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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】サイクロイド歯車及び減速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20230105BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20230105BHJP
【FI】
F16H1/32 A
F16H57/04 J
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021521770
(86)(22)【出願日】2019-09-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 CN2019103970
(87)【国際公開番号】W WO2020107983
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-17
(31)【優先権主張番号】201811418923.3
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512306405
【氏名又は名称】グリー エレクトリック アプライアンシーズ インク オブ ズーハイ
【氏名又は名称原語表記】GREE ELECTRIC APPLIANCES, INC. OF ZHUHAI
【住所又は居所原語表記】Qianshan Jinji West Road,Zhuhai, Guangdong, 519070, P.R. CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】郭 霜
(72)【発明者】
【氏名】許 甲▲クイ▼
(72)【発明者】
【氏名】劉 成
(72)【発明者】
【氏名】李 婉
(72)【発明者】
【氏名】周 丹
(72)【発明者】
【氏名】鐘 成堡
(72)【発明者】
【氏名】程 中甫
(72)【発明者】
【氏名】孫 豹
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/073867(WO,A1)
【文献】特開2017-048852(JP,A)
【文献】特開2014-185744(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0354667(US,A1)
【文献】西独国特許出願公開第03407245(DE,A1)
【文献】国際公開第2020/056962(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイクロイド歯車であって、
サイクロイド歯車本体を備え、前記サイクロイド歯車本体の端面に凹溝、第1油路及び第2油路が設けられ、前記第1油路は前記凹溝を取り囲んで設置され、前記第2油路の両端はそれぞれ前記第1油路及び前記凹溝に連通し、前記サイクロイド歯車本体の両端面にいずれも前記凹溝、前記第1油路及び前記第2油路が設けられ、前記サイクロイド歯車本体の両端面上の前記凹溝、前記第1油路及び前記第2油路はいずれも対向して設置されることを特徴とするサイクロイド歯車。
【請求項2】
前記サイクロイド歯車本体に通油孔が更に設けられ、前記通油孔は前記サイクロイド歯車本体の両端面を貫通し、且つ前記通油孔は前記サイクロイド歯車本体の両端面上の第1油路のそれぞれに交差することを特徴とする請求項に記載のサイクロイド歯車。
【請求項3】
前記第2油路の両端はそれぞれ前記通油孔及び前記凹溝に連通することを特徴とする請求項に記載のサイクロイド歯車。
【請求項4】
前記サイクロイド歯車本体には前記サイクロイド歯車本体の両端面を貫通する偏心軸孔が設けられ、前記偏心軸孔は前記凹溝内に位置し、前記第2油路は前記通油孔の一端から遠く離れており、前記偏心軸孔に連通することを特徴とする請求項に記載のサイクロイド歯車。
【請求項5】
前記偏心軸孔は2つあり、2つの前記偏心軸孔は前記サイクロイド歯車本体の軸線に関して対称であり、前記通油孔の数は前記偏心軸孔の数と同じであり、2つの前記偏心軸孔と2つの前記通油孔の円心は同じ直線に位置し、2つの前記通油孔は前記サイクロイド歯車本体が公転する軸線に関して対称であることを特徴とする請求項に記載のサイクロイド歯車。
【請求項6】
前記第2油路は前記サイクロイド歯車本体の径方向に沿って延びることを特徴とする請求項に記載のサイクロイド歯車。
【請求項7】
前記第1油路は円環形を呈し、前記第1油路は前記サイクロイド歯車の公転軸を円心とすることを特徴とする請求項に記載のサイクロイド歯車。
【請求項8】
前記サイクロイド歯車本体が公転する際の偏心量はeであり、前記通油孔の直径は4eより大きいことを特徴とする請求項に記載のサイクロイド歯車。
【請求項9】
前記サイクロイド歯車本体の径方向において、各前記通油孔と前記サイクロイド歯車本体の外輪郭との最小距離は4eより小さいことを特徴とする請求項に記載のサイクロイド歯車。
【請求項10】
前記サイクロイド歯車本体にいくつかの植込ボルト孔が更に設けられ、前記植込ボルト孔は前記サイクロイド歯車本体の両端面を貫通し、少なくとも1つの前記植込ボルト孔は前記サイクロイド歯車本体の両端面上の第1油路に交差することを特徴とする請求項に記載のサイクロイド歯車。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のサイクロイド歯車を備えることを特徴とする減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年11月26日に提出した中国特許出願第201811418923.3号、発明の名称「サイクロイド歯車及び減速機」の優先権を主張し、ここで、その全ての内容が援用により本願に取り込まれる。
【0002】
本願は減速機分野に関し、具体的には、サイクロイド歯車及び減速機に関する。
【背景技術】
【0003】
RV減速機はロボットを駆動する中核部品の1つである。他の減速方式と比べて、RV減速機は減速比が大きく、同軸駆動を用い、駆動精度が高く、剛性が高く、構造がコンパクトであるという利点を有し、電子、航空宇宙、ロボット等の産業に広く応用されている。RV減速機は構造が複雑で、サイクロイド歯車、クランク軸、ピン歯車ケース、遊星枠及び剛性ディスク等で構成される。その中で、サイクロイド歯車はRV減速機の重要な構成部分である。
【0004】
RV減速機の、サイクロイドピン歯車により駆動される特徴に基づいて、均一に力を受け、安定して駆動するように確保するために、よく使用されるロボットRV減速機は2枚のサイクロイド歯車を対にして使用する。各サイクロイド歯車の両端面のうちの一方は他のサイクロイド歯車の端面に当接し、他方は主軸受の外輪の端面に当接する。そして、RV減速機が動作するとき、2つのサイクロイド歯車の初期位置に位相差があり、サイクロイド歯車が偏心運動をするため、各対の互いに当接する2つの端面同士は互いにスライドする。
【0005】
RV減速機において、内部部品の摩耗を低減するために、ハウジング内に潤滑剤を封じ込め、ピン歯車とサイクロイド歯車が相対回転をするにつれて、潤滑剤はハウジング内を移動する。そうすると、潤滑剤はサイクロイド歯車の全ての歯間に渡って存在する。サイクロイド歯車の端面と主軸受の外輪の端面との間、2つのサイクロイド歯車の互いに当接する端面の間の隙間は極めて小さいため、相対運動が生じるとき、潤滑剤を押し出し、それにより互いに当接する端面間に乾摩擦を生じさせ、サイクロイド歯車の端面の摩耗速度が向上し、最終的にサイクロイド歯車の駆動精度及び耐用年数を低下させてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願はサイクロイド歯車及び減速機を提供し、減速機が動作する際にサイクロイド歯車の端面への摩耗が比較的大きいという問題を改良することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は以下のように実現される。
【0008】
サイクロイド歯車であって、サイクロイド歯車本体を備え、前記サイクロイド歯車本体の端面に凹溝、第1油路及び第2油路が設けられ、前記第1油路は前記凹溝を取り囲んで設置され、前記第2油路の両端はそれぞれ前記第1油路及び前記凹溝に連通する。
【0009】
一実施例では、前記サイクロイド歯車本体の両端面にいずれも前記凹溝、前記第1油路及び前記第2油路が設けられ、前記サイクロイド歯車本体の両端面上の前記凹溝、前記第1油路及び前記第2油路はいずれも対向して設置される。
【0010】
一実施例では、前記サイクロイド歯車本体に通油孔が更に設けられ、前記通油孔は前記サイクロイド歯車本体の両端面を貫通し、且つ前記通油孔は前記サイクロイド歯車本体の両端面上の第1油路のそれぞれに交差する。
【0011】
一実施例では、前記第2油路の両端はそれぞれ前記通油孔及び前記凹溝に連通する。
【0012】
一実施例では、前記サイクロイド歯車本体には前記サイクロイド歯車本体の両端面を貫通する偏心軸孔が設けられ、前記偏心軸孔は前記凹溝内に位置し、前記第2油路は前記通油孔の一端から遠く離れており、前記偏心軸孔に連通する。
【0013】
一実施例では、前記偏心軸孔は2つあり、2つの前記偏心軸孔は前記サイクロイド歯車本体の軸線に関して対称であり、前記通油孔の数は前記偏心軸孔の数と同じであり、2つの前記偏心軸孔と2つの前記通油孔の円心は同じ直線に位置し、2つの前記通油孔は前記サイクロイド歯車本体が公転する軸線に関して対称である。
【0014】
一実施例では、前記第2油路は前記サイクロイド歯車本体の径方向に沿って延びる。
【0015】
一実施例では、前記第1油路は円環形を呈し、前記第1油路は前記サイクロイド歯車の公転軸を円心とする。
【0016】
一実施例では、前記サイクロイド歯車本体が公転する際の偏心量はeであり、前記通油孔の直径は4eより大きい。
【0017】
一実施例では、前記サイクロイド歯車本体の径方向において、各前記通油孔と前記サイクロイド歯車本体の外輪郭との最小距離は4eより小さい。
【0018】
一実施例では、前記サイクロイド歯車本体にいくつかの植込ボルト孔が更に設けられ、前記植込ボルト孔は前記サイクロイド歯車本体の両端面を貫通し、少なくとも1つの前記植込ボルト孔は前記サイクロイド歯車本体の両端面上の第1油路に交差する。
【0019】
減速機であって、前記減速機は上記いずれか1項に記載のサイクロイド歯車を備える。
【発明の効果】
【0020】
本願の有益な効果は以下のとおりである。本願は上記設計によってサイクロイド歯車を得て、サイクロイド歯車本体の端面に凹溝が設けられるため、減速機内に取り付けられた後、サイクロイド歯車本体の端面の他の部品に実際に接触する部分は凹溝の周囲を取り囲む端面である。同時に、凹溝の周囲の端面に第1油路及び第2油路が設けられ、第1油路は凹溝を取り囲んで設置され、即ち凹溝の周囲の端面に設置され、第2油路は凹溝を第1油路に互いに連通する。凹溝が存在するため、凹溝内に潤滑剤が蓄えられ、第2油路は凹溝内の潤滑剤を第1油路に排液することができる。第1油路は凹溝の周囲の端面に設置されるため、第1油路に潤滑剤がいっぱいに充填された後、第1油路内の潤滑剤はサイクロイド歯車本体の端面とその接触する部品の端面との間を潤滑する役割を果たし、サイクロイド歯車本体の端面とその接触する部材との間に乾摩擦が生じることを防止し、サイクロイド歯車本体の端面への摩耗を抑制することができる。
【0021】
本願の実施例又は従来技術の技術案をより明確に説明するために、以下に実施例又は従来技術の記述において必要な図面を用いて簡単に説明を行うが、明らかに、以下に記載する図面は単に本願の実施例であって、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、開示される図面に基づいて他の図面に想到しうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本願の一実施例に係るサイクロイド歯車の構造模式図である。
図2】本願の一実施例に係る減速機の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本願の実施例の図面を参照しながら、本願の実施例の技術案を明確且つ完全に説明する。明らかに、説明される実施例は単に本願の一部の実施例であり、全部の実施例ではない。本願の実施例に基づいて、当業者が進歩性のある労働を必要とせずに取得する全ての他の実施例は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0024】
本発明の説明において、理解されるように、用語「中心」、「縦方向」、「横方向」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「時計回り」、「反時計回り」等で示される方位又は位置関係は図面に示される方位又は位置関係であり、単に本発明を説明しやすく又は説明を簡素化するためのものであって、示される装置又は素子は必ず特定の方位を有し、特定の方位で構成や操作しなければならないことを明示又は暗示するものではなく、従って、本発明を制限するものとして理解されるべきではない。
【0025】
また、用語「第1」、「第2」は単に説明のためのものであって、相対的な重要性を明示又は暗示したり、示される技術的特徴の数を暗示的に示したりするものとして理解されるべきではない。これにより、「第1」、「第2」で限定された特徴は1つ以上の該特徴を明示的又は暗示的に含んでもよい。本発明の説明において、特に明確且つ具体的に制限しない限り、「複数」の意味は2つ以上である。
【0026】
本発明において、特に明確に規定又は制限しない限り、「取り付け」、「連結」、「接続」、「固定」等の用語は広義的に理解されるべきであり、例えば、固定接続であってもよく、取り外し可能な接続であってもよく、一体であってもよく、機械的接続であってもよく、電気的接続であってもよく、直接接続であってもよく、中間媒体を介する間接接続であってもよく、2つの素子の内部の連通又は2つの素子の相互作用関係であってもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて上記用語の本発明における具体的な意味を理解することができる。
【0027】
本発明において、特に明確に規定又は制限しない限り、第1特徴が第2特徴の「上」又は「下」にあることは、第1及び第2特徴の直接接触を含んでもよく、第1及び第2特徴が直接接触せずにそれらの間の他の特徴を介して接触することを含んでもよい。そして、第1特徴が第2特徴の「上」、「上方」及び「上面」にあることは、第1特徴が第2特徴の真上及び斜め上方にあることを含み、又は、第1特徴の水平高さが第2特徴より高いことのみを示す。第1特徴が第2特徴の「下」、「下方」及び「下面」にあることは、第1特徴が第2特徴の真下及び斜め下方にあることを含み、又は、第1特徴の水平高さが第2特徴より小さいことのみを示す。
【0028】
実施例1
図1に示すように、本実施例に係るサイクロイド歯車であって、サイクロイド歯車本体1を備え、サイクロイド歯車本体1の端面に凹溝5、第1油路2及び第2油路3が設けられ、第1油路2は凹溝5を取り囲んで設置され、第2油路3の両端はそれぞれ第1油路2及び凹溝5に連通する。凹溝5はサイクロイド歯車の軸心を円心とする円形凹溝5を呈し、第1油路2及び第2油路3はいずれも上端が開口された溝状構造を呈する。即ち、第1油路2及び第2油路3の開口はサイクロイド歯車本体1の端面に位置する。
【0029】
本実施例に係るサイクロイド歯車については、サイクロイド歯車本体1の端面に凹溝5が設けられるため、減速機内に取り付けられた後、サイクロイド歯車本体1の端面の他の部品に実際に接触する部分は凹溝5の周囲を取り囲む端面である。同時に、凹溝5の周囲の端面に第1油路2及び第2油路3が設けられ、第1油路2は凹溝5を取り囲んで設置され、即ち凹溝5の周囲の端面に設置され、第2油路3は凹溝5を第1油路2に互いに連通する。凹溝5が存在するため、凹溝5内に潤滑剤が蓄えられ、第2油路3は凹溝5内の潤滑剤を第1油路2に排液することができる。第1油路2は凹溝5の周囲の端面に設置されるため、第1油路2に潤滑剤がいっぱいに充填された後、第1油路2内の潤滑剤はサイクロイド歯車本体1の端面とその接触する部品の端面との間を潤滑する役割を果たし、サイクロイド歯車本体1の端面とその接触する部材との間に乾摩擦が生じることを防止し、サイクロイド歯車本体1の端面への摩耗を抑制することができる。
【0030】
更に、一実施例では、サイクロイド歯車本体1の両端面にいずれも凹溝5、第1油路2及び第2油路3が設けられ、サイクロイド歯車本体1の両端面上の凹溝5、第1油路2及び第2油路3はいずれも対向して設置される。実際の応用では、サイクロイド歯車本体1の2つの端面はいずれもその接触するワークに対して互いにスライドするため、本実施例では、サイクロイド歯車本体1の2つの端面にいずれも凹溝5、第1油路2及び第2油路3が設けられる。そうすると、サイクロイド歯車本体1が減速機内に設置された後、サイクロイド歯車本体1の隣接するサイクロイド歯車に接触する端面及び主軸受8に接触する端面はいずれも潤滑剤で潤滑でき、それによりサイクロイド歯車本体1への摩耗を抑制する。
【0031】
更に、一実施例では、サイクロイド歯車本体1に通油孔4が更に設けられ、通油孔4はサイクロイド歯車本体1の両端面を貫通し、且つ通油孔4はサイクロイド歯車本体1の両端面上の第1油路2のそれぞれに交差する。通油孔4はサイクロイド歯車本体1の両端面上の2つの第1油路2を連通して、径方向通路を形成することができる。減速機は実際の応用では、様々な角度で置かれる可能性があるため、サイクロイド歯車本体1は必ず水平状態にあるとは限らず、サイクロイド歯車本体1を傾斜状態にするとき、潤滑剤は重力の作用によって位置分布が不均一になって、サイクロイド歯車本体1の両端面の潤滑剤の量が異なる可能性があり、潤滑剤の量が少なすぎる場合、潤滑効果に影響してしまう。本実施例は、通油孔4を設置することにより、両端面上の第1油路2を連通する径方向通路を形成し、2つの第1油路2内の潤滑剤を互いに流動させ、ある端面の第1油路2内の潤滑剤が少なすぎることを防止する。
【0032】
更に、一実施例では、第2油路3の両端はそれぞれ通油孔4及び凹溝5に連通する。具体的には、通油孔4は第1油路2と第2油路3の接続箇所に設置され、サイクロイド歯車本体1の2つの端面上の第1油路2及び第2油路3のそれぞれを連通し、径方向通路からの潤滑剤の排液効果をさらに向上させ、2つの端面の凹溝5内の潤滑剤を第2油路3及び通油孔4から互いに流動させ、潤滑剤の流動性を更に向上させることができる。
【0033】
更に、一実施例では、サイクロイド歯車本体1にはサイクロイド歯車本体1の両端面を貫通する偏心軸孔6が設けられ、偏心軸孔6は凹溝5内に位置し、第2油路3は通油孔4の一端から遠く離れており、偏心軸孔6に連通する。偏心軸孔6は2つあり、2つの偏心軸孔6はサイクロイド歯車本体1の軸線に関して対称であり、通油孔4の数は偏心軸孔6の数と同じであり、2つの偏心軸孔6と2つの通油孔4の円心は同じ直線上に位置し、2つの通油孔4はサイクロイド歯車本体1が公転する軸線に関して対称であり、第2油路3はサイクロイド歯車本体1の径方向に沿って延びる。
【0034】
サイクロイド歯車本体1には偏心軸9を取り付けるための偏心軸孔6が設けられ、多くの減速機内にいずれも2つの偏心軸9を設置する必要があるため、本実施例では、サイクロイド歯車本体1に2つの偏心軸孔6が設置される。偏心軸孔6の内側壁と偏心軸9の外周面との間にも潤滑剤があるため、第2油路3の第1油路2から遠く離れた一端が偏心軸孔6に連通する場合、第2油路3は偏心軸孔6内の潤滑剤を第1油路2内に排液し、第1油路2内の潤滑剤をさらに増加させ、サイクロイド歯車本体1の端面への潤滑効果をさらに向上させることもできる。そして、本実施例では、各偏心軸孔6にはいずれも1つの通油孔4及び第2油路3が対応して設置され、第2油路3はサイクロイド歯車本体1の径方向に沿って延び、2つの偏心軸孔6と2つの通油孔4は同じ直線に位置する。このように設置すれば、サイクロイド歯車本体1が偏心回転をするとき、潤滑剤は慣性の作用によってより良く第2油路3から通油孔4内に流れ込み、潤滑剤の流動効果をさらに向上させることができる。同時に、第2油路3の排液効果をさらに向上させるために、第2油路3の深さは凹溝5の深さより大きく、具体的には、第2油路3の凹溝5内の一部は凹溝5の地面に位置して下向きに凹む。
【0035】
更に、潤滑剤を第1油路2内でよりスムーズに流動させるために、一実施例では、第1油路2は円環形を呈し、第1油路2はサイクロイド歯車の公転軸を円心とする。サイクロイド歯車本体1は動作時に偏心運動をしても、運動軌跡も円形を呈し、第1油路2を円環形に設置することにより、潤滑剤を慣性の作用によってより良く第1油路2内で流動させることができる。他の実施例では、第1油路2は多角形等の他の形状に設置されてもよい。
【0036】
更に、一実施例では、サイクロイド歯車本体1にいくつかの植込ボルト孔7が更に設けられ、植込ボルト孔7はサイクロイド歯車本体1の両端面を貫通し、少なくとも1つの植込ボルト孔7はサイクロイド歯車本体1の両端面上の第1油路2に交差する。実際の応用では、植込ボルト孔7内にも潤滑剤があり、植込ボルト孔7は第1油路2に交差し、植込ボルト孔7内の潤滑剤を第1油路2内に流れ込ませ、第1油路2内の潤滑剤をさらに増加させ、サイクロイド歯車本体1の端面の潤滑効果をさらに向上させることができる。
【0037】
更に、一実施例では、サイクロイド歯車本体1が公転する際の偏心量はeであり、通油孔4の直径は4eより大きい。サイクロイド歯車本体1の径方向において、各通油孔4とサイクロイド歯車本体1の外輪郭との最小距離は4eより小さい。2つの偏心輪本体が対になって使用される場合、2つの偏心輪本体は偏心軸9につれて異なる角度まで回転して、相対的にスライドする。具体的には、偏心軸9が0°回転する場合、2つの偏心輪本体は完全に重なり、対応する2つの偏心輪本体に設置される通油孔4も完全に重なり、即ち2つの通油孔4は互いに連通し、潤滑剤は2つの通油孔4の間でスムーズに流れることができる。偏心軸9が0°から180°まで回転する過程において、2つの偏心輪本体同士は相対的にスライドして徐々に一定距離離れ、180°まで回転する場合、離れた距離は最も大きく、4eである。本実施例では、通油孔4の直径は4eより大きいため、2つの偏心輪本体が離れた距離は最も大きい場合でも、2つの偏心輪本体上の通油孔4は依然として一部が重なり、2つの通油孔4が連通するように維持し、潤滑剤が通常通りに2つの通油孔4の間で流れるようにする。上記内容から分かるように、2つのサイクロイド歯車本体1が互いに運動する最大距離は4eであり、本実施例では、各通油孔4とサイクロイド歯車本体1の外輪郭との最小距離は4eより小さいため、2つのサイクロイド歯車本体1が互いに運動する距離は通油孔4とサイクロイド歯車本体1の外輪郭との距離より大きい場合、通油孔4は他のサイクロイド歯車本体1の端面で完全に遮られず、通油孔4をサイクロイド歯車本体1の外周面外の空間に連通させ、それにより通油孔4がこの空間内の潤滑剤を第1油路2内にガイドすることを可能にし、サイクロイド歯車本体1の端面への潤滑効果を向上させる。
【0038】
図2に示すように、本願の実施例は、上記いずれか1つの一実施例のサイクロイド歯車を備える減速機を更に提供する。具体的には、本願の実施例に係る減速機はRV減速機であってもよい。
【0039】
以上に記載された実施例の各技術的特徴は任意に組み合わせられてもよい。説明を簡単にするために、上記実施例の各技術的特徴の全ての可能な組み合わせを説明しないが、矛盾しない限り、これらの技術的特徴の組み合わせはいずれも本明細書に記載される範囲であると見なされるべきである。
【0040】
以上に記載された実施例は本願のいくつかの実施形態のみを表現し、その説明はより具体的且つ詳細であるが、本願の保護範囲を制限するものとして理解されるべきではない。なお、当業者であれば、本願の構想から逸脱することなく、更に若干の変形や改良を行うことができ、それらはいずれも本願の保護範囲に属する。従って、本願の保護範囲は添付の特許請求の範囲に準じるべきである。
図1
図2