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特許7203835ハロアルキル及びハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートのポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】ハロアルキル及びハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートのポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/26 20060101AFI20230105BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
C08F20/26
C08F20/10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020517200
(86)(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 US2018052572
(87)【国際公開番号】W WO2019067408
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】62/563,753
(32)【優先日】2017-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・ビン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ・アラン・ポルズ
(72)【発明者】
【氏名】ルーシー・クラークソン
(72)【発明者】
【氏名】チン-ハン・ワン
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-097117(JP,A)
【文献】米国特許第05045397(US,A)
【文献】米国特許第04080507(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0007889(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0178813(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/26
C08F 20/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合形態で、一般構造(I)に対応する少なくとも1種のハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートを含むポリマー:
12HC-CX34-O-R-O-C(=O)-CR1=CH2 (I)
式中、Rは有機部分であり、(1)X 1 が塩素でX 2 、X 3 及びX 4 がフッ素であり、又は(2)X 3 が塩素でX 1 、X 2 及びX 4 がフッ素であり、R1は水素又はメチルである。
【請求項2】
重合形態で、前記ポリマーは、一般構造(I)に対応する少なくとも1種のハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートを含み、Rがエチレン若しくはプロピレンセグメント又はポリ(オキシエチレン若しくはポリ(オキシプロピレン)セグメントである、請求項に記載のポリマー。
【請求項3】
重合形態で、前記ポリマーは、一般構造(I)に対応する少なくとも1種のハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートを含み、Rがエチレンセグメント又はポリ(オキシエチレン)セグメントである、請求項に記載のポリマー。
【請求項4】
重合形態で、前記ポリマーは、一般構造(I)に対応する少なくとも1種のハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートを含み、Rが-[CH2CH2O]n-CH2CH2-であり、nが0又は1~10の整数である、請求項に記載のポリマー。
【請求項5】
部分X12HC-CX34-O-R-O-が900ダルトン以下の分子量を有する、請求項に記載のポリマー。
【請求項6】
Rが非ハロゲン化有機部分である、請求項に記載のポリマー。
【請求項7】
Rが脂肪族有機部分であり、任意に1つ以上の酸素原子を含む、請求項に記載のポリマー。
【請求項8】
Rが飽和脂肪族有機部分であり、任意に1つ以上のエーテル酸素原子を含む、請求項に記載のポリマー。
【請求項9】
前記ポリマーは、(1)前記少なくとも1種のハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートと、(2)前記ハロアルキルエーテル(メタ)アクリレート以外の、少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化化合物とのコポリマーである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項10】
以下を含む硬化性組成物。
(1)一般構造(I)に対応するハロアルキルエーテル(メタ)アクリレート:
1 2 HC-CX 3 4 -O-R-O-C(=O)-CR 1 =CH 2 (I)
式中、Rは有機部分であり、(1)X 1 が塩素でX 2 、X 3 及びX 4 がフッ素であり、又は(2)X 3 が塩素でX 1 、X 2 及びX 4 がフッ素である、及び
(2)以下の少なくとも一つ:
i)前記ハロアルキルエーテル(メタ)アクリレート以外の、(メタ)アクリレート官能化化合物、又は
ii)硬化剤。
【請求項11】
さらに、前記ハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートではない少なくとも1種のコモノマーを含む、請求項10に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
一般構造(I)に対応する少なくとも1種のハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートからなる1種以上のモノマーを重合することを含む、
ポリマーの製造方法
1 2 HC-CX 3 4 -O-R-O-C(=O)-CR 1 =CH 2 (I)
式中、Rは有機部分であり、(1)X 1 が塩素でX 2 、X 3 及びX 4 がフッ素であり、又は(2)X 3 が塩素でX 1 、X 2 及びX 4 がフッ素であり、R 1 は水素又はメチルである
【請求項13】
接着剤、コーティング、塗料、シーラント、繊維、織物、成形品、フィルム、シート、ラミネート、及び複合材からなる群から選択される用途における、請求項1に記載のポリマーの使用。
【請求項14】
請求項1に記載の少なくとも1種のポリマーを含む製品。
【請求項15】
前記ハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートは、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシエチルメタクリレートである、請求項に記載のポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートのポリマー(ハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートと他の(メタ)アクリレート官能化化合物とのコポリマーを含む)、当該ポリマーの製造方法、当該ポリマーの調製に有用な硬化性組成物、及び当該ポリマーを含む製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化ポリマー及びコポリマーは、非ハロゲン化の類似ポリマー及びコポリマーと比較して、それらの一般的に優れた耐候性、耐薬品性、及び電気化学的安定性により、長い間商業的に関心が持たれてきた。
【0003】
その一例は、フルオロポリマー系のコーティングとフィルムであり、その優れた特性のために広く使用されている。多くの場合、これらのコーティングとフィルムは、PVDFやPCTFEなどのフルオロオレフィンホモポリマーではなく、2つ以上のモノマー(少なくとも1つはフッ素化されている)を含むコポリマーに基づくものである。このタイプの実例となるコポリマーには、米国特許第5925705号及びPCT出願公開WO9810000、米国特許第5、093、427号及びPCT出願公開WO98/38242記載されているようなVF2のコポリマー、ETFEを含むTFEのコポリマー、及びCTFE又はTFEとビニルエーテル、ビニルエステル、又はアリルエーテル又はエステルとのコポリマーが含まれる。コーティング用途では、これらのコポリマーをさらに非フッ素化共樹脂とブレンドすることができる。例えば、VF2ホモポリマー又はコポリマーと、混和性アクリル樹脂とのブレンドをベースにしたコーティングとフィルムは、卓越した屋外耐候性のほか、耐薬品性や成形性などの特性でよく知られている。
【0004】
コーティングに使用される他のクラスのハロゲン化コポリマーは、CTFE又はTFEと非ハロゲン化ビニルエーテルの交互コポリマーである、いわゆるFEVEコポリマー、及びペンダント側鎖にある程度のフッ素化を含む(メタ)アクリレートモノマーのコポリマーである、いわゆるフルオロアクリルである。FEVEコポリマーは、非常に優れた耐候性、高い光沢、及びさまざまな架橋剤との使いやすさで知られている。フルオロアクリルも一般的に架橋されでき、落書き防止性と耐汚染性の特性でよく知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当技術分野で知られているハロゲン化ポリマー及びコポリマーにもかかわらず、異なる又は改善された特徴及び特性を有する新しいハロゲン化ポリマー及びコポリマーを開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、重合形態で、エーテル結合及び有機スペーサー部分を介して(メタ)アクリレート官能基に結合したハロアルキル又はハロアルケニル部分を有する少なくとも1種のハロアルキルエーテル(メタ)アクリレート、又はエーテル結合及び有機スペーサー部分を介して(メタ)アクリレート官能基に結合したハロアルキル又はハロアルケニル部分を有する少なくとも1種のハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートを含むポリマーを提供する。本発明のさらなる実施形態では、(メタ)アクリレート官能基の代わりにアリル官能基を使用することができる。
【0007】
ハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートは、例えば、一般構造(I)に対応し得る:
12HC-CX34-O-R-O-C(=O)-CR1=CH2 (I)
式中、Rは有機部分であり、X1、X2、X3及びX4は個別に、水素、ハロゲン、又はハロアルキルから選択される。ただし、X1、X2、X3又はX4の少なくとも1つがハロゲン又はハロアルキル基であり、R1は水素又はメチルである。
【0008】
ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートは、例えば、一般構造(IA)に対応し得る:
12C=CX3-O-R-O-C(=O)-CR1=CH2 (IA)
式中、Rは有機部分であり、X1、X2、及びX3は個別に、水素、ハロゲン、又はハロアルキルから選択される。ただし、X1、X2、又はX3の少なくとも1つがハロゲン又はハロアルキル基であり、R1は水素又はメチルである。
【0009】
ハロアルキルエーテル(メタ)アクリレート及び/又はハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートは、1つ以上の他のタイプのモノマーと共重合されてもよい。他のタイプのモノマーには、特に、ハロアルキルエーテル(メタ)アクリレート及びハロアルケニルエーテルメタクリレート以外の、(メタ)アクリレート官能化化合物などのエチレン性不飽和コモノマーが含まれる。本発明のポリマーは、以下を含む硬化性組成物の重合(硬化)により調製され得る。(1)以下の少なくとも一つ:i)エーテル結合及び有機スペーサー部分を介して(メタ)アクリレート官能基に結合したハロアルキル部分を有する少なくとも1種のハロアルキルエーテル(メタ)アクリレート、又はii)エーテル結合及び有機スペーサー部分を介して(メタ)アクリレート官能基に結合したハロアルケニル部分を有する少なくとも1種のハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート、及び、任意に、(2)以下の少なくとも一つ:iii)エーテル結合及び有機スペーサー部分を介して(メタ)アクリレート官能基に結合したハロアルキル部分を有する少なくとも1種のハロアルキルエーテル(メタ)アクリレート又はエーテル結合及び有機スペーサー部分を介して(メタ)アクリレート官能基に結合したハロアルケニル部分を有する少なくとも1種のハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート以外の、(メタ)アクリレート官能化化合物、又はiv)硬化剤。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリマーは、重合形態で、少なくとも1種のハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートを含み、任意に、当該ハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートと共重合することができる少なくとも1種のコモノマーを含み、ここで、特定のハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート及び任意のコモノマーは、そのようなモノマーの重合によって得られるポリマーに望ましい又は改善された特性を付与するように選択することができる。したがって、本発明の目的は、好ましくはコーティング、フィルム、繊維(織物)及びシート用途のための、改善された硬化性組成物及びポリマー組成物を提供することである。本発明の別の目的は、改善された機械的及び物理的特性を有するポリマー組成物、ならびにそのようなポリマー組成物の製造に有用な硬化性(重合性)組成物を提供することである。本発明のさらなる目的は、摩砕、引っかき傷、摩耗、シミ、汚れ、及び腐食、ならびに化学物質などによる攻撃に高い耐性があるポリマー組成物、ならびに硬化(重合)することでそのようなポリマー組成物をもたらすができる硬化性組成物を提供することである。さらなるに別の目的は、汚れ、グリース、指紋などを落とすことができる改良されたポリマー組成物を提供することである。本発明のさらなる目的は、改善されたUV耐性又は耐候性を有するポリマー組成物を提供することである。本発明の他の目的は、改善された特性を有するポリマー組成物を調製するための方法を提供すること、及びそのようなポリマー組成物を作製するために有用な硬化性組成物を提供することである。
【0011】
ハロアルキルエーテル(メタ)アクリレート及びハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート
本発明において有用なハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートは、エーテル結合及び有機スペーサー部分を介して(その順序で)(メタ)アクリレート官能基に結合されたハロアルキル部分を含む有機化合物を特徴とし得る。本発明において有用なハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートは、エーテル結合及び有機スペーサー部分を介して(その順序で)(メタ)アクリレート官能基に結合されたハロアルケニル部分を含む有機化合物を特徴とし得る。ハロアルキルエーテル(メタ)アクリレート及びハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートは、本明細書では「ハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート」と総称される場合がある。本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート(-C(=O)CH=CH2)及びメタクリレート(-C(=O)C(CH3)=CH2)官能基を指す。本明細書で使用される場合、「ハロアルキル」という用語は、1つ又は複数のハロゲン原子で置換されているアルキル基を指し、複数のハロゲン原子が存在する場合、これらは互いに同じでも異なっていてもよい。「ハロアルケニル」という用語は、1つ又は複数のハロゲン原子で置換されているアルケニル基を指し、複数のハロゲン原子が存在する場合、これらは互いに同じでも異なっていてもよい。ハロアルキル又はハロアルケニル基が2つ以上の炭素原子を含む場合、ハロゲンは、炭素原子のいずれか又はすべてにおいて置換していてもよい。ハロアルキル基又はハロアルケニル基中の個々の炭素原子は、1つ、2つ、又は3つのハロゲン原子で置換されていてもよく、それらは互いに同じでも異なっていてもよい。ハロゲンに加えて、ハロアルキル又はハロアルケニル基内の個々の炭素原子は、1つ又は複数の水素原子で置換されていてもよい。ハロアルキル又はハロアルケニル基が2つ以上の炭素原子を含む場合、少なくとも1つの炭素原子がハロゲン化されていれば、1つ以上の炭素原子はハロゲン化されていなくてもよい。本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、アルカンの式から水素を1つ落とすことによって誘導できるパラフィン系炭化水素基を意味し、例えばエチル(CH3CH2-)である。本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、アルケンの式から水素を1つ落とすことによって誘導できる、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する不飽和炭化水素基を意味し、例えばプロペニル(CH3CH=CH-又はCH2=C(CH3)-)である。本明細書で使用されるハロゲンという用語は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)を意味する。
【0012】
特定の実施形態では、ハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートは、一般構造(I)に対応する:
12HC-CX34-O-R-O-C(=O)-CR1=CH2 (I)
式中、Rは有機部分であり、X1、X2、X3及びX4は個別に、水素、ハロゲン、又はハロアルキルから選択される。ただし、X1、X2、X3又はX4の少なくとも1つがハロゲン又はハロアルキル基であり、R1は水素又はメチルである。本発明の特定の実施形態によれば、X1、X2、X3又はX4の少なくとも2つが、ハロゲン及びハロアルキル基からなる群から選択される。特定の実施形態では、X1、X2、X3又はX4の少なくとも2つが、フッ素及びフルオロアルキル基からなる群から選択される。別の実施形態では、X1、X2、X3又はX4の少なくとも1つが、フッ素又はフルオロアルキル基である。本発明の別の実施形態では、X1、X2、X3及びX4はそれぞれハロゲン又はハロアルキル基である。X1、X2、X3又はX4の1つは、C1~C8のハロアルキル基であってもよく、特にC1~C8のペルフルオロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル)などのC1~C8フルオロアルキル基であってもよい。
【0013】
他の実施形態では、ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートは、一般構造(IA)に対応する:
12C=CX3-O-R-O-C(=O)-CR1=CH2 (IA)
式中、Rは有機部分であり、X1、X2、及びX3は個別に、水素、ハロゲン、又はハロアルキルから選択される。ただし、X1、X2、又はX3の少なくとも1つがハロゲン又はハロアルキル基であり、R1は水素又はメチルである。本発明の特定の実施形態によれば、X1、X2又はX3の少なくとも2つが、ハロゲン及びハロアルキル基からなる群から選択される。特定の実施形態では、X1、X2又はX3の少なくとも2つが、フッ素及びフルオロアルキル基からなる群から選択される。別の実施形態では、X1、X2又はX3の少なくとも1つが、フッ素又はフルオロアルキル基である。本発明の別の実施形態では、X1、X2及びX3はそれぞれハロゲン又はハロアルキル基である。X1、X2又はX3の1つは、C1~C8のハロアルキル基であってもよく、特にC1~C8のペルフルオロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル)などのC1~C8フルオロアルキル基であってもよい。
【0014】
適切なハロアルキルエーテル部分の例示的な例には、以下が含まれるが、これらに限定されない。
CH3-CF2-O-
CH3-CFH-O-
CH2F-CF2-O-
CF3CF(CH3)-O-
CF2H-CF2-O-
CH2Cl-CF2-O-
CH3C(CF3)Cl-O-
CH2Cl-CH(CF3)-O-
CFH2-CF(CF3)-O-
CF3CH2-CF2-O-
CF3CFH-CF2-O-
CH3-CF(CH2CF3)-O-
CF3-CH2-CF(CH3)-O-
CF3-CH2-CF(CF3)-O-
CF3-CH2-CCl(CF3)-O-
CH3CF(CH2CF2H)-O-
CH2Cl-CF(CH2CF2H)-O-
CF2H-CH2-CF(CH2Cl)-O-
CH3CHCl-O-
CH2Cl-CHCl-O-
CH3CCl2-O-
CFClH-CF2-O-
CH3-CCl(CF3)-O-
CClH2-CCl(CF3)-O-
CF3-CH2-CCl2-O-
CCl2H-CF(CF3)-O-
CFClH-CF(CF3)-O-
CClH2-CF(CF3)-O-
CFH2-CCl(CF3)-O-
CF3-CHCl-CF2-O-
CF3-CHCl-CFCl-O-
【0015】
適切なハロアルケニルエーテル部分の例示的な例には、限定的ではないが、上記のハロアルキルエーテル部分に類似する部分が含まれる。ただし、エーテル酸素に結合した炭素と隣接する炭素原子の間に炭素-炭素二重結合を形成するため、ハロゲン化水素は除去される。
【0016】
本発明の特定の実施形態では、ポリマーは、重合形態で、一般構造(I)に対応する少なくとも1種のハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートを含み、(1)X1が塩素でX2、X3及びX4がフッ素であり、又は(2)X3が塩素でX1、X2及びX4がフッ素である。
【0017】
本発明の特定の側面では、Rはアルキレンセグメント又はポリ(オキシアルキレン)セグメントであり得る。本明細書で使用される場合、「アルキレン」という用語は、アルカンの式から水素を2つ落とすことにより誘導できるパラフィン系炭化水素基を意味し、例えばエチレン(-CH2CH2-)、プロピレン(-CH2CH(CH3)-である。「オキシアルキレン」という用語は、例えば(-CH2CH2O-)のようなオキシエチレン、例えば(-CH2CH(CH3)O-)のようなオキシプロピレンのように、エーテル酸素に結合したアルキレン基を意味する。したがって、本発明の様々な態様において、ポリマーは、重合形態で、一般構造(I)又は(IA)に対応する少なくとも1種のハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートを含み、ここで、Rは、エチレンセグメント又はポリ(オキシエチレン)セグメントである。例えば、Rは、-[CH2CH2O]n-CH2CH2-であってもよく、ここで、nは0又は1~10又はそれ以上の整数である。Rは、酸素含有有機部分などの置換又はヘテロ原子含有有機部分であってもよいが、特定の実施形態では、Rはハロゲン化されていない(すなわち、いかなるハロゲン原子も含まない)。Rは、例えば、脂肪族(直鎖又は分岐脂肪族又は脂環式を含む)、芳香族であり得、又は脂肪族及び芳香族の両方の構造単位を含み得るが、特定の実施形態では脂肪族であり、芳香族構造単位を含まない。特に、Rは、飽和脂肪族有機部分であり得、任意にエーテル酸素原子(エーテル結合を形成する酸素原子)などの1つ以上の酸素原子を含む。
【0018】
特定の実施形態では、部分X12HC-CX34-O-R-O-又はX12C=CX3-O-R-O-は900ダルトン以下、800ダルトン以下、又は700ダルトン以下の分子量を有することができる。
【0019】
2つ以上の異なるハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートの混合物は、本発明に係るポリマーを調製するために使用され得る。
【0020】
本発明の様々な実施形態において、ポリマーを調製するために使用されるハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートは、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも99、少なくとも99.9又はさらに100%の純度を有し得る(重量パーセントで計算される)。
【0021】
ハロアルキルエーテル(メタ)アクリレート及びハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートの製造方法
任意の適切な方法を使用して、本発明によるポリマーを提供するための重合に適したハロアルキル/アルケニルエーテル(メタ)アクリレートを合成及び精製することができるが、同時に代理人整理番号IR4328の下で提出されている米国仮出願に記載される特定の手順が利用され得る。上記の仮出願の開示は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
例えば、適切なハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートは、以下の方法のいずれかによって調製され得る。
【0023】
方法A:ヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートと、炭素-炭素二重結合を含むハロゲン化オレフィン(炭素-炭素二重結合の少なくとも1つの炭素は、少なくとも1種のハロゲン又はハロアルキル基(特に、ペルフルオロアルキル基などのフルオロアルキル基、例えばトリフルオロメチル)で置換されるもの)との反応により、ハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートを作製する。
【0024】
方法B:ポリオール(例えば、ジオール)とハロゲン化オレフィンの反応において、ポリオールのすべての水酸基よりも少ない水酸基で(例えば、ジオールの2つの水酸基の1つだけで)ハロゲン化オレフィンの反応に有利な条件の下、1つ以上の未反応ヒドロキシル基を含有するポリオールのハロアルキルエーテル又はハロアルケニルエーテルを生成する。例えば、ポリオールがジオールである場合、ジオールのモノハロアルキルエーテル又はモノアルケニルエーテルが形成され、その残りのヒドロキシル基が反応して(メタ)アクリレート基を形成する。
【0025】
方法C:ハロゲン化されたオレフィンとポリオール(例えば、ジオール)との反応において、ポリオールのすべての水酸基よりも少ない水酸基がブロック又はマスクされ(本明細書では、「部分的にマスクされたポリオール」又は「部分的にマスクされたジオール」と呼ばれることがあり、ここでポリオールはジオールである)、部分的にマスクされたポリオールの1つ以上の遊離ヒドロキシル基がハロアルキルエーテル又はハロアルケニルエーテル基に変換されている中間体を生成する。この中間体のブロックされた/マスクされたヒドロキシル基は、脱保護され、反応して(メタ)アクリレート基を形成する。
【0026】
ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートではなく、ハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートを作製する場合において、所望のハロアルキルエーテル官能基ではなくアルケニルエーテル基の生成をもたらす反応生成物によって発現される脱離量を減らすため、ハロゲン化オレフィンが関与する反応及びさらなる処理条件を選択する必要がある。逆に、ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート生成物が望ましい場合、脱離を促進するために、ハロゲン化オレフィンが関与する反応中、より塩基性の反応条件を使用することができる。
【0027】
ハロゲン化オレフィンは、1、2、3、4、又はそれ以上のハロゲン原子(F、Cl、Br、及び/又はI)、特に1、2、3、4、又はそれ以上のフッ素原子を含んでもよい。ハロゲン化オレフィンは、炭素-炭素二重結合の1つの炭素上で置換されたフッ素化アルキル基を有し得る。例えば、ハロゲン化オレフィンは、炭素-炭素二重結合の1つの炭素上で置換されたペルフルオロ化アルキル基を有し得る。
【0028】
特定の実施形態によれば、ハロゲン化オレフィン出発材料は、式(1)による構造を有し得る:
CX12=CX34 (1)
式中、X1、X2、X3及びX4は個別に、水素(H)、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、及びハロゲン化と非ハロゲン化C1~C20アルキル基からなる群から選択される。ただし、X1、X2、X3及びX4の1つ以上が塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)及びハロゲン化アルキル基からなる群から選択される。
【0029】
例えば、ハロゲン化オレフィンは、以下からなる群から選択され得る:CClF=CH2、 CH2=CF2、CFH=CH2、CF2=CHF、CF3CF=CH2、CF2=CF2、CH2=CHCl、CHCl=CHCl、CH2=CCl2、CF2=CFCl、CF2=CHCl、CF3CCl=CH2、CF3CCl=CClH、CF3CH=CCl2、CF3CF=CCl2、CF3CF=CClH、CF3CCl=CFH、CF3CCl=CF2、CF3CCl=CFCl、CF3CF=CFCl、CF3CH=CHCl、CF3CF=CFH、CF3CH=CF2、CF3CF=CF2、CF3CH2CF=CH2、CF3CH=CFCH3、CF3CF=CHCF3、CF3CCl=CHCF3、CF2HCH2CF=CH2、CF2HCH2CF=CHCl及びCF2HCH=CFCH2Cl。
【0030】
その他の適切なフッ素化オレフィンは例えば、シクロフルオロブテン、シクロクロロフルオロブテン、シクロフルオロペンテン、シクロクロロフルオロペンテン、シクロフルオロハキセン、そして1-クロロ-2,3,3-トリフルオロシクロブテン、1,2-ジクロロテトラフルオロシクロブテン、ヘキサフルオロシクロブテン、1H-ヘプタフルオロシクロペンテン、1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロシクロペンテン、1-クロロヘプタフルオロシクロペンテン、オクタフルオロシクロペンテン、1、2-ジクロロヘキサフルオロシクロペンテン、1,2,3-トリクロロペンタフルオロシクロペンテン、ペルフルオロシクロヘキセン、1,2-ジクロロオクタフルオロシクロヘキセン、1H-ペルフルオロシクロヘキセンなどのシクロクロロフルオロハキセンである。
【0031】
方法Aで使用されるヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートは、好ましくは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート又はアルコキシル化ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであり、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシル化ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はエトキシル化ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートである。
【0032】
方法Bで使用されるポリオールは、好ましくは、脂肪族ジオール又はポリアルキレングリコールである適切な脂肪族ジオールには、C2~C22脂肪族ジオール(すなわち、分子あたり2~22の炭素原子と2つのヒドロキシル基を含む直鎖、分岐鎖及び環状脂肪族化合物であって、ここで、ヒドロキシル基は、好ましくは第一級又は第二級であり、炭化水素鎖の末端位置を含む任意の炭素原子で置換されていてもよい。)を含む。適切なポリアルキレングリコールは、アルキレンオキシド(例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブタンオキシド、テトラヒドロフラン等、及びこれらの組み合わせ)のオリゴマー及びポリマーと脂肪族ジオールのアルコキシル化生成物を含む。
【0033】
方法Cで使用される部分的にマスクされたポリオールは、好ましくは、部分的にマスクされた脂肪族ジオール又は部分的にマスクされたポリアルキレングリコールである。適切な脂肪族ジオール及びポリアルキレングリコールは、上記の脂肪族ジオール及びポリアルキレングリコールのいずれかを含む。有機化学の分野で知られている任意のタイプのヒドロキシルマスキング基を使用して、ジオールの2つのヒドロキシル基の1つをブロックし、部分的にマスクされたジオールを提供することができる。しかしながら、典型的には、マスクされたジオールをハロゲン化オレフィンと反応させるために使用される条件下で安定したままである(すなわち、顕著の程度まで除去されない)ブロッキング又はマスキング基を使用することが望ましい。例えば、マスクされたジオール/ハロゲン化オレフィン反応中に塩基性触媒が使用される場合、ブロッキング/マスキング基は、そのような塩基性条件下でのデブロッキング又はデマスキングに対して耐性を有する必要がある。適切なブロッキング/マスキング基の例示的な例としては、シリルエーテル基、アセタール基、ケタール基、ベンジル基などが挙げられるが、これらに限定されない。ヒドロキシル官能基に適した保護基の他の例としては、アセチル(Ac)、ベンゾイル(Bz)、ベータ-メトキシエトキシメチルエーテル(MEM)、ジメトキシトリチル(DMT)、メトキシメチルエーテル(MOM)、メトキシトリチル(MMT)、p-メトキシベンジルエーテル(PMB)、メチルチオメチルエーテル、ピバロイル(Piv)、テトラヒドロピラニル(THP)、テトラヒドロフリル(THF)、トリチル(トリフェニルメチル、Tr)、シリルエーテル、メチルエーテル、t-ブチルエーテル及びエトキシエチルエーテル(EE)が挙げられるが、これらに限定されない。部分的にマスクされたジオールがハロゲン化オレフィンと反応して、ハロアルキルエーテル又はハロアルケニル基とマスクされたヒドロキシル基を含む中間体を生成すると、マスクされたヒドロキシル基は、有機化学の分野で知られている適切な手順のいずれかを使用して脱保護されることができ、得られた遊離ヒドロキシル基は、(メタ)アクリレート官能基(例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリロイルハライド又は(メタ)アクリル酸のC1~C4アルキルエステル)を導入することができる反応物でエステル化され、所望のハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートを生成する。
【0034】
ハロゲン化オレフィンと、ヒドロキシル官能化(メタ)アクリレート、ジオール又は部分的にマスクされたジオールとの反応は、例えば炭酸のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属塩などの無機塩基(例えば、炭酸ナトリウム)の存在下で、塩基性条件下で行うことができる。このような反応は、液体媒体、例えば、極性、非プロトン性有機溶媒などの1つ以上の有機溶媒からなる液体媒体中で実施することができる。反応中に相間移動触媒が存在してもよい。
【0035】
ヒドロキシル官能化(メタ)アクリレート(又はポリオール又は部分的にマスクされたポリオール)及びハロゲン化オレフィンは、約0.5時間~約24時間で、約25℃~約200℃(例えば、約25℃~約120℃)の温度で反応させることができる。ヒドロキシル官能化(メタ)アクリレート(又はポリオール又は部分的にマスクされたポリオール)とハロゲン化オレフィンは、化学量論比で、x=ヒドロキシル官能化(メタ)アクリレート(又はポリオール又は部分的にマスクされたポリオール)の分子あたりの活性水素の数とする場合、(モルヒドロキシル官能化(メタ)アクリレート、ポリオール又は部分的にマスクされたポリオールのモル数)/x:ハロゲン化オレフィンのモル数が、約1:8~約8:1である。方法Bの場合、ハロゲン化オレフィンに対して化学量論的に過剰のポリオールを使用して、すべてより少ないヒドロキシル基がハロゲン化オレフィンと反応した反応生成物の生成を促進することが一般に好ましい。そのような反応生成物の作製において、例えば、少なくとも1つの一級ヒドロキシル基及び少なくとも1つの二級ヒドロキシル基を含有するポリオールを使用し、これにより一級ヒドロキシル基がハロゲン化オレフィンと優先的に反応させることも好ましい。
【0036】
方法B及びCの場合、目的の(メタ)アクリレート官能基は、エステル化反応において、遊離ヒドロキシル基を、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ハライド、(メタ)アクリル酸無水物又は短鎖(C1~C4)アルキル(メタ)アクリレートなどの適切な試薬と反応させることで導入することができる。
【0037】
前述のように、ハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートは、反応物としてハロゲン化オレフィン(例えば、フッ素化オレフィン)を使用して調製することができる。本明細書で使用される場合、「ハロゲン化オレフィン」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合及び少なくとも1つのハロゲン原子(Cl、F、Br、I)を含む有機化合物を指す。本明細書で使用される場合、「フッ素化オレフィン」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合及び少なくとも1つのフッ素原子(及び任意選択でフッ素以外の1つ又は複数のハロゲン原子)を含む有機化合物を指す。
【0038】
ハロゲン化オレフィンは、1、2、3、又はそれ以上の臭素、塩素、フッ素又はヨウ素原子などのハロゲン原子又はこれらの組み合わせ(例えば、少なくとも1つのフッ素原子及び少なくとも1つの塩素原子)を含み得る。特定の実施形態では、ハロゲン化オレフィンは、ハロゲン化オレフィンに存在する炭素-炭素二重結合に関与する炭素原子の少なくとも1つにおいて置換された少なくとも1つのハロゲン原子を含む。適切なフッ素化オレフィンには、1、2、3又はそれ以上のフッ素(F)原子を含むオレフィンが含まれる。フッ素原子は、炭素-炭素二重結合に関与する炭素原子の一方又は両方において置換されていてもよく、及び/又は炭素-炭素二重結合に関与する炭素原子の一方又は両方に結合しているアルキル基などの部分に置換基として存在していてもよい。例えば、フッ素化オレフィンは、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フルオロエチル、ジフルオロエチル、トリフルオロエチル、テトラフルオロエチル、ペルフルオロエチル、フルオロプロピル、ジフルオロプロピル、トリフルオロプロピル、テトラフルオロプロピル、ペンタフルオロプロピル、ヘキサフルオロプロピル、ペルフルオロプロピルなどのフルオロアルキル(例えば、ペルフルオロアルキル)基、及びこれらの類似体(フッ素原子の一部及び/又は水素原子の1つ以上が他のハロゲン原子(例えば、Cl)で置き換えられたもの)を1つ以上含み得る。フッ素化オレフィンは、フッ素以外の1つ以上のハロゲン原子、特に1つ以上の塩素(Cl)、ヨウ素(I)及び/又は臭素(Br)原子を含み得る。本発明の特定の実施形態において、ハロゲン化オレフィン又はフッ素化オレフィンは、炭素-炭素二重結合に関与する炭素原子において置換された少なくとも1つの塩素原子を含み得る。本発明のさらなる実施形態において、ハロゲン化オレフィン又はフッ素化オレフィンは、炭素-炭素二重結合に関与する炭素原子において置換された少なくとも1つの水素原子を含み得る。例えば、フルオロオレフィン、ヒドロフルオロオレフィン、クロロオレフィン、ヒドロクロロオレフィン、クロロフルオロオレフィン、及びヒドロクロロフルオロオレフィンはすべて、本発明のハロゲン化オレフィン反応物として使用することができる。適切なタイプのフッ素化オレフィンには、フルオロエチレン、クロロフルオロエチレン、フルオロプロペン、クロロフルオロプロペン、フルオロブテン、クロロフルオロブテン、フルオロペンテン、クロロフルオロペンテン、フルオロヘキセン、クロロフルオロヘキセンなどが含まれる。本発明の様々な実施形態では、ハロゲン化オレフィンは、2、3、4、5、6又はそれ以上の炭素原子、例えば、2~20炭素原子、2~8炭素原子、2~6炭素原子又は2~4炭素原子を含む。
【0039】
特定の態様によれば、ハロゲン化オレフィンは、式(1)による構造を有し得る:
CX12=CX34 (1)
式中、X1、X2、X3及びX4は個別に、水素(H)、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、及びハロゲン化と非ハロゲン化C1~C20アルキル基からなる群から選択される。ただし、X1、X2、X3及びX4の1つ以上が塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)及びハロゲン化アルキル基(例えば、トリフルオロメチルなどのフッ素化アルキル基)からなる群から選択される。
【0040】
ハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートの調製に使用するのに適したハロゲン化オレフィンの具体的な代表例には、以下が含まれるが、これらに限定されない。
CClF=CH2
CH2=CF2
CFH=CH2
CF2=CHF
CF3CF=CH2
CF2=CF2
CF2=CHCl
CF3CCl=CH2
CF3CH=CHCl
CF3CF=CFH
CF3CH=CF2
CF3CF=CF2
CF3CH2CF=CH2
CF3CH=CFCH3
CF3CF=CHCF3
CF3CCl=CHCF3
CF2HCH2CF=CH2
CF2HCH2CF=CHCl
CF2HCH=CFCH2Cl
CH2=CHCl
CHCl=CHCl
CH2=CCl2
CF2=CFCl;
CF3CCl=CH2
CF3CCl=CClH
CF3CH=CCl2
CF3CF=CCl2
CF3CF=CFCl
CF3CF=CClH
CF3CCl=CFH
CF3CCl=CF2
CF3CCl=CFCl
【0041】
上記のハロゲン化オレフィンのすべての可能な異性体(例えば、E又はZ異性体)を使用することができる。
【0042】
一実施形態では、クロロ置換トリフルオロプロペニル化合物がハロゲン化オレフィンとして使用される。適切なクロロ置換トリフルオロプロペニル化合物には、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-プロプ-1-エン(1233zdとしても知られる)及び2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロプ-1-エンが含まれる。1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-プロプ-1-エンのシス又はトランス異性体(すなわち、トランス-(E)-1233zd又はシス-(Z)-1233zd)のいずれも使用できる。
【0043】
他の適切なフッ素化オレフィンは、シクロフルオロブテン、シクロクロロフルオロブテン、シクロフルオロペンテン、シクロクロロフルオロペンテン、シクロフルオロハキセン、及びシクロクロロフルオロハキセンであり、例えば、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロシクロブテン、1,2-ジクロロテトラフルオロシクロブテン、ヘキサフルオロシクロブテン、1H-ヘプタフルオロシクロペンテン、1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロシクロペンテン、1-クロロヘプタフルオロシクロペンテン、オクタフルオロシクロペンテン、1,2-ジクロロヘキサフルオロシクロペンテン、1,2,3-トリクロロペンタフルオロシクロペンテン、ペルフルオロシクロヘキセン、1,2-ジクロロオクタフルオロシクロヘキセン、1H-ペルフルオロシクロヘキセンなどである。
【0044】
方法Aで他の反応物としての使用に適したヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートは、ヒドロキシル(-OH)官能基と(メタ)アクリレート官能基の両方を含む有機化合物を特徴とすることができる。好ましくは、ヒドロキシルは、第一級又は第二級脂肪族ヒドロキシル基であるが、他の実施形態では、フェノール類であり得る。
【0045】
特定の実施形態によれば、ヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートは、構造式(II)に対応する:
HO-R-O-C(=O)-CR1=CH2 (II)
式中、Rは有機部分であり、R1は水素又はメチル、又はフッ素又はトリフルオロメチルである。
【0046】
本発明の特定の側面では、Rはアルキレンセグメント又はポリ(オキシアルキレン)セグメントであり得る。本明細書で使用される場合、「アルキレン」という用語は、アルカンの式から水素を2つ落とすことにより誘導できるパラフィン系炭化水素基を意味し、例えばエチレン(-CH2CH2-)である。「オキシアルキレン」という用語は、例えば(-CH2CH2O-)のようなオキシエチレンのように、エーテル酸素に結合したアルキレン基を意味する。したがって、本発明の様々な態様において、ハロゲン化オレフィンとの反応に使用されるヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートは一般構造(II)に対応し、ここで、Rは、エチレンセグメント又はポリ(オキシエチレン)セグメントである。例えば、Rは、-[CH2CH2O]n-CH2CH2-であってもよく、ここで、nは0又は1~10又は1~100又はそれ以上の整数である。Rは、酸素含有有機部分などの置換又はヘテロ原子含有有機部分であってもよいが、特定の実施形態では、Rはハロゲン化されていない(すなわち、いかなるハロゲン原子も含まない)。Rは、例えば、脂肪族(直鎖又は分岐脂肪族又は脂環式を含む)、芳香族であり得、又は脂肪族及び芳香族の両方の構造単位を含み得るが、特定の実施形態では脂肪族であり、芳香族構造単位を含まない。特に、Rは、飽和脂肪族有機部分であり得る。
【0047】
特に適切なヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートには、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及びこれらのアルコキシル化誘導体(ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドと反応されたもの)が含まれる。ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートも使用に適している。ハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートの組み込みにより生じるポリマーの側鎖の長さは、ハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートの調製に使用されるヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートにある-R-基の長さを変更することで、特定の特性をポリマーに付与するために所要に応じて制御及び変更できる。例えば、アルコキシル化ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを使用する場合、アルコキシル化の程度(ヒドロキシル官能基1モルあたりに反応するアルキレンオキシドのモル数)は1(比較的短い側鎖の場合)から10以上(比較的長い側鎖の場合)に変化し得る。
【0048】
ハロゲン化オレフィンとの反応後、ヒドロキシル官能化(メタ)アクリレート、ポリオール(例えば、ジオール)、又は部分的にマスクされたポリオール(例えば、ジオール)の活性水素は、ハロアルキル又はハロアルケニル基(例えば、-CF=CH2、-CF2CFHCF3、-CF2CFClH、-CF2CClH2、-CF2CF2H、-CH=CHCF3又は-C(CF3)=CH2)で置き換えられる。
【0049】
理論に拘束されることを意図しないが、上記の反応は、ヒドロキシル官能化(メタ)アクリレート、ポリオール(例えば、ジオール)、又は部分的にマスクされたポリオール(例えば、ジオール)における、ハロゲン化オレフィンの二重結合へのヒドロキシル基の追加により進行すると考えられる。そのような反応は、ハロゲン化アルキル基を形成し(すなわち、ハロゲン化オレフィンは、形成された生成物内に存在するハロゲン化アルキル基に変換される)、特定の条件下で(例えば、XがハロゲンであるHXの)脱離によりハロアルケニルを生成する可能性がある。典型的には、ヒドロキシル基の酸素原子は、好ましくは、ハロゲン化オレフィンの炭素-炭素二重結合に関与する炭素のうちより「ハロゲンヘビー」な炭素原子(すなわち、最も多くの数のハロゲン原子が結合している炭素、あるいは、どちらの炭素にもハロゲン原子が結合していない場合、最も多くの数のハロゲン原子を含むそれに結合したハロアルキル置換基を有する炭素)に結合されるようになる。特定の場合において、反応したヒドロキシル基の酸素原子が炭素-炭素二重結合に関与する各炭素原子に結合するような、異なる生成物の混合物が得られる。高度に塩基性の条件下でハロアルキル基からハロゲン化水素が脱離することによりアルケニル基が生じる可能性があるため、本発明の特定の実施形態で使用されるハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートモノマーに望まれる、ハロアルキル基を含む生成物の収率は、弱塩基性のみの反応条件により改善され得る。ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートの製造が望まれる場合、より塩基性の反応条件を使用することができる。
【0050】
方法Bでは、反応剤の1つとしてジオールが使用されるが、2つの反応物を反応させながら、ハロゲン化オレフィンをポリオール(ジオールなど)に徐々に追加して、所望の生成物(ハロゲン化オレフィンと反応してハロアルキル/ハロアルケニルエーテル基を形成する1つのヒドロキシル基と、未反応のままでこの後(メタ)アクリレート官能基に変換されるヒドロキシル基を有するもの)の生成を促進することが好ましい場合がある。
【0051】
方法A及びCでは、好ましくは、ほぼ化学量論量のヒドロキシル官能化(メタ)アクリレート(又は部分的にマスクされたポリオール)及びハロゲン化オレフィンが使用される。
【0052】
例えば、活性水素含有有機化合物とハロゲン化オレフィンは、化学量論比で、x=活性水素含有有機化合物の分子あたりの活性水素の数とする場合、(活性水素含有有機化合物のモル数)/x:ハロゲン化オレフィンのモル数が、約1:8~約8:1、約1:7~約7:1、約1:6~約6:1、約1:5~約5:1、約1:4~約4:1、約1:3~約3:1、約1:2~約2:1、又は約1:1.5~約1.5:1、又は約1:1.1~約1.1:1である。
【0053】
反応物としてポリオール(例えば、ジオール)を利用する方法Bでは、すべてのヒドロキシル基がハロゲン化オレフィンと反応した生成物よりも、一つのヒドロキシル基がハロアルキル/ハロアルケニルエーテル基に変換された生成物の生成に有利となるように、ハロゲン化オレフィンに対して化学量論的に過剰のポリオール(例えば、ジオール)を使用することが望ましい場合がある。そのような場合、ポリオールとハロゲン化オレフィンは、化学量論比で(ポリオールのモル数):ハロゲン化オレフィンのモル数が約1.5:1~約10:1又は約2:1~約5:1で反応させることができる。生成物と未反応のポリオールの混合物が生成される程度になると、未反応のポリオールを分離してハロゲン化オレフィンとのさらなる反応のためにリサイクルするように、混合物は分別に供されてもよい。
【0054】
任意のコモノマー
本発明の特定の実施形態では、上記の説明によるハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートは単独重合されるか、又は2つ以上のハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートは共重合されてポリマーを形成するが、他の実施形態では、1つ以上のそのようなハロアルキル/ハロアルケニル(メタ)アクリレートは、本明細書で定義されるハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートではない1つ以上の反応物(本明細書では「コモノマー」と呼ばれることもあるが、このような反応物は構造的にモノマー及び/又はオリゴマーの場合がある)と共重合する。そのような反応物は、一般に、ハロアルキル/ハロアルケニル(メタ)アクリレートに存在する炭素-炭素二重結合と共重合可能なエチレン性不飽和の1つ以上の部位、特に、共反応物中の(メタ)アクリレート官能基により供給されるエチレン性不飽和の部位を含み得る。ただし、オレフィン、ビニルエーテル、ビニル芳香族モノマー及びビニルエステルのような他のタイプのエチレン性不飽和コモノマーも使用することができる。
【0055】
したがって、本発明の一実施形態では、少なくとも1種のハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートは、本明細書で定義されるハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートではない少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化化合物と共重合される。得られるコポリマーは、(メタ)アクリレート基の炭素-炭素二重結合の反応により重合が行われ、その主骨格又は主鎖にそのようなモノマーに由来する反復単位を含むポリマーとして説明され得る。(メタ)アクリレート官能化化合物は、1分子あたり1つ以上の(メタ)アクリレート官能基を有する有機化合物として説明され得る。本発明での使用に適した(メタ)アクリレート官能化化合物は、一般に、エステル基に対して少なくとも1つのα炭素-炭素二重結合(特に、フリーラジカル反応又はアニオン反応、特に紫外線又は電子ビーム放射線により開始される反応に関与することができる炭素-炭素二重結合)を含むエチレン性不飽和化合物(少なくとも1つのα、β-不飽和エステル部分を含む化合物)として説明できる。そのような反応は、重合又は硬化をもたらし得、それにより、ハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリレート官能化化合物は、重合マトリックス又はポリマー鎖の一部になる。本発明の様々な実施形態では、(メタ)アクリレート官能化化合物は、1分子あたり1、2、3、4、5、又はそれ以上の(メタ)アクリレート官能基を含むことができる。異なる数の(メタ)アクリレート基を含む複数の(メタ)アクリレート官能化化合物の組み合わせを、1つ以上のハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートと一緒に使用して、本発明によるポリマーを調製することができる。
【0056】
したがって、本発明によるポリマーを調製するのに有用な硬化性組成物は、1つ以上のハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートに加えて、紫外線又は電子ビーム放射への暴露により開始されるフリーラジカル及び/又はアニオン重合(硬化)を受け得る受けることができる1つ以上の(メタ)アクリレート官能性化合物を含み得る。そのような(メタ)アクリレート官能化化合物は、オリゴマー又はモノマー、あるいはオリゴマーとモノマーの組み合わせであってもよい。
【0057】
以下のタイプの(メタ)アクリレート官能化化合物のいずれも、例えば、本発明によるポリマーを調製するために使用される硬化性組成物において、コモノマーとしての1つ以上のハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートと組み合わせて使用され得る:脂肪族モノアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシル化脂肪族モノアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、脂肪族ポリオールの(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシル化脂肪族ポリオールの(メタ)アクリル酸エステル、芳香環含有アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、及びアルコキシル化芳香環含有アルコールの(メタ)アクリル酸エステルなどのモノマー;エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート(これらのアミン及びスルフィド修飾誘導体を含む)などのオリゴマー;及びこれらの組み合わせ。
【0058】
好適な(メタ)アクリレート官能化オリゴマーには、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(ポリウレタン(メタ)アクリレート又はウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとも呼ばれる)及びこれらの組み合わせ、ならびにこれらのアミン修飾及びスルフィド修飾の変形が含まれる。
【0059】
例示的なポリエステル(メタ)アクリレートは、アクリル酸又はメタクリル酸又はこれらの混合物とヒドロキシル基末端ポリエステルポリオールとの反応生成物を含む。この反応プロセスは、顕著な濃度の残留ヒドロキシル基がポリエステル(メタ)アクリレートに残るように行われてもよく、あるいはポリエステルポリオールのヒドロキシル基のすべて又は本質的にすべてが(メタ)アクリル化されたように行われてもよい。ポリエステルポリオールは、ポリヒドロキシル官能性成分(特に、ジオール)とポリカルボン酸官能性化合物(特に、ジカルボン酸及び無水物)との重縮合反応によって作製することができる。ポリエステル(メタ)アクリレートを調製するために、次に、ポリエステルポリオールのヒドロキシル基は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルクロリド、(メタ)アクリル酸無水物などと反応させることによって部分的又は完全にエステル化される。ポリエステル(メタ)アクリレートはまた、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート)などのヒドロキシル含有(メタ)アクリレートをポリカルボン酸と反応させることによって合成されてもよい。ポリヒドロキシル官能性及びポリカルボン酸官能性成分はそれぞれ、線状、分岐、脂環式又は芳香族構造を有することができ、単独に又は混合物として使用することができる。
【0060】
適切なエポキシ(メタ)アクリレートの例には、アクリル酸又はメタクリル酸又はこれらの混合物とグリシジルエーテル又はエステルとの反応生成物が含まれる。
【0061】
例示的なポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーには、アクリル酸又はメタクリル酸又はこれらの混合物と、ポリエーテルポリオールであるポリエーテルオールとの縮合反応生成物が含まれるが、これらに限定されない。適切なポリエーテルオールは、エーテル結合及び末端ヒドロキシル基を含有する線状又は分枝状物質であり得る。ポリエーテルオールは、エポキシド及び他の酸素含有複素環式化合物(例えば、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ブテンオキシド、テトラヒドロフラン及びこれらの組み合わせ)をスターター分子と開環重合することによって調製できる。適切なスターター分子には、水、ヒドロキシル官能性材料、ポリエステルポリオール及びアミンが含まれる。ポリエーテルオールは、グリコールなどのジオールの縮合によっても得られる。
【0062】
本発明の硬化性組成物及びポリマーに使用可能なウレタン(メタ)アクリレート(「ポリウレタン(メタ)アクリレート」とも呼ばれる)には、脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオール、脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルジイソシアネート及び(メタ)アクリレート末端基でキャップされたポリエーテルジイソシアネートに基づくウレタンが含まれる。
【0063】
様々な実施形態において、ウレタン(メタ)アクリレートは、脂肪族及び/又は芳香族ポリイソシアネート(例えば、ジイソシアネート、トリイソシアネート)と、OH基末端ポリエステルポリオール(芳香族、脂肪族及び脂肪族/芳香族混合ポリエステルポリオールを含む)、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリジメチルシロキサンポリオール、又はポリブタジエンポリオール、又はこれらの組み合わせと反応させ、イソシアネート官能化オリゴマーを形成し、これをヒドロキシ官能化(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと反応させて、末端(メタ)アクリレート基を提供することにより作製することができる。例えば、ウレタン(メタ)アクリレートは、1分子あたり2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の(メタ)アクリレート官能基を含み得る。当技術分野で知られているように、ポリウレタン(メタ)アクリレートを調製するために、他の添加順序を実施することもできる。例えば、ヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートを最初にポリイソシアネートと反応させて、イソシアネート官能化(メタ)アクリレートを得て、次に、これをOH基末端ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリジメチルシロキサンポリオール、ポリブタジエンポリオール、又はこれらの組み合わせと反応させてもよい。さらに別の実施形態では、ポリイソシアネートを最初に前述のタイプのポリオールのいずれかを含むポリオールと反応させて、イソシアネート官能化ポリオールを得て、その後、これをヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートと反応させて、ポリウレタン(メタ)アクリレートを生成してもよい。あるいは、すべての成分を組み合わせて、同時に反応させてもよい。
【0064】
上記のタイプのオリゴマーのいずれも、当技術分野で公知の手順に従って、アミン又はスルフィド(例えば、チオール)で修飾することができる。このようなアミン及びスルフィド修飾オリゴマーは、例えば、ベースオリゴマー中に存在する(メタ)アクリレート官能基の比較的少量(例えば、2~15%)をアミン(例えば、第2級アミン)又はスルフィド(例えば、チオール)と反応させることにより調製され得る。ここで、修飾化合物は、マイケル付加反応において(メタ)アクリレートの炭素-炭素二重結合に付加する。
【0065】
適切なモノマー(メタ)アクリレート官能化化合物の例示的な例には、(メタ)アクリル化モノ及びポリオール(ポリアルコール)及び(メタ)アクリル化アルコキシル化モノアルコール及びポリオールが含まれる。モノアルコール及びポリオールは、脂肪族(1つ以上の脂環式環を含む)か、又は(フェノール又はビスフェノールAの場合のように)1つ以上の芳香環を含み得る。「アルコキシル化」とは、1つ以上の(メタ)アクリレート官能基を導入するエステル化の前に、モノアルコール又はポリオールの一つ以上のヒドロキシル基に1つ以上のエーテル部分(例えば、-CH2CH2-O-)を導入するために、ベースのモノアルコール又はポリオールが、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドなどの1つ以上のエポキシドと反応したことを意味する。例えば、モノアルコール又はポリオールと反応するエポキシドの量は、モノアルコール又はポリオール1モルあたり約1~約30モルのエポキシドであってよい。適切なモノアルコールの例としては、直鎖、分岐鎖及び環状C1~C54モノアルコール(これらは、第一級、第二級又は第三級アルコールであり得る)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、モノアルコールは、C1~C7脂肪族モノアルコールであり得る。別の実施形態では、モノアルコールは、C8~C24脂肪族モノアルコール(例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール)であってよい。適切なポリオールの例には、分子あたり2、3、4、又はそれ以上のヒドロキシル基を含むグリコール(ジオール)などの有機化合物、例えば、エチレングリコール、1,2-又は1,3-プロピレングリコール、又は1,2-、1,3-又は1,4-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリエチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロールなどが含まれる。
【0066】
適切なモノマー(メタ)アクリレート官能化化合物の代表的な例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、長鎖脂肪族ジ(メタ)アクリレート(例えば、一般に式H2C=CRC(=O)-O-(CH2m-O-C(=O)CR’=CH2(式中、R及びR’は個別にH又はメチルであり、mは8から24の整数)に対応するもの)、アルコキシル化(例えば、エトキシル化、プロポキシル化)ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化、プロポキシル化)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ドデシルジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化、プロポキシル化)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化、プロポキシル化)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化、プロポキシル化)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化、プロポキシル化)グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、2(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アルコキシル化ラウリル(メタ)アクリレート、アルコキシル化フェノール(メタ)アクリレート、アルコキシル化テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例、エトキシル化、プロポキシル化)ノニルフェノール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクティル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクチルデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレートとも呼ばれる)、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールエチルエーテル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート、フェノキシエタノール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールブチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化、プロポキシル化)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジ-トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化、プロポキシル化)グリセリルトリ(メタ)アクリレート、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、並びにこれらの組み合わせ。
【0067】
硬化性組成物及びそれから誘導されるポリマーに利用されるハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリレート官能化化合物の相対比率は、選択される特定の成分、及び硬化性組成物、及びそれから得られる硬化組成物(ポリマー)の望ましい特性に依存して変化し得る。例えば、本発明の様々な実施形態において、ハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート(単一のハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート又は2つ以上の異なるハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートの組み合わせであり得る)と(メタ)アクリレート官能化化合物(単一の(メタ)アクリレート官能化化合物又は2つ以上の異なる(メタ)アクリレート官能化化合物の組み合わせであり得る)の合計重量を基準とし、ハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートの総重量は、0.03~99重量%、又は0.03~10重量%、又は10~20重量%、又は20~30重量%、又は30~40重量%、又は40~50重量%、又は50~60重量%、又は60~70重量%、又は70~80重量%、又は80~90重量%、又は90~99重量%であり得、(メタ)アクリレート官能化化合物の総重量は、それに応じて1~99重量%、又は10~90重量%であり得る。
【0068】
ハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート以外のハロゲン化(メタ)アクリレートも、本発明のポリマーを調製する際のコモノマーとしての使用に適している。本明細書で使用される場合、ハロゲン化(メタ)アクリレートという用語は、アクリレート(-O-C(=O)CH=CH2)又はメタクリレート(-O-C(=O)C(CH3)=CH2)官能基と、少なくとも1つのハロゲン原子(F、Cl、Br、I)を含む有機化合物を指す。一実施形態では、ハロゲン化(メタ)アクリレートは、単一の(メタ)アクリレート官能基を含む。ハロゲン化(メタ)アクリレートは、2、3、4、5、又はそれ以上のハロゲン原子を含んでもよく、それらは同じであっても互いに異なっていてもよい。特定の実施形態では、ハロゲン化(メタ)アクリレート中に存在する唯一のハロゲンはフッ素である。他の実施形態において、ハロゲン化(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリレート官能基に存在する炭素原子以外のすべての炭素原子がハロゲン(例えば、フッ素)のみによって置換され、その炭素原子が水素置換されないように、過ハロゲン化(例えば、過フッ素化)される。ハロゲン化(メタ)アクリレートは、一般構造R1-O-C(=O)CR=CH2に対応する。式中、Rは水素又はメチルで、R1は1つ以上のハロゲン置換基を含む有機部分であり、例えばハロゲン化アルキル基、ハロゲン化シクロアルキル基、ハロゲン化アリール基、又はハロゲン化アラルキル基などである。そのような有機部分は、ハロゲン置換基以外の1つ以上の置換基、例えばアルコキシ、シアノ、ニトロ又はカルボキシレート置換基を含み得る。R1は、過ハロゲン化、特に過フッ素化されていてもよい。
【0069】
適切なフッ素含有アクリレート及びメタクリレートコモノマーには、例えば、以下が含まれる:2-フルオロエチルアクリレート及び2-フルオロエチルメタクリレート;1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-イソ-プロピルアクリレート及び1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-イソ-プロピルメタクリレート;一般構造がCF3(CF2nCH2OC(=O)C(R)=CH2(式中、Rは水素又はメチル、nは典型的に0~12である。)である1,1-ジヒドロペルフルオロアルキルアクリレート及びメタクリレート、例えば2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート及び2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3、-ペンタフルオロプロピルアクリレート及び2,2,3,3,3、-ペンタフルオロプロピルメタクリレート、1H,1H-ヘプタフルオロブチルアクリレート及び1H,1H-ヘプタフルオロブチルメタクリレート、1H,1H,-ペルフルオロペンチルアクリレート及び1H,1,H-ペルフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,-ペルフルオロヘキシルアクリレート及び1H,1,H-ペルフルオロヘキシルメタクリレート、1H,1H,-ペルフルオロオクチルアクリレート及び1H,1,H-ペルフルオロオクチルメタクリレート、1H,1H,-ペルフルオロデシルアクリレート及び1H,1,H-ペルフルオロデシルメタクリレート、1H,1H,-ペルフルオロドデシルアクリレート及び1H,1,H-ペルフルオロドデシルメタクリレート;一般構造がCF3(CF2n’(CH22OCOC(R)=CH2(式中、Rは水素又はメチル、n’は典型的に0~11である。)である1,1,2,2-テトラヒドロペルフルオロアルキルアクリレート及びメタクリレート、例えば3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチルアクリレート及び3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチルメタクリレート、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロヘキシルアクリレート、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロヘキシルメタクリレート、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクチルアクリレート、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクチルメタクリレート、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデシルアクリレート及び1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデシルメタクリレート、及び1H,1H,2H,2H-ペルフルオロドデシルアクリレート及び1H,1H,2H,2H-ペルフルオロドデシルメタクリレート;一般構造がCHF2(CF2n’’(CH22OCOC(R)=CH2(式中、Rは水素又はメチル、n’’は典型的に0~12である。)である1,1,Ω-トリヒドロペルフルオロアルキルアクリレート及びメタクリレート、例えば2,2,3,3-テトラフルオロプロピルアクリレート及び2,2,3,3-テトラフルオロプロピルメタクリレート、1H,1H,5H-ペルフルオロペンチルアクリレート及び1H,1H,5H-ペルフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,7H-ペルフルオロヘプチルアクリレート及び1H,1H,7H-ペルフルオロヘプチルメタクリレート、1H,1H,9H-ペルフルオロノニルアクリレート及び1H,1H,9H-ペルフルオロノニルメタクリレート、1H,1H,11H-ペルフルオロウンデシルアクリレート及び1H,1H,11H-ペルフルオロウンデシルメタクリレート;2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルアクリレート及び2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルメタクリレート、ペルフルオロシクロヘキシルメチルアクリレート及びペルフルオロシクロヘキシルメチルメタクリレート、3-(トリフルオロメチル)ベンジルアクリレート及び3-(トリフルオロメチル)ベンジルメタクリレート、ペンタフルオロフェニルアクリレート及びペンタフルオロフェニルメタクリレート;ペンタフルオロベンジルアクリレート及びペンタフルオロベンジルメタクリレート;ペンタフルオロベンジルアクリレート及びペンタフルオロベンジルメタクリレート;並びにこれらの混合物。
【0070】
特定の実施形態において、ポリマーは、ハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート以外のモノマーを含まない(すなわち、ハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートが、又はハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートの混合物が、ポリマーの100重量%を構成する。)しかし、他の実施形態では、ポリマーは、最大99.7重量%、最大99重量%、最大97重量%、最大95重量%、最大90重量%、最大80重量%、最大70重量%、最大60重量%、最大50重量%、最大40重量%、最大30重量%、最大20重量%、最大10重量%、最大5重量%、又は最大1重量%の、ハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート以外の1つ以上のコモノマーを含む。例えば、ポリマーは、ハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート以外の1つ又は複数のモノマーを0.1から99重量%含むことができる。
【0071】
本発明のポリマーがコポリマーである場合、本発明のコポリマー中のポリマー主骨格に沿った重合コモノマーの配置は、重合の速度論に依存し、いくつかの形態を取り得る。1つの好ましい配置は、異なるコモノマーの規則的な交互を伴う交互コポリマーの配置である。フルオロアルキル/フルオロアルケニルエーテル(メタ)アクリラートとフッ素化(メタ)アクリラートコモノマーの交互コポリマーは、フリーラジカル、酸化、又は光酸化攻撃に対する優れた耐性を期待でき、例えば外部コーティング、バッテリーコンポーネント、光起電デバイス、エネルギー貯蔵デバイス、膜、及びろ過デバイスで使用される材料にとって望ましい場合があるため、特に好ましい。
【0072】
コポリマー骨格に沿ったコモノマーの別の好ましい配置は、ランダムコポリマー(統計コポリマーとも呼ばれる)の配置である。ランダムコポリマーの構造は、通常、共重合中に反応する異なるモノマーの反応速度論によって決定される。ランダムコポリマーは、本発明の一実施形態では、線状構造を有してもよいが、他の実施形態では、分岐又はさらには架橋構造を有してもよい。
【0073】
コポリマー骨格に沿ったコモノマーのさらなる別の好ましい配置は、ブロックコポリマーのそれである。このようなブロックコポリマーは、例えば、少なくとも1つの第1のハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートのブロックと、少なくとも1つの第2のハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート又はハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート以外のコモノマーのブロックとからなることができ、構造として直鎖又は分岐(放射状)のどちらでもよい。様々な実施形態では、ブロックコポリマーは、例えば、以下の構造のいずれかを有することができる:A-B;A-B-A;B-A-B;A-B-A-B;又はA-B-A-B-A。ここで、Aは重合した形のハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートのブロック(すなわち、ポリ(ハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート)ブロック)であり、Bはハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレート官能化コモノマーのブロック(例えば、非ハロゲン化(メタ)アクリレートのブロック(すなわち、ポリ(非ハロゲン化(メタ)アクリレート))又はハロゲン化(メタ)アクリレートのブロック(すなわち、ポリ(ハロゲン化(メタ)アクリレート))である。
【0074】
グラジエントコポリマーもまた、架橋コポリマーと同様に、本発明の範囲内であると理解される(特に、ハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートが、分子あたり2つ以上の(メタ)アクリレート官能基を含む(メタ)アクリレート官能化化合物、又は分子あたり2つ以上の(メタ)アクリレート官能基を含む(メタ)アクリレート官能化化合物を少なくともいくらか含む(メタ)アクリレート官能化化合物の混合物と反応されたもの)。
【0075】
本発明の特定の実施形態において、ポリマー(本明細書に記載される任意のコポリマーを含む)は、標準ポリスチレンを使用したゲル浸透クロマトグラフィーにより測定する場合、5000~2,000,000(例えば、5000~1,500,000、又は5000~800,000、又は5,000~300,000)ダルトン以上の数平均分子量を有する。ポリマー又はコポリマーは、それを調製するために使用される成分及び重合(硬化)方法に応じて、熱可塑性、熱硬化性又はエラストマー性であり得る。
【0076】
本発明の他の実施形態では、ポリマー(本明細書に記載の任意のコポリマーを含む)は、標準ポリスチレンを使用したゲル浸透クロマトグラフィーにより測定する場合、5000~2,000,000(例えば、5000~1,500,000、又は5000~800,000、又は5,000~300,000)ダルトン以上の数平均分子量を有する。例えば、方法Aによる1,1,2,-トリフルオロ-2-クロロエチレン(CTFE)とヒドロキシエチルメタクリレート又は2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)との生成物である1,1,2-トリフルオロ-2-クロロエトキシエチルメタクリレートモノマーからのポリ(1,1,2-トリフルオロ-2-クロロエトキシエチルメタクリレート)は、テトラヒドロフラン(THF)などの溶媒に溶解でき、ポリマーの濃度は、ポリマーと溶媒の合計重量に対して40重量%に達し得る。ガラス、金属、プラスチックなどの上にポリマー含有溶液を使用してフィルムを作ることが望ましい。他の溶媒は、例えば、以下から選択することができる:トルエン、アセトンブタノン(メチルエチルケトン又は「MEK」としても知られる)、シクロヘキサノン、ニトロエタン、クロロホルム、ジクロロメタン(又は塩化メチレン)、ベンゼン、クロロベンゼン、キシレン、メトキシベンゼン(アニソール又はフェニルメチルエーテルとも呼ばれる)、フタル酸ジエチル、酢酸メトキシプロピル、酢酸エチル、乳酸エチル、酢酸メチル、ギ酸メチル、トランス-1,2-ジクロロエチレン、トランス-1-クロロ-3,3,3-フルオロプロペン、シス-1-クロロ-3,3,3-フルオロプロペン、2-クロロ-3,3,3-フルオロプロペン、シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブテン、1,1,1,3,3、-テトラフルオロブタン、ギ酸、及びこれらの混合物。
【0077】
本発明の特定の実施形態では、ポリマー(本明細書に記載の任意のコポリマーを含む)は、当業者に既知の技術で測定して、約1.339~約1.700、好ましくは1.400~1.600の屈折率を有する。例えば、方法Aによる1,1,2,-トリフルオロ-2-クロロエチレン(CTFE)とヒドロキシエチルメタクリレート又は2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)との生成物である1,1,2-トリフルオロ-2-クロロエトキシエチルメタクリレートモノマーからのポリ(1,1,2-トリフルオロ-2-クロロエトキシエチルメタクリレート)は、約1.453の屈折率を有する。ポリメチルメタクリレート(PMMA)の屈折率は1.491であり、1,1,2-トリフルオロ-2-クロロエトキシエチルメタクリレートとメチルメタクリレートのコポリマーは、1,1,2-トリフルオロ-2-クロロエトキシエチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの比率(例えば、99:1~89:11又は89:11~79:21又は79:21~69:31又は69:30~59:41又は59:41~49:51又は49:51~39:61又は39:61~29:71又は29:71~19:81又は19:811~9:91又は9:91~1:99)に応じて、1.453から1.491の間の屈折率を有し得る。光学フィルム用途、LED、LCDなどのディスプレイ用フィルムなどの光学素子の接着剤には低屈折率が必要である。特に、本発明のホモポリマーとコポリマー間の屈折率勾配により、ポリマーはコア、クラッド、パッケージなどの光ファイバー材料コンポーネントに適したものになる。
【0078】
方法Aによる1,1,2,-トリフルオロ-2-クロロエチレン(CTFE)とヒドロキシエチルメタクリレート又は2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)との生成物である1,1,2-トリフルオロ-2-クロロエトキシエチルメタクリレートモノマーからのポリ(1,1,2-トリフルオロ-2-クロロエトキシエチルメタクリレート)は、標準ポリスチレンを使用したゲル浸透クロマトグラフィーにより測定する場合、5000~2,000,000(例えば、5000~1,500,000、又は5000~800,000、又は5,000~300,000)ダルトン以上の数平均分子量を有する。ポリマーは、当業者に知られているDSCによって測定する場合、約16から19℃のガラス転移温度(Tg)を有する。1,1,2-トリフルオロ-2-クロロエトキシエチルメタクリレートとメチルメタクリレート(MMA)のコポリマーのガラス転移温度は、典型的に、ポリメチルメタクリレートよりも低く、例えば、80重量%のMMAと20重量%の1,1,2-トリフルオロ-2-クロロエトキシエチルメタクリレートのポリマーのガラス転移温度は、同等の分子量のPMMAよりも約15℃低い。
【0079】
硬化剤
本発明の硬化性組成物は、任意に、エチレン性不飽和化合物の重合(硬化)を開始させるか、又はこのような重合が起こる速度を加速し得る当該分野で公知の任意の物質であり得る硬化剤を1種以上含み得る。このような物質は、硬化剤、架橋剤、開始剤、促進剤又は加速剤と様々に呼ばれ得る。
【0080】
硬化性組成物が紫外線などの光を使用して硬化される場合、1つ又は複数の光開始剤を含むように組成物を配合することが一般に望ましい。しかしながら、電子ビーム又は化学的硬化が使用される場合、硬化性組成物は光開始剤を含有する必要はない。
【0081】
光開始剤は、光の吸収時に光反応を起こして反応性種を生成する化合物である。次に、生成される反応性種は、硬化性組成物の反応性成分、例えば、(メタ)アクリレート官能化化合物の重合を開始させる。一般的に言えば、そのような重合(硬化)は、そのような成分中に存在する炭素-炭素二重結合の反応を含む。本発明の様々な実施形態において、反応性種は、例えば、フリーラジカル種又はアニオン種であり得る。本発明の一実施形態では、光開始剤は、α-アミノアセトフェノンなどの光塩基発生剤であってもよい。
【0082】
適切な光開始剤には、例えば、アルファ-ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシレート、ベンジルジメチルケタール、アルファ-アミノケトン、モノ-アシルホスフィン、ビス-アシルホスフィン、メタロセン、ホスフィンオキシド、ベンゾインエーテル及びベンゾフェノン及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0083】
光開始剤が硬化性組成物に使用される場合、それは一般に、硬化性組成物の総重量に対して、約15重量%までの総濃度(例えば、硬化性組成物の総重量に対して約0.1~約5重量%の濃度)で存在し得る。
【0084】
1種以上の過酸化物が硬化剤として硬化性組成物中に存在してもよい。本明細書で使用される場合、「過酸化物」という用語は、例えば、過酸化水素、過炭酸塩、過エステル、過カルボン酸、有機ヒドロペルオキシド、過酸化ジアルキルなど、及び組み合わせのペルオキシ(-O-O-)官能基を含む有機及び無機物質の両方を含む。そのような過酸化物は、様々な遷移金属化合物などの1つ又は複数の促進剤と組み合わせて使用することができる。1つ以上の過酸化物を含むレドックス系を、本発明の硬化性組成物と組み合わせて使用し得る。エチレン性不飽和モノマー、特に(メタ)アクリレート官能化モノマーの重合の分野で知られている過酸化物以外のその他の化学硬化剤も同時に、又は代わりに、本発明の硬化性組成物中に存在してもよい。
【0085】
組成物の硬化は、ハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートの(メタ)アクリレート官能基の炭素-炭素二重結合を含む重合反応によって達成できる。組成物がハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートを含む場合、アルケニル官能基も、少なくとも特定の硬化条件下で、そしてアルケニル官能基の反応性に応じて、重合反応に関与し得る。
【0086】
他の成分
本発明の硬化性組成物は、任意に、上記の成分の代わりに、又は上記の成分に加えて、1つ以上の添加剤を含み得る。このような添加剤には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、泡抑制剤、流動剤又はレベリング剤、着色剤、顔料、分散剤(湿潤剤)、スリップ添加剤、フィラー、チキソトロープ剤、艶消し剤、重合性官能基を含まないアクリル樹脂などの熱可塑性樹脂、ワックス、又はコーティング、シーラント、接着剤、成形又はインクの分野で従来から使用されている添加剤を含むその他の各種添加剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0087】
硬化性組成物の硬化及び使用
本発明の硬化性組成物は、他の潜在的な用途の中でも、インク(食品包装用を含むグラフィックアート用途)、成形樹脂、3Dプリント用樹脂、コーティング(例えば、光ファイバーコーティング)、シーラント及び接着剤(例えば、UV硬化型ラミネート接着剤、UV硬化型ホットメルト接着剤など)及び複合材料のような多くの異なる用途で有用である。
【0088】
本明細書に記載の硬化性組成物から調製された硬化組成物は、例えば、三次元製品(この三次元製品は実質的にこの硬化組成物からなるか、又はこれからなる)、コーティングされた製品(基材が硬化組成物の1つ以上の層でコーティングされる)、積層又は接着された製品(この製品の第1の構成要素が硬化組成物によって第2の構成要素に積層又は接着される)、又は印刷された製品(グラフィックスなどが、硬化した組成物を使用して、紙、プラスチック又は金属基材などの基材に刻印される)において使用され得る。
【0089】
硬化性組成物は、フリーラジカル重合又は他のタイプの重合(例えば、アニオン重合又はカチオン重合)によって硬化されてもよい。
【0090】
本発明による硬化性組成物の硬化は、フリーラジカル、カチオン及び/又はアニオン重合などの任意の適切な方法によって実施することができる。フリーラジカル開始剤(例えば、光開始剤、過酸化物開始剤)などの1種以上の開始剤が硬化性組成物中に存在してもよい。硬化前に、硬化性組成物は、任意の既知の従来の方法で、例えば、スプレー、ナイフコーティング、ローラーコーティング、キャスティング、ドラムコーティング、ディッピングなど、及びそれらの組み合わせによって、基材表面に適用され得る。転送プロセスを使用した間接適用も使用できる。基材は、例えば、それぞれが高表面エネルギー基材又は低表面エネルギー基材である金属基材又はプラスチック基材などの商業的に適切な基材であり得る。基材は、金属、紙、ボール紙、ガラス、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、及びそれらのブレンド、複合材料、木材、皮革及びそれらの組み合わせを含み得る。接着剤として使用される場合、硬化性組成物は、2つの基材の間に配置され、次いで硬化されることができ、これにより硬化された組成物は基材同士を結合する。
【0091】
硬化性組成物にエネルギーを供給することにより、例えば、硬化性組成物を加熱し、及び/又は可視又はUV光、赤外線及び/又は電子ビーム放射線等の放射線源に組成物を曝露することにより、硬化を加速又は促進することができる。したがって、硬化した組成物は、硬化によって形成された、本発明によるポリマーを含む硬化性組成物の反応生成物と見なすことができる。
【0092】
本発明によるポリマーは、多種多様な用途で使用することができる。例えば、ポリマーは、相溶化剤、発泡剤、界面活性剤、又は低表面エネルギー添加剤として使用でき(シミ防止、防汚、又は粘着防止用途、湿潤又はコーティング用途、及び汚れ防止用途)、耐溶剤性又は耐薬品性(コーティング、フィルム、加工部品など)を改善又は強化するために使用でき、撥油性及び撥水性の表面の作製(プラスチック、織物、紙、木、革などの基材の場合)に使用でき、医療機器のコーティングとして、潤滑剤として、電子アプリケーション用の添加剤及びバルク材料として、又は熱可塑性エラストマーとして、耐衝撃性改良剤として、接着剤として使用でき、薬物(又は医薬品)デリバリー用、化粧品用途、及びその他多くの用途に使用できることは当業者に明らかである。
【0093】
ポリマー(コポリマーを含む)は、ポリマー材料の表面エネルギーを改変するために有用な低表面エネルギーポリマーであり得る。これらのポリマーは、添加量で使用するか、バルク材料として使用できる。バルクポリマーに固有ではない耐汚染性などの特性を付与するために、多種多様なバルクポリマーに添加量を含めることができる。潜在的な用途には、食品用途、織物、コーティング(例、アクリルベースのコーティング)、医薬品、塗料(例えば、アクリルベースの塗料)、及び他の多くの業種が含まれる。本発明のポリマーによる表面エネルギーの低減は、当業者に既知の技術である水接触角によって特徴付けられ得る。水接触角の増加は、約5度を超え、より望ましくは約8度を超え、さらに望ましくは約15度を超える。接触角の増加は、ハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートを含むポリマーと、ハロアルキル/ハロアルケニル基を含まないポリマーとの違いである。
【0094】
本発明によって提供されるポリマー(低表面エネルギーコポリマーを含む)は、コーティング組成物で従来から使用されている熱可塑性及び熱硬化性樹脂のいずれかと組み合わせて使用することができる。もちろん、使用される特定の樹脂は、必要とするコーティング用途に適するように選択されるべきであり、コーティング組成物の他の成分と相溶でなければならない。有用な樹脂の例には、ラテックス、アクリル樹脂、ビニルアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、フェノキシ樹脂などが含まれる。最終コーティング樹脂が熱硬化性コーティングである場合、樹脂成分は、有効量の架橋成分、例えば、従来使用されているメラミン/ホルムアルデヒド樹脂、尿素/ホルムアルデヒド樹脂などの少なくとも1種の架橋剤を含む。1種以上のそのような架橋剤は、熱硬化性樹脂と呼ばれる1種以上の他の樹脂と組み合わせて、例えば熱を加えると、熱硬化性樹脂又は複数の樹脂に架橋を形成し、最終的な所望の熱硬化性表面コーティングを形成するのに有効な量で使用される。
【0095】
さらに、本発明によるポリマーを疎水性添加剤として利用して、コーティング、繊維及びフィルムに撥水特性を提供する重要な機会が存在する。そのような製品の重要な側面は、それらが溶融加工中に添加され、これによりその後の処理工程を排除できることである。このような疎水性添加剤の最も魅力的な用途は、織物、コーティング、フィルムであり、これらの用途での主要な製品属性は、シミ防止、汚れ防止、撥水機能である。本発明によるポリマーは、ポリマー製品の表面化学の修飾を必要とする様々な用途で効果的に機能することが期待される。現在、いくつかのフッ素化材料がそのような用途に使用されているが、そのようなフッ素化材料は段階的に廃止されるという大きな規制圧力下にある。
【0096】
特に関心のある分野としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(1)織物、コーティング及び塗料用途における撥水用途において、本発明によるポリマーは、民用及び商業用のためのステイン防止及び撥水繊維、フィルム、シート、コーティング及び塗料などの製造に使用することができる;(2)特に剥離ライナーを含む自己接着用途において、ライナーは、ラベルストック及びグラフィックアート市場、すなわち、カレンダー加工されたクラフト紙及びポリエチレンコーティング紙、及びフィルムライナー用にコーティングされる;(3)離型剤;(4)フルオロケミカル界面活性剤;(5)印刷可能/塗装可能なポリオレフィン;(6)保護ウィンドウの処理。(7)落書き防止コーティング;(8)航空機のコーティング;(9)結露防止剤;(10)耐摩耗添加剤;及び耐湿、耐塵、耐食性を向上させるための回路基板のカプセル化。
【0097】
本発明の例示的な側面
本発明の様々な例示的な側面は、以下のように要約され得る:
側面1:
重合形態で、エーテル結合及び有機スペーサー部分を介して(メタ)アクリレート官能基に結合したハロアルキル又はハロアルケニル部分を有する少なくとも1種のハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートを含むポリマー。
側面2:
重合形態で、一般構造(I)に対応する少なくとも1種のハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートを含む、側面1に記載のポリマー:
12HC-CX34-O-R-O-C(=O)-CR1=CH2 (I)
式中、Rは有機部分であり、X1、X2、X3及びX4は個別に、水素、ハロゲン、アルキル又はハロアルキルから選択される。ただし、X1、X2、X3又はX4の少なくとも1つがハロゲン又はハロアルキル基であり、R1は水素又はメチルである。
側面3:
重合形態で、前記ポリマーは、一般構造(I)に対応する少なくとも1種のハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートを含み、X1、X2、X3又はX4の少なくとも2つが、ハロゲン及びハロアルキル基からなる群から選択される、側面2に記載のポリマー。
側面4:
重合形態で、前記ポリマーは、一般構造(I)に対応する少なくとも1種のハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートを含み、X1、X2、X3又はX4の少なくとも2つが、フッ素及びフルオロアルキル基からなる群から選択される、側面2又は3に記載のポリマー。
側面5:
重合形態で、前記ポリマーは、一般構造(I)に対応する少なくとも1種のハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートを含み、X1、X2、X3又はX4の少なくとも1つが、フッ素又はフルオロアルキル基である、側面2又は3に記載のポリマー。
側面6:
重合形態で、前記ポリマーは、一般構造(I)に対応する少なくとも1種のハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートを含み、X1、X2、X3及びX4はそれぞれハロゲン又はハロアルキル基である、側面2~5のいずれかに記載のポリマー。
側面7:
重合形態で、前記ポリマーは、一般構造(I)に対応する少なくとも1種のハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートを含み、X1、X2、X3又はX4の1つは、C1~C8のハロアルキル基である、側面2~6のいずれかに記載のポリマー。
側面8:
重合形態で、前記ポリマーは、一般構造(I)に対応する少なくとも1種のハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートを含み、X1、X2、X3又はX4の1つは、C1~C8のフルオロアルキル基である、側面2~7のいずれかに記載のポリマー。
側面9:
重合形態で、前記ポリマーは、一般構造(I)に対応する少なくとも1種のハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートを含み、(1)X1が塩素でX2、X3及びX4がフッ素であり、又は(2)X3が塩素でX1、X2及びX4がフッ素である、側面2に記載のポリマー。
側面10:
重合形態で、前記ポリマーは、一般構造(I)に対応する少なくとも1種のハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートを含み、Rがアルキレンセグメント又はポリ(オキシアルキレン)セグメントである、側面2~9のいずれかに記載のポリマー。
側面11:
重合形態で、前記ポリマーは、一般構造(I)に対応する少なくとも1種のハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートを含み、Rがエチレンセグメント又はポリ(オキシエチレン)セグメントである、側面2~10のいずれかに記載のポリマー。
側面12:
重合形態で、前記ポリマーは、一般構造(I)に対応する少なくとも1種のハロアルキルエーテル(メタ)アクリレートを含み、Rが-[CH2CH2O]n-CH2CH2-であり、nが0又は1~10の整数である、側面2~11のいずれかに記載のポリマー。
側面13:
部分X12HC-CX34-O-R-O-が900ダルトン以下の分子量を有する、側面2~12のいずれかに記載のポリマー。
側面14:
Rが非ハロゲン化有機部分である、側面2~13のいずれかに記載のポリマー。
側面15:
Rが脂肪族有機部分であり、任意に1つ以上の酸素原子を含む、側面2~14のいずれかに記載のポリマー。
側面16:
Rが飽和脂肪族有機部分であり、任意に1つ以上のエーテル酸素原子を含む、側面2~15のいずれかに記載のポリマー。
側面17:
前記ポリマーは、(1)少なくとも1種のハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートと、(2)エーテル結合及び有機スペーサー部分を介して(メタ)アクリレート官能基に結合したハロアルキル部分を有するハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート以外の、少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化化合物とのコポリマーである、側面2~16のいずれかに記載のポリマー。
側面18:
以下を含む硬化性組成物。
(1)エーテル結合及び有機スペーサー部分を介して(メタ)アクリレート官能基に結合したハロアルキル又はハロアルケニル部分を有する少なくとも1種のハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート(例えば、側面2~16のいずれかにさらに特定される一般構造(I)に対応するハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート)、及び
(2)以下の少なくとも一つ:
i)エーテル結合及び有機スペーサー部分を介して(メタ)アクリレート官能基に結合したハロアルキル又はハロアルケニル部分を有するハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート以外の、(メタ)アクリレート官能化化合物、又は
ii)硬化剤。
側面19:
さらに、ハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレートではない少なくとも1種のコモノマーを含む、側面18に記載の硬化性組成物。
側面20:
エーテル結合及び有機スペーサー部分を介して(メタ)アクリレート官能基に結合したハロアルキル又はハロアルケニル部分からなる、少なくとも1種のハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート(例えば、側面2~16のいずれかにさらに特定される一般構造(I)に対応するハロアルキル/ハロアルケニルエーテル(メタ)アクリレート)からなる1種以上のモノマーを重合することを含む、
ポリマーの製造方法。
側面21:
接着剤、コーティング、塗料、シーラント、繊維、織物、成形品、フィルム、シート、ラミネート、及び複合材からなる群から選択される用途における、側面1~17のいずれかに記載のポリマーの使用。
側面22:
側面1~17のいずれかに記載の少なくとも1種のポリマーを含む製品。
【0098】
この明細書内では、実施形態は、明快かつ簡潔な明細書を書くことができるように記載されているが、実施形態は、本発明から離れることなく様々に組み合わせたり、分離したりできることが意図され、理解される。例えば、本明細書に記載されているすべての好ましい特徴は、本明細書に記載されている本発明のすべての態様に適用可能であることが理解される。
【0099】
いくつかの実施形態では、本明細書における本発明は、ポリマー、硬化性組成物、又はポリマーもしくは硬化性組成物を作製もしくは使用するためのプロセスの基本的かつ新規な特性に実質的に影響しない要素又はプロセスステップを除外するものとして解釈することができる。さらに、いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書で指定されていない任意の要素又はプロセスステップを除外するものと解釈することができる。
【0100】
本発明は、特定の実施形態を参照して本明細書で例示及び説明されているが、本発明は、示された詳細に限定されることを意図していない。むしろ、特許請求の範囲の均等物の余地及び範囲内で、本発明から逸脱することなく、詳細に様々な修正を加えることができる。
【実施例
【0101】
例1:30%アセトン及び70%DMSO溶媒中における、1,1,2-トリフルオロ-2-クロロエチレン(CTFE)と2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の反応
オーバーヘッド攪拌を備え、デジタル温度計、及び窒素源に接続された出口を備えたドライアイスコンデンサーを備えた1L4つ口(14/20)フラスコを使用した。残りの口に事前に穴をあけたセプタムを置いた。反応フラスコに、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(80.22g/0.6160mol)、DMSO(374.66g/4.7953mol)、アセトン(161.55g/2.7774mol)、炭酸カリウム(94.03g/0.6803mol)及びベンゾキノン(0.76、7/03×10-3mol)を入れた。反応混合物は、16~21℃の範囲の温度で2日間にわたって、CTFE(78.92g/0.6776mol)を、セプタムを通して表面下にアリコートで加えながら、撹拌した。内部標準(α、α、α-トリフルオロトルエン)を反応混合物に添加して、FNMRによる反応を追跡した。
【0102】
反応混合物を、2Lの水及び1Lのジクロロメタンを含む5Lの分液漏斗に入れ、10分間撹拌した。攪拌を停止し、15分間放置した後、2つの不混和層が形成された。得られた層を分離し、底部の有機層を1Lの水で2回洗浄した。有機層を分離し、溶媒を減圧下で除去して、生成物を単離した。単離された粗製2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシメタクリレート生成物の量は、120.90gであった。生成物は、2-ヒドロキシメタクリレート出発物質に基づくFNMRにより73重量%の純度及び58%の収率を有していた。
【0103】
シリカゲルを充填した2”×24”カラムを用いたカラムクロマトグラフィーにより粗製物質を精製した。シリカと粗製物質の比は15:1であった。生成物を10%酢酸エチル/n-ヘキサンで溶出した。粗製物質を複数のバッチで精製した。合わせた精製生成物は66.99グラムで、GCのA%による純度は97%であった。生成物は、GC/MS及びLC/MSでも確認された。精製された生成物の収率は、2-ヒドロキシメタクリレート出発物質に基づいて43%であった。
【0104】
19F NMR(CDCl3):δ-88.26ppm(FA),-88.74ppm(FB*,(q of d of d,2Fa-Fb=-141Hz,3Fa-H=3.5Hz,3Fb-H=4.7Hz),δ-154.31(Fc)(d of t,3F-F=12Hz,2F-H=48
1HNMR(CDCl3):δ1.95ppm(d of d,3H);δ4.20ppm(d of d of d,2H);δ4.40(d of d of d,2H);δ5.60(d of m 1H)δ6.08ppm(d of d of d,1H,2H-F=48,3H-Fa=3.5Hz,3H-Fb=4.7Hz);δ6.10ppm(d of m,1H)
*FAとFBの化学シフトは、ABタイプのカルテットから計算された。
【0105】
例2:DMSO溶媒中における、1,1,2-トリフルオロ-2-クロロエチレン(CTFE)と2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の反応
マグネチックスターラーを備え、デジタル温度計、及び窒素源に接続された出口を備えたドライアイスコンデンサーを備えた1L4つ口(14/20)フラスコを使用した。残りの口に事前に穴をあけたセプタムを置いた。反応フラスコに、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(20.12g/0.1546mol)、DMSO(116.85g/1.4956mol)、炭酸カリウム(21.84g/0.1580mol)及びベンゾキノン(0.06/5.55×10-4mol)を入れた。反応混合物は、17~25℃の範囲の温度で3時間にわたって、CTFE(18.81g/0.1615mol)を、セプタムを通して表面下にアリコートで加えながら、撹拌した。内部標準(α、α、α-トリフルオロトルエン)を反応混合物に添加して、FNMRによる反応を追跡した。
【0106】
反応混合物を水700ml及び塩化メチレン200mlと合わせ、15分間攪拌した。得られた混合物を、分液漏斗に入れ、15分間放置した後、2つの非混和性層が形成された。得られた層を分離し、底部の有機層を200mLの水で2回洗浄した。有機層を分離し、溶媒を減圧下で除去して、生成物を単離した。単離された粗製2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシメタクリレート生成物の量は、33.34gであった。生成物は、2-ヒドロキシメタクリレート出発物質に基づくFNMRにより74重量%の純度及び64%の収率を有していた。
【0107】
粗製物質を、約1トールの真空下で短経路蒸留により精製した。集められた蒸留生成物の量は27.02gであった。蒸留された生成物は、2-ヒドロキシメタクリレート出発物質に基づくFNMRにより、80重量%の純度及び57%の収率を有していた。
【0108】
19F NMR(CDCl3):δ-88.26ppm(FA),-88.74ppm(FB*,(q of d of d,2Fa-Fb=-141Hz,3Fa-H=3.5Hz,3Fb-H=4.7Hz),δ-154.31(Fc)(d of t,3F-F=12Hz,2F-H=48
1HNMR(CDCl3):δ1.95ppm(d of d,3H);δ4.20ppm(d of d of d,2H);δ4.40(d of d of d,2H);δ5.60(d of m 1H)δ6.08ppm(d of d of d,1H,2H-F=48,3H-Fa=3.5Hz,3H-Fb=4.7Hz);δ6.10ppm(d of m,1H)
*FAとFBの化学シフトは、ABタイプのカルテットから計算された。
【0109】
例3:2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシメタクリレートとメチルメタクリレートの共重合
3種のポリマーを準備した。以下にモノマー組成を示す。
3.1 MMA:15グラム
3.2 MMA:14.25グラム、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシメタクリレート:0.75グラム
3.3 MMA:12.00グラム、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシメタクリレート:3.00グラム
【0110】
上記のモノマーをガラスバイアル中で室温で混合した。分散すると、約75ppmの開始剤であるLuperox 11M75(Arkema Inc.社製)をバイアル内の反応混合物に加え、適宜密閉した。バイアルを水浴に浸し、61℃で2時間加熱した。その後の重合は、バイアルを120℃に1時間加熱することにより行われた。透明なアクリルポリマーが得られた。
【0111】
例4:GPCを使用した分子量測定
Wyatt社製HELEOS II、Wyatt社製ビスコスターIII示差粘度計、及びWyatt社製T-rEX示差屈折計と組んだウォーターズ2695
カラム:2つのPL Gel混合Cカラムとガードカラム(7.8mmI.D.×30cm、5μm)
溶媒:THF(HPLCグレード)
温度:35℃
流量:1.0mL/min
注入量:100μL
サンプル濃度:~1.0mg/mL(サンプルはろ過されず)
標準:Mpが550~1,677,000g/molの範囲にある10個のポリ(メチルメタクリレート)標準、ポリスチレン30,000g/molを使用してHELEOS IIを正規化した。
分析:ASTRA 6;キャリブレーションデータは、R2が0.999以上の3次多項式に適合させた。
【0112】
【0113】
例5:2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシメタクリレートとメチルメタクリレートの共重合
3種のポリマーを準備した。以下にモノマー組成を示す。
5.1 MMA:13.50グラム及び2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシメタクリレート:1.50グラム
5.2 2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシメタクリレート:15.00グラム
【0114】
上記のモノマーをガラスバイアル中において室温で混合した。分散すると、約40ppmの開始剤であるLuperox 11M75(Arkema Inc.社製)をバイアル内の反応混合物に加え、適宜密閉した。バイアルを水浴に浸し、61℃で2時間加熱した。その後の重合は、バイアルを120℃に1時間加熱することにより行われた。透明なアクリルポリマーが得られた。
【0115】
例6:GPCを使用した分子量測定
例4と同じGPC方法を使用して、以下の結果が得られた。
【0116】
【0117】
例7:得られたポリマーの屈折率(RI)
例4.2及び例2.1のポリマーを、テトラヒドロフラン(THF)で溶解し、ポリマーの固形分濃度約40重量%とした。高品質のフィルムを作成できるように、溶液をポリマーの約16wt%に希釈した。溶媒がなくなるようにフィルムを乾燥した。フィルムサンプルは、ルドルフ・リサーチ・アナリティカル社製J457屈折計のサンプルホルダーに載置した。サンプルを最初に2時間50℃に加熱して残留溶媒を除去し、次に屈折計が示すように屈折率が安定し、膜の品質が良好になるまで20℃に4時間冷却した。結果は次のように要約される。
【0118】
【0119】
結果は、ポリ(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシメタクリレート)がPMMAよりも低い1.453のRIを持っていることを示しており、MMAとのコポリマーが1.453から1.491のRIを持つと考えられる。