(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】壁構造体の基部領域に凹部を形成する方法、相応する壁構造体、ならびにそのシステムおよび建築要素
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20230105BHJP
E04B 1/82 20060101ALI20230105BHJP
E04B 1/86 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
E04B1/94 R
E04B1/82 H
E04B1/82 J
E04B1/82 W
E04B1/86 D
E04B1/86 T
E04B1/94 L
(21)【出願番号】P 2019563549
(86)(22)【出願日】2018-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2018000257
(87)【国際公開番号】W WO2018219491
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-02-22
(31)【優先権主張番号】102017005211.5
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510094539
【氏名又は名称】クナウフ ギプス カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ボリス シモニッチ
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】西独国特許出願公開第02724169(DE,A1)
【文献】特表2012-505327(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0180527(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E04B 2/74、2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式壁技術での壁構造体の基部領域に凹部
(6)を形成する方法であって、スタッドフレームにおける前記壁構造体であって、直接床に固定された底部レールと、前記底部レールから立ち上がるスタッドプロファイルとを有する前記壁構造体のために、ボード型建築要素を使用してパネルを前記スタッドフレームの両側に取り付け、かつ前記スタッドフレームの少なくとも一方の側に、前記スタッドフレームに固定された外側パネル層および内部パネルを含む二重層パネルを設け、その前記二重層パネルのうちの外側パネル層に凹部
(6)を形成し、それにより前記基部領域に前記凹部
(6)を形成する方法において、
少なくとも前記基部領域における前記凹部(6)の鉛直高さにわたり補償断熱材(7)を前記スタッドフレームの前記内部パネルの間の中間領域の前記底部レールより上側に導入し、凹部
(6)が形成された前記パネルに起因する前記基部領域の弱体化を補償し、
前記補償断熱材(7)として圧縮されたロックウールが用いられていることを特徴とする、方法。
【請求項2】
使用される前記補償断熱材(7)が、防火性および/または防音性を確保するのに適切な断熱材を含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記スタッドフレームの組み立ての間に、または前記スタッドフレームの組み立ての後に、ただし、前記スタッドフレームの領域を覆う前記パネルの施工前に、前記スタッドフレームの前記基部領域に前記補償断熱材(7)をすでに導入し、それにより、この基部領域を、前記補償断熱材(7)で完全に充填することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記補償断熱材(7)を機械的に固定することなく導入することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記補償断熱材(7)をストリップの形態で前記基部領域内へと設置することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
乾式壁技術での壁構造体
であって、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法により形成された壁構造体において、前記壁構造体の基部領域に凹部
(6)を形成するために、前記スタッドフレームの少なくとも一方の側に二重層パネルが設けられており、その外側パネル層に凹部
(6)が形成されており、それにより前記基部領域において前記凹部
(6)が形成されており、
補償断熱材(7)が、少なくとも前記基部領域における前記凹部(6)の鉛直高さにわたり前記スタッドフレームの前記パネルの間の中間領域に導入され、それにより、凹部
(6)が形成された前記パネルに起因する前記基部領域の弱体化を補償することを特徴とする、壁構造体。
【請求項7】
前記スタッドフレームの前記パネルの間の前記中間領域に導入された前記補償断熱材(7)が、防火性および/または防音性を確保するのに適切な断熱材を含むことを特徴とする、請求項6記載の壁構造体。
【請求項8】
前記スタッドフレームの前記パネルの間の前記中間領域が、少なくともその基部領域において前記補償断熱材(7)で完全に充填されていることを特徴とする、請求項6または7記載の壁構造体。
【請求項9】
前記補償断熱材(7)が、機械的な固定なしに、前記スタッドフレームの前記パネルの間の前記中間領域に配置されていることを特徴とする、請求項6から8までのいずれか1項記載の壁構造体。
【請求項10】
補償断熱材(7)のストリップが前記基部領域内へと設置されていることを特徴とする、請求項6から9までのいずれか1項記載の壁構造体。
【請求項11】
請求項6から10までのいずれか1項記載の壁構造体を製造するためのシステム、または請求項1から5までのいずれか1項記載の方法による壁構造体を製造するためのシステムにおいて、少なくとも1つの凹部
(6)が前記壁構造体の基部領域に形成されており、
凹部
(6)が形成された前記パネルに起因する前記基部領域の弱体化を補償するための少なくとも1つの補償断熱材ストリップを有することを特徴とする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式壁技術での壁構造体、好ましくは防火性および/または防音性の壁構造体の基部領域に凹部(「負型基部(negative base)」)を形成する方法であって、スタッドフレームにおける壁構造体のために、ボード型建築要素、好ましくは石膏および/またはセメント含有建築要素を使用してパネルを両側に取り付け、かつスタッドフレームの少なくとも一方の側に二重層パネルを設け、その外側パネル層に凹部を形成し、それにより基部領域に凹部を形成する方法に関する。
【0002】
また、本発明は、乾式壁技術での壁構造体、好ましくは、ボード型建築要素を有する、好ましくはスタッドフレームの両側に取り付けられた石膏および/またはセメント含有建築要素を有するスタッドフレームを含む防火性および/または防音性の壁構造体であって、壁構造体の基部領域に凹部(「負型基部」)を形成するために、スタッドフレームの少なくとも一方の側に二重層パネルが設けられており、その外側パネル層に凹部が形成されており、好ましくは上記の方法により凹部が形成されており、それにより基部領域に凹部が形成されている壁構造体にも関する。
【0003】
本発明はさらに、壁構造体、好ましくは上記のタイプの壁構造体を製造するためのシステム、およびそのような壁構造体のための建築要素に関する。
【0004】
室内設計に関して例えば床材と組み合わされる幅木は、上記のタイプの壁構造体に容易に配置可能であろう。
【0005】
しかしながら、室内設計に関して、幅木を壁構造体に同一平面上に差し込んで、幅木が外側に突出することを回避することが望ましい場合がある。そのような場合、幅木を収容する空間を、所望の幅木が嵌め込み可能な凹部の形状で壁構造体自体の基部領域に形成する必要があり、すなわち、基部領域における壁構造体から材料を相応して除去するか、またはこれに凹部を形成する必要があり、これはいわゆる「負型幅木」である。しかしながら、これにより、この領域における壁構造体が弱体化する。そのような壁構造体は、非耐荷重の内壁構造体に関係することが好ましく、材料のそのような凹部形成は、実際には静的に関連していないが、特に防火および/または防音壁を著しく弱体化させ、それらの機能を実質的に完全に無効化させてしまうことがある。
【0006】
そのような場合、パネルの外層の基部領域に凹部が形成されており、凹部が形成されたパネル部分または適切なサイズのボード部分は、外側から第一のパネル層へとねじで留められることによってではなく、内側から残りの連続するパネルへとねじで留められることによって壁構造体に一体化されることが一般的である。しかしながら、このタイプの施工は、極めて精巧であり、必ずしも実用的に実現可能であるわけではない。
【0007】
よって、本発明は、負型幅木を有する壁構造体の弱体化を補償するための単純な代替案を開示するという目的に基づく。
【0008】
本発明によると、この目的は、少なくとも基部領域における凹部の鉛直高さにわたり補償断熱材をスタッドフレームのパネルの間の中間領域に導入し、凹部が形成されたパネルに起因する基部領域の弱体化を補償することにより達成される。
【0009】
有利なことに、パネルの減少に起因する、壁構造体の所望かつ必要な防火性および/または防音性の低下を、適切な特有の補償断熱材を導入することにより驚くほど単純に補償することが可能であると本発明から分かる。
【0010】
壁構造体のスタッドフレームの領域における交換ボードの組み込みおよび施工と比べて、まず補償断熱材には、非常に単純かつ正確な嵌め込み方で、また十分な品質および十分な程度で、壁構造体の内部領域に導入可能であるという利点がある。さらに、これにより、その他の防火もしくは防音措置または要素は、全く影響を受けていない状態のままであることが可能である。例えば、スタッドフレームの建築要素の間の弾性分離体は、無傷の状態のままであり、損傷していない状態のままである。封止材、好ましくは膨張性の封止材も、無傷のままであり、何も影響を受けていない状態のままであることが可能である。該当する場合、スライド式プロファイル接続部の機能も、何も影響を受けていない状態のままであることが可能である。これは、本発明が同様に適切であるシングルスタッドを有する壁構造体およびダブルスタッドを有する壁構造体に適用されることが好ましい。現段階では、基部領域は必ずしも床の基部領域である必要はないが、室内設計または必要な導管を考慮して、例えば壁の基部に組み込まれた線路/管路のために天井用の幅木が必要な場合は、本発明の解決策を例えば天井用の幅木に適用することもできることに留意すべきである。
【0011】
本発明によると、ロックウールは、適切に圧縮された形態で用いられる場合、非常に適切な補償断熱材として使用可能である。
【0012】
本発明の方法の改良形態によると、スタッドフレームの組み立ての間に、またはスタッドフレームの組み立ての後に、ただし、スタッドフレームの領域を覆うパネルの施工前に、スタッドフレームの基部領域に補償断熱材をすでに導入することが有利であり、それにより、この基部領域を補償断熱材で完全に充填することが好ましいと提案されている。これは、補償断熱材を機械的に固定することなく実現可能であることが好ましい。よって、必要とされる本発明の措置は、壁構造体の組み立ての間の適切な時点ですでに実施可能であり、そのため、後に基部領域を緻密に変形させる必要がなくなる。
【0013】
特に単純かつ有利な実施形態において、補償断熱材は、ストリップの形態で基部領域内へと設置可能であることが好ましい。
【0014】
乾式壁技術での壁構造体、好ましくは、ボード型建築要素を有する、好ましくはスタッドフレームの両側に取り付けられた石膏および/またはセメント含有建築要素を有するスタッドフレームを含む防火性および/または防音性の壁構造体であって、壁構造体の基部領域に凹部(「負型基部」)を形成するために、スタッドフレームの少なくとも一方の側に二重層パネルが設けられており、その外側パネル層に凹部が形成されており、それにより基部領域において凹部が形成されている壁構造体、好ましくは上記の方法により形成された壁構造体において、先に定義した課題に対する独立的な解決策として、補償断熱材が、少なくとも基部領域における凹部の鉛直高さにわたりスタッドフレームのパネルの間の中間領域に導入され、それにより、凹部が形成されたパネルに起因する基部領域の弱体化を補償することを特徴とする壁構造体についても独立的な保護を請求する。
【0015】
本発明の方法を参照してすでに先に言及したように、スタッドフレームのパネルの間の中間領域に導入される補償断熱材は、防火性および/または防音性を確保するのに適切な断熱材を含むことが好ましく、ここで、ロックウールがこの目的に好ましく適していると判明した。
【0016】
スタッドフレームのパネルの間の中間領域は、少なくともその基部領域において補償断熱材で完全に充填されていることが好ましい。
【0017】
すでに先に言及したように、補償断熱材は、その導入を著しく容易かつ単純にする機械的な固定なしに、スタッドフレームのパネルの間の中間領域に配置可能であることが好ましい。補償断熱材は、補償断熱材のストリップが基部領域内へと設置されることが好ましい場合、非常に単純な手法で導入可能である。
【0018】
壁構造体、好ましくは、スタッドフレーム用プロファイル要素およびボード型建築要素を含む、好ましくは、少なくとも1つの単一層パネルをスタッドフレームの両側に取り付けるための石膏および/もしくはセメント含有建築要素を含む防火性および/もしくは防音性の壁構造体であって、少なくとも1つの凹部(「負型基部」)が壁構造体の基部領域に形成されている壁構造体、好ましくは本発明の壁構造体、ならびに/または本発明の方法により形成される壁構造体を製造するためのシステムにおいて、先に定義した目的に対する独立的な解決策として、本発明により、凹部が形成されたパネルに起因する基部領域の弱体化を補償するための少なくとも1つの補償断熱材ストリップを有することを特徴とするシステムについても、同様に独立的な保護を請求する。
【0019】
壁構造体、好ましくは、防火性および/または防音性の乾式壁技術での壁構造体のための建築要素において、スタッドフレームの基部領域に導入されることが意図される高い断熱性、不燃性および/または吸音性の断熱材、好ましくはロックウールのストリップを含むことを特徴とする建築要素についても、独立的な保護を請求する。異なる区分の請求項の特徴は、類似的にその他の区分の改良形態であると考えることもでき、個別に互いに組み合わせることが可能である。
【0020】
添付の図面は、例示的な実施形態を示し、これらの図面から、その他の本発明の特徴を知ることもできるが、これらは、基本的に例としてのみ解釈されるべきであり、本発明の対象またはその保護範囲を制限する意図は決してない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】シングルスタッドを含むスタッドフレームを有する例示的な壁構造体の本発明の基部領域についての基本的な垂直断面図を示す。
【
図2】ダブルスタッドを含むスタッドフレームを有する例示的な壁構造体の本発明の基部領域についての基本的な垂直断面図を示す。
【0022】
図1は、シングルスタッドを含むスタッドフレームを有する例示的な壁構造体の本発明の基部領域についての基本的な垂直断面図を示す。
【0023】
図1に図示される壁構造体は、示されるその基部領域において、床1に固定された底部レール2、および底部レール2から垂直に立ち上がるスタッドプロファイル3を含む。スタッドプロファイル3の両側には壁板4、5が貼り付けられており、床1に至る。しかしながら、基部領域において、外側の壁板5は、両側のスタッドプロファイル3において凹部が形成されているか、または短くなっており、これにより、基部領域において凹部6がそれぞれ形成される。図示されていない幅木を、これらが外側の壁板5の外面と同一平面上になるように、すなわち、これらが、壁構造体により区切られるまたは分離される空間に突出しないように、または僅かしか突出しないように、これらの凹部6に嵌め込むことができる。これは、単に室内設計に関する美的な理由によるものであり得る。
【0024】
しかしながら、これらの凹部6を原因として、壁構造体の残りの基部領域が、その図示される断面において、狭くなり、弱体化する。これは好ましくは、壁構造体により確保される潜在的な防火および/または防音措置と反対の作用を及ぼす。
【0025】
本発明によると、この弱まった防火性および/または防音性は、適切な特有の補償断熱材7、特に、高い断熱性、不燃性および/または吸音性の断熱材、好ましくはロックウールが、弱体化した基部領域に、すなわち、内部パネルの壁板4の間のスタッドプロファイル3により形成される区画の領域に導入されるという点で補償されている。これは、スタッドフレームの組み立ての間または直後に、ただし、パネルが取り付けられるか、または閉じられる前にすでに実施されていることが好ましい。
図1の図示に関して、示される固定用ねじ8は、単にパネルをスタッドフレームに固定する役割を果たし、補償断熱材7は、好ましくはスタッドフレームに機械的には固定されていないことに留意されたい。特有の補償断熱材7の高さは、垂直方向の凹部6の高さを上回ることが好ましい。
【0026】
壁板4、5は、好ましくは、石膏ボード、石膏プラスターボードまたは石膏ファイバーボードであってもよい。
【0027】
従来の断熱材9、例えばガラスウールを、特有の補償断熱材7の上で、すなわち、二重パネルがなおもそのままの状態である領域において使用してもよい。
【0028】
図2は、ダブルスタッドを含むスタッドフレームを有する例示的な壁構造体の本発明の基部領域についての基本的な垂直断面図を示す。
図1と同じ参照記号により、同じ建築要素を表す。
【0029】
図1に図示される例示的な実施形態とは対照的に、
図2の壁構造体は二重スタッド構造を有し、すなわち、2つのスタッドプロファイル3が互いに隣接して配置されている。パネルは、この二重スタッド構造体の両側に配置されており、その他の点については
図1のように実現される。
【0030】
さらに、
図2の壁構造体は、壁構造体を音響減衰および分離するための弾性減衰要素10を特徴とする。