(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】オーバーロード/溶出クロマトグラフィー
(51)【国際特許分類】
C07K 1/16 20060101AFI20230105BHJP
C07K 1/18 20060101ALI20230105BHJP
C07K 1/20 20060101ALI20230105BHJP
C07K 1/22 20060101ALI20230105BHJP
C07K 1/34 20060101ALI20230105BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20230105BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230105BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230105BHJP
A61K 47/62 20170101ALI20230105BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230105BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20230105BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20230105BHJP
【FI】
C07K1/16
C07K1/18
C07K1/20
C07K1/22
C07K1/34
C07K16/00
C07K19/00
A61K39/395 K
A61K39/395 A
A61K39/395 M
A61K47/62
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12P21/08
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021185350
(22)【出願日】2021-11-15
(62)【分割の表示】P 2019209674の分割
【原出願日】2012-11-02
【審査請求日】2021-12-10
(32)【優先日】2011-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ナダラジャ, ディーパ
(72)【発明者】
【氏名】メータ, アミト
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/035282(WO,A1)
【文献】J. Chromatograph.,1992年,Vol.584,pp.115-120
【文献】J. Chromatograph. A,1997年,Vol.760,pp.89-103
【文献】Biotechnol. Appl. Biochem.,2010年,Vol.56,pp.59-70
【文献】J. Chromatogr. A,2011年08月,Vol.1218,pp.6943-6952
【文献】Biotechnol. Bioengineer.,2008年,Vol.201, No.3,pp.553-566
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12P 1/00-41/00
C12N 1/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体又はイムノアドヘシンを、抗体又はイムノアドヘシンと一又は複数の夾雑物とを含む組成物から精製するための方法であって、
a)組成物を、クロマトグラフィー材料上に、抗体又はイムノアドヘシンに対するクロマトグラフィー材料の動的結合容量を超える量でロードすることであって、組成物が、クロマトグラフィー材料上にロードバッファー中でロードされ、クロマトグラフィー材料が膜である、ロードすること、
b)一又は複数の夾雑物がクロマトグラフィー材料と結合したままである条件下で、クロマトグラフィー材料から抗体又はイムノアドヘシンを溶出バッファーにより溶出させることであって、溶出バッファーがロードバッファーの導電率より低い導電率を有する、溶出させること、並びに
c)工程a)及びb)由来の、クロマトグラフィー溶出物中の抗体又はイムノアドヘシンを含む画分をプールすること
を含む方法。
【請求項2】
抗体又はイムノアドヘシンが、イムノアドヘシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗体又はイムノアドヘシンが、抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
抗体が、モノクローナル抗体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
モノクローナル抗体が、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
モノクローナル抗体が、IgGモノクローナル抗体である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
抗体が、抗原結合断片である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
抗原結合断片が、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)
2
断片、scFv、di-scFv、bi-scFv、タンデム(di,tri)-scFv、Fv、sdAb、三重機能性抗体、BiTE、ダイアボディ、又はトリアボディである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも一の夾雑物が、チャイニーズハムスター卵巣タンパク質(CHOP)、宿主細胞タンパク質(HCP)、浸出されたプロテインA、カルボキシペプチダーゼB、核酸、DNA、産物バリアント、凝集タンパク質、細胞培養培地成分、ゲンタマイシン、ポリペプチド断片、エンドトキシン、及びウイルス性夾雑物のうちの何れか一又は複数である、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
クロマトグラフィー材料が、混合モード材料、陰イオン交換材料、疎水性相互作用材料、又はアフィニティー材料である、請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
ロード密度が、50g/L~2000g/Lである、請求項1から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
ロード密度が、200g/L~1000g/Lである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
組成物が、クロマトグラフィー材料上に、一又は複数の夾雑物に対するクロマトグラフィー材料の動的結合容量でロードされる、請求項1から12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
組成物が、クロマトグラフィー材料上に、抗体又はイムノアドヘシンに対するクロマトグラフィー材料の動的結合容量の20倍の量でロードされる、請求項1から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
抗体又はイムノアドヘシンに対してのクロマトグラフィー材料の分配係数が30より大きい、請求項1から14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
抗体又はイムノアドヘシンに対してのクロマトグラフィー材料の分配係数が100より大きい、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ロードバッファーの導電率が、4.0mS~7.0mSである、請求項1から16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
溶出バッファーの導電率が、0.0mS~7.0mSである、請求項1から16の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
溶出バッファーの導電率が、10カラム体積(CV)を通じて5.5mSから1.0mSへの勾配で低下する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
溶出バッファーの導電率が、15CVを通じて5.5mSから1.0mSへの勾配で低下する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
溶出バッファーの導電率が、5CVを通じて10.0mSから1.0mSへの勾配で低下する、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
溶出バッファーの導電率が、10CVを通じて、10.9mSから1.0mSへの勾配で低下する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
溶出バッファーのpHが、ロードバッファーのpHより低い、請求項1から16の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
ロードバッファーのpHが、4~9である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
溶出バッファーのpHが、4~9である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
溶出バッファーのpHが、ロードバッファーのpHより高い、請求項1から16の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
ロードバッファーのpHが、4~9である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
溶出バッファーのpHが、4~9である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
組成物が、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、又は疎水性相互作用クロマトグラフィー由来の溶出液である、請求項1から28の何れか一項に記載の方法。
【請求項30】
アフィニティークロマトグラフィーが、プロテインAクロマトグラフィーである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
抗体又はイムノアドヘシンが、さらに精製される、請求項1から30の何れか一項に記載の方法。
【請求項32】
抗体又はイムノアドヘシンが、ウイルスろ過によりさらに精製される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
抗体又はイムノアドヘシンが、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、及び疎水性相互作用クロマトグラフィーのうち一又は複数によりさらに精製される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
抗体又はイムノアドヘシンが、さらに濃縮される、請求項1から33の何れか一項に記載の方法。
【請求項35】
抗体又はイムノアドヘシンが、限外ろ過、ダイアフィルトレーション、又は限外ろ過とダイアフィルトレーションとの組合せにより濃縮される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
抗体又はイムノアドヘシンを薬学的に許容される担体と組み合わせることをさらに含む、請求項31から35の何れか一項に記載の方法。
【請求項37】
請求項1から36の何れか一項に記載の方法を含む、医薬を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2011年11月2日に出願された米国特許仮出願第61/554,898号の優先権の利益を主張するものであり、同出願は、出典明示によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、産物と少なくとも一の夾雑物とを含む組成物から産物を精製するための方法、及び、本方法により精製された産物を含む製剤を提供する。
【背景技術】
【0003】
陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィーは、モノクローナル抗体(MAb)に対して行われるプラットフォーム仕上げ(platform polishing)工程として、フロースルー(flow-through)モードで広く使用される。標準的なフロースルー条件下でAEX樹脂と結合する一定のMAbは、プラントへの適合が難題となる可能性がある。必要量が典型的に少ない早期の段階の臨床開発には、このような非プラットフォームMAb(non-platform MAb)は、AEX又は混合モード用の樹脂を結合/溶出モードで使用することにより精製されてきた。しかし、これらの樹脂は動的結合容量(DBC)が低いことから、後期の段階で実現するには、およそ1000Lのサイズのカラムを用いるか、又は、より小型のカラムを複数サイクルで用いることによりプラントの処理量を限定することが必要となろう。
【0004】
MAb精製は、結合/溶出クロマトグラフィー(B/E)又はフロースルー(F/T)クロマトグラフィーを用いて典型的に実施される。最近では、MAb精製を強化するためにAEX樹脂及び陽イオン交換(CEX)樹脂をそれぞれ用いた、弱分配クロマトグラフィー(weak partitioning chromatography)(Kelley,BDら、2008、Biotechnol Bioeng、101(3):553~566ページ;米国特許出願公開第2007/0060741号)及びオーバーロードクロマトグラフィー(PCT/US2011/037977)が紹介されている。これらのクロマトグラフィーモードそれぞれの一般的なメカニズム及び限界について、以下に取り上げる。
【0005】
結合/溶出クロマトグラフィー: B/Eクロマトグラフィー下では、産物は、クロマトグラフィー材料に対するDBCを最大限活かすように通常はロードされ、次いで、溶出された液(eluate)中で最大の産物純度が得られるように洗浄及び溶出条件が定められる。B/Eクロマトグラフィーの限界は、ロード密度が実際の樹脂DBCに制限されることである。
【0006】
フロースルークロマトグラフィー: F/Tクロマトグラフィーを使用し、ロード条件は、不純物はクロマトグラフィー材料と強く結合するが産物は通り抜ける条件に定められる。F/Tクロマトグラフィーは、標準的なMAbの場合は高いロード密度を許容するが、非プラットフォームMAbの場合は実現できないことがあり、又は、このような非プラットフォームMAbの場合のF/T動作を可能にする溶液条件は、既存の製造プラントでは実現できないようなものであることがある。
【0007】
弱分配クロマトグラフィー: この動作モードは、樹脂に対するMAbの弱い結合がみられる(2~20g/L)溶液条件を定めることにより、F/Tモードを強化するものである。このような条件下では、不純物は、F/Tモードにおけるより強く結合し、ひいては精製の強化が得られる。しかし、ロード条件は、産物の分配係数(Kp)が0.1~20の範囲の低い値になるようにする。
【0008】
オーバーロードクロマトグラフィー: このモードのクロマトグラフィーでは、目的の産物は、産物に対するクロマトグラフィー材料の動的結合容量を上回る量でロードされ、そのため、オーバーロードと称される。この動作モードは、陽イオン交換(CEX)媒体、とりわけ膜を用いたMAb精製を可能にすることが実証されている。ただし、このアプローチの限界は、溶出期がないため、樹脂を用いると収率が低くなる可能性があると考えられることである。
【0009】
ヒトの治療薬として使用するための十分な純度までポリペプチドを大規模かつ費用対効果の高い形で精製するには、手強い難題が残っている。
【0010】
本明細書において引用するすべての参考文献は、特許出願文献及び刊行物を含め、出典明示によりその全体が援用される。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、ポリペプチドを該ポリペプチドと一又は複数の夾雑物を含む組成物から精製するための方法であって、a)該組成物を、クロマトグラフィー材料上に、該ポリペプチドに対する該クロマトグラフィー材料の動的結合容量を超える量でロードすること、b)該一又は複数の夾雑物が該クロマトグラフィー材料と結合したままである条件下で、該クロマトグラフィー材料から該ポリペプチドを溶出させること、並びにc)工程a)及びb)由来のクロマトグラフィー溶出物(effluent)中の該ポリペプチドを含む画分をプールすることを含む方法を提供する。
【0012】
幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、抗体又はイムノアドヘシンである。幾つかの実施態様において、抗体は、モノクローナル抗体、例えば限定されるものではないが、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。
【0013】
幾つかの実施態様において、抗体は、抗原結合断片、例えば限定されるものではないが、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、scFv、ジ-scFv、バイ-scFv、タンデム(ジ,トリ)-scFv、Fv、sdAb、三重機能性抗体(tri-functional antibody)、BiTE、ダイアボディ(diabody)、及びトリアボディ(triabody)である。
【0014】
幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、酵素、ホルモン、融合タンパク質、Fc含有タンパク質、免疫コンジュゲート、サイトカイン、又はインターロイキンである。
【0015】
幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、一又は複数の夾雑物、例えば、チャイニーズハムスター卵巣タンパク質(CHOP)、宿主細胞タンパク質(HCP)、浸出されたプロテインA、カルボキシペプチダーゼB、核酸、DNA、産物バリアント、凝集タンパク質、細胞培養培地成分、ゲンタマイシン、ポリペプチド断片、エンドトキシン、及びウイルス性夾雑物を含む組成物から精製される。
【0016】
本発明の幾つかの実施態様において、クロマトグラフィー材料は、混合モード材料、陰イオン交換材料、疎水性相互作用材料、及びアフィニティー材料から選択される。
【0017】
幾つかの実施態様において、組成物は、クロマトグラフィー材料上に、一又は複数の夾雑物に対するクロマトグラフィー材料の動的結合容量とほぼ同量でロードされる。
【0018】
幾つかの実施態様において、ポリペプチドに対するクロマトグラフィー材料の分配係数は、30より大きい又は100より大きい。
【0019】
幾つかの実施態様において、本方法は、溶出バッファーの導電率がロードバッファーの導電率より低いOECを提供する。他の実施態様において、溶出バッファーの導電率は、ロードバッファーの導電率より高い。幾つかの実施態様において、本方法は、溶出バッファーのpHがロードバッファーのpHより低いOECを提供する。他の実施態様において、溶出バッファーのpHは、ロードバッファーのpHより高い。
【0020】
幾つかの実施態様において、本方法のポリペプチドは、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、及び疎水性相互作用クロマトグラフィー由来の溶出液(eluent)中にある。幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、プロテインAクロマトグラフィー由来の溶出液中にある。
【0021】
幾つかの実施態様において、本方法のポリペプチドは、例えば、ウイルスろ過、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィーによりさらに精製される。幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、例えば、限外ろ過、ダイアフィルトレーション、又は限外ろ過とダイアフィルトレーションとの組合せにより、さらに濃縮される。幾つかの実施態様において、本方法のポリペプチドは、薬学的に許容される担体とさらに組み合わされる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】MAb3について、バッチ結合条件下でのCapto Adhere樹脂に対するハイスループットスクリーニング(HTS)の結果を示す図である。
図1Aは、MAb3についての定数値K
pの等高線を示す。
図1Bは、樹脂に対して80g/Lの産物を負荷(challenge)した場合の、上清中のMAb3の実際の結合容量を示す。
図1Cは、樹脂に対して80g/Lの産物を負荷した場合の、上清中の不純物(宿主細胞タンパク質)の実際の結合容量を示す。すべての等高線図は、生データに由来する反応曲面モデルを用いて作成した。
【
図2】最適化されたOEC動作モードのクロマトグラムである。MAb3は、この運転には、180g/Lのロード密度で使用した。
【
図3】MAb3を使用した、OECモードの場合のロードの最適化を示すグラフである。
【
図4】標的ロード条件を用いた場合の、OEC動作モードのクロマトグラムである。類似のロード条件及び溶出条件を用いると、テーリングが生じ、そのため、プール体積が45%増加する。MAb3は、この運転には、180g/Lのロード密度で使用した。
【
図5】MAb3を使用した、OECモードについての溶出最適化を示すグラフである。
【
図6】画分における不純物分析、及び、不純物の累積的な分析を示すグラフである。
【
図7】ロード密度を1000g/Lとした場合の、OECモード下でのCapto Adhere樹脂のMAb3 CHOPのブレークスルー(breakthrough)分析を示すグラフである。
【
図8】70g/L~180g/Lの広範なロード密度にわたるパイロット規模の運転を通じた歩留まり解析を示すグラフである。
【
図9】弱分配クロマトグラフィー動作モードとオーバーロード/溶出クロマトグラフィー動作モードとの比較を示すグラフである。産物はMAb3であり、クロマトグラフィー材料はCapto Adhere樹脂であった。
【
図10】ロード密度を150g/Lとした場合の、OEC動作モード下でのQMA樹脂に対するMAb3 CHOP分析を示すグラフである。
【
図11】ロード密度を150g/Lとした場合の、OEC動作モード下でのCapto Adhere樹脂に対するMAb4 CHOP分析を示すグラフである。
【
図12】ロード密度を150g/Lとした場合の、OEC動作モード下でのCapto MMC樹脂に対するMAb4 CHOP分析を示すグラフである。
【
図13】ロード密度を200g/Lとした場合の、OECモード下でのCapto Adhere樹脂に対するMAb3 CHOPのブレークスルー分析を示すグラフである。MAb3のプロテインAプールは、Capto Adhere樹脂上に200g/L(この樹脂の産物結合容量50g/Lを超えている)までロードした。CHOPのブレークスルー分析から、CHOPは、200g/LのMAb処理までブレークスルーしないことが示された。
【発明を実施するための形態】
【0023】
I.定義
用語「産物」は、本明細書において記載される場合、OECにより精製しようとする物質、例えばポリペプチドである。
【0024】
用語「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、本明細書においては、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために互換的に使用される。ポリマーは、直鎖状でも分枝状でもよく、改変されたアミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸が割り込んでいてもよい。この用語は、さらに、自然に又は介入により改変されているアミノ酸ポリマーを包含し、改変の例としては、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は任意の他の操作もしくは改変、例えば、標識化成分とのコンジュゲーションが挙げられる。この定義には、例えば、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸等を含む)の一又は複数の類似体を含有するポリペプチド、並びに、当技術分野において公知の他の改変体も含まれる。用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書において使用される場合、特に抗体を包含する。
【0025】
「精製された」ポリペプチド(例えば、抗体又はイムノアドヘシン)は、純度が高められていて、その天然の環境において存在する並びに/又は実験室条件下で最初に合成及び/もしくは増幅されたときに存在するより純粋な形態で存在するようになっているポリペプチドを意味する。純度は、相対的な用語であり、絶対的な純度を必ずしも意味しない。
【0026】
用語「エピトープタグが付加された」は、本明細書において使用されるときは、「タグポリペプチド」と融合されるポリペプチドを含むキメラポリペプチドを指す。タグポリペプチドは、それに対する抗体を作ることができるエピトープとなるだけ十分な残基を有するが、十分に短いため、自身が融合される対象のポリペプチドの活性を妨害しないようになっている。タグポリペプチドは、好ましくは、抗体が他のエピトープとは実質的に交差反応しないように、相当に独特でもある。好適なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6個のアミノ酸残基、通常は約8~50個のアミノ酸残基(好ましくは、約10~20個のアミノ酸残基)を有する。
【0027】
「活性のある」又は「活性」は、本明細書においては、天然の又は自然界に存在するポリペプチドの生物学的及び/又は免疫学的活性を保持するポリペプチドの形態(複数可)を指し、この場合の「生物学的」活性は、天然の又は自然界に存在するポリペプチドが原因で生じる生物学的機能(阻害性又は刺激性のいずれか)を指し、天然の又は自然界に存在するポリペプチドに備わっている、抗原性エピトープに対する抗体の産生を誘導する能力はこれに含まれず、「免疫学的」活性は、天然の又は自然界に存在するポリペプチドに備わっている、抗原性エピトープに対する抗体の産生を誘導する能力を指す。
【0028】
用語「拮抗物質」は広義で使用され、これには、天然ポリペプチドの生物学的活性を部分的又は完全に遮断、阻害、又は中和する一切の分子が含まれる。同様に、用語「作動物質」は広義で使用され、これには、天然ポリペプチドの生物学的活性を模倣する一切の分子が含まれる。好適な作動物質又は拮抗物質分子としては、特に、作動物質又は拮抗物質である抗体又は抗体断片、天然ポリペプチドの断片、又はアミノ酸配列バリアント等が挙げられる。ポリペプチドの作動物質又は拮抗物質を同定するための方法は、ポリペプチドを候補作動物質又は拮抗物質分子と接触させて、そのポリペプチドに普通であれば伴っている一又は複数の生物学的活性の検出可能な変化を測定することを含んでもよい。
【0029】
「補体依存性細胞傷害」又は「CDC」は、分子が補体の存在下で標的を溶解する能力を指す。補体活性化経路は、補体系の第1成分(C1q)が、同種抗原(cognate antigen)と複合体化された分子(例えばポリペプチド(例:抗体))と結合することにより惹起される。補体活性化を検討評価するために、CDCアッセイ、例えば、Gazzano-Santoroら、J.Immunol.Methods、202:163ページ(1996)に記載されているようなCDCアッセイを実施してもよい。
【0030】
目的の抗原、例えば腫瘍関連ポリペプチド抗原標的と「結合する」ポリペプチドとは、十分な親和性で抗原と結合することから、その抗原を発現する細胞又は組織の標的化における診断剤及び/又は治療剤として有用であり、他のポリペプチドとはそれほど交差反応しないような、ポリペプチドである。そのような実施態様において、ポリペプチドと「非標的」ポリペプチドとの結合度は、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析又は放射性免疫沈降法(RIA)により決定した場合、ポリペプチドとその特定の標的ポリペプチドとの結合の約10%未満であろう。
【0031】
ポリペプチドと標的分子との結合に関しては、特定のポリペプチド、又は特定のポリペプチド標的上のエピトープについて、その「特異的結合」、又はそれと「特異的に結合する」、又はそれに対して「特異的である」という用語は、非特異的相互作用とは測定可能な程度に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、分子の結合を対照分子の結合との比較で決定することにより測定でき、対照分子は、一般に、結合活性を有さない類似構造の分子である。例えば、特異的結合は、標的と類似している対照分子、例えば過剰な非標識標的(non-labeled target)との競合により決定できる。この場合、特異的結合は、プローブとの標識標的の結合が、過剰な非標識標的(unlabeled target)により競合的に阻害される場合に示される。
【0032】
用語「抗体」は、本明細書においては広義で使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクト抗体から形成される多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び、所望の生物学的活性を呈するものである限り抗体断片を、特に網羅する。用語「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書においては、抗体と互換的に使用される。
【0033】
抗体は、自然界に存在する免疫グロブリン分子であり、さまざまな構造を有するが、すべて免疫グロブリンフォールドに基づいている。例えば、IgG抗体は、ジスルフィド結合されて機能的抗体を形成する、2本の「重」鎖及び2本の「軽」鎖を有する。各重鎖及び軽鎖自体は、「定常」(C)及び「可変」(V)領域を含む。V領域は抗体の抗原結合特異性を決定し、一方、C領域は、構造的な支持をもたらし、免疫エフェクターとの非抗原特異的相互作用において機能する。抗体又は抗体の抗原結合断片の抗原結合特異性とは、抗体が特定の抗原と特異的に結合する能力のことである。
【0034】
抗体の抗原結合特異性は、V領域の構造的特徴により決定される。可変性は、可変ドメインの110個のアミノ酸全長にわたり一様に分布してはいない。そうではなく、V領域は、15~30個のアミノ酸で構成されるフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変の直線的な部分から成り、FRは、それぞれ9~12アミノ酸長の「超可変領域」と呼ばれる極度の可変性を有するより短い領域で分割されている。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ4つのFRを含むが、これらのFRは、大部分がβシート立体配置をとり3つの超可変領域により繋がっており、3つの超可変領域は、βシート構造と繋がり場合によってはβシート構造の一部を形成している、ループを形成する。各鎖における超可変領域は、FRにより互いにきわめて近接した状態で保持され、他の鎖由来の超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、アメリカ国立衛生研究所公衆衛生局、Bethesda、Md.(1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗原との抗体の結合には直接関わっていないが、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)における抗体の関与など、多様なエフェクター機能を呈する。
【0035】
各V領域は、3つの相補性決定領域(「CDR」、そのそれぞれが「超可変ループ」を含有する)及び4つのフレームワーク領域を典型的に含む。抗体結合部位は、特定の所望の抗原と実質的な親和性で結合するために必要な最小の構造単位であり、したがってここには、3つのCDR、及び、適切な立体配座でCDRを保持及び提示するようにその間に散在している少なくとも3つ、好ましくは4つのフレームワーク領域が典型的に含まれることになる。古典的な4本鎖抗体は、VHドメイン及びVLドメインにより協同的に規定される抗原結合部位を有する。一定の抗体、例えばラクダ及びサメの抗体は、軽鎖が欠如しており、重鎖のみにより形成される結合部位に頼っている。VH-VL間の協同がない、結合部位が重鎖又は軽鎖だけで形成される単一ドメインの工学操作された免疫グロブリンは、調製することができる。
【0036】
用語「可変性の」は、可変ドメインの一定の部分は、抗体間で配列が広範に異なり、その特定の抗原に対するそれぞれ特定の抗体の結合及び特異性において使用されるという事実を指す。しかし、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたり一様に分布してはいない。可変性は、軽鎖及び重鎖の可変ドメインどちらにおいても、超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ4つのFRを含むが、これらのFRは、大部分がβシート立体配置をとり3つの超可変領域により繋がっており、3つの超可変領域は、βシート構造と繋がり場合によってはβシート構造の一部を形成している、ループを形成する。各鎖における超可変領域は、FRにより互いにきわめて近接した状態で保持され、他の鎖由来の超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、アメリカ国立衛生研究所公衆衛生局、Bethesda、MD.(1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗原との抗体の結合には直接関わっていないが、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)における抗体の関与など、多様なエフェクター機能を呈する。
【0037】
用語「超可変領域」は、本明細書において使用されるときは、抗原結合に関与している抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、VLでは大体、残基24~34周辺(L1)、50~56周辺(L2)、及び89~97周辺(L3)、VHでは大体、残基31~35B周辺(H1)、50~65周辺(H2)、及び95~102周辺(H3)(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、アメリカ国立衛生研究所公衆衛生局、Bethesda、Md.(1991))、並びに/又は「超可変ループ」由来のアミノ酸残基(例えば、VLでは、残基26~32(L1)、50~52(L2)、及び91~96(L3)、VHでは、番号26~32(H1)、52A~55(H2)、及び96~101(H3)(Chothia及びLesk、J.Mol.Biol.、196:901~917ページ(1987))を含み得る。
【0038】
「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書において定義するような、超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0039】
「抗体断片」は、インタクト抗体の部分、好ましくはその抗原結合領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ;タンデムダイアボディ(taDb)、線状抗体(例えば、米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapataら、Protein Eng.、8(10):1057~1062ページ(1995));1本腕の(one-armed)抗体、単一可変ドメイン抗体、ミニボディ(minibody)、単鎖抗体分子;抗体断片(例えば、限定されるものではないが、Db-Fc、taDb-Fc、taDb-CH3、(scFV)4-Fc、ジ-scFv、バイ-scFv、又はタンデム(ジ,トリ)-scFvが挙げられる)から形成される多特異性抗体;及び二重特異性T細胞エンゲージャー(Bi-specific T-cell engager、BiTE)が挙げられる。
【0040】
抗体をパパイン消化させると、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片(それぞれが単一の抗原結合部位を有する)と、残りの「Fc」断片(この名称は、容易に結晶化させる能力を有することを反映している)とが生成される。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、抗原を架橋することが依然として可能なF(ab’)2断片が得られる。
【0041】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。この領域は、堅固に非共有結合的に結び付いている1本の重鎖と1本の軽鎖の可変ドメインの二量体からなる。Fvは、VH-VL二量体の表面上で各可変ドメインの3つの超可変領域が相互作用して抗原結合部位を規定するこの形状をしている。6つの超可変領域は、それら全体として、抗体に対する抗原結合特異性をもたらす。ただし、単一可変ドメイン(又は、抗原に特異的な3つの超可変領域のみを含むFvの半分)でも、結合部位全体より親和性は低いが、抗原を認識しこれと結合する能力を有する。
【0042】
Fab断片も、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含有する。Fab’断片は、重鎖のCH1ドメインのカルボキシ末端に、抗体ヒンジ領域由来の一又は複数のシステインを含んでいる数個の残基が加わっている点でFab断片とは異なる。Fab’-SHは、本明細書においては、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が少なくとも1つの遊離チオール基を持つFab’を指している。F(ab’)2抗体断片は、両者の間にヒンジのシステインを有するFab’断片対として本来は作製された。抗体断片の他の化学的なカップリングも公知である。
【0043】
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明らかに別個のタイプのうちの1つに割り当てることができる。
【0044】
抗体は、重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列により、異なるクラスに割り当てることができる。インタクト抗体の5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2にさらに分け得る。異なるクラスの抗体に対応する重鎖の定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元立体配置は、周知である。
【0045】
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含み、このときこれらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中に存在する。幾つかの実施態様において、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間に、抗原結合のための所望の構造をscFvに形成させることができるポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvの総説については、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、第113巻、Rosenburg及びMoore編、Springer-Verlag、New York、269~315ページ(1994)に収録されているPluckthunの文献を参照のこと。
【0046】
用語「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を有する小型の抗体断片を指し、この断片は、同じポリペプチド鎖中に軽鎖可変ドメイン(VL)と繋がっている重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH-VL)。同じ鎖上の2つのドメイン間で対形成が可能になるきわめて短いリンカーを使用することにより、ドメインは、別の鎖の相補的なドメインと対形成して2つの抗原結合部位を創出するように強いられる。ダイアボディについては、例えば、EP404,097;WO93/11161;及びHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444~6448ページ(1993)において、より詳しく説明されている。
【0047】
用語「多特異性抗体」は、広義で使用され、ポリエピトープ特異性(polyepitopic specificity)を有する抗体を特に網羅する。そのような多特異性抗体としては、限定されるものではないが、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含みVHVL単位がポリエピトープ特異性を有する抗体、2つ以上のVL及びVHドメインを有し各VHVL単位が異なるエピトープと結合する抗体、2つ以上の単一可変ドメインを有し各単一可変ドメインが異なるエピトープと結合する抗体、完全長抗体、抗体断片、例えばFab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性を有するダイアボディ、トリアボディ、三重機能性抗体、共有結合的又は非共有結合的に連結している抗体断片が挙げられる。「ポリエピトープ特異性」は、同じ又は異なる標的(複数可)上で2つ以上の異なるエピトープと特異的に結合する能力を指す。「単一特異性の」は、1つのエピトープのみと結合できることを指す。一実施態様によれば、多特異性抗体は、親和性が5μM~0.001pM、3μM~0.001pM、1μM~0.001pM、0.5μM~0.001pM、又は0.1μM~0.001pMである各エピトープと結合するIgG抗体である。
【0048】
「単一ドメイン抗体」(sdAb)又は「単一可変ドメイン(SVD)抗体」という表現は、総じて、単一可変ドメイン(VH又はVL)が抗原結合をもたらすことができる抗体を指す。言い換えれば、単一可変ドメインは、標的抗原を認識するために別の可変ドメインと相互作用する必要がない。単一ドメイン抗体の例としては、ラクダ科の動物(ラマ及びラクダ)並びに軟骨魚(例えば、テンジクザメ)に由来するもの、並びに、ヒト及びマウス抗体からの組換法に由来するものが挙げられる(Nature(1989)、341:544~546ページ;Dev Comp Immunol(2006)、30:43~56ページ;Trend Biochem Sci(2001)、26:230~235ページ;Trends Biotechnol(2003)、21:484~490ページ;WO2005/035572;WO03/035694;Febs Lett(1994)、339:285~290ページ;WO00/29004;WO02/051870)。
【0049】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書において使用する場合、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は同一であり、及び/又は同じエピトープと結合するが、ただし、モノクローナル抗体の産生中に生じる可能性があるバリアントは例外で、そのようなバリアントは、一般に少量で存在する。異なる決定基(エピトープ)に対して向けられる異なる抗体を典型的に含んでいるポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられる。モノクローナル抗体は、その特異性に加え、他の免疫グロブリンによって汚染されないという点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体集団から得られているという抗体の特徴を示すものであり、何らかの特定の方法によってこの抗体を産生する必要があると解釈されるべきではない。例えば、本明細書において提供される方法により使用されることになるモノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature、256:495ページ(1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法により作製してもよく、又は、組換えDNA法により作製してもよい(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clacksonら、Nature、352:624~628ページ(1991)及びMarksら、J.Mol.Biol.、222:581~597ページ(1991)に記載されている手法を用いてファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0050】
モノクローナル抗体には、本明細書においては、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、すなわち、重鎖及び/又は軽鎖の一部分は特定の種に由来する抗体又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一もしくは相同であるが、鎖(複数可)の残りの部分は別の種に由来する抗体又は別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一もしくは相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、並びに、所望の生物学的活性を呈するものである限りそのような抗体の断片が、特に含まれる(米国特許第4,816,567号;Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6851~6855ページ(1984))。本明細書における目的のキメラ抗体としては、非ヒト霊長動物(例:旧世界サル、例えばヒヒ、アカゲザル、又はカニクイザル)に由来する可変ドメイン抗原結合配列及びヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体が挙げられる(米国特許第5,693,780号)。
【0051】
「ヒト化」形態の非ヒト(例えばマウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有するキメラ抗体である。大抵の場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域由来の残基が、非ヒト種、例えば、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長動物の超可変領域(ドナー抗体)由来の残基により置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非ヒトの残基により置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体においてもドナー抗体においても見出されない残基を含んでもよい。これらの改変は、抗体の性能をさらに洗練するためになされる。一般には、ヒト化抗体は、超可変ループのすべて又は実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応しており、かつ、先に述べたFR置換箇所(複数可)を除き、FRのすべて又は実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のFRである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含むであろう。ヒト化抗体は、場合により、免疫グロブリン定常領域、典型的にはヒト免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分も含むであろう。さらなる詳細については、Jonesら、Nature、321:522~525ページ(1986);Riechmannら、Nature、332:323~329ページ(1988);及びPresta、Curr.Op.Struct.Biol、2:593~596ページ(1992)を参照のこと。
【0052】
本明細書においては、「インタクト抗体」は、重鎖及び軽鎖の可変ドメイン並びにFc領域を含む抗体である。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)であっても、そのアミノ酸配列バリアントであってもよい。好ましくは、インタクト抗体は、一又は複数のエフェクター機能を有する。
【0053】
「天然抗体」は、通常は、2本の同一の軽(L)鎖及び2本の同一の重(H)鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体の糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有結合性のジスルフィド結合により重鎖と連結しているが、ジスルフィド連結の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間でさまざまである。各重鎖及び軽鎖は、規則的に間隔のあいた鎖間ジスルフィド橋も有する。各重鎖は、一方の端に可変ドメイン(VH)を、続いて幾つかの定常ドメインを有する。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(VL)を、他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインと並んでおり、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと並んでいる。特定のアミノ酸残基は、軽鎖と重鎖の可変ドメイン間に接点を形成すると考えられる。
【0054】
「裸の(naked)抗体」は、細胞傷害性部分又は放射性標識などの異種分子とコンジュゲートされない、(本明細書において定義する)抗体である。
【0055】
幾つかの実施態様において、抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列のFc領域又はアミノ酸配列バリアントのFc領域)に起因する当該生物学的活性を指し、抗体のアイソタイプによって異なる。抗体のエフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);貪食;細胞表面受容体のダウンレギュレーションが挙げられる。
【0056】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」及び「ADCC」は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的な細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が、標的細胞上の結合された抗体を認識し、引き続き標的細胞を溶解させる、細胞媒介性の反応を指す。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現し、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFcRの発現は、Ravetch及びKinet、Annu.Rev.Immunol、9:457~92ページ(1991)の464ページの表3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を検討評価するために、in vitroでのADCCアッセイ、例えば米国特許第5,500,362号又は同第5,821,337号に記載されているアッセイを実施してもよい。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替的に、又は追加的に、目的の分子のADCC活性は、in vivo、例えば、Clynesら、Proc.Natl.Acad.Sci.(米国)、95:652~656ページ(1998)に開示されているような動物モデルを用いて検討評価してもよい。
【0057】
「ヒトエフェクター細胞」は、一又は複数のFcRを発現しエフェクター機能を発揮する白血球である。幾つかの実施態様において、この細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を発揮する。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞、及び好中球が挙げられ、PBMC及びNK細胞が好ましい。
【0058】
用語「Fc受容体」又は「FcR」は、抗体のFc領域と結合する受容体を説明するために使用される。幾つかの実施態様において、FcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(γ受容体)と結合するものであり、その例としてはFcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体が挙げられ、これらの受容体の対立遺伝子バリアント及び代替的にスプライスされた形態もこれに含まれる。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化型受容体」)及びFcγRIIB(「抑制型受容体」)が含まれ、これらは、その細胞質ドメインが主に異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化型受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメイン中に免疫受容体チロシン依存性活性化モチーフ(ITAM)を含有する。抑制型受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメイン中に免疫受容体チロシン依存性抑制モチーフ(ITIM)を含有する。(Daeron、Annu.Rev.Immunol.、15:203~234ページ(1997)を参照のこと)。FcRは、Ravetch及びKinet、Annu.Rev.Immunol、9:457~92ページ(1991);Capelら、Immunomethods、4:25~34ページ(1994);及びde Haasら、J.Lab.Clin.Med.、126:330~41ページ(1995)において総説されている。将来的に同定されることになるものを含め、他のFcRは、本明細書においては用語「FcR」に包含される。この用語には、胎児への母親のIgGの移行に関与している新生児の受容体FcRnも含まれる(Guyerら、J.Immunol.、117:587ページ(1976)及びKimら、J.Immunol.、24:249ページ(1994))。
【0059】
用語「逐次的な」は、クロマトグラフィーに関して本明細書において使用する場合は、第1のクロマトグラフィーに続いて第2のクロマトグラフィーを有することを指す。追加的な工程が、第1のクロマトグラフィーと第2のクロマトグラフィーの間に含まれていてもよい。
【0060】
用語「連続的な」は、クロマトグラフィーに関して本明細書において使用する場合、直接繋がっているか、又は2つのクロマトグラフィー材料間の連続的な流れを可能にする何らかの他のメカニズムを有するかのいずれかである、第1のクロマトグラフィー材料及び第2のクロマトグラフィー材料を有することを指す。
【0061】
「夾雑物」は、所望のポリペプチド産物とは異なる材料を指す。夾雑物としては、限定するものではないが、宿主細胞材料、例えばCHOP;浸出されたプロテインA;核酸;所望のポリペプチドのバリアント、断片、凝集体、又は誘導体;別のポリペプチド;エンドトキシン;ウイルス性夾雑物;細胞培養培地成分等が挙げられる。幾つかの例において、夾雑物は、例えば限定されるものではないが、細菌細胞(大腸菌(E.coli)細胞など)、昆虫細胞、原核細胞、真核細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、鳥類細胞、真菌細胞に由来する宿主細胞タンパク質(HCP)であってもよい。
【0062】
クロマトグラフィー材料の「動的結合容量」は、結合されていない産物の顕著なブレークスルーが起きる前の実際のフロー条件下で材料が結合するであろう産物(例えばポリペプチド)の量である。
【0063】
「分配係数」Kpは、本明細書において使用する場合、固定相中の産物(例えばポリペプチド)のモル濃度を、移動相中の産物のモル濃度で割った値を指す。
【0064】
「ロード密度」は、ある体積のクロマトグラフィー材料(例:リットル)と接触させられる組成物の量(例:グラム)を指す。幾つかの例においては、ロード密度はg/Lで表現される。
【0065】
本明細書において、「約」いくらかという値又はパラメーターに言及した場合、そこには、そこに書かれた値又はパラメーター自体に向けられる変動値が含まれる(また、そこに記載されている)。例えば、「約X」という記載には、「X」についての記載が含まれる。
【0066】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「or」、及び「the」には、文脈によりそうでないことが明確に述べられていない限り、複数の指示物が含まれる。本明細書に記載されている本発明の態様及び変形には、「~からなる(consisting)」及び/又は「~から本質的に成る」態様及び変形態様が含まれることが理解される。
【0067】
II.精製の方法
本明細書では、オーバーロード/溶出クロマトグラフィー(OEC)を用いて、産物(例えばポリペプチド)と少なくとも一の夾雑物とを含む組成物から該産物を精製するための方法が提供される。OECは、異なるモードのクロマトグラフィーによりもたらされる利益が単一のクロマトグラフィーモード内で実現化される動作モードを提供する。OECは、不純物除去の強化及び顕著な製造上の利点、例えば、カラムの小型化、プラント適合の改良、及び低コスト化をもたらしながら、多種類の樹脂を用いて実現することができる。OECを用いる動作モードは、3つの異なる構成要素に分解することができる。
【0068】
1.オーバーロード: 組成物はクロマトグラフィー材料上にロードされるが、このとき、産物(例えばポリペプチド)が、クロマトグラフィー材料上に、産物に対する該材料の動的結合容量(DBC)を超過する量でロードされるようにする。幾つかの実施態様において、ロード条件(pH及び導電率など)は、不純物がクロマトグラフィー材料と強く結合する条件に決定される。幾つかの実施態様において、クロマトグラフィーの条件は、結合後に産物がブレークスルーしても不純物のすべてではなくても大半はブレークスルーしないように選ばれる。幾つかの実施態様において、組成物は、一又は複数の夾雑物に対する材料のDBC又はその付近で、ロードされる。このオーバーロードモードにより、クロマトグラフィー材料を、産物に対する該材料の典型的なDBCを超えて利用することが可能になる。
【0069】
2.プーリング: 溶出液中での産物(例えばポリペプチド)のプーリングは、産物のブレークスルー時点で始まる。ロード条件は、ブレークスルー期にわたって不純物が結合し続けるような条件であることから、クロマトグラフィーのロード期にわたって、溶出液中で、清浄な産物のプールを得ることができる。
【0070】
3.溶出クロマトグラフィー材料上での組成物のロードが完了すると、産物(例えばポリペプチド)は、結合された産物は溶出されるが不純物の大部分はクロマトグラフィー材料と結合したままであるように定められる溶出条件を用いて、クロマトグラフィー材料から溶出される。
【0071】
幾つかの態様において、OECは、クロマトグラフィー材料の利用度を、産物に対する該材料のDBCを顕著に上回る利用度に高め、それにより、他のクロマトグラフィー法と比較して利益をもたらす。例えば、クロマトグラフィー材料を10倍多く利用しても、コストは顕著に低下する場合がある。
【0072】
クロマトグラフィー材料のロードが、クロマトグラフィー樹脂との産物(例えばポリペプチド)の結合を最大化するように最適化される従来の結合/溶出クロマトグラフィーとは異なり、OECの場合、ロード条件は、クロマトグラフィー材料との産物の結合ではなく、クロマトグラフィー材料との夾雑物の結合を最大化するように最適化してもよい。幾つかの態様において、組成物は、クロマトグラフィー材料上に、産物に対するクロマトグラフィー材料の動的結合容量を超過する量でロードされる。クロマトグラフィー材料をロードするプロセスにおいては、洗浄の際にブレークスルーする産物もあろうし、クロマトグラフィー材料と結合したままの産物もあろう。ロードが完了した時点で、クロマトグラフィー材料と結合されている残留産物をクロマトグラフィー材料から溶出させることができる。前述の幾つかの実施態様において、クロマトグラフィー材料は、クロマトグラフィーカラムである。前述の幾つかの実施態様において、クロマトグラフィー材料は、クロマトグラフィー膜である。
【0073】
本発明の幾つかの態様において、組成物は、クロマトグラフィー材料上に、組成物中の夾雑物のうち一又は複数に対するクロマトグラフィー材料の動的結合容量とほぼ同量でロードされる。幾つかの実施態様において、組成物は、クロマトグラフィー材料上に、産物に対するクロマトグラフィー材料の結合容量(the binding capacity)を超過する量でロードされる。幾つかの実施態様において、組成物は、クロマトグラフィー材料上に、夾雑物のうち一又は複数に対するクロマトグラフィー材料の動的結合容量とほぼ同量、かつ、産物に対するクロマトグラフィー材料の結合容量を超過する量で、ロードされる。幾つかの実施態様において、組成物は、クロマトグラフィー材料上に、産物に対するクロマトグラフィー材料のDBCの20倍の量でロードされる。幾つかの実施態様において、組成物は、クロマトグラフィー材料上に、産物に対するクロマトグラフィー材料のDBCの100倍の量でロードされる。幾つかの実施態様において、組成物は、クロマトグラフィー材料上に、組成物中の夾雑物のすべてに対するクロマトグラフィー材料の動的結合容量とほぼ同量でロードされる。幾つかの実施態様において、組成物は、クロマトグラフィー材料上に、夾雑物のすべてに対するクロマトグラフィー材料の動的結合容量とほぼ同量、かつ、産物に対するクロマトグラフィー材料の結合容量を超過する量で、ロードされる。幾つかの実施態様において、組成物は、クロマトグラフィー材料上に、夾雑物のすべてに対するクロマトグラフィー材料の動的結合容量より少ない量、かつ、産物に対するクロマトグラフィー材料の結合容量を超過する量で、ロードされる。前述の幾つかの実施態様において、クロマトグラフィー材料は、クロマトグラフィーカラムの形態である。幾つかの実施態様において、クロマトグラフィーカラムは、産業規模のクロマトグラフィーカラムである。前述の幾つかの実施態様において、クロマトグラフィー材料は、クロマトグラフィー膜である。
【0074】
産物及び一又は複数の夾雑物に対するクロマトグラフィー材料の動的結合容量は、特定のクロマトグラフィー材料についてのpH及び対イオン濃度の関数として産物又は夾雑物に対する分配係数(Kp)を決定することにより推定することができる。例えば、ポリペプチドに対するクロマトグラフィー材料(例えば混合モード用の樹脂)の動的結合容量を決定してもよい。pH及び対イオン濃度の特定の組合せにおける、産物又は夾雑物に対するクロマトグラフィー材料の実際の結合容量は、過剰な産物及び/又は夾雑物と結合させてみることにより決定できる。
【0075】
幾つかの実施態様において、OECは、産物(例えばポリペプチド)のKpが約30より大きい条件で実施する。幾つかの実施態様において、OECは、産物のKpが約50より大きい条件で実施する。幾つかの実施態様において、OECは、産物のKpが約75より大きい条件で実施する。幾つかの実施態様において、OECは、産物のKpが約100より大きい条件で実施する。
【0076】
産物(例えばポリペプチド)と夾雑物とを含む特定の組成物のOECを行う場合の条件は、異なるpH及び対イオン濃度での特定のクロマトグラフィー材料のKp及び動的結合容量を測定することにより決定できる。ハイスループットスクリーニングを行うことで、夾雑物の結合度が高く、夾雑物のすべてではなくても大半を溶出させることなく産物を溶出させ得るOEC条件を決定することができる。例えば、組成物は、ハイスループットシステム下、例えばマルチプルウェルプレートのウェル中で、多様なpH及び対イオン濃度のバッファー中でクロマトグラフィー材料と共にインキュベートすることができる。インキュベーション期間の後、上清をクロマトグラフィー材料から分離し、上清中の産物又は夾雑物の量を決定する。幾つかの実施態様においては、低濃度の組成物を使用してKpを決定する。幾つかの実施態様においては、高濃度の組成物を使用して動的結合容量を決定する。
【0077】
特定の産物及び夾雑物に対するクロマトグラフィー材料のKp及び動的結合容量に関する情報をもたらすことに加え、ハイスループットスクリーニングは、pH及び対イオン濃度に関してのロード及び溶出条件への指標をもたらす。例えば、幾つかの実施態様においては、ロードバッファーのpH及び対イオン濃度をハイスループットスクリーニングにより選択することで、クロマトグラフィー材料との夾雑物の結合を最大化するが同時に溶出液中の産物(例えばポリペプチド)の量も最大化しつつ、溶出液中の夾雑物(例えば宿主細胞タンパク質)の量を最小化する。幾つかの実施態様において、組成物は、クロマトグラフィー材料上に、組成物中の夾雑物のほぼすべてがクロマトグラフィー材料と結合する、ハイスループットスクリーニングにより決定されるpH及び導電率でロードされる。幾つかの実施態様において、産物は、産物のほぼすべてがクロマトグラフィー材料から溶出し、夾雑物のほぼすべてがクロマトグラフィー材料と結合したままである、ハイスループットスクリーニングにより決定されるpH及び導電率でクロマトグラフィー材料から溶出される。
【0078】
幾つかの実施態様において、本発明は、クロマトグラフィー材料1mL当たりの結合される産物の量とは無関係にクロマトグラフィー材料を最大量の夾雑物と結合させる動作条件を定める(例えば、ハイスループットスクリーニング法を用いることにより)ための方法を提供する。スクリーニング工程は、結合された産物はクロマトグラフィー材料から溶出され、不純物はクロマトグラフィー材料と堅固に結合したままであるような溶出条件を同定するために用いられる。
【0079】
本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、クロマトグラフィー材料は、次に挙げる機能性、すなわち、陰イオン交換、陽イオン交換、水素結合、及び疎水性相互作用のうち一又は複数を可能にする官能基を含む混合モード材料である。幾つかの実施態様において、混合モード材料は、陰イオン交換及び疎水性相互作用を可能にする官能基を含む。混合モード材料は、N-ベンジル-N-メチルエタノールアミン、4-メルカプトエチルピリジン、ヘキシルアミン、もしくはフェニルプロピルアミンをリガンドとして含有してもよく、又は、架橋ポリアリルアミンを含有してもよい。混合モード材料の例としては、Capto Adhere樹脂、QMA樹脂、Capto MMC樹脂、MEP HyperCel樹脂、HEA HyperCel樹脂、PPA HyperCel樹脂、又はChromaSorb膜、又はSartobind STICが挙げられる。幾つかの実施態様において、混合モード材料は、Capto Adhere樹脂である。前述の幾つかの実施態様において、混合モード材料は、混合モードクロマトグラフィーカラムである。前述の幾つかの実施態様において、混合モード材料は、混合モード用の膜である。
【0080】
本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、クロマトグラフィー材料は、イオン交換クロマトグラフィー材料、例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー材料又は陽イオン交換クロマトグラフィー材料である。本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、クロマトグラフィー材料は、陰イオン交換材料である。幾つかの実施態様において、陰イオン交換クロマトグラフィー材料は、正に帯電しており遊離陰イオンを有する固相であり、固相を通り過ぎさせられる又は通過させられる水溶液中で陰イオンと交換させるためのものである。本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、陰イオン交換材料は、膜、モノリス、又は樹脂であってもよい。一実施態様において、陰イオン交換材料は、樹脂であってもよい。幾つかの実施態様において、陰イオン交換材料は、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、もしくは第四アンモニウムイオン官能基、ポリアミン官能基、又はジエチルアミノエチル(diethylaminoaethyl)官能基を含んでもよい。前述の幾つかの実施態様において、陰イオン交換クロマトグラフィー材料は、陰イオン交換クロマトグラフィーカラムである。前述の幾つかの実施態様において、陰イオン交換クロマトグラフィー材料は、陰イオン交換クロマトグラフィー膜である。
【0081】
本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、クロマトグラフィー材料は、陽イオン交換材料である。幾つかの実施態様において、陽イオン交換材料は、負に帯電しており遊離陽イオンを有する固相であり、固相を通り過ぎさせられる又は通過させられる水溶液中で陽イオンと交換させるためのものである。本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、陽イオン交換材料は、膜、モノリス、又は樹脂であってもよい。幾つかの実施態様において、陽イオン交換材料は、樹脂であってもよい。陽イオン交換材料は、カルボン酸官能基又はスルホン酸官能基、限定されるものではないが例えば、スルホナート、カルボン酸、カルボキシメチルスルホン酸、スルホイソブチル、スルホエチル、カルボキシル、スルホプロピル、スルホニル、スルホキシエチル、又はオルトホスファートを含んでもよい。前述の幾つかの実施態様において、陽イオン交換クロマトグラフィー材料は、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムである。前述の幾つかの実施態様において、陽イオン交換クロマトグラフィー材料は、陽イオン交換クロマトグラフィー膜である。本発明の幾つかの実施態様において、クロマトグラフィー材料は、陽イオン交換クロマトグラフィー材料ではない。
【0082】
本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、イオン交換材料は、従来のクロマトグラフィー材料又は対流性のクロマトグラフィー材料を利用してもよい。従来のクロマトグラフィー材料としては、例えば、灌流性の(perfusive)材料(例えば、ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)樹脂)及び拡散性の材料(例えば、架橋アガロース樹脂)が挙げられる。幾つかの実施態様において、ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)樹脂は、Poros樹脂であってもよい。幾つかの実施態様において、架橋アガロース樹脂は、スルホプロピル-Sepharose Fast Flow(「SPSFF」)樹脂であってもよい。対流性のクロマトグラフィー材料は、膜(例えば、ポリエーテルスルホン)又はモノリス材料(例えば架橋ポリマー)であってもよい。ポリエーテルスルホンの膜は、Mustangであってもよい。架橋ポリマーのモノリス材料は、架橋ポリ(メタクリル酸グリシジル-co-ジメタクリル酸エチレン)であってもよい。
【0083】
陰イオン交換材料の例は、当技術分野において公知であり、限定されるものではないが、Poros HQ 50、Poros PI 50、Poros D、Mustang Q、Q Sepharose FF、及びDEAE Sepharoseが挙げられる。
【0084】
陽イオン交換材料の例は、当技術分野において公知であり、限定されるものではないが、Mustang S、Sartobind S、SO3 Monolith、S Ceramic HyperD、Poros XS、Poros HS50、Poros HS20、SPSFF、SP-Sepharose XL(SPXL)、CM Sepharose Fast Flow、Capto S、Fractogel Se HiCap、Fractogel SO3、又はFractogel COOが挙げられる。本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、陽イオン交換材料は、Poros HS50である。幾つかの実施態様において、Poros HS樹脂は、Poros HS 50μm粒子又はPoros HS 20μm粒子であってもよい。
【0085】
本発明の幾つかの態様において、クロマトグラフィー材料は、疎水性相互作用クロマトグラフィー材料である。疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)は、疎水性により生体分子を分離する液体クロマトグラフィー法である。HICクロマトグラフィー材料の例としては、限定されるものではないが、Toyopearlヘキシル650、Toyopearlブチル650、Toyopearlフェニル650、Toyopearlエーテル650、Source、Resource、Sepharose Hi-Trap、オクチルセファロース、フェニルセファロースが挙げられる。前述の幾つかの実施態様において、HICクロマトグラフィー材料は、HICクロマトグラフィーカラムである。前述の幾つかの実施態様において、HICクロマトグラフィー材料は、HICクロマトグラフィー膜である。
【0086】
本発明の幾つかの態様において、クロマトグラフィー材料は、ヒドロキシアパタイト(HAP)クロマトグラフィー材料である。ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー材料の例としては、限定されるものではないが、HA Ultrogel及びCHTヒドロキシアパタイトが挙げられる。前述の幾つかの実施態様において、HAPクロマトグラフィー材料は、HAPクロマトグラフィーカラムである。前述の幾つかの実施態様において、HAPクロマトグラフィー材料は、HAPクロマトグラフィー膜である。
【0087】
本発明の幾つかの態様において、クロマトグラフィー材料は、アフィニティークロマトグラフィー材料である。アフィニティークロマトグラフィー材料の例としては、限定されるものではないが、プロテインA又はプロテインGで誘導体化されたクロマトグラフィー材料が挙げられる。アフィニティークロマトグラフィー材料の例としては、限定されるものではないが、Prosep-VA、Prosep-VA Ultra Plus、Protein A sepharose fast flow、Toyopearl Protein A、MAbSelect、MAbSelect SuRe、及びMAbSelect SuRe LXが挙げられる。前述の幾つかの実施態様において、アフィニティークロマトグラフィー材料は、アフィニティークロマトグラフィーカラムである。前述の幾つかの実施態様において、アフィニティークロマトグラフィー材料は、アフィニティークロマトグラフィー膜である。
【0088】
クロマトグラフィー材料上での組成物のロードは、OECによる夾雑物からの産物の分離について最適化してもよい。幾つかの実施態様において、産物は、ポリペプチドである。幾つかの実施態様において、クロマトグラフィー材料上への組成物のロードは、クロマトグラフィー材料との夾雑物の結合について最適化される。例えば、組成物は、クロマトグラフィー材料(例えばクロマトグラフィーカラム)上に、数通りの異なるpHのロードバッファーに入った状態でロードしてもよいが、このときロードバッファーの導電率は一定である。あるいは、組成物は、クロマトグラフィー材料上に、数通りの異なる導電率のロードバッファーに入った状態でロードしてもよいが、このときロードバッファーのpHは一定である。クロマトグラフィー材料上での組成物のロード、及びクロマトグラフィー材料からプール画分中への産物の溶出が完了すると、プール画分中の夾雑物の量により、所与のpH又は導電率についての、夾雑物からの産物の分離に関する情報が得られる。本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、組成物は、クロマトグラフィー材料上に、クロマトグラフィー材料に対して、約30g/L、40g/L、50g/L、60g/L、70g/L、80g/L、90g/L、100g/L、110g/L、120g/L、130g/L、140g/L、150g/L、160g/L、170g/L、180g/L、190g/L、200g/L、300g/L、400g/L、500g/L、550g/L、600g/L、650g/L、700g/L、800g/L、900g/L、1000g/L、2000g/L又は5000g/Lのいずれかより高いポリペプチドのロード密度でロードされる。幾つかの実施態様において、組成物は、クロマトグラフィー材料上に、クロマトグラフィー材料に対して、約30g/L、40g/L、50g/L、60g/L、70g/L、80g/L、90g/L、100g/L、110g/L、120g/L、130g/L、140g/L、150g/L、160g/L、170g/L、180g/L、190g/L、200g/L、300g/L、400g/L、500g/L、550g/L、600g/L、650g/L、700g/L、800g/L、900g/L、1000g/L又は2000g/Lのいずれかであるポリペプチドのロード密度でロードされる。組成物は、クロマトグラフィー材料上に、クロマトグラフィー材料に対して、約30g/L及び2000g/L、30g/L及び1000g/L、30g/L及び200g/L、30g/L及び180g/L、50g/L及び2000g/L、50g/L及び1000g/L、50g/L及び200g/L、50g/L及び180g/L、150g/L及び2000g/L、150g/L及び1500g/L、150g/L及び1000g/L、200g/L及び1000g/L、200g/L及び1500g/L、300g/L及び1500g/L、400g/L及び1000g/L、又は500g/L及び1000g/Lのいずれかであるポリペプチドのロード密度でロードしてもよい。
【0089】
本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、組成物は、混合モードクロマトグラフィー材料上に、混合モードクロマトグラフィー材料に対して、約30g/L、40g/L、50g/L、60g/L、70g/L、80g/L、90g/L、100g/L、110g/L、120g/L、130g/L、140g/L、150g/L、160g/L、170g/L、180g/L、190g/L、200g/L、300g/L、400g/L、500g/L、550g/L、600g/L、650g/L、700g/L、800g/L、900g/L、1000g/L、2000g/L又は5000g/Lのいずれかより高いポリペプチドのロード密度でロードされる。幾つかの実施態様において、組成物は、混合モードクロマトグラフィー材料上に、混合モードクロマトグラフィー材料に対して、約30g/L、40g/L、50g/L、60g/L、70g/L、80g/L、90g/L、100g/L、110g/L、120g/L、130g/L、140g/L、150g/L、160g/L、170g/L、180g/L、190g/L、200g/L、300g/L、400g/L、500g/L、550g/L、600g/L、650g/L、700g/L、800g/L、900g/L、1000g/L又は2000g/Lのいずれかであるポリペプチドのロード密度でロードされる。組成物は、混合モードクロマトグラフィー材料上に、混合モードクロマトグラフィー材料に対して、約30g/L及び2000g/L、30g/L及び1000g/L、30g/L及び200g/L、30g/L及び180g/L、50g/L及び2000g/L、50g/L及び1000g/L、50g/L及び200g/L、50g/L及び180g/L、150g/L及び2000g/L、150g/L及び1500g/L、150g/L及び1000g/L、200g/L及び1000g/L、200g/L及び1500g/L、300g/L及び1500g/L、400g/L及び1000g/L、又は500g/L及び1000g/Lのいずれかであるポリペプチドのロード密度でロードしてもよい。幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、70g/L~180g/Lの密度でクロマトグラフィー材料上にロードされる。本発明の幾つかの実施態様において、混合モードクロマトグラフィーは、Capto Adhere樹脂である。幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、70g/L~180g/Lの密度でCapto Adhereクロマトグラフィー材料上にロードされる。前述の実施態様のさらなる実施態様において、ポリペプチドは、抗体又はその断片(antibody of a fragment thereof)である。
【0090】
本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、組成物は、陰イオン交換クロマトグラフィー材料上に、陰イオン交換クロマトグラフィー材料に対して、約30g/L、40g/L、50g/L、60g/L、70g/L、80g/L、90g/L、100g/L、110g/L、120g/L、130g/L、140g/L、150g/L、160g/L、170g/L、180g/L、190g/L、200g/L、300g/L、400g/L、500g/L、550g/L、600g/L、650g/L、700g/L、800g/L、900g/L、1000g/L、2000g/L又は5000g/Lのいずれかより高いポリペプチドのロード密度でロードされる。幾つかの実施態様において、組成物は、陰イオン交換クロマトグラフィー材料上に、陰イオン交換クロマトグラフィー材料に対して、約30g/L、40g/L、50g/L、60g/L、70g/L、80g/L、90g/L、100g/L、110g/L、120g/L、130g/L、140g/L、150g/L、160g/L、170g/L、180g/L、190g/L、200g/L、300g/L、400g/L、500g/L、550g/L、600g/L、650g/L、700g/L、800g/L、900g/L、1000g/L又は2000g/Lのいずれかであるポリペプチドのロード密度でロードされる。組成物は、陰イオン交換クロマトグラフィー材料上に、陰イオン交換クロマトグラフィー材料に対して、約30g/L及び2000g/L、30g/L及び1000g/L、30g/L及び200g/L、30g/L及び180g/L、50g/L及び2000g/L、50g/L及び1000g/L、50g/L及び200g/L、50g/L及び180g/L、150g/L及び2000g/L、150g/L及び1500g/L、150g/L及び1000g/L、200g/L及び1000g/L、200g/L及び1500g/L、300g/L及び1500g/L、400g/L及び1000g/L、又は500g/L及び1000g/Lのいずれかであるポリペプチドのロード密度でロードしてもよい。
【0091】
本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、組成物は、陽イオン交換クロマトグラフィー材料上に、陽イオン交換クロマトグラフィー材料に対して、約30g/L、40g/L、50g/L、60g/L、70g/L、80g/L、90g/L、100g/L、110g/L、120g/L、130g/L、140g/L、150g/L、160g/L、170g/L、180g/L、190g/L、200g/L、300g/L、400g/L、500g/L、550g/L、600g/L、650g/L、700g/L、800g/L、900g/L、1000g/L、2000g/L又は5000g/Lのいずれかより高いポリペプチドのロード密度でロードされる。幾つかの実施態様において、組成物は、陽イオン交換クロマトグラフィー材料上に、陽イオン交換クロマトグラフィー材料に対して、約30g/L、40g/L、50g/L、60g/L、70g/L、80g/L、90g/L、100g/L、110g/L、120g/L、130g/L、140g/L、150g/L、160g/L、170g/L、180g/L、190g/L、200g/L、300g/L、400g/L、500g/L、550g/L、600g/L、650g/L、700g/L、800g/L、900g/L、1000g/L又は2000g/Lのいずれかであるポリペプチドのロード密度でロードされる。組成物は、陽イオン交換クロマトグラフィー材料上に陽イオン交換クロマトグラフィー材料に対して、約30g/L及び2000g/L、30g/L及び1000g/L、30g/L及び200g/L、30g/L及び180g/L、50g/L及び2000g/L、50g/L及び1000g/L、50g/L及び200g/L、50g/L及び180g/L、150g/L及び2000g/L、150g/L及び1500g/L、150g/L及び1000g/L、200g/L及び1000g/L、200g/L及び1500g/L、300g/L及び1500g/L、400g/L及び1000g/L、又は500g/L及び1000g/Lのいずれかであるポリペプチドのロード密度でロードしてもよい。
【0092】
前述の方法は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー材料上にロードする工程をさらに含んでもよい。幾つかの実施態様において、ポリペプチド産物は、OECに先立ちプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによりまず精製される抗体又はその断片である。プロテインAアフィニティークロマトグラフィー材料上にロードする工程は、一般に、ただし必ずそうとは限らないが、他のクロマトグラフィー工程(複数可)の前に実施される。幾つかの実施態様において、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー材料上にロードする工程は、オーバーロードされる交換/溶出クロマトグラフィーの逐次的な工程と組み合わせてもよい。幾つかの実施態様において、逐次的な工程は、連続的である。幾つかの実施態様において、連続的な精製は、同じ流速、導電率、及び/又はpHを利用する。
【0093】
OECモード下でのクロマトグラフィー材料からの産物(例えばポリペプチド)の溶出は、夾雑物が最少かつプール体積が最小となる産物の収率について最適化してもよい。例えば、組成物は、クロマトグラフィー材料(例えばクロマトグラフィーカラム)上に、ロードバッファーに入った状態でロードしてもよい。ロードが完了すると、産物は、数通りの異なるpHのバッファーで溶出されるが、このとき溶出バッファーの導電率は一定である。あるいは、産物は、数通りの異なる導電率の溶出バッファーに入った状態でクロマトグラフィー材料から溶出させてもよいが、このとき溶出バッファーのpHは一定である。クロマトグラフィー材料からの産物の溶出が完了すると、プール画分中の夾雑物の量により、所与のpH又は導電率についての、夾雑物からの産物の分離に関する情報が得られる。多数の画分(例えば8カラム体積)中の産物の溶出では、溶出プロファイルの「テーリング」が示される。本発明の幾つかの実施態様において、溶出のテーリングは、最低限に抑えられる。
【0094】
多様なバッファーを、例えば、バッファーの所望のpH、バッファーの所望の導電率、目的のタンパク質の特徴、及び精製方法に応じて、用いることができる。本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、本方法は、バッファーを使用することを含む。バッファーは、ロードバッファー、平衡バッファー、又は洗浄バッファーであってもよい。幾つかの実施態様において、ロードバッファー、平衡バッファー、及び/又は、洗浄バッファーのうち一又は複数は、同じものである。幾つかの実施態様において、ロードバッファー、平衡バッファー、及び/又は洗浄バッファーは、異なるものである。本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、バッファーは、塩を含む。ロードバッファーは、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、又はそれらの混合物を含んでもよい。幾つかの実施態様において、ロードバッファーは、塩化ナトリウムバッファーである。幾つかの実施態様において、ロードバッファーは、酢酸ナトリウムバッファーである。
【0095】
ロードとは、本明細書において使用する場合、クロマトグラフィー材料上にロードされる組成物である。ロードバッファーとは、目的の産物を含む組成物をクロマトグラフィー材料上にロードするために使用されるバッファーである。クロマトグラフィー材料は、精製しようとする組成物をロードするのに先立ち、平衡バッファーで平衡化させてもよい。幾つかの例において、クロマトグラフィー材料上に組成物をロードした後、かつ、固相からの目的のポリペプチドの溶出の前に、洗浄バッファーが使用される。ただし、目的の産物(例えばポリペプチド)のうちいくらかを、洗浄バッファー(例えば、フロースルーモードと類似したもの)によりクロマトグラフィー材料から取り出してもよい。
【0096】
溶出は、本明細書において使用する場合、産物(例えばポリペプチド)をクロマトグラフィー材料から取り出すことである。溶出バッファーは、ポリペプチド又は他の目的の産物をクロマトグラフィー材料から溶出させるために使用されるバッファーである。多くの場合において、溶出バッファーは、ロードバッファーとは異なる物理的特徴を有する。例えば、溶出バッファーは、ロードバッファーとは異なる導電率又はロードバッファーとは異なるpHを有していてもよい。幾つかの実施態様において、溶出バッファーは、ロードバッファーより低い導電率を有する。幾つかの実施態様において、溶出バッファーは、ロードバッファーより高い導電率を有する。幾つかの実施態様において、溶出バッファーは、ロードバッファーより低いpHを有する。幾つかの実施態様において、溶出バッファーは、ロードバッファーより高いpHを有する。幾つかの実施態様において、溶出バッファーは、ロードバッファーとは異なる導電率及び異なるpHを有する。溶出バッファーは、より高い又はより低い導電率と、より高い又はより低いpHとの任意の組合せを有することができる。
【0097】
導電率は、水溶液が2つの電極間で電流を伝導させる能力を指す。溶液中では、電流はイオン輸送により流れる。したがって、水溶液中に存在するイオンの量の増加に伴い、溶液は、より高い導電率を有することになる。導電率の測定値の基本単位は、Siemen(又はmho)、mho(mS/cm)であり、導電率計、例えば、多様なモデルのOrion導電率計を使用して測定することができる。電解導電率は、溶液中のイオンが電流を運ぶ能力であることから、溶液の導電率は、溶液中のイオンの濃度を変えることにより変化させ得る。例えば、溶液における緩衝剤の濃度及び/又は塩(例えば塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、又は塩化カリウム)の濃度は、望ましい導電率を達成するために変化させてもよい。好ましくは、多様なバッファーの塩濃度は、望ましい導電率を達成するために改変される。
【0098】
本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、ロードバッファーの導電率は、約4.0mS/cm、4.5mS/cm、5.0mS/cm、5.5mS/cm、6.0mS/cm、6.5mS/cm、7.0mS/cm、7.5mS/cm、8.0mS/cm、8.5mS/cm、9.0mS/cm、9.5mS/cm、又は10mS/cmのいずれかより高い。導電率は、約4mS/cm~17mS/cm、4mS/cm~10mS/cm、4mS/cm~7mS/cm、5mS/cm~17mS/cm、5mS/cm~10mS/cm、又は5mS/cm~7mS/cmのいずれかであってもよい。幾つかの実施態様において、導電率は、約4mS/cm、4.5mS/cm、5.0mS/cm、5.5mS/cm、6.0mS/cm、6.5mS/cm、7.0mS/cm、7.5mS/cm、8.0mS/cm、8.5mS/cm、9.0mS/cm、9.5mS/cm、又は10mS/cmのいずれかである。一態様において、導電率は、ロードバッファー、平衡バッファー、及び/又は洗浄バッファーの導電率である。幾つかの実施態様において、ロードバッファー、平衡バッファー、及び洗浄バッファーのうち一又は複数の導電率は、同じである。幾つかの実施態様において、ロードバッファーの導電率は、洗浄バッファー及び/又は平衡バッファーの導電率とは異なる。幾つかの実施態様において、組成物は、混合モードクロマトグラフィー材料上に、導電率が約5.5mS/cmのバッファーに入った状態で、ロードされる。幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、抗体又はその断片である。
【0099】
幾つかの実施態様において、溶出バッファーの導電率は、ロードバッファーの導電率より低い。本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、溶出バッファーの導電率は、約0.0mS/cm、0.5mS/cm、1.0mS/cm、1.5mS/cm、2.0mS/cm、2.5mS/cm、3.0mS/cm、3.5mS/cm、4.0mS/cm、4.5mS/cm、5.0mS/cm、5.5mS/cm、6.0mS/cm、6.5mS/cm、又は7.0mS/cmのいずれかより低い。導電率は、約0mS/cm~7mS/cm、1mS/cm~7mS/cm、2mS/cm~7mS/cm、3mS/cm~7mS/cm、又は4mS/cm~7mS/cm、0mS/cm~5.0mS/cm、1mS/cm~5mS/cm、2mS/cm~5mS/cm、3mS/cm~5mS/cm、又は4mS/cm~5mS/cmのいずれかであってもよい。幾つかの実施態様において、溶出バッファーの導電率は、約0.0mS/cm、0.5mS/cm、1.0mS/cm、1.5mS/cm、2.0mS/cm、2.5mS/cm、3.0mS/cm、3.5mS/cm、4mS/cm、4.5mS/cm、5.0mS/cm、5.5mS/cm、6.0mS/cm、6.5mS/cm、又は7.0mS/cmのいずれかである。幾つかの実施態様において、先に記載した溶出バッファーは、混合モードOEC、陰イオン交換OEC、陽イオン交換OEC、アフィニティーOEC、又はHIC OECで使用される。
【0100】
幾つかの実施態様において、溶出バッファーの導電率は、ロードバッファーの導電率より高い。本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、溶出バッファーの導電率は、約5.5mS/cm、6.0mS/cm、6.5mS/cm、7.0mS/cm、7.5mS/cm、8.0mS/cm、8.5mS/cm、9.0mS/cm、9.5mS/cm、10mS/cm、11mS/cm、12mS/cm、13mS/cm、14mS/cm、15mS/cm、16mS/cm、17.0mS/cm、18.0mS/cm、19.0mS/cm、20.0mS/cm、21.0mS/cm、22.0mS/cm、23.0mS/cm、24.0mS/cm、又は25.0mS/cmのいずれかより高い。導電率は、約5.5mS/cm~17mS/cm、6.0mS/cm~17mS/cm、7mS/cm~17mS/cm、8mS/cm~17mS/cm、9mS/cm~17mS/cm、又は10mS/cm~17mS/cmのいずれかであってもよい。幾つかの実施態様において、溶出バッファーの導電率は、約5.5mS/cm、6.0mS/cm、6.5mS/cm、7.0mS/cm、7.5mS/cm、8.0mS/cm、8.5mS/cm、9.0mS/cm、9.5mS/cm、10mS/cm、11mS/cm、12mS/cm、13mS/cm、14mS/cm、15mS/cm、16mS/cm、又は17.0mS/cmのいずれかである。幾つかの実施態様において、前述の溶出バッファーは、混合モードOEC、陰イオン交換OEC、陽イオン交換OEC、アフィニティーOEC、又はHIC OECで使用する。幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、約4~約1mS/cmの導電率で混合モードクロマトグラフィーから溶出される。幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、約4~約1mS/cmの導電率でCapto Adhereクロマトグラフィーから溶出される。幾つかの実施態様において、抗体又はその断片は、約4mS/cm~約1mS/cmの導電率でCapto Adhereクロマトグラフィーから溶出される。
【0101】
前述の任意の実施態様の幾つかの態様において、溶出バッファーの導電率は、ロードバッファー及び/又は洗浄バッファーから、段階的勾配又は直線的勾配により変化した。
【0102】
本発明の幾つかの実施態様において、ポリペプチドを含む組成物は、クロマトグラフィー材料上に、導電率が約5.5mS/cmのバッファーに入った状態でロードされ、ポリペプチドは、導電率が約4mS/cmの溶出バッファーに入った状態で、クロマトグラフィー材料から溶出される。幾つかの実施態様において、ロードバッファーの導電率は約5.5mS/cmであり、溶出バッファーの導電率は約3mS/cmである。幾つかの実施態様において、ロードバッファーの導電率は約5.5mS/cmであり、溶出バッファーの導電率は約2mS/cmである。幾つかの実施態様において、ロードバッファーの導電率は約5.5mS/cmであり、溶出バッファーの導電率は約1mS/cmである。前述の実施態様のさらなる実施態様において、クロマトグラフィー材料は、Capto Adhere樹脂である。前述の実施態様のさらなる実施態様において、ポリペプチドは、抗体又はその断片(antibody of fragment thereof)である。
【0103】
前述の任意の実施態様の幾つかの態様において、溶出バッファーの導電率は、ロードバッファー及び/又は洗浄バッファーから、段階的勾配又は直線的勾配により変化した。幾つかの実施態様において、ポリペプチドを含む組成物は、約5.5mS/cmでCapto Adhereクロマトグラフィー上にロードされ、目的のポリペプチドは、約5カラム体積(CV)を通じた約5.5mS/cmから約1mS/cmへの直線的な導電率勾配により、Capto Adhereクロマトグラフィーから溶出される。幾つかの実施態様において、ポリペプチドを含む組成物は、約5.5mS/cmでCapto Adhereクロマトグラフィー上にロードされ、目的のポリペプチドは、10.0CVを通じた約5.5mS/cmから約1mS/cmへの直線的な導電率勾配により、Capto Adhereクロマトグラフィーから溶出される。幾つかの実施態様において、ポリペプチドを含む組成物は、約10mS/cmでCapto Adhereクロマトグラフィー上にロードされ、目的のポリペプチドは、約5CVを通じた約10.0mS/cmから約1mS/cmへの直線的な導電率勾配により、Capto Adhereクロマトグラフィーから溶出される。幾つかの実施態様において、ポリペプチドを含む組成物は、約10mS/cmでCapto Adhereクロマトグラフィー上にロードされ、目的のポリペプチドは、約10CVを通じた約10.0mS/cmから約1mS/cmへの直線的な導電率勾配により、Capto Adhereクロマトグラフィーから溶出される。幾つかの実施態様において、ポリペプチドを含む組成物は、約10mS/cmでCapto Adhereクロマトグラフィー上にロードされ、目的のポリペプチドは、約15CVを通じた約10.0mS/cmから約(abut)1mS/cmへの直線的な導電率勾配により、Capto Adhereクロマトグラフィーから溶出される。
【0104】
前述の任意の実施態様の幾つかの態様において、溶出バッファーの導電率は、ロードバッファー及び/又は洗浄バッファーから、段階的勾配又は直線的勾配により変化した。幾つかの実施態様において、ポリペプチドを含む組成物は、約5.5mS/cmでクロマトグラフィー材料上にロードされ、目的のポリペプチドは、5カラム体積を通じて5.5mS/cmから1mS/cmへ~10.0カラム体積を通じて5.5mS/cmから1mS/cmへの間の直線的な導電率勾配により、クロマトグラフィー材料から溶出される。幾つかの実施態様において、ポリペプチドを含む組成物は、約10mS/cmでクロマトグラフィー材料上にロードされ、目的のポリペプチドは、5カラム体積を通じて10.0mS/cmから1mS/cmへ~10カラム体積を通じて10.0mS/cmから1mS/cmへ~15カラム体積を通じて10.0mS/cmから1mS/cmへの間の直線的な導電率勾配により、クロマトグラフィー材料から溶出される。
【0105】
本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、ロードバッファーのpHは、約10、9、8、7、6、又は5のいずれかより低い。本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、ロードバッファーのpHは、約4、5、6、7、8、又は9のいずれかより高い。ロードバッファーのpHは、約4~9、4~8、4~7、5~9、5~8、5~7、5~6のいずれかであってもよい。幾つかの実施態様において、ロードバッファーのpHは、約4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、又は8のいずれかである。このpHは、ロードバッファー、平衡バッファー、又は洗浄バッファーのpHであってもよい。幾つかの実施態様において、ロードバッファー、平衡バッファー、及び/又は洗浄バッファーのうち一又は複数のpHは、同じである。幾つかの実施態様において、ロードバッファーのpHは、平衡バッファー及び/又は洗浄バッファーのpHとは異なる。
【0106】
幾つかの実施態様において、溶出バッファーのpHは、ロードバッファーのpHより低い。本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、溶出バッファーのpHは、約8、7、6、5、4、3、又は2のいずれかより低い。溶出バッファーのpHは、約4~9、4~8、4~7、4~6、4~5、5~9、5~8、5~7、5~6、6~9、6~8、6~7のいずれかであってもよい。幾つかの実施態様において、溶出バッファーのpHは、約4.0、4.5、5.0.5.5、6.0、6.5、7/0、7.5、8.0、8.5、又は9.0のいずれかである。
【0107】
幾つかの実施態様において、溶出バッファーのpHは、ロードバッファーのpHより高い。本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、溶出バッファーのpHは、約5、6、7、8、又は9のいずれかより高い。溶出バッファーのpHは、4~9、5~9、6~9、7~9、8~9、4~8、5~8、6~8、7~8、4~7、5~7、及び6~7のいずれかであってもよい。幾つかの実施態様において、溶出バッファーのpHは、約4.0、4.5、5.0.5.5、6.0、6.5、7/0、7.5、8.0、8.5又は9.0のいずれかである。
【0108】
前述の任意の実施態様の幾つかの態様において、溶出バッファーのpHは、ロードバッファー及び/又は洗浄バッファーから、段階的勾配又は直線的勾配により変化した。
【0109】
本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、流速は、約50CV/hr、40CV/hr、又は30CV/hrのいずれかより低い。流速は、約5CV/hr~50CV/hr、10CV/hr~40CV/hr、又は18CV/hr~36CV/hrのいずれかであってもよい。幾つかの実施態様において、流速は、約9CV/hr、18CV/hr、25CV/hr、30CV/hr、36CV/hr、又は40CV/hrのいずれかである。本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、流速は、約100cm/hr、75cm/hr、又は50cm/hrのいずれかより低い。流速は、約25cm/hr~150cm/hr、25cm/hr~100cm/hr、50cm/hr~100cm/hr、又は65cm/hr~85cm/hrのいずれかであってもよい。
【0110】
ベッド高は、使用されるクロマトグラフィー材料の高さである。本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、ベッド高は、約3cm、10cm、又は15cmのいずれかより高い。ベッド高は、約3cm~35cm、5cm~15cm、3cm~10cm、又は5cm~8cmのいずれかであってもよい。幾つかの実施態様において、ベッド高は、約3cm、5cm、10cm、又は15cmのいずれかである。幾つかの実施態様において、ベッド高は、ロード中のポリペプチド又は夾雑物の量に基づいて決定される。
【0111】
幾つかの実施態様において、クロマトグラフィーは、体積が、約1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、15mL、20mL、25mL、30mL、40mL、50mL、75mL、100mL、200mL、300mL、400mL、500mL、600mL、700mL、800mL、900mL、1L、2L、3L、4L、5L、6L、7L、8L、9L、10L、25L、50L、100L、200L、300L、400L、500L、600L、700L、800L、900L又は100Lより大きい容器のカラムの形態である。
【0112】
本発明の幾つかの実施態様において、クロマトグラフィーから画分が収集される。幾つかの実施態様において、収集される画分は、約0.01CV、0.02CV、0.03CV、0.04CV、0.05CV、0.06CV、0.07CV、0.08CV、0.09CV、0.1CV、0.2CV、0.3CV、0.4CV、0.5CV、0.6CV、0.7CV、0.8CV、0.9CV、1.0CV、2.0CV、3.0CV、4.0CV、5.0CV、6.0CV、7.0CV、8.0CV、9.0CV、又は10.0CVより大きい。幾つかの実施態様において、産物(例えばポリペプチド)を含有する画分はプールされる。幾つかの実施態様において、ロード画分由来及び溶出画分由来のポリペプチドを含有する画分がプールされる。画分中のポリペプチドの量は、当業者が決定でき、例えば、画分中のポリペプチドの量は、UV分光法により決定できる。幾つかの実施態様において、検出可能なポリペプチド断片を含有する画分がプールされる。
【0113】
本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、少なくとも一の夾雑物は、宿主細胞材料、例えば、CHOP;浸出されたプロテインA;核酸;所望のポリペプチドのバリアント、断片、凝集体、又は誘導体;別のポリペプチド;エンドトキシン;ウイルス性夾雑物;細胞培養培地成分、カルボキシペプチダーゼB、ゲンタマイシン等である。幾つかの例において、夾雑物は、例えば限定されるものではないが、細菌細胞(例:大腸菌細胞)、昆虫細胞、原核細胞、真核細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、鳥類細胞、真菌細胞に由来する宿主細胞タンパク質(HCP)であってもよい。
【0114】
宿主細胞タンパク質(HCP)は、本ポリペプチドが産生される細胞由来のタンパク質である。例えば、CHOPは、宿主細胞由来のタンパク質、すなわち、チャイニーズハムスター卵巣タンパク質である。CHOPの量は、酵素結合免疫吸着測定法(「ELISA」)又はMeso Scale Discovery(「MSO」)により測定してもよい。本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、HCP(例えばCHOP)の量は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%のいずれかより多く減少する。HCPの量は、約10%~99%、30%~95%、30%~99%、50%~95%、50%~99%、75%~99%、又は85%~99%のいずれかだけ減少してもよい。幾つかの実施態様において、HCPの量は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又は98%のいずれかだけ減少する。幾つかの実施態様において、減少率は、精製工程(複数可)から回収された組成物中のHCPの量を、精製工程(複数可)を行う前の組成物中のHCPの量と比較することにより決定される。
【0115】
凝集ポリペプチドは、高分子量(HMW)タンパク質であってもよい。幾つかの実施態様において、凝集ポリペプチドは、目的のポリペプチドの多量体である。HMWタンパク質は、目的のポリペプチドの、二量体、最大で単量体の8倍、又はそれより大きくてもよい。凝集タンパク質(例えば、HMWタンパク質)を測定する方法は、当技術分野において公知であり、実施例の項に記載されている。本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、凝集タンパク質の量は、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%のいずれかより多く減少する。凝集タンパク質の量は、約10%~99%、30%~95%、30%~99%、50%~95%、50%~99%、75%~99%、又は85%~99%のいずれかだけ減少してもよい。凝集タンパク質の量は、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%のいずれかだけ減少してもよい。幾つかの実施態様において、減少率は、精製工程(複数可)から回収された組成物中の凝集タンパク質(例えばHMWタンパク質)の量を、精製工程(複数可)を行う前の組成物中の凝集タンパク質(例えばHMWタンパク質)の量と比較することにより決定される。
【0116】
断片ポリペプチドは、低分子量(LMW)タンパク質であってもよい。幾つかの実施態様において、断片化ポリペプチドは、目的のポリペプチドの断片である。LMWタンパク質の例としては、限定されるものではないが、Fab(Fragment antigen binding;断片抗原結合)領域、Fc(fragment,crystallizable;結晶化可能な断片)領域、もしくはその両方の組合せ、又は、目的の抗体の任意のランダム断片化部が挙げられる。断片化タンパク質(例えば、LMWタンパク質)を測定する方法は、当技術分野において公知であり、実施例の項に記載されている。本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、LMWタンパク質の量は、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%のいずれかより多く減少する。LMWタンパク質の量は、約10%~99%、30%~95%、30%~99%、50%~95%、50%~99%、75%~99%、又は85%~99%のいずれかだけ減少してもよい。LMWタンパク質の量は、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%のいずれかだけ減少してもよい。幾つかの実施態様において、減少率は、精製工程(複数可)から回収された組成物中の断片化タンパク質(例えばLMWタンパク質)の量を、精製工程(複数可)を行う前の組成物中の断片化タンパク質(例えばLMWタンパク質)の量と比較することにより決定される。
【0117】
浸出されたプロテインAは、自身が結合されていた固相から脱離又は洗浄されたプロテインAである。例えば、浸出されたプロテインAは、プロテインAクロマトグラフィーカラムから浸出されることがある。プロテインAの量は、例えばELISAにより測定してもよい。本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、浸出されたプロテインAの量は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%のいずれかより多く減少する。浸出されたプロテインAの量は、約10%~99%、30%~95%、30%~99%、50%~95%、50%~99%、75%~99%、又は85%~99%のいずれかだけ減少してもよい。幾つかの実施態様において、浸出されたプロテインAの量は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%のいずれかだけ減少する。幾つかの実施態様において、減少率は、精製工程(複数可)から回収された組成物中の浸出されたプロテインAの量を、精製工程(複数可)を行う前の組成物中の浸出されたプロテインAの量と比較することにより決定される。
【0118】
DNA(例えば宿主細胞DNA)を測定する方法は、当技術分野において公知であり、実施例の項に記載されている。本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、DNAの量は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%のいずれかより多く減少する。DNAの量は、約10%~99%、30%~95%、30%~99%、50%~95%、50%~99%、75%~99%、又は85%~99%のいずれかだけ減少してもよい。DNAの量は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%のいずれかだけ減少してもよい。幾つかの実施態様において、減少率は、精製工程(複数可)から回収された組成物中のDNAの量を、精製工程(複数可)を行う前の組成物中のDNAの量と比較することにより決定される。
【0119】
細胞培養培地成分は、細胞培養培地中に存在する成分を指す。細胞培養培地は、細胞を収穫する時点での細胞培養培地であってもよい。幾つかの実施態様において、細胞培養培地成分は、ゲンタマイシンである。ゲンタマイシンの量は、ELISAにより測定してもよい。本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、細胞培養培地成分の量は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%のいずれかより多く減少する。細胞培養培地成分の量は、約10%~99%、30%~95%、30%~99%、50%~95%、50%~99%、75%~99%、又は85%~99%のいずれかだけ減少してもよい。幾つかの実施態様において、細胞培養培地成分の量は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は98%のいずれかだけ減少する。幾つかの実施態様において、減少率は、精製工程(複数可)から回収された組成物中の細胞培養培地成分の量を、精製工程(複数可)を行う前の組成物中の細胞培養培地成分の量と比較することにより決定される。
【0120】
本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、本方法は、本明細書に記載されている任意のOECの前又は後のいずれかに、一又は複数の精製工程をさらに含んでもよい。他の精製法としては、例として、イオン交換クロマトグラフィー、例えば陰イオン交換クロマトグラフィー及び陽イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、例えばプロテインAクロマトグラフィー及びプロテインGクロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー;アフィニティークロマトグラフィー;ゲル電気泳動;透析;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカを用いたクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;並びに、エピトープタグが付加された形態のポリペプチドを結合させるための金属キレート化カラムが挙げられる。
【0121】
本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、本方法は、精製されたポリペプチドを回収することをさらに含む。幾つかの実施態様において、精製されたポリペプチドは、本明細書に記載されている任意の精製工程から回収される。クロマトグラフィー工程は、陽イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、又はプロテインAクロマトグラフィーであってもよい。幾つかの実施態様において、OECクロマトグラフィーは、混合モードクロマトグラフィーであり、さらなるクロマトグラフィーは、陰イオン交換クロマトグラフィーである。幾つかの実施態様において、OECクロマトグラフィーは、混合モードクロマトグラフィーであり、さらなるクロマトグラフィーは、陽イオン交換クロマトグラフィーである。幾つかの実施態様において、OECクロマトグラフィーは、混合モードクロマトグラフィーであり、さらなるクロマトグラフィーは、HICクロマトグラフィーである。幾つかの実施態様において、OECクロマトグラフィーは、陰イオン交換クロマトグラフィーであり、さらなるクロマトグラフィーは、陽イオン交換クロマトグラフィーである。幾つかの実施態様において、OECクロマトグラフィーは、陰イオン交換クロマトグラフィーであり、さらなるクロマトグラフィーは、混合モードクロマトグラフィーである。幾つかの実施態様において、OECクロマトグラフィーは、陰イオン交換クロマトグラフィーであり、さらなるクロマトグラフィーは、HICクロマトグラフィーである。幾つかの実施態様において、OECクロマトグラフィーは、陽イオン交換クロマトグラフィーであり、さらなるクロマトグラフィーは、陰イオン交換クロマトグラフィーである。幾つかの実施態様において、OECクロマトグラフィーは、陽イオン交換クロマトグラフィーであり、さらなるクロマトグラフィーは、混合モードクロマトグラフィーである。幾つかの実施態様において、OECクロマトグラフィーは、陽イオン交換クロマトグラフィーであり、さらなるクロマトグラフィーは、HICクロマトグラフィーである。幾つかの実施態様において、OECクロマトグラフィーは、HICクロマトグラフィーであり、さらなるクロマトグラフィーは、混合モードクロマトグラフィーである。幾つかの実施態様において、OECクロマトグラフィーは、HICクロマトグラフィーであり、さらなるクロマトグラフィーは、陰イオン交換クロマトグラフィーである。幾つかの実施態様において、OECクロマトグラフィーは、HICクロマトグラフィーであり、さらなるクロマトグラフィーは、陽イオン交換クロマトグラフィーである。
【0122】
幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、OECに続いてウイルスろ過によりさらに精製される。ウイルスろ過は、ポリペプチド精製のための供給流中のウイルス性夾雑物を除去することである。ウイルスろ過の例としては、限外ろ過及び精密ろ過が挙げられる。幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、パルボウイルスフィルターを使用して精製される。
【0123】
幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、OECモードによるクロマトグラフィーの後で濃縮される。濃縮方法の例は、当技術分野において公知であり、限定されるものではないが、限外ろ過及びダイアフィルトレーションが挙げられる。
【0124】
本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、本方法は、本精製方法の精製されたポリペプチドを薬学的に許容される担体と組み合わせることをさらに含む。
【0125】
幾つかの実施態様において、本発明は、抗体を精製する方法であって、a)抗体を含む組成物を、Capto Adhere樹脂上に、pHが約6.5で導電率が約5.3mS/cm~約5.6mS/cmであるロードバッファーに入った状態で、Capto Adhere樹脂1リットル当たり抗体150~200gのロード密度でロードすること、b)pHが約6.5で導電率が約1mS/cmである100mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)を含む溶出バッファーを用いて樹脂から抗体を溶出させて、抗体を含むプールを収集することを含む方法を提供する。
【0126】
幾つかの実施態様において、本発明は、抗体を精製する方法であって、a)抗体を含む組成物を、1.6~10.8Lカラム中のCapto Adhere樹脂上に、pHが約6.5で導電率が約5.3mS/cm~約5.6mS/cmであるロードバッファーに入った状態で、Capto Adhere樹脂1リットル当たり抗体70~180gのロード密度でロードすること、b)pHが約6.5で導電率が約1mS/cmである100mM MESを含む溶出バッファーを用いて樹脂から抗体を溶出させて、抗体を含むプールを収集することを含む方法を提供する。
【0127】
幾つかの実施態様において、本発明は、抗体を精製する方法であって、a)抗体を含む組成物を、Capto Adhere樹脂上に、pHが約8.6で導電率が約6mS/cmより低いロードバッファーに入った状態で、Capto Adhere樹脂1リットル当たり抗体約200gのロード密度でロードすること、b)pHが約6.5で導電率が約1mS/cmである20mM MESの溶出バッファーを用いて樹脂から抗体を溶出させて、抗体を含むプールを収集することを含む方法を提供する。
【0128】
幾つかの実施態様において、本発明は、抗体を精製する方法であって、a)抗体を含む組成物を、Capto Adhere樹脂上に、pHが約6.1で導電率が約6mS/cmより低いロードバッファーに入った状態で、Capto Adhere樹脂1リットル当たり抗体約200gのロード密度でロードすること、b)pHが約6.0で導電率が約0.65mS/cmである20mM MESの溶出バッファーを用いて樹脂から抗体を溶出させて、抗体を含むプールを収集することを含む方法を提供する。
【0129】
幾つかの実施態様において、本発明は、抗体を精製する方法であって、a)抗体を含む組成物を、Capto Adhere樹脂上に、pHが約5.5で導電率が約6mS/cm未満のロードバッファーに入った状態で、Capto Adhere樹脂1リットル当たり抗体約200gのロード密度でロードすること、b)pHが約4.9で導電率が約1.1mS/cmである20mM MESの溶出バッファーを用いて樹脂から抗体を溶出させて、抗体を含むプールを収集することを含む方法を提供する。
【0130】
幾つかの実施態様において、本発明は、抗体を精製する方法であって、a)抗体を含む組成物を、Capto Adhere樹脂上に、pHが約6.5で導電率が約6mS/cmより低いロードバッファーに入った状態で、Capto Adhere樹脂1リットル当たり抗体約200gのロード密度でロードすること、b)pHが約6.5で導電率が約1mS/cmである20mM MESの溶出バッファーを用いて樹脂から抗体を溶出させて、抗体を含むプールを収集することを含む方法を提供する。
【0131】
幾つかの実施態様において、本発明は、抗体を精製する方法であって、a)抗体を含む組成物を、QMA樹脂上に、pHが約6.5で導電率が約5.5mS/cmより低いロードバッファーに入った状態で、QMA樹脂1リットル当たり抗体約103gのロード密度でロードすること、b)pHが約6.5で導電率が約1mS/cmである20mM MESの溶出バッファーを用いて樹脂から抗体を溶出させて、抗体を含むプールを収集することを含む方法を提供する。
【0132】
幾つかの実施態様において、本発明は、抗体を精製する方法であって、a)抗体を含む組成物を、Poros XS樹脂上に、pHが約5.5で導電率が約6mS/cmより低いロードバッファーに入った状態で、Poros XS樹脂1リットル当たり抗体約200gのロード密度でロードすること、b)pHが約5.5である50~350mM酢酸塩溶出バッファーを用いて樹脂から抗体を溶出させて、抗体を含むプールを収集することを含む方法を提供する。
【0133】
幾つかの実施態様において、本発明は、抗体を精製する方法であって、a)抗体を含む組成物を、Capto MMC樹脂上に、pHが約7.0で導電率が約6mS/cmより低いロードバッファーに入った状態で、Capto MMC樹脂1リットル当たり抗体約147gのロード密度でロードすること、b)pHが約6.5で導電率が約1mS/cmである20mM MESの溶出バッファーを用いて樹脂から抗体を溶出させて、抗体を含むプールを収集することを含む方法を提供する。
【0134】
III.ポリペプチド
ポリペプチドを精製する方法、及び、本明細書に記載されている方法により精製されたポリペプチドを含む製剤のうちいずれかにおいて使用するためのポリペプチドが提供される。
【0135】
幾つかの実施態様において、本発明は、オーバーロード/溶出クロマトグラフィーを用いることによりポリペプチドを精製する方法を提供する。幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、治療用のポリペプチドである。幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、拮抗物質である。幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、作動物質である。幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、抗体である。幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、エピトープタグが付加されている。幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、生物学的及び/又は免疫学的活性を保持する。幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、拮抗物質である。幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、補体依存性細胞傷害を惹起する。幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、抗体又はイムノアドヘシンである。前述の実施態様のさらなる実施態様において、ポリペプチドは、混合モードクロマトグラフィー媒体を使用したOECにより精製される。前述の実施態様のさらなる実施態様において、ポリペプチドは、陰イオン交換クロマトグラフィー媒体を使用したOECにより精製される。前述の実施態様のさらなる実施態様において、ポリペプチドは、陽イオン交換クロマトグラフィー媒体を使用したOECにより精製される。前述の実施態様のさらなる実施態様において、ポリペプチドは、HICクロマトグラフィー媒体を使用したOECにより精製される。前述の実施態様のさらなる実施態様において、ポリペプチドは、HAPクロマトグラフィー媒体を使用したOECにより精製される。前述の実施態様のさらなる実施態様において、ポリペプチドは、アフィニティークロマトグラフィー媒体を使用したOECにより精製される。前述の実施態様のさらなる実施態様において、ポリペプチドは、陽イオン交換クロマトグラフィーではなく陽イオン交換クロマトグラフィーを含んでもいないクロマトグラフィー媒体を使用したOECにより精製される。
【0136】
幾つかの実施態様において、ポリペプチドの分子量は、約5,000ダルトン、10,000ダルトン、15,000ダルトン、25,000ダルトン、50,000ダルトン、75,000ダルトン、100,000ダルトン、125,000ダルトン、又は150,000ダルトンのいずれかより大きい。ポリペプチドの分子量は、約50,000ダルトン~200,000ダルトン、又は100,000ダルトン~200,000ダルトンのいずれかであってもよい。あるいは、本明細書における使用のためのポリペプチドの分子量は、約120,000ダルトン又は約25,000ダルトンであってもよい。
【0137】
pIは、等電点であり、特定の分子又は表面が正味電荷を持たないpHのことである。本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、ポリペプチドのpIは、約6~10、7~9、又は8~9のいずれかであってもよい。幾つかの実施態様において、ポリペプチドのpIは、約6、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10のいずれかであってもよい。
【0138】
本明細書に記載されている方法を用いて精製しようとするポリペプチドは、組換え手法を用いて一般に産生される。組換えタンパク質を産生するための方法は、例えば、出典明示により特に本明細書に援用される米国特許第5,534,615号及び同第4,816,567号に記載されている。幾つかの実施態様において、目的のタンパク質は、CHO細胞中で産生される(例えば、WO94/11026を参照のこと)。組換え手法を用いるとき、ポリペプチドは、細胞内、細胞膜周辺腔中で産生され、又は、媒体中に直接分泌することができる。
【0139】
ポリペプチドは、培養培地から、又は宿主細胞溶解物から回収してもよい。ポリペプチドの発現において用いられる細胞は、多様な物理的又は化学的手段、例えば凍結-解凍サイクリング、超音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤により、破壊することができる。ポリペプチドが細胞内で産生される場合は、第1の工程として、微粒子片を、それが宿主細胞又は溶解された断片のいずれであっても、例えば遠心分離又は限外ろ過により除去する。Carterら、Bio/Technology、10:163~167ページ(1992)には、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌されるポリペプチドを単離するための手順が記載されている。簡潔に言えば、細胞ペーストを、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)の存在下で約30分にわたって解凍する。細胞片は、遠心分離により除去できる。ポリペプチドが培地中に分泌される場合、そのような発現系由来の上清は、一般に、市販のポリペプチド濃縮フィルター、例えば、Amicon又はMillipore Pellicon限外ろ過ユニットを使用して、まず濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を前述の工程のうちいずれかにおいて含ませてタンパク質分解を阻害してもよく、抗生物質を含ませて外来性夾雑物の成長を防止してもよい。
【0140】
本発明の方法により精製し得るポリペプチドの例としては、限定されるものではないが、免疫グロブリン、イムノアドヘシン、抗体、酵素、ホルモン、融合タンパク質、Fc含有タンパク質、免疫コンジュゲート、サイトカイン、及びインターロイキンが挙げられる。ポリペプチドの例としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:哺乳動物タンパク質、例としては、レニン;ホルモン;成長ホルモン(ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む);成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α-1-アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;凝固因子、例えば第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、及びフォンウィルブランド因子;抗凝固因子、例えばプロテインC;心房性ナトリウム利尿因子;肺界面活性物質;プラスミノゲン活性化因子、例えばウロキナーゼ又はヒト尿又は組織型プラスミノゲン活性化因子(t-PA);ボンベシン;トロンビン;造血性成長因子;腫瘍壊死因子-α及び-β;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-α);血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミン;ミュラー管(Muellerian)阻害物質;レラキシンA鎖;レラキシンB鎖;プロレラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;酵素など;微生物性タンパク質、例えばβ-ラクタマーゼ;DNAse;IgE;細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA)、例えばCTLA-4;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモン又は成長因子に対する受容体;プロテインA又はD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば骨由来神経栄養因子(bone-derived neurotrophic factor、BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5、もしくは-6(NT-3、NT-4、NT-5、もしくはNT-6)、又は神経成長因子、例えばNGF-b;血小板由来成長因子(PDGF);線維芽細胞成長因子、例えばaFGF及びbFGF;上皮細胞成長因子(EGF);トランスフォーミング成長因子(TGF)、例えばTGF-α及びTGF-β(TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、又はTGF-β5を含む);インスリン様成長因子-I及びII(IGF-I及びIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP);サイトカイン;CDタンパク質、例えばCD3、CD4、CD8、CD19、及びCD20;エリスロポエチン;骨誘導性因子;免疫毒素;融合ポリペプチド、すなわち、2つ以上の異種ポリペプチド又はその断片から成り(comprised on)、組換え核酸によりコードされているポリペプチド;Fc含有ポリペプチド、例としては、免疫グロブリンFc領域を含む融合タンパク質又はその断片が第2のポリペプチドと融合したもの;免疫コンジュゲート;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン、例えばインターフェロン-α、-β、及び-γ;コロニー刺激因子(CSF)、例えばM-CSF、GM-CSF、及びG-CSF;インターロイキン(IL)、例えばIL-1~IL-10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス抗原、例としては、AIDSエンベロープの一部分など;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;インテグリン、例えばCD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA-4、及びVCAM;腫瘍関連抗原、例えば、CA125(卵巣癌抗原)、又は、HER2、HER3、もしくはHER4受容体;イムノアドヘシン;並びに、上に挙げたタンパク質のうちいずれかの断片及び/又はバリアント、さらには、タンパク質(例えば、上に挙げたタンパク質のうちいずれかを含む)と結合する抗体(抗体断片を含む)。
【0141】
(A)抗体
本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、ポリペプチドを精製する任意の方法、及び、本明細書に記載されている方法により精製されたポリペプチドを含む製剤において使用するためのポリペプチドは、抗体である。
【0142】
抗体にとっての分子標的としては、CDタンパク質及びそのリガンド、限定されるものではないが例えば、(i)CD3、CD4、CD8、CD19、CD11a、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)、及びCD79β(CD79b)、(ii)ErbB受容体ファミリーを構成するもの、例えば、EGF受容体、HER2、HER3、又はHER4受容体、(iii)細胞接着分子、例えば、LFA-1、Mac1、p150,95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、及びαv/β3インテグリン[そのα又はβサブユニット(例えば、抗CD11a、抗CD18、又は抗CD11b抗体)のいずれかを含む]、(iv)成長因子、例えばVEGF;IgE;血液型抗原;flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC、BR3、c-met、組織因子、β7等、並びに(v)細胞表面及び膜貫通型の腫瘍関連抗原(TAA)、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されているものが挙げられる。
【0143】
他の例示的な抗体としては、限定するものではないが、以下から選択されるものが挙げられる:抗エストロゲン受容体抗体、抗プロゲステロン受容体抗体、抗p53抗体、抗HER-2/neu抗体、抗EGFR抗体、抗カテプシンD抗体、抗Bcl-2抗体、抗E-カドヘリン抗体、抗CA125抗体、抗CA15-3抗体、抗CA19-9抗体、抗c-erbB-2抗体、抗P-糖タンパク質抗体、抗CEA抗体、抗網膜芽細胞腫タンパク質抗体、抗ras腫瘍タンパク質抗体、抗Lewis X抗体、抗Ki-67抗体、抗PCNA抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD5抗体、抗CD7抗体、抗CD8抗体、抗CD9/p24抗体、抗CD10抗体、抗CD11a抗体、抗CD11c抗体、抗CD13抗体、抗CD14抗体、抗CD15抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD23抗体、抗CD30抗体、抗CD31抗体、抗CD33抗体、抗CD34抗体、抗CD35抗体、抗CD38抗体、抗CD41抗体、抗LCA/CD45抗体、抗CD45RO抗体、抗CD45RA抗体、抗CD39抗体、抗CD100抗体、抗CD95/Fas抗体、抗CD99抗体、抗CD106抗体、抗ユビキチン抗体、抗CD71抗体、抗c-myc抗体、抗サイトケラチン抗体、抗ビメンチン抗体、抗HPVタンパク質抗体、抗κ軽鎖抗体、抗λ軽鎖抗体、抗メラノソーム抗体、抗前立腺特異抗原抗体、抗S-100抗体、抗τ抗原抗体、抗フィブリン抗体、抗ケラチン抗体、及び抗Tn-抗原抗体。
【0144】
(i)ポリクローナル抗体
幾つかの実施態様において、抗体は、ポリクローナル抗体である。ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原及びアジュバントの複数回の皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射により、動物体内で生じさせる。関連する抗原を、免疫化させようとする種において免疫原性であるポリペプチド、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、又はダイズトリプシン阻害因子とコンジュゲートすることが有用である場合があり、この際には、二官能性の作用剤又は誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介したコンジュゲーション)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介したコンジュゲーション)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、又はR1N=C=NR(式中、R及びR1は、異なるアルキル基である)を用いる。
【0145】
動物は、例えば100μg又は5μgのポリペプチド又はコンジュゲート(それぞれ、ウサギの場合又はマウスの場合)を3体積のフロイント完全アジュバントと合わせ、その溶液を複数部位で皮内注射することにより、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫化させる。1カ月後、動物を、元の量の1/5~1/10のペプチド又はコンジュゲートをフロイント完全アジュバントに入れたものを複数部位に皮内注射することにより、追加免疫する。7~14日後、動物の血液を抜き取り、血清を抗体力価についてアッセイする。動物は、力価が一定になるまで追加免疫する。幾つかの実施態様において、動物は、同じ抗原のコンジュゲートを用いて追加免疫するが、異なるポリペプチドと、及び/又は、異なる架橋試薬を介して、コンジュゲートする。コンジュゲートは、ポリペプチド融合物として組換え細胞培養物中で作ることもできる。また、ミョウバンなどの凝集剤も、免疫応答を強化するために好適に使用される。
【0146】
(ii)モノクローナル抗体
幾つかの実施態様において、抗体は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、実質的に均質な抗体の集団から得られる。すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、同一である、及び/又は同じエピトープと結合するものであるが、ただし、モノクローナル抗体の産生中に生じる可能性のあるバリアントは除外され、そのようなバリアントは一般に少量存在する。したがって、修飾語「モノクローナル」は、別個の抗体又はポリクローナル抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示している。
【0147】
例えば、モノクローナル抗体は、Kohlerらにより最初に記載されたハイブリドーマ法(Nature、256:495ページ(1975))を用いて作ってもよく、又は、組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)により作ってもよい。
【0148】
ハイブリドーマ法においては、マウス又は他の適切な宿主動物、例えばハムスターを、本明細書に記載するとおりに免疫化して、免疫化に使用されるポリペプチドと特異的に結合するであろう抗体を産生する又は産生することが可能なリンパ球を引き出す。あるいは、リンパ球をin vitroで免疫化してもよい。この場合は、リンパ球を、好適な融合剤、例えばポリエチレングリコールを使用して骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成させる(Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、59~103ページ(Academic Press、1986))。
【0149】
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合されていない親骨髄腫細胞の成長又は生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含有する好適な培養培地に播種して、生育する。例えば、親骨髄腫細胞に酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)が欠如している場合、ハイブリドーマのための培養培地には、典型的に、HGPRT欠乏細胞の成長を防止する物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンが含まれることになろう(HAT培地)。
【0150】
幾つかの実施態様において、骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞により抗体の安定な高レベルでの産生を支え、HAT培地などの培地に対して感受性の高い細胞である。中でも、幾つかの実施態様においては、骨髄腫細胞株は、マウス骨髄腫株、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center、San Diego、California、米国から入手可能なMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍に由来するもの、及び米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)、Rockville、Maryland、米国から入手可能なSP-2又はX63-Ag8-653細胞である。ヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株も、ヒトモノクローナル抗体を産生することが記載されている(Kozbor、J.Immunol.、133:3001ページ(1984);Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、51~63ページ(Marcel Dekker,Inc.、New York、1987))。
【0151】
ハイブリドーマ細胞を生育する培養培地を、抗原に対して向けられるモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。幾つかの実施態様において、ハイブリドーマ細胞により産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法、又はin vitro結合アッセイ、例えば放射性免疫測定法(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着測定法(enzyme-linked immunoabsorbent assay)(ELISA)により決定される。
【0152】
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munsonら、Anal.Biochem.、107:220ページ(1980)のスキャッチャード解析により決定することができる。
【0153】
ハイブリドーマ細胞が所望の特異性、親和性、及び/又は活性を有する抗体を産生することが確認された後、そのクローンを、限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により生育してもよい(Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、59~103ページ(Academic Press、1986))。この目的のための好適な培養培地としては、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が挙げられる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物体内にて腹水腫瘍としてin vivoで生育してもよい。
【0154】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製法、例えば、ポリペプチドA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーなどにより、培養培地、腹水、又は血清から適切に分離する。
【0155】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)、容易に単離され、配列決定される。幾つかの実施態様において、ハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの入手源として役立つ。いったん単離したら、DNAを発現ベクターの中に配置し、次いでこれを、こうしなければ免疫グロブリンポリペプチドを産生しない宿主細胞(例えば、大腸菌細胞、類人猿COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞)の中に形質移入して、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成を実現してもよい。抗体をコードするDNAが細菌中で組換体を発現することについての総説論文としては、Skerraら、Curr.Opinion in Immunol.、5:256~262ページ(1993)及びPluckthun、Immunol.Revs.、130:151~188ページ(1992)が挙げられる。
【0156】
さらなる一実施態様において、抗体又は抗体断片は、McCaffertyら、Nature、348:552~554ページ(1990)に記載されている手法を用いて作成された抗体ファージライブラリーから単離できる。Clacksonら、Nature、352:624~628ページ(1991)及びMarksら、J.Mol.Biol.、222:581~597ページ(1991)には、ファージライブラリーを用いてマウス抗体及びヒト抗体を単離したことが、それぞれ記載されている。後続の刊行物には、チェーンシャッフリング(chain shuffling)による高親和性(nMレンジ)のヒト抗体の産生(Marksら、Bio/Technology、10:779~783ページ(1992))、並びに、非常に大規模なファージライブラリーを構築するための戦略としてのコンビナトリアルインフェクション(combinatorial infection)、及びin vivo組換え(Waterhousら、Nuc.Acids.Res.、21:2265~2266ページ(1993))が記載されている。したがって、これらの手法は、モノクローナル抗体の単離のための従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ法の実行可能な代用法である。
【0157】
DNAは、また、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖の定常ドメインのコード配列を、相同のマウス配列の代わりとして置換することにより(米国特許第4,816,567号;Morrisonら、Proc.Natl Acad.Sci.USA、81:6851ページ(1984))、又は、非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列のすべてもしくは一部を免疫グロブリンコード配列と共有結合的につなぐことにより、改変してもよい。
【0158】
典型的には、そのような非免疫グロブリンポリペプチドが、抗体の定常ドメインと置換され、又は、抗体の1つの抗原合体部位(antigen-combining site)の可変ドメインと置換されて、抗原に対する特異性を有する1つの抗原合体部位と、異なる抗原に対する特異性を有する別の抗原合体部位とを含むキメラ二価抗体が創出される。
【0159】
本明細書に記載されている任意の方法の幾つかの実施態様において、抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、又はIgMである。幾つかの実施態様において、抗体は、IgGモノクローナル抗体である。
【0160】
(iii)ヒト化抗体
幾つかの実施態様において、抗体は、ヒト化抗体である。非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当技術分野において記載されている。幾つかの実施態様において、ヒト化抗体は、非ヒトである入手源から導入された一又は複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「インポート(import)」残基と呼ばれ、典型的には「インポート」可変ドメインから取得される。ヒト化は、本質的には、Winter及び共同研究者ら(Jonesら、Nature、321:522~525ページ(1986);Riechmannら、Nature、332:323~327ページ(1988);Verhoeyenら、Science、239:1534~1536ページ(1988))の方法に従って、超可変領域の配列をヒト抗体の対応する配列と置換することにより、実施することができる。したがって、そのような「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に少ないドメインが、非ヒト種由来の対応する配列により置換されている、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、幾つかの超可変領域残基及び可能であれば幾つかのFR残基が齧歯動物抗体における相似部位由来の残基により置換されているヒト抗体である。
【0161】
ヒト化抗体を作る際に使用することになるヒト可変ドメイン(軽鎖と重鎖の両方)の選定は、抗原性を低下させることが非常に重要である。いわゆる「最も適した」方法によれば、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を、既知のヒト可変ドメインの配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。次いで、その齧歯動物の配列と最も近いヒト配列を、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク領域(FR)として採択する(Simsら、J.Immunol.、151:2296ページ(1993);Chothiaら、J.Mol.Biol.196:901ページ(1987))。別の方法では、軽鎖又は重鎖可変領域の特定のサブグループである、すべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワーク領域が使用される。同じフレームワークを、幾つかの異なるヒト化抗体について使用してもよい(Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:4285ページ(1992);Prestaら、J.Immunol.、151:2623ページ(1993))。
【0162】
抗体が、抗原に対する高親和性及び他の望ましい生物学的特性を保持した状態でヒト化されることは、さらに重要である。この目標を達成するために、本方法の幾つかの実施態様において、ヒト化抗体は、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを使用した、親配列及び多様な概念的ヒト化産物の分析のプロセスにより調製される。三次元の免疫グロブリンモデルは、一般に入手可能であり、当業者にはなじみがある。選択された候補免疫グロブリン配列の推定される三次元立体配座構造を図示及び表示するコンピュータープログラムは、入手可能である。これらの表示を精査すれば、候補免疫グロブリン配列が機能する際に残基が果たすと考えられる役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンがその抗原と結合する能力に影響する残基の分析が可能になる。この方式では、FR残基をレシピエント配列及びインポート配列から選択して組み合わせることで、所望の抗体特徴(例えば、標的抗原(複数可)に対する親和性の向上)が達成されるようにすることができる。一般に、超可変領域残基は、抗原結合への影響を及ぼすことに直接かつ最も実質的に関わっている。
【0163】
(iv)ヒト抗体
幾つかの実施態様において、抗体は、ヒト抗体である。ヒト化の代替策として、ヒト抗体を生成させることができる。例えば、免疫化の際に、内因性の免疫グロブリンが産生されなくてもヒト抗体の完全なレパートリーを産生する能力があるトランスジェニック動物(例えばマウス)を作製することが、現在可能である。例えば、キメラマウス及び生殖細胞系突然変異マウスにおいて抗体の重鎖接合領域(JH)遺伝子のホモ接合性が欠失していると、内因性抗体産生は完全に阻害されることが記載されている。そのような生殖細胞系突然変異マウスにおいてヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子アレイを導入すれば、抗原による攻撃を行った際にヒト抗体が産生されるであろう。例えば、Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:2551ページ(1993);Jakobovitsら、Nature、362:255~258ページ(1993);Bruggermannら、Year in Immuno.、7:33ページ(1993);及び米国特許第5,591,669号;同第5,589,369号;及び同第5,545,807号を参照のこと。
【0164】
あるいは、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら、Nature、348:552~553ページ(1990))を用いて、免疫化されていないドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメインの遺伝子レパートリーからin vitroでヒト抗体及び抗体断片を産生することができる。この手法によれば、抗体のVドメインの遺伝子は、インフレームでクローニングされて、繊維状バクテリオファージ、例えばM13又はfdの主要又は微働いずれかのコートポリペプチド遺伝子となり、ファージ粒子の表面上で機能的抗体断片としてディスプレイされる。繊維状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAのコピーを含有しているので、抗体の機能特性に基づいて選択すれば、それらの特性を呈する抗体をコードする遺伝子を選択したことにもなる。したがって、ファージは、B細胞の特性の一部を模倣する。ファージディスプレイは、さまざまなフォーマットで実施することができ、それらの総説については、例えば、Johnson,Kevin S.及びChiswell,David J.、Current Opinion in Structural Biology、3:564~571ページ(1993)を参照のこと。複数の起源のV遺伝子セグメントを、ファージディスプレイに使用できる。Clacksonら、Nature、352:624~628ページ(1991)は、免疫化されたマウスの脾臓に由来するV遺伝子の小規模なランダムコンビナトリアルライブラリーから、抗オキサゾロン抗体の多種多様なアレイを単離した。免疫化されていないヒトドナー由来のV遺伝子のレパートリーを構築することができ、抗原の多種多様なアレイに対する抗体(自己抗原を含む)は、Marksら、J.Mol.Biol.、222:581~597ページ(1991)、又はGriffithら、EMBO J.、12:725~734ページ(1993)により記載された手法に本質的に従って、単離できる。米国特許第5,565,332号及び同第5,573,905号も参照のこと。
【0165】
ヒト抗体は、また、in vitro活性化されたB細胞により生成させてもよい(米国特許第5,567,610号及び同第5,229,275号を参照のこと)。
【0166】
(v)抗体断片
幾つかの実施態様において、抗体は、抗体断片である。抗体断片の産生のために、多様な手法が開発されてきた。従来、これらの断片は、インタクト抗体のタンパク質分解性消化を介して誘導された(例えば、Morimotoら、Journal of Biochemical and Biophysical Methods、24:107~117ページ(1992)及びBrennanら、Science、229:81ページ(1985)を参照のこと)。しかし、これらの断片は、今では組換え宿主細胞により直接産生することができる。例えば、抗体断片は、先に論じた抗体ファージライブラリーから単離できる。あるいは、Fab’-SH断片は、大腸菌から直接回収し、化学的にカップリングさせてF(ab’)2断片を形成することができる(Carterら、Bio/Technology、10:163~167ページ(1992))。別のアプローチによれば、F(ab’)2断片は、組換え宿主細胞培養物から直接単離できる。抗体断片の産生についての他の手法は、当業者には明らかであろう。他の実施態様において、最適な抗体は、単鎖Fv断片(scFv)である。WO93/16185;米国特許第5,571,894号;及び米国特許第5,587,458号を参照のこと。抗体断片は、また、例えば米国特許第5,641,870号に記載されているような「線状抗体」であってもよい。そのような線状抗体断片は、単一特異性又は二重特異性のものであってもよい。
【0167】
幾つかの実施態様において、本明細書に記載されている抗体の断片が提供される。幾つかの実施態様において、抗体断片は、抗原結合断片である。幾つかの実施態様において、抗原結合断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、scFv、Fv、及びダイアボディからなる群から選択される。
【0168】
(vi)二重特異性抗体
幾つかの実施態様において、抗体は、二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異性抗体は、2つの異なるエピトープと結合してもよい。あるいは、二重特異性抗体の結合腕を、白血球上のトリガー分子、例えばT細胞受容体分子(例えば、CD2もしくはCD3)、又は、IgGのFc受容体(FcγR)、例えばFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、及びFcγRIII(CD16)と結合する腕と組み合わせて、細胞防御機構をT細胞に集中させるようにしてもよい。二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab’)2二重特異性抗体)として調製できる。
【0169】
二重特異性抗体を作るための方法は、当技術分野において公知である。完全長の二重特異性抗体の従来の産生は、2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の共発現に基づいており、この場合の2本の鎖は、異なる特異性を有する(Millsteinら、Nature、305:537~539ページ(1983))。免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖はランダムに取り合わされるので、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子が混合した状態で産生される可能性があり、そのうち1個のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、通常はアフィニティークロマトグラフィー工程により行われるが、相当に面倒であり、産物の収率は低い。類似の手順は、WO93/08829、及びTrauneckerら、EMBO J.、10:3655~3659ページ(1991)に開示されている。
【0170】
異なるアプローチによれば、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原合体部位)は、免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合される。幾つかの実施態様において、融合は、ヒンジ領域、CH2領域、及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖の定常ドメインとの間で行われる。幾つかの実施態様において、軽鎖結合に必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)が、融合体のうち少なくとも1つに存在する。免疫グロブリン重鎖融合体と、所望により免疫グロブリン軽鎖とをコードしているDNAを別々の発現ベクター中に挿入し、好適な宿主生物の中に共形質移入する。これにより、不均等な比率の3本のポリペプチド鎖が構造中で使用された場合に最適な収率が得られる実施態様においては、3つのポリペプチド断片の相互の割合を調節する際に大きな柔軟性が得られる。ただし、少なくとも2本のポリペプチド鎖が等しい比率で発現すれば収率が高くなるとき、又はその比率が特に重要性をもたないときは、1つの発現ベクター中の2本又は全3本のポリペプチド鎖のコード配列を挿入することが可能である。
【0171】
このアプローチの幾つかの実施態様において、二重特異性抗体は、第1の結合特異性を一方の腕に、ハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第2の結合特異性をもたらす)を他方の腕に有する、ハイブリッド免疫グロブリン重鎖から構成される。この非対称構造は、望ましくない免疫グロブリン鎖の組合せからの所望の二重特異性化合物の分離を容易にすることが見出されたが、これは、二重特異性分子の半分のみに免疫グロブリン軽鎖が存在することにより容易な分離方式がもたらされるからである。このアプローチは、WO94/04690に開示されている。二重特異性抗体の生成のさらなる詳細については、例えば、Sureshら、Methods in Enzymology、121:210ページ(1986)を参照のこと。
【0172】
米国特許第5,731,168号に記載されている別のアプローチによれば、抗体分子対の間の接点を工学操作して、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の比率(%)を最大化することができる。幾つかの実施態様において、接点は、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法において、第1の抗体分子の接点由来の一又は複数の小さいアミノ酸側鎖は、より大きい側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)で置き換えられる。大きい側鎖(複数可)と同一又は類似のサイズの代償的な「空洞」は、大きいアミノ酸側鎖をより小さい側鎖(例えばアラニン又はトレオニン)で置き換えることにより、第2の抗体分子の接点上に創出される。これにより、ヘテロ二量体の収率を他の望ましくない最終産物(ホモ二量体など)より高くするメカニズムがもたらされる。
【0173】
二重特異性抗体としては、架橋抗体又は「ヘテロコンジュゲート」抗体が挙げられる。例えば、ヘテロコンジュゲートにおける抗体のうち一方はアビジンと、他方はビオチンと、カップリングすることができる。そのような抗体は、例えば、望ましくない細胞に対して免疫系細胞を標的化すること(米国特許第4,676,980号)、及びHIV感染症の治療に用いること(WO91/00360、WO92/200373、及びEP03089)が提案されている。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の手軽な架橋方法を用いて作り得る。好適な架橋剤は、当技術分野において周知であり、米国特許第4,676,980号において、幾つかの架橋手法と共に開示されている。
【0174】
抗体断片から二重特異性抗体を生成させるための手法も、文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学的連結を用いて調製できる。Brennanら、Science、229:81ページ(1985)には、インタクト抗体をタンパク質分解的に開裂してF(ab’)2断片を生成させる手順が記載されている。これらの断片は、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元して、隣接するジチオールを安定化させ、分子間のジスルフィド形成を防止する。次いで、生成されたFab’断片をチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に変換させる。次いで、Fab’-TNB誘導体のうち一方を、メルカプトエチルアミンを用いた還元によりFab’-チオールに再変換させ、等モル量の他方のFab’-TNB誘導体と混合して二重特異性抗体を形成させる。産生された二重特異性抗体は、酵素の選択的な固定化のための作用剤として使用できる。
【0175】
組換え細胞培養物から直接、二重特異性抗体断片を作り単離するための多様な手法も記載されている。例えば、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体が産生されている。Kostelnyら、J.Immunol.、148(5):1547~1553ページ(1992)。Fos及びJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドが、遺伝子融合により、2つの異なる抗体のFab’部分と連結された。抗体ホモ二量体は、ヒンジ領域で還元されて単量体を形成し、次いで、再酸化されて抗体ヘテロ二量体を形成した。この方法は、抗体ホモ二量体の産生にも利用することができる。Hollingerらにより記載された「ダイアボディ」技術(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444~6448ページ(1993))は、二重特異性抗体断片を作るための代替的メカニズムを示した。この断片は、きわめて短いために同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするリンカーにより軽鎖可変ドメイン(VL)と繋がっている重鎖可変ドメイン(VH)を含む。したがって、1つの断片のVH及びVLドメインは、もう1つの断片の相補的なVL及びVHドメインとの対形成を強いられ、それにより、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)二量体の使用により二重特異性抗体断片を作るための別の戦略も報告されている。Gruberら、J.Immunol.、152:5368ページ(1994)を参照のこと。
【0176】
3価以上の抗体は企図される。例えば、三重特異性抗体を調製できる。Tuttら、J.Immunol.、147:60ページ(1991)。
【0177】
(vii)多価抗体
幾つかの実施態様において、抗体は、多価抗体である。多価抗体は、抗体が結合する対象である抗原を発現する細胞により、二価抗体より速く内部移行(及び/又は異化)し得る。本明細書において提供される抗体は、3つ以上の抗原結合部位を有する多価抗体(IgMクラスの抗体以外である)であってもよく(例えば四価抗体)、そのような抗体は、抗体のポリペプチド鎖をコードしている核酸の組換え発現により、容易に産生することができる。多価抗体は、二量体化ドメイン及び3つ以上の抗原結合部位を含むことができる。好ましい二量体化ドメインは、Fc領域又はヒンジ領域を含む(又は、それらからなる)。この場合、抗体は、1つのFc領域と、Fc領域のアミノ末端に3つ以上の抗原結合部位を含むであろう。本明細書における好ましい多価抗体は、3つ~約8つ、ただし好ましくは4つの抗原結合部位を含む(又は、それらからなる)。多価抗体は、少なくとも1本のポリペプチド鎖(好ましくは2本のポリペプチド鎖)を含み、そのポリペプチド鎖(複数可)は、2つ以上の可変ドメインを含む。例えば、ポリペプチド鎖(複数可)は、VD1-(X1)n-VD2-(X2)n-Fc(ここで、VD1は、第1の可変ドメインであり、VD2は、第2の可変ドメインであり、Fcは、Fc領域の一方のポリペプチド鎖であり、X1及びX2は、アミノ酸又はポリペプチドを表し、nは、0又は1である)を含んでもよい。例えば、ポリペプチド鎖(複数可)は、VH-CH1-柔軟なリンカー-VH-CH1-Fc領域鎖、又はVH-CH1-VH-CH1-Fc領域鎖を含んでもよい。本明細書における多価抗体は、好ましくは、少なくとも2つ(好ましくは4つ)の軽鎖可変ドメインポリペプチドをさらに含む。本明細書における多価抗体は、例えば、約2つ~約8つの軽鎖可変ドメインポリペプチドを含んでもよい。ここで企図される軽鎖可変ドメインポリペプチドは、軽鎖可変ドメインを含み、場合により、CLドメインをさらに含む。
【0178】
幾つかの実施態様において、抗体は、多特異性抗体である。多特異性抗体の例としては、限定されるものではないが、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)(ここで、VHVL単位はポリエピトープ特異性を有する)を含む抗体、2つ以上のVL及びVHドメインを有し、各VHVL単位が異なるエピトープと結合する抗体、2つ以上の単一可変ドメインを有し、各単一可変ドメインが異なるエピトープと結合する抗体、完全長抗体、抗体断片、例えばFab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性を有するダイアボディ、トリアボディ、三重機能性抗体、共有結合的又は非共有結合的に連結している抗体断片が挙げられる。幾つかの実施態様において、当該抗体は、ポリエピトープ特異性、例えば、同じ又は異なる標的(複数可)に対して2つ以上の異なるエピトープと特異的に結合する能力を有する。幾つかの実施態様において、抗体は、単一特異性の抗体、例えば、1つのエピトープのみと結合する抗体である。一実施態様によれば、多特異性抗体は、5μM~0.001pM、3μM~0.001pM、1μM~0.001pM、0.5μM~0.001pM、又は0.1μM~0.001pMの親和性で各エピトープと結合するIgG抗体である。
【0179】
(viii)他の抗体改変体
本明細書において提供される抗体を改変することは、エフェクター機能、例えば、抗体の抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(antigen-dependent cell-mediated cyotoxicity)(ADCC)及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)を強化するためのエフェクター機能に関して、望ましい場合がある。これは、抗体のFc領域において一又は複数のアミノ酸置換基を導入することにより達成してもよい。代替的又は追加的に、システイン残基(複数可)をFc領域に導入して、それにより、この領域における鎖間ジスルフィド結合形成が可能になるようにしてもよい。このようにして生成されたホモダイアボディは、内部移行の可能性が向上している、及び/又は、補体媒介性細胞殺傷及び抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)が増加していることがある。Caronら、J.Exp Med.、176:1191~1195ページ(1992)及びShopes,B.J.、Immunol.、148:2918~2922ページ(1992)を参照のこと。抗腫瘍活性が強化されているホモダイアボディは、Wolffら、Cancer Research、53:2560~2565ページ(1993)に記載されているように、ヘテロ二官能性の架橋剤を使用して調製することもできる。あるいは、2つのFc領域を有しており、それにより補体媒介性溶解及びADCCの性能が強化されている可能性がある抗体を工学操作することができる。Stevensonら、Anti-Cancer Drug Design、3:219~230ページ(1989)を参照のこと。
【0180】
抗体の血清中半減期を長期化するために、アミノ酸の変性は、US2006/0067930に記載されているように抗体中で行うことができ、同文献は、出典明示によりその全体が本明細書に援用される。
【0181】
(B)ポリペプチドのバリアント及び改変体
本明細書に記載されているポリペプチド(抗体を含む)のアミノ酸配列改変体(複数可)は、本明細書に記載されているポリペプチド(例えば、抗体)を精製する方法において使用してもよい。
【0182】
(i)バリアントポリペプチド
「ポリペプチドバリアント」は、本明細書において定義するポリペプチド、好ましくは活性のあるポリペプチドであり、完全長天然配列のポリペプチド、シグナルペプチドが欠如しているポリペプチド配列、ポリペプチドの細胞外ドメイン(シグナルペプチドの有無を問わない)と、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有するものを意味する。そのようなポリペプチドバリアントとしては、例えば、完全長天然アミノ酸配列のN又はC末端で一又は複数のアミノ酸残基が付加され又は欠失しているポリペプチドが挙げられる。普通、TATポリペプチドバリアントは、完全長天然配列ポリペプチドの配列、シグナルペプチドが欠如しているポリペプチド配列、ポリペプチドの細胞外ドメイン(シグナルペプチドの有無を問わない)と、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、代替的には少なくとも約85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%のいずれかのアミノ酸配列同一性を有するであろう。場合により、バリアントポリペプチドは、天然ポリペプチド配列と比較して2つ以上の保存的なアミノ酸置換、代替的に、天然ポリペプチド配列と比較して、約2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のいずれか以下の保存的なアミノ酸置換を有するであろう。
【0183】
バリアントポリペプチドは、N末端又はC末端で切断されていてもよく、又は、例えば、完全長天然ポリペプチドと比較して内部残基が欠如していてもよい。バリアントポリペプチドによっては、所望の生物活性に必須ではないアミノ酸残基が欠如していてもよい。切断、欠失、及び挿入がみられるこれらのバリアントポリペプチドは、幾つかの従来の手法のうち任意のものにより調製してもよい。所望のバリアントポリペプチドは、化学合成されてもよい。別の好適な手法は、所望のバリアントポリペプチドをコードしている核酸断片を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により単離及び増幅することを含んでいる。核酸断片の所望の末端を規定するオリゴヌクレオチドは、PCRにおいて5’及び3’プライマーの位置で用いられる。好ましくは、バリアントポリペプチドは、本明細書において開示する天然ポリペプチドと、少なくとも1つの生物学的及び/又は免疫学的活性を共有する。
【0184】
アミノ酸配列の挿入としては、長さが、1残基から、100以上の残基を含有するポリペプチドの範囲のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合、並びに、単一又は多数のアミノ酸残基の配列間挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端のメチオニル残基を有する抗体、又は、細胞傷害性ポリペプチドに融合される抗体が挙げられる。抗体分子のその他の挿入バリアントとしては、抗体の血清中半減期を長期化させる、酵素又はポリペプチドに対する抗体のN又はC末端への融合が挙げられる。
【0185】
例えば、ポリペプチドの結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントは、適切なヌクレオチド変化を抗体の核酸中に導入することにより、又は、ペプチド合成により、調製される。そのような改変としては、例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又は該残基中への挿入、及び/又は該残基の置換が挙げられる。最終的なコンストラクトに到達するために、欠失、挿入、及び置換の任意の組合せがなされるが、ただし、最終的なコンストラクトは、所望の特徴を所有する。アミノ酸の変更により、グリコシル化部位の数又は位置が変更されるなど、ポリペプチド(例えば抗体)の翻訳後プロセスが変化することもある。
【0186】
所望の活性に悪影響を及ぼすことなくどのアミノ酸残基を挿入、置換、又は欠失させ得るかを決定する際の指標は、ポリペプチドの配列を相同の既知のポリペプチド分子の配列と比較して、相同性の高い領域においてなされるアミノ酸配列変更の数を最小限にすることにより見出してもよい。
【0187】
突然変異誘発にとって好ましい場所である、ポリペプチド(例えば抗体)の一定の残基又は領域の同定のための有用な方法は、Cunningham及びWellsにより記載されている(Science、244:1081~1085ページ(1989))ように、「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。この方法では、標的残基の残基又は基を同定し(例:荷電残基、例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGlu)、中性の又は負に帯電したアミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリアラニン)により置き換えて、抗原とのアミノ酸の相互作用に影響を及ぼさせる。次いで、置換に対する機能的感受性を示している当該アミノ酸の場所を、さらなる又は他のバリアントを置換部位に、又は置換部位の代わりに導入することにより、洗練させる。したがって、アミノ酸配列バリエーションを導入するための部位は予め決めておくが、突然変異の性質自体は、予め決まっている必要はない。例えば、所与の部位での突然変異の成果を分析するために、alaスキャニング又はランダム突然変異誘発を標的コドン又は領域で行い、発現された抗体バリアントを、所望の活性についてスクリーニングする。
【0188】
別のタイプのバリアントは、アミノ酸置換バリアントである。このバリアントでは、抗体分子中の少なくとも1つのアミノ酸残基が、異なる残基により置き換えられている。置換による突然変異誘発のための最も関心の高い部位としては、超可変領域が挙げられるが、FRの変性も企図される。保存的な置換を、以下の表1の「好ましい置換基」の項目名の下に示す。そのような置換により生物活性が変わる場合は、より実質的な変更(表1では「例示的な置換基」と名付けられている変更、又はアミノ酸クラスに関連してさらに後述するような変更)を導入してから産物をスクリーニングしてもよい。
【0189】
【0190】
ポリペプチドの生物学的特性の実質的な改変は、(a)置換エリアにおけるポリペプチド骨格の構造(例えば、シートもしくは螺旋の立体配座として)の維持、(b)標的部位での分子の電荷もしくは疎水性の維持、又は(c)側鎖の嵩高さの維持に及ぶ効果が顕著に異なる置換基を選択することにより成し遂げられる。アミノ酸は、側鎖の特性の類似性によってグルーピングしてもよい(収録先:A.L.Lehninger、Biochemistry、第2版、73~75ページ、Worth Publishers、New York(1975)):
(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)
(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)
(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)
【0191】
あるいは、自然界に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいて、以下の群に分けてもよい:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
(2)中性、親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
(3)酸性:Asp、Glu、
(4)塩基性:His、Lys、Arg、
(5)鎖の配向性に影響する残基:Gly、Pro、
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0192】
非保存的な置換には、これらのクラスの1つの構成要素を別のクラスに交換することが必要になるであろう。
【0193】
また、抗体の正確な立体配座の維持に関わっていない一切のシステイン残基を一般にはセリンで置き換えて、分子の酸化的安定性を改善し異常な架橋を防止してもよい。逆に、システイン結合(複数可)をポリペプチドに加えて、その安定性を改善してもよい(とりわけ、抗体が、Fv断片などの抗体断片である場合)。
【0194】
とりわけ好ましいタイプの置換型バリアントには、親抗体(例えばヒト化抗体)の一又は複数の超可変領域残基の置換えが関わっている。一般に、その結果得られる、さらなる開発のために選択されるバリアント(複数可)は、そのバリアントが生成された元である親抗体と比較して生物学的特性が改善されているであろう。そのような置換型バリアントを生成するための便利な方式には、ファージディスプレイを用いた親和性成熟が関わっている。簡潔に言えば、幾つかの超可変領域部位(例えば、6~7部位)を突然変異させて、各部位で、可能なアミノ置換をすべて生成させる。このようにして生成された抗体バリアントを、各粒子内にパッケージされたM13の遺伝子III産物との融合物として、繊維状ファージ粒子から一価の様式でディスプレイさせる。次いで、ファージディスプレイされたバリアントを、本明細書において開示するように、その生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。改変について候補となる超可変領域部位を同定するために、アラニンスキャニング突然変異誘発を実施して、抗原結合に顕著に寄与する超可変領域残基を同定することができる。代替的に、又は追加的に、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して、抗体と標的との間の接点を同定することが有益である場合がある。そのような接触残基及び隣接残基は、本明細書において詳述した手法による置換のための候補である。いったんそのようなバリアントが生成されたら、本明細書に記載されているように、バリアントのパネルをスクリーニングにかけ、一又は複数の関連するアッセイにおいて優れた特性を示した抗体を、さらなる開発のために選択してもよい。
【0195】
ポリペプチドの別のタイプのアミノ酸バリアントは、抗体の元のグリコシル化パターンを変性させる。ポリペプチドは、非アミノ酸部分を含んでもよい。例えば、ポリペプチドは、グリコシル化されてもよい。そのようなグリコシル化は、宿主細胞又は宿主生物におけるポリペプチドの発現の間に自然に起きてもよく、又は、ヒトの介入により生じる計画的な改変であってもよい。変性とは、ポリペプチドにおいて見出される一又は複数の炭水化物部分を欠失させること、及び/又は、そのポリペプチドに存在しない一又は複数のグリコシル化部位を加えることを意味する。
【0196】
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N-連結型又はO-連結型のいずれかである。N-連結型は、炭水化物部分がアスパラギン残基の側鎖に付着していることを指す。トリペプチド配列のアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-トレオニン(ここで、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分をアスパラギン側鎖に酵素的に付着させるための認識配列である。したがって、これらのトリペプチド配列のいずれかがポリペプチド中に存在していると、潜在的なグリコシル化部位が創出される。O-連結型グリコシル化は、糖であるN-アセチルガラクトサミン(N-aceylgalactosamine)、ガラクトース、又はキシロースのうち1つを、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はトレオニンに付着させることを指すが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンも使用し得る。
【0197】
ポリペプチドへのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を変性させて前述のトリペプチド配列のうち一又は複数を含有するようにすることにより、手軽に成し遂げられる(N-連結型グリコシル化部位の場合)。この変性は、一又は複数のセリン又はトレオニン残基を元の抗体の配列に付加する、又は該残基により置換することによってもなし得る(O-連結型グリコシル化部位の場合)。
【0198】
ポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的もしくは酵素的に、又は、グリコシル化のための標的として役立つアミノ酸残基をコードするコドンの突然変異置換により、成し遂げ得る。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的開裂は、さまざまなエンドグリコシダーゼ及びエキソグリコシダーゼの使用により達成できる。
【0199】
他の改変としては、グルタミニル残基及びアスパラギニル残基の、それぞれ対応するグルタミル残基及びアスパルチル残基への脱アミド化、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリル又はトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化、N末端アミンのアセチル化、並びに、任意のC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
【0200】
(ii)キメラポリペプチド
本明細書に記載されているポリペプチドは、別の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列と融合されるポリペプチドを含むキメラ分子を形成する方式で改変してもよい。幾つかの実施態様において、キメラ分子は、ポリペプチドと、抗タグ抗体が選択的に結合することができるエピトープをもたらすタグポリペプチドとの融合を含む。エピトープタグは、一般に、ポリペプチドのアミノ又はカルボキシル末端に配置される。そのようなエピトープタグが付加された形態のポリペプチドの存在は、タグポリペプチドに対する抗体を使用して検出することができる。また、エピトープタグがもたらされることで、抗タグ抗体、又は、エピトープタグと結合する他のタイプの親和性マトリックスを使用したアフィニティー精製により、ポリペプチドを容易に精製することができるようになる。
【0201】
代替的な一実施態様において、キメラ分子は、ポリペプチドと免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定領域との融合を含んでもよい。二価の形態のキメラ分子は、「イムノアドヘシン」と称される。
【0202】
本明細書において使用する場合、用語「イムノアドヘシン」は、異種ポリペプチドの結合特異性を免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能と組み合わせた抗体様の分子を指している。構造的に、イムノアドヘシンは、抗原認識以外の所望の結合特異性を有するアミノ酸配列と、抗体の結合部位との融合(すなわち、「異種の」である)、及び免疫グロブリン定常ドメイン配列を含む。イムノアドヘシン分子のアドヘシン部は、典型的には、少なくとも受容体又はリガンドの結合部位を含む近接するアミノ酸配列である。イムノアドヘシンにおける免疫グロブリン定常ドメイン配列は、任意の免疫グロブリン、例えばIgG-1、IgG-2、IgG-3、又はIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD、又はIgMから得てもよい。
【0203】
Ig融合としては、好ましくは、Ig分子内の少なくとも1つの可変領域の代わりに、可溶性の(膜貫通ドメインが欠失又は不活性化されている)形態のポリペプチドを置換することが挙げられる。とりわけ好ましい一実施態様において、免疫グロブリン融合体には、ヒンジ、CH2、及びCH3領域、又は、IgG1分子の、ヒンジ、CH1、CH2、及びCH3領域が含まれる。
【0204】
(iii)ポリペプチドコンジュゲート
ポリペプチド製剤において使用するためのポリペプチドは、細胞傷害剤、例えば化学療法剤、成長阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素、又はそれらの断片)、又は放射性同位元素(すなわち、ラジオコンジュゲート)とコンジュゲートしてもよい。
【0205】
そのようなコンジュゲートの生成に有用な化学療法剤を使用できる。加えて、使用できる酵素活性毒素及びその断片としては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来のもの)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデッシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、ニガウリ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、及びトリコテセンが挙げられる。さまざまな放射性核種は、ラジオコンジュゲートされたポリペプチドの産生のために利用可能である。例としては、212Bi、131I、131In、90Y、及び186Reが挙げられる。ポリペプチドと細胞傷害剤とのコンジュゲートは、さまざまな二官能性のタンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えばアジプイミド酸ジメチルHCL)、活性エステル(例えばスベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド(glutareldehyde))、ビス-アジド化合物(例えばビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えばビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアナート(例えばトリエン(tolyene)2,6-ジイソシアナート)、及びビス-活性フッ素化合物(例えば1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を用いて作られる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら、Science、238:1098ページ(1987)に記載されているように調製できる。炭素-14-標識化1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドをポリペプチドとコンジュゲーションするための例示的なキレート化剤である。
【0206】
ポリペプチドと一又は複数の小分子毒素(例えば、カリケアマイシン、マイタンシノイド、トリコテセン(trichothene)、及びCC1065、並びに、毒素活性を有する、これらの毒素の誘導体)とのコンジュゲートも、本明細書においては企図される。
【0207】
マイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害することにより作用する有糸分裂(mitototic)阻害剤である。マイタンシンは、東アフリカの低木マイテヌス・セルラタ(Maytenus serrata)から最初に単離された。引き続き、ある微生物(microbe)も、マイタンシノイド、例えばマイタンシノール及びC-3マイタンシノールエステルを産生することが発見された。合成のマイタンシノール並びにその誘導体及び類似体も企図される。ポリペプチド-マイタンシノイドコンジュゲートを作るための、当技術分野において公知の多くの連結基(例えば、米国特許第5,208,020号において開示されているものが挙げられる)がある。そのような連結基としては、上に示した特許において開示されている、ジスルフィド(disufide)基、チオエーテル基、酸解離性基、光解離性基、ペプチダーゼ解離性基、又はエステラーゼ解離性基が挙げられ、ジスルフィド基及びチオエーテル基が好ましい。
【0208】
リンカーは、連結のタイプに応じて、多様な位置でマイタンシノイド分子と付着させてもよい。例えば、従来のカップリング法を用いてヒドロキシル基と反応させることによりエステル連結を形成してもよい。この反応は、ヒドロキシル基を有するC-3位、ヒドロキシメチル(hyrdoxymethyl)で修飾されたC-14位、ヒドロキシル基で修飾されたC-15位、及びヒドロキシル基を有するC-20位で起きることがある。好ましい一実施態様において、連結は、マイタンシノール又はマイタンシノール類似体のC-3位で形成される。
【0209】
別の目的コンジュゲートは、一又は複数のカリケアマイシン分子とコンジュゲートされたポリペプチドを含む。カリケアマイシンファミリーの抗生物質は、ピコモル濃度未満で二本鎖DNA切断を生じさせる能力がある。カリケアマイシンファミリーのコンジュゲートの調製については、例えば、米国特許第5,712,374号を参照のこと。使用してもよいカリケアマイシンの構造類似体としては、限定されるものではないが、γ1
I、α2
I、α3
I、N-アセチル-γ1
I、PSAG、及びθ1
Iが挙げられる。抗体をコンジュゲートすることができる別の抗腫瘍薬は、抗葉酸薬であるQFAである。カリケアマイシンとQFAはどちらも、細胞内作用部位を有しており、原形質膜を容易に越えない。したがって、細胞がポリペプチド(例えば、抗体)媒介性の内部移行を通じてこれらの薬剤を取り込むと、その細胞傷害効果は大きく強化される。
【0210】
本明細書に記載されているポリペプチドとコンジュゲートすることができる他の抗腫瘍剤としては、BCNU、ストレプトゾシン(streptozoicin)、ビンクリスチン、及び5-フルオロウラシル、総称的にLL-E33288複合体として公知の薬剤ファミリー、並びにエスペラマイシンが挙げられる。
【0211】
幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、ポリペプチドと、核酸分解活性を有する化合物(例:リボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNAse)との間のコンジュゲートであってもよい。
【0212】
また別の実施態様において、ポリペプチド(例えば、抗体)は、腫瘍のプレターゲティングにおいて利用するための「受容体」(例えば(such)ストレプトアビジン)とコンジュゲートしてもよく、この場合、ポリペプチド受容体コンジュゲートが患者に投与され、続いて、クリアリング剤(clearing agent)を使用して、結合されていないコンジュゲートの循環からの除去、次いで、細胞傷害剤(例えば、放射性ヌクレオチド)とコンジュゲートされている「リガンド」(例えば、アビジン)の投与が行われる。
【0213】
幾つかの実施態様において、ポリペプチドは、プロドラッグ(例えば、ペプチジル化学療法剤)を活性のある抗癌薬に変換させるプロドラッグ活性化酵素とコンジュゲートされてもよい。免疫コンジュゲートの酵素成分には、プロドラッグに対して、それをより活性のある細胞傷害性の形態に変換させる(covert)ような方式で作用する能力がある任意の酵素が含まれる。
【0214】
有用である酵素としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:ホスフェート含有プロドラッグを遊離薬物に変換させるのに有用なアルカリホスファターゼ;スルフェート含有プロドラッグを遊離薬物に変換させるのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性の5-フルオロシトシンを抗癌薬の5-フルオロウラシルに変換させるのに有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチド含有プロドラッグを遊離薬物に変換させるのに有用なプロテアーゼ、例えば、セラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ、及びカテプシン(例えばカテプシンB及びL);D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグを変換させるのに有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化されたプロドラッグを遊離薬物に変換させるのに有用な炭水化物開裂酵素、例えばβ-ガラクトシダーゼ及びノイラミニダーゼ;β-ラクタムで誘導体化されている薬物を遊離薬物に変換させるのに有用なβ-ラクタマーゼ;並びに、アミン窒素の位置にてそれぞれフェノキシアセチル基又はフェニルアセチル基で誘導体化されている薬物を遊離薬物に変換させるのに有用なペニシリンアミダーゼ、例えばペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼ。あるいは、酵素活性を有する抗体は、当技術分野においては「アブザイム」としても公知であるが、これを使用してプロドラッグを遊離活性薬物に変換させることができる。
【0215】
(iv)その他
ポリペプチドの、別のタイプの共有結合性改変は、ポリペプチドを、さまざまな非タンパク質ポリマーの1つ、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、又は、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマーと連結させることを含む。ポリペプチドは、また、例えばコアセルベーション法もしくは界面重合により調製されたマイクロカプセル(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリラート(methylmethacylate))マイクロカプセル)中に、又は、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン微小球、マイクロエマルション、ナノ粒子、及びナノカプセル)中に、又はマクロエマルション中に、閉じ込めてもよい。そのような手法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Gennaro,A.R.編(1990)に開示されている。
【0216】
IV.製剤及び方法において使用するためのポリペプチドの入手
本明細書に記載されている精製方法において使用されるポリペプチドは、組換え法を含め、当技術分野において周知の方法を用いて入手し得る。次の項では、これらの方法に関して案内する。
【0217】
(A)ポリヌクレオチド
「ポリヌクレオチド」、又は「核酸」は、本明細書においては互換的に使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、その例としてはDNA及びRNAが挙げられる。
【0218】
ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドは、任意の供給源から得てもよく、そのような供給源としては、限定されるものではないが、ポリペプチドmRNAが備わっており検出可能なレベルでそれを発現すると考えられる組織から調製されたcDNAライブラリーが挙げられる。したがって、ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドは、ヒト組織から調製されたcDNAライブラリーから手軽に入手することができる。ポリペプチドをコードしている遺伝子は、ゲノムライブラリーから、又は、公知の合成法(例えば、自動化された核酸合成)により、得ることもできる。
【0219】
例えば、ポリヌクレオチドは、免疫グロブリン分子鎖全体、例えば軽鎖又は重鎖をコードしていてもよい。完全な重鎖には、重鎖可変領域(VH)だけでなく重鎖定常領域(CH)が含まれ、CHは、典型的には、3つの定常ドメイン、すなわちCH1、CH2、及びCH3と「ヒンジ」領域とを含むであろう。状況によっては、定常領域が存在することが望ましい。
【0220】
本ポリヌクレオチドによりコードし得る他のポリペプチドとしては、抗原結合抗体断片、例えば単一ドメイン抗体(「dAb」)、Fv、scFv、Fab’、及びF(ab’)2、並びに「ミニボディ」が挙げられる。ミニボディは、そこからCH1及びCK又はCLドメインが切り取られる、(典型的には)二価の抗体断片である。ミニボディは、従来の抗体より小さいので、臨床的/診断的用途において、より良好な組織浸透を達成するはずであるが、二価であることから、dAbなどの一価抗体断片より高い結合親和性を保持するはずである。したがって、文脈によりそうでないことが指示されない限り、用語「抗体」は、本明細書において使用する場合、全抗体分子だけでなく、先に論じたタイプの抗原結合抗体断片を包含する。好ましくは、コードされているポリペプチド中に存在する各フレームワーク領域は、対応するヒトアクセプターフレームワークに関連する少なくとも1つのアミノ酸置換を含むであろう。したがって、例えば、フレームワーク領域は、アクセプターフレームワーク領域に対して合計で3箇所、4箇所、5箇所、6箇所、7箇所、8箇所、9箇所、10箇所、11箇所、12箇所、13箇所、14箇所、又は15箇所のアミノ酸置換箇所を含んでもよい。
【0221】
適切には、本明細書に記載されているポリヌクレオチドは、単離及び/又は精製してもよい。幾つかの実施態様において、ポリヌクレオチドは、単離されたポリヌクレオチドである。
【0222】
用語「単離されたポリヌクレオチド」は、分子が、その普通又は天然の環境から除去又は分離されること、又は、その普通又は天然の環境には存在しないような形で産生されていることを示すように意図したものである。幾つかの実施態様において、ポリヌクレオチドは、精製されたポリヌクレオチドである。用語「精製された」は、少なくともいくらかの夾雑分子又は物質が除去されていることを示すように意図したものである。
【0223】
適切には、本ポリヌクレオチドは実質的に精製されるため、関連するポリヌクレオチドが、組成物中に存在する支配的な(すなわち、最も豊富な)ポリヌクレオチドを構成するようになっている。
【0224】
(B)ポリヌクレオチドの発現
以下の記載は、主に、ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを含有するベクターで形質転換又は形質移入されている細胞を培養することによるポリペプチドの産生に関する。当然ながら、当技術分野において周知である代替的な方法を用いてポリペプチドを調製してもよいことが企図される。例えば、適切なアミノ酸配列又はその一部分は、固相法を用いた直接的なペプチド合成により作製してもよい(例えば、Stewartら、Solid-Phase Peptide Synthesis、W.H.Freeman Co.、San Francisco、Calif.(1969);Merrifield、J.Am.Chem.Soc.、85:2149~2154ページ(1963)を参照のこと)。in vitroタンパク質合成は、手作業による手法を用いて、又は自動化により、実施してもよい。自動合成は、例えば、Applied Biosystems Peptide Synthesizer(Foster City、Calif.)を、メーカーの取扱説明書を用いて使用して、成し遂げてもよい。ポリペプチドの多様な部分を別々に化学合成し、化学的又は酵素的な方法を用いてこれを合わせて所望のポリペプチドを作製してもよい。
【0225】
本明細書に記載されているポリヌクレオチドは、ポリペプチドの産生のために発現ベクター(複数可)の中に挿入する。用語「制御配列」は、特定の宿主生物において操作可能に連結しているコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。制御配列としては、限定されるものではないが、プロモーター(例えば、自然に関連している又は異種のプロモーター)、シグナル配列、エンハンサー要素、及び転写終結配列が挙げられる。
【0226】
ポリヌクレオチドは、別のポリヌクレオチド配列と機能的な関係にあるとき、「操作可能に連結している」。例えば、プレ配列又は分泌リーダー(secretory leader)のための核酸は、それがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現する場合、ポリペプチドのための核酸と操作可能に連結している;プロモーターもしくはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列と操作可能に連結している;又は、リボソーム結合部位は、それが、翻訳を容易にするように位置している場合、コード配列と操作可能に連結している。一般に、「操作可能に連結している」は、連結しようとする核酸配列が近接しており、分泌リーダーの場合は、近接して読取期(reading phase)にあることを意味する。しかし、エンハンサーは、近接している必要はない。連結は、便利な制限部位でのライゲーションにより、成し遂げられる。そのような部位が存在しない場合は、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーを、従来の慣例に従って使用する。
【0227】
抗体については、軽鎖及び重鎖は、同じ又は異なる発現ベクター中でクローニングすることができる。免疫グロブリン鎖をコードしている核酸セグメントは、免疫グロブリンポリペプチドの発現を確実にする、発現ベクター(複数可)中で制御配列と操作可能に連結している。
【0228】
ポリヌクレオチド配列(例えば、可変重鎖及び/又は可変軽鎖をコードしている配列及び任意選択的な発現制御配列)を含有するベクターは、周知の方法により宿主細胞の中に移すことができ、そのような方法は、細胞の宿主のタイプによってさまざまである。例えば、原核細胞には塩化カルシウム形質移入が一般的に利用されるが、他の細胞の宿主には、リン酸カルシウム処理、電気穿孔法、リポフェクション、遺伝子銃、又はウイルスベースの形質移入を用いてもよい。(全般に、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press、第2版、1989を参照のこと)。哺乳動物細胞を形質転換するために用いられる他の方法としては、ポリブレンの使用、プロトプラスト融合、リポソーム、電気穿孔法、及びマイクロインジェクションが挙げられる。トランスジェニック動物の作製の場合、導入遺伝子は、受精した卵母細胞の中に微量注入することができ、又は、胚性幹細胞のゲノムの中に組み込むことができ、そのような細胞の核を、除核された卵母細胞の中に移す。
【0229】
(C)ベクター
用語「ベクター」には、発現ベクター及び形質転換ベクター、及びシャトルベクターが含まれる。
【0230】
用語「発現ベクター」は、in vivo又はin vitro発現の能力があるコンストラクトを意味する。
【0231】
用語「形質転換ベクター」は、1つの実体から別の実体に移すことが可能なコンストラクトを意味し、別の実体は、その種のものであってもよく、又は異なる種のものであってもよい。コンストラクトが、1つの種から別の種に(例えば、大腸菌(Escherichia coli)プラスミドから桿菌属(Bacillus)などの細菌に)移すことが可能な場合には、その形質転換ベクターは、時に「シャトルベクター」と呼ばれる。さらには、大腸菌プラスミドからアグロバクテリウム(Agrobacterium)に、それからプラントに移すことが可能なコンストラクトであってもよい。
【0232】
ベクターは、以下に記載するように好適な宿主細胞の中に形質転換されてポリペプチドの発現をもたらし得る。多様なベクターが、公に入手可能である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、又はファージの形態であってもよい。適切な核酸配列を、さまざまな手順により、ベクターの中に挿入してもよい。一般には、DNAは、当技術分野において公知の手法を用いて、適切な制限エンドヌクレアーゼ部位(複数可)の中に挿入する。これらの成分のうち一又は複数を含有する好適なベクターの構築には、当業者に公知である標準的なライゲーション法を用いる。
【0233】
ベクターは、例えば、プラスミド、ウイルス、又はファージベクターで、複製の起源、任意選択的に、前記ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーター、及び任意選択的に、プロモーターの制御因子が備わっているものであってもよい。ベクターは、当技術分野において周知である一又は複数の選択可能なマーカー遺伝子を含有してもよい。
【0234】
これらの発現ベクターは、典型的には、エピソーム、又は宿主染色体のDNAの不可欠な一部、そのいずれかとして、宿主生物体内で複製可能である。
【0235】
(D)宿主細胞
宿主細胞は、例えば、細菌、酵母又は他の真菌細胞、昆虫細胞、植物細胞、又は哺乳動物細胞であってもよい。
【0236】
遺伝子操作されているトランスジェニックの多細胞の宿主生物を使用して、ポリペプチドを産生してもよい。生物は、例えば、トランスジェニック哺乳動物生物(例えば、トランスジェニックヤギ又はマウス系統)であってもよい。
【0237】
好適な原核生物としては、限定されるものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物、例えば、大腸菌などの腸内細菌科(Enterobacteriaceae)が挙げられる。多様な大腸菌株が公的に入手可能であり、例えば、大腸菌K12株MM294(ATCC31,446);大腸菌X1776(ATCC31,537);大腸菌株W3110(ATCC27,325)、及びK5 772(ATCC53,635)がある。他の好適な原核生物宿主細胞としては、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、例えば、大腸菌属(Escherichia)(例:大腸菌)、エンテロバクター属(Enterobacter)、エルウィニア属(Erwinia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、プロテウス属(Proteus)、サルモネラ属(Salmonella)(例:ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium))、セラチア属(Serratia)(例:、セラチア・マルセスカンス(Serratia marcescans))、及び赤痢菌属(Shigella)、並びに桿菌属(Bacilli)、例えば枯草菌(B. subtilis)及びリケニホルミス菌(B.licheniformis)(例:リケニホルミス菌(B.licheniformis)41P)、シュードモナス属(Pseudomonas)、例えば緑膿菌(P.aeruginosa)、及びストレプトミセス属(Streptomyces)が挙げられる。これらの例は、限定的というより例証的なものである。W3110株は1つのとりわけ好ましい宿主又は親宿主であり、その理由は、この株が、組換えポリヌクレオチド産物の発酵のための一般的な宿主菌株だからである。好ましくは、宿主細胞は、最小量のタンパク質分解酵素を分泌する。例えば、W3110株は、宿主に内在しているポリペプチドをコードしている遺伝子における遺伝子突然変異をもたらすように改変してもよく、そのような宿主の例としては、大腸菌W3110株1A2(完全な遺伝子型tonAを有する);大腸菌W3110株9E4(完全な遺伝子型tonA ptr3を有する);大腸菌W3110株27C7(ATCC55,244)(完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15(argF-lac)169 degP ompT kan’を有する);大腸菌W3110株37D6(完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15(argF-lac)169 degP ompT rbs7 ilvG kan’を有する);大腸菌W3110株40B4(37D6株の、非カナマイシン抵抗性degPが欠失突然変異したものである);及び、突然変異体のペリプラズムプロテアーゼを有する大腸菌株が挙げられる。あるいは、クローニングのin vitro 方法(例:PCR又は他の核酸ポリメラーゼ反応)が好適である。
【0238】
これらの原核生物宿主においては、発現ベクターを作ることができ、この発現ベクターは、典型的には、宿主細胞(例えば複製元)と適合する発現制御配列を含有するであろう。加えて、任意の数のさまざまな周知のプロモーター、例えば、乳糖プロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、β-ラクタマーゼプロモーター系、又は、λファージ由来のプロモーター系が存在するであろう。プロモーターは、任意選択的にオペレーター配列を伴って、発現を典型的に制御するであろうし、転写及び翻訳を惹起及び完了するための、リボソーム結合部位配列などを有するであろう。
【0239】
真核微生物を発現に使用してもよい。真核微生物、例えば糸状真菌又は酵母は、ポリペプチドをコードしているベクターにとっての好適なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)は、一般に使用される下等真核宿主微小生物(microorganism)である。その他としては、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe);クルイベロミセス(Kluyveromyces)宿主、例えば、クルイベロミセス・ラクチス(K.lactis)(MW98-8C、CBS683、CBS4574)、クルイベロミセス・フラギリス(K.fragilis)(ATCC12,424)、クルイベロミセス・ブルガリクス(K.bulgaricus)(ATCC16,045)、クルイベロミセス・ウィッケラミイ(K.wickeramii)(ATCC24,178)、クルイベロミセス・ワルチイ(K.waltii)(ATCC56,500)、クルイベロミセス・ドロソフィラルム(K.drosophilarum)(ATCC36,906)、クルイベロミセス・サーモトレランス(K.thermotolerans)、及びクルイベロミセス・マルキアヌス(K.marxianus);ヤロウイア(yarrowia)(EP402,226);ピキア・パストリス(Pichia pastoris);カンジダ(Candida)(Candida)など;トリコデルマ・レエシア(Trichoderma reesia);アカパンカビ(Neurospora crassa);シュワンニオミセス(Schwanniomyces)、例えばシュワンニオミセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis);並びに糸状真菌、例えば、パンカビ属(Neurospora)、アオカビ属(Penicillium)、トリポクラジウム(Tolypocladium)など、並びにアスペルギルス宿主、例えばアスペルギルス・ニジュランス(A.nidulans)、及びクロコウジカビ(A.niger)が挙げられる。メチロトローフ酵母は、本明細書において好適であり、その例としては、限定されるものではないが、ハンゼヌラ属(Hansenula)、カンジダ属(Candida)、クロエケラ属(Kloeckera)、ピキア属(Pichia)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、トルロプシス属(Torulopsis)、及びロドトルラ属(Rhodotorula)からなる属から選択される、メタノール上で成長する能力がある酵母が挙げられる。サッカロミセス属(Saccharomyces)は、好ましい酵母宿主であり、所望により、発現制御配列(例えばプロモーター)、複製、終止配列の起源などを有する好適なベクターである。典型的なプロモーターとしては、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ及び他の糖分解酵素が挙げられる。誘導可能な酵母プロモーターとしては、中でも、アルコールデヒドロゲナーゼ、イソチトクロムC、並びに、マルトース及びガラクトース利用に関与している酵素由来のプロモーターが挙げられる。
【0240】
微小生物に加え、哺乳動物組織細胞培養物も、本明細書に記載されているポリペプチドを発現及び産生するために使用してもよく、場合によっては好ましい(Winnacker、From Genes to Clones、VCH Publishers、N.Y.、N.Y.(1987)を参照のこと)。幾つかの実施態様にとっては、真核生物細胞が好ましい場合があり、その理由は、当技術分野において、異種ポリペプチド(例えば、インタクトな免疫グロブリン)を分泌する能力がある幾つかの好適な宿主細胞株が開発されており、そのような細胞株には、CHO細胞株、多様なCos細胞株、HeLa細胞、好ましくは、骨髄腫細胞株、又は形質転換されたB細胞又はハイブリドーマが含まれるからである。幾つかの実施態様において、哺乳動物宿主細胞は、CHO細胞である。
【0241】
幾つかの実施態様において、宿主細胞は、脊椎動物宿主細胞である。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL1651);ヒト胚腎臓株(懸濁培養液中での生育のためのサブクローニングされた293又は293細胞);ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO又はCHO-DP-12株);マウスセルトリ細胞;サル腎細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL2);イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB8065);マウス乳腺腫瘍(MMT060562、ATCC CCL51);TRI細胞;MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝臓癌株(Hep G2)である。
【0242】
V.製剤及び製剤を作る方法
本明細書においては、製剤、及び、本明細書に記載されている方法により精製されたポリペプチド(例えば、抗体)を含む製剤を作る方法も提供される。例えば、精製されたポリペプチドを、薬学的に許容される担体と組み合わせてもよい。
【0243】
幾つかの実施態様におけるポリペプチド製剤は、所望の純度を有するポリペプチドを任意選択的な薬学的に許容される担体、添加剤、又は安定化剤と混合することにより、凍結乾燥された製剤又は水溶液剤の形態で、保管用に調製してもよい(Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol,A.編(1980))。
【0244】
「担体」は、本明細書において使用する場合、用いられる用量及び濃度で曝露を受けることになる細胞又は哺乳動物に対して無毒である、薬学的に許容される担体、添加剤、又は安定化剤が挙げられる。多くの場合、生理学的に許容される担体は、pH緩衝水溶液である。
【0245】
許容される担体、添加剤、又は安定化剤は、用いられる用量及び濃度ではレシピエントに対して無毒であり、その例としては、以下が挙げられる:バッファー、例えばリン酸、クエン酸、及び他の有機酸;酸化防止剤(アスコルビン酸及びメチオニンなど);保存剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン;単糖、二糖、及び他の炭水化物(グルコース、マンノース、又はデキストリンなど);キレート化剤、例えばEDTA;糖、例えばショ糖、マンニトール、トレハロース、又はソルビトール;塩を形成する対イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例:Zn-タンパク質複合体);及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、又はポリエチレングリコール(PEG)。
【0246】
幾つかの実施態様において、ポリペプチド製剤中のポリペプチドは、機能活性を維持する。
【0247】
in vivo投与のために使用しようとする製剤は、滅菌済でなければならない。これは、滅菌済のろ過膜を通したろ過により、容易に成し遂げられる。
【0248】
本明細書における製剤は、治療しようとしている特定の適応症のために、必要に応じて2つ以上の活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない補完的な活性を有するものをさらに含有してもよい。例えば、1つの製剤中には、ポリペプチドに加え、追加的なポリペプチド(例えば抗体)が含まれることが望ましい場合がある。代替的に、又は追加的に、本組成物は、化学療法剤、細胞傷害剤、サイトカイン、成長阻害剤、抗ホルモン剤、及び/又は心保護剤(cardioprotectant)をさらに含んでもよい。そのような分子は、意図される目的に有効な量での組合せにて適切に存在する。
【0249】
VI.製造物
本明細書に記載されている方法により精製されたポリペプチド、及び/又は、本明細書に記載されている方法により精製されたポリペプチドを含む製剤は、製造物内に含有されてもよい。本製造物は、ポリペプチド及び/又はポリペプチド製剤を含有する容器を含んでもよい。好ましくは、本製造物は、(a)容器であり、本明細書に記載されているポリペプチド及び/又はポリペプチド製剤を含む組成物を内部に備える容器と、(b)該製剤を対象に投与するための取扱説明を記載した添付文書とを備える。
【0250】
本製造物は、容器と、該容器の表面上に、又はそれに付属する形でラベル又は添付文書を備える。好適な容器としては、例えば、瓶、バイアル、注射器等が挙げられる。容器は、さまざまな材料、例えばガラス又はプラスチックから形成してもよい。容器は、製剤を保持又は含有し、滅菌済のアクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、皮下用の注射針により刺すことが可能なストッパーを有する静注溶液剤用の袋又はバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、ポリペプチドである。ラベル又は添付文書には、対象における組成物の用途が、提供されているポリペプチド及び他の薬物があればその投与量及び間隔に関しての具体的な指導と共に表示される。本製造物には、販売者及び使用者の観点から望ましい他の材料がさらに含まれていてもよく、そのような材料としては、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、及び注射器が挙げられる。幾つかの実施態様において、容器は、注射器である。幾つかの実施態様において、注射器は、注射器具内にさらに含有される。幾つかの実施態様において、注射器具は、自動注射装置である。
【0251】
「添付文書」は、治療用製品の市販用パッケージ中に慣例的に含められる取扱説明書を指すために使用され、これには、適応症、用法、用量、投与、禁忌、パッケージに入っている製品と併用できる他の治療用製品、及び/又は、治療用製品の使用に関する警告についての情報が記載される。
【0252】
VII.例示的な実施態様
幾つかの実施態様において、本発明は、ポリペプチドと一又は複数の夾雑物とを含む組成物から該ポリペプチドを精製するための方法であって、a)該組成物を、クロマトグラフィー材料上に、該ポリペプチドに対する該クロマトグラフィー材料の動的結合容量を超える量でロードすること、b)該一又は複数の夾雑物が該クロマトグラフィー材料と結合したままである条件下で、該クロマトグラフィー材料から該ポリペプチドを溶出させること、並びにc)工程a)及びb)由来のクロマトグラフィー溶出物中の該ポリペプチドを含む画分をプールすることを含む方法を提供する。
【0253】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、ポリペプチドは、抗体又はイムノアドヘシンである。
【0254】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、ポリペプチドは、イムノアドヘシンである。
【0255】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、ポリペプチドは、抗体である。
【0256】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、抗体は、モノクローナル抗体である。
【0257】
前述の実施態様のまたさらなる一実施態様において、モノクローナル抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。
【0258】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、モノクローナル抗体は、IgGモノクローナル抗体である。
【0259】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、抗体は、抗原結合断片である。
【0260】
前述の実施態様のまたさらなる実施態様において、抗原結合断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、scFv、ジ-scFv、バイ-scFv、タンデム(ジ,トリ)-scFv、Fv、sdAb、三重機能性抗体、BiTE、ダイアボディ、及びトリアボディからなる群から選択される。
【0261】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、ポリペプチドは、酵素、ホルモン、融合タンパク質、Fc含有タンパク質、免疫コンジュゲート、サイトカイン、及びインターロイキンから選択される。
【0262】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、少なくとも一の夾雑物は、チャイニーズハムスター卵巣タンパク質(CHOP)、宿主細胞タンパク質(HCP)、浸出されたプロテインA、カルボキシペプチダーゼB、核酸、DNA、産物バリアント、凝集タンパク質、細胞培養培地成分、ゲンタマイシン、ポリペプチド断片、エンドトキシン、及びウイルス性夾雑物のうち任意の一又は複数である。
【0263】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、クロマトグラフィー材料は、混合モード材料、陰イオン交換材料、陽イオン交換材料、疎水性相互作用材料、及びアフィニティー材料から選択される。
【0264】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、ロード密度は、約50g/L~約2000g/Lである。
【0265】
前述の実施態様のまたさらなる実施態様において、ロード密度は、約200g/L~約1000g/Lである。
【0266】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、組成物は、クロマトグラフィー材料上に、一又は複数の夾雑物に対するクロマトグラフィー材料の動的結合容量とほぼ同量でロードされる。
【0267】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、組成物は、クロマトグラフィー材料上に、ポリペプチドに対するクロマトグラフィー材料の動的結合容量の20倍の量でロードされる。
【0268】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、ポリペプチドに対するクロマトグラフィー材料の分配係数は、30より大きい。
【0269】
前述の実施態様のまたさらなる実施態様において、ポリペプチドに対するクロマトグラフィー材料の分配係数は、100より大きい。
【0270】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、本方法は、ロードバッファー及び溶出バッファーの使用をさらに含む。
【0271】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、溶出バッファーの導電率は、ロードバッファーの導電率より低い。
【0272】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、ロードバッファーの導電率は、約4.0mS~約7.0mSである。
【0273】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、溶出バッファーの導電率は、約0.0mS~約7.0mSである。
【0274】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、溶出バッファーの導電率は、ロードバッファーの導電率より高い。
【0275】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、ロードバッファーの導電率は、約4.0mS~約7.0mSである。
【0276】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、溶出バッファーの導電率は、約5.5mS~約17.0mSである。
【0277】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、溶出バッファーの導電率は、約10カラム体積(CV)を通じて約5.5mSから約1.0mSへの勾配で低下する。
【0278】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、溶出バッファーの導電率は、約15CVを通じて約5.5mSから約1.0mSへの勾配で低下する。
【0279】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、溶出バッファーの導電率は、約5CVを通じて約10.0mSから約1.0mSへの勾配で低下する。
【0280】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、溶出バッファーの導電率は、約10CVを通じて約10.9mSから約1.0mSへの勾配で低下する。
【0281】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、溶出バッファーのpHは、ロードバッファーのpHより低い。
【0282】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、ロードバッファーのpHは、約4~約9である。
【0283】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、溶出バッファーのpHは、約4~約9である。
【0284】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、溶出バッファーのpHは、ロードバッファーのpHより高い。
【0285】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、ロードバッファーのpHは、約4~約9である。
【0286】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、溶出バッファーのpHは、約4~約9である。
【0287】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、組成物は、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、及び疎水性相互作用クロマトグラフィー由来の溶出液である。
【0288】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、アフィニティークロマトグラフィーは、プロテインAクロマトグラフィーである。
【0289】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、ポリペプチドは、さらに精製される。
【0290】
前述の実施態様のまたさらなる実施態様において、ポリペプチドは、ウイルスろ過により、さらに精製される。
【0291】
前述の実施態様のまたさらなる実施態様において、ポリペプチドは、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、又は疎水性相互作用クロマトグラフィーのうち一又は複数により、さらに精製される。
【0292】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、ポリペプチドは、さらに濃縮される。
【0293】
前述の実施態様のまたさらなる実施態様において、ポリペプチドは、限外ろ過、ダイアフィルトレーション(diafilteration)、又は、限外ろ過とダイアフィルトレーションとの組合せにより、濃縮される。
【0294】
前述の実施態様のさらなる実施態様において、本方法は、ポリペプチドを薬学的に許容される担体と組み合わせることをさらに含む。
【0295】
本明細書において開示される特徴はすべて、任意の組合せで組み合わせ得る。本明細書において開示される各特徴は、同じ、等価な、又は類似の目的に役立つ代替的な特徴により置き換えてもよい。したがって、特に明記しない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の等価物又は類似の特徴の例にすぎない。
【0296】
本発明のさらなる詳細を、下記の非限定的な実施例により例証する。本明細書におけるすべての参考文献の開示内容は、出典明示により本明細書に明示的に援用される。
【実施例】
【0297】
以下の実施例は、本発明を純粋に例示するものであることを意図したものであり、したがって、いかなる形でも本発明を限定すると判断されるべきではない。下記の実施例及び詳細な説明は、制限の目的ではなく例証の目的で提供するものである。
【0298】
材料及び方法
すべての実施例についての材料及び方法は、本実施例において特に記載がない限り、以下に示すとおりに実施した。
【0299】
MAb原料
すべての実施例のためのMAb原料は、Genentech(South San Francisco、CA、米国)で、産業規模、パイロット規模、又は小規模の細胞培養物バッチから選択した。細胞培養物の発酵期間の後、細胞を分離し、清澄化された液をプロテインAクロマトグラフィーにより精製した。プロテインAプールを使用して、不純物クリアランスのメカニズムを調べた。表2は、本実施例において使用した各MAbの原料としての特徴を示すものである。
【0300】
【0301】
MAb定量化
抗体の濃度を、紫外線可視分光光度計(8453モデルG1103A;Agilent Technologies;Santa Clara、CA、米国)又はNanoDrop 1000モデルND-1000(Thermo Fisher Scientific;Waltham、MA、米国)を使用した、280及び320nmでの吸光度により定量した。抗体以外の種(すなわち不純物)は、濃度がきわめて低かったため、UV吸光度に対してそれほど効果を有さなかった。必要に応じ、試料は、0.1~1.0吸光度単位の範囲で、適切な非干渉性の希釈剤で希釈した。試料調製及びUV測定を2回繰り返して実施し、平均値を記録した。MAb吸収係数の範囲は、1.42~1.645/mg・ml・cmであった。
【0302】
CHO宿主細胞タンパク質(CHOP)定量化
ELISAを用いて、CHOPと呼ばれる宿主細胞タンパク質のレベルを定量化した。抗CHOP抗体は、マイクロタイタープレートのウェル上で固定化した。CHOPを含有する試料の希釈液、標準、及び対照をウェル中でインキュベートし、続いて、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートさせた抗CHOP抗体でインキュベートした。HRPの酵素活性をo-フェニレンジアミンで検出し、マイクロタイタープレートリーダーにおいて490nmでの吸光度を読み取ることによりCHOPを定量化した。サンドイッチELISAの原理に基づき、ペルオキシダーゼの濃度は、CHOP濃度に対応した。ELISAについてのアッセイ範囲は、典型的には5~320ng/ml、アッセイ内変動率は10%未満であった。CHOPの値は、ng/mlの単位で報告された。あるいは、CHOPの値をMAb濃度で割り、その結果がPPM(百万分率。例:CHOP(ng)/MAb(mg))で報告された。CHOP ELISAを用いて試料中の合計CHOPレベルを定量化してもよいが、CHOP ELISAでは、個々のタンパク質の濃度は定量化されない。
【0303】
クロマトグラフィー動作条件
Capto Adhere樹脂及びCapto MMC Capto Adhere樹脂をGE Healthcare(Uppsala、スウェーデン)から入手した。強陽イオン交換樹脂(Poros XS及びPoros 50 HS)をApplied Biosystems(所在地(Address))から入手した。実験室でのクロマトグラフィー実験はすべて、UNICORNソフトウェアを利用した、GE Healthcare(Uppsala、スウェーデン)製のAKTA FPLCクロマトグラフィーシステムを使用して実施した。実験用のカラムは、直径0.66cm、高さ10~20cmであった。カラムは、ロードに先立ち、規定の動作条件のpH及び導電率に平衡化した。次いで、プロテインAプールをカラム上にロードし、続いて、必要に応じて溶出バッファーをロードして、結合されたタンパク質を溶出により除去した。ロード期、オーバーロード期、及び溶出期の間のフロースルー液又は溶出された液を画分として収集し、次いで、不純物について分析した。MAbロード密度は、樹脂1リットル当たり100から1000gまでさまざまであった。
【0304】
クロマトグラフィープール分析
ロード期、オーバーロード期、及び溶出期の間のフロースループールを画分(各1カラム体積)で収集し、MAb濃度、CHOP濃度、凝集体、浸出されたプロテインA、CHOのDNA、及び収率について分析した。累積プロットは、溶出プール画分の関数として作成した。累積収率は、式1を用いて得た。
(式中、画分iについて、Ciは、Mab濃度(mg/ml)であり、Viは、画分の体積(ml)であり、Mpは、ロードされたタンパク質の質量(mg)である)。
【0305】
【0306】
サイズ排除クロマトグラフィー
モノクローナル抗体のサイズ不均一性を、高速サイズ排除クロマトグラフィーアッセイにより決定した。Tosoh Bioscience(東京、日本)製のTSK G3000SWXL SECカラム(直径=7.8mm、高さ=300mm;部品番号08541)を、1200シリーズのHPLC機器(Agilent Technologies)上で周囲温度にて動作させ、これを使用して、収集された試料についてのMAb単量体の相対レベルを決定した。カラムは、200mMリン酸カリウム、250mM塩化カリウム、pH6.2の移動相を使用して、流速0.3mL/分で動作させた。各試料について20μgの抗体を注入した。280nmでのUV吸光度を用いて、単量体、LMWタンパク質、及びHMWタンパク質の分離をモニタリングした。単量体、LMWタンパク質、及びHMWタンパク質の比率(%)は、ChemStationソフトウェア(Agilent Technologies)を使用して、手作業で分析した。
【0307】
CHOのDNA定量化
産物試料中のCHOのDNAを、リアルタイムPCR(TaqMan PCR)を使用して定量化した。試料及び対照由来のDNAを、QiagenのVirus Biorobotキットを使用してまず抽出した。抽出された試料、対照、及び標準のDNAを、96ウェルプレート中のPCRプライマー及びプローブをABIの配列検出システムと共に使用したTaqManリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)にかけた。プライマーは、チャイニーズハムスター(モンゴルキヌゲネズミ、Cricetulus griseus)ゲノムにおける、110塩基対セグメントからなる繰返しDNA配列により定義した。プローブは、5’末端を蛍光レポーター色素で、3’末端をクエンチャー色素で標識した。プローブがインタクトである場合は、レポーターの発光スペクトルは、クエンチャーにより抑制される。ポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性は、プローブを加水分解し、レポーター(report)を放出し、これにより、蛍光発光が増加する。配列検出器は、増幅された産物を、DNA増幅の間、継続的に測定された蛍光発光の増加に正比例して定量化した。検量線を作成するために、DNAが閾値(CT)を超えて増幅されていたサイクル数を計算した。1pg/mL~10,000pg/mLの範囲の検量線を作成し、これを試料中のDNAの定量化に用いた。
【0308】
浸出されたプロテインA定量化
プロテインAプール中の浸出されたプロテインAのレベルを、サンドイッチプロテインA ELISAにより決定した。ニワトリの抗ブドウ球菌性のプロテインA抗体を、マイクロタイタープレートのウェル上で固定化した。試料処理手順には、試料希釈、次いで、前処理工程として、マイクロ波補助による加熱を用いたプロテインA/IgG複合体の解離が含まれ、その後、試料をサンドイッチELISA上で通液した。プロテインAは、試料中に存在する場合は、コーティングされた抗体と結合していた。結合されたプロテインAは、西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートされた抗タンパク質抗体を使用して検出した。西洋ワサビペルオキシダーゼ酵素活性は、比色シグナルを生成する2成分タイプのTMB基質溶液を用いて定量化した。
【0309】
原料の調整
本試験における実験に使用した原料は、新鮮なもの、又は、低温保管(2~8℃もしくは-70℃)から取り出して室温に平衡化させたもののいずれかであった。引き続き、原料のpH及び/又は導電率を、必要に応じて、滴定剤(1.5Mトリス塩基もしくは1M酢酸)又は希釈剤(精製水、5M塩化ナトリウム、もしくは5M酢酸ナトリウム)を使用して調整した。すべての原料は、Millipak 20(Millipore)、AcroPak(商標)20(Pall Corporation)、又は真空フィルター(Thermo Fisher Scientific、Rochester、NY、米国)を使用して0.2μmろ過した。
【0310】
ハイスループットスクリーニング
液体及び樹脂の取扱いには、Tecan Freedom Evo 200ロボット(Tecan US、Research Triangle Park、NC)を使用した。96ウェルのフィルタープレート(Seahorse 800μLポリプロピレン0.45μmショートドリップフィルタープレート、E&K Scientific EK-2223)を使用して、樹脂をタンパク質及びバッファーでインキュベートした。タンパク質溶液を樹脂でインキュベートした後、フィルタープレートを1200×gで3分間遠心分離して、樹脂から溶液を分離した。各段階について、300mLの溶液を50mLの樹脂と接触させたところ、相の体積比率は6:1となった。各ウェルは、適切なpH及び酢酸ナトリウム濃度に平衡化させた。pHの範囲は、0.5pH単位間隔で、5.00~7.5であった(pH5.00~5.5の条件に緩衝化するには酢酸塩を使用し、pH6.00~6.5の条件に緩衝化するにはMESを使用し、7.00~7.5の条件に緩衝化するにはMOPSを使用した)。すべての実験は、室温で実施した。部分的に精製されたプロテインAプールを5g/L又は97mg/mLに濃縮し、15mM NaOAcにバッファー交換したものを、これらの実験のためのロードとして使用した。樹脂には、産物のKp値を決定する実験の場合は5g/Lまで負荷をかけた。ただし、実際の産物結合容量とする場合は、樹脂には、97g/Lまで負荷をかけた。ろ液(溶液)は、収集プレート中で捕集し、次いで、Infinite M200プレートリーダーを使用して分析した。引き続き、2段階の2M NaClバッファーを使用して、結合されたタンパク質を樹脂から取り除き、マスバランスに近づけた。
【0311】
ウイルスクリアランス試験
本試験の目的は、2つのモデルウイルス(MMV及びX-MuLV)に対するCapto Adhereのウイルス除去能力を評価することであった。0.66cm直径のカラムに未使用の(naive)樹脂を20cmベッド高まで充填した。MAb供給液には、1%ウイルスを加え、次いで、Capto Adhere樹脂全体を処理した。プールを直ちに収集し、ロード及び溶出試料をウイルス数についてアッセイした。完全培地を用いた複数の希釈率のプール(1:10及び1:100)を作って、バッファー成分とウイルスとの間の潜在的な干渉の有無を決定した。
【実施例1】
【0312】
ハイスループットスクリーニング
本実施例には、クロマトグラフィー材料の結合容量を決定するためのハイスループットスクリーニング方法が記載されている。ハイスループットスクリーニングは、モノクローナル抗体MAb3について、バッチ結合条件下でCapto Adhere樹脂を用いて実施した。
【0313】
結合条件のハイスループットスクリーニングの結果を
図1に示す。反応曲面の図(
図1A及び1B)において、産物結合領域は赤色で示してあり(
図1Aの領域8及び
図1Bにおける領域7)、産物(例えばポリペプチド)の非結合領域は緑色である(領域1として示す)。上清中の実際の宿主細胞タンパク質(HCP)含有量(ng/mg)を、
図1Cの等高線図に示す。MAb3について、pH及び対イオン濃度の関数としての産物のK
pを
図1Aに示す。樹脂は、5g/Lまでロードし、反応曲面モデルを用いて生データを分析した。次いで、このモデルを用いて、実験域における任意の組合せのpH及び対イオン濃度についてK
pを推定した。データは、pHが増加するのに従い、また、導電率が増加するのに従い、log K
pは増加することを示している。log K
pの増加は、産物と樹脂との結合の増加を反映している。樹脂に対する実際の産物結合容量を知るために、樹脂には、異なるpHと対イオン濃度とを組み合わせた48通りの異なる条件で80g/Lまで負荷をかけた(
図1B)。同じ実験プレート由来の上清もHCP(ng/mg)について分析し、そのデータを等高線の形態でプロットした(
図1C)。数千ppmのCHOPを含有する部分的に精製されたプロテインAプールをハイスループットスクリーニング実験のためのロードとして使用した。図における緑色の領域(領域1)は、上清中のCHOPの量がより低いことを示しており、赤色の領域(
図1Bの領域8及び
図1Cの領域9)は、上清中のCHOPの量がより高いことを示している。
【0314】
最適なロード及び溶出条件のための設計域は、CHOP及び結合データの等高線図から決定できる。これらのプロットにより、フロースルー動作モード又は結合/溶出動作モードのいずれかの設計が可能になる。完全なフロースルークロマトグラフィーのためのロード条件は、一般に、産物の結合は最小化され(例えばポリペプチド結合)、不純物(CHOP)の結合は最大化される条件である。
図1Bと1Cとの間で完全に重なる緑色の領域(領域1)は、F/Tモードが可能であることを示唆している。しかし、このプロットにおける緑色の領域(領域1)は、導電率が約1mSと実際に低い領域である。そのような条件では、プロテインAプールの約4倍の希釈が必要となることから、規模の点で、プラントへの適合が難題となる可能性がある。
【0315】
赤色の領域(
図1Bにおける領域7及び
図1Cにおける領域8)は、MAbとCHOPの両方についての結合領域を示している。どちらのプロットにも、いくらか重なっている赤色の領域が存在する。しかし、
図1Bは、操作可能なpH及び対イオン濃度内では、最大結合容量の55g/Lが可能であったことを示している。約3.5g/Lの力価の細胞培養物を用いた高力価プロセスの場合は、1回のサイクルで産物(例えばポリペプチド)をすべて回収するためには1000Lカラムが必要となるであろうし、又は、より小型のカラムを用いて複数回のサイクルを実施しなければならないであろう。
【0316】
OECモードにおいては、ロード条件は、カラム上での不純物(例えばCHOP)の挙動に基づいて選定することができる。カラムと結合するMAbの量は、それほど懸念材料ではなく、その理由は、結合されたMAbは、溶出相により回収することができるからである。したがって、樹脂の産物結合容量により限定されることなく最大の不純物クリアランスを得るためのロード条件を設計する全体の実験域が存在する。結合/溶出モードでは55g/Lのロード密度が可能であるが、OECでは、約10倍高いロード容量が可能となり、それにより、より小型のカラムの実施化が可能になって、ひいては、産物1グラム当たりの樹脂のコストを削減することができ、良好なプラント適合がもたらされる。
【実施例2】
【0317】
OECモードの最適化
OECモードで動作させるためのパラメーター決定のために、HTSデータを用いた。ロード密度要件、プラント適合、及び不純物クリアランスに基づいて、MAb3のためのロード条件を選択したところ、pH6.5及び5.5mS/cmとなった。
図2に示す、最適化されたクロマトグラフィー運転のためのロード密度は、180g/Lであった。約50g/Lのポリペプチド産物は、ロード期の間、樹脂と結合する。産物プールは、約0.5ODで開始して収集し、産物を樹脂上に最大180g/Lでオーバーロードした。ロード期の完了後、1mS/cmという低い導電率のバッファー(溶出バッファー:20mM MES、pH6.5)を用いた溶出相を使用して、結合されたタンパク質を溶出したところ、フロースルークロマトグラフィーと比較してプール体積が10~15%減少した。このクロマトグラフィー運転についての収率及び不純物クリアランスを
図3に示す。
【実施例3】
【0318】
ロード最適化
本試験は、OEC動作モードにおいてHTSデータと実際のカラム成績データとを比較するために行った。カラムは、3通りの異なるpH値でロードした。最初のCHOPクリアランス及び収率データに基づいて、pH6.5を最良の条件として選択した。プール中のCHOPの濃度の範囲は、ロードpHの関数として、900~50~400ppmであった。本試験から、組成物をロードするための最良の条件はpH6.5であると決定した。加えて、収率は最適化しなかったが、pH6.5では、最大収率ももたらされた(
図3、表3)。
【0319】
【実施例4】
【0320】
溶出最適化
本試験は、OECの場合の溶出条件を最適化するために行った。ロード期の間結合されていた産物(MAb3、約50g/L)を回収するために、ロード期の完了後、数カラム体積の洗浄バッファー(50mM MES、30mM酢酸Na、pH6.5、約5.5mS/cm)を、カラムに通過させた。大量のテーリングが観察され、ロード期の最後には、プール体積が増加することとなった。ロードバッファーと類似したpH及び導電率を有する洗浄バッファーを用いると、プール体積の増加率は、約45%となった。プール体積がこのように増加すると、プラント適合が難題となる可能性がある(
図4)。
【0321】
溶出最適化試験の目的は、CHOPを最小化させプール体積減少を最大にしつつ、最大収率を得ることであった。溶出相は、50g/Lの結合された産物をカラムから溶出するために開発された。
図5は、溶出相のクロマトグラムを示す。導電率が低いバッファーほど、2カラム体積以内に産物をカラムの外に溶出し、その結果、収率は高く、プール体積は低くなる(表4)。他方、導電率が高い溶出バッファーほど、8カラム体積より多いテーリングが認められた。表4に示すように、プールCHOPは、試したすべての溶出バッファーにおいて、20ppm未満であった。したがって、収率を高めテーリングを最小化させる溶出バッファーとして、20mM MESを選択した。
【0322】
【実施例5】
【0323】
OECについての不純物分析
OEC由来の画分を不純物について分析した。
図6Aは、ロード期の間及び溶出期の間収集した画分中のMAb濃度及びCHOPレベルを示すものである。ロード期の間、CHOPは20~25ppmのままであり、結合されたMAbのみが溶出されている溶出相の間、画分のCHOPレベルは低下する。累積的な分析から、CHOP及び他の不純物はロード期及び溶出期全体を通じて相当に一貫性を保っていることが実証される(
図6B)。この運転の場合のロード密度は、180g/Lであった。X-MuLV及びMMVをモデルウイルスとして使用したウイルスクリアランスも、同じロード密度について試験した(表5)。この実験の場合、ロードpHは6.5、ロード導電率は5.5mS/cmであった。溶出条件は、20mM MES、pH6.5、導電率が約1mS/cmであった。
【0324】
【実施例6】
【0325】
最大不純物結合容量決定
OECモードにより、MAb3をロードした樹脂上での最大不純物結合容量を見出すために、プロテインAプールを用いて、Capto Adhere樹脂に1000g/Lまで負荷をかけた。ロードバッファーは、pH6.5、約5.5mS/cmであり、溶出バッファーは、20mM MES、pH6.5、約1mS/cmであった。プール試料を50g/Lごとに収集し、CHOP及びタンパク質濃度について分析した(
図7)。800g/Lまでのロード密度では、CHOPはブレークスルーせず、溶出された液中のCHOPは、20ng/mg未満であった。
【実施例7】
【0326】
パイロット規模での実施化
OEC動作モードを、サイズが1.6L~10.8Lの範囲のパイロット規模のカラムを用いて実施化した。カラム直径の範囲は10cm~25cm、ベッド高の範囲は20~22cmであった(表6)。試料は、pH6.5、約5.5mS/cmでロードし、20mM MES、pH6.5、約1mS/cmで溶出した。パイロット規模の運転を通じた収率を
図8に示す。パイロット規模の運転におけるロード密度は、70~180g/Lのあらゆるロード密度の範囲を網羅していた。このロード密度すべてを通じて、平均収率94%が達成された。テストしたロード密度の範囲全体にわたって、収率に影響を及ぼさなかった。パイロット規模の運転全体を通じて、OECモードのプールCHOPは25ppm未満であり、この値は、その後、最終的なポリペプチド産物(UFDFプール)中のCHOP 2ppm未満まで下流で除かれた(表7)。平均して、HMWタンパク質には、パイロット規模の運転全体を通じて約1.1%の低下が認められ(表8)、LMWタンパク質には、パイロット規模の運転全体を通じて0.19%の低下が認められた(表9)。
【0327】
【0328】
【0329】
【0330】
CHOのDNA及び浸出されたプロテインAは、OEC後のプール中では検出可能な値を下回った。
【実施例8】
【0331】
製造規模での実施化
OEC動作モードを、サイズが157L(直径100cm×高さ20cm)の製造規模のカラムで実施化した。製造規模では、カラムは、約96g/Lまでロードした。製造規模での2回の運転を通じた収率(%)は、どちらの運転についても95%以上であった。製造規模運転全体を通じ、OECモードのプールCHOPは、17ppm未満であり(表10)、この値は、CHOPの検出可能なレベルを下回るまで下流で除かれた。平均して、2回の製造規模での運転を通じて、HMWにおいては約1.1%の低下、LMWにおいては0.1%の低下、酸性物質においては1.65%の低下が認められた。
【0332】
CHOのDNA及び浸出されたプロテインAは、OECモード後のプール中では検出可能な値未満であった。
【実施例9】
【0333】
他の(outher)MAbへのOECの適用性
プロテインAプールをこの運転のためのロードとして使用した。ロード及び溶出条件は、OECモードが可能であるように選択した。ロード密度、収率(%)、樹脂と結合されたMAb(g/L)、ロード及びプール中の不純物を、次の表に示す(表11、12、13、及び14)。
【0334】
【0335】
【0336】
【0337】
【実施例10】
【0338】
Kp値に基づくAEXクロマトグラフィーの動作モード
完全なフロースルー(F/T)クロマトグラフィーにおいては、Kpは0.1未満であり、樹脂と結合するタンパク質はない。弱分配クロマトグラフィー(WPC)においては、Kpは、0.1~20であり、産物とクロマトグラフィー媒体との間に弱い分配がある。結合/溶出モードにおいては、産物は樹脂と堅固に結合し、Kpは100を超えるが、ロード密度は産物結合容量に限定される。しかし、オーバーロード/溶出モードのクロマトグラフィー(MAb3)においては、以下のようなロード条件、すなわち、産物及び不純物のKpは、100を超え、産物は、その結合容量に達した後に通り抜けるが、不純物は樹脂との結合を保ち、産物結合容量より高い可能性があるその結合容量に達するまでブレークスルーしないようなロード条件が見出された。
【0339】
ポリペプチド産物のKpが2未満であるような溶出条件が見出された。結合された産物は回収されるが、不純物の大半は結合されたままである(不純物のKpは100を超える)。したがって、このモードでは、非常に高い収率(例えば約95%)がもたらされる(表15)一方で、良好な不純物クリアランスが可能になる。
【0340】
【0341】
弱い分配条件(K
p=2.4)及びオーバーロード/溶出条件(K
p>100)下でのカラム運転により得られたクロマトグラムは、クロマトグラムの産物ブレークスルー領域上でのMAb K
pが上昇することの効果を表示している(
図9)。WPCロード条件:pH5.5、4.4mS/cm;WPC洗浄条件:20mM酢酸塩、pH5、4.4mS/cm。OECロード条件:pH6.5、5.5mS/cm;OEC溶出条件:20mM MES、pH6.5、約1mS/cm。
【0342】
【実施例11】
【0343】
異なる樹脂へのOEC適用性
分子のpIによっては、OECは、次に挙げるマルチモード樹脂(Capto Adhere、QMA、MEP Hypercel、HEA Hypercel、PPA Hypercel、Capto MMC)に適用できる。Capto Adhere樹脂上で結合するポリペプチド産物は、より疎水性が高い性質で、結合された産物は、溶出バッファーの導電率を低下させることにより、カラムから溶出させることができた(
図5)。しかし、樹脂上での産物の結合及び樹脂からの産物の溶出のモードは、疎水性相互作用には限定されず、したがって、OEC動作モードは、他のクロマトグラフィー材料においても、広く使用することができる。表17は、OECを他のCEX樹脂及びIEX樹脂に適用できることを実証するものである。溶出バッファーは、特に示さない限り、20mM MESであった。OECの有望候補は前述の樹脂に限定されず、現在評価中である。QMA樹脂上でのMAb3のブレークスルー分析を
図10に示す。Capto Adhere樹脂上でのMAb4のブレークスルー分析を
図11に示す。Capto MMC樹脂上でのMAb4のブレークスルー分析を
図12に示す。Capto Adhere樹脂上でのMAb3のブレークスルー分析を
図13に示す。
【0344】
【実施例12】
【0345】
OEC上でのグラジエント溶出
溶出最適化試験の別の目的は、Capto Adhere樹脂を用いた場合のOECモード上でのグラジエント溶出条件の効果を評価することであった。溶出相は、結合された産物を溶出するために開発された(表18)。グラジエント溶出運転においては、移動相のイオン強度、pH、組成、及び濃度は、要件に基づいて変化をつけることができる。表18は、ロード条件(pH及び導電率)並びに溶出条件(pH及び導電率の勾配)の両方について、運転条件を示すものである。表に示すデータはすべて、150g/Lロード密度でMAb3をロードされたクロマトグラフィー運転から得た。これらの運転は、グラジエント溶出はOECモードのクロマトグラフィーに対して実施することができ、グラジエント勾配(塩の濃度(mM)/カラム体積)は、最適化することができるということを実証するための概念の証明として行った。HMWS(%)は、ロードと比較した場合、平均38%低下することがわかる(表18)。CHOPは、5.5mS/cm導電率運転で20ppm未満に低下し、10mS/cmでのより高い導電率運転の場合は、プールCHOPは約150ppmとなった(表19)。
【0346】
【0347】