(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】樹脂成形用成形型、樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20230105BHJP
B29C 33/10 20060101ALI20230105BHJP
B29C 45/02 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C33/10
B29C45/02
(21)【出願番号】P 2021170709
(22)【出願日】2021-10-19
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】阪口 寛幸
(72)【発明者】
【氏名】築山 誠
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-128805(JP,A)
【文献】特開平08-244074(JP,A)
【文献】特許第6837530(JP,B1)
【文献】特開2012-204697(JP,A)
【文献】特開2003-174052(JP,A)
【文献】特開2008-004570(JP,A)
【文献】特開2001-326238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 45/00-45/84
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が装着された成形対象物を保持する第1型と、
前記第1型と型締めされるものであり、キャビティを有する第2型とを有し、
前記第2型は、
前記キャビティの底面に形成された樹脂注入口に連通するとともに樹脂材料を収容するポットと、
前記ポット内を進退移動して、前記樹脂注入口から前記キャビティに前記樹脂材料を注入する注入プランジャと、
前記キャビティの底面に形成された排出口に連通するとともに前記キャビティから流出する前記樹脂材料を収容する樹脂溜まり部と、
前記樹脂溜まり部に接続され、前記樹脂溜まり部を介して前記排出口から空気を吸引するための吸引孔と、
前記樹脂溜まり部内を進退移動して、前記吸引孔が前記排出口と連通した状態と遮断された状態とを切り替える切替プランジャとを備え、
1つの前記キャビティに対して前記排出口が複数形成されており、複数の前記排出口は、樹脂排出路によって前記樹脂溜まり部に接続されている、樹脂成形用成形型。
【請求項2】
前記樹脂溜まり部が
1つの前記キャビティ
に対して複数設けられており、
複数の前記樹脂溜まり部
の何れかに前記吸引孔が接続され、
複数の前記樹脂溜まり部が第2樹脂排出路により互いに接続されている、請求項1に記載の樹脂成形用成形型。
【請求項3】
前記樹脂注入口及び前記排出口は、前記キャビティの底面の外周部に形成され、前記キャビティの底面の中心に対して対称となる位置に形成されている、請求項1又は2に記載の樹脂成形用成形型。
【請求項4】
前記注入プランジャ及び前記切替プランジャは、互いに連動して進退移動する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の樹脂成形用成形型。
【請求項5】
前記切替プランジャは、前記注入プランジャの前記樹脂材料の注入動作に連動して、前記吸引孔を前記排出口に連通させた状態から遮断した状態に切り替わり、その後、前記注入プランジャとともに前記キャビティ内の前記樹脂材料を押圧する状態に切り替わる、請求項1乃至4の何れか一項に記載の樹脂成形用成形型。
【請求項6】
前記第2型は、
前記キャビティを有し、前記樹脂注入口及び前記排出口が形成された中間プレートと、
前記ポット、前記樹脂溜まり部及び前記吸引孔が形成された下プレートとを有する、請求項1乃至5の何れか一項に記載の樹脂成形用成形型。
【請求項7】
前記樹脂注入口が複数形成されており、複数の前記樹脂注入口は、樹脂供給路によって前記ポットに接続されている、請求項1乃至6の何れか一項に記載の樹脂成形用成形型。
【請求項8】
前記ポットを複数備えており、複数の前記ポットは、樹脂供給路によって前記樹脂注入口に接続されている、請求項1乃至7の何れか一項に記載の樹脂成形用成形型。
【請求項9】
電子部品が装着された成形対象物を保持する第1型と、
前記第1型と型締めされるものであり、キャビティを有する第2型とを有し、
前記第2型は、
前記キャビティの底面に形成された樹脂注入口に連通するとともに樹脂材料を収容するポットと、
前記ポット内を進退移動して、前記樹脂注入口から前記キャビティに前記樹脂材料を注入する注入プランジャと、
前記キャビティの底面に形成された排出口に連通するとともに前記キャビティから流出する前記樹脂材料を収容する樹脂溜まり部と、
前記樹脂溜まり部に接続され、前記樹脂溜まり部を介して前記排出口から空気を吸引するための吸引孔と、
前記樹脂溜まり部内を進退移動して、前記吸引孔が前記排出口と連通した状態と遮断された状態とを切り替える切替プランジャとを備え、
前記排出口が複数形成されており、複数の前記排出口は、樹脂排出路によって前記樹脂溜まり部に接続されており、
前記樹脂溜まり部が前記キャビティの下方において内側と外側とに配置された2つを含み、
外側の前記樹脂溜まり部に前記吸引孔が接続され、外側の前記樹脂溜まり部と内側の前記樹脂溜まり部とが第2樹脂排出路により互いに接続されている、樹脂成形用成形型。
【請求項10】
請求項1乃至
9の何れか一項に記載の樹脂成形用成形型を備えた樹脂成形装置。
【請求項11】
請求項1乃至
9の何れか一項に記載の樹脂成形用成形型を用いた樹脂成形品の製造方法であって、
前記第1型及び前記第2型を型締めする型締め工程と、
前記吸引孔及び前記排出口が連通した状態で、真空ポンプにより前記吸引孔から空気を吸引して前記キャビティを減圧する減圧工程と、
前記注入プランジャを移動させて、前記樹脂材料を前記樹脂注入口から前記キャビティに注入するとともに、前記切替プランジャを移動させて、前記排出口及び前記吸引孔を遮断する樹脂注入工程とを有する、樹脂成形品の製造方法。
【請求項12】
前記型締め工程の前に、前記キャビティの底面を含む内面に、前記注入口及び前記排出口に対応した位置に貫通孔を有する離型フィルムを配置し、型締め時に前記離型フィルムの前記貫通孔の周囲を押圧するとともに、前記貫通孔及び前記キャビティを連通する連通流路を形成する押圧流路部材を配置する、請求項
11に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形用成形型、樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、キャビティの底面から樹脂注入することによって、成形対象物に対して樹脂成形するピンゲート方式(又はピンポイントゲート方式)のトランスファー樹脂成形方法が提案されている。このトランスファー樹脂成形方法において、特許文献2に示すような真空成形を行う場合には、上型及び下型を完全に型締めする前に真空引きすることになる。
【0003】
ここで、上記のピンゲート方式のトランスファー樹脂成形方法において、樹脂を注入するゲート(樹脂注入口)の位置によっては、キャビティ内において樹脂材料の流れる経路が長くなってしまい、未充填やボイド(樹脂成形品に生じる空隙状の欠陥)が生じる懸念がある。
【0004】
これらの懸念を解消するためには、粘度が低い樹脂材料を使用することが考えられる。この場合、上記の真空成形において、上型及び下型を完全に型締めする前に真空引きすると、ポット内の溶融した樹脂材料がゲートからキャビティ内に侵入してしまい、例えば露出すべき面等に溶融した樹脂材料が付着してしまう等の不具合が起こり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-62591号公報
【文献】特開2012-204697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、トランスファー樹脂成形方法において、成形不良を低減することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る樹脂成形用成形型は、成形対象物を保持する第1型と、前記第1型と型締めされるものであり、キャビティを有する第2型とを有し、前記第2型は、前記キャビティの底面に形成された樹脂注入口に連通するとともに樹脂材料を収容するポットと、前記ポット内を進退移動して、前記樹脂注入口から前記キャビティに前記樹脂材料を注入する注入プランジャと、前記キャビティの底面に形成された排出口に連通するとともに前記キャビティから流出する前記樹脂材料を収容する樹脂溜まり部と、前記樹脂溜まり部に接続され、前記樹脂溜まり部を介して前記排出孔から空気を吸引するための吸引孔と、前記樹脂溜まり部内を進退移動して、前記吸引孔が前記排出口と連通した状態と遮断された状態とを切り替える切替プランジャとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成した本発明によれば、トランスファー樹脂成形方法において、成形不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂成形装置の構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】同実施形態の(a)基板の構成を模式的に示す平面図、及び(b)下型の構成を模式的に示す平面図である。
【
図3】同実施形態の押圧流路部材の具体的な構成を模式的に示す(a)平面図、及び(b)斜視図である。
【
図4】同実施形態の型締め時における押圧流路部材の周辺構造を模式的に示す断面図である。
【
図5】同実施形態の樹脂成形品の製造方法を説明するための模式的断面図である。
【
図6】同実施形態の樹脂成形品の製造方法を説明するための模式的断面図である。
【
図7】同実施形態の樹脂成形品の製造方法を説明するための模式的断面図である。
【
図8】同実施形態の樹脂成形品の製造方法を説明するための模式的断面図である。
【
図9】同実施形態の樹脂成形品の製造方法を説明するための模式的断面図である。
【
図10】同実施形態の樹脂成形品の製造方法を説明するための模式的断面図である。
【
図11】変形実施形態の樹脂成形用成形型の構成を模式的に示す断面図である。
【
図12】変形実施形態の下型の構成を模式的に示す平面図である。
【
図13】変形実施形態の樹脂成形用成形型の構成を模式的に示す断面図である。
【
図14】変形実施形態の下型の構成を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0011】
本発明の樹脂成形用成形型は、前述のとおり、成形対象物を保持する第1型と、前記第1型と型締めされるものであり、キャビティを有する第2型とを有し、前記第2型は、前記キャビティの底面に形成された樹脂注入口に連通するとともに樹脂材料を収容するポットと、前記ポット内を進退移動して、前記樹脂注入口から前記キャビティに前記樹脂材料を注入する注入プランジャと、前記キャビティの底面に形成された排出口に連通するとともに前記キャビティから流出する前記樹脂材料を収容する樹脂溜まり部と、前記樹脂溜まり部に接続され、前記樹脂溜まり部を介して前記排出孔から空気を吸引するための吸引孔と、前記樹脂溜まり部内を進退移動して、前記吸引孔が前記排出口と連通した状態と遮断された状態とを切り替える切替プランジャとを備えることを特徴とする。
【0012】
この樹脂成形用成形型であれば、第2型のキャビティの底面に排出口を形成し、この排出口に連通する樹脂溜まり部を設けているので、樹脂注入時にキャビティに残っている空気を樹脂溜まり部に押し流すことができ、樹脂成形品における未充填又はボイドの発生等の成形不良を低減することができる。
また、樹脂溜まり部にキャビティ内の空気を吸引する吸引孔を接続しているので、第1型及び第2型を型締めした状態で、キャビティの内部を真空引きして減圧することができる。その結果、仮に真空引きによって樹脂注入口から溶融した樹脂材料がキャビティ内に侵入しても、型締めした状態であるため、意図しない部分に溶融した樹脂材料が付着する等の不具合が抑制される。その結果、樹脂成形品の不良を低減することができる。例えば、成形対象物に配置されたチップの表面を露出させる露出トランスファー形成においては、成形対象物のチップの露出すべき面を保護した状態で、キャビティの内部を真空引きして減圧することができ、チップの露出すべき面に溶融した樹脂材料が付着する(チップフラッシュ)等の不具合が抑制される。
さらに、樹脂溜まり部に接続された吸引孔が排出口と連通した状態と遮断された状態とを切替プランジャによって切り替えているので、吸引孔を通じてその下流側の吸引経路に樹脂材料が流出することを防止することができる。
【0013】
キャビティ内において樹脂材料を満遍なく行き渡らせることによって成形不良を低減するためには、前記樹脂注入口及び前記排出口は、前記キャビティの底面の外周部に形成され、前記キャビティの底面の中心に対して対称となる位置に形成されていることが望ましい。
【0014】
注入プランジャによる樹脂材料の注入動作と切替プランジャによる切替動作とを連動させるためには、前記注入プランジャ及び前記切替プランジャは、互いに連動して進退移動することが望ましい。
【0015】
具体的な実施の態様としては、前記切替プランジャは、前記注入プランジャの前記樹脂材料の注入動作に連動して、前記吸引孔を前記排出口に連通させた状態から遮断した状態に切り替わり、その後、前記注入プランジャとともに前記キャビティ内の前記樹脂材料を押圧する状態に切り替わることが望ましい。ここで、切替プランジャが注入プランジャとともにキャビティ内の樹脂材料を押圧することによって、樹脂成形品の未充填又はボイドをより一層低減することができる。
【0016】
第2型の具体的な実施の態様としては、前記第2型は、前記キャビティを有し、前記樹脂注入口及び前記排出口が形成された中間プレートと、前記ポット、前記樹脂溜まり部及び前記吸引孔が形成された下プレートとを有することが望ましい。このように中間プレートと下型とに分けることによって、成形対象物の種類に合わせて、種々の第2型を構成することができる。
【0017】
成形対象物の種類に応じて好適に樹脂成形できるようにするためには、前記樹脂注入口が複数形成されており、複数の前記樹脂注入口は、樹脂供給路によって前記ポットに接続され、又は、前記排出口が複数形成されており、複数の前記排出口は、樹脂排出路によって前記樹脂溜まり部に接続されていることが望ましい。
【0018】
成形対象物に成形される樹脂の厚みを厚くしたり、サイズの大きい成形対象物を樹脂成形したりするためには、注入する樹脂材料を増量する必要がある。このためには、前記ポットを複数備えており、複数の前記ポットは、樹脂供給路によって前記樹脂注入口に接続されていることが望ましい。また、成形対象物の品質を改善するためには、前記樹脂溜まり部を複数備えており、複数の前記樹脂溜まり部は、樹脂排出路によって前記排出口に接続されていることが望ましい。
【0019】
また、上述した樹脂成形用成形型を備えた樹脂成形装置も本発明の一態様である。
【0020】
さらに、上述した樹脂成形用成形型を用いた樹脂成形品の製造方法も本発明の一態様である。具体的に本発明の樹脂成形品の製造方法は、上述した樹脂成形用成形型を用いた樹脂成形品の製造方法であって、前記第1型及び前記第2型を型締めする型締め工程と、前記吸引孔及び前記排出口が連通した状態で、真空ポンプにより前記吸引孔から空気を吸引して前記キャビティを減圧する減圧工程と、前記注入プランジャを移動させて、前記樹脂材料を前記樹脂注入口から前記キャビティに注入するとともに、前記切替プランジャを移動させて、前記排出口及び前記吸引孔を遮断する樹脂注入工程とを有することを特徴とする。
【0021】
前記型締め工程の前に、前記キャビティの底面を含む内面に、前記注入口及び前記排出口に対応した位置に貫通孔を有する離型フィルムを配置し、型締め時に前記離型フィルムの前記貫通孔の周囲を押圧するとともに、前記貫通孔及び前記キャビティを連通する連通流路を形成する押圧流路部材を配置することが望ましい。
この構成であれば、キャビティから樹脂成形品を外れやすくして、離型の際の樹脂成形品の損傷を防止することができる。また、離型フィルムの貫通孔の周囲を押圧流路部材で押圧しているので、離型フィルムとキャビティの底面との隙間に溶融した樹脂材料が侵入することを防止できる。また、押圧流路部材には、離型フィルムの貫通孔をキャビティに連通する連通流路が形成されているので、溶融した樹脂材料が樹脂注入口から排出口に至るまでの流動を妨げることもない。
【0022】
<本発明の各実施形態>
以下に、本発明に係る樹脂成形装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0023】
<樹脂成形装置の全体構成>
本実施形態の樹脂成形装置100は、
図1に示すように、ピンゲート方式のトランスファーモールド法を使用した樹脂成形装置である。この樹脂成形装置100は、例えば、成形対象物として半導体チップ等の電子部品(以下、チップW1ともいう。)が装着された基板Wを樹脂成形するものであり、樹脂材料Rとして円柱状をなすタブレット状の熱硬化性樹脂を使用するものである。
【0024】
ここで、「基板」としては、シリコンウェーハ等の半導体基板、リードフレーム、プリント配線基板、金属製基板、樹脂製基板、ガラス製基板、セラミック製基板等を挙げることができる。また、基板Wは、FOWLP(Fan Out Wsfer Level Packaging)、FOPLP(Fan Out Panel Level Packaging)に用いられるキャリアであってもよい。さらにいえば、配線がすでに施されているものでもよいし、未配線のものでも構わない。
【0025】
本実施形態では、基板Wは、
図2(a)に示すように、平面視で、例えば円形状をなすものであり、その表面Waには、縦横にそれぞれ等ピッチで、平面視矩形状をなす複数の同一のチップW1が突出するように配置されている。この基板Wは、樹脂成形後、チップW1ごとに切断され個片化されるが、例えば、FOWLP又はFOPLP等に用いられるのであれば、基板Wは、成形後、個片化されることなく封止樹脂から分離されてもよい。なお、基板Wは、平面視において矩形状をなすもの等、種々の形状をなすものであっても良い。
【0026】
具体的に樹脂成形装置100は、
図1に示すように、第1型である上型2及び第2型である下型3を有する樹脂成形用成形型10と、この樹脂成形用成形型10(上型2及び下型3)を型締めする型締め機構4とを備えている。
【0027】
上型2は、上部固定盤41の下面に固定されており、下型3は、可動盤42の上面に固定されている。型締め機構4は、可動盤42を上下移動させることによって、上型2及び下型3を型締め又は型開きするものである。なお、型締め機構4としては、サーボモータ等の回転を直線移動に変換するボールねじ機構を用いて可動盤42に伝達する直動方式のものや、サーボモータ等の動力源を例えばトグルリンクなどのリンク機構を用いて可動盤42に伝達するリンク方式のものを用いることができる。
【0028】
<樹脂成形用成形型10>
具体的に樹脂成形用成形型10は、上述したように、
図1に示すように、基板Wを保持する上型2と、キャビティ3Cを有する下型3とを有している。
【0029】
上型2は、基板Wを吸着して保持するものであり、上型2の下面(下型3に対向する対向面)には、複数の吸着孔(不図示)が設けられている。そして、これら吸着孔を、例えば真空ポンプなどによって負圧にすることにより、上型2は基板Wの裏面を吸着して保持する。この上型2には、図示しない搬送機構(ローダ)により基板Wが搬送される。その他、上型2には、ヒータ等の加熱部(不図示)が埋め込まれており、この加熱部により上型2は、樹脂成形時において通常は180℃程度に加熱されている。
【0030】
下型3は、型締め時に上型2に保持された基板WのチップW1を収容するキャビティ3Cを有している。このキャビティ3Cは、
図2(b)に示すように、基板Wよりも一回り小さな輪郭を有するものである。本実施形態では、キャビティ3Cの深さ寸法を、チップW1の厚み寸法と略等しくしている。これにより、型締め時において、チップW1の頂面が、キャビティ3Cの底面3Ca、又は、離型フィルム5がある場合には離型フィルム5に密接するように設定してある(
図4及び
図7参照)。このことにより、チップW1の頂面には樹脂材料Rが回らず、チップW1の側周面のみが樹脂材料Rで被覆される。したがって、樹脂成形後、チップW1の頂面は露出する。なお、ここで、チップW1の「頂面」とは、基板Wとは反対側の面であって、樹脂成形時の離型フィルム5側の面のことである。
【0031】
そして、型締め時においては、キャビティ3Cの周辺部が、基板表面Waの周縁部に密着し、キャビティ3Cの上部開口が基板Wによって閉じられるとともに、基板WのチップW1がキャビティ3C内に収容されるように構成してある(
図4及び
図7参照)。
【0032】
本実施形態の下型3は、
図1に示すように、下プレート3aと、当該下プレート3aの上面に離接可能に取り付けられた中間プレート3bとを備えている。そして、中間プレート3bの上面(上型2に対向する対向面)に、上記のキャビティ3Cが形成されている、また、中間プレート3bは、図示しないリフトアップ機構により、下プレート3aの上面から持ち上げられるようにも構成してある。
【0033】
また、本実施形態の下型3は、
図1に示すように、キャビティ3Cの底面3Caに形成された樹脂注入口3h1に連通するとともに樹脂材料Rを収容するポット31と、ポット31内を進退移動して、樹脂注入口3h1からキャビティ3Cに樹脂材料Rを注入する注入プランジャ32と、キャビティ3Cの底面3Caに形成された排出口3h2に連通するとともにキャビティ3Cから流出する樹脂材料Rを収容する樹脂溜まり部33と、樹脂溜まり部33に接続され、樹脂溜まり部33を介して排出口3h2から空気を吸引するための吸引孔34と、樹脂溜まり部33内を進退移動して、吸引孔34が排出口3h2と連通した状態と遮断された状態とを切り替える切替プランジャ35とを備えている。
【0034】
そして、下プレート3aにポット31、樹脂溜まり部33及び吸引孔34が形成されており、中間プレート3bに樹脂注入口3h1及び排出口3h2が形成されている。
【0035】
下プレート3aには、下プレート3aの厚み方向に貫通する2つの貫通孔H1、H2が形成されており、一方の貫通孔H1が樹脂材料Rを収容するポット31となり、他方の貫通孔H2がキャビティ3Cから流出した樹脂材料Rを収容する樹脂溜まり部33となる。ここで、ポット31及び樹脂溜まり部33を構成する貫通孔H1、H2は何れも、下プレート3aの厚み方向に亘って断面が同一径の円形状をなすものである。なお、下プレート3aのポット31には、図示しない樹脂材料搬送機構により樹脂材料Rが搬送されて投入される。その他、下プレート3aには、ヒータ等の加熱部(不図示)が埋め込まれており、この加熱部により下プレート3aは、樹脂成形時において通常は180℃程度に加熱されている。
【0036】
そして、下プレート3aにおいて、樹脂溜まり部33には、外部の真空ポンプ等の吸引機構(不図示)により真空引きするための吸引孔34が接続されている。この吸引孔34の一端は、樹脂溜まり部33の内側周面に開口しており、他端は下プレート3aの側面に開口している。
【0037】
中間プレート3bには、キャビティ3Cの内側周面を形成する側面部材36が設けられており、当該側面部材36は、弾性部材37により昇降移動可能に支持されている。中間プレート3bの上面において、側面部材36よりも内側に位置する面が、キャビティ3Cの底面3Caとなる。なお、側面部材36の上面が、キャビティ3Cの周辺部となり、型締め時において、基板表面Waの周縁部に密着し、又は、離型フィルム5がある場合には離型フィルム5を介して周縁部に密着する。
【0038】
また、中間プレート3bには、ポット31から押し出される樹脂材料Rが流れる第1流路3p1が形成されており、当該第1流路3p1は、ポット31から押し出される樹脂材料Rが導入できる位置に形成されている。この第1流路3p1は、中間プレート3bを厚み方向に貫通してキャビティ3Cの底面3Caに開口しており、当該開口が樹脂注入口3h1となる。本実施形態の第1流路3p1は、キャビティ3Cの底面3Caに向かって先細りとなる断面円形状のものである。
【0039】
さらに、中間プレート3bには、キャビティ3Cから流出する樹脂材料Rが流れる第2流路3p2が形成されており、当該第2流路3p2は、キャビティ3Cから流出する樹脂材料Rを樹脂溜まり部33に導入できる位置に形成されている。この第2流路3p2は、中間プレート3bを厚み方向に貫通してキャビティ3Cの底面3Caに開口しており、当該開口が排出口3h2となる。本実施形態の第2流路3p2は、第1流路3p1と同様に、キャビティ3Cの底面3Caに向かって先細りとなる断面円形状のものである。
【0040】
ここで、樹脂注入口3h1及び排出口3h2は、
図2(b)に示すように、キャビティ3Cの底面3Caの外周部に形成されるとともに、キャビティ3Cの底面3Caの中心3xに対して対称となる位置に形成されている。本実施形態では、樹脂注入口3h1及び排出口3h2は、キャビティ3Cの底面3Caにおいて、基板Wのチップ搭載領域の外側に対向する部分に形成されるとともに、キャビティ3Cの底面3Caの中心3xに対して対称となる位置に形成されている。なお、樹脂注入口3h1の開口径は、排出口3h2の開口径と同じ又は大きくしている。
【0041】
注入プランジャ32は、
図1に示すように、ポット31を構成する貫通孔H1の下端部から挿入されており、プランジャ駆動部38により進退移動(昇降移動)する。この注入プランジャ32は、その外径がポット31の内径と等しくなるように設定した円柱状をなすものであり、ポット31に摺動可能にガタなく(ほぼ隙間がない状態で)嵌合する。なお、プランジャ駆動部38は、例えば、サーボモータとボールねじ機構とを組み合わせたものや、エアシリンダや油圧シリンダとロッドとを組み合わせたもの等を用いることができる。
【0042】
切替プランジャ35は、樹脂溜まり部33を構成する貫通孔H2の下端部から挿入されており、プランジャ駆動部38により進退移動(昇降移動)する。この切替プランジャ35は、その外径が樹脂溜まり部33の内径と等しくなるように設定した円柱状をなすものであり、樹脂溜まり部33に摺動可能にガタなく嵌合する。この切替プランジャ35は、後述するが、注入プランジャ32によりキャビティ3Cに注入された樹脂材料Rが排出口3h2に到達する前に、吸引孔34を塞いて、排出口3h2と吸引孔34との連通が遮断された状態とする。言い換えれば、吸引孔34は、樹脂材料Rが排出口3h2に到達する前に、切替プランジャ35によって塞がれる位置に形成されている。
【0043】
そして、本実施形態では、注入プランジャ32及び切替プランジャ35が、プランジャ駆動部38によって、互いに連動して進退移動するように構成されている。
【0044】
ここでは、注入プランジャ32及び切替プランジャ35は、共通のベース部材39に設けられることによってユニット化されてプランジャユニット3Uを構成している。このプランジャユニット3Uは、単一のプランジャ駆動部38によって、進退移動可能に構成されており、これにより、注入プランジャ32及び切替プランジャ35は、互いに連動して進退移動する。また、単一のプランジャ駆動部38により、注入プランジャ32及び切替プランジャ35が連動する構成とすることで、装置構成を簡略化することができる。
【0045】
具体的には、切替プランジャ35は、注入プランジャ32による樹脂材料Rの注入前(真空引きの段階)には、排出口3h2と吸引孔34とが連通した状態とする(
図7参照)。また、切替プランジャ35は、注入プランジャ32による樹脂材料Rの注入開始により、注入プランジャ32とともに上昇する。そして、切替プランジャ35は、注入プランジャ32により樹脂材料Rがキャビティ3Cの排出口3h2に到達する前に、樹脂溜まり部33において吸引孔34よりも上側に移動し、吸引孔34を塞ぎ、排出口3h2と吸引孔34との連通を遮断する(
図8参照)。その後も、切替プランジャ35は、注入プランジャ32とともに上昇し、注入プランジャ32とともにキャビティ3C内の樹脂材料Rを押圧する(
図9参照)。
【0046】
<離型フィルム5>
さらにこの樹脂成形装置100は、
図1及び
図4に示すように、離型フィルム5と、離型フィルム5を中間プレート3bの上面に供給するフィルム供給機構(不図示)とを備えている。
【0047】
離型フィルム5は、キャビティ3Cの底面3Caを含む内面に密着して配置されるものである。この離型フィルム5は、キャビティ3Cの内面と注入された樹脂材料Rとの間に介在して、キャビティ3C内で硬化した成形後の樹脂材料Rが、キャビティ3Cから剥がれやすくするものである。その素材等についての説明は既知のため省略する。なお、離型フィルム5は、図示しないフィルム密着機構によりキャビティ3Cの内面に密着される。このフィルム密着機構は、キャビティ3Cの内面及び/又はキャビティ3Cの外側の周囲上面に設けられた複数の吸着孔と、これら吸着孔を負圧にする真空ポンプなどから構成されている。
【0048】
また、本実施形態の離型フィルム5では、キャビティ3Cの底面3Caに形成された樹脂注入口3h1及び排出口3h2を塞がないように構成されている。具体的に離型フィルム5には、樹脂注入口3h1及び排出口3h2に対応する位置に貫通孔5aが形成されている。この貫通孔5aは、樹脂注入口3h1及び排出口3h2の開口径と同一又はそれよりもやや大きい径を有している。
【0049】
<押圧流路部材6>
そして、本実施形態の樹脂成形装置100は、
図1、
図3及び
図4に示すように、離型フィルム5における貫通孔5aの周囲を、型締め時において基板Wを介して押圧し、キャビティ3Cの底面3Caに密着させる押圧流路部材6をさらに備えている。
【0050】
この押圧流路部材6は、型締め時に離型フィルム5における貫通孔5aの周囲を押圧するとともに、貫通孔5a及びキャビティ3Cを連通する連通流路7を形成するものである。本実施形態の押圧流路部材6は、特に
図3に示すように、中央に貫通孔6aが形成された円板状をなすものである。その表面は平坦にしてあり、表面61が押圧面となる。その一方、裏面62には、例えば放射状に延びる複数本(ここでは4本)の有底溝6bが均等に形成してある。これら貫通孔6a及び有底溝6bにより連通流路7が形成される。なお、連通流路7としては、溝に限られず、肉厚内に形成された内部流路を用いて形成しても良い。
【0051】
また、この押圧流路部材6の厚み寸法は、基板表面Waとキャビティ3Cの底面3Caとの距離寸法と実質的に等しい寸法にしてある。これは、前述したように、型締め時において、押圧流路部材6の表面61が、基板Wを介して離型フィルム5を押圧し、これをキャビティ3Cの底面3Caに密着させるためである。なお、押圧流路部材6の厚み寸法とは、その表面61と裏面62との間の寸法のことであり、本実施形態ではチップW1の厚み寸法とも等しい。
【0052】
<樹脂成形品の製造方法>
次に、このように構成した樹脂成形装置100(樹脂成形用成形型10)を用いた樹脂成形品P(樹脂成形された基板W)の製造方法について、
図5~
図10を参照して説明する。
【0053】
図5に示すように、上型2及び下型3が型開きされた状態において、フィルム供給機構により離型フィルム5を下プレート3a上にある中間プレート3bの上面に供給する。供給された離型フィルム5は、中間プレート3bの上面に吸着される。次に、図示しない供給機構により、押圧流路部材6を、離型フィルム5における貫通孔5aの周囲に配置する。ここで、押圧流路部材6の貫通孔6aが離型フィルム5の貫通孔5aに連通するように配置する。また、ローダにより基板Wを上型2の下面に供給する。供給された基板Wは、チップW1がキャビティ3Cを向く姿勢で、上型2の下面に吸着されて保持される。
【0054】
そして、
図6に示すように、中間プレート3bをリフトアップ機構によって下プレート3aから持ち上げて離隔させる。このとき、注入プランジャ32を、その先端面が、ポット31内に固形状態の樹脂材料Rが投入可能な待機位置としておく。次に、固形状態にある樹脂材料Rを、ポット31に上から投入した後、下プレート3aに設けられた加熱部によって樹脂材料Rを溶融する。
【0055】
次に、型締め機構4によって上型2及び下型3を型締めする(型締め工程)。すなわち、
図7に示すように、型締め機構4によって下プレート3aを上昇させ、中間プレート3bと一体化するとともに、中間プレート3bの上面と基板表面Waの周縁部との間で離型フィルム5を挟む。この位置が型締め位置である。このとき、前述したように、離型フィルム5における貫通孔5aの周囲を押圧流路部材6の押圧面61が押圧してキャビティ3Cの底面3Caに密着させる(
図4参照)。
【0056】
この型締め状態において、切替プランジャ35は、排出口3h2と吸引孔34とが連通した状態としている(
図7参照)。そして、吸引孔34に接続された真空ポンプ(不図示)により、樹脂溜まり部33を介して排出口3h2からキャビティ3C内の空気を吸引して真空引き(減圧)する(減圧工程)。ここで、キャビティ3C内の空気は、排出口3h2に設けられた押圧流路部材6の連通流路7を通り、さらに、離型フィルム5の貫通孔5a、中間プレート3bの排出口3h2、第2流路3p2、樹脂溜まり部33及び吸引孔34を通って、下型3の外部に排気される。
【0057】
真空引きが終了すると、
図8に示すように、注入プランジャ32がプランジャ駆動部38によって上昇し、溶融した樹脂材料Rを樹脂注入口3h1からキャビティ3C内に注入する(樹脂注入工程)。ここで、溶融した樹脂材料Rは、注入プランジャ32が待機位置から上昇することによって、中間プレート3bの第1流路3p1、樹脂注入口3h1及び離型フィルム5の貫通孔5aを通り、さらに押圧流路部材6の連通流路7を通って、キャビティ3C内に流入する。
【0058】
この注入プランジャ32の上昇に連動して、切替プランジャ35も樹脂溜まり部33の内部を上昇する。そして、
図8に示すように、注入プランジャ32によってキャビティ3C内に注入された樹脂材料Rが排出口3h2に到達する前に、切替プランジャ35によって排出口3h2が吸引孔34と遮断された状態、つまり、吸引孔34が切替プランジャ35によって塞がれた状態となる。
【0059】
さらに、注入プランジャ32及び切替プランジャ35が上昇すると、
図9に示すように、注入プランジャ32及び切替プランジャ35の両方が、キャビティ3C内の樹脂材料Rに圧力を加えて押圧した状態になる。この状態では、キャビティ3C内に溶融した樹脂材料Rが充填されている。そして、この加熱された状態で硬化に必要な所要時間待つことにより、樹脂材料Rが硬化して固形化する。
【0060】
その後、
図10に示すように、型締め機構4によって下型3(下プレート3a及び中間プレート3b)を下降させ、型開きする。このとき、第1流路3p1、第2流路3p2に残った残存樹脂K(カル)は、基板Wからもぎ取られる。樹脂成形された基板W(樹脂成形品P)は、図示しないアンローダにより上型2から取り外されて、基板収容部(不図示)に搬送されて収容される。また、残存樹脂Kは、中間プレート3bをリフトアップ機構により下プレート3aから離隔させることによって取り出され、廃棄される。
【0061】
<本実施形態の効果>
本実施形態の樹脂成形装置100によれば、下型3のキャビティ3Cの底面3Caに排出口3h2を形成し、当該排出口3h2に連通する樹脂溜まり部33を設けているので、樹脂注入時にキャビティ3Cに残っている空気を樹脂溜まり部33に押し流すことができ、樹脂成形品Pにおける未充填又はボイドの発生等の成形不良を低減することができる。
【0062】
また、樹脂溜まり部33にキャビティ3C内の空気を吸引する吸引孔34を接続しているので、上型2及び下型3を型締めした状態で、キャビティ3Cの内部を真空引きして減圧することができる。その結果、仮に真空引きによって樹脂注入口3h1から溶融した樹脂材料Rがキャビティ3C内に侵入しても、型締めした状態であるため、意図しない部分に溶融した樹脂材料Rが付着する等の不具合が抑制される。その結果、樹脂成形品Pの不良を低減することができる。例えば、基板Wに配置されたチップW1の表面を露出させる露出トランスファー形成においては、基板WのチップW1の露出すべき面(頂面)を保護した状態で、キャビティ3Cの内部を真空引きして減圧することができ、チップW1の露出すべき面に溶融した樹脂材料Rが付着する(チップフラッシュ)等の不具合が抑制される。
【0063】
さらに、樹脂溜まり部33に接続された吸引孔34が排出口3h2と連通した状態と遮断された状態とを切替プランジャ35によって切り替えているので、吸引孔34を通じてその下流側の吸引経路に樹脂材料Rが流出することを防止することができる。
【0064】
<本発明の変形実施形態>
例えば、
図11及び
図12に示すように、樹脂注入口3h1が複数形成されており、複数の樹脂注入口3h1は、第1樹脂供給路81によってポット31に接続され、又は、排出口3h2が複数形成されており、複数の排出口3h2は、第1樹脂排出路91によって樹脂溜まり部33に接続されていても良い。なお、第1樹脂供給路81及び第1樹脂排出路91は、下プレート3aに形成しても良いし、中間プレート3bに形成しても良い。複数の樹脂注入口3h1と複数の排出口3h2とは、前述のように、キャビティ3Cの底面3Caの中心に対して対称となる位置に形成されていることが望ましい。
【0065】
また、
図11及び
図12に示すように、ポット31を複数備えており、複数のポット31は、第2樹脂供給路82によって互いに接続され、第1樹脂供給路81によって樹脂注入口3h1に接続されていてもよい。
図12のように樹脂注入口3h1は複数形成されていても良いし、樹脂注入口3h1は1つのみで、複数のポット31のうちの1つに第1流路3p1を介して(第1樹脂供給路81を介することなく)接続されていてもよい(
図2(b)参照)。又は、樹脂溜まり部33を複数備えており、複数の樹脂溜まり部33は、第2樹脂排出路92によって互いに接続され、第1樹脂排出路91によって排出口3h2に接続されていても良い。
図12のように排出口3h2は複数形成されていてもよいし、排出口3h2は1つのみで、複数の樹脂溜まり部33のうちの1つに第2流路3p2を介して(第1樹脂排出路91を介することなく)接続されていてもよい(
図2(b)参照)。なお、第2樹脂供給路82及び第2樹脂排出路92は、下プレート3aに形成しても良いし、中間プレート3bに形成しても良い。複数の樹脂溜まり部33を備えた構成の場合、吸引孔34は、何れか1つの樹脂溜まり部33に接続されていても良いし、複数の樹脂溜まり部33に接続されていても良い。この構成においても、前記実施形態と同様に、注入プランジャ32及び切替プランジャ35は互いに連動して移動させることができる。このとき、注入プランジャ32と切替プランジャ35をユニット化して連動させる構成を簡易にするためには、複数のポット31及び複数の樹脂溜まり部33は、平面視において同一直線上に配置されていることが望ましい。このように複数のポット31を備える構成により、樹脂の量を増やすことができ、樹脂の厚みを大きいものや、基板のサイズが大きいものに対応することができる。
【0066】
さらに、
図13及び
図14に示すように、樹脂注入口3h1をキャビティ3Cの底面3Caに中央部に形成し、複数の排出口3h2をキャビティ3Cの底面3Caの外周部に形成しても良い。複数の排出口3h2は、第1樹脂排出路91によって樹脂溜まり部33に接続されていても良い。複数の排出口3h2は、樹脂注入口3h1に対して対称な位置に形成することが望ましい。なお、第1樹脂排出路91は、下プレート3aに形成しても良いし、中間プレート3bに形成しても良い。この構成であれば、大型の基板Wに対して効率良く樹脂を注入して成形することが可能となる。
【0067】
また、1つの樹脂注入口3h1に対して複数のポット31を複数備えており、複数のポット31は、第2樹脂供給路82によって1つの樹脂注入口3h1に接続されていても良い。又は、樹脂溜まり部33を複数備えており、複数の樹脂溜まり部33は、第2樹脂排出路92によって互いに接続され、第1樹脂排出路91によって排出口3h2に接続されていても良い。
図14のように排出口3h2は複数形成されていてもよいし、排出口3h2は1つのみで、複数の樹脂溜まり部33のうちの1つに第2流路3p2を介して接続されていてもよい(
図2(b)参照)。なお、第2樹脂供給路82及び第2樹脂排出路92は、下プレート3aに形成しても良いし、中間プレート3bに形成しても良い。1つの排出口3h2に対して複数の樹脂溜まり部33を備えた構成の場合、吸引孔34は、何れか1つの樹脂溜まり部33に接続されていても良いし、複数の樹脂溜まり部33に接続されていても良い。この構成においても、前記実施形態と同様に、注入プランジャ32及び切替プランジャ35は互いに連動して移動させることができ、このとき、複数のポット31及び複数の樹脂溜まり部33は、平面視において同一直線上に配置されていることが望ましい。
【0068】
前記実施形態の注入プランジャ32及び切替プランジャ35は、ユニット化されることにより、互いに連動するものであったが、ユニット化されること無く、それぞれに対応して設けられたプランジャ駆動部をシーケンス制御などの制御を行うことにっって、互いに連動する構成としても良い。例えば、注入プランジャ32による樹脂材料Rの注入を開始してから所定時間経過後又は注入プランジャ32が所定位置に到達した後に、切替プランジャ35を上昇させて排出口3h2と吸引孔34との連通を遮断することが考えられる。切替プランジャ35を上昇させて排出口3h2と吸引孔34との連通を遮断するタイミングは、吸引孔34に樹脂が到達する前であれば特に限定されない。
【0069】
押圧流路部材6を基板Wとは別体の単独部材として離型フィルム5上に載置していたが、押圧流路部材6を基板Wに予め接合した構成としても良いし、基板Wに一体に形成したものであっても良い。また、予め押圧流路部材6が貼り付けられた離型フィルム5を下型3に供給してもよい。
【0070】
押圧流路部材6を円板状ではなく、矩形板状や多角形板状にしてもよい。
【0071】
押圧流路部材6を単体ではなく、例えば、貫通孔5aの周りに互いに離隔させて配置した複数の押圧要素からなるものとしてもよい。この場合、押圧要素間の隙間が連通流路7を形成する。
【0072】
離型フィルム5についていえば、前記実施形態のように貫通孔5aを予め穿孔しておいてもよいし、離型フィルム5を中間プレート3bに載置して吸着させた後、樹脂注入口3h1及び排出口3h2の位置に合わせて穿孔してもよい。
【0073】
樹脂成形品Pの製造方法についても、前記実施形態に限られず、手順を前後してもよい。また、例えば、離型フィルム5を吸着せず、単に押圧流路部材6で貫通孔5aの周辺を押さえるだけにしてもよい。このようにしても、樹脂材料Rの充填圧力で離型フィルム5がキャビティ3Cの内面に密着し得る。
【0074】
キャビティ3Cは、前記実施形態では下型3にのみ設けられていたが、上型2にも設け、基板Wの表裏面双方に樹脂を注入して成形しても構わない。
【0075】
成形対象物はチップW1が設けられた基板Wに限られず、樹脂材料Rのみをキャビティ3Cによって成形する場合にも本製造方法は適用できる。
【0076】
成形型10は、上下に昇降するもののみならず、水平方向やその他の方向に対向して進退するものでも本発明を適用可能である。
【0077】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0078】
100・・・樹脂成形装置
W・・・基板(成形対象物)
P・・・樹脂成形品
R・・・樹脂材料
10・・・樹脂成形用成形型
2・・・上型(第1型)
3・・・下型(第2型)
3C・・・キャビティ
3Ca・・・キャビティの底面
3x・・・キャビティの底面の中心
3h1・・・樹脂注入口
3h2・・・排出口
31・・・ポット
32・・・注入プランジャ
33・・・樹脂溜まり部
34・・・吸引孔
35・・・切替プランジャ
3a・・・下プレート
3b・・・中間プレート
4・・・型締め機構
5・・・離型フィルム
5a・・・貫通孔
6・・・押圧流路部材
7・・・連通流路
81、82・・・樹脂供給路
91、92・・・樹脂排出路
【要約】
【課題】トランスファー樹脂成形方法において成形不良を低減する。
【解決手段】基板Wを保持する上型2と、上型2と型締めされるものであり、キャビティ3Cを有する下型3とを有し、下型3は、キャビティ3Cの底面に形成された樹脂注入口3h1に連通するとともに樹脂材料Rを収容するポット31と、ポット31内を進退移動して、樹脂注入口3h1からキャビティ3Cに樹脂材料Rを注入する注入プランジャ32と、キャビティ3Cの底面に形成された排出口3h2に連通するとともにキャビティ3Cから流出する樹脂材料Rを収容する樹脂溜まり部33と、樹脂溜まり部33に接続され、樹脂溜まり部33を介して排出孔3h2から空気を吸引するための吸引孔34と、樹脂溜まり部33内を進退移動して、吸引孔34が排出口3h2と連通した状態と遮断された状態とを切り替える切替プランジャ35とを備える。
【選択図】
図1