(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】植物体を栽培するための方法および器具
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20230105BHJP
A01G 27/02 20060101ALI20230105BHJP
A01G 9/02 20180101ALI20230105BHJP
A01G 9/04 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
A01G31/00 601A
A01G27/02 B
A01G9/02 E
A01G9/04
(21)【出願番号】P 2020529101
(86)(22)【出願日】2018-08-01
(86)【国際出願番号】 US2018044818
(87)【国際公開番号】W WO2019028145
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-28
(32)【優先日】2017-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520038518
【氏名又は名称】パートロウ ジョナサン ディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パートロウ ジョナサン ディー.
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-501724(JP,A)
【文献】実開昭54-120426(JP,U)
【文献】登録実用新案第3192278(JP,U)
【文献】実開昭58-146453(JP,U)
【文献】特開昭62-096023(JP,A)
【文献】特開昭61-015633(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02644025(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00
A01G 27/02
A01G 9/02
A01G 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物体を栽培する方法であって、
植物の成長途中の部分を栽培用ポットの中に配置する工程と、
前記栽培用ポットを、キャップの穴の中に配置する工程と、
筐体上に前記キャップを支持する工程と、
液肥溶液を、前記液肥溶液の上面が前記栽培用ポットの下面よりも低くなるように前記筐体の中に入れる工程と、
前記植物に光を当てる工程と、
収穫に十分なだけ成長するまで前記植物の成長をモニターする工程と、
前記植物の一部を間欠的に収穫する工程と、
養液を再施用し、前記植物が成長しつづけて複数回収穫できるように、前記植物を連続的に栽培する工程と、を含み、
前記キャップは、そのキャップに対する光の透過を妨げる材料を含み、
前記筐体は、その筐体に対する光の透過を妨げる材料を含
み、かつ廃液手段を有さない、方法。
【請求項2】
前記筐体が不透液性ライナーを支えて前記ライナーが前記液肥溶液を保持するように、前記液肥溶液を前記筐体の中に入れる前に前記筐体に前記ライナーを加えることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記養液の深さ方向に前記養分の濃度が変化するように前記液肥溶液を配置する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記植物
の根構造の一部が成長して前記液肥溶液の中に直接浸る、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記根構造の一部が成長して前記栽培用ポットの底と前記養液の上面との間に延び、前記チャンバー内で空気に曝露される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記植物の前記根構造の一部が前記チャンバー内で空気に曝露され、前記チャンバー内で前記空気から酸素を取り込む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記植物の前記根構造の一部が前記チャンバー内で空気に曝露され、前記溶液の蒸発によって前記空気中にある養分を取り込む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記植物に間欠的に光が当てられる、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記植物は、長時間にわたって華氏100度を超える温度にさらされる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記植物の成長状態がモニターされる、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記成長状態は、植物の種類に応じて変更される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
養分の濃度は、前記チャンバー内に配置された養分保持ビーズによって制御される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記植物は、果実のなる植物である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
不透明の筐体と、
前記筐体に支持され、開口部が画定されたキャップと、
成長している生物を支持するために前記キャップから支持された栽培用ポットと、
前記筐体内に入れられた液肥溶液と、を含み、
前記筐体は廃液手段を有さず、前記液肥溶液の上面のほうが前記栽培用ポットの下面よりも低い、生物を育てるためのチャンバー。
【請求項15】
前記養液は、前記養液の深さ方向に変化する養分密度を含む、請求項14に記載のチャンバー。
【請求項16】
前記生物の一部は、前記ポッドの底と前記養液の上面との間に延び、前記チャンバー内の空気に曝露される、請求項14または15に記載のチャンバー。
【請求項17】
前記生物の一部は、前記ポッドの底と前記養液の上面との間に延び、前記チャンバー内の空気に曝露され、前記チャンバー内の空気に曝露された前記生物の一部は、前記チャンバー内の前記空気から酸素を取り込む、請求項14または15に記載のチャンバー。
【請求項18】
前記生物の一部は、前記ポッドの底と前記養液の上面との間に延び、前記チャンバー内の空気に曝露され、前記チャンバー内の空気に曝露された前記生物の一部は、前記溶液の蒸発によって養分を取り込む、請求項14または15に記載のチャンバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条(e)により、2017年8月2日に出願された米国特許仮出願第62/540,243号の優先権の利益を主張するものであり、その開示内容全体を本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、植物体を養液栽培するための方法および器具に関する。特に、本出願は、個々の栽培用マイクロチャンバーで混合培地によるマイクロ栽培法を用いる方法を適用するための方法および器具に関する。
【背景技術】
【0003】
ハイドロポニック農業は、植物または他の生物を液肥溶液で栽培するハイドロカルチャーの一形態である。伝統的な方法では、根構造への酸素供給と溶液中の養分密度を最適な塩梅で維持するために、養液を注意深くモニターし、制御する必要がある。一般に、ハイドロポニックシステムには、養液栽培される個体の成長速度に影響する様々なパラメーターの積極的な管理と制御が必要である。これには、個体に対する施肥用の、灌水、植物の根のフォギング、酸素供給あるいは動力を必要とする他の方法が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のハイドロポニック法では、施肥と酸素供給を積極的に行うための動力源の不足、個体に与える養分を注意深く制御する必要性をはじめとして、様々な課題が生じやすい。これらの積極的な制御技術がゆえ、養液栽培法を大規模に適用したり遠隔地で適用したりするには限度がある。一方、養液栽培は、比較的狭い空間で時間をかけずに栽培をするための非常に効果的な手法として認識されている。
【0005】
従来の受動的なハイドロポニックシステムでは、例えばレタスなどの栽培周期が短い植物の1つの栽培周期を厳密にモニターする必要があり、そのような形に限定されている。収穫後、植物をシステムから取り除き、新たな栽培を開始する。
【0006】
ハイドロポニックスの持つ将来性は既存の環境では実現されていないが、世界的な人口増加と、これに伴う人口密度の増加により、世界中で食料不安の発生率が増加している。都市部でさえ、健康的で自然な農産物を入手しにくくなる問題が、フードデザートの存在によって証明されている。フードデザートとは、大きな移動負担なしには大衆が主食を容易には手にできない、都市部における場のことである。したがって、世界中の複数の地域で実施できる、食用の生物を栽培するための単純かつ比較的低コストで、管理が比較的容易で動力を必要としない器具が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、添付の特許請求の範囲に記載される特徴および/または特許性のある主題を単独または任意の組み合わせで含むことができる以下の特徴を1つまたは複数含む。
【0008】
本開示の第1の態様によれば、植物体を栽培する方法は、植物の成長途中の部分を栽培用ポットの中に配置する工程を含む。また、この方法は、栽培用ポットを、キャップの穴の中に配置する工程を含み、キャップは、そのキャップに対する光の透過を妨げる材料を含む。また、この方法は、筐体上にキャップを支持する工程を含み、筐体は、その筐体に対する光の透過を妨げる材料を含む。この方法は、さらに、液肥溶液を、液肥溶液の上面が栽培用ポットの下面よりも低くなるように筐体の中に入れる工程を含む。この方法は、さらに、植物に光を当てる工程を含む。この方法は、さらに、収穫に十分なだけ成長するまで植物の成長をモニターする工程を含む。この方法は、さらに、植物の一部を間欠的に収穫する工程を含む。この方法は、さらに、養液を再施用し、植物が成長しつづけて複数回収穫できるように、植物を連続的に栽培する工程を含む。
【0009】
いくつかの実施態様では、本方法は、筐体が不透液性ライナーを支えてライナーが液肥溶液を保持するように、液肥溶液を筐体の中に入れる前に筐体にライナーを加えることをさらに含んでもよい。
【0010】
いくつかの実施態様では、本方法は、養液の深さ方向に養分の濃度が変化するように液肥溶液を配置することを含んでもよい。
【0011】
いくつかの実施態様では、本方法は、液肥溶液の中に直接浸る植物の根構造の一部の成長をさらに含んでもよい。
【0012】
いくつかの実施態様では、本方法は、成長して栽培用ポットの底と養液の上面との間に延び、チャンバー内で空気に曝露される根構造の一部をさらに含んでもよい。
【0013】
いくつかの実施態様では、本方法は、チャンバー内で空気に曝露され、チャンバー内で空気から酸素を取り込む植物の根構造の一部をさらに含んでもよい。
【0014】
いくつかの実施態様では、本方法は、チャンバー内で空気に曝露され、溶液の蒸発によって空気中にある養分を取り込む植物の根構造の一部をさらに含んでもよい。
【0015】
いくつかの実施態様では、本方法は、植物に間欠的に光をあてることをさらに含んでもよい。
【0016】
いくつかの実施態様では、本方法は、植物を長時間にわたって華氏100度を超える温度に曝露することをさらに含んでもよい。
【0017】
いくつかの実施態様では、本方法は、植物の成長状態をモニターすることをさらに含んでもよい。
【0018】
いくつかの実施態様では、本方法は、成長状態を植物の種類に応じて変更することをさらに含んでもよい。
【0019】
いくつかの実施態様では、本方法は、養分の濃度をチャンバー内に配置された養分保持ビーズによって制御することをさらに含んでもよい。
【0020】
いくつかの実施態様では、本方法は、果実のなる植物である植物を利用することをさらに含んでもよい。
【0021】
本開示の別の態様によれば、生物を育てるためのチャンバーは、不透明の筐体と、筐体に支持されたキャップであって、開口部が画定されたカバーと、生物の成長を支えるように構成され、キャップから支持された栽培用ポットと、筐体内に入れられた液肥溶液と、を含み、液肥溶液の上面のほうが栽培用ポットの下面よりも低い。
【0022】
いくつかの実施態様では、生物は、キャップの下に延びる根構造とキャップから上に延びる葉を持つものであってもよい。
【0023】
いくつかの実施態様では、チャンバーは、不透液性ライナーをさらに備えてもよい。
【0024】
いくつかの実施態様では、養液は、養液の深さ方向に変化する養分密度を含んでもよい。
【0025】
いくつかの実施態様では、生物は、液肥溶液に生物の一部が直接の浸ることで養分が施用されるものであってもよい。
【0026】
いくつかの実施態様では、生物の一部は、ポッドの底と養液の上面との間に延びてチャンバー内の空気に曝露されてもよい。
【0027】
いくつかの実施態様では、チャンバー内の空気に曝露された生物の一部は、チャンバー内の空気から酸素を取り込んでもよい。
【0028】
いくつかの実施態様では、チャンバー内の空気に曝露された生物の一部は、溶液の蒸発によって養分を取り込んでもよい。
【0029】
いくつかの実施態様では、チャンバーは、廃棄物から再利用された筐体を含んでもよい。
【0030】
本開示の別の態様によれば、生物を成長させる方法は、本開示の上述した態様の実施形態を任意に組み合わせた構造を用いることを含み、この方法は、ポッド内の栽培用培地に成長途中の個体を入れ、養液を使うことで成長途中の個体が十分に成長できるようにすることを含む。
【0031】
いくつかの実施態様では、この方法は、消費された養液を交換し、個体の進行中の成長を維持することをさらに含んでもよい。
【0032】
追加の特徴は、単独で、あるいは上記に列挙した特徴および/または請求項に列挙した特徴など、他の任意の特徴と組み合わせて、特許性のある主題を含むことができ、以下の様々な実施形態の詳細な説明のうち、現在認識されている実施形態を実施する最良の形態を例示するものを検討すると、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
詳細な説明では、特に添付の図面を参照する。
【
図1】
図1は、成長している生物を支える栽培用チャンバーの斜視図であり、チャンバーの内側の一部を、チャンバーの筐体の一部を切り取って示してある。
【
図2】
図2は、
図1と同様の図であり、異なる成長段階とチャンバー内の養液の液面を示している。
【
図3】
図3は、
図1と同様の図であり、異なる成長段階とチャンバー内の養液の液面を示している。
【
図4】
図4は、
図1と同様の図であり、異なる成長段階とチャンバー内の養液の液面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1を参照すると、本開示は、混合養液を含む、水を供給する流体12を入れるように構成された単体のチャンバー10と、水を供給する流体12が混合養液と一緒に入ったチャンバー10ごとに栽培用ポット16が1つ付いたチャンバーキャップ14とを使用する方法を含む。チャンバー10には不透湿性ライナー18が内張りされ、不透湿性ライナー18によって水を供給する流体12が浮いた状態で植物性個体22の根系20が水を供給する流体12に届くようになっている。水を供給する流体12は、所定の養分比の養液混合物を運ぶ。いくつかの実施形態では、水を供給する流体12は、密度によって、保水ビーズによって、あるいは根20が水を供給する流体12を介して適切な養分を利用できるような方法で養分を浮いた状態にする他の手段によって分離された、養分比の異なる養液を含むものであってもよい。他の実施形態では、チャンバー10で、混合培地と水を供給する流体と混合養液とを支持してもよい。
図1の実施形態は、栽培用ポット16を1つ含む単体のチャンバー10である。以下でさらに詳細に説明するように、他の実施形態では、別のチャンバー10に複数の栽培用ポット16を含んでもよい。
図1の実施形態では、チャンバー10は、段ボール材料で作られた筐体24を有する。例示的な実施形態では、筐体24は不透明である。他の実施形態では、筐体が半透明で、チャンバー10内での藻類の成長を抑制できる程度に遮光性であってもよい。他の実施形態では、チャンバー10の筐体24を完全に不透液性にして、ライナー18を省いてもよい。植物22のポッド16よりも下の部分20には、チャンバー10内からチャンバー10内の栽培用培地12を介して成長に必要な養分、空気、水分がすべて供給される。
【0035】
チャンバーキャップ14には開口部26が1つ設けられ、懸垂式の栽培用ポット16を1つキャップ14に挿入したときに、栽培用ポット16が開口部26を通って支持される。例示的な実施形態では、キャップ14は不透明である。他の実施形態では、キャップ14が半透明で、チャンバー10内での藻類の成長を抑制できる程度に遮光性であってもよい。他の実施形態では、栽培用ポット16をキャップ14に組み込んでもよい。さらに他の実施形態では、ポッド16を、機械的手段、接着手段、摩擦または他の手段によりキャップ14に固定してもよい。
【0036】
キャップ14は、栽培用ポット16を支え、チャンバー10内の空気と水分からなる空間の最上部でバリア層を提供し、成長している植物22の重量を支え、可視光がチャンバー10に入るのを妨げる。植物性個体22は植物であってもよく、いくつかの実施形態では、養分密度の高い流体12を用いる栽培に適した真菌または他の生物であってもよいことを、理解されたい。
【0037】
様々な実施形態において、栽培用ポット16の最上部は、開いていてもよいし、植物または真菌のチャンバー10より上にある部分が成長できるようにする開口が設けられた半開きでもよく、植物または真菌が中で成長するのに十分な容積を持ち、なおかつ側壁と底に複数の穴が設けられた、閉じた最上部であってもよい。別の実施形態では、栽培用ポット16は、植物22または真菌のポッド16より下で成長している部分20(例えば、根構造など)が、適切な空気と水分の交換を実現する養液12または他の混合培地の中に進入してその中でのびることができるようにする膜を含んでもよい。栽培用ポット16は、必要に応じて、成長している植物22または真菌の栽培用ポットより下の部分20の成長を可能にし、促進する、どのような形状または深さであってもよい。
【0038】
ここで
図2から
図4を参照すると、植物22のポッドより下の部分20の成長の進行が、栽培用培地12の減り具合に照らして示されている。
図3に示す発達の最初の段階では、栽培用培地12の上面30とポッド16の底32との間に空間が作られるように、両者が離れた位置にある。ポッド16には、例えば土耕などの栽培用培地と、種子、球根、苗または挿し芽などの成長途中の個体が入っている。キャップ14は、栽培用培地12の表面30より上にあるポッド16の底32によって空間ができるような位置に配置されている。ポッドより下の部分20は、この部分20による取り込みと蒸散によってチャンバー10の中から水分、酸素、養分を集め、ポッド16内の栽培用培地から養分を吸収し、成長途中の個体から栽培用培地12の上面30とポッド16の底32との間にある空間の中に入って十分に成長する。植物22が成長するにつれて、ポッドより下にある部分20の一部が、
図2に示すように栽培用培地12に浸るようになる。ポッドより下の部分20の一部は、栽培用培地12の表面30の上にある空間の空気と接触し、根の一部36が栽培用培地12に直接沈むことで、水分と養分を吸収する。植物22が完全に育っても、
図4に示すように、栽培用培地12は下がり続ける。成長が進む過程のいつでも植物22から農産物を収穫することが可能であり、植物の成長が維持された状態になれば、栽培用培地12の交換を継続することで、植物22から農産物を収穫しつづけることができる。真菌、菌糸、藻類、細菌、ウイルスなど、植物以外の生物をチャンバー10で栽培または培養する場合、未成熟の生物は、胞子の形であってもよいし、ポッド16の中に置かれた基質に播種されていてもよく、栽培用培地12と直接混合されてもよいことを、理解されたい。
【0039】
単一の生物22に対して1つのチャンバー10を使用することの1つの利点は、特定の生物の特性に関するデータを収集する機能にある。同種の植物または生物であっても、同種の別の植物とはまったく異なる速度で、水、空気、養分を吸収する場合があることが、経験的に認められている。センサーを使用してこれらのパラメーターをモニターすることにより、特定の生物に対する栽培入力を調整して適用し、収量を最大化することができる。また、栽培している特定の生物に応じてチャンバー10の大きさを変えてもよいことを理解されたい。いくつかの実施形態では、筐体24の容積、高さ、幅、形状または材料すらも変えられるようにしたチャンバー10であってもよい。いくつかの実施形態では、チャンバー10は、筐体24の一部が狭く、キャップ14も小さい状態で形成される。最上部付近で筐体24を狭くする手法を用いると、給水効率が増し、蒸発が減る傾向にある。さらに他の実施形態では、栽培用培地12の蒸発を抑える傾向がある筐体24の側壁にポッド16を配置してもよい。
【0040】
個体22が成長しつづけ、養液/栽培用培地12が枯渇したら、適切なレベルまでチャンバー10に再充填する。培地12の補充レベルは、空気を供給する一次根を覆ってしまうことで植物22を窒息させる最大量を超えない限り、どのような量であってもよい。培地12の理想的なレベルは、表面30がチャンバー10の全高の半分から4分の3の間にくるレベルであることが見いだされている。これにより、成長を維持するのに必要な介入から次の介入までの間隔が長くなる。
【0041】
理想的には、チャンバー10の全高の半分から4分の3である養液/成長培地12の高さによって、介入または追加の養液12を加える間隔が延びることである。チャンバー10の高さの半分から4分の3より多い量や少ない量も、根系に適切な量の養液12が提供され、必要な空気/養液混合物を空気根で得られるだけの十分な空間が残る限り、許容可能である。これは、チャンバー10の形状、植物の種類、環境の個々の特性によって異なる。
【0042】
本明細書で開示する方法およびシステムは、単体のハイドロポニックチャンバー10専用に構築して製造することができる。いくつかの実施形態では、キャップ14は、太陽光によってセンサーに動力を与え、反射で光合成を増やすものであってもよく、追加の流体混合物を加えるための開口部または他の方法を備えてもよい。
【0043】
本明細書で開示する方法は、栽培用ポッド16と一緒に、代替用キャップ14を利用して、従来の農業用容器の代わりに用いることで実施してもよいし、従来の農業用容器の上に乗るか、従来の農業用容器に何らかの他の手段で取り付けまたは固定される代替用キャップ14を利用して、溶液12を保持できる他の容器の代わりに用いることで実施してもよい。この場合、栽培用ポット16は、キャップ14と一体の部材であるか、他の何らかの手段によってキャップ14により取り付けられ、固着され、あるいは固定される。
【0044】
また、本明細書で開示する方法は、栽培用ポッド16と一緒に、代替用キャップ14を利用して、消費財廃棄物または包装の代わりに農業用容器を用いる形で実施してもよいし、代替された容器の上に乗るか、代替された容器に何らかの他の手段で取り付けられ、固着され、あるいは固定される代替用キャップ14を利用して、水を供給する流体液12を保持できる他の容器の代わりに用いる形で実施してもよい。この場合、栽培用ポット16は、キャップ14と一体の部材であるか、他の何らかの手段によってキャップ14により取り付けられ、固着され、あるいは固定される。
【0045】
さらに、本明細書で開示する方法は、ハイドロポニック代替用ライナーを用いる、容器にコーティングを施す、穴の開いた容器の中に溶液12を保持できる混合培地を用いるなどの手段によって、水を供給する流体を入れることのできる容器を作製することで、消費財廃棄物または包装の代わりに農業用容器を用いる形で実施してもよい。代替された容器は、栽培用ポッド16と一緒に、その容器の上に乗るか、その容器に何らかの他の手段で取り付けられ、固着され、あるいは固定される代替を使用して、水を供給する流体液12を保持できる他の容器に代えて用いる形で実施してもよい。この場合、栽培用ポット16は、キャップ14と一体の部材であるか、他の何らかの手段によってキャップ14により取り付けられ、固着され、あるいは固定される。
【0046】
代替された実施形態のいずれにおいても、キャップ14は、太陽光によってセンサーに動力を与え、反射で光合成を増やすものであってもよく、追加の流体混合物を加えるための開口部または他の方法を備えてもよい。
【0047】
本開示は、一体型の栽培用ポッド16単体または栽培用ポッド16を配置、静止または固定するための空隙(穴)を有し、容器に固定するキャップ14を含む。キャップ14は、栽培用ポッド16と一緒に、チャンバー10の上に乗るか、その容器に何らかの他の手段で取り付けられ、固着され、あるいは固定される。この場合、栽培用ポット16は、キャップ14と一体の部材であるか、他の何らかの手段によってキャップ14により取り付けられ、固着され、あるいは固定され、養分を含む、水を供給する溶液12を入れることができる容器の中で栽培用ポット16がつり下げられる。
【0048】
チャンバー10に利用できるか、チャンバー10として機能するように変換できる消費財廃棄物の実施形態の例として、ネジ式の上蓋に栽培用チャンバー10を備えた、使い捨てのコーヒーカップ、プラスチックカップ、コーヒー容器、ゴミ箱、既存の植木鉢(容器)、バケツ、缶、ボウル、瓶詰め用の瓶ならびに、端に乗る大きさの栽培用ポッド16および蓋と瓶との間に栽培用ポッド16を挟んだネジ式の蓋、蓋にネジが付いたあらゆる種類のペットボトル、適切な大きさのキャップ14とオフセット穴または穴の中に滑り込ませるための一体型の形状と大きさの栽培用ポッド16が付いた、あらゆる種類の飲料缶があげられる。本明細書で列挙した代替できる可能性のある構造物が他に多くあるため、上記の例は参照用であって代替できる可能性のある消費財材料の一覧も網羅的ではない。
【0049】
いくつかの実施形態では、この方法を使用して、個々の植物レベルでの種子からの成長とデータ収集を追跡することができる。データを収集できる内部センサーおよび外部センサーをチャンバー10で使用してもよい。センサーは、有線または無線でデータを報告できるものであってもよい。センサーは、独立していても、他のチャンバー10のネットワークに接続されていてもよい。いくつかの実施形態では、センサーは、チャンバー10または他の場所についての視覚的または聴覚的な表示を与えられるものであってもよい。センサーは、チャンバー10またはキャップ14上の太陽電池によって太陽から動力を得るものであってもよいし、独立した外部電力から動力を得るものであってもよいと考えられる。各システムとシステムの個々のコンポーネントを、一緒に使用するときのように個々に追跡し、長期と短期の両方で、各システムおよび個々のプラント各々の正確な特性としてのデータと、蓄積された累積データとを、きめ細かく提供してもよい。植物の種類、植物の大きさ、資源(水など)の使用ならびに、受光量、光の温度、光の色スペクトル、チャンバー10の外の気温、チャンバー10内の気温、溶液12のpH、溶液12の体積、溶液の養分のppm、各養分の使用量、植物の寿命全体にわたる溶液12中の養分の濃度、植物の収穫量、経時的な成長率といった環境要因(チャンバー10内の要因および外部要因を含む)などのデータを追跡および収集してもよい。
性能
【0050】
本開示の性能は、Kratkyに付与された米国特許第5,385,589号および同第5,533,299号に開示された手法(「Kratky法」)と対比することができる。この手法は、よく知られている受動的な養液栽培法である。以下で説明するように、本開示の方法は、Kratky法と比較して予想外の優れた性能を有する。特に、Kratky法はレタスなどの短期作物用としてよく知られており、1種類の溶液で複数の植物を同時に支えるように設計された構造であることを明確に開示している。
【0051】
対照的に、本開示は、単一の個体を収容する容器に関する。この区別は、本開示の方法および器具の優れた性能の基礎となると判断されている。すなわち、Kratky法は、1回の収穫期間を超える長期にわたる栽培と水の使用には適していない。複数の植物に同じ溶液を用いると、植物が水中に放出する化学物質を発し、そのことが水を毒性にして、植物間での競争を食い止めるために成長しないように誘発する生物学的な信号が他の植物に送られるらしいことが見いだされている。Kratky法では、植物同士が競合して化学信号を送り出す時間が増加の一途をたどりつつ、上記の生物学的な反応が増え、集中していくようになる。
【0052】
本開示とKratky法では有用性や結果、基礎となる動作原理は異なるため、いかに比較をするかを決定し、比較を行うための実験を設計するには多くの作業が必要であった。Kratky法は、永続的かつ水平な場所で、温度、水の範囲(pHおよびPPM)について非常に厳しいパラメーターを使用し、植物栽培システムごとに1種類の作物ですべての植物を同時に収穫する、(レタスや葉菜などの)短期間で成長する短命の作物でのみ有用であるため、それぞれのベースラインに対して各々を試験し、試験のベースライン/定数として選択する測定基準も試験するのは困難である。
【0053】
Kratky法では(同種の植物であっても)各々の植物および種子が異なる速度で成長し、最も早く大きく育つ株が他の株よりも先に水と養分を吸収して資源が行き渡らない他の株を枯らしてしまう際に複数の開口部があるため、比較を行う際、Kratky法で連続的な収穫を維持し、栽培を維持するのは困難である。あるいは、小さくて成長が遅い植物が資源を利用できるように水を補充しようとすると、大きく成長の早い植物にとっては過飽和になり、枯れてしまうであろう。
【0054】
上記の両方の理由により、試験で複数種類の植物を使用しようとしても結果の精度に限界がある。青梗菜や異なる種類のレタスなどの葉菜を使用しても、青梗菜はレタスが追いつけないほど早く水を吸収するためレタスがすべて水不足で枯れてしまい、レタスが枯れないようにシステムに連続的に補水すると青梗菜が枯れてしまう。介入とpHの調整の助けを借りず、気泡も使用しない、Kratky法を用いた水/養液では、連続収穫法での栽培を維持することができなかった。Kratky法での複数の開口部と、他の植物との反応で複数の植物が発する有機廃棄物および化学交換がゆえ、水(pHおよび固体)ならびに温度範囲に必要な厳しい公差は、システムを厳密にモニターすべきであることを必要とした。さもなければ、収穫可能な大きさになる前に植物が発育を阻害されるか、枯れてしまうであろう。また、(完全に水平ではないなど)傾斜がある場合、傾斜の下端の植物には養分が行き届いて生き残ることができるが、反対側の端にある植物には水と養分が至らず、これらの植物の発育が妨げられて最終的に枯れてしまうであろうことも見いだされた。
【0055】
試験を実行するために、Kratky法のシステムを実現可能な栽培の選択肢にするために、そのシステムに対する介入が必要であった。これには、(1)水温の制御、(2)最適な水のみを使用する(逆浸透、蒸留)、(3)完全に水平であったか、水平に調整した場所にシステムを設置するだけ、(4)Kratky法で必要とされる水の重量と、植物が生き残るために維持しなければならない厳しい公差は移動性を助長しないため、他の目的には必要ないスペースを割り当てる。
【0056】
対照的に、本開示のシステムおよび方法は、栽培周期が短い作物(レタスおよび葉菜など)と、トマト、イチゴ、ナス、エンドウ豆などの結実植物を含む栽培周期が長い植物の両方に適している。本開示は、樹木、観葉植物、花などの成長しつづける/多年草で機能する方法を提供する。同じ植物での栽培および収穫サイクルの連続性は狭い温度範囲を必要とせず、非常に小さな水平の区域で複数の多様な作物を栽培することができ、非常に軽く、収穫しながら栽培が継続される。本方法は、特殊な水または処理された水を必要とせずに機能する。
【0057】
<実験結果>
実施例1-より良い成長
サラダ菜
期間:45日間
温度:華氏65~75度(約18~24℃)
照明サイクル:12~16時間/日
【0058】
水の使用量を試験する場合、レタスであれば、1株あたり270オンス(約7.6kg)の水または平均135オンス(約3.8kg)の水で2つの開口部と植物を用いたシステムに配置後、45日間にわたってレタスと葉菜でKratky法を使用して得られた最高の効率。同じ期間に、同じ条件下で栽培した本開示のシステムでは、2つの別個のチャンバー10があるにもかかわらず、1株あたり112オンス(約3.2kg)の水または平均56オンス(約1.6kg)の水を使用した。
【0059】
株を根元で切断することによる収穫物の生産に関しては、大きいほうの根圏の大きさがほぼ二倍であることから観察される、他の株より早く成長する株があるがゆえに大きさに幅があったKratky法では、7.5オンス(約212g)と11.3(約320g)オンスのレタスが生産された。比較すると、本開示のシステムで生産されたレタスは、13.4オンス(約379g)および14.2オンス(約402g)であり、大きさがはるかに近い範囲にある。本開示は、112オンス(約3.2kg)の水を用いて27.6オンス(約782g)の収穫であったのに対し、Kratky法では270オンス(約7.6kg)の水を用いて18.8オンス(約532g)の収穫であった。これは、水を41.5%しか使用せずに収量が47%増加したことを意味する。
【0060】
実施例2-より良い成長
サラダ菜
期間:60日間
温度:華氏65~75度(約18~24℃)
照明サイクル:12~16時間/日
【0061】
水の使用量を試験する場合、レタスであれば、1株あたり256.5オンス(約7.2kg)の水または合計413オンス(約11.7kg)の水で2つの開口部と植物を用いて60日間にわたってレタスと葉菜でKratky法を使用して得られた最高の効率。同じ期間に、同じ条件下で栽培した本開示のシステムでは、1株あたり194オンス(約5.5kg)の水または平均97オンス(約2.7kg)の水を使用した。
【0062】
これらの条件下で、Kratky法ではレタスの収穫が15.3オンス(約434g)および17.9オンス(約507g)であったのに対し、本開示のシステムで生産されたレタスは24.4オンス(約692g)および26.1オンス(約740g)であった。本開示のシステムは、Kratky法よりもはるかに短期間で「小頭」(11オンス(約312g))、中(19オンス(約539g))、大(26オンス(約737g))重量の市場重量に達し、本開示は45日で小さい範囲を超え、60日の時点でKratky法では「中」でしかなかったのに対し、本開示では「大」になった。
【0063】
本開示によるシステムでの根は、すべての作物にわたって平均して、より多くの葉および果実が得られながら、Kratky法の場合の1/3以下であった。したがって、本開示によるシステムは、Kratky法と比較して、根の成長を最小限に抑えつつ葉と果実の成長を促進することが明らかである。
【0064】
実施例3-より良い硬さ
サラダ菜およびケール
期間:37日目にシステム内で株が凍結して硬くなった
温度:氷点下で3日間
照明サイクル:12~16時間/日
【0065】
Kratky法では、作物の栽培に必要な温度範囲が非常に狭いことはよく知られており、これは栽培対象となる植物ならびにシステムおよび方法の限界である。インディアナ州で華氏-20度(約-29℃)という予想外の寒波に見舞われた2017年後半における試験時、一部の試験プラントは加温設備のない空間にあった。
【0066】
レタス38株とケール27株を、本開示のシステムで3日間凍結させた後、加温領域において解凍した。すべての株が生き残り、解凍後も成長を続け、その後90日間収穫が続けられた。比較すると、2つの別々の10の開口部にあるサラダ菜10株とケール10株が、Kratky法の試験システムにあった。それらが凍っていることを確認後、本開示の植物と同じ空間および同じ条件下に移動したところ、すべて枯れてしまった。Kratky法の制約と、一度に加える必要がある大量の水がゆえ、本開示の個々のシステムおよび植物が回復しなかったほど短時間では融解しないはるかに大きな氷の塊ができた。この予期せぬ発見は、大きさ、移動度の点で個々の開口の本開示によるシステムおよびプロセスの利点を強調し、本開示の栽培プロセスでは、より低温の栽培範囲(低温範囲)を拡大できるという予期しない結果が得られた。実証された証拠は、ここに開示のシステムおよび方法で、氷点下の低温から109.7度の高温までの温度範囲で作物を連続的に栽培できることを示している。
【0067】
実施例4-より良い硬さ
サラダ菜複数種、ケール(複数種)、青梗菜(複数種)、スナップエンドウ、トマト(複数種)、ピーマン(複数種)、ナス(複数種)、インゲン(複数種)、バジル(複数種)、ルッコラ、ホウレンソウ(複数種)、イチゴ
期間:180日間を超えても成長している
温度:可変で最大華氏109.7度(約43.2℃)
照明サイクル:12~16時間/日
【0068】
16時間熱を最大まで増加させ、8時間で華氏87度(約30.5℃)まで下げる周期で、毎日華氏87度(低)から109.7度(約43.2℃)で変動する試験空間において、180日を超える試験期間中、植物が繁殖し続ける。これらの条件下で、レタス、ケール、青梗菜、ホウレンソウ、スナップエンドウ、トウジシャ(いずれも寒冷地でのみ育つ作物であると考えられていた)などの伝統的な寒冷植物が繁栄しており、Kratky法での場合と同様に枯れないか、地面にあるときや他の何らかの方法での場合のように締まりがあり、トマト、ピーマン、ナスなどの温暖な気候で育つ作物は、従来知られている温度範囲での成長能力を超えていることが見いだされた。
【0069】
この結果は本方法に特有のものであり、実現できないと考えられていた地域での迅速な展開により、高価な設備なしで食物の栽培を可能にする。また、温度が華氏80~120度(約26.7~48.9℃)の範囲にあるベリーズおよび南インドで本開示のシステムにおいて寒冷気候の作物を栽培しているユーザーの圃場試験の場合にも当てはまることが示されている。
【0070】
Kratky法は、短期間で成長する栽培周期の短い植物には有効であるが、栽培周期の長い植物やパーマカルチャーには適さないことはよく知られている。本開示のシステムは、栽培周期が長い、実のなる植物および樹木、ハーブならびにパーマカルチャーにおいて、利便性、予測可能性、持続可能性、利用可能性、狭い設置面積で多数の品種を栽培する機能における有用性の点で優れている。
【0071】
本開示の方法の利点は、Kratky法を超える収量をより速く生み出し、最小限の介入で植物がシステム内で生き続けるため、継続的な収穫がその後の収穫のたびに優れた収量を生み出し続ける。例として、3か月にわたって収穫が続き、合計収穫高78オンス(約2.2kg)のレタス、寿命を迎えることなく8か月間にわたって収穫されたバジル、3か月間にわたって収穫されたトマト、3か月間にわたって収穫されたイチゴ、3か月間にわたって収穫された青梗菜、8か月間にわたって収穫され、まだ生産が続いたルッコラ、5か月間にわたって収穫されたピーマンがあげられる。
【0072】
また、本開示のシステムおよび方法を使用して、照明周期、温度、植え付け時期および養液によって、植物を個々に制御でき、研究および病気の蔓延防止のために、どの株でも隔離できることが見いだされた。このような形は、共有システムでは不可能である。植物は輸送時にも生きているため、ジャストインタイムの農業と育苗を行うことができ、適切な状態になるまで畑や果樹園への定植を遅らせることができる。
【0073】
実施例5-長い栽培周期
ドワーフトマト
期間:180日間
温度:70~80
照明サイクル:12~16時間/日
【0074】
Kratky法のシステムには、60日後に枯れ始めた植物6株が含まれており、本システムでは平均48個のトマトが得られたのに対し、60日目に収穫量が本開示のシステムの3分の1であるトマト16個であった。Kratkyシステムでは、1株あたり平均8ガロンで48ガロンの水を使用したが、本開示のシステムは60日目の時点で1株あたり2.5ガロンを使用し、次の3か月間で1株あたり平均53個のトマトが追加で生産された。
【0075】
実施例6-栽培周期の長い多年草
サンセベリア
期間:365+日間
温度:70~80
照明サイクル:4時間/日
【0076】
mother-in-law's tongueとしても知られるサンセベリアは、乾燥した気候を好み、光をあまり必要としない観葉植物である。Kratky法のシステムにて、栽培周期が短く水の要求量も低い植物であるレタスと混植で1株移植し、同時に、同じ親株からさらに別の移植を行って、本開示のシステムに入れた。
【0077】
他の植物と混植したKratky法のシステムでは、サンセベリアは他の植物に追いつくことができず、27日で枯れたが、本開示のシステムでは水20オンス(約567g)で最初に入れた株が1年後もまだ生きており、水も8オンス(約227g)未満しか必要としなかった。
【0078】
実施例7-より良い硬さ
バジル
期間:270日間
温度:70~80
照明サイクル:12~16時間/日
【0079】
開口部が6つのシステムを使用してKratky法で栽培したバジルの試験では、65日間にわたって21.6ガロン(約81.8リットル)(1株あたり3.6ガロン(約13.6リットル))の水を使用した。システムは完全に水平ではなく、高い方の端にあった2株が中央の2株よりもはるかに小さく、低い方の端にあった2株もさらに小さかった。対照的に、本開示のシステムで栽培した6株のバジルは、大きさが揃っており、65日目の時点でKratky法での株のどれよりも大きかった。比較すると、本開示の植物は、65日間にわたって合計9ガロン(約34リットル)(1株あたり1.5ガロン(約5.67リットル)の水を使用した。本開示のシステムのバジルは、依然として同じシステムにあり、8か月後にも成長して与えており、唯一の介入は水の補充であった。
【0080】
本開示は特定の実施形態に言及しているが、添付の特許請求の範囲に記載の主題から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更を行うことができることを、当業者であれば理解するであろう。