実施形態を示す。散乱液は、例えば脂質含有溶液である。例えば、Fresenius Kabi AG社からの商品名 Smoflipid または Intralipid で知られる非経口の栄養溶液が使用され得る。散乱標準器44は、散乱液44が充填されたキュベット45を備える。
以下に、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
液体、特に透析液中の血液または血液成分を検出するためのデバイスを校正するための方法であって、前記デバイスは、送光器および受光器と、前記受光器から信号を受信し、前記液体中の血液または血液成分が、前記液体を通過する放射の減衰に基づいて検出されるように設計された評価ユニットとを備え、
血液または血液成分を検出するための前記デバイスの前記校正が、血液を使用せずに、
血液における光の吸収に関して所定の光学特性を有する吸収標準器を使用することと、前記吸収標準器が、前記送光器と前記受光器との間のビーム経路に配置され、
血液における光の散乱に関して所定の光学特性を有する散乱標準器を使用することと、前記散乱標準器が、前記送光器と前記受光器との間の前記ビーム経路に配置される、
を行って実施されることを特徴とする、方法。
[C2]
前記送光器からの光のスペクトル分布が測定されることを特徴とする、C1に記載の方法。
[C3]
血液または血液成分を検出するための前記デバイスの特徴的性質を示す校正データセットが決定されることを特徴とし、前記校正データセットは、血液または血液成分を検出するための前記デバイスを識別するためのデータを含む、C1または2に記載の方法。
[C4]
前記校正データセットが、血液または血液成分を検出するための前記デバイスの記憶媒体に、または中央記憶装置に記憶されることを特徴とする、C3に記載の方法。
[C5]
前記吸収標準器が、2つの平行面を有し、および染料が埋め込まれた透明な流込み成形材料からできた吸収体を備えることを特徴とする、C1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
[C6]
前記透明な流込み成形材料が、2つの平行なガラス板の間に封入されることを特徴とする、C5に記載の方法。
[C7]
前記吸収標準器が、液体、特にRO水または透析液が充填されたキュベットを備えることを特徴とし、前記吸収体は、前記キュベット内に配置される、C5乃至6のいずれか一項に記載の方法。
[C8]
前記染料の透過率スペクトルが、少なくとも2つの波長範囲についての血液の透過率スペクトルに対応することを特徴とし、一方の波長範囲は、550nmから575nmの間であり、他方の波長範囲は、630から780nmの間である、C5乃至7のいずれか一項に記載の方法。
[C9]
前記染料が、MACROLEX(著作権) Red Violet R であることを特徴とする、C5乃至7のいずれか一項に記載の方法。
[C10]
前記散乱標準器が、片側がつや消しまたは粗くされたプレートを有する散乱体を備えることを特徴とする、C1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
[C11]
前記プレートの前記つや消しの側面には、透明なラッカーまたは透明なコーティングでできたシールが設けられることを特徴とする、C10に記載の方法。
[C12]
前記散乱標準器が、2つのプレートを備える散乱体を有し、そのうちの一方のプレートは片側がつや消しであり、前記2つのプレートが、前記一方のプレートの前記つや消しの側面が内側にくるように互いに配置されるか、または、前記散乱標準器が、片側がつや消しである2つのプレートを備える散乱体を有し、前記2つのプレートが、前記2つのプレートの前記つや消しの側面が内側にくるように互いに配置されることを特徴とする、C1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
[C13]
前記散乱標準器が、散乱粒子、特に不溶性塩、ポリスチレン粒子、二酸化チタン、または石膏が埋め込まれた透明な流込み成形材料からできた散乱体を備えることを特徴とする、C1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
[C14]
前記散乱標準器が、液体、特にRO水または透析液が充填されたキュベットを備えることを特徴とし、前記散乱体は、前記キュベットに配置される、C10乃至13のいずれか一項に記載の方法。
[C15]
前記散乱標準器が、散乱粒子を含む液体が充填された、特に液体に溶解した脂質が充填されたキュベットを備えることを特徴とする、C1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
[C16]
前記光の前記スペクトル分布を測定するために、ビーム偏向ユニット、特に偏向ミラーが、前記送光器と前記受光器との間の前記ビーム経路に配置されることを特徴とし、前記ビーム偏向ユニットによって偏向された前記光は、分光計内に結合される、C1乃至15のいずれか一項に記載の方法。
[C17]
液体、特に透析液中の血液または血液成分を検出するためのデバイスを校正するためのアセンブリであって、前記デバイスは、送光器および受光器と、前記受光器から信号を受信し、前記液体中の血液または血液成分が、前記液体を通過する放射の減衰に基づいて検出されるように設計された評価ユニットとを備え、血液または血液成分を検出するための前記デバイスは、ホルダに差し込まれたキュベットが前記送光器と前記受光器との間のビーム経路に配置されるように設計されたキュベットのための前記ホルダを備え、
前記アセンブリが、
前記キュベットのための前記ホルダに差し込まれることができ、および血液における光の吸収に関して所定の光学特性を有する吸収標準器と、
前記キュベットのための前記ホルダに差し込まれることができ、および血液における光の散乱に関して所定の光学特性を有する散乱標準器と、
血液または血液成分を検出するための前記デバイスの特徴的性質を示す校正データセットを決定するための評価ユニットと、前記校正データセットは、血液または血液成分を検出するための前記デバイスを識別するためのデータを含む、
を備えることを特徴とする、アセンブリ。
[C18]
前記アセンブリが、血液または血液成分を検出するための前記デバイスの前記送光器からの光のスペクトル分布を測定するための分光計を備えることを特徴とする、C17に記載のアセンブリ。
[C19]
前記吸収標準器が、2つの平行面を有し、および染料が埋め込まれた透明な流込み成形材料からできた吸収体を備えることを特徴とする、C17または18に記載のアセンブリ。
[C20]
前記透明な流込み成形材料が、2つの平行なガラス板の間に封入されることを特徴とする、C19に記載のアセンブリ。
[C21]
前記染料の透過率スペクトルが、少なくとも2つの波長範囲についての血液の透過率スペクトルに対応することを特徴とし、一方の波長範囲は、550nmから575nmの間であり、他方の波長範囲は、630から780nmの間である、C19または20に記載のアセンブリ。
[C22]
前記吸収標準器が、液体、特にRO水または透析液が充填され、および前記ホルダに差し込まれることができるキュベットを備えることを特徴とし、前記吸収体は、前記キュベットに配置される、C17乃至21のいずれか一項に記載のアセンブリ。
[C23]
前記散乱標準器が、片側がつや消しであるプレートを有する散乱体を備えることを特徴とする、C17乃至22のいずれか一項に記載のアセンブリ。
[C24]
前記散乱標準器が、2つのプレートを備える散乱体を有し、そのうちの一方のプレートは片側がつや消しであり、前記2つのプレートが、前記一方のプレートの前記つや消しの側面が内側にくるように互いに配置されるか、または、前記散乱標準器が、片側がつや消しである2つのプレートを備える散乱体を有し、前記2つのプレートが、前記2つのプレートの前記つや消しの側面が内側にくるように互いに配置されることを特徴とする、C17乃至22のいずれか一項に記載のアセンブリ。
[C25]
前記散乱標準器が、散乱粒子、特に不溶性塩、ポリスチレン粒子、または石膏が埋め込まれた透明な流込み成形材料からできた散乱体を備えることを特徴とする、C17乃至22のいずれか一項に記載のアセンブリ。
[C26]
前記散乱標準器が、液体、特にRO水または透析液が充填され、および前記ホルダに差し込まれることができるキュベットを備えることを特徴とし、前記散乱体は、前記キュベットに配置される、C23乃至25のいずれか一項に記載のアセンブリ。
[C27]
前記散乱標準器が、散乱粒子を含む液体が充填された、特に液体に溶解した脂質が充填されたキュベットを備えることを特徴とする、C17乃至22のいずれか一項に記載のアセンブリ。
[C28]
前記光の前記スペクトル分布を測定するために、ビーム偏向ユニット、特に偏向ミラーは、前記送光器と前記受光器との間の前記ビーム経路に配置されることを特徴とする、C17乃至27のいずれか一項に記載のアセンブリ。
図1
図2
図3
図4
図5
図5A
図5B
図6
図6A
図6B
図7