(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】還元された酸化グラフェン、還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体、及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/30 20060101AFI20230105BHJP
【FI】
G01N27/30 B
(21)【出願番号】P 2020536070
(86)(22)【出願日】2018-12-24
(86)【国際出願番号】 KR2018016564
(87)【国際公開番号】W WO2019132467
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】10-2017-0180109
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518445687
【氏名又は名称】韓国原子力研究院
【氏名又は名称原語表記】KOREA ATOMIC ENERGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】111, Daedeok-daero 989beon-gil, Yuseong-gu, Daejeon 34057, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ペ,ソンウン
(72)【発明者】
【氏名】パク,テホン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ドンチョル
(72)【発明者】
【氏名】ヨン,ジェイウォン
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-209472(JP,A)
【文献】特開2017-082332(JP,A)
【文献】国際公開第2013/089026(WO,A1)
【文献】特開平08-029372(JP,A)
【文献】ZHANG Xiong et al.,Chinese Science Bulletin,2012年,Vol.57, No.23,pp.3045-3050
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26 - 27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化グラフェンを溶媒に分散させて酸化グラフェン分散液を形成するステップと、
前記酸化グラフェン分散液に機能性物質及び所定の溶液を供給して酸化グラフェン-機能性物質混合液を形成するステップと、
前記酸化グラフェン-機能性物質混合液を導電体に塗布して所定の温度で乾燥して酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜を形成するステップと、
前記酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜が形成された導電体を35~70℃の温度範囲の電解質に浸漬して電気化学的に還元することにより還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体を形成するステップとを含み、
前記機能性物質は、電気化学的活性化合物であるニッケルプルシアンブルー(Ni-PB)、フェロセン、フェロセン誘導体、キノン、キノン誘導体、ルテニウムアミン錯体、オスミウム(I)、オスミウム(II)、オスミウム(III)錯体、メタロセン及びメタロセン誘導体の少なくとも1つを含むことを特徴とする還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体の製造方法。
【請求項2】
前記酸化グラフェン分散液は、
溶媒と、
0.1~5重量%の前記酸化グラフェンとを含むことを特徴とする請求項1に記載の還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体の製造方法。
【請求項3】
前記所定の溶液は、水溶性高分子を含むことを特徴とする請求項1に記載の還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体の製造方法。
【請求項4】
前記水溶性高分子は、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol, PVA)、ポリアクリル酸(polyacrylicacid, PAA)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone, PVP)、ポリエチレングリコール(polyethyleneglycol, PEG)、及びポリテトラフルオロエチレン骨格にスルホン酸基を導入したポリマー(ナフィオン)の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項3に記載の還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体の製造方法。
【請求項5】
前記所定の溶液は、
溶媒と、
0.05~0.2重量%の前記高分子とを含むことを特徴とする請求項3に記載の還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体の製造方法。
【請求項6】
前記酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜を形成するステップにおける前記所定の温度は、50~80℃の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体の製造方法。
【請求項7】
前記還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体を形成するステップにおける前記電解質の濃度は、1M~飽和溶液の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体の製造方法。
【請求項8】
前記還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体を形成するステップにおいては、参照電極、対電極及び作用電極を含む三電極システムを形成し、前記酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜を電気化学的に還元することを特徴とする請求項1に記載の還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元された酸化グラフェン(reduced graphene oxide, r-GO)又は還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体を製造する方法に関し、より具体的には、酸化グラフェンを電気化学的に還元することにより還元された酸化グラフェンを製造し、さらに酸化グラフェンと機能性物質の複合体を還元することにより還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは、電気的、機械的、化学的特性が非常に安定して優れた物質であり、様々な応用分野で活用されており、それに関する多くの研究が行われてきている。
【0003】
酸化グラフェンは、グラフェンの性質の一部を有し、溶媒に分散しやすく、安価であるという利点があるので、多くの研究が行われてきている。一方、酸化グラフェンは、グラフェンに比べて電気伝導性が劣るという欠点がある。しかし、酸化グラフェンを化学的又は電気化学的に還元することにより還元された酸化グラフェンを製造する方法を用いると、電気伝導性を向上させることができる。よって、還元された酸化グラフェンは、二次電池及びスーパーキャパシタに用いられる電極、電気化学センサに用いられる電気化学電極及び化学反応触媒電極などの分野において、電極候補物質として関心が寄せられ、研究が行われている。
【0004】
また、近年、還元された酸化グラフェンの特性にさらに機能性を付与し、活用度をより高める研究が盛んに行われている。詳細には、還元された酸化グラフェンにさらに機能性物質を導入し、還元された酸化グラフェン特有の特性と機能性を同時に発現させる例が挙げられる。
【0005】
しかし、還元された酸化グラフェンと機能性物質の複合体においては、機能性物質が還元された酸化グラフェンの表面で活性化するという問題があった。そこで、本発明においては、還元された酸化グラフェンの表面だけでなく内部にも機能性物質が含まれ、機能性物質が還元された酸化グラフェンの内部でも活性化することにより、機能性物質の性質を最大化することのできる、還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体の製造方法を提示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、酸化グラフェン又は酸化グラフェン-機能性物質複合体を還元して電気伝導性を向上させるための製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、還元された酸化グラフェン又は還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体の特性を向上させるための製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、特性が向上した還元された酸化グラフェン又は還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体を迅速に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態による還元された酸化グラフェンの製造方法は、酸化グラフェンを溶媒に分散させて酸化グラフェン分散液を形成するステップと、前記酸化グラフェン分散液に所定の溶液を供給して酸化グラフェン混合液を形成するステップと、前記酸化グラフェン混合液を導電体に塗布して所定の温度で乾燥して酸化グラフェン薄膜を形成するステップと、前記酸化グラフェン薄膜が形成された導電体を35~70℃の温度範囲の電解質に浸漬して電気化学的に還元することにより還元された酸化グラフェンを形成するステップとを含む。
【0010】
一実施形態において、前記分散液は、溶媒と、0.1~5重量%の前記酸化グラフェンとを含むことを特徴とする。
【0011】
一実施形態において、前記所定の溶液は、水溶性高分子を含む。詳細には、前記水溶性高分子は、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol, PVA)、ポリアクリル酸(polyacrylicacid, PAA)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone, PVP)、ポリエチレングリコール(polyethyleneglycol, PEG)、ポリウレタン(polyurethane, PU)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene, PTFE)、及びポリテトラフルオロエチレン骨格にスルホン酸基を導入したポリマー(ナフィオン)の少なくとも1つを含む。
【0012】
一実施形態において、前記所定の溶液は、溶媒と、0.05~0.2重量%の前記高分子とを含むことを特徴とする。
【0013】
一実施形態において、前記酸化グラフェン薄膜を形成するステップにおける前記所定の温度は、50~80℃の範囲であることを特徴とする。
【0014】
一実施形態において、前記還元された酸化グラフェンを形成するステップにおける前記電解質の濃度は、1M~飽和溶液の範囲であることを特徴とする。
【0015】
一実施形態において、前記還元された酸化グラフェンを形成するステップにおいては、参照電極(reference electrode)、対電極(counter electrode)及び作用電極(working electrode)を含む三電極システム(three electrode system)を形成し、前記酸化グラフェン薄膜を電気化学的に還元することを特徴とする。
【0016】
一実施形態によれば、前記製造方法のいずれかの方法により製造される還元された酸化グラフェンが提供される。
【0017】
また、本発明の一実施形態による還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体の製造方法は、酸化グラフェンを溶媒に分散させて酸化グラフェン分散液を形成するステップと、前記酸化グラフェン分散液に機能性物質及び所定の溶液を供給して酸化グラフェン-機能性物質混合液を形成するステップと、前記酸化グラフェン-機能性物質混合液を導電体に塗布して所定の温度で乾燥して酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜を形成するステップと、前記酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜が形成された導電体を35~70℃の温度範囲の電解質に浸漬して電気化学的に還元することにより還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体を形成するステップとを含む。
【0018】
一実施形態において、前記酸化グラフェン分散液は、溶媒と、0.1~5重量%の前記酸化グラフェンとを含むことを特徴とする。
【0019】
一実施形態において、前記酸化グラフェン-機能性物質混合液を形成するステップにおける前記機能性物質は、電気化学的活性粒子であるケイ素(Si)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、鉛(Pb)、アンチモン錫酸化物(Antimony Tin Oxide, ATO)及びそれらの酸化物の少なくとも1つを含む。
【0020】
一実施形態において、前記酸化グラフェン-機能性物質混合液を形成するステップにおける前記機能性物質は、電気化学的活性化合物であるニッケルプルシアンブルー(Ni-PB)、フェロセン、フェロセン誘導体、キノン、キノン誘導体、ルテニウムアミン錯体、オスミウム(I)、オスミウム(II)、オスミウム(III)錯体、メタロセン及びメタロセン誘導体の少なくとも1つを含む。
【0021】
一実施形態において、前記酸化グラフェン-機能性物質混合液を形成するステップにおける前記機能性物質は、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)及び白金(Pt)の少なくとも1つを含む。
【0022】
一実施形態において、前記所定の溶液は、水溶性高分子を含む。詳細には、前記水溶性高分子は、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol, PVA)、ポリアクリル酸(polyacrylicacid, PAA)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone, PVP)、ポリエチレングリコール(polyethyleneglycol, PEG)、ポリウレタン(polyurethane, PU)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene, PTFE)、及びポリテトラフルオロエチレン骨格にスルホン酸基を導入したポリマー(ナフィオン)の少なくとも1つを含む。
【0023】
一実施形態において、前記所定の溶液は、溶媒と、0.05~0.2重量%の前記高分子とを含むことを特徴とする。
【0024】
一実施形態において、前記酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜を形成するステップにおける前記所定の温度は、50~80℃の範囲であることを特徴とする。
【0025】
一実施形態において、前記還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体を形成するステップにおける前記電解質の濃度は、1M~飽和溶液の範囲であることを特徴とする。
【0026】
一実施形態において、前記還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体を形成するステップにおいては、参照電極、対電極及び作用電極を含む三電極システムを形成し、前記酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜を電気化学的に還元することを特徴とする。
【0027】
一実施形態によれば、前記製造方法のいずれかの方法により製造される還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体が提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明による還元された酸化グラフェン又は還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体の製造方法により、酸化グラフェン又は酸化グラフェン-機能性物質複合体が電気化学的に還元され、電気伝導性が向上する。
【0029】
また、本発明によれば、酸化グラフェン又は酸化グラフェン-機能性物質複合体を電気化学的に還元する方法により、単位面積当たりの活性面積が大きくなり、還元された酸化グラフェン又は還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体の特性を最大化することができる。
【0030】
さらに、本発明によれば、酸化グラフェン又は酸化グラフェン-機能性物質複合体を電気化学的に還元する方法において、電解質の濃度を1M~電解質飽和溶液の範囲にして還元し、電気化学セルの温度を35~70℃の範囲にして還元することにより、還元された酸化グラフェン又は還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体を迅速に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】本発明の還元された酸化グラフェンの製造方法を示すフローチャートである。
【
図1B】本発明の還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図2A】本発明の酸化グラフェン-機能性物質複合体を示す概念図である。
【
図2B】本発明の還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体を示す概念図である。
【
図3】クロノアンペロメトリーにより酸化グラフェン薄膜を所定時間還元した後に測定したサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
【
図4】酸化グラフェンを様々な温度の5M NaNO
3電解質で電気化学的に還元した時間と測定された酸化グラフェンの充電容量の関係を示すグラフである。
【
図5】サイクリックボルタンメトリーによりニッケルプルシアンブルーを含む酸化グラフェン-機能性物質複合体を還元する過程で電圧と電流を測定したグラフである。
【
図6】サイクリックボルタンメトリーにより様々な濃度のNaCl、LiCl電解質でニッケルプルシアンブルーを含む酸化グラフェン-機能性物質複合体を還元した後に電圧と電流を測定したグラフである。
【
図7】サイクリックボルタンメトリーによりシリコンナノパウダーを含む酸化グラフェン-機能性物質複合体を還元した後に電圧と電流を測定したグラフである。
【
図8】クロノアンペロメトリーにより酸化ルテニウムを含む酸化グラフェン-機能性物質複合体を還元した後に電圧と電流を測定したグラフである。
【
図9】サイクリックボルタンメトリーにより酸化鉛を含む酸化グラフェン-機能性物質複合体を還元した後に電圧と電流を測定したグラフである。
【
図10】サイクリックボルタンメトリーによりアンチモン錫酸化物(Antimony Tin Oxide, ATO)を含む酸化グラフェン-機能性物質複合体を還元する過程で電圧と電流を測定したグラフである。
【
図11A】クロノアンペロメトリーにより白金ナノ粒子を含む酸化グラフェン-機能性物質複合体を還元した後に測定した電子顕微鏡画像である。
【
図11B】
図11Aの試料のエネルギー分散型X線分析(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy, EDX)の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明するが、全体を通して同一符号は同一構成要素を示すものである。また、本明細書に開示された実施形態について説明する上で、関連する公知技術についての具体的な説明が本明細書に開示された実施形態の要旨を不明にすると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。さらに、添付図面は本明細書に開示された実施形態を容易に理解できるようにするためのものにすぎず、添付図面により本明細書に開示された技術的思想が限定されるものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されるべきである。本明細書において用いられる単数の表現には、特に断らない限り複数の表現が含まれる。
【0033】
本発明においては、酸化グラフェン又は酸化グラフェン-機能性物質複合体が電気化学的に還元されて電気伝導性が向上する、還元された酸化グラフェン又は還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体の製造方法を提示する。
【0034】
また、二次電池及びスーパーキャパシタに用いられる電極、電気化学センサに用いられる電気化学電極及び化学反応触媒電極などの電気化学セルの電極においては、単位面積当たりの活性電極面積が非常に重要である。それに加えて、二次電池及びスーパーキャパシタにおいて、所定面積当たりの反応に関与する活性電極面積の増大は充電容量の増加につながる。
【0035】
そこで、本発明においては、酸化グラフェン又は酸化グラフェン-機能性物質複合体を電気化学的に還元する方法により、単位面積当たりの活性面積が大きくなり、還元された酸化グラフェン又は還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体の特性を最大化することのできる、還元された酸化グラフェン又は還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体の製造方法を提示する。
【0036】
図1Aは本発明の還元された酸化グラフェンの製造方法を示すフローチャートであり、
図1Bは本発明の還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体の製造方法を示すフローチャートである。
【0037】
図1Aに示すように、本発明の還元された酸化グラフェンの製造方法は、酸化グラフェンを溶媒に分散させて分散液を形成し、次に、前記分散液を導電体に塗布して乾燥して薄膜を形成し、それを電気化学的に還元することにより、還元された酸化グラフェンを製造することができる。以下、各過程について説明する。
【0038】
まず、ステップS100においては、酸化グラフェンと溶媒を準備する。準備した溶媒に酸化グラフェンを投入して分散液を製造する。前記分散液における前記酸化グラフェンの含有量は、0.1~5重量%であってもよい。
【0039】
一実施形態において、前記酸化グラフェンの含有量が0.1重量%未満であると、前記酸化グラフェンの含有量が低いので、後述する酸化グラフェン薄膜の形成が困難になる。
【0040】
それに対して、前記酸化グラフェンの含有量が5重量%を超えると、前記酸化グラフェン溶液の粘度が非常に高いので、取り扱いが非常に難しい。
【0041】
次に、ステップS200においては、前記酸化グラフェン分散液に所定の溶液を供給して酸化グラフェン混合液を形成する。前記酸化グラフェン分散液に供給される所定の溶液は、水溶性高分子を含む溶液である。詳細には、前記所定の溶液中の高分子は、コーティング膜の形成を可能にし、水溶性を有する高分子であり、酸化グラフェンと混合されて酸化グラフェン薄膜の形成を助ける。
【0042】
前記所定の溶液中の水溶性高分子は、後述する酸化グラフェン薄膜を電気化学的に還元するステップで酸化グラフェンのバインダーの役割を果たし、電解質での酸化グラフェンの損失を防止する役割を果たす。
【0043】
前記所定の溶液中の水溶性高分子は、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol, PVA)、ポリアクリル酸(polyacrylicacid, PAA)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone, PVP)、ポリエチレングリコール(polyethyleneglycol, PEG)、ポリウレタン(polyurethane, PU)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene, PTFE)、及びポリテトラフルオロエチレン骨格にスルホン酸基を導入したポリマー(ナフィオン)の少なくとも1つを含むものであってもよい。
【0044】
また、前記所定の溶液は、溶媒と、0.05~0.2重量%の高分子とを含むものであってもよい。前記高分子の含有量が0.05重量%未満であると、後述する酸化グラフェン薄膜を形成するステップで薄膜の形成が困難になる恐れがあり、前記高分子の含有量が0.2重量%を超えると、前記高分子が前記酸化グラフェンをコーティングするので前記酸化グラフェンの電気化学的還元が円滑に行われなくなる恐れがある。
【0045】
その後、ステップS300においては、前記酸化グラフェン混合液を導電体に塗布して所定の温度で乾燥することにより、酸化グラフェン薄膜を形成する。前記導電体は、優れた導電性、高い化学的安定性を有する物質であり得る。また、前記導電体は、前記酸化グラフェン薄膜でコーティングされて前記酸化グラフェンを電気化学的に還元する作用電極として用いられる。
【0046】
一実施形態においては、前記酸化グラフェンを前記導電体に塗布するために、ディップコート、スピンコート、スクリーンコート、オフセット印刷、インクジェット印刷、スプレー、パッド印刷、ナイフコート、キスコート、グラビアコート、ブラッシング、超音波微細噴霧コート及びスプレーミスト噴霧コートのいずれかを選択的に行うが、これらに限定されるものではない。
【0047】
一方、前記導電体としては、電気化学的還元において過電圧、極性範囲、化学的安定性の面で優れた不活性物質が用いられてもよい。一実施形態において、前記導電体は、ガラス状炭素(グラッシーカーボン)及び白金(Pt)であるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
前記酸化グラフェン薄膜を前記導電体にコーティングするために、所定の温度で乾燥するステップが必要である。詳細には、前記所定の温度は、50~80℃の範囲であってもよい。具体的には、前記酸化グラフェン混合液が塗布された導電体を乾燥する温度が50℃未満であると、溶媒を除去して酸化グラフェン薄膜を形成するのに長時間かかるという問題が生じ得る。
【0049】
それに対して、前記酸化グラフェン混合液が塗布された導電体を乾燥する温度が80℃を超えると、高分子が変色したり徐々に分解することがある。これは、高分子のガラス転移温度に近づくか又は高分子のガラス転移温度を超えることにより生じる問題である。詳細には、前記酸化グラフェン混合液の高分子が加熱され、熱による高分子の変形が生じ得る。
【0050】
次に、ステップS400においては、前記酸化グラフェン薄膜が形成された導電体を電解質に浸漬して電気化学的に還元することにより、還元された酸化グラフェン薄膜を形成する。よって、還元された酸化グラフェンが製造される。
【0051】
一実施形態においては、参照電極、対電極及び作用電極を含む三電極システムを形成し、前記酸化グラフェン薄膜を電気化学的に還元するようにしてもよい。すなわち、前記三電極システムを用いると、前記酸化グラフェン薄膜を還元することにより、還元された酸化グラフェンを製造することができる。
【0052】
詳細には、イオン性物質が所定の濃度で形成されている電解質で還元反応が行われる作用電極は、前記酸化グラフェン薄膜が形成された導電体で構成されてもよい。また、前記作用電極と対をなして前記作用電極の酸化又は還元をサポートする対電極が必要である。さらに、基準電位を設定する参照電極が必要である。
【0053】
一実施形態において、前記電解質のイオン性物質は、陽イオンと陰イオンに解離し、前記酸化グラフェンと反応しないと共に前記酸化グラフェンが還元されるように電子を伝達する物質であってもよい。前記イオン性物質は、塩化リチウム(LiCl)、塩化ナトリウム(NaCl)及び硝酸ナトリウム(NaNO3)であってもよい。
【0054】
また、前記酸化グラフェン薄膜が形成された導電体は、35~70℃の温度範囲の電解質に浸漬されて電気化学的に還元されるようにしてもよい。前記電解質の温度が35℃未満であると、前記酸化グラフェンの完全な還元に数時間かかる。よって、常温では電気化学的に還元された酸化グラフェンを迅速に製造できないという問題がある。それに対して、前記電解質の温度が70℃を超えると、前記酸化グラフェン薄膜が電気化学的に還元されることにより前記電解質が蒸発することがあるという問題が生じる。よって、前記酸化グラフェンを電気化学的に還元することにより還元された酸化グラフェンを迅速に製造できる好ましい電解質の温度は、35~70℃の範囲である。
【0055】
また、前記電解質の濃度は、1M~飽和溶液の範囲であってもよい。1M未満の濃度の電解質で酸化グラフェンを還元すると、還元された酸化グラフェンの充電容量が低くなることがある。これは、前記電解質の濃度が低い場合、前記酸化グラフェンが電気化学的に還元される過程で、前記作用電極の界面の拡散層が厚くなり、前記酸化グラフェンが円滑に還元されないからである。前記酸化グラフェンを十分に還元してその内部の機能性物質を十分に活性化するためには、前記電解質の濃度が1M以上であることが好ましい。
【0056】
前記電解質に関する事項は例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0057】
さらに、前記酸化グラフェン薄膜を還元する方法としては、酸化グラフェンの還元電圧以上の電圧を印加し続けるクロノアンペロメトリー(定電位法)と、所定の範囲で電圧を連続的に変化させるサイクリックボルタンメトリー(循環電圧電流法)がある。これらにより還元された酸化グラフェンを製造することができる。
【0058】
クロノアンペロメトリー又はサイクリックボルタンメトリーにより前記酸化グラフェン薄膜が還元されることにより製造された還元された酸化グラフェンは空隙を有する。よって、単位面積当たりの活性面積が大きくなり、前記還元された酸化グラフェンの特性が最大化される。
【0059】
以下、他の実施形態について説明するが、上記実施形態と同一又は類似の構成には同一又は類似の符号を付し、その説明を省略する。
【0060】
図1Bに示すように、本発明の還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体の製造方法は、酸化グラフェンを溶媒に分散させて分散液を形成し、次に、機能性物質及び所定の溶液を供給して混合液を形成し、さらに、前記混合液を導電体に塗布して乾燥して薄膜を形成し、それを電気化学的に還元することにより、還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体を製造することができる。
【0061】
まず、ステップS100’においては、酸化グラフェンと溶媒を準備する。準備した溶媒に酸化グラフェンを投入して分散液を製造する。前記分散液における前記酸化グラフェンの含有量は、0.1~5重量%であってもよい。
【0062】
一実施形態において、前記酸化グラフェンの含有量が0.1重量%未満であると、前述したように、前記酸化グラフェンの含有量が低いので、酸化グラフェン薄膜の形成が困難になる。また、後述する機能性物質との複合体の形成において前記機能性物質との均一な分散が困難になり、前記機能性物質の自己凝集(self-aggregation)が生じ、その凝集により前記機能性物質が溶媒中に均一に分散せず沈殿することがある。
【0063】
それに対して、前記酸化グラフェンの含有量が5重量%を超えると、前記酸化グラフェン溶液の粘度が非常に高いので、取り扱いが非常に難しい。
【0064】
次に、ステップS200’においては、前記酸化グラフェン分散液に機能性物質及び所定の溶液を供給して酸化グラフェン-機能性物質混合液を形成する。
【0065】
前記酸化グラフェン分散液に供給される機能性物質は、二次電池又はスーパーキャパシタの電極に添加されて電極の表面で酸化還元反応を起こす電気化学的活性粒子であるケイ素(Si)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、鉛(Pb)、アンチモン錫酸化物(Antimony Tin Oxide, ATO)及びそれらの酸化物からなる群から選択される1つ以上を含んでもよい。
【0066】
また、前記機能性物質は、電気化学センサに用いられる電気化学的活性化合物であるニッケルプルシアンブルー(Ni-PB)、フェロセン、フェロセン誘導体、キノン、キノン誘導体、ルテニウムアミン錯体、オスミウム(I)、オスミウム(II)、オスミウム(III)錯体、メタロセン及びメタロセン誘導体の1つ以上を含んでもよい。
【0067】
一実施形態において、ニッケルプルシアンブルーは、放射性活性物質であるセシウム(Cs)を選択的に分離できる物質であるだけでなく、過酸化水素(H2O2)の濃度を測定できる電気化学的活性化合物及びNaバッテリ電極物質であることが知られている。しかし、ニッケルプルシアンブルーは、粒子が非常に小さいので、水溶液中での処理が容易でない。
【0068】
さらに、前記機能性物質は、燃料電池の負極及び正極の活性触媒として用いられる鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)及び白金(Pt)からなる群の1つ以上を含んでもよい。
【0069】
一方、前記酸化グラフェン分散液に供給される所定の溶液は、高分子を含む溶液である。詳細には、前記所定の溶液中の高分子は、コーティング膜の形成を可能にし、水溶性を有する高分子であり、酸化グラフェン-機能性物質複合体と混合されて酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜の形成を助ける。
【0070】
その後、ステップS300’においては、前記酸化グラフェン-機能性物質混合液を導電体に塗布して所定の温度で乾燥することにより、酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜を形成する。
【0071】
次に、ステップS400’においては、前記酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜が形成された導電体を35~70℃の温度範囲の電解質に浸漬して電気化学的に還元することにより、還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜を形成する。よって、還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体が製造される。
【0072】
図2Aは本発明の酸化グラフェン-機能性物質複合体100を示す概念図である。
【0073】
図2Aは前述したステップS300’の酸化グラフェン-機能性物質複合体100を示すものである。詳細には、導電体1上で、酸化グラフェン10、活性化された機能性物質20a及び不活性機能性物質20bが酸化グラフェン-機能性物質複合体100を形成している。
【0074】
具体的には、活性化された機能性物質20a及び不活性機能性物質20bは酸化グラフェン10に均一に分布しているが、酸化グラフェン10層内に小さい空隙が形成されている。よって、複合体薄膜100の表面上には、活性化された機能性物質20aが存在し、電気化学的に活性化された領域が形成され、それに対して、複合体薄膜100の内部には、活性化されていない不活性機能性物質20bが存在し、電気化学的に活性化されていない領域が形成される。
【0075】
図2Bは本発明の還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体200を示す概念図である。
【0076】
図2Bは前述したステップS400’の還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体200を示すものである。詳細には、導電体1上に、酸化グラフェンが電気化学的に還元されることにより還元された酸化グラフェン10’が形成されている。
【0077】
クロノアンペロメトリー又はサイクリックボルタンメトリーにより製造された還元された酸化グラフェン10’は、多くの空隙を有する。よって、前記機能性物質は、還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体200の内部でも、不活性機能性物質ではなく、活性化された機能性物質20aとして存在する。つまり、還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体200の全領域にわたって電気化学的に活性化された領域が形成される。
【0078】
よって、還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体200の電気伝導性が向上する。また、酸化グラフェンの電気化学的還元により、単位面積当たりの活性面積が大きくなり、還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体200の内部でも活性化された機能性物質20aが増加する。従って、還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体200における機能性物質の特性が最大化される。
【0079】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0080】
蒸留水に酸化グラフェンを分散させ、その後0.1重量%のポリビニルアルコール水溶液を供給することにより、酸化グラフェン溶液を形成した。酸化グラフェン溶液に超音波を10分間照射することにより、分散液を均一に製造した。均一に分散した酸化グラフェン溶液200ulを取り、ガラス状炭素に塗布した。酸化グラフェン混合液が塗布されたガラス状炭素を60℃の温度で乾燥することにより、酸化グラフェン薄膜を製造した。酸化グラフェン薄膜が形成されたガラス状炭素を作用電極とし、白金を対電極とし、Ag/AgClを参照電極とすることにより、三電極システムを形成した。温度が25、35、50、60、70℃のいずれかであり、濃度が5Mである硝酸ナトリウム(NaNO3)の電解質溶液に作用電極、対電極及び参照電極を浸漬し、作用電極に-1.2~1.2V(vs.Ag/Ag+)を印加するサイクリックボルタンメトリー又は-1.2Vを印加するクロノアンペロメトリーを行い、酸化グラフェン薄膜を電気化学的に還元することにより、還元された酸化グラフェン薄膜を製造した。
【0081】
図3は酸化グラフェン薄膜を所定時間還元した後に測定したサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
【0082】
図3から分かるように、定電位の印加時間が増加するにつれて酸化グラフェン薄膜の測定電流が増加した。その過程で、初期に比べて充電容量が6倍に増加した還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体が製造された。
【0083】
図4は様々な温度で還元した酸化グラフェン薄膜の比容量と還元時間の関係を示すグラフである。
【0084】
図4の(a)に示すように、常温で酸化グラフェン薄膜を完全に還元するためには、少なくとも100分以上の時間がかかる。
図4の(a)のグラフにおける点線領域を拡大した
図4の(b)から分かるように、35℃以上の高温では数分以内に酸化グラフェンが還元された。また、60℃で還元した場合、常温に比べて、酸化グラフェンの比容量が約30%増加した。
【実施例2】
【0085】
蒸留水に酸化グラフェンを分散させ、その後ニッケルプルシアンブルー(Ni-PB)と0.1重量%のポリビニルアルコール水溶液を供給することにより、酸化グラフェン-機能性物質混合液を形成した。酸化グラフェン-機能性物質混合液に超音波を10分間照射することにより、分散液を均一に製造した。均一に分散した酸化グラフェン-機能性物質混合液200ulを取り、ガラス状炭素に塗布した。酸化グラフェン-機能性物質混合液が塗布されたガラス状炭素を60℃の温度で乾燥することにより、酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜を製造した。
【0086】
酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜が形成されたガラス状炭素を作用電極とし、白金を対電極とし、Ag/AgClを参照電極とすることにより、三電極システムを形成した。濃度が14Mである塩化リチウム(LiCl)の電解質溶液に作用電極、対電極及び参照電極を浸漬し、作用電極に-1.2~1.2V(vs.Ag/AgCl)を印加するサイクリックボルタンメトリーを行い、ニッケルプルシアンブルーを含む酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜を電気化学的に還元することにより、還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体を製造した。
【0087】
図5はサイクリックボルタンメトリーによりニッケルプルシアンブルーを含む酸化グラフェン-機能性物質複合体を還元する過程で電圧と電流を測定したグラフである。
【0088】
図5から分かるように、サイクリックボルタンメトリーが行われる循環回数が増加するにつれて測定電流が増加した。その過程で、初期に比べて充電容量が50倍に増加した還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体が製造された。
【実施例3】
【0089】
蒸留水に酸化グラフェンを分散させ、その後ニッケルプルシアンブルー(Ni-PB)と0.1重量%のポリビニルアルコール水溶液を供給することにより、酸化グラフェン-機能性物質混合液を形成した。酸化グラフェン-機能性物質混合液に超音波を10分間照射することにより、分散液を均一に製造した。均一に分散した酸化グラフェン-機能性物質混合液200ulを取り、ガラス状炭素に塗布した。酸化グラフェン-機能性物質混合液が塗布されたガラス状炭素を60℃の温度で乾燥することにより、酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜を製造した。
【0090】
酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜が形成されたガラス状炭素を作用電極とし、白金を対電極とし、Ag/AgClを参照電極とすることにより、三電極システムを形成した。濃度が0.1M、1M、3M、飽和濃度(6.14M)のNaCl電解質及び1M、5M、10MのLiCl電解質溶液に作用電極、対電極及び参照電極を浸漬し、作用電極に-1.2~1.2V(vs.Ag/AgCl)を印加するサイクリックボルタンメトリーを行い、ニッケルプルシアンブルーを含む酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜を電気化学的に還元することにより、還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体を製造した。
【0091】
図6はサイクリックボルタンメトリーにより様々な濃度のNaCl、LiCl電解質でニッケルプルシアンブルーを含む酸化グラフェン-機能性物質複合体を還元した後に電圧と電流を測定したグラフである。
【0092】
図6の(a)及び(b)から分かるように、サイクリックボルタンメトリーを行う電解質の濃度が増加するにつれて測定電流が増加した。その過程で、低濃度に比べて高濃度の電解質で還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体の充電容量が3倍以上に増加した。これは、電解質の濃度が低い場合、酸化グラフェンが電気化学的に還元される過程で、作用電極の界面の拡散層が厚くなり、酸化グラフェンが円滑に還元されないからであり、酸化グラフェンを十分に還元してその内部の機能性物質を十分に活性化するためには、電解質の濃度が1M以上であることが好ましい。
【実施例4】
【0093】
実施例2と同様に酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜を製造した。ただし、機能性物質はシリコンナノパウダーに変更した。
【0094】
酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜が形成されたガラス状炭素を作用電極とし、白金を対電極とし、Ag/AgClを参照電極とすることにより、三電極システムを形成した。温度が60℃であり、濃度が3Mである塩化ナトリウム(NaCl)の電解質溶液に作用電極、対電極及び参照電極を浸漬し、作用電極に-1.2~1.0V(vs.Ag/AgCl)を印加するサイクリックボルタンメトリーを行い、シリコンナノパウダーを含む酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜を電気化学的に還元することにより、還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体を製造した。
【0095】
図7はサイクリックボルタンメトリーによりシリコンナノパウダーを含む酸化グラフェン-機能性物質複合体を還元した後に電圧と電流を測定したグラフである。
【0096】
図7から分かるように、複合体を還元した後、測定電流が大幅に増加した。その過程で、初期に比べて充電容量が増加した還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体が製造された。
【実施例5】
【0097】
蒸留水に酸化グラフェンを分散させ、その後塩化ルテニウム(RuCl3)を供給し、滴定によりpH8にした。滴定により塩化ルテニウム(RuCl3)は酸化ルテニウム(RuO2)に変換された。酸化グラフェンと酸化ルテニウム(RuO2)の混合液に0.1重量%のポリビニルアルコール水溶液を供給することにより、酸化グラフェン-機能性物質混合液を形成した。酸化グラフェン-機能性物質混合液に超音波を10分間照射することにより、分散液を均一に製造した。均一に分散した酸化グラフェン-機能性物質混合液200ulを取り、ガラス状炭素に塗布した。酸化グラフェン-機能性物質混合液が塗布されたガラス状炭素を60℃の温度で乾燥することにより、酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜を製造した。
【0098】
酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜が形成されたガラス状炭素を作用電極とし、白金を対電極とし、Ag/AgClを参照電極とすることにより、三電極システムを形成した。温度が60℃であり、濃度が3Mである塩化ナトリウム(NaCl)の電解質溶液に作用電極、対電極及び参照電極を浸漬し、作用電極に-1.2V(vs.Ag/AgCl)を印加するクロノアンペロメトリーを600秒間行い、酸化ルテニウムを含む酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜を電気化学的に還元することにより、還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体を製造した。
【0099】
図8はクロノアンペロメトリーにより酸化ルテニウムを含む酸化グラフェン-機能性物質複合体を還元した後に電圧と電流を測定したグラフである。
【0100】
図8から分かるように、クロノアンペロメトリーを600秒間行った酸化ルテニウムを含む酸化グラフェン-機能性物質複合体は電流が増加した。その過程で、酸化グラフェンを電気化学的に還元していない初期に比べて充電容量が増加した還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体が製造された。
【実施例6】
【0101】
実施例2と同様に酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜を製造した。ただし、機能性物質は酸化鉛(PbO2)に変更した。
【0102】
酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜が形成されたガラス状炭素を作用電極とし、白金を対電極とし、Ag/AgClを参照電極とすることにより、三電極システムを形成した。温度が60℃であり、濃度が3Mである塩化ナトリウム(NaCl)の電解質溶液に作用電極、対電極及び参照電極を浸漬し、作用電極に-1.2~1.2V(vs.Ag/AgCl)を印加するサイクリックボルタンメトリーを行い、酸化鉛を含む酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜を電気化学的に還元することにより、還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体を製造した。
【0103】
図9はサイクリックボルタンメトリーにより酸化鉛を含む酸化グラフェン-機能性物質複合体を還元した後に電圧と電流を測定したグラフである。
【0104】
図9から分かるように、酸化鉛を含む酸化グラフェン-機能性物質複合体を還元することにより測定電流が増加した。その過程で、初期に比べて充電容量が増加した還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体が製造された。
【実施例7】
【0105】
実施例2と同様に酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜を製造した。ただし、機能性物質はアンチモン錫酸化物(Antimony Tin Oxide, ATO)に変更した。
【0106】
酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜が形成されたガラス状炭素を作用電極とし、白金を対電極とし、Ag/AgClを参照電極とすることにより、三電極システムを形成した。温度が60℃であり、濃度が3Mである塩化ナトリウム(NaCl)の電解質溶液に作用電極、対電極及び参照電極を浸漬し、作用電極に-1.2~0.9V(vs.Ag/AgCl)を印加するサイクリックボルタンメトリーを行い、ATOを含む酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜を電気化学的に還元することにより、還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体を製造した。
【0107】
図10はサイクリックボルタンメトリーによりアンチモン錫酸化物(Antimony Tin Oxide, ATO)を含む酸化グラフェン-機能性物質複合体を還元する過程で電圧と電流を測定したグラフである。
【0108】
図10から分かるように、複合体を還元することにより測定電流が増加した。その過程で、初期に比べて充電容量が増加した還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体が製造された。
【実施例8】
【0109】
蒸留水に酸化グラフェンを分散させ、その後塩化白金酸(H2PtCl6)を供給し、NaBH4を添加することにより、白金酸を還元して白金ナノ粒子にした。酸化グラフェンと白金ナノ粒子の混合液に0.1重量%のポリビニルアルコール水溶液を供給することにより、酸化グラフェン-機能性物質混合液を形成した。酸化グラフェン-機能性物質混合液に超音波を10分間照射することにより、分散液を均一に製造した。均一に分散した酸化グラフェン-機能性物質混合液200ulを取り、ガラス状炭素に塗布する。酸化グラフェン-機能性物質混合液が塗布されたガラス状炭素を60℃の温度で乾燥することにより、酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜を製造した。
【0110】
酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜が形成されたガラス状炭素を作用電極とし、白金を対電極とし、Ag/AgClを参照電極とすることにより、三電極システムを形成した。温度が60℃であり、濃度が3Mである塩化ナトリウム(NaCl)の電解質溶液に作用電極、対電極及び参照電極を浸漬し、作用電極に-1.2V(vs.Ag/AgCl)を印加するクロノアンペロメトリーを600秒間行い、白金ナノ粒子を含む酸化グラフェン-機能性物質複合体薄膜を電気化学的に還元することにより、還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体を製造した。
【0111】
図11Aはクロノアンペロメトリーにより白金ナノ粒子を含む酸化グラフェン-機能性物質複合体を還元した後に測定した電子顕微鏡画像であり、
図11Bは
図11Aの試料のエネルギー分散型X線分析(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy, EDX)の結果である。
【0112】
図11Aと
図11Bから分かるように、酸化グラフェン-白金粒子製造法とクロノアンペロメトリーを600秒間行った結果、白金ナノ粒子を含む酸化グラフェン-機能性物質複合体が製造された。
【0113】
前述した還元された酸化グラフェン又は還元された酸化グラフェン-機能性物質複合体の製造方法は、前述した実施形態の構成と方法に限定されるものではなく、各実施形態の全部又は一部を選択的に組み合わせて構成することにより様々に変形することができる。