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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
   A46B 5/00 20060101AFI20230105BHJP
【FI】
A46B5/00 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021054349
(22)【出願日】2021-03-26
(62)【分割の表示】P 2017105008の分割
【原出願日】2017-05-26
(65)【公開番号】P2021102085
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 明
(72)【発明者】
【氏名】三浦 英毅
【審査官】程塚 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-190439(JP,A)
【文献】特開2013-126494(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0173853(US,A1)
【文献】特開2005-185649(JP,A)
【文献】桜内 雄二郎,新版 プラスチック材料読本,日本,株式会社工業調査会,1987年05月15日,p.425-426
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛束が植設される複数の植毛孔が形成されている植毛台と、該植毛台に連続して設けられた柄部とを含む歯ブラシ本体を有する歯ブラシであって、
前記柄部には、該柄部の表裏を貫通して設けられた空洞部に、前記歯ブラシ本体を形成する1次樹脂とは異なる材質の2次樹脂が、2色成形時に充填されて、前記柄部の表側表面及び裏側表面に表出しており、
前記2次樹脂は、硬度がM65~M100の硬い樹脂であると共に、硬化時の収縮率が0.1~2.5%の樹脂となっており、
且つ前記2次樹脂は、前記柄部における前記空洞部の表裏の各々の開口周縁部において、該開口周縁部の頂部を超えることなく該開口周縁部を覆って設けられており、
前記柄部における前記空洞部の表裏の各々の開口周縁部には、該開口周縁部の頂部よりも内側領域に、前記空洞部の内方に向けて前記柄部の厚さ方向の中央部側に傾斜する傾斜面部が設けられている歯ブラシ。
【請求項2】
前記傾斜面部が、凸状に湾曲しながら傾斜する湾曲傾斜面部となっている請求項1記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記2次樹脂は、透明又は半透明な樹脂である請求項2記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関し、特に、毛束が植設される植毛台と、植毛台に連続して設けられた柄部とを含む歯ブラシ本体を有する歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシは、植毛台と、該植毛台に連続して設けられた柄部とが一体として成形された歯ブラシ本体の植毛台に、複数の毛束が植設されことによって形成されている。歯ブラシ本体は、植毛台に割れが生じないようにしたり、歯磨き剤に含まれる薬品類等の影響を受け難くしたり、歯磨き時に植毛台を押し付けることによって生じる曲げ応力を繰り返し受けても、疲労による破損を生じ難くしたりする必要があるため、好ましくはポリプロピレン等のポリオレフィン系の樹脂を用いて、例えば不透明な白色等の色で形成されているのが一般的であり、意匠性や装飾性が高いものとは言い難い。
【0003】
また、透明性の高い樹脂として、例えば飽和ポリエステル、アクリロニトリルスチレン樹脂、セルロースアセテート等の樹脂を用いて、歯ブラシ本体を形成した場合、植毛台の割れや、歯磨き剤に含まれる薬品類等の影響や、疲労による破損を生じ易くなることから、不透明な1次樹脂からなる歯ブラシ本体の柄部に、透明性の高い2次樹脂を埋め込んで表出させることによって、2次樹脂の透明感による意匠性の向上を図ることを可能にすると共に、薬品類等に対する優れた抵抗性や、繰り返し応力に対する優れた耐疲労性が得られるようにした歯ブラシも開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-190439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の歯ブラシでは、2色成形によって歯ブラシ本体を形成する際に、硬化時の収縮によるひけの問題を生じることで、歯ブラシ本体の空洞部に充填された2次樹脂の周縁部分に、隙間や亀裂を生じ易い。このため、2色成形によって形成される歯ブラシ本体の空洞部に充填される、2次樹脂の周縁部分に、隙間や亀裂が生じるのを回避できるようにする新たな技術の開発が望まれている。
【0006】
本発明は、2色成形によって形成される歯ブラシ本体の空洞部に充填される、2次樹脂の周縁部分に、隙間や亀裂が生じるのを効果的に回避することのできる歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、毛束が植設される複数の植毛孔が形成されている植毛台と、該植毛台に連続して設けられた柄部とを含む歯ブラシ本体を有する歯ブラシであって、前記柄部には、該柄部の表裏を貫通して設けられた空洞部に、前記歯ブラシ本体を形成する1次樹脂とは異なる材質の2次樹脂が、2色成形時に充填されて、前記柄部の表側表面及び裏側表面に表出しており、前記2次樹脂は、前記柄部における前記空洞部の表裏の各々の開口周縁部において、該開口周縁部の頂部を超えて、前記1次樹脂による前記歯ブラシ本体の表面の一部を覆って設けられている歯ブラシを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
また、本発明は、毛束が植設される複数の植毛孔が形成されている植毛台と、該植毛台に連続して設けられた柄部とを含む歯ブラシ本体を有する歯ブラシであって、前記柄部には、該柄部の表裏を貫通して設けられた空洞部に、前記歯ブラシ本体を形成する1次樹脂とは異なる材質の2次樹脂が、2色成形時に充填されて、前記柄部の表側表面及び裏側表面に表出しており、前記2次樹脂は、前記柄部における前記空洞部の表裏の各々の開口周縁部において、該開口周縁部の頂部を超えることなく該開口周縁部を覆って設けられており、前記柄部における前記空洞部の表裏の各々の開口周縁部には、該開口周縁部の頂部よりも内側領域に、前記空洞部の内方に向けて前記柄部の厚さ方向の中央部側に傾斜する傾斜面部が設けられている歯ブラシを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の歯ブラシによれば、2色成形によって空洞部に2次樹脂が充填された歯ブラシ本体を形成する際に、2次樹脂の周縁部分に、隙間や亀裂を生じるのを効果的に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の好ましい第1実施形態に係る歯ブラシを例示する略示斜視図である。
図2図1の歯ブラシを上方から視た略示平面図である。
図3図1の歯ブラシを側方から視た略示側面図である。
図4図2のA-Aに沿った断面図である。
図5図1のB-Bに沿った断面図である。
図6】本発明の好ましい第1実施形態に係る歯ブラシの要部を示す図5のC部拡大断面図である。
図7】本発明の好ましい第1実施形態に係る歯ブラシの変形例を示す図5のC部拡大断面図である。
図8】本発明の好ましい第2実施形態に係る歯ブラシの要部を示す図5のC部拡大断面図である。
図9】本発明の好ましい第2実施形態に係る歯ブラシの変形例を示す図5のC部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1図5に示す本発明の好ましい第1実施形態に係る歯ブラシ10は、把持部11とネック部12とを含む柄部13と、植毛台14とを備える歯ブラシ本体15の、植毛台14に形成された複数の植毛孔16に、複数本のブリッスル17を束ねてなる毛束(タフト)18を各々植設(植毛)することによって構成される。本第1実施形態の歯ブラシ10は、歯ブラシ本体15が、1次樹脂21と2次樹脂22とを用いた2色成形によって形成されており、1次樹脂21による歯ブラシ本体15の柄部13を貫通して設けられた空洞部20に、1次樹脂21とは異なる材質の2次樹脂22が充填されるようになっている。充填された2次樹脂22は、硬化することによって、柄部13の表面に表出した状態で柄部13に埋め込まれて、歯ブラシ本体15の美観や意匠性を向上させている。本第1実施形態の歯ブラシ10は、2色成形時に2次樹脂を柄部13に埋め込む際に、空洞部20に充填された2次樹脂が、例えば硬度(ロックウェル硬度)がM65~M100程度の硬い樹脂であると共に、硬化時の収縮率が0.1~2.5%の樹脂である場合でも、硬化時の収縮によるひけによって、埋め込まれた2次樹脂の周縁部分に隙間や亀裂が生じないようにして、歯ブラシ本体15の美観や意匠性が損なわれないようにする機能を備えている。
【0012】
ここで、ロックウェル硬度は、JIS K 7202-2(2001年制定)、またはISO 2039-2(1987年制定)に規定された測定方法によって測定される硬度である。硬化時の収縮率は、JIS K 7152-4(2005制定)、またはISO 294-4(2001年制定)に規定された測定方法によって測定される収縮率である。
【0013】
また、上述の特許文献1の歯ブラシでは、透明感による意匠性の向上や、優れた薬品類等に対する抵抗性及び繰り返し応力に対する耐疲労性を得ることが可能であるが、飽和ポリエステル、アクリロニトリルスチレン樹脂、セルロースアセテート等の透明性の高い2次樹脂は、硬度(ロックウィル硬度)がM65~M100程度の硬い樹脂であると共に、硬化時の収縮率が0.1~2.5%の樹脂となっている。そのため、多かれ少なかれ、2色成形による2次成形後に、1次成形品との間に隙間が生じ、汚れが溜まって不衛生になる場合がある。その一方で、隙間を覆い隠すように2次樹脂を形成すると、2次樹脂の周縁部分が薄肉の部分となり易い。薄肉の部分には、2次樹脂の硬化時の収縮による歪みによって、亀裂が生じ易くなる。収縮率は、2次樹脂の硬度が上がると小さくなり、硬度が下がると大きくなる傾向があるが、収縮率は全くゼロにはならないため、収縮率の小さい樹脂を選んでも、硬く柔軟性が無くなる分、かえって薄肉の部分の歪みが大きくなり、亀裂が生じる可能性がある。このため、本第1実施形態の歯ブラシ10では、柄部13に設けられた空洞部20に充填される2次樹脂の形態や、空洞部20の開口周縁部20aの形状等を工夫することによって、埋め込まれた2次樹脂22の周縁部分に隙間や亀裂が生じないようにしている。
【0014】
そして、本第1実施形態の歯ブラシ10は、毛束18が植設される複数の植毛孔16が形成されている植毛台14と、植毛台14に連続して設けられた柄部13とを含む歯ブラシ本体15を有する歯ブラシであって、柄部13には、柄部13の把持部11の表裏を貫通して設けられた空洞部20に、歯ブラシ本体15を形成する1次樹脂21とは異なる材質の2次樹脂22が、2色成形時に充填されて、柄部13の表側表面及び裏側表面に表出している。2次樹脂22は、図6に拡大して示すように、柄部13における空洞部20の表裏の各々の開口周縁部20aにおいて、これらの開口周縁部20aの頂部20bを超えて、1次樹脂21による歯ブラシ本体15の表面の一部を覆って設けられている。2次樹脂22は、好ましくは1次樹脂21による歯ブラシ本体15の表面に沿った頂部20bからの長さが、0.1mm以上となるように、歯ブラシ本体15の表面を覆って設けられている。ここで開口周縁部20aの頂部は、当該開口周縁部20aにおける、把持部11を厚さ方向に2等分する面に対して垂直な各断面において、2等分する面から垂直方向に最も離れた点となる部分である。
【0015】
また、本第1実施形態では、好ましくは柄部13における空洞部20の表裏の各々の開口周縁部20aには、図7に拡大して示すように、これらの開口周縁部20aの頂部20bよりも内側領域に、空洞部20の内方に向けて階段状に張り出す段部20cが設けられている。頂部20bと段部20c、又は隣接する段部20cの間をつなぐ連絡面部20dは、好ましくは傾斜した面となっている。
【0016】
本第1実施形態では、歯ブラシ10構成する歯ブラシ本体15を形成するための1次樹脂21は、歯ブラシ本体の樹脂として一般的に使用されている合成樹脂を、特に制限無く用いることができる。例えば、ポリアセタール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、セルロースプロピオネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、ポリエステル、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートから選ばれる一種又は二種以上の樹脂を用いることが好ましい。本第1実施形態では、後述するように、柄部13の把持部11と植毛台14とを連結する、柄部13のネック部12は、細く、長く形成されることから、機械的強度に優れた、ポリアセタール樹脂を用いて歯ブラシ本体15を形成することが特に好ましい。
【0017】
歯ブラシ本体15の植毛台14は、本第1実施形態では、例えば短軸が10~18mm程度、長軸が15~30mm程度の大きさの、楕円形状の平面形状を備えるように形成されている(図2参照)。植毛台14の表側の平坦な植毛面14aには、例えばφ1.4mm程度の大きさの複数の円形の植毛孔16が、分散配置されて開口形成されている。各々の植毛孔16には、複数本のブリッスル17を束ねてなる毛束18が植設されている(図1図3参照)。
【0018】
毛束18を構成するブリッスル17は、好ましくはナイロン、ポリエステル、ポリオレフィン等の、ブリッスルに用いられている周知の合成樹脂を、特に制限なく用いることができる。また、ブリッスル17は、例えば0.10~0.25mm(4~10mil)程度の太さを有するフィラメント材であって、これを例えば十数本~数十本束ねることによって、毛束18が構成される。ブリッスル17は、例えば15~35mmの長さを有しており、毛束18を二つ折りにして平線を打ち込む平線植毛や、片端部に溶融塊を形成して熱融着する融着植毛等、公知の各種の植毛方法を用いて、植毛台14の植毛面14aに植設することが可能である。ブリッスル17は、植毛台14の表面14aからの高さ(毛丈)が、例えば8~13mmとなるように植毛されている。
【0019】
歯ブラシ本体15の把持部11は、本第1実施形態では、把持部11とネック部12とを備える柄部13の、植毛台14とは反対側の後端部分を形成しており、図5に示すように、二次樹脂22が埋め込まれた状態で、短軸が9~15mm程度、長軸が10~18mm程度の大きさの、楕円形状の断面形状を備えている。把持部11は、植毛台14側の端部である、好ましくは断面積が50mmとなっている把持部先端部11aから、後方の当該把持部11の中央部分に向けて、滑らかに連続させて断面積を僅かに拡大させる共に、中央部分から後端部に向けて、滑らかに連続させて断面積を僅かに縮小させた状態で設けられている。これによって把持部11は、把持部先端部11aの後方領域に、断面積が50mm以上となっている部分を有している。柄部13の後端部でもある把持部11の後端部は、角部が湾曲形状に面取りされた形状を備えている。
【0020】
また、本実第1施形態では、柄部13の把持部11には、植毛台14の植毛面14a側を表側の面とし、これとは反対側を裏側の面として、これらの表裏の面の間を貫通する空洞部20が、開口形成されている(図4図5参照)。空洞部20は、把持部11の横長の平面形状に沿った、横長の略トラック円形状又は楕円形状の同様の平面形状を、表裏の開口面に各々備えるように形成されている(図2参照)。この空洞部20を充填して、1次樹脂21による歯ブラシ本体15とは異なる材質の2次樹脂22が、二色成形によって歯ブラシ本体15を形成する際に、把持部11に埋め込まれる。これによって、2次樹脂22は、柄部13の把持部11の表側表面及び裏側表面の双方に、表出することになる。
【0021】
ここで、歯ブラシ本体15が、上述の1次樹脂21を用いて、好ましくは白色等の不透明な色で形成されている場合には、柄部13の把持部11に埋め込まれた、歯ブラシ本体15とは異なる材質の2次樹脂22は、透明又は半透明の樹脂となっていることが好ましい。柄部13の把持部11に埋め込まれた2次樹脂22が、透明又は半透明の樹脂となっていることにより、歯ブラシ10の意匠性や美観を効果的に向上させることが可能になる。2次樹脂22としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル系の樹脂や、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、プロピレンゴム等のポリスチレン系又はポリオレフィン系のエラストマーを用いることが好ましい。より好ましくは、アクリロニトリルスチレン樹脂、セルロースアセテート、メタクリル樹脂等を用いることもできる。これらの2次樹脂は、硬度がM65~M100程度の硬い樹脂であると共に、硬化時の収縮率が0.1~2.5%の樹脂となっている。
【0022】
さらに、本第1実施形態では、把持部11における把持部先端部11a側の部分の表側表面に、親指の指腹部が押し当てられるように誘導する指当てマーキング部19が、埋め込まれた2次樹脂20の部分に配置されて設けられている。指当てマーキング部19は、好ましくは直径が6~15mm程度の大きさの略円形または略楕円形の平面形状を備えており、親指の指腹部に沿った表面形状となるように、浅い凹状に湾曲した湾曲凹部となっている。指当てマーキング部19が設けられていることにより、使用者が、植毛台14から離れた把持部11を把持するように誘導し易くなる。
【0023】
歯ブラシ本体15のネック部12は、柄部13の把持部11と、植毛台14とを連結する部分を形成するもので、本第1実施形態では、好ましくは把持部先端部11aから、植毛台14との接続部分12aに向けて、断面積が連続して減少する形状を備えている。すなわち、ネック部12は、断面積が50mmとなっている楕円形状の断面形状を備える把持部先端部11aから、植毛台14との接続部分12aに向けて、楕円形状の断面形状を保持したまま、短軸と長軸の長さを滑らかに徐々に減少させた形状を備えている。またこれによって、ネック部12は、好ましくは60~120mm程度の長さの全長に亘って、断面積が50mmに満たない部分となっている。
【0024】
ネック部12は、平面視して柄部13の軸方向と垂直な方向の幅が最も小さい、3~5mm程度の幅となった先端部から、柄部13の軸方向と垂直な方向の幅が植毛台14に向けて徐々に広がっている接続部分12aを介在させて、植毛台14と接続している(図2参照)。
【0025】
そして、本第1実施形態では、上述のように、柄部13の把持部11の表裏を貫通して設けられた空洞部20に、1次樹脂21とは異なる材質の2次樹脂22が、2色成形時に充填されて、柄部13の表側表面及び裏側表面に表出しており、2次樹脂22は、図6に拡大して示すように、空洞部20の表裏の各々の開口周縁部20aおいて、これらの開口周縁部20aの頂部20bを好ましくは0.1mm以上超えて、1次樹脂21による歯ブラシ本体15の表面の一部を覆って設けられている。
【0026】
すなわち、本第1実施形態では、空洞部20は、把持部11の表裏間の厚さ方向の面となっている内周面20dを備えており、表裏の各々の開口周縁部20aの角部分は、滑らかに湾曲する凸曲面20eによって面取りされている。2次樹脂22は、開口周縁部20aの凸曲面20eにおける、把持部11の厚さ方向の先端を頂部20bとして、当該頂部20bをより好ましくは0.5~1mm程度超えた状態で、1次樹脂21による歯ブラシ本体15の表面の覆うようにして設けられている。
【0027】
これによって、2色成形時に空洞部20に充填された2次樹脂22が、硬化時のひけによって収縮することで、硬化した2次樹脂22と空洞部20の内周面20fとの間に隙間が生じた場合でも、生じた隙間を、空洞部20の開口周縁部20aの頂部20bを超えて設けられた2次樹脂22によって覆い隠すことにより、歯ブラシ10の意匠性や美観を損なうことになるのを効果的に回避することが可能になると共に、硬化した2次樹脂22が空洞部20から抜けて脱落するのを効果的に回避することが可能になる。
【0028】
また、本第1実施形態では、図7に示すように、柄部13の把持部11における空洞部20の表裏の各々の開口周縁部20aには、これらの開口周縁部20aの頂部20bよりも内側領域である内周面20fに、空洞部20の内方に向けて階段状に張り出す段部20cが設けられている。頂部20bと段部20c、又は隣接する段部20cの間は、各々、連絡面部20dによってつながれている。連絡面部20dは、上述のように、傾斜した面となっている。段部20cの幅は、0.01~0.5mmであることが好ましく、0.02~0.2mmであることがさらに好ましい。連絡面部20dは、把持部11の表裏間の厚さ方向の面Pに対して、例えば0.5~5度の傾斜角度θで傾斜していることが好ましく、1~3度の傾斜角度θで傾斜していることがさらに好ましい。段部20cは、柄部13の表裏の面から厚さ方向の中央部までの間に、各々1~5段設けられていることが好ましい。本第1実施形態では、段部20cは、柄部13の表裏の面から厚さ方向の中央部までの間に、各々2段づつ設けられている。
【0029】
空洞部20の開口周縁部20aの頂部20bよりも内側領域である内周面20fに、段部20cが設けられていることにより、空洞部20に充填された2次樹脂22の、把持部11の表裏間の厚さ方向の厚みを、空洞部20の開口周縁部20aから内方に向けて徐々に増すようにすることが可能になる。これによって、2次樹脂22の収縮時に生じるひずみを軽減して、開口周縁部20aの頂部20b付近を覆う部分の2次樹脂22に、応力が集中するのを緩和することにより、当該頂部20b付近を覆う部分の2次樹脂22に亀裂や割れが生じるのを、効果的に回避することが可能になる。
【0030】
また、頂部20bと段部20c、又は隣接する段部20cの間の連絡面部20dが、傾斜した面となっていることにより、2次樹脂22の収縮時に生じるひずみを分散して、開口周縁部20aの頂部20b付近を覆う部分の2次樹脂22に応力が集中するのを、さらに効果的に緩和することが可能になると共に、2次樹脂22が、開口周縁部20aの頂部20bを超えて、1次樹脂21による歯ブラシ本体15の表面の覆う長さを、低減することが可能になる。
【0031】
これらによって、本第1実施形態の発明の歯ブラシ10によれば、2色成形によって空洞部20に2次樹脂22が充填された歯ブラシ本体15を形成する際に、2次樹脂22の周縁部分に、隙間や亀裂を生じるのを効果的に回避することが可能になる。
【0032】
図8は、本発明の好ましい第2実施形態に係る歯ブラシ10’の要部を示すものである。本第2実施形態の歯ブラシ10’では、2次樹脂22は、柄部13の把持部11に設けられた空洞部20’の表裏の各々の開口周縁部20a’おいて、開口周縁部20a’の頂部20b’を超えることなく、開口周縁部20a’を覆って設けられている。この点が、2次樹脂22が開口周縁部20aの頂部20bを超えて設けられている上記第1実施形態の歯ブラシ10と相違している。その他の部分については、上記第1実施形態の歯ブラシ10と略同様の構成を備えている。本第2実施形態の歯ブラシ10’では、上記第1実施形態の歯ブラシ10と異なる構成部分について主として説明しており、同様の構成部分については同一の符号を付して説明を省略している。特に言及しない構成部分については、上記第1実施形態の歯ブラシ10に関する説明が適宜適用される。
【0033】
そして、本第2実施形態の歯ブラシ10’は、図1図5に示すように、毛束18が植設される複数の植毛孔16が形成されている植毛台14と、植毛台14に連続して設けられた柄部13とを含む歯ブラシ本体15を有する歯ブラシであって、柄部13には、柄部13の把持部11の表裏を貫通して設けられた空洞部20’に、歯ブラシ本体15を形成する1次樹脂21とは異なる材質の2次樹脂22が、2色成形時に充填されて、柄部13の表側表面及び裏側表面に表出している。2次樹脂22は、図8に拡大して示すように、柄部13における空洞部20’の表裏の各々の開口周縁部20a’において、こられの開口周縁部20a’の頂部20b’を超えることなく開口周縁部20a’を覆って設けられており、柄部13における空洞部20’の表裏の各々の開口周縁部20a’には、これらの開口周縁部20a’の頂部20b’よりも内側領域に、空洞部20’の内方に向けて柄部13の厚さ方向の中央部側に傾斜する傾斜面部20c’が設けられている。
【0034】
本第2実施形態では、空洞部20’の開口周縁部20a’の頂部20b’よりも内側領域に設けられた傾斜面部20c’は、把持部11の表裏間の厚さ方向の面Pに対して、例えば30~60度の傾斜角度θ’で傾斜していることが好ましく、35~55度の傾斜角度θ’で傾斜していることがさらに好ましい。また、傾斜面部20c’は、開口周縁部20a’の頂部20b’における接線方向Sに対して、90±20度の角度で傾斜していることが好ましい。
【0035】
空洞部20’の開口周縁部20a’の頂部20b’よりも内側領域に、傾斜面部20c’が設けられていることにより、開口周縁部20a’の頂部20b’を超えることなく開口周縁部20a’を覆って空洞部20’に充填された2次樹脂22は、硬化時に傾斜面部20c’に沿って収縮して行くことになるので、2次樹脂22と空洞部20’の内周面20f’との密着性を高めて、硬化した2次樹脂22と空洞部20’の内周面20f’との間に隙間が生じるのを、効果的に回避することが可能になる。また、2次樹脂22が傾斜面部20c’に沿って一体的に収縮して行くことで、開口周縁部20a’の頂部20b’を超えることなく開口周縁部20a’を覆って空洞部20’に充填された2次樹脂22に、ひずみが生じるのを、効果的に回避することが可能になる。さらに、傾斜面部20c’が、開口周縁部20a’の頂部20b’における接線方向Sに対して、90±20度の角度で傾斜していることにより、2次樹脂の中心方向へのスムーズな収縮を促し、歪みの発生を最小限に抑えることが可能になる。
【0036】
また、本第2実施形態では、図9に示すように、空洞部20’の開口周縁部20a’の頂部20b’よりも内側領域に設けられた傾斜面部を、凸状に湾曲しながら傾斜する湾曲傾斜面部20c”とすることもできる。湾曲傾斜面部20c”の曲率半径は、例えば0.3~3mmとすることが好ましく、0.5~2mmとすることがさらに好ましい。空洞部20’の開口周縁部20a’の頂部20b’よりも内側領域に、湾曲傾斜面部20c”が設けられていることにより、収縮時の隙間の発生を抑えつつ、2次樹脂の中心方向へのスムーズな収縮を促し、歪みの発生を最小限に抑えることが可能になる。
【0037】
これらによって、本第2実施形態の発明の歯ブラシ10’によっても、2色成形によって空洞部20’に2次樹脂22が充填された歯ブラシ本体15を形成する際に、2次樹脂22の周縁部分に、隙間や亀裂を生じるのを効果的に回避することが可能になる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、2色成形時に2次樹脂が充填される、柄部の表裏を貫通して設けられた空洞部は、柄部の把持部に設けられている必要は必ずしも無く、柄部のネック部等に設けられていても良い。空洞部は、柄部の複数箇所に設けられていても良い。柄部の表裏を貫通して設けられた空洞部は、表側の面の開口形状と裏側の面の開口形状とが異なっていても良い。
【符号の説明】
【0039】
10,10’ 歯ブラシ
11 把持部
12 ネック部
13 柄部
14 植毛台
14a 植毛面
15 歯ブラシ本体
16 植毛孔
17 ブリッスル
18 毛束
19 指当てマーキング部
20,20’ 空洞部
20a,20a’ 開口周縁部
20b,20b’ 頂部
20c 段部
20c’ 傾斜面部
20c” 湾曲傾斜面部
20d 連絡面部
20e 凸曲面
20f,20f’ 内周面
21 1次樹脂
22 2次樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9