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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】関節装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/02 20060101AFI20230105BHJP
   A61H 3/00 20060101ALI20230105BHJP
   A61F 2/32 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
A61F5/02 K
A61F5/02 N
A61H3/00 B
A61F2/32
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020509058
(86)(22)【出願日】2018-08-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 EP2018073131
(87)【国際公開番号】W WO2019052805
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】102017121343.0
(32)【優先日】2017-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506153712
【氏名又は名称】オットー・ボック・ヘルスケア・プロダクツ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】シマ、ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】オウベルガー、ローランド
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0002674(US,A1)
【文献】国際公開第2012/098733(WO,A1)
【文献】特表2017-522519(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0015589(US,A1)
【文献】特開2014-161477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/02
A61H 3/00
A61F 2/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部(1、1’)と前記上部に関節状に配置された下部(2、2’)とを有し、前記上部(1、1’)を患者に固定するための第1の固定装置(3、3’)と前記下部(2、2’)を四肢に固定するための第2の固定装置(4、4’)とを有する整形器具の関節装置であり、前記関節装置(10、10’)が前記上部(1、1’)を前記下部(2、2’)と関節状に結合させるとともに上部接続具(11)と下部接続具(12)とを有し、前記接続具を介して前記上部(1、1’)および前記下部(2、2’)が前記固定装置(3、3’、4、4’)に固定され得る、関節装置であって、前記関節装置(10、10’)が少なくとも4つの自由度(21、22、23、24、25)を有し、
少なくとも1つの回転自由度(21)にアクチュエータ(40)が割り当てられ、
前記アクチュエータ(40)が保持具(50)内にまたは前記保持具に配置されており、前記アクチュエータは前記上部(1、1’)と前記下部(2、2’)との間に配置されており、前記保持具は少なくとも2つの自由度(21、22、24、25)を有することを特徴とする、関節装置。
【請求項2】
前記関節装置が少なくとも3つの回転自由度(21、23、24)を有することを特徴とする、請求項1に記載の関節装置。
【請求項3】
前記関節装置が少なくとも1つの並進自由度(22、25)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の関節装置。
【請求項4】
少なくとも2つの回転自由度(21、23;21、24)の回転軸(210、230;210、240)が互いに交差していることを特徴とする、請求項1から3の1項に記載の関節装置。
【請求項5】
少なくとも1つの回転自由度(23)の旋回軸(230)が前記関節装置(10、10’)の外にあることを特徴とする、請求項1から4の1項に記載の関節装置。
【請求項6】
少なくとも1つの自由度(21、22、23、24、25)が末端止め具(34、134、60、61)を介して限定されていることを特徴とする、請求項1から5の1項に記載の関節装置。
【請求項7】
少なくとも1つの自由度(24)に少なくとも1つの弾性緩衝要素(34)が割り当てられていることを特徴とする、請求項1から6の1項に記載の関節装置。
【請求項8】
回転自由度(24)の前記緩衝要素(34)が、回転軸に対して平行に配置されたエラストマー要素により形成されていることを特徴とする、請求項7に記載の関節装置。
【請求項9】
前記緩衝要素(34)が弾性引張要素を用いて形成されていることを特徴とする、請求項7に記載の関節装置。
【請求項10】
前記関節装置が、少なくとも1つの自由度に関する前記少なくとも1つの緩衝要素(34)により出発位置に保たれることを特徴とする、請求項7に記載の関節装置。
【請求項11】
前記2つの自由度(21、24)が回転自由度であり、回転軸(210、240)が互いに垂直であることを特徴とする、請求項1から10の1項に記載の関節装置。
【請求項12】
少なくとも1つの回転自由度(23)が長穴ガイド(113)を介して形成されているおよび/またはバンド(61)を介して限定されていることを特徴とする、請求項1から11の1項に記載の関節装置。
【請求項13】
請求項1から12の1項に記載の関節装置(10、10’)を介して互いに対して結合されている上部(1、1’)と下部(2、2’)とを備えた整形器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部とそれに関節状に配置された下部とを有し、上部を患者に固定するための第1の固定装置と下部を患者の四肢に固定するための第2の固定装置とを有する整形器具の関節装置に関する。関節装置は上部を下部と関節状に結合させ、上部接続具と下部接続具とを有し、それらの接続具を介して上部および下部が固定装置に固定され得る。
【背景技術】
【0002】
整形器具は患者に、その胴体および/または四肢に添え付けられ、一般に、各々の副木または殻を胴体または四肢に固定する装置を備えた副木または殻を有する。副木または殻は関節装置を介して互いに対して結合されているので、整形器具を関節に広がるように患者に配置することができる。整形器具を介して運動を誘導し、関節軸を中心にする旋回角を限定し、旋回運動を阻止することができる、または四肢の相互整列を補助するもしくは固定することができる。さらに整形器具は、各々の関節軸を中心とする旋回運動を緩和するまたは起こすもしくは補助するために緩衝要素および/もしくはばね要素、または駆動器を備えていてもよい。緩衝器および/または駆動器は、センサを介して取得されて制御装置内で評価された負荷、旋回角、速度または加速度に応じて変更された緩和、または屈曲方向もしくは伸展方向での変更された運動補助が提供され得るような制御を備えていてもよい。
【0003】
緩衝装置は油圧ダンパ、空圧ダンパ、または油圧ダンパと空圧ダンパから成る組合せとして形成されてもよい。同様に緩衝器は、磁気流動材料を介して印可磁界を変動させることにより運動に対する抵抗を変動させることができる。純粋に受動的な緩衝装置とともに、能動的な駆動器を備えた整形器具が存在し、例えば電気モータを介して上部が下部に対して移動方向に移動する。
【0004】
整形器具は単一の関節のみに、例えば股関節、膝関節または踝関節に広がり得る。代わりに整形器具は複数の関節に、例えば股関節にも膝関節および踝関節にも、または股関節および膝関節のみに広がることが可能であり、そのように設定されている。1つまたは複数の自然関節に広がる整形器具では、整形器具のそれぞれ近位側の構成部品は上部であり、それぞれ遠位側の構成部品は下部である。膝・踝・足整形器具では従って、膝に広がる部分に関する下腿副木は下部である。なぜなら下腿副木は大腿副木に対して遠位側にあるからである。足副木または足殻に関して下腿副木は上部であるのに対し、整形器具・踝関節を介して下腿副木と結合されている足副木または足殻は下部を成す。股関節に広がる整形器具では、患者の胴体または骨盤に配置されている部分は上部であるのに対し、大腿に固定される整形器具の要素は下部を成す。
【0005】
アクチュエータ、従って駆動器および/または緩衝器を整形器具に配置する際、患者の体への整形器具の添え付け位置の領域における様々な解剖学的部位、製造誤差および軟部のずれのために、整形器具の軸と解剖学上の関節軸との間に心外れが起こり得るという問題がある。特に股関節または肩関節のような複雑な関節では、そのうえ膝関節および踝関節でも、上部と下部との間に関節装置の硬い構造を用いて、解剖学上の複数の軸または1つの軸と整形器具の1つの軸または複数の軸との間に十分な一致を与えることが難しい場合がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の課題は、関節装置の自然関節の場所近くへの位置決めと整形器具の常に患者の身体近くへの添え付けとを可能にする、整形器具用の関節装置を提供することである。
【0007】
本発明によればこの課題は、主要請求項の特徴を有する関節装置により解決される。本発明の有利な構成および他の形態は従属請求項、明細書および図面において開示されている。
【0008】
上部とそれと関節状に配置された下部とを有し、上部を患者に固定するための第1の固定装置と下部を四肢に固定するための第2の固定装置とを有する整形器具の関節装置であって、その関節装置は上部を下部と関節状に結合させ、上部接続具と下部接続具とを有し、それらの接続具を介して上部および下部が固定装置および関節装置に固定可能であり、その関節装置は、関節装置が少なくとも4つの自由度を有することを設定している。そのような関節装置はその少なくとも4つの自由度のために運動学的に不確定であるので、それらの部品が関節装置であるシステムとしての整形器具は、患者または利用者に添え付けることによって初めて運動学的に確定される。そのような関節装置は好ましくは予め作製されたモジュールとして形成されており、そのモジュールは、各々の固定装置で上部接続具および下部接続具と結合され得る、例えばねじ留めされ得るまたはリベット留めされ得る。各々の固定装置は整形器具を患者に全体的に固定するために、各々の身体部分を少なくとも部分的に覆い囲む殻として、またはベルトもしくはベルトアセンブリとして形成されてもよい。股関節に広がる整形器具では、上部を患者に固定するための第1の固定装置は骨盤ベルトまたは骨盤殻であるのに対し、下部を固定するための固定装置は大腿殻または大腿ベルトとして形成されてもよい。肩整形器具として使用する際、上部は、胴体に添え付けられている固定装置に固定されているのに対し、下部用の固定装置は上腕に配置されており、ベルトを介してまたはマジックテープ(登録商標)を介して上腕の周りに完全に添え付けられ得る殻または圧迫帯として形成されてもよい。
【0009】
少なくとも4つの自由度を有する関節装置を構成することにより、ある運動限界内での構成部品の互いに対する自立した位置決めが可能になるように関節装置を形成することができる。それにより、それぞれ結果として得られる関節装置の回転軸が常に自然関節の生理学的な回転中心点を通っている。それにより圧迫、運動の制限または心外れから生じる関節への負荷が回避される。従って、解剖学上の回転中心点を正確に定め、関節装置の回転軸の方向付けを一度見出した解剖学上の回転中心点に正確に合わせる必要はもはやなく、むしろ関節装置は、整形器具を添え付けた後に所与の運動限界内で自立的に、生理学的に正しい回転中心点に正確に整列される。上部接続具と下部接続具とを有する関節装置を構成することにより固定装置を関節装置から分離することができるので、整形器具の添え付けは容易になる。
【0010】
好ましくは関節装置は、股関節または肩関節のような球関節も埋め合わせることができ、整形処置の範囲で補助するために3つの回転自由度を有する。
【0011】
関節装置は、少なくとも1つの並進自由度を有するので、少なくとも1つの方向での移動可能性が可能になる。関節装置は本発明の別の態様において少なくとも2つの並進自由度を有するので、2つの異なる方向での移動可能性が可能になる。少なくとも1つの並進自由度に沿った移動により、各々の関節装置を身体部分に配置する際に固定装置が移動するのを防止することができる。例えば股関節に広がる整形器具の一部としての関節装置の形態では、矢状面に直交する並進自由度は遮られていなくてもよいが、末端止め具により限定され得る。この並進自由度により、整形器具を添え付ける際に関節装置の機能上の回転中心点は解剖学上の股関節と整列する。さらに、下部接続が大腿の長手方向の伸展に沿って長手方向の移動で行われ得るように、水平面に直交する並進自由度が与えられてもよい。
【0012】
本発明の異なる形態は、少なくとも2つの回転自由度の回転軸が互いに交差しているので、その一方の回転軸を中心とする回転が他方の回転軸を中心とする運動に全く作用しないことを設定している。
【0013】
その回転軸または回転中心点が体内にある関節も補助することができるように、少なくとも1つの回転自由度の旋回軸が関節装置の外にあるので、例えば股関節に対して前頭面に対して垂直な旋回軸を中心とする脚部の外転および内転が可能になり得ることは有利である。好ましくはこれに関して関節装置内に、その輪郭が円軌道部分である、曲がった長穴を備えた長穴ガイドが設けられており、その円軌道の中心点は関節装置の機械的な構成部品の外にある。好ましくはこの曲線軌道の中心点は、関節装置が配置されている自然関節の回転中心点にまたは回転中心点の近くにある。長穴を短くすることにより、例えば弾性停止要素を導入することによりこの自由度における運動領域を低減することができる。同様に長穴に誘導される要素と長穴の端点との間に剛性バンドまたは弾性バンドを導入することにより、この回転または並進自由度における関節の挙動に影響を与えることができる。剛性バンドを用いて止め具を作ることができ、その際バンドの長さにより停止位置を固定する。弾性バンドによりこの自由度に関する弾性挙動の実現が可能になる。中立位置はバンドの長さにより定められ、剛性はバンドの弾性特性により定められる。複数の異なる長さのまたは堅さのバンドを並列で用いることにより段階的な挙動を得ることができる。下肢の整形器具ではこれは股関節であり、上肢の整形器具ではこれは肩関節であろう。
【0014】
該当する自由度に関する関節装置の安定を得るために、少なくとも1つの自由度に少なくとも1つの弾性緩衝要素またはばね要素が割り当てられている。さらにばね要素または緩衝要素を介して、この自由度に関するまたはこの自由度における移動可能性が限定される。さらにばね要素または緩衝要素を介して移動経路または移動角度を限定するとともに、関節装置および関節装置の挙動を個別の要求に整合させることができるように、この自由度におけるまたはこの自由度に関する運動に抵抗、例えば摩擦抵抗が備えつけられていることが得られうる。
【0015】
回転自由度の1つのばね要素もしくは緩衝要素または複数のばね要素もしくは緩衝要素は、回転軸に対して平行に配置されたエラストマー要素により形成されてもよく、そのため好ましくは綱形に形成されたエラストマー要素の長さを変更することにより捩り剛性を容易に且つ無段階に調節することができる。さらにばね要素または緩衝要素の断面の成形により所望の弾性挙動を調節することができる。そのように例えば断面を移動方向に増加することにより、段階的な弾性挙動を調節することができる。材料の組合せによっても対応する弾性特性を調節することができる。極めて剛性のあるばね要素または緩衝要素を使用することにより堅固な止め具を実現することができる。弾性挙動の際の中立位置または停止位置は、使用されるばね要素または緩衝要素の直径により影響を受け得る。これは極めて剛性のある要素を使用する際に特に興味深いことである。なぜならそれによって自由度が、対応して選択されたばね要素または緩衝要素の直径により所定の位置で遮られ得るからである。
【0016】
本発明の別の形態は、少なくとも1つの回転自由度に、駆動器または緩衝器として形成され得るアクチュエータが割り当てられていることを設定している。純粋に受動的な緩衝器は、油圧ダンパ、空圧ダンパまたは磁気流動ダンパであってもよい。動作様式の組合せも可能である。また他の機械的制動器が配置されてもよい。さらに、運動を補助し、患者によりそれぞれ実行される運動を補助するための力またはモーメントを加えるために、能動的なアクチュエータが駆動器、特にモータ駆動器の形で設けられてもよい。加えられた力を患者により導入される運動の反対方向に向ける場合、駆動器は能動的な抵抗装置を形成し、同様に緩衝器である。従って駆動器を補助のためにも緩衝器としても使用することができる。緩衝器には、整形器具にまたは患者に配置されているセンサが割り当てられてもよい。センサを介して、有効な力、モーメント、速度、加速度、互いに対する相対位置もしくは四肢の位置または整形器具構成部品の位置が空間内で取得され、制御装置に導かれ、評価される。制御装置は、モータで駆動されている調節装置について評価されたセンサデータに基づいて受動性緩衝器をその特性について変更することができ、例えば緩衝を高めるまたは減らすことができる。駆動の際、評価されたセンサデータに基づいて対応して各々の駆動器を有効にすることができる。整形器具を駆動させるためにまたは緩衝装置を調節するために少なくとも1つのエネルギー貯蔵器が関節装置に割り当てられている。
【0017】
アクチュエータ、従って緩衝器または駆動器は、上部接続具と下部接続具との間に、特に上部と下部との間に配置されている保持具内にまたは保持具に配置されてもよい。保持具自体は複数の部品で形成されてもよく、圧迫および傾きの誤りを回避するために少なくとも2つの自由度を有する。2つの自由度は好ましくは回転自由度であり、2つの自由度の回転軸は、互いに対する運動に影響を及ぼさないように互いに垂直にある。
【0018】
構成部品の相互配置を容易に且つ確実に一定に保つために、少なくとも1つの自由度、特に回転自由度が長穴ガイドまたは副木ガイドを介して形成されている。長穴ガイド内に脱着可能なピンが誘導されてもよい。そのために長穴ガイドの領域において関節装置を複数の構成部品に分離することができるので、関節装置を容易に取り付け、取り外すことができ、従って整形器具を容易に添え付けることもできる。長穴ガイド内に分離箇所を配置することにより大きな経路領域が準備され、その内部で組立てを行うことができる。従って組立てのために関節装置の構成部品を互いに対して正確に整列させる必要はない。
【0019】
本発明は同様に、上述のように関節装置を介して互いに対して結合されている下部と上部とを備えた整形器具に関する。
【0020】
続いて本発明の実施例を添付図に基づいて詳細に説明する。それらの図は以下に示される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】整形器具の概略全体図である。
図2】固定装置のない関節装置の斜視図である。
図3】変更された制御装置を有する図2の異なる形態である。
図4図2による実施形態の側面図である。
図5図4の前面図である。
図6図5による上面図である。
図7】下部接続具の詳細図である。
図8】上部接続具の断面図である。
図9図8の異なる形態である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1では、下肢の3つの関節、つまり股関節、膝関節および踝関節に広がる股・膝・踝整形器具が概略的な全体図で示されている。自然の股関節の領域および自然の膝関節の領域ではそれぞれ、関節装置10、10’がそれぞれ上部1、1’と下部2、2’との間に配置されている。各々の上部1、1’は第1の固定装置3、3’を介して患者に添え付けられており、各々の下部2、2’は第2の固定装置4、4’を介して、それぞれ関節装置10、10’の遠位側にある四肢に固定される。従って整形器具は2つの上部1、1’を有する。第1の上部1は骨盤ベルトまたは股関節ベルト3を介して患者の胴体に固定されている。それに付属する下部2は、大腿殻または大腿副木および固定装置4としての固定ベルトを介して大腿に固定されている。大腿殻は固定装置4とともに同時に第2の上部1’を形成し、その第2の上部は、これに関して第1の固定装置3’を介して大腿に固定されている。当然、大腿殻はさらに第1の上部1に対して遠位側にある第2の固定装置4と、さらに大腿と結合されている。大腿殻または大腿副木に対して遠位側に第2の下部2’として下腿副木が配置されており、その第2の下部は、第2の固定装置4’としてのベルトを介して下腿に固定され得る。下腿副木は足板を有し、その足板上に足が支えられる。大腿殻はそれに付属する固定装置を有し、その大腿殻は従って、2つの関節装置10、10’を備えた整形器具としての用途では、第1の下部2でもあり、第2の上部1’でもある。
【0023】
図2は、整形器具の一部としての、関節に広がるように患者に配置され得る関節装置10を斜視図で示す。関節装置10は第1の回転軸210の上方の上部1と下部2と有する。上部1は患者の骨盤で、図示されていない第1の固定装置に固定する上部接続具11を有する。下部2は、下部2を大腿に固定する第2の固定装置に固定され得る下部接続具12を有する。上部接続具11は基板110を備えており、その基板には穴111が配置されており、それらの穴を介して上部接続具11が第1の固定装置に固定され得る。その固定は例えばねじを用いて行われ得る。基板110から2つの壁112が延びており、2つの壁112は互いに対して実質的に平行に方向付けられ、基板110に対して垂直に向けられている。各々の壁112の中に長穴ガイド113が形成されており、その長穴ガイドは部分円弧としてまたは少なくとも湾曲されて形成されている。長穴ガイド113の半径が非常に大きいため、中心点が上部接続具11の外にある。
【0024】
長穴ガイド113内には、上部接続具11を複数部品で構成されている保持具50と結合させる滑りピン151が誘導されている。滑りピン151は、保持具50を上部接続具11と可逆的に結合させる。そのために滑りピン151が長穴ガイド113内に導入および導出され得る。滑りピン151は、長穴ガイド113に、およびブリッジ511内の穴または長穴5111に通される。ブリッジ511はフレーム51の一部分であり、そのフレームはここで再び保持具50の一部分である。フレーム51は実質的にU形に形成されており、側面脚を介して回転軸受を形成するので、保持具50の第2の部分である筐体52は回転軸210を中心に回転可能に配置されている。回転軸210は矢状面に対して実質的に垂直にあり、矢状面内での下部2の旋回運動を可能にするので、腰または骨盤に添え付けられる整形器具の場合、脚部が前後方向に旋回し得る。
【0025】
下部2の一部分としての筐体52は、緩衝器および/または駆動器として形成されてもよいアクチュエータ40を収容する役割をする。筐体52はアクチュエータ筐体の一部分であってもよく、完全にアクチュエータ筐体から構成されてもよい。横側には、従って上部接続具11に背く筐体52の側には、図示されていないセンサと結合されており、それらのセンサにより取得されたセンサデータを評価し、そのセンサデータを調節装置またはモータ制御装置に導く制御装置41が配置されているので、緩衝特性が変更されるかまたは駆動器が始動されるもしくは停止される。
【0026】
上部接続具11に対して遠位側に、内側の、患者に向き合う筐体52の側に、基板120とその中に配置された穴121とを有する下部接続具12が配置されている。基板120および穴121を介して下部接続具12が図示されていない第2の固定装置に固定されるので、股関節として関節装置を使用する際に下部2を患者の大腿に固定することができる。
【0027】
関節装置10を介して、フレーム51が長穴ガイド113内で円弧部分に沿って誘導されているので、回転軸230を中心にフレーム51を旋回させることができる。回転軸230は関節装置10の外にある。好ましくは長穴ガイド113の半径は、回転軸230が股関節内に、好ましくは解剖学上の股関節回転中心点にあるように選択されている。
【0028】
筐体52、従って下部2全体は、回転軸210を中心に旋回可能にフレーム51に配置されている。さらに下部2は、長穴ガイド113により回転軸210に沿って、並進自由度を表す二頭矢印22により示されている横内側に移動可能にフレーム51内に配置されている。回転軸210に沿った、従って内側横方向での移動は末端止め具により、例えば図8に示される弾性緩衝要素60により限定されているので、フレーム51の側面脚内に限定された移動のみが許容されている。側面脚の間の移動の代わりに、滑りピン151の弾性配置により壁112の間にブリッジ511を柔軟に配置することにより、この移動を行うことができる。代わりに下部接続具12は、筐体52の長手方向の伸展に沿って、従って並進自由度を表す二頭矢印25により示されているように下腿の近位・遠位方向に長手方向に移動可能に筐体52に配置され得る。さらにここで末端止め具は、筐体52に対する下腿接続具12の移動を制限することができる。下部接続具12はさらに、近位・遠位方向に、従って筐体52の長手方向の伸展において通っている回転軸240を中心に旋回可能に配置されており、それは下でさらに説明されることになる。従って関節装置10は全体として、回転軸210、回転軸230および回転軸240を中心とした構成部品の互いに対する回転を許容する3つの回転自由度21、23および24を有する。さらに並進自由度22が関節装置10内に存在し、つまりフレーム51の側面脚内での移動により内側横方向に存在する。
【0029】
図3は、同じ機械的構造を有するが前面に配置された制御装置41を有する関節装置10の異なる形態を示す。その制御装置により、関節装置10を内側横方向で図2による異なる形態よりも薄く形成することができる。図3では、フレーム51を上部接続具11と結合させる滑りピン151が回転軸210の高さにあるので回転軸230および210が1点で交差していることがわかり得る。
【0030】
図4図2による関節装置10の側面図を示しており、回転軸230および240の互いに対して直角な方向付けがわかり得る。同様に、回転軸210から離れた上側の連結点45を有するアクチュエータ40がわかり得る。下部2の筐体52内のアクチュエータ40の下側の連結点46は示される実施形態において下部接続具12の回転軸240と一直線上にある。回転自由度21に沿った回転軸240を中心とする旋回により、下側の連結点46に対する上側の連結点45の距離が変化するので、例えば油圧ダンパとしてのアクチュエータは、長手方向におけるピストン・シリンダ間の相対運動を受ける。ダンパの場合、対応する油圧抵抗により相対運動に抵抗する。アクチュエータ40は駆動のために外部からエネルギーを供給され、モータ駆動で互いに近づくようにまたは互いに離れるように2つの連結点45、46を移動させる。
【0031】
図5は、横側に配置された制御装置41と筐体52およびフレーム51に対して内側に配置された上部接続具11とを有する関節装置10の前面図を示す。ブリッジ511は上部接続具11の壁112の間に嵌め込まれており、滑りピン151により保たれている。フレーム51を上部接続具11に対して自由度22に沿って移動させることができる。その代わりに、並進自由度22をもたらすために、筐体52をフレーム51内で回転軸210に沿って内側横方向に移動させることができる。
【0032】
筐体52の内側には、下部接続具12が回転軸240を中心に旋回可能に配置されている。綱形のエラストマー要素として回転軸240に対して平行に配置されている緩衝要素34は一方では末端止め具としての役割をし、他方では回転軸240を中心とする回転自由度24を形成するとともに図示される出発位置への復元を引き起こすために、復元要素としての役割をする。緩衝要素34の幾何学形状、例えばその直径を用いて、末端止め具の出発位置または角度位置が固定され得る。加えてこの自由度に関する弾性挙動は、緩衝要素34の幾何学形状および材料特性により影響を受け得る。
【0033】
図6図5による関節装置の上面図を示している。長穴ガイド113による旋回がそれを中心に可能である回転軸230が、上部接続具11に対して横側に、従って関節装置10の外にあることがわかり得る。回転軸210は回転軸230に垂直にある。
【0034】
図7は、図示されていない固定装置に固定するための穴121を有する下部接続具12を詳細図で示す。基板120内にくり抜き124が経路の形に形成されており、それらのくり抜きの間には中ぐりまたは軸受125が配置されている。中ぐり125内には回転軸240が通っており、その回転軸を中心に下部接続具12が、図示される穴およびねじを介して下部2の筐体52に固定可能な固定板521に対して旋回され得る。固定板521は図5でもわかり得る。
【0035】
関節装置10は少なくとも4つの自由度を有する形態により運動学的に確定されておらず、それにより整形器具のシステムは、利用者に添え付けることによって初めて運動学的に確定される。図示される例では、矢状面に直交する回転軸210は、生理学的な関節、この場合は股関節により自立的に位置決めされる。身体外に関節装置10を位置決めするにもかかわらず、回転軸230は生理学的な回転中心点により前頭面に直交して通っており、それは圧迫およびその圧迫から生じる長手方向の負荷を回避する。自然股関節の解剖学上の回転中心点を正確に定めることは極めて難しい。上述されているような関節装置10により、整形器具を人体にしっかりと添え付ける際に正確な位置決めがもはや必要とされない。なぜなら利用可能な自由度に基づいて生理学的な回転中心点についての自立的な位置決めが行われるからである。
【0036】
関節装置10の構成部品の相互配置を無効にし、再び作成するために、引出可能な滑りピン151により関節装置10を容易に取り付け可能に且つ取り外し可能に形成することができる。実施例において滑りピン151を取り除くことにより上部接続具11を関節装置10の残りの構成部品から容易に分離し、再びそれに固定することができる。それにより骨盤ベルトの添え付けと、例えば大腿副木のまたは下腿副木が接続され且つ足部を有する大腿副木の個別の添え付けとがはるかに容易になる。まさに膝関節および踝関節に広がる整形器具が接続される股関節接続具では、そうでない場合、組立ては極めて難しくなり得る。なぜなら踝関節も膝関節も股関節も整形器具内に整列させてその整形器具を脚部に固定しなければならないからである。その配置を解除し、容易に再び作成し得ることにより整形器具の添え付けははるかに容易になり得る。
【0037】
緩衝要素34により関節装置10はその基準位置に保たれる。受動的弾性特性は緩衝要素34の幾何学形状および材料特性を選択することにより固定され得る。全体的に起伏のない構造高さが得られる。各々の患者の内側横方向における距離の相違と上部1および下部2の機械的な実施形態での距離の相違とを相殺することができるように、下部接続具12は上部接続具11に対して横方向に位置をずらして形成されてもよい。内側横方向での構造高さに起伏がない場合、関節装置10によって所望の中立位置の調節に関する柔軟性が高くなり、捩り剛性が高くなり得る。中立位置および捩り剛性を各々の緩衝要素34の直径、接触長さおよび弾性特性により固定することができる。
【0038】
緩衝要素34の有効長の変更は、構造上、対応する成形および経路124内の移動可能性により容易に実現され得る。それにより回転軸240を中心とする回転可能性および捩り剛性を容易に且つ無段階に調節することができる。
【0039】
股接続具の機能性は、矢状面での並進自由度が遮られていることにより得られる。さらに矢状面に直交する並進自由度は基本的に遮られていないが、末端止め具により限定されている。この追加の自由度により、整形器具を添え付ける際に関節装置10の機能上の回転中心点は解剖学上の股関節回転中心点と整列する。前頭面における回転自由度は受動的に安定している。復元受動要素または緩衝要素34を整合させることにより、各々の利用者に対して剛性を最適に調節することができる。末端止め具134または長穴5111の境界により限定される、矢状面に直交する移動可能性によって、関節装置10により予め与えられた、長穴ガイド113の半径から得られる半径から、生理学上の回転中心点を外すことができる。これにより整形外科技師による容易な整合が可能になる。滑りピン151により上部接続具を関節装置10の残りの部分から分離することができる。その滑りピンは安定化ナット152によりブリッジ511内に誘導されており、その安定化ナットには、内側横方向への移動を食い止める弾性末端止め要素134が突き当たる。
【0040】
脚部の回転は緩衝要素34によりその基準位置に保たれ、その構造により所望の捩り剛性に関して柔軟性が高い。関節装置はその構造において、極めて起伏のない嵩張らない構造で回転が可能になり、整形器具の構造全体の内側横方向の膨らみに好ましい影響を与えるように作製されている。
【0041】
図8には、円弧形の長穴ガイド113がその内部に形成された上部接続具11の断面表示が示されており、その円弧形の長穴にはブリッジ511が滑りピン151を介して誘導されている。フレーム51および部分的にのみ示されている筐体52はブリッジ511に固定されており、上部接続具11と結合されている。ブリッジ511内には、二頭矢印22に従う内側横方向の運動がそれを介して可能になる、長穴5111が形成されている。長穴5111内には、一方では所望の零位置における整列を可能にし、他方では内側横方向のまたは並進自由度22に関する弾性移動可能性を可能にするために、末端止め具または弾性緩衝要素60が配置されてもよい。
【0042】
図9には図8の異なる形態が示されている。滑りピン151には、滑りピン151と機能的に結合されている弾性要素61が割り当てられている。それにより滑りピン151もブリッジ511も弾性的に長穴ガイド113内の零位置に保たれる。さらに長穴ガイド113内の移動が可能である。弾性要素61は、長穴ガイド113の各々の末端に到達する前の長穴ガイド113内の移動運動の限界も示し得る。弾性要素61の代わりに、止め具の限界と旋回角度の調節を確保するために、好ましくは長さの調節可能な剛性ベルトを滑りピン151に割り当てることもできる。

以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 上部(1、1’)と前記上部に関節状に配置された下部(2、2’)とを有し、前記上部(1、1’)を患者に固定するための第1の固定装置(3、3’)と前記下部(2、2’)を四肢に固定するための第2の固定装置(4、4’)とを有する整形器具の関節装置であり、前記関節装置(10、10’)が前記上部(1、1’)を前記下部(2、2’)と関節状に結合させるとともに上部接続具(11)と下部接続具(12)とを有し、前記接続具を介して前記上部(1、1’)および前記下部(2、2’)が前記固定装置(3、3’、4、4’)に固定され得る、関節装置であって、前記関節装置(10、10’)が少なくとも4つの自由度(21、22、23、24、25)を有することを特徴とする、関節装置。
[2] 前記関節装置が少なくとも3つの回転自由度(21、23、24)を有することを特徴とする、[1]に記載の関節装置。
[3] 前記関節装置が少なくとも1つの並進自由度(22、25)を有することを特徴とする、[1]または[2]に記載の関節装置。
[4] 少なくとも2つの回転自由度(21、23;21、24)の回転軸(210、230;210、240)が互いに交差していることを特徴とする、[1]から[3]の1項に記載の関節装置。
[5] 少なくとも1つの回転自由度(23)の旋回軸(230)が前記関節装置(10、10’)の外にあることを特徴とする、[1]から[4]の1項に記載の関節装置。
[6] 少なくとも1つの自由度(21、22、23、24、25)が末端止め具(34、134、60、61)を介して限定されていることを特徴とする、[1]から[5]の1項に記載の関節装置。
[7] 少なくとも1つの自由度(24)に少なくとも1つの弾性緩衝要素(34)が割り当てられていることを特徴とする、[1]から[6]の1項に記載の関節装置。
[8] 回転自由度(24)の前記緩衝要素(34)が、回転軸に対して平行に配置されたエラストマー要素により形成されていることを特徴とする、[7]に記載の関節装置。
[9] 前記緩衝要素(34)が弾性引張要素を用いて形成されていることを特徴とする、[7]に記載の関節装置。
[10] 前記関節装置が、少なくとも1つの自由度に関する前記少なくとも1つの緩衝要素(34)により出発位置に保たれることを特徴とする、[7]に記載の関節装置。
[11] 少なくとも1つの回転自由度(21)にアクチュエータ(40)が割り当てられていることを特徴とする、[1]から[10]の1項に記載の関節装置。
[12] 前記アクチュエータ(40)が保持具(50)内にまたは前記保持具に配置されており、前記アクチュエータは前記上部(1、1’)と前記下部(2、2’)との間に配置されており、前記保持具は少なくとも2つの自由度(21、22、24、25)を有することを特徴とする、[11]に記載の関節装置。
[13] 前記2つの自由度(21、24)が回転自由度であり、回転軸(210、240)が互いに垂直であることを特徴とする、[12]に記載の関節装置。
[14] 少なくとも1つの回転自由度(23)が長穴ガイド(113)を介して形成されているおよび/またはバンド(61)を介して限定されていることを特徴とする、[1]から[13]の1項に記載の関節装置。
[15] [1]から[14]の1項に記載の関節装置(10、10’)を介して互いに対して結合されている上部(1、1’)と下部(2、2’)とを備えた整形器具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9