(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】レジスト用樹脂組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
G03F 7/038 20060101AFI20230105BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230105BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20230105BHJP
C08F 299/00 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
G03F7/038 501
G03F7/004 512
H05K3/28 D
C08F299/00
(21)【出願番号】P 2020534119
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2019025900
(87)【国際公開番号】W WO2020026666
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2018145361
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155698
【氏名又は名称】株式会社有沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】権平 貴志
(72)【発明者】
【氏名】石田 朗
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-043806(JP,A)
【文献】国際公開第2014/024804(WO,A1)
【文献】特開2013-024930(JP,A)
【文献】特開2018-159022(JP,A)
【文献】特開平09-136931(JP,A)
【文献】特開平09-137109(JP,A)
【文献】特開2008-024915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
H05K 3/28
C08F 299/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系の光硬化性重合体と、熱硬化剤と、光重合開始剤とを含有するレジスト用樹脂組成物であって、
前記(メタ)アクリル系の光硬化性重合体が、
カルボキシル基;
炭素数12以上の鎖状脂肪族炭化水素基;及び
不飽和二重結合
を含有し、
前記(メタ)アクリル系の光硬化性重合体は、少なくとも(メタ)アクリル系のカルボキシル基含有重合性化合物と鎖状脂肪族炭化水素基含有重合性化合物とを共重合させて得られる(メタ)アクリル系共重合体に、エチレン性不飽和二重結合含有反応性化合物を反応させて得られる付加共重合体であり、
前記(メタ)アクリル系の光硬化性重合体のガラス転移温度(Tg)が20℃以下であ
り、
前記(メタ)アクリル系の光硬化性重合体中の前記鎖状脂肪族炭化水素基含有重合性化合物に由来するセグメントの含有量が、10~50質量%の範囲であり、
前記レジスト用樹脂組成物を硬化させた硬化物のガラス転移温度(Tg)が100℃以下であるレジスト用樹脂組成物。
【請求項2】
前記鎖状脂肪族炭化水素基含有重合性化合物が、炭素数12~24のアルキル(メタ)アクリレートである、請求項
1に記載のレジスト用樹脂組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系の光硬化性重合体の酸価が50~100mgKOH/gである、請求項1
又は2に記載のレジスト用樹脂組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系の光硬化性重合体の二重結合当量が300~1000g/eqである、請求項1~
3のいずれか1項に記載のレジスト用樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、前記(メタ)アクリル系の光硬化性重合体以外の光重合性化合物を含有する、請求項1~
4のいずれか1項に記載のレジスト用樹脂組成物。
【請求項6】
ソルダーレジスト用である、請求項1~
5のいずれか1項に記載のレジスト用樹脂組成物。
【請求項7】
半導体パッケージ用である、請求項1~
6のいずれか1項に記載のレジスト用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載のレジスト用樹脂組成物を硬化させて得られた硬化物。
【請求項9】
請求項1~
7のいずれか1項に記載のレジスト用樹脂組成物を含むソルダーレジストフィルム。
【請求項10】
請求項
9に記載のソルダーレジストフィルムを備えた回路基板。
【請求項11】
請求項
9に記載のソルダーレジストフィルムを備えた半導体パッケージ用サブストレート。
【請求項12】
請求項
10に記載の回路基板又は請求項
11に記載の半導体パッケージ用サブストレートを備えた電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト用樹脂組成物及びその用途に関し、より詳しくは、エネルギー線照射により硬化する、光重合性を有するレジスト用樹脂組成物、並びに該レジスト用樹脂組成物を用いた硬化物、ソルダーレジストフィルム、回路基板、半導体パッケージ用サブストレート及び電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
サンドブラスト等の物理的処理やエッチング等の化学的処理等、表面加工を施す際に、処理する対象物の表面の一部に膜を形成することにより保護することがなされている。形成された保護膜やその保護膜を形成するための被覆材料をレジストといい、レジストは主に、電子部品用のプリント基板、半導体のパッケージ等に使用されている。レジストは、保護膜の形成方法や用途により、ソルダーレジスト、フォトレジスト、スクリーン印刷レジスト、エッチングレジスト、めっきレジスト等に分類される。
【0003】
例えば、ソルダーレジストは半導体パッケージのパッケージ基板(パッケージ用サブストレート)等に用いられ、パッケージ基板は、支持体であるコア層の上下に配線層(ビルドアップ層)を積層し、最外層のはんだ付けが不要な部分にソルダーレジストを積み重ねた構造を取る。
【0004】
ソルダーレジストには、上記のように対象物の表面を保護する機能が必要とされ、現像性、耐薬品性、光硬化性、耐熱性、密着性、電気絶縁性等の特性が求められる。また、ソルダーレジストに用いられる感光性樹脂組成物は、従来より種々検討がなされている。
例えば、特許文献1には、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と、不飽和モノカルボン酸(b)及び飽和モノカルボン酸(c)を反応させて得られる反応生成物に、さらに多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる光硬化性化合物(A)、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)、光重合開始剤(C)、及び希釈剤(D)を必須成分として含有する、感光性熱硬化性樹脂組成物が提案されている。また、特許文献2には、(A)バインダーポリマーと、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)熱硬化剤と、を含有し、前記(B)成分が、(B-1)分子内にフルオレン骨格、及びオキシエチレン基又はオキシプロピレン基を有する光重合性化合物を含む、感光性樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2004-137328号公報
【文献】日本国特開2010-160418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の電気機器の薄型化、小型化、低コスト化等に伴い、筐体内での部品収容スペースが制限される傾向にあり、半導体パッケージにおいてもパッケージ基板の薄型化が望まれている。その対応として、例えばコア層の薄膜化やコアレス基板の採用、ソルダーレジストのパッケージ基板への片面実装等が行われている。
【0007】
基板の断面において表面(一方の面)と裏面(他方の面)が非対称になると基板に反りが生じやすくなり、ソルダーレジストを片面にのみ塗布または貼合した場合はそれが顕著である。また、パッケージ基板の表面と裏面では、はんだ付けが不要な部分が必ずしも対応していないため、表面と裏面にソルダーレジストを備えていても非対称になるので、コア層を薄膜化したり、コアレス基板にしようとすると、やはり基板に反りが生じることがある。
【0008】
そこで、本発明は、従来求められているレジストの特性を備えつつ、さらに反りを生じない基板を得るためのレジスト用樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、光重合性化合物として、炭素数12以上の鎖状脂肪族炭化水素基を含有し、且つガラス転移温度(Tg)が20℃以下である(メタ)アクリル系の光硬化性重合体を用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の(1)~(15)を特徴とする。
(1)(メタ)アクリル系の光硬化性重合体と、熱硬化剤と、光重合開始剤とを含有するレジスト用樹脂組成物であって、前記(メタ)アクリル系の光硬化性重合体が、カルボキシル基、炭素数12以上の鎖状脂肪族炭化水素基及び不飽和二重結合を含有し、前記(メタ)アクリル系の光硬化性重合体のガラス転移温度(Tg)が20℃以下であるレジスト用樹脂組成物。
(2)前記(メタ)アクリル系の光硬化性重合体が、少なくとも(メタ)アクリル系のカルボキシル基含有重合性化合物と鎖状脂肪族炭化水素基含有重合性化合物とを共重合させて得られる(メタ)アクリル系共重合体に、エチレン性不飽和二重結合含有反応性化合物を反応させて得られる付加共重合体である、前記(1)に記載のレジスト用樹脂組成物。
(3)前記鎖状脂肪族炭化水素基含有重合性化合物が、炭素数12~24のアルキル(メタ)アクリレートである、前記(2)に記載のレジスト用樹脂組成物。
(4)前記(メタ)アクリル系の光硬化性重合体中の前記鎖状脂肪族炭化水素基含有重合性化合物に由来するセグメントの含有量が、10~50質量%の範囲である、前記(2)又は(3)に記載のレジスト用樹脂組成物。
(5)前記(メタ)アクリル系の光硬化性重合体の酸価が50~100mgKOH/gである、前記(1)~(4)のいずれか1つに記載のレジスト用樹脂組成物。
(6)前記(メタ)アクリル系の光硬化性重合体の二重結合当量が300~1000g/eqである、前記(1)~(5)のいずれか1つに記載のレジスト用樹脂組成物。
(7)前記レジスト用樹脂組成物を硬化させた硬化物のガラス転移温度(Tg)が100℃以下である、前記(1)~(6)のいずれか1つに記載のレジスト用樹脂組成物。
(8)さらに、前記(メタ)アクリル系の光硬化性重合体以外の光重合性化合物を含有する、前記(1)~(7)のいずれか1つに記載のレジスト用樹脂組成物。
(9)ソルダーレジスト用である、前記(1)~(8)のいずれか1つに記載のレジスト用樹脂組成物。
(10)半導体パッケージ用である、前記(1)~(9)のいずれか1つに記載のレジスト用樹脂組成物。
(11)前記(1)~(10)のいずれか1つに記載のレジスト用樹脂組成物を硬化させて得られた硬化物。
(12)前記(1)~(10)のいずれか1つに記載のレジスト用樹脂組成物を含むソルダーレジストフィルム。
(13)前記(12)に記載のソルダーレジストフィルムを備えた回路基板。
(14)前記(12)に記載のソルダーレジストフィルムを備えた半導体パッケージ用サブストレート。
(15)前記(13)に記載の回路基板又は前記(14)に記載の半導体パッケージ用サブストレートを備えた電子デバイス。
【発明の効果】
【0011】
本発明のレジスト用樹脂組成物によれば、上記特定の(メタ)アクリル系の光硬化性重合体を含有していることで、レジストに求められる特性、特に耐薬品性を備えるとともに、硬化膜の反りを抑制することができる。よって、薄型のパッケージ基板等に好適に使用することができ、品質信頼性の高い電子デバイスを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とはアクリル又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートについても同様である。また、「(イソ)」とはこの基が存在している場合とそうでない場合の双方を意味し、この基が存在していない場合はノルマルであることを意味する。
また、本明細書において、「質量」は「重量」と同義である。
【0013】
本発明のレジスト用樹脂組成物は、少なくとも(メタ)アクリル系の光硬化性重合体と、熱硬化剤と、光重合開始剤とを含有する。以下に各成分について説明する。
【0014】
<(メタ)アクリル系の光硬化性重合体>
本実施形態に用いられる(メタ)アクリル系の光硬化性重合体は、カルボキシル基、炭素数12以上の鎖状脂肪族炭化水素基及び不飽和二重結合を含有し、ガラス転移温度(Tg)が20℃以下であることを特徴とする。
本発明のレジスト用樹脂組成物は、(メタ)アクリル系の光硬化性重合体が光硬化可能な不飽和二重結合を有するので、光重合開始剤の存在下で紫外線等の光エネルギー線照射により重合して硬化物となる。また、カルボキシル基を有するので、希アルカリ水溶液等の現像液による現像が可能となる。そして、(メタ)アクリル系の光硬化性重合体のガラス転移温度(Tg)が20℃以下であることで、本発明のレジスト用樹脂組成物を硬化させた硬化物は適度な柔軟性を有する。(メタ)アクリル系の光硬化性重合体中の炭素数12以上の鎖状脂肪族炭化水素基により(メタ)アクリル系の光硬化性重合体に疎水性を付与出来るので、水溶性薬液に対する耐薬品性が向上する。なお、前記不飽和二重結合は、前記カルボキシル基中の二重結合とは区別される。
【0015】
本実施形態の(メタ)アクリル系の光硬化性重合体は、(メタ)アクリル系共重合体に不飽和二重結合を有する化合物を付加させた付加共重合体である。(メタ)アクリル系の光硬化性重合体は、例えば、少なくとも(メタ)アクリル系のカルボキシル基含有重合性化合物(a)と鎖状脂肪族炭化水素基含有重合性化合物(b)とを共重合させて得られる(メタ)アクリル系共重合体(X)とエチレン性不飽和二重結合含有反応性化合物(d)とを反応させて製造することができる。
【0016】
(メタ)アクリル系のカルボキシル基含有重合性化合物(a)は、その分子中にカルボキシル基を含有し、他の重合性化合物と共重合し得る(メタ)アクリル系の単量体である。
【0017】
(メタ)アクリル系のカルボキシル基含有重合性化合物(a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-コハク酸、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロイロキシエチル-フタル酸、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸等の不飽和モノカルボン酸等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合せて使用してもよい。中でも、汎用性という観点から、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
【0018】
鎖状脂肪族炭化水素基含有重合性化合物(b)は、その分子中に鎖状脂肪族炭化水素基を含有し、他の重合性化合物と共重合し得る単量体である。
【0019】
鎖状脂肪族炭化水素基は直鎖でも分岐を有していてもよい。鎖状脂肪族炭化水素基は、炭素数が12以上であり、12~24が好ましく、16~24がさらに好ましい。鎖状脂肪族炭化水素基の炭素数が12以上であると、(メタ)アクリル系の光硬化性重合体に疎水性を付与出来るので、水溶性薬液に対する耐薬品性が向上する。
【0020】
鎖状脂肪族炭化水素基含有重合性化合物(b)としては、例えば、炭素数12~24のアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。炭素数12~24のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合せて使用してもよい。中でも、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0021】
少なくとも上記した(メタ)アクリル系のカルボキシル基含有重合性化合物(a)と鎖状脂肪族炭化水素基含有重合性化合物(b)とを共重合させて(メタ)アクリル系共重合体(X)を得ることができる。最終目的物である(メタ)アクリル系の光硬化性重合体のガラス転移温度(Tg)や弾性率、耐熱性を調整するために、(メタ)アクリル系のカルボキシル基含有重合性化合物(a)及び鎖状脂肪族炭化水素基含有重合性化合物(b)と共重合可能な、重合性化合物(a)及び(b)以外のその他の重合性化合物(c)(単量体)をさらに使用することが好ましい。
【0022】
その他の重合性化合物(c)としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-ビニルトルエン、m-ビニルトルエン、p-ビニルトルエン、p-クロロスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン、o-ビニルベンジルメチルエーテル、m-ビニルベンジルメチルエーテル、p-ビニルベンジルメチルエーテル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル等の芳香族ビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸エステル類等を挙げることができる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合せて使用してもよい。中でも、スチレン、n-ブチル(メタ)アクリレートを使用するのが好ましい。
【0023】
(メタ)アクリル系のカルボキシル基含有重合性化合物(a)は、最終目的物である(メタ)アクリル系の光硬化性重合体の酸価が50~100mgKOH/gとなるように配合することが好ましい。
【0024】
鎖状脂肪族炭化水素基含有重合性化合物(b)は、最終目的物である(メタ)アクリル系の光硬化性重合体中で鎖状脂肪族炭化水素基含有重合性化合物(b)に由来するセグメントの含有量が10~50質量%となるように配合することが好ましい。
【0025】
その他の重合性化合物(c)の配合量は、最終目的物である(メタ)アクリル系の光硬化性重合体のトータル重量を100質量%とした場合に、(メタ)アクリル系のカルボキシル基含有重合性化合物(a)、鎖状脂肪族炭化水素基含有重合性化合物(b)、及びエチレン性不飽和二重結合含有反応性化合物(d)の総質量%を、100質量%から引いた差分とする。なお、その他の重合性化合物(c)は、(メタ)アクリル系の光硬化性重合体のガラス転移温度(Tg)が20℃以下となるような化合物を選択することが好ましい。
【0026】
(メタ)アクリル系共重合体(X)は、(メタ)アクリル系のカルボキシル基含有重合性化合物(a)と鎖状脂肪族炭化水素基含有重合性化合物(b)、及び所望によりその他の重合性化合物(c)を混合し、反応温度80~130℃、好ましくは100~120℃で、反応時間5~10時間、好ましくは6~8時間で反応させることにより得られる。
【0027】
なお、反応には、本発明のレジスト用樹脂組成物を硬化させて硬化物を得た際に、硬化物の特性を害さない範囲で熱重合開始剤、重合溶媒、連鎖移動剤等を配合してもよい。
【0028】
熱重合開始剤としては、例えば、2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)、アゾビスシアノ吉草酸、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドレート、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のアゾ化合物;tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
熱重合開始剤の添加量は、共重合させる単量体の合計質量に対して、好ましくは0.5~30質量%であり、より好ましくは1~20質量%であり、さらにより好ましくは10~15質量%である。なお、熱重合開始剤は、一括で添加してもよいし、何回かに分けて添加してもよい。
【0029】
重合溶媒は、重合させる各単量体、生成する重合体前駆体、および必要に応じて重合開始剤やその他の添加剤を溶解できるものであれば特に制限されない。重合溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2-メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸メチル、ジメチルスルホキシ等を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0030】
連鎖移動剤としては、例えば、メチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ベンジルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸およびそのエステル、2-エチルヘキシルチオグリコール、チオグリコール酸オクチルなどのメルカプタン類;メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、イソプロパノール、t-ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、アリルアルコールなどのアルコール類;クロロエタン、フルオロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒドなどのカルボニル類;メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、α-メチルスチレン、α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0031】
エチレン性不飽和二重結合含有反応性化合物(d)は、(メタ)アクリル系共重合体(X)と反応させることにより、共重合体中に不飽和二重結合を有する基を導入することのできる単量体である。エチレン性不飽和二重結合含有反応性化合物(d)としては、例えば、分子中に、エチレン性不飽和二重結合を有する基と、エポキシ基(環状エーテル)や水酸基等の反応性基を有する単量体が挙げられる。
【0032】
エポキシ基(環状エーテル)を有するエチレン性不飽和二重結合含有反応性化合物(d1)は、環状エーテルの開環により生じる水酸基と(メタ)アクリル系共重合体(X)のカルボキシル基との縮合反応(エステル化反応)により、(メタ)アクリル系共重合体(X)に付加される。
【0033】
エポキシ基を有するエチレン性不飽和二重結合含有反応性化合物(d1)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合せて使用してもよい。中でも、汎用性の観点から、グリシジルメタクリレートが好ましい。
【0034】
水酸基を有するエチレン性不飽和二重結合含有反応性化合物(d2)は、水酸基と(メタ)アクリル系共重合体(X)のカルボキシル基との縮合反応(エステル化反応)により(メタ)アクリル系共重合体(X)に付加される。
【0035】
水酸基を有するエチレン性不飽和二重結合含有反応性化合物(d2)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合せて使用してもよい。中でも、汎用性の観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0036】
エチレン性不飽和二重結合含有反応性化合物(d)は、最終目的物である(メタ)アクリル系の光硬化性重合体の二重結合当量が300~1000g/eqとなるように配合することが好ましい。
【0037】
(メタ)アクリル系共重合体(X)へのエチレン性不飽和二重結合含有反応性化合物(d)の付加反応では(メタ)アクリル系共重合体(X)のカルボキシル基とエチレン性不飽和二重結合含有反応性化合物(d)の反応性基とを反応させるが、例えば窒素雰囲気下ではエチレン性不飽和二重結合含有反応性化合物(d)の(メタ)アクリレート部分の重合反応が進行するおそれがある。よって、(メタ)アクリル系共重合体(X)へのエチレン性不飽和二重結合含有反応性化合物(d)の付加反応は、重合反応の進行抑制の観点から、空気雰囲気下で行うことが好ましい。
【0038】
(メタ)アクリル系の光硬化性重合体は、(メタ)アクリル系共重合体(X)とエチレン性不飽和二重結合含有反応性化合物(d)を混合させ、反応温度90~120℃、好ましくは100~110℃で、反応時間5~30時間、好ましくは10~20時間で反応させることにより得られる。
【0039】
なお、反応には反応促進剤、溶媒、重合禁止剤等を配合させてもよい。
【0040】
反応促進剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルアミノエタノール、トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等を用いることができる。中でも、安定性の観点から、トリフェニルホスフィンが好ましい。これらの反応促進剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0041】
溶媒としては、特に制限されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2-メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸メチル、ジメチルスルホキシド等を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0042】
重合禁止剤としては、例えば、フェノチアジン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、ジ-p-フルオロフェニルアミン、ジフェニルピクリルヒドラジル、N-(3-N-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ベンゾキノン、ハイドロキノン、メトキノン、ブチルカテコール、ニトロソベンゼン、ピクリン酸、ジチオベンゾイルジスルフィド、クペロン、塩化銅(II)などが挙げられる。中でも、重合禁止効果の観点から、メトキノンが好ましく使用される。これらの重合禁止剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0043】
本実施形態において、(メタ)アクリル系の光硬化性重合体中の鎖状脂肪族炭化水素基含有重合性化合物(b)に由来するセグメントの含有量は、10~50質量%であることが好ましい。鎖状脂肪族炭化水素基含有重合性化合物(b)に由来するセグメントの含有量が10質量%以上であると、(メタ)アクリル系の光硬化性重合体に疎水性を付与出来るので、水溶性薬液に対する耐薬品性を向上することができ、50質量%以下であると、疎水性になりすぎず現像性に悪影響を与えない。鎖状脂肪族炭化水素基含有重合性化合物(b)に由来するセグメントの含有量は、10~40質量%であることがより好ましく、20~30質量%がさらに好ましい。
(メタ)アクリル系の光硬化性重合体中の鎖状脂肪族炭化水素基含有重合性化合物(b)に由来するセグメントの含有量は、合成に使用する各単量体成分の含有割合から計算により求めることができる。
【0044】
本実施形態において、例えば、(メタ)アクリル系のカルボキシル基含有重合性化合物(a)としてアクリル酸、鎖状脂肪族炭化水素基含有重合性化合物(b)としてイソステアリルアクリレート、その他の重合性化合物(c)としてブチルアクリレート及びスチレン、並びにエチレン性不飽和二重結合含有反応性化合物(d)としてグリシジルメタクリレートを用いて、イソステアリルアクリレート共重合酸基含有アクリル化アクリレート((メタ)アクリル系の光硬化性重合体)を得ることができる。
【0045】
具体的には、まず、アクリル酸、イソステアリルアクリレート、ブチルアクリレート及びスチレンを上記した範囲の任意の配合割合にて混合し、反応させることにより共重合体を得る。得られた共重合体とグリシジルメタクリレートを上記した範囲の任意の配合割合にて混合し、反応させることにより、グリシジルメタクリレート中の環状エーテルが開環して共重合体中のアクリル酸に由来するセグメント中のカルボキシル基の一部と付加反応し、エステル化反応によりグリシジルメタクリレートが共重合体に付加され、イソステアリルアクリレート共重合酸基含有アクリル化アクリレート(付加共重合体)が得られる。
【0046】
本実施形態において、(メタ)アクリル系の光硬化性重合体のガラス転移温度(Tg)は20℃以下である。Tgが20℃以下であると、硬化物は伸び率が高くなり、柔軟性が付与されるので、反りを抑制することができる。Tgは10℃以下であることが好ましく、5℃以下がより好ましい。下限は特に限定されないが、Tgが低すぎると、本発明のレジスト用樹脂組成物より形成した硬化前のフィルムはタック(ベタつき)が強くなり、手扱いが困難となる場合があるので、-20℃以上が好ましく、-10℃以上がより好ましい。(メタ)アクリル系の光硬化性重合体のTgの調整は、(メタ)アクリル系共重合体(X)を得る際の各成分の配合割合、化学構造、重合体の架橋度を調整する等により可能である。
なお、ガラス転移温度(Tg)については、(メタ)アクリル系の光硬化性重合体について熱分析することによりTgを測定してもよいし、また、簡易的に、合成に使用する各単量体成分のガラス転移温度から計算により理論値として求めることができる値を用いてもよい。理論値によりTg(理論Tg)を求める場合は、FOXの式により算出することができる。
【0047】
また、本実施形態において、(メタ)アクリル系の光硬化性重合体の酸価は50~100mgKOH/gであることが好ましい。酸価が50mgKOH/g以上であると短時間で現像できるので好ましく、100mgKOH/g以下であると硬化収縮が少ないので好ましい。
なお、酸価は、JIS K0070に記載の方法に基づき測定することができる。
【0048】
また、本実施形態において、(メタ)アクリル系の光硬化性重合体の二重結合当量は300~1000g/eqであることが好ましい。二重結合当量が300g/eq以上であると硬化収縮の影響を小さく出来るので好ましく、1000g/eq以下であると光エネルギー線照射により二重結合が十分に反応し、優れた解像性を得ることができるので好ましい。
【0049】
また、本実施形態において、(メタ)アクリル系の光硬化性重合体の重量平均分子量(Mw)は10000~50000であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)が10000以上であると硬化後の膜性が良好となるため好ましく、50000以下であると現像性が良好となるため好ましい。
なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(例えば、東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)で測定した値である。
【0050】
<熱硬化剤>
本実施形態に用いられる熱硬化剤は、従来公知のものを使用することができ特に限定されない。熱硬化剤としては、例えば、エポキシ樹脂、カルボジイミド樹脂、アミノ樹脂等が挙げられる。
【0051】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の変性誘導体、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂の変性誘導体、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ、トリアジン骨格を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられ、密着性の観点からビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂の変性誘導体が好ましく、耐熱性の観点からノボラック型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂の変性誘導体、脂環式エポキシが好ましい。
【0052】
カルボジイミド樹脂としては、例えば、ポリカルボジイミド樹脂、カルボジイミド化合物中のカルボジイミド基を加熱により遊離可能なアミノ基でブロックしたブロックカルボジイミド樹脂、環状カルボジイミド樹脂等が挙げられ、保存安定性の観点からブロックカルボジイミド樹脂が好ましい。
【0053】
アミノ樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。
【0054】
熱硬化剤としては、上記した中でも、耐熱性、絶縁性の観点から、エポキシ樹脂、カルボジイミド樹脂が好ましい。
【0055】
熱硬化剤の使用量は、(メタ)アクリル系の光硬化性重合体のカルボキシル基に対して0.9~1.3当量であることが好ましい。熱硬化剤が(メタ)アクリル系の光硬化性重合体のカルボキシル基に対して0.9当量以上であると(メタ)アクリル系の光硬化性重合体を十分に硬化させることができ、1.3当量以下であると、硬化に関与しない余剰な熱硬化剤が残留しにくくなる。
【0056】
<光重合開始剤>
光重合開始剤は、エネルギー線の照射により硬化反応を促進させる成分である。エネルギー線は、例えば、可視光線、紫外線、X線、電子線等が挙げられ、本実施形態では紫外線を使用することが好ましい。
【0057】
光重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤、分子内水素引き抜き型光重合開始剤等のいずれの光重合開始剤も用いることができ、中でも、反応性、硬化の均一性の観点から、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤が好ましい。具体的には、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等が挙げられ、アルキルフェノン系光重合開始剤としては、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1等が挙げられ、中でも、ラジカル発生効率が高く、深部硬化性の観点から、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイドが好ましい。
【0058】
光重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリル系の光硬化性重合体100質量部に対して2~20質量部となるように使用することが好ましく、6~14質量部がより好ましい。光重合開始剤の含有量が(メタ)アクリル系の光硬化性重合体100質量部に対して2質量部以上であると、硬化反応性が良好となり、長期信頼性が向上する傾向にあり、20質量部以下であると、硬化膜の脆弱化を招いたり、回路基板との密着性を損なうことがない。
【0059】
本発明のレジスト用樹脂組成物には、本発明の効果を損ねない範囲において、所望の添加剤を添加することができる。例えば、(メタ)アクリル系の光硬化性重合体以外の光重合性化合物、着色剤、充填剤、難燃剤、分散剤、表面調整剤(レベリング剤、消泡剤)、その他の樹脂等が挙げられる。
【0060】
<本発明の(メタ)アクリル系の光硬化性重合体以外の光重合性化合物>
本実施形態に用いる本発明の(メタ)アクリル系の光硬化性重合体以外の光重合性化合物の例としては、光により架橋反応を起こすことができるものであれば特に制限はないが、汎用性の観点から、分子内にエチレン性不飽和結合を有する単量体又は重合体を用いることが好ましい。
【0061】
分子内にエチレン性不飽和結合を有する単量体としては、(メタ)アクリレート化合物、ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート化合物、エポキシアクリレート化合物、変性エポキシアクリレート化合物、脂肪酸変性エポキシアクリレート化合物、アミン変性ビスフェノールA型エポキシアクリレート化合物、水添ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート化合物、分子内にウレタン結合を有するジ(メタ)アクリレート化合物、分子内に疎水性骨格を有する(メタ)アクリレート化合物、分子内に(ポリ)オキシエチレン鎖及び(ポリ)オキシプロピレン鎖の双方を有するポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート化合物、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート化合物、ポリエステルアクリレート化合物等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
本実施形態で好ましく使用される上記分子内にエチレン性不飽和結合を有する単量体としては、市販されているものとして、例えば、「EBECRYL-3708」、「EBECRYL-1039」、「EBECRYL-230」(いずれも商品名、ダイセル・オルネクス株式会社製)等が例示される。
【0063】
光重合性化合物の含有量は、(メタ)アクリル系の光硬化性重合体100質量部に対して10~60質量部であることが好ましく、20~50質量部がより好ましい。光重合性化合物の含有量が(メタ)アクリル系の光硬化性重合体100質量部に対して10質量部以上であると、回路基板を作製する際の解像度を向上させることができるため、細かい回路パターンを描くことができ、60質量部以下であると、硬化膜が難燃性、耐熱性を有するため好ましい。
【0064】
上記分子内にエチレン性不飽和結合を有する重合体としては、例えば、酸変性ポリエーテル系ウレタンアクリレート、酸変性ポリカーボネート系ウレタンアクリレート、酸変性ポリエステル系ウレタンアクリレート、酸変性エポキシアクリレート、酸含有アクリル化アクリレート等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
分子内にエチレン性不飽和結合を有する重合体の含有量は、(メタ)アクリル系の光硬化性重合体100質量部に対して100質量部未満であることが好ましく、80質量部未満がより好ましい。分子内にエチレン性不飽和結合を有する重合体の含有量が(メタ)アクリル系の光硬化性重合体100質量部に対して100質量部未満であると、硬化膜の反り、耐薬品性を損ねることがないため好ましい。
【0066】
(着色剤)
本実施形態に用いる着色剤としては、有機顔料、無機顔料等が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、イソインドリン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、ジオキサジン系、インダンスレン系、ペリレン系、アゾ系、キノフタロン系、アントラキノン系、アニリン系、シアニン系等の有機顔料が挙げられる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、ウルトラマリン青、プロシア青、黄鉛、亜鉛黄、鉛丹、酸化鉄赤、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、耐色性、絶縁性の観点から、有機顔料を用いることが好ましい。
【0067】
着色剤は分散液として使用することが好ましい。この分散液は、着色剤と分散剤とを予め混合して得られる組成物を、有機溶媒(又はビヒクル)に添加して分散させることによって調製することができる。前記ビヒクルとは、塗料が液体状態にある時に顔料を分散させている媒質の部分をいい、液状であって前記顔料と結合して塗膜を固める部分(バインダー)と、これを溶解希釈する成分(有機溶媒)とを含む。
【0068】
本実施形態で用いる着色剤は、分散安定性の観点から、数平均粒径0.001~0.1μmのものが好ましく、更に0.01~0.08μmのものが好ましい。尚、ここでいう「粒径」とは粒子の電子顕微鏡写真画像を同面積の円とした時の直径をいい、また「数平均粒径」とは多数の粒子について上記の粒径を求め、この100個平均値をいう。
【0069】
着色剤の含有量は、(メタ)アクリル系の光硬化性重合体100質量部に対して、0.1~5質量部であることが好ましく、1~3質量部がより好ましい。着色剤の含有量が0.1質量部未満の場合、パターニング時にエネルギー線が回路基板から反射し易くなり、ハレーションという不具合がおこる傾向があり、5質量部を超えると、光硬化の際に膜の底部まで露光光が届かず、膜内部において未硬化部分が発生し、エッチングの際に硬化膜の浸食が起こってパターン形成が不良となる(現像性が悪くなる)場合があるため、前記範囲であることが好ましい。
【0070】
(充填剤)
本実施形態に用いる充填剤としては、アルミナ、コージェライト、ジルコン等のセラミックス微粒子、硫酸バリウム、タルク、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等のフィラー成分等が挙げられる。
【0071】
充填剤の含有量は、(メタ)アクリル系の光硬化性重合体100質量部に対して、20~200質量部であることが好ましく、50~150質量部がより好ましい。充填剤の含有量が前記範囲であると、解像性に影響を与え難い。
【0072】
(難燃剤)
本実施形態に用いる難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられ、中でも難燃性の観点から、リン系難燃剤が好ましい。リン系難燃剤は、例えば、分子内に少なくとも1つのリン元素を含有する化合物で、特に限定はされないが、例えば、赤リン、縮合リン酸エステル系化合物、環状有機リン系化合物、ホスファゼン系化合物、リン含有(メタ)アクリレート系化合物、リン含有エポキシ系化合物、リン含有ポリオール系化合物、リン含有アミン系化合物、ポリリン酸アンモニウム、メラミンリン酸塩、ホスフィン酸金属塩等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0073】
難燃剤の含有量は、(メタ)アクリル系の光硬化性重合体100質量部に対して、20~60質量部であることが好ましく、30~50質量部がより好ましい。難燃剤の含有量が前記範囲であると、難燃性を発揮することができとともに、他の諸特性に影響を与えることがない。
【0074】
(分散剤)
分散剤としては、例えば、エポキシシラン、(メタ)アクリルシラン、湿潤分散剤等が挙げられる。
【0075】
(表面調整剤)
表面調整剤としては、例えば、シリコーン樹脂系添加剤、フッ素樹脂系添加剤、および市販されている界面活性剤が挙げられる。
【0076】
本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、従来公知の方法に従って作製することができ、特に限定されない。例えば、(メタ)アクリル系の光硬化性重合体に、光重合開始剤、熱硬化剤及びその他の任意成分を順次混合することにより作製することができる。また、充填剤、難燃剤などを混合する際の混合工程では、ビーズミルやロールミル等のミキサーを用いて混合することができる。
【0077】
<硬化物>
本発明のレジスト用樹脂組成物はエネルギー線を照射することにより硬化させ、所望厚みの硬化物(硬化膜)を得ることができる。
【0078】
レジスト用樹脂組成物を硬化させる場合、所望の形状に形成したレジスト用樹脂組成物、具体的には、基材等の表面に所定の乾燥厚みとなるようにレジスト用樹脂組成物を塗布して樹脂層を形成し、乾燥させた後、エネルギー線を照射することにより硬化させることができる。エネルギー線は、特に限定されず、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線を使用することができるが、硬化反応を効率良く行えるという観点から、紫外線を使用することが好ましい。
紫外線の光源としては、紫外線(UV)が発せられる光源を使用することができる。紫外線の光源としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ、ハロゲンランプ、パルスキセノンランプ、LED(Light Emitting Diode)等が挙げられる。
【0079】
本発明のレジスト用樹脂組成物を硬化させた硬化物のガラス転移温度(Tg)は100℃以下であることが好ましい。硬化物のガラス転移温度が100℃以下であると、反りを抑制することができる。ガラス転移温度は90℃以下であることが好ましく、80℃以下がより好ましい。下限は特に限定されないが、ガラス転移温度が低すぎると硬化物はタック(ベタつき)が強くなり、手扱い性が困難となる場合があるので、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、動的粘弾性測定(DMA)(例えば、TA Instruments Japan Inc.製「RSA-G2」(商品名))を用いて測定することができる。
【0080】
硬化膜とした場合の膜厚としては、例えば、5~100μmとすることができ、画像表示装置等の電子機器材料として使用するには、10~50μmの厚みであることが好ましい。
【0081】
<その他の用途>
レジスト用樹脂組成物の電子機器材料以外の好ましい用途としては、例えば、ソルダーレジストインク、ソルダーレジストフィルム等が挙げられ、本発明のレジスト用樹脂組成物は、回路基板や半導体パッケージ用サブストレートに用いられるソルダーレジストフィルムとして好適に使用することができる。
【0082】
(ソルダーレジストフィルム)
本発明のソルダーレジストフィルムは、支持体と、該支持体上に形成された光硬化性のレジスト用樹脂組成物層とを備え、レジスト用樹脂組成物層は本実施形態のレジスト用樹脂組成物を含有している。ソルダーレジストフィルムは、レジスト用樹脂組成物層の支持体とは反対側の面に保護フィルム層を有していてもよい。
【0083】
以下、ソルダーレジストフィルムの作製方法について説明する。
レジスト用樹脂組成物層は、本実施形態のレジスト用樹脂組成物を、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解し、固形分30~70質量%程度の溶液とした後に、かかる溶液を支持体上に塗布して形成することが好ましい。
【0084】
支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムが挙げられる。支持体において樹脂組成物が塗布される面には離型処理が施されているものが好ましい。
支持体の厚みは、用途、レジスト用樹脂組成物層の厚みより適宜選択することができる。
【0085】
レジスト用樹脂組成物層の厚みは、用途により異なるが、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶剤を除去した乾燥後の厚みで、5~100μmが好ましく、10~50μmがより好ましい。
【0086】
保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0087】
本発明のソルダーレジストフィルムは、フレキシブルプリント配線板の回路保護や半導体パッケージ用サブストレートの層間接着剤及び回路保護に用いることができる。
【0088】
レジストパターンは、例えば、ソルダーレジストフィルムを回路形成用基板上に積層する積層工程;活性光線をソルダーレジストフィルムのレジスト用樹脂組成物層の所定部分に照射して、レジスト用樹脂組成物層に硬化部を形成させる露光工程;該硬化部以外のレジスト用樹脂組成物層を除去する現像工程;及び、硬化部のレジスト用樹脂組成物層を加熱により硬化させる熱硬化工程、を備える製造方法により製造することができる。
なお、ソルダーレジストフィルムが保護フィルムを有する場合は、積層工程の前に、ソルダーレジストフィルムから保護フィルムを除去する工程を有する。
【0089】
回路形成用基板は、絶縁層と、絶縁層上にエッチング法又は印刷法により形成された導電体層(銅、銅系合金、銀、銀系合金、ニッケル、クロム、鉄、ステンレス等の鉄系合金などの導電性材料からなる層。好ましくは銅又は銅系合金からなる。)とを備え、積層工程では、回路形成用基板の導電体層側にソルダーレジストフィルムのレジスト用樹脂組成物層が位置するように積層する。
【0090】
積層工程におけるソルダーレジストフィルムの積層方法としては、例えば、レジスト用樹脂組成物層を加熱しながら回路形成用基板に圧着することにより積層する方法が挙げられる。このようにして積層する場合、密着性及び追従性等の見地から減圧下で積層することが好ましい。
【0091】
積層工程において、光硬化性樹脂組成物層の加熱は、30℃以上80℃未満の温度で行うことが好ましく、圧着圧力は0.1~2.0MPa程度とすることが好ましく、周囲の気圧は3hPa以下とすることが好ましい。
【0092】
露光工程ではレジスト用樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して硬化部を形成させる。硬化部の形成方法としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像状に照射する方法が挙げられる。また、LDI方式、DLP(Digital Light Processing)露光法等のマスクパターンを有さない直接描画法による露光も可能である。この際、レジスト用樹脂組成物層上に存在する支持体が透明の場合には、そのまま活性光線を照射することができる。支持体が不透明の場合には、支持体を除去した後にレジスト用樹脂組成物層に活性光線を照射する。
【0093】
活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、半導体レーザー等の紫外線を有効に放射する光源を使用することができる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射する光源を使用することもできる。
【0094】
次いで、レジスト用樹脂組成物層上に支持体が存在している場合には、支持体を除去した後、現像工程において、ウエット現像、ドライ現像等で硬化部以外の光硬化性樹脂組成物層を除去して現像し、レジストパターンを形成させる。
【0095】
ウエット現像の場合は、アルカリ性水溶液等の現像液を用いて、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により現像することができる。現像液としては、安全かつ安定であり、操作性が良好なものが好ましく、例えば、20~50℃の炭酸ナトリウムの希薄溶液(1~5質量%水溶液)等が用いられる。
【0096】
上述の形成方法により得られたレジストパターンは、例えば、プリント配線板のソルダーレジストフィルムとして使用する場合は、現像工程後に熱硬化工程を行う。
【0097】
加熱方法としては、オーブンによる加熱を挙げることができる。加熱の条件としては、80℃以上の温度で20~120分間行われることが好ましい。
【0098】
(プリント配線板)
上記の方法により、絶縁層の上に導電性材料からなる配線パターンとソルダーレジストフィルムがこの順に形成されたプリント配線板(半導体パッケージ用サブストレート、フレキシブルプリント配線板を含む)が得られる。
【0099】
(電子デバイス)
本発明の電子デバイスは、上記したソルダーレジストフィルムを備えた回路基板又は半導体パッケージ用サブストレートを備えている。
【実施例】
【0100】
以下、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中「部」、「%」とあるのは、質量基準を意味する。
【0101】
(合成例1:(メタ)アクリル系光硬化性重合体(A)の合成)
攪拌機、滴下ロート、冷却管及び温度計を備えたフラスコに、アクリル酸20.6部、スチレン9.0部、ブチルアクリレート37.4部、イソステアリルアクリレート10部、1-メトキシ-2-プロパノール80部及び2,2-アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBN)3.0部を混合し、窒素雰囲気中で、110℃で7時間攪拌した。その後、大気下(酸素濃度7%以上)でグリシジルメタクリレート(以下、GMA)23.0部、メトキノン0.04部及びトリフェニルホスフィン(以下、TPP)0.24部を混合した後、100℃で攪拌した。水酸化カリウムを用いた中和摘定法により、酸価が90mgKOH/gに達した時点(15時間)で反応終了とした。その後、冷却して、不揮発分が40%となるように、1-メトキシ-2-プロパノールを加えた。
【0102】
得られた(メタ)アクリル系光硬化性重合体(A)(イソステアリルアクリレート共重合酸基含有アクリル化アクリレート)の重量平均分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(標準物質:ポリエチレングリコール・ポリエチレンオキシド)により測定したところ、23,000であった。また、イソステアリルアクリレート(以下、ISTA)の含有量は、ISTAに由来するセグメントの含有量として10%であり、ガラス転移温度の理論値(理論Tg)は0℃、二重結合当量の理論値は610g/eq、酸価から計算したカルボキシル基当量は622g/eqであった。
【0103】
(合成例2:(メタ)アクリル系光硬化性重合体(B)の合成)
合成例1において、原料の投入量をスチレン0.1部、ブチルアクリレート36.4部、イソステアリルアクリレート20部とした以外は同様にして、(メタ)アクリル系光硬化性重合体(B)(イソステアリルアクリレート共重合酸基含有アクリル化アクリレート)を得た。
この(メタ)アクリル系光硬化性重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は23,000、ISTAに由来するセグメントの含有量は20%、ガラス転移温度の理論値(理論Tg)は-7.5℃、二重結合当量の理論値は610g/eq、酸価から計算したカルボキシル基当量は622g/eqであった。
【0104】
(合成例3:(メタ)アクリル系光硬化性重合体(C)の合成)
合成例1において、原料の投入量をスチレン9.4部、ブチルアクリレート27.0部、イソステアリルアクリレート20部とした以外は同様にして、(メタ)アクリル系光硬化性重合体(C)(イソステアリルアクリレート共重合酸基含有アクリル化アクリレート)を得た。
この(メタ)アクリル系光硬化性重合体(C)の重量平均分子量(Mw)は21,500、ISTAに由来するセグメントの含有量は20%、ガラス転移温度の理論値(理論Tg)は5.8℃、二重結合当量の理論値は610g/eq、酸価から計算したカルボキシル基当量は622g/eqであった。
【0105】
(合成例4:(メタ)アクリル系光硬化性重合体(D)の合成)
合成例1において、原料の投入量をスチレン0.1部、ブチルアクリレート10.3部、イソステアリルアクリレート46部とした以外は同様にして、(メタ)アクリル系光硬化性重合体(D)(イソステアリルアクリレート共重合酸基含有アクリル化アクリレート)を得た。
この(メタ)アクリル系光硬化性重合体(D)の重量平均分子量(Mw)は25,000、ISTAに由来するセグメントの含有量は46%、ガラス転移温度の理論値(理論Tg)は5.0℃、二重結合当量の理論値は610g/eq、酸価から計算したカルボキシル基当量は622g/eqであった。
【0106】
(合成例5:(メタ)アクリル系光硬化性重合体(E)の合成)
合成例1において、原料の投入量をスチレン21.0部、ブチルアクリレート25.4部とした以外は同様にして、(メタ)アクリル系光硬化性重合体(E)(イソステアリルアクリレート共重合酸基含有アクリル化アクリレート)を得た。
この(メタ)アクリル系光硬化性重合体(E)の重量平均分子量(Mw)は27,000、ISTAに由来するセグメントの含有量は10%、ガラス転移温度の理論値(理論Tg)は18.0℃、二重結合当量の理論値(理論Tg)は610g/eq、酸価から計算したカルボキシル基当量は622g/eqであった。
【0107】
(i)感光性樹脂組成物(レジスト用樹脂組成物)の作製
表1に示す配合割合にて各成分を配合し、ミキサーにて混合させて、実施例1~8、比較例1~3の感光性樹脂組成物を得た。
【0108】
(ii)ドライフィルムの作製
上記(i)で得た感光性樹脂組成物を、乾燥後の厚さが25μmの厚みとなるように25μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(支持用PETフィルム)上に塗布し、80℃で5分間乾燥させた後、感光性樹脂組成物が塗布された面側にポリエチレンフィルムを貼り合わせてドライフィルムを得た。
【0109】
1.ガラス転移温度(Tg)の測定
(1)試験用フィルムの作製
上記(ii)で作製したドライフィルムからポリエチレンフィルムを剥離し、支持用PETフィルム及び感光性樹脂組成物層からなる感光性樹脂フィルムの感光性樹脂組成物層側に、38μm厚の離型処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(剥離用PETフィルム)を、真空ラミネート(株式会社名機製作所製「MVLP-500/600-II」(装置名))により貼り合わせた。真空ラミネートは、熱板温度50~70℃、プレス圧力0.5~1.0MPa、プレス時間10~20秒、真空度3hPa以下にて実施した。真空ラミネート後、超高圧水銀ランプにて100mJ/cm2の紫外線を剥離用PETフィルム側から照射した。照射後、剥離用PETフィルムを剥離し、感光性樹脂組成物層に対して30℃の1wt%炭酸ナトリウム水溶液を、スプレー圧0.18MPaで噴霧し、60秒間現像を行った。現像後、高圧水銀ランプにて1,000mJ/cm2の紫外線を感光性樹脂組成物層に照射した。照射後、熱風循環式乾燥機にて、180℃、120分硬化させた。硬化させた後、支持用PETフィルムを剥離し、試験用フィルムを得た。
【0110】
(2)測定方法
動的粘弾性測定(DMA)(TA Instruments Japan Inc.製「RSA-G2」(装置名))を用いて、試験用フィルムのガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表1に示す。
【0111】
2.耐薬品性(フラックス耐性)の評価
(1)試験検体の作製
上記(ii)で作製したドライフィルムからポリエチレンフィルムを剥離し、支持用PETフィルム及び感光性樹脂組成物層からなる感光性樹脂フィルムの感光性樹脂組成物層に、メック株式会社製の薬液CZで処理を施した35μm電解銅箔を真空ラミネート(株式会社名機製作所製「MVLP-500/600-II」(装置名))により貼り合わせた。真空ラミネートは、熱板温度50~70℃、プレス圧力0.5~1.0MPa、プレス時間10~20秒、真空度3hPa以下にて実施した。真空ラミネート後、超高圧水銀ランプにて100mJ/cm2の紫外線を支持用PETフィルム側から照射した。照射後、支持用PETフィルムを剥離し、感光性樹脂組成物層に対して30℃の1wt%炭酸ナトリウム水溶液を、スプレー圧0.18MPaで噴霧し、60秒間現像を行った。現像後、高圧水銀ランプにて1,000mJ/cm2の紫外線を照射した。照射後、熱風循環式乾燥機にて、180℃、120分硬化させ、試験検体を得た。
【0112】
(2)試験方法
千住金属工業株式会社製フラックス(品番:スパークルフラックス WF-6317)を、試験検体の感光性樹脂組成物層側表面全体に、単位面積(25cm2)当たり0.1gとなるように計量し、試験検体の感光性樹脂組成物層側表面の全面に均一に塗布した。塗布後、物温が260℃×20秒に保持出来る条件に設定したコンベア式リフロー炉に通した。その後、室温で自然冷却し、流水で洗浄することによりフラックスを除去した。表面の水分を乾いた布で拭き取った後、試験検体の感光性樹脂組成物層側表面を、エタノールを染み込ませたウエスで拭き、ウエスにレジストが付着するか否かを目視で確認した。ウエスにレジストが付着しなかったものを「○(耐薬品性あり)」、ウエスにレジストが付着したものを「×(耐薬品性なし)」と評価した。結果を表1に示す。
【0113】
3.反りの評価
(1)試験検体の作製
上記(ii)で作製したドライフィルムからポリエチレンフィルムを剥離し、支持用PETフィルム及び感光性樹脂組成物層からなる感光性樹脂フィルムの感光性樹脂組成物層に、12μm電解銅箔を真空ラミネート(株式会社名機製作所製「MVLP-500/600-II」(装置名))により貼り合わせた。真空ラミネートは、熱板温度50~70℃、プレス圧力0.5~1.0MPa、プレス時間10~20秒、真空度3hPa以下にて実施した。真空ラミネート後、超高圧水銀ランプにて100mJ/cm2の紫外線を支持用PETフィルム側から照射した。照射後、支持用PETフィルムを剥離し、感光性樹脂組成物層に対して30℃の1wt%炭酸ナトリウム水溶液を、スプレー圧0.18MPaで噴霧し、60秒間現像を行った。現像後、感光性樹脂組成物層に対して高圧水銀ランプにて1,000mJ/cm2の紫外線を照射した。照射後、熱風循環式乾燥機にて、180℃、120分硬化させ、試験検体を得た。
【0114】
(2)試験方法
試験検体を、感光性樹脂組成物層側を上にして、温度23℃、湿度50%に設定した試験室の台の上に配置し、放置した。24時間後、試験検体の状態を観察し、下記基準に従い評価した。結果を表1に示す。
〔評価基準〕
○(良):試験検体の端部が台から全く離れていない。
△(可):試験検体の端部が台から離れた。離間距離は10mm未満で実用上問題ないレベル。
×(不良):試験検体の端部が台から離れた。離間距離は10mm以上で実用上問題あるレベル。
【0115】
【0116】
表1の結果より、実施例1~8はいずれも耐薬品性を備えるとともに反りを抑制することができ、特に実施例1~7は試験検体に反りが全く無く、優れていた。これに対し、比較例1~2は反りの抑制が出来ず、また比較例3は耐薬品性が不十分であった。これらの結果から、本発明のレジスト用樹脂組成物は、耐薬品性と反りの抑制を両立できることが分かった。
【0117】
本発明を詳細にまた特定の実施形態を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2018年8月1日出願の日本特許出願(特願2018-145361)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。