(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】スイッチャブル層および少なくとも1つの光学層を有する光学デバイス
(51)【国際特許分類】
G02F 1/137 20060101AFI20230105BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20230105BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20230105BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20230105BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20230105BHJP
E06B 9/24 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
G02F1/137
G02B5/30
G02F1/13 505
G02F1/13363
G02F1/1335 520
E06B9/24 C
(21)【出願番号】P 2019561906
(86)(22)【出願日】2018-05-08
(86)【国際出願番号】 EP2018061797
(87)【国際公開番号】W WO2018206545
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-05-07
(32)【優先日】2017-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593033142
【氏名又は名称】メルク・パテント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent GmbH
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250, 64293 Darmstadt
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ティース デ ヨング
(72)【発明者】
【氏名】カスパー ファン オーステン
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0378205(US,A1)
【文献】特表2013-521521(JP,A)
【文献】特表2012-502322(JP,A)
【文献】特表2007-515661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/137
G02B 5/30
G02F 1/13
G02F 1/13363
G02F 1/1335
E06B 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのスイッチャブル層(15)と、少なくとも1つの光学層(20、22)とを含む層構造を有するスイッチャブル光学デバイス(10)であって、
少なくとも1つの前記スイッチャブル層(15)は、液晶材料および少なくとも1つの染料を有する、スイッチャブル光学デバイス(10)において、
少なくとも1つの前記光学層(20、22)は、可視スペクトルの少なくとも1つの第1部分を含む少なくとも1つの反射帯域(32)と、可視スペクトルの少なくとも1つの第2部分を含む少なくとも1つの透過帯域(30、34)とを有し、
少なくとも1つの前記スイッチャブル層(15)の吸収スペクトルは、少なくとも1つの前記染料によって調整されており、これにより、可視スペクトルにおける入射光に対し、前記スイッチャブル光学デバイス(10)を通る光透過は、前記スイッチャブル層(15)の少なくとも1つの状態について、あらかじめ定められる透過スペクトルに設定され、
少なくとも1つの前記染料は、前記スイッチャブル光学デバイス(10)の前記透過スペクトルが、可視スペクトルに対し、少なくとも1つの前記スイッチャブル層(15)の少なくとも1つの前記状態について、無彩色であるように選択され、
無彩色の前記透過スペクトルを得るために、少なくとも1つの前記染料の前記吸収スペクトルが、少なくとも1つの前記光学層(20、22)の少なくとも1つの前記透過帯域と相補的になるように調整され、
少なくとも1つの前記反射帯域(32)内に波長を有する光の少なくとも10%は、少なくとも1つの前記光学層(20、22)によって反射され、
少なくとも1つの前記透過帯域(30、34)内に波長を有する光の少なくとも95%は、少なくとも1つの前記光学層(20、22)によって透過される、
ことを特徴とする、スイッチャブル光学デバイス(10)。
【請求項2】
少なくとも1つの前記スイッチャブル層(15)は、少なくとも1つの明状態および暗状態を有し、
前記可視スペクトルにおける光に対し、C(λ)=(1-R(λ))×(T
B(λ)-T
D(λ))によって定められかつ前記可視スペクトルにわたって平均化されるコントラストCは、少なくとも0.5であり、ただしRは、前記スイッチャブル光学デバイス(10)によって反射される光の強度であり、T
Bは、前記明状態において前記スイッチャブル光学デバイス(10)を通して透過される光の強度であり、T
Dは、前記暗状態において前記スイッチャブル光学デバイス(10)を通して透過される光の強度である、ことを特徴とする、請求項1記載のスイッチャブル光学デバイス(10)。
【請求項3】
前記層構造は、第1透明基板(12)と、第1透明電極層(24)と、少なくとも1つの前記スイッチャブル層(15)と、第2透明電極層(26)と、第2透明基板(14)とをこの順序で有する、ことを特徴とする、請求項1または2記載のスイッチャブル光学デバイス(10)。
【請求項4】
少なくとも1つの前記反射帯域における少なくとも1つの前記光学層(20、22)の反射は、偏光に依存し、第1直線偏光の光は、第2直線偏光の光よりも強く反射される、ことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のスイッチャブル光学デバイス(10)。
【請求項5】
前記第1直線偏光の反射光の強度と、前記第2直線偏光の反射光の強度との比として定められる、少なくとも1つの前記反射帯域における、少なくとも1つの前記光学層(20、22)の偏光コントラストは、少なくとも2である、ことを特徴とする、請求項4記載のスイッチャブル光学デバイス(10)。
【請求項6】
少なくとも1つの前記光学層(20、22)は、コレステリック層であり、少なくとも1つの前記反射帯域における光の反射は、偏光に依存し、第1円偏光の光は、第2円偏光の光よりも強く反射される、ことを特徴とする、請求項1から
3までのいずれか1項記載のスイッチャブル光学デバイス(10)。
【請求項7】
前記コレステリック層および4分の1波長リターダ層は、少なくとも1つの前記スイッチャブル層(15)の一方の面に配置されており、前記4分の1波長リターダ層は、少なくとも1つの前記スイッチャブル層(15)を向いており、前記4分の1波長リターダ層により、透過された前記第2円偏光が直線偏光に変更される、ことを特徴とする、請求項
6記載のスイッチャブル光学デバイス(10)。
【請求項8】
前記第1
円偏光の反射光
の強度と、前記第2
円偏光の反射光
の強度との比として定められる、少なくとも1つの前記反射帯域における、少なくとも1つの前記光学層(20、22)の偏光コントラストは、少なくとも2である、ことを特徴とする、請求項
6または7記載のスイッチャブル光学デバイス(10)。
【請求項9】
少なくとも1つの前記スイッチャブル層(15)は、可視スペクトルに対し、少なくとも1つの状態において、第1
直線偏光の透過光の強度と、前記第1
直線偏光と直交する第2
直線偏光の透過光の強度との比として定められる、2より大のダイクロイックコントラストを有し、
少なくとも1つの前記光学層(20、22)によって大部分が透過され
る偏光は、少なくとも1つの前記スイッチャブル層(15)において大部分の吸収が行われるのと同じ偏光である、ことを特徴とする、請求項4
または5記載のスイッチャブル光学デバイス(10)。
【請求項10】
前記スイッチャブル光学デバイス(10)は、少なくとも2つの光学層(20、22)を有する、ことを特徴とする、請求項1から
9までのいずれか1項記載のスイッチャブル光学デバイス(10)。
【請求項11】
可視スペクトルの少なくとも第1部分を含む少なくとも1つの反射帯域と、可視スペクトルの少なくとも1つの第2部分を含む少なくとも1つの透過帯域とを有する、少なくとも1つの前記光学層は、反射層である、ことを特徴とする、請求項1から
10までのいずれか1項記載のスイッチャブル光学デバイス(10)。
【請求項12】
請求項1から
11までのいずれか1項記載の少なくとも1つのスイッチャブル光学デバイス(10)を有するスイッチャブルウィンドウ。
【請求項13】
建造物または乗物におけるウィンドウとしての、請求項
12記載のスイッチャブルウィンドウの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの状態を有する1つのスイッチャブル層と、少なくとも1つの光学層とを含む層構造を有する光学デバイスに関し、このスイッチャブル層は、液晶材料および少なくとも1つの染料を有する。本発明の別の態様は、このような光学デバイスを有するスイッチャブルウィンドウと、スイッチャブルウィンドウの使用方法とに関する。
【0002】
R. Baetens等による総説論文"Properties, requirements and possibilities of smart windows for dynamic daylight and solar energy control in buildings: A state-of-the-art review"、Solar Energy Materials & Solar Cells 94 (2010)の第87~105頁には、着色可能なスマートウィンドウが記載されている。スマートウィンドウは、エレクトロクロミズムをベースにするデバイス、液晶デバイス、および電気泳動または懸濁粒子デバイスのような、光の透過率を変化させるいくつかの技術を使用することができる。液晶ベースのデバイスは、電場を加えることによって2つの導電性電極間の液晶分子の配向の変化を使用しており、これにより、結果的にその透過率が変化する。
【0003】
国際公開第2009/141295号には、スイッチャブル層と、少なくとも1つの配向層と、光エネルギ変換手段と接触している光ガイドシステムとを有する光学デバイスが開示されている。スイッチャブル層は、発光材料を有する。一実施形態では、液晶がスイッチャブル層として使用されており、この液晶は、ゲスト・ホストシステムにおいて融解して発光材料を配向する。この発光材料は、二色性を呈し、これにより、この発光材料は、第1軸に沿って強い吸収率を有し、別の任意の軸では吸収率はより小さくなる。この光学デバイスの光学特性は、発光材料の配向に依存する。この光学デバイスは、発光材料の吸収軸が、スイッチャブル層の面の主延在方向に対して垂直に配向されている場合には透過状態にあり、またこの光学デバイスは、吸収軸が、スイッチャブル層の主延在面に対して平行に配向されている場合には吸収状態にある。これらの状態間の切換には、電極を備えたポリイミド層が、配向層として使用され、第1電気信号により、スイッチャブル層が透過状態にされ、第2電気信号を加えることにより、スイッチャブル層が吸収状態にされる。
【0004】
ウィンドウの外側からの見え方は、大部分は、ウィンドウからの光の反射によって決定される。建築向けの用途には、この反射を制御することが好ましく、これにより、建造物は、特定の色の見え方を有し得る。同時にウィンドウの透過スペクトルには、種々異なる要求がなされる。ウィンドウの透過スペクトルは、好ましくは、無彩色であるべきである。無彩色性は、演色評価指数を使用して定めることができ、その際には光スペクトルが基準光源と比較される。
【0005】
本発明の目的は、スイッチャブル光学デバイスの反射および透過特性を同時に、かつ互いに独立して制御することができるスイッチャブル光学デバイスを提供することである。
【0006】
ここで提案されるのは、少なくとも1つのスイッチャブル層と、少なくとも1つの光学層とを含む層構造を有するスイッチャブル光学デバイスである。少なくとも1つのスイッチャブル層は、液晶材料および少なくとも1つの染料を有する。少なくとも1つの光学層は、可視スペクトルの少なくとも1つの第1部分を含む少なくとも1つの反射帯域と、可視スペクトルの少なくとも1つの第2部分を含む少なくとも1つの透過帯域とを有する。少なくとも1つのスイッチャブル層の吸収スペクトルは、少なくとも1つの染料によって調整されており、これにより、可視スペクトルにおける入射光に対し、スイッチャブル光学デバイスを通る光透過は、スイッチャブル層の少なくとも1つの状態について、あらかじめ定められる透過スペクトルに設定される。
【0007】
好ましくは、提案されるスイッチャブル光学デバイスの少なくとも1つのスイッチャブル層は、少なくとも2つの状態を有し、それぞれの状態は、異なる光伝搬特性を有する。これらの状態のうちの1つは、光がごくわずかに吸収および/または散乱される明状態である。スイッチャブル層の別の状態は、光の吸収および/または散乱が行われる暗状態である。スイッチャブル層の状態は、好ましくは、電場を使用して制御される。状態を変化させることにより、スイッチャブル光学素子の見え方が変化する。暗状態は、スイッチャブル光学素子を通って透過される光の量が、明状態よりも少ない状態として定義される。
【0008】
好ましくは、少なくとも1つの染料は、スイッチャブル光学デバイスの透過スペクトルが、可視スペクトルに対し、スイッチャブル層の少なくとも1つの状態について、無彩色であるように選択される。このような無彩色の透過を達成するためには、少なくとも1つの染料の吸収スペクトルは、好ましくは、少なくとも1つの光学層の少なくとも1つの透過帯域と相補的になるように調整される。
【0009】
スイッチャブル光学素子の外側からの見え方は、可視スペクトル範囲における入射光の反射によって決定され、スイッチャブル光学素子の内側からの見え方は、可視スペクトル範囲における入射光の透過および/または反射によって決定される。可視スペクトル範囲は、380nm~780nmである。スイッチャブル光学素子が、ウィンドウとして使用される場合、外側を向いている面は、建造物または乗物(vehicle)におけるウィンドウとして使用されているスイッチャブル光学素子に対して定義される。その他の場合、例えばテスト環境では、対応する光源を向いている、光学素子の表面が、外側表面と定義され、光源とは反対側を向いている光学素子の表面が、内側表面と定義される。
【0010】
外側からの見え方は、スイッチャブル光学素子の少なくとも1つの光学層の少なくとも1つの反射帯域および少なくとも1つの透過帯域を選択することによって制御され、これにより、所望の色の光が反射される。例えば、緑色の外側からの見え方が所望される場合、500nm~600nmの波長光が、反射され、380nm~500nmおよび600nm~780nmの波長範囲における可視光が透過されるように反射帯域が選択される。好ましくは、少なくとも1つの反射帯域のうちの1つの反射帯域内にある波長を有する光は、部分的にのみ反射される。
【0011】
以下では、光学層のような表面の、特定の波長λにおける、または特定の波長範囲内の反射強度R(λ)は、反射光の強度と、入射光の強度との比として定義され、ここでは、平面の法線に対して測定される入射角は、0°である。同様に、構造を通る透過T(λ)は、透過光の強度と、入射光の強度との比として定義され、ここでは、平面の法線に対して測定される入射角は0°である。
【0012】
好ましくは、スイッチャブル光学デバイスは、少なくとも1つの光学層として、または少なくとも2つの光学層のうちの一層として含まれ得る少なくとも1つの反射層を有する。好ましくは、可視スペクトルの少なくとも1つの第1部分を含む少なくとも1つの反射帯域と、可視スペクトルの少なくとも1つの第2部分を含む少なくとも1つの透過帯域とを有する少なくとも1つの光学層は、反射層である。
【0013】
好ましくは、少なくとも1つの反射帯域内の波長を有する光に対し、少なくとも1つの光学層の反射強度R(λ)は、少なくとも2%である。特に好ましいのは、反射強度が、少なくとも5%であることであり、さらに好ましくは少なくとも10%であることである。
【0014】
無彩色の光透過を達成するために、好ましいのは、少なくとも1つの光学層が、少なくとも1つの反射帯域における入射光全体を反射できないことである。好ましいのは、少なくとも1つの光学層が、少なくとも1つの反射帯域に波長を有する入射光の70%未満を反射することである。好ましくは、少なくとも1つの反射帯域に波長を有する入射光の60%未満、最も好ましくは50%未満が反射される。
【0015】
択一的または付加的には、無彩色の透過を達成するために、反射帯域内に波長を有する光が、完全にまたはほぼ完全に反射される場合であっても、発光染料を使用してよい。この発光染料は、少なくとも1つの透過帯域内に波長を有する光を吸収することができ、この光は、次に、反射帯域内の波長で再放射される。
【0016】
透過光の量は、スイッチャブル層の影響を受け、かつスイッチャブル層の状態に依存する。スイッチャブル層の明状態と暗状態との間の、透過における、スイッチャブル光学デバイスのコントラストCは、与えられた波長λに対し、
C(λ)=(1-R(λ))×(ΤΒ(λ)-TD(λ)) (1)
と定義され、C(λ)は、波長λを有する光に対するコントラストであり、R(λ)(上記のように定義される反射強度)は、波長λを有する光に対する反射による損失強度であり、ΤΒ(λ)およびTD(λ)(上記のように定義される透過強度)は、それぞれ明状態および暗状態に対する、波長λを有する透過光の強度である。反射強度および透過強度は、0と1との間の無次元数として与えられる。反射損失には、スイッチャブル光学デバイスの少なくとも1つの光学層における反射も、別のすべての層における反射も含まれる。
【0017】
コントラストCを評価するために、可視スペクトルのスペクトル範囲にわたって関数C(λ)が平均化される。好ましくは、可視スペクトルにわたる関数C(λ)の平均化によって得られるコントラストCは、少なくとも0.5である。
【0018】
例えば、与えられた波長に対し、スイッチャブル層の反射損失Rが0.2(20%)であり、透過率が明状態において0.74(74%)であり、暗状態において0.15(15%)である場合、コントラストCは0.47(47%)である。同じ状況に対し、反射損失が0.1(10%)に減少した場合、コントラストCは0.53(53%)に増大する。したがって明状態と暗状態との間で大きなコントラストを達成するためには、反射による損失を最小化するとよい。
【0019】
したがって光学層は、少なくとも1つの透過帯域における波長に対し、少なくとも90%の光透過T(λ)を有するのが好ましく、より好ましくは少なくとも95%の、また最も好ましくは少なくとも98%の光透過T(λ)を有する。
【0020】
反射損失を減少させるために光学デバイスは、少なくとも1つの反射防止層を有していてよい。この反射防止層は、好ましくは、可視スペクトル範囲においてスイッチャブル光学デバイスの表面の反射率を減少させる広帯域反射防止コーティングである。反射防止層は、少なくとも1つの光学層に加え、複数の光学層のうちの1つとして含まれていてよい。
【0021】
反射防止層は、屈折率の小さい材料を含む1つ以上の極めて透明な薄い層から作製することが可能である。好ましくは、このような反射防止層の厚さおよび屈折率は、以下の数式、すなわち、
n×d=λ/4
にしたがい、ただしnは、反射防止層の材料の屈折率、dは、反射防止層の厚さ、λは、最小反射率の波長である。
【0022】
λは、好ましくは、この場合に反射率の低い帯域(透過帯域)の中心をマーキングする。このような層は、上記の式により、4分の1波長層と称される。
【0023】
上記の式にしたがって反射防止層の厚さを変更することにより、(厚さを小さくすることにより)より短い波長に、または(厚さを大きくすることにより)より長い波長に、最も反射率の低い波長をシフトさせることが可能である。
【0024】
適切な反射防止層の例は、例えば(約550nmの光波長において最小の反射率を有する)厚さ100nmのMgF2の層、または例えば(約450nmにおいて最小の反射率を有する)厚さ80nmのMgF2の層である。別の例は、約425nmにおいて最小の反射率を有する、厚さ70nmのSiO2の層である。
【0025】
上記の反射防止層は、好ましくは、真空蒸着技術およびスパッタリング技術によってデポジットされる。層厚は、好ましくは、温度または電圧およびデポジット時間のようなプロセスパラメータによって制御される。反射防止層は、好ましくは、デバイスの複数の基板のうちの1つの外側を向いた面に配置される。
【0026】
好ましくは、上記の層が作製される反射率の低い材料は、MgF2、多孔性のSiO2およびフッ素化ポリマである。
【0027】
反射層は、上記の反射防止層に、反射率の高い材料を含む1つ以上の極めて透明な薄い層を加えることによって作製可能である。このような高反射率材料の好ましい実施形態は、亜鉛酸化物(ZnO)またはチタン酸化物(TiΟ2)のような金属酸化物である。このようにすることにより、特定の波長において高い反射率を有し、他の波長において高い反射防止力を有する層を得ることが可能である。
【0028】
このような反射層の一例は、TiO2から成る70nm厚の層と、これに続くSiO2から成る70nm厚の層と、これに続くTiO2から成る70nm厚の層とから構成される3層列である。このような反射層は、550nm~850nmの波長において反射率が高く、400nm~500nmの波長において反射防止力が高い。
【0029】
別の一例として、7層列T-M-T-M-T-M-T、ただしTは、TiO2から成る40nm厚の層、Mは、MgF2から成る45nm厚の層は、380nm~500nmの波長において反射率が高く、したがって可視スペクトルの青色部分において反射率が高い。
【0030】
反射層および反射防止層の上記の実施形態は、単に例として使用されており、本発明を制限するものではないことに注意されたい。当業者には、この技術分野において現在公知である、種々異なるタイプの反射層および反射防止層がよく知られており、当業者は、今ここで説明している発明が機能するようにするために、これらから望み通りに選択することが可能である。
【0031】
スイッチャブル光学デバイスを通って透過する光に対し、少なくとも1つのスイッチャブル層の少なくとも1つの状態について、無彩色性を達成するために、少なくとも1つのスイッチャブル層は、少なくとも1つの染料を有する。この染料の吸収スペクトルは、好ましくは、可視光に対し、この吸収スペクトルが、少なくとも1つの光学層の反射スペクトルと相補的になるように選択される。ほとんどの反射は、少なくとも1つの反射帯域内で発生するため、この反射スペクトルは、少なくとも1つの反射帯域により、良好な近似で定められる。この染料は、好ましくは、ダイクロイック染料である。
【0032】
本願の目的に対し、「ダイクロイック染料」という語は、光吸収性の化合物を意味するように使用されており、ここでは吸収特性は、光の偏光の方向に対する分子の配向に依存する。本願によるダイクロイック染料は、一般に、細長い形状を有し、すなわち、染料分子は、一空間方向(長手方向軸)において他の2つの空間方向よりも格段に長い。
【0033】
本発明によるスイッチャブル層は、好ましくは、2つ、3つ、4つまたは5つの、特に好ましくは3つのダイクロイック染料を有しており、これらのダイクロイック染料の吸収スペクトルは、好ましくは、互いに相補的であり、これにより、無彩色の黒色または灰色の印象が人間の目に生じる。
【0034】
染料化合物は、好ましくは、アゾ化合物、アントラキノン、メチン化合物、アゾメチン化合物、メロシアニン化合物、ナフトキノン、テトラジン、リレン、ベンゾチアジアゾール、ピロメテン、ジケトピロロピロール、チエノチアジアゾールおよびマロノニトリルから選択される。これらのうち、特に好ましいのは、特に国際公開第2014/090373号に開示されているアゾ化合物、アントラキノン、リレン、特に国際公開第2014/187529号に開示されているベンゾチアジアゾール、特に国際公開第2015/090497号に開示されているジケトピロロピロール、特に国際公開第2016/029996号に開示されているチエノチアジアゾール、および特に国際公開第2016/091345号に開示されているマロノニトリルである。
【0035】
無彩色性は、スイッチャブル光学デバイスの透過スペクトルと、参照光源のスペクトルとを比較することによって特定することが可能である。演色評価指数(CRI color rendering index)は、D65のような標準昼光スペクトルを参照として使用することができる。無彩色とみなされる、スイッチャブル光学デバイスを通る透過に対し、測定される演色評価指数は、好ましくは、少なくとも80である。演色評価指数は、例えば、CIE13.3-1995にしたがって決定されている。さらに、スイッチャブル光学デバイスを通る透過光の無彩色性を特定するためにRGB色座標を使用することができる。
【0036】
スイッチャブル光学素子の層構造は、好ましくは、第1透明基板と、第1透明電極層と、スイッチャブル層と、第2透明電極層と、第2透明基板とをこの順序で有する。
【0037】
透明基板は、ポリマまたはガラス板であってよい。それぞれの基板には一方の面に透明電極が設けられている。透明電極は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)の薄い層をベースにしている。2つの基板は、透明電極が互いに向き合うように、かつセルギャップが2つの基板間に形成されるように配置される。間を隔てるこのセルギャップは、2μm~200μmの幅を有する。スイッチャブル層は、このセルギャップ内に配置される。スイッチャブル層は、少なくとも1つの液晶材料および少なくとも1つの染料を有する。好ましくは、染料は、ダイクロイック染料である。液晶材料の分子は、液晶の特性を有し、その配向には、電場を加えることによって影響を与えることが可能である。このような電場は、2つの透明電極間に駆動電圧を加えることによって生成可能である。
【0038】
スイッチャブル光学デバイスは、1つ以上のこのような層構造を有することができ、したがってこのスイッチャブル光学デバイスは、1つ以上のスイッチャブル層を有していてよい。
【0039】
好ましくは、少なくとも1つの光学層は、透明電極によって覆われていない、1つまたは両方の透明基板の面をコーティングすることによって形成される。
【0040】
択一的または付加的に好ましいのは、少なくとも1つの光学層を1つ以上の透明シートに被着することであり、次にこれは/これらは、複数の透明基板のうちの1つと積層される。
【0041】
スイッチャブル光学デバイスは、好ましくは、2つ以上の光学層を有する。例えば、スイッチャブル光学デバイスは、1つ以上の反射層に加えて、1つ以上の反射防止層を有していてよい。
【0042】
層構造は、さらに、1つ以上の光学的に透明な配向層を有していてよい。この配向層により、分子を好ましい方向に配向するためのガイドが提供される。このような配向層は、一連の平行な微視的溝を形成するラビング処理が施されるポリマ薄膜を透明電極にコーティングすることによって形成可能である。適切な配向層は、ポリイミド層を透明電極にコーティングし、このポリイミド層をラビングすることによって得ることが可能である。したがってこの配向層は、複数の透明電極のうちの1つと、スイッチャブル層との間に配置される。
【0043】
2つの配向層を使用する場合、1つは、スイッチャブル層のそれぞれの面に配置され、これらの配向層の配向の好ましい方向は、互いに対して回転させることができ、これにより、結果的に、液晶材料のねじれネマティック構成が得られる。別の好ましい構成には、STN(super twisted nematic)構成およびアンチパラレル構成が含まれる。
【0044】
一般に、液晶材料および/または少なくとも1つの染料は、ダイクロイックであり、偏光状態の異なる光は、吸収係数が異なる。スイッチャブル光学デバイスのコントラストCをさらに増大させるために、少なくとも1つの光学層の反射は、偏光に依存し、少なくとも1つの反射帯域内の波長に対し、第1偏光の光は、第2偏光の光よりも強く反射される。好ましくは、少なくとも1つの光学層およびスイッチャブル層は、少なくとも1つの光学層が、液晶材料および/または少なくとも1つの染料において、より吸収されない偏光に対し、より強い反射を有するように構成および配置される。このような配置を使用することにより、明状態における透過TBと、暗状態における透過TDとの間の差が増大される。
【0045】
少なくとも1つのスイッチャブル層のダイクロイックコントラストDは、
D=I1/I2
と定義され、ただしI1は、第1偏光の透過光の強度であり、I2は、第1偏光方向と直交する第2偏光の透過光の強度である。第1偏光は、透過強度が大きい方の偏光として定義される。好ましくは、ダイクロイックコントラストDは、スペクトルの可視範囲における光に対し、少なくとも2であり、さらに好ましくは少なくとも4であり、最も好ましくは少なくとも10である。
【0046】
光学層の偏光コントラストPは、
P=R1/R2
と定義され、ただしR1は、第1偏光の反射光の強度であり、R2は、第1偏光方向と直交する第2偏光方向の反射光の強度である。第1偏光は、反射強度が大きい方の偏光として定義される。好ましくは、偏光コントラストPは、少なくとも1つの反射帯域内の波長を有する光に対し、少なくとも2であり、さらに好ましくは少なくとも4であり、最も好ましくは少なくとも10である。
【0047】
好ましくは、少なくとも1つの光学層の反射は、偏光に依存し、第1直線偏光の光は、第2直線偏光の光よりも強く反射される。第2直線偏光は、液晶材料および/または少なくとも1つの染料において、より強く吸収される直線偏光に対応する。
【0048】
好ましくは、少なくとも1つの光学層の反射は、偏光に依存し、第1円偏光の光は、第2円偏光の光よりも強く反射される。好ましくは、少なくとも1つの光学層は、コレステリック層を有し、少なくとも1つの反射帯域における光の反射は、偏光に依存し、第1円偏光の光は、第2円偏光の光よりも強く反射される。このコレステリック層は、好ましくはコレステリック液晶層である。
【0049】
好ましくは、このコレステリック液晶層は、4分の1波長リターダ層を有する層構造に配置されており、これにより、スイッチャブル層は、4分の1波長リターダの一方の面に配置され、コレステリック液晶層は、4分の1波長リターダの他方の面に配置される。好ましくは、4分の1波長リターダおよび反射層は共に外側の(光が入射する)面に配置される。4分の1波長リターダは、コレステリック液晶層と、スイッチャブル層との間に配置され、これにより、透過した第2円偏光が、液晶材料および/または少なくとも1つの染料においてより強く吸収される直線偏光に対応する直線偏光に変化する。好ましくは、この場合に、結果的に得られる直線偏光は、基板に配向層が設けられている場合、隣接する基板のラビング方向に平行または垂直にするとよい。
【0050】
好ましくは、少なくとも1つの光学層は、半波長板が間に配置された2つのコレステリック層を有する。このような3層構造により、偏光無依存性が達成される。
【0051】
このスイッチャブル光学デバイスは、光の偏光を調整する4分の1波長リターダおよび/または半波長リターダのような別の波長リターダを有していてよい。
【0052】
このスイッチャブル光学デバイスは、好ましくは、ウィンドウ、乗物、建造物、温室、眼鏡のレンズ、安全ガラス、光学機器、防音壁および/または医療器具に使用可能である。
【0053】
したがって本発明の別の態様は、上記の光学装置のうちの少なくとも1つを有するスイッチャブルウィンドウを提供することである。スイッチャブルウィンドウは、絶縁ウィンドウユニットを形成する別のガラス板のような別のエレメントを含んでいてよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本発明の光学デバイスの一実施例を示す概略断面図である。
【
図2】光の波長に対し、スイッチャブル光学デバイス10の光学層の反射強度を示す概略図である。
【
図3】標準染料がドーピングされた液晶混合物の透過スペクトルを明状態(破線)および暗状態(通常の線)の両方において示す線図である。
【
図4】実施例1Aのデバイスの透過スペクトルを明状態(破線)および暗状態(通常の線)の両方において示す線図である。
【
図5】吸収を適合させた染料がドーピングされた液晶混合物の透過スペクトルを明状態(破線)および暗状態(通常の線)の両方において示す線図である。
【
図6】実施例1Bのデバイスの透過スペクトルを明状態(破線)および暗状態(通常の線)の両方において示す線図である。
【
図7】実施例2Aのデバイスの透過スペクトルを明状態(破線)および暗状態(通常の線)の両方において示す線図である。
【
図8】実施例2Bで使用されている、調整されたLC混合物の透過スペクトルを明状態(破線)および暗状態(通常の線)の両方において示す線図である。
【
図9】実施例2Bで使用されている、調整されたLC混合物を有するデバイスの透過スペクトルを明状態(破線)および暗状態(通常の線)の両方において示す線図である。
【
図10】実施例2Cで使用されている、最適化されたLC混合物の透過スペクトルを明状態(破線)および暗状態(実線)の両方において示す線図である。
【
図11】実施例2Cで使用されている、異なる最適化がなされたLC混合物を有するデバイスの透過スペクトルを明状態(破線)および暗状態(通常の線)の両方において示す線図である。
【0055】
図1には、本発明の光学デバイスの一実施例が概略断面図で示されている。スイッチャブル光学デバイス10は、第1基板12および第2基板14を有し、これらの基板は、2つの基板12と14との間にセルギャップが形成されるように平行に配置されている。セルギャップの幅は、2μm~200μmである。液晶媒体16の形態のスイッチャブル層15は、セルギャップ内に配置されており、セルはシール18によって閉鎖されている。
【0056】
基板12、14は、透明であり、それぞれの基板12、14の材料は、ポリマまたはガラス板であってよい。それぞれの基板12、14には、一方の面に透明電極24、26が設けられている。透明電極24、26は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)の薄い層をベースにしている。これらの2つの基板12、14は、透明電極24、26が互いに向き合うように配置されている。
【0057】
液晶媒体16は、少なくとも1つの液晶材料および少なくとも1つの染料を有する。
【0058】
液晶媒体16とは反対側を向いた、第1基板12の面には、反射層20として構成されている光学層がコーティングされている。同様に、液晶媒体16とは反対側を向いた、第2基板14の面には、反射防止層22として構成されている光学層がコーティングされている。したがってスイッチャブル光学デバイス10は、反射層20と、第1基板12と、第1電極層24と、液晶媒体16と、第2電極層26と、第2基板14と、反射防止層22とをこの順で有する層構造を有する。
【0059】
図2には、光の波長に対する、スイッチャブル光学デバイス10の光学層の反射強度の概略図が示されている。反射強度は、反射光の強度と、入射光の強度との比として%で定義されており、ここでは、平面の法線に対して測定される入射角度は、0°である。この反射強度は、y軸上に任意単位(a.u.)で示されている。
図2には、第1透過帯域30と、反射帯域32と、第2透過帯域34が見て取れる。反射強度が平均反射強度に比べて増大している反射帯域32は、約500nm~約600nmである。
【0060】
図3には、標準染料がドーピングされた液晶混合物の透過スペクトルが、明状態(破線)および暗状態(通常の線)の両方において示されている。
【0061】
図4には、実施例1Aのデバイスの透過スペクトルが、明状態(破線)および暗状態(通常の線)の両方において示されている。
【0062】
図5には、吸収を適合させた染料がドーピングされた液晶混合物の透過スペクトルが、明状態(破線)および暗状態(通常の線)の両方において示されている。
【0063】
図6には、実施例1Bのデバイスの透過スペクトルが、明状態(破線)および暗状態(通常の線)の両方において示されている。
【0064】
実施例
実施例1A
外側から緑色に見えるスイッチャブルウィンドウを製造するためには、2つのタイプのコーティングガラス基板が、主要ガラスサプライヤから入手される。第1基板の一方の面には、50%の反射強度を有する選択的反射コーティングがコーティングされている。他方の面には、透明導電性酸化物(TCO transparent conductive oxide)がコーティングされている。緑色に見えるようにするために、選択的反射コーティングは、約550nmの中心波長および約100nmの帯域幅を有するように指定される。第2基板は、一方の面にTCOコーティングを有し、かつ他方の面にコーティングを有しない。
【0065】
これらの基板を洗浄した後、2つの基板の、TCOがコーティングされた面にポリイミドが印刷される。次にこれらの基板は、オーブンで焼成され、配向層を得るためにポリイミドがラビング処理される。これに続き、基板がセルとして配置され(配向層が内側を向き)、標準染料がドーピングされた液晶混合物が充填され、これにより、スイッチャブルパネル(25μmセルギャップ、ねじれネマティック構成)が得られる。標準染料がドーピングされた液晶混合物の透過スペクトルは、
図3に示されている。これは、暗状態において420nm~650nm間でかなり一定の吸収率を有する。
【0066】
このデバイスの透過スペクトルは、暗状態で記録されている(
図4;破線は明状態、通常の線は暗状態)。このデバイスは、暗状態において目には青紫に見え、暗状態において以下の色座標を有する。すなわち、
表1
【表1】
である。
【0067】
これらの結果が示しているのは、この実施例によるデバイスの暗状態が、強く着色されていることである。
【0068】
実施例1B
ここではデバイスは、染料がドーピングされた液晶混合物の吸収スペクトルが、選択的反射コーティングの反射スペクトルと相補的になるように調整される(すなわち可視スペクトルの青色および赤色部分においてより吸収される)点において実施例1Aのデバイスとは異なるように構成されている。この混合物の透過スペクトルは、
図5に示されている。他のすべての面において、このデバイスは、実施例1Aのデバイスと同じである。
【0069】
このデバイスの透過スペクトルは、暗状態で記録されている(
図6;破線は明状態、通常の線は暗状態)。このデバイスは、暗状態において目には灰色の無彩色に見え、暗状態において以下の色座標を有する。すなわち、
表2
【表2】
である。
【0070】
これらの結果が示しているのは、この実施例によるデバイスの暗状態が、実施例1Aによるデバイスの暗状態よりも格段に少ない程度に彩色されていることである。
【0071】
実施例2A、2Bおよび2C
択一的な一実施例として、反射層が、上記の実施例1Aおよび1Bのように50%ではなく10%の反射強度を有するようにスイッチャブルデバイスを構成可能である。この場合、比較実施例(2A)は、実施例1Aのように50%ではなく10%である、反射層の反射強度を除いて、すべての面において実施例1Aと同一である。実施例2Aに対し、
図7に示した透過スペクトルが得られる(破線=明状態;実線=暗状態)。このデバイスは、表3に示したCRI座標からわかるように暗状態において着色している。すなわち、
表3
【表3】
である。
【0072】
調整されたLC混合物を有するデバイス(実施例2B)とは対照的に、暗状態の彩色は、格段に低減されている。このデバイスの透過スペクトルは、
図9に示されている(破線=明状態;実線=暗状態)。CRI色座標は、表4に示されている。すなわち、
表4
【表4】
である。
【0073】
この実施例2Bで使用されている調整されたLC混合物の透過スペクトルは、
図8に示されている(破線=明状態;実線=暗状態)。
【0074】
実施例2Aおよび2Bが示しているのは、10%の反射強度を有する反射層によっても、極めて良好な暗状態の無彩色が、調整された染料がドーピングされたLC混合物を有するデバイスに対しても得られることである。
【0075】
実施例2Aに対し、明状態に対しても、無彩色性の最適化を行うことができる。このことは、異なる最適化がなされたLC混合物が使用されている点だけを除いて、実施例2Bと同じである実施例2Cに示されている。実施例2Cの透過スペクトルは、
図11に示されており、この実施例2Cで使用されている最適化されたLC混合物の透過スペクトルは、
図10に示されている(いずれのケースにおいても、破線=明状態;実線=暗状態)。この結果が示すのは、実施例2Cの明状態は、実施例2Aの明状態よりも格段に少なく彩色されていることである。このことは、以下の表に示した実施例2Aおよび2Bの明状態についてのCRI色座標からわかる。すなわち、
表5
【表5】
である。
【0076】
択一的な一実施例として、実施例1Bまたは2Bまたは2Cに示したデバイスに類似したスイッチャブルデバイスを構成することができ、ここでは、反射層は、コレステリック反射器であり、約100nmの帯域幅および550nmの中心波長を有しており、このコレステリック反射器は、このデバイスの複数の基板のうちの1つの基板の、外側を向いた面に、すなわち光源が設けられているこのデバイスの面に配置されている。このような択一的な実施例に対し、透過の無彩色性について、またこのデバイスの外側からの色の見え方について、実施例1Bおよび2Bおよび2Cと同等の結果を得ることができる。
【0077】
透過の無彩色性について、またこのデバイスの外側から色の見え方について、上記の実施例に示したものと同等の結果が得られる別の択一的な実施例として、反射層を有しない、基板の外面に反射防止層を有するデバイスを構成することができる。
【0078】
透過の無彩色性について、またこのデバイスの外側からの色の見え方について、上記の実施例に示したのと同等の結果が得られる別の択一的な実施例として、1つのスイッチャブルパネルに加えて第2のスイッチャブルパネルを有するデバイスを構成することができる。この第2のスイッチャブルパネルは、広帯域反射防止層を有する2つの基板と、標準的な染料がドーピングされた液晶混合物を有するスイッチャブル層とを含む。2つのスイッチャブルパネルは、1つの複層ガラスユニットに組み合わされる。選択的反射コーティングは、外側を、すなわち外部光源の面を向いており、これにより、このデバイスは、外側から見た場合に緑色に見える。