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特許7203858燃料電池自動車のための移動式水素ディスペンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】燃料電池自動車のための移動式水素ディスペンサ
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20230105BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20230105BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20230105BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20230105BHJP
【FI】
F17C5/06
H01M8/00 Z
H01M8/04 Z
H01M8/04746
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020545335
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 US2019020271
(87)【国際公開番号】W WO2019169255
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-01
(31)【優先権主張番号】62/637,830
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/290,000
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】318006941
【氏名又は名称】エア・リキード・アドバンスド・テクノロジーズ・ユー.エス.・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ホルヘ・イー・ロペス
(72)【発明者】
【氏名】アーロン・ハリス
(72)【発明者】
【氏名】チャド・ニッケル
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト・シュミット
(72)【発明者】
【氏名】オーウェン・シー・オーウェンズ
(72)【発明者】
【氏名】ペル・オルソン
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-137926(JP,A)
【文献】米国特許第6786245(US,B1)
【文献】米国特許第3507302(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 5/06
H01M 8/00
H01M 8/04
H01M 8/04746
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池駆動自動車の水素タンクを少なくとも部分的に充填するための移動式水素ディスペンサにおいて、
上流端及び下流端を有する第一の供給ラインであって、前記第一の供給ラインの前記上流端は、水素供給源から水素の流れを受け取るように調整及び構成される第一の供給ラインと、
前記第一の供給ライン内に配置された第一のオリフィス板と、
前記第一の供給ラインの前記下流端に配置された背圧調整装置であって、前記第一の供給ライン内の前記第一のオリフィス板と前記背圧調整装置との間のガスの圧力を前記背圧調整装置の可変設定点圧力以下に保持するように調整及び構成されるドーム・ロード式又はスプリング・アンド・ドーム・ロード式背圧調整装置であり、前記可変設定点圧力は、前記背圧調整装置のドーム内の圧力により設定される背圧調整装置と、
上流及び下流端を有する送達ラインであって、前記上流端は、前記背圧調整装置からの水素の流れを受け取るように調整及び構成され、前記送達ラインの前記下流端は、前記受け取った水素の流れを燃料電池駆動自動車の水素タンクへと方向付けるように調整及び構成される送達ラインと、
前記送達ラインの前記下流端と流体連通し、燃料電池自動車の燃料タンクの開口と係合するように調整及び構成されたノズルと、
上流端及び下流端を有する基準圧力ラインであって、前記基準圧力ラインの前記上流端は、前記水素供給源からの水素の流れを受け取るように調整及び構成される基準圧力ラインと、
入口及び出口を有する差圧調整装置であって、前記差圧調整装置の前記入口は、前記基準圧力ラインの前記下流端と下流で流体連通する差圧調整装置と、
前記差圧調整装置と前記背圧調整装置のドームとの間で流体連通する第一のパイロットラインであって、前記差圧調整装置は、前記基準圧力ライン内の水素の圧力と前記第一のパイロットライン内の水素の圧力との間の一定の圧力差ΔPを保持するように調整及び構成される第一のパイロットラインと、
を含む移動式水素ディスペンサ。
【請求項2】
上流端及び下流端を有する第二の供給ラインと、
前記第二の供給ライン内の、その前記上流及び下流端間に配置された第二のオリフィス板であって、前記第二の供給ラインの前記上流端は、前記水素供給源からの関連する水素の流れを、前記第一の供給ラインのそれと同じ圧力か、又は前記第一及び第二の供給ラインのそれら間の圧力差が一定となるような圧力で受け取るように調整及び構成され、前記第二の供給ラインの前記下流端は前記第一のオリフィス板と前記背圧調整装置との間で前記第一の供給ラインと流体連通する、第二のオリフィス板と、
前記第二の供給ライン内に配置され、前記送達ライン内の圧力が第一の所定の設定点圧力未満であれば、水素の流れが前記第二の供給ラインを通れるようにし、前記送達ライン内の圧力が前記第一の所定の設定点圧力以上であれば、水素の流れが前記第二の供給ラインを通れないように調整及び構成された圧力制御弁とをさらに含み、前記基準圧力ラインは、前記水素供給源からの前記関連する水素の流れを、前記第二の供給ラインのそれと同じ圧力か、又は前記第二の供給ライン及び前記基準圧力ラインのそれら間の圧力差が一定となるような圧力で受け取るようにさらに調整及び構成される、
請求項1に記載の移動式水素ディスペンサ。
【請求項3】
上流端及び下流端を有する第三の供給ラインと、
前記の供給ライン内の、その前記上流及び下流端間に配置された第三のオリフィス板であって、前記第三の供給ラインの前記上流端は、前記水素供給源からの関連する水素の流れを、前記第一の供給ラインのそれと同じ圧力か、又は前記第一及び第三の供給ラインのそれら間の圧力差が一定となるような圧力で受け取るように調整及び構成され、前記第三の供給ラインの前記下流端は前記第一のオリフィス板と前記背圧調整装置との間で前記第一の供給ラインと流体連通する、第三のオリフィス板と、
前記第三の供給ライン内に配置され、前記送達ライン内の圧力が第二の一定の設定点圧力未満であれば水素の流れが前記第三の供給ラインを通れるようにし、前記送達ライン内の圧力が前記第二の一定の設定点圧力以上であれば、水素の流れが前記第三の供給ラインを通れないように調整及び構成された圧力制御弁とをさらに含み、前記基準圧力ラインは、前記水素供給源からの前記関連する水素の流れを、前記第二の供給ラインのそれと同じ圧力か、又は前記第二の供給ライン及び前記基準圧力ラインのそれら間の圧力差が一定となるような圧力で受け取るようにさらに調整及び構成される、
請求項に記載の移動式水素ディスペンサ。
【請求項4】
燃料電池駆動自動車の水素タンクを少なくとも部分的に充填する方法において、
請求項1に記載の移動式水素ディスペンサを提供するステップと、
第一の供給ラインの上流端を、気体水素の供給源と下流で流体連通するように設置するステップと、
送達ラインの下流端を前記燃料電池駆動自動車の水素タンクと上流で流体連通するように設置するステップと、
前記供給源からの水素の流れが前記移動式水素ディスペンサを通り、前記燃料電池駆動自動車の前記水素タンクへと入ることができるようにするステップと、
前記流された流れを停止するステップと、
前記第一の供給ラインの前記上流端を前記供給源と流体連通しないようにするステップと、
前記送達ラインの前記下流端を前記水素タンクと流体連通しないようにするステップと、を含む方法。
【請求項5】
前記流れの停止は、前記供給源と前記水素タンクとの間で圧力平衡に到達すると自動的に行われる、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式ガスディスペンサを用いた自動車水素タンクの充填に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池自動車で使用するための水素ガス等の持続可能な燃料の利用拡大を図る中で、この種の自動車に搭載された水素タンクの充填を実現するための様々な技術が提案又は実装されてきた。1つの典型的な方法は、比較的大型の貯蓄タンクと、1つ又は複数のコンプレッサと、1つ又は複数のバッファタンクと、圧縮水素を冷却するための熱交換器と、自動車タンクの制御された充填を行うための計器及び弁と、を含む定置式充填ステーションを含む。
【0003】
これらの定置式充填ステーションの動作はかなり満足できるものであるものの、時としてステーションの不調が起こり、それによって、自動車タンクを充填する水素の利用可能性が中断されることが認識されている。その結果、顧客がステーションに到着したところで、そこでは技術者が問題を診断又は修理している最中で、ステーションが使えないということになりかねない。顧客がステーションの使用が再開されるままで待てないか、待ちたくない場合、顧客は単に最寄りの稼働中の充填ステーションに行くかもしれない。これは、自動車のタンクにその自動車が最寄りのステーションに到達するのに十分な水素が残っていない場合は問題である。関連する問題は、自動車のタンクの水素が空になる前に充填ステーションに行くのを運転者が忘れた場合に生じる。
【0004】
自動車タンクの水素を補給するためのインフラストラクチャ開発が不十分な地域では、運転者は充填ステーションのサービスを利用できない場所でタンクの補給を行う必要があり得る。この問題は、Range Anxietyと呼ばれることがあり、水素燃料電池自動車の商業化の推進をさらに妨げ得る。充填ステーションのサービスを利用できる地域では、自動車タンクに補給する目的のために2つの目的地間で特定のルートに変えるのは不都合であり得る。
【0005】
これらの問題を改善するために、移動式燃料補給機の使用が提案されており、これは稼働していないステーションまで運び、最寄りのステーションまで走れる量の水素を自動車タンクに一部充填するために使用されてよい。例えば、米国特許第6,786,245号明細書は、立ち往生した水素自動車まで運び、その自動車のタンクに、最寄りの稼働中のステーションまで走れる量の水素を充填するために使用され得る移動式燃料補給機を開示している。充填は、数多くの作動弁、圧力及び温度センサ、ソレノイド弁、短時間で充電を達成させるように設計されたアルゴリズムでプログラムされたプログラマブルロジックコントローラ(PLC)を利用するカスケード型充填システムを使って実現される。
【0006】
米国特許第6,786,245号明細書により開示される移動式燃料補給機は、機械的圧縮、外部電源、又はその他の外部ユーティリティを使用しないカスケード型充填を実現する点を大きく宣伝しているが、この移動式燃料補給機は依然として、コントローラに電力供給するための電源が必要である。これには、PLC制御によるカスケード型充填が引き続き行われるように、移動式燃料補給機が太陽光電池アレイ及びそれに関連するバッテリ又は水素燃料電池等の移動式電源を搭載する必要がある。これによって、さらにコスト、重量、複雑さが増大し、より大きいフットプリントを要し、メンテナンスの頻度とコストが増し、さらに太陽電池アレイとそれに関連するバッテリの場合は、曇天時にはPCLに電力を供給する電圧が足りなくなる。
【0007】
米国特許第6,786,245号明細書により開示される移動式燃料補給機はカスケード型充填システムを利用するため、少なくとも2つの高圧水素シリンダが存在する必要があり、これは比較的重く、また、これらのシリンダを損傷から保護する高耐荷重フレームを設けなければならない。その結果、移動式燃料補給機は、民生用自動車(3/4トンピックアップトラック等)により牽引されるか、又は鉄道、船舶、若しくはその他のトラック搭載システムにより運搬しなければならないほどの重さとなる。このような牽引又は運搬用車両搭載移動式燃料補給機は、製造及び運転コストが比較的高く、また、充填が必要な自動車の付近の狭い空間での操作が難しいものであり得る。
【0008】
米国特許第6,786,245号明細書により開示される移動式燃料補給機はPCL制御によるカスケード型充填に依存するため、多くの弁、センサ、コントローラ、及び関連する計器の存在によって機器が比較的故障しやすい。このような移動式燃料補給機は、製造コストが高く、メンテナンス頻度が比較的より高くなり、また、より単純で機械的に堅牢なシステムと比較して、比較的より多くの機器の故障が生じやすい。
【0009】
米国特許第6,786,245号明細書により開示される移動式燃料補給機は、燃料補給機に組み込まれる高圧水素シリンダに依存するため、シリンダが空になると、集中補給所に運ばなければならず、そこで満杯にされ得る。このような移動式燃料補給機はそれゆえ、補給が必要であることから、立ち往生した顧客にとって利用できない可能性がより高い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
燃料電池駆動自動車の水素タンクを少なくとも部分的に充填するための移動式水素ディスペンサが開示される。ディスペンサは、上流及び下流端を有する第一の供給ラインと、第一の供給ライン内に配置された第一のオリフィス板と、第一の供給ラインの下流端に配置された背圧調整装置と、上流及び下流端を有する送達ラインと、送達ラインの下流端と流体連通し、燃料電池自動車の燃料タンクの開口と係合するように調整及び構成されたノズルと、上流端及び下流端を有する基準圧力ラインと、入口及び出口を有する差圧調整装置と、第一のパイロットラインと、を含む。第一の供給ラインの上流端は、水素供給源からの水素の流れを受け取るように調整及び構成される。背圧調整装置はドーム・ロード式又はスプリング・アンド・ドーム・ロード式背圧調整装置であり、前記第一の供給ライン内の前記オリフィス板と前記背圧調整装置との間のガスの圧力を背圧調整装置の可変設定点圧力以下に保持するように調整及び構成される。可変設定値圧力は、背圧調整装置のドーム内の圧力により設定される。上流端は、背圧調整装置からの水素の流れを受け取るように調整及び構成される。送達ラインの下流端は、受け取った水素の流れを燃料電池駆動自動車の水素タンクへと向けるように調整及び構成される。差圧調整装置は水素供給源力ラインの下流端と下流で流体連通する。第一のパイロットラインは、差圧調整装置と背圧調整装置のドームとの間で流体連通する。差圧調整装置は、水素供給源力ライン内の水素の圧力と第一のパイロットライン内の水素の圧力との間の一定の圧力差ΔPを保持するように調整及び構成される。
【0011】
燃料電池駆動自動車の水素タンクを少なくとも部分的に充填する方法もまた開示される。方法は、以下のステップを含む。上で開示された移動式ディスペンサを提供する。第一の供給ラインの上流端を、気体水素供給源と下流で流体連通するように設置する。送達ラインの下流端を、自動車タンクと上流で流体連通するように設置する。水素の流れが、供給源から、移動式ディスペンサを通り、自動車のタンクの中へと流れるようにする。流れるようにした流れを止める。供給ラインの上流端を供給源と流体連通しないようにする。送達ラインの下流端の自動車タンクと流体連通を停止する。
【0012】
「下流端と流体連通するノズル」の語句におけるような「流体連通」とは、本願では、ノズルと送達ラインの下流端が、SAE(米国自動車技術者協会(Society of Automotive Engineers))規格J2601に記載されているような相互の電気信号通信が行われることを意味していない。
【0013】
「上流端」又は「下流端」とは、本願では、水素供給源からの燃料タンクへの水素の流れの方向に関して上流(又は下流)にある端を意味する。
【0014】
上で開示された移動式ディスペンサは、以下の態様の1つ又は複数を含んでいてよい:
【0015】
- 移動式ディスペンサは、上流端及び下流端を有する第二の供給ラインと、第二の供給ライン内の、その上流及び下流端間に配置された第二のオリフィス板であって、第二の供給ラインの上流端は、供給源からの関連する水素の流れを、第一の供給ラインのそれと同じ圧力か、又は第一及び第二の供給ラインのそれら間の圧力差が一定となるような圧力で受け取るように調整及び構成され、第二の供給ラインの下流端は第一のオリフィス板と背圧調整装置との間で第一の供給ラインと流体連通する、第二のオリフィス板と、第二の供給ライン内に配置され、送達ライン内の圧力が第一の所定の設定点圧力未満であれば、水素の流れが第二の供給ラインを通れるようにし、送達ライン内の圧力が第一の所定の設定点圧力以上であれば、水素の流れが第二の供給ラインを通れないように調整及び構成された圧力制御弁とをさらに含む。
【0016】
- 基準圧力ラインは、供給源からの関連する水素の流れを、第一の供給ラインのそれと同じ圧力か、又は第一の供給及び基準圧力ラインのそれら間の圧力差が一定となるような圧力で受け取るように調整及び構成される。
【0017】
- 基準圧力ラインはさらに、供給源からの関連する水素の流れを、第二の供給ラインのそれと同じ圧力か、又は第二の供給及び基準圧力ラインのそれら間の圧力差が一定となるような圧力で受け取るように調整及び構成される。
【0018】
- 移動式ディスペンサは、上流端及び下流端を有する第三の供給ラインと、第の供給ライン内の、その上流及び下流端間に配置された第三のオリフィス板であって、第三の供給ラインの上流端は、供給源からの関連する水素の流れを、第一の供給ラインのそれと同じ圧力か、又は第一及び第三の供給ラインのそれら間の圧力差が一定となるような圧力で受け取るように調整及び構成され、第三の供給ラインの下流端は第一のオリフィス板と背圧調整装置との間で第三の供給ラインと流体連通する、第三のオリフィス板と、第三の供給ライン内に配置され、送達ライン内の圧力が第二の一定の設定点圧力未満であれば水素の流れが第三の供給ラインを通れるようにし、送達ライン内の圧力が第二の一定の設定点圧力以上であれば、水素の流れが第三の供給ラインを通れないように調整及び構成された圧力制御弁とをさらに含む。
【0019】
- 基準圧力ラインはさらに、供給源からの関連する水素の流れを、第二の供給ラインのそれと同じ圧力か、又は第二の供給及び基準圧力ラインのそれら間の圧力差が一定となるような圧力で受け取るように調整及び構成される。
【0020】
- 移動式ディスペンサは、送達ラインの下流端から一定の質量流量の水素を提供するように調整及び構成される。
【0021】
- 前記流れの前記停止は、供給源と自動車タンクとの間の圧力平衡に到達すると自動的に行われる。
【0022】
本発明の性質と目的をよりよく理解するために、以下の詳細な説明を添付の図面と共に参照すべきであり、図中、同様の要素には同じ又は類似の参照番号が付与されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のシステムの略図である。
図2】第二の供給ラインを含む、図1のシステムの変形型の略図である。
図3】第二及び第三の供給ラインを含む、図1のシステムの変形型の略図である。
図4】APRR制御による充填のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
機器の故障によって燃料電池自動車の水素タンクを充填するための水素充填ステーションの動作を止めなければならない場合、一義的なメンテナンス目標は、ステーションを全面稼働状態に戻すことである。この目標を達成する中で、修理の中には完了までに何時間も要し得るものがあり、稀なケースでは、問題の適正な診断にさらに時間が必要となり得る。その間に、ステーションでの充填を求める自動車の運転者は、自動車タンクに自動車を別の営業中の充填ステーションに運転して行けるだけの量の水素がないことがあり得るため、立ち往生し得る。本発明の移動式水素ディスペンサは、これらの立ち往生した自動車の運転者のタンクを少なくとも部分的に充填して、それらの中に少なくとも、より完全に充填するために近くのステーションまで走れるだけの水素があるようにするために使用される。本発明の移動式水素ディスペンサはまた、コンプレッサまでの電力が失われているか、そのコンプレッサ又はその他の器具が故障している水素充填ステーションで燃料電池自動車のタンクを少なくとも部分的に充填するためにも使用されてよい。
【0025】
(燃料電池自動車の)水素タンクの充填は、相対的により高圧の水素供給源と比較的低圧の水素タンクとの間の圧力差から行われる。タンクに安全に充填するために、1つの実施形態では、移動式ディスペンサは水素を制御された一定の質量流量で吐出する。他の実施形態において、外気温でもタンクに安全に充填するために、タンクは制御された、外気温に依存する比較的一定の昇圧率で充填される。上述のタイプの制御を提供するために、移動式ディスペンサは、圧力調整装置とオリフィスを含む純粋に機械的な解決策を採用する。追加的に、移動式ディスペンサでは、使用者が流れを制御する必要はない。
【0026】
燃料電池自動車の水素タンクには、水素供給源からの水素を、均圧を通じて充填される。均圧とは、水素が比較的高圧の水素供給源から比較的低圧の自動車タンクへと、タンク内の圧力が供給源のそれと等しくなるまで流れることを意味する。それゆえ、水素供給源の圧力は、水素タンクのそれより高くなければならず、そうでないと均圧に基づく充填が進まない。このことを考慮すると、水素供給源の圧力が満杯状態のタンクで実現される名目上の最大圧力より低い場合、タンクの部分的充填しか実現されない。水素供給源の圧力が満杯状態の最終的な水素タンク圧力より低い幾つかの従来の水素タンク充填技術とは対照的に、このシステムは水素供給源の圧力を水素タンクの完全充填を実現するのに必要であり得る比較的高圧まで昇圧されるようにするコンプレッサを含まない。
【0027】
水素供給源の種類は限定されず、シリンダ、チューブトレーラ、及び構内貯蔵タンク等の気体水素容器が含まれる。代替的に、水素供給源は液体水素を収容する液体水素の構内貯蔵タンクであってよく、これはディスペンサに気体水素の流れを提供するための気化器に接続される。供給源の水素は典型的に、燃料電池自動車の諸元に適合し、米国自動車技術者協会のSAE J2719(燃料電池自動車用水素品質規格(Hydrogen Quality Standards for Fuel Cell Vehicles))に記載の品質仕様に適合していてよい。燃料電池駆動自動車の水素タンクに均圧を通じて供給源から水素を充填できるようにするために、水素供給源の圧力は自動車タンクのそれより高い。もちろんそれより高くても低くてもよいが、水素供給源の圧力は165~700バールである。
【0028】
同様に、燃料電池自動車の種類は限定されず、フォークリフト、車、及びトラックが含まれる。このような自動車は、米国自動車技術者協会のSAE J2579(燃料電池及びその他の水素自動車の燃料システム規格(Standard for Fuel Systems in Fuel Cell and Other Hydrogen Fueled Vehicles))に記載されている仕様に適合していてよい。
【0029】
図1において最もよくわかるように、ディスペンサは第一の供給ラインSLを含む。第一の供給ラインSLの上流端は、水素供給源Sに流体接続されるように調整及び構成される。水素供給源Sを第一の供給ラインSLの上流端に接続するためには、何れの従来の工業用ガス器具が使用されてもよいが、典型的に、このような接続は米国標準化協会のANSI/CSA HGV 4.10-2012(圧縮水素ガス及び水素リッチガス混合物のための器具に関する規格(Standards for Fittings for Compressed Hydrogen Gas and Hydrogen Rich Gas Mixtures))に記載の仕様に適合する。その他のライン、弁、調整装置、及びノズル接続もまた、ANSI/CSA HGV 4.10-2012に適合してよい。
【0030】
第一のオリフィス板OPは、第一の供給ラインSL内に配置される。制限板とも呼ばれるオリフィス板は、ラインを通るガスの流れを制限するための、ガスライン内に据え付けられる周知の機器である。後述のように、第一の供給ラインSLの中のオリフィス板OPの上流及び下流側間の圧力差が一定に保持される(オリフィス板OPの上流側と自動車タンクとの間も同様)。この圧力差は一定であるため、水素供給源Sの圧力が低下しても、オリフィス板OPを通る質量流量は変化しない。それゆえ、一定の質量流量が実現される。一定の質量流量とは、質量流量が充填の過程全体にわたり50%を超えて、又はより典型的には充填の過程全体にわたり25%を超えて変化しないことを意味する。
【0031】
第一の供給ラインSLは、その終端を背圧調整装置BPRの入口に置く。背圧調整装置は、ガスライン内に設置されて、背圧調整装置の上流のライン内の圧力を設定点圧力に保持するための周知のタイプの弁である。背圧調整装置の上流のこのようなライン内の圧力は、背圧調整装置に関係のない理由によって設定点より低くなり得るものの、背圧調整装置はこのようなライン内の圧力が設定点より高くならないように設計される。背圧調整装置は、ガスを圧力調整装置の下流に定圧で供給するガスライン内に設置される弁である圧力調整装置と対照的であり得る。ディスペンサ内で使用される背圧調整装置SLは、ドーム・ロード式又はスプリング・アンド・ドーム・ロード式背圧調整装置である。ドーム・ロード式又はスプリング・アンド・ドーム・ロード式背圧調整装置では、背圧調整装置のドームに供給される基準圧力をその設定点を変化させるため、ひいては背圧調整装置の上流のライン中で保持される圧力を変化させるために使用されてよい。例えば、ドームに供給される基準圧力を10バール下げると、設定点圧力も同様に10バール下がる。
【0032】
後述のように、基準圧力は背圧調整装置SLのドームに基準圧力ラインRPL、差圧調整装置DPR、及びパイロットラインPLで供給される。基準圧力ラインRPLの中に受けられる水素供給源Sからの水素の流れの圧力は典型的に、第一の供給ラインSLの中で受けられる水素供給源Sからの水素の流れの圧力と同じである。供給源Sから基準圧力ラインRPL内で受けられる水素の流れの圧力は、ラインRPL、SLの両方が供給源Sから直接、ラインRPL、SLの何れにおいても流れ制限装置を一切用いずに水素を受け取る場合、又はラインRPL、SLの両方が供給源Sから直接、各ラインにおいて同じ種類の流れ制限装置を使用して受け取る場合、第一の供給ラインSLの中で受けられる水素の流れのそれと同じである。これを実現する1つの簡単な方法は、図1に示されるように、基準圧力ラインRPLの上流端を第一の供給ラインSL内につなぐことである。代替的に、水素は供給源から基準圧力及び第一の供給ラインRPL、SLの各々に並列に供給されてよい。
【0033】
基準圧力ラインRPLの下流端に、入口及び出口を有する差圧調整装置DPRが配置される。パイロットラインPLは、差圧調整装置DPLの出口から背圧調整装置BPRのドームへと延びる。このようにして、背圧調整装置BPRの設定点圧力は、パイロットラインPL内の水素の圧力により設定/変更される。差圧調整装置は、ガスライン内に設置されて、ガスの圧力を一定量ずつ低下させる周知の機器である。換言すれば、差圧調整装置の上流のライン内のガスと差圧調整装置の下流のライン内のガスとの間には一定の圧力差がある。移動式ディスペンサの差圧調整装置DPRは、基準圧力ライン内の水素とパイロットラインPL内の水素との間の所定の圧力差を実現するように事前に設定される。圧力差は何れの特定の値にも設定する必要はないが、典型的に、それは5~30バールの範囲である。
【0034】
背圧調整装置BPRの設定点圧力は、パイロットラインPL内の圧力により設定/変更される。それゆえ、基準圧力及び第一の供給ラインRPL、SL内で受け取られる水素の圧力が圧力P1であり、差圧調整装置DPRが水素をパイロットラインPLに圧力P2で供給する場合、第一の供給ラインSL内のオリフィス板OPと背圧調整装置BPRとの間の圧力も圧力P2に保持される。基準圧力ラインRPL及びパイロットラインPL内の水素間の圧力差は差圧調整装置DPRにより一定の値に保持されるため、オリフィス板OPの上流の第一の供給ラインSL内の水素とオリフィス板OPの下流の第一の供給ラインSL内の水素間の圧力差もしたがって一定である。
【0035】
この一定の圧力差は重要であるが、これは、チョークのない流れ条件下でオリフィス板を通過するガスの流れについて、質量流量はオリフィス板を挟む圧力差が一定であれば一定となるからである。実際、オリフィス板を通る特定の質量流量(チョークのない流れ条件下)は、それを挟む差圧を制御することにより設定できる。これは、上流の圧力P1と下流の圧力P2がわかっていて不変であれば、一定の質量流量は、研究により立証されているその他の定数を使って、ベルヌーイ方程式により計算できる:
【0036】
【数1】
【0037】
式中:
=無次元流出係数
β=オリフィス径d対管径Dの無次元オリフィス径比
ε=無次元膨張係数
d=オリフィス内径
ρ=上流タップ面の流体密度(kg/m
Δρ=オリフィスを挟んで測定された差圧(Pa)
【0038】
それゆえ、移動式ディスペンサ内のオリフィス板を通る水素の質量流量は、供給源内の水素の圧力が経時的に低下し得、自動車タンク内の水素の圧力が充填の過程で上昇し得ることに係わらず、一定である。
【0039】
移動式ディスペンサの目的は、必ずしもその圧力がコンプレッサにより保持される水素供給源からではなく、それを何れの水素貯蔵源(すなわち、貯蔵タンク)とも使用できるようにすることであるため、水素供給源(その圧力はコンプレッサにより一定に保持されない)の圧力は充填の過程で低下する。
【0040】
移動式ディスペンサにより実現される一定の質量流量は重要であり、それは、本発明のディスペンサには電気制御される弁がないものの、それでも、高すぎる流量の水素が自動車タンクに通過させられて危険なレベルの過熱及び/又は過圧が引き起こされることが起こらない妥当な程度の確実性を提供できるからである。その結果、本発明のディスペンサは、圧力センサ及び/又は流量計からデータを受信するコントローラによって命令される電気制御弁を含まないことに係わらず、妥当な程度の安全性で操作され得る。
【0041】
移動式ディスペンサは、2つの標準的な減圧調整装置を使用した場合よりさらに有利である。代わりに標準的な減圧調整装置(第一の調整装置)を用いてP1を設定し、別の調整装置(第二の調整装置)を用いてP2を設定した場合、供給源の圧力が第一の調整装置の設定点より低くなると、充填が止まる。また、P1圧力は貯蔵圧力が低下しても変わり得ず、なぜならそれは一定であるからである。供給源からほとんどのガスを得るために、このP1調整装置は非常に低く設定する必要があり、そうすることにより、それが初期の供給源の圧力に近付くと、(非常に低く設定されているため、)自動車タンクを十分な量まで満たすことができない。本発明の移動式ディスペンサは代わりに差圧調整装置を使って背圧調整装置に基準圧力を提供するため、差圧調整装置及び背圧調整装置を持たない2つの標準的な減圧調整装置の場合に予想される上記の問題が避けられる。
【0042】
背圧調整装置BPRの出口からの水素は送達ラインDLの上流端により受け取られる。送達ラインの下流端は、燃料電池自動車の水素タンクの開口と係合するように調整及び構成されるノズルNの中につながる。
【0043】
図1の実施形態は、それによって移動ディスペンサが純粋に機械的な方法で動作できるため、有利である。
【0044】
それに対して、従来の定置式水素充填ステーションは、水素タンクに生じる昇圧率を常に制御するための圧力制御弁を使用する。換言すれば、このようなステーションは、経時的な(自動車タンクの)圧力変化をある定数に保持しようとしており、定数とは平均昇圧率、すなわちAPRRを指す。このような圧力制御弁はPLCにより制御され、基本的に、自動車タンク内の圧力が上昇すると圧力制御弁を通る流路の断面積を縮小することによる可変オリフィスとして動作する。PLCにより計算された昇圧率がある瞬間に予想APRRを超えると(又はそれより低くなると)、PLCは圧力制御弁に、圧力制御弁を通る流路の断面積を縮小(又は拡大)して、より密接にAPRRに追従するように命令する。
【0045】
従来の制御式ガスフローシステムにより採用される別の方法は、PLC制御を利用しない標準的圧力制御弁(ばね等による、純粋に機械的なもの)の使用を含む。このような圧力制御弁が差圧調整装置及び背圧調整装置を用いずに使用された場合、このような圧力制御弁は特定の設定点に設定できるだけで、オペレータが設定点を変更しないかぎり、変化させることができない。
【0046】
それに対して、移動式ディスペンサのオリフィス板OP、差圧調整装置DPR、及び背圧調整装置BPRの使用により、PLCの必要性、PLCへの電源供給の必要性、及びオペレータによる制御の必要性がなくなる。これは、水素の流れがオリフィス板OP、差圧調整装置DPR、及び背圧調整装置BPRによる純粋に機械的な方法で制御されることによってオリフィス板OPを挟む差圧が一定に保持されるからである。
【0047】
燃料電池自動車の水素タンクの過熱及び過圧を制限するための追加の機構として、例えば米国自動車技術者協会のSAE規格J2601等、昇圧率を所定の平均昇圧率(APRR)に制御しながら充填を実行することが提案されている。APRRは、充填中の単位時間あたりの平均昇圧率である。2010年3月のJ2601のある1つの版では、外気温条件で充填するのに安全である(すなわち、供給源からの水素は温度制御されない)と特定されたAPRRを使用することが求められている。この規格に基づき、充填中の昇圧率は、-30℃~40℃の外気温に基づくAPRRを明示するルックアップテーブルにより規定されるAPRRを実現するように制御される。留意すべき点として、充填中の、自動車タンクへの水素の流れが停止される部分(漏れチェック中の一時停止等)は、APRRの計算の時間成分に含められない。J2601規格及び関係する技術は、実際の昇圧率を、所期のAPRR前/ブローの偏差パーセンテージ内又は所期のAPRR前後の一定の圧力範囲内に保持しようとするものである。従来のシステム及び方法は典型的に、可変圧力制御弁、1つ又は複数のセンサ、及び電気式コントローラを使ってこの昇圧率制御を実現する。
【0048】
図1の実施形態は、水素を水素タンクに一定の質量流量でかなり満足できる程度に送達するが、理論的に、単位時間当たりの自動車タンク中の圧力上昇の一部は、圧力上昇に伴う水素の圧縮因子の増大によるそのような一定の質量流量を考慮すると、予想値より高い、及び低い可能性がある。圧縮因子のこのような変化によって、昇圧率を所期のAPRR前後の範囲内に保持することがより難しくなる場合は、図2又は図3の実施形態を利用して、追加の供給ライン及びオリフィス板並びに圧力制御弁を使用し、供給ラインを通る流れを制御することによって、この理論上の問題に対処してよい。
【0049】
図2において最もよく示されているように、ディスペンサは図1のディスペンサの特徴の各々を含み、また、上流端を有する第二の供給ラインSLも含む。供給源Sから第二の供給ラインSLの中で受け取られる水素の流れの圧力は典型的に、供給源Sから基準圧力ラインRPL内で受け取られる水素の流れの圧力と同じである。供給源Sから基準圧力ラインRPLの中で受け取られる水素の流れの圧力は、ラインRPL、SLの両方が何れのラインにおいても何れの流れ制限装置も用いずに供給源Sから直接水素を受け取るか、ラインRPL、SLの両方が各ラインで同じ種類の流れ制限装置を用いて供給源から直接受け取る場合に、第二の供給ラインSLの中で受け取られる水素の流れのそれと同じである。これを実現するための1つの簡単な方法は、図2に示されるように、第一の供給ライン内の第二の供給ラインSLの上流端をタップすることである。代替的に、水素は供給源Sから基準圧力ラインRPL及び第二の供給ラインSLの各々に平行に供給されてもよい。
【0050】
第二のオリフィス板OPは、第二の供給ラインSL内の上流及び下流端間に配置される。第一及び第二のオリフィス板OP、OP並びに第一及び第二の供給ラインSL、SLに関連する寸法及び可変値は、第一及び第二の供給ラインSL、SLの各々を通る同じ一定の質量流量が実現されるように選択される。
【0051】
圧力制御弁PCVは、第二の供給ラインSL内の第二のオリフィス板OPと第二の供給ラインSLの下流端との間に配置される。この圧力制御弁PCVは、送達ラインDL内の圧力が第一の所定の設定点圧より低い時に水素の流れが第二の供給ラインSLを通ることができ、送達ラインDL内の圧力が第一の所定の設定点圧力以上であれば水素の流れが第二の供給ラインSLを通れないように調整及び構成される。それゆえ、この圧力制御弁PCVは、それが完全に開状態又は完全に閉状態の何れかであるという点で、可変圧力弁ではない。
【0052】
図3において最もよくわかるように、ディスペンサは図2のディスペンサの特徴の各々を含み、また、上流端を有する第三の供給ラインSLも含む。供給源Sから第三の供給ラインSLの中で受け取られる水素の流れの圧力は典型的に、供給源Sから基準圧力ラインRPL内で受け取られる水素の流れの圧力と同じである。供給源Sから基準圧力ラインRPLの中で受け取られる水素の流れの圧力は、ラインSL、RPLの両方が何れのラインにおいても何れの流れ制限装置も用いずに供給源Sから直接水素を受け取るか、ラインSL、RPLの両方が各ラインSL、RPLで同じ種類の流れ制限装置を用いて供給源Sから直接受け取る場合に、第三の供給ラインSLの中で受け取られる水素の流れの圧力と同じである。これを実現するための1つの簡単な方法は、図3に示されるように、第一の供給ラインSL内の第三の供給ラインSLの上流端をタップすることである。代替的に、水素は供給源Sから基準圧力ラインRPL及び第三の供給ラインSLの各々に平行に供給されてもよい。
【0053】
第三のオリフィス板OPは、第三の供給ラインSL内の上流及び下流端間に配置される。第一、第二、及び第三の供給ラインSL、SL、SLの内径が同じであると仮定し、第一、第二、及び第三のオリフィス板OP、OP、OPを挟む圧力差が同じであると仮定すると、第一、第二、及び第三のオリフィス板OP、OP、OPの各々に形成されるオリフィスは同じであり得るが、これらは、オリフィス板OP、OP、OP内に形成されるオリフィスの断面積がわかっているかぎり、同じである必要はない。したがって、第一、第二、及び第三のオリフィス板OP、OP、OPの各々のC及びβの値は同じである。第一、第二、及び第三のオリフィス板OP、OP、OPに形成されるオリフィスのオリフィス内径dが同じであれば、これらのオリフィス板OP、OP、OPを通る質量流量もまた、系のルールにより同じである。第一、第二、及び第三のオリフィス板OP、OP、OPに形成されるオリフィスのオリフィス内径の1つ又は複数が同じではないが、各々の相対値がわかっていれば、これらの板オリフィスOP、OP、OPの各々を通る質量流量の相対値も同様にわかる。一例として、第一のオリフィス板OPに形成されるオリフィスの内径dは、第二及び第三のオリフィス板OP、OPに形成されるオリフィスのそれらの乗数である。
【0054】
圧力制御弁PCVは、第三の供給ラインSL内の第三のオリフィス板OPと第三の供給ラインSLの下流端との間に配置される。この流れ制御弁PCVは、送達ラインDL内の圧力が第二の所定の設定点圧より低い時に水素の流れが第三の供給ラインSLを通ることができ、送達ラインDL内の圧力が第二の所定の設定点圧力以上であれば水素の流れが第三の供給ラインSLを通れないように調整及び構成される。それゆえ、この圧力制御弁PCVは、それが完全に開状態又は完全に閉状態の何れかであるという点で、可変圧力弁ではない。留意すべき点として、基準圧力ラインRPLはさらに、供給源Sからの関連する水素の流れを、第三の供給ラインSLのtheにより受け取られる水素の流れと同じ圧力で受け取るように調整及び構成される。代替的に、基準圧力ラインRPLはさらに、供給源Sからの関連する水素の流れを第三の供給ラインSLにより受け取られる水素の流れのそれと、これら2つの圧力間の圧力差が一定であるかぎり、異なる圧力で受け取るように調整及び構成される。
【0055】
前述のように、第二の供給ラインSL中の圧力制御弁PCVは、送達ラインDL内の圧力が第一の所定の設定点圧力より低い時に、水素の流れが第二の供給ラインSLを通り、送達ラインDLの中へと流れることができるようにする。第三の供給ラインSL内の圧力制御弁PCVも同様に、送達ラインDL内の圧力が第二の所定の設定点圧力より低いときに、水素の流れが第三の供給ラインSLを通って送達ラインDLの中へと流れることができるようにする。第二の所定の設定点圧力は第一の所定の設定点圧力より低く、これ自体は、充填終了時に自動車タンクの中で到達されると通常予想される圧力より低くなるように選択される。
【0056】
図2の実施形態に関して、送達ラインDL内の圧力(これは自動車タンク内の圧力を反映)は、充填開始時に比較的低く、通常は第一の所定の設定点圧力より低い。充填中のこの時点で、水素は第一及び第二の供給ラインSL、SLの各々を通り、送達ラインDLを介して自動車へと、第一及び第二のオリフィス板OP、OPを通る質量流量の和に等しい質量流量で流れる。水素が自動車タンクの中に流れ、自動車タンクが第一の所定の設定点圧力に向かって、ただしそこに到達しない程度に上昇すると、昇圧率は一定のままではなく、増大するが、これは主に、水素タンク内部の温度の影響と、タンク内の水素の圧力をタンクの一定容量内の水素ガスの累積質量から予想されるものより高く上昇させる圧縮因子の増大によるよる。送達ラインDL内の圧力が第一の所定の設定点圧力以上に上昇すると、第二の供給ラインSL内の圧力制御弁PCVが閉じて、第二の供給ラインSLを通って送達ラインDLに入る水素の流れを阻止する。それゆえ、自動車タンク内への水素の質量流量は、第一のオリフィス板OPのみを通る水素の質量流量まで低下する。
【0057】
留意すべき点として、図2の実施形態では、充填開始時の送達ラインの内の圧力が第一の所定の設定点圧力より高いと、自動車タンクは第一の供給ラインSLからのみ充填される。このような場合、自動車タンクへの質量流量はもちろん、第一のオリフィス板を通る質量流量と等しい。
【0058】
図3の実施形態に関して、送達ラインDL内の圧力(これは自動車タンク内の圧力を反映)は、充填開始時に比較的低く、通常は第二の所定の設定点圧力より低い。充填中のこの時点で、水素は第一、第二、及び第三の供給ラインSL、SL、SLの各々を通り、送達ラインDLを介して自動車へと、第一、第二、及び第二のオリフィス板OP、OP、OPを通る質量流量の和に等しい質量流量で流れる。自動車タンクの中への水素の流れが、第二の所定の設定点圧力に向かって、ただしそこに到達しない程度に上昇すると、昇圧率は一定のままではなく、増大するが、これは主に、水素タンク内部の温度の影響と、タンク内の水素の圧力をタンクの一定容量内の水素ガスの累積質量から予想されるものより高く上昇させる圧縮因子の増大によるよる。送達ラインDL内の圧力が第二の所定の設定点圧力以上に上昇すると、第三の供給ラインSL内の圧力制御弁PCVが閉じて、第三の供給ラインSLを通って送達ラインDLに入る水素の流れを阻止する。それゆえ、自動車内への水素の質量流量は、第一及び第二のオリフィス板OP、OPを通る水素の質量流量の和まで低下する。再び、自動車タンクの中に流れる水素の圧力が引き続き第一の所定の設定点圧力に向かって、ただしそこに到達しない程度に上昇すると、昇圧率は同じく一定のままではなく、上昇するが、これは主に、水素タンク内部の温度の影響と、タンク内のガスをタンクの一定容量内の水素ガスの累積質量から予想されるものより大きく膨張させる圧縮因子の増大によるよる。送達ラインDL内の圧力が第一の所定の設定点圧力以上に上昇すると、第二の供給ラインSL内の圧力制御弁PCVが閉じて、第二の供給ラインSLを通って送達ラインDLに入る水素の流れを阻止する。それゆえ、自動車タンクの中への水素の質量流量はもちろん、第一のオリフィス板OPのみを通る質量流量まで低下する。
【0059】
留意すべき点として、図3の実施形態において、充填開始時の送達ラインDL内の圧力が第二の所定の設定点圧力より高いと、自動車タンクは第一及び第二の供給ラインSL、SLからのみ充填される。このような場合、自動車タンクへの質量流量はもちろん、第一及び第二のオリフィス板OP、OPを通る質量流量の和と等しい。同様に、充填開始時の送達ラインDL内の圧力が第一の所定の設定点圧力より高い場合、自動車タンクは第一の供給ラインSLのみから充填される。このような場合、自動車タンク内への質量流量はもちろん、第一のオリフィス板OPのみを通って流れる水素の質量流量と等しい。
【0060】
図4において最もよくわかるように、図3の実施形態の性能は、昇圧率をほぼAPRRに保持することに近い。図4において最もよくわかるように、自動車タンクの圧力は当初、125バールより低く、第二及び第三の供給ラインSL、SLの各々の圧力制御弁PCV、PCVは開き、その結果、送達ラインDLを通って自動車タンクへと至る質量流量は1.10g/秒となる。第三の供給ラインSLの圧力制御弁は、125バールである第二の所定の設定点を有する。送達ラインDL内の圧力(自動車タンク内の圧力を表す)が125バールに近付くと、第三の供給ラインSL内の圧力制御弁PCVは閉じ、第三の供給ラインSLから送達ラインSLへの水素の流れを阻止する。すると水素は第一及び第二の供給ラインSL、SLのみを通って流れるため、送達ラインSLを通って自動車タンクに到達する質量流量は1.02g/秒となる。第二の供給ラインSLの圧力制御弁PCVは、250バールである第二の所定の設定点を有する。送達ラインDL内の圧力が250バールに近付くと、第二の供給ラインSL内の圧力制御弁PCVは閉じ、第二の供給ラインSLから送達ラインDLへの水素の流れを阻止する。すると、水素は第一の供給ラインSLのみを通って流れるため、送達ラインDLを通って自動車タンクに至る質量流量は0.95g/秒となる。充填は、供給源の圧力と自動車タンクの圧力が等しくなるまで続く。
【0061】
当業者であれば、昇圧率の制御は図2図3の実施形態に限定されないことがわかるであろう。むしろ、より多くの供給ラインがあってもよく、その各々が、第一、第二、又は第三の供給ラインのそれらと同様又は同じ関連するオリフィス板及び圧力制御弁を有することになる。それゆえ、昇圧率により制御される充填は、2つのステップ(図2の実施形態のとおり)、3つのステップ(図3の実施形態のとおり)、又は4つ以上のステップで実現されてよい。ステップの数に関係なく、初期の水素タンク圧力が、充填開示時に幾つの圧力制御弁を開くかを決定する。各オリフィス板及び関連する圧力制御弁はそれぞれ、所定のAPRRに近くなるような大きさ及び設定とされる。例えば、外気温35℃での外気温充填に関するSAE J2601規格2010年3月版は、0.7MPa/分のAPRRとなるように充填を実行することを定めている。この特定の例では、オリフィス板の大きさ及び関連する圧力制御弁の設定は、0.7MPa/分のAPRRを大体有する充填が実現されるようにされてきた。典型的に、オリフィス板の大きさ及び圧力制御弁の設定は、移動式ディスペンサが、-30℃~40℃の範囲の外気温で動作するために必要な2010年3月版による外気温テーブルを実行するように調整及び構成されるものとされる。
【0062】
図2図3の実施形態は、これらによって図1の実施形態よりずっと安全で高速の充填が可能になるため、特に有利である。図1の実施形態は、それが一定の質量流量で水素を送達することから、大いに予測可能であるが、このような配置のオリフィス板は、自動車タンクの圧力上昇が速すぎることがないように、適切な大きさでなければならない。オリフィス板が比較的大きいと、それによって質量流量がより大きくなり、その結果、より急速な充填が可能となる。しかしながら、昇圧時の水素の膨張係数の変化により、自動車タンク内の温度は、熱が自動車タンク内の水素から外気温へと伝達され得る速度を超えた速度で上昇し得る。これが起こると、自動車タンクが過熱し得、それによって制御されずに水素が放出されるリスクが高まる。このような結果はもちろん、比較的より小さいオリフィス板を使って、自動車タンクが充填終了時に過熱しないような質量流量を生成することによって改善され得るが、このようなオリフィス板では、充填全体にわたり比較的小さい流量が生じ、それゆえ充填時間が長くなる。
【0063】
それに対して、図2図3の実施形態によれば、充填におけるより早い段階で比較的より大きいオリフィスを使って比較的より大きい質量流量を実現してから、充填おける後の段階で比較的より小さいオリフィス板を使用し、過熱を防止してよい。このようにして、充填時間全体が、充填終了時の自動車タンクの過熱を防止するように設計された適当な大きさのオリフィス板を有する図1の実施形態と比較して、大幅に短縮される。
【0064】
APRRが制御されるか否かに関係なく、方法及びシステムは、電源の使用を必要とする電気制御構成要素を含まない。それは純粋に機械的な性質であるため、電源のない場所でも水素供給源を使用してよい。移動式ディスペンサはまた、使用者が流れを制御する必要がなく、幾つかの実施形態では、2010年3月版J2601規格草案等の外気温燃料充填プロトコルに適合する安定な流れの排出を生成できる。
【0065】
移動式ディスペンサは、ステーション長期停止の当初時間中に配備されるように意図される。典型的に、移動式ディスペンサは、48時間より長く続くような水素充填ステーションの長時間の停止には使用されない。
【0066】
移動式ディスペンサはまた、定置式ステーション以外の場所でも補給する便利さを望むドライバのため、又はタンクに残っている水素ガスの量から走行可能な距離内にステーションがない場所での補給を望むドライバのために、道路わきでの燃料補給用に配備されることも意図される。
【0067】
移動式ディスペンサは比較的小さい。それはまた持ち運び可能で、典型的な重量は50kg未満、25kg未満、幾つかのケースではさらに15kg未満である。多くの場合、移動式ディスペンサは、乗用車の後部に取り付けて1人又は2人の少人数で積み下ろしできる程度に小さく、それによって様々な用途において1人又は2人の使用者による使用の柔軟性が提供される。
【0068】
移動式ディスペンサはまた、様々な供給源の何れからでも気体水素を受け取ることができるように設計され、これには、a)典型的圧力範囲が200~450バールの定置式水素充填ステーションのための既存の地下貯蔵タンク、b)典型的圧力範囲が約165バール又は450バールの水素チューブトレーラ、c)多くの場合に165バールの圧力まで充填される水素シリンダ、d)水素チューブトレーラから均圧化され、それゆえ典型的に圧力範囲が200~450バールの従来の気体水素貯蔵タンク、及びe)気化器と連結された液体水素貯蔵タンクが含まれるが、これらに限定されない。自動車タンクが少なくとも部分的に充填されるためには、自動車タンク内の圧力が供給源のそれより低くなければならない。それゆえ、移動式ディスペンサは、コンプレッサが組み込まれることになっていないことから、自動車タンクを供給源の圧力までしか充填できない。
【0069】
自動車とディスペンサとの間の通信も水素の冷却も必要ではなく、むしろ、優勢な外気温で操作されるものとされる。
【0070】
安全性の理由から、自動車のオペレータは移動式ディスペンサを使って充填を行う訓練を受けたオペレータを望み得る。
【0071】
移動式ディスペンサ及び使用方法は、従来の定置式水素充填ステーションとは区別されてよい。前述のように、移動式ディスペンサは、PLCの必要性、PLCへの電力供給の必要性、及びオペレータによる充填中の圧力制御弁設定点制御の必要性がなくなる。従来の水素充填ステーションにより使用される水素の上流圧力は典型的に一定であり、これは、それが収容された貯蔵容器は常にコンプレッサにより補給されるからである。移動式ディスペンサの場合、動作しているコンプレッサは典型的にないため、移動式ディスペンサに供給される水素の供給源は、自動車タンクへの充填中に時間と共に低下する。差圧調整装置による背圧調整装置の制御が実装されていなければ、オリフィス板を挟む一定の圧力差は実現されない。それゆえ、一定の質量流量も実現されないであろう。また、移動式機器は、自動車タンクの中に送達される水素の量を測定せず(流量計が含まれないため)、顧客が充填の代金を支払う販売地点も提供しない。これによって、移動式ディスペンサは定置式水素充填ステーションのための、停電が生じているとき、又は充填が必要な自動車が電力の利用が容易でない離れた場所にあるときのバックアップとして使用できる。
【0072】
移動式ディスペンサは、次のように燃料電池駆動自動車の水素タンクを少なくとも部分的に充填するために使用されてよい。
【0073】
第一の供給ラインの上流端を、気体水素の供給源と下流で流体連通して設置する。送達ラインの下流端を、自動車タンクと上流で流体連通して設置する。供給源から移動式ディスペンサを通って自動車タンクに入る水素の流れを開始し、少なくとも第一の供給及び送達ラインを通って自動車タンクに入る水素の流れを開始する。典型的に、流れは、供給源における1つ又は複数の弁を開いて水素が移動式ディスペンサへと流れることができるようにすることにより開始する。水素の流れを停止し、供給ラインの上流端を供給源と流体連通しないようにし、送達ラインの下流端を自動車タンクと流体連通しないようにする。
【0074】
流れの停止は、以下に非限定的に挙げる事象のうちの何れか1つ又は複数が発生したことを条件としてよい:所定の時間が経過したこと、所定の量の水素が供給源からタンクへと通過したこと、自動車タンクの圧力が所定の圧力に到達したこと、及び供給源と自動車タンクとの間で圧力平衡が実現されたこと。好ましくは、流れは、供給源と自動車タンクとの間で圧力平衡に到達すると自動的に停止する。圧力平衡は、その結果として流量がゼロになるため、送達ライン内に据え付けられた流量計を使用して観察されてよい。
【0075】
本発明はその具体的な実施形態に関して説明されているが、当業者にとっては、上記の説明を参照すれば数多くの改変、改良、及び変更が明らかであろう。したがって、このような改変、改良、及び変更はすべて、付属の特許請求の範囲の主旨と広い範囲の中に包含されるものとする。本発明は、開示されている要素を適切に含み、それらからからなり、又は基本的にそれらからなってよく、開示されていない要素がなくて実施されてよい。さらに、第一及び第二のような順位を指す文言がある場合、それは限定的ではなく例示的な意味として理解すべきである。例えば、当業者であれば、特定のステップをまとめて1つのステップにすることが可能であることがわかる。
【0076】
単数形の冠詞(a、an及びthe)は、文脈上、明らかに他の解釈が必要でないかぎり、複数形も含む。
【0077】
特許請求項中の「~を含む(comprising)」は、オープン型の移行句であり、これは、それに続いて明示される請求要素が非限定的に挙げられたものであることを意味し、すなわち、他の何れかのものが追加的に含められてもよく、それも依然として「~を含む(comprising)」の範囲に含まれる。「~を含む(comprising)」は本明細書において、「基本的に~からなる(consisting essentially of)」及び「~からなる(consisting of)」、という、より限定的な移行句を当然包含するものと定義され、「~を含む(comprising)」はしたがって、「基本的に~からなる(consisting essentiallyl of)」又は「~からなる(consisting of)」に置き換えられてよく、依然として明確に定義された「~を含む(comprising)」の範囲に含まれる。
【0078】
特許請求項中の「~を提供する(providing)」は、何かを据え付ける(furnishing)、供給する(supplying)、利用可能にする(makng available)、又は準備する(preparing)ことを意味すると定義される。ステップは、請求項中にこれに反する明示的な文言がない場合、何れの行為者によって行われてもよい。
【0079】
任意選択による、又は任意選択により、とは、それに続いて記載されている事象又は状況が起こっても起こらなくてもよいことを意味する。説明は、その事象又は状況が起こる場合及びそれが起こらない場合を含む。
【0080】
範囲は本明細書において、約、1つの特定の値から、及び/又は約、他の特定の値までとして表現され得る。このような範囲が表現される場合、他の実施形態は1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値まで、並びに前記範囲内のあらゆる組合せであると理解されるものとする。
【0081】
本明細書において明示されたすべての参考文献の各々は、参照によってその全体が、及び各々がそのために引用された具体的な情報に関して、本願に援用される。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 燃料電池駆動自動車の水素タンクを少なくとも部分的に充填するための移動式水素ディスペンサにおいて、
上流及び下流端を有する第一の供給ラインであって、前記第一の供給ラインの前記上流端は、水素供給源から水素の流れを受け取るように調整及び構成される第一の供給ラインと、
前記第一の供給ライン内に配置された第一のオリフィス板と、
前記第一の供給ラインの前記下流端に配置された背圧調整装置であって、前記第一の供給ライン内の前記オリフィス板と前記背圧調整装置との間のガスの圧力を前記背圧調整装置の可変設定点圧力以下に保持するように調整及び構成されるドーム・ロード式又はスプリング・アンド・ドーム・ロード式背圧調整装置であり、前記可変設定点圧力は、前記背圧調整装置のドーム内の圧力により設定される背圧調整装置と、
上流及び下流端を有する送達ラインであって、前記上流端は、前記背圧調整装置からの水素の流れを受け取るように調整及び構成され、前記送達ラインの前記下流端は、前記受け取った水素の流れを燃料電池駆動自動車の水素タンクへと方向付けるように調整及び構成される送達ラインと、
前記送達ラインの前記下流端と流体連通し、燃料電池自動車の燃料タンクの開口と係合するように調整及び構成されたノズルと、
上流端及び下流端を有する基準圧力ラインであって、前記基準圧力ラインの前記上流端は、前記水素供給源からの水素の流れを受け取るように調整及び構成される基準圧力ラインと、
入口及び出口を有する差圧調整装置であって、前記差圧調整装置の前記入口は、前記基準圧力ラインの前記下流端と下流で流体連通する差圧調整装置と、
前記差圧調整装置と前記背圧調整装置のドームとの間で流れが連通する第一のパイロットラインであって、前記差圧調整装置は、前記基準圧力ライン内の水素の圧力と前記第一のパイロットライン内の水素の圧力との間の一定の圧力差ΔPを保持するように調整及び構成される第一のパイロットラインと、
を含む移動式水素ディスペンサ。
[2] 上流端及び下流端を有する第二の供給ラインと、
前記第二の供給ライン内の、その前記上流及び下流端間に配置された第二のオリフィス板であって、前記第二の供給ラインの前記上流端は、前記供給源からの関連する水素の流れを、前記第一の供給ラインのそれと同じ圧力か、又は前記第一及び第二の供給ラインのそれら間の圧力差が一定となるような圧力で受け取るように調整及び構成され、前記第二の供給ラインの前記下流端は前記第一のオリフィス板と前記背圧調整装置との間で前記第一の供給ラインと流体連通する、第二のオリフィス板と、
前記第二の供給ライン内に配置され、前記送達ライン内の圧力が第一の所定の設定点圧力未満であれば、水素の流れが前記第二の供給ラインを通れるようにし、前記送達ライン内の圧力が前記第一の所定の設定点圧力以上であれば、水素の流れが前記第二の供給ラインを通れないように調整及び構成された流れ制御弁とをさらに含み、前記基準圧力ラインは、前記供給源からの前記関連する水素の流れを、前記第二の供給ラインのそれと同じ圧力か、又は前記第二の供給及び基準圧力ラインのそれら間の圧力差が一定となるような圧力で受け取るようにさらに調整及び構成される、
[1]に記載の移動式ディスペンサ。
[3] 上流端及び下流端を有する第三の供給ラインと、
第二の供給ライン内の、その前記上流及び下流端間に配置された第三のオリフィス板であって、前記第三の供給ラインの前記上流端は、前記供給源からの関連する水素の流れを、前記第一の供給ラインのそれと同じ圧力か、又は前記第一及び第三の供給ラインのそれら間の圧力差が一定となるような圧力で受け取るように調整及び構成され、前記第三の供給ラインの前記下流端は前記第一のオリフィス板と前記背圧調整装置との間で前記第一の供給ラインと流体連通する、第三のオリフィス板と、
前記第三の供給ライン内に配置され、前記送達ライン内の圧力が第二の一定の設定点圧力未満であれば水素の流れが前記第三の供給ラインを通れるようにし、前記送達ライン内の圧力が前記第二の一定の設定点圧力以上であれば、水素の流れが前記第三の供給ラインを通れないように調整及び構成された圧力制御弁とをさらに含み、前記基準圧力ラインは、前記供給源からの前記関連する水素の流れを、前記第二の供給ラインのそれと同じ圧力か、又は前記第二の供給及び基準圧力ラインのそれら間の圧力差が一定となるような圧力で受け取るようにさらに調整及び構成される、
[1]に記載の移動式ディスペンサ。
[4] 燃料電池駆動自動車の水素タンクを少なくとも部分的に充填する方法において、
[1]に記載の移動式ディスペンサを提供するステップと、
第一の供給ラインの上流端を、気体水素の供給源と下流で流体連通するように設置するステップと、
送達ラインの下流端を前記自動車タンクと上流で流体連通するように設置するステップと、
前記供給源からの水素の流れが前記移動式ディスペンサを通り、前記自動車タンクへと入ることができるようにするステップと、
前記流された流れを停止するステップと、
前記供給ラインの前記上流端を前記供給源と流体連通しないようにするステップと、
前記送達ラインの前記下流端を前記自動車タンクと流体連通しないようにするステップと、
を含む方法。
[5] 前記流れの前記停止は、前記供給源と前記自動車タンクとの間で圧力平衡に到達すると自動的に行われる、[1]に記載の方法。
図1
図2
図3
図4