(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】基板生産管理システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20230105BHJP
H05K 13/02 20060101ALI20230105BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20230105BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
H05K13/02 Z
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2020156951
(22)【出願日】2020-09-18
(62)【分割の表示】P 2018556082の分割
【原出願日】2016-12-14
【審査請求日】2020-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 輝之
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-182246(JP,A)
【文献】国際公開第2018/109856(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
H05K 13/02
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板生産ライン
で基板を生産できるように前記基板生産ラインを段取りする段取り作業を開始する段取り開始時期、および、前記基板の生産に必要な部材を部材倉庫から出庫する出庫作業を開始する出庫開始時期を受け取り、
前記出庫作業および前記段取り作業の少なくとも一方の進捗状況を検出し、
前記進捗状況に支障が発生すると判断した場合に、前記段取り開始時期および前記基板の生産を開始する予定時期である生産開始時期を示すスケジュールの修正機能、または前記出庫作業および前記段取り作業の作業実施計画の修正機能を発揮する進捗状況管理部、
を備える基板生産管理システム。
【請求項2】
前記進捗状況管理部は、
前記出庫開始時期から経過した時間と、その時点での前記出庫作業の前記進捗状況とに基づいて、前記進捗状況に支障が発生すると判断する出庫状況判断、および、
前記段取り開始時期から経過した時間と、その時点での前記段取り作業の前記進捗状況とに基づいて、前記進捗状況に支障が発生すると判断する段取り状況判断の少なくとも一方を行う、
請求項1に記載の基板生産管理システム。
【請求項3】
前記スケジュールの前記修正機能は、前記進捗状況に基づいて、前記出庫作業の終了時期および前記段取り作業の終了時期の少なくとも一方を予測し、予測結果に基づいて、前記段取り開始時期および前記生産開始時期の少なくとも一方の開始時期を修正する機能である、請求項1または2に記載の基板生産管理システム。
【請求項4】
前記作業実施計画の前記修正機能は、前記進捗状況に基づいて、前記出庫作業の終了時期および前記段取り作業の終了時期の少なくとも一方を予測し、予測結果に基づいて、前記出庫作業の前記作業実施計画および前記段取り作業の前記作業実施計画の少なくとも一方の計画を修正する機能である、請求項1または2に記載の基板生産管理システム。
【請求項5】
前記進捗状況管理部は、前記出庫作業の前記作業実施計画および前記段取り作業の前記作業実施計画の少なくとも一方の計画を修正する場合に、現在の作業者を作業能力の高い熟練作業者に交代させる、請求項1、2、4のいずれか一項に記載の基板生産管理システム。
【請求項6】
前記進捗状況管理部は、前記出庫作業の前記作業実施計画および前記段取り作業の前記作業実施計画の少なくとも一方の計画を修正する場合に、現在の作業者の人数を増加させる、請求項1、2、4のいずれか一項に記載の基板生産管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、電子部品が実装された基板を生産するスケジュールを管理する基板生産管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の電子部品が実装された基板を生産する基板生産機として、はんだ印刷機、電子部品装着機、リフロー機、基板検査機などがある。通常、これらの基板生産機を連結して基板生産ラインを構成する。一般的に、生産開始に先立ち、基板を生産できるように基板生産ラインを段取りする段取り作業が行われる。そして、多くの場合、段取り作業に先立ち、必要になる部材を部材倉庫から受け出してくる出庫作業が必要となる。また、基板の生産枚数が少ない場合を除き、生産の進捗に伴って消費された部材を補給する補給作業が行われる。基板生産ラインで行われる作業に関する技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の請求項3のリール部品供給方法には、基板生産ラインで部品切れとなる部品の供給情報を、生産管理手段からリール倉庫の部品管理手段に通知する工程が開示されている。これによれば、部品の供給情報に基づいて、リール棚の複数個のリールから該当するリールを使用順に抽出でき、補給作業効率が大幅に向上する、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1は、基板の生産を開始した後の補給作業に関する技術であり、生産開始に先立って行われる出庫作業や段取り作業は関与していない。従来、出庫作業や段取り作業の開始時期は、基板の生産開始時期を定めた生産スケジュールに基づいて決定されていた。しかしながら、基板生産ラインの実際の稼働状況や、出庫作業および段取り作業の実際の進捗状況は、関係する複数の管理装置や複数の生産管理者の間で共有されていない。このため、基板を生産するスケジュールに不整合が生じがちであった。
【0006】
例えば、次に生産する次基板種に関する出庫作業や段取り作業が遅延すると、基板生産ラインは、現在生産中の現基板種の基板の生産を終了してから、長い休止状態となる。換言すると、基板生産ラインの生産性が低下する。逆に、基板生産ラインの現基板種の生産進捗状況が遅延すると、段取り作業の終わった次基板種用の部材が仕掛り在庫として滞留する。
【0007】
それゆえ、本明細書では、出庫作業や段取り作業の進捗状況に支障が発生すると判断した場合に、スケジュールや作業実施計画の修正を自動的に行うことができる基板生産管理システムを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、基板生産ラインで基板を生産できるように前記基板生産ラインを段取りする段取り作業を開始する段取り開始時期、および、前記基板の生産に必要な部材を部材倉庫から出庫する出庫作業を開始する出庫開始時期を受け取り、前記出庫作業および前記段取り作業の少なくとも一方の進捗状況を検出し、前記進捗状況に支障が発生すると判断した場合に、前記段取り開始時期および前記基板の生産を開始する予定時期である生産開始時期を示すスケジュールの修正機能、または前記出庫作業および前記段取り作業の作業実施計画の修正機能を発揮する進捗状況管理部、を備える基板生産管理システムを開示する。
【発明の効果】
【0009】
本明細書で開示する基板生産管理システムにおいて、進捗状況管理部は、出庫作業および段取り作業の少なくとも一方の進捗状況を検出し、進捗状況に支障が発生すると判断した場合に、スケジュールの修正機能、または作業実施計画の修正機能を発揮する。したがって、基板生産管理システムは、作業の進捗状況に支障が発生すると判断した場合に、スケジュールや作業実施計画の修正を自動的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の基板生産管理システムの構成、および関連部分の構成を模式的に示した図である。
【
図2】スケジュール管理部の機能構成を示した機能ブロック図である。
【
図3】基板生産管理システムが段取り開始時期および出庫開始時期を決定する動作を説明する図である。
【
図4】在庫管理部のスケジュールの修正機能を説明する図である。
【
図5】進捗状況管理部のスケジュールの修正機能を説明する図である。
【
図6】進捗状況管理部の作業実施計画の修正機能を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1.実施形態の基板生産管理システム1の構成)
実施形態の基板生産管理システム1について、
図1~
図6を参考にして説明する。
図1は、実施形態の基板生産管理システム1の構成、および関連部分の構成を模式的に示した図である。基板生産管理システム1は、スケジュール管理部2を含んで構成されており、基板生産拠点に設けられる。基板生産拠点は、生産エリア90、外段取りエリア94、部材倉庫95、および通路96を含む。
【0012】
生産エリア90には、第1基板生産ライン91、第2基板生産ライン92、および第3基板生産ライン93が配置されている。第1基板生産ライン91は、複数の基板生産機が列設されて構成される。第1基板生産ライン91は、部材補給棚911および進捗管理部912を備える。部材補給棚911は、基板の生産に使用される部材が一時的に載置される。部材補給棚911は、基板生産機で交換して使用される器具、例えば、半田印刷機の印刷スクリーンや電子部品装着機の吸着ノズルが一時的に載置されてもよい。進捗管理部912は、基板生産の進捗状況を検出して、進捗状況の情報をスケジュール管理部2に送信する。
【0013】
同様に、第2基板生産ライン92は、複数の基板生産機が列設されて構成される。第2基板生産ライン92は、部材が一時的に載置される部材補給棚921、および基板生産の進捗状況を検出してスケジュール管理部2に送信する進捗管理部922を備える。第3基板生産ライン93は、複数の基板生産機が列設されて構成される。第3基板生産ライン93は、部材が一時的に載置される部材補給棚931、および基板生産の進捗状況を検出してスケジュール管理部2に送信する進捗管理部932を備える。
【0014】
ここで、基板の生産開始に先立つ段取り作業について説明する。段取り作業は、基板生産ライン(91、92、93)で生産する基板の種類を切り替えるとき、換言すると現基板種から次基板種に切り替えるときに行われる。段取り作業では、次基板種を生産できるように基板生産ライン(91、92、93)を段取りする。段取り作業には、内段取り作業と外段取り作業がある。内段取り作業は、基板生産ライン(91、92、93)で行われる。外段取り作業は、基板生産ライン(91、92、93)とは異なる実施場所で行われる。
【0015】
段取り作業の進め方には、大きく分けて2通りの方法がある。第1の段取り方法では、内段取り作業のみを実施する。すなわち、基板生産ライン(91、92、93)で現基板種の生産が終了した後に、生産動作を停止して次基板種の内段取り作業を実施する。第2の段取り方法では、外段取り作業および内段取り作業を併用する。すなわち、基板生産ライン(91、92、93)で現基板種を生産しているときに、並行して次基板種の外段取り作業を実施する。そして、現基板種の生産が終了した時点で、外段取り作業から内段取り作業に移行する。第2の段取り方法で実施する外段取り作業として、電子部品装着機の部品供給装置の外段取り作業を例示でき、これに限定されない。
【0016】
詳述すると、部品供給装置には、フィーダ式部品供給装置やトレイ式部品供給装置がある。フィーダ式部品供給装置は、パレット台に複数のフィーダが列設されて構成される。各フィーダは、それぞれ部品リールを交換可能に保持する。部品リールには、複数の電子部品を保持したキャリアテープが巻回されている。部品リールをフィーダに装填する作業、および、フィーダをパレット台に装着する作業は、外段取り作業で実施することができる。また、トレイ式部品供給装置は、パレット台にトレイが載置されて構成される。トレイの上面内側には、複数の電子部品が格子状に配置されている。トレイをパレット台に載置する作業は、外段取り作業で実施することができる。
【0017】
一方、部品供給装置を電子部品装着機の本体に搭載する作業は、内段取り作業となる。第2の段取り方法によれば、段取り作業の多くを外段取り作業によって予め実施できる。したがって、第2の段取り方法の内段取り作業の所要時間は、第1の段取り方法の内段取り作業の所要時間よりも短縮される。つまり、第2の段取り方法は、第1の段取り方法と比較して、基板生産ライン(91、92、93)の生産停止時間が短くなり、生産性が高い。
【0018】
また、電子部品装着機の本体から部品供給装置を取り外さない段取り作業の方法もある。例えば、外段取り作業で、部品リールを交換したフィーダを予め準備しておき、内段取り作業で、準備されたフィーダを部品供給装置のパレット台に装着できる。この方法は、新たに使用する電子部品の種類が少ない場合に効果的である。段取り作業の進め方には、上述した以外にもバリエーションがある。段取り作業を開始する時期を、段取り開始時期と呼ぶ。
【0019】
外段取りエリア94は、上述した外段取り作業の実施場所である。外段取りエリア94は、生産エリア90に隣接しており、3つの基板生産ライン(91、92、93)に共通とされている。外段取りエリア94には、外段取り作業の進捗状況を検出する進捗検出部31が設けられる。前述した部品供給装置のパレット台は、通信機能を有して、進捗検出部31に通信接続される。パレット台は、作業者によって装着されたフィーダや、作業者によって載置されたトレイを認識する。パレット台は、さらに、装着されたフィーダおよび載置されたトレイの情報を進捗検出部31に送信する。
【0020】
また、フィーダ、部品リール、およびトレイに付設された識別コードを認識するコード認識部も、進捗検出部31に通信接続される。識別コードは、フィーダ、部品リール、およびトレイの個体を識別するものである。識別コードには、例えばバーコードが用いられ、コード認識部には、例えばバーコードリーダが用いられる。コード認識部は、認識した識別コードの情報を進捗検出部31に送信する。
【0021】
進捗検出部31は、パレット台およびコード認識部から受け取った情報に基づいて、外段取り作業の進捗状況を検出する。例えば、外段取り作業でパレット台に40台のフィーダを装着する場合に、10台のフィーダが装着済みであれば、進捗検出部31は、外段取り作業の25%が進捗したと検出できる。進捗検出部31は、外段取り作業の進捗状況の情報をスケジュール管理部2に送信する。
【0022】
また、基板生産ライン(91、92、93)の進捗管理部(912、922、932)は、進捗検出部31と同等の機能を有して、内段取り作業の進捗状況を検出する。進捗管理部(912、922、932)は、内段取り作業の進捗状況の情報をスケジュール管理部2に送信する。
【0023】
部材倉庫95は、外段取りエリア94から少し離れて設けられている。部材倉庫95、外段取りエリア94、および生産エリア90は、通路96を通って行き来できるように結ばれている。部材倉庫95は、基板生産ライン(91、92、93)で生産する基板に必要な部材を保管する。必要な部材として、基板原材や電子部品の他に、半田、ボンディングワイヤ、接着材などがある。
【0024】
部材倉庫95には、保管された部材の在庫量を検出する在庫検出部32が設けられる。在庫検出部32は、スケジュール管理部2からの部材を指定した照会に応じて、指定された部材の在庫量を応答する。また、在庫検出部32は、部材調達システム33と連係されている。部材調達システム33は、在庫検出部32が検出した在庫量の減少を補償するための自動調達機能、および、オペレータの指令操作にしたがうマニュアル調達機能を備える。
【0025】
ここで、段取り作業に先立つ出庫作業について説明する。出庫作業は、基板の生産に必要な部材を部材倉庫95から受け出して、外段取りエリア94および基板生産ライン(91、92、93)の少なくとも一方まで搬送する作業である。
図1の矢印Aに示されるように、作業者は、内段取り作業に必要な部材を部材倉庫95から基板生産ライン(91、92、93)の部材補給棚(911、921、931)または基板生産機の近くまで搬送する。また、矢印Bに示されるように、作業者は、外段取り作業に必要な部材を部材倉庫95から外段取りエリア94まで搬送する。
【0026】
基板の生産枚数が少ない場合を除き、当面の段取り作業に必要でなくとも基板の生産の進捗に伴って必要となる補給用の部材が発生する。補給用の部材の出庫時期により、出庫作業は2通りに分けられる。第1は一括出庫作業であり、作業者は、定められた生産枚数の基板に必要な部材を一括して部材倉庫95から受け出す。第2は分割出庫作業であり、作業者は、段取り作業に必要な部材と、基板の生産の進捗に伴って必要になる部材と、を分割して部材倉庫95から受け出す。出庫作業を開始する時期を、出庫開始時期と呼ぶ。
【0027】
(2.スケジュール管理部2の機能構成)
スケジュール管理部2の機能構成の説明に移る。スケジュール管理部2は、基板生産管理システム1の主要な役割を果たす。スケジュール管理部2は、CPUを有してソフトウェアで動作するコンピュータ装置を用いて構成される。スケジュール管理部2は、表示部21および入力部22を備える。スケジュール管理部2は、生産データベース23にアクセス可能となっている。生産管理者は、基板生産ライン(91、92、93)で生産する複数の基板種の生産順序、および、各基板種の生産開始時期の予定を生産データベース23に設定する。生産データベース23には、基板生産ライン(91、92、93)で様々な基板種の基板を生産するときの生産動作等を詳細に記述した複数のレシピデータも記憶されている。
【0028】
スケジュール管理部2は、基板種ごとに作成されたレシピデータを参照することにより、当該の基板種に必要な部材を把握できる。スケジュール管理部2は、生産を予定する次基板種、および、その前に生産される前基板種に対応するレシピデータを参照して比較することにより、出庫作業の必要な部材を把握でき、さらには、段取り作業の作業内容を把握できる。つまり、前基板種で使用されずかつ次基板種で使用される部材は、出庫作業が必要となる。また、出庫した部材については、段取り作業が必要となる。
【0029】
また、スケジュール管理部2は、必要に応じて、部材調達システム33に部材の調達を指令できる。部材調達システム33は、スケジュール管理部2からの指令に応じて部材を調達する自動調達機能を備える。
【0030】
図2は、スケジュール管理部2の機能構成を示した機能ブロック図である。スケジュール管理部2は、管理機能部として、生産開始時期把握部41、段取り時間推定部42、段取り開始時期決定部43、出庫時間推定部44、出庫開始時期決定部45、在庫管理部46、進捗状況管理部47、および開始時期案内部48を有する。
【0031】
或る基板生産ライン(91、92、93)で或る基板種の生産を開始する予定時期、すなわち生産開始時期が生産データベース23に設定されたときに、生産開始時期把握部41は動作する。また、設定済みの生産開始時期が修正されたときにも、生産開始時期把握部41は動作する。生産開始時期把握部41の動作後に、段取り時間推定部42、段取り開始時期決定部43、出庫時間推定部44、および出庫開始時期決定部45は、順番に動作する。生産開始時期把握部41、段取り時間推定部42、段取り開始時期決定部43、出庫時間推定部44、および出庫開始時期決定部45は、実施形態の基板生産管理方法を行う。
【0032】
在庫管理部46は、自ら設定した在庫確認時期に、部材倉庫の在庫量を調査する。進捗状況管理部47は、出庫作業および段取り作業の少なくとも一方の進捗状況を検出し、進捗状況に基づいて所定の管理を行う。また、開始時期案内部48は、出庫開始時期および段取り開始時期の少なくとも一方が到来したことを案内する。スケジュール管理部2の各管理機能部の詳細な機能については、基板生産管理システム1の動作の説明の中で詳述する。
【0033】
(3.実施形態の基板生産管理システム1の動作)
次に、実施形態の基板生産管理システム1の動作について説明する。
図3は、基板生産管理システム1が段取り開始時期Sdおよび出庫開始時期Ssを決定する動作を説明する図である。
図3において、現在時期Snであり、右方に向かって時間tが経過する。生産開始時期把握部41は、基板生産ライン(91、92、93)で或る基板種の生産を開始する予定時期である生産開始時期Spを生産データベース23から把握する。
【0034】
生産開始時期把握部41に続いて、段取り時間推定部42が動作する。段取り時間推定部42は、或る基板種に対応する段取り作業に要する段取り時間を推定する。本実施形態では、第2の段取り方法および分割出庫作業を採用する。したがって、段取り時間は、外段取り作業に要する外段取り時間Td1と、内段取り作業に要する内段取り時間Td2の合計となる。また、出庫作業では、基板の生産に必要な部材のうち外段取り作業に必要な部材だけを出庫する。段取り時間推定部42は、外段取り作業に必要な部材の種類および数量に基づいて、外段取り時間Td1を推定できる。
【0035】
推定方法の一例について詳述すると、部品リールをフィーダに装填する作業に標準装填時間が設定される。また、不要になったフィーダをパレット台から取り外す作業に標準取り外し時間が設定され、新たに使用するフィーダをパレット台に装着する作業に標準装着時間が設定される。標準装填時間、標準取り外し時間、および標準装着時間は、過去の作業実績に基づいて、高い精度で設定される。
【0036】
段取り時間推定部42は、装填する部品リールのリール数に標準装填時間を乗算して、総装填時間を推定できる。また、段取り時間推定部42は、取り外すフィーダの台数に標準取り外し時間を乗算して総取り外し時間を推定でき、装着するフィーダの台数に標準装着時間を乗算して総装着時間を推定できる。段取り時間推定部42は、総装填時間、総取り外し時間、および総装着時間を加算して、外段取り時間Td1を求める。
【0037】
また、段取り時間推定部42は、内段取り作業の作業内容に基づいて、内段取り時間Td2を推定できる。例えば、不要になった部品供給装置を取り外して新たに使用する部品供給装置を搭載する作業に、標準着脱時間が設定される。段取り時間推定部42は、内段取り作業で着脱する部品供給装置の台数に標準着脱時間を乗算して総着脱時間を推定できる。部品供給装置の着脱でなく、フィーダの着脱を行うケースでも、段取り時間推定部42は、同様の方法で総着脱時間を推定できる。
【0038】
内段取り時間Td2は、外段取りエリア94で段取りした部品供給装置やフィーダを基板生産ライン(91、92、93)まで搬送する搬送時間を含むものとする。さらに、内段取り時間Td2は、段取り作業が良好に終了したことを確認する確認時間を含むものとする。標準着脱時間、搬送時間、および確認時間も過去の作業実績に基づいて、高い精度で設定される。段取り時間推定部42は、搬送時間、総着脱時間、および確認時間を加算して内段取り時間Td2を求める。なお、段取り作業が複数の作業者で実施される場合、段取り時間推定部42は、作業者数を考慮して外段取り時間Td1および内段取り時間Td2を推定する。
【0039】
段取り時間推定部42に続いて、段取り開始時期決定部43が動作する。段取り開始時期決定部43は、生産開始時期Sp、外段取り時間Td1、および内段取り時間Td2に基づいて、段取り開始時期Sdを決定する。また、段取り開始時期決定部43は、段取り開始時期Sdの情報を進捗状況管理部47に受け渡す。
【0040】
段取り開始時期Sdの決定に際して、段取り開始時期決定部43は、段取り作業が長引くリスクに対応した段取りリスクマージン時間TRdを考慮する。段取りリスクマージン時間TRdは、作業者の作業能力のばらつきや、突発的に発生し得る阻害事情などを考慮して設定される。段取り開始時期決定部43は、外段取り時間Td1と内段取り時間Td2と段取りリスクマージン時間TRdとを加算して段取り見込み時間とする。さらに、段取り開始時期決定部43は、生産開始時期Spよりも段取り見込み時間だけ早い時期を段取り開始時期Sdとする。また、段取り開始時期決定部43は、作業者が段取り作業を行える稼働時間を考慮する。
【0041】
例えば、作業者の稼働時間が平日の8時から12時および13時から17時までと定められ、生産開始時期Spが12月7日の水曜日の13時、段取り見込み時間が6時間である場合を想定する。この場合、段取り開始時期決定部43は、作業者の稼働時間内に段取り見込み時間を割り当てて、段取り開始時期Sdを12月6日の15時と決定する。また例えば、複数の作業者が交代制で24時間を通して稼働できる場合、段取り開始時期決定部43は、作業者の稼働時間を考慮する必要がない。
【0042】
段取り開始時期決定部43に続いて、出庫時間推定部44が動作する。出庫時間推定部44は、外段取り作業に必要な部材を部材倉庫95から受け出して、外段取りエリア94まで搬送する出庫作業に要する出庫時間Tsを推定する。出庫時間推定部44は、部材の種類および数量に基づいて、部材倉庫95から部材が出てくるのを待つ所要時間や、部材を搬送用の運搬具に積み降ろしする回数および所要時間や、運搬具を部材倉庫95と外段取りエリア94との間で往復させる回数および所要時間などを推定できる。出庫時間推定部44は、これらの所要時間を加算して出庫時間Tsを求める。なお、出庫作業が複数の作業者で実施される場合、出庫時間推定部44は、作業者数を考慮して出庫時間Tsを推定する。
【0043】
出庫時間推定部44に続いて、出庫開始時期決定部45が動作する。出庫開始時期決定部45は、段取り開始時期Sdおよび出庫時間Tsに基づいて、出庫開始時期Ssを決定する。また、出庫開始時期決定部45は、出庫開始時期Ssの情報を進捗状況管理部47に受け渡す。
【0044】
出庫開始時期Ssの決定に際し、出庫開始時期決定部45は、出庫作業が長引くリスクに対応した出庫リスクマージン時間TRsを考慮する。出庫リスクマージン時間TRsは、作業者の作業能力のばらつきや、突発的に発生し得る阻害事情などを考慮して設定される。出庫開始時期決定部45は、出庫時間Tsと出庫リスクマージン時間TRsとを加算して出庫見込み時間とする。さらに、出庫開始時期決定部45は、段取り開始時期Sdよりも出庫見込み時間だけ早い時期を出庫開始時期Ssとする。また、出庫開始時期決定部45は、段取り開始時期決定部43と同様に、作業者が出庫作業を行える稼働時間を考慮する。
【0045】
出庫開始時期決定部45に続いて、在庫管理部46が動作する。在庫管理部46は、出庫開始時期Ssよりも早い在庫確認時期Stを設定する。また、在庫管理部46は、在庫確認時期Stの情報を進捗状況管理部47に受け渡す。在庫確認時期Stの設定に際して、在庫管理部46は、部材の標準的な調達時間Tt、および調達時間Ttが長引くリスクに対応した調達リスクマージン時間TRtを考慮する。調達リスクマージン時間TRtは、調達時間Ttのばらつきや、突発的に発生し得る阻害事情などを考慮して設定される。在庫管理部46は、調達時間Ttと調達リスクマージン時間TRtとを加算して調達見込み時間を求める。さらに、在庫管理部46は、出庫開始時期Ssよりも調達見込み時間だけ早い時期を在庫確認時期Stとする。この後、在庫管理部46は、在庫確認時期Stが到来するまで休止する。
【0046】
在庫確認時期Stが到来したとき、換言すると、現在時期Snが在庫確認時期Stに一致したとき、在庫管理部46は、部材倉庫95の在庫量を調査する。詳述すると、在庫管理部46は、外段取り作業に必要な部材を指定して、その在庫量を部材倉庫95の在庫検出部32に照会する。在庫管理部46は、部材の在庫量が充足されている場合には、何もしない。しかしながら、いずれかの部材の在庫量が不足している場合に、在庫管理部46は、当該の部材の調達を部材調達システム33に指示する。
【0047】
調達の指示により、通常であれば、不足している部材は、出庫開始時期Ssまでに調達されて部材倉庫95に入庫される。しかしながら、調達時間Ttが予想以上に長引くおそれが皆無でない。この場合、在庫管理部46は、スケジュールの修正機能を発揮する。
図4は、在庫管理部46のスケジュールの修正機能を説明する図である。
図4において、現在時期Snが在庫確認時期Stに一致しており、在庫管理部46は、不足している部材の調達を指示した。その結果、部材調達システム33で、調達時間Ttが調達リスクマージン時間TRtを越えて長引くことが判明した。つまり、調達する部材の部材倉庫95への入庫時期が出庫開始時期Ssに間に合わないことが判明した。
【0048】
このとき、在庫管理部46は、出庫開始時期Ss、段取り開始時期Sd、および生産開始時期Spの少なくともひとつの開始時期を遅らせる修正をする。
図4の例で、在庫管理部46は、出庫開始時期Ssを遅らせている。これにより、出庫時間Tsの発生時間帯が遅れる。この結果、出庫リスクマージン時間TRsは、減少するがゼロにはならない。したがって、在庫管理部46は、段取り開始時期Sdおよび生産開始時期Spを修正しなくてよい。仮に、調達時間Ttがさらに大幅に長引く場合、在庫管理部46は、必要に応じて段取り開始時期Sdおよび生産開始時期Spを修正する。
【0049】
進捗状況管理部47は、段取り開始時期Sd、出庫開始時期Ss、および在庫確認時期Stの情報を受け取って動作を開始し、以降は継続して動作する。進捗状況管理部47は、段取り開始時期Sd、出庫開始時期Ss、および在庫確認時期Stを表示部21に表示して、生産管理者や作業者に通知する。また、進捗状況管理部47は、段取り開始時期Sdおよび出庫開始時期Ssの情報を開始時期案内部48に受け渡す。さらに、進捗状況管理部47は、後述するように段取り開始時期Sdや生産開始時期Spを修正したときに、修正した情報を逐次開始時期案内部48に受け渡す。
【0050】
進捗状況管理部47は、出庫作業および段取り作業の少なくとも一方の進捗状況を検出する。具体的に、進捗状況管理部47は、外段取り作業に必要な部材を指定して、その出庫量を部材倉庫95の在庫検出部32に照会する。これにより、進捗状況管理部47は、部材の出庫状況を把握して、出庫作業の進捗状況を検出できる。例えば、外段取り作業に必要な部材の半数が既に出庫されていれば、進捗状況管理部47は、出庫作業の進捗状況を50%と検出できる。
【0051】
また、進捗状況管理部47は、外段取りエリア94の進捗検出部31から、外段取り作業の進捗状況の情報を受け取ることができる。さらに、進捗状況管理部47は、基板生産ライン(91、92、93)の進捗管理部(912、922、932)から内段取り作業の進捗状況の情報を受け取ることができる。したがって、進捗状況管理部47は、外段取り作業および内段取り作業の進捗状況を検出できる。
【0052】
さらに、進捗状況管理部47は、進捗状況に基づいて、出庫作業の終了時期および段取り作業の終了時期の少なくとも一方を予測し、予測結果を生産管理者および作業者に通知する。通知方法としては、予測結果を表示部21に表示する方法が用いられる。これに限定されず、進捗状況管理部47は、生産管理者および作業者が所持する携帯端末に予測結果を通知してもよい。
【0053】
進捗状況管理部47は、進捗状況に支障が発生すると、スケジュールの修正機能または、作業実施計画の修正機能を発揮する。
図5は、進捗状況管理部47のスケジュールの修正機能を説明する図である。
図5において、現在時期Snは、出庫開始時期Ssから出庫時間Tsの75%が経過した時期となっている。この時点で、進捗状況管理部47は、出庫作業の進捗状況50%を検出し、進捗状況の支障を把握した。進捗状況管理部47は、予測結果に基づいて、段取り開始時期Sdおよび生産開始時期Spの少なくとも一方の開始時期を修正する。
【0054】
図5の例で、進捗状況管理部47は、出庫時間Tsが当初の推定より大幅に長引いて、出庫作業の終了時期が当初の段取り開始時期Sdよりも遅くなると予測した。このため、進捗状況管理部47は、段取り開始時期Sdを遅らせる修正を行う。これにより、外段取り時間Td1および内段取り時間Td2の発生時間帯が遅れる。この結果、段取りリスクマージン時間TRdは、減少するがゼロにはならない。したがって、進捗状況管理部47は、生産開始時期Spを修正しなくてよい。仮に、出庫時間Tsがさらに大幅に長引く場合、在庫管理部46は、必要に応じて生産開始時期Spを修正する。
【0055】
図6は、進捗状況管理部47の作業実施計画の修正機能を説明する図である。
図5において、現在時期Snは、出庫開始時期Ssから出庫時間Tsの75%が経過した時期となっている。この時点で、進捗状況管理部47は、出庫作業の進捗状況50%を検出し、進捗状況の支障を把握した。進捗状況管理部47は、予測結果に基づいて、出庫作業の作業実施計画および段取り作業の作業実施計画の少なくとも一方の計画を修正する。
【0056】
図6の例で、進捗状況管理部47は、出庫時間Tsが当初の推定より大幅に長引いて、出庫作業の終了時期が当初の段取り開始時期Sdよりも遅くなると予測した。このため、進捗状況管理部47は、出庫作業の作業実施計画を修正する。例えば、進捗状況管理部47は、出庫作業が段取り開始時期Sdにちょうど終了するように、現在時期Snから段取り開始時期Sdまでの作業実施計画(
図5にハッチングで示された時間帯)を修正する。
【0057】
具体的には、現在の作業者を作業能力の高い熟練作業者に交代させたり、作業者の人数を増加したり、稼働時間を延長したり(いわゆる残業)する。これにより、進捗状況管理部47は、段取り開始時期Sd以降のスケジュールを修正しなくてよくなる。仮に、出庫作業の作業実施計画を修正しても段取り開始時期Sdが遅延する場合、進捗状況管理部47は、段取り作業の作業実施計画を修正して、生産開始時期Spの維持を図ることができる。
【0058】
開始時期案内部48は、進捗状況管理部47から受け取っている最新の情報に基づいて、出庫開始時期Ssおよび段取り開始時期Sdの少なくとも一方が到来したことを生産管理者および作業者に案内する。案内方法としては、出庫開始時期Ssおよび段取り開始時期Sdを表示部21に表示する方法が用いられる。これに限定されず、開始時期案内部48は、生産管理者および作業者が所持する携帯端末に案内をしてもよい。これによれば、作業者は、案内に基づいてタイムリーに出庫作業および段取り作業を開始できる。したがって、作業への着手遅れが抑制される。
【0059】
以上の説明で分かるように、出庫開始時期Ssおよび段取り開始時期Sdは、生産開始時期Sp、外段取り時間Td1、内段取り時間Td2、および出庫時間Tsに基づいて、適正に決定される。また、基板生産ライン(91、92、93)の稼働状況の変化に応じて生産開始時期Spが変更されたとき、基板生産管理システム1が再度動作して、出庫開始時期Ssおよび段取り開始時期Sdが自動的に再度決定される。一方、調達時間Tt、出庫時間Ts、外段取り時間Td1、および内段取り時間Td2のいずれかが長引いた場合には、必要に応じて、出庫開始時期Ss、段取り開始時期Sd、および生産開始時期Spが修正される。
【0060】
したがって、基板生産ライン(91、92、93)の実際の稼働状況と、出庫作業および段取り作業の実際の進捗状況とが、関連付けられて管理される。さらに、この管理状況が、生産管理者および作業者に共有される。この結果、基板を生産するスケジュールに不整合が生じない。
【0061】
なお、基板の生産の進捗に伴って必要になる補給用の部材については、生産開始時期Sp以降に、部材補給時期が設定される。基板生産管理システム1は、補給用の部材について、部材補給時期を生産開始時期Spと読み替え、外段取り作業に必要な部材の場合と同様の方法で、出庫開始時期および段取り開始時期を決定できる。ただし、補給用の部材は、部材倉庫95から基板生産ライン(91、92、93)に搬送されるので、外段取り時間Td1は不要となる。
【0062】
また、第1の段取り方法を採用して内段取り作業のみを実施する場合でも、基板生産管理システム1は、同様の方法で出庫開始時期および段取り開始時期を決定できる。この場合も、外段取り時間Td1は不要となる。
【0063】
また、在庫管理部46のスケジュールの修正機能、進捗状況管理部47のスケジュールの修正機能および作業実施計画の修正機能は、修正提案機能に置き換えることができる。つまり、在庫管理部46および進捗状況管理部47は、自動では修正を実行できず、例えば修正事項を表示部21に表示して、生産管理者に修正を促すことができる。生産管理者が入力部22を操作して修正事項を承認することにより、在庫管理部46および進捗状況管理部47は、修正を実行できるようになる。
【0064】
(4.実施形態の基板生産管理システム1の態様および効果)
実施形態の基板生産管理システム1は、基板生産ライン(91、92、93)で基板の生産を開始する予定時期である生産開始時期Spを把握する生産開始時期把握部41と、基板を生産できるように基板生産ライン(91、92、93)を段取りする段取り作業に要する段取り時間(外段取り時間Td1、内段取り時間Td2)を推定する段取り時間推定部42と、生産開始時期Spおよび段取り時間に基づいて、段取り作業を開始する段取り開始時期Sdを決定する段取り開始時期決定部43と、基板の生産に必要な部材を部材倉庫95から受け出して、段取り作業の実施場所(外段取りエリア94)および基板生産ライン(91、92、93)の少なくとも一方まで搬送する出庫作業に要する出庫時間Tsを推定する出庫時間推定部44と、段取り開始時期Sdおよび出庫時間Tsに基づいて、出庫作業を開始する出庫開始時期Ssを決定する出庫開始時期決定部45と、を備える。
【0065】
これによれば、基板の生産開始時期Spを把握して、段取り作業に要する段取り時間(外段取り時間Td1、内段取り時間Td2)を推定することにより、適正な段取り開始時期Sdを決定できる。さらに、出庫作業に要する出庫時間Tsを推定することにより、適正な出庫開始時期Ssを決定できる。したがって、基板の生産開始に先立つ段取り作業および出庫作業の開始時期を適正化できる。この結果、スケジュールの不整合に起因する基板生産ラインの生産性の低下が抑制され、また、段取り作業の終わった仕掛り在庫の増加が抑制される。
【0066】
また、段取り作業は、実施場所が外段取りエリア94である外段取り作業と、実施場所が基板生産ライン(91、92、93)であって、外段取り作業の後に実施する内段取り作業と、を含む。これによれば、外段取り作業および内段取り作業を併用する生産性の高い第2の段取り方法で、段取り作業および出庫作業の開始時期を適正化できる。
【0067】
また、出庫作業は、定められた生産枚数の基板に必要な部材を一括して部材倉庫95から受け出す一括出庫作業、または、段取り作業に必要な部材と、基板の生産の進捗に伴って必要になる部材と、を分割して部材倉庫95から受け出す分割出庫作業である。これによれば、一括出庫作業および分割出庫作業のどちらでも、段取り作業および出庫作業の開始時期を適正化できる。
【0068】
さらに、出庫開始時期決定部45および段取り開始時期決定部43の少なくとも一方は、作業が長引くリスクに対応したリスクマージン時間(出庫リスクマージン時間TRs、段取りリスクマージン時間TRd)を考慮する。これによれば、作業者の作業能力のばらつきや、突発的に発生し得る阻害事情などに対応したマージンが確保される。
【0069】
さらに、実施形態の基板生産管理システム1は、出庫開始時期Ssよりも早い在庫確認時期Stに部材倉庫95の在庫量を調査して、部材が不足している場合に、部材の調達を指示する在庫管理部46をさらに備える。これによれば、不足している部材が出庫開始時期Ssまでに調達されて部材倉庫95に入庫される。したがって、出庫開始時期Ssに部材が不足する、という支障が生じない。
【0070】
また、在庫管理部46は、調達する部材の部材倉庫95への入庫時期が出庫開始時期Ssに間に合わない場合に、出庫開始時期Ss、段取り開始時期Sd、および生産開始時期Spの少なくともひとつの開始時期を修正し、または、少なくともひとつの開始時期の修正を生産管理者に促す。これによれば、スケジュールの修正機能が働いて、以降のスケジュールが適正化される。
【0071】
さらに、実施形態の基板生産管理システム1は、出庫作業および段取り作業の少なくとも一方の進捗状況を検出し、進捗状況に基づいて、出庫作業の終了時期および段取り作業の終了時期の少なくとも一方を予測し、予測結果を生産管理者に通知する進捗状況管理部47をさらに備える。これによれば、生産管理者は、最新のスケジュールを正確に、かつ遅滞なく把握できる。
【0072】
また、進捗状況管理部47は、予測結果に基づいて、段取り開始時期Sdおよび生産開始時期Spの少なくとも一方の開始時期を修正し、または、少なくとも一方の開始時期の修正を生産管理者に促す。これによれば、スケジュールの修正機能が働いて、以降のスケジュールが適正化される。
【0073】
また、進捗状況管理部47は、予測結果に基づいて、出庫作業の作業実施計画および段取り作業の作業実施計画の少なくとも一方の計画を修正し、または、少なくとも一方の計画の修正を生産管理者に促す。これによれば、作業実施計画の修正機能が働いて、以降のスケジュールが適正化される。
【0074】
さらに、実施形態の基板生産管理システム1は、出庫開始時期および段取り開始時期の少なくとも一方が到来したことを案内する開始時期案内部48をさらに備える。これによれば、作業者は、案内に基づいてタイムリーに作業を開始できるので、作業への着手遅れが抑制される。
【0075】
また、実施形態の基板生産管理方法は、基板生産ライン(91、92、93)で基板の生産を開始する予定時期である生産開始時期Spを把握し、基板を生産できるように基板生産ライン(91、92、93)を段取りする段取り作業に要する段取り時間(外段取り時間Td1、内段取り時間Td2)を推定し、生産開始時期Spおよび段取り時間に基づいて、段取り作業を開始する段取り開始時期Sdを決定し、基板の生産に必要な部材を部材倉庫95から受け出して、段取り作業の実施場所(外段取りエリア94)および基板生産ライン(91、92、93)の少なくとも一方まで搬送する出庫作業に要する出庫時間Tsを推定し、段取り開始時期Sdおよび出庫時間Tsに基づいて、出庫作業を開始する出庫開始時期Ssを決定する。
【0076】
これによれば、実施形態の基板生産管理システム1と同様、基板の生産開始に先立つ段取り作業および出庫作業の開始時期を適正化できる。
【0077】
(5.実施形態の応用および変形)
なお、基板生産管理システム1のハードウェア構成は様々に変形できる。例えば、第1基板生産ライン91の1ラインだけからなる基板生産拠点では、進捗管理部912がスケジュール管理部2の各管理機能部を兼ねることができる。また、段取りリスクマージン時間TRdおよび出庫リスクマージン時間TRsを区別せずに、1つのリスクマージン時間として運用することもできる。さらに、実施形態で説明した外段取り時間Td1、内段取り時間Td2、および出庫時間Tsの推定方法は一例であって、他の様々な推定方法を利用できる。本実施形態は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0078】
1:基板生産管理システム 2:スケジュール管理部 23:生産データベース 31:進捗検出部 32:在庫検出部 33:部材調達システム 41:生産開始時期把握部 42:段取り時間推定部 43:段取り開始時期決定部 44:出庫時間推定部 45:出庫開始時期決定部 46:在庫管理部 47:進捗状況管理部 48:開始時期案内部 91:第1基板生産ライン 92:第2基板生産ライン 93:第3基板生産ライン 94:外段取りエリア 95:部材倉庫 Sp:生産開始時期 Sd:段取り開始時期 Ss:出庫開始時期 St:在庫確認時期 Td1:外段取り時間 Td2:内段取り時間 TRd:段取りリスクマージン時間 Ts:出庫時間 TRs:出庫リスクマージン時間