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特許7203890被処理木材の乾燥脱水方法及び木質ペレットの製造方法
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  • 特許-被処理木材の乾燥脱水方法及び木質ペレットの製造方法 図1
  • 特許-被処理木材の乾燥脱水方法及び木質ペレットの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】被処理木材の乾燥脱水方法及び木質ペレットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10L 5/44 20060101AFI20230105BHJP
   B27L 11/00 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
C10L5/44
B27L11/00 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021072936
(22)【出願日】2021-04-22
(65)【公開番号】P2022167251
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2021-04-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507052429
【氏名又は名称】ジェイパワー・エンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100163120
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 嘉弘
(72)【発明者】
【氏名】軽部 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】大村 歩
(72)【発明者】
【氏名】荒木 泰三
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-173830(JP,A)
【文献】特開2008-013738(JP,A)
【文献】特表2006-518396(JP,A)
【文献】特開2007-147251(JP,A)
【文献】特公昭57-016159(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 5/44
B27L 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理木材を切削して得られる含水率が45~55質量%の生チップを80~150℃で加熱乾燥して含水率が湿量基準で20~25質量%である乾燥チップを得る加熱乾燥工程と、
前記乾燥チップを粉砕するとともに機械的脱水することにより、含水率が湿量基準で5質量%以上20質量%未満である乾燥粉砕物を得る機械的脱水工程と、
前記乾燥粉砕物を造粒してペレット化する造粒工程と、
を含むことを特徴とする木質ペレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理木材の乾燥方法及び木質ペレットの製造方法に関する。特に、被処理木材を2段階で乾燥脱水させることにより、その含水率を効率的に低下させることができる被処理木材の乾燥脱水方法及び木質ペレットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木質ペレットは、林地残材や製材時に発生する端材、間伐材等の未利用木質資源を顆粒状に破砕し、それを直径6~8mm、長さ5~40mm程度の円筒形に圧縮成形した固形燃料である。木質ペレットは燃焼によって二酸化炭素を発生するが、化石燃料の燃焼とは異なり炭素循環の枠内でその総量を増加させるものではないため、統計上は排出しないものとして取り扱うことができる。そのため、例えば火力発電所から排出される化石燃料由来の二酸化炭素排出量の低減を図るために、木質ペレット等のバイオマス燃料を混焼するニーズが高まっている。
【0003】
石炭ボイラを用いて木質ペレットを混焼する場合、着火性・燃焼性を高め、未燃残分を抑制するためには、ペレットを構成する木粉の粒度を小さくすることが有効である。具体的には、ISO 17225-2に定義されるI2クラスの粒度とすることが有効である。石炭ボイラには、石炭を粉砕するための石炭ミルが設置されるが、この石炭ミルは造粒された木質ペレットを造粒前の状態に戻すことは可能であっても、木質ペレットを構成する木粉の粒度をさらに小さくする効果は期待できない。そのため、木質ペレットの製造時に、ペレットを構成する木粉の粒度を十分に小さくしておくことが求められる。
【0004】
従来の木質ペレットの製造方法は以下のとおりである。
先ず、生木を切削してチップ化し、生チップを得る。次に、この生チップを粉砕及び乾燥(粉砕と乾燥の順序は任意)して乾燥粉砕物を得、次いで、この乾燥粉砕物を造粒することにより、木質ペレットを製造することができる。
一般的に粉砕時には、粉砕機の粉砕室出口に所定目開きの金属製スクリーンを設けて、所定の粒度になるまで粉砕室内に生チップを滞留させて粉砕されるが、金属製スクリーンに目詰まりが生じ易く、粉砕を継続的に行う事が困難である。特に、木材は含水率が高い場合には粉砕時に綿状となり易く、膨張する傾向にあるため、含水率が高い生木を原料とする場合には、金属製スクリーンに目詰まりが生じ易くなる。
乾燥は、一般的に、生チップに燃料燃焼排ガスを接触させることにより行われる。乾燥粉砕物の造粒に適した含水率は、通常、10~15質量%であり、この含水率に到達するまでに長時間を要している。
【0005】
特許文献1には、粉砕後の木質原料を圧縮しながら脱水させ、所定の温度(80~170℃)で棒状物として押出成形し、所望な長さに切断することを特徴とする木質ペレットの製造方法が開示されている。この製造方法は、間伐材を粉砕した後の乾燥処理されていない含水率30%超のおが屑等の木質原料を原料としている。即ち、含水率30%超の状態の木材を予め粉砕しておく必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-226720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の方法による木質ペレットの製造方法は以下の問題を有している。
先ず、加熱乾燥によって被乾燥木材の含水率を10~15質量%に到達させるまでに長時間を要する。
次に、生チップの粉砕工程において、1段階の粉砕処理で所期の粒度に到達させることが困難であり、多段階の粉砕を行う必要がある。
さらには、粉砕機の金属製スクリーンに目詰まりが生じ易く、粉砕を継続的に行う事が困難である。
また、燃料燃焼排ガスを熱源とする乾燥機は、火の粉が燃料燃焼排ガスに同伴して乾燥機内に侵入し、木質原料に着火して火災を引き起こす恐れがある。
【0008】
本発明の課題は、これらの問題の一部又は全部が解決された、被処理木材の効率的な乾燥方法、及び当該乾燥方法を用いる木質ペレットの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
被処理木材を切削して得られる生チップを加熱乾燥する場合、含水率が20~25質量%に到達するまでは、乾燥時間に比例して含水率が低下する(以下、「定率乾燥期間」ともいう)が、含水率が20~25質量%に到達した後には乾燥効率が著しく低下し、乾燥時間に比例して含水率が低下しなくなる(以下、「減率乾燥期間」ともいう)。
図1は、生チップの加熱乾燥時における乾燥時間と含水率との関係を示す一般的なグラフである。図1中、乾燥時間0~Iの区間は材料予熱期間であり、I~IIの区間は定率乾燥期間であり、II~IIIの区間は減率乾燥期間である。乾燥時間IIにおける材料の含水率は20~25質量%である。
このような定率乾燥期間と減率乾燥期間とが生じる理由は、含水率が20~25質量%に到達するまでは、自由水とよばれる被処理木材の細胞内や細胞間の水分が表面に浸み出して順次蒸発していくのに対して、含水率が20~25質量%に到達した後には、結合水とよばれる被処理木材の細胞壁や繊維などと化学的に結合し残存している水分が表面に浸み出し難く、蒸発し難いためと推定される。そのため、この減率乾燥期間においては、乾燥効率が低く、加熱乾燥に長時間を要する。そこで、この減率乾燥期間における加熱乾燥を機械的脱水に置き換えて、細孔内の水分を機械的に離脱させるか、細孔内の水分を表面に露出させて離脱し易い状態とすることにより、効率的に水分を除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、第1の本発明は、
〔1〕 被処理木材を切削して得られる生チップを加熱乾燥して含水率が湿量基準で20~25質量%である乾燥チップを得る加熱乾燥工程と、
前記乾燥チップを粉砕するとともに機械的脱水することにより、含水率が湿量基準で20質量%未満である乾燥粉砕物を得る機械的脱水工程と、
を含むことを特徴とする被処理木材の乾燥脱水方法である。
【0011】
第1の本発明においては、
〔2〕 前記粉砕が、スクリーンを有さない衝撃式粉砕機を用いる粉砕であり、前記機械的脱水が、風力分級器を用いる脱水であることが好ましく、
〔3〕 前記加熱乾燥が、100℃以下の温風で行われる加熱乾燥であることが好ましい。
【0012】
第2の本発明は、
〔4〕 被処理木材を切削して得られる生チップを加熱乾燥して含水率が20~25質量%(湿量基準)である乾燥チップを得る加熱乾燥工程と、
前記乾燥チップを粉砕するとともに機械的脱水することにより、含水率が20質量%(湿量基準)未満である乾燥粉砕物を得る機械的脱水工程と、
前記乾燥粉砕物を造粒してペレット化する造粒工程と、
を含むことを特徴とする木質ペレットの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被処理木材を効率的に乾燥できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、生チップの加熱乾燥時における乾燥時間と含水率との関係を示す一般的なグラフである。
図2図2は、本発明の木質ペレットの製造方法を示すフロー図である。
図3図3は、乾燥チップを粉砕するとともに機械的脱水する装置の構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。本明細書における含水率は、特に示した場合を除き湿量基準の含水率を意味する。
【0016】
本発明は、被処理木材を切削して得られる生チップを加熱乾燥して含水率が20~25質量%である乾燥チップを得る加熱乾燥工程と、
前記乾燥チップを粉砕するとともに機械的脱水することにより、含水率が20質量%未満である乾燥粉砕物を得る機械的脱水工程と、
を含むことを特徴とする被処理木材の乾燥脱水方法である。
【0017】
先ず、間伐材等の被処理木材を切削して生チップを得る。この方法は公知の方法で行うことができる。例えば、間伐材を一辺が数cm~十数cmに切断して生チップを得る。樹種にもよるが、通常、生チップの含水率は45~55質量%である。
【0018】
次に、この生チップを加熱乾燥することにより、含水率が20~25質量%である乾燥チップを得る。この加熱乾燥工程は、主として、乾燥時間に比例して含水率が低下する定率乾燥期間の範囲で行われる。即ち、定率乾燥期間の終期における含水率は樹種や生チップの形状によって変動するが、概ね20~25質量%である。加熱乾燥の終了は、定率乾燥期間の終期であることが好ましい。定率乾燥期間の終期は、加熱時間に対する含水率の低下割合を計測することにより判断できる。例えば、乾燥効率が10%以上低下した場合に、定率乾燥期間の終期と判断することができる。
【0019】
乾燥方法としては、バンド式乾燥機やキルン式乾燥機を用いる連続的な乾燥方法が例示される。
乾燥温度としては、特に限定されないが、木材の自然発火温度未満の温風であることが好ましく、150℃以下の温風であることが好ましく、120℃以下の温風であることがより好ましく、100℃以下の温風であることが特に好ましい。熱源に燃料燃焼排ガスを直接用いる場合は、火の粉が同伴して乾燥機内に侵入し、火災等の危険が生じるため好ましくない。例えば、蒸気や温水を熱源とする温風を用いることが好ましい。乾燥温度の下限は特に限定されないが、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上が特に好ましい。
【0020】
次に、この乾燥チップを粉砕して機械的脱水することにより、含水率が20質量%未満である乾燥粉砕物を得る。
【0021】
粉砕としては、衝撃式粉砕機を用いて行う粉砕が例示される。これらの粉砕機は、乾燥チップの粒度が所定の範囲となるまで粉砕機の粉砕室内に滞留させるためのスクリーンを有さないことが好ましい。
【0022】
粉砕時の温度は特に限定されないが、通常は室温であり、粉砕時の摩擦熱等による温度上昇は許容されるが、積極的に加熱することを要さない。この点で、前述の加熱乾燥工程とは明確に異なる。
【0023】
乾燥粉砕物の粒度は、篩下粒度積算値D50が1mm以下であることが好ましく、篩下粒度積算値D90が2mm以下であることが好ましく、篩下粒度積算値D98が3.15mm以下であることが好ましい。即ち、ISO 17225-2に定義されるI2クラスの粒度以下となるまで粉砕することが好ましい。
【0024】
機械的脱水としては、乾燥チップを上記のように粉砕機によって粉砕した後に、風力分級する方法が例示される。粉砕により、乾燥チップは粉砕機のハンマーと機械的に衝突し、所期の粒径を有する粉砕物と、所期の粒径に達しない未達粉砕物と、水分のミストと、が生成される。即ち、粉砕により、乾燥チップの内部に包含されていた水分が露出し、乾燥チップから離脱してミストとなる。この水分(ミスト)は、風力分級によって除去され、乾燥粉砕物が得られる。所期の粒径に達しない未達粉砕物は、粉砕機で再粉砕される。
【0025】
乾燥粉砕物の含水率は、20質量%未満であり、18質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。乾燥粉砕物の含水率の下限は特に限定されないが、5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。水分は木質ペレットとする際の造粒工程で潤滑剤の役割を担うため、含水率が低すぎると目詰まり等の不具合を生じる場合がある。
【0026】
風力分級器は、サイクロンセパレータのみで構成しても良いし、他の気流分級器や回転式分級器、振動篩等を併用しても良い。サイクロンセパレータや他の気流分級器の旋回流の遠心力を利用して乾燥粉砕物と水分(ミスト)とを分離させることにより、乾燥チップから離脱した水分が除去されるとともに、所定粒度に到達した乾燥粉砕物を回収することができる。また、所定の粒度に達していない未達粉砕物は、分級器で分級されて再度粉砕機内に導入される。風力分級を行うことにより、粉砕機の粉砕室にスクリーンを設ける必要がなくなり、スクリーン目詰まりによる滞留が生じないため、効率的に乾燥できるとともに、粉砕機の粉砕部の摩耗が抑制される。風力分級器は粉砕機と一体となっていても良く、粉砕機外に独立して設けられても良い。
【0027】
図3は、乾燥チップを粉砕するとともに機械的脱水する装置100の構成例を示す説明図である。図3中、11は衝撃式粉砕機であり、輸送機13を介して風力分級器15に接続され、輸送機17を介して衝撃式粉砕機11に戻る循環流路が形成されている。風力分級器15には、サイクロンセパレータ19及びファン21を介して風力分級器15に戻る循環流路が形成されている。
【0028】
図3中、Aは乾燥チップと空気であり、乾燥チップは空気とともに衝撃式粉砕機11内に導入され、ここで粉砕される。粉砕によって、所期の粒度に到達した乾燥粉砕物と、水分(ミスト)と、所期の粒度に到達しなかった乾燥チップ(未達粉砕物)とが生じる。このうち、空気の一部と水分(ミスト)は、符号Bとして衝撃式粉砕機11外に排出され、乾燥粉砕物と乾燥チップ(未達粉砕物)は、空気とともに符号Cとして風力分級器15内に導入される。乾燥粉砕物と乾燥チップ(未達粉砕物)とは、ここで分級され、乾燥粉砕物と水分(ミスト)は、空気とともに符号Dとしてサイクロンセパレータ19に導入される。乾燥チップ(未達粉砕物)は、空気及び水分(ミスト)とともに符号Gとして衝撃式粉砕機11に返送され、ここで再粉砕される。乾燥粉砕物と水分(ミスト)は、サイクロンセパレータ19で分離され、乾燥粉砕物は符号Eとしてサイクロンセパレータ19外に排出され、空気と水分(ミスト)はファン21を通って風力分級器15に返送される。このように乾燥チップから水分(ミスト)が除去されて、含水率が20質量%未満の乾燥粉砕物が得られる。
【0029】
乾燥粉砕物は、公知の方法でペレット化され、木質ペレットが得られる。具体的には、リングダイ方式やフラットダイ式、スクリュー式、押出式等の造粒機を用いて成形される。造粒の際には、公知のバインダ等を添加してもよい。
ペレットの形状は特に限定されず、ボイラ等混焼設備の仕様に合わせて適宜変更できるが、一般的には、直径6~8mm、長さ5~40mm程度の円筒形である。
【符号の説明】
【0030】
100・・・粉砕及び風力分級の装置構成
11・・・衝撃式粉砕機
13・・・粉体輸送機
15・・・風力分級器
17・・・粉体輸送機
19・・・サイクロンセパレータ
21・・・ファン
A・・・乾燥チップ+空気
B・・・空気+水分(ミスト)
C・・・乾燥粉砕物+乾燥チップ(未達粉砕物)+空気+水分(ミスト)
D・・・乾燥粉砕物+空気+水分(ミスト)
E・・・乾燥粉砕物
F・・・空気+水分(ミスト)
G・・・乾燥チップ(未達粉砕物)+空気+水分(ミスト)

図1
図2
図3