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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】自動注射薬物送出装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20230105BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20230105BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20230105BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
A61M5/315 500
A61M5/24 502
A61M5/32 500
A61M5/20 500
A61M5/20 570
A61M5/32 510K
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020533151
(86)(22)【出願日】2017-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 IB2017001754
(87)【国際公開番号】W WO2019122946
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】519266638
【氏名又は名称】バイオコープ プロダクション ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルコス、アラン
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラ、アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ポラード、マチュー
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-502886(JP,A)
【文献】特表2017-520298(JP,A)
【文献】特表2015-532157(JP,A)
【文献】特表2014-502888(JP,A)
【文献】特表2014-506159(JP,A)
【文献】特表2011-520569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/24
A61M 5/32
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送出アセンブリハウジングと、少なくとも部分的に前記薬物送出アセンブリハウジング内に位置するシリンジアセンブリとを備えており、前記シリンジアセンブリは、プランジャと、あらかじめ充てんされた単位用量の薬物収容チャンバと、針とを含み、前記プランジャ、前記薬物収容チャンバ、および前記針は、注射シリンジとして機能するような構成および寸法とされている、1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリと、
伝達アセンブリハウジングと、モータと、前記伝達アセンブリハウジング内に位置する伝達アセンブリとを備えており、前記伝達アセンブリは、前記薬物送出アセンブリ内の前記シリンジアセンブリの前記プランジャと係合して、前記単位用量の薬物を前記薬物収容チャンバから前記針へと前記薬物送出アセンブリの外に吐出させるような構成および寸法とされている、再使用可能な動力式伝達アセンブリと
を備える、手動で操作される自動注射装置であって、
前記1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリおよび前記再使用可能な動力式伝達アセンブリは、前記シリンジアセンブリ、前記プランジャ、前記あらかじめ充てんされた単位用量の薬物収容チャンバ、および前記針によって定められる長手軸に沿って実質的に軸方向に整列し、
前記薬物送出アセンブリハウジングは、前記1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリと前記再使用可能な動力式伝達アセンブリとの間に実質的な軸方向の整列をもたらすような構成および寸法とされた結合システムを介して、前記伝達アセンブリハウジングに取り外し可能に結合し、
前記結合システムは、前記伝達アセンブリハウジングの遠位端および前記薬物送出アセンブリハウジングの近位端の少なくとも一方に配置された雄の挿入部および対応する雌の収容部を含むスナップ固定結合部材を備え、
前記対応する雌の収容部が、前記雄の挿入部の前記雌の収容部からのねじりによる解放を提供するねじり解放可能化部材を備え、
前記薬物送出アセンブリは、前記薬物送出アセンブリハウジング内に少なくとも部分的に収容されるような構成および寸法とされ、前記針の遠位端を完全に覆う第1の遮蔽位置と、前記針の遠位端を完全に露出させる第2の注射準備完了位置との間を、前記長手軸に沿って同軸に移動可能である針ガードをさらに備え、
前記針ガードは、前記針の遠位端を完全に覆う前記第1の遮蔽位置と、前記第2の注射準備完了位置と、前記第1の遮蔽位置と前記第2の注射準備完了位置との中間にある第3のウェイクアップ位置との間を、前記長手軸に沿って同軸に移動可能であり、
前記薬物送出アセンブリは、針ガードブレーキをさらに備え、前記針ガードブレーキは、前記針ガードに選択的に係合または係合解除することで、前記針の遠位端を完全に覆う前記少なくとも第1の遮蔽位置と前記少なくとも第2の注射準備完了位置との間の前記針ガードの同軸方向の移動を制限または許可し、
前記針ガードブレーキは、長手方向の本体であって、前記薬物送出アセンブリに少なくとも部分的に収容され、前記シリンジアセンブリの前記長手軸に間隔を置いて平行に整列して配置された自身の長手軸を有しており、近位端および遠位端を有している、長手方向の本体を備える、手動で操作される自動注射装置。
【請求項2】
前記針ガードは、前記第1の遮蔽位置よりも遠位側に位置する第4の不可逆な安全位置であって、前記第4の不可逆な安全位置から前記針ガードを近位方向または遠位方向のいずれにももはや動かすことができない、第4の不可逆な安全位置にまで、前記長手軸に沿って同軸に移動可能であるような構成および寸法とされている、請求項1に記載の自動注射装置。
【請求項3】
前記針ガードブレーキは、
前記長手方向の本体の前記近位端に配置され、前記再使用可能な動力式伝達アセンブリ内に収容された駆動モータギアと係合し、かつ前記駆動モータギアから切り離すことができるような構成および寸法とされた駆動モータギア係合手段
さらに備える、請求項に記載の自動注射装置。
【請求項4】
前記長手方向の本体の前記近位端に配置された前記駆動モータギア係合手段は、前記長手方向の本体の前記近位端の付近に位置し、前記長手方向の本体の前記近位端まで延びる溝を備える、請求項に記載の自動注射装置。
【請求項5】
前記針ガードブレーキは、前記長手方向の本体の前記遠位端に配置された遠位端アバットメントをさらに備え、前記遠位端アバットメントは、遠位アバットメント表面および近位アバットメント表面を備え、
前記遠位端アバットメントの前記遠位アバットメント表面は、
前記自動注射装置の使用前に、前記第1の遮蔽位置において、前記薬物送出アセンブリハウジングの第1の内壁面
に係合するような構成および寸法とされている、請求項1、3、および4のうちいずれか一項に記載の自動注射装置。
【請求項6】
前記遠位端アバットメントの前記近位アバットメント表面は、
前記自動注射装置の使用前に、前記第1の遮蔽位置において、前記針ガードの周辺フランジの遠位面
に当接するような構成および寸法とされている、請求項に記載の自動注射装置。
【請求項7】
前記針ガードブレーキは、前記長手方向の本体の外周面において前記遠位端と前記近位端との間に配置された中間アバットメント突出部をさらに備え、前記中間アバットメント突出部は、前記針ガードが前記第3のウェイクアップ位置を過ぎて移動した後に前記針ガードの周辺フランジの近位面と係合する、請求項1および3~6のうちいずれか一項に記載の自動注射装置。
【請求項8】
前記針ガードブレーキは、前記遠位アバットメント表面および前記中間アバットメント突出部が前記長手方向の本体上で実質的に整列していることでさらに定義される、請求項に記載の自動注射装置。
【請求項9】
前記針ガードブレーキは、
前記長手方向の本体の前記駆動モータギア係合手段を前記駆動モータギアから切り離し、
前記長手方向の本体を前記薬物送出アセンブリハウジングの第2の内壁面に向かって遠位方向に付勢する
ような構成および寸法とされたあらかじめ圧縮された弾性係合解除用アセンブリをさらに備え、
前記第2の内壁面は、前記第1の内壁面とは別であり、前記第1の内壁面よりも遠位方向に位置する、請求項1および3~8のうちいずれか一項に記載の自動注射装置。
【請求項10】
前記長手方向の本体上の前記遠位端アバットメントの前記遠位アバットメント表面は、
前記針ガードブレーキの係合解除後に、前記薬物送出アセンブリハウジングの前記第2の内壁面と係合するような構成および寸法とされている、請求項に記載の自動注射装置。
【請求項11】
前記薬物送出アセンブリハウジングは、
前記針ガードが前記第3のウェイクアップ位置へと移動したときに前記自動注射装置を電気的にウェイクアップさせるように構成されたアクティベーション回路であって、前記アクティベーション回路は、前記再使用可能な動力式伝達アセンブリ内に位置するプログラマブル制御システムへとアクティベーション信号またはウェイクアップ信号を送信するように構成されたウェイクアップマイクロスイッチを備え、前記アクティベーション信号は、前記針ガードが前記ウェイクアップマイクロスイッチを越えて前記第3のウェイクアップ位置へと移動するときに生成される、アクティベーション回路と、
前記針ガードの遠位端がユーザの皮膚に接触または近接しているかどうかを判断するように構成された皮膚センサ回路とをさらに備え、
前記皮膚センサ回路は、前記針ガードの前記遠位端に位置する容量抵抗表面領域に接続され、
前記容量抵抗表面領域および前記皮膚センサ回路は、前記針ガード内に配置されて前記シリンジアセンブリの周りに同軸に取り付けられたコイルばねを介して電気的に接続される、請求項1~10のいずれか一項に記載の自動注射装置。
【請求項12】
前記アクティベーション回路は、切断可能な電気的接続を介して、前記再使用可能な動力式伝達アセンブリ内に位置する前記プログラマブル制御システムに接続される、請求項11に記載の自動注射装置。
【請求項13】
前記伝達アセンブリは、
駆動モータギアアセンブリと、
近位端および遠位端を有するねじ山付きのピストンと
をさらに備え、
前記プログラマブル制御システムは、前記自動注射装置の機能を命令および制御するように構成されており、
前記ねじ山付きのピストンは、前記駆動モータギアアセンブリのピストン駆動ギアを介して前記駆動モータギアアセンブリに接続され、前記駆動モータギアアセンブリによって駆動され、
前記駆動モータギアおよび前記ピストン駆動ギアは、実質的に平行かつ間隔を空けた整列にて前記駆動モータギアアセンブリ内に配置され、前記ピストン駆動ギアは、前記シリンジアセンブリの前記長手軸に軸を整列させ、前記駆動モータギアは、前記長手方向の本体に軸を整列させており、
前記ねじ山付きのピストンは、前記駆動モータギアアセンブリのプログラムされたモータ駆動の運動に応答して、前記ねじ山付きのピストンの前記遠位端を介して前記シリンジアセンブリの前記プランジャに係合し、
前記プログラムされたモータ駆動の運動は、前記プログラマブル制御システムによって命令および制御され、
前記プログラマブル制御システムは、
前記ウェイクアップマイクロスイッチからウェイクアップ信号を受信して、前記自動注射装置をウェイクアップさせ、前記自動注射装置に電力を供給すること、
前記針ガードがユーザの皮膚に近接または接触したことを知らせる前記皮膚センサ回路からの皮膚センサ信号を受信すること、
前記皮膚センサ信号の受信に応答して、前記駆動モータギアによって前記長手方向の本体を長手軸を中心にして回転させることで、前記遠位端アバットメントおよび前記アバットメント突出部を当接の整列から外すことにより、前記針ガードブレーキを解除し、前記第2の注射準備完了位置への前記針ガードの自由な近位方向への移動を可能にするように、前記駆動モータおよび駆動モータギアアセンブリに命令し、前記駆動モータおよび駆動モータギアアセンブリを制御すること、
前記針ガードが前記第2の注射位置に到達した旨の前記アクティベーション回路からの信号を受信して、前記ピストン駆動ギアを回転させ、ねじ山を前記プランジャに向かって駆動するように、前記駆動モータおよび駆動モータギアアセンブリに命令し、前記駆動モータおよび駆動モータギアアセンブリを制御すること、および
注射サイクルが完了したと判断されるまで、前記ねじ山を前記プランジャへと遠位方向に駆動し続けること
を含む動作のうちのいずれか1つを達成するように構成されている、請求項11に記載の自動注射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くには、自動注射装置に関し、より詳細には、薬物をユーザへと自動的または半自動的に送出するように構成されて機能するそのような装置に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような装置において、典型的には、薬物の送出は、一般的にはシリンジならびに中空の針またはカニューレを備え、少なくとも1つの薬物収容チャンバを有している薬物送出アセンブリであって、薬物をユーザまたは患者の身体へと注射でき、あるいは他のかたちで薬物送出アセンブリから放出できるように、薬物収容チャンバと針との間に薬物の流路が確立される薬物送出アセンブリによって生じる。やはり一般的にはプランジャを備えているシリンジは、薬物を薬物収容チャンバから針へと押し出し、そこから環境へと押し出し、あるいは一般的に意図されるようにユーザまたは患者の身体へと押し出すように動作する。上記で一般的に説明したような装置は、技術的によく知られている。その最も単純な形態において、皮下注射器がそのような例の1つである。
【0003】
いくつかの薬物送出用途において、送出される薬物の量または用量を正確に制御できるようにするという特有の要件が存在する。この要件の結果として、高度な用量設定システムが開発され、さまざまな薬物送出アセンブリに組み合わせられている。
【0004】
他の薬物送出用途においては、薬物送出アセンブリを1回だけ使用できるようにすることが求められる。このような装置の一般的な目的は、薬物の受け手が薬物を使いすぎることがないようにし、あるいは所与の薬物送出アセンブリを、何らかの理由で薬物の送出が不完全になり、失敗に終わり、あるいは完了しなかった場合でも再使用できないように保証することにより、薬物による治療の計画の順守を促進することである。
【0005】
さらに他の薬物送出用途においては、薬物送出アセンブリに含まれる薬物用量が完全に送出されることを保証する必要がある。これは、例えば、薬物による治療の計画が成功裏に実行または観察されたと見なされるために、薬物の受け手に提供された事前に割り当てられた単位用量が完全に送出または投与されなければならない一部の薬物による治療の計画にとって重要である。
【0006】
薬物送出アセンブリに含まれる薬物用量が完全に送出されることを保証するという要件は、例えば、タンパク質、ペプチド、ホルモン、抗体、などの場合に、粘度が通常はすでに比較的高い可能性がある薬物にとって、とくに重要である。高せん断において、シリンジアセンブリにおいてよく見られるように、単位用量の高粘度の薬物の完全な注射を保証するという課題が難しくなる可能性がある。例えば、薬物が、例えば公称外径0.4128mm、公称内径0.210mm、および公称肉厚0.1016mmの針などの小さな針を通って、10秒という総注射時間にわたって注射される場合、針の内部でのせん断速度は、約160,000s-1になると推定される。さまざまな必須のせん断条件および注射時間が、最新の薬物製剤の特定の粘度と相まって、適切な薬物送出デバイスの設計を、とりわけ自動注射器に関して困難かつ必ずしも自明でない努力にし、何故ならば、その構成が、例えば通常はガラスで製作される薬物収容チャンバの損傷を回避すると同時に、それでもなお単位用量の薬物のすべてがチャンバから吐出されたことも確実にしなければならず、例えば用量の設定、皮膚の接触の検出、注射の開始、注射の終了、などといった装置の特定の機能状態を検出し、かつ/またはユーザに提示し、さらには/あるいはユーザの操作に応答して実行することも望まれるからである。
【0007】
バレルと、針と、プランジャアセンブリとを含むカートリッジを受け入れるように構成された自動注射器が、国際公開第2014/008393号パンフレットから知られており、この自動注射器は、ハウジングと、カートリッジの一部分を受け入れるカートリッジキャリアと、プランジャキャリアと、カートリッジキャリアをプランジャキャリアに結合させる少なくとも1つのトランスファ器具と、プランジャキャリアの移動を可能にする細長い駆動装置とを備えており、プランジャキャリアおよび/またはカートリッジキャリアは、少なくとも1つのトランスファ器具を受け入れるための開口部を含んでおり、この自動注射器が、モータ、およびモータを細長い駆動装置に結合させる伝達アセンブリをさらに備えている。この文献に記載されている自動注射装置においては、バレル、針、プランジャアセンブリ、および薬物カートリッジが、バレル、針、およびプランジャアセンブリを完全に包んで囲むハウジングに対して挿入可能および取り外し可能である。ハウジングは、上部および下部の2つの部分で構成されるものとして示されており、ハウジングの片側に沿ったヒンジが、上部および下部をお互いに対して移動可能に取り付けて、ハウジングの開閉を可能にする。ハウジングは、カートリッジ、針、およびプランジャアセンブリの導入および使用後の取り外しを可能にするように充分にくり抜かれた部分を備えて設計されている。取り外し可能な電池駆動のモータが、可動カートリッジを支持するねじを駆動し、可動カートリッジは、ねじのねじ山と噛み合い、ねじ山上にインデックスされ、順方向または逆方向の移動のためのモータの作動に対応して前方または後方に移動する。インデックスされた可動キャリッジは、モータがねじを前方へと駆動するように動作すると、プランジャアセンブリに係合してプランジャアセンブリを前方に駆動し、薬物カートリッジに収容された薬物をカートリッジから針へと吐出させ、そこから自動注射器のユーザへと吐出させる。この装置は、すべての意図および目的に対して、きわめて複雑であり、さまざまな可動および相互作用部品の数が過度に多く、装置の機械的な信頼性が潜在的な問題になるだけでなく、経済的に実行不可能であることは言うまでもない。
【0008】
現時点において知られており、あるいは説明されている装置は、上記の問題および欠点に対処しておらず、あるいは上記の問題および欠点を解決していないため、これらのさまざまな制限および問題を克服する簡素な自動注射装置、略してオート注射装置について、満たされていないニーズが依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2014/008393号パンフレット
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明の1つの目的は、
ハウジングと、少なくとも部分的に前記ハウジング内に位置するシリンジアセンブリとを備えており、前記シリンジアセンブリは、プランジャと、あらかじめ充てんされた単位用量の薬物収容チャンバと、針とを含み、前記プランジャ、薬物収容チャンバ、および針は、注射シリンジとして機能するような構成および寸法とされている1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリと、
ハウジングと、モータと、前記ハウジング内に位置する伝達アセンブリとを備えており、前記伝達アセンブリは、前記薬物送出アセンブリ内の前記シリンジの前記プランジャと係合して、前記単位用量の薬物を前記薬物収容チャンバから前記針へと前記薬物送出アセンブリの外に吐出させるような構成および寸法とされている再使用可能な動力式伝達アセンブリと
を備え、
前記1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリおよび前記再使用可能な動力式伝達アセンブリは、前記シリンジ、プランジャ、あらかじめ充てんされた単位用量の薬物収容チャンバ、および針によって定められる長手軸に沿って実質的に軸方向に整列し、
前記1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリの前記ハウジングは、前記1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリと前記再使用可能な動力式伝達アセンブリとの間に実質的な軸方向の整列をもたらすような構成および寸法とされた結合システムを介して、前記再使用可能な動力式伝達アセンブリの前記ハウジングに取り外し可能に結合する、自動注射装置である。
【0011】
好ましい一実施形態において、前記結合システムは、手動で操作可能であるあるいは、結合システムは、アセンブリの結合に関して機械の助けを必要としてもよい。
【0012】
一実施形態において、前記結合システムは、前記再使用可能な動力式伝達アセンブリの前記ハウジングの遠位端および前記1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリの前記ハウジングの近位端、あるいはその反対の少なくとも一方に配置された雄の挿入部および対応する雌の収容部を含むスナップ固定結合部材を備えることで、前記1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリと前記再使用可能な動力式伝達アセンブリとの実質的に軸方向に整列した結合を可能にする。好ましくは、前記雄の挿入部は、前記1回だけ使用される薬物送出アセンブリの前記ハウジングの近位端に配置され、前記雌の収容部は、前記再使用可能な動力式伝達アセンブリの前記ハウジングの遠位端に配置される。
【0013】
さらなる実施形態によれば、前記結合システムは、
前記結合システムが、前記再使用可能な動力式伝達アセンブリの前記ハウジングの遠位端および前記1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリの前記ハウジングの近位端、あるいはその反対の少なくとも一方に配置された雄の挿入部および対応する雌の収容部を含むスナップ固定結合部材を備え、
前記対応する雌の収容部が、前記雄の挿入部の前記雌の収容部からのねじりによる解放を提供するねじり解放可能化部材を備える
ことで、前記再使用可能な動力式伝達アセンブリからの前記1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリの取り外しを可能にする。
【0014】
さらに別の実施形態において、前記薬物送出アセンブリは、前記薬物送出アセンブリハウジング内に少なくとも部分的に収容されるような構成および寸法とされ、前記針の遠位端を完全に覆う第1の遮蔽位置と、第2の注射準備完了位置との間を、前記長手軸に沿って同軸に移動可能である針ガードをさらに備える。
【0015】
さらなる実施形態において、前記薬物送出アセンブリは、前記薬物送出アセンブリハウジング内に少なくとも部分的に収容されるような構成および寸法とされ、前記針の遠位端を完全に覆う第1の遮蔽位置と、第2の注射準備完了位置と、第3のウェイクアップ位置との間を、前記長手軸に沿って同軸に移動可能である針ガードをさらに備える。
【0016】
さらにまた別の実施形態によれば、前記薬物送出アセンブリは、前記薬物送出アセンブリハウジング内に少なくとも部分的に収容されるような構成および寸法とされ、前記針の遠位端を完全に覆う第1の遮蔽位置と、第2の注射準備完了位置と、第3のウェイクアップ位置と、前記第1の位置よりも遠位側に位置する第4の不可逆な安全位置との間を、前記長手軸に沿って同軸に移動可能である針ガードをさらに備える。
【0017】
さらなる実施形態において、前記薬物送出アセンブリは、針ガードおよび針ガードブレーキをさらに備え、
前記針ガードは、前記薬物送出アセンブリハウジング内に少なくとも部分的に収容されるような構成および寸法とされ、前記針の遠位端を完全に覆う少なくとも第1の遮蔽位置と、少なくとも第2の注射位置との間を、前記長手軸に沿って同軸に移動可能であり、
前記針ガードブレーキは、前記針ガードに選択的に係合または係合解除することで、前記針の遠位端を完全に覆う前記少なくとも第1の遮蔽位置と前記少なくとも第2の注射準備完了位置との間の前記針ガードの同軸な移動を制限および/または許可するような構成および寸法とされる。
【0018】
別の実施形態によれば、前記薬物送出アセンブリは、針ガードブレーキをさらに備え、
前記針ガードブレーキは、
前記薬物送出アセンブリ本体に少なくとも部分的に収容され、前記シリンジアセンブリの前記長手軸に間隔を置いて平行に整列して配置された自身の長手軸を有しており、近位端および遠位端を有している長手方向の本体
を備える。
【0019】
別の実施形態によれば、前記針ガードブレーキは、前記長手方向の本体の前記近位端に配置され、前記再使用可能な動力式伝達アセンブリ内に収容された駆動モータギアと係合し、かつ前記駆動モータギアから切り離すことができるような構成および寸法とされた駆動モータギア係合手段をさらに備える。
【0020】
別の実施形態によれば、前記長手方向の本体の前記近位端に配置された前記駆動モータギア係合手段は、前記長手方向の本体の前記近位端の付近に位置し、前記長手方向の本体の前記近位端まで延びる溝付きボアを備える。
【0021】
さらに別の実施形態によれば、前記針ガードブレーキは、前記長手方向の本体の前記遠位端に配置されたアバットメントをさらに備え、前記遠位端アバットメントは、遠位アバットメント表面および近位アバットメント表面を備え、
前記遠位アバットメントの前記遠位アバットメント表面は、
当該装置の使用前に、前記第1の遮蔽位置において、前記薬物送出アセンブリハウジングの第1の内壁面
に係合するような構成および寸法とされる。
【0022】
さらに別の実施形態によれば、前記針ガードブレーキは、前記長手方向の本体の前記遠位端に配置されたアバットメントをさらに備え、前記遠位端アバットメントは、遠位アバットメント表面および近位アバットメント表面を備え、
前記遠位アバットメントの前記近位アバットメント表面は、
当該装置の使用前に、前記第1の遮蔽位置において、前記針ガードの前記周辺フランジの遠位面
に係合するような構成および寸法とされる。
【0023】
さらに別の実施形態によれば、前記針ガードブレーキは、前記長手方向の本体の外周面において前記遠位端と前記近位端との間に配置された中間アバットメント突出部をさらに備え、このアバットメント突出部は、前記針ガードが前記第3のウェイクアップ位置を過ぎて移動した後に前記針ガードの前記周辺フランジの近位面と係合する。
【0024】
さらに別の実施形態によれば、前記針ガードブレーキは、前記遠位端アバットメント表面および前記中間アバットメント突出部が前記長手方向の本体上で実質的に整列していることでさらに定義される。
【0025】
さらに別の実施形態によれば、前記再使用可能な動力式伝達アセンブリの前記ハウジング内に収容された前記モータは、前記長手方向の本体の前記近位端に配置された前記駆動モータギア係合手段の前記対応する溝に係合するような構成および寸法とされた歯付きの駆動モータギアを備える。
【0026】
さらに別の実施形態によれば、前記針ガードブレーキは、
前記長手方向の本体の前記駆動モータギア係合手段を前記駆動モータギアから切り離し、
前記長手方向の本体を前記薬物送出アセンブリハウジングの第2の内壁面に向かって遠位方向に付勢する
ような構成および寸法とされたあらかじめ抑圧された弾性係合解除用アセンブリをさらに備え、
前記第2の内壁面は、前記第1の内壁面とは別であり、前記第1の内壁面よりも遠位方向に位置する。
【0027】
さらに別の実施形態によれば、前記長手方向の本体上の前記長手方向のアバットメントの前記遠位端アバットメント表面は、
前記針ブレーキの係合解除後に、前記薬物送出アセンブリハウジングの前記第2の内壁面
と係合するような構成および寸法とされており、
前記第2の内壁面は、前記第1の内壁面とは別であり、前記第1の内壁面よりも遠位方向に位置する。
【0028】
さらに別の実施形態によれば、前記あらかじめ抑圧された弾性係合解除用アセンブリは、
コイルばねと、
保持カラーと
を備え、
前記コイルばねは、前記長手方向の本体の周囲に取り付けられ、前記保持カラーに当接して前記保持カラーを付勢し、
前記保持カラーは、前記長手方向の本体の周囲に形成され、前記長手方向の本体から半径方向に突出し、
前記係合解除用アセンブリは、前記長手方向の本体の前記近位端と前記アバットメント突出部との間の固定位置において前記長手方向の本体上に位置する。
【0029】
さらに別の実施形態によれば、前記薬物送出アセンブリハウジングは、前記針ガードが前記ウェイクアップ位置へと移動したときに当該自動注射装置を電気的にウェイクアップさせるように構成されたアクティベーション回路をさらに備える。
【0030】
さらに別の実施形態によれば、前記アクティベーション回路は、前記再使用可能な動力式伝達アセンブリ内に位置するプログラマブル制御システムへとアクティベーションまたは「ウェイクアップ」信号を送信するように構成された「ウェイクアップ」マイクロスイッチを備え、前記アクティベーション信号は、前記針ガードが前記スイッチを越えて前記第3の位置または「ウェイクアップ」位置へと移動するときに生成される。
【0031】
さらに別の実施形態によれば、前記薬物送出アセンブリハウジングは、前記針ガードの遠位端がユーザの皮膚に接触または近接しているかどうかを判断するように構成された皮膚センサ回路をさらに備える。
【0032】
さらに別の実施形態によれば、前記皮膚センサ回路は、前記針ガードの前記遠位端に位置する容量抵抗表面領域に接続される。
【0033】
さらに別の実施形態によれば、前記容量抵抗表面領域および前記皮膚センサ回路は、前記針ガード内に配置されて前記シリンジアセンブリの周りに同軸に取り付けられたコイルばねを介して電気的に接続される。
【0034】
さらに別の実施形態によれば、前記アクティベーション回路は、切断可能な電気的接続を介して、前記再使用可能な動力式伝達アセンブリ内に位置する前記プログラマブル制御システムに接続される。
【0035】
さらに別の実施形態によれば、前記1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリは、スイッチアクティベーション手段を備える針ガードをさらに備える。
【0036】
さらに別の実施形態によれば、前記スイッチアクティベーション手段は、前記針ガードの外面に沿って前記長手軸に軸を長手方向に整列させて長手方向に配置されたスイッチ係合リッジである。
【0037】
さらに別の実施形態によれば、前記スイッチアクティベーション手段は、前記針ガードの外面に沿って配置された連続的なスイッチ係合リッジである。
【0038】
さらに別の実施形態によれば、前記スイッチアクティベーション手段は、前記針ガードの外面に沿って軸方向に整列して配置された複数の非連続的なスイッチ係合リッジによって形成される。
【0039】
さらに別の実施形態によれば、前記薬物送出アセンブリハウジングは、前記再使用可能な動力式伝達アセンブリ内に位置するプログラマブル制御システムへと「注射準備完了」信号を送信するように構成された第2のマイクロスイッチをさらに備え、前記「注射準備完了」信号は、前記針が完全に露出する前記第2の位置へと前記針ガードが前記スイッチを越えて移動するときに生成される。
【0040】
さらに別の実施形態によれば、前記第2の「注射準備完了」マイクロスイッチは、前記第1の「アクティベーション」マイクロスイッチに長手軸方向に整列する。
【0041】
さらに別の実施形態によれば、前記「注射準備完了」マイクロスイッチは、前記スイッチアクティベーション手段によって作動する。
【0042】
さらに別の実施形態によれば、前記伝達アセンブリは、
駆動モータギアアセンブリと、
当該自動注射装置の機能を命令および制御するように構成されたプログラマブル制御システムと、
近位端および遠位端を有するねじ山付きのピストンと
をさらに備え、
前記ねじ山付きのピストンは、前記駆動モータギアアセンブリのピストン駆動ギアを介して前記駆動モータアセンブリに接続され、前記駆動モータアセンブリによって駆動され、
前記針ブレーキ駆動モータギアおよび前記ねじ山付きのピストン駆動ギアは、実質的に平行かつ間隔を空けた整列にて前記駆動モータギアアセンブリ内に配置され、前記ねじ山付きのピストン駆動ギアは、前記シリンジアセンブリの前記長手軸に軸を整列させ、前記針ブレーキ駆動モータギアは、前記長手方向の本体に軸を整列させており、
前記ねじ山付きのピストンは、前記駆動モータギアアセンブリのプログラムされたモータ駆動の運動に応答して、前記ねじ山付きのピストンの前記遠位端を介して前記シリンジの前記プランジャに係合し、
前記プログラムされたモータ駆動の運動は、前記プログラマブル制御システムによって命令および制御される。
【0043】
さらに別の実施形態によれば、前記プログラマブル制御システムは、
前記ウェイクアップスイッチからウェイクアップ信号を受信して、当該装置をウェイクアップさせ、当該装置に電力を供給すること、
前記針ガードがユーザの皮膚に近接または接触したことを知らせる前記皮膚センサからの信号を受信すること、
そのような皮膚センサ信号の受信に応答して、前記駆動モータギアによって前記長手方向の本体を長手軸を中心にして回転させることで、前記遠位アバットメントおよび前記アバットメント突出部を当接の整列から外すことにより、前記針ブレーキを解除し、前記第2の注射準備完了位置への前記針ガードの自由な近位方向への移動を可能にするように、前記駆動モータおよび駆動モータギアアセンブリに命令し、前記駆動モータおよび駆動モータギアアセンブリを制御すること、
前記針ガードが前記第2の注射位置に到達した旨の前記アクティベーション回路からの信号を受信して、前記ねじ山付きのピストン駆動ギアを回転させ、前記ねじ山を前記プランジャに向かって駆動するように、前記駆動モータおよび駆動モータギアアセンブリに命令し、前記駆動モータおよび駆動モータギアアセンブリを制御すること、および
注射サイクルが完了したと判断されるまで、前記ねじ山を前記プランジャへと遠位方向に駆動し続けること
を含む動作のうちのいずれか1つを達成するように構成される。
【0044】
さらに別の実施形態によれば、前記プログラマブル制御システムは、前記駆動モータの電力消費の分析によって注射サイクルの完了を判断するように構成される。
【0045】
本発明は、本発明の実施形態の典型的な具現化を限定するのではなく例示する目的で用意された添付の図面に関連してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明による自動注射装置の概略の分解斜視図である。
図2】本発明による自動注射装置の概略の断面図である。
図3図2に示した装置の1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリに含まれる針ガードの詳細を示す概略の部分切断拡大斜視図である。
図4図2に示した装置の1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリに含まれる針ガードの別の詳細を示す概略の部分切断拡大斜視図である。
図5】本発明による自動注射装置の概略の断面図である。
図6図5に示した装置の1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリに含まれる針ガードブレーキの近位端の詳細を示すさらなる概略の部分切断拡大斜視図である。
図7図5に示した装置の1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリに含まれる針ガードブレーキの遠位端の詳細を示す概略の部分切断拡大斜視図である。
図8】本発明による装置の1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリに含まれる針ガードのさらなる詳細を示す概略の部分切断拡大斜視図である。
図9】本発明による自動注射装置のさらなる概略の断面図である。
図10】本発明による装置の1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリに含まれる針ガードブレーキの遠位端の詳細を示すさらなる概略の部分切断拡大斜視図である。
図11】本発明による装置の1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリに含まれる針ガードブレーキの遠位端の詳細を示すさらなる概略の部分切断拡大斜視図である。
図12】本発明による装置の1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリに含まれる針ガードブレーキの近位端の詳細を示すさらなる概略の部分切断拡大斜視図である。
図13】本発明による自動注射装置のさらなる概略の断面図である。
図14】本発明による装置の1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリに含まれる針ガードの遠位端の詳細を示すさらなる概略の部分切断拡大斜視図である。
図15】本発明による自動注射装置のさらなる概略の断面図である。
図16】本発明による自動注射装置のさらなる概略の断面図である。
図17】本発明による装置の1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリに含まれる針ガードの遠位端の詳細を示すさらなる概略の拡大断面図である。
図18】本発明による装置の1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリに含まれる針ガードの遠位端の詳細を示すさらなる概略の部分切断拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
ここで図1を参照すると、本発明による自動注射装置デバイス(1)の概略の斜視分解図が示されている。図1の分解図における自動注射装置(1)は、2つの主要なアセンブリ(2、3)を備えており、第1のアセンブリは、1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリ(2)であり、第2のアセンブリは、再利用可能な動力式伝達アセンブリ(3)である。1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリ(2)は、ハウジング(4)と、少なくとも一部分がハウジング(4)内に位置するシリンジアセンブリ(5)とを備え、このシリンジアセンブリ(5)は、プランジャ(13)と、あらかじめ充てんされた単位用量の薬物収容チャンバ(14)と、針(11)とを含む。プランジャ(13)、薬物収容チャンバ、および針(11)は、図1においては技術的に公知のあらかじめ充てんされた単位用量のシリンジによって表されている注射シリンジとして機能するような構成および寸法とされている。図1は、シリンジアセンブリ(5)のすべての詳細を示しているわけではないが、完璧を期すために、上述のように、シリンジアセンブリ(5)は、図2以降の図に詳細に示され、これらの図に関連して以下で説明される。したがって、図2からわかるように、シリンジアセンブリ(5)は、おおむね長手方向のシリンジ本体(6)を備え、シリンジ本体(6)は、シリンジ本体(6)を貫く内部の長手方向のボア(7)を有し、長手軸(8a)を定めている。さらに、シリンジ本体(6)は、近位端(9)および遠位端(10)を有する。遠位端(10)は、注射シリンジに関して技術的に一般的であるとおり、例えばルアーマウントを介し、あるいは直接的にシリンジ本体(6)の遠位端(10)に取り付けられるカニューレまたは針(11)によって閉じられ、針(11)またはカニューレの近位端(12)は、シリンジ本体(6)の内部のボア(7)、したがって薬物収容チャンバ(14)に流体連通する。シリンジ本体(6)は、近位方向において、本体(6)のボア(7)の内側に配置されたプランジャ(13)によってさらに閉じられる。ボア(7)内のプランジャ(13)の初期位置が、このシリンジ本体(6)の遠位端(10)と一緒に、薬物の事前に割り当てられた用量または所定の単位用量に対応する容積の薬物収容チャンバ(14)を定める。一般に、あらかじめ充てんされた単位用量のシリンジにおいて、プランジャは、ボア内で初期位置から最終位置へと遠位方向にのみ移動可能であり、すなわち換言すると、薬物収容チャンバ(14)に収容された薬物をシリンジ本体(6)の遠位端(10)から針(11)へと吐出させる方向にのみ移動するように構成される。シリンジ本体(6)の遠位端(10)から長手軸(8)に沿って突出している針(11)は、使用まで針を保護し、使用前にシリンジから薬物が予期せず漏れることがないようにする針キャップ(15)で覆われる。針キャップ(15)は、針でユーザの皮膚または薬物の意図される受け手を貫くことができるように、注射に先立って取り外すことができるように構成され、装置キャップ(80)と協働し、装置キャップ(80)に接触する。再び図1に戻ると、薬物送出アセンブリ(2)は、ハウジング(4)を備えている。薬物送出アセンブリハウジング(4)は、シリンジアセンブリ(5)を実質的に包み、取り囲む。図1に示される図解において、薬物送出アセンブリハウジング(4)は、プラスチック材料などの適切に成形または適切に機械加工された材料のおおむね円筒形の本体(16)を有する。図1において、一実施形態においては、薬物送出アセンブリハウジング(4)のおおむね円筒形の本体(16)が、2つの嵌合する本体半体(16A、16B)によって表されている。2つの半体(16A、16B)は、組み立てられると、シリンジアセンブリ(5)の少なくとも一部分を受け入れて保持するように構成された長手方向の内側ボア(17)を形成する。それぞれの嵌合する本体半体(16A、16B)の内壁(18A、18B)は、シリンジアセンブリ(5)を望まれない方向に移動することがないように配置および保持するとともに、シリンジを損傷またはいたずらから保護するための適切な形状、段部、リブ、溝、突出部、などを備えて構成される。対応する長手方向のボアを備えるおおむね円筒形の本体(16)を、シリンジアセンブリが本体(16)の長手方向のボア(17)を介して挿入され、適切な内壁の所定の形状または弾性拘束要素によって保持される単一の部品として成形することも可能である。上記の説明から、薬物送出アセンブリのハウジング(4)のおおむね円筒形の本体(16)が、シリンジアセンブリの周りに同軸に配置されることは、明らかであろう。上述の円筒形の本体(16)によるシリンジアセンブリ(5)の直接的な配置および保持に代えて、図1にさらに示されるように、1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリ(2)は、シリンジアセンブリホルダ(19)をさらに備える。おおむね円筒形の本体(16)と同様に、このようなシリンジアセンブリホルダ(19)も、適切なプラスチック材料で製作することができ、おおむね長手方向の本体(20)を備え、シリンジアセンブリが挿入されて保持される長手方向のボアを有する単一の部品として直接成形されてよく、あるいは図1に示されるように2つの半体(19A、19B)を備えてもよい。したがって、シリンジアセンブリホルダの2つの半体(19A、19B)は、組み立てられると、長手方向の内側ボア(21)を形成し、各々の半体(19A、19B)の内壁は、例えば本体(20)の長さに沿って位置した突出する半円形のリブによって、シリンジアセンブリ(5)のシリンジ本体(6)の外面を受け入れて保持し、シリンジアセンブリ(5)のシリンジ本体(6)の外面を直接支えるように構成される。同様に、このシリンジアセンブリホルダの本体(20)の外壁は、ハウジング(4)のおおむね円筒形の本体(16)の内壁(18A、18B)に設けられた対応する突出部、壁、リブ、溝、などと嵌合し、これらによって保持および固定されるように構成される。図1からさらにわかるように、薬物送出アセンブリのハウジング(4)のおおむね円筒形の本体(16)およびシリンジアセンブリホルダ(19)の両方は、それぞれの本体(16、19)の少なくとも1つの側面に設けられた整列した開口部(22、23)を備える。これらの開口部(22、23)は、自動注射装置の外側からシリンジ本体(6)の外壁への視線を可能にする。開口部(22、23)は、薬物収容チャンバにおおむね整列しており、シリンジ本体の透明または半透明な壁と連係して、薬物収容チャンバに収容された薬物が吐出されたことを視覚的に確認し、あるいはエラーが発生し、不完全な注射の動作の後に薬物収容チャンバ(14)に薬物が残り、したがって単位用量が完全には投与されていないことに気付くことを、自動注射装置のユーザにとって可能にするように機能するような構成および寸法を有している。
【0048】
1回だけ使用される使い捨ての薬物送出アセンブリ(2)は、薬物送出アセンブリハウジング(4)内に少なくとも部分的に収容され、針の遠位端を完全に覆う第1の遮蔽位置と針(11)の遠位端を露出させる第2の注射準備位置との間を長手軸(8)に沿って同軸に移動できるような構成および寸法とされた針ガード(24)をさらに備える。図1に例示されるように、針ガード(24)は、近位端(26)と遠位端(27)とを有する実質的に円筒形の本体(25)によって表される。針ガード(24)は、シリンジアセンブリ(6)およびシリンジアセンブリホルダ(19)を少なくとも部分的に取り囲み、近位方向および遠位方向に、シリンジアセンブリ(6)およびシリンジアセンブリホルダ(19)に対して同軸にスライド移動するような構成および形状を有する。さらに、針ガード(24)は、薬物送出アセンブリハウジング(4)のおおむね円筒形の本体(16)によってシリンジアセンブリおよびシリンジアセンブリホルダ(19)に対してスライドする同軸な位置に保持される。換言すると、針ガードは、円筒形の本体(16)の内壁とシリンジアセンブリホルダ(19)の外壁との間に挟まれている。近位方向および遠位方向の両方の針ガード(24)のスライド移動、ならびに針ガード(24)が長手軸(8)に沿ってとることができる相対位置が、本明細書において後述されるように、針ガード(24)とおおむね円筒形の本体(16)の内壁の突出部(40、48)との相互作用およびさらなる手段によって制御されることに、注意すべきである。上述したように、針ガード(24)は、針の遠位端を完全に覆う第1の遮蔽位置と、薬物収容チャンバ内の薬物の注射の進行を可能にする第2の注射準備位置との間をスライド移動することができるような構成および寸法を有する。薬物送出アセンブリ(2)は、針ガード(24)が2つのさらなる注目すべき位置、すなわち前記第1および第2の位置の間に位置する第3のウェイクアップ位置と、第1の位置の遠位側に位置し、そこから針ガードを近位方向または遠位方向のいずれにももはや動かすことができない第4の不可逆な安全位置とをとることができるようにさらに構成されている。第4の安全位置において、装置の操作に関する唯一の可能性は、1回だけ使用される薬物送出アセンブリを取り外して廃棄することであり、したがってこのアセンブリに言及するときに、「1回だけ使用」および「使い捨て」という表現が使用される。針ガードのさまざまな位置は、他の図に関連して以下でさらに説明される。
【0049】
上述のように、針ガード(24)は、近位端(26)と遠位端(27)とを備える実質的に円筒形の本体(25)を有する。図1に示される実施形態において、針ガード(24)の実質的に円筒形の本体(25)は、遠位端(27)から近位端(26)に向かって延びており、本体(25)の壁(28)が、近位端(26)の方向における本体の周囲において非連続的になり、本体(25)の長さの途中から近位端(26)に向かって延びる1対の近位側レグ(29A、29B)を形成している。本体(25)の近位端(26)は、周辺フランジ(41)を備えており、周辺フランジ(41)は、近位面(42)と、遠位面(43)と、これら近位面(42)および遠位面(43)を接続してフランジ(41)を形成する周縁(44)とを有している。周辺フランジ(41)の近位面(42)および遠位面(43)は、以下で説明されるように、薬物送出アセンブリに含まれる他の手段と相互作用する。本体(25)の遠位端(27)は、針出口開口部(75)を備えており、針ガード(24)が近位方向にスライド移動するときに針(11)が遠位端(27)の開口部を通って移動することができる。さらに、針出口開口部は、針キャップ(15)が引き抜かれるときに針キャップ(15)が妨げられることなくこの開口部(75)を通過できるように、充分な幅となるような構成および寸法を有する。針キャップ(15)は、例えば、針キャップ(15)の表面に設けられた長手方向の溝(74)または他の同様の凹部によって、装置キャップ(80)の弾性把持手段(76)に接続されるように構成される。装置キャップ(80)の弾性把持手段(76)は、装置キャップ(80)の遠位端の内面から針出口開口部(75)を通って突出し、例えば押し込みまたはクリック式の嵌まり合いによる弾性的な把持により、針キャップ(15)の表面上の溝または凹部(74)を弾性的に摩擦で保持するように構成される。装置キャップ(80)が取り外されるとき、弾性把持手段(76)がもたらす弾性的な把持によって針キャップ(15)も引っ張られることで、針キャップ(15)が装置キャップ(80)と同時に取り外され、針ガード(24)内で針が露出する。
【0050】
薬物送出アセンブリ(2)は、針ガードブレーキ(30)をさらに備える。針ガードブレーキ(30)は、針ガード(24)を選択的に係止または解放して、針(11)の遠位端を完全にカバーする少なくとも第1の遮蔽位置と少なくとも第2の注射準備位置との間の前記針ガード(24)の同軸な移動を制限および/または許可するような構成および寸法を有する。針ガードブレーキ(30)は、針ガード(24)と相互作用して、ハウジング(4)内での長手軸に沿った針ガード(24)の上記の第1、第2、第3、および第4の位置の少なくともいくつかへのスライドによる同軸移動を防止または許可する。とくに、針ガードブレーキ(30)は、針ガードの望まれないスライド移動を防止することによって、例えば装置が皮膚の近くに充分に接近して位置していない場合など、装置が正しい使用位置に位置する前に、薬物収容チャンバから針を介して薬物を注射しようとする望ましくない試みまたは不適切な試みが阻止されることを保証するがゆえに、自動注射装置に組み込まれた安全機能の一部を担う。針ガードブレーキ(30)は、少なくとも部分的に薬物送出アセンブリハウジング(4)内に収容された長手方向の本体(31)を備え、この長手方向の本体(31)は、シリンジアセンブリの長手軸(8a)に間隔を置いて平行に整列した長手軸(8b)を有し、近位端(32)および遠位端(33)を有している。針ガードブレーキ(30)は、長手方向の本体(31)の近位端(32)に位置し、再使用可能な動力式伝達アセンブリ(3)に収容された駆動モータギア(35)と係合し、かつ駆動モータギア(35)から外れることができるような構成および寸法とされた駆動モータギア係合手段(34)をさらに備える。図1からわかるように、針ガードブレーキは、おおむね棒状であり、任意の適切に堅固な材料、例えば成形プラスチックまたは金属合金などの金属で製作されてよいが、衝撃および応力に強いプラスチックが好ましい材料である。長手方向の本体(31)の近位端(32)に位置する駆動モータギア係合手段(34)は、長手方向の本体の一体の一部分を形成し、この長手方向の本体の近位端(32)の近位側に位置し、この長手方向の本体の近位端(32)まで延びる溝付き表面を有する突出部を備える。駆動モータ係合手段(34)の溝付き表面は、長手方向の本体(31)の長手軸に沿ってこの長手軸と同軸に向けられた溝(36)を有し、これらの溝(36)は、駆動モータギア(35)上に設けられ、あるいは駆動モータギア(35)に軸を整列させて取り付けられた歯付きコグ(84)に対応し、この歯付きコグ(84)と協働する。さらに、針ガードブレーキ(30)は、長手方向の本体(31)の遠位端(33)に位置するアバットメント(37)をさらに備え、この遠位端アバットメント(37)は、遠位アバットメント表面(39)および近位アバットメント表面(38)を備え、遠位アバットメント(37)の遠位アバットメント表面(39)は、装置の使用前に、第1の遮蔽位置において、薬剤送出アセンブリのハウジング(4)の第1の内壁面(40)と係合するような構成および寸法とされている。このような位置において、針ガードブレーキ(30)は、遠位アバットメント(37)の遠位アバットメント表面(39)を介して第1の内壁面(40)に当接し、針ブレーキ(30)を長手方向の本体を損傷させることなく外すことは不可能である。遠位アバットメント(37)の近位アバットメント表面(38)は、装置の使用前に、第1の遮蔽位置において、針ガードの周辺フランジ(41)の遠位面(43)と係合するような構成および寸法とされている。遠位アバットメント(37)は、針ガードブレーキ(30)の遠位端(33)から半径方向外側に突出し、実質的に三日月形または弓状の外側湾曲縁(45)を形成するような構成および寸法とされており、長手方向の本体(31)から縁(45)まで延びる壁が、それぞれ近位アバットメント表面(38)および遠位アバットメント表面(39)を形成している。三日月形または弓状の外側湾曲縁の結果として、アバットメント表面(38、39)は、ハウジング(4)の内壁の突出部(40、48)あるいは周辺フランジ(41)の近位面(42)および遠位面(43)などの対応する当接面と完全には係合せず、それぞれのアバットメント表面(38、39)と内壁の突出部(40、48)との間のこの表面の係合は、長手方向の本体(31)の回転位置に依存する。これは、ハウジング(4)の内壁面(40、48)を、例えばハウジング(4)の内壁からハウジングの壁によって生成された内部空間またはボアへと突出する弓状または実質的に弓状の突出面として形成することも可能にする。遠位アバットメント(37)が、長手方向の本体(31)の近位端(32)に位置する駆動モータギア係合手段(34)を介して伝達される運動を通じて、長手方向の本体の長手軸を中心にして回転するとき、近位当接面(38)および遠位当接面(39)は、本体の周囲を同じだけ移動するが、それらの実質的に三日月形または弓状の表面は、ハウジング(4)の内壁の対応する当接面あるいは周辺フランジ(41)の遠位面(43)または近位面(42)から遠ざかるように移動し、あるいはこれらに向かって移動する。長手方向の本体(31)についてその長手軸(8b)を中心にして一般的に設定される回転角度は、0°~180°の間、すなわち半円の回転であり、ここで0°は、好ましくは、遠位アバットメント(37)の遠位アバットメント表面(39)が第1の内壁突出面(40)に完全に表面当接する位置に対応する。このようにして、周辺フランジ(41)が遠位アバットメント(37)の対応する近位アバットメント表面(38)および/または遠位アバットメント表面(39)のいずれかに当接することによって針ガード(24)のスライド移動が阻止されるように、針ガードブレーキを選択的に制御することが可能である。さらに、針ガードブレーキ(30)は、長手方向の本体の外周面に配置され、長手方向の本体の外周面から半径方向に延び、前記遠位端(33)と近位端(32)との間に位置する中間アバットメント突出部(46)をさらに備え、このアバットメント突出部は、針ガード(24)が第3のウェイクアップ位置を過ぎて移動した後に、この針ガードの周辺フランジ(41)の近位面(42)と係合する。図から明らかなように、針ガードブレーキ(30)は、遠位アバットメント(37)の近位面(38)および遠位面(39)と、中間アバットメント突出部(46)とが、長手方向の本体(31)の外周面において実質的に整列し、長手方向の本体(31)の外周面に沿って間隔を空けて位置している点で、さらに定義される。遠位アバットメント(37)とアバットメント突出部(46)との間の距離は、装置の製造および組み立て時に、針ガードを周辺フランジ(41)の遠位面(42)が遠位アバットメント(37)の近位面(38)に当接する第1の針遮蔽位置から第2の注射準備位置の方向にシリンジアセンブリの長手軸に沿って同軸にスライドさせることができると同時に、皮膚との接触またはこの皮膚との充分な近接が皮膚センサ回路(57)によって検出されていない場合に限り、この第2の注射準備位置へと向かう針ガード(24)のさらなるスライド移動が防止されるように、事前に設定および決定されている。そのような場合、すなわち皮膚回路によって皮膚が検出されていない場合、針ガードブレーキ(30)は外れておらず、針ガードブレーキ(30)のアバットメント突出部(46)に対する針ガードの周辺フランジ(41)の近位面(42)の当接が生じる。
【0051】
円筒形の本体(31)の当接位置からの離脱が、以下のように説明される。針ガードの遠位端の皮膚への適切な近接が皮膚センサ回路(57)によって検出されると、対応する信号がプログラマブル制御システム(54)へと送信され、プログラマブル制御システム(54)によって受信される。次いで、プログラマブル制御システム(54)は、駆動モータギア(35)を回転させるようにモータ(67)および駆動モータギアアセンブリ(66)に命令する。例えば駆動モータギア(35)によって駆動モータギア係合手段(34)を介してもたらされる遠位アバットメント(37)およびアバットメント突出部(46)の表面積の構成に応じた長手方向の本体(31)の長手軸(8b)を中心とする最大180°の回転など、適切な回転により、整列した遠位アバットメント(37)およびアバットメント突出部(46)の対応する回転が生じ、遠位アバットメント(37)が第1の内壁突出面(40)から離れ、第1の内壁突出面(40)に当接しない位置へと移動する。針ガードブレーキ(30)は、長手方向の本体(31)の駆動モータギア係合手段(34)を駆動モータギア(35)から切り離し、長手方向の本体(31)を薬物送出アセンブリハウジングの第2の内壁突出部表面(48)に向かって遠位方向に付勢するような構成および寸法のあらかじめ抑圧された弾性係合解除用アセンブリ(47)をさらに備え、ここで第2の内壁突出部表面(48)は、第1の内壁突出部表面(40)とは別であり、第1の内壁突出部表面(40)よりも遠位方向に位置している。このようにして、係合解除手段が針ガードブレーキを解放し、したがって針ガードは、第2の注射準備位置へと向かう近位方向のスライド移動を継続することができる。1つの好ましい実施形態においては、図に示されるように、あらかじめ抑圧された弾性係合解除用アセンブリ(47)が、コイルばね(49)および保持カラー(50)を備え、コイルばね(49)は、長手方向の本体(31)の周りに取り付けられ、保持カラー(50)に当接して保持カラー(50)を付勢し、保持カラー(50)は、前記長手方向の本体(31)の周囲に形成され、長手方向の本体(31)から半径方向に突出している。したがって、係合解除アセンブリ(47)は、長手方向の本体(31)の近位端とアバットメント突出部(46)との間の固定位置で、長手方向の本体(31)上に位置する。針ブレーキが解放されていない位置にあるとき、近位端(32)は駆動モータギア係合手段(34)を介してモータ駆動ギア(35)に係合する。さらに、コイルばね(49)は、保持カラー(50)に対して圧縮され、運動エネルギの貯蔵部として機能する。上述のように、遠位アバットメント(37)の遠位アバットメント表面を第1の内壁突出部表面(40)に対する当接から自由空間へと移動させるための駆動モータギア(35)と駆動モータギア係合手段(34)とによってもたらされる協働の回転運動により、長手方向の本体(31)が本体の長手軸を中心にして回転すると、ばねがカラーに対して引き起こす弾性的なあらかじめ抑圧されてうっ積した運動エネルギが解放される。このエネルギの放出が、長手方向の本体(31)に固定されている保持カラー(50)に向けられ、この長手方向の本体を遠位方向に駆動し、結果として遠位アバットメント(37)が第2の内壁突出部表面(48)に当接する。同時に、長手方向の本体の近位端に位置する駆動モータギア係合手段(34)も、駆動モータギア(35)から切り離される。このようにして、針ガードブレーキ(30)が、完全に解除された位置に位置する。
【0052】
薬物送出アセンブリは、針ガード(24)がウェイクアップ位置へと移動したときに自動注射装置(1)を電気的にウェイクアップさせるように構成されたアクティベーション回路(51)をさらに備える。「電気的にウェイクアップ」という表現は、自動注射装置が電気的および電子的な構成要素を含んでいるが、ウェイクアップしていない限りは不活発なままであり、すなわち装置が完全にオフまたは省電力モードであって、装置に含まれる電子回路の大部分がスリープ状態であり、あるいはまったく活動していない状態を指す。したがって、自動注射装置は、ウェイクアップさせられて種々の回路および電子的な構成要素を作動させるための手段を備える。薬物送出アセンブリのハウジング(4)内に収容されたプリント回路基板(52)に少なくとも部分的に搭載されてよいアクティベーション回路(51)は、再使用可能な動力式伝達アセンブリ(3)内に位置するプログラマブル制御システム(54)へとアクティベーションまたは「ウェイクアップ」信号を送信するように構成された「ウェイクアップ」マイクロスイッチ(53)をさらに備え、このアクティベーションまたは「ウェイクアップ」信号は、針ガード(24)がこのスイッチ(53)を越えて前記第3の位置または「ウェイクアップ」位置へと移動するときに生じる。したがって、ウェイクアップマイクロスイッチ(53)は、ハウジング(4)内に収容されたプリント回路基板(52)に接続される。アクティベーション回路(51)を、薬剤送出アセンブリのハウジングおよび動力式伝達アセンブリのハウジング(56A、56B)にそれぞれ取り付けられたばね付勢式電気コネクタ(55A、55B)のアレイなどの切断可能な電気接続(55)によって、プログラマブル制御システム(54)へと接続することができる。このようなコネクタは、技術的に知られている。このようにして、装置の使用時に薬物送出アセンブリと動力式伝達アセンブリとが互いに接続されているときに電気的接続を維持し、1回だけ使用される薬物送出送出アセンブリがその有用な目的を果たしたときに、再び切断することができる。
【0053】
上記で簡単に述べたように、薬物送出アセンブリハウジング(4)は、針ガード(24)の遠位端(27)がユーザの皮膚に接触または充分に近接しているかどうかを判断するように構成された皮膚センサ回路(57)をさらに備える。皮膚センサ回路(57)は、針ガードの遠位端(27)に位置し、あるいは針ガードの遠位端(27)に隣接して位置する容量抵抗表面領域(58)に接続される。そのような容量抵抗表面は、例えばタッチスクリーンインターフェースを備えたスマートフォンおよびタブレットで使用されるように、技術的に知られている。そのような容量抵抗表面の主な原理は、例えば容量抵抗表面が別の材料の層の直下に位置する場合のようにたとえ間接的であっても、ユーザの皮膚がそのような表面に近付き、あるいは当接したときに、接地またはアースされた皮膚と、皮膚が触れ、あるいは密接に接触している物体との間に生じる回路の電気抵抗に変化が生じることである。このような電気抵抗の変化を、適切に構成された皮膚センサ回路(57)によって測定することができる。皮膚センサ回路は、有益には、アクティベーション回路(51)と同じプリント回路基板(52)上に位置することができる。したがって、皮膚センサ回路(57)も、プログラマブル制御システム(54)に接続される。皮膚センサ回路(57)は、注射を安全に標準的な注射の操作手順に従って実行するために、ユーザが装置を皮膚に充分に近付けたかどうかを判断するように機能する。皮膚が自動注射装置の遠位端に充分に近いことを示す信号を検出した場合、皮膚センサ回路(57)は、対応する信号をプログラマブル制御システム(54)へと送信する。容量抵抗表面領域(58)および皮膚センサ回路(57)は、例えば、好都合には、針ガード(24)内に配置されてシリンジアセンブリの周囲に同軸に取り付けられたコイルばね(59)を介して電気的に接続されるが、この電気的接続を、代案において、同等の手段で確立させてもよい。コイルばね(59)は、針ガードの遠位端(27)の内壁(60)に部分的に当接し、第1、第2、および第3の位置において、コイルばねは抑圧された状態にあり、運動エネルギを蓄えている。針ガードブレーキ(30)の係合の解除、およびその後の薬物の注射後に、コイルばね(59)は、うっ積した運動エネルギを解放でき、抑圧された状態から、針ガードの内側を長手軸(8)に沿って同軸に、遠位方向へと、ばね(59)が実質的に緩められた抑圧されていない状態に移動する。コイルばね(59)が針ガードの遠位端(27)の内壁(60)に当接しているため、後者は遠位方向に押され、したがって針ガード本体(25)がハウジング(4)の遠位端部分に当接し、針ガード本体(25)は、針ガード本体(25)の外面の壁に設けられた突出フック(73)によって、ハウジング(4)の小径な突出内壁に当接した状態に保たれ、これらの突出フック(73)は、薬物送出アセンブリ(2)のハウジング(4)の上記小径な突出内壁に弾性的かつ摩擦を伴って係合し、針ガード本体(25)が後に近位方向に移動して針を再び露出させることを防止する。このようにして、針ガード(24)は、第4の不可逆な位置に到り、この位置は、自動注射装置の薬物送出アセンブリ(2)をもはや使用することができないため、最終的な安全位置と見なされる。
【0054】
針ガードを、周辺フランジ(41)のエッジ(44)がハウジング(4)の内壁突出部(40)の切り欠き部分に当接し、針ガード本体(25)を遠位方向または近位方向に無理矢理に動かそうとする手動の試みにおいて長手軸(8a)との整列から外れようとする針ガード本体(25)の揺れまたは横移動を防止するようにさらに構成できることに、注意すべきである。
【0055】
これまで述べられていないが、針ガード(24)は、スイッチアクティベーション手段をさらに備えることができる。スイッチアクティベーション手段を、実際には、シリンジアセンブリの長手軸(8a)に沿って移動し、アクティベーションスイッチの経路を横切るように位置することができるがゆえに、周辺フランジ(41)によって表すことができる。しかしながら、好ましい好都合な実施形態において、スイッチアクティベーション手段は、前記針ガード本体(25)の外面に沿って長手軸(8a)と間隔を置いて軸を整列させて長手方向に配置されたスイッチ係合リッジ(61)である。アクティベーションスイッチ手段は、好都合には、前記針ガード本体(25)の外面に沿って位置する連続的なスイッチ係合リッジ(61)であってよく、あるいは前記針ガード本体(25)の外面に沿って軸方向に整列して位置する複数の非連続なスイッチ係合リッジによって形成されてよい。近位端(62)および遠位端(63)を有し、前記針ガード本体(25)の外面に取り付けられているスイッチ係合リッジは、長手軸に沿って、針ガード本体(25)と一緒に、針ガード本体(25)と同様のやり方で移動し、適切に構成されて傾斜し、あるいは斜めにされたリッジ表面(64)を備えている。スイッチ係合リッジを、針ガード本体(25)の外面から半径方向外向きに突出する頂点を備える実質的に三角形の断面を有する「Aフレーム」の形状の本体になぞらえることができる。このようにして、「A」の頂点の各側の傾斜面が、少なくとも1つの傾斜したリッジ表面(64)を形成する。傾斜したリッジ表面(64)は、スイッチ係合リッジ(61)が近位方向に移動するときにマイクロスイッチ(53)に接触し、マイクロスイッチ(53)が傾斜した表面(64)と接触することによって押し下げられる。このようにして、マイクロスイッチが作動する。
【0056】
薬物送出アセンブリハウジングは、「注射準備完了」信号を再使用可能な動力式伝達アセンブリ(4)内に配置されたプログラマブル制御システム(54)へと送信するように構成された第2のマイクロスイッチ(65)をさらに備える。「注射準備完了」信号は、針ガード(24)、したがって図中に示されているようにスイッチアクティベーションリッジ(61)である対応するスイッチアクティベーション手段が、前記第2の位置へと近位方向に移動して、傾斜したリッジ表面(64)が第2のマイクロスイッチに接触するときに生じる。針ガード(24)がこの第2の位置に到達すると、注射器の針が完全に露出する。そのような構成において、第2の「注射準備完了」マイクロスイッチ(65)は、最適かつ好都合には、第1の「アクティベーション」マイクロスイッチ(53)と長手方向に軸方向に整列している。図に例示されているようなとくに好都合な実施形態において、「注射準備完了」は、両方のスイッチが同時に作動しているとき、すなわちスイッチアクティベーションリッジ(61)の傾斜したリッジ表面(64)がアクティベーションスイッチ(53)および注射準備完了スイッチ(65)の両方に同時に接触しているときに限り、プログラマブル制御システム(54)へと送信される。
【0057】
図1に示されるように、伝達アセンブリは、駆動モータギアアセンブリ(66)と、駆動モータ(67)と、例えば充電式または単純なバッテリなど、装置に電力を供給するための電源(68)と、自動注射装置の機能を命令および制御するように構成されたプログラマブル制御システム(54)と、近位端(70)および遠位端(71)を有するねじ山付きのピストン(69)とを備える。ねじ山付きのピストン(69)は、駆動モータギアアセンブリ(66)に接続され、駆動モータギアアセンブリ(66)は、ギアアセンブリハウジング(77、78)に適切に収容される。
【0058】
ねじ山付きのピストン(69)は、駆動モータギアアセンブリ(66)のピストン駆動ギア(72)によって駆動される。針ブレーキ駆動モータギア(35)およびねじ山付きのピストン駆動ギア(72)は、実質的に平行かつ間隔を空けた整列にて駆動モータギアアセンブリ(66)内に配置され、ねじ山付きのピストン駆動ギア(72)は、シリンジアセンブリの長手軸に軸方向に整列し、針ブレーキ駆動モータギア(35)は、長手方向の本体(31)と軸方向に整列している。ねじ山付きのピストン(69)は、駆動モータギアアセンブリ(66)のプログラムされたモータ駆動による動作に応答して、前記ねじ山付きのピストン(72)の遠位端(71)を介してシリンジのプランジャと係合する。プログラムされたモータ駆動による動作は、装置内のさまざまな命令信号を送信および受信し、これらの信号を処理して針ガードブレーキ(30)の解除をもたらし、あるいはプランジャ(13)を押して薬物収容チャンバから薬物を吐出させることができるようにねじ山付きのピストン(69)の作動をもたらすプログラマブル制御システム(54)によって命令および制御される。伝達アセンブリは、ピストン駆動ギア(72)の回転運動にインデックスされたコーディングホイール(79)をさらに備え、コーディングホイール(79)は、このホイール(79)の少なくとも1つの外周面に位置し、ホイール(79)の周囲を巡って配置された一連のマーキングおよび/または刻み目を有している。ねじ山付きのピストン(69)がモータによって近位方向に前進し、薬物を薬物収容チャンバから押し出すとき、プログラマブル制御システムに接続され、ホイール(79)の外周面のうちの1つの少なくとも一部分にかぶさる位置に配置された光学式リーダヘッド(87)が、刻み目および/またはマーキングを読み取る。各々のマーキングおよび/または刻み目は、ねじ山付きのピストン(69)の設定された回転数および/または前記ピストンの移動距離に対応する。これらの読み取り値は、信号に変換され、処理のためにプログラマブル制御システム(54)へと送信される。プログラマブル制御システム(54)が光学式リーダヘッド(87)から受信した信号は、プログラマブル制御システム(54)によって、ピストン(69)が許容されるあらかじめ設定された移動距離の終わりに近付いたかどうかを判断するために使用される。この状態が生じると、プログラマブル制御システム(54)は、電源(68)および/またはモータ(67)に命令して、その出力を下げさせることで、注射の工程の終わりに達する直前にこのモータを減速させる。このようにして、薬物送出アセンブリおよび/または伝達アセンブリの構成要素を損傷させる可能性が、低減および/または回避される。
【0059】
伝達アセンブリハウジング(56a、56b)は、それぞれの対応する雌雄の噛み合い、またはスナップフィット、スナップロック部分を介して、薬物送出アセンブリハウジング(4、16a、16b)に物理的に接続される。雄の挿入部(86)を図2において見て取ることができ、これら雄の挿入部(86)は、薬物送出アセンブリハウジングの近位端に位置し、例えば伝達アセンブリハウジングの突出壁の切り欠き部などの弾性摩擦係合にて雄の挿入部(86)を受け入れるように構成された対応するそれぞれの雌の収容部へと挿入される。図2において、雄の挿入部は、上述のような切り欠き領域である雌の収容部へとスナップ式ではめ込むことができるフック状の弾性部材(86)である。2つのハウジングを、一方のハウジングを他方に向かってわずかに押し、例えば薬物送出ハウジング(4)を反時計方向にねじることによって、互いに分離させることができる。これにより、雄の挿入部の弾性フックが、雌の収容部に設けられた材料のわずかに隆起した斜めの部分に対して、弾性フックが隆起した斜めの部分が生じさせる抵抗に打ち勝つ地点まで移動し、フックが、続く反時計方向の回転のもとで、伝達アセンブリハウジングの突出壁のさらなる切り欠き部に進入し、このさらなる切り欠き部は、長手軸(8a)に沿った弾性フックの引き出しを可能にすることで、薬物送出アセンブリハウジング(4)を伝達アセンブリハウジングから分離させることができるように構成されている。
【0060】
さらに、プログラマブル制御システムは、
ウェイクアップスイッチ(53)からウェイクアップ信号を受信して、自動注射装置をウェイクアップさせ、装置回路の残りの部分に電力を供給すること、
針ガードがユーザの皮膚に近接または接触したことを知らせる皮膚センサ(57)からの信号を受信すること、
そのような皮膚センサ信号の受信に応答して、駆動モータギアによって長手方向の本体(31)を長手軸を中心にして回転させることで、遠位アバットメントおよびアバットメント突出部を当接の整列から外すことにより、針ブレーキを解除し、第2の注射準備完了位置への針ガードの自由な近位方向への移動を可能にするように、駆動モータ(67)および駆動モータギアアセンブリ(66)に命令し、駆動モータおよび駆動モータギアアセンブリを制御すること、
針ガードが第2の注射位置に到達した旨のアクティベーション回路からの信号を受信して、ねじ山付きのピストン駆動ギアを回転させ、ねじ山をプランジャに向かって駆動するように、駆動モータおよび駆動モータギアアセンブリに命令し、駆動モータおよび駆動モータギアアセンブリを制御すること、および
注射サイクルが完了したと判断されるまで、ねじ山をプランジャへと遠位方向に駆動し続けること
を含む動作のうちのいずれか1つを達成するように構成される。
【0061】
さらに、好都合には、プログラマブル制御システムは、駆動モータの電力消費の分析によって注射サイクルの完了を判断するように構成される。例えば、プランジャが薬物収容チャンバの遠位端に到達すると、ねじ山付きのピストンは、シリンジの薬物収容チャンバの遠位端に対してピストンを遠位方向にさらに押そうと試みるときに、抵抗の増加に直面する。この物理的な抵抗が、モータによる電力消費の増加につながり、これがプログラマブル制御システムによって検出される。プログラマブル制御システムを、例えば電力消費の限界を記憶するように適切に構成することができ、この限界を超えると、プログラマブル制御システムは、薬物のすべてが吐出され、注射の工程が完了したと判断する。
【0062】
次に、とくには図2図20を参照して装置の機能をさらに説明するが、図2図20において、装置の同様の要素または構成要素は、必要に応じて、図1の要素または構成要素と同一の参照番号で参照される。
【0063】
ここで図2を参照すると、本発明による自動注射装置の概略の断面図が示されている。この図は、主に、簡単にするために針ブレーキが示されていない点で図1の図から相違する。しかしながら、図1を補足して、シリンジアセンブリ(5)が示されており、シリンジ本体(6)、プランジャ(13)、薬物収容チャンバ(14)、および針(11)の存在を示している。図2の図は、装置キャップ(80)がまだ装置(1)上にある初期状態の自動注射装置を示している。図2からわかるように、装置キャップ(80)がまだ装置上にあるとき、このキャップは、針ガードをゼロ位置としても知られる固定された初期位置に保つ。図2において、これは、キャップの内面または内側表面(82)に位置する遠位端(83)から近位方向に延びているキャップ構成材料の突出部(81)によって、この突出部(81)の近位端が針ガード本体(25)の遠位端を押さえることで達成される。さらに、装置(80)は、薬物送出アセンブリハウジング(4)の適切に形作られた段部と弾性摩擦把持にて係合する近位端に位置する弾性把持手段をさらに備える。このようにして、針ガード(24)は、周辺フランジ(41)が内側突出壁(40)の近位側に位置し、したがって針ブレーキ(30)の遠位アバットメント(37)の近位面(38)に当接しないゼロ位置または初期位置に位置する。
【0064】
さらに、図2に示した装置の針キャップ本体(25)およびハウジング(4)の一部分を切り出して拡大した拡大図である図3に示されるとおり、周辺フランジ(41)、スイッチアクティベーションリッジ(61)の近位端(62)、およびアクティベーションスイッチ(53)の相対位置を見て取ることができる。この図において、スイッチアクティベーションリッジ(61)の近位端(62)は、アクティベーションスイッチ(53)のわずかに遠位側に位置しているが、アクティベーションスイッチ(53)のかなり近くにある。周辺フランジがアクティベーションスイッチ(53)にほぼ整列しており、すなわち換言すると、アクティベーションスイッチが、針ガード本体の近位端(26)の遠位側に隣接して、針ガード本体(25)の外面の上方に位置していることを、見て取ることができる。この図は、装置が使用を待っており、装置キャップ(80)がまだ取り外されていない初期位置またはゼロ位置に対応する。
【0065】
次に、図4図5、および図6を比較のために参照すると、これらの図は、装置キャップ(80)が取り外された後の薬物送出アセンブリの構成要素の相対位置を示している。これが生じると、針ガード本体(25)が、針ガード本体(25)の遠位端(27)の内面(60)を押すコイルばね(59)に蓄えられた運動エネルギによって、遠位方向に移動する。この遠位方向の移動の結果として、周辺フランジ(41)の遠位面(42)が針ブレーキ(30)の遠位アバットメント(37)の近位面(38)に当接し、したがって針本体(25)の遠位方向へのさらなる移動が阻止される。結果として得られる位置は、本明細書において説明したとおり、針ガードが針(11)をユーザへと露出することがないように依然として隠しているため、第1の位置または遮蔽位置である。同時に、スイッチ係合リッジ(61)およびアクティベーションスイッチ(53)の対応する相対位置が、図4に示されている。図4からわかるように、スイッチ係合リッジ(61)の近位端(62)が、今やアクティベーションスイッチ(53)からさらに遠ざかるように遠位方向に移動しており、今や後者が針ガード本体(25)の近位端(26)に関して自由空間に位置することを見て取ることができる。同様に、図6に示されるように、針ブレーキの近位端(32)の拡大図において、第1の遮蔽位置にある駆動モータ係合手段(34)が、駆動モータギア(35)に取り付けられ、あるいは駆動モータギア(35)に一体化され、駆動モータギア(35)に軸方向に整列した歯付きコグ(84)によって保持され、歯付きコグ(84)と協働することを、見て取ることができる
【0066】
図7によってさらに詳しく示されるように、針ガード本体(25)の遠位端(27)が、例えば通常の使用においてはユーザの皮膚である表面に押し付けられると、針ガード本体は、後方へと、すなわち近位側に、ハウジング(4)の内部のシリンジアセンブリの長手軸(8a)に沿って同軸にスライドする。このとき、周辺フランジ(41)の遠位面(42)が移動し、針ブレーキ(30)の遠位アバットメント(37)の近位面(38)との当接から外れる。したがって、周辺フランジ(41)およびアクティベーションスイッチリッジ(61)の両方が、第2の「注入準備完了」位置に向かって近位方向に同時に移動する。これにより、アクティベーションスイッチリッジ(61)の近位端(62)、したがって当然ながら針ガードが、前記アクティベーションスイッチリッジ(61)が斜めのリッジ表面(64)によってアクティベーションスイッチ(53)に接触する上述の第1の遮蔽位置と第2の注射準備完了位置との間の中間の装置の第3の位置に到達する。この第3の「アクティベーション」位置において、斜めの表面リッジ(64)が、アクティベーションスイッチ(53)のばねで付勢された突出部(85)を押して回路を電気的に閉じ、例えば電流などのウェイクアップ信号を発生させる。発生したウェイクアップ信号は、プログラマブル制御システム(54)によって受信され、プログラマブル制御システムは、装置の残りの部分をウェイクアップさせ、装置内の他の回路に電力を分配する。したがって、ウェイクアップスイッチ(53)の作動による装置のウェイクアップによって、皮膚センサ回路(57)が動作を始める。このアクティベーション段階および後続の皮膚センサ回路のアクティベーションは、ほぼ瞬時またはほぼ同時であり、したがってアクティベーションスイッチリッジ(61)がアクティベーションスイッチ(53)によってアクティベーション回路(51)を閉じるとほぼすぐに、皮膚センサは、装置の遠位端がユーザの皮膚に充分に近接しているかどうかを判断するための位置にすでにある。結果として、通常の使用条件下で、ユーザが針ガード本体の遠位端(27)を皮膚に当て、あるいは充分に近付けるとき、容量抵抗表面(58)が有効になる。容量抵抗表面に皮膚を接触またはほぼ接触させることによって引き起こされる電気容量または電気抵抗の変化が、コイルばね(59)によってもたらされる電気的接続を介して皮膚センサ回路(57)によって検出される。皮膚センサ回路(57)が、装置が皮膚に適切に接触または近接していると判断した場合、対応する信号がプログラミング制御システム(54)へと送信される。しかしながら、皮膚センサ回路が針ガードの遠位端と皮膚との充分な近接または接触を検出しない場合、対応する信号はプログラマブル制御システム(54)に送信されず、針ブレーキ(30)を解除または解放する対応する信号をプログラマブル制御システムは送信しない。結果として、図7および図8によって示されるように、周辺フランジ(41)の近位面(43)が針ブレーキ(30)の円筒形の本体(31)に設けられたアバットメント突出部(46)に対して当接するため、針を露出させることになり得る針ガードのさらなる近位方向の移動が防止される。上記の説明から、周辺フランジ(41)の近位面(43)がアバットメント突出部(46)に当接する前に第3の中間の「アクティベーション」位置に達するように、アクティベーションスイッチ(53)およびアクティベーションスイッチリッジ(61)がお互いに対して位置することが、明らかであろう。このような相対位置は、周辺フランジ(41)がアバットメント突出部(46)に遭遇する前に針ブレーキ(30)の解除が生じることをさらに保証し、ユーザにとって注射の手順を実行するための装置の使用時に揺れのない滑らかな動作を約束する。すべての意図および目的に対して、アバットメント突出部(46)は、皮膚の接触が皮膚センサ回路(57)によって検出されていない場合に針を針ガード(24)の外へと突出させる未許可の試みを防止する点で、装置の安全要素の1つである。
【0067】
皮膚接触が適切に検出された場合、皮膚センサ回路(57)は、プログラマブル制御システム(54)へと信号を送信する。次いで、後者が、ギアアセンブリ(66)を介して駆動モータギア(35)に係合して、針ブレーキの円筒形の本体(31)を長手軸(8b)を中心にして回転させるように、駆動モータ(67)に命令することにより、針ブレーキ(31)の解除を開始および達成させる。このとき、遠位アバットメントは、好ましくは180°であるが、おおむね0°から180°までの間に含まれる角度だけ回転し、結果として、遠位アバットメント表面(39)がもはや第1の内壁突出部(40)に当接しなくなる。この状況が、図9に示されている。
【0068】
図10が、円筒形の本体(31)の回転後の遠位アバットメント(37)の拡大図を示している。弓状のエッジ(45)が第1の内壁突出部(40)から遠ざかるように移動し、結果として遠位アバットメント表面(39)がもはや前記第1の内壁突出部(40)に当接していないことを、見て取ることができる。図10に示されるように、遠位アバットメントは、今やコイルばね(50)およびカラー(51)の解放された運動エネルギの推進力の下で遠位方向に平行移動できるように形作られており、したがって遠位アバットメント表面は、前記第2の内壁突出部(48)に当接する。結果として、針ガード本体(25)は、図11に示されるように、第2の注射準備完了位置に向かって近位方向に移動し続けることができる。円筒形の本体(31)の近位端(32)における針ブレーキの対応する解除が、図12に示されており、ギア係合手段(34)が歯付きコグ(84)および駆動モータギア(35)から外れていることを見て取ることができる。
【0069】
図13が、針ブレーキが解放され、あるいは駆動モータギアから外れ、円筒形の本体(31)の遠位端(37)の遠位アバットメント表面(39)が、コイルばね(50)およびカラー(51)によって遠位方向に押され、遠位側の第2の内壁突出部(48)に当接した後の装置の概略の断面図による全体図を示している。
【0070】
図14は、針ガードの一部分を取り除いた拡大図を示しており、第2の「注射準備完了」位置における針ガードの相対位置を示している。図14から見て取ることができるとおり、針ガード本体(25)が近位方向へと可能な限り後方に移動しており、結果として、スイッチアクティベーションリッジ(61)の斜めのリッジ表面(64)が、アクティベーションスイッチ(53)および「注入準備完了」スイッチの両方のばねで付勢された突出部にかぶさり、これらの突出部に係合する。装置は、今や注射の工程をすぐに始めることができる状態にある。両方のスイッチが作動し、あるいはスイッチアクティベーション手段が第2の「注射準備完了」位置に到達するとすぐに、対応する「注射準備完了」信号がプログラマブル制御システム(54)に送信され、これに応えて、プログラマブル制御システム(54)は、ピストンギア(72)を遠位方向へと前方に駆動するように駆動モータ(67)およびギアアセンブリ(66)に命令し、したがってねじ山付きのピストン(69)の遠位端がシリンジアセンブリ(5)のプランジャ(13)と係合し、このプランジャを遠位方向に押して、薬物を薬物収容チャンバから針を通って意図される薬物の受け手へと吐出させる。
【0071】
図15は、注射工程が完了した後の自動注射装置の構成要素の相対位置を示している。図15からわかるように、ピストン(72)がプランジャ(13)をシリンジ本体(6)の遠位端まで遠位方向に押し、薬物チャンバ(14)に収容されたすべての対応する薬物が押し出されている。駆動モータ(67)は、きわめて短い間だけプランジャ(13)を遠位方向へと前方に駆動しようと試み続け、そのような試みにおいてギアおよび駆動モータが直面する抵抗の増加により、モータ(67)がこの抵抗に取り組んで克服しようと自身の作業出力を調整するときに、電力の消費が増加する。この作業負荷の増大を、プログラマブル制御システム(54)へとフィードバックすることができ、プログラマブル制御システムによって生成される対応する「注射終了」信号が、すべての回路をシャットダウンすべきであることを知らせ、それに応じて、プログラマブル制御システムは、モータおよび他の回路への電力を遮断することによって動作する。同時に、「注射終了」または他の同様の信号を、例えばLEDまたは音によってユーザへと表示または伝達することができ、針ガード本体(25)の遠位端(27)を皮膚から遠ざかるように移動させてもよいことを知らせることができる。
【0072】
ユーザが針ガード本体を皮膚から移動させ、あるいは皮膚を針ガード本体(25)の端部から遠ざけると、図16図17、および図18に示されるように、針ガード本体(25)が、やはり針ガード本体(25)の遠位端の内壁(60)に当接していたコイルばね(57)に蓄えられていた運動エネルギの解放の作用下で、今や遠位方向に前方へと移動する。コイルに蓄えられたエネルギが解放されるとき、コイルばねは、抑圧された状態から、抑圧されていない状態、または比較的抑圧されていない状態へと移行する。針ガード本体(25)の遠位方向への移動は、本体(25)が最終位置へと移動するにつれて針(13)が針ガード本体(25)によって再び遮蔽され、完全に覆われるような移動である。最後の第4の不可逆な位置に到達したとき、外周フランジ(41)のエッジ(44)が、ハウジング(4)の遠位端の付近においてハウジング(4)に設けられた小径の内壁突出部(40)とほぼ同じ位置に位置する。周辺フランジ(41)のエッジ(44)が、内壁突出部に当接して、ユーザが針ガード本体(25)を長手軸(8a)から外れるように揺すり、あるいは横方向に変位させようと試みることを防止する。さらに、針ガード本体に設けられたフック状の突出部(73)が、小径の内壁突出部を通過した後に弾性的に半径方向に広がり、針ガード本体を再び近位方向にハウジング内へと押し戻す試みを防止して、針またはシリンジアセンブリの将来の使用を防止する。その後に、薬物送出アセンブリ(2)を伝達アセンブリ(3)から取り外し、適切なやり方で廃棄することができる一方で、駆動伝達アセンブリは、新たな未使用の薬物送出アセンブリとの再接続の後に再び使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18