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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】個別化された無機粒子
(51)【国際特許分類】
   C01B 13/34 20060101AFI20230105BHJP
   C01B 33/12 20060101ALI20230105BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20230105BHJP
   C01F 7/304 20220101ALI20230105BHJP
   C08K 7/18 20060101ALI20230105BHJP
   C08K 7/22 20060101ALI20230105BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
C01B13/34
C01B33/12 A
C01B33/12 B
C01B33/18 Z
C01F7/304
C08K7/18
C08K7/22
C08L101/00
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020121995
(22)【出願日】2020-07-16
(62)【分割の表示】P 2017510775の分割
【原出願日】2015-05-07
(65)【公開番号】P2020172435
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2020-08-14
(31)【優先権主張番号】1454141
(32)【優先日】2014-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516331395
【氏名又は名称】ピロット
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロイック・マルシン
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-042422(JP,A)
【文献】特開2005-137955(JP,A)
【文献】特開2005-324312(JP,A)
【文献】特表平09-501139(JP,A)
【文献】特開2009-137806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 13/34
C01B 33/12
C01B 33/18
C01F 7/304
C08K 7/18
C08K 7/22
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル熱分解によって球状の、微小な且つ個別化された無機粒子のセットを調製するためのプロセスであって、
-(1)溶液の液滴の噴霧を得るために用いられる溶媒において所定のモル濃度で、そこから粒子が形成されることになる一以上の無機材料への、前駆体を含む液体溶液の、10℃から40℃の温度での噴霧と、
-(2)溶媒の蒸発及び粒子の形成を確実にするのに十分な、40℃から120℃の温度での、噴霧の加熱と、
-(3)無機材料を形成するための前駆体の分解を確実にするのに十分な、120℃から400℃の温度での、粒子の加熱と、
-(5)こうして形成された粒子の回収と、
を含み、
加熱の段階(2)が、1秒と10秒との間の時間で実行され、
加熱の段階(3)が、10秒と30秒との間の時間で実行され
前記無機粒子が酸化銅を含まない、プロセス。
【請求項2】
前記プロセスが、段階(3)の後で、200℃から1000℃の温度での粒子の緻密化の段階(4)を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
緻密化の段階(4)が、30秒以下の時間で実行される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記プロセスが、請求項1に記載の段階(3)又は請求項2に記載の段階(4)と、粒子の回収の段階(5)との間に来る、粒子のクエンチングの段階(4a)を含む、請求項1から3の何れか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
噴霧の段階(1)が、10秒以下の時間で実施される、請求項1から4の何れか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
回収の段階(5)が、100℃未満の温度で実行される、請求項1から5の何れか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
回収の段階(5)が、10秒以下の時間で実行される、請求項1から6の何れか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
マトリクスを、請求項1から7の何れか一項に記載のプロセスによって得られた粒子の少なくとも1つのセットと接触させる段階を含む、マトリクス内に実質的に均一に分散された粒子のセットを含む材料、を調製するためのプロセス。
【請求項9】
粒子が、個別化され、且つ、0.2マイクロメートルと5マイクロメートルとの間の平均直径、及び、15m/g以上の比表面積を有する、球状無機微小粒子のセットであって、
前記セットの前記粒子の少なくとも80%の数が、0.75以上の真球度の係数を有し、前記セットの前記粒子の少なくとも70%の数が、0.85以上の真球度の係数を有し、前記セットの前記粒子の少なくとも90%の数が、非凝集であり、
前記粒子が、ZnO粒子,アルミナ粒子,ベーマイト粒子,酸化チタン粒子,混合されたチタン及びシリコン酸化物粒子,モンモリロナイト粒子,ハイドロタルサイト粒子,MDH粒子,酸化マグネシウム粒子,酸化ジルコニウム粒子,酸化イットリウムYの粒子,二酸化セリウム粒子,イットリアによって安定化されたジルコニアの粒子,BaTiOの粒子,酸化鉄粒子,硫酸マグネシウム粒子,Zn0.18Mn0.82Feの粒子,Mn粒子,ニッケルマンガン酸化物粒子,ムライト粒子,ZnFeの粒子,MnFeの粒子,NiFeの粒子,CoFeの粒子,MgAlの粒子又はYAl12の粒子であり、
前記平均直径が、顕微鏡測定によって決定され、
前記比表面積が、BET法によって決定され、
前記真球度の係数が、前記粒子の最大直径に対する粒子の最小直径の比率であり、顕微鏡測定により決定される、球状無機微小粒子のセット。
【請求項10】
粒子が、MgO,ZnO,イットリアによって安定化されたZrO,ムライト(SiO/Al)の粒子、又は、ドープされた前記粒子である、請求項9に記載の粒子のセット。
【請求項11】
マトリクス内に実質的に均一に分散された粒子のセットを含む材料であって、粒子の前記セットが、請求項9又は10に記載された粒子のセットである、材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末の形状で乾燥状態において、及びそれらがマトリクスに分散されるときの両方で、自発的に個別化されるという特定の特性を有する無機粒子に関する。本発明はまた、上記粒子の製造方法、及びマトリクスに上記粒子を含めることによって製造される材料に関する。
【0002】
本発明に関する従来技術
材料の分野において、材料へ所望の特性を与えるために粒子を用いることが一般的であり、幅広い範囲の粒子が存在するとき、等しく幅広い範囲の特性を得ることが可能である。ナノ及び/又はマイクロ粒子によって材料へ与えられた特性は一般的に、粒子自身の特性、特に、それらの形態学的、構造的及び/又は化学的特性にリンクする。
【背景技術】
【0003】
球状形態の粒子は、様々な分野にわたって特に有用である。球状と言われる粒子はしばしば、凝集体自身が球に近い形状を有する、非球状粒子の凝集体、又は、十分でない度合の真球度を有する粒子のいずれかである。合成粒子の真球度を最適化するために様々な方法が発展されてきた。これらのプロセスのほとんどは、例えば、化学的タイプ(シリカ粒子等)又は形態(中空粒子等)のみ、1つのタイプの粒子に関して最適化される。
【0004】
結果として、任意の種類及び形態の球状粒子の合成に関する新しい方法を有することが有利であろう。
【0005】
マトリクスにおける粒子の分散もまた、従来技術であり、このようなマトリクスへ所望の特性を与える。例えば、顔料は、マトリクスに分散され得て、それらに色特性を与える。粒子の性質、それらの表面特性、及び必要に応じてそれらのコーティングは、マトリクスにおいて満足のいくレベルの分散を達成するために最適化されなくてはならない。マトリクスにおける粒子の分散性の最適化は、粒子の性質、及びマトリクスの性質の両方に依存する。全体の体積の全体を通して均一に所望の特性を分配するために、マトリクスにおいて粒子の比較的均一な分散を達成することができることが重要である。粒子がマトリクスにおいて凝集する場合、所望の特性は、マトリクスへ均一に与えられず、所望の結果(その所望の特性を有するマトリクス)は、満足のいくようには達成されない。
【0006】
結果として、任意のマトリクスにおいて任意のタイプの粒子の満足のいく分散を可能にするための新しいプロセスを有することが有利であろう。
【0007】
この文脈において、本出願人は、異なる化学的性質及び形態の、微小な、完全に球状の無機粒子の調製を可能にする方法を見出した。驚くべきことに、このプロセスによって得られた粒子は、それらの化学組成及び形態に関わらず、個別化された状態のままであり、且つ、それらが乾燥している、又はマトリクスに分散しているかどうかに関わらず、凝集しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明のまとめ
本発明の第1の目的は、粒子が、特にそれらの乾燥状態において又はマトリクスにおいて、個別化された事実を特徴とする、微小球状無機粒子のセットである。
【0009】
本発明の第2の目的は、マトリクスに実質的に均一に分散された、本発明による粒子のセットを含む材料である。
【0010】
本発明の第3の目的は、本発明による粒子のセットを調製するための方法である。
【0011】
本発明の最後の目的は、上述のマトリクスを本発明による粒子の少なくとも1つのセットに接触させる段階を含む、本発明による材料を調製するためのプロセスである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明によるプロセス実装に適した反応器の概略図である。
図2】本発明によるメソポーラスシリカ粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。
図3a】本発明によるメソポーラスベーマイトの粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。
図3b】本発明によるメソポーラスベーマイトの粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。
図3c】本発明によるメソポーラスベーマイトの粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。
図3d】本発明によるメソポーラスベーマイトの粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。
図4a】本発明による中空の酸化銅粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。
図4b】本発明による中空の酸化銅粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。
図4c】本発明による中空の酸化銅粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。
図5a】本発明によるメソポーラスアルミナ粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。
図5b】本発明によるメソポーラスアルミナ粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。
図5c】本発明によるメソポーラスアルミナ粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。
図6a】本発明によるメソポーラスの混合SiO/TiO粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である:SITI_01(図6a)。
図6b】本発明によるメソポーラスの混合SiO/TiO粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である:SITI_02(図6b)。
図6c】本発明によるメソポーラスの混合SiO/TiO粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である:SITI_03(図6c)。
図7a】本発明による中空のアルミナ粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。
図7b】本発明による中空のアルミナ粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。
図8a】本発明による稠密なシリカ粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。
図8b】本発明による稠密なシリカ粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。
図9】本発明による中空の酸化マグネシウム粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。
図10】ポリエチレンマトリクスにおける本発明によるメソポーラスベーマイト粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。
図11】エナメルマトリクスにおける本発明による中空のZrO粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。
図12a】ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)のマトリクスにおける本発明による稠密なZnO粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。
図12b】ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)のマトリクスにおける本発明による稠密なZnO粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。
図13】商用メソポーラスシリカ粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本発明の第1の目的は、粒子が、特に乾燥状態において又はマトリクスにおいて個別化されたという事実によって特徴づけられる、微小球状無機粒子のセットである。
【0014】
本発明では、個別化された粒子のセットは、粒子が凝集していない粒子の集まりを指し、セットの各粒子が、共有結合等の強い化学結合によって任意の他の粒子に結合していないことを意味する。
【0015】
本発明によって製造される粒子のセットは、この特徴を満たすいくつかの粒子を含み得る。ただし、非凝集の基準は、粒子の総数の少なくとも50%によって満たされる。好ましくは、検討中のセットの粒子の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%及び少なくとも95%の数が、個別化されるであろう。
【0016】
好ましくは、本発明によって考慮されているセットの粒子は、いくつかの他の、より小さい粒子の凝集体で作製されない。これは、例えば、走査型又は透過型電子顕微鏡を含む顕微鏡調査によって明確に可視化され得る。これは、本発明による粒子の唯一の可能な成分が、本発明による粒子のサイズよりも顕著に小さい、結晶子サイズのものであることを意味する。粒子は、本発明によると、好ましくは、少なくとも2つの結晶子で形成される。結晶子材料は、単一の結晶として同じ構造を有する材料の種類である。つまり、その構造の各原子面内で、点欠陥(挿入された若しくは置換された空孔又は原子)又は線状欠陥(転位)の例外を除いて、結晶秩序の主要な不連続が存在しない。
【0017】
比較のために、当該技術分野において慣用的に用いられる噴霧化(atomization)技術は一般的に、凝集した非球状粒子を提供する。これら凝集した粒子を用いて形成される物体は、球状であり得る。図13は、商用メソポーラスシリカ粒子の電子顕微鏡スキャンの像を示す。粒子は、完全には球状ではなく、凝集していることがあり、本発明の粒子には当てはまらない。
【0018】
本発明による粒子は球状であり、それらが0.75以上の真球度係数を有することを意味する。好ましくは、真球度係数は、0.8以上、0.85以上、0.9以上、又は0.95以上である。
【0019】
粒子の真球度の係数は、その最大直径に対する粒子の最小直径の比率である。完全な球に関して、比率は1である。真球度係数は例えば、像、例えば電子顕微鏡、特に走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)によって得られる像を扱うように適合した任意のソフトウェアを用いてアスペクト比を測定することによって計算され得る。
【0020】
本発明の一実施形態は、上述のような粒子のセットに関する。この実施形態では、全ての粒子の、量としての平均真球度が本発明の一部として設定された基準を満たす程度に、セットは、臨機応変に、必要とされる真球度を有する基準を満たさない粒子を含み得る。そのため、“球状粒子のセット”との語句は、上記で定義したような真球度を備える粒子を少なくとも50%含む複数の粒子を指す。好ましくは、考慮されるセットの粒子の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%の数が、上記で定義したような真球度を有する。
【0021】
本発明では、無機粒子との語句は、非有機製品、つまり(CO 2-を除いて)炭素化学に由来しないものを少なくとも部分的に含む粒子を意味する。無機粒子の化学的多様性は当業者によく知られている。特に、無機粒子は、必要に応じてラテックス等の有機化合物と組み合わされた、金属(又は合金)粒子、金属酸化物、ケイ酸塩、リン酸塩(又はアパタイト)、ホウ酸塩、フッ化物、炭酸塩、ヒドロキシ炭酸塩、バナジン酸塩、タングステン酸塩、硫化物及び/又はオキシ硫化物を含み得る。このリストは網羅的なものではない。特に、無機粒子は、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、二酸化チタン、アルミナ、チタン酸バリウム、又はこれらの混合物等の、金属元素酸化物又は半導体を含み得る。無機粒子はまた、銅、亜鉛若しくは鉄等の遷移金属、又は、イットリウム若しくはランタニド等の希土類金属、及び/又は、酸化物等のそれらのいくつかの誘導体を含み得る。
【0022】
本発明による無機粒子は、アルミニウム、エルビウム、ユーロピウム又はイッテルビウム等の少なくとも1つのドーパントを含み得る。ドーパントは、最大濃度10重量%、好ましくは最大5重量%、特に最大2重量%まで含まれる。
【0023】
本発明によって製造される粒子は、粒子自身とは異なる化学的性質を有し得る汚染物質を少量、例えば5重量%以下含み得る。
【0024】
好ましい実施形態では、無機粒子は、ZnO粒子、(特に、六方晶系のZnO、必要に応じてドープされた、例えばアルミニウムでドープされた)、アルミナ粒子(特にアモルファスアルミナ)、立方晶系の又は菱面体晶系のベーマイト粒子(特に斜方晶系の)、シリカ粒子(特にアモルファスシリカ)、酸化銅の粒子(好ましくは立方晶系の酸化銅)、酸化チタン粒子(特にアナターゼ又はルチル)、シリコン及びチタンの混合酸化物粒子(特にアナターゼ)、モンモリロナイト粒子(特に単斜晶系の)、ハイドロタルサイトの粒子(特に六方晶系の)、マグネシウムジヒドロキシド粒子(特に六方晶系の)、酸化マグネシウム粒子(特に立方晶系の)、二酸化ジルコニウム粒子(特に二次の)、酸化イットリウムYの粒子(特に立方晶系の、必要に応じてユーロピウム及び/又はエルビウム及び/又はイッテルビウムによってドープされた)、二酸化セリウム粒子、イットリアによって安定化されたジルコニアの粒子、CaCuTi12の粒子、BaTiOの粒子(好ましくは立方晶系の)、酸化鉄の粒子(好ましくはヘマタイトの形状)、硫酸マグネシウム粒子(好ましくは斜方晶系の)、Zn0.18Mn0.82Fe粒子(好ましくは立方晶系の)、Mnの粒子(好ましくは単斜晶系の)、ニッケルマンガン酸化物粒子、ムライト粒子、ZnFeの粒子、MnFeの粒子、NiFeの粒子、CoFeの粒子、MgAlの粒子又はYAl12の粒子である。
【0025】
特定の実施形態では、無機粒子は、ZnO粒子、(特に、六方晶系のZnO、必要に応じてドープされた、例えばアルミニウムでドープされた)、アルミナ粒子(特にアモルファスアルミナ)、立方晶系の又は菱面体晶系の粒子ベーマイト(特に斜方晶系の)、酸化銅粒子(好ましくは立方晶系の酸化銅)、モンモリロナイト粒子(特に単斜晶系の)、ハイドロタルサイトの粒子(特に六方晶系の)、MDH粒子(特に六方晶系の)、酸化マグネシウム粒子(特に立方晶系の)、二酸化セリウム粒子、イットリアによって安定化されたジルコニアの粒子、CaCuTi12の粒子、BaTiOの粒子(好ましくは立方晶系の)、酸化鉄の粒子(好ましくはヘマタイト形状の)、硫酸マグネシウム粒子(好ましくは斜方晶系の)、Zn0.18Mn0.82Fe粒子(好ましくは立方晶系の)、Mnの粒子(好ましくは単斜晶系の)、ニッケルマンガン酸化物粒子、ムライト粒子、ZnFeの粒子、MnFeの粒子、NiFeの粒子、CoFeの粒子、MgAlの粒子又はYAl12の粒子である。
【0026】
さらなる特定の実施形態では、粒子は、MgO、ZnO、イットリアによって安定化されたZrOの、ムライト(SiO/Al)の、アルミナの、又は他の対応するドープされた粒子の、粒子である。他の1つのより具体的なモードでは、粒子は、MgO、ZnO、イットリアによって安定化されたZrOの、ムライト(SiO/Al)の粒子、又は他の対応するドープされた粒子である。
【0027】
実施形態によると、無機粒子は、いくつかの化学元素、好ましくは2から16個の異なる化学元素を含み、この元素の数は、粒子に含まれ得るO及びH元素を考慮しない。従って、これらの粒子は不均質粒子になり、それらは、それらの化学両論が好ましくは合成方法によって制御されるいくつかの元素を含むことを意味する。
【0028】
粒子を調製する方法の速さ、及び、本発明による粒子調製方法の終わりでのクエンチングステップの可能性のある存在に起因して、粒子は、緻密化した、特に結晶化した、さらには準安定な相であり得る任意の化学成分を含み得る。プロセスにおいて用いられる特定の条件は、組成物が緻密化した形態で得られることを可能にする。ここで、高温で費やされる時間が非常に短いので、分解温度は、実際に適用される温度より下である。この場合、“高温”との語句は好ましくは、40℃より高い温度を指す。“高温で費やされた時間”との語句は一般的に、乾燥、熱分解及び緻密化段階のために必要とされる時間を指す。好ましくは、高温で費やされた時間は、70秒を超えない。より具体的には、それは30と70秒との間である。好ましくは、クエンチングは、1秒当たり100℃以上又は300℃以上の冷却速度によって特徴づけられる。一実施形態では、粒子は、特に結晶化に関する緻密化を達成するためのエネルギー入力を必要とする酸化物のタイプを含む。これは、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、二酸化チタン(ルチル)、立方晶系の又は単斜晶系のZrO、及び希土類金属(ランタニド及び/又はイットリウム)の酸化物を含み得る。このような粒子は、従来技術で用いられる従来法、特に、クエンチング段階を含まないもの、によって同じようには得られないことがある。
【0029】
不均質粒子は、各結晶子内で粒子を形成するいくつかの化学元素(O及びHを除く)、好ましくはすべての化学元素(O及びHを除く)を含み得るか、又は、単一の化学元素(O及びHを除く)で各々が形成される結晶子を含むか、のいずれかであり得る。特定の実施形態では、不均質粒子の各結晶子は、単一元素(O及びHを除く)を含む。
【0030】
粒子は、本発明によると、微小であり、それらの直径が0.1と1000マイクロメートルとの間であることを意味する。好ましくは、本発明によって製造される粒子の直径は、0.1と600マイクロメートルとの間、より具体的には0.1と100マイクロメートルとの間である。好ましい実施形態では、0.1と10マイクロメートルとの間である。他の1つの特定の実施形態によると、粒子直径は0.2と5マイクロメートルとの間、好ましくは0.5と3マイクロメートルとの間である。当業者は、本発明による粒子又は粒子の凝集体の直径の値を決定するために用いられる正しい技術を知っており、また、これらの測定に関連する不確実性の度合いを知っている。例えば、セットにおける粒子の平均直径、標準偏差及びサイズ分布は、特に、顕微鏡像、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)によって生成されたもの、の統計的調査によって、決定され得る。
【0031】
粒子がセットの一部であるとき、上記で特定したような直径値は、セットにおける粒子がいくつかがこの範囲の外側の直径を有する場合さえ、全ての粒子の平均直径に相当し得る。有利には、セットにおけるすべての粒子は、上記で定義したような直径を有する。
【0032】
一実施形態では、本発明によって製造された粒子の任意のセットにおける粒子サイズの標準偏差は、25%以下、好ましくは20%以下である。
【0033】
本発明による、粒子のセット全体における粒子サイズの分布は、モノモーダル又はマルチモーダルであり得る。
【0034】
本発明における微小粒子の使用は、ナノ粒子に関連した可能性のある欠点(適用困難性、毒性等)を伴うことなく、それらが大きすぎないという結果として、粒子の分散特性を促進し得る。
【0035】
本発明によって調製される粒子は、異なる形態を有し得る。例えば、それらは、中実、中空、多孔質、メソポーラス、非多孔質であり得、また、有機分子等の他の物をカプセル化又は含み得、その場合、それらは有機-無機ハイブリッド粒子、又は、特にナノ粒子の形状の無機組成物であろう。このカプセル化は、粒子の合成の間に、又は後処理によってのいずれかで達成され得る。粒子が中空であるとき、壁の厚さは、特に合成プロセスにおけるパラメータを変更することによって制御され得る。
【0036】
本発明では、IUPAC定義に従って、材料は、それが2nm未満の細孔を有するとき、マイクロ多孔質として定義される。材料は、それが2と50nmとの間のサイズの細孔を有するとき、メソポーラスとして定義される。材料は、それが50nmより大きいサイズの細孔を有するとき、マクロポーラスとして定義される。
【0037】
典型的には、メソポーラス材料は、アモルファス又は準結晶シリカタイプの組成物であり得、細孔は通常、非常に大きいことがある細孔サイズ分布を備え、ランダムに分布する。
【0038】
本発明の大きな利点は、高い比表面積も有する、上記で定義されたサイズの微小粒子を製造するためのその能力である。特定の実施形態では、本発明の粒子は、15m/g以上、好ましくは30m/g以上の表面積を有する。本発明による粒子の比表面積は、700m/g、又は600m/gまでであり得る。当然、比表面積は、特に粒子直径及び空隙率に応じて変化する。特定の実施形態によると、本発明による粒子の平均直径は、0.2と5マイクロメートルとの間、好ましくは0.4と3マイクロメートルとの間であり、15m/g以上、好ましくは30m/g以上の比表面積を示す。比表面積は、様々な方法、特にブルナウアー、エメット、テラー(BET)法、又はバレット、ジョイナー、ハレンダ(BJH)法によって測定され得る。上記で与えられる比表面積値は、別段の指定がない限りBET法に従って測定される。
【0039】
本発明の第2の目的は、マトリクス内に実質的に均一に分散された、本発明による粒子を含む材料である。
【0040】
本発明によると、‘マトリクス’との語句は、本発明によって製造される粒子の包含から有利には利益を得ることがある任意の材料を指す。特に、それは、液体マトリクスの粘度に関わらず、固体又は液体マトリクスを指し得る。
【0041】
一実施形態では、マトリクスは液体マトリクス、例えば、溶媒、好ましくは、水等の水性溶媒、又はエタノール若しくはエチレングリコール等のアルコール、又は他に、メチルメタクリレート等の有機溶媒である。液体マトリクスはまた、濃縮されることがある又は濃縮されないことがある、溶媒の混合物、又は溶媒の予備混合物を含み得る。
【0042】
一実施形態では、マトリクスは固体マトリクス、例えば、金属性マトリクス、セラミック又はポリマーマトリクス、特に熱可塑性ポリマーマトリクスである。本発明によって用いられ得る熱可塑性ポリマーマトリクスは、特に、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリオキシメタクリレート、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)又はポリ(エチレンビニルアセテート)を含む。
【0043】
マトリクスでは、本発明による粒子の包含は、マトリクスに特有の特性、特に、機械的、熱的及び/又は物理化学的特性の付与を可能にする。マトリクスにおける粒子の包含は、当該技術分野において用いられる従来技術によって、例えば、マトリクスは液体でありつつ、機械的撹拌によって実施され得る。
【0044】
特に、本発明による材料は、液体、粉末、ビーズ、ペレット、顆粒及び/又は押出物の形状で得られ得、形成操作は、特にマトリクスがポリマーマトリクスであるとき、当業者に既知の従来技術を用いて実施される。
【0045】
特に、材料の形成プロセスは、粒子を含まないマトリクスに関して従来用いられる形成プロセスと比較して、マトリクス内で粒子を分散するための任意のさらなるステップを必要としない。形成プロセスは好ましくは、粒子の無いマトリクスが典型的には用いられるセクターにおいて、及び加工装置と共に採用され得る。いくつかの実施形態では、マトリクス内での粒子の分散は、任意の追加の化学的分散剤無しで実施され得る。
【0046】
特定の実施形態では、マトリクス内での粒子の分散は、界面活性剤等の化学的分散剤有りで又は無しで実施される。当業者は、所望の分散を得るために分散剤の使用が必要とされるかどうかを決定すること、及び、用いられる分散剤の量を適切に調整することが可能である。例えば、分散剤は、0.5と50重量%との間の任意の量において、特に0.5と20重量%との間の任意の量において用いられ得る。
【0047】
本発明による粒子の特定の特性は、それらが、それらの化学的性質、形態又はマトリクス自身の性質に関わらず、マトリクスの容積全体を通して実質的に均一に分散し得ることである。これは、単位容積当たりの粒子の密度が一般的に、マトリクス内の任意の点で同じことを意味する。
【0048】
固体マトリクスの場合では、単位領域当たりの粒子の密度は好ましくは、マトリクス表面に関わらず略同じである。この表面が、マトリクスの端の内の1つであろうとなかろうと、又は、例えば材料を切ることによって得られる表面であろうとなかろうとである。そのため、本発明による粒子の包含によってマトリクスへ与えられる特性又は複数の特性は、マトリクスの容積全体を通して実質的に均一に分布する。
【0049】
本発明によって製造される材料は、所望の特性をそれに与えるための材料に適合して、任意の割合において本発明による粒子を含み得る。例えば、材料は、マトリクス及び粒子の全重量に対して、0.1と80重量%との間、好ましくは、1と60重量%との間、特に2と25重量%との間の粒子を含み得る。
【0050】
好ましくは、本発明による粒子は、非変形の個別化された粒子である。また、他の粒子と接触している各粒子の表面は、一般的に非常に弱い。一実施形態では、セットの2つの異なる粒子の間での接触を形成しているメニスカスの曲率半径は、特にマトリクス内で又は粉末形態において、2つの粒子の各々の半径の、5%未満、好ましくは2%未満である。
【0051】
本発明による粒子の真球度はまた、液体マトリクス内での同じ充填率に関して、非球状粒子によって得られるよりも低い粘度を可能にする。
【0052】
本発明の他の1つの目的は、上述のように、本発明による粒子のセットの調製のためのプロセスである。本発明によるプロセスは、乾燥温度で起こり、必ずしも熱分解温度ではない、“エアロゾル熱分解”(又は噴霧熱分解)として知られるプロセスである。このプロセスは、特に、特許出願FR 2 973 260において記載されるエアロゾル熱分解プロセスと比較して強化されたプロセスを表す。より具体的には、本発明によって実行されるプロセスは一般的に、反応器において起こる。このように得られた粒子のセットは、大量に相当し得、より具体的には、得られる量は、100g、500g、1kg、15kg又は20kgより多いことがあり、この量は、生じる又は必要とされる反応器への溶液の供給速度に従って変化する。従って、生成された粒子のセットは、上述の粒子特性を維持しつつ、大量に得られるという優位点を有する。
【0053】
本方法は以下のステップを含む:
(1)溶液の液滴の噴霧を得るために用いられる溶媒において所定のモル濃度で、そこから粒子が形成されることになる一以上の無機材料への、前駆体を含む液体溶液の噴霧、
(2)溶媒の蒸発及び粒子の形成を確実にするのに十分な温度への、(乾燥と呼ばれる)噴霧の加熱、
(3)無機材料を形成するための前駆体の分解を確実にするのに十分な(熱分解と呼ばれる)温度への、粒子の加熱、
(4)必要に応じて、粒子の緻密化、及び
(5)このように形成される粒子の回収。
【0054】
噴霧のステップ(1)は、好ましくは10から40℃の温度で、及び/又は、好ましくは10秒以下、特に5秒以下の期間の間、実施される。ステップ(1)では、液体溶液は一般的に、水溶液若しくは水アルコール溶液の形状、又は、コロイド状ゾルの形状である。より具体的には、ステップ(1)の液体溶液は、噴霧によって反応器内に導入される。
【0055】
ステップ(2)、加熱(乾燥)ステップは、好ましくは40から120℃の温度で、及び/又は、好ましくは10秒以下、特に1と10秒との間の期間の間で実行される。
【0056】
熱分解と呼ばれる、ステップ(3)は、好ましくは120から400℃の温度で、及び/又は、好ましくは30秒以下、特に10と30秒との間の期間の間で実行される。
【0057】
ステップ(4)、必要に応じた緻密化は、幅広い範囲の温度にわたって、特に200と1000℃との間で実施され得る。このステップは特に、調製されることになる粒子が少なくとも部分的に結晶形態であるときに、好ましくは400から1000℃の温度で実行される。緻密な、しかし非結晶化粒子、特にアモルファス粒子を得ることを求めるとき、緻密化温度は、より低いことがあり、例えばそれは特にアモルファスシリカに関して200℃から300℃付近であり得る。好ましくは、緻密化ステップは、30秒以下、特に20と30秒との間の期間の間で実行される。
【0058】
ステップ(5)、粒子回収は、好ましくは100℃未満の温度で、及び/又は、好ましくは10秒以下、特に5秒以下の期間の間で実行される。ステップ(5)、粒子回収は、好ましくは、反応器出口でフィルター上の粒子の堆積によって実行される。
【0059】
各ステップの温度は、上記所定の温度範囲の外側であり得る。粒子の所定のセットに関して、適用されることになる温度は、液及び粒子が反応器において循環する流量に依存し得る。液及び粒子が反応器においてより速く循環するほど、それらの滞留時間は短くなり、同じ結果を達成するために反応器において必要とされる温度は高くなる。
【0060】
好ましくは、ステップ(2)、(3)及び(4)は、同じ反応器において実行される。特に、本方法における全てのステップ(後処理ステップを除く)は、同じ反応器において実行される。
【0061】
本方法におけるステップの全体、特にステップ(2)、(3)及び(4)は、順々に、連続的なシーケンスとして実行される。反応器へ適用される温度プロファイルは、これらの3つのステップが順々に生じるように、形成されることになる粒子の関数として適合される。好ましくは、反応器における温度は、少なくとも1つ、好ましくは3つの加熱素子によって調節され、それらの温度は、独立してセットされ得る。
【0062】
本発明による方法は好ましくは、粒子がクエンチされるステップ(4a)を含み、ステップ(3)又は存在する場合は粒子緻密化の任意のステップ(4)と、粒子回収ステップ(5)との間に来る。クエンチングステップ(4a)は、温度の急速な低下に相当する。より具体的には、粒子緻密化ステップ(4)が含まれる場合、クエンチングステップが好ましくは実行され、有利には、例えば、15と50℃との間の温度を得るために、少なくとも300℃/sの温度低下を含む。より具体的には、粒子緻密化ステップ(4)が含まれない場合、クエンチングステップが起こるかもしれず、それが起こる場合、それは好ましくは少なくとも100℃/sの温度低下に相当する。クエンチングステップ(4a)は好ましくは、反応器周囲の全て又は一部への、ガス、好ましくは冷たい空気の入力によって実行される。本発明では、ガスは、それが15と50℃との間、好ましくは15と30℃との間の温度である場合、冷たいと考えられる。一実施形態では、反応器に入るガスは、空気とは異なるガスである。特に、それは、中性ガス(例えば窒素又はアルゴン)、還元ガス(例えば水素又は一酸化炭素)、又はこのようなガスの任意の混合物であり得る。
【0063】
本方法は好ましくは、反応器の(例えば、底部での)入口からの噴霧を運ぶガス流れ無しで実行される。最も高い温度を備える領域内へ材料を運ぶための層流は、反応器の吸引端のみ(例えば、頂部)によって最も良く生成され、例えば、数パスカル又は数十パスカルのオーダーの低下を生成する。
【0064】
このような実施形態は、その下部におけるガス入口無しの反応器の使用を可能にし、プロセスのかく乱及び損失を制限し、プロセス及び得られる粒子のサイズ分布の効率を最大化する。
【0065】
他の1つの実施形態では、本方法が実行される反応器はまた、噴霧が形成されるレベルでのガスの流入を含む。このレベルで反応器に入るガスは好ましくは空気、特に熱い、つまり80から200℃の温度の空気である。
【0066】
好ましくは、本発明による方法は、エアロゾル熱分解反応器内で実行されるものに加えて、任意のさらなる加熱ステップを含まない。
【0067】
図1は、本発明によるプロセスの実装に関する反応器の例を示す。反応器の下部(1)は、溶媒において所定のモル濃度で、そこから粒子が形成されることになる、一以上の無機材料への、前駆体を含む液体溶液を含む。この溶液は、中間部(2)において噴霧され、液滴は吸引によって反応器内へ上昇する。冷たいガス、特に冷たい空気の流入は、粒子がクエンチされることを可能にする。反応器の上部(3)はまた、(100℃以下、例えば15と50℃との間の)冷たい温度で動作される。
【0068】
粒子を形成するために用いられることになる無機材料への前駆体又は複数の前駆体は、任意の起源であり得る。それ(それら)は、液体溶液、特に、金属イオン(特に、選択された金属の有機又は無機塩)を含む水溶液若しくは水アルコール溶液として、若しくは、前駆体分子(例えばオルガノシラン)として、又は、(金属若しくは選択された金属の酸化物のナノ粒子のコロイド状分散としての)コロイド状ゾルの形状で、プロセスのステップ(1)において導入される。好ましくは、無機材料への前駆体又は複数の前駆体は、液体溶液、特に、金属イオン(例えば選択された金属の有機若しくは無機塩)を含む水溶液若しくは水アルコール溶液として、プロセスのステップ(1)において導入される。無機材料への前駆体は、形成されることになる粒子のタイプによって選択される。特定の実施形態では、前駆体は、生物起源の材料を表す、食品材料又は廃棄物プラントに少なくとも部分的に由来する。無機材料への前駆体の特定の例は、もみ殻から製造されるケイ酸ナトリウムである。食肉処理場からの廃棄物、例えば骨は、リン酸カルシウムのソースとして用いられ得る。血は、酸化鉄前駆体として用いられ得る、及び/又は、貝殻は、炭酸カルシウムのソースとして用いられ得る。
【0069】
上記で特定したように、特定の実施形態によると、本発明によって製造される粒子は、少なくとも部分的に、金属成分、例えば有機-無機ハイブリッドで作製される。この成分は、ゾルゲル技術を用いて得られ得て、必要に応じて少なくとも1つの両親媒性の界面活性剤(又は特定のテクスチャリング剤)の存在下において、一以上の加水分解性基を含む少なくとも1つの金属分子前駆体によって開始し、界面活性剤は必要に応じて貯蔵される。
【0070】
本発明によって用いられる方法は、高純度を備える粒子が得られることを可能にする。これらの粒子は、それらが用いられる前に実行されることになるさらなる処理ステップ、例えば、洗浄、加熱処理、粉砕等を常に必要とするわけではない。
【0071】
本発明の方法において、反応器内に導入されるすべての材料は変換される。これは、少量のみの廃棄物を生成するという優位点を有する。加えて、原子の利用率は高く、グリーンケミストリーの要件を満たす。
【0072】
本発明によって実行される方法は、少なくとも1つの、粒子の後処理段階を含み得る。後処理は、適切な溶媒による洗浄、還元環境における接触段階、粒子内でのカプセル化段階、粒子の加熱、及び/又は、特に粒子の“封止”のための、粒子の被覆であり得る。
【0073】
特に、粒子の加熱による後処理の段階は、それらの組成物及び結晶構造等の粒子特性を最適化することが必要であり得る。一般的に、粒子の加熱による後処理段階は必要とされないであろう。なぜなら、反応器における液滴及び粒子の速度は減少されることになるからである。
【0074】
本発明によって用いられる方法は、製造される粒子のサイズの正確な制御を可能にする。これは、通常の場合である、前駆体の濃度がモルであるときに、噴霧における液滴の直径とプロセスによって製造される粒子のそれとの間に約5の一定比率が存在するからである。当業者は、前駆体濃度に基づいてこれら2つの直径の間の比率をどのように決定するかを知るであろう。例えば、前駆体濃度が10倍減少した場合、その後、製造される粒子のサイズは、約3である10の立方根で減少する。液滴直径はまた、噴霧モードの間にプロセスパラメータを変更する、例えば、噴霧を形成するために用いられる圧電設定の周波数を変更することによって制御され得る。
【0075】
一実施形態では、液滴の内の少なくともいくつかは、粒子を形成するために用いられる主な成分に加えて、水、酸性水若しくはアルカリ性水等の溶媒において溶解し得るか、熱感成分である、“犠牲成分”として知られる少なくとも1つの成分で作製され、特にこの“犠牲成分”は、反応器の動作温度で蒸発する又は劣化するという特性を有する。犠牲成分が溶媒において溶解するとき、本方法は有利には、粒子が溶媒によって洗浄される後処理段階を含む。液滴における“犠牲成分”の存在は、液滴自身から直接得られる粒子のものとは異なる、サイズ、空隙率及び比表面積等の特性を有する粒子が得られることを可能にする。犠牲化合物は、溶解度及び/又は温度感受性の特性等の所望の特性を有する任意の液体、固体又は気体の化学物質であり得る。
【0076】
本発明によって実行される方法は、有機分子などの他の物の、無機粒子内でのカプセル化のステップを含み得、その場合、それらは有機-無機ハイブリッド粒子、又は特にナノ粒子の形状での無機組成物であろう。このカプセル化は、粒子の合成の間に、又は後処理によってのいずれかで達成され得る。
【0077】
本発明の他の1つの目的は、特に、上記のとおりに、ステップ(1)から(5)を含む又はステップ(1)から(5)から成る方法の実装を介して、上記のように定義されたプロセスによって調製され得る粒子のセットである。このような方法によって調製される粒子は、上記の特徴を有する。特に、この方法は、上記のような比表面積を備える個別化された微小球状粒子が得られることを可能にする。好ましくは、この方法はまた、各粒子が、いくつかの他の、より小さい粒子の凝集体を含まないことを確実にする。好ましくは、この方法によって得られる粒子は、個別化され、非変形である。
【0078】
本発明の最後の目的は、本発明による材料の調製のためのプロセスであり、本発明による粒子の少なくとも1つのセットに、上記のようなマトリクスを接触させることを含む。好ましくは、本方法は、上記のように、材料形成ステップをさらに含む。
【0079】
特に記載のない限り、本明細書で言及されるパーセンテージは、重量パーセンテージである。
【0080】
以下の実施例は、例示目的のために含まれるのであり、本発明を制限しない。
【0081】
実施例
特に記載のない限り、本実施例では、比表面積、細孔容積及び細孔直径の測定は、BET又はBJH法を用いて為される。
【0082】
レーザー粒子サイズ測定は、水における粒子の分散上で、Mastersizer2000レーザー粒度計(Malvern Instruments)を用いて、為された。
【0083】
実施例1:メソポーラスシリカ粒子
実施例1.1:有機化合物のインサイチュカプセル化によるメソポーラスシリカ粒子
有機分子をカプセル化するメソポーラスシリカ粒子は、2つの異なる前駆体:直径10から30nmの粒子を含む商用シリカゾル、及びTEOS(テトラエチルオルトシリケート)から調製された。
【0084】
a)シリカゾルを用いる
238mlの脱塩水によって混合された51mlの商用シリカゾルが調製される。有機化合物は、シリカの重量に対して、50重量%の濃度で導入される。
【0085】
“前駆体”溶液は、噴霧熱分解プロセスを用いて霧化される。
【0086】
乾燥、熱分解及び緻密化が起こるオーブンの最大温度は、250℃にセットされる。
【0087】
b)TEOSを用いる
強酸(例えばHCl又はHNO)を用いてpHが1.4に調整された145mlの脱塩水、及び23mlのTEOS(テトラエチルオルトシリケート)が、500mlビーカー内に導入され、混合物は3時間の間攪拌される。有機化合物は、ケイ酸塩の重量に基づいて、50重量%の濃度まで導入される。
【0088】
前駆体溶液は、噴霧熱分解プロセスを用いて霧化される。乾燥、熱分解及び緻密化が起こるオーブンの最大温度は、250℃にセットされる。
【0089】
実施例1.2:後処理における有機分子のカプセル化によるメソポーラスシリカ粒子
本発明による噴霧熱分解プロセスを用いて得られる25gのメソポーラスシリカ粒子(比表面積124m/g(BET)、平均直径1.2マイクロメートル(レーザー粒子サイズ))が、真空出口へ接続された500mlフラスコ内へ導入される。媒体は、6時間の間、真空下にて140℃で加熱される。
【0090】
有機組成物(25g)の、400mlの濃縮液がその後導入され、混合物は、12時間の間、激しく攪拌される。
【0091】
粒子はその後、遠心分離され、空気乾燥される。
【0092】
充填率は、重量差によって決定され、50重量%のオーダーである。
【0093】
実施例1.1aにおいて得られるメソポーラスシリカ粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)像は、図2に提示される。同様の粒子は、実施例1.1b及び1.2において得られた。レーザー粒子サイズ分析は以下の結果を提供した:d50=1.72μm。こうして得られた粒子のBET比表面積は122m/gである。
【0094】
実施例2:メソポーラスAlOOHベーマイト粒子
粒子は、以下の方法を用いて合成された。
1-80℃で300mlの水を加熱する。
2-温度を(60℃まで)上昇させつつ、アルミニウムのアルコキシドを0.7M(つまり42.9g)で加え、激しく攪拌する。
3-覆い、80℃で1時間の間攪拌する。
4-1時間後、2.6重量%(つまり1.11g)の硝酸を加える。
5-覆い、80℃で2時間の間攪拌する。
【0095】
前駆体溶液は、本発明によって実行される噴霧熱分解プロセス(SP100)を用いて霧化される。乾燥、熱分解及び緻密化が起こる反応器において到達する最大温度は、500℃である。
【0096】
図3は、このように得られたベーマイト粒子のSEM写真を示す。X線回折分析は、斜方晶系のベーマイトの同定を可能にした。粉末のBET比表面積は402m/gであり、平均細孔直径(BET)は3nmである。レーザー粒子サイズ分析は以下の値をもたらした:d10=0.76μm、d50=1.09μm及びd90=1.8μm。
【0097】
実施例3:中空のCuO粒子の調製
水溶液は、1Lの水に溶解した、241gのCu(NO,3HO硝酸銅3水和物粉末を用いて調製される。
【0098】
前駆体溶液は、噴霧熱分解プロセスを用いて霧化される。乾燥、熱分解及び緻密化が起こるオーブンの最大温度は、800℃にセットされる。
【0099】
粒子はその後、反応器出口で不完全なままである硝酸塩の分解を終わらせるために、500℃で2時間の間、空気-乾燥オーブンにおいて熱処理される。
【0100】
図4は、このように得られるCuO粒子のSEM像を示す。X線回折分析は、単斜晶系のCuOの同定を可能にした。レーザー粒子サイズ分析は以下の値をもたらした:d10=0.416μm、d50=0.700μm及びd90=0.999μm。
【0101】
実施例4:中空の金属製の銅粒子の調製
実施例3において得られるCuO粉末が、オーブン内部に配される。還元ガスの流れ(例えば、5%のH、95%のN)が、反応全体を通してオーブンにおいて循環される。還元は、500℃の温度で3時間の期間にわたって起こる。
【0102】
X線回折分析は、このように得られた全ての粒子が銅粒子であることを示した。
【0103】
実施例5:メソポーラスAlアルミナ粒子
粒子は、以下の方法を用いて調製された。
1-80℃で300mlの水を加熱する。
2-温度を(60℃へ)上昇させつつ、アルミニウムのアルコキシドを0.7M(つまり42.9g)で加え、激しく攪拌する。
3-覆い、80℃で1時間の間攪拌する。
4-1時間後、2.6重量%(つまり1.11g)の硝酸を加える。
5-覆い、80℃で2時間の間攪拌する。
【0104】
前駆体溶液は、本発明による噴霧熱分解プロセスを用いて霧化される。乾燥、熱分解及び緻密化が起こる反応器において到達する最大温度のプロファイルは、350℃、600℃及び800℃である。
【0105】
図5は、得られたAlの粒子のSEM像を示す。X線回折分析は、アモルファスAlの同定を可能にした。粉末のBET比表面積は、383m/gであり、平均細孔直径は2.4nmである。レーザー粒子サイズ分析は以下の値を提供した:d10=0.95μm、d50=1.33μm及びd90=2.26μm。
【0106】
実施例6:メソポーラスSiO/TiO混合粒子
シリカゾル
ビーカーにおいて627mlの脱塩水が、8gの界面活性剤(ポロキサマー、例えばPluronic、CTAB(ヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物)又は、Brij製品の誘導体、例えばポリオキシエチレン)と共に導入される。界面活性剤の溶解後、連続的に攪拌しつつ、28gのTEOSが、1つのロットで加えられる。混合物は、15時間の間激しく攪拌されて、TEOSの加水分解及び凝縮が起こること、それゆえシリカゲルの形成を可能にする。
【0107】
酸化チタンゾル
並行して、1.5mlの容積の硝酸が、100mlの脱塩水を含むフラスコ内に導入される。溶液は、70℃で加熱され、17gのチタンブトキシドが加えられる。反応は、12時間の期間の間の激しい攪拌下で実行され、酸化チタンナノ粒子の合成を可能にする。分散は、放置されて2時間の期間の間デカントされて、表面からのブタノールの除去を可能にする。
【0108】
噴霧熱分解
チタンゾルが、シリカゾル内に導入され、混合物は5分間、磁気攪拌された。
【0109】
前駆体溶液は、本発明による噴霧熱分解プロセス下で霧化される。乾燥、熱分解及び緻密化が起こるオーブンの最大温度は、500℃にセットされる。
【0110】
後処理
粒子はその後、700℃で4時間の間、空気-乾燥オーブンにおいて熱処理される。
【0111】
本方法は、TiOの量を変更することによって繰り返されて、3つのサンプルを得る:SITI_01、SITI_02及びSITI_03(以下の表1を参照)。
【0112】
【表1】
【0113】
図6は、得られる粒子のSEM像を示す:SITI_01 (a) SITI_02 (b)及びSITI_03 (c)。
【0114】
以下の表2は、得られる3つのサンプルの特性をまとめたものである。
【0115】
【表2】
【0116】
平均直径の値は、電子顕微鏡像の統計的調査によって得られる。
【0117】
実施例7:他のタイプの粒子
他の粒子が、本発明によって調製され、特徴づけられた。例えば、図7から9は、本発明による粒子の電子顕微鏡スキャニング像を示す:
-中空のアルミナ粒子(図7
-緻密なシリカ粒子(図8)、及び
-中空の酸化マグネシウム粒子(MgO)(図9)。
【0118】
表3は、本発明による異なるタイプの合成粒子の例を示す。
【0119】
表3において粒子名におけるサイン“:”を備える要素は、ドーパントを有する粒子である。
【0120】
“Bio-SiO”との語句は、プラントの食品廃棄物の抽出によって得られ得るケイ酸ナトリウムから作製されたバイオベースのシリカを指す。
【0121】
【表3-1】
【0122】
【表3-2】
【0123】
表3におけるサイズ値は、電子顕微鏡像の統計的分析によって得られた。得られたルチルTiO粉末のBET比表面積は、47m/gである。得られたアナターゼTiO粉末のBET比表面積は、198m/gである。得られたウルツ鉱ZnO粉末(表3においてh-ZnOとして記載される)のBET比表面積は、39m/gである。
【0124】
実施例8:ポリエチレンマトリクスにおける実施例2において得られる粒子の組み込み
実施例2において得られるベーマイト粒子は、押出配合によってポリエチレンマトリクス内に導入される。押出機は、共回転二軸Clextralモデル、EVOLUM HT 32であり、44のL/D比率及び32mmのスクリュー直径を備える。
【0125】
用いられる割合は以下の通りである:重量で、80%のポリエチレン、及び20%のベーマイト粒子。押出温度プロファイルは以下のとおりである。
【0126】
【表4】
【0127】
スクリュー速度は、250回転数/分でセットされ、モータートルクは44%であり、最大圧力は40barであり、材料温度は180℃であり、乾燥は、4時間の間50℃で実行される。
【0128】
図10は、ポリエチレンマトリクス内の本発明によって製造されるベーマイト粒子のSEM像を示す。
【0129】
実施例9:実施例4において得られる粒子のマトリクス内への組み込み
実施例4において得られる銅金属粒子は、特に13%のアルコール(エタノール又はエチレングリコール+クエン酸)を含む水性マトリクスにおいて、58重量%で分散された。
【0130】
本方法は以下のとおりである:
-銅粒子の表面は洗浄される:銅粒子は、周囲温度で24時間の間クエン酸の濃縮液において懸濁される。粒子はその後濾過され、周囲温度で24時間の間、エタノール及びクエン酸の溶液において懸濁される。粒子は濾過され、乾燥される。
-粒子は、エタノールにおいて機械的に分散されて、ペーストを得る。これは、水溶液と共に混合される。
【0131】
最終的な溶液は、重量で58%の銅粒子、重量で13%のアルコール溶液(例えば、重量で、90%のエタノール+10%のクエン酸)、及び、重量で29%の水溶液を含んで成る。
【0132】
実施例10:中空のZrO粒子のエナメルマトリクス内への組み込み
本発明によって製造されるZrOの中空粒子は、以下の方法を用いて、水性スラリーにおいてエナメルマトリクス内に分散された:
1/ 水溶液における中空粒子の予備分散:中空粒子は水溶液において懸濁される。中空粒子の割合は、固体材料の50重量%と90重量%との間で変動し得る。
2/ 水溶液におけるエナメル粉末の予備分散。エナメル粉末の割合は、固体材料の50重量%と90重量%との間で変動し得る。
3/ 中空粒子の懸濁液は、エナメルのスリップ(enamel slip)へ加えられる一方で、混合物は機械的に攪拌される。その最終的な形態では、スラリーは、30重量%から60重量%の固形物、及び40重量%から70重量%の水溶液を含み得る。
【0133】
結果として得られるスラリーは、金属基板上へ噴霧され得る。エナメルによって被覆された基板は、約100℃で空気中にて乾燥され、その後、エナメルの品質に応じて(800と1000℃との間の)高温での焼成を受ける。
【0134】
図11は、スチール基板上への噴霧によって堆積された20%の酸化ジルコニウムの中空粒子を含む稠密なエナメルマトリクスのSEM像を示す。
【0135】
実施例11:ABSマトリクスにおける稠密なZnO粒子の埋め込み
図12は、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)のマトリクスに組み込まれた、本発明によって製造された稠密なZnO粒子のSEM像である。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12a
図12b
図13