IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフトの特許一覧

<>
  • 特許-糸群を引き出しかつ巻き取る装置 図1
  • 特許-糸群を引き出しかつ巻き取る装置 図2
  • 特許-糸群を引き出しかつ巻き取る装置 図3
  • 特許-糸群を引き出しかつ巻き取る装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】糸群を引き出しかつ巻き取る装置
(51)【国際特許分類】
   D02J 1/22 20060101AFI20230105BHJP
   D01D 5/16 20060101ALI20230105BHJP
   D01D 7/00 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
D02J1/22 302Z
D01D5/16
D01D7/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020506146
(86)(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 EP2018071102
(87)【国際公開番号】W WO2019030134
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】102017007432.1
(32)【優先日】2017-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】デニス バウアー
(72)【発明者】
【氏名】イェン ズプラ
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ シュルツ
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-524991(JP,A)
【文献】特表2014-524994(JP,A)
【文献】特表2017-531747(JP,A)
【文献】特表平06-503611(JP,A)
【文献】特開昭62-170512(JP,A)
【文献】特開2001-200421(JP,A)
【文献】特開平10-183424(JP,A)
【文献】特開2015-124454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D1/00-13/02
D02G1/00-3/48
D02J1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動可能な複数のゴデット(7.1,8.1)を備えたゴデットユニット(1)と、該ゴデットユニット(1)から走出した糸群(17)を分離するための複数の変向ローラ(11)のうちのそれぞれ1つを有する複数の巻取り箇所(12)を備えた巻取りユニット(2)とを備えた、糸群(17)を引き出しかつ巻き取ってパッケージ(18)を形成するための装置であって、前記変向ローラ(11)に、前記ゴデットユニット(1)の、前記糸群(17)により1回だけ巻き掛けられるショートゴデット(8.1)が前置されていて、前記ゴデットユニット(1)が、前記糸群(17)により複数回巻き掛けられる少なくとも1つのロングゴデット(7.1)を有している、糸群(17)を引き出しかつ巻き取ってパッケージを形成するための装置において、
前記ロングゴデット(7.1)と前記ショートゴデット(8.1)とは、前記ロングゴデット(7.1)の軸線と、前記ショートゴデット(8.1)の軸線との間に30°~60°の範囲の角度が形成されるように互いに対して斜めに、前記巻取りユニット(2)の上側に配置されていることを特徴とする、糸群を引き出しかつ巻き取ってパッケージを形成するための装置。
【請求項2】
前記ゴデットユニット(1)が、複数のショートゴデット(6.1,8.1)を有していて、前記ショートゴデットのうちの少なくとも1つのショートゴデット(6.1)が、糸走路において前記ロングゴデット(7.1)に前置されていて、前置された前記ショートゴデット(6.1)が、前記ロングゴデット(7.1)に対して軸平行に配向されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記ゴデットユニット(1)が、コーム状の糸ガイド器(4.1)を備えた糸集合ユニット(4)を有していて、該糸ガイド器(4.1)が、前記ロングゴデット(7.1)に対してほぼ平行に配置されている、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記ロングゴデット(7.1)に後置された前記ショートゴデット(8.1)が、前記巻取りユニット(2)の巻取りスピンドル(15.1,15.2)を横切る方向に延びるように配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記ゴデットユニット(1)が、前記巻取りユニット(2)をU字形にその下側で取り囲む機械フレーム(3)によって支持されており、前記ゴデットユニット(1)が操作通路(21)から操作可能である、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記ゴデットユニット(1)が、前記ロングゴデット(7.1)を受容するために、前記操作通路(21)に対して斜めに配向されたキャリア壁(5)を有していて、該キャリア壁(5)が、隣接する巻取りユニット(2)の隣接する機械フレーム(3)において部分的に支持されている、請求項記載の装置。
【請求項7】
前記ロングゴデット(7.1)のゴデット周壁(7.4)が、少なくとも、前記ショートゴデット(6.1)のゴデット周壁(6.2)の周壁長さよりも2~5倍長く構成されている周壁長さを有している、請求項2を引用する請求項から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記ロングゴデット(7.1)が、前記ゴデット周壁(7.4)を温度調節するための周壁加熱装置(7.3)を有している、請求項記載の装置。
【請求項9】
前記ロングゴデット(7.1)の前記ゴデット周壁(7.4)が熱絶縁されたゴデットボックス(19)内に配置されていて、該ゴデットボックス(19)が、前置された前記ショートゴデット(6.1)と、後置された前記ショートゴデット(8.1)とに対して、複数の糸開口(22)のうちのそれぞれ1つを有している、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記巻取りユニット(2)が、互いに対して鏡像対称的に配置された2つの巻取り機(20.1,20.2)により構成されていて、前記ゴデットユニット(1)により供給された糸群(17)が、両方の前記巻取り機(20.1,20.2)の前記巻取り箇所(12.1,12.2)に分割して供給可能である、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の形式の、糸群を引き出しかつ巻き取ってパッケージを形成する装置に関する。
【0002】
糸群を引き出しかつ巻き取ってパッケージを形成する冒頭で述べた形式の装置は、国際公開第2013/013968号から公知である。
【0003】
糸群を引き出しかつ巻き取ってパッケージを形成するこのような種類の装置は、溶融紡糸プロセスにおいて合成糸を製造するために使用される。したがって、糸を、押出し後に紡糸ユニットから引き出し、糸タイプに応じて延伸するためにゴデットユニットが設けられている。たとえば破断点伸びおよび煮沸収縮(Kochschrumpf)のような、この糸タイプのために望まれる物理的な特性には、ゴデットユニットの複数のゴデットにより影響が与えられる。基本的には、糸群のガイドおよび処理のために使用される、ゴデットの2つのタイプが区別される。したがって、糸群の延伸および熱処理のためには、好適には長く突出したゴデットが使用され、これらのゴデットの周面において糸群が複数回の巻掛けでガイドされる。このゴデットタイプは、本明細書において、ロングゴデットと呼ばれる。このような種類のロングゴデットは、巻掛けを実現するために、回転可能に支承された付随ローラまたは糸をガイドするための第2のロングゴデットと組み合わせられる。
【0004】
これに対して、糸群が周面において一回の糸巻掛けでガイドされるゴデットも公知である。このような種類のゴデットは、本明細書ではショートゴデットと呼ばれる。ショートゴデットは、好適には部分延伸糸(POY)の製造時に使用される。したがって、先行技術においては、ロングゴデットまたはショートゴデットしか使用しない、糸群を引き出しかつ巻き取る装置が公知である。この公知の装置では、ロングゴデットもショートゴデットも一緒に糸群をガイドし処理するために使用される。
【0005】
公知の装置では、糸群が複数のロングゴデットにより引き出されかつ延伸される。延伸後に、糸はショートゴデットを介して後処理され、複数の巻取り箇所を備えた巻取りユニットに供給される。ショートゴデットは、この場合、巻取り箇所のすぐ上に、巻取りユニットの巻取りスピンドルに対してほぼ垂直に保持されているので、糸群の糸の分配および分離は、ほぼ水平方向の平面から行うことができる。これにより、対応する低い構造高さを有する極めてコンパクトな構造形式が実現可能である。これに対して、ロングゴデットは、巻取りユニットにより予め規定される機械奥行きをロングゴデットの組込みのために利用するために、巻取りスピンドルに対して平行に配向されている。したがって、ロングゴデットの周面においてガイドされる糸群は、ショートゴデットの周面へと走入することができるように、90°の角度だけねじられなければならない。しかし、このような変向は、付加的な糸ガイド器によってしか保証されていない定義された糸のガイドを必要とする。しかし、合成糸の製造時には、糸ガイド器に対する各機械的な接触は、付加的な摩擦を引き起こし、この摩擦は、糸における物理的な性質の形成に影響する。
【0006】
溶融紡糸プロセスにおいて、列置されて保持された紡糸ノズルは、巻取りユニットの巻取り箇所に対して通常は横方向に配向されているので、公知の装置では、紡糸ユニットからロングゴデットへの移行時に、同様に90°の糸群の回転がさらに必要であるので、別の糸ガイド器が必要である。
【0007】
本発明の課題は、糸群を引き出しかつ巻き取る冒頭で述べた形式の装置を改良して、糸群を、付加的な糸ガイド器なしに、糸の溶融紡糸から、糸を巻き取ってパッケージを形成するまでガイド可能であるようにすることである。
【0008】
本発明の別の目的は、巻取りユニットのすぐ上側のできるだけコンパクトなゴデット配置を実現することにある。
【0009】
この課題は、本発明によれば、ロングゴデットの軸線とショートゴデットの軸線とが、30°~60°の範囲の角度だけ互いにずらされて配向されているように、ロングゴデットとショートゴデットとを巻取りユニットの上側に配置することにより解決される。
【0010】
本発明の有利な別の構成は、従属請求項に記載の特徴および特徴の組み合わせにより定義されている。
【0011】
本発明は、糸群が、ゴデットの、互いに角度を成すように配向された周壁面間の移行時にある程度の角度位置において付加的な糸ガイド器なしに確実にガイドされ得る、という知識に基づいている。したがって、60°よりも大きな角度での糸群の回転時には、安定化のために付加的な糸ガイド器が必要とされることが突き止められた。さらに、機械ピッチを維持するためには、ショートゴデットに対して軸平行に位置する横方向で位置するロングゴデットは実現不能である。合成糸の製造時に、このような種類の装置は機械長手方向側に対して相並んで配置される。巻取りユニットと紡糸ユニットとは、実質的に機械幅を決定する。ロングゴデットの比較的大きな組込み長さに基づいて、巻取り箇所に対して横方向に向けられた配置は不可能である。その限りでは、ショートゴデットに対して30°の角度でのロングゴデットの傾斜配置時に、通常の機械ピッチが実現可能であることが判った。その限りでは、ロングゴデットからショートゴデットへの移行時に付加的な糸ガイド器なしに糸のガイドが維持される場合に、巻取りユニットの上側でのゴデットユニットのコンパクトな配置が可能である。したがって、ロングゴデットの軸線と、ショートゴデットの軸線とは、30°~60°の範囲の角度を形成する。
【0012】
特に糸走路、ひいては紡糸ユニットからの糸の引出しを付加的な糸ガイド器なしに構成するためには、さらに、ゴデットユニットが複数のショートゴデットを有していて、これらのショートゴデットのうちの少なくとも1つのショートゴデットがロングゴデットに糸走路において前置されていて、前置されたショートゴデットが、ロングゴデットに対して軸平行に配向されている。これにより、糸群を最大で60°までのねじりで、付加的な糸ガイド器なしに紡糸ユニットから引き出すことが可能である。さらに、前置されたショートゴデットと、ロングゴデットとの間で糸緊張領域を形成する可能性が生じる。糸群は、ショートゴデットとロングゴデットとの間で平行な走路においてガイドされる。
【0013】
紡糸ユニットから引き出された糸群は、通常は紡績工場内での比較的大きな紡糸ピッチに基づいて寄せ集められなければならないので、ゴデットユニットが、コーム形の糸ガイド器を備えた糸集合ユニットを有していて、糸ガイド器がロングゴデットに対してほぼ平行に配置されている、本発明の別の構成が好適に実施されている。これにより、糸をガイドするために所望の処理間隔が、既にロングゴデットに対して平行に形成される。
【0014】
ゴデットユニットができるだけ巻取りユニットのすぐ上側に保持され得るように、さらに、ショートゴデットを、巻取りユニットの巻取りスピンドルに対して横方向に配置することが規定されている。これにより、ほぼ水平方向の分配平面からの糸群の有利な分配および分離が保証されている。
【0015】
その限りでは、ゴデットユニットがゴデットモジュールとして有利には巻取りユニットのすぐ上側に配置される。このためには、ゴデットユニットが、巻取りユニットをU字形にその下で取り囲む機械フレームにより支持されていて、巻取りユニットの手前に形成された操作通路から操作される。
【0016】
ゴデットユニットが、駆動装置に基づいて、通常は巻取りユニットの上側に非対称に保持されているので、ゴデットユニットが、ロングゴデットを受容するために、操作通路に対して斜めに配向されたキャリア壁を有していて、このキャリア壁が、隣接する巻取りユニットの隣接する機械フレームに部分的に支持されている本発明の別の構成が有利に実施される。これにより、全体的に、一列に配置された巻取りユニットの上側で提供されている構造空間を、比較的存在感のあるロングゴデットを設置するために、有利に使用することができる。
【0017】
ロングゴデットの複数回の巻掛けを糸群の処理のために利用することができるように、ロングゴデットはゴデット周壁を温度調節するための周壁加熱装置を有している。これにより、集中的な熱処理を得るために、糸群の複数回の周面接触を有利に利用することができる。
【0018】
周辺環境が糸の熱処理からできるだけ免除されているようにするために、ロングゴデットのゴデット周壁が熱絶縁されたゴデットボックス内に配置されていて、ゴデットボックスが、前置されたショートゴデットと、後置されたショートゴデットとに対して、複数の糸開口のうちのそれぞれ1つを有している。
【0019】
今日通常である巻取りユニットにおいて提供されている機械幅および機械奥行きは、複数回の糸巻掛けを許容するロングゴデットの使用を可能にする。この場合、ロングゴデットのゴデット周壁が少なくとも、ショートゴデットのゴデット周壁の周壁長さよりも2~5倍長く構成されている周壁長さを有している。その限りでは、本発明に係る装置は、相応した緩和処理を備えた完全延伸糸を製造するために特に適している。
【0020】
できるだけ多くの本数の糸を同時に処理することができるように、巻取りユニットが、互いに対して鏡像対称的に設置された2つの巻取り機により構成されていて、ゴデットユニットから供給された糸群が両巻取り機の巻取り箇所に分割して供給可能である、本発明の別の構成が好適に実施されている。これにより、多数の糸が同時に紡糸ユニットからゴデットユニットにより引き出され、処理される。鏡像対称的な巻取り機の配置により、有利には、巻取りスピンドルの突出した長さを制限することができる。さらに、ゴデットユニットを収容するための機械幅が増大し、機械ピッチは維持される。
【0021】
本発明に係る装置は、特に繊維産業または技術的な用途のために溶融紡糸プロセスにおいて複数の合成糸を製造するために特に適している。糸は、糸群として平行に相並んで位置してショートゴデットおよびロングゴデットのゴデット周壁においてガイドされる。したがって、たとえば巻取りユニットの巻取りスピンドルにおいて8本、10本または16本の糸が同時に巻き取られてパッケージを形成する。鏡像対称的な2つの巻取り機の使用時に、32本までの糸をゴデットユニットにより紡糸ユニットから同時に引き出すことができる。ショートゴデットとロングゴデットとの組み合わせは、たとえば緩和時に張力解除のために必要とされる、糸群における集中的な熱処理を可能にする。その限りでは、本発明に係る装置は、収縮の少ない糸を製造するために特に適している。操作通路からのゴデットユニットおよび巻取りユニットの操作性は、故障後の短時間の停止時間を可能にするために特に有利である。さらに、ゴデットユニットおよび巻取りユニットは、そのコンパクトな構造形式に基づいて、ゴデットユニットおよび巻取りユニットが互いに独立して交換可能であるように、有利にはモジュール式に構成され得る。
【0022】
本発明を、糸群を引き出しかつ巻き取る本発明に係る装置の幾つかの実施例につき添付の図面を参照しながら以下に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る装置の第1の実施例の概略的な側面図である。
図2図1に示した実施例の概略的な正面図である。
図3図1に示した実施例を上から見た概略的な平面図である。
図4】本発明に係る装置の別の実施例の概略的な正面図である。
【0024】
図1図2および図3には、糸群を引き出しかつ巻き取る本発明に係る装置の第1の実施例が複数の視点で概略的に図示されている。図1は、この第1の実施例を側面図で示していて、図2は正面図で示していて、図3には第1の実施例が上から見た平面図で示されている。これらの図面のうちの1つの図面に明確に関連付けがなされていない限り、以下の説明は全ての図面に当てはまる。
【0025】
本発明に係る装置の実施例は、ゴデットユニット1と、巻取りユニット2とから構成されている。ここで、ゴデットユニット1は、機械フレーム3に保持され、この機械フレーム3は、ゴデットユニット1の下側に配置された巻取りユニット2上にU字形に延びている。ゴデットユニット1と巻取りユニット2とは、溶融紡糸プロセスにおいて糸群を押出し後に紡糸ユニットから引き出し、糸タイプに応じて処理し、最終的に糸郡の糸を巻き取ってパッケージを形成するために、協働する。
【0026】
この実施例では、ゴデットユニット1は、糸郡を引き出すために、複数のゴデット群6,7,8を有している。しかし、糸群17の糸を収容するために、糸は、まずゴデットユニット1のために適した処理間隔に纏める必要がある。その限りでは、ゴデットユニット1の走入側には、糸群17の糸を互いに対してできるだけ等しい糸間隔で纏めるために、糸集合ユニット4が配置されている。隣り合う糸間の処理間隔は、4~8mmの範囲にある。このためには、糸集合ユニット4は、コーム糸ガイド器4.1を有している。このコーム糸ガイド器4.1は、複数の糸をガイドするための複数の糸ガイド器を有している。コーム糸ガイド器4.1は、可動に構成されていて、切断手段4.2および吸込み手段4.3と協働する。その限りでは、ゴデットユニット1または巻取りユニット2において発生する故障時に、糸群を、糸集合ユニット4により収容し、引き続き吸込み容器へと導入することができる。これにより、溶融紡糸プロセスの中断は不要となる。
【0027】
糸集合ユニット4には、第1のゴデット群6が対応配置されている。この第1のゴデット群6は、非加熱式の複数のショートゴデット6.1により構成されている。これらのショートゴデット6.1は、糸集合ユニット4と一緒にキャリア壁5に配置されている。ゴデット周壁6.2はキャリア壁5の正面側において突出している。ショートゴデット6.1は、キャリア壁5の背面側に保持されていて図面には詳細に図示されていない駆動装置に結合されている。第1のゴデット群6は、この実施例において3つのショートゴデット6.1を含んでいる。
【0028】
ショートゴデット6.1の側方で隣に、キャリア壁5には第2のゴデット群7が配置されている。第2のゴデット群7は、長く突出した1つのロングゴデット7.1と、このロングゴデット7.1に対応配置された通過ローラ7.2とにより構成される。ロングゴデット7.1は、糸走路において前置されたショートゴデット6.1に対して軸平行に配向されている。その限りでは、ロングゴデット7.1と、糸走路において前置されたショートゴデット6.1との間で、たとえば糸群を完全に延伸するための緊張領域が形成されている。
【0029】
ロングゴデット7.1のゴデット周壁7.4では、糸群17が複数回の巻掛けでガイドされる。ロングゴデット7.1のゴデット周壁7.4は、概略的に図示された周壁加熱装置7.3により加熱式に構成されている。
【0030】
ロングゴデット7.1の突出した端部側において、このロングゴデット7.1は、このロングゴデット7.1の下側に配置された、別のゴデット群8のショートゴデット8.1と協働する。このゴデット群8は、非加熱式の2つのショートゴデット8.1により形成されていて、これらのショートゴデット8.1は、巻取りユニット2のすぐ上側に配置されている。ショートゴデット8.1は、ゴデット周壁8.2でもって突出するようにゴデットキャリア10に配置されていて、ゴデットキャリア10の背面側に配置されたゴデット駆動装置8.3に結合されている。2つのショートゴデット8.1の間の糸走路に、交絡ユニット9が設けられていて、これにより糸群17の糸を互いに独立して交絡させることができる。
【0031】
ショートゴデット8.1には、これらのショートゴデット8.1に対して軸平行に配置された、巻取りユニット2に設けられた複数の変向ローラ11が対応配置されていて、これらの変向ローラ11は、複数の巻取り箇所12への糸群の拡開および分離を実施する。
【0032】
糸の本数、ひいては巻取り箇所12の個数は、図1図3に図示された実施例では例示的である。基本的に、糸群は、4本以上の糸を含んでいてよい。
【0033】
巻取り箇所12において、糸群17の糸は、巻き取られてそれぞれ1つのパッケージ18を形成する。巻取り箇所12は同一に形成されていて、変向ローラ11の下側に配置されたそれぞれ1つの綾振りユニット13を有している。複数のパッケージ18が、1つの巻取りスピンドル15.1において同時に巻き取られる。この巻取りスピンドル15.1は、第2の巻取りスピンドル15.2と一緒に、回転可能に支承された巻取りリボルバ16に保持されている。巻取りスピンドル15.1,15.2は、巻取りリボルバ16の回転により交互に運転領域と交換領域とに案内される。パッケージ18の表面に糸群17の糸を敷設するために、押圧ローラ14が設けられている。この押圧ローラ14は、パッケージ18の周面に当て付けられている。このためには押圧ローラ14は、可動に形成されている。
【0034】
巻取りユニット2の駆動装置は、図面には図示されていない。なぜならば、このような種類の自動化された巻取りユニットは、先行技術において十分に公知であるからである。
【0035】
実際には、このような種類の巻取りユニットは、複数個で相並んで設置され、この場合、操作通路21が、機械長手側に対して平行に形成されている。操作通路21は、主に最後まで巻成されたパッケージの搬出のために設けられている。この場合巻取りユニット2は、機械ピッチ(配置間隔)を形成し、これにより複数本の糸を並列して製造することができる。一方では機械ピッチを維持することができるように、他方では操作通路21からのゴデットユニット1の操作を可能にすることができるように、まずショートゴデット8.1を備えたゴデット群8が、巻取りスピンドル15.1,15.2に対してほぼ垂直に配向されている。ショートゴデット8.1のうちの1つは、巻取りユニット2の端面に直接に配置されていて、この場合、糸群17の分配および分離は、ほぼ水平方向に向けられた分配平面から変向ローラ11によって可能である。これにより、オペレータに対してゴデットユニット1へのアクセスを可能にするために、極めて短い構造高さが実現される。
【0036】
図3の図面から判るように、糸走路において前置された、第2のゴデット群7のロングゴデット7.1は、このロングゴデット7.1の軸線と、第3のゴデット群8のショートゴデット8.1の軸線との間に所定の角度が形成されるように、ショートゴデット8.1に対して斜めに配置されている。この角度は、図3では記号αで示されている。角度αの大きさは、最小値と最大値との間に制限されている。ロングゴデット7.1から、後置されたショートゴデット8.1への糸移行時に糸のガイドを糸ガイド器なしに維持するためには、糸群のねじれは、制限された角度範囲のみで許容される。この場合に、60°の最大角度は、ロングゴデット7.1とショートゴデット8.1との間での糸群の非接触のガイドをまだ許容することが判った。ロングゴデット7.1とショートゴデット8.1との間の角度のずれがさらに大きい場合には、付加的な糸ガイド器、ひいては糸における付加的な摩擦箇所が必要となるだろう。
【0037】
糸のガイドのためには、ロングゴデット7.1とショートゴデット8.1との間の角度のずれができるだけ小さいと有利であるだろう。この構成は、第2のゴデット群7の突出した長さならびにキャリア壁5の背面側に組み付けられた複数の駆動装置に基因して、機械ピッチがゴデットユニット1に基づいて設定されている場合にのみ可能である。しかし、実際には、これは不可能である。したがって、巻取りユニット2に基づいて予め設定される機械ピッチを維持することができるようにするために、ロングゴデット7.1とショートゴデット8.1との間で少なくとも30°の角度を備えた配置が必要である。その限りでは、ロングゴデット7.1の軸線と、ショートゴデット8.1の軸線との間で、30°~60°の範囲の角度が維持される。
【0038】
ショートゴデット6.1を備えた第1のゴデット群6と、ロングゴデット7.1を備えた第2のゴデット群7とを収容するためには、キャリア壁5は相応して、ロングゴデット7.1の側方で隣に配置されたショートゴデット6.1が操作通路21に面しているように、相応して斜めに配置されている。したがって、ゴデットユニット1の操作が大きな補助手段なしにオペレータにより可能である。
【0039】
本発明に係る装置の図1図3に図示された実施例では、ゴデット群6,7,8毎のゴデットの個数および選択は例示的である。基本的には、第1のゴデット群のショートゴデット6.1を加熱式にまたは非加熱式に構成する可能性が生じる。同様に、第2のゴデット群7のロングゴデット7.1の個数も例示的である。したがって有利には、集中的な熱処理を実施するために、加熱式の複数のロングゴデット7.1を使用することもできる。
【0040】
これに対して図4には、本発明に係る装置の別の実施例が概略的に正面図で示されている。図4に示した実施例は、図1図3に示した実施例とほぼ同一であるので、ここでは差異のみを説明し、その他の点は上述の説明が参照される。
【0041】
本発明に係る装置の図4に図示された実施例では、ゴデットユニット1の第2のゴデット群7が、長く突出した2つのロングゴデット7.1により構成されている。これらのロングゴデット7.1は、糸群17により複数回巻き掛けられている。ロングゴデット7.1は、そのゴデット周壁7.4でもって突出するようにキャリア壁5に保持されている。各ロングゴデット7.1は、周壁加熱装置7.3を有している。周辺環境に対して遮蔽するために、ロングゴデット7.1のゴデット周壁7.4は、ゴデットボックス19内に配置されている。ゴデットボックス19は、キャリア壁5に保持されていて、図4には部分断面図でしか示されていない。糸をガイドするために、ゴデットボックス19は、前置されたショートゴデット6.1に対しては第1の糸開口22を有していて、後置されたショートゴデット8.1に対しては第2の糸開口(図示せず)を有している。
【0042】
合計で3つのショートゴデット6.1を備えた第1のゴデット群6と、2つのショートゴデット8.1を備えた第3のゴデット群8とは、上述の実施例と同一に構成されている。
【0043】
ゴデットユニット1の下側に配置された巻取りユニット2は、この実施例では2つの巻取り機20.1および20.2により形成されている。巻取り機20.1,20.2は、互いに対して鏡像対称的に配置される。巻取り機20.1,20.2の構造は、図1および図2に示した実施例と同一に構成されている。その限りでは、各巻取り機20.1,20.2は、それぞれ4つの巻取り箇所12.1,12.2を有している。糸群17は、予め、巻取り箇所12.1,12.2に前置されたショートゴデット8.1の周面で分配されるので、ゴデットユニット1において合計で8本の糸が糸群としてガイドされる。
【0044】
図4には、相並んで配置された複数の装置の配置が示されている。これらの装置は、操作通路21に対して平行に機械長手側を形成する。巻取りユニット2は、それぞれ1つの機械幅を形成し、この機械幅は、紡糸位置の間の間隔を形成する。この実施例では、ゴデットユニット1が機械ピッチ内で対称的に配置されていない。したがって、キャリア壁5の後端部は隣接する装置内に突入する。キャリア壁5は、ほぼ垂直に突出するロングゴデット7.1が、ショートゴデット8.1に対して、もしくはこの場合機械長手側に対して、ひいては操作通路21に対して30°~60°の所望の角度位置を有しているように、機械フレーム3において斜めに配置されている。したがって、キャリア壁5は、後端部において、隣接する装置の機械フレーム3により支持される。この場合に発生するオーバラップした構造形式は、コンパクトな機械配置を可能にする。
【0045】
本発明に係る装置の図4に図示された実施例は、収縮の少ないポリアミド糸を溶融紡糸プロセスにおいて製造するために特に適している。このためには、第2のゴデット群7のロングゴデット7.1が、直径で数倍大きなゴデット周壁7.4を備えて構成されている。ポリアミド糸の製造時に必要となる巻掛け回数を得るために、ロングゴデット7.1のゴデット周壁7.4は、前置されたショートゴデット6.1のゴデット周壁6.2に対して、周壁長さにおいて2~5倍長く、周壁直径において1.8~3倍大きく形成されている。ロングゴデット7.1のこの周壁長さにより、糸巻掛けの回数が決定される。したがって、糸群17をポリアミド糸の製造のためにロングゴデット7.1において3~6回の巻掛けでガイドすることが通常である。
【0046】
糸群17の糸は、好適には非加熱式のショートゴデット6.1を備えた第1のゴデット群6により引き出される。合計3つのショートゴデット6.1は、糸張力を形成するために小さな速度差で駆動することができる。糸群17の糸の延伸は、次いで第1のゴデット群6と第2のゴデット群7との間に形成された延伸領域において行われる。このためには、隣接したショートゴデット6.1と、ロングゴデット7.1とが、キャリア壁5において軸平行に保持されている。ショートゴデット6.1は、最大で300°の巻掛け角度を有する糸群の1回の巻掛けで巻き掛けられる。その後に、糸群は、複数回の巻掛けでロングゴデット7.1の周面に受け取られる。ゴデット周壁7.4は、ポリアミド糸を緩和するために、130℃~190℃の温度範囲に調節されている。
【0047】
緩和後に、糸群17の糸は、第3のゴデット群8により収容されかつ冷却される。このためには、第3のゴデット群8は、非加熱式の2つのショートゴデット8.1を有している。これらのショートゴデット8.1は、好適には第1のゴデット群6のショートゴデット6.1と同一に構成されている。糸結合部の改善のために、糸は、糸走路においてショートゴデット8.1間で交絡ユニット9において交絡される。次いで糸群17が分けられ、両巻取り機20.1,20.2の巻取り箇所12.1,12.2へと供給される。各巻取り箇所12.1,12.2において、糸は巻き取られてパッケージを形成する。
【0048】
したがって、図4に図示された実施例は、特にポリアミド糸を製造するために適している。しかし基本的には、本発明に係る装置をポリエステルまたは別のポリマから成る完全延伸糸を製造するために使用する可能性も生じる。
図1
図2
図3
図4